JP2016003389A - 熱間プレス用鋼板、並びに該鋼板を用いた熱間プレス成形品及びその製造方法 - Google Patents

熱間プレス用鋼板、並びに該鋼板を用いた熱間プレス成形品及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Niなどの高価な元素を多量に添加することなく、金型でのプレス成形後の冷却の際に追加の工程も必要とすることなく、熱間プレス後に優れた延性を実現し得る熱間プレス用鋼板を提供する。【解決手段】本発明の熱間プレス用鋼板はC:0.10〜0.4%、Si:2.0%以下、Mn:0.5%以下、Cr:0.8〜2.0%、P:0.015%以下、S:0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0005〜0.005%、N:[Ti]/[N]が3.3以上となる含有量を含み、炭素当量Ceqが0.43〜0.7%であり、Ms点が415℃以上を満足する。Ceq=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/ 14・・・(1)Ms(℃)=550−361[C]−39[Mn]−10[Cu]−17[Ni]−20[Cr]−5[Mo]+30[Al]・・・(2)【選択図】なし

Description

本発明は、熱間プレス用鋼板、並びに該鋼板を用いた熱間プレス成形品及びその製造方法に関する。以下では、上記熱間プレス用鋼板の代表例である自動車用鋼板を中心に説明するが、本発明はこれに限定されない。
近年、自動車の燃費向上および衝突安全性の向上を両立させるため、自動車用鋼板を出来るだけ高強度化することが要請されている。しかしながら、鋼板を高強度化すると、伸びや、板材の深絞り性を示すランクフォード値が低下し、プレス成形性や形状凍結性が劣化する。
このような課題を解決するために、熱間プレス成形法が採用されている。熱間プレス成形法は、鋼板をオーステナイト単相となる温度に加熱して強度を低下させて、成形を容易にした状態で、金型にてプレス成形を行う方法である。具体的には例えば、鋼板に比べて低温、例えば室温の金型で成形することによって鋼板に形状を付与すると同時に、両者の温度差を利用した焼入れを行って、プレス成形後の部品の強度を確保する。
このように熱間プレス成形法で製造した部品は高強度を示すため、バンパービーム、ドアビームなどの衝突部品への適用が進められている。衝突部品は高強度に加えて、延性や靭性が要求されることから、熱間プレス成形法を用いて、熱間プレス後の部品の延靭性を高めるための研究開発が進められている。
例えば特許文献1には、質量%で、Niを1%超〜5%含有させることで、熱間プレス後の硬化能および衝撃特性を高めることができる熱間プレス用鋼板が提案されている。
また、特許文献2には、質量%で、C:0.33%以上0.40%以下、Ni:2.0以上5.0%以下、Mn:0.01%以上0.5%未満を含み、選択成分としてCrを0.5%以下の範囲で含み、旧オーステナイト平均粒径が5μm以上であるマルテンサイトからなる鋼組織とすることで、延靭性を改善した熱間プレス成形品が提案されている。
しかしながら、上記特許文献1、2の技術では、高価なNiを多量に添加する必要があるため、コストが増加する。
また、特許文献3には、鋼板をAc変態点以上の温度に加熱し、400℃以上550℃以下の温度に加熱した金型でプレス成形を行い、400℃以上550℃以下の温度で5秒以上保定し、続いて室温まで空冷以下の速度で冷却することで、靭性を改善する熱間プレス方法が提案されている。
また、特許文献4には、鋼板をAC変態点以上の温度に加熱し、400℃以上550℃以下の温度に加熱した金型でプレス成形を行い、400℃以上550℃以下の温度範囲に5秒以上保持し、550℃以上590℃以下の温度に加熱して軟窒化処理を行い、続いて室温まで20℃/秒以上の速度で冷却することで、靭性及び疲労特性を改善する熱間プレス方法が提案されている。
しかしながら、上記特許文献3、4の技術では、400℃以上550℃以下の温度に加熱した金型でプレス成形するため、金型冷却の速度が低下して生産性が低下するという問題がある。更に上記特許文献3、4の技術では、400℃以上550℃以下での5秒以上維持した後、室温まで空冷以下の速度での冷却、または550℃以上590℃以下の温度での軟窒化処理が必要になるため、生産性が極端に低下する。
また、特許文献5には、Ni、Cu、Snの1種または2種以上の合計を0.005〜2%、Ca、Mg、Y、As、Sb、REMの1種または2種以上の合計を0.0005〜0.05含有させることで、熱間プレス後の衝撃特性・遅れ破壊特性を高めることができる熱間プレス用鋼板が提案されている。
また、特許文献6には、C:0.25〜0.45%およびMn+Cr:0.5〜3.0%を含有し、さらにSi:0.5%以下、Ni:2%以下、Cu:1%以下、V:1%以下およびAl:1%以下の1種または2種以上を含有し、残部Fe及び不純物からなる化学組成を有し、鋼組織が、旧オーステナイト平均粒径が10μm以下である自動焼き戻しマルテンサイトにより構成され、かつ引張強さが1.8GPa以上とすることで、靭性を改善した熱間プレス成形品と、その元になる熱間プレス用鋼板が提案されている。
上記特許文献5、6の技術によれば、介在物の制御や粒径の微細化により一定の改善効果が期待できるものの、十分な延靭性が確保できないため、更なる改善が必要である。
特開2004−211197号公報 特開2012−1802号公報 特開2005−177805号公報 特開2006−224162号公報 特開2005−139485号公報 特開2006−152427号公報
本発明は上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、Niなどの高価な元素を多量に添加することなく、また、金型でのプレス成形後の冷却の際に追加の工程も必要とすることなく、熱間プレス後に優れた延性を実現し得る熱間プレス用鋼板、並びに熱間プレス成形品及びその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために熱間プレス用鋼板の組成を中心に検討した。その結果、熱間プレス用鋼板におけるMnの量を0.5%以下に低減すると共に、Mnの低減分をCrで補完してCrを0.8%以上に多量添加すれば、プレス成形後の延性が向上することを突き止めた。
すなわち、熱間プレス時の金型冷却による鋼板の焼入れ性を確保するため、従来はMnを活用しており、例えば後記する表1の鋼種1の従来材に示すように、Crに比べてMnを多量添加していた。ところが、上記従来材を用いた熱間プレス成形品は、表2の試験No.1に示すように曲げ角度などの延性に劣り、改善の余地があった。
そこで本発明者らは上記課題を達成するため、Mnと同じ焼入れ性向上作用を有し、フェライトやベイナイトなどの形成を抑制し得る元素であって、炭化物の粗大化抑制効果に優れるCrに着目した。MnとCrの最も大きな相違点は、マルテンサイトの形成が開始されるMs点の低下幅にある。Ms点は後記する式(2)で規定されるが、上記式(2)において、Mnの係数が−39であるのに対し、Crの係数は−20であり、Mnに比べてCrは、Ms点の低下幅が小さい。よって、Mnに比べてCrを多量添加すると、フェライトやベイナイトの形成を抑制しつつ、Ms点を高めることができる。Ms点が低いと固溶C量が増加して鋼材の変形能に対して悪影響を及ぼすようになり、特に延靱性が低下する。これに対し、Ms点が上昇すると、マルテンサイトが形成される温度が高くなり、生成したマルテンサイトの金型冷却中に鋼材中に固溶しているCが炭化物として析出し、いわゆる自己焼戻しが促進される。
そして本発明では、炭化物の粗大化抑制効果の高いCrを多量に含有しているため、炭化物の成長速度が大幅に抑制される。その結果、自己焼戻しにより形成される炭化物の粗大化が防止されて、破壊の起点となる炭化物を微細化できるため、熱間プレス成形品の延性を高めつつ、熱間プレス成形品の強度および靭性も確保することができる。
本発明は、上記観点に基づきMn量およびCr量を決定すると共に、Ms点および焼き入れ性の指標であるCeq量も適切な範囲に制御すれば所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、上記課題を解決し得た本発明の熱間プレス用鋼板は、成分組成が、質量%で、C:0.10〜0.4%、Si:0%以上2.0%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0.8〜2.0%、P:0%超0.015%以下、S:0%超0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0005〜0.005%、N:[Ti]/[N]が3.3以上となる含有量をそれぞれ含み、残部が鉄および不可避的不純物からなるとともに、下記式(1)で規定される炭素当量Ceqが0.43〜0.7%であり、且つ、下記(2)で規定されるMs点が415℃以上であるところに要旨を有する。
Ceq=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14・・・(1)
Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]−10×[Cu]−17×[Ni]−20×[Cr]−5×[Mo]+30×[Al]・・・(2)
ただし、[X]は元素Xの含有量を意味し、単位は質量%である。
本発明の好ましい実施形態において、上記熱間プレス用鋼板は、更に質量%で、Mo:0%超0.5%以下、Cu:0%超0.5%以下、およびNi:0%超0.5%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含む。
本発明の好ましい実施形態において、上記熱間プレス用鋼板は、更に質量%で、V:0%超0.1%以下、およびNb:0%超0.1%以下の少なくとも一種を含む。
本発明の好ましい実施形態において、上記熱間プレス用鋼板は、更に質量%で、Ca:0%超0.005%以下、およびREM:0%超0.005%以下の少なくとも一種を含む。
また、上記課題を解決し得た本発明に係る熱間プレス成形品の製造方法は、上記のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板を、下記式(3)で規定されるAc点以上の温度に加熱した後、金型により前記鋼板のプレス成形を開始し、プレス成形の開始後、下記式(2)で規定されるMs点の範囲までを、前記金型内で20〜300℃/sの平均冷却速度で冷却するところに要旨を有する。
Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]−10×[Cu]−17×[Ni]−20×[Cr]−5×[Mo]+30×[Al]・・・(2)
Ac(℃)=910−203×[C]1/2+44.7×[Si]−30×[Mn]+700×[P]+400×[Al]+400×[Ti]+104×[V]−11×[Cr]+31.5×[Mo]−20×[Cu]−15.2×[Ni]・・・(3)
ただし、[X]は元素Xの含有量を意味し、単位は質量%である。
また、上記課題を解決し得た本発明の熱間プレス成形品は、上記のいずれかに記載の成分組成からなり、マルテンサイト:全組織に対する面積率で95%以上、残部:フェライト、およびベイナイトの少なくとも一種からなり、鋼中に分散する炭化物の平均粒径が1μm以下である組織を有するところに要旨を有する。
本発明によれば、Mnの一部を比較的安価なCrに代えて、Mnに比べてCrを多量に含有する熱間プレス用鋼板を用いているため、Niなどの高価な元素を多量に添加することなく、また金型でのプレス成形後の冷却の際に追加の工程も必要とすることなく生産性に優れた方法により、熱間プレス後に優れた延性を実現し得る熱間プレス成形品を提供することができる。
まず、本発明の熱間プレス用鋼板について説明する。上述したとおり、本発明の熱間プレス用鋼板は、成分組成が、C:0.10〜0.4%、Si:0%以上2.0%以下、Mn:0%以上0.5%以下、Cr:0.8〜2.0%、P:0%超0.015%以下、S:0%超0.01%以下、Al:0.001〜0.1%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0005〜0.005%、N:[Ti]/[N]が3.3以上となる含有量をそれぞれ含み、残部が鉄および不可避的不純物からなると共に、下記式(1)で規定される炭素当量Ceqが0.43〜0.7%であり、且つ、下記式(2)で規定されるMs点が415℃以上であることを特徴とする。
Ceq=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14・・・(1)
Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]−10×[Cu]−17×[Ni]−20×[Cr]−5×[Mo]+30×[Al]・・・(2)
以下、本発明に係る熱間プレス用鋼板の成分組成について、詳しく説明する。
C:0.10〜0.4%
Cは、熱間プレスの際における焼入れ時の強度を確保するうえで重要な元素である。特にマルテンサイトを生成して熱間プレス成形品の高強度化を達成するためには必須の元素である。所望とする1180MPa以上の強度を得るためには、C量の下限を0.10%以上、好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.2%以上とする。ただし、Cを過剰に含有させると、必要以上に強度が増加して熱間加工性が低下するだけでなく、溶接性等も劣化するので、C量の上限を0.4%以下、好ましくは0.3%以下とする。
Si:0%以上2.0%以下
Siは、固溶強化能が高く、セメンタイトの粗大化を抑制するが、延性の向上に有用な微細な炭化物の形成自体も抑制する傾向がある。更にSiは、金型焼入れ時におけるマルテンサイトの自己焼戻し作用を阻害して延性の低下を招く。そのため、Si量は出来るだけ少ないことが望ましい。Si量は2.0%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下とする。Si量は0%であっても良い。
Mn:0%以上0.5%以下
Mnは、焼入れ性向上効果は非常に大きい反面、Ms点を大きく低下させる元素である。そのため、Mnを過剰に含有させると自己焼戻しが十分に起こらなくなり、延性が低下する。よって、本発明ではMn量の上限を、焼入れ性の確保に必要最小限の含有量に止める。Mn量は0.5%以下、好ましくは0.3%以下とする。なお、Mn量の好ましい下限は0.05%以上であり、より好ましくは0.1%以上である。
Cr:0.8〜2.0%
Crは、Mnと同様に焼入れ性向上効果を有するが、Mnに比べてMs点の低下幅が小さいため、自己焼戻しの促進による延性の向上と焼入れ性の向上による高強度化とを両立させることができる。更にCrは、焼戻し時に形成される炭化物の粗大化抑制効果が高く、熱間プレス成形品における破壊の起点となる炭化物を微細化して破壊を防止し、延性の向上に有用な元素である。これらの効果を有効に発揮させるため、Cr量は0.8%以上、好ましくは1.0%以上、より好ましくは1.2%以上とする。ただし、Crを過剰に含有しても上記効果が飽和してしまい、コストが上昇するため、Cr量の上限を2.0%以下、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.5%以下とする。
なお、前述した特許文献6の請求項1では、Mn+Cr:0.5〜3.0%を含有する熱間プレス鋼板部材を規定しているが、本発明とは以下の点で相違している。まず、上記特許文献6では、MnとCrを、焼入れ性向上作用を有する同効元素としての認識しかなく、本発明のようにMn量の一部をCr量に代えて、プレス成形後の延性を向上させるという思想は全くない。よって、上記特許文献6では、本発明のようにMnの上限を0.5%以下に低減し、Crを0.8%以上添加することは開示されていない。実際のところ、上記特許文献6の表1には、Mn量を1.10%以上含む実施例しか開示されていない。また、Cr量にしても、上記実施例の殆どが0.48%以下であり、唯一、0.80%のCrを含む例でもMn量は1.10%と多く、本発明の要件を満足していない。
P:0%超0.015%以下
Pは、鋼中で粒界偏析を起こして熱間加工性やプレス成形性に悪影響を及ぼす有害元素である。したがって、P量は0.015%以下、好ましくは0.010%以下、より好ましくは0.005%以下とする。
S:0%超0.01%以下
Sは、MnS等の硫化物系介在物を形成し、割れ発生の原因となり得る。したがって、S量は0.01%以下、好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.002%以下とする。
Al:0.001〜0.1%
Alは、溶鋼の脱酸材として有用であると共に、後記するBの添加による焼入れ性向上作用を阻害するNを固定する元素でもある。このような効果を有効に発揮させるため、Al量の下限を0.001%以上、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上とする。ただし、Alを過剰に含有させると、非金属介在物が多くなり、表面疵が発生し易くなるので、Al量の上限を0.1%以下、好ましくは0.07%以下、より好ましくは0.04%以下とする。
Ti:0.01〜0.1%
Tiは、Bに優先して鋼中のNと結合してTiNとなってNを固定することで、BがBNとなって浪費されることを抑制し、Bによる焼入れ性向上効果を向上させる。このような効果を有効に発揮させるため、Ti量の下限を0.01%以上、好ましくは0.015%以上とする。ただし、Tiを過剰に含有させると、Ti系析出物が鋼中に多量に生成してしまい、靭性が劣化するので、Ti量の上限を0.1%以下、好ましくは0.06%以下、より好ましくは0.04%以下とする。
B:0.0005〜0.005%
Bは、焼入れ性を向上させるのに有用な元素である。このため、B量の下限を0.0005%以上、好ましくは0.001%以上とする。ただし、Bを過剰に含有させると、熱間での割れの懸念があるほか、上記効果が飽和する。よって、B量の上限を0.005%以下、好ましくは0.004%以下、より好ましくは0.003%以下とする。
N:[Ti]/[N]が3.3以上となる含有量
Nは、上述したようにBと結合してBNとなってBを浪費させ、Bによる焼入れ性向上効果を劣化させる。そのため、Nを、Bに優先してTiNとして固定し得るよう、Tiの原子%を超えないようにNの原子%を制限する。上記観点から、Nは、[Ti]/[N]が3.3以上となる含有量とする。なお、3.3はTiとNの原子量比である。好ましいN量は、[Ti]/[N]が3.5以上となる量であり、より好ましいN量は、[Ti]/[N]が3.8以上となる量である。なお、その上限は、上記観点からは特に限定されないが、[Ti]/[N]が大き過ぎると、粗大なTiNが形成され、曲げ性が劣化することなどを考慮すると、[Ti]/[N]の上限は10以下であり、より好ましくは7以下である。
炭素当量Ceq:0.43〜0.7%
Ceq=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14・・・(1)
後述するように本発明では、熱間プレスの工程で金型焼入れを行う。金型焼入れでは、例えば水焼入れ、油焼入れなどの一般的な焼入れ方法に比べて焼入れ速度が小さい。そのため、金型焼入れによる熱間プレス後に十分な硬さを得るには、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を十分に確保する必要がある。また、硬さの低下が無くとも、微量なフェライトが形成されると、そのフェライトがき裂の伝播経路となって局部延性が劣化する。このような観点からも、焼入れ性を確保することが必要である。よって、本発明では、焼入れ性の指標である炭素当量Ceqを0.43%以上、好ましくは0.45%以上、より好ましくは0.46%以上とする。ただし、焼入れ性を高くし過ぎると、硬くなり過ぎて延性が劣化するので、Ceqの上限を0.7%以下、好ましくは0.67%以下、より好ましくは0.65%以下とする。なお、上記式(1)は、JIS G 0203に基づく。
Ms点:415℃以上
Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]−10×[Cu]−17×[Ni]−20×[Cr]−5×[Mo]+30×[Al]・・・(2)
上述したように熱間プレス工程での金型焼入れの冷却速度は一般的な焼入れ方法に比べて小さい。そのため、マルテンサイト形成後の冷却過程で該マルテンサイトの自己焼戻しを促進させることが、熱間プレスままで焼戻しを促進するための有効な手段となる。自己焼戻しを促進して延性を高めるためには、冷却速度を低下させて自己焼戻しの時間を確保するよりも、冷却中にマルテンサイトが形成される温度、すなわちMs点を高めて、より高温域で自己焼戻しが起こるようにする方法が効果的である。これにより、生産性の劣化を招くことなく延性などの特性を向上させることができる。そのため、本発明では、Ms点の下限を415℃以上、好ましくは420℃以上、より好ましくは425℃以上とする。Ms点の上限は、上記観点からは特に限定されないが、Ms点が高くなると、自己焼戻しが促進し過ぎて炭化物が粗大になり、曲げ性が劣化する懸念があるため、好ましくは550℃以下であり、より好ましくは500℃以下である。
本発明の熱間プレス用鋼板は上記成分を基本的に含有し、残部は鉄および不可避的不純物である。更に本発明の熱間プレス用鋼板は、本発明の作用を損なわない範囲で、更に以下の許容成分を選択的に含有することができる。
Mo:0%超0.5%以下、Cu:0%超0.5%以下、およびNi:0%超0.5%以下よりなる群から選択される少なくとも一種の元素
これらの元素は、フェライト変態、パーライト変態、及びベイナイト変態を抑制するため、加熱後の金型での冷却中に、フェライト、パーライト、ベイナイトの形成を防止し、高強度化に寄与するマルテンサイトの確保に有効に作用する。これらの元素は単独で添加しても良いし、二種以上を含有しても良い。こうした作用を有効に発揮させるためには、各元素とも、その下限を好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上、更に好ましくは0.05%以上とする。上記作用のみを考慮すると、各元素の含有量は多いほうが良いが、コストが上昇するため、各元素とも、その上限を好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.4%以下、更に好ましくは0.3%以下とする。
V:0%超0.1%以下、およびNb:0%超0.1%以下の少なくとも一種
VおよびNbは、微細な炭化物を形成し、ピン止め効果により組織を微細にする効果がある。こうした効果を有効に発揮させるためには、いずれの元素とも、その下限を好ましくは0.001%以上とする。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、粗大な炭化物が形成され、破壊の起点になることで却って延性を劣化させる。よって、いずれの元素とも、その上限を好ましくは0.1%以下、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.05%以下とする。
Ca:0%超0.005%以下、およびREM:0%超0.005%以下の少なくとも一種
CaおよびREM(希土類元素)は、いずれも鋼中介在物の形態を微細化する作用を有し、介在物による熱間プレス時の割れを防止するのに有効な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、いずれの元素とも、その下限を好ましくは0.0002%以上、より好ましくは0.0005%以上とする。しかしながら、これらの元素を過剰に含有させても上記効果が飽和してしまい、コストの増加を招くだけである。よって、いずれの元素とも、その上限を好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.004%以下、更に好ましくは0.003%以下とする。
本発明に係る熱間プレス用鋼板の表面形態は特に限定されず、表面にめっきが施されていない裸材である熱延材および冷延材;これらの熱延材または冷延材にめっきが施されたるめっき材の両方が含まれる。
上記熱間プレス用鋼板の製造方法は特に限定されない。例えば、常法により、上記成分組成の鋼を溶製して鋼片に鋳造し、この鋼片を熱間圧延して熱延材に加工して熱間プレス用鋼板を得ることができる。必要により、更に冷間圧延して冷延材に加工しても良い。本発明の熱間プレス用鋼板は、後記する表1の裸材のように、このようにして得られる熱延板や冷延板を、そのまま用いて、熱間プレス成形品とすることもできる。或いは、本発明の熱間プレス用鋼板は、例えば後記する表1のZnめっき材やAl−Siめっき材のように、これらの熱延板や冷延板にZnめっきやAl−Siめっきなどのめっきを施しても良い。但し、めっきの種類はこれに限定されない。
次に、本発明に係る熱間プレス成形品の製造方法について説明する。
上述したとおり、本発明に係る熱間プレス成形品の製造方法は、上記熱間プレス用鋼板を、Ac点以上の温度に加熱した後、金型により前記鋼板のプレス成形を開始し、プレス成形の開始後、下記式(2)で規定されるMs点の範囲までを、前記金型内で20〜300℃/sの平均冷却速度を確保しつつ冷却することを特徴とする。
Ac(℃)=910−203×[C]1/2+44.7×[Si]−30×[Mn]+700×[P]+400×[Al]+400×[Ti]+104×[V]−11×[Cr]+31.5×[Mo]−20×[Cu]−15.2×[Ni]・・・(3)
以下、各工程ごとに説明する。
<上記熱間プレス用鋼板をAc点以上の温度に加熱>
熱間プレス成形品の組織をマルテンサイト主体の組織とするため、加熱温度はオーステナイト単相域であるAc点以上とする。好ましくはAc点+15℃以上であり、より好ましくはAc点+30℃以上である。なお、その上限は特に限定されず、加熱温度が高くても、得られる熱間プレス用鋼板の特性に問題はないが、燃料費等が上昇し、コストが増加する。そのため、加熱温度の上限は、好ましくは1000℃以下とする。
本発明の製造方法は、上記のように加熱温度を制御することが重要であり、上記加熱温度までの平均加熱速度は特に限定されない。但し、生産性の観点からは遅すぎないこと、制御性の観点からは速すぎないことが望ましい。これらを考慮して、上記加熱温度までの平均加熱速度は、例えば、好ましくは1〜200℃/s、より好ましくは2〜150℃/sである。
また、加熱温度到達後の加熱保持時間は特に限定されないが、例えば、1s以上保持することが好ましい。より好ましくは3s以上である。なお、加熱保持時間の上限は特に限定されず、加熱保持時間が長くても、得られる熱間プレス用鋼板の特性には問題はない。但し、加熱保持時間が長過ぎると、燃料費等が上昇し、コストが増加する。そのため、加熱保持時間は、好ましくは1800秒以下とする。より好ましくは1200s以下である。
<金型によりプレス成形を開始し、プレス成形中およびプレス成形終了後は前記金型内で20〜300℃/sの平均冷却速度を確保しつつMs点以下まで冷却>
本発明では、金型によりプレス成形を開始する。プレス成形前の金型の温度は通常、室温であり、せいぜい、数十℃程度である。
本発明では、上記加熱工程で形成されたオーステナイトを、フェライトおよびベイナイトの生成を阻止しつつマルテンサイト主体の組織とするため、プレス成形の開始から、Ms点までの範囲における平均冷却速度を20℃/s以上、好ましくは30℃/s以上、より好ましくは40℃/s以上に制御して冷却する。一方、上記範囲における平均冷却速度が大き過ぎると、マルテンサイト変態後の自己焼戻しを促進させるのに十分な時間が確保できず、延性が低下する。そのため、本発明では、上記平均冷却速度の上限を300℃/s以下、好ましくは200℃/s以下、より好ましくは100℃/s以下とする。
上記範囲に冷却速度を制御する方法は特に限定されず、例えば、プレス成形時に金型ではさみ込み、そのまま金型による抜熱で冷却する方法;プレス成形後、金型から取り出して、風、ミスト、水等の冷媒を吹きかけて冷却するなどの方法が用いられる。
上述したように本発明では、プレス成形の開始から、少なくともMs点までの範囲における平均冷却速度を上記範囲に制御して冷却することが重要であって、Ms点以降の冷却速度は特に限定されない。一般にプレス成形終了温度はMs点未満であり、例えば、プレス成形の開始からプレス成形終了温度までの範囲を、上記の冷却速度で冷却しても良い。好ましくは、プレス成形の開始から300℃の範囲を上記の冷却速度で冷却する。より好ましくは、プレス成形の開始から200℃の範囲を上記の冷却速度で冷却する。
上記のように冷却した後は、室温までの範囲を、おおむね、0.1〜300℃/sの平均冷却速度で冷却する。このようにして本発明の熱間プレス成形品が得られる。
次に、本発明の熱間プレス成形品について説明する。上述したとおり、本発明の熱間プレス成形品は、上述した熱間プレス用鋼板と同じ成分組成からなり、マルテンサイト:全組織に対する面積率で95%以上、残部:フェライト、およびベイナイトの少なくとも一種からなり、鋼中に分散する炭化物の平均粒径が1μm以下である組織を有することを特徴とする。
このうち、上記成分組成は、前述した熱間プレス用鋼板の欄で詳しく説明したので、説明を省略する。以下、本発明の熱間プレス成形品を特徴付ける組織について説明する。
<マルテンサイト:全組織に対する面積率で95%以上、残部:フェライト、およびベイナイトの少なくとも一種>
本発明の熱間プレス成形品は、高強度を実現しつつ、変形時に破壊の起点になる硬質相と軟質相の界面を極力少なくして延性を確保するため、できるだけマルテンサイト単相の組織にすることが望ましい。全組織に対するマルテンサイトの面積率は95%以上、好ましくは98%以上、より好ましくは100%である。なお、マルテンサイト以外の残部組織は、フェライト、およびベイナイトの少なくとも一種である。
上述した各組織は、熱間プレス成形品の表面を鏡面研磨した後、ナイタール腐食を行って光学顕微鏡(倍率1000倍)で観察し、マルテンサイト、フェライト、ベイナイト、パーライトの各組織を同定して各組織の面積率を算出すれば良い。
<炭化物の平均粒径が1μm以下>
前述したように自己焼戻しにより形成された炭化物は、熱間プレス成形品の変形時に破壊の起点となるため、微細化する必要がある。微細化された炭化物は延性の向上に寄与する。そのため、炭化物の平均粒径は1μm以下、好ましくは0.7μm以下、より好ましくは0.4μm以下とする。なお、炭化物の平均粒径の下限は特に限定されないが、おおむね、0.01μm以上である。
炭化物の平均粒径は以下のようにして測定することができる。まず、抽出レプリカ法により析出した炭化物を抽出し、透過型電子顕微鏡にて、150000倍の倍率で1μm×1μmの領域を観察して撮影する。観察された炭化物のうち円相当直径に換算して2nm以上のものを画像解析して、各炭化物粒子の面積を求める。その面積から円相当直径を求めて平均値を算出し、これを炭化物の平均粒径とする。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
常法により、表1に示す成分組成の鋼材を溶製して熱間圧延および冷間圧延を施した後、板厚1.4mmの冷延鋼板を作製した。表1中、「―」は無添加を意味する。本実施例では、表面状態の異なる下記3種類の熱間プレス用鋼板サンプルを用いた。
・上記冷延鋼板を、そのまま熱間プレスに供する裸材
・めっきシミュレータにて溶融亜鉛めっきを付与したZnめっき材
・Al−Siめっきを付与したAl−Siめっき材。
上記Znめっき材は、不活性雰囲気下にて750℃で60秒加熱した後、480℃に冷却し、480℃のZn−0.1%Alめっき浴に浸漬後、取り出して、550℃に加熱して10秒保持した後、冷却して製造した。
また、上記Al−Siめっき材は、不活性雰囲気下にて750℃で60秒加熱した後、650℃に冷却し、650℃のZn−10%Siめっき浴に浸漬後、取り出してから冷却して製造した。
次いで、上記の各熱間プレス用鋼板サンプルを用い、熱間プレス成形を想定して表2に示す製造条件で熱間プレス成形品サンプルを得た。詳細には、上記の各熱間プレス用鋼板サンプルを大気炉へ装入するか通電加熱することにより、表2に記載の平均加熱速度で所定の加熱温度まで昇温した後、当該加熱温度で所定時間加熱保持した。次に、冷却用の金型に挟み込んでプレス成形を開始し、プレス成形開始後からMs点以下の温度までを表2に記載の平均冷却速度で冷却した後、上記温度から室温までを放冷し、約2℃/sの平均冷却速度で冷却して熱間プレス成形品サンプルを得た。
このようにして得られた各熱間プレス成形品サンプルについて、上述した方法により、各組織の面積率および炭化物の平均粒径を測定した。後記する表2の「マルテンサイトの面積率」には、マルテンサイトの面積率のみ記載しているが、マルテンサイト以外の残部組織は、フェライトまたはベイナイトである。
次に、各熱間プレス成形品サンプルの強度および延性を評価するため、以下のようにして引張試験と曲げ試験を実施した。
引張試験はJIS5号試験片を用いて、ひずみ速度10mm/sで行い、強度の評価指標として引張強度を測定した。本実施例では、引張強度が1180MPa以上のものを合格とした。
曲げ試験は、VDA規格238−100に規定された条件で行い、延性の評価指標として曲げ角度を測定した。なお、曲げ角度は鋼板の表面状態に強く依存するため、本実施例では、鋼板の表面状態が同じもの同士;すなわち、裸材、Znめっき材、Al−Siめっき材のそれぞれについて、延性の改善効果を相対的に評価した。具体的には、従来の熱間プレス用鋼板として典型的な成分組成を有する表1の鋼種1を用いた試験No.1の裸材を基準1;上記鋼種1を用いた試験No.2のZnめっき材を基準2;上記鋼種1を用いた試験No.3のAl−Siめっき材を基準3として、それぞれの曲げ角度を基準として、曲げ角度が10%以上上昇したものを合格とした。表2の曲げ角度の欄には「各基準値との比較」の欄を設けて、それぞれの基準値に対する上昇率も併記した。
これらの測定結果を表2に併記する。表2中、TSは引張強度を意味する。また、表2中、「炭化物の平均粒径」の欄に記載の「−」は、観察時に明確な炭化物が観察されなかったために当該炭化物の平均粒径を測定しなかったことを意味する。
表2の試験No.4〜7、11〜13、15〜17、22〜31はいずれも、本発明の要件を満足する熱間プレス用鋼板を用い、本発明の製造条件にて本発明の熱間プレス成形品を製造した例である。このようにして得られた本発明の熱間プレス成形品は、引張強度TS、曲げ角度の両方が合格基準を満たしている。よって、本発明によれば、Niなどの高価な元素を多量に添加することなく、また金型でのプレス成形後の冷却の際に追加の工程も必要とすることなく、強度と延性に優れた熱間プレス成形品を効率よく得られることが確認できた。
これに対し、本発明で規定する製造条件のいずれかを満足せずに製造した表2の試験No.8〜10、14、18〜21は、引張強度TS、曲げ角度のうち少なくともいずれかが合格基準を満たしていない。
詳細には、表2の試験No.8は、本発明の要件を満足する表1の鋼種No.2を用いたが、熱間プレス時の加熱温度が低いため、マルテンサイトの面積率が少なくなり、曲げ性が低下した。
表2の試験No.9は、上記No.8と同様、本発明の要件を満足する表1の鋼種No.2を用いたが、加熱後の平均冷却速度が遅いため、マルテンサイトの面積率が少なくなり、引張強度および曲げ性の両方が低下した。
表2の試験No.10は、上記No.8と同様、本発明の要件を満足する表1の鋼種No.2を用いたが、加熱後の平均冷却速度が速いため、曲げ性が低下した。
表2の試験No.14は、Si量が多い表1の鋼種No.6を用いたため、マルテンサイトの面積率が少なくなり、曲げ性が低下した。
表2の試験No.18は、Cr量が少ない表1の鋼種No.10を用いたため、炭化物の平均粒径が粗大化し、曲げ性が低下した。
表2の試験No.19は、Mn量が多く、Ms点が低い表1の鋼種No.11を用いたため、自己焼戻しが不足して母材の延性が劣化し、曲げ性が低下した。
表2の試験No.20は、C量が少なく、且つ、Ceqが小さい表1の鋼種No.12を用いたため、マルテンサイトの面積率が少なくなり、引張強度が低下した。
表2の試験No.21は、Ceqが小さい表1の鋼種No.13を用いたため、マルテンサイトの面積率が少なくなり、曲げ性が低下した。

Claims (6)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C :0.10〜0.4%、
    Si:0%以上2.0%以下、
    Mn:0%以上0.5%以下、
    Cr:0.8〜2.0%、
    P :0%超0.015%以下、
    S :0%超0.01%以下、
    Al:0.001〜0.1%、
    Ti:0.01〜0.1%、
    B :0.0005〜0.005%、
    N :[Ti]/[N]が3.3以上となる含有量
    をそれぞれ含み、残部が鉄および不可避的不純物からなると共に、
    下記式(1)で規定される炭素当量Ceqが0.43〜0.7%であり、且つ、
    下記式(2)で規定されるMs点が415℃以上である
    ことを特徴とする熱間プレス用鋼板。
    Ceq=[C]+[Mn]/6+[Si]/24+[Ni]/40+[Cr]/5+[Mo]/4+[V]/14・・・(1)
    Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]−10×[Cu]−17×[Ni]−20×[Cr]−5×[Mo]+30×[Al]・・・(2)
    ただし、[X]は元素Xの含有量を意味し、単位は質量%である。
  2. 成分組成が、更に質量%で、
    Mo:0%超0.5%以下、
    Cu:0%超0.5%以下、および
    Ni:0%超0.5%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含むものである請求項1に記載の熱間プレス用鋼板。
  3. 成分組成が、更に質量%で、
    V :0%超0.1%以下、および
    Nb:0%超0.1%以下
    の少なくとも一種を含むものである請求項1または2に記載の熱間プレス用鋼板。
  4. 成分組成が、更に質量%で、
    Ca :0%超0.005%以下、および
    REM:0%超0.005%以下
    の少なくとも一種を含むものである請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱間プレス用鋼板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱間プレス用鋼板を、下記式(3)で規定されるAc点以上の温度に加熱した後、金型により前記鋼板のプレス成形を開始し、プレス成形の開始後、下記式(2)で規定されるMs点の範囲までを、前記金型内で20〜300℃/sの平均冷却速度で冷却することを特徴とする熱間プレス成形品の製造方法。
    Ms(℃)=550−361×[C]−39×[Mn]−10×[Cu]−17×[Ni]−20×[Cr]−5×[Mo]+30×[Al]・・・(2)
    Ac(℃)=910−203×[C]1/2+44.7×[Si]−30×[Mn]+700×[P]+400×[Al]+400×[Ti]+104×[V]−11×[Cr]+31.5×[Mo]−20×[Cu]−15.2×[Ni]・・・(3)
    ただし、[X]は元素Xの含有量を意味し、単位は質量%である。
  6. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の成分組成からなり、
    マルテンサイト:全組織に対する面積率で95%以上、
    残部:フェライト、およびベイナイトの少なくとも一種からなり、
    鋼中に分散する炭化物の平均粒径が1μm以下である組織を有することを特徴とする熱間プレス成形品。
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