JP2016055178A - 電気刺激治療器 - Google Patents

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Abstract

【課題】線維芽細胞の電気走性を最大化し、且つ細胞***を促すことで、遅延した創傷に加速的な治癒を可能とし、特に慢性創傷の治癒率を大きく改善する電気刺激治療器を提供する。また、小型化が可能な電気刺激治療器であり、在宅での使用が容易となり、安全かつ安心して患者が創傷の治療を行うことを可能とするものである。【解決手段】本発明に係る電気刺激治療器は、創傷の主に増殖期における治癒促進を目的とする電気刺激治療器であって、電源と、当該電源が発生する電流を創部およびその周囲に流すための陽極および陰極と、当該陽極および陰極間を短絡するシャント機構とを備えたものである。【選択図】図1

Description

本発明は、創傷の治癒を促進するための電気刺激治療器に関するものであり、特に、増殖期の治癒過程において効果的な治癒効果を発揮しうる電気刺激治療器に関するものである。
創傷とは、体表組織が損傷され、機能障害を有する病理的状態と定義されている。その治癒過程は大きく4つの期間に分けることができる。出血・凝固期、炎症期、増殖期および再構築期であり、それぞれの期間が重なり合い、影響を及ぼしあいながら、治癒が進行することが一般的である。
急性創傷においては、2〜3週間で上記治癒過程が順次進行し、最終的に自然治癒する。
一方、3週間以上治癒が停滞する慢性創傷においては、自然治癒に移行させるための治療が必要であり、その治療に有力と考えられている一手段が電気刺激治療である。
電気刺激治療の方法や条件に関しては、鋭意研究が行われ、最適な電気刺激治療が模索されている。
また、創傷に苦しむ患者の立場においては、電気刺激治療を受けるために通院することは大きな身体的あるいは精神的負担を伴う場合もあり、在宅において治療が受けられるようにすることも必要であると考えられている。
この電気刺激による治療を在宅においても可能とする一案として、創傷治療キットが提案されている(例えば、特許文献1)。
特表2007−504882
上記特許文献1に示された創傷治療キットは、在宅治療を目的とするものであるものの、電気刺激による創傷治癒を効率よく促進する技術については、十分に検討されていなかった。
特に、創傷治癒において最も重要な期間である増殖期の治癒を促進する技術についての検討は、全く行われていない。
本発明は、創傷治療にとって重要な期間である増殖期の治癒促進を主に図ることで、創傷治療を効果的に促進する電気刺激治療器を提供するものである。また、在宅治療を可能とする電気刺激治療器を提供するものである。
本発明に係る電気刺激治療器は、創傷の主に増殖期における治癒促進を目的とするものであって、電源と、当該電源が発生する電流を創部およびその周囲に流すための陽極および陰極と、当該陽極および陰極間を短絡するシャント機構とを備え、上記陰極を上記創部に装着させ、上記陽極を上記創部の周囲の健常部に装着させて使用することを特徴とするものである。
本発明に係る電気刺激治療器はシャント機構を備えたことで、肉芽組織の基盤となる線維芽細胞を創底に向かわせ、効果的に電気走性させることができる。さらに、微弱電流を使用することで、よりその効果を高めることができる。また、低周波刺激は、線維芽細胞の細胞***を促すことができる。
このように、線維芽細胞の電気走性を最大化し、且つ細胞***を促すことで、創傷治癒を加速させ、特に慢性創傷の治癒率を大きく改善することが可能となる。
また、微弱電流且つ低周波による電気刺激であるため、感電等の事故の心配が無く安全に使用できる。また、電気刺激を使用者が感じることも無く、使用者が安心して活用できる。さらに大型の電源を必要としないため、治療器を小型軽量にすることができる。
このような特長を持つ治療器であるため、在宅での使用が容易となり、通院の身体的、精神的負担を軽減し、患者が創傷の治療に専念することを可能とするものである。
本発明に係る電気刺激治療器のブロック図である。 本発明に係る電気刺激治療器を用いた治療例であり、電気刺激前後における褥瘡の創部面積の経時的変化を示している。 本発明に係る電気刺激治療器の効果を検証するための実験結果であり、電気刺激後にシャントを行った場合である。 本発明に係る電気刺激治療器の効果を検証するための参考実験結果であり、電気刺激後にシャントを行わなかった場合である。 本発明に係る電気刺激治療器の電極の装着状況を説明するための図である。
実施の形態1.
本発明に係る電気刺激治療器の構成、その使用方法、および効果を検証するための実験結果等に関して、以下において、図面を用いて説明する。なお、以下の説明は本発明に関する良好な一例を開示するものであり、本発明が当該実施の形態に限定されるものではない。
まず、図1を用いて、電気刺激治療器の構成について説明する。図1は、電気刺激治療器の構成を説明するためのブロック図である。このブロック図に示された各部の役割等に関して、以下に詳述する。
まず、図1において、電源1は、電池等からなる電力供給源である。電源1は、電気刺激治療器の各部を駆動するために必要な電力を各部に供給する。
定電流回路部2は、負荷抵抗に依存せず、設定された値の電流を供給するための電気回路である。
パルス発生部3は、定電流回路部2が生成する定電流をパルス化するものであり、本実施の形態においては矩形波のパルスを発生する。矩形波のパルスとは、例えば、陽極と陰極間の電位差が正である状態とゼロである状態とを繰り返す階段状のパルスである。パルス発生部3より生成されたパルス電流は、陽極4と陰極5より、創部付近に通電される。
陽極4と陰極5は、創部やその周囲の健常な皮膚に接着可能なものであり、密着等により、安定に接着できる材質からなる。後述するように、陰極5は創部またはその近傍に接着するものであるため、創部への細菌の侵入を防止し、創部を衛生的に保持できるドレッシング材(被覆材)等からなることが好ましい。なお、ここで接着とは、電極と皮膚や創部とが安定に電気的接続が取れるように、しっかりと固定することを意味する。
シャント部6は、陽極4と陰極5とを電気的に短絡するためのスイッチ等の機構を備えたものである。
制御部7は、各部を制御するためのものであり、例えばCPU等である。制御部7は、各種の設定値を保存するためのメモリーである設定部7aを備えている。各種の設定値は予め定められた定数であっても良いし、入力部8から使用者が入力可能な変数であっても良い。
例えば、電流値は所定の範囲内で入力部から入力可能であり、その値が定電流回路部2に伝達され、定電流回路部2はその値に応じた定電流を発生する。
同様にパルス周波数はパルス発生部3に送られ、その周波数のパルスが生成される。
それらの設定値は、液晶パネル等からなる表示部9に表示され、使用者が各種の設定値を知ることができる。
また、制御部7はシャント部6を駆動し、必要な際に陽極4と陰極5とを電気的に短絡することができる。
電気刺激治療器は、図1に示した各部以外に、タイマーや保護回路を備えていても良い。例えば、電気刺激時間を決めるタイマーを設け、所定時間後に自動的に電気刺激が完了する機構を設けても良いし、電気刺激を行っている時間や、電気刺激が終了するまでの時間を表示部9に表示できるようにしても良い。
保護回路としては、身体に異常な電圧が印加されたりすることを防止し、あるいは、電気刺激治療器内で、機器を破損するような通電状況を防止するリミッター的な回路を設けても良い。
なお、図1に示した構成は一例であり、基本的には、パルス電流を通電し、かつ陽極4と陰極5間を短絡できる機能を有するものであれば、どのような構成であっても良い。
次に、電気刺激治療器の使用方法について説明する。
まず、陽極4と陰極5を使用者である患者の身体に接着する。陰極5は創部またはその近傍に接着する。創部を衛生的に保つために、創部全体を覆うドレッシング材を用いることが望ましい。
一方、陽極4は、創部の周囲に接着する。例えば、陰極5の近くの健常な皮膚部に接着する。
次に、パルス電流を陽極4と陰極5間に通電する。パルス電流は、矩形波で良く、電流ゼロと所定の電流値を一定の周期で繰り返すパルス電流である。所定の電流値は、数百μA程度の微弱電流値である。周波数は、1ヘルツから数十ヘルツである。また、矩形波のデューティは50%程度である。
通電時間は、例えば、数10分から数時間程度である。
そして、電気刺激が終了する、すなわち通電が終了するとほぼ同時に、シャント部6により、自動的に陽極4と陰極5とが電気的に短絡される。
以上で電気刺激治療は完了であり、陽極4と陰極5とを患者の身体から取り外す。
この治療を、例えば、毎日一回行う。
(臨床実験)
以上に説明した電気治療器を用いて、慢性創傷に対する臨床実験を行った。この実験は慢性創傷の一つである褥瘡を患う7人の患者に対して、創部面積の経時的変化を調べたものである。
実験結果を図2に示す。横軸は、電気刺激治療を始めた時を0とし、治療開始以前の期間をマイナスの値で、治療開始以降の期間をプラスの値で表している。単位は週である。
縦軸は、各患者の創部の面積であり、単位は平方センチメートルである。
患者ごとに異なるマークでプロットしている。
本臨床実験における電気刺激の条件は、刺激パルスとして、電流刺激強度が80〜90μA、周波数が2ヘルツ、デューティが50%の矩形波である。電気刺激時間は40分であり、刺激終了後に電極間を短絡した。この条件の電気刺激治療を週に6回行った。
いずれの患者においても、電気刺激治療前は、創部の面積の経時的変化はわずかであった。しかし、電気刺激治療を開始してから急速に創部が縮小し、5週間から10週間でほぼ完治した。
このように、本発明に係る電気刺激治療器が創傷の治癒促進に対して、大きな効果を有することを確認した。
次に、本発明に係る電気刺激治療器が創傷の治癒を助長するメカニズムを解明するために行ったいくつかの実験結果について説明する。
(メカニズム検証実験1)
FBS(Fetal Bovine Serum)を10%含有したD−MEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium 培地)で培養したヒト皮膚由来の線維芽細胞(11継代)に微弱電流による電気刺激を6時間実施した。刺激パルスは、電流刺激強度が200μA、周波数2Hz、デューティ ファクター(パルス占有率)が50%の矩形波である。電気刺激終了後に電極間を短絡した。線維芽細胞の動きはタイムラプス顕微鏡により観察した。
図3は、電気刺激開始時より6時間ごとに撮影した顕微鏡写真である。
白色の点線で囲まれた線維芽細胞aおよびbは、電気刺激(通電)を行っている間は、大きくは動いていない。一方、電気刺激後においては、陰極に向かって移動を開始した。観察した線維芽細胞全体の平均値として、電気刺激後18時間で、陰極側に130ミクロン移動した。
このように、電気刺激を受けた線維芽細胞は、刺激終了後から陰極側に移動することが分かった。線維芽細胞は肉芽組織の基盤となる細胞であり、電気刺激後に陰極を施した創部に向かって移動することで、創傷治癒を促進する効果が得られると考えられる。
一方、上記の実験と同様であるが、電気刺激終了後に電極間を短絡しなかった実験についてのタイムラプス顕微鏡写真を図4に示す。
白色の点線で囲まれた線維芽細胞cおよびdは、電気刺激(通電)を行っている間、大きく動かない点については、図3と同様である。しかし、電気刺激後の動きは図3と異なり、線維芽細胞cおよびdは、陰極側に移動しなかった。
図3と図4に示した実験結果から明らかなように、電気刺激終了後に電極間を短絡することで、線維芽細胞の陰極側への移動を助長することが可能となる。
電気刺激終了後に電極間を短絡することによって、電気刺激時に皮膚や皮下組織に蓄積された電荷を放電させることが、線維芽細胞の陰極側への移動、すなわち電気走性を促す効果を生じさせると考えられる。
(メカニズム検証実験2)
次に、電流刺激強度に対する依存性について調べた実験結果を表1に示す。
電気刺激時の電流値は、100、200、および300(μA)である。なお、試料数は8検体である。
評価値として、遊走率を用いた。線維芽細胞は、化学的作用や物理的作用によって様々な方向に移動する。したがって、陽極側に移動する細胞も存在する。陰極側に移動した細胞の平均移動距離を、陽極側に移動した細胞の平均移動距離で除算した値が電気刺激による遊走率である。
電気刺激を行わない場合、すなわち、外部から制御されずに線維芽細胞が自由に動いている状態においては、平均遊走率は0.93であった。一方、電気刺激を与えてやることで、陰極側への移動を促すことができる。ただし、大きな電流刺激強度が効果的ではなく、200μA程度の微弱な電流が大きな効果をもたらすことが分かった。詳細には、50μA以上500μA以下の電流値で効果があり、特に100μA以上300μA以下の電流値が望ましい。
このように、電気刺激終了後に電極間を短絡することは、微弱電流による安定した電気走性を促進する効果もあると考えられる。
(メカニズム検証実験3)
次に、電流パルスの周波数依存性について調べた実験結果を表2に示す。
この実験においては、線維芽細胞の移動(電気走性)だけでは無く、電気刺激に対する細胞数の変化も調べた。初期的な細胞数を同数とし、電気刺激を与え、電気刺激開始から96時間後の細胞数を計数した。なお、試料数は6検体である。
この結果から、電気刺激が細胞***を促進したり、阻害したりする効果を持つことが分かる。2ヘルツにおいては、線維芽細胞の細胞***を促し、電気走性と共に、創傷の治癒に大きな効果を持つことが期待できる。なお、詳細な検討においては、32ヘルツ以下で細胞***を阻害する効果は小さく、32ヘルツ以下の周波数が望ましい。
ただし、周波数があまり小さくなると細胞中での電気分解が発生し、細胞にダメージを与える恐れがあり、周波数は最低でも0.2ヘルツ以上は必要である。
以下、本発明の意義及び効果についてまとめる。
創傷は、軽症の場合、生体の持つ自然治癒力によって、肉芽形成、上皮化といった段階を経て自然治癒するが、褥瘡等の慢性化した場合には、自然治癒力だけでは治癒が停滞することがあり、補完的治療の助けが必要となる。電気刺激は、創傷治療の有力な一手法として期待されている。しかしながら、その治癒に至るメカニズムは十分に解明されていなかったため、電気刺激方法や細かな条件については、試行錯誤が続いていた。例えば、ある患者に対して有効な刺激方法や条件が、他の患者に対してはほとんど治癒効果が見られず、多くの患者や症例に対して安定した治癒効果をもたらす刺激方法や条件を模索しているのが現状であった。
そこで、本発明においては、創傷治癒のメカニズムを解明することで、多くの患者や症例に対して治癒効果をもたらす最適な電気刺激治療のあり方を明らかにし、それに基づいて、創傷治癒を効果的に促進する電気刺激治療器の発明に至った。
創傷の治療において、もっと重要な期間である増殖期の治癒は、肉芽組織の基盤となる線維芽細胞が重要な役割を持つことは知られており、電気刺激により、線維芽細胞を創部へ電気走性させることで、治癒を促進させる効果が生じることは既知であった。しかし、その詳細なメカニズムは知られていなかった。
本発明の起点は、この詳細なメカニズムを解明することにあった。さらに述べると、本発明の原点は、イモリとカエルの再生能力の違いが損傷電流の大きさに起因することを発見したことにある。イモリは、例えば下肢を切断しても下肢を元通りに再生する能力を持つ。一方、同じ両生類でありながら、カエルはそのような再生能力を持っていない。イモリの場合には、創部付近に生じる損傷電流がカエルに比べて大きく、それが再生能力の差を生み出していると考えられる。もちろん、イモリの創部付近に生じる損傷電流が大きな電流であると言っても、生体内で発生する電流であり、微弱電流である。したがって、電気刺激に必要な電流は大きな電流である必要は無く、刺激方法を工夫すれば、微弱な電流で効果的に治癒を促進することができるはずである。そこで、最適な刺激方法を得るために、治癒効果が生じるメカニズムを明らかにした。
すなわち、電気刺激を行っている際に線維芽細胞が陰極側に移動する効果よりも、刺激終了後に線維芽細胞が陰極側に移動する効果が本質的であり、その本質的効果を最大限にするためには、刺激中に皮膚に蓄積された電荷を放電させてやることが必要であることを明らかにした。
そして、刺激強度としては、イモリの創部に発生する損傷電流と同様に、大きな電流は必要では無く、200μA程度の微弱電流がむしろ効果的な電気走性を生じさせることについても検証した。
さらに、低周波の電気刺激は線維芽細胞の細胞***を促進する効果を持つ可能性が有ることも明らかにした。
以上の基礎的な検証により、印加電極間の短絡機構、いわゆるシャント機構が電気刺激治療器に不可欠であることを見出した。そして、電気刺激としては、低周波の微弱電流が最適であり、このような電気刺激を発生する治療器を発明するに至った。
この電気刺激治療器は、以下に示す多くの優れた特長を有している。
第一に、シャント機構を備えたことで、肉芽の基盤となる線維芽細胞を創底に向かわせ、効果的に電気走性をさせることができる。さらに、微弱電流を使用することで、よりその効果を高めることができる。また、低周波刺激は、線維芽細胞の細胞***を促すことができる。
このように、線維芽細胞の電気走性を最大化し、且つ細胞***を促すことで、遅延した創傷に加速的な治癒を可能とし、特に慢性創傷の治癒率を大きく改善することに貢献できる。
また、微弱電流による電気刺激であるため、感電等の事故の心配が無く安全に使用できる。また、電気刺激を使用者が感じることも無く、使用者が安心して使用できる。さらに大型の電源を必要としないため、治療器を小型軽量にすることができる。
このような特長を持つ治療であるため、在宅での使用が容易となり、安全かつ安心して患者が創傷の治療を行うことを可能とするものである。
実施の形態2.
本実施の形態においては、実施の形態1で行ったメカニズム検証実験を、さらに詳細に行い、本発明に係る電気刺激治療器が創傷の治癒を助長するメカニズムの解明をさらに進めた。
(メカニズム検証実験4)
実施の形態1で行ったメカニズム検証実験1および2に関し、さらに詳細な実験を行った。
メカニズム検証実験1および2と同様に、FBS(Fetal Bovine Serum)を10%含有したD−MEM培地(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium 培地)で培養したヒト皮膚由来の線維芽細胞(11継代)に微弱電流による電気刺激を行った。電気刺激は8時間実施した。刺激パルスは、周波数2Hz、デューティ ファクター(パルス占有率)が50%の矩形波である。電気刺激終了後に電極間を短絡した。線維芽細胞の動きはタイムラプス顕微鏡により観察した。
電気刺激時の電流値は、200、400、および600(μA)であり、それぞれ、刺激直後に電極間を短絡した場合と、短絡しなかった場合の平均遊走率を表3に示す。遊走率は、電気刺激終了直後、電気刺激終了から8時間後、および電気刺激終了から16時間後に測定した。比較のため、電気刺激を行わなかった試料の測定結果も示す。
電気刺激が200μAの時、電気刺激終了直後の遊走率は、電気刺激を行わなかった場合に比べて、かなり大きな値を示した。そして、いずれの電流強度で電気刺激を行った場合でも、刺激直後に電極間を短絡した場合には、その後も遊走率は維持された。一方、刺激直後に電極間を短絡しなかった場合には、その後の遊走率は、時間とともに減少傾向を示した。
このように、電気刺激が200μAの時には、線維芽細胞を陰極側へ移動を促す効果が明確に確認できた。また、刺激直後に電極間を短絡することで、その効果を持続できることが確認できた。
一方、強い電流強度で電気刺激を行った場合には、電気刺激を実施しなかった場合と大きな差は生じなかった。
なお、メカニズム検証実験1や2においては、刺激直後に電極間を短絡した場合には、電気刺激終了後に、時間とともに、線維芽細胞が陰極側へ移動する様子が観測されたが、今回の実験では、電気刺激終了時点で線維芽細胞が陰極側へ移動しており、その後も、陰極側へ大きく移動していた。これは、電気刺激時間が異なることも一因と考えられるが、細胞の状態が異なることも大きな要因と推測される。
以上のように、実験結果に細かな違いがあるものの、電気刺激が200μAの時に最大の効果が得られ、また、刺激直後に電極間を短絡することが必要であることに関しては、同様の結果であった。したがって、細胞の個別特性等に差異があったとしても、刺激直後に電極間を短絡することが必要であること、および、線維芽細胞に電気刺激を与え、その動きを観察することで、最適な電流刺激強度を得ることができることを確認できた。
電気刺激を行えば、必ず創傷治癒を促進できるものではない。強すぎる電流は創部への線維芽細胞の移動を抑制することになる。したがって、細胞レベルで最適な電流刺激強度、すなわち最適な電流刺激強度や最適範囲を確認できる意義は大きい。
なお、表3で示した実験結果において、得られた平均値間の有意差を確認するため、多重比較とt検定を行った。
通電終了時における遊走比率は、コントロール群が0.95±0.33、200μA群が1.34±0.51、400μA群が1.04±0.15、600μA群が1.00±0.15、であり、200μA群とコントロール群、400μA群、600μA群との間に有意差が認められた(200μA群 vs コントロール群;p=0.015、200μA群 vs 400μA群;p=0.02、200μA群 vs 600μA群;p=0.005)。この結果から線維芽細胞の電気走性は200μAの強度で最大となり、400μAの強度では電気走性が抑制される結果であった。また、400μA群と600μA群との間に有意差はみられないが、遊走比率で400μA群は1.04±0.15、600μA群は1.00±0.15であり、600μA群では400μA群よりも遊走比率が低くなっている。そのため、電流強度が強すぎる場合は電気走性が抑制されることが示唆される。これらのことから、線維芽細胞の電気走性に最適な電流強度は200μAであると確認できた。
また、電気刺激終了16時間後において、200μAの刺激を与えた後に電極を短絡したものと、400μAの刺激を与えた後に電極を短絡したものとのp値は0.07となり、有意傾向があることが分かった。また、電気刺激終了後16時間後において、200μAの刺激を与えた後に電極を短絡したものと、600μAの刺激を与えた後に電極を短絡したものとのp値は0.03となり、有意差があることを確認できた。
このように、この細胞レベルでの実験が、最適な電流刺激強度や最適範囲を得るために有効であることを、統計面からも確認できた。
(メカニズム検証実験5)
実施の形態1で行ったメカニズム検証実験3に関し、線維芽細胞を用いて、さらに詳細な実験を行った。
播種から24時間後に1時間の電気刺激を与え、電気刺激終了後に電極間を短絡した。さらに、播種から48時間後、および72時間後にも1時間の電気刺激を与え、電気刺激終了後に電極間を短絡した。そして、播種から96時間後の細胞数をカウントし、播種から24時間後時点の細胞数との比(細胞数比)を得た。結果を表4に示す。
0.5Hzから8Hzの範囲で、電気刺激を行わない場合に比べて、より高い細胞の増加率が得られた。すなわち、0.5Hzから8Hzの範囲の電気刺激により、線維芽細胞の細胞***を促す効果があることを確認できた。特に、0.5Hzから6Hzの範囲で、より高い効果を確認できた。
実施の形態3.
本実施の形態においては、本発明に係る電気刺激治療器において使用する電極について述べる。
通常、電気刺激の電極としては、円盤状の電極等が一般的である。しかし、創傷患者の皮膚創部は、表皮等の防御層(バリア)が無い脆弱な状態であり、したがって、創部にできるだけ影響を与えない電極を用いる必要がある。特に、創部に用いる陰極の電極に関しては、創部に優しい電極が必須となる。
陰極の電極の形状は、円柱形状が望ましい。直径は0.5mmから2mmが良く、長さは15mmから25mmが良い。電極の先端にはR加工を行う。このように、ニードル状の先端にR加工を施した電極を用いる。
ニードル状の電極を用いる第一の理由は、創部全体を覆うドレッシング材(創傷被覆材)に電極を差し込むことで、容易にドレッシング材を電極に置き換えることができるためである。ドレッシング材は複数層からなり、ニードル状であれば、その層間に容易に挿入できる。そして、電気刺激を行う長い時間、ドレッシング材の層間に電極を安定に保つことができる。
また、先端にはR加工を行うのは、皮膚の損傷やドレッシング材(ガーゼを含む)の破損を防止するためである。
電極を装着した状態を図5に示す。10がニードル状の陰極電極、11がガーゼ(ドレッシング材)、12が陽極電極である。
ニードル状の電極を用いる第二の理由は、電極の役割をもつドレッシング材との接触面積を拡大させるためである。創部は極めて脆弱であり、ドレッシング材を介しているとはいえ、電極と接触することで、アレルギー的な症状や、後述するガスの発生による創部の損傷が生じる可能性がある。ドレッシング材にニードル状の電極を挿入することで、創部との接触面積をできるだけ拡大させ、電流を局所に集中させないことにより、このような問題を抑制することができる。
陰極の電極の材料としては、銀の表面に塩化銀メッキをしたものを用いる。電気刺激中に、水の電気分解等により、創部に損傷を与える微量な水素ガスや酸素ガス、オゾン等が発生することを抑制するためである。
1.電源
2.定電流回路部
3.パルス発生部
4.陽極
5.陰極
6.シャント部
7.制御部
8.入力部
9.表示部
10.陰極電極
本発明に係る電気刺激治療器は、 創傷の主に増殖期における治癒促進を目的とする電気刺激治療器であって、0.5ヘルツ以上且つ8ヘルツ以下のパルス電流を発生する定電流パルス電源と、当該電源が発生する電流を創部およびその周囲に流すための陽極および陰極と、当該陽極および陰極間を短絡するシャント機構とを備え、上記陰極を上記創部に装着させ、上記陽極を上記創部の周囲の健常部に装着させて使用し、上記パルス電流の値は、線維芽細胞に電気刺激を与え、当該電気刺激が終了し、さらに上記陽極および陰極間を短絡した後のその動きを観察することで決定することを特徴とするものである。

Claims (6)

  1. 創傷の主に増殖期における治癒促進を目的とする電気刺激治療器であって、
    電源と、
    当該電源が発生する電流を創部およびその周囲に流すための陽極および陰極と、
    当該陽極および陰極間を短絡するシャント機構と、
    を備え、
    上記陰極を上記創部に装着させ、
    上記陽極を上記創部の周囲の健常部に装着させて使用する
    ことを特徴とする電気刺激治療器。
  2. 上記電源は、定電流パルス電源である
    ことを特徴とする請求項1に記載の電気刺激治療器。
  3. 上記電源は、0.5ヘルツ以上且つ8ヘルツ以下のパルス電流を発生する定電流パルス電源である
    ことを特徴とする請求項2に記載の電気刺激治療器。
  4. 上記パルス電流の値は、線維芽細胞に電気刺激を与え、その動きを観察することで決定する
    ことを特徴とする請求項3に記載の電気刺激治療器。
  5. 上記陰極は、先端にRを設けたニードル形状である
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気刺激治療器。
  6. 上記陰極は、銀の表面に塩化銀メッキを設けた
    ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の電気刺激治療器。
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