JP2016029950A - 野菜チップス、その製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 油脂類を用いるフライによらず、かつ糖類添加を行なわずに野菜類からパリパリした手触りとサクサクした食感を有する野菜チップスを製造すること。および、そのような野菜チップスの性状を特定すること。【解決策】 野菜類を温水浸漬処理してから、適切な形状にスライス、あるいは裁断し、凍結し、解凍してから熱風乾燥して水分率10%以下として製品化する。【選択図】なし
Description
本発明は食品加工分野、より詳細には野菜加工食品分野に属する。
でんぷん質、繊維質を多く含む野菜や果実の乾燥チップスは既に多量に販売されている。例えば、ポテトチップス、薩摩芋チップス、バナナチップス等が代表的な製品である。少量ではあるが、名産品、あるいは健康食品として販売されているものとしては蓮根チップス、くわいチップス、りんごチップス、かぼちゃチップス、ごぼうチップス等がある。
でんぷん質を多く含む芋類、蓮根、くわいでは原料を適当な厚みにスライス裁断して比較的高温(160〜190℃)でフライすると加熱調理、でんぷんのアルファ化、脱水乾燥が並行して進み、水分率10%以下の、冷えるとパリパリした手触り、食感のサクサクしたチップスとなる。食感のサクサク感はフライ中に高温の油に原料が触れることにより、原料内部から一気に水分が蒸発し、原料組織を破壊して多孔質となるためである。これらの、でんぷん質を多く含む原料ではでんぷん類がチップス製品のしっかりしたボディーを形成する。
一方、でんぷん質の少ない、りんご、ごぼう、バナナ等ではフライ前に麦芽糖、ぶどう糖、デキストリン等の糖類を原料に含浸させてからフライする。これらの原料は高温になると変色、および/あるいは組織が軟弱化して外観が汚くなるので、多くは減圧フライ法、つまり5〜10Torr程度の減圧下、油温度70〜100℃程度の比較的低温でフライして製造する。減圧雰囲気を維持することで水の沸点を降下させるとともに、発生する水蒸気の体積を膨張させて、脱水促進と原料組織の多孔質化を実現する。これらの製品ではチップス製品のボディーは原料が本来有していた成分(糖類、繊維質、タンパク質)等に加えて、前処理で含浸、付加させた糖類が補強することになる。
以上、既存の野菜類のチップス製品について述べたが、これらはいずれもフライにより製造されるため、製品は付加された油脂を相当量含む。最近の日本人の摂取熱量過多の健康への悪影響が指摘される中、油脂を用いないチップス類の市場への投入のニーズが高まっている。本発明者が知る範囲では、わずかにりんごチップスの一部の製品が、フライではなく真空凍結乾燥法により製造され販売されているが、真空凍結乾燥は乾燥に要する時間が長く、設備投資金額も莫大になり、さらに乾燥に多大の電気エネルギーを消費するために大衆的な商品とはなりえず、高価な名産品として少量が出回っているに過ぎない。
本発明はフライや真空凍結乾燥によらず、食品乾燥では設備投資金額が低廉で、乾燥時間も短く、エネルギーコスト面でも有利な熱風乾燥法により野菜からチップス類を製造する方法を確立し、油脂類を含まなく、かつ前処理において糖類の含浸をも実施せず、原料本来の成分だけでパリパリした手触りとサクサクした食感を有する製品、およびその製造方法について開示するものである。
高分子 第50巻10月号(2001)p.715〜718、香西みどり
日本調理学会誌 第35巻(4)(2002)p.387〜392、香西みどり
日本調理科学会誌 第42巻No.3(2009)p.194〜197、堀江秀樹、平本理恵
本発明が原料の野菜類として選択し、既に所望の性状のチップス製品を製造しえたものとしては人参、大根等の根菜類、葉菜類としてのキャベツがある。人参、大根は日本の代表的な根菜類で日本食品標準成分表(2010)によれば、人参は水分率89.5%、炭水化物9.1%、大根は水分率94.6%、炭水化物4.1%の多水分原料である。キャベツは日本の代表的な葉菜類であり同成分表では水分率92.7%、炭水化物5.2%と、これも多水分原料である。本発明の適用の範囲は人参、大根、キャベツに限定するものではなく、他の根菜類、葉菜類からも所望のチップスの製造の余地がある。これに対し、現在の主要な野菜チップスであるポテトチップスの原料であるジャガイモは同成分表では、水分率79.8%、炭水化物17.6%であり、本発明が加工対象とする野菜類よりはるかに水分率が少なく炭水化物含量が高い。
本発明者は当初、従来の、芋類以外に適用される一般的なチップス類製造の前処理方法である糖類の含浸法を種々検討したが、熱風乾燥では恒率乾燥期に進み、水分の蒸発が緩徐になると、原料表面に濃厚な糖溶液が付着するようになり、原料片相互が固着したまま乾燥が進むため、途中の攪拌、剥がしが不可欠となる。このような余分な手作業による作業効率の大幅な低下、および乾燥途上での頻繁な手入れにより製品表面の荒れ、製品の形状の捻れ、破壊等が起こり、製品の外観を損なうとともに廃棄率の増大となる結果となり、この方向性での検討を断念した。
次に、本発明者はチップス類製造に用いられる他の前処理方法の組み合わせを種々検討し、ある一定の順序で、および一定の条件下に実施した場合にのみ、添加物や副原料を添加せずとも、原料由来の本来の美しい色彩とパリパリした手触りとサクサクした食感を有するチップス類を製造できることを見出し本発明を完成した。本発明の野菜チップスは野菜類自身に由来する成分でボディーを形成し、パリパリした手触りとサクサクした食感を有し、付加された油脂類と糖類を含有しないという新規な性状を有する。
本発明は熱風乾燥に先立って複数の前処理工程を踏襲する。各工程について順次記述する。
剥皮工程 人参、大根等の根菜類では剥皮を行なう。剥皮の効果は、チップス製品の色彩の向上として得られる。これは、皮には乾燥時に変色を起こすポリフェノール類等の着色成分を多く含むためと推測される。なお、色彩をさほど重視しないチップス製品では剥皮工程を省いてもよい。よって剥皮工程は必要の技術構成要件としては特定しない。
中温度ブランチング 人参、大根等の根菜類、キャベツ等の葉菜類に対して50〜70℃、好ましくは60℃±5℃に加温処理する。便宜上、湯に浸漬することが一般的であろう。丸、あるいは剥皮した原料を、栽断前に浸漬するのは原料からの呈味成分の逸失を極力回避するためである。呈味成分逸失防止のために、不透水性のフィルム被覆を行うことは、当該技術分野では容易に想到できることである。なお、根菜類では前工程の剥皮と中温ブランチングの順序を入れ替えても製品の性状にほぼ差は出ない。浸漬時間は30分間から4時間、作業効率と充分な効果を考慮すると2時間±30分間が好ましい。本工程の効果は製品のパリパリした手触りと食感のサクサク感として発現する。
本工程による効果の発現の機構については、おそらく非特許文献1、2、3に書かれているように野菜中のペクチンエステラーゼの中温度帯での活性化によりペクチンのメチルエステルが加水分解し、カルシウムとの結合が促され、ペクチンのカルシウム塩の架橋構造が強化されるためであろう。
なお、本発明者の先行技術調査の範囲では野菜乾燥品の製造の前処理技術として中温度ブランチング法を適用した例は特許文献1を除いて検出できなかった。特許文献1は野菜加工の前処理として中温度ブランチング法を適用しているが、この特許発明の志向する乾燥野菜製品は乾燥製品をそのまま食するスライス裁断したチップス製品ではなく、水戻しして原材料、あるいは喫食に供するダイスカット裁断した乾燥食品である。この場合の中温度ブランチング法の効果は水戻ししたときの萎縮防止や食感の向上として得られる。本発明は乾燥製品を水戻しすることなく、そのままをチップスとして喫食するものである。かくして、特許文献1の先行技術は本発明のチップス製品の製造方法とは、乾燥製品の形状、使用目的、食感向上の効果の享有の場面も異なるものであり、特許文献1から本発明のチップス類とその製造方法を当業技術分野の技術者が容易に類推できるものであるとは言えない。
スライス裁断 野菜からのチップス類の製造について本発明はスライス裁断を踏襲する。本発明においては根菜類は1〜3mm厚、好ましくは1〜2mmにスライス裁断する。キャベツではスライスの必要はなく適度の大きさに裁断することでチップスの形状にできる。キャベツ等の葉菜類では10〜40mm四方ないしは一辺がこの範囲に収まる多角形に裁断する。好ましくは20〜30mmの一辺長さの範囲に裁断する。
スチーミング 従来のチップスの加熱前処理法としては熱湯ブランチング、あるいはスチーミングのどちらかを原料の適性に合わせて採用していたが、本発明ではもっぱらスチーミングを採択する。この理由は、第一に熱湯ブランチングでは呈味成分の逸失がはなはだしく、無添加製品をも視野に入れた本発明者の製造条件では製品の旨味が不足すること、熱湯ブランチングでは野菜組織の軟化がおうおうにして進行し過ぎて製品の強度が不足するためである。
スチーミングは95〜105℃の蒸気温度で5〜60分、好ましくは10〜30分間実施する。
凍結 従来のチップス製造では加熱済み原料の凍結は保管の意味合いが濃かったが、本発明では不可欠の工程として実施する。凍結は緩慢凍結、急速凍結のいずれでもよい。凍結工程の技術的効果は製品のサクサクした食感に現れる。凍結しない場合には食感はサクサク感が不足した重いものになり美味さに欠ける。凍結は通常の条件(食品原材料保管の場合は−15℃以下、乾燥防止のための密封包装状態で)であれば数ヶ月程度実施してもよい。もちろん原料が完全に凍結したことを確認した後に直ちに解凍して次工程に進んでもよい。
解凍 凍結品を解凍する。解凍は自然放置、水浸漬、湯浸漬、スチーミング、電磁波照射等で実施する。解凍時間の過長による腐敗や、湯・蒸気による過加熱に注意し、完全に解凍すればできるだけ早く次工程に進む。解凍時にドリップが生じるときは充分に液切りする。顧客が必ずしも無添加に拘泥せず、製品の呈味の強さを所望するときは、食塩、砂糖、アミノ酸、核酸関連物質、エキス類等で軽く調味してもよい。ただし、次工程の乾燥で調味成分は製品中に濃縮・残存するので添加量はほとんどの場合、軽微なもので済むであろう。当該技術分野の技術者であれば、調味の加減は数例の試作により最適配合を見出すことに困難はないはずである。調味は不可欠ではなく、顧客の要求に応じて実施されるべきものである。
熱風乾燥 本発明では野菜乾燥製品製造に適用される常識的な条件にて熱風乾燥する。すなわち、熱風温度60〜80℃、4〜10時間で水分率5%以下になるまで実施する。この場合、水分率が工程終点の指標であり、随時、水分検査を実施して熱風乾燥を終了する。乾燥時間は当然に、投入原料の量と乾燥機の性能(風量、装置方式/棚式、サイロ型下方吹き上げ式、転動吹き付け式)のバランスにより異なるであろう。このことも当該技術分野の技術者には自明のことである。
なお、熱風乾燥直後は5%以下の乾燥状態にあっても、取り出し、保管、検品、選別、包装等の工程での雰囲気からの吸湿が当然に起こる。本発明が所望するパリパリした手触りとサクサクした食感は水分率10%以下までは維持されるので、本発明の製品の水分率としては10%以下と規定する。本発明における水分率は、70℃で20分間の加熱乾燥法により測定した値である。
本発明の製品を市場で販売するために、ほとんどの場合、小分け包装状態に加工されるであろう。一般にチップス類は常温扱い・保管で長い流通期間(数ヶ月ないし半年程度)を適用されるので、吸湿、酸化、退色等の劣化防止のため、小分け包装内部への脱酸素剤、乾燥剤の封入、および包装フィルムの水蒸気、酸素のバリアー性能、紫外線や可視光線の遮蔽性能に配慮すべきは当該技術分野の技術者には自明のことである。また、包装前に粉状の調味料を振りかけて味を整えることも当該技術分野では自明の任意的付加工程である。
かくして製造される野菜チップス類はパリパリした手触りとサクサクした食感、および野菜本来の自然な風味・味を呈するとともに、油脂を全く添加していないので消費者の熱量摂取過多の健康への不安も排除した製品である。さらに付加した糖類も含有していない「無添加」を強調しうるチップス製品として商品化しうる可能性を有する。
人参を水洗して皮を剥いた後、60℃の温水バスに2時間浸漬した。次いで1mmの厚みで斜め輪切りにし、15分間蒸した。蒸した人参をポリエチレンの袋に入れ、流水中で粗熱を取った後、家庭用冷凍庫で1晩冷凍した。翌日、袋ごと流水中に浸漬して解凍し、ドリップを除去して棚式乾燥機で60℃、6時間熱風乾燥し、水分率2.3%まで乾燥した。得られた人参チップスは明るいオレンジ色を呈し、甘みがあり、パリパリした手触りとサクサクした食感を有していた。
大根を水洗して皮を剥いた後、60℃の温水バスに2時間30分浸漬した。次いで1mmの厚みで輪切りにし、15分間蒸した。蒸した大根をポリエチレンの袋に入れ、流水中で粗熱を取った後、家庭用冷凍庫で1晩冷凍した。翌日、袋ごと流水中で解凍し、ドリップを除去して棚式乾燥機で60℃、6時間熱風乾燥し、水分率2.8%まで乾燥した。得られた大根チップスは明るい灰白色を呈し、ほんのりとした甘みがあり、大根臭が少なく、パリパリとした手触りとサクサクした食感を有していた。
キャベツの葉を軸から外し、水洗した後、60℃の温水バスに2時間浸漬した。次いで3cm角にカットし、15分間蒸した。蒸したキャベツに風を当てて粗熱を取った後、ポリエチレンの袋に入れ、家庭用冷凍庫で1晩冷凍した。翌日、冷凍したまま棚式乾燥機に入れ、60℃、6時間熱風乾燥し、水分率2.4%まで乾燥した。得られたキャベツチップスは淡く褐色がかった緑色を保持し、パリパリとした手触りとサクサクした食感を有していた。
人参を水洗し、皮を剥かない以外は実施例1と同じ条件で処理した。
得られた人参チップスは、食感は良好であったが人参の鮮やかさが失われてくすんだ色となった。手触り、食感、味に問題がなく、東南アジア、中国向け、あるいは国内での安価な乾燥混ぜ菓子またはスナック商品として販売可能と判断された。
得られた人参チップスは、食感は良好であったが人参の鮮やかさが失われてくすんだ色となった。手触り、食感、味に問題がなく、東南アジア、中国向け、あるいは国内での安価な乾燥混ぜ菓子またはスナック商品として販売可能と判断された。
人参を水洗して皮を剥いた後、1mmの厚みで斜め輪切りにした。中温でのブランチング処理を省き、15分間蒸した後、人参をポリエチレンの袋に入れ、流水中で粗熱を取った後、冷凍庫で1晩冷凍した。翌日、袋ごと流水中に浸漬して解凍し、ドリップを除去して実施例1と同様に熱風乾燥した。
得られた人参チップスは柔らかさが残り、サクサクした食感は感じられなかった。
得られた人参チップスは柔らかさが残り、サクサクした食感は感じられなかった。
実施例1において、スライス厚を3.5mmとする以外は同じ条件で処理した。
得られた人参チップスは硬く、歯切れが悪いため食べにくいものとなった。
得られた人参チップスは硬く、歯切れが悪いため食べにくいものとなった。
実施例1において、冷凍処理を省略した以外は同じ条件で人参を処理した。
得られた人参チップスは硬さはあるものの、サクサク感が不十分であった。
得られた人参チップスは硬さはあるものの、サクサク感が不十分であった。
本発明の野菜チップスはスナックとして、あるいは野菜摂取不足を補う健康食品として利用価値があり、野菜加工食品分野の製造・販売業に貢献できると期待される。
Claims (5)
- 野菜類を原料とし、付加した油脂類と糖類を含有せず、原料とした野菜類自身に由来する成分でボディーを形成し、パリパリした手触りとサクサクした食感を有し、水分率が10%以下としてなることを特徴とする野菜チップス。
- 野菜類として人参、大根、キャベツのいずれか一種を選択してなることを特徴とする請求項1に記載の野菜チップス。
- 野菜類を50〜70℃、30分〜4時間で中温度ブランチングし、根菜類にあっては1〜3mm厚にスライス裁断し、葉菜類にあっては一辺を10〜40mm大に裁断し、95〜105℃で10〜30分間スチーミングし、凍結し、解凍し、60〜80℃、4〜10時間で水分率5%以下に熱風乾燥し、水分率10%以下でパリパリした手触りとサクサクした食感を有するチップスとして製品化してなることを特徴とする野菜チップスの製造方法。
- 野菜類であって根菜類では人参、大根のいずれか一種を、葉菜類ではキャベツを選択してなることを特徴とする請求項3に記載の野菜チップスの製造方法。
- 中温度ブランチングが60±5℃で2時間±30分間、根菜類にあっては1〜3mm厚のスライス裁断、葉菜類にあっては一辺20〜30mm大の裁断、スチーミング時間が10〜30分間の各条件を選択してなることを特徴とする請求項3、4のいずれか一項に記載の野菜チップスの製造方法。
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JP2014165319A JP2016029950A (ja) | 2014-07-29 | 2014-07-29 | 野菜チップス、その製造方法 |
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---|---|---|---|---|
JP2018093838A (ja) * | 2016-12-16 | 2018-06-21 | アルバック九州株式会社 | 多孔質乾燥食品の製造方法及び多孔質乾燥食品製造装置 |
JP2021006016A (ja) * | 2019-06-28 | 2021-01-21 | 知成 野村 | 素焼きチップスの製造方法 |
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2014
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