JP2016059347A - 細胞内の核酸の解析方法ならびにそのためのシステムおよびキット - Google Patents

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Abstract

【課題】マイクロチャンバー内の細胞に含まれる核酸を増幅するために、短時間で簡便かつ確実に、各マイクロチャンバーを核酸増幅反応試薬で満たした後、封止液で封止することのできる準備方法を提供する。【解決手段】細胞を収容し保持することができるマイクロチャンバーが表面に形成されたマイクロチャンバーチップと、その上部に天井を有する流路を形成するための天井形成部材を備えた流路デバイスを用いて、前記マイクロチャンバー内で細胞に含まれる核酸を増幅するための準備方法であって、(1)前記マイクロチャンバーに細胞を収容するよう、前記流路に細胞懸濁液を送液する工程、(2)前記流路に核酸増幅反応試薬を送液し、すくなくとも前記マイクロチャンバーを核酸増幅反応試薬で満たす工程、および(3)前記流路に封止液を送液し、前記マイクロチャンバーを満たす核酸増幅反応試薬同士が連通しないよう、当該流路を封止液で満たす工程を含むことを特徴とする、核酸増幅準備方法。【選択図】図1

Description

本発明は、流路デバイスを用いて、そのマイクロチャンバーに収容し保持された細胞内の核酸を解析するための方法、ならびに当該方法を実施するためのシステムおよびキットに関する。
血液循環癌細胞(CTCs:Circulating Tumor Cells)は、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌などの患者の血中に見出される細胞であり、その数は癌の転移性を反映しているなど、臨床上の重要な情報になることで注目されている。しかしながら、血液中のCTCの密度は極めて低く(少ない場合、全血10mLあたり1〜10個程度)、その検出および計数は容易ではない。そのため、マイクロチャンバーなどと呼ばれる微小な凹部が表面に多数形成されているチップ状部材を用いて、血液試料等の細胞懸濁液から細胞を効率的に回収し、細胞観察等に適するように展開する方法の研究開発が進められている。そのような法方の基本的な実施形態は、たとえば特許文献1(国際公開第2014/007190号パンフレット)に記載されている。
一方で、上述した流路デバイスに類似する、多数の微小な凹部(マイクロウェル、マイクロチャンバー)が形成されたチップ状部材を用いて、各凹部の内部でPCR等のDNA増幅方法を効率的に行おうとする方法も知られている。
たとえば、特許文献2(特開2000−236876号公報)には、集積化された複数のマイクロウェルからなるマイクロウェル集積体を備える半導体基板を使用して、前記それぞれのマイクロウェル中でPCRを行う方法が開示されており、各マイクロウェルの内壁面が親水性であり、マイクロウェル内壁面以外の表面が疎水性であること、PCRを行う際に、水蒸気は透過させるが液体は不透過性の膜と、その上に積層されたガラスプレートとでマイクロウェルを覆って密封し、各マイクロウェル中のPCR増幅産物の混合を防ぐことも記載されている。しかしながら特許文献1からは、PCR反応試薬を含む溶液をどのようにしてマイクロウェルに収容するかが不明である。
また、非特許文献1には、特許文献1と同様のマイクロチャンバーアレイチップを使用してPCR等のDNA増幅方法を行う方法が開示されているが、この方法ではマイクロチャンバーアレイの表面を予めミネラルオイルで被覆しておき、その上からディスペンサーのチップでPCR等の反応試薬を含む溶液を滴下し、重力によってマイクロチャンバー内に当該溶液を収納している。この際、マイクロチャンバーの内壁面が親水性になっている一方、その他のチップ表面が疎水性になっているため、PCR等の反応試薬を含む溶液が疎水性のチップ表面の位置に落ちても、マイクロチャンバー内に収容することが可能になっている。しかしながら、全てのマイクロチャンバーに均等に反応試薬を収容させるためには、極力マイクロチャンバーの位置通りに反応試薬を滴下する必要があり、マイクロメートルオーダーでディスペンサーの位置を制御しなくてはならず、実用化が困難である。また上記方法のようにディスペンサーのチップでPCR等の反応試薬を含む溶液を多数のマイクロチャンバー内すべてに滴下するのは時間もかかり非常に煩雑な試験となる。
国際公開第2014/007190号パンフレット 特開2000−236876号公報
Matsubara et al., Arch Histol. Cytol., Vol. 65, No. 5 (2002) p. 481-488
流路デバイスのマイクロチャンバー内に回収したCTC等の細胞は、たとえば特徴的な遺伝子の塩基配列を有していないかなど、それらの細胞に含まれる核酸についてさらに詳細な解析を行いたい場合がある。しかしながら、前述した非特許文献1に記載されているようなディスペンサーを用いて反応試薬をマイクロチャンバーに滴下する手法を応用することには現実的な困難が伴う。
上述したような課題を解決するべく、本発明は、マイクロチャンバー内の細胞に含まれる核酸を増幅するために、短時間で簡便かつ確実に、各マイクロチャンバーを核酸増幅反応試薬で満たした後、封止液で封止することのできる準備方法、およびそのような方法を利用した細胞の分析方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前述したような流路デバイスを用いてマイクロチャンバー内に細胞を回収するときのシステムを応用し、流路デバイスの流路に、細胞懸濁液に続いて核酸増幅反応試薬を送液し、さらにミネラルオイルのような封止液を送液すると、細胞を収容し保持したマイクロチャンバーを核酸増幅反応試薬で満たした後、それらが連通しないよう各マイクロチャンバーを封止液で封止することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は一つの側面において、細胞を収容し保持することができるマイクロチャンバーが表面に形成されたマイクロチャンバーチップと、その上部に天井を有する流路を形成するための天井形成部材を備えた流路デバイスを用いて、前記マイクロチャンバー内で細胞に含まれる核酸を増幅するための準備方法(以下、本明細書において「核酸増幅準備方法」と称する。)を提供し、さらなる側面において、その準備方法を利用して核酸増幅反応を行い、細胞を分析するための方法(以下、本明細書において「細胞分析方法」と称する。)を提供する。このような本発明は、以下の各発明を包含する。
[1]細胞を収容し保持することができるマイクロチャンバーが表面に形成されたマイクロチャンバーチップと、その上部に天井を有する流路を形成するための天井形成部材を備えた流路デバイスを用いて、前記マイクロチャンバー内で細胞に含まれる核酸を増幅するための準備方法であって、(1)前記マイクロチャンバーに細胞を収容するよう、前記流路に細胞懸濁液を送液する工程、(2)前記流路に核酸増幅反応試薬を送液し、すくなくとも前記マイクロチャンバーを核酸増幅反応試薬で満たす工程、および(3)前記流路に封止液を送液することにより、前記流路に残存した核酸増幅反応試薬を押し流すことで、前記マイクロチャンバーを満たす核酸増幅反応試薬同士が連通しないよう、当該流路を封止液で満たす工程を含むことを特徴とする、核酸増幅準備方法。
[2]前記マイクロチャンバーの底面が細胞接着性である、項1に記載の準備方法。
[3]前記封止液がミネラルオイルである、項1または2に記載の準備方法。
[4]前記核酸増幅反応試薬が、蛍光強度によって核酸の増幅を定量することのできるリアルタイムPCR法のためのものである、項1〜3のいずれか一項に記載の準備方法。
[5]項1〜4のいずれか一項に記載の核酸増幅準備方法が行われた流路デバイスを使用して、(4)前記核酸増幅反応試薬に対応した核酸増幅反応を行う工程を含むことを特徴とする、細胞分析方法。
[6]さらに、前記核酸増幅準備方法における工程(2)の前に、(1’)前記マイクロチャンバーに収容された細胞を染色し、その結果を取得する工程を含む、項5に記載の細胞分析方法。
[7]さらに、前記工程(1')で取得された結果と、前記工程(4)で取得された結果を対比する工程を含む、項6に記載の細胞分析方法。
[8]前記工程(1’)において細胞を染色するための蛍光と、前記工程(4)において核酸増幅を検出するための蛍光が異なる種類のものである、項6または7に記載の細胞分析方法。
本発明の核酸増幅準備方法を利用すれば、マイクロチャンバー内の細胞に含まれる核酸を解析するために必要な操作である核酸増幅反応試薬の充填および封止液による封止を、短時間で簡便かつ確実に行うことができる。また、このような核酸増幅準備方法を実施するためのシステムは、マイクロチャンバーに細胞を収容し保持するための細胞展開用システムを応用することが可能であり、細胞の収容および保持と、核酸解析のための前処理とを、一体的なシステムにおいて連続的に、効率的に行うことができる。
図1は、本発明の核酸増幅準備方法および細胞分析方法に含まれる各工程に対応する、マイクロチャンバーおよび流路の様子を模式的に描いた縦断面図である。(1)は細胞懸濁液送液工程、(1’)は染色工程および観察工程、(2)は核酸増幅反応試薬送液工程、(3)は封止液送液工程、(4)は核酸増幅反応工程および測定工程である。(3)において、封止液SLが流路1を流下した後、マイクロチャンバー5内には核酸増幅反応試薬RLが残存する。(4)において、検出対象細胞50aが収容されていたマイクロチャンバー5内のみ、核酸増幅反応が進行し、蛍光発色した核酸増幅反応試薬(核酸増幅産物溶液)RL’となる。 図2[A]および[B]は、それぞれ本発明の細胞分析システムの実施形態の一例を表す模式図(側面図)である。 図3は、当該システムに用いられる流路デバイスの実施形態の一例を示す模式図(上面図)である。 図4は、核酸増幅反応試薬の代替として蛍光色素水溶液(青)を送液し、続いて封止液を送液した後に、前記蛍光色素に対応する励起光を照射したときの観察像である。マイクロチャンバーが(青い)蛍光色素水溶液で満たされている様子が確認できる。
−核酸増幅準備方法−
本発明の核酸増幅準備方法は、細胞を収容し保持することができるマイクロチャンバーが表面に形成されたマイクロチャンバーチップと、その上部に天井を有する流路を形成するための天井形成部材を備えた流路デバイスを用いて、前記マイクロチャンバー内で細胞に含まれる核酸を増幅するための準備方法であって、下記工程(1)〜(3)を含む:
(1)前記マイクロチャンバーに細胞を収容し保持するよう、前記流路に細胞懸濁液を送液する工程(細胞懸濁液送液工程);
(2)前記流路に核酸増幅反応試薬を送液し、すくなくとも前記マイクロチャンバーを核酸増幅反応試薬で満たす工程(核酸増幅反応試薬送液工程);および
(3)前記流路に封止液を送液することにより、前記流路に残存した核酸増幅反応試薬を押し流すことで、前記マイクロチャンバーを満たす核酸増幅反応試薬が連通しないよう、当該流路を封止液で満たす工程(封止液送液工程)。
(細胞)
本発明における核酸増幅または分析の対象とする細胞(集団)は特に限定されるものではない。本発明では、特定の遺伝子を発現している細胞や、核酸、タンパク質、脂質、糖等の生体物質の発現レベルが通常より高いまたは低い細胞を、細胞集団中から検出すべき対象とすることができる。このような検出対象細胞は、自然界に存在する(天然に発生した)細胞であってもよいし、人為的処理が施された細胞であってもよい。自然界に存在する細胞としては、たとえば病原細胞、病変細胞、病原菌又は病原生物に感染された細胞、突然変異した細胞、特定の性質を有する未知の細胞、さらには特定の疾患のマーカーとなる細胞などを挙げることができる。一方、人為的処理が施された細胞としては、たとえば遺伝子工学的処理(例:遺伝子組み換え処理)、化学的処理(例:薬剤処理)、物理的処理(例:電磁波照射)等が施された細胞などを挙げることができる。
また、上記の細胞(集団)は、単細胞生物由来の細胞であってもよいし、多細胞生物由来の細胞であってもよい。多細胞生物由来の細胞としては、例えば生物の正常組織もしくは病態組織、または血液、尿、リンパ液、組織液、体腔液などの生体試料(検体)に含まれる細胞、ならびにこれらの細胞に由来する培養細胞(細胞株)が挙げられる。また、これらの細胞が由来する生物は特に限定されるものではない。たとえば、脊椎動物(特にヒトおよびその他の哺乳類ならびに鳥類)由来細胞、昆虫由来細胞などの動物由来細胞を用いることもできるし、植物培養細胞などの植物由来細胞を用いることもできる。細胞(集団)は同一の種類の細胞からなるものであってもよいし、複数種の細胞が混在するものであってもよい。
より具体的には、次のような細胞(集団)を対象とした実施形態に言及することができる。たとえば、血液中には通常、赤血球、白血球(好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、単球)などの血液細胞が含まれているが、特定の疾患、症状、生体の状態などに応じて、さらに循環腫瘍細胞(CTC)、循環血管内皮細胞(CEC)、循環血管内皮前駆細胞(CEP)、その他の幹細胞・前駆細胞などの稀少細胞が含まれている場合がある。また、培養されている細胞集団には、幹細胞・前駆細胞、特定の分化細胞、その他の特徴的な細胞が含まれている場合がある。本発明の方法は、そのような稀少細胞や特徴的な細胞に含まれる核酸を増幅し、細胞を分析するために利用することができる。
(核酸)
本発明における核酸は、細胞に含まれるものであって、適切な手段により増幅することができるものであれば特に限定されるものではなく、ゲノムDNA(染色体)、ミトコンドリアDNA(mtDNA)などのDNAであってもよいし、mRNA、tRNA、rRNA、miRNA、siRNAなどのRNAであってもよい。
(検体の前処理方法)
ヒトまたはその他の動物から採取された検体に含まれる細胞を用いる場合、その検体を細胞懸濁液として流路デバイスの流路に送液し、細胞に含まれる核酸の増幅や必要に応じて行われる細胞染色のために必要な前処理を、送液の前または後の適切な段階で行うようにする。
本発明における検体としては、血液(末梢血)、尿、リンパ液、組織液、体腔液など、細胞を含有している可能性のあるものを用いることができ、それらの検体を用いた各種の分析を行うための適切な前処理方法は公知であるので、本発明でも同様の前処理方法を利用すればよい。たとえば、検体として血液を用いる場合、流動性を保持するための抗凝固処理や、血液中に多量に含まれている赤血球等の不要な細胞を除去し、CTC等の目的とする細胞を含む白血球のみを分離するための密度勾配遠心処理を行うことが適切である。
また、細胞に対しては、細胞の自己分解や腐敗を遅延させ、その形態や抗原性を保持するための固定化処理;細胞膜の透過性を向上させて細胞の外部から細胞の内部に物質(細胞内にある抗原を標的とする蛍光標識抗体や、核染色剤等)が浸透しやすくするための浸透化処理;マイクロチャンバー等の細胞の固相化に関与する部位以外に細胞が吸着することを防止するとともに、必要に応じて行われる免疫染色において目的とする抗原以外の部位に蛍光標識抗体が非特定的に吸着することを防止するためのブロッキング処理などを応じて行ってもよい。
(細胞の固相化方法)
マイクロチャンバー内で細胞に含まれる核酸を増幅させ、必要に応じて免疫染色した細胞を観察するためには、マイクロチャンバーに収容された細胞を逃さないよう、マイクロチャンバーの底面に細胞を「固相化する」ことが好ましい。細胞を固相化することにより、核酸の増幅および観察の対象とする細胞の位置を特定しやすくなり、稀少細胞等の目的細胞を効率的に検出することができ、さらに必要に応じて増幅された核酸を回収することも可能となる。
細胞を固相化するための手法としては、マイクロチャンバーの内面、特に底面の性状を、相互作用によって細胞が吸着しやすい性質、すなわち細胞接着性にすることが挙げられる。具体的には、たとえばマイクロチャンバーの内壁面(マイクロチャンバーチップ自体)をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネートといったプラスチックやガラスのように、細胞が物理的な(分子間の)相互作用によって吸着しやすい疎水性材料で作製する方法や、マイクロチャンバーの内壁面をポリ−L−リジンのように細胞の接着性を向上する分子または抗体でコーティングする方法が挙げられる。前記抗体は細胞種によって任意に選択することが可能であり、たとえば上皮細胞であれば抗EpCAM抗体を、白血球であれば抗CD45抗体を選択することが可能である。
ただし、マイクロチャンバーチップを細胞が吸着しやすい疎水性材料で作製した場合、送液の途中で細胞が吸着してしまいマイクロチャンバーに回収されることの妨げとならないよう、(i)細胞自体をブロッキング処理して吸着能力を失わせるか、(ii)細胞が吸着しやすい性質を、マイクロチャンバーの底面等の必要な部分だけに留め、それ以外の部分は、適用しないか、適用を無効化することが好ましい。(ii)について、例えばマイクロチャンバーを細胞が吸着しやすい材料で作製した場合、マイクロチャンバーチップの表面のうちマイクロチャンバーの底面以外の部分および流路形成部材の表面は、細胞が吸着しないようブロッキング剤で処理することが好ましい。そのためのブロッキング処理には、前述したような細胞のブロッキング処理と同様のブロッキング剤(ブロッキング処理液)を用いることができる。マイクロチャンバーの底面にはブロッキング処理をせず、細胞が吸着しやすい材料が露出した状態を保つことにより、そこに細胞を吸着させ、細胞懸濁液の流れによって再びマイクロチャンバーの外に出て行かないようにすることができる。
(細胞懸濁液送液工程)
図1の(1)に示す細胞懸濁液送液工程では、流路1に細胞懸濁液を送液し、所定の時間静置してマイクロチャンバー5内に細胞を沈降させるようにして、マイクロチャンバー5に細胞を収容し保持する。細胞の回収効率を高めるために、送液の流量(流速)や向きに変化を付けてもよい。例えば、短時間送液した後、短時間静置するといったパターン(間欠送液)にしたり、流入口2から流出口3への順方向に送液した後、その逆方向送液するといったパターンにすることにより、マイクロチャンバーチップ1のマイクロチャンバー5以外の表面に残存したり、最後までマイクロチャンバー5内に回収されずに廃棄されたりする稀少細胞等の目的細胞を極力減らすことが可能になる。
(核酸増幅反応試薬送液工程)
図1の(2)に示す核酸増幅反応試薬送液工程では、流路1に核酸増幅反応試薬を送液し、マイクロチャンバー5を核酸増幅反応試薬で満たすようにする。核酸増幅反応試薬の送液量は、全てのマイクロチャンバー5の容積を考慮し、すくなくともそれを満たすのに十分な量となるよう適宜調節することができ、流路1を含めて核酸増幅反応試薬で満たすようにしてもよい。
核酸増幅反応試薬は、後に行われる核酸増幅反応に対応したものとする。たとえば、核酸増幅反応としてPCR法を用いる場合、その核酸増幅反応試薬としては一般的に、プライマー(forwardおよびreverse)、dNTP(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)、耐熱性のTaqDNAポリメラーゼ、その他Mg2+イオンなど必要な要素を含み、リアルタイムPCRにする場合はさらにTaqManプローブ等を含む緩衝液(Tris/HClバッファー等)が用いられる。
核酸増幅反応試薬は、好ましくは、細胞溶解補助および/または細胞由来のPCR反応阻害物質抑制の効果を有する試薬であり、そのような試薬としては例えば、MightyAmp(登録商標) DNA Polymerase Ver.2(タカラバイオ社)、Allele-In-One Human Blood Purification-Opt Lysis Buffer(コスモ・バイオ社)、EzWay(TM)ダイレクトPCRバッファー(テフコ社)、Ampdirect(島津製作所)等が挙げられる。
(封止液送液工程)
図1の(3)に示す封止液送液工程では、流路1に封止液を送液することにより、流路1に残存した核酸増幅反応試薬を押し流すことで、マイクロチャンバー5を満たす核酸増幅反応試薬同士が連通しないよう、流路を封止液で満たすようにする。封止液の送液量は、全てのマイクロチャンバー5の上部の流路の容積を考慮し、それを満たすのに十分な量となるよう、特にマイクロチャンバー内の核酸増幅反応液同士を連通させないため、マイクロチャンバーチップのマイクロチャンバー以外の表面を封止液で被覆することができるよう、適宜調節することができる。
封止液は、送液したときにマイクロチャンバー内の核酸増幅反応試薬と混合しないよう、核酸増幅反応試薬よりも比重が軽いものが適切である。そのような封止液としては、PCR法などの核酸増幅反応に用いられる一般的なものを用いることができ、たとえばミネラルオイルが好ましい。
(任意工程:プレウェット液送液工程)
細胞懸濁液送液工程に先だって、マイクロチャンバーチップ11の表面(マイクロチャンバー5の内面を含む)の濡れ性を改善することなどを目的としたプレウェット液を送付する工程を設けてもよい。マイクロチャンバーチップ11がポリスチレンのような疎水性の材料から形成されている場合、流路1内に細胞懸濁液CLを導入しても、表面張力の関係で細胞懸濁液CLを全てのマイクロチャンバー5内に充填させることができず、複数のマイクロチャンバー5内に気泡が残存してしまう。そのような問題を抑制するため、細胞懸濁液CLをマイクロチャンバーチップ11の表面に展開する前に、予め表面張力の低い有機溶剤、例えばエタノールの水溶液をプレウェット液PLとして、流路1に導入しておくことにより、マイクロチャンバーチップ11の表面の濡れ性を向上させることができる。このようにプレウェット液PLで処理した後、PBS等の生理食塩水または純水を通液してプレウェット液PLを置換、洗浄してから、細胞懸濁液CLを通液するようにすれば、細胞懸濁液CLはほとんど全てのマイクロチャンバー5の内部に入り込み、細胞を効率的に回収することができるようになる。
プレウェット溶液PLは、水よりも表面張力の低い水溶液であれば特に限定されるものではないが、例えば、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類を含む水溶液、好ましくは30%(w/v)以下の濃度のエタノール水溶液や、Tween 20, Triton X、SDS等の界面活性剤を0.01〜1%(w/v)で含む水溶液を用いることができる。
−細胞分析方法−
本発明の細胞分析方法は、(1)細胞懸濁液送液工程、(2)核酸増幅反応試薬送液工程および(3)封止液送液工程を含む本発明の核酸増幅準備方法が行われた流路デバイスを使用して、(4)前記核酸増幅反応試薬に対応した核酸増幅反応を行う工程(核酸族副反応工程)を含む。また、核酸増幅反応としてTaqManプローブを用いて蛍光を測定するような定量的な核酸増幅反応を用いる場合は、その蛍光を測定する工程も含む。さらに、必要に応じて、(1’)前記マイクロチャンバーに収容された細胞を染色し、その結果を取得する工程(染色工程および観察工程)を含んでいてもよい。
また、本発明の細胞分析方法は必要に応じて、上記の核酸増幅反応工程以外の工程を含んでいてもよい。たとえば、本発明の核酸増幅準備方法における細胞懸濁液送液工程(1)の後、核酸増幅反応試薬送液工程(2)の前に、染色工程(1’)およびその観察工程を含んでいてもよく、必要に応じてさらに洗浄工程を行ってもよい。そのような染色工程および観察工程で取得した結果を、核酸増幅工程で取得した結果と対比することは、詳細な細胞の分析を行うことを可能にするため、本発明における好ましい実施形態といえる。このような実施形態では、互いの結果を明確に識別できるようにするため、染色工程において細胞を染色するための(後述する観察工程において発せられる)蛍光と、核酸増幅工程において核酸増幅を検出するための(後述する測定工程において発せられる)蛍光とは異なる種類とする、たとえば極大蛍光波長の異なる蛍光色素を用いるようにすることが好ましい。
(核酸増幅反応工程)
図1の(4)に示す核酸増幅反応工程では、核酸増幅準備方法により、細胞を収容し、核酸増幅反応試薬で満たされ、封止液で封止されたマイクロチャンバー内で、その核酸増幅反応試薬に対応した核酸増幅反応を行い、細胞に含まれる核酸を増幅する。
核酸増幅反応としては様々なものが公知であり、本発明では、反応のために必要な試薬類をマイクロチャンバーに送液することが可能であり、そのマイクロチャンバー内で反応を進行させることが可能な反応であれば特に制限されることなく利用することができる。代表的な核酸増幅反応としては、PCR法、LAMP法などが挙げられる。またPCR法としては、核酸の増幅量を定量的かつ経時的に把握することのできるリアルタイムPCR法、たとえばTaqManプローブ法のような改良法や、核酸がRNAである場合にDNAに逆転写してから増幅するRT−PCR法なども挙げられる。
(任意工程:染色工程)
図1の(1’)に示す染色工程では、蛍光標識抗体や核染色剤が溶解した水溶液である染色液を流路に送液し、所定の時間流路1を満たして、マイクロチャンバーに収容された細胞と染色液を接触させることにより、その細胞が有する抗原にその蛍光標識抗体を結合させるようにする。このような染色工程は、その染色の結果を取得するための観察工程(詳細は後述)とともに、核酸増幅反応工程の前に行うことが好ましい。
細胞が有する抗原は、細胞表面に存在するものであってもよいし、細胞内部(原形質)に存在するものであってもよい。ただし、細胞内部の抗原を免疫染色の対象とする場合は、必要に応じて、細胞に対してあらかじめ浸透化処理をしておくようにする。
また、異なる波長の蛍光を発する複数の種類の蛍光標識抗体を用いて、細胞が有する複数の抗原にそれらの蛍光標識抗体を結合させる多重染色を行うことも可能である。さらに、染色工程では、細胞が有する抗原以外の物質(例えば核)に、抗原抗体反応以外の様式で蛍光物質(例えば核染色剤)を結合させる処理をあわせて行ってもよい。複数の種類の蛍光標識抗体や核染色剤等は、任意の順序で、1種類ずつ順番に細胞と接触させるようにしてもよいし、2種類以上またはすべてを同時に細胞と接触させるようにしてもよい。
染色工程の時間、すなわち細胞と蛍光標識抗体溶液とを接触させる時間は、一般的な蛍光免疫染色を行う場合に準じて、免疫染色が十分に行われるよう適宜調整することができるが、通常は5分〜半日程度とすればよい。
染色工程の温度、すなわち反応温度は、一般的な蛍光免疫染色を行う場合に準じて、免疫染色が十分に行われるよう適宜調整することができるが、通常は4〜37℃程度とすればよい。
染色工程を行った後、必要に応じて洗浄液を添加し、未反応の蛍光標識抗体を除去してから(洗浄工程)、染色された細胞を観察し、観察像を撮影するようにする(観察工程)。蛍光免疫染色された細胞の観察方法は、従来の一般的な観察と同様でよく、蛍光標識抗体に用いられている蛍光物質(蛍光色素)に対応した適切な波長の励起光を照射し、適切なフィルターを用いて不要な波長成分をカットして、目的の抗原を標識する蛍光物質から発せられる蛍光を観測する。
なお、染色工程では必要に応じて、細胞の固定化処理、浸透化処理、ブロッキング処理を同時に行ってもよい。すなわち、蛍光標識抗体や核染色剤とともに、固定化剤、浸透化剤、ブロッキング剤のうち必要なものが溶解した水溶液を送液し、所定の時間流路1を満たして細胞と反応させるようにしてもよい。固定化処理、浸透化処理、ブロッキング処理を染色工程と同時に行わない場合は、それらの処理は例えば試薬収容器20に収納する細胞懸濁液を調製する際に行うようにしてもよい。
(測定工程)
図1の(4)に示す、核酸増幅反応工程と同時またはその後に行われる測定工程は、核酸増幅反応工程において蛍光強度を核酸の増幅量の指標として用いる定量的な核酸増幅反応を用いた場合に行われる工程であって、その蛍光に対応した所定の励起光を照射しながら、各マイクロチャンバーから発せられる蛍光の強度を測定する。たとえば、光学系機構(PMT、PD等)をマイクロチャンバーの配置に沿って走査させながら位置(移動距離)ごとに、フィルターを通過した蛍光の強度を測定することが好ましい。測定対象とする蛍光に応じて、励起光の光源または励起フィルターと蛍光フィルターとを切り替えればよい。所定の塩基配列を有する核酸を含む細胞を収容しており、その核酸が増幅されたマイクロチャンバーの位置では、測定される蛍光強度が高くなる。また、測定工程では必要に応じて、マイクロチャンバーの位置を取得するための反射光、透過光、自家蛍光等を測定してもよい。
(任意工程:観察工程)
図1の(1’)に示す染色工程を行った場合で、細胞分析装置が蛍光顕微鏡に準じた光学系機構を備えている場合は、染色工程の後、核酸増幅反応液送液工程の前にさらに、蛍光顕微鏡で染色された細胞を観察したり、その染色画像を撮影したりする観察工程を行ってもよい。このような観察工程を通じて得られる染色画像からのデータと、定量的な核酸増幅反応を通じて得られる蛍光量のデータを対比することにより、ある特徴を有する細胞の中に特定の遺伝子を有する細胞が含まれているかどうかなど、細胞に関する目的に応じた分析が行うことが可能となる。
(任意工程:洗浄工程)
洗浄工程は、細胞懸濁液、核酸増幅反応試薬、封止液、および必要に応じて用いられる染色液などを送液する工程の後、次の送液を行う前に設けられる工程である。洗浄液を送液して、流路1内に残存する前の工程で送液された液体を洗い流すことにより、後の工程に対する悪影響を排除することができる。洗浄液は、細胞懸濁液等の溶媒として用いられているものと同じPBS等だけであってもよいし、そのPBS等の溶媒に必要に応じて界面活性剤を添加したものであってもよい。洗浄液は、必要に応じて複数回、送液および回収を繰り返してもよい。
(抗原・抗体)
免疫染色の対象とする抗原は特に限定されるものではないが、CTC等の稀少細胞やその他の特徴的な細胞を検出する場合には、そのような細胞と他の細胞と区別するために利用されているマーカー分子を免疫染色の対象に含めることが好適である。マーカー分子には、細胞表面に発現するタンパク質と、細胞内部(細胞質)に発現するタンパク質があるが、本発明ではどちらを対象としてもよい。細胞表面に発現するタンパク質としては、例えば、白血球で陽性となりMCF−7(乳癌細胞)等のCTCで陰性となるCD45、白血球で陽性となりMCF−7等の上皮細胞としての性質を有するCTCで陽性となるEpCAM(Epithelial cell adhesion molecule:上皮細胞接着分子)などが挙げられる。細胞内部に発現するタンパク質としては、例えば、MCF−7等のCTCで陽性となり白血球では陰性となるサイトケラチンが挙げられる。これらの例示した抗原を対象として免疫染色を行った場合に、CD45が陰性で、サイトケラチンが陽性の細胞が検出されれば、その細胞はMCF−7であると判定することができる。
一方、そのような抗原に対する抗体および蛍光標識抗体は公知の手法により作製することができる。例えば、市販されている各種のマーカー分子に対するモノクローナル抗体および蛍光標識キットを用いて、添付されているプロトコールに従い、モノクローナル抗体と蛍光色素のそれぞれが有する所定の官能基同士を所定の試薬の存在下に反応させて結合させることにより、あるいはビオチン−アビジン結合を利用することにより、所望の蛍光標識抗体を作製することができる。
(蛍光物質)
免疫染色のための蛍光物質は特に限定されるものではないが、例えば公知の様々な蛍光色素(分子)を用いることが好適である。免疫染色のための蛍光物質同士の励起光波長および蛍光波長ならびに次に述べる核染色の蛍光波長の関係性を考慮し、適切な複数枚のカットフィルターを用いることでそれぞれの蛍光をうまく測定できるよう、適切な励起光波長および蛍光波長を有する蛍光物質を選択して用いればよい。
一方、免疫染色ではなく核染色のためには、二本鎖DNAにインターカレートすることにより蛍光を発する蛍光色素(分子)を用いることが好適である。そのような蛍光色素は「核染色剤」として公知であり、例えば、細胞膜透過性があり生細胞の核染色が行えるHoechst系色素(Hoechst 33342, Hoechst 33258等)を用いることができる。また、細胞膜透過性がないため生細胞の核染色は行えないが、細胞膜が変質しているため透過可能になっている死細胞の核染色が行えるDAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole)を用いることもできる。
−細胞分析システム
図2[A]および[B]に、本発明の細胞分析システムの実施形態の例を表す模式図を示す。
本発明の細胞分析システムは、上述したような本発明の核酸増幅準備方法および細胞分析方法を実施するためのものであって、核酸増幅準備方法において、細胞懸濁液送液、核酸増幅反応試薬液および封止液を、それぞれに対応した所定の工程において送液するための手段を備える。
本発明の細胞分析システムはさらに、核酸増幅反応が進行したことを示す蛍光および必要に応じて行われる蛍光免疫染色された細胞から発せられる蛍光の強度を測定する手段ならびにそれらの測定結果を統合する手段、蛍光画像を撮影する手段、撮影された蛍光画像を統合する手段などを備えることが好ましい。
すなわち、本発明の細胞分析システムは、核酸増幅準備方法や細胞分析方法に含まれる各工程における処理を遂行するのに必要な送液を行う手段や、核酸増幅反応および必要に応じて行われる蛍光免疫染色に基づいて目的細胞の検出やその発現プロファイリングなどを行うのに必要な情報を取得して分析するための手段を備えるものであり、そのような手段は、例えば以下に記載するような、送液系機構、光学系機構およびそれらの制御手段によって構築することができる。
本発明の細胞分析システム200は、細胞分析装置100、流路デバイス10および試薬収容器20によって構成される。流路デバイス10および試薬収容器20は、システムの運用時に細胞分析装置100(その内部の流路デバイスホルダー160および試薬収容器ホルダー170)にセットして用いられる。
<細胞分析装置>
細胞分析装置100は、流路デバイス10の流路1に各種の液体を送液するための送液系機構110、流路デバイス10のマイクロチャンバー5内に回収され蛍光染色された細胞や、その細胞に含まれる核酸を増幅させた反応生成物を観察するための光学系機構120、流路デバイス10を保持する流路デバイスホルダー160、試薬収容器を保持する試薬収容器ホルダー170、ならびに細胞分析装置100が備える各種の機器類を制御するための制御手段190を備える。送液系機構110および光学系機構120は、任意の位置で液の吸引・吐出および細胞観察を可能にするための、空間的な移動手段を備えることが望ましい。
(マイクロチャンバー温度調節手段)
細胞分析装置100を用いて核酸増幅準備方法を実施した流路デバイス10を使用し、その流路デバイス10を流路デバイスホルダー160にセットしたまま、引き続き核酸増幅反応工程を行う場合、流路デバイスホルダー160は、核酸増幅反応を進行させるために、細胞が収容された各マイクロチャンバーチップの温度を調節するための手段を備えることが好ましい。そのようなマイクロチャンバー温度調節手段は、例えば、ペルチェ素子のような加温と冷却を行う温度調節素子(図示せず)および温度検出素子(図示せず)とを備え、これらは流路デバイスホルダーのマイクロチャンバーチップと接触する部位に設けることができる。そして制御手段190が、温度検出素子が測定したマイクロチャンバーチップの温度を参照しながら、温度調節素子による加温又は冷却によって、マイクロチャンバーチップが所定のタイミングで所定の温度となるように温度制御を実行する。
なお、本発明の実施形態は細胞分析装置100がマイクロチャンバー温度調節手段を備えるものに限定されるものではない。たとえば、本発明の核酸増幅準備方法が行われた流路デバイス10を細胞分析装置100から取り外し、当該装置からは独立した核酸増幅反応用の装置(これも本発明の細胞分析システムの構成要素の一つになり得る)に移し替えて、核酸増幅反応およびその他の工程を行うことも可能である。
(送液系機構)
送液系機構110は、制御手段190の制御により、試薬収容器20に収容されている細胞懸濁液CL、核酸増幅反応試薬RL、封止液SL、必要に応じて用いられる染色液DL、洗浄液WL、プレウェット液PL、その他の試薬類の吸引および吐出を行い、それらの液を流路1に送液するための機構である。
送液系機構110は、例えば、シリンジポンプ、交換可能なチップ、X軸方向(紙面の左右方向)およびZ軸方向(紙面の上下方向)に移動可能なアクチュエーターなどを用いて構築することができる。シリンジポンプは、各工程において用いられる液体を所望の流量で吸引および吐出ができる能力を有する。
具体的には、図2[A]に示すように、供給手段111および送液手段112を個別に備える送液系機構110と、流入口2側にリザーバー4を備える流路デバイス10を用いることができる。この実施形態では、供給手段111は、試薬収容器20に収容されている細胞懸濁液CL等の液体を所定の量吸引した後、リザーバー4で吐出し、それらの液体はリザーバー4内に一時的に貯留される。送液手段112は流出口3に接続され、吸引により、リザーバー4内の液体を所定の流量で流入口2から流路1に導入する。
また、図2[B]に示すように、供給手段および送液手段を兼ね備えた送液系機構110と、流出口3側にリザーバー4を備える流路デバイス10を用いることもできる。この実施形態では、送液系機構110は、試薬収容器20に収容されている細胞懸濁液CL等の液体を所定の量吸引した後、それらの液体を流入口2において所定の流量で吐出し、流路1に直接的に導入する。流路1を通過して流出口3から流出した液体は、リザーバー4内に一時的に貯留することができる。送液により所定の処理が終わった後、送液系機構110は流路1を満たしていた液体を流入口2から吸引して排出する。排出された液体は、試薬収容器20の廃液収納部において送液系機構110から吐出されるようにしてもよい。
(光学系機構)
光学系機構120は、例えば、光源としてのレーザーダイオード(LD)、集光レンズ、ピンホール部材、ダイクロックミラー、蛍光フィルター、光電子増倍管(PMT)などによって構築することができる。LDは、観察の対象とする蛍光物質の励起波長に対応したものとし、必要であれば複数用意してダイクロックミラーで適切なものが照射されるようにしてもよい。蛍光フィルターは、蛍光標識抗体に用いられている蛍光物質の蛍光波長に対応したものとし、必要であれば複数枚用意してフィルター切り替え器で交換しながら用いるようにしてもよい。
光学系機構120はさらに、対物レンズ、対眼レンズ、CCDカメラなどを含む蛍光顕微鏡に準じた形態とし、蛍光染色された細胞を目視で観察するとともに、観察画像を撮影することができるようにすることも可能である。光学系機構120がそのような実施形態でない場合は、細胞分析装置100によって目的細胞を検出した後、当該装置からは独立した蛍光顕微鏡等の観察装置(これも本発明の細胞分析システムの構成要素の一つになり得る)に流路デバイス10を移動させて、染色された細胞の観察や観察画像の撮影などを行えばよい。
細胞分析装置100はさらに、観察の対象としているマイクロチャンバーの位置を特定するための手段を備えていてもよい。例えば、光源からのマイクロチャンバーチップ1に光を照射しながら走査したときに、その透過光または反射光、あるいはマイクロチャンバーチップ1の作製材料が発する自家蛍光の強度が、マイクロチャンバー(凹部)とそれ以外の部位とで相違することを利用して、マイクロチャンバーの位置を特定することができる。したがって光学系機構120は、そのような透過光、反射光または自家蛍光を測定するためのフォトダイオード(PD)のような受光器をさらに含んでいてもよい。マイクロチャンバーの位置に関する情報と、蛍光強度に関する情報とを統合すると、どのマイクロチャンバーに所定の塩基配列を含む細胞または所定の抗原を有する細胞が収容されていたかを正確に特定することができる。さらに、流路デバイス10に基準点(レクチルマーク)を設けておき、目的細胞が存在するマイクロチャンバーの位置の情報をその基準点からの座標として取得しておくようにすれば、流路デバイス10を細胞分析装置100から別の観察装置に移動させたときにも、その情報に基づき目的細胞が存在するマイクロチャンバーを直ちに観察できるようになる。
(制御手段)
制御手段190としては、細胞分析装置100の各種の機器類に接続され、それらの機器類の制御プログラムを実行可能なパーソナルコンピュータを用いることができる。制御プログラムは、パーソナルコンピュータが内蔵する記憶媒体に記憶されていてもよいし、ネットワークまたは取り外し可能な記憶媒体を介してパーソナルコンピュータが利用できる状態に置かれていてもよい。
制御プログラムは、核酸増幅や細胞分析に関する操作を自動化することのできるものであり、例えば、細胞増幅準備のための所定の工程に従って、所定のタイムスケジュールで、細胞懸濁液、核酸増幅反応試薬、封止液などを送液するよう送液系機構を操作したり、所定のタイムスケジュールでマイクロチャンバーを加熱または冷却するようマイクロチャンバー温度調節手段を操作したり、核酸増幅用プローブまたは蛍光標識抗体の蛍光色素に対応した所定の励起光を照射し、そこから発せられた蛍光を測定し、必要に応じて画像を撮影するよう光学系機構を操作したりできるものである。
さらに、制御手段190は、核酸増幅や細胞分析に関して取得されたデータ、例えば核酸増幅後の蛍光強度の測定値(目的細胞の検出に関する蛍光、および任意で行ってもよいマイクロチャンバーの位置特定に関する透過光、反射光または自家蛍光)や、撮影された観察像を記憶したり、それらのデータを解析して必要な情報を導き出したりする機能、そのためのプログラムをさらに有することが好ましい。
<流路デバイス>
流路デバイス10は、マイクロチャンバーチップ11および流路形成部材12によって構築されており、これらによって閉鎖されている空間が、細胞懸濁液等の液体を送液して満たすことのできる流路1となっている。マイクロチャンバーチップ11と流路形成部材12とは、観察やメンテナンスのしやすさの観点から、係合、ねじ固定、粘着等の手段で取り付け・取り外しが可能なようになっていてもよい。
本実施形態におけるマイクロチャンバーチップ11は、前述したような細胞の固相化の構造的手法が用いられている細胞回収用基板に相当する。すなわち、流路1の底面をなすマイクロチャンバーチップ11の内表面、特に底面は、細胞懸濁液CL中の細胞を核酸解析に適した状態で回収することができるよう、マイクロチャンバー5が形成されている。流路1の上流側および下流側の末端付近の天井側、すなわち流路形成部材12(蓋部材12b)には、上記の各種の液体を流入および排出させるための流入口11および排出口12が形成されている。
流路形成部材12は、流路に所定の高さを持たせるための空隙を生み出すとともに流路の平面的な範囲を形作る、流路の側壁を形成する枠部材12aと、枠部材12aの上に載せられ流路の天井を形成する天板部材12bによって構築することができる。天板部材12bは、流出口2と連通している、細胞懸濁液等の液体を一時的に貯留する空間(リザーバー)を備えていてもよい。また天板部材12bは、凹凸のように、液体を流す際にマイクロチャンバー5に細胞が入り込みやすい流れを生じる構造を有してもよい。
マイクロチャンバーチップ11および流路形成部材12は、例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボート、シクロオレフィンコポリマー等のプラスチック、あるいは石英ガラス等のガラスなど、透明な材料で作製されたものが好ましい。図2に示すような細胞分析システム200において蛍光染色された細胞を観察する場合には、細胞分析装置100の光学検出系120によって特定の細胞を標識した蛍光を測定できるよう、少なくとも流路形成部材12のうち天板部材12bに相当する部分は透明な素材で作製する必要がある。また、枠部材12aは、適度な弾性と粘着性を有するシリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン:PDMS等)のような材料で作製されていてもよく、この枠部材12aをマイクロチャンバーチップ11および天板部材12bで挟み込むことによって流路デバイス10を構築するようにしてもよい。
マイクロチャンバーチップ11は、前述したように、細胞が接着しやすい材料で作製してもよい。この場合、マイクロチャンバーチップ11の内表面のマイクロチャンバー5以外の部分および流路形成部材12の内表面は、前述したように、ブロッキング剤等による表面処理を施すことが望ましい。
流路1の高さ(マイクロチャンバーチップ9aと天板部材9cの間隔、すなわち枠部材9bの厚さ)は、50μm〜500μmであることが好ましい。流路1の高さがそのような範囲内であると、流路1内の細胞懸濁液(そこに含まれる細胞)を送液の力で容易に移動させることができるとともに、流路1の細胞による目詰まりが発生しにくいため、細胞を円滑に展開することができる。
マイクロチャンバー5の形状は特に限定されるものではないが、例えば、底面が平坦で側面がテーパー形状である逆円錐台形が好ましい。マイクロチャンバー5の底面の直径および深さは、核酸の解析や染色像の観察に適した数の細胞を回収して収容することができるよう、適宜調節することができる。例えば、1つのマイクロチャンバー5あたり1〜100個の細胞を収容できるよう、底面の直径を20〜500μm、深さを20〜500μmの範囲とすることが好ましい。なお、血液中の種々の細胞(赤血球を除く)の直径は一般的に5〜100μmであり、CTC等の稀少細胞の直径は10〜100μm程度と言われている。また、蛍光染色像の観察時に励起光の光源としてレーザーダイオードを用いる場合、その照射領域(スポット)のサイズは、例えば長径100μm×短径10μm程度の楕円形である。マイクロチャンバー5の底面のサイズは、このレーザーダイオードの照射領域のサイズよりも大きくし、1つのマイクロチャンバー5に光を照射しているときに、隣接するマイクロチャンバー5にもまたがって光が照射されて、複数のマイクロチャンバー5から同時に蛍光が発せられることがないようにすることが適切である。
マイクロチャンバーチップ11の表面上における、複数のマイクロチャンバー5の配置は特に限定されるものではないが、細胞の回収率(懸濁液中の全ての細胞のうちマイクロチャンバー内に回収できた細胞の割合)がなるべく高くなるよう、配列の向きやマイクロチャンバー5同士の間隔を調節されていることが好ましい。例えば、流路1に細胞懸濁液を送液したときに流入口2から流出口3に至るまでのどこか少なくとも1箇所で細胞がマイクロチャンバー5に沈降するよう、マイクロチャンバーを配列させることが好ましい。また、細胞がマイクロチャンバー5に細胞が入り込みやすい流れを生じるように、流路1の天井部は凹凸のような構造を有してもよい。前記凹凸の位置は、例えばマイクロチャンバー5の中心と凹部および凸部の中心とがずれる(垂直線上に来ない)ように調整することができ、そのような位置とすることで細胞懸濁液等の流れが凹部および凸部を境にマイクロチャンバー5方面に変化し、細胞が入り込みやすくなる。
<試薬収容器>
試薬収容器20には、細胞懸濁液、核酸増幅反応試薬、封止液、また必要に応じて用いられる染色液(蛍光標識抗体溶液、核染色剤溶液等)、洗浄液など、核酸の増幅や細胞の分析を行う上で流路1に送液する必要のある各種の液体が収容されている。例えば、封止液、洗浄液など比較的保存性の高い液体は、密封された状態であらかじめ試薬収容器20の所定の部位に収容しておくことが可能であり、細胞懸濁液、核酸反応増幅試薬、染色液など核酸の増幅や細胞の分析を行う直前に調製する必要のある液体は、調製後に試薬収容器20の所定の部位に添加して収容させることができるようにする。洗浄液などのように複数回使用される溶液は、各工程に対応した容量の溶液を別個の部位に収容しておいてもよいし、各工程で同一の組成の溶液を繰り返し使用する場合はそれらの合計の用量の液体を1つの部位に収容しておいてもよい。また、試薬収容器20には必要に応じて、送液後に吸引して流路1から排出させた廃液を貯留する部位を設けておくようにする。
・細胞懸濁液
細胞懸濁液は、例えば、稀少細胞またはその他の目的細胞を含んでいる可能性がある、血液、尿、リンパ液、組織液、体腔液等の検体、あるいはそれらの検体から得られた細胞画分や精製物などの前処理物を、PBS等の適切な溶媒で希釈することにより調製することができる。また、細胞懸濁液は、試験、研究等のために培養した、稀少細胞またはその他の目的細胞の細胞株、あるいは目的細胞を含む細胞集団を、PBS等に分散させて調製したものであってもよい。患者の血中細胞モデルとして、健常者から採取された血中細胞の懸濁液にCTC等の稀少細胞の細胞株を添加したものを、細胞懸濁液として用いてもよい。
[実施例1]
(流路デバイスの作製)
直径100μm、深さ50μmのマイクロチャンバーを20000個を形成したマイクロチャンバーチップ(基板)を作製し、出入口を有する高さ0.1mm、幅15mmの流路を形成できる流路形成部材を組み合わせて流路デバイスとした。一方の出入口をシリンジポンプに連結し、もう一方に試薬を添加するためのリザーバーを形成した。
(細胞懸濁液送液工程)
プレウェット液として30%エタノール水溶液を調製し、シリンジポンプによる吸引で、リザーバー側から1000μL、0.1mL/minの流量で、流路内に導入した。続いて、PBSにて105個/mLのMB231細胞懸濁液を調製し、シリンジポンプによる吸引で、リザーバー側から100μL、0.1mL/minの流量で流路内に導入して、マイクロチャンバー内に細胞を収容した。その後、マイクロチャンバーが形成されている領域全体を顕微鏡で撮影し、各マイクロチャンバー内の細胞の有無を観測した。
(核酸増幅反応試薬送液工程)
核酸増幅反応試薬として、ヒトGAPDH遺伝子を増幅対象とするリアルタイムPCR用の反応試薬(TaqMan、Life technologies社)を200μL調製した(ANTICANCER RESEARCH 28: 921-926 (2008)参照)。プライマー(forward およびreverse)、プローブの塩基配列は下記の通りである。
forwardプライマー: 5' CCCCACACACATGCACTTACG 3'
reverseプライマー: 5' CCTAGTCCCAGGGCTTTGATT 3'
プローブ: 5' (MGB) (minor groove GTG AAC GTG GAT GAA GTTGG (VIC) 3'
上記反応試薬200μLを、シリンジポンプによる吸引で、リザーバー側から0.1mL/minの流量で流路内に導入した。
(封止液送液工程)
ミネラルオイル(MP Biomedicals, Inc. 194836)200μLを、シリンジポンプによる吸引で、リザーバー側から0.1mL/minの流量で流路内に導入した。
(核酸増幅反応工程)
マイクロチャンバー内に細胞および核酸増幅反応試薬が格納され、ミネラルオイルで封止された流路デバイスに対して、95℃で15秒、60℃で1分間の熱反応サイクルを40サイクル行った。その後、全てのマイクロチャンバーに対してVICの蛍光強度を測定した。その結果、細胞が存在していたマイクロチャンバーのうち90%以上でVICによる蛍光を認めた。また、細胞が存在しないマイクロチャンバーではVICによる蛍光は認められなかった。
[実施例2]
上記実施例1における核酸増幅反応試薬送液工程の前に、下記の染色工程および観察工程を追加して行った。
(染色工程)
PE標識抗サイトケラチン抗体(日本BD社)100μLおよびAPC標識抗CD45抗体(ベックマンコールター社)20μLを、1%のTween20を含有するPBS100μLと混合し、その混合液全200μLを、シリンジポンプによる吸引で、リザーバー側から流路内に導入した。
(観察工程)
30分間静置後、PBSを200μL、シリンジポンプによる吸引で、リザーバー側から流路内に導入した。その後、マイクロチャンバーが形成されている領域全体を顕微鏡で撮影し、各マイクロチャンバーのPEおよびAPCによる蛍光強度を測定した。
[実施例3]
MB231癌細胞はEGFRのT790M変異を有さず、H1975癌細胞はEGFR遺伝子のT790M変異を有することが知られている。
まず、PBSにて107個/mLの白血球、103個/mLのMB231および102個/mLのH1975を含有する細胞懸濁液100μLを調製した。この細胞懸濁液と、核酸増幅反応試薬としてEGFRのT790M変異を検出するTaqMan(登録商標) Mutation Detection Assays EGFR_6240_muとを用いたこと以外は実施例1および2と同様の工程を実施した。
その結果、抗サイトケラチン抗体による蛍光(PEによる蛍光)のみを検出したチャンバー数は89個、抗サイトケラチン抗体による蛍光(PEによる蛍光)とEGFR_6240_mu 由来の蛍光(FAMによる蛍光)の両方を検出したチャンバー数は8個、EGFR_6240_mu 由来の蛍光(FAMによる蛍光)のみを検出したチャンバー数は0個であった。この実施例から、染色により多数の白血球から癌細胞を特異的に検出できることに加えて、核酸増幅反応を組み合わせることにより、癌細胞の詳細な情報(遺伝子変異情報)を併せて取得できることが示唆された。
1 流路
2 流入口
3 流出口
4 リザーバー
5 マイクロチャンバー
5a 細胞接着性の底面
10 流路デバイス
11 マイクロチャンバーチップ
12 流路形成部材
12a 枠部材
12b 天板部材
20 試薬収容器
50 細胞
50a 検出対象細胞
50’ 溶解した細胞
CL 細胞懸濁液
DL 染色液
RL 核酸増幅反応試薬
RL’ 蛍光発色した核酸増幅反応試薬(核酸増幅産物溶液)
SL 封止液
100 細胞分析装置
110 送液系機構
110a チップ
111 供給手段
112 送液手段
112a チップ
120 光学系機構
160 流路デバイスホルダー
170 試薬収容器ホルダー
190 制御手段
200 細胞分析システム
配列番号1:ヒトGAPDH遺伝子のリアルタイムPCRのためのフォワードプライマー(実施例1参照)
配列番号2:ヒトGAPDH遺伝子のリアルタイムPCRのためのリバースプライマー(実施例1参照)
配列番号3:ヒトGAPDH遺伝子のリアルタイムPCRのためのプローブ(実施例1参照)

Claims (8)

  1. 細胞を収容し保持することができるマイクロチャンバーが表面に形成されたマイクロチャンバーチップと、その上部に天井を有する流路を形成するための天井形成部材を備えた流路デバイスを用いて、前記マイクロチャンバー内で細胞に含まれる核酸を増幅するための準備方法であって、
    (1)前記マイクロチャンバーに細胞を収容するよう、前記流路に細胞懸濁液を送液する工程、
    (2)前記流路に核酸増幅反応試薬を送液し、すくなくとも前記マイクロチャンバーを核酸増幅反応試薬で満たす工程、および
    (3)前記流路に封止液を送液することにより、前記流路に残存した核酸増幅反応試薬を押し流すことで、前記マイクロチャンバーを満たす核酸増幅反応試薬同士が連通しないよう、当該流路を封止液で満たす工程
    を含むことを特徴とする、核酸増幅準備方法。
  2. 前記マイクロチャンバーの底面が細胞接着性である、請求項1に記載の準備方法。
  3. 前記封止液がミネラルオイルである、請求項1または2に記載の準備方法。
  4. 前記核酸増幅反応試薬が、蛍光強度によって核酸の増幅を定量することのできるリアルタイムPCR法のためのものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の準備方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の核酸増幅準備方法が行われた流路デバイスを使用して、
    (4)前記核酸増幅反応試薬に対応した核酸増幅反応を行う工程
    を含むことを特徴とする、細胞分析方法。
  6. さらに、前記核酸増幅準備方法における工程(2)の前に、
    (1’)前記マイクロチャンバーに収容された細胞を染色し、その結果を取得する工程を含む、請求項5に記載の細胞分析方法。
  7. さらに、前記工程(1')で取得された結果と、前記工程(4)で取得された結果を対比する工程を含む、請求項6に記載の細胞分析方法。
  8. 前記工程(1’)において細胞を染色するための蛍光と、前記工程(4)において核酸増幅を検出するための蛍光が異なる種類のものである、請求項6または7に記載の細胞分析方法。
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