本発明をさらに詳細に説明する前に、本発明は記載される特定の実施形態に限定されないこと、および特定の実施形態を記述するのに使用される用語は、これらの特定の実施形態のみを記述する目的であり、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、限定することは意図していないことを理解されたい。特定の用途に適用可能な特定の好ましい実施形態をまず概略で以下に提示し、その後本明細書に提示される図面と併せてより詳細な説明を提示することにする。
一部の用途に関して、電気化学アクチュエータの特性を使い捨ての可能性に対してカスタマイズすることが望ましい場合がある。使い捨てアクチュエータは、安価な材料で作製され、高生産性の製造に適用可能である必要がある。本発明者等は、電気化学アクチュエータの使い捨ての可能性を実現するのに鍵となるステップを形成しており、これにはスナップ式に一緒に嵌められ一体成型されたポンプ本体、より低コストの作動電極(チタンまたは被覆プラスチックなど)、交互の流体の汲み出しおよび単一使用の自動動力セルが含まれる。
電気化学的な作動は、特定の好ましい実施形態において提示されるように、流体経路を繰り返し開閉するために磁力を合わせて使用する場合がある。電気化学アクチュエータの流体の力を使用して、流体経路が流体の流れに対して封鎖されるように金属製のロッドをこの経路内に押し込むことができる。その後、流れを開始することが望まれると、電気化学的に作動された流体の力を逆向きにし、特定の力(磁力または真空)を使用して金属ロッドを流体の経路から外に引っ張り出すことができる。
電気化学アクチュエータの流体の力を利用して、流体経路を封鎖するように膨れる弾性の膜を押圧することによって、特定の好ましい実施形態において流体経路を繰り返し閉鎖することができる。流体の力の方向を逆向きにすることによって、弾性膜が流体経路から離れるように収縮し流れを可能にする。膜を押圧する電気化学的に作動される流体の力はまた、充填された貯蔵槽から流体を押し出す、または流体を空の貯蔵槽へと引き込むのに使用される場合もある。追加として、電気化学的な作動を利用して送達される流体の体積または圧力を増幅するのに使用されるピストンを駆動させることもできる。
特定の好ましい実施形態は、流体運動の局面の全て(または一部)が電気化学的作動によって制御されるように幅広いプログラム可能なマイクロ流体チップのアレイを包含する。特定の好ましい実施形態では、電気化学的に作動される弾性弁の列が、流体チャネルの片側または両側に沿って位置決めされ、一連の作動を利用してプログラムされた経路に沿って流体を蠕動するように移動させる。いくつかの電気化学アクチュエータを連携させて使用するための1つの複雑化した実施形態は、サンドイッチELISAのための単一使用の使い捨てのチップであろう。使い捨てELISAチップが成功するための機能は、各々の検査に関する内蔵式の正および負の制御装置、試料と接触した全ての構成要素を1回利用した後に廃棄すること、電気化学的に作動されるポンプエンジンおよび電子制御/読出し装置にスナップ嵌合することである。
次に本発明の好ましい実施形態に関連する様々な用途のより特有の考察に注目すると、電気化学的に作動する流体送達デバイスは、電気化学弁および電気化学ポンプを同一のデバイス内に内蔵する。図1Aおよび図1Bは、好ましい実施形態による2つの異なる設計に関する電気化学チャンバの配置の基本的な概略図を提示している。図1Aは円形の設計であり、2つの弁チャンバ100および102が互いに隣接し各々がポンプモジュール104に隣接しており、その一方で図1Bは、ポンプモジュール105が弁チャンバ101および103を隔てる直線的な設計である。弁およびポンプのサイズおよび形状は、特定の用途に関して所望される特有の性能パラメータに応じて変化し得る。入口弁および出口弁は、物理的に全く同一であり得る、あるいは異なる形状およびサイズである場合もある。ポンプを通り抜ける流体の動きの方向は、ポンプの作動に応じて変えることができる。より具体的には、いずれの弁も入口または出口となり得る。実際には、流体は、ポンプの同じ側に引き込まれ、同じ側から押し出すことができる。しかしながら薬剤注入に使用されるべき好ましい実施形態では、ポンプの片側(入口弁)が外部の薬剤貯蔵槽と流体接触し、他方の側(出口弁)が患者(適用先)と流体接触することになる。流体経路および貯蔵槽のサイズ、形状、数および容積は、特定の用途に特有であってよい。電気化学弁およびポンプモジュールに関する一般的な構造および作動の原理は、米国特許第7,718,047号、8,187,441号および8,343,324号に記載される考察から理解され、これらは本明細書に十分に記載されるように、参照により組み込まれている。
図1Aおよび図1Bのデバイスは、電気化学ポンプおよび電気化学弁の連携した作動によって作動する電気化学的に作動する流体送達デバイスである。その結果は、機械的な部品なしでnL/分から数百μL/分の流量を送達するマイクロ流体デバイスである。流れの方向は、印加される電流/電圧の方向を単に逆にするだけで容易に逆向きにすることができる。
次に図2Aから図2Gを参照して、単一投与の流体送達ポンプの直線的な「片側のみの」実施形態の構造および作動が記載される。この場合の片側のみとは、イオン選択性膜116の片側のみに流体送達接続が存在する事実を指している。イオン選択性膜116は、入口弁106、ポンプモジュール110および出口弁108のそれぞれを分割している。キャップ199が、入口弁106、ポンプモジュール110および出口弁108を覆うように嵌合される。このケースでは、キャップ199は、キャップ199内に機械加工されることで流体入口および流体出口を提供するチャネルを形成する。このような流体経路によって、流体が外部貯蔵槽112から以下に記載する可撓性の内部貯蔵槽へと、かつ内部貯蔵槽から適用先114へと流れることが可能になる。2つの弁システムによって断続的にまたはボーラス投与で綿密に制御された流体の送達が可能になり、またデバイスが故障した場合には、外部貯蔵槽の内容物全てが適用先に偶発的に送達されるのを防ぐために二重のレベルの安全機構としても作用する。外部貯蔵槽112から適用先114への制御された薬剤送達を可能にする一セットのステップの一例を、最初の静止した状態のポンプを示す図2A、および外部貯蔵槽112から適用先114に流体を移動させるのに必要な一連のステップを示す図2B〜図2Gを参照して以下に詳細に記載する。
図2Aに示されるように静止状態にある際、流体経路は、可撓性のダイアフラム202a、202bおよび202cによって封鎖されており、ダイアフラム202bは、ポンプモジュール110のところに在り、ダイアフラム202aは入口弁106のところに在り、ダイアフラム202cは出口弁108のところに在る。静止状態において3つのダイアフラムは撓んでいないため、それらは、外部貯蔵槽112と入口チャネル201aの間、入口チャネル201aと出口チャネル201bの間、ならびに出口チャネル201bと適用先114の間の流体の流れを効果的に閉鎖する。詳細には、外部貯蔵槽112と入口チャネル201aの間の流体の流れは、ダイアフラム202aに対して押しつける入口弁106における流体圧によって阻止される。この方法において、入口弁106はピンチ弁として機能することが分かるであろう。
次に図2Bを参照すると、外部貯蔵槽112から流体を方向別に移動させる際の第1のステップは、入口弁106を電気化学的に作動させ、これによりポンプ流体をダイアフラム202aから離れるように移動させることである。これにより真空状態が形成され、この真空状態がダイアフラム202aを撓んだ位置へと引っ張る。ダイアフラム202aが撓む際、流体が外部貯蔵槽112から入口200を通って入口ポケット204に入るように引っ張られ、この入口ポケットは、ダイアフラム202aが撓んだ結果として入口弁106内のダイアフラム202aのキャップ側に形成される。この方法において、入口弁106は今度は、このデバイス内への流れを可能にするために開放されたピンチ弁として機能する。
図2Cに示される次のステップにおいて、ポンプモジュール110が電気化学的に作動され、ダイアフラム202bを撓んだ位置へと引っ張る真空状態を形成する。この作用が、流体を入口ポケット204から入口チャネル201aを通って、その後ダイアフラム202bの開放側に形成された内部貯蔵槽206へと引き込む。その結果は、流体が外部貯蔵槽112から入口ポケット204および入口チャネル201aを通って内部貯蔵槽206へと引き込まれることになる。
図2Dに示される次にステップにおいて、入口弁106に印加される電圧/電流が逆向きにされ、これによりダイアフラム202aをその静止(撓んでいない)位置へと戻す。これによりそれは、入口ポケット204によって予め形成される弁を閉鎖するように機能する。この時点で、内部貯蔵槽206内の流体は、外部貯蔵槽112に戻るように後ろ向きに流れることはもはや不可能である。
図2Eに示される次にステップにおいて、電圧/電流が出口弁108に印加されることによって、ダイアフラム202cを撓んだ位置へと引っ張る真空状態を形成する。これにより出口ポケット207が形成され、この出口ポケットは、内部貯蔵槽206と出口ポケット207が出口チャネル201bによって接続されるため、内部貯蔵槽206と出口211の間の経路を開放する。内部貯蔵槽206からの流体はこのように、出口チャネル201bに流れ込むことが可能になる。
図2Fに示される次にステップにおいて、ポンプモジュール110における電圧/電流が逆向きにされ、これによりダイアフラム202bをその静止位置に戻す。これによって内部貯蔵槽206を縮小させ、一部のケースでは最終的にはなくなるようにし、これにより流体を内部貯蔵槽206から出口チャネル201bおよび出口ポケット207を通って出口211へと押し込み、その後適用先114へと押しやる。送達される流体の流量/体積/持続時間は、ポンプモジュール110における2つの別個の電気化学セル209と210の間に印加される電圧/電流を制御することによって制御することができる。可能ではあるが、流れを止める前に内部貯蔵槽206を完全に空にする必要はない。付加的に全体の汲み出し方向を逆向きにすることで、特有の流体または流体送達用途によって所望されるまたは必要とされる適用先114に送達される流体の混合作用を誘発させることができることも理解され得る。
図2Gに示される最終的なステップにおいて、出口弁108の2つの別個のチャンバ212と213の間に適切な電圧/電流が印加されることによってダイアフラム202cをその静止位置へと戻し、これにより流体がさらに適用先114へと流れるのを阻止する。内部貯蔵槽206からの所望される流体の投与量が、継続的に、断続的にまたはボーラス投与で送達された後、デバイスは、図2Aに示されるようにそれが静止した状態である同じ位置にあるべきである。再びデバイスの3つのチャンバの各々が全ての他方から密閉され、外部貯蔵槽112と適用先114の間にはいかなる方向にも流体が流れることはできない。外部貯蔵槽112から適用先114に新たな流体の投与量を移動させるために、本明細書に記載される工程を繰り返すことができる。この工程は、特定の用途に関して所望される回数だけ繰り返すことができる。
次に図3Aから図3Dを参照すると、連続的(またはほぼ連続的な)流体送達ポンプの直線的な「両側」の実施形態の構造および作動が記載される。この場合における両側とは、イオン選択性膜316の両側に、すなわち第1の側301と、第2の側302に流体送達接続が存在する事実を指している。イオン選択性膜316は、入口弁326、ポンプモジュール328および出口弁330の各々を分割している。第1のキャップ332と、第2のキャップ334が、第1の側301と、第2の側302にそれぞれ嵌合されている。キャップ332およびキャップ334は、入口と出口の間を流体が流れることを可能にする機械加工されたチャネルを特徴として備える。このような流体経路によって外部貯蔵槽312から可撓性の内部貯蔵槽へと、内部貯蔵槽から適用先314へと流体が流れることが可能になる。外部貯蔵槽312から適用先314への制御された薬剤の送達を可能にする一セットのステップの一例を、最初の静止した状態のポンプを示す図3A、および外部貯蔵槽312から適用先314に流体を移動させるのに必要な一連のステップを示す図3B〜図3Dを参照して以下に詳細に記載する。このような両側でのポンプ配置の場合、各々のステップにおいて記載されるサブステップが、同時にまたは任意の順番で行われてよい。各々のステップにおいておよび/または常に、全ての弁および貯蔵槽は、任意の混合要件と併せて、特定の流体送達用途の要件によって一部をまたは完全に開閉することができる。
図3Aに示される静止した状態にあるとき、種々の流体経路の全ては一部が開放している。あるいは第1の側301における流体経路が完全に開放され、第2の側302にある経路は完全に閉鎖される場合もあり、逆もまた同様である。
図3Bに示される第1のステップにおいて、入口弁326がまず作動されることで力1aが第1の入口ダイアフラム303に及ぼされ、それを入口弁326内にそらす。これによりダイアフラム303に隣接する空間を外部貯蔵槽312からの流体によって満たす。入口弁326がこのように作動することで、第2の入口ダイアフラム304をそらせることになり、これにより底部入口ダイアフラム304に隣接する空間を密閉することで外部貯蔵槽312からこの空間に入るいずれの流体の流れも中断する。次に、ポンプモジュール328が作動されることで力1bが第1の貯蔵槽ダイアフラム305に及ぼされ、それをポンプモジュール328内にそらす。これによりダイアフラム305に隣接する空間が外部貯蔵槽312からの流体によって満たされるが、それはこの経路が、その空間と外部貯蔵槽312の間でこのとき開放しているためである。ポンプモジュール328がこのように作動することでまた、第2の貯蔵槽ダイアフラム306をそらせることになり、これによりダイアフラム306に隣接する空間に侵入するいずれの流体の流れも中断する。
図3cに示される次のステップにおいて、入口弁326がまず通電され力2aを及ぼす。その結果、第1の入口ダイアフラム303が撓んで外部貯蔵槽312からの流体の流れを閉鎖する。加えてこれにより、外部貯蔵槽312から第2の入口ダイアフラム304に隣接する空間に流体が流れることができるように第2の入口ダイアフラム304の位置を変える。次に出口弁330が通電され力2bを及ぼし、これにより第1の出口ダイアフラム307を撓ませて、流体がそれを通過して第1のポンプダイアフラム305から適用先314に流れることが可能になり、第2の出口ダイアフラム308を撓ませて第2のポンプダイアフラム306に隣接する領域から適用先314への液体の流れを阻止する。ポンプモジュール328が通電され力2cを及ぼし、これにより第1のポンプダイアフラム305を撓ませて第1のポンプダイアフラム305に隣接する領域から第1の出力弁307に向けて液体を汲み出し、第1の入口ダイアフラム303に隣接する領域からの液体の流れを阻止し、第2のポンプダイアフラム306を撓ませて第2の入口ダイアフラム304に隣接する領域から第2の出口ダイアフラム308に隣接する領域への流体の流れを開放する。
図3Dに示される次のステップにおいて、図3Cからの力の各々の方向が逆向きにされる。かかるに出口弁330が最初に通電され力3aを及ぼす。その結果、第1の出口ダイアフラム307を撓ませて第1のポンプダイアフラム305に隣接する領域から適用先314への流体の流れを閉鎖する。加えてこれにより、流体が第2のポンプダイアフラム306に隣接する領域から第2の出口ダイアフラム308に隣接する空間に流れ込み、適用先314へと流れることができるように、第2の出口ダイアフラム308の位置を変える。次に入口弁326が通電され力3bを及ぼし、これにより第1の入口ダイアフラム303を撓ませて、流体がそれを通過して外部貯蔵槽312から第1のポンプダイアフラム305に隣接する領域へと流れることが可能になり、第2の入口ダイアフラム304を撓ませることで外部貯蔵槽312から第2のポンプダイアフラム306に隣接する領域への液体の流れを阻止する。その後ポンプモジュール328が通電され力3cを及ぼし、これにより第1のポンプダイアフラム305を撓ませて第1の入口ダイアフラム303に隣接する領域からの流体の進入を可能にし、第2のポンプダイアフラム306を撓ませて第2の入口ダイアフラム304に隣接する領域から第2の出口ダイアフラム308に隣接する領域への流体の流れを阻止する。
図3Cおよび図3Dに例示されるステップを繰り返すことで、外部貯蔵槽312から適用先314への連続する流体の流れを実現させることができ、この流れはデバイスの頂部301に沿った経路と、底部302に沿った経路を交互に採ることが分かる。加えられる力ならびに各々のステップおよびサブステップが維持される時間の長さを操作することによって、流体送達量を用途の要件によってカスタマイズことができることが分かる。
図4は、流体の流れを動かすために電気化学的作動を利用するほぼ連続する流体送達からの実験結果を示す。この実験用の装置は、図3Aから図3Dに記載されるような両側ポンプをシミュレートするように配置された2つの片面の自動弁調節ポンプを使用した。投与1および投与3は、側部301内部貯蔵槽から送達され、投与2は、側部302内部貯蔵槽から送達される(両方とも企図される両側の実施形態における外部貯蔵槽312に相当する)。投与の間の合間に生成されるノイズは、側部301および側部302入口および出口弁の前後の切り換えの結果であると考えられ、これは設計および作動を最適化することによって大幅に抑えることができる。詳細には、本発明者等は、図4において生成されるノイズは、両側ポンプをシミュレートするための片側ポンプの改造変形形態の結果であり、このようなノイズは、両側ポンプの実施形態においては大幅になくなると考えている。
本明細書に記載される流体送達デバイスの好ましい実施形態は、このような用途に使用される従来のポンプ/弁構成に対していくつかの利点を提供する。基本的な設計制約が、例えばインシュリン送達に使用される装着型ポンプなど特定の用途の要求を満たすために機械的ポンプを小型化することができる範囲を制限する。明確な対照において、本明細書に記載される方向別の流れデバイスは、形状依存性であり、pL/分からμL/分の流量範囲で特有の流量を送達するのに極めて少ない電力(典型的にはmWほどの)しか必要としない。より具体的には、デバイスは、およそ1pL/分からおよそ500μL/分の範囲の流量に対して、かつ+/−2Vを下回る電圧で作動するように作動可能である。流れの精度は±5%であり、100nLほどの少量の分配量がこの技術を使用して送達される。およそ300psiまでのポンプ圧を達成することができる。好ましい実施形態によるデバイスはまた、連続する流れが望まれる際、他のポンプでは通常は不可能である真に脈動のない流れを提供する。しかしながら流体の単一回投与のボーラス送達の場合のように、電気化学的作動を利用して脈動する流れも可能である。本デバイスの電気化学的流体作用によって、それが流体チャネルを開閉することが可能になり、弁として作用するのと同様に流体の流れを提供し、その結果、作動するのに機械的弁や他の外部の弁機能は全く必要とされない。
好ましい実施形態によるデバイスの利点には、装着型、パッチ式またはある意味インプラント可能なデバイスを介して送達することができる種々の薬剤の拡張が含まれており、これは新たな挿入物を挿入するよりはるかに痛みの少ない一回の外来において、または患者が管理する処置において補充可能である。長期間安定した状態の薬剤レベルは、臨床的な成果の改善、患者の服用遵守および快適さの改善、ならびに医師を訪問する回数の減少につながり、これによりデバイスの利用に関連するコストを削減することができる。
好ましい一実施形態において、デバイスは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)プラスチックなどの非反応性材料から形成され、標準的な留め具を使用して組み立てられる。代替の実施形態における他の材料が使用される場合もあり、例えばPEEKの他にポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、アクリルポリマー、ポリエテルイミド、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアセタールを含むホモポリマーまたはコポリマー、あるいはそれらの混合物を含めた多様なプラスチック材料などである。デバイスは、例えば機械加工される、または射出成型された部品で形成されてよい。デバイスはまた、代替の実施形態では、ある材料のコーティングを異なる材料の上に有する、例えば鋼を覆うテフロンコーティングを有する1つまたは複数の部品で形成される場合もある。好ましい一実施形態では、デバイスの2μLの目標とする1回の工程体積は、3つのチャンバのそれぞれの中に60μLのポンプ流体しか必要とせず、デバイスの全体のサイズを180μLまで、すなわち0.180cm3までに制限する。2μL/分の低い最大流量は、およそ0.1cm2である任意の2つのチャンバの間のイオン選択性膜の露出した領域を必要とする。
好ましい一実施形態によって様々な汲み出しプロトコルをこのデバイスと共に利用することができる。これらには、一日に2、3回のわずかな投与量の提供、所望される間隔でより多量のボーラス投与量の分配、連続送達、あるいはプログラム可能な(段階的な勾配する流量)送達が含まれる。これらは各々の用途に合うように適合させることができる。電圧プロトコルは、投与量送達の精度をカスタマイズするために最適化されてよい。
制御システム(図面には示されない)は、当業者によって容易に理解されるように、デバイスのスタンドアローン制御に必要な全てのハードウェアおよびファームウェアと共に電池で構成されてよい。この制御装置は、コンピュータに接続されてよい、コンピュータは、特有の汲み出し指示を制御装置のファームウェアにアップロードする。その後制御装置がコンピュータから取り外され、デバイスに装着され、デバイスはその後分配プロトコルを開始する。あるいは制御装置は、固定式の制御装置または使用可能な無線通信デバイス、例えばスマートフォンから無線で作動させることもできる。制御システムは好ましくは、実現可能であるように小型で軽量になるよう設計され、その一方でさらにデバイスを駆動するのに必要な電圧の制御と電流を提供する。制御装置は好ましくはまた、電池の寿命を延ばすための電力要件を最小限にするように設計される。誘導性の充電システムが代替として使用される場合もある。想定される最終的な商業デバイスにおいて、このような制御装置は最終的に、確実な作動または植込みのためにデバイスの本体内に気密式に密閉されてよい。
インシュリン送達の特定の用途では、本明細書に記載される好ましい実施形態は、この目的のための既存のデバイスに対して多くの利点を提供することが恐らく分かる。表1は、本デバイスと、特定の商業的に利用可能なインシュリン送達デバイスとの差を概略しており、また本デバイスがこのような既存の商業的なデバイスに対して提供する利点も記載する。
電気化学アクチュエータの使い捨ての可能性を可能にするためにはいくつかの方法があり、これには一体成型されたアクチュエータ本体、より安価な(白金と比較して)電極の利用および自動動力式の電池のない作動が含まれる。これらの属性の各々の一例の好ましい実施形態がここに提供される。
図5は、本発明の好ましい一実施形態による一体成型された電気化学アクチュエータの本体の図面である。半透過性の膜510が、2つのポンプ本体部品506の間に挟まれ、漏れのない嵌合がガスケット508によって保証される。ダイアフラム504がポンプ本体部品506の各々の外側に適合され、ポンプキャップ502が各々のダイアフラム504を覆うように所定の場所に嵌合される。これらの部品は例えば、オーバーモールディング、インレイモールディング、超音波溶接、スナップ嵌合およびねじ込み嵌合によって容易に組み立てることができ、これらはハイスループットで、コストの低い一体成型および組立に適用可能な方法である。
従来、電気化学的作動は、例えば白金などの最上位の電極材料を使用して行われてきた。しかしながら本発明者等は、より低いコストの材料、例えばチタンやパラジウムを好ましい実施形態による電気化学アクチュエータにおける電極として使用することができることを発見した。図6は、アクチュエータ本体においてチタン電極を使用して0.1M塩化カリウムを含む20mMフェロシアニドおよびフェリシアニドで生成された電気化学電流を示す。電気化学電流は、アクチュエータ内で流体の流れを動かすイオンの流速を生成する。電極の全体のコストを抑えるための別の方法として、チタンが、より高価な金属、例えば白金でコーティングされる場合もある。
電気化学的作動は、セルの片方における陰極と、セルの他方における陽極との間に電気接続が形成されると、アクチュエータ本体の2つの片割れの間に電位差が形成される、ガルバニック化学反応によって行うことができる。アクチュエータ本体の2つの片割れを隔てる膜を横断するようにイオン流速が形成され、このイオン流速は、陽極またはその対応する電解質を使い果たすまで継続する。よってこの反応は、一方向のみであり、不可逆性である。イオン流速は、アクチュエータ内で流体の流れを動かす。
図7Aおよび図7Bは、ガルバニック電気化学アクチュエータの一実施形態を示す。この実施形態では、白金が陰極704として使用され、鉄が陽極702として使用される。作動より前にはセル700の2つの片方部分における化学反応は、平衡状態にあり、流体の流れは形成されない。陽極702(Fe、Cu、Alまたは他の金属)と、陰極704(Pt、Tiまたは他の金属)が電気的に接続されると、アクチュエータの2つの片方部分の間の不均等な電位差によって、膜706を横切るLi+(または他の)陽イオンの流速が誘発される。このイオンの流速は、鉄の陽極702が十分に酸化されるまたはイオンが枯渇するまで継続する。イオン流速は、可撓性のダイアフラム708を膨張させ、図7Bに示されるようにアクチュエータの右側からの流体の流れを形成する。図8(上部)は、自動動力式の電気化学アクチュエータによって生成される電流、および結果として生じる流体の流量を示す。上部ラインおよび左側のy軸は流体の流量であり、下部ラインおよび右側のy軸は対応する電流である。図8Bは、経時的に送達される流体の体積の線形の増加を示しており、これはガルバニック電気化学アクチュエータを使用する極めて安定した流体送達を示している。図8Aに示される流量、および流れの生成の時間は共に、反応の間酸化される陽極(この場合は鉄)のサイズを指定することによって、またはアクチュエータ本体のそのセル内で低下する種(この場合はヨウ素からヨウ化物)の濃度を特定することによって特定の用途に対してカスタマイズすることができる。
電気化学アクチュエータによって汲み出される流体を使用して、図9に示されるように電磁弁を係合させたり切り離したりすることができる。差し込み部Aに示されるように、流体の流れを使用して弾性ダイアフラム902を磁石900から離すように膨張させ、この磁石がその後、円筒形の金属弁904を流体の経路に押し込んで流れを阻止する。アクチュエータを使用することで、流体の流れをその後逆向きにさせることで弾性ダイアフラム902および金属弁904から圧力が取り去られる。弁904より上にある磁石900がその後、金属弁904を流体経路から出るように上に引っ張り流れを可能にする。電磁弁の作動のこの実施形態を例示するのに図9の差し込み部Bの設定が使用された。図10に示されるように、アクチュエータを使用して電磁弁904が閉鎖される際、流れはアップチャーチ流れセンサ910のみを通り、センシリオン流れセンサ908において流れは感知されない。電磁弁904が開放される際(13分のところで)、流体の流れは両方のセンサを通るように進む。
電気化学アクチュエータをマイクロ流体の流れ制御に使用することができる別の機構は、弾性ダイアフラムが、弾性ダイアフラムがマイクロ流体網内にある状態でアクチュエータに対して直接接触することを包含する。アクチュエータ内の流体の流れは容易におよび繰り返し逆向きにすることができるため、同じ機能を果たすためにアクチュエータを何回も使用することができる。この実施形態では、流れは一方向に進んでデバイスを作動し、その後(電圧/電流)が逆向きにされ、結果として生じる流れが逆向きになりデバイスをリセットする。アクチュエータにある弾性ダイアフラムは、分配/吸引機能のために貯蔵槽にある別の弾性ダイアフラムと接触する、あるいはピンチ弁/ポンプ用途のためにチャネル自体と接触する場合もある。
図11は、貯蔵槽から流体を分配する、または貯蔵槽内に流体を吸い込むのにどのように電気化学アクチュエータを利用することができるかを示している。デバイスが作動するためには、エラストマー製のダイアフラム1102が、マイクロ流体チップ1108上にあるエラストマー製の貯蔵槽カバー1104と接触する必要がある。貯蔵槽が最初一杯である場合、アクチュエータ内での電気化学的作動が、ダイアフラム1102を貯蔵槽カバー1104に当たるように外向きに押し、この貯蔵槽カバーはその後、貯蔵槽からマイクロ流体チャネル1106に流体を押し込む。図12は、この方法の作動を利用して貯蔵槽からの実験的な電気化学的作動の流体制御を示す。流れは、ダイアフラムを使用して指定された流量でダイアフラムの作動に対して制御することができる。貯蔵槽が最初空である場合、電気化学的作動が、ダイアフラムを貯蔵槽から離れるように引っ張り、流体が貯蔵槽に侵入することを可能にすることができる。2つの可撓性の膜の間に真空状態が形成された場合、あるいはエラストマー製の貯蔵槽カバーが撓んでいない状態に戻るように設計される場合、流体は能動的に貯蔵槽内に引き込まれることになる。
この同一の概念を利用して、マイクロ流体網における正確な流れ制御(脈動する場合と、脈動しない場合の両方)を計画することができる。流体経路に沿った一列のダイアフラムアクチュエータを使用して経路の一部を開放して流体が中に入ることを可能にすることができる。経路の次の部分を開放させることができ(部分的にまたは完全に)その一方で第1の部分は閉鎖される(部分的にまたは完全に)。このようにして、流体は、事前にプログラムされた経路に沿って蠕動するように移動することができる。事前にプログラムされた経路は、流れ制御に関する任意の数の規格に適合するように多方向性であり分岐する場合がある。図13Aから図13Eを通して、経路がピンチポンプ/弁として電気化学的に作動される多数の実施形態のうちのほんのいくつかを例示する。図13Aにおける各々のXは、外部アクチュエータの場所であり、可撓性のダイアフラムが、チャネルの可撓性の部分と接触する(または実質的にそれを構成する)。ピンチ弁/ポンプが開放される場合、流体の流れが可能になる。ピンチ弁/ポンプが閉鎖される場合、流体の流れは阻止される。図13Bは、2つの経路からの流れがどのようにして1つの経路に継続的に合流することができるかを示している。図13Cは、2つの経路からの流体がどのようにして1つの経路に断続的に合体することができるかを示している。図13Dは、2つの流体の混合作用を誘発するためにどのようにして流れの方向を断続的に逆向きにすることができるかを示している。図13Eeは、流体を「S字」の屈曲部を通るように搬送することによってどのように混合作用を誘発させることができるかを示している。これは、この実施形態によって実施することができる作用の包括的なリストであることは意図されず、むしろこのようなデバイスにおいて行うことができる作用の範囲の概念を提示することが意図されている。
電気化学的作動を利用して、流体の体積測定の流量を増加させる、または流体が送達される圧力を増大させるかのいずれかに使用されるピストンを駆動することができる。図14において、電気化学アクチュエータ1400のダイアフラムは、ピストン1402の小さな端部と直接または流体式に接触している。同一のピストンの他端は、より大きな表面積1404を有し、これに対応してより大きな貯蔵槽1406の弾性膜と接触している。その後電気化学的作動を利用して、ピストンを前方に押しやり、貯蔵槽1406から単位時間あたり比例的により多量の流体を押し出し、その結果、所与の時間間隔における体積測定の流量がより大きくなる、または分配体積がより大きくなる(図15を参照)。
図16では、電気化学アクチュエータ1600のダイアフラムは、ピストン1602の大きい方の端部と直接または流体接触している。同じピストンの小さい方の端部1604は、対応してより小型の貯蔵槽1606の弾性膜と接触している。電気化学的作動をその後利用して、ピストンを前方に押しやり、貯蔵槽1606から比例的により少量の流体を押し出す。このような設定において、流体が汲み出される圧力は、流体の体積の低下に比例して増加し、このデバイスは圧力増幅装置である。
アクチュエータ、ピストンおよび貯蔵槽の膜をそれぞれの元の位置に戻すために、電流/電圧を反対方向に供給することによって電気化学的作動が反対の方向に作動される。アクチュエータはその後、新たな増幅往復動作を行うための準備をする。図3において先に示したように、電気化学弁と協調する両側の電気化学アクチュエータを利用して、1つまたは2つのピストンを駆動させる場合もある。このデバイスの連携した作動を利用して増幅された体積または圧力で連続的にまたはほぼ連続的に流体を送達することができる。
ピストンの表面積を変える他に、ピストンのいずれかの側における流体の相対的な粘度を調節することで流れおよび作動をカスタマイズすることができる。例えば、より粘度の高い流体がポンプ内で作用流体として使用される場合、ピストンの周りからの漏出や蒸発が抑えられることになる。
図17は、先に提示された多くの電気化学アクチュエータを利用する使い捨てサンドイッチELISAマイクロ流体チップの一実施形態である。この図面に示されるチップ全体は、1回使用された後に廃棄することができる。これにより、試料間の相互汚染の可能性がなくなる。このチップのサイズが小さく、安価な材料を利用することにより、使い捨ての可能性を現実的かつ利用可能なものする。この例において、6つの試薬貯蔵槽1700の列によって、洗浄液、二次抗体溶液、リポート分子溶液、正の制御、負の制御および試料溶液のオンチップ貯蔵が可能になる。各々の貯蔵槽の片側は、ダイアフラムとダイアフラムの接触によって対応する電気化学アクチュエータの列と接触するようになる可撓性の膜であり得る。必要に応じて、電気化学ピンチ弁1704が、チャネルを開放するように作動され、所望されるプロトコルに応じて流体を各々の貯蔵槽から個別に押し出すことを可能にすることができる。サンドイッチELISAは、アッセイモジュール1702内に構築され、全ての使用済みの試薬は、制御された電気化学的作動を介して廃棄貯蔵槽へと押し出す、または吸い込むことができる。アッセイモジュールの出口においてピンチ弁1704を利用することで、リポーター分子を有する溶液のみが検出器を通り越すことで廃棄試薬との事前汚染の可能性をなくすことができる。この例は、この技術の適用範囲をELISAのみに限定することは意図せず、むしろ1つの特定の好ましい実施形態における電気化学的作動によって可能になる精密なオンチップの流れ制御を例示することを意図している。
特定のパラメータに対してこれらの特定の実施形態の記載において特定の範囲が提供されている。一定の範囲の値が提供される際、その上限と下限の間に入る値の各々が、その範囲を制限し、その提示される範囲内の任意の他の提示されたまたは間に入る値は、提示される範囲内の任意の具体的に排除された限界値を条件として本発明に含まれる。提示される値の範囲が一方または両方の限界値を含む場合、これらの限界値の一方または両方を排除する範囲もまた、本発明の範囲に含まれる。
そうでないことが述べられていなければ、本明細書で使用される全ての技術的または科学的用語は、本発明が属する当業者によって共通して理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様のまたは等価ないずれの方法および材料もまた、本発明の実施または実験において使用することができ、限定された数の例示の方法および材料が本明細書に記載されている。本明細書の進歩的な概念から逸脱することなく、より多くの修正形態が可能であることは当業者に明らかである。本明細書で使用される全ての用語は、その文脈と一致する最も広い可能な様式において解釈されるべきである。詳細には、用語「備える(comprises)」および「備える(comprising)」は、排他的ではないやり方で要素、構成要素またはステップを指すものとして解釈されるべきであり、参照される要素、構成要素またはステップが提示される、または利用される、またははっきりと参照されない他の要素、構成要素またはステップと組み合わされる可能性があることを示している。本明細書で使用されるように「から成る(consisting of)」は、クレームの要素において特定されないいずれの要素、ステップまたは原材料も排除する。本明細書で使用されるように「を主成分とする(consisting essentially of)」は、クレームの根源的な新規の特徴に著しく影響を及ぼさない材料またはステップを排除しない。マルクーシュ群または他のグループ分けが本明細書で使用される場合、その群全ての個々の部材ならびにその群の全ての組み合わせおよび可能な副次的な組み合わせは、本開示に個別に含まれるように意図されている。本明細書で引用される全ての参考文献はこれにより、本明細書の開示と矛盾しない範囲まで参照により組み込まれている。
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