JP2016030822A - 強化繊維樹脂複合体およびそれを用いた補強された構造物の製造方法 - Google Patents

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Ryosuke Nakao
亮介 中尾
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Koji Arimitsu
晃二 有光
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Abstract

【課題】貼付可能なプリプレグとして適しかつ貯蔵安定性に優れた強化繊維樹脂複合体を提供する。
【解決手段】本発明の強化繊維樹脂複合体は、樹脂組成物が強化繊維樹脂に含浸されたものである。樹脂組成物は、エポキシプレポリマー化合物(a)、塩化ビニル系樹脂(b)、および未反応の潜在性エポキシ硬化剤(c)を含む。塩化ビニル系樹脂(b)は、エポキシプレポリマー化合物(a)と相溶しているか、または、エポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤されている。樹脂組成物中、塩化ビニル系樹脂(b)は、エポキシプレポリマー化合物(a)100重量部に対し、1重量部以上70重量部以下含ませることができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、強化繊維樹脂複合体に関する。より具体的には、本発明は、コンクリート補修に適用可能なプリプレグに関する。
さらに、本発明は、当該強化繊維樹脂複合体を用いた構造物の製造方法に関する。より具体的には、本発明は、プリプレグを用いたコンクリート構造物または配管の補修工法に関する。
エポキシ樹脂は、その硬化物が、機械的特性、電気的特性、熱的特性、耐薬品性、接着性等の性能に優れるため、非常に幅広い用途に利用されている。たとえば、電気電子用の絶縁材、接着剤、土木建築用等の塗装剤、パテ、車両構造部材用等の強化繊維複合体のマトリックス樹脂等の用途が挙げられる。
現在主流となっているエポキシ樹脂組成物の態様は、使用時にエポキシ樹脂と硬化剤の二液を混合する、いわゆる二液性である。二液性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤を別々に保管され、使用の都度、両者を計量および混合する必要があるため、両者を予め多量に混合してストックしておくことができない。したがって、配合作業の頻度は必然的に多くなり、作業能率の低下および歩留まりの悪化を免れない。
また、二液性エポキシ樹脂組成物は室温環境下で硬化可能であるが、硬化時間が長いという問題があった。特に、土木建築などの外気温の影響を受ける用途に利用される場合、外気温が低いと硬化までに非常に長い時間を要し、このため、養生のためのシート被覆まで要するといった問題もあった。
これらの問題を解消する目的で、一液性のエポキシ樹脂組成物が提案されている。一液性エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と潜在性硬化剤との混合系であり、潜在性硬化剤としては、ジシアンジアミド、BF−アミン錯体、変性イミダゾール化合物、オニウム塩系重合開始剤などの化合物、および、これら化合物または二液性でも使用可能な硬化剤化合物を、マイクロカプセル化または包接化合物化したものが挙げられる。
エポキシ樹脂の用途の1つである強化繊維複合体は、エポキシ樹脂組成物を完全硬化させる前段階において、プリプレグと称される、樹脂組成物が強化繊維に含浸されかつ半硬化された状態で取り扱われることが知られている。このようなプリプレグにおいては、一液性のエポキシ樹脂組成物がマトリックス樹脂として採用される場合が多い。
たとえば、特開2007−270136号公報(特許文献1)には、オニウム塩系熱カチオン重合開始剤を硬化剤として用いた、加熱圧縮成形用シートモールディングコンパウンド(SMC)成形材料が開示され、このSMC成形材料が、金型温度130〜160℃、型内圧力5〜10MPa、成形時間1〜3分といった短時間での成形が可能であることが示されている。
特開平01−297532号公報(特許文献2)には、コンクリート構造物の補強用途に炭素繊維プリプレグを用いることが開示されている。特許文献2では、炭素繊維プリプレグ中に含まれる硬化剤としてジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルメタンが挙げられ、−20℃〜0℃で保管されることが記載されている。
また、プリプレグとして必要な粘着性を有する半硬化状態を得るためには、たとえば特開平11−181245号公報(特許文献3)に記載の加熱圧縮成形材料組成物のように、アクリル系樹脂の粉末を増粘剤として用いること一般的である。
なお、特開昭55−127469号公報(特許文献4)では、エポキシプレポリマー化合物と、エポキシプレポリマー化合物に対して分散性のポリ塩化ビニルと、光重合開始剤とを含む被覆用組成物が開示されている。この被覆用組成物は、塗布後、光照射によってタックフリーの状態にまで硬化し、その後、焼き付けによってポリ塩化ビニルを融解させることが記載されている。
特開2007−270136号公報 特開平01−297532号公報 特開平11−181245号公報 特開昭55−127469号公報
特許文献1のSMC成形材料では、半硬化状態を得るために、70〜90℃雰囲気下で20分〜1時間処理し、オニウム塩系熱カチオン重合開始剤を反応させている。このため、活性化した開始剤がプリプレグに残留する。つまり、十分な貯蔵安定性が得られない。特に土木建築用途のように、数ヶ月に亘る室温保管および屋外使用を前提としたプリプレグとしての適用は実質的に不可能である。
特許文献2に記載の炭素繊維プリプレグは、保管温度として−20℃〜0℃程度という低温が必要となる。したがって、土木建築用途で前提とされる室温保管には耐えることができないため、貯蔵安定性が得られないことは明らかである。土木建築用途のように広大な面積を処理するためのプリプレグを想定した場合、そのような処理面積に対応させるためロール状にして低温条件下で保管するとしても、必要となる保管庫の容量は膨大であり、低温維持のための光熱費および低温保存状態を維持した搬送を考慮すると、実用性でない。
特許文献3に記載の加熱圧縮成形材料組成物は、25℃条件下で6日間程度の保存環境には耐えられるが、土木建築用途のように、屋外での保管が前提とされ、数カ月に亘って柔軟性を維持できることが必要とされるプリプレグとしての適用は実質的に困難である。
特許文献4に記載の被覆用組成物は、光照射とその次の融解と供されるが、最初の光照射では、開始剤を分解させてエポキシプレポリマー物質の重合を開始し、タックフリーにする必要がある。つまり、粘着性を持たない状態にすることが必要である。そして、このようなタックフリーの状態を得るために、ポリ塩化ビニルをエポキシプレポリマー物質に膨潤されていない分散状態で含ませる必要がある。したがって、貼付可能なプリプレグを構成することは不可能である。
そこで本発明の目的は、貼付可能なプリプレグとして適した強化繊維樹脂複合体であって貯蔵安定性に優れたものを提供することにある。
本発明者は、鋭意検討の結果、エポキシプレポリマー化合物に塩化ビニル系樹脂を相溶または膨潤の状態で含ませ、かつ、潜在性硬化剤を不活性状態で含ませることにより、上記の目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
(1)
本発明の強化繊維樹脂複合体は、樹脂組成物が強化繊維樹脂に含浸されたものである。樹脂組成物は、エポキシプレポリマー化合物(a)、塩化ビニル系樹脂(b)、および潜在性エポキシ硬化剤(c)を含む。塩化ビニル系樹脂(b)は、エポキシプレポリマー化合物(a)と相溶しているか、または、エポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤されている。
上記において、相溶とは、エポキシプレポリマー化合物(a)と塩化ビニル系樹脂(b)とが分子レベルで完全に混ざり合うことをいう。膨潤とは、塩化ビニル系樹脂(b)の分子間にエポキシプレポリマー化合物(a)が入りこみ、分子間距離を広げていることをいう。膨潤した塩化ビニル系樹脂(b)は、通常、粒子状を呈する。
この構成により、強化繊維樹脂複合体は、貼付可能なプリプレグとして適したものとなり、かつ貯蔵安定性にも優れる。具体的には、強化繊維樹脂に含浸された樹脂組成物において、塩化ビニル系樹脂(b)が用いられるため、強靱性および低コスト性を有するプリプレグとして適する。また、塩化ビニル系樹脂(b)は、強化繊維樹脂複合体の完全硬化時に、潜在性エポキシ硬化剤(c)による硬化作用の一部の代替、または当該硬化作用の補助を担う場合がある。
その塩化ビニル系樹脂(b)は、エポキシプレポリマー化合物(a)と相溶しているか、または、エポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤されていることにより、対象物に貼付可能な粘着性を有する。さらに、潜在性エポキシ硬化剤(c)を含ませる(つまり、活性化状態にある硬化剤が実質的に含まれていない)ことにより、貯蔵安定性にも優れる。
(2)
樹脂組成物中、塩化ビニル系樹脂(b)は、エポキシプレポリマー化合物(a)100重量部に対し、1重量部以上70重量部以下含ませることができる。
これによって、強化繊維樹脂複合体は、貼付可能なプリプレグとしてより適したものとなる。具体的には、1重量部以上の含量であることにより、強靭性および低コスト性が得やすくなるとともに、取り扱いに適した強すぎない粘着性を得やすい。100重量部以下の含量であることにより、用途に適した弱すぎない粘着性を得やすい。
(3)
塩化ビニル系樹脂(b)の平均重合度は、400以上1500以下であってよい。
平均重合度が400以上であることにより、好ましい物性(たとえば強靭性)を得やすく、適切な添加量で用途に適した粘着性を得やすい。平均重合度が1500以下であることにより、エポキシプレポリマー化合物に対し、相溶または膨潤の態様を容易に得ることができる。
なお、平均重合度とは、塩化ビニル系樹脂をテトラヒドロフランに溶解させ、濾過により不溶成分を除去した後、濾液中のテトラヒドロフランを乾燥除去して得た樹脂を試料とし、JIS K−6721「塩化ビニル樹脂試験方法」に準拠して測定される平均重合度をいう。
(4)
樹脂組成物中、潜在性エポキシ硬化剤(c)は、前記エポキシプレポリマー化合物(a)100重量部に対し、0.01重量部以上5重量部以下含ませることができる。
0.01重量部以上の含量であることにより、潜在性エポキシ硬化剤の効果を得やすい。5重量部以下であることにより、潜在性エポキシ硬化剤の効果を得る効率性が良く、低コスト性の面でも優れる。
(5)
強化繊維樹脂複合体を構成する樹脂組成物は、30℃において500Pa・s以上8000Pa・s以下、80℃において1Pa・s以上500Pa・s以下の粘度を有するものであることが好ましい。
30℃で代表される作業環境において、粘度を500Pa・s以上にすることによって、強化繊維樹脂複合体からの液成分の滲出を抑制し、適度な離型性を確保することができる。一方、粘度を8000Pa以下にすることによって、用途に適した表面粘着性を得ることができる。
なお、上記(5)における粘度とは、粘弾性測定装置(MCR102 Anton Paar社製)を使用し、平行平板の半径を25mm、平行間距離1mm、測定周波数0.5Hz、温度を2℃/分で昇温させた際の、複素粘性率ηから求めた値を言う。
(6)
強化繊維樹脂複合体はシート状に形成され、少なくとも一方の面に離型シートが積層されていることが好ましい。
これによって、強化繊維樹脂複合体を、離型シートを介してスタックまたは巻き取りすることが可能である。したがって、保存時および搬送時など、強化繊維樹脂複合体の使用に供されない時の取り扱いに優れるとともに、離型シートを剥がすことによって使用に供することができる。
(7)
潜在性エポキシ硬化剤(c)は、カチオン重合開始剤であることが好ましい。
カチオン重合系は酸素阻害を受けないため、強化繊維樹脂複合体の完全硬化時において、屋内外環境(空気環境)下での表面硬化性に優れるとともに、硬化収縮が小さいため貼付対象への密着性に優れ、さらに、硬化効率に優れるため作業効率が良い。
(8)
潜在性エポキシ硬化剤(c)は、90℃以上200℃以下の温度で反応する熱重合開始剤であってよい。
熱重合開始剤であることにより、強化繊維が透明か否かに関わらず、強化繊維樹脂複合体の完全硬化反応が可能となる。90℃以上であることにより、屋外での保存にも適し、保存のために特別な温度調整装置を用いる必要がないため、貯蔵安定性に優れる。200℃以下であることにより、比較的温和な条件で完全硬化させることが可能であるとともに、たとえエポキシプレポリマー化合物に低沸点物質が含まれていても、気泡を生じさせることなく完全硬化させることができる。
(9)
潜在性エポキシ硬化剤(c)は、光重合開始剤であってよい。
これによって、温度に関係なく保存を行うことができる点で、貯蔵安定性に優れる。
(10)
潜在性エポキシ硬化剤(c)は、熱重合開始剤と光重合開始剤との両方を含むことができる。
これによって、強化繊維樹脂複合体の完全硬化時に、組み合わせ重合反応系が構築されるため、良好な硬化性を得ることができる。このため、強化繊維樹脂複合体が大型の場合にも好ましく適応させることができる。
(11)
潜在性エポキシ硬化剤(c)は、下記一般式(I):
(式中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R,R’,R’’は、互いに同じまたは異なっていてよい、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基または置換されていてよいフェニル基を表し、Xは、ハメット酸度関数が−12以下の超強酸のアニオンを表す。)
で表される熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤であってよい。
この場合、上記式(I)で表されるスルホニウム化合物が酸を効率的に発生させることができるため、カチオン重合の反応効率が良い。なお、熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤とは、熱またはエネルギー線をトリガとして超強酸を発生させる物質であり、酸をトリガとして自己触媒的に分解し、酸濃度を非線形的に増大させる酸増殖剤とは異なる。
さらに、当該スルホニウム化合物は、他の重合開始剤と組み合わせることにより、強化繊維樹脂複合体の完全硬化時に、フロンタル重合系を構築することができる。たとえば、当該他の重合開始剤による反応熱により当該スルホニウム化合物の熱分解および酸の発生を誘導し、自己促進的に重合反応を伝播させることができる。したがって、繊維樹脂複合体の厚みが大きい場合も、良好な硬化性を発揮することができる。
(12)
本発明の強化繊維樹脂複合体は、エポキシプレポリマー化合物(a)と塩化ビニル系樹脂(b)とを加熱混合して得られる、塩化ビニル系樹脂(b)がエポキシプレポリマー化合物(a)と相溶した、またはエポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤された、加熱混合樹脂に対して、潜在性エポキシ硬化剤(c)を不活性に維持する条件下で、当該潜在性エポキシ硬化剤(c)を添加して得られる流動性硬化性樹脂組成物を、強化繊維に含浸させることによって得られる態様を有する。
このように、本発明の強化繊維樹脂複合体は、塩化ビニル系樹脂(b)が、エポキシプレポリマー化合物(a)と相溶しているか、または、エポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤されていることにより、対象物に貼付可能な粘着性を有する。さらに、潜在性エポキシ硬化剤(c)を積極的に活性化させる工程を経ずに得られる物であるため、貯蔵安定性にも優れる。
(13)
本発明の補強セメント系構造物は、上記(1)から(12)の強化繊維樹脂複合体が完全硬化された完全硬化体と、当該完全硬化体が表面に固着されたセメント系構造物と、
を含む。
上記(1)から(12)の強化繊維樹脂複合体が貼付性および貯蔵安定性に優れるため、セメント系構造物の表面に貼付され完全硬化された上記のセメント系構造物は、好ましく補強されている。
なお、本発明において、補強とは、セメント系構造物に生じた異常に対する修繕補強と、セメント系構造物に生じうる異常の発生を防ぐ予防補強との両方を含む。
(14)
本発明の強化繊維樹脂複合体の製造方法は、加熱混合工程と、硬化剤添加工程と、含浸工程とを含む。
加熱混合工程では、エポキシプレポリマー化合物(a)と塩化ビニル系樹脂(b)とを加熱混合し、加熱混合樹脂を得る。加熱は、塩化ビニル系樹脂(b)がエポキシプレポリマー化合物(a)と相溶した状態、またはエポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤された状態となるまで行う。
硬化剤添加工程では、加熱混合樹脂に、潜在性エポキシ硬化剤(c)が添加された、流動性硬化性樹脂組成物を得る。この場合、潜在性エポキシ硬化剤(c)を不活性に維持する条件下で添加する。
含浸工程では、流動性硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸させ、強化繊維樹脂複合体を得る。
上記の構成により、貼付可能なプリプレグとして適し、かつ貯蔵安定性にも優れる強化繊維樹脂複合体が得られる。塩化ビニル系樹脂(b)は、エポキシプレポリマー化合物(a)と相溶しているか、または、エポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤されていることにより、強化繊維樹脂複合体の表面に適切な粘着性を付与することができる粘度に増粘することができる。さらに、潜在性エポキシ硬化剤(c)を、それが不活性の条件下で添加し、潜在性エポキシ硬化剤(c)を積極的に活性化する工程を含まないため、貯蔵安定性にも優れた強化繊維樹脂複合体を得ることができる。
なお、潜在性エポキシ硬化剤(c)に熱重合開始剤が含まれていない場合、加熱混合工程および硬化剤混合工程は、同時に行われてもよいし、この順で別々に行われてもよい。潜在性エポキシ硬化剤(c)に熱重合開始剤が含まれている場合、加熱混合工程および硬化剤混合工程は、この順で別々に行われる。
(15)
塩化ビニル系樹脂(b)は粒子状であることが好ましい。
これによって、加熱混合工程において、塩化ビニル系樹脂(b)がエポキシプレポリマー化合物(a)と相溶した状態、またはエポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤された状態を得やすい。また、ハンドリング性にも優れる。
加熱混合工程では、加熱混合樹脂を、希釈剤により粘度調整されたものとして得てもよい。たとえば、エポキシプレポリマー化合物(a)として低分子量のエポキシ化合物(たとえばモノマー、オリゴマー)の使用割合が小さい場合または使用しない場合、塩化ビニル系樹脂(b)として重合度の高いものを使用する場合または使用割合を大きくする場合に、希釈剤を用いることができる。これによって、含浸工程を容易に行うことができる。
(17)
潜在性エポキシ硬化剤(c)が少なくとも熱重合開始剤を含む場合、硬化剤添加工程において、加熱混合樹脂を潜在性エポキシ硬化剤(c)の反応温度より低い温度まで冷却し、その後、潜在性エポキシ硬化剤(c)を添加する。
このように、加熱条件に供される製造工程を含んでいながら、熱重合開始剤が未反応の状態で強化繊維樹脂複合体を得ることができる。
(18)
含浸工程での温度条件下での前記流動性硬化性樹脂組成物の粘度が、1Pa・s以上500Pa・s以下であることが好ましい。
このような粘度に増粘することによって、強化繊維への樹脂含浸を容易に行うことができる。
(19)
本発明の補強されたセメント系構造物の製造方法は、貼付工程と、硬化工程とを含む。
貼付工程においては、上記(1)〜(13)の強化繊維樹脂複合体を、セメント系構造物の表面に貼付する。なお、離型シートが積層されている場合は、予め貼付面の離型シートを剥離する。
硬化工程においては、貼付された強化繊維樹脂複合体を、潜在性エポキシ硬化剤(c)の活性条件下に供し、エポキシプレポリマー化合物(a)を硬化させ、補強されたセメント系構造物を得る。
(1)から(12)の強化繊維樹脂複合体が貼付性および貯蔵安定性に優れるため、セメント系構造物の表面に貼付され完全硬化される。したがって、上記のセメント系構造物を好ましく補強することができる。
本発明で用いられるスルホニウム化合物の1つについて、熱分解をモニターしたグラフである。
[強化繊維樹脂複合体]
本発明の強化繊維樹脂複合体は、マトリックス樹脂が含浸された強化繊維である。含浸されたマトリックス樹脂は、プレゲル化した状態で維持される。プレゲル化した状態とは、樹脂が硬化反応工程を経ることなくそれ自身の形状を保持できる状態をいう。強化繊維樹脂複合体の表面は、増粘したマトリックス樹脂による粘着性を有する。したがって、強化繊維樹脂複合体の表面の一方または両方に、離型シートが設けられていてもよい。
強化繊維樹脂複合体の表面の粘着性を生じさせる樹脂組成物は、30℃において500Pa・s以上8000Pa・s以下、好ましくは800Pa・s以上8000Pa・s以下、80℃において1Pa・s以上500Pa・s以下の粘度を有するものであってよい。上記下限値以上の樹脂粘度であることによって、該複合体からの液成分の滲出を抑制し、また、該複合体の表面に離型シートが積層されている場合に、離型シートの良好な剥離性を得ることもできる。上記上限値以下の樹脂粘度であることによって、用途に適した弱すぎない粘着性を得ることができる。したがって、対象物への貼付時に好ましい貼付状態が維持される。また、取り扱いに適した強すぎない粘着性も得ることができる。
[樹脂組成物]
マトリックス樹脂は、エポキシプレポリマー化合物(a)、塩化ビニル系樹脂(b)および潜在性エポキシ硬化剤(c)を含む樹脂組成物で構成される。潜在性エポキシ硬化剤がエポキシプレポリマー化合物(a)のカチオン重合開始剤である場合、エポキシプレポリマー化合物(a)以外のカチオン重合性化合物もさらに含むことができる。
[(a)エポキシプレポリマー化合物]
エポキシプレポリマー化合物は、エポキシ基を1官能以上、好ましくは2官能以上有する分子である。具体的には、エポキシ基を有するモノマー、エポキシ基を有するオリゴマーおよびエポキシ基を有するポリマーの少なくともいずれかをいう。後述の塩化ビニル系樹脂が併用されることにより好ましく増粘されるため、エポキシプレポリマー化合物は、モノマーまたはオリゴマーを少なくとも含むことが好ましく、モノマーまたはオリゴマーのみであってもよい。
さらに、エポキシプレポリマー化合物は、グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型、グリシジルエステル型、および脂環式のエポキシ化合物が挙げられる。
グリシジルエーテル型、グリシジルアミン型およびグリシジルエステル型のエポキシ化合物は、グリシジルアルキル基を有するハロゲン化物と活性水素化合物(それぞれ、アルコール、アミン、カルボン酸)とから得ることができる。
グリシジルエーテル型エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物の臭化物、ビスフェノールA型エポキシ化合物の水素添加物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物の臭化物、ビスフェノールF型エポキシ化合物の水素添加物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、o−,m−,p−クレゾールノボラック型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ナフタレン環含有エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、ビフェニルノボラック型エポキシ化合物、ジシクロペンタジエン型エポキシ化合物、フェノールアラルキル型エポキシ化合物、ジヒドロキシペンタジエン型エポキシ化合物、およびトリフェニルメタン型エポキシ化合物など、および、フェニルグリシジルエーテル、p−tert−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
グリシジルアミン型エポキシ化合物としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルキシレンジアミン、グリシジルアニリン、グリシジルo−トルイジンなどが挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ化合物としては、フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、ダイマー酸ジグリシジルエステル、などが挙げられる。
脂環式エポキシ化合物は、脂肪族環とエポキシ基を有する化合物であり、より具体的には、脂環エポキシ基(脂環を構成する隣接する2つの炭素原子と酸素原子とで構成されるエポキシ基)を有する化合物、および脂肪族環に直接的または間接的に単結合したエポキシ基を有する化合物が挙げられる。
脂環エポキシ基を有する化合物しては、2個の脂環エポキシ基が単結合または2価の連結基によって連結された化合物であることが好ましい。脂環エポキシ基としては、シクロヘキセンオキシド基が挙げられる。2価の連結基としては、2価の炭化水素基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基、アミド基、及びこれらが複数個連結した基が挙げられる。たとえば、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド2021P)、ε−カプロラクトン変性3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド2081)が好ましい。その他、脂環エポキシ基を有する化合物しては、1個の脂環エポキシ基を有する、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド2000)、3−メタクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−アクリロイルオキシメチルシクロヘキセンオキサイド、3−ビニルシクロヘキセンオキサイドが挙げられる。
脂肪族環に直接的または間接的に単結合したエポキシ基を有する化合物としては、エポキシノルボルネン(たとえば(株)ダイセル製セロキサイド3000)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物(たとえば(株)ダイセル製EHPE3150)などが挙げられる。
[他のカチオン重合性化合物]
本発明においては、上記のエポキシプレポリマー化合物(a)をカチオン重合性化合物として用いる場合、他のカチオン重合性化合物として、オキセタニル基を有する化合物およびビニルエーテル基を有する化合物などを併用することもできる。カチオン重合性化合物とは、酸によって重合または硬化する物質をいう。
他のカチオン重合性物質は、モノマーまたはオリゴマーであってよい。他のカチオン重合性化合物を用いることにより、エポキシプレポリマー化合物(a)のカチオン硬化性(生長反応速度)を向上させることができるため、強化繊維樹脂複合体の硬化速度を速めることができる。
ビニルエーテル基を有する化合物は、カチオン硬化性が比較的高く生産性の面でのパフォーマンスに優れる。さらに、完全硬化物に柔軟性を付与することができる。
オキセタニル基を有する化合物は、カチオン硬化性が高く生産性の面でのパフォーマンスにより優れる。さらに、完全硬化物において、優れた物理的強度を得ることができる。
オキセタニル基を有する化合物としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(オキセタンアルコール)(例えば、東亜合成社製OXT−101)、2−エチルヘキシルオキセタン(例えば、東亜合成社製OXT−212)、キシリレンビスオキセタン(XDO:例えば、東亜合成社製OXT−121)、3−エチル−3{[(3−エチルオキセタン−3−イル)メトキシ]メチル}オキセタン(例えば、東亜合成社製OXT−221)、オキセタニルシルセスキオキセタン(例えば、東亜合成社製OXT−191)、フェノールノボラックオキセタン(例えば、東亜合成社製PHOX)及び3−エチル−3−フェノキシメチルオキセタン(POX:例えば、東亜合成社製OXT−211)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
ビニルエーテル基を有する化合物としては、ヒドロキシブチルビニルエーテル(例えば、ISP社製HBVE)、1,4−シクロヘキサンジメタノールのビニルエーテル(例えば、ISP社製CHVE)、トリエチレングリコールジビニルエーテル(例えば、ISP社製DVE−3)、ドデシルビニルエーテル(例えば、ISP社製DDVE)、及びシクロヘキシルビニルエーテル(例えば、ISP社製CVE)からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
これら他のカチオン重合性化合物は、エポキシプレポリマー化合物(a)100重量部に対して、0.01重量部以上5重量部以下、好ましくは0.03重量部以上3重量部以下の割合で併用することができる。上記下限値以上であることにより、硬化速度促進の効果を好ましく得ることができ、上記上限値以下であることにより、硬化速度の過剰促進による残留応力の発生および過加熱による樹脂劣化を好ましく防ぐことができる。
[(b)塩化ビニル系樹脂]
塩化ビニル系樹脂としては特に限定されず、塩化ビニル単量体の単独重合体の他、例えば、塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体、塩化ビニル系樹脂以外の重合体に塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂をグラフトさせたグラフト共重合体等が挙げられる。さらに、これらの塩化ビニル系樹脂を塩素化した塩素化塩化ビニル系樹脂も挙げられる。これら塩化ビニル系樹脂は単独で用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。
塩化ビニル単量体と塩化ビニル単量体以外の重合性単量体との共重合体における重合性単量体としては特に限定されないが、炭素数2以上16以下のα−オレフィン(たとえば、エチレン、プロピレン、およびブチレン);炭素数2以上16以下の脂肪族カルボン酸のビニルエステル(たとえば、酢酸ビニルおよびプロピオン酸ビニル);炭素数2以上16以下のアルキルビニルエーテル(たとえば、ブチルビニルエーテルおよびセチルビニルエーテル);炭素数1以上16以下のアルキル(メタ)アクリレート(たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレートおよびブチルアクリレート);アリール(メタ)アクリレート(たとえば、フェニルメタクリレート);芳香族ビニル(たとえば、スチレンおよびα−置換スチレン(たとえば、α−メチルスチレン));ハロゲン化ビニル(たとえば、塩化ビニリデンおよびフッ化ビニリデン);およびN−置換マレイミド(N−フェニルマレイミドおよびN−シクロヘキシルマレイミド)が挙げられる。これら重合性単量体は、これらは単独で使用されてもよく、2種以上が併用されてもよい。
塩化ビニル単量体または塩化ビニル系樹脂とともにグラフト共重合体を与える重合体としては、塩化ビニルモノマーにグラフト重合可能な重合体であれば単独重合体および共重合体を問わず、いかなるものも含まれる。たとえば、α−オレフィンとビニルエステルとの共重合体(たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体);α−オレフィンとビニルエステルと一酸化炭素との共重合体(たとえば、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素共重合体);α−オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートとの共重合体(たとえば、エチレン−メチルメタクリレート共重合体およびエチレン−エチルアクリレート共重合体);α−オレフィンとアルキル(メタ)アクリレートと一酸化炭素との共重合体(たとえば、エチレン−ブチルアクリレート−一酸化炭素共重合体);異なる2種以上のα−オレフィンの共重合体(たとえば、エチレン−プロピレン共重合体);不飽和ニトリルとジエンとの共重合体(たとえば、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体);ポリウレタン;および塩素化ポリオレフィン(たとえば、塩素化ポリエチレンおよび塩素化ポリプロピレン)が挙げられる。これら重合体は単独で用いられていてもよいし、2種以上が併用されていてもよい。
上記ポリ塩化ビニル系樹脂の重合方法は特に限定されず、たとえば、塊状重合方法、溶液重合方法、乳化重合方法、懸濁重合方法等が用いられる。
塩素化塩化ビニル系樹脂の塩素含有率は特に限定されないが、たとえば65重量%以上68重量%未満、好ましくは、塩素含有率は66重量%以上68重量%未満、より好ましくは66重量%以上67重量%以下である。塩素含有率が上記下限値以上であることによって耐熱性向上効果が十分に得られやすく、上記上限値以下であることにより加工性が良好に得られやすい。なお、塩素含有率は、JIS K 7229に準拠して測定することができる。
塩素化ビニル系樹脂は、すでに述べた塩化ビニル系樹脂を塩素化することによって得られる。塩素化の方法としては特に限定されず、熱塩素化方法および光塩素化方法が挙げられる。
塩化ビニル系樹脂(b)の平均重合度は、特に限定されるものではないが、たとえば400以上1500以下、好ましくは600以上1300以下である。平均重合度が上記下限値以上であることにより、塩化ビニル系樹脂(b)による好ましい物性(たとえば強靭性)を得やすく、適切な添加量で用途に適した粘着性を得やすい。平均重合度が上記上限値以下であることにより、エポキシプレポリマー化合物(a)に対し、相溶または膨潤の態様を少量の添加量にて容易に得ることができる。上述の特性はエポキシプレポリマー化合物(a)の組成に影響されるため、上記の範囲を超える平均重合度であっても、当業者によって適宜選択されてよい。
塩化ビニル系樹脂(b)の含有量は特に限定されないが、エポキシプレポリマー化合物(a)100重量部に対して、たとえば1重量部以上70重量部以下、好ましくは5重量部以上30重量部以下である。エポキシプレポリマー化合物(a)がカチオン重合性化合物であり、後述の潜在性エポキシ硬化剤(c)がカチオン重合開始剤である場合は、エポキシプレポリマー化合物(a)および他のカチオン重合性化合物の合計量100重量部に対して、たとえば1重量部以上70重量部以下、好ましくは5重量部以上30重量部以下である。上記下限値以上の含有量であることにより、強靭性および低コスト性が得やすくなるとともに、取り扱いに適した強すぎない粘着性を得やすい。また、エポキシプレポリマー化合物(a)の滲出も抑制することができる。上記上限値以下の含有量であることにより、用途に適した弱すぎない粘着性を得やすい。また、強化繊維に含浸させる場合、許容される高温状態においても粘度が高くなりすぎず、含浸不足を引き起こしにくい。このように塩化ビニル系樹脂(b)の量を適切量とすることによって、速硬化性能、到達重合転化率、重合反応の暴発抑制性、および貯蔵安定性を良好に得ることができる。
上述の特性はエポキシプレポリマー化合物(a)の組成に影響されるため、上記の範囲を超える含有量であっても、当業者によって適宜選択されてよい。
エポキシプレポリマー化合物(a)(およびその他のカチオン重合性モノマーおよびオリゴマー)と塩化ビニル系樹脂(b)とが分子レベルで完全に混ざり合っている(相溶している)か、または、塩化ビニル系樹脂(b)の分子間にエポキシプレポリマー化合物(a)(およびその他のカチオン重合性モノマーおよびオリゴマー)が入りこみ、分子間距離を広げている(膨潤している)。これによって、強化繊維樹脂複合体の表面が粘着性を有することができる。
[(c)潜在性エポキシ硬化剤]
潜在性エポキシ硬化剤(c)としては特に限定されず、上述のエポキシプレポリマー化合物(a)(およびその他のカチオン重合性化合物)と塩化ビニル系樹脂(b)との加熱混合条件下および強化繊維樹脂複合体の保存条件下の両方で潜在性を有するものであればよい。なお、潜在性エポキシ硬化剤(c)は、光(特に紫外線)、電磁波(特にX線)および電子線などの活性エネルギー線の作用によって活性化される化合物であってもよいし、熱の作用によって活性化される化合物であってもよい。また、潜在性エポキシ硬化剤(c)として、活性エネルギー線の作用によって活性化される化合物と、熱の作用によって活性化される化合物との両方が組み合わされていてもよい。
本発明においては、潜在性エポキシ硬化剤(c)は、ジシアンジアミド、BF−アミン錯体、変性イミダゾール化合物、オニウム塩、それら化合物およびその他の硬化剤をマイクロカプセル化または有機高分子で包接化合物化したものが挙げられる。貯蔵安定性および速硬化性能の観点からは、オニウム塩系重合開始剤およびマイクロカプセル化された重合開始剤であることが好ましい。
本発明においては、潜在性エポキシ硬化剤(c)は、カチオン重合開始剤であることが好ましい。カチオン重合系は酸素阻害を受けないため、強化繊維樹脂複合体の完全硬化時において、屋内外環境(空気環境)下での表面硬化性に優れるとともに、硬化収縮が小さいため貼付対象への密着性に優れ、さらに、硬化効率に優れるため作業効率が良い。
なおこの場合、エポキシプレポリマー(a)とともに、他のカチオン重合性化合物が併用されている場合があり、潜在性エポキシ硬化剤は、当該他のカチオン重合性化合物に対しても硬化作用を有する。
カチオン重合開始剤としては、光(特に紫外線)、電磁波(特にX線)および電子線などの活性エネルギー線、または熱の作用によって活性化され、ルイス酸またはプロトン酸を発生する物質が用いられる。たとえば、ルイス酸のジアゾニウム塩、ルイス酸のヨ−ドニウム塩、ルイス酸のスルホニウム塩、ルイス酸のセレノニウム塩、アルミニウムキレート化合物などのオニウム塩、スルホン酸エステル、鉄−アレーン化合物、シラノール−アルミニウム錯体等の各種化合物が挙げられる。貯蔵安定性と速硬化性能の観点からより好ましいカチオン重合開始剤としては、ルイス酸の芳香族ヨードニウム塩化合物およびルイス酸の芳香族スルホニウム塩化合物が挙げられる。
ルイス酸の芳香族ヨードニウム塩化合物としては、たとえば下記式(II−1)で表される化合物が挙げられる。
上記式(II−1)中、R5、R6は水素原子、アルキル基、アルコキシ基のいずれかを示し、それぞれのR5、R6は互いに同一であっても異なっていてもよい。また、R7、R8、R9、R10は水素原子、アルキル基のいずれかを示し、R7、R8、R9、R10は互いに同一であっても異なっていてもよい。さらに、XはB(C、SbF、AsF、PF、BF、CFSO、FSO、ClO、FPOのいずれかを示す。
これらのヨードニウム塩としては、たとえば、和光純薬工業社製WPI−113、WPI−116、ローディアジャパン社製PHOTOINITIATOR 2074、チバジャパン社製IRGACURE 250、日本曹達製CI−5102などが挙げられる。
ルイス酸の芳香族スルホニウム塩化合物としては、たとえば、下記式(II−2),(II−3),(I)で表される化合物が挙げられる。
上記式(II−2)中、R11、R12、R13は、炭素数1以上12以下のアルキル基、水酸基、または炭素数1以上4以下のアルキルカルボニロキシ基(炭素数には、カルボニル基の炭素を含まない)を表す。R11、R12、R13は、互いに同一であっても異なっていてもよい。さらに、XはB(C、SbF、AsF、PF、BF、CFSO、FSO、ClO、FPOのいずれかを示す。
これらのスルホニウム塩としては、たとえば、サンエイドSI−60L、サンエイドSI−80L、サンエイドSI−100L(いずれも三新化学工業社製)などが例示される。
上記式(II−3)中、XはB(C、SbF、AsF、PF、BF、CFSO、FSO、ClO、FPO、(CFCFPFのいずれかを示す。
これらのスルホニウム塩としては、サンアプロ株式会社製CPI−101A、CPI−100P、CPI−210S、CPI−200K、みどり化学社製のDTS−102、DTS−103などが挙げられる。
上記のほか、ルイス酸の芳香族スルホニウム塩化合物として、アデカ社製SP−150、SP−170などが挙げられる。
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。R,R’,R’’は、互いに同じまたは異なっていてよい、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。Rは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表す。Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基または置換されていてよいフェニル基を表す。置換されていてよいフェニル基における置換基は、炭素数1以上4以下のアルコキシ基、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基、または炭素数1以上4以下のアルキルカルボニロキシ基(炭素数には、カルボニル基の炭素を含まない)であってよい。
さらに、Xは、ハメット酸度関数が−12以下の超強酸のアニオンを表す。より具体的には、Xは、B(C、SbF、AsF、PF、BFのいずれかを示す。
上記式(I)で示される本発明のスルホニウム化合物は、相当する3−ハロゲノプロピオフェノンとチオールとから合成することができるスルフィド化合物に、R−L(Lは、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子、またはトシレート、トリフレート、メシチレートなどの脱離基を示す。)を作用させてL−をカウンターアニオンとするスルホニウム塩へ変換した後、ハメット酸度関数が−12以下の超強酸のアルカリ金属塩と陰イオン交換反応を行うことによって合成することができる。
上記式(I)で示されるスルホニウム化合物は、具体的には、下記式で示される化合物が挙げられる。
上記式(I)で表される芳香族スルホニウム塩は、硫黄原子とカルボニル基との間の炭素数が2であることにより、カルボニル基のα位のプロトンの脱離が促進される。これにより、酸の発生が促進される。つまり、以下に示すメカニズムによる反応が生じやすいと推測される。
上記式(I)で示されるスルホニウム化合物は、貯蔵安定性に優れ、いわゆる潜在性硬化剤として機能する。光(特に紫外線)、電磁波(特にX線)および電子線などの活性エネルギー線の作用によって活性化される(つまりプロトンの脱離および酸の発生が生じる)化合物であってもよいし、熱の作用によって活性化される化合物であってもよい。特に活性エネルギー線の作用によって活性化される化合物である場合、置換基Rは、置換されていてよいフェニル基であることが好ましい。
上記式(I)で示されるスルホニウム化合物は、上記した他のカチオン重合開始剤と併用されることができる。他のカチオン重合開始剤が併用される場合、上記式(I)で示されるスルホニウム化合物と、他のカチオン重合開始剤としては、活性化条件が異なるものが適宜組み合わされる。たとえば、一方を活性エネルギー線の作用によって活性化される化合物として、他方を熱の作用によって活性化される化合物として構成することができる。また、いずれも活性化エネルギー線および熱のいずれかの作用によって活性化される化合物であって、他の硬化剤のほうがより緩和な条件で活性化するように構成してもよい。
他のカチオン重合開始剤が併用される場合、上記式(I)で示されるスルホニウム化合物が熱の作用によって活性化される化合物であり、かつ、他のカチオン重合開始剤が活性エネルギー線の作用によって活性化される化合物であることが好ましい。この場合、下記スキームに例示されるフロンタル重合系を容易に構築することができる。このため、先に活性エネルギー線によって他のカチオン重合開始剤から酸が発生し、カチオン重合性化合物が重合し、その反応熱により、上記式(I)で示されるスルホニウム化合物の熱分解および酸の発生が誘導され、自己促進的に重合反応を伝播させることができる。したがって、酸を発生させるためのエネルギー(つまり活性エネルギー線および熱のいずれも)を外部から与え続けることなく、かつ、上記式(I)で示されるスルホニウム化合物単体では必要となる熱エネルギーを外部から与えることなく、樹脂組成物を深部に至るまで効率的に硬化させることができる。したがって、繊維樹脂複合体の厚みが大きい場合も、良好な硬化性を発揮することができる。
他のカチオン重合開始剤が併用される場合、他のカチオン重合開始剤の含有量は特に限定されず、他のカチオン重合開始剤の目的などに応じて当業者が適宜決定することができる。たとえば、上記式(I)で示されるスルホニウム化合物に対し、モル基準でたとえば0.01倍以上100倍以下、好ましくは0.1倍以上10倍以下である。上記下限値以上であることにより、適切な硬化速度を得ることができ、上記上限値以下であることにより、硬化性樹脂組成物の貯蔵安定性に優れ、硬化速度の過剰促進による残留応力の発生および過加熱による樹脂劣化を防ぎやすい。
潜在性エポキシ硬化剤(c)の量としては、エポキシプレポリマー化合物(a)100重量部に対し、たとえば0.05重量部以上5重量部以下、好ましくは0.1重量部以上3重量部以下である。潜在性エポキシ硬化剤(c)がカチオン重合開始剤である場合は、エポキシプレポリマー化合物(a)およびその他のカチオン重合性化合物の合計量100重量部に対し、たとえば0.05重量部以上5重量部以下、好ましくは0.1重量部以上3重量部以下である。上記下限値以上であることにより、好ましい速硬化性能および重合転化率を得ることができる。上記上限値以下であることは、重合反応の暴発抑制および貯蔵安定性の点で好ましい。
[その他添加剤]
本発明においては、強化繊維樹脂複合体の用途、または硬化収縮による硬化応力を低減させる観点で、充填材が添加されていてもよい。充填剤としては、たとえば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、マイカ、タルク、カオリン、クレー、セライト、バーライト、バライタ、シリカ、珪砂、ドロマイト石灰石、石膏、中空バルーン、アルミナ、ガラス粉、水酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、三酸化アンチモン、酸化チタン、二酸化モリブデン、鉄粉などが挙げられる。
なお、本発明においては、強化繊維樹脂複合体に、アクリル系樹脂を実質的に含まないことが好ましい。アクリル系樹脂を実質的に含まないとは、全く含まないか、仮に含んでいたとしても、アクリル系樹脂が増粘剤としての効果を発揮できる最小限の量を下回る量が許容される程度であることをいう。
[強化繊維]
樹脂強化用繊維としては特に限定されないが、ガラス繊維、セラミックス繊維、ボロン繊維、バサルト繊維などの無機繊維;PAN (ポリアクリロニトリル) 系炭素繊維およびピッチ系炭素繊維などの炭素繊維;ならびに、アラミド、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロン、ビニロン、ポリアセタール、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)、高強度ポリプロピレン、ポリアミド、ポリアリレート、ポリエステルなどの合成有機繊維;ケナフ、麻などの天然繊維が挙げられる。これらの繊維は、単独で、または複数種を組み合わせたハイブリッド繊維として用いることができる。
マトリックス樹脂をカチオン重合により硬化させる場合は、耐酸性を有する繊維であることが好ましい。
強化繊維樹脂複合体の強度を重要視する場合、または潜在性エポキシ硬化剤(c)としてその活性化に光を不要とする化合物を用いる場合は、炭素繊維であることが好ましい。
強化繊維樹脂複合体の透明性を重要視する場合、または潜在性エポキシ硬化剤(c)として光により活性化される化合物を用いる場合は、透明性を有する無機繊維または合成有機繊維であることが好ましい。
樹脂強化用繊維の形態(たとえば織り方、束ね方など)としても特に限定されるものではなく、強化繊維樹脂複合体が土木建築用途のプリプレグである場合、補強設計におけるロスを最小限にとする観点から、通常、一方向材である織物であることが好ましい。また、押抜き強度を持たせる必要がある剥落防止性能を付与する場合や、製品表面の意匠性を優先させる場合などは2方向材である織物を用いてもよい。さらに、繊維目付、樹脂含有量も、強化繊維樹脂複合体の用途に応じて当業者が適宜決定することができる。
[強化繊維樹脂複合体の製造方法]
強化繊維樹脂複合体は、加熱混合工程、硬化剤添加工程および含浸工程によって製造される。
加熱混合工程においては、エポキシプレポリマー化合物(a)と塩化ビニル系樹脂(b)とを加熱混合し、加熱混合樹脂を得る。この場合、塩化ビニル系樹脂(b)によって、エポキシプレポリマー化合物(a)が増粘される。加熱混合によって、塩化ビニル系樹脂(b)がエポキシプレポリマー化合物(a)と相溶した状態、またはエポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤された状態となる。相溶した状態は、目視によって透明を確認することができる。膨潤された状態は、白濁を確認することができる。なお、塩化ビニル系樹脂(b)が膨潤さえされずに単に分散しているにすぎない場合は、増粘していないことによって確認することができる。
塩化ビニル系樹脂(b)は、粒子状であることが好ましい。これによって、上記の相溶状態または膨潤状態を得やすく、ハンドリング性にも優れる。これらの状態をより好ましく得る観点からは、塩化ビニル系樹脂(b)の平均粒子径は、0.2μm以上200μm以下であってよい。なお、平均粒子径とは、レーザー光を用いた動的散乱法により測定された体積基準の50%累積分布径をいう。
加熱温度としては、相溶または膨潤の状態が得られる温度であればよい。たとえば、120℃以上、好ましくは150℃以上である。これによって、少なくとも膨潤された状態を容易に得ることができる。一方、高温となるほど、相溶の状態が得られやすい。さらに、加熱温度は、たとえば220℃以下、好ましくは180℃以下である。加熱温度として相溶状態および膨潤状態のいずれの状態を達成可能な温度にするかについては、エポキシプレポリマー化合物(a)の沸点、塩化ビニル系樹脂(b)の耐熱性などを考慮して、温度の上限を当業者が適宜調整することができる。
なお、加熱混合樹脂の粘度調整のために、低沸点溶媒を希釈剤として加えることも許容する。低沸点溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトンなどの有機溶媒が挙げられる。たとえば、エポキシプレポリマー化合物(a)として低分子量のエポキシ化合物(たとえばモノマー、オリゴマー)の使用割合が小さい場合または使用しない場合、塩化ビニル系樹脂(b)として重合度の高いものを使用する場合または使用割合を大きくする場合(たとえばより大きい強靭性を付与する目的による)は、加熱混合樹脂の粘度が高くなる傾向がある。このため、エポキシプレポリマー化合物(a)および塩化ビニル系樹脂(b)の分子構造および使用割合を考慮し、希釈剤の使用の有無または使用量を、当業者が適宜決定することができる。
また、希釈剤を使用する場合、塩化ビニル系樹脂(b)を予め希釈剤に溶解させてペースト状としたものをエポキシプレポリマー化合物(a)と混合してもよい。
硬化剤添加工程では、加熱混合樹脂に、潜在性エポキシ硬化剤(c)が添加された、流動性硬化性樹脂組成物を得る。この工程は、潜在性エポキシ硬化剤(c)を不活性に維持する条件下で行われる。したがって、潜在性エポキシ硬化剤(c)に熱重合開示剤が含まれる場合、潜在性エポキシ硬化剤(c)の活性化温度を下回るまで加熱混合樹脂を一旦冷却する。この場合、具体的にどの程度の温度まで冷却するかは、潜在性エポキシ硬化剤(c)の活性化温度に依存するが、樹脂組成物の流動性が損なわれない(後の含浸工程に支障がない程度の流動性は担保する)程度であることが好ましい。
一方、潜在性エポキシ硬化剤に熱重合開始剤が含まれない場合(潜在性エポキシ硬化剤が光重合開始剤である場合)は、必ずしも上記の冷却を要しない。したがってこの場合、加熱混合工程と硬化剤添加工程とが同時に行われてもよいし、別々に行われてもよい。別々に行われる場合、本工程の温度条件は、エポキシプレポリマー化合物(a)の沸点、塩化ビニル系樹脂(b)の耐熱性、潜在性エポキシ硬化剤(c)の耐熱性などを考慮する限り、上述の加熱混合工程温度を超えてもよいし、加熱混合工程温度と同等であってもよいし、加熱混合工程温度を下回り且つ熱重合開始剤の活性温度より高い温度であってもよい。無論、潜在性エポキシ硬化剤(c)に熱重合開始剤が含まれる場合と同等の温度条件としてもよい。ただしこれらの場合、本工程は潜在性エポキシ硬化剤(c)を活性化しうる光条件を排除した条件下で行われる。
このように、硬化剤添加工程は潜在性エポキシ硬化剤(c)を不活性に維持する条件下で行われるため、硬化反応を生じさせることなく、流動性硬化性樹脂組成物を得る。流動性樹脂組成物の粘度は、80℃条件下においてたとえば1Pa・s以上500Pa・s以下、好ましくは1Pa・s以上300Pa・s以下である。当該粘度が上記下限値以上であることは、強化繊維樹脂複合体の表面の適切な粘着性を得やすい点で好ましく、上記上限値以下であることによって、後の含浸工程を行い易い点で好ましい。
含浸工程では、流動性硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸させ、強化繊維樹脂複合体を得る。含浸工程で許容される温度条件は、前記の硬化剤添加工程で許容される温度条件と同じである。流動性樹脂組成物の含浸性を向上させるために、許容温度範囲内で、流動性樹脂組成物の温度を上昇させてもよい。反対に、強化繊維の耐熱性に応じて、流動性樹脂組成物を冷却し、当該強化繊維の耐熱温度を下回る温度まで下げてもよい。好ましくは、流動性硬化性樹脂組成物の温度は、60℃以上90℃以下に調整される。
含浸の手法としては特に限定されず、当業者によって適宜選択される。粘性の高い樹脂組成物を含浸可能な方法が好ましく選択される。たとえば、繊維の扱き処理、加圧や真空といった圧変化処理などの手法を用い、効率的に含浸させることができる。なお、含浸時には、離型シート上で含浸させてもよい。
なお、流動性硬化性樹脂組成物が低沸点溶媒を希釈剤として含む場合は、含浸後、当該低沸点溶媒を除去する。低沸点溶媒の除去は、乾燥または減圧処理などによって行うことができる。
得られた強化繊維樹脂複合体は、必要に応じ、少なくとも一方の面に離型シートを設けることができる。また、所定の寸法および大きさに分割されてもよいし、巻き取られてロール形状にされてもよい。
[補強された構造物の製造方法]
本発明の強化繊維樹脂複合体は、構造物の補強に用いることができる。これによって、補強された構造物が製造される。
補強対象となる構造物としては、セメント系構造物および配管が挙げられる。
セメント系構造物は、セメントを含む材料で構成される、建造物および建材などの構造物である。セメントに混合される材料としては、砂などの細骨材、砂利や砕石などの粗骨材、および混和材であり、セメントを含む材料としては、一般的に、モルタルおよびコンクリートが挙げられる。
配管は、更生を必要とする既設配管であってよい。たとえば、老朽化した下水道管、上水導管、農水管などが挙げられる。配管の材質としては、コンクリート、金属および樹脂を問わない。
構造物の補強は貼付工程と、硬化工程とを含む。
貼付工程においては、たとえば、構造物の修繕のため、構造物に発生した異常箇所(ひび割れ、劣化など)を覆うように、強化繊維樹脂複合体を貼付する。または、構造物に生じうる異常の発生を防ぐ予防補強として、補強効果が期待される部分を覆うように、強化繊維樹脂複合体を貼付する。貼付後の強化繊維樹脂複合体は、適宜、金型などを用いて適切な形状に拘束されてもよい。
なお、貼付すべき表面は、予め、表面削去して平滑化してもよいし、プライマー処理してもよい。
硬化工程においては、貼付された状態の強化繊維樹脂複合体を、潜在性エポキシ硬化剤(c)の活性条件下に供する。これによって、強化繊維樹脂複合体中のマトリックス樹脂が完全硬化する。したがって、構造物は、表面にエポキシ樹脂の完全硬化体が強固に固着した状態で補強される。
また、配管の補強の場合、流体圧を利用して管状の樹脂複合体を管路の内周面に押圧し、硬化剤の活性条件下で樹脂複合体に担持された硬化性樹脂複合体を完全硬化することにより、管路の内面にライニング層を形成することができる。
以下に、本発明を実施例によってさらに説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、「重量部」によって表される量は、特に断りがない限りエポキシプレポリマー100重量部に対する量である。
<参考例1>
(試験サンプルの作成)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学(株)製 jER828)及び脂環式エポキシ化合物(ダイセル化学工業(株)製 セロキサイド2021P)を等しい重量で混合したエポキシプレポリマー100重量部に対し、ポリ塩化ビニル(徳山積水化学工業(株)製 640M)を15重量部添加し、140℃で3分加熱混合し溶融樹脂を得た。その後、溶融樹脂を80℃まで冷却し、熱カチオン重合開始剤(三新化学(株)製 サンエイドSI−100L)を0.5重量部添加し混合させ、流動性樹脂組成物を得た。流動性樹脂組成物を、バーコータを用いて、離型処理されたPETフィルム上に500ミクロン厚となるように塗布し、さらに上から同素材のPETフィルムで覆って挟み、室温にまで冷却させた。これによって、試験サンプルを得た。
(離型性)
試験サンプルから、PETフィルムを剥離した。その結果、剥離したPET表面に樹脂の移りはなく、良好な剥離性を確認した。
(粘着性)
試験サンプルの片面のフィルムを剥離し、ガラス板の表面に貼付し、試験サンプルが下向きになるように静置した。その結果、自重剥離も生じることなく、良好な接着性が得られた。
(熱硬化性)
上記の貼付した試験サンプルを、PETフィルム越しにアイロンを用いて180℃、30秒間加熱処理した。その後、PETフィルムを剥離した。PETフィルムは容易に剥離することができた。ガラス板下面に貼付された樹脂組成物は完全硬化体となって固着しており、鉛筆硬度で2H以上の硬度を有していた。
(貯蔵安定性)
別途作成した試験サンプルを40℃の循環式オーブンに入れ、1ヶ月放置した。その結果、放置後の試験サンプルの柔軟性は、1か月前の試験サンプルの柔軟性と同じであった。
<参考例2>
(試験サンプルの作成)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学(株)製 jER828)及び脂環式エポキシ化合物(ダイセル化学工業(株)製 セロキサイド2021P)を等しい重量で混合したエポキシプレポリマー100重量部に対し、塩素化ポリ塩化ビニル(徳山積水化学工業(株)製 HA58K)を15重量部添加し、200℃で3分加熱混合し溶融樹脂を得た。その後、光カチオン重合開始剤(サンアプロ(株)製 CPI−100P)を0.5重量部添加し混合させ、流動性樹脂組成物を得た。流動性樹脂組成物を、バーコータを用いて、離型処理されたPETフィルム上に100ミクロン厚となるように塗布し、さらに上から同素材のPETフィルムで挟み室温にまで冷却させた。これによって、試験サンプルを得た。
(離型性)
試験サンプルから、PETフィルムを剥離した。その結果、剥離したPET表面に樹脂の移りはなく、良好な剥離性を確認した。
(粘着性)
試験サンプルの片面のフィルムを剥離し、ガラス板の表面に貼付し、試験サンプルが下向きになるように静置した。その結果、自重剥離も生じることなく、良好な接着性が得られた。
(光硬化性)
上記の貼付した試験サンプルからPETフィルムをさらに剥離した後、ガリウムハライドランプを用い、50mJ/cm程度のエネルギーとなるように樹脂組成物に直接照射を行った。ガラス板下面に貼付された樹脂組成物は完全硬化体となって固着しており、鉛筆硬度で2H以上の硬度を有していた。
(貯蔵安定性)
別途作成した試験サンプルを70℃の循環式オーブンに入れ、1ヶ月放置した。その結果、放置後の試験サンプルの柔軟性は、1か月前の試験サンプルの柔軟性と同じであった。
<実施例1>
(炭素繊維プリプレグの作成)
参考例1で得られた流動性樹脂組成物を、一方向炭素繊維クロス(東レ(株)製 UT70−30G)100重量部に対して40重量部となるように、加熱ローラを用いて、80℃の条件下で炭素繊維クロスに含浸させた。含浸された炭素繊維クロスを、離型処理されたPETフィルム挟み込み、室温にまで冷却した。その結果、炭素繊維プリプレグを得た。
炭素繊維プリプレグについて、参考例1と同様に、離型性、粘着性、光硬化性および貯蔵安定性を確認したところ、いずれも、参考例1と同様の良好な結果が得られた。
<実施例2>
(ガラス繊維プリプレグの作成)
参考例2で得られた流動性樹脂組成物を、耐酸性ガラス繊維クロス(日本電気硝子(株)製 ARG−LW110)100重量部に対して60重量部となるように、加熱ローラを用いて、130℃の条件下でガラス繊維クロスに含浸させた。含浸された耐酸性ガラス繊維クロスを、離型処理されたPETフィルム挟み込み、室温にまで冷却した。その結果、目視で透明なガラス繊維プリプレグを得た。
ガラス繊維プリプレグについて、参考例2と同様に、離型性、粘着性、光硬化性および貯蔵安定性を確認したところ、いずれも、参考例2と同様の良好な結果が得られた。
<比較用参考例1>
(試験サンプルの作成)
ビスフェノールAジグリシジルエーテル(三菱化学(株)製 jER828)及び脂環式エポキシ化合物(ダイセル化学工業(株)製 セロキサイド2021P)を等しい重量で混合したエポキシプレポリマー100重量部に対し、改質ポリメチルメタクリレート微粒子(アイカ工業(株)製 ZefiacF303)20重量部、および熱カチオン重合開始剤(三新化学(株)製 サンエイドSI−100L)0.5重量部を添加し流動性樹脂組成物を得た。離型処理されたPETフィルムに、ガラスクロステープを用いて、高さ約0.5mmとなるような正方形の堤を作り、その内部に流動性樹脂組成物を流し込み、さらに上から同素材のPETフィルムで覆って挟みこんだ。80℃で30分加熱することにより、半透明になった試験サンプルを得た。
(離型性)
試験サンプルから、PETフィルムを剥離した。その結果、剥離したPET表面に樹脂の移りはなく、良好な剥離性を確認した。
(粘着性)
試験サンプルの片面のフィルムを剥離し、ガラス板の表面に貼付し、試験サンプルが下向きになるように静置した。その結果、自重剥離も生じることなく、良好な接着性が得られた。
(熱硬化性)
上記の貼付した試験サンプルを、PETフィルム越しにアイロンを用いて180℃、10分間加熱処理した。その後、PETフィルムを剥離した。PETフィルムには樹脂の移りが生じた。ガラス板下面に貼付された樹脂組成物は、指触によりタック(べたつき)が感じられ、硬化が不十分であることが分かった。
(貯蔵安定性)
別途作成した試験サンプルを40℃の循環式オーブンに入れ、1ヶ月放置した。その結果、放置後の試験サンプルの柔軟性は、1か月前の試験サンプルの柔軟性と同じであった。
<参考例3>
(PRTAG−PFの合成)
まず、下記スキームに示す反応を行い、中間体を合成した。
4−メトキシベンゼンチオール(化合物a)7.5g(53.6mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶解させ、トリエチルアミン10.8g(107mmol)を加え、氷冷下で24時間攪拌した。ここに3−クロロプロピオフェノン(化合物b)10.2g(53.9mmol)をテトラヒドロフラン20mLに溶解させた溶液を加え、攪拌しながら室温で24時間反応させた。反応液中に白色固体の析出を確認したため、この固体をろ過によって取り除いた。得られたろ液は溶媒を蒸発させ、固体を析出させた。この固体をクロロホルムに溶解させ、5wt%塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、および飽和塩化ナトリウム水溶液の順に分液操作し、硫酸マグネシウムを用いて溶液中の水を除去した。硫酸マグネシウムをろ過し、溶媒を蒸発させた後、ヘキサン洗浄を行って、固体を回収および減圧乾燥させた。これにより、白色固体である中間体化合物2を6.8g(収率55%)得た。
中間体化合物をH−NMR測定した。同定データは以下のとおりである。
NMR(δ値)
3.2−3.3ppm(m、4H、−CCH−)
3.80(s、3H、−OCH
6.84(d、2H、Ar−H)
7.4−7.6(m、5H、Ar−H)
7.89(d、2H、Ar−H)
次に、下記スキームに示す反応を行い、PRTAG−Tfを合成した。
中間体化合物の4.0g(14mmol)をジクロロメタン40mLに溶解させ、氷冷下で攪拌した。ここに、トリフルオロメタンスルホン酸メチル2.4g(14mmol)をジクロロメタン10mLに溶解させたものを加え、氷冷下で5時間反応させた。その後、ヘキサン洗浄を行って、固体を回収および減圧乾燥させた。これによって、PRTAG−Tf 4.3g(収率68%)を得た。
PRTAG−TfをH−NMR測定およびESI−MS測定した。同定データは以下のとおりである。
NMR(δ値)
3.41(s、3H,S−CH
3.52(m、2H、S−CH−)
3.84(m、1H、S−CH−)
3.86(s、3H,O−CH
3.99(m、1H、S−CH−)
7.25(d、2H、Ar−H)
7.53(t、2H、Ar−H)
7.67(t、2H、Ar−H)
7.93−8.01(m、4H、Ar−H)
ESI−MS
{C1719}287.1093(理論値287.1100)
{CFSO }148.9526(理論値148.9533)
最後に、下記スキームに示す反応を行い、PRTAG−PFを合成した。
PRTAG−Tf0.57g(1.3mmol)をイオン交換水700mLに溶解させ、室温で10分間攪拌した。ここにヘキサフルオロリン酸ナトリウム0.33g(2.0mmol)をイオン交換水10mLに溶解させたものを加え、室温で30分攪拌したところ、白色固体が析出した。析出した固体をろ過し、ヘキサン洗浄後減圧乾燥させ、目的物PRTAG−PF0.4g(収率70%)を得た。
PRTAG−PFH−NMR測定およびESI−MS測定した。同定データは以下のとおりである。
NMR(δ値)
3.47(s、3H、S−CH
3.52(m、2H、S−CH−)
3.84(m、1H、S−CH−)
3.86(s、3H、O−CH
3.99(m、1H、S−CH−)
7.25(d、2H、Ar−H)
7.53(t、2H、Ar−H)
7.67(t、2H、Ar−H)
7.93−8.01(m、4H、Ar−H)
ESI−MS
{C1719}287.1078(理論値287.1100)
{PF }148.9533(理論値144.9642)
<参考例4>
陰イオン交換反応時、ヘキサフルオロリン酸ナトリウム0.33g(2.0mmol)の代わりにヘキサフルオロアンチモン酸ナトリウム0.52g(2.0mmol)を用いたことを除いて、参考例3と同様に合成を行った。その結果、下記式に示すPRTAG−SbF0.40g(収率59%)を得た。
PRTAG−SbFH−NMR測定およびESI−MS測定した。同定データは以下のとおりである。
NMR(δ値)
3.35 (s、3H、S−CH
3.53 (m、2H、S−CH−)
3.86 (m、1H、S−CH−)
3.87 (s、3H、O−CH
3.99 (m、1H、S−CH−)
7.26 (d、2H、Ar−H)
7.54 (t、2H、Ar−H)
7.68 (t、2H、Ar−H)
7.94−8.02 (m、4H、Ar−H)
ESI−MS
{C1719} 287.1100(理論値287.1100)
{SbF } 234.8947(理論値234.8948)
<参考例5>
実施例4で得られたPRTAG−SbFが7.6mMの濃度となるようにDMSO−d溶液(内部標準:メシチレン)を調製し、得られた溶液をNMRチューブに入れて封管した。NMRチューブをオーブン中で120℃に加熱し、H−NMRスペクトルの経時変化を追跡した。
追跡の結果を図1に示す。図1においては、横軸に加熱時間(分)を示し、縦軸に、PRTAG−SbFの正規化されたピーク強度および分解物への変換率(%)を示す。図1に示すように、120℃加熱条件下において、PRTAG−SbFが60分以内で速やかに分解する(図中丸ドット参照)と同時に、下記式に示す分解物D1の生成(図中四角ドット参照)および分解物D2の生成(図中三角ドット参照)が確認された。
<参考例6>
3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学工業株式会社製セロキサイド2021P)1g、1,2−エポキシシクロヘキサン1g、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモナート0.024g、および参考例4で得られたPRTAG−SbF0.040gを均一になるまで攪拌し、硬化性樹脂組成物を得た。得られた硬化性樹脂組成物を直径5mm、長さ40mmの試験管に入れ、254nmの光を100秒照射した後、照射を停止した。照射停止後も硬化反応は進行し、露光開始からおよそ280秒で試験管内の樹脂の全硬化が完了した。
本発明の好ましい実施形態は上記の通りであるが、本発明はそれらのみに限定されるものではなく、本発明の趣旨と範囲とから逸脱することのない様々な実施形態が他になされる。さらに、本実施形態において述べられる作用および効果は一例であり、本発明を限定するものではない。

Claims (19)

  1. エポキシプレポリマー化合物(a)、
    前記エポキシプレポリマー化合物(a)と相溶した、または前記エポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤された、塩化ビニル系樹脂(b)、および
    潜在性エポキシ硬化剤(c)、
    を含む樹脂組成物と、
    前記樹脂組成物を含浸した強化繊維と、
    を含む、強化繊維樹脂複合体。
  2. 前記塩化ビニル系樹脂(b)が、前記エポキシプレポリマー化合物(a)100重量部に対し、1重量部以上70重量部以下含まれる、請求項1に記載の強化繊維樹脂複合体。
  3. 前記塩化ビニル系樹脂(b)の平均重合度が400以上1500以下である、請求項1または2に記載の強化繊維樹脂複合体。
  4. 前記潜在性エポキシ硬化剤(c)が、前記エポキシプレポリマー化合物(a)100重量部に対し、0.01重量部以上5重量部以下含まれる、請求項1から3のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体。
  5. 前記樹脂組成物は、30℃における樹脂粘度が500Pa・s以上8000Pa・s以下、80℃における樹脂粘度が1Pa・s以上500Pa・s以下である、請求項1から4のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体。
  6. シート状に形成され、少なくとも一方の面に離型シートが積層されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体。
  7. 前記潜在性エポキシ硬化剤(c)がカチオン重合開始剤である、請求項1から6のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体。
  8. 前記潜在性エポキシ硬化剤(c)が、90℃以上200℃以下の温度で反応する熱重合開始剤である、請求項1から7のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体。
  9. 前記潜在性エポキシ硬化剤(c)が、光重合開始剤である、請求項1から7のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体。
  10. 前記潜在性エポキシ硬化剤(c)が、熱重合開始剤と光重合開始剤との両方を含む、請求項1から7のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体。
  11. 前記潜在性エポキシ硬化剤(c)が、下記一般式(I):
    (式中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、R,R’,R’’は、互いに同じまたは異なっていてよい、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、水素原子または炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基または置換されていてよいフェニル基を表し、Xは、ハメット酸度関数が−12以下の超強酸のアニオンを表す。)
    で表される熱酸発生剤またはエネルギー線酸発生剤である、請求項7から10のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体。
  12. エポキシプレポリマー化合物(a)と塩化ビニル系樹脂(b)とを加熱混合して得られる、前記塩化ビニル系樹脂(b)が前記エポキシプレポリマー化合物(a)と相溶した、または前記エポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤された、加熱混合樹脂に、
    潜在性エポキシ硬化剤(c)を不活性に維持する条件下で、前記潜在性エポキシ硬化剤(c)を添加して得られる流動性硬化性樹脂組成物を、
    強化繊維に含浸させることによって得られる、強化繊維樹脂複合体。
  13. 請求項1から12のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体の完全硬化体と、
    前記完全硬化体が表面に固着されたセメント系構造物と、
    を含む、補強セメント系構造物。
  14. エポキシプレポリマー化合物(a)と塩化ビニル系樹脂(b)とを加熱混合し、前記塩化ビニル系樹脂(b)が前記エポキシプレポリマー化合物(a)と相溶した、または前記エポキシプレポリマー化合物(a)に膨潤された、加熱混合樹脂を得る加熱混合工程と、
    潜在性エポキシ硬化剤(c)を不活性に維持する条件下で、前記加熱混合樹脂に、前記潜在性エポキシ硬化剤(c)が添加された、流動性硬化性樹脂組成物を得る硬化剤添加工程と、
    前記流動性硬化性樹脂組成物を強化繊維に含浸させ、強化繊維樹脂複合体を得る含浸工程とを含む、強化繊維樹脂複合体の製造方法。
  15. 前記塩化ビニル系樹脂(b)が粒子状である、請求項14に記載の強化繊維樹脂複合体の製造方法。
  16. 前記潜在性エポキシ硬化剤(c)が少なくとも熱重合開始剤を含み、
    前記硬化剤添加工程において、前記加熱混合樹脂を前記潜在性エポキシ硬化剤(c)の反応温度より低い温度まで冷却し、その後、前記潜在性エポキシ硬化剤(c)を添加する、請求項14または15に記載の強化繊維樹脂複合体の製造方法。
  17. 前記含浸工程での温度条件下での前記流動性硬化性樹脂組成物の粘度が1Pa・s以上500Pa・s以下、である、請求項14から16のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体の製造方法。
  18. 請求項1から12のいずれか1項に記載の強化繊維樹脂複合体を、補強すべき構造物の表面に貼付する貼付工程と、
    貼付された前記強化繊維樹脂複合体を、前記潜在性エポキシ硬化剤(c)の活性条件下に供し、前記エポキシプレポリマー化合物(a)を硬化させ、補強された構造物を得る硬化工程と、
    を含む、補強された構造物の製造方法。
  19. 前記補強すべき構造物が、セメント系構造物または配管である、請求項18に記載の補強された構造物の製造方法。
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