本発明の実施にあたって、導電性高分子は、特に特定のものに限定されることはないので、本発明において、より大きな特徴をなす、亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルや、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物および芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物について、先に説明する。
上記のジエステルや芳香族化合物は、電解コンデンサの製造にあたって、溶媒に溶解させた溶液状で電解コンデンサの製造に供される。
上記溶媒としては、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液が好ましく、特に第2の発明においては、溶媒としてこれを用いておくことが必須の要件となる。
上記亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルとしては、亜リン酸またはリン酸の酸基と、炭素数1〜18のアルキル基、ベンジル基およびフェニル基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基とで構成したものが好ましい。そして、上記のアルキル基としては、炭素数1〜12のものがより好ましく、炭素数1〜8のものがさらに好ましい。また、ベンジル基やフェニル基に関しても、その芳香環の構成炭素にアルキル基が結合しているものであってもよい。
具体的には、上記亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエステルとしては、例えば、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジイソブチル、亜リン酸ジターシャルブチル、亜リン酸ジアミル、亜リン酸ジヘキシル、亜リン酸ジヘプチル、亜リン酸ジオクチル、亜リン酸ジエチルヘキシル、亜リン酸ジデシル、亜リン酸ジラウリル、亜リン酸ジドテシル、亜リン酸ジミリスチル、亜リン酸ジパルメチル、亜リン酸ジステアリル、亜リン酸ジベンジル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジヘキシルフェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸ジブチル、リン酸ジイソブチル、リン酸ジターシャルブチル、リン酸ジアミル、リン酸ジヘキシル、リン酸ジヘプチル、リン酸ジオクチル、リン酸ジエチルヘキシル、リン酸ジデシル、リン酸ジラウリル、リン酸ジミリスチル、リン酸ジパルメチル、リン酸ジステアリル、リン酸ジベンジル、リン酸ジフェニルなどが好ましい。
本発明において、電解コンデンサの構成材として、このような亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエステルを用いるのは、この亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルが、電解コンデンサの漏れ電流を減少させ、かつ耐熱性を向上させて、漏れ電流が少なく、かつ耐熱性が優れた電解コンデンサを提供するのに寄与するからである。
芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物としては、ベンゼン系のもの、ナフタレン系のもの、アントラセン系のもののいずれも用いることができる。その具体例としては、例えば、ヒドロキシ安息香酸(つまり、ヒドロキシベンゼンカルボン酸)、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、ヒドロキシ安息香酸ブチル、ヒドロキシ安息香酸イソブチル、ヒドロキシ安息香酸ターシャルブチル、ヒドロキシ安息香酸アミル、ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、ヒドロキシ安息香酸オクチル、ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルなどのアルキル基の炭素数が1〜8のヒドロキシ安息香酸アルキル、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、アミノニトロフェノール、メトキシフェノール、オイゲノール(つまり、4−アニル−2−メトキシフェノール)、ハイドロキノン(つまり、1,4−ジオキシベンゼン)、ヒドロキシアニソール、ヒドロキシジニトロベンゼン、ジヒドロキシジニトロベンゼン、アルキルヒドロキシアニソール、ヒドロキシニトロアニソール、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ジヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシニトロ安息香酸)、フェノール、ジヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、トリヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ヒドロキシトルエンカルボン酸などのベンゼン系のもの、ニトロナフトール、アミノナフトール、ジニトロナフトール、ヒドロキシナフトエ酸(つまり、ヒドロキシナフタレンカルボン酸)、ジヒドロキナフタレンカルボン酸、トリヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシナフタレンジカルボン酸、ジヒドロキシナフタレンジカルボン酸などのナフタレン系のもの、ヒドロキシアントラセン、ジヒドロキシアントラセン、トリヒドロキシアントラセン、テトラヒドロキシアントラセン、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシアントラセンジカルボン酸、ジヒドロキシアントラセンジカルボン酸、テトラヒドロキシアントラセンジオンなどのアントラセン系のものなどを用いることができる。そして、これらはそれぞれ単独で用いることができ、また、2種類以上を併用することもできる。
上記芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物において、特にカルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物が好ましく、とりわけ、カルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物とニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物とを併用する場合が好ましい。そして、このカルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物とニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物とを併用すると、電解コンデンサのESRをより低減させ、耐熱性や充放電特性をより向上させることができることから好ましい。そして、このカルボキシル基を少なくとも1つ以上有する芳香族化合物とニトロ基を少なくとも1つ以上有する芳香族化合物とを併用する場合において、その両者の割合としては、質量比で、カルボキシル基を少なくとも1つ以上有する芳香族化合物:ニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物が1000:1〜1:100、特に50:1〜1:1が好ましい。
上記のようなヒドロキシル基を少なくとも1つ有し且つカルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物の具体例としては、前記したようなヒドロキシ安息香酸(つまり、ヒドロキシベンゼンカルボン酸)、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、ヒドロキシ安息香酸イソプロピル、ヒドロキシ安息香酸ブチル、ヒドロキシ安息香酸イソブチル、ヒドロキシ安息香酸ターシャルブチル、ヒドロキシ安息香酸アミル、ヒドロキシ安息香酸ヘキシル、ヒドロキシ安息香酸ヘプチル、ヒドロキシ安息香酸オクチル、ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシル、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシベンゼンジカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンジカルボン酸、アミノヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシトルエンカルボン酸、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ジヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシニトロ安息香酸)、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、アセチルアミノヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸などが挙げられ、ヒドロキシベンゼンカルボン酸、ジヒドロキシベンゼンカルボン酸、ヒドロキシトルエンカルボン酸、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸などが好ましい。
また、上記のようなヒドロキシル基を少なくとも1つ有し且つニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物の具体例としては、例えば、前記したようなニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール、ヒドロキシジニトロベンゼン、ジヒドロキシジニトロベンゼン、ヒドロキシニトロアニソール、アミノニトロフェノール、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ジヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ジヒドロキシニトロ安息香酸)、ニトロナフトール、ジニトロナフトールなどが挙げられ、ニトロフェノール、アミノニトロフェノール、ヒドロキシニトロベンゼンカルボン酸(つまり、ヒドロキシニトロ安息香酸)、ニトロナフトールなどが好ましい。
前記のように、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有し且つ芳香環の構成炭素に結合するカルボキシル基を少なくとも有する芳香族化合物と併用するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物としては、前記のように、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有し芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物以外にも、芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を有していれば、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を有しないものでも、前記のような芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を有するものの場合と同様に、ESRが低く、耐熱性が優れ、かつ充放電特性が優れた電解コンデンサを得ることができる。
そして、このような芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有し且つ芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を有しない芳香族化合物としては、例えば、ニトロ安息香酸、ニトロアニソール、ニトロトルエン、ジニトロトルエン、ニトロベンゼン、ジニトロベンゼン、トリニトロベンゼン、ニトロベンゼンカルボン酸、ニトロベンゼンジカルボン酸、ニトロベンゼンカルボン酸エステル、ニトロベンゼンジカルボン酸エステル、ニトロアニソールカルボン酸、ニトロナフタレン、ニトロナフトエ酸などを用いることができる。もとより、上記の芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有し且つ芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を有しない芳香族化合物もそれぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することができる。
上記説明では、芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物は、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物と併用する場合について説明してきたが、この芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物は、単独でも用いることができる。そして、この芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物も、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物と同様に、ベンゼン系のもの、ナフタレン系のもの、アントラセン系のもののいずれも用いることができる。
本発明において、電解コンデンサの構成にあたって、上記のような芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物および芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物を用いるのは、これらの芳香族系化合物が、亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルとともに、電解コンデンサの漏れ電流の減少に寄与するとともに、導電性高分子の電子伝導を補助する能力を有し、かつ、該芳香族化合物が有する酸化防止作用により導電性高分子の劣化を抑制できるという理由によるものである。
また、上記のような沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン(沸点:203℃)、ブタンジオール(沸点:230℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、スルホラン(沸点:285℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、ジメチルスルホラン(沸点:233℃)、エチレングリコール(沸点:198℃)、ジエチレングリコール(沸点:244℃)、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いることができ、また、2種類以上を併用することもできる。なお、ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール600やポリエチレングリコール1500(ポリエチレングリコールの後の数字は分子量を表す)などのように常圧下では沸点が存在しないものもあるが、どのようなポリエチレングリコールであっても、常圧下150℃未満で沸騰するものはないので、本発明では、このポリエチレングリコ−ルも沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤の範疇に含めるものとする。
また、上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液の調製にあたって用いる溶剤としては、特に限定されることはないが、例えば、エタノール、メタノール、プロパノール、ブタノールなどの炭素数1〜4の低級アルコール、水、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチルなどを用い得るが、特に、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、水などが好ましい。
そして、上記高沸点有機溶剤含有液において、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤の含有量を20質量%以上にするのは、該高沸点有機溶剤の含有量が20質量%より少ない場合は、ESRを低くさせることなどが充分に行えなくなるからである。
本発明において、前記の亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルや芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物および芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物を溶媒に溶解させた溶液にして用いるにあたり、その溶媒として、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液を用いるのを好ましいとしているのは、上記高沸点有機溶剤や高沸点有機溶剤含有液が先に形成されている導電性高分子を膨潤させ、それが乾燥する際に、導電性高分子の再配列を生じさせ、導電性高分子層をより緻密な構造にして、ESRを低滅させるなど、電解コンデンサの特性を向上させることに寄与すると考えられるからである。
このような理由は、前記本願の第1の発明のように、電解コンデンサ中に上記高沸点有機溶剤や高沸点有機溶剤含有液を含まないものに関してであるが、第2の発明のように、上記高沸点有機溶剤や高沸点有機溶剤含有液を含むものでは、まず、そのような高沸点の有機溶剤を電解コンデンサ内に含ませることによって、電解コンデンサのESRを低くし、静電容量を向上させ、かつ漏れ電流を低減させるとともに、高沸点であることによって、電解コンデンサの製造にあたっての半田付け時の加熱により、電解コンデンサの内圧が上昇するのを抑制し、また、長期的には電解コンデンサ中からの液成分の揮発によるコンデンサ特性の低下を抑制できるからである。そして、上記高沸点有機溶剤や高沸点有機溶剤含有液のうち、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を単独で用いるときは、上記のような半田付け時の加熱による電解コンデンサの内圧の上昇をより効果的に抑制することができ、また、電解コンデンサ中からの液成分の揮発によるコンデンサ特性の低下をより効果的に抑制できることから、より好ましい。
本発明において、上記亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルを上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液などで溶液にするにあたって、その濃度は、0.1〜20質量%が好ましい。これは、亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルの濃度が上記より低い場合は、亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルによる漏れ電流を減少させる効果が充分に発現しなくなるおそれがあり、また、亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエステルの濃度が上記より高い場合は、かえって、ESRを増加させたり、耐熱性を低下させるおそれがあるからである。
そして、この亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルの濃度は、上記範囲内において、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また、15質量%以下がより好ましく、8質量%以下がさらに好ましい。
また、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物および芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物を上記沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液などで溶液にするにあたって、上記芳香族化合物の濃度としては、0.1〜30質量%が好ましい。これは、上記芳香族化合物の濃度が上記より低い場合は、漏れ電流を減少させる効果などが充分に発現できなくなるおそれがあり、上記芳香族化合物の濃度が上記より高い場合は、かえって、ESRを増加させたり、耐熱性を低下させるおそれがあるからである。
この芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物および芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物の濃度は、上記範囲内において、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、また、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。そして、本願の第2の発明のように、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液を含んで電解コンデンサを構成する場合には、この芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物の濃度を前記範囲内で若干高めにしておくことが好ましく、この場合の濃度としては、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、20質量%以下がより好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。
また、芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物を芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有し且つ芳香環の構成炭素に結合するカルボキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物と併用する場合において、上記の芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物は、それが芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を有するか否かにかかわらず、前記のジエステルなどを含む溶液中において、0.05〜20質量%の濃度になるように添加することが好ましく、また、上記範囲内で、0.2質量%以上の濃度になるように添加することがより好ましく、10質量%以下の濃度になるように添加することがより好ましい。
本願において、第2の発明では、上記の沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液が必須の要件となり、第1の発明では、そうでないのは、期待する特性の相違もあるが、それら第1の発明の電解コンデンサや第2の発明の電解コンデンサの製造方法にも由来している。
すなわち、それらの電解コンデンサの製造方法については、後に詳しく説明するが、両者とも、コンデンサ素子に導電性高分子層の形成後、そのコンデンサ素子に亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のエステルと芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物とを沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液に溶解させた溶液を含浸させるところまで共通しているが、その後、乾燥して、溶媒の沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液を含まないようにしたものが、第1の発明の電解コンデンサであり、上記溶液の含浸後、乾燥せず、溶媒としての沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液を電解コンデンサ内に留めて電解コンデンサ内に含まれるようにしたのが第2の発明の電解コンデンサである。
そして、上記ジエステルなどを含む溶液(正確には、リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルと、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物および芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物と、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤とを含む溶液)に、グリシジル化合物またはシラン化合物の少なくとも1種を添加しておくと、得られる電解コンデンサの耐電圧性が向上して破壊電圧が高くなることから好ましい。
上記グリシジル化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールグリシジル、メタクリル酸グリシジル、エポキシプロパノール(つまり、グリシドール)、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、エポキシブタン(つまり、グリシジルメタン)、エポキシペンタン(つまり、グリシジルエタン)、エポキシヘキサン(つまり、グリシジルプロパン)、エポキシヘプタン(つまり、グリシジルブタン)、エポキシオクタン(つまり、グリシジルペンタン)、エポキシシクロヘキセン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブチレングリコールジグリシジルエーテル、ペンチレングリコールジグリシジルエーテル、ヘキシレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテルなどを用いることができる。
また、シラン化合物としては、例えば、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどを用いることができる。
また、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物および芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物を、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液に溶解させるにあたって有機アミンを添加しておくと、上記芳香族化合物の溶解性が向上し、また、上記溶液のpHを3〜7程度に調整しておくことによって、コンデンサ素子の誘電体層の腐食を抑制できることから好ましい。
上記の有機アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ドデシルアミン、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、ブチルジエタノールアミン、3−アミノプロピルトリメトキシシランなどを用いることができる。
本発明において、導電性高分子を合成するためのモノマーとしては、チオフェンまたはその誘導体、ピロールまたはその誘導体、アニリンまたはその誘導体などが用いられ、特にチオフェンまたはその誘導体が好ましい。
上記チオフェンまたはその誘導体におけるチオフェンの誘導体としては、例えば、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3−アルキルチオフェン、3−アルコキシチオフェン、3−アルキル−4−アルコキシチオフェン、3,4−アルキルチオフェン、3,4−アルコキシチオフェンや、上記の3,4−エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェンなどが挙げられ、そのアルキル基やアルコキシ基の炭素数は1〜16が好ましく、特に1〜4が好ましい。
上記の3,4−エチレンジオキシチオフェンをアルキル基で修飾したアルキル化エチレンジオキシチオフェンについて詳しく説明すると、上記3,4−エチレンジオキシチオフェンやアルキル化3,4−エチレンジオキシチオフェンは、下記の一般式(1)で表される化合物に該当する。
そして、上記一般式(1)中のRが水素の化合物が、3,4−エチレンジオキシチオフェンであり、これをIUPAC名称で表示すると、「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2,3−Dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、この化合物は、IUPAC名称で表示されるよりも、一般名称の「3,4−エチレンジオキシチオフェン」で表示されることが多いので、本書では、この「2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を「3,4−エチレンジオキシチオフェン」と表示している。そして、上記一般式(1)中のRがアルキル基の場合、該アルキル基としては、炭素数が1〜4のもの、つまり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が好ましく、それらを具体的に例示すると、一般式(1)中のRがメチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−メチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Methyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「メチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(1)中のRがエチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−エチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Ethyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「エチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。一般式(1)中のRがプロピル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−プロピル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Propyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「プロピル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。そして、一般式(1)中のRがブチル基の化合物は、IUPAC名称で表示すると、「2−ブチル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン(2−Butyl−2,3−dihydro−thieno〔3,4−b〕〔1,4〕dioxine)」であるが、以下、これを簡略化して「ブチル化エチレンジオキシチオフェン」と表示する。また、「2−アルキル−2,3−ジヒドロ−チエノ〔3,4−b〕〔1,4〕ジオキシン」を、以下、簡略化して「アルキル化エチレンジオキシチオフェン」で表わす。そして、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンの中でも、メチル化エチレンジオキシチオフェン、エチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェン、ブチル化エチレンジオキシチオフェンが好ましく、特にエチル化エチレンジオキシチオフェン、プロピル化エチレンジオキシチオフェンが好ましい。
これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンは、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種以上を併用することもできる。さらに、これらのアルキル化エチレンジオキシチオフェンと3,4−エチレンジオキシチオフェンとを併用することもできる。
本発明の電解コンデンサにおける導電性高分子としては、導電性高分子の分散液を用いたものと、モノマーをいわゆる「その場重合」で重合させて得られる導電性高分子のいずれも用いることができる。
上記導電性高分子の分散液を用いる場合、その導電性高分子の合成に当たって用いるドーパントとしては、既存のものを各種用い得るが、特にポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂、スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体(これについては後に詳しく説明する)などのポリマーアニオン(高分子ドーパント)が好ましい。
上記ポリスチレンスルホン酸としては、重量平均分子量が10,000〜1,000,000のものが好ましい。
すなわち、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が10,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、上記ポリスチレンスルホン酸の重量平均分子量が1,000,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって、使用しにくくなるおそれがある。そして、上記ポリスチレンスルホン酸としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、20,000以上のものが好ましく、40,000以上のものがより好ましく、また、800,000以下のものが好ましく、300,000以下のものがより好ましい。
上記スルホン化ポリエステルは、スルホイソフタル酸エステルやスルホテレフタル酸エステルなどのジカルボキシベンゼンスルホン酸ジエステルとアルキレングリコールとを酸化アンチモンや酸化亜鉛などの触媒の存在下で縮重合させたものであり、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が5,000〜300,000のものが好ましい。
すなわち、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、スルホン化ポリエステルの重量平均分子量が300,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって使用しにくくなるおそれがある。そして、このスルホン化ポリエステルとしては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものが好ましく、20,000以上のものがより好ましく、また、100,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、例えば、次の一般式(2)
(式中のR
1は水素またはメチル基である)
で表される繰り返し単位を有するものが好ましく、このようなフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が5,000〜500,000のものが好ましい。
すなわち、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が5,000より小さい場合は、得られる導電性高分子の導電性が低くなるおそれがある。また、上記フェノールスルホン酸ノボラック樹脂の重量平均分子量が500,000より大きい場合は、導電性高分子の分散液の粘度が高くなり、電解コンデンサの作製にあたって使用しにくくなるおそれがある。そして、このフェノールスルホン酸ノボラック樹脂としては、その重量平均分子量が上記範囲内で、10,000以上のものがより好ましく、また、400,000以下のものが好ましく、80,000以下のものがより好ましい。
次に、前記のスチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体について説明すると、この共重合体は、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体で構成され、導電性高分子中においてはポリマーアニオンとして存在し、ドーパントとして機能するものである。
前記のスチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体(以下、これを「スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体」という場合がある)を合成するにあたって、スチレンスルホン酸と共重合させるモノマーとしては、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いるが、上記メタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジフェニルブチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸スルホヘキシルナトリウム、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸メチルグリシジル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、メタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチル、メタクリル酸ヒドロキシヘキシル、メタクリル酸ヒドロキシステアリルなどのメタクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシポリオキシエチレン、メタクリル酸メトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸エトキシヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジヒドロキシブチルなどを用い得るが、特にメタクリル酸ヒドロキシメチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のメタクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、メタクリル酸グリシジルやメタクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、メタクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
また、上記アクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸ジフェニルブチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリル酸スルホヘキシルナトリウム、アクリル酸グリシジル、アクリル酸メチルグリシジル、アクリル酸ヒドロキシアルキル、すなわち、アクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアクリル酸ヒドロキシアルキルなどを用い得るが、特にアクリル酸ヒドロキシメチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチルなどのアルキル基の炭素数が1〜4のアクリル酸ヒドロキシアルキルが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。また、アクリル酸グリシジルやアクリル酸メチルグリシジルのようにグリシジル基を含有するものは、グリシジル基が開環することによりヒドロキシル基を含有する構造になることから、グリシジル基を有するものも、アクリル酸ヒドロキシアルキルと同様にスチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
そして、上記不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジメトキシシラン、3−アクリロキシメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、p−スチリルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシランなどの不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物やそれらの加水分解物を用いることができる。この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物の加水分解物とは、例えば、不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物が上記3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの場合は、メトキシ基が加水分解されてヒドロキシル基になった構造である3−メタクリロキシプロピルトリヒドロキシシランになるか、またはシラン同士が縮合してオリゴマーを形成し、その反応に利用されていないメトキシ基がヒドロキシル基になった構造を有する化合物になる。そして、この不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物としては、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが、スチレンスルホン酸と共重合体化したときのドーパントとしての特性上から好ましい。
このスチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体における、スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの比率としては、質量比で、1:0.01〜0.1:1であることが好ましい。
そして、上記スチレンスルホン酸と、メタクリル酸エステル、アクリル酸エステルおよび不飽和炭化水素含有アルコキシシラン化合物またはその加水分解物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の非スルホン酸系モノマーとの共重合体は、その分子量が、重量平均分子量で5,000〜500,000程度のものが、水溶性およびドーパントとしての特性上から好ましく、重量平均分子量で40,000〜200,000程度のものがより好ましい。
上記ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂、スチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体などのポリマーアニオンは、それぞれ単独で用いることができるし、また、2種類以上を併用することもできる。
そして、上記ポリスチレンスルホン酸、スルホン化ポリエステル、フェノールスルホン酸ノボラック樹脂およびスチレンスルホン酸と非スルホン酸系モノマーとの共重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリマーアニオンを用いてのチオフェンまたはその誘導体などのモノマーの酸化重合は、水中または水と水混和性溶剤との水性液中で行われる。
上記水性液を構成する水混和性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、これらの水混和性溶剤の水との混合割合としては、水性液全体中の50質量%以下が好ましい。
導電性高分子はモノマーを酸化重合することによって得られるが、その際の酸化重合としては、化学酸化重合、電解酸化重合のいずれも採用することができる。
化学酸化重合を行うにあたって使用する酸化剤としては、特に特定のものに限られることはないが、非遷移金属系の酸化剤が好ましい。すなわち、本発明においては、亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルと、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物とにより、使用する導電性高分子がどのような酸化剤を使用して合成されたものであっても、電解コンデンサの漏れ電流を滅少させ、かつ耐熱性を向上させることができるが、導電性高分子そのものに漏れ電流を多くしたり、耐熱性を低下させる原因になる遷移金属を含まないものの方が、より漏れ電流を滅少させ、かつ耐熱性を向上させやすいことから、酸化剤としては、非遷移金属系の酸化剤が好ましい
上記のような非遷移金属系の酸化剤としては、例えば、過硫酸塩が用いられる。そして、この過硫酸塩としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸カルシウム、過硫酸バリウムなどが用いられる。
化学酸化重合において、その重合時の条件は、特に限定されることはないが、化学酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、10℃〜30℃がより好ましく、また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。
電解酸化重合は、定電流でも定電圧でも行い得るが、例えば、定電流で電解酸化重合を行う場合、電流値としては0.05mA/cm2〜10mA/cm2が好ましく、0.2mA/cm2〜4mA/cm2がより好ましく、定電圧で電解酸化重合を行う場合は、電圧としては0.5V〜10Vが好ましく、1.5V〜5Vがより好ましい。電解酸化重合時の温度としては、5℃〜95℃が好ましく、特に10℃〜30℃が好ましい。また、重合時間としては、1時間〜72時間が好ましく、8時間〜24時間がより好ましい。なお、電解酸化重合にあたっては、触媒として硫酸第一鉄または硫酸第二鉄を添加してもよい。
上記のようにして得られる導電性高分子は、重合直後、水中または水性液中に分散した状態で得られ、酸化剤としての過硫酸塩や触媒として用いた硫酸鉄塩やその分解物などを含んでいる。そこで、その不純物を含んでいる導電性高分子の分散液を超音波ホモジナイザーや高圧ホモジナイザーや遊星ボールミルなどの分散機にかけて不純物を分散させた後、カチオン交換樹脂で金属成分を除去することが好ましい。このときの動的光散乱法により測定した導電性高分子の粒径としては、100μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、また、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。その後、エタノール沈殿法、限外濾過法、陰イオン交換樹脂などにより、酸化剤や触媒の分解により生成したものを除去し、後述するように、必要に応じて、導電性向上剤やバインダを添加してもよい。
上記のようにして得られた導電性高分子の分散液には、前記したように、導電性向上剤を含有させてもよい。このように、導電性高分子の分散液中に導電性向上剤を含有させておくと、該導電性高分子の分散液を乾燥して得られる導電性高分子の被膜などの導電性を向上させ、該導電性高分子を電解質として用いた電解コンデンサのESRを低くすることができる。
これは、電解コンデンサの製造にあたって、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬し、取り出して乾燥したときに、導電性高分子の厚み方向の層密度を高くさせ、それによって、導電性高分子間の面間隔が狭くなり、導電性高分子の導電性が高くなって、該導電性高分子を電解コンデンサの電解質として用いたときに、電解コンデンサのESRを低くさせるものと考えられる。
このような導電性向上剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、スルホラン、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの高沸点(例えば、150℃以上の高沸点)の有機溶剤や、エリスリトール、グルコース、マンノース、プルランなどの糖類が挙げられるが、特にジメチルスルホキシドやブタンジオールが好ましい。
このような導電性向上剤の添加量としては、分散液中の導電性高分子に対して質量基準で5〜3,000%(すなわち、導電性高分子100質量部に対して導電性向上剤が5〜3,000質量部)が好ましく、特に20〜700%が好ましい。導電性向上剤の添加量が上記より少ない場合は、導電性を向上させる作用が充分に発揮されず、導電性向上剤の添加量が上記より多い場合は、分散液の乾燥に時間を要するようになり、また、かえって、導電性の低下を引き起こすおそれがある。
なお、分散液中における導電性高分子の含有量は、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬し、取り出す時などの作業性に影響を与えるので、通常0.5〜15質量%程度が好ましい。つまり、導電性高分子の含有量が上記より少ない場合は、乾燥に時間を要するようになるおそれがあり、また、導電性高分子の含有量が上記より多い場合は、分散液の粘度が高くなって、電解コンデンサの作製にあたっての作業性が低下するおそれがある。
このようにして得られる導電性高分子の分散液を乾燥して得られる導電性高分子は、その合成にあたってドーパントとして用いたポリマーアニオンの特性に基づき、導電性が高く、かつ耐熱性が優れているので、それを電解質として用いたときに、ESRが低く、かつ高温条件下での使用に際して信頼性が高い電解コンデンサが得られる要因になる。
電解コンデンサの製造にあたって、コンデンサ素子としては、アルミニウム、タンタルおよびニオブよりなる群から選ばれる少なくとも1種の弁金属の多孔体と上記弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を有するものが用いられる。
そして、このコンデンサ素子への導電性高分子層の形成は、コンデンサ素子に上記導電性高分子の分散液を含浸し、乾燥することによって行われる。
上記コンデンサ素子への導電性高分子の分散液の含浸は、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬するか、導電性高分子の分散液をコンデンサ素子にスプレーなどで塗布することによって行われる。
コンデンサ素子を構成する弁金属は、多孔体になっているので、含浸した導電性高分子の分散液は、コンデンサ素子の表面のみならず、弁金属の多孔体の内部にも浸入し、また、セパレータを用いるタイプのコンデンサ素子では、このセパレータの空隙内にも浸入する。
そして、その後、乾燥することで得られた導電性高分子は電解質として使用に供されることになる。この導電性高分子はコンデンサ素子において陽極となる弁金属の表面の上記弁金属の酸化被膜からなる誘電体層上に設けることになる。ただし、コンデンサ素子の他の部位に導電性高分子が付着していてもよい。
そして、その際、導電性高分子とコンデンサ素子の誘電体層との密着性を高めるために、導電性高分子の分散液にバインダを添加しておくことが好ましい。そのようなバインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリメタクリロニトリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ノボラック樹脂、シランカップリング剤などが挙げられ、特にポリエステル、ポリウレタン、アクリル樹脂などが好ましい。また、スルホン化ポリアリル、スルホン化ポリビニル、スルホン化ポリスチレンのように、スルホン基が付加されていると、導電性高分子の導電性を向上させることができるので、より好ましい。
そして、このコンデンサ素子への導電性高分子の含浸および乾燥を必要回数繰り返してコンデンサ素子への導電性高分子層の形成が行われる。なお、導電性高分子の含浸を、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液に浸漬することによって行った場合には、乾燥に先立って、コンデンサ素子を導電性高分子の分散液から取り出す必要がある。
また、コンデンサ素子への導電性高分子層の形成を電解コンデンサの製造工程中に行う、いわゆる「その場重合」で行ってもよい。ただし、この「その場重合」でモノマーを重合させる場合にも、酸化剤としては、特に特定のものに限られることはないが、非遷移金属系の酸化剤を用いることが好ましい。
このような「その場重合」でモノマーを重合させる場合に用いられる非遷移金属系酸化剤としては、例えば、過流酸、過流酸アンモニウム、過流酸ナトリウム、過流酸カリウムなどの過流酸塩、過酸化水素、過酸化ベンゾイルなどが挙げられ、これと組み合わせて用いるドーパントとしては、例えば、ベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、トルエンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ニトロベンゼンスルホン酸、クレゾールスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、ナフタレントリスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸などが挙げられ、これらは酸の状態、またはそれらのイミダゾール塩など、それらの非遷移金属塩の状態で用いられる。
電解コンデンサを巻回型電解コンデンサとして製造する場合、そのコンデンサ素子としては、例えば、アルミニウム箔などのような弁金属箔の表面をエッチング処理した後、化成処理を行って上記弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を形成した陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔のような弁金属箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して作製したものが用いられる。これに対して、電解コンデンサをタンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサ、積層型アルミニウム電解コンデンサなどの非巻回型電解コンデンサとして製造する場合、コンデンサ素子としては、例えば、陽極となるタンタル、ニオブ、アルミニウムなどの弁金属の多孔体と、それらの弁金属の酸化被膜からなる誘電体層を有するものが用いられ、例えば、タンタル電解コンデンサの場合、タンタルの多孔体としてはタンタル焼結体が用いられる。
そして、上記のように、コンデンサ素子に電解質を構成することになる導電性高分子の層を形成した後、そのコンデンサに、亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルと、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物とおよび芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液とを含む溶液を含浸する操作を少なくとも1回行うことを経由し、その後、必要な外装を施すことによって、本願の第2の発明の電解コンデンサが製造される。
そして、上記ジエステルなどを含む溶液の含浸し、その後、乾燥する操作を少なくとも1回行うことを経由して、溶媒の沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液が電解コンデンサ内に留まらないようにし、その後、必要な外装を施すことによって、本願の第1の発明の電解コンデンサが製造される。
上記ジエステルなどを含む溶液の含浸は、導電性高分子層を形成後のコンデンサ素子を上記溶液に浸漬するか、または、上記コンデンサ素子に上記ジエステルなどを含む溶液をスプレーなどで塗布することによって行われる。
前記特許文献3では、導電性高分子の分散液にリン酸ジエステルを添加しているので、保存中に粘度が高くなって、電解コンデンサの製造が困難になっていったが、本発明では、分散液の状態でジエステルと導電性高分子を共存させることがないので、そのような問題が生じず、電解コンデンサの製造にあたって、そのような問題が生じない。
次に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はそれらの実施例に例示のもののみに限定されることはない。なお、以下の実施例などにおいて、溶液や分散液などの濃度を示す%や純度を示す%は、特にその基準を付記しない限り質量基準による%である。
また、実施例に先立ち、実施例などで電解質を構成する導電性高分子の層の形成にあたって用いる導電性高分子の分散液A〜Dの調製例を調製例A〜Dで示す。そして、実施例の電解コンデンサの製造にあたって使用する液、すなわち、亜リン酸ジエステルおよびリン酸ジエステルよりなる群から選ばれる少なくとも1種のジエステルと、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物および芳香環の構成炭素に結合するニトロ基を少なくとも1つ有する芳香族化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の芳香族化合物とを含み、溶媒として沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液を用いた液(この液は、実施例の電解コンデンサの製造にあたって、主として、導電性高分子層の形成後の処理段階で使用するので、以下においては、「処理液」という場合がある)の調製例を調製例1〜26で示す。また、比較例の電解コンデンサの製造にあたって導電性高分子層の形成後の処理段階で使用する液(この液は、本発明の処理液とは構成が異なるので、「比較用の処理液」という場合がある。ただし、この「処理液」には、使用後、乾燥して電解コンデンサ中に含まれなくなるものと、使用後、乾燥せず、電解コンデンサ中に含まれるようになるものとの両方がある)の調製例を調製例27〜32で示す。
導電性高分子の分散液の調製例A
ポリスチレンスルホン酸(テイカ社製、重量平均分子量100,000)の4%水溶液600gを内容積1Lのステンレス鋼製容器に入れ、硫酸第一鉄・7水和物0.3gを添加し、その中にエチレンジオキシチオフェン(つまり、3,4−エチレンジオキシチオフェン)4mLをゆっくり滴下した。上記ステンレス鋼製容器に陽極を取り付け、溶液中に陰極用としてステンレス鋼製の板(横3cm×長さ3cm×厚さ2m)が浸かるように2枚取り付け、ポリテトラフルオロエチレン製の攪拌翼で攪拌し、室温下1mA/cm2の定電流で18時間電解酸化重合を行った。
上記電解酸化重合後、水で6倍に希釈した後、超音波ホモジナイザー(日本精機社製、US−T300)で240分間分散処理を行った。その後、オルガノ社製カチオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名)を100g添加し、1時間攪拌翼で攪拌した。次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中の鉄イオンを除去した。その後アニオン交換樹脂による処理と濾過を行うことで、余分なアニオンを取り除いた。
上記イオン成分除去後の液を孔径が1μmのフィルターに通し、その通過液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去した。この液に精製水を添加して内容物の濃度を3%に調整した後、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加することでpH3.81に調整し、さらに精製水を添加して、濃度を2.5%に調整し導電性高分子の分散液Aを得た。
得られた導電性高分子の分散液A中の導電性高分子の粒度分布を大塚電子製ELS−Zで測定したところ、平均粒径が130nmであった。
導電性高分子の分散液の調製例B
2Lの攪拌機付セパラブルフラスコに1Lの純水を添加し、そこにスチレンスルホン酸ナトリウム200gとアクリル酸ヒドロキシエチル5gを添加した。そして、その溶液に酸化剤として過硫酸アンモニウムを1g添加してスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの重合反応を12時間行った。
そして、その後、その反応液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で処理して、液中の遊離の低分子成分を除去し、濃度を3%に調整してスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の3%水溶液を得た。
得られたスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体について、ゲル濾過カラムを用い、デキストランを標品として見積もった重量平均分子量は、150,000であった。
そして、前記導電性高分子の分散液Aにおける濃度3%のポリスチレンスルホン酸水溶液に代えて、上記スチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体の3%水溶液を用いた以外は、すべて上記導電性高分子の分散液Aの調製例Aと同様の操作を行って、濃度3%の導電性高分子の分散液を得た。その濃度3%の導電性高分子の分散液に対して、3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオールを加えてpHを3.00に調整し、さらに精製水を添加して、濃度を2.5%に調整し導電性高分子の分散液Bを得た。
この導電性高分子の分散液B中の導電性高分子の粒度分布を大塚電子製ELS−Zで測定したところ、平均粒径が120nmであった。
導電性高分子の分散液の調製例C
エチレンジオキシチオフェンに代えて、メチル化エチレンジオキシチオフェンを用い、最後のpH調整で3−ジメチルアミノ−1,2−プロパンジオールに代えて、2−アミノ−1,3−プロパンジオールを用い、pH2.97に調整した以外は、すべて導電性高分子の分散液の調製例Bと同様の操作を行って、導電性高分子の分散液Cを得た。
導電性高分子の分散液の調製例D
スルホン化ポリエステル〔互応化学工業社製プラスコートZ−561(商品名)、重量平均分子量27,000〕の3%水溶液200gを内容積1Lの容器に入れ、酸化剤として過硫酸アンモニウムを2g添加した後、撹拌機で撹拌して溶解した。次いで。硫酸第二鉄の40%水溶液を0.4g添加し、撹拌しながら、その中にエチレンジオキシチオフェン3mLをゆっくり滴下し、24時間かけて、エチレンジオキシチオフェンの化学酸化重合を行った。
上記化学酸化重合後の反応液にオルガノ社製のカチオン交換樹脂アンバーライト120B(商品名)を100g添加し、1時間撹拌した。次いで、東洋濾紙社製の濾紙No.131で濾過し、このカチオン交換樹脂による処理と濾過を3回繰り返して、液中の鉄イオンなどのカチオン成分をすべて除去した。その液を限外濾過装置〔ザルトリウス社製Vivaflow200(商品名)、分子量分画5万〕で濃縮処理を行った。このようにして得た導電性高分子の水系分散液の105℃の条件で測定した乾燥固形分濃度は3%であった。その3%液40gに対し、高沸点溶剤としてジメチルスルホキシド4g(導電性高分子に対して質量基準で333%)を添加し、導電性高分子の分散液を得た。
このようにして得られたスルホン化ポリエステルをドーパントとする導電性高分子の分散液と前記導電性高分子の分散液の調製例Bで調製したスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体をドーパントとする導電性高分子の分散液Bとを質量比5:1の割合で混合して、スルホン化ポリエステルをドーパントとする導電性高分子とスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体をドーパントとする導電性高分子との混合分散液を導電性高分子の分散液Dとして得た。
次に、前記したように、実施例の電解コンデンサの製造にあたって使用する「処理液」の調製例を調製例1〜26で示し、比較例の電解コンデンサの製造にあたって使用する「比較用処理液」の調製例を調製例27〜32で示す。
調製例1
エチレングリコール100gに対し、亜リン酸ジエチル3gと、p−ヒドロキシ安息香酸2gと、ニトロフェノール1gとを添加し、攪拌しながら完全に溶解させた。その溶液に対し、グリセロールを1g添加して調製例1の処理液を調製した。
この調製例1の処理液における亜リン酸ジエチルの濃度は約2.80%であり、p−ヒドロキシ安息香酸の濃度は約1.87%であり、ニトロフェノールの濃度は約0.93%であり、グリセロールの濃度は約0.93%であった。
調製例2
エチレングリコール50gに対し、エタノールを50g添加し、さらに、亜リン酸ジイソプロピル3gと、p−ヒドロキシ安息香酸3gを添加し、攪拌しながら完全に溶解させた。その溶液に対し、グリセロールを1g添加して調製例2の処理液を調製した。
この調製例2の処理液における亜リン酸ジイソプロピルの濃度は約2.80%であり、p−ヒドロキシ安息香酸の濃度は約2.80%であり、グリセロールの濃度は約0.93%であった。
調製例3
エチレングリコール50gに対し、蒸留水を50g添加し、さらに、亜リン酸ジエチル3gと、p−ヒドロキシ安息香酸2gと、ニトロ安息香酸1gと、グリセロール1gとを添加したあと、攪拌しながらN−ブチルジエタノールアミンを添加し、pHを3.5に調整し、完全に溶解させて、調製例3の処理液を調製した。
この調製例3の処理液における亜リン酸ジエチルの濃度は約2.80%であり、p−ヒドロキシ安息香酸の濃度は約1.87%であり、ニトロ安息香酸は約0.93%であり、グリセロールの濃度も約.93%であった。
調製例4
p−ヒドロキシ安息香酸に代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例4の処理液を調製した。
この調製例4の処理液における亜リン酸ジエチルの濃度は約2.80%であり、p−ヒドロキシ安息香酸エチルヘキシルの濃度は約1.87%であり、ニトロフェノールの濃度は約0.93%であり、グリセロールの濃度も約0.93%であった。
調製例5
亜リン酸ジエチルに代えて、リン酸ジブチルを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例5の処理液を調製した。
この調製例5の処理におけるリン酸ジブチルの濃度は約2.80%であり、p−ヒドロキシ安息香酸の濃度は約1.87%であり、ニトロフェノールの濃度は約0.93%であり、グリセロールの濃度も約0.93%であった。
調製例6
亜リン酸ジエチルに代えて、リン酸ジエチルヘキシルを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例6の処理液を調製した。
この調製例6の処理液におけるリン酸ジエチルヘキシルの濃度は約2.80%であり、他の成分の濃度は調製例1の処理液の場合と同様である。
調製例7
亜リン酸ジエチルに代えて、亜リン酸ジベンジルを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例7の処理液を調製した。
この調製例7の処理液における亜リン酸ジベンジルの濃度は約2.80%であり、他の成分の濃度は調製例1の処理液の場合と同様である。
調製例8
亜リン酸ジエチルに代えて、亜リン酸ジフェニルを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例8の処理液を調製した。
この調製例8の処理液における亜リン酸ジフェニルの濃度は約2.80%であり、他の成分の濃度は調製例1の処理液の場合と同様である。
調製例9
亜リン酸ジエチルに代えて、リン酸ジメチルを用い、ヒドロキシ安息香酸に代えて、メトキシフェノールを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例9の処理液を調製した。
この調製例9の処理液におけるリン酸ジメチルの濃度は約2.80%であり、メトキシフェノールの濃度は約1.87%であり、ニトロフェノールの濃度は約0.93%であり、グリセロールの濃度も約0.93であった。
調製例10
亜リン酸ジエチルに代えて、亜リン酸ジエチルヘキシルを用い、ヒドロキシ安息香酸に代えて、ヒドロキシナフトエ酸を用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例10の処理液を調製した。
この調製例10の処理液における亜リン酸ジエチルヘキシルの濃度は約2.80%であり、ヒドロキシナフトエ酸の濃度は約1.87%であり、他の成分の濃度は調製例1の処理液の場合と同様である。
調製例11
亜リン酸ジエチルに代えて、亜リン酸ジイソブチルを用い、ヒドロキシ安息香酸に代えて、ヒドロキシ安息香酸メチルを用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例11の処理液を調製した。
この調製例11の処理液における亜リン酸ジイソブチルの濃度は約2.80%であり、ヒドロキシ安息香酸メチルの濃度は約1.87%であり、他の成分の濃度は調製例1の処理液の場合と同様である。
調製例12
亜リン酸ジエチルに代えて、亜リン酸ジエチルヘキシルを用い、ヒドロキシ安息香酸に代えて、オイゲノール(すなわち、4−アリル−2−メトキシフェノール)を用いた以外は、すべて調製例1と同様の操作を行って、調製例12の処理液を調製した。
この調製例12の処理液における亜リン酸ジエチルヘキシルの濃度は約2.8%であり、オイゲノールの濃度は約1.87%であり、他の成分の濃度は調製例1の処理液の場合と同様である。
調製例13
エチレングリコール100gに対し、亜リン酸ジエチル3gと、p−ヒドロキシ安息香酸10gと、ニトロ安息香酸1gと、グリセロール1gを添加した後、攪拌しながら、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを添加して、pHを5.0(25℃)に調整し、完全に溶解させて、調製例13の処理液を調製した。
この調製例13の処理液における亜リン酸ジエチルの濃度は約2.61%であり、p−ヒドロキシ安息香酸の濃度は約8.70%であり、ニトロ安息香酸の濃度は約0.87%であり、グリセロールの濃度も約0.87%であった。
調製例14
エチレングリコール100gに代えて、γ−ブチロラクトン100gを用いた以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例14の処理液を調製した。
調製例15
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジイソプロプル4gを添加し、さらにポリシロキサン1gを添加した以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例15の処理液を調製した。
この調製例15の処理液における亜リン酸ジイソプロピルの濃度は約3.42%であり、ポリシロキサンの濃度は約0.85%であり、p−ヒドロキシ安息香酸の濃度は約8.55%であり、ニトロ安息香酸の濃度は約0.85%であり、グリセロールの濃度も0.85%であった。
調製例16
亜リン酸ジエチル3gに代えて、リン酸ジブチル2gを添加し、さらに3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを1g添加した以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例16の処理液を調製した。
この調製例16の処理液におけるリン酸ジブチルの濃度は約1.74%であり、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの濃度は約0.87%であり、他の成分の濃度は調製例13の処理液の場合と同様である。
調製例17
亜リン酸ジエチル3gに代えて、リン酸ジエチルヘキシル3gを添加し、さらにポリエチレングリコール400を1g添加した以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例17の処理液を調製した。
この調製例17の処理液におけるリン酸ジエチルヘキシルの濃度は約2.59%であり、ポリエチレングリコール400の濃度は約0.86%であり、p−ヒドロキシ安息香酸の濃度は約8.62%であり、ニトロ安息香酸の濃度は約0.86%であり、グリセロールの濃度も約0.86%であった。
調製例18
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジエチル7gを添加し、p−ヒドロキシ安息香酸10gに代えてフタル酸10gを添加した以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例18の処理液を調製した。
この調製例18の処理液における亜リン酸ジエチルの濃度は約5.85%であり、フタル酸の濃度は約8.40%であり、ニトロ安息香酸の濃度は約0.84%であり、グリセロールの濃度も約0.84%であった。
調製例19
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジベンジル3gを添加し、ニトロ安息香酸1gに代えて、ニトロフェノール1gを添加し、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールに代えて、ジエチルアミンを添加し、さらにポリシロキサンを1g添加した以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例19の処理液を調製した。
この調製例19の処理液における亜リン酸ジベンジルの濃度は約2.59%であり、ニトロフェノールの濃度は約0.86%であり、ポリシロキサンの濃度は約0.86%であり、p−ヒドロキシ安息香酸の濃度は約8.62%であり、グリセロールの濃度は約0.86%であった。
調製例20
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジフェニル3gを添加し、p−ヒドロキシ安息香酸10gに代えて、p−ヒドロキシ安息香酸エチル10gを添加し、さらにポリシロキサンを1g添加した以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例20の処理液を調製した。
この調製例20の処理液における亜リン酸ジフェニルの濃度は約2.59%であり、p−ヒドロキシ安息香酸エチルの濃度は約8.62%であり、ポリシロキサンの濃度は約0.86%であり、グリセロールの濃度も0.86%であった。
調製例21
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジメチル2gを用い、p−ヒドロキシ安息香酸10gに代えて、オイゲノール6gを用い、グリセロール1gに代えて、ポリエチレングリコールジグリシジル1gを用いた以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例21の処理液を調製した。
この調製例21の処理液における亜リン酸ジメチルの濃度は約1.82%であり、オイゲノールの濃度は5.45%であり、ニトロ安息香酸の濃度は約0.91%であり、ポリエチレングリコールジグリシジルの濃度も0.91%であった。
調製例22
亜リン酸ジエチルに代えて、亜リン酸ジエチルヘキシル4gを用い、ヒドロキシ安息香酸に代えて、ヒドロキシナフトエ酸8gを用い、グリセロール1gに代えて、グリシジル変性ポリエステル1gを用いた以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例22の処理液を調整した。
この調製例22の処理液における亜リン酸ジフェニルの濃度は約2.51%であり、ヒドロキシナフトエ酸の濃度は約7.01%であり、ニトロ安息香酸の濃度は約0.88%であり、グリシジル変性ポリエステルの濃度も約0.88%であった。
調製例23
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジエチル5gを用い、ヒドロキシ安息香酸10gに代えて、ハイドロキノン6gを用い、ニトロ安息香酸1gに代えて、ニトロアニソール1gを用いた以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例23の処理液を調製した。
この調製例23の処理液における亜リン酸ジエチルの濃度は4.42%であり、ハイドロキノンの濃度は約5.31%であり、ニトロアニソールの濃度は約0.88%であり、グリセロールの濃度も約0.88%であった。
調製例24
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジエチルヘキシル4gを用い、ヒドロキシ安息香酸10gに代えて、メトキシフェノール12gを用い、グリセロール1gに代えて、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル1gを用いた以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例24の処理液を調製した。
この調製例24の処理液における亜リン酸ジエチルヘキシルの濃度は約3.39%であり、メトキシフェノールの濃度は約10.17%であり、ニトロ安息香酸の濃度は約0.85%であり、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルの濃度も約0.85%であった。
調製例25
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジヘキシルフェニル2gを用い、ヒドロキシ安息香酸10gに代えて、ジニトロフェノール10gを用い、グリセロール1gに代えて、エリスリトール1gを用いた以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例25の処理液を調製した。
この調製例25の処理液における亜リン酸ジヘキシルフエニルの濃度は約1.75%であり、ジニトロフェノールの濃度は約8.77%であり、ニトロ安息香酸の濃度は約0.88%であり、エリストールの濃度も約0.88%であった。
調製例26
亜リン酸ジエチル3gに代えて、亜リン酸ジドデシル4gを用い、ヒドロキシ安息香酸10gに代えて、ヒドロキシ安息香酸エチル15gを用い、ニトロ安息香酸1gに代えて、ニトロトルエン1gを用いた以外は、すべて調製例13と同様の操作を行って、調製例26の処理液を調製した。
この調製例26の処理液における亜リン酸ドデシルの濃度は約3.31%であり、p−ヒドロキシ安息香酸エチルの濃度は約12.40%であり、ニトロトルエンの濃度は約0.83%であり、グリセロールの濃度も約0.83%であった。
調製例27(比較例用)
蒸留水100gに対し、アジピン酸アンモニウム3gを溶解させた。そのときのpHは6.2であった。その溶液に対し、グリセロールを1g添加して、調製例27の比較用処理液を調製した。
調製例28(比較例用)
蒸留水100gに対し、リン酸ジブチル3gを添加し、次いで、攪拌しながらジメチルアミンを添加してリン酸ジブチルを完全に溶解させた。そのときのpHは5.2であった。その溶液に対し、グリセロールを1g添加して、調製例28の比較用処理液を調製した。
調製例29(比較例用)
蒸留水100gに対し、ヒドロキシ安息香酸3gを添加し、次いで、攪拌しながらジメチルアミンを添加してヒドロキシ安息香酸を完全に溶解させた。そのときのpHは5.8であった。その溶液に対し、グリセロールを1g添加して、調製例29の比較用処理液を調製した。
調製例30(比較例用)
エチレングリコール100gに対し、アジピン酸アンモニウム10gを溶解させた。そのときのpHは6.2であった。その溶液に対し、グリセロールを1g添加して、調製例30の比較用処理液を調製した。
調製例31(比較例用)
エチレングリコール100gに対し、リン酸ジブチル3gを添加し、次いで、攪拌しながらジメチルアミンを添加してリン酸ジブチルを完全に溶解させた。そのときのpHは5.2であった。その溶液に対し、グリセロールを1g添加し、さらにポリエチレングリコール400を1g添加して、比較用処理液を調製した。
調製例32(比較例用)
エチレングリコール100gに対し、ヒドロキシ安息香酸8gを添加し、次いで、攪拌しながらジメチルアミンを添加してヒドロキシ安息香酸を完全に溶解させた。そのときのpHは5.8であった。その溶液に対し、グリセロールを1g添加して、調製例32の比較用処理液を調製した。
〔巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(1)〕
実施例1
この実施例1やそれに続く実施例2〜26では、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造して、その特性を評価する。まず、実施例1の巻回型アルミニウム電解コンデンサの製造について示す。
アルミニウム箔の表面をエッチング処理して多孔体化し、そのエッチング処理後のアルミニウム箔を12%アジピン酸アンモニウム水溶液中に浸漬し、そのアジピン酸アンモニウム水溶液中のアルミニウム箔に70Vの電圧を印加してアルミニウム箔の表面に誘電体層を形成して陽極とし、その陽極にリード端子を取り付け、また、アルミニウム箔からなる陰極にリード端子を取り付け、それらのリード端子付き陽極と陰極とをセパレータを介して巻回して、設定ESRが30mΩ以下、設定静電容量が45μF以上、定格電圧が35Vで、設定漏れ電流が20μA以下の巻回型アルミニウム電解コンデンサ製造用のコンデンサ素子を作製した。
このコンデンサ素子を前記のように調製した導電性高分子の分散液A(この導電性高分子の分散液Aにおける導電性高分子は、ポリスチレンスルホン酸をドーパントとするものである)に浸漬し、5分間放置した後、取り出し、180℃で30分間乾燥した後、再び導電性高分子の分散液Aに浸漬し、取り出した後、180℃で30分間乾燥して導電性高分子層を形成した。
次に、この導電性高分子層を形成したコンデンサ素子を前記調製例1の処理液に浸漬し、1分間放置した後、取り出し、180℃で30分間乾燥した後、外装材で外装して実施例1の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
実施例2〜26
実施例1の場合と同様に作製したコンデンサ素子を、実施例1と同様に導電性高分子の分散液Aに浸漬し、取り出して、乾燥する操作を2回繰り返して導電性高分子層を形成した。
上記のようにして導電性高分子層を形成したコンデンサ素子をそれぞれの実施例で用いるのに必要数用意し、それらのコンデンサ素子をそれぞれ前記調製例2〜26の処理液にそれぞれ別々に浸漬し、1分間放置した後、取り出し、180℃で30分間乾燥した後、外装材で外装して実施例2〜26の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例1
実施例1の場合と同様に作製したコンデンサ素子を、実施例1と同様に、前記導電性高分子の分散液Aに浸漬し、取り出して、乾燥する操作をそれぞれ2回繰り返して導電性高分子層を形成した。
この導電性高分子層を形成したコンデンサ素子をそのまま(つまり、本発明において用いる亜リン酸ジアルキルおよびリン酸ジアルキルよりなる群から選ばれる少なくとも1種と、芳香環の構成炭素に結合するヒドロキシル基を少なくとも1つ有する芳香族化合物と、沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液とを含む処理液などへの浸漬処理をすることなく)外装材で外装して比較例1の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例2〜4
実施例1の場合と同様に作製したコンデンサ素子を、実施例1と同様に、前記導電性高分子の分散液Aに浸漬し、取り出して、乾燥する操作をそれぞれ2回繰り返して導電性高分子層を形成した。
上記のようにして導電性高分子層を形成したコンデンサ素子をそれぞれの比較例2〜4で用いるのに必要数用意し、それらのコンデンサ素子をそれぞれ前記調製例27〜29の比較用処理液にそれぞれ別々に浸漬し、1分間放置した後、取り出し、180℃で30分間乾燥した後、外装材で外装して比較例2〜4の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
上記のようにして製造した実施例1〜26および比較例1〜4の巻回型アルミニウム電解コンデンサ(以下、簡略化して、「コンデンサ」という場合がある)について、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を初期特性として表1および表2に処理液や比較用処理液の種類と共に示す。なお、処理液や比較用処理液の種類については、スペース上の関係で、調製例番号で示す。そして、ESR、静電容量および漏れ電流の測定方法は次の通りである。
ESR:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、100kHzで測定する。
静電容量:
HEWLETT PACKARD社製のLCRメーター(4284A)を用い、25℃の条件下で、120Hzで測定する。
漏れ電流:
コンデンサに、25℃で35Vの定格電圧を60秒間印加した後、デジタルオシロスコープにて漏れ電流を測定する。
上記の測定は、各試料とも、20個ずつについて行い、表1および表2に示す数値は、その20個の平均値を求め、小数点第2位以下を四捨五入して示したものである。
また、上記特性測定後の実施例1〜26および比較例1〜4のコンデンサを125℃の恒温槽中に静置状態で3,000時間貯蔵し、その貯蔵後に、前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。また、その貯蔵期間中に漏れ電流が500μAを超えたものについては、ショート不良(短絡発生不良)が発生したものとした。その結果を表3および表4に示す。ただし、ショート不良に関しては、測定に供した全コンデンサ個数を分母に示し、ショート不良が発生したコンデンサ個数を分子に示す態様で表示する。
表1および表2に示すように、実施例1〜26のコンデンサは、ESRが17.1〜19.4mΩであって、30mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が52.9〜53.5μFであって、45μF以上という設定静電容量を満たし、かつ、漏れ電流が5.0〜12.6μAであって、20μA以下という設定漏れ電流を満たすとともに、比較例1のコンデンサに比べて、ESRが低く、静電容量が大きく、漏れ電流がはるかに少なかった。そして、実施例1〜26のコンデンサは、比較例2〜4のコンデンサに比べても、ESRが低く、漏れ電流が少なかった。ここで比較例1〜4のコンデンサについて言及しておくと、処理液による処理をしていない比較例1のコンデンサは、ESRが89.0mΩであって、30mΩ以下という設定ESRを満たさず、静電容量は38.1μFであって、45μF以上という設定静電容量を満たさず、漏れ電流は120.0μAであって、20μA以下という設定漏れ電流をはるかに越えていた。そして、比較例2〜4のコンデンサも、ESRが30mΩより大きく、30mΩ以下という設定ESRを満たさず、漏れ電流も20μA以下という設定漏れ電流を満たしていなかった。
また、表3および表4に示すように、実施例1〜26のコンデンサは、125℃で3,000時間貯蔵後においても、ESRおよび漏れ電流の増加が少なく、また、静電容量の減少も少なく、ESRが21.0〜24.1mΩであって、30mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が48.4〜49.5μFであって、45μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流が3.0〜9.9μAであって、20μA以下という設定漏れ電流を満たし、ショート不良の発生もなかった。
これに対して、比較例1のコンデンサは、125℃で3,000時間貯蔵後には、ESRが45631mΩと大幅に増加し、静電容量も大きく減少し、漏れ電流も大幅に増加していた。また、比較例2〜4のコンデンサも、ESRの大幅な増加や漏れ電流の大きな増加が認められた。そして、比較例1〜4のコンデンサにはショート不良の発生も認められた。
〔巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(2)〕
この〔巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(2)〕では、処理液の調製にあたって溶媒として使用した沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤または沸点が150℃以上の高沸点有機溶剤を20質量%以上100質量%未満で含有する高沸点有機溶剤含有液をコンデンサの構成材としてコンデンサ内に留めて構成した電解コンデンサ〔つまり、本願の請求項2の発明(本願の第2の発明)に属する電解コンデンサ〕についての評価をする。これに属する電解コンデンサは、実施例では実施例27〜40の電解コンデンサである。
実施例27
前記〔巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(1)〕において巻回型アルミニウム電解コンデンサの製造にあたって用いた導電性高分子の分散液Aに代えて、導電性高分子の分散液B(この導電性高分子の分散液Bにおける導電性高分子は、スチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体をドーパントとするものである)を用い、その導電性高分子の分散液Bによる導電性高分子層を形成後のコンデンサ素子を前記調製例13の処理液に浸漬し、1分間放置した後、取り出し、180℃で30分間乾燥する操作に代えて、前記調製例13の処理液に浸漬し、1分間放置した後、取り出す操作をした(すなわち、180℃で乾燥する操作を行わなかった)以外は、前記〔巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(1)〕の場合と同様に、巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。つまり、この実施例27の巻回型アルミニウム電解コンデンサでは、調製例13の処理液の調製にあたって溶媒として使用したエチレングリコールを乾燥することなく(つまり、コンデンサ内から排出することなく)、コンデンサの構成材としてコンデンサ内に含んだコンデンサであり、本願の請求項2の発明(つまり、本願の第2の発明)に属するコンデンサである。
実施例28〜40
調製例13の処理液に代えて、調製例14〜26の処理液をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例27と同様の操作を行って、実施例28〜40の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
これらのコンデンサは、処理液の調製にあたって使用した溶媒をコンデンサ内に含んだものであり、実施例28のコンデンサでは、調製例14の処理液の調製にあたって溶媒として使用したγ−ブチロラクトンを含んでおり、実施例29〜40のコンデンサでは調製例15〜26の処理液の調製にあたって溶媒として使用したエチレングリコールをコンデンサ内に含んでいる。
比較例5
調製例13の処理液の含浸をしなかった以外は、実施例27と同様の操作を行って、比較例5の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
比較例6〜8
調製例13の処理液に代えて、調製例30〜32の比較用処理液をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例27と同様の操作を行って、比較例6〜8の巻回型アルミニウム電解コンデンサを製造した。
これら比較例6〜8のコンデンサのいずれにおいても、それぞれで使用した調製例30〜32の比較用処理液の調製にあたって溶媒として使用したエチレングリコールをコンデンサ内に含んでいる。
上記のように製造した実施例27〜40および比較例5〜8の巻回型アルミニウム電解コンデンサについて、前記〔巻回型アルミニウム電解コンデンサでの評価(1)〕の場合と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定した。その結果を表5に前記表2の場合と同様の態様で示す。
また、上記特性測定後の実施例27〜40および比較例5〜8のコンデンサを125℃で3,000時間貯蔵し、その貯蔵後のコンデンサのESR、静電容量および漏れ電流を前記と同様に測定し、ショート不良の発生を前記と同様に調べた。その結果を表6に前記表4の場合と同様の態様で示す。
表5に示すように、実施例27〜40のコンデンサは、ESRが14.2〜17.4mΩであって、30mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が55.1〜55.5μFであって、45μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流が2.5〜4.1μAであって、20μA以下という設定漏れ電流を満たし、比較例5〜8のコンデンサに比べて、ESRが低く、かつ漏れ電流が少なかった。
特に処理液の含浸をしていない比較例5のコンデンサは、漏れ電流が120.0μAと非常に多く、ESRも89.0mΩと非常に大きかった。
また、表6に示すように、実施例27〜40のコンデンサは、高温での貯蔵によるESRや漏れ電流の増加、静電容量の減少が少なく、125℃で、3,000時間貯蔵後においても、ESRが15.3〜19.0mΩであって、30mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が52.1〜52.8μFであって、45μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流が0.4〜1.9μAであって、20μA以下という設定漏れ電流を満たし、ショート不良の発生もなかった。
これに対して、比較例5のコンデンサは、125℃で3,000時間貯蔵後では、ESRが45631mΩと極端に大きくなり、漏れ電流が352.2μAと非常に多くなり、静電容量も低下するなど、高温貯蔵での特性低下が大きく、耐熱性に劣っていた。
また、比較例6〜8のコンデンサも、高温での貯蔵による特性低下があり、125℃で3,000時間貯蔵後においては、ESRの増加や漏れ電流の増加が認められ、設定ESRを満たさなくなっていた。
〔タンタル固体電解コンデンサでの評価〕
実施例41
タンタル焼結体を濃度が0.1%のリン酸水溶液に浸漬した状態で、100Vの電圧を印加することによって化成処理を行い、タンタル焼結体の表面に酸化被膜を形成して誘電体層を構成して、設定ESRが50mΩ以下、設定静電容量が15μF以上、定格電圧が35V、漏れ電流が20μA以下のコンデンサ素子を作製した。
このコンデンサ素子を前記の導電性高分子の分散液C(この導電性高分子の分散液Cにおける導電性高分子は、ドーパントがスチレンスルホン酸とアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体であるが、モノマーとしてメチル化エチレンジオキシチオフェンを用いて酸化重合することにより得られたものである)に浸漬し、5分間放置した後、取り出して、150℃で30分間乾燥する操作を4回繰り返して導電性高分子層を形成した。
次に、この導電性高分子層を形成したコンデンサ素子を前記調製例1の処理液に浸漬し、1分間放置した後、取り出し、150℃で30分間乾燥した後、上記コンデンサ素子を前記導電性高分子の分散液D(この導電性高分子の分散液Dは、前記のように、スルホン化ポリエステルをドーパントとしてエチレンジオキシチオフェンを酸化重合して得た導電性高分子の分散液と前記の導電性高分子の分散液Bとを質量比5:1の割合で混合したものである)に浸漬し、5分間放置した後、取り出し、150℃で30分間乾燥する操作を3回繰り返して、電解質となる導電性高分子の層を形成した。その後、カーボンペースト、銀ペーストで上記導電性高分子層からなる電解質層を覆って、樹脂モールドすることにより、実施例41のタンタル電解コンデンサを製造した。
実施例42〜66
調製例1の処理液に代えて、調製例2〜26の処理液をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例41と同様の操作を行って、実施例42〜66のタンタル電解コンデンサを製造した。
比較例9
調製例1の処理液で処理しなかった以外は、実施例41と同様の操作を行って、比較例9のタンタル電解コンデンサを製造した。
比較例10〜12
調製例1の処理液に代えて、調製例27〜29の比較用処理液をそれぞれ別々に用いた以外は、実施例41と同様の操作を行って、比較例10〜12のタンタル電解コンデンサを製造した。
上記のように製造した実施例41〜66および比較例9〜12のタンタル電解コンデンサについて、前記と同様に、ESRおよび静電容量を測定した。その結果を表7および表8に前記表1および表2の場合と同様の態様で示す。
上記特性測定後の実施例41〜66および比較例9〜12のコンデンサを125℃で500時間貯蔵し、その貯蔵後に前記と同様に、ESR、静電容量および漏れ電流を測定し、かつ、ショート不良の発生を調べた。その結果を表9および表10に前記表3および表4と同様の態様で示す。
表7および表8に示すように、実施例41〜66のコンデンサは、ESRが42.5〜46.3mΩであって、50mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が17.3〜18.4μFであって、15μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流が7.0〜13.3μAであって、20μA以下という設定漏れ電流を満たし、比較例9〜12のコンデンサに比べて漏れ電流が少なく、かつESRが低かった。
特に処理液で処理していない比較例9のコンデンサは、漏れ電流が90.2μAと多く、かつESRも114.0mΩと高かった。
また、表9〜表10に示すように、実施例41〜66のコンデンサは、高温での貯蔵によるESRの増加や、静電容量の減少、漏れ電流の増加が少なく、125℃で500時間貯蔵後においても、ESRが44.8〜49.8mΩであって、50mΩ以下という設定ESRを満たし、静電容量が15.8〜16.8μFであって、15μF以上という設定静電容量を満たし、漏れ電流が2.6〜11.9μAであって、20μA以下という設定漏れ電流を満たし、ショート不良の発生もなかった。
これに対して、比較例9のコンデンサは、高温での貯蔵による漏れ電流の増加、ESRの増加、静電容量の減少が著しかった。
上記のように、本発明では、巻回型アルミニウム電解コンデンサのみならず、タンタル電解コンデンサにおいても、漏れ電流が少なく、耐熱性が優れたコンデンサを提供することができた。