JP2016030342A - 機能性木質系材料、及びその製造方法 - Google Patents

機能性木質系材料、及びその製造方法 Download PDF

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Koichi Nishimoto
孝一 西本
長谷川 寛
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寛 長谷川
佐知 小谷
Sachi Kotani
佐知 小谷
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Abstract

【課題】 燃焼抑制効果や防虫性、防腐性等の優れた機能性を付与できる上に、結露水や雨水等によって濡れた場合でも、また高湿度の環境下に晒された場合でも優れた機能性を長期間保持することができ、しかも、外観も良好で見栄えが求められる用途にも問題なく使用できる機能性木質系材料、及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 機能性薬剤に、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む水系溶液を使用して、木質系材料の表面処理、含浸処理、注入処理または拡散浸透処理を行うと共に、表面上にスチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体から成る塗膜を形成して機能性木質系材料を構成した。
【選択図】 図2

Description

本発明は、機能性木質系材料の改良、詳しくは、優れた機能性(燃焼抑制効果や防虫性、防カビ性、防腐性等)を有するだけでなく、結露水や雨水等によって濡れた場合でも、また高湿度の環境下に晒された場合でも優れた機能性を保持することができ、しかも、外観も良好な機能性木質系材料、及びその製造方法に関するものである。
周知のとおり、建築材料に用いられる木質系材料は、用途に応じて燃焼抑制剤や防虫剤、防腐剤などの機能性薬剤で処理されることが多い。特に屋根材においては、現在の建築基準法で耐火建築物の主要構造部に不燃材料を使用することとなっているため、重要文化財に指定される等、特別な理由がない限り檜皮や萱等の使用が制限されている。
そのため、上記屋根材に用いられる木質系材料は、燃焼抑制剤(例えば、特許文献1参照)による処理が必要となるが、単に薬剤で処理しただけでは屋根材が結露水や雨水等で濡れたときに、燃焼抑制剤の有効成分が水中に溶け出して簡単に溶脱してしまう。そのため、折角、不燃処理を行っても、その効果が短期間で失われてしまう問題がある。
また、上記機能性薬剤が水分と一緒に流れ出すと、周囲の構造物や土壌が流出した成分によって汚染される懸念もある。また、この機能性薬剤の溶脱の問題は、燃焼抑制処理された木質系材料を屋根材に使用した場合だけでなく、防虫処理や防腐処理された木質系材料を、高湿気の環境に晒される床下材料に使用した場合も同様に起こり得る。
一方、従来においては、木質系材料を機能性薬剤により防虫・防腐処理した後、木質系材料の表面をシリコーン系エマルジョン等から成る撥水剤で処理する技術も公知となっているが(特許文献2参照)、この文献2に係る技術に関しては、防虫・防腐成分として含まれる無機塩類(ホウ酸塩)の量が5重量%以下の少量であったため、燃焼抑制剤として充分な機能性を付与することが難しかった。
また、上記燃焼抑制剤としての効果を高めるために、薬剤中に含まれる無機塩類の量を10重量%以上に増やした場合には、撥水剤の塗装面に無機塩類の凝集が起こるため木質系材料の表面が白く変色し、外観が悪化する。一方で、上記文献2にて開示されるシリコーン系エマルジョン等の撥水剤で表面処理を行うと、塗装面において凝集は起こらないものの燃焼抑制剤が溶脱してしまい充分な燃焼効果を維持することができない。
特開昭53−69496号公報 特開2009−281124号公報
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、燃焼抑制効果や防虫性、防腐性等の優れた機能性を付与できる上に、結露水や雨水等によって濡れた場合でも、また高湿度の環境下に晒された場合でも優れた機能性を長期間保持することができ、しかも、外観も良好で見栄えが求められる用途にも問題なく使用できる機能性木質系材料、及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、機能性薬剤で処理した木質系材料からの薬剤の溶脱を抑制する方法を鋭意研究した結果、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は、機能性薬剤に、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む水系溶液を使用して、木質系材料の表面処理、含浸処理、注入処理または拡散浸透処理を行うと共に、表面上にスチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体から成る塗膜を形成して機能性木質系材料を構成した点に特徴がある。なお「表面処理」には、刷毛等を使った塗布処理やスプレー等を使った噴霧処理が含まれるものとする。
また本発明では、上記機能性木質系材料を製造する際に、機能性薬剤に、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む水系溶液を使用して、木質系材料の表面処理、含浸処理、注入処理または拡散浸透処理を行った後、この木質系材料の表面上に、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体から成る塗膜を形成する方法を採用することができる。
また、上記機能性薬剤に含まれる無機酸及び無機塩類の配合量については、木質系材料に充分な機能性を付与できるように無機酸及び無機塩類の総量を25〜45重量%とするのが好ましい。
また本発明では、上記機能性薬剤として、無機酸としてホウ酸並びに無機塩類としてホウ酸塩およびリン酸塩を含む燃焼抑制剤を好適に使用することができる。
また更に、上記機能性薬剤に燃焼抑制剤を使用する場合には、ホウ酸、ホウ酸塩およびリン酸塩と、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールとを含有する水系溶液から成り、かつ、常温における水系溶液のpHが7〜8である薬剤を使用するのが好ましい。なお、常温とはJIS Z 8703によると、20℃±15℃である。
また、上記木質系材料を表面塗装する際には、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体を含む水性塗料を使用するのが好ましい。
本発明では、機能性木質系材料において、機能性薬剤で処理された木質系材料の表面上に、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体から成る塗膜を形成して構成したことにより、表面上の塗膜によって木質系材料中に付着した薬剤の有効成分の溶脱を抑制することが可能となる。
そのため、機能性木質系材料が建築材料に使用されて、雨水で濡れた場合でも、また高湿度環境に晒された場合でも、薬剤の効能を長期間保持することができる。また更に、本発明では、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む機能性薬剤を使用しているため、木質系材料に燃焼抑制効果や防虫性、防腐性等の充分な機能性を付与することができる。
しかも、本発明では、木質系材料の表面に形成する塗膜を上記成分から構成したことにより、無機塩類を10重量%以上含む機能性薬剤を使用した場合でも、塗膜上に凝集が起こらないため、木質系材料の白変も防止することができる。ゆえに、木質系材料の外観が損なわれる心配もないため、見栄えの求められる用途にも問題なく使用できる。
したがって、本発明により、機能性の面において、機能性薬剤によって得られた優れた効能を長期間保持できるだけでなく、外観の面においても、木質系材料特有の落ち着いた自然な印象が損なわれない。特に建築用途において実用性の高い機能性木質系材料を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
燃焼抑制効果の確認試験(2)の試験結果を表す屋根サンプルの写真である。 燃焼抑制効果の確認試験(2)の試験結果を表す屋根サンプルの写真である。 燃焼抑制効果の確認試験(2)の試験結果を表す屋根サンプルの写真である。 燃焼抑制効果の確認試験(2)の試験結果を表す屋根サンプルの写真である。
次に、本発明を実施するための具体的態様及び好ましい条件について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されない。
[機能性木質系材料の構成]
まず、本発明の機能性木質系材料は、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む水系溶液を機能性薬剤として使用して、表面処理、含浸処理、注入処理または拡散浸透処理が行われた木質系材料の表面上に、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体から成る塗膜を形成して構成される。
[木質系材料]
なお、上記木質系材料には、檜皮葺き等に使われる檜皮や杉皮等の樹皮材、柿葺きなどの板葺きに使われる檜、杉、桜や榎などの厚さ2mmから30mmの薄板材、チガヤやススキ等の萱材、杉板や檜板の無垢材、及び合板やパーティクルボード等の木質材料などが含まれる。また、機能性薬剤に燃焼抑制剤を使用する場合には、屋根材として屋外で風雨に晒される樹皮材や薄板材、萱材を木質系材料として好適に使用できる。特に本発明は檜皮葺き屋根に対して好適に使用できる。
[機能性薬剤]
一方、上記機能性薬剤については、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む水系溶液であれば、薬剤が持つ機能の種類は特に限定されず、具体的には、燃焼抑制剤や防虫剤、防カビ剤、防腐剤等を使用することができる。また、機能性薬剤に含まれる無機酸及び無機塩類の総量については、充分な機能が発揮されるように25〜45重量%とするのが好ましい。
また、屋外に晒される木質系材料に使用する機能性薬剤としては、ホウ酸並びに無機塩類としてホウ酸塩及びリン酸塩を含む燃焼抑制剤を好適に使用でき、更に好ましくは、ホウ酸、ホウ酸塩及びリン酸塩と、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールとを含有する水系溶液であって、水系溶液のpHが7〜8の燃焼抑制剤を使用できる。
なお、上記燃焼抑制剤の各成分について説明すると、ホウ酸、ホウ酸塩およびリン酸塩は燃焼抑制効果を付与する成分であり、エチレングリコール及びポリエチレングリコールは木質系材料への薬剤の浸透を促進する成分である。またpHが7〜8に調整されているのは、上記各成分の配合比率を高めた場合でも結晶析出及び木質系材料の変色が起こらないようにするためである。
なお、上記燃焼抑制剤のpHを7〜8の範囲内に調整するには、水系溶液中における有効成分の濃度を、ホウ酸5〜15重量%、ホウ酸塩2.5〜20重量%、リン酸塩10〜25重量%の範囲で調節するのが好ましい。
また、上記ホウ酸塩には、四ホウ酸ナトリウム(ホウ砂)を好適に使用できるが、他にも、メタホウ酸ナトリウム、ホウ酸アンモニウムを単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。また、上記リン酸塩には、リン酸水素二アンモニウムまたはリン酸二水素アンモニウムを好適に使用できるが、他にも、リン酸水素二ナトリウムまたはリン酸二水素ナトリウムを単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記浸透助剤として用いるエチレングリコール及びポリエチレングリコールについては、水系溶液中で無機塩類の溶解度低下による結晶析出が起こらないように、エチレングリコールまたは平均分子量が106〜500のポリエチレングリコールを、その含有量が15重量%となるように調整するのが好ましいが、1〜10重量%の範囲がより好ましい。
[塗膜]
他方、上記木質系材料の表面に塗膜を形成するための材料としては、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体を含む水性塗料を使用するのが好ましい。なお、水性塗料は、分散型のエマルジョン塗料であっても溶液型の水性塗料であってもよいが、分散型のエマルジョン塗料が好ましい。
[機能性木質系材料の製造方法]
次に、上記機能性木質系材料の製造方法について説明する。まず木質系材料に対し、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む水系溶液を機能性薬剤として使用して、表面処理、含浸処理、注入処理または拡散浸透処理を行う。なおこの際の表面処理については、刷毛等を使った塗布処理でもよく、またスプレー等を使った噴霧処理であってもよい。
また、上記機能性薬剤の表面処理、含浸処理、注入処理または拡散浸透処理については、機能性薬剤中の含有成分を木質系材料に付着させることによって、木質系材料に所定の機能を付与する工程であり、必要に応じて同じ処理を複数回行ったり、また異なる処理を組み合わせたり、また乾燥工程を間に入れたりすることもできる。
なお、上記機能性薬剤の付着量については、木質系材料に対して所定の機能を付与できる量を付着させる必要があるが、付着させる成分及び目的とする効果によって付着量はその都度変わる。具体的には、機能性薬剤が後述する燃焼抑制剤である場合、木質系材料1m2あたり0.05kgから1.0kgの範囲(0.05kg/m2から1.0kg/m2の範囲)が好ましいが、0.1kg/m2から0.8kg/m2の範囲がより好ましく、0.2kg/m2から0.5kg/m2の範囲が更に好ましい。
その後、上記木質系材料の表面を塗装して、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体から成る塗膜を形成する。なお木質系材料の表面塗装方法については、塗膜を木質系材料の表面に均一に形成できる方法であればよく、主に塗布や噴霧等の方法を採用することができる。
そして、上記のように木質系材料の表面に所定成分から成る塗膜を形成することにより、木質系材料に付着させた機能性薬剤が、木質系材料が水に濡れた際に外部に溶脱する現象を防止することができる上に、塗装時において木質系材料の表面で塗料が凝集する現象も防止することができる。
なお、上記塗装に使う塗料の塗布量については、0.01kg/m2から0.5kg/m2の範囲であれば特に問題なく機能性薬剤の溶脱防止効果を期待できるが、0.02kg/m2から0.2kg/m2の範囲が好ましく、0.05kg/m2から0.125kg/m2の範囲が更に好ましい。これは、0.01kg/m2未満だと降雨等による燃焼抑制剤の溶脱を防止する効果が十分でなく、また0.2kg/m2を超えて塗布してもそれ以上の溶脱防止効果が得られない場合がある。
『機能性木質系材料の調製例』
まず、この調製例では、以下の態様で実施例1〜3および比較例1〜6の機能性木質系材料を調製した。また本調製例では、木質系材料に、大きさ16cm×4cm、重量3.5g〜4.5gの檜皮を使用すると共に、機能性薬剤に燃焼抑制剤を使用した。また、燃焼抑制剤の含有成分については、ホウ酸塩としてホウ砂(四ホウ酸ナトリウム・十水和物)を、またリン酸塩としてリン酸水素二アンモニウムを、また浸透助剤として平均分子量200のポリエチレングリコール(青木油脂工業株式会社製ブラウノンPEG200)を使用した。
「燃焼抑制剤および塗料の塗布量」
なお本調製例では、下記調製法(1)の方法で作製した燃焼抑制剤を、塗布量が固形分として1.3gになるように檜皮に塗布したが、下記調製法(2)の方法で作製した燃焼抑制剤を、塗布量が固形分換算で同量となるように塗布した場合にも同様の結果が得られると推察される(詳しくは後述する)。また、実施例及び比較例に使用した塗料は、塗布量が固形分として0.7gになるように塗布した。
[燃焼抑制剤の調製法(1)]
この調製法(1)では、65℃に加温した水59g中にポリエチレングリコール1gを溶かした後、その水溶液中にホウ酸10g及びホウ砂10gを溶かし、更にその水溶液が50℃に冷めてからリン酸水素二アンモニウム20gを加えて燃焼抑制剤を作製した。そして、JIS Z 8802に準拠して調整した薬剤の常温におけるpHを測定したところ、そのpHは7.3であった。
[燃焼抑制剤の調製法(2)]
この調製法(2)では、65℃に加温した水69g中にポリエチレングリコール1gを溶かした後、その水溶液中にホウ酸10g及びホウ砂10gを溶かし、更にその水溶液が50℃に冷めてからリン酸水素二アンモニウム10gを加えて燃焼抑制剤を調製した。そして、この薬剤のpHを上記燃焼抑制剤調整法(1)と同様の方法で測定したところ、そのpHは7.2であった。
「実施例1」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む水性塗料(昭和電工社製AP-4750Nを水で5倍に希釈したもの)を塗布して成る機能性木質系材料。
「実施例2」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む水性塗料(昭和電工社製AP-3820Nを水で5倍に希釈したもの)を塗布して成る機能性木質系材料。
「実施例3」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む水性塗料(昭和電工社製AP-5150を水で5倍に希釈したもの)を塗布して成る機能性木質系材料。
「比較例1」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、アクリル酸エステル共重合体樹脂を含む水性塗料(昭和電工社製AP-4795Nを水で5倍に希釈したもの)を塗布して成る機能性木質系材料。
「比較例2」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、アクリル酸エステル共重合体エマルジョンを含む水性塗料(昭和電工社製AP-4690Nを水で5倍に希釈したもの)を塗布して成る機能性木質系材料。
「比較例3」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、酢酸ビニル重合水性エマルジョンを含む水性塗料(昭和電工社製S-5501RLを水で5倍に希釈したもの)を塗布して成る機能性木質系材料。
「比較例4」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、シリコーン乳濁液を含む水性塗料(市販品)を塗布して成る機能性木質系材料。
「比較例5」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、アルキド系合成樹脂を含む油性塗料(市販品)を塗布して成る機能性木質系材料。
「比較例6」
燃焼抑制剤を表面に塗布した檜皮を60℃で30分乾燥し、更に室温で一晩静置した後、この檜皮の表面に、アルキル・ウレタン系合成樹脂を含む水性塗料(市販品)塗布して成る機能性木質系材料。
「機能性薬剤の溶脱防止効果の確認試験」
この確認試験では、上記調製例で調製した機能性木質系材料について、燃焼抑制剤の溶脱防止用塗料の刷毛塗り感や、塗装後の外観、降雨を想定して水で濡れた後のホウ酸残留率および燃焼性を、以下の試験方法により確認した。
<試験方法>
まず、燃焼抑制剤を表面処理した木質系材料の表面に、塗料を刷毛で塗布した際の刷毛塗り感を確認する。次に、塗料を塗布した機能性木質系材料を、60℃で30分乾燥させた後、機能性木質系材料の表面に白変が生じていないかを目視で確認する。そして、室温で一晩静置した後、機能性木質系材料に純水100mlを霧吹きで噴霧し、機能性木質系材料から溶脱したホウ酸量を測定して、ホウ酸残留率を算出する。そして、耐候性試験後の機能性木質系材料の外観を確認した後、機能性木質系材料の燃焼試験を行う。なおホウ酸量の測定には、共立理化学研究所社製水質測定用試薬セットNo.39ホウ素を用いた。また水質計に同社のラムダー9000(型式:L-9000)を使用し、測定原理としてアゾメチンH法を用いて測定した。
なお、本試験では、刷毛塗り感に関して、塗料のこびりつきが生じず表面に均一に塗布できるものを“○”、塗料がこびりついて均一に塗布できないものを“×”と評価する。また、外観に関しては、白変が生じていないものを“○”、多少白変が生じているものを“△”、激しく白変が生じているものを“×”と評価する。また、燃焼試験の方法は、以下に記す。
「燃焼抑制効果の確認試験(1)」
この確認試験(1)では、JIS L 1091繊維製品の燃焼性試験方法を参考に次のように試験を行った。上記調製例で調製した機能性木質系材料の試験片を45度の角度を付けてアルコールランプから3cm上方に、かつ、試験片の先端部がアルコールランプ真上の中間部位から斜め上3cmの位置にくるように配置した。そして、アルコールランプを点火して試験片が燃え始めるまでの時間をタイマーで計測した。
そして上記試験の結果、以下の表1に示すように、実施例1〜3の機能性木質系材料については、塗料の刷毛塗り感および塗装後の外観が良好であるだけでなく、水に濡らした後のホウ酸残留率が比較例1〜6よりも格段に高い数値を示した。また、耐候性試験後の燃焼試験においても、優れた結果が得られた。なお表中のブランクは、試験片に塗料を塗布せずに試験を行った結果である。
また、上記調製法(1)及び(2)の方法で作製された燃焼抑制剤を、塗布量が固形分として同量となるように檜皮に塗布して耐候操作を行わずに実施した燃焼試験において、機能性薬剤を塗布しない檜皮(ブランク)が10秒で燃えたのに対し、前記燃焼抑制剤を塗布した檜皮は、300秒以上の燃焼抑制効果を示した。そのため、上記実施例において、調製法(1)による燃焼抑制剤の代わりに調製法(2)による燃焼抑制剤を使用した場合にも、同様の優れた燃焼抑制効果が発揮されることは自明と考える。
「燃焼抑制効果の確認試験(2)」
この確認試験(2)では、以下の方法を用いて野外試験を行い燃焼抑制効果の有無を確認した。まず新しい檜皮および30年経過した檜皮を用いて、檜皮葺きの屋根を部分的に再現したサイズ30cm×50cmの屋根サンプルを2枚ずつ作製した。なおここでは、新しい檜皮から作製した屋根サンプルを「新檜皮サンプル」、30年経過した檜皮から作製した屋根サンプルを「古檜皮サンプル」と呼ぶ。
そして、上記新檜皮サンプル及び古檜皮サンプルのそれぞれ1枚に対して、燃焼抑制剤が浸透し易くなるように水を散布して、各サンプルを湿潤させた。その後、水で湿潤させた各サンプルに、燃焼抑制剤(上記燃焼抑制剤の調製法(1)で調製された薬剤)を、塗布量が1m2あたり0.5kgとなるように散布した。なお本試験では、一度に全量散布して燃焼抑制剤が流れ落ちてしまわないように、2回に分けて0.25kg/m2ずつ散布した。そして燃焼抑制処理を散布した各サンプルを、2日間充分に乾燥させた。
その後、上記乾燥させた各サンプルに、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体を含む水性塗料(昭和電工社製AP-3820Nを水で5倍に希釈したもの)を、塗布量が固形分として0.2kg/m2となるように全体にむらなく散布した。そして塗料を散布した各サンプルを、5日間充分に乾燥させた。
次に、上記薬剤処理を行った新檜皮サンプルと古檜皮サンプル、及び薬剤処理を行わなかった新檜皮サンプルと古檜皮サンプルの合計4種類の屋根サンプルを、45°の角度で傾斜した架台に置き、これらの屋根サンプル上に、カセットコンロバーナーで2分間加熱した種火材(ブナの木を4cm角にカットしたものを表裏中央に互い違いの向きになるように3cmの切り込みをいれたもの)、及び着火剤(2cm×2cmのバーベキュー用紙製着火剤)を載せて5分間観察した。
その結果、図1に示すように、薬剤処理を行った新檜皮サンプルは種火材及び着火剤の下部が少し焦げただけだったのに対し、無処理の新檜皮サンプルは、種火材及び着火剤を取り除いても火が消えずに燃え続けた。また、薬剤処理を行った古檜皮サンプルについても、図2に示すように、種火材及び着火剤の下部が少し焦げただけだったのに対し、無処理の古檜皮サンプルは、裏面まで火が周り燃え抜けた。
そして次に、上記種火材や着火剤等を載せて5分経過した屋根サンプル上から種火材等を取り除き、60分放置した後の各屋根サンプルを観察した。その結果、図3に示すように、薬剤処理を行った新檜皮サンプルは、表面が焦げたのみだったのに対して、無処理の新檜皮サンプルは、燃え続けて焼け落ちた。また、薬剤処理を行った古檜皮サンプルについても、図4に示すように、表面が焦げたのみだったのに対し、無処理の古檜皮サンプルは、燃え続けて焼け落ちた。
以上の結果から、薬剤処理を行った新檜皮サンプル及び古檜皮サンプルが、優れた燃焼抑制効果を有することが確認できた。最後に上記試験結果を纏めた内容を下記表2に示す。
本発明に係る「機能性木質系材料、及びその製造方法」は、燃焼抑制効果が長期間継続して求められる檜皮葺き屋根や茅葺き屋根等を有する日本古来の建築物において活用が見込まれるだけでなく、防蟻性や防虫性が求められる建築物の構造材、またはエクステリア等の分野にも広く活用できることから、産業上の利用可能性は非常に大きい。

Claims (6)

  1. 機能性薬剤に、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む水系溶液を使用して、木質系材料の表面処理、含浸処理、注入処理または拡散浸透処理を行った後、この木質系材料の表面上に、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体から成る塗膜を形成することを特徴とする機能性木質系材料の製造方法。
  2. 機能性薬剤に含まれる無機酸及び無機塩類の総量が25〜45重量%であることを特徴とする請求項1記載の機能性木質系材料の製造方法。
  3. 機能性薬剤が、無機酸としてホウ酸並びに無機塩類としてホウ酸塩およびリン酸塩を含む燃焼抑制剤であることを特徴とする請求項1または2に記載の機能性木質系材料の製造方法。
  4. 燃焼抑制剤が、ホウ酸、ホウ酸塩およびリン酸塩と、エチレングリコールまたはポリエチレングリコールとを含有する水系溶液であり、かつ、水系溶液のpHが7〜8であることを特徴とする請求項3記載の機能性木質系材料の製造方法。
  5. 木質系材料の表面塗装時に、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体を含む水性塗料を使用することを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載の機能性木質系材料の製造方法。
  6. 機能性薬剤に、水溶性の無機塩類を10重量%以上含む水系溶液を使用して、木質系材料の表面処理、含浸処理、注入処理または拡散浸透処理が行われると共に、表面上に、スチレンと、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの一方または両方との共重合体または3元共重合体から成る塗膜が形成されていることを特徴とする機能性木質系材料。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102093568B1 (ko) * 2018-12-06 2020-03-25 이삼수 너와 제조 방법 및 이에 의해 제조된 너와 설치 방법 및 한옥 건축물

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