JP2015512409A - 脊髄性筋萎縮症用治療剤としての4−アミノピリジン - Google Patents
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Abstract
K+チャネル(FDA承認広域スペクトルK+チャネル遮断薬4−APの使用)の薬理学的遮断が、SMN枯渇がもたらす重大な結果である介在ニューロンまたは感覚ニューロン入力による運動回路の興奮性障害に伴って起こるsmn変異表現型に確実に有益であることを見出した。これらの観察に基づいて、本発明のある態様は、4−アミノピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(メチルアミノ)ピリジンおよび4−(アミノメチル)ピリジンなどの1つ以上のカリウムチャネル遮断薬の治療有効量を投与することによるSMA治療方法を対象とする。他の態様は2個以上のカリウムチャネル遮断薬を含む新医薬製剤を対象とする。【選択図】図7D
Description
関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、35 U.S.C. §119(e)の下、2008年3月15日に提出された米国仮特許出願No.61/615466および2012年3月26日に提出された米国仮特許出願No.61/057190の優先権を主張するものであり、参照することにより全体が十分に記載されているかのように本明細書に組み込まれる。
政府の利益のステイトメント
政府の利益のステイトメント
本発明は、国防総省により与えられたコントラクトNo.W81XWH−08−1−0009のもと政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
脊髄性筋萎縮症(SMA)は、遍在する生存運動ニューロン(SMN)タンパク質の枯渇による運動ニューロン機能低下および筋肉の衰えが特徴であるヒト致死的疾患である。SMAは、脊髄の前角における運動ニューロンの変性が筋肉の麻痺および萎縮を引き起こすことが特徴である常染色体劣性疾患である。SMAは、年齢および重症度にしたがって従来3つのタイプに分類されている:幼児(期)のSMA−1型またはウェルドニッヒ・ホフマン病(通常0−6月)は、最も重症な形態であり、1歳以内に発症し独立して座位を維持することができない。中間型SMA−2型(通常7−18月)は、立ったり歩いたりはできないが、少なくとも生活のなかでしばらくは座位を維持することが出来る子供と類型化される。脱力の始まりは通常6〜18月の間のいずれかの時点で認識される。若年性SMA−3型またはクーゲルベルク・ヴェランダー病(通常>18月を超える、は、いつかは歩ける人たちと類型化される。成人SMA−4型は、通常青年期後期に舌、手、または足において始まり、体の他の部分にも進行する脱力に関連する。疾患の経過は、とてもゆっくりで、平均余命にはほとんどまたは一切影響を与えない。またとても重症なSMAの症状の出産前の発症および早期新生児死亡は、SMA0型として分類される(Eur J Paediatr Neurol 1999; 3:49−51; Lancet 1995; 346:1162; Neuromuscul Disord 1992; 2:423−428).SMAは、6000−10000人の生児出生中約1人に生じ、保因頻度は50人に1人であり、ヒトにおいて2番目に多い常染色体劣性遺伝性疾患であり、幼児死亡率の最も多い遺伝子的原因である(Semin Neurol 1998; 18:19−26)。
リンケージマッピングは SMAの遺伝子座として運動ニューロン生存(SMN)遺伝子を同定した(Lefebvre et al., Cell 80, 1−5)。ヒトにおいては、2個のほとんど同じSMN遺伝子(SMN1およびSMN2)が染色体5q13に存在する。SMN1内に欠損または変異があるがSMN2遺伝子にはない場合にはすべてのかたちの近位のSMAを生じる(Lefebvre et al., Cell 80, 1−5)。SMN1は、偏在的に発現する、細胞の生存のための重要なプロセスであるsnRNPアセンブリーに必要な38 kDaSMNタンパク質をコードする(Wan, L., et al. 2005. Mol. Cell. Biol. 25:5543−5551)。ほぼ相同な遺伝子SMN2は、不安定な短縮タンパク質である、SMN.DELTA.7を産出するエクソン7のスキッピングのためにSMN1の欠損を補うことはできない(Lorson, C. L., et al. 1998. Nat. Genet. 19:63−66; Lefebvre et al., 1995; BurghesおよびBeattie, 2009)。
SMN1とSMN2は、エクソン7の6位において重要なCがTに置換されている点で異なる(SMN2の転写産物中のC6U)(Lorson, C. L., et al. 1999. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:6307−6311; Monani, U. R., et al. 1999. Hum. Mol. Genet. 8:1177−1183)。C6Uはコード配列を変えないが、SMN1におけるエクソン7スキッピングを生じるに十分である。したがってSMAは、SMN1の完全な欠損とは対照的に、SMN1の低レベルにより生じる(BurghesおよびBeattie, 2009)。SMNはRNA代謝に関連する多様な細胞プロセスに関与している多機能なたんぱく質である(Pellizzoni, 2007)。
SMAに有効な薬物治療は無いのでそのような治療に対するニーズは大きい。
発明のある態様は、脊髄性筋萎縮症の対象を同定する工程、および広域ベースの
K+チャネル遮断薬および4−アミノピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(メチルアミノ)ピリジンおよび4−(アミノメチル)ピリジンからなる群から選択される遮断薬などのK+チャネル遮断薬の治療有効量を対象に投与する工程を含む方法を対象とする。本発明の方法における我々の他のK+チャンネル遮断薬は、ドフェチリド、ソタロール、イブチリド)、アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、E−4031、ニフェカラント、テジサミル、およびセマチリドが挙げられる。ひとつの態様において、治療有効量は、投与あたり約0.5mg〜100mgの範囲の量であり遮断薬は1日に1〜3回投与される。
K+チャネル遮断薬および4−アミノピリジン、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(メチルアミノ)ピリジンおよび4−(アミノメチル)ピリジンからなる群から選択される遮断薬などのK+チャネル遮断薬の治療有効量を対象に投与する工程を含む方法を対象とする。本発明の方法における我々の他のK+チャンネル遮断薬は、ドフェチリド、ソタロール、イブチリド)、アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、E−4031、ニフェカラント、テジサミル、およびセマチリドが挙げられる。ひとつの態様において、治療有効量は、投与あたり約0.5mg〜100mgの範囲の量であり遮断薬は1日に1〜3回投与される。
他の態様は4−APおよび1つ以上の列挙された治療剤を含む、好ましくは血液脳関門通過送達用または硬膜外静脈叢、脳、脊椎または髄液への直接投与用に製剤化された医薬製剤を対象とする。本発明の方法はSMA:1型、2または3型のいずれかの形態を治療するためにも使用することができる。
本発明は、下記図中の実施例により示されるがそれに限定されない。
図1。smn変異体は、筋肉サイズ減少、移動力低下、運動リズム欠損および神経筋接合部(NMJ)神経伝達物質放出異常を有する。A−B。TRITCファロイジン(phallodin)で標識した3幼虫齢の、コントロール(A)およびSMNX7変異体(B)のセグメントA3の筋肉のサンプルイメージは、Da−Gal4(遺伝子型:Da−Gal4/UAS::flagSMN;SMNX7/SMNX7)によりドライブされたUAS−flag−SMNの遍在的発現により完全にレスキューされた筋肉表面積の縮小(C)を示す。D−F。60秒の幼虫の移動経路を重ね合せた10個のサンプルは、コントロール(D)およびSMNX7変異体(E)から追跡している。Smn変異体幼虫は、トランスジェニックSMN(F)の遍在的発現により補正されたコントロールに比べ速度が低かった。G−I。脳、腹神経索および運動ニューロンが損傷されていないセミインタクトな幼虫の標本のセグメントA1における筋肉6からのレコーディング。コントロールの幼虫では、蠕動性筋肉収縮(G)に対応する律動的な突発活性を伴う規則的な運動リズムを引き起こす。対照的にsmn変異体幼虫は、SMNの遍在的発現によりレスキューされた平均スパイク間インターバルの増加(I)に示されるように、短く非協調性突発(H)を伴う不規則な運動パターンを有している。J−L。コントロール(J)およびSMNX7変異体(K)幼虫におけるセグメントA3の筋肉6から記録された代表的な波形。SMNX7変異体は、コントロール(K)よりも興奮性シナプス後電位誘発(eEPSP)振幅が増加した。この増加は、SMN(L)の遍在的発現により修正された。誤差バーは平均標準誤差を示す。**=p<0.01、***=p<0.001、コントロールに対して計算された有意差。補足図S1は、SMNX7変異体が、コントロールに対して、6%未満のSMNタンパク質レベルを有することを示す。
図2。SMN発現は、smn変異体をレスキューするため神経において必要とされるが、筋肉には必要とされない。A−D。(A)コントロール、(B)SMNX7変異体、(C)筋肉のみにトランスジェニックSMN発現*を伴うSMNX7変異体(G14−Gal4/UAS::flagSMN;SMNX7/SMNX7)または(D)ニューロン(nsyb−Gal4/UAS::flagSMN;SMNX7/SMNX7)のセグメントA3の筋肉のサンプルイメージ。筋肉におけるSMN発現の回復は筋肉サイズには効果はなかったが、ニューロンにおける回復は筋肉表面積を完全にレスキューした。E−H.コントロールに対して正規化された、筋肉表面積(E)、移動力(F)、運動リズム(G)およびNMJ eEPSP振幅(H)の定量化。ニューロンにおけるトランスジェニックSMNの発現はすべてのsmn変異表現型をレスキューするが、筋肉における発現はレスキューしない。誤差バーは平均標準誤差を示す。**=p<0.01、***=p<0.001、図に示されている場合を除きコントロールに対して計算された有意差。
図3。SMN発現は、コリン作動性ニューロンにおいて必要とされるが、運動ニューロンにおいては必要とされない;A−D。コントロール(A)、SMNX7変異体(B)、smn変異体の運動ニューロンに発現されたトランスジェニックSMN(OK371−Gal4/UAS::SMN;SMNX7/SMNX7)(C)、smn変異体のコリン作動性ニューロンにおいて発現されたトランスジェニックSMN(Cha−Gal4/UAS::SMN;SMNX7/SMNX7)(D)の代表的な波形。運動ニューロンにおけるトランスジェニックSMNの発現はsmn変異体中の正常な神経伝達物質放出を回復しないが、コリン作動性ニューロンにおけるSMNの発現は正常なeEPSP振幅を回復している。E−F。コントロールに対して正規化された筋肉表面積(E)、移動力(F)、運動リズム(G)およびNMJ eEPSP振幅(H)の定量化。OK371−Gal4もしくはOK6−Gal4を伴うsmn変異体の運動ニューロンまたはGAD1−Gal4を伴うGABA作動性ニューロン中におけるトランスジェニックSMNの発現は如何なる表現型もレスキューしない。対照的に、Cha−Gal4を伴うコリン作動性ニューロンにおけるトランスジェニックSMNの発現は、筋肉サイズ、運動速度および中枢性運動リズムを完全にレスキューし、NMJでの正常eEPSP振幅を回復している(D)。**=p<0.01、***=p<0.001、コントロールに対して計算された有意差。
図4.SMNは、固有受容性および中枢性コリン作動性ニューロンの両者に必要とされる。A。発現パターンコリン作動性ニューロンGal4系統(ドット)。Cha−Gal4は、中枢性および感覚コリン性作動性ニューロンの両者において発現する。Clh201−Gal4はmdおよびes感覚ニューロンにおいてのみ発現する。1003.3−Gal4、ppk−Gal4およびppk−Gal4は、md、esまたはch感覚ニューロンのサブセットにおいて発現する。斜めの平行線はsmn変異表現型をレスキューする能力を示す。B、C。UAS::CD8−GFPで標識された、野生型(B)またはSMNX7変異体(C)の腹神経索におけるNP2225−Gal4を伴うbdおよびI型md感覚ニューロンの軸索。感覚軸索は、通常はsmn変異体中のCNSに突き出ている。D−G。コントロールに対して正規化された、筋肉表面積(D)、移動力(E)、運動リズム(F)およびNMJ eEPSP振幅(G)の定量化(遺伝子型:Gal4/UAS::flagSMN;SMNX7/SMNX7)。Cha−Gal4を伴ったsmn変異体における中枢性および感覚性コリン作動性ニューロンの両者におけるトランスジェニックSMNの発現はすべての表現型を完全にレスキューする。SMNすべての感覚ニューロンの回復は、筋肉サイズを増加させ、運動リズムおよびNMJにおける神経伝達物質放出を完全にレスキューするが、固有受容性I型mdニューロンおよびNP2225−Gal4を伴うbdニューロンにおけるSMNを回復するのに相同する移動力はレスキューしない。II、IIIもしくはIV型mdニューロン、esニューロンまたは1003.3−Gal4もしくはppk−Gal4を伴うchニューロンにおけるSMNの回復は如何なるsmn変異表現型をレスキューしない。 スケールバー=10μm。*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、示されている場合を除きコントロールに対して計算された有意差。
図5。胚発生後のSMNの回復はsmn変異体をレスキューする。A。神経系におけるトランスジェニックSMN誘導の模式図。RU486はジーンスイッチ(geneswitch)Gal4に誘導される導入遺伝子の活性化に必要とされる。Elav::ジーンスイッチ/UAS::flagSMN;SMNX7/SMNX7幼虫は、孵化直後、孵化48時間後または96時間後に、ビークル培地またはRU486含有培地のいずれかに移された。B。孵化0、48または96時間後のビークル培地またはRU486培地のいずれかで育てられたsmn変異体から記録された代表的な波形。各時点ごとのSMNの誘導は、正常のeEPSP振幅を完全に回復させた。C−F。コントロールに対して正規化された、筋肉表面積(C)、移動力(D)、運動リズム(E)およびNMJ eEPSP振幅(F)の定量化。筋肉サイズ、移動力および運動リズムは、トランスジェニックSMNが孵化直後に誘発されれば完全にレスキューされるが、SMN誘導が遅れれば、レスキューは不完全になる。対照的に、48時間だけのSMNの誘導は、NMJ正常神経伝達物質放出を完全に回復するには十分である。誤差バーは平均標準誤差を示す。*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、示されている場合を除きコントロールに対して計算された有意差。
図6。コリン作動性ニューロン活性抑制は、smn変異表現型を模倣する。A。コントロールまたはCha−Gal4を伴うコリン作動性ニューロンにおいて発現される、UAS−ヒトKir2.1もしくはUASPLTXIIのNMJから記録された代表的な波形。Kir2.1を伴うコリン作動性ニューロン興奮性の抑制またはPLTXIIを伴う神経伝達物質放出は、運動ニューロンからの神経伝達物質放出を増加させている。B。コリン作動性ニューロンにおけるKir2.1またはPLTXの発現は、律動的運動活動を破壊する。C−F。コントロールに対して正規化された、筋肉表面積(C)、移動力(D)、運動リズム(E)およびNMJ eEPSP振幅(F)の定量化。コリン作動性ニューロンにおけるKir2.1またはPLTXIIの発現は、筋肉サイズを変えなかったが、運動スピードを減少させ、運動リズムを破壊し、運動ニューロンからの誘発神経伝達物質放出の振幅を増加させる。*=p<0.05、***=p<0.001、示されている場合を除きコントロールに対して計算された有意差。
図7。遺伝または薬学的K+チャネルの阻害はsmn変異表現型を改善する。A−C。(A)コントロール、(B)smn変異体および(C)Cha−Gal4を伴うコリン作動性ニューロンにおいてUASドミナントネガティブシェイカーK+チャンネル(UAS−SDN)を発現しているsmn変異体からの運動経路のトレース。SDN発現は、smn変異体の移動力のレスキューを増加させている。D−G。コントロールに対して正規化された、筋肉表面積(D)、移動力(E)、運動リズム(F)およびNMJ eEPSP振幅(G)の定量化。Cha−Gal4を伴うコリン作動性ニューロンにおけるSDNの発現は、コントロールレベルに対するsmn変異体の、筋肉サイズ(D)、移動力(E)、運動リズム(F)およびNMJ神経伝達物質放出(G)を回復する。2mM 4−アミノピリジン(4−AP)を幼虫の成長を通して培養培地に添加することは、コントロール動物における筋肉サイズは変えなかったが、smn変異体の筋肉サイズを増加させた(D)。4−AP投与は、コントロール動物における移動力、運動リズムおよび神経伝達物質放出を抑制する。smn変異体への4−AP投与は、移動力(E)およびNMJでの神経伝達物質放出(G)を、コントロールの4−AP処置動物とは有意に異なることのないレベルまで修正し、実質的に運動リズム(F)における欠陥を修正する。*=p<0.05、**=p<0.01、 ***=p<0.001、示されている場合を除きコントロールに対して計算された有意差。
図8は、SMNX7変異体が、コントロールに比べて、6%未満のSMNタンパク質レベルを有することを示す。
図9 A。smnX7変異体のNMJ mEPSP振幅は、野生型(WT)コントロールに類似する。B。NMJ mEPSP周波数は、コントロールに比べてsmnX7変異体では増加する。C。NMJ素量的含有量は、コントロールに比べてsmnX7変異体では増加する。D。smnX7ヘテロ接合性変異体は、コントロールに対して類似のNMJ eEPSP振幅を有する。smnX7とsmn73AoまたはsmnE33のトランスアレリック(transallelic)コンビネーションは、smnX7ホモ接合性変異体に似たNMJ eEPSP振幅の増加を有する。E。anti−CSP(緑色)で染色して前シナプスを標識し、anti−hrp(赤色)で染色し神経膜を標識した、3齢smnX7ヘテロ接合性およびsmnX7ホモ接合性変異体幼虫のセグメントA3の筋肉4におけるNMJシナプス終末の代表的なイメージ。
スケールバー=20μm。
F。ボタン数の定量化 ヘテロ接合性対ホモ接合性のsmn変異体におけるボタン数変化なし。誤差バーは平均標準誤差を示す。*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、コントロールに対して計算された有意差。
スケールバー=20μm。
F。ボタン数の定量化 ヘテロ接合性対ホモ接合性のsmn変異体におけるボタン数変化なし。誤差バーは平均標準誤差を示す。*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001、コントロールに対して計算された有意差。
詳細な記載
本発明は、SMNがsmn変異表現型をレスキューするために、固有受容性ニューロンおよびコリン作動性介在ニューロンの両者において回復されなければならないことを発見したことに基づく。さらにSMAの動物モデルにおいて中枢性コリン作動性ニューロンの興奮性の増加が、運動ネットワーク活動を増加させsmn変異表現型を変えたことを発見した。実験は、K+チャネルの薬理学的な阻害(FDA承認広域スペクトルK+チャネル遮断薬4−APを使用)は、SMN枯渇がもたらす重大な結果である介在ニューロンまたは感覚ニューロンの入力による運動回路の興奮性障害に伴って起こる結果である、smn変異表現型に確実に有益であることを示した。これらの観察に基づき、本発明のある態様は、1つ以上のカリウムチャネル遮断薬、特に4−アミノピリジン(以下4−APとする)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(メチルアミノ)ピリジンおよび4−(アミノメチル)ピリジン(ここでは「治療剤」と総称する)の治療有効量を投与することによりSMAを治療する方法を対象とする。他の態様は、2個以上のカリウムチャネル遮断薬を含む新医薬製剤を対象とする。
概説
概説
移動力は、神経ネットワークの協調的な活動に依存する。神経回路の慢性不全は、最終的には該ネットワーク内のニューロン変性、損傷の悪化や疾患の一番の原因を隠してしまうことにつながるかもしれないという仮説が立てられている(PalopおよびMucke,2010)。SMAは幼児死亡率の最も多い遺伝性原因であり(Pearn,1978)、劣性のみならず単一遺伝子性でもある。SMAは運動ニューロン機能変化および衰退を特徴とする。
別の神経変性疾患であるALSのマウスモデルにおける最近の研究は、星状膠細胞のような他の脊髄細胞が疾患病態に対して寄与していることを同定し、運動ニューロンと他のパートナー細胞の間の相互作用が運動ニューロン疾患に対する重要な寄与因子であるかもしれないことを示唆している(Ilieva et al.,2009)。
SMNは、組織偏在的に発現し、マウス、ゼブラフィッシュ、ミバエ、線形動物およびイーストで見出されたオルソログと共に進化を経て高度に保存されている(SchmidおよびDiDonato,2007)。遺伝モデルでは、すべてのSMNタンパク質を完全に除去すると細胞の生存が失われる。対照的にSMA患者にみられるSMNレベルの減少は大部分の臓器系を著しく障害するようには見えない(CrawfordおよびPardo, 1996)。しかしながら、SMA患者は、典型的には四肢近位部や体幹筋肉が最も重篤に侵されることを伴う運動問題や筋力低下を発症し、進行するとついには呼吸不全や死に至る(Swoboda et al.,2005)。検視研究は、SMA患者が病理学的異常運動ニューロンおよび運動ニューロン損失の証拠を有していることを示している(Simic, 2008)。しかしながら、このことが運動系不全の原因なのか終末の結果なのかは現在のところ明らかでない。
SMAにおける多くの研究は、SMAマウスモデルSMN−Δ7を使用してマウスで行われ、そのマウスでは運動ニューロンの損失が起こるよりかなり前に運動行動の深刻な初期損傷がある(Le et al.,2005,Park et al.,2010a)。神経筋接合部(NMJ)の多くの末端には神経が分布されているが、いくつかは器質的異常を有し(Kariya et al.,2008; Kong et al.,2009;Ling et al.,2011;McGovern et al.,2008)、NMJ神経伝達はこれらの変異体においては素量的含有量で〜50%の減少を伴う異常である(Kariya et al.,2008;Kong et al.,2009)。それにもかかわらずこれらのNMJ末端は正常な筋肉単収縮張力をまだうみ出している(Ling et al.,2010)。
最近運動ニューロン欠陥に加えて、超早期の脊髄反射の損失や運動ニューロンへの固有受容性シナプス入力数の減少が、SMN−Δ7マウスに観察されているが、SMA表現型に対するこれらの変化の機能的寄与は未だに知られていない(Ling et al.,2010;Mentis et al.,2011)。
本願明細書中の研究は、ショウジョウバエ(Drosophila)SMN変異モデルを用いて、SMAに関連する経路における中枢性感覚ニューロン、末梢感覚ニューロンおよび運動ニューロンの神経回路(neurocircuitry)および生理機能を検討する。
ショウジョウバエSMN変異モデル
ショウジョウバエSMN変異モデル
筋肉サイズの減少および移動力、運動リズムおよび運動ニューロン神経伝達の欠陥を有するショウジョウバエsmn変異体;重要な細胞部位や運動系においてSMNが必要であるかを決定するために利用した。ショウジョウバエでは、運動ニューロンはグルタミン酸作動性のみであるが、末梢感覚ニューロンのみならず大多数の興奮性介在ニューロンはコリン作動性である Baines,2006; SalvaterraおよびKitamoto, 2001)。ショウジョウバエsmn変異体のロバストな表現型レスキューは、シナプス神経伝達物質放出の振幅や持続時間を増加させる電位依存性カリウムチャネル(Kvチャネル)の遺伝子的遮断により作られた。ショウジョウバエにおいては、哺乳類に比べて運動ニューロンや末梢感覚ニューロンが異なる神経伝達物質を有していたとしても、カリウムチャネル活性剤の効果は、神経伝達物質放出を増加させ、そして活動電位を増加させる点で同じである。
固有受容性ニューロンは、運動回路へ重要な入力を提供し(HughesおよびThomas,2007)、コリン作動性介在ニューロンはショウジョウバエCNS機能に重要であり(Kitamoto et al.,2000)、例えば運動ニューロンに向けてシナプス出力が挙げられる(Baines et al.,2001)。神経系成長の完成後のSMNの回復は、連結性というよりむしろSMNの枯渇により壊される運動回路の機能であることを示しているので、SMN−依存性の表現型をレスキューするのに十分である。二つの方向のエビデンスがさらにこのことを支持している。第1にコリン作動性ニューロンの活動の抑制は、運動ニューロンへの非自律的効果などの多数のsmn変異表現型を模倣することができる。第2にK+チャンネル遮断を通して運動回路の興奮性を増加させることはsmn変異体欠陥をレスキューしうる。本願の結果は、ショウジョウバエにおけるSMNの枯渇が、運動回路における選択サブセットのニューロンの機能不全を起こし、その結果運動ニューロンや筋肉などの運動系の他につながる構成の活動を破壊することを示す。これらの発見は、神経回路機能不全により誘発される神経系疾患のためのパラダイムとしてのSMAのショウジョウバエモデルを確立している。
結果の要約
結果の要約
前述した機能損失smn変異体を使用して(Chan et al.,2003; Chang et al.,2008;Rajendra et al.,2007)、(1)ショウジョウバエにおけるSMNの枯渇は、SMA表現型に似た筋肉成長低下および移動力不全をもたらし、(2)異常な律動的運動出力および神経筋接合部神経伝達を伴うことを確認した。驚くべきことに、これらの欠陥は筋肉または運動ニューロンのどちらにおいてもSMNのトランスジェニック回復によりショウジョウバエsmn変異体においてレスキューできなかった。むしろ、smn変異表現型をレスキューするためにはSMNは固有受容性ニューロンおよびコリン作動性介在ニューロンにおいても回復されなければならないことを現在では見出している。運動ニューロンおよび筋肉の破壊は、感覚−運動のネットワーク活動の主要な機能不全の二次的な結果であり、さらに運動回路興奮性を増加させるための遺伝的または感覚ニューロンの薬理学的操作は確実にSMN変異表現型xxに有益であることをこの発見は示している。
実施例1の結果は、ショウジョウバエモデルが有効であることを実証し、ショウジョウバエSMN変異体では、筋肉成長、移動力および運動リズムの欠陥を伴うNMJ誘発神経伝達物質放出も増加したことを示している(図1および2)。
実施例2の結果は、SMNの筋肉回復とは対照的に、SMNの汎ニューロン的な回復が、コントロールレベルに対してsmn変異体の筋肉表面積を完全にレスキューしたことを示し(図2 B、D、E)、またそれらの移動速度、律動的運動出力およびNMJ eEPSP振幅を完璧に回復させたことを示している(図 図2F−H)。それらの結果は、smn変異体幼虫において筋肉が成長しないことが、筋肉線維そのものにおいてではなく、神経系における通常のSMNレベルに対する非自律的な要件のせいであることを示した。
実施例3の結果は、SMNがコリン作動性ニューロンに必要でありグルタミナージック(glutaminergic)運動ニューロンには必要でないこと、SMNが固有受容性にも中枢性コリン作動性ニューロンにも必要であることを示している。中枢性コリン作動性ニューロン中のトランスジェニックSMNレベルの発現はsmn変異体の筋肉成長、移動力および律動的活動欠陥を完璧にレスキューした(図3E−G)。さらにコリン作動性ニューロンにおけるSMCの発現もコントロールレベルに対するsmn変異体のNMJ末端におけるeEPSP振幅を完全にレスキューした(図3D、H)。このようにコリン作動性ニューロンにおけるSMNの発現のみが、smn変異表現型を完全にレスキューするのに十分であり、運動ニューロンや筋肉の両者のSMN−依存性欠陥を非自律的にレスキューすることができる。さらに実験は、胚発生後のSMN発現回復は、運動回路アセンブリーに持続的欠陥を有さないsmn変異体をレスキューすることができるということも示した。NMJ神経伝達物質は後の段階であってもSMNレベルを上昇させることで完全に補正されるようにSMN回復のタイミングに対する示差的表現型感受性がある一方、移動力、運動リズムおよび筋肉成長のためにはより早い時期に、より長い時間高いSMNレベルにさらす必要があった。最終的に、運動ニューロンの神経伝達物質放出特性に与える細胞非自律的効果などのsmn変異体の多数の特徴が再現されたコリン作動性ニューロン活動の阻害は、smn変異体における機能の低下を有する運動回路上のコリン作動性感覚ニューロンに一致している。
運動回路がsmn変異体において機能性の欠損を有しているという仮説を実施例4は構築しているので、実験は、それらの動物における中枢性コリン作動性ニューロンの興奮性の増加が、運動ネットワーク活動を増加させsmn変異表現型を変えることが出来るかどうかをテストするために設計された。様々な実験の結果は、K+チャネルの薬理学的な阻害(FDA承認広域スペクトルK+チャネル遮断薬4−APを使用)が、SMN枯渇がもたらす重大な結果である、介在ニューロンまたは感覚ニューロンの入力による運動回路の興奮性障害に伴って起こるsmn変異表現型に確実に有益でありうることを示した。
結果の考察
結果の考察
本願の結果は、少なくとも二つのグループの運動回路ニューロン(bdおよびI型md感覚ニューロン)におけるSMNの回復が、幼虫の表現型のフルレスキューをもたらすことを立証している。bdおよびI型md感覚ニューロンは、ショウジョウバエ幼虫の協調的な収縮運動に必要な固有受容性感覚フィードバック回路の重要な要素である(HughesおよびThomas, 2007)。bdおよびI型mdのサブセットの感覚ニューロンは、固有受容感覚に重要であるメカノセンシティブ(mechanosensitive)NompCメカノセンシティブ(mechanosensitive)NompC TRPチャンネルを発現させる(Cheng et al.,2010)。感覚フィードバックは、ショウジョウバエ 幼虫の中枢性パターンジェネレーターアセンブリーまたは基本の胚性および幼虫の動きに必要にはみえない(Crisp et al.,2008)。しかしながら感覚入力が無ければ、律動的運動回路活動(Fox et al.,2006)も協調的な運動挙動も重篤に壊される(HughesおよびThomas,2007;Song et al.,2007)。bdおよびI型md感覚ニューロンにおけるSMNレスキューは、この活動を制御する感覚入力に対して重要な役割に一致するsmn変異体の律動的運動出力を回復した(Fox et al.,2006)。しかしながら、固有受容性ニューロンのみにおけるSMNの回復は、smn変異体の運動速度を補正するのには十分ではなく、完全な運動性を回復するためには、さらにニューロンにはSMNの野生型レベルが必要であることを示している。
すべてのコリン作動性中枢性感覚ニューロンにおけるSMN発現は、移動力などのすべてのsmn変異体幼虫の表現型を完璧にレスキューした。したがって、これらの結果は、細胞自律性には1つ以上のグループの中枢性コリン作動性ニューロンにおいてSMNが必要であることを暗示している。この理論により拘束されなければ、これらのニューロンが、脳からの入力(CattaertおよびBirman,2001)、または効果的な移動力に必要な協調を促進するセグメントの中枢性パターンジェネレーター間の他の連結を減少させうることもありえる。しかしながら、レスキュー分析は運動回路の個々の要素がいくつかのsmn変異表現型に有意に寄与できることを示したが、筋肉成長のような他の表現型は中枢性および末梢性コリン作動性ニューロンの両者において正常レベルのSMN発現がさらに必要である。
コリン作動性運動回路ニューロンのみがSMN枯渇に選択的に影響を受けやすいことは興味深い。(Lotti,Imlach et al)では、コリン作動性ニューロン機能に要求される遺伝子のSMN−依存性の欠損スプライシングが同定され、SMNのように、コリン作動性ニューロンで特異的に回復しsmn変異表現型をレスキューする可能性を示した。本願で示した結果と合わせると、SMN枯渇が遺伝子のサブセットの発現を破壊し、遺伝子のいくつかはコリン作動性運動回路ニューロンの正常な機能に非常に必要とされることが認められる。これらの結果は、RNAスプライシングにおけるSMNの役割とSMNの低下に対する運動回路機能の脆弱性の間の機構的なリンクを実証している。
各系において利用される神経伝達物質は異なるけれども、運動回路−固有受容性ニューロンの基本的なエレメントである、介在ニューロンと運動ニューロンは、ショウジョウバエとヒトとの間で保存されている(MarderおよびRehm,2005)。例えば、ヒトおよびマウス運動ニューロンはコリン作動性であるが、固有受容性ニューロンはグルタミン酸作動性であり、ショウジョウバエ運動回路で利用されている逆の神経伝達である。しかしながらショウジョウバエモデルはそれにもかかわらずヒトSMAの治療に関係している。なぜなら中枢性感覚ニューロンとカリウムチャネル活性剤が接触することによる神経伝達物質放出の延長は神経伝達物質に特異的でないからである;薬物は非特異的に活動電位を持続させそれにより神経伝達物質放出を増加させる。この理論により拘束されなければ、コリン作動性ニューロンがSMNレベル低下に対する特定の保存された感受性を有するという可能性がある。
ショウジョウバエsmn変異体の固有受容性ニューロンにおけるSMNの回復は、運動ニューロンにおける正常なNMJ神経伝達物質放出特性を回復するのには十分であった。このことは、直接的シナプスの接触がなくとも、恐らく中間介在ニューロン連結を介して、これらのニューロンにおけるSMNの増加が運動ニューロン電気生理学的性質に影響を与えうることを示唆している。したがって、運動回路の配線の具体的な詳細がショウジョウバエと脊椎動物の間で異なっていても、運動ネットワークの重要な関係と機能は保存され、SMNの枯渇に選択的に影響を受けやすいという可能性がある。
低分子K+チャネル遮断薬4−APおよび4−(ジメチルアミノ)ピリジン(データ示さず)処理もショウジョウバエsmn変異表現型をレスキューした。野生型動物において、4−AP処理は、筋肉サイズには影響しなかったが、神経系の至る所および筋肉中に存在するK+チャネルの全体的な阻害により予測されるような、移動力を低下させNMJ神経伝達物質放出抑制を阻害した(Wicher et al.,2001)。それにもかかわらず、4−APの投与は有意にsmn変異体の筋肉面積も移動力も増加させ、律動的運動出力およびNMJ神経伝達における欠陥を完全に補正した。
4−APでの治療は、脊髄損傷、重症筋無力症およびLambert−Eaton症候群の患者の機能の改善に関連している(Hayes,2007)。また該治療はイヌ遺伝性運動ニューロン疾患における筋肉単収縮張力を改善し得る(Pinter et al.,1997)。4−APの徐放性製剤が多発性硬化症におけるヒト臨床用途のため最近FDAに承認された(ChwiedukおよびKeating,2010)。しかしながら、本願での発見までには、いかなるレベルでSMAが中枢性感覚ニューロンに関与しているかは知られていなかった。
ショウジョウバエsmn変異体モデルにおける4−APの薬効は、感覚−運動回路中のコリン作動性ニューロン伝達上にその活性を介して起こりうる。ヒトに対してこの知見を推定すると、4−APのような他の化合物は脊髄内で作用して感覚ニューロンから神経伝達物質放出を増加させ、それにより運動ニューロン系ネットワークの興奮性を増加させ、脊髄性筋萎縮症の症状を改善するための治療剤としても使用できる。
発明の実施形態
発明の実施形態
血液脳関門を通過するために製剤化された4−AP(または生物活性誘導体またはそのバリアント)の治療有効量を投与することにより、SMAを治療しうることがこのたび見出された。本発明においては、SMAを治療するために、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(メチルアミノ)ピリジンおよび4−(アミノメチル)ピリジンなどの他のカリウムチャネル遮断薬を、単独でまたはお互い組み合わせて使用することができる。「医薬製剤」中で後述のとおり、治療剤は、同日にまたは異なる日に投与することができる。
本発明に使用する他のK+チャンネル遮断薬としては、ドフェチリド、ソタロール、イブチリド(洞律動への心房細動急性転換用に食品医薬品局に承認されている)、アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、E−4031、ニフェカラント、テジサミルおよびセマチリドが挙げられる。
特定の他の態様は、1つより多い治療剤の製剤、たとえばBBBを通過するための薬剤の能力を最適化する製剤を対象とする。
治療的Kチャネル遮断薬および投与量
治療的Kチャネル遮断薬および投与量
4−アミノピリジンは、INNファンピリジン(fampridine)およびダルファンピリジン(dalfampridine)としても知られている(アコーダ セラピューティクス社(Acorda Therapeutics,Inc.)、ニューヨーク、Ampyra(登録商標)の名前で販売)。4−APは、化学式C5H4N-NH2を有する有機化合物である。該分子は、ピリジンの3つの異性体アミンの一つである。 4−APは、電圧−活性化K+チャネルファミリーのKv1(Shaker、KCNA)のメンバーの比較的選択的なブロッカーである。1mMの濃度では、他のナトリウム、カルシウムおよびカリウムコンダクタンスには有意な効果を示さずに、シェイカーチャネルを選択的かつ可逆的に遮断する。カリウムチャネルのサブタイプを明らかにする際に4−APは調査ツールとして長い間使用されているが、現在は、FDAにより承認され多発性硬化症のいくつかの症状に対応し、数種の疾患を有する成人の歩行に症状改善を示している(Solari A, Uitdehaag B, Giuliani G, Pucci E, Taus C (2001). Solari, Alessandra. ed. “Aminopyridines for symptomatic treatment in multiple sclerosis”. Cochrane Database Syst Rev (4); Korenke AR, Rivey MP, Allington DR (October 2008). “Sustained−release fampridine for symptomatic treatment of multiple sclerosis”、Ann Pharmacother 42 (10): 1458-65; New Drugs: fampridine”. Australian Prescriber (34): 119-123, August 2011。当該薬物は、商品名Neurelanとして合衆国においてオーファンドラッグの地位を有する。ファンピリジン(fampridine)もAmpyra(登録商標)として合衆国でアコーダ セラピューティクス社により販売されている(FDAは多発性硬化症の成人の歩行を改善させるためにAmpyraを承認している)。
またファンピリジン(fampridine)(4−AP)は、脊髄損傷、重症筋無力症およびLambert−Eaton症候群の患者に臨床的に使用し(Hayes,2007)、イヌ遺伝性運動ニューロン疾患における筋肉単収縮張力を改善し得る(Pinter et al.,1997)。ファンピリジンは、活動電位を延長し、その結果としてニューロンからの神経伝達物質放出を増加させる広域べースのカリウムチャネル遮断薬である。該薬剤は動物実験においてテトロドトキシン毒性を無効にすることも示されている。4−APで治療されたMS患者は29.5%〜80%の応答率を示した。長期の研究(32月)は、4−APに初期に反応した患者の80−90%は長期に有益であったことを示した。4−APでの治療は脊髄損傷、重症筋無力症およびLambert−Eaton症候群の患者の機能改善に関連し(Hayes,2007)、イヌ遺伝性運動ニューロン疾患における筋肉単収縮張力を改善し得る(Pinter et al.,1997)。
種々の濃度の4-APを、17人の温度感受性MS患者の臨床用途のために試験した。投与量の範囲は4-AP7.5〜52.5mg、1日1〜3回、3〜4時間間隔、1日を超え5日間まで試験した。4−APを与えられた17人の患者のうち13人(76%)がプラセボグループに比べて、臨床上重要な運動および視覚の改善を示した。70%の連日の4−AP改善は、7〜10時間続いた。4−APの2回の連続投与に対する改善は、プラセボ2.36時間(治療−観察期間平均9.06時間の26%)に比べて平均7.07時間続いた(治療−観察期間平均8.53時間の83%)。重大な副作用は起こらなかった。Stefoski D,et al.;Neurology.1991 Sep;41(9):1344−8;4−Aminopyridine in multiple sclerosis: prolonged administration.FDA承認用量10mgを1日2回経口で投与した。
治療有効量は種々要因により変化しうる。例えば:1.1つ以上の剤が投与されるかどうか;2.剤の薬効、単独または他の剤と組み合わせ;3.製剤のタイプ、薬剤はゆっくり放出されるからより高い量を含めることができる徐放性処方など;4.患者の年齢、疾患の重症度;5.投与頻度;および6.個々の対象の剤に対する耐性および反応性。
医薬製剤および投与
医薬製剤および投与
ある態様においては、疾患の1つ以上の症状を改善するのに必要な、1つ以上の治療剤の多様な治療有効量を、1日または週もしくは月の一定期間投与する。治療剤は単独で(すなわち唯一の特定の剤で治療)、または2以上の剤を別々にもしくは組み合わせて投与されうる。剤は1日1回以上投与されうる。異なる剤の治療有効量は、特定の剤によって変わりうるし、剤が単独または別の剤と一緒に投与されるかどうかよって変わりうる。治療有効量は特定の製剤に基づいても変化しうる。
本発明の方法で使用される医薬組成物は、1つ以上の治療剤の治療有効量、すなわち対象における本願に記載の疾患を予防または治療に十分な量を含み、局所または全身投与用に製剤化されている。対象は好ましくはヒトであり、同様にヒト以外でもありえる。好ましい対象は、既述の疾患の一つが疑われる、該疾患と診断されている、または 該疾患の発症のリスクにある人間でありえる。
治療投与のための活性剤は、好ましくは、毒性が低く血液脳関門を通過する。この療法の進行は、所望の治療効果を達成する投与量に調節するために使用されうる従来技術やアッセイにより簡単にモニターされる。
治療剤の組成は製薬上許容し得る担体も含みうる。本明細書で使用される用語「製薬上許容し得る担体」としては、溶媒、分散媒、コーティング剤、抗ウイルス薬、抗菌剤、抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤など製薬学的投与に混合可能なものが挙げられる。追加の活性化合物も組成物に加えることができる。他の局所製剤はSheele et al.,7,151,091に記載されている。
治療組成物は、例えば、結合剤、フィラー、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤および賦形剤などの通常使用する添加剤、例えば、製薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含んでもよい。これらの組成物は通常1%−95%の活性成分、好ましくは2%−70%の活性成分を含む。
治療剤は、また投与ルートおよび標準的な製薬学的プラクティスに従って選択されるような混合可能で生理学的に許容しうる希釈剤または賦形剤と一緒に混合しうる。適当な希釈剤および賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン等、またはその混合物である。また、必要なら、組成物は湿潤剤もしくは乳化剤、安定化剤もしくはpH緩衝剤のような補助物質を少量含んでもよい。
いくつかの態様において、本発明の治療組成物は、液剤もしくは懸濁剤、または固形の形態のいずれに調製してもよいが、好ましくは経口投与用に調製する。製剤には、結合剤、フィラー、担体、保存剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤および賦形剤などの通常使用する添加剤、例えば、製薬学的等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等を含んでもよい。溶液、懸濁液または徐放性製剤は通常1%−95%の活性成分、好ましくは2%−70%の活性成分を含む。
また製剤には2つ以上の治療される特定の適用に必要な治療剤、好ましくはお互い悪影響を与えない相補的活性を有するものを含んでもよい。当該分子は、好ましくは意図された目的のために有効な量で組み合わせて存在する.
徐放性製剤の適切な例としては、治療剤を含む固形疎水ポリマーの半透過性のマトリックスが挙げられ、マトリックスは造形品の形態、例えばフィルムまたはマイクロカプセルである。徐放性マトリックスとしては、特に限定されないが、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、もしくはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L−グルタミン酸とy エチル−L−グルタメートのコポリマー、非分解性エチレン−ビニルアセテート、ルプロンデポ(LUPRON DEPOT)(乳酸−グリコール酸 コポリマーおよびロイプロリドアセテートからなる注射可能な微小体)などの分解性乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリD−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。いっぽうエチレン−ビニルアセテーテオおよび乳酸−グリコール酸のようなポリマーは100日間を超えて分子の放出が可能であるが、特定のヒドロゲルはより短い時間周期でタンパク質を放出する。
本発明の治療剤は、血液脳関門(BBB)を通過する限り、如何なる適当な手段によって投与のために製剤化されていてもよい。BBBを通過する治療剤を製剤化する戦略は周知であり以下が挙げられる:
BBBの透過性(開口)を増加
血液−脳障壁の浸透圧性開口
化学開口
脳血管拡張:翼口蓋神経節の刺激、酸化窒素吸入
集中的超音波による血液−脳障壁の破壊
BBB通過トランスポートを促進するための薬理学的戦略
脂溶性を高めるための薬物修飾
トランスポート/担体システムの使用
薬物送達を妨げる流出トランスポータの阻害
トロイの木馬アプローチ
キメラペプチド
モノクローナル抗体融合タンパク質
プロドラッグバイオ変換戦略
ナノ粒子技術
ニューロイムノフィリン
BBBの透過性(開口)を増加
血液−脳障壁の浸透圧性開口
化学開口
脳血管拡張:翼口蓋神経節の刺激、酸化窒素吸入
集中的超音波による血液−脳障壁の破壊
BBB通過トランスポートを促進するための薬理学的戦略
脂溶性を高めるための薬物修飾
トランスポート/担体システムの使用
薬物送達を妨げる流出トランスポータの阻害
トロイの木馬アプローチ
キメラペプチド
モノクローナル抗体融合タンパク質
プロドラッグバイオ変換戦略
ナノ粒子技術
ニューロイムノフィリン
薬物を脳に送達するための別の可能性は脳または脊髄への直接投与であり、これによりBBBを迂回する。これは例えば硬膜外静脈叢への注射または脳、脊椎もしくは髄液(CSF)への薬物の直接導入によりなしえる。薬物ポンプは本発明の方法における治療剤の持続投与を促進することができる。
リポソームは脳に低分子を送達するのに有用でありうる。特に有用なリポソームは、例えば、ホスファチジルコリン、コレステロールおよびPEG誘導化ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)を含む脂質組成物を使用した逆相蒸発法により作りうる。リポソームは、所望の径を有するリポソームを作るために一定の孔径のフィルターを通して押し出される。本発明のポリペプチドは、例えば、Werle et al.,Int. J. Pharm.370(1−2):26−32(2009)に記載のように、リポソームに結合しうる。
脳または脊髄へ送達用の薬物を製剤化する方法のレビューに関しては、Reinhard Gabathuler, Neurobiology of Disease 37 (2010) 48-57 Approaches to transport therapeutic drugs across the blood-brain barrier to treat brain diseasesを参照。またJournal of Drug Delivery Volume 2011, Article ID 469679, doi:10.1155/2011/469679. Review Article Carlos Spuch andCarmen Navarro, Liposomes for Targeted Delivery of Active Agents against Neurodegenerative Diseases (Alzheimer’s Disease and Parkinson’s Disease)を参照。
In vivo投与に関しては、医薬組成物は、好ましくは経口または非経口、すなわち、関節内、静脈内、腹腔内、皮下もしくは筋肉内投与される。特定の態様においては、医薬組成物は、ボーラス投与により静脈内または腹腔内に投与される。Stadler, et al.,U.S. Pat. No. 5,286,634。疾患の予防または治療に関しては、適切な投与量は、疾患の重症度、薬物が予防もしくは治療用に投与されるかどうか、薬歴、患者の病歴および薬物への反応性および担当医の裁量によって決められるだろう。
得られた製薬学的製剤は、従来周知の滅菌技術により殺菌してもよい。水溶液は、次に使用のため包装または無菌条件下でろ過、凍結乾燥し、投与前に無菌性水溶液と合わされる凍結乾燥製剤であってもよい。組成物は、pH調整剤および緩衝剤、浸透圧調整剤等の生理的条件に近づけるために要求される製薬上許容し得る補助物質、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等を含んでもよい。また脂質懸濁剤は、貯蔵時のフリーラジカルおよび脂質過酸化ダメージに対して脂質を保護する脂質保護剤を含んでもよい。α−トコフェロールのような脂溶性のフリーラジカルクエンチャーおよびフェリオキサミンのような水溶性鉄特異性キレート剤が適切である。
この発明の医薬組成物は多様な剤形であってよく、剤形は好ましい投与方法に従って選択してもよい。剤形としては、例えば、錠剤、ピル、散剤、溶液もしくは懸濁剤、座薬、注射用および注入用溶液などの、固形、半固形および液状の剤形が挙げらる。好ましい形態は意図する投与方法および治療の適用によって決まる。
本発明の医薬組成物は、例えば、取り込みまたは安定性を刺激する補助因子の有無にかかわらず無菌性で等張の製剤にしてもよい。製剤は、好ましくは液剤か凍結乾燥された散剤でありえる。例えば、本発明の組成物は、5.0mg/mlクエン酸一水和物、2.7mg/mlトリクエン酸ナトリウム、41mg/mlマンニトール、1mg/mlグリシンおよび1mg/mlポリソルベート20を含む製剤緩衝剤で希釈してもよい。この溶液は、凍結乾燥し、冷蔵下で保存し、投与前に無菌性注射用蒸留水(USP)でもどしうる。
適当な溶媒は水和物を含む。適切な塩としては、有機酸および無機酸または塩基で形成されるものが挙げられる。製薬上許容し得る塩基塩としては、アンモニウム塩、ナトリウムおよびカリウムとの塩などのアルカリ金属塩、カルシウムおよびマグネシウムとの塩などのアルカリ土類金属塩およびジシクロヘキシルアミンおよびN−メチル−D−グルカミンなどの有機塩基との塩が挙げられる。
経口投与に適切な本発明に使用される製剤は、それぞれ所定の量の活性成分を含有するカプセル、カシェー(cachets)または錠剤のような個別の単位;散剤もしくは顆粒剤;溶液または水性液剤中もしくは非水溶性液剤中の懸濁剤;または水中油型液体乳剤もしくは油中水型液体乳剤、として存在してもよい。活性成分はまたボーラス、舐剤もしくはペーストとしても存在してもよい。
非経口投与用の製剤としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬および対象とする被験者の血液を用いて製剤を等張にする溶質を含んでいてもよい水性および非水性無菌性注射溶液;および懸濁化剤および増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性無菌性懸濁剤、が挙げられる。製剤は、単位用量または複数回用量の容器(例えば密閉されたアンプルおよびバイアル)中に存在してもよく、使用直前に無菌性液体担体(例えば生理食塩水または注射用蒸留水)の添加のみが必要なフリーズドライ(凍結乾燥)条件で保存してもよい。即時の注射溶液および懸濁剤は既述の種類の無菌性散剤、顆粒及び錠剤から調製してもよい。
本発明の治療剤は、同時に投与してもよく、同時に投与とは個々の薬剤が同時に対象内に存在するように薬剤を投与することを意味する。薬剤の併用投与(同じまたは別のルートを介する)に加えて、同時投与は、異なる時間での薬剤投与(同じまたは別のルートを介する)が挙げられる。
定義
定義
一般的に、本願で記載の細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して使用する名称および技術は、技術分野で使用される周知および普通に使用されているものである。本発明の方法および技術は、別段の記載がない限り、技術分野で周知および本願明細書を通して引用や検討している様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されている慣用の方法に従い通常行われる。例えばSambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989); Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Associates (1992, and Supplements to 2002); Harlow and Lane Antibodies: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1990); Principles of Neural Science, 4th ed., Eric R. Kandel, James H. Schwart, Thomas M. Jessell editors. McGraw−Hill/Appleton & Lange: New York, N.Y. (2000)を参照。別段定義しない限り、本願で使用されているすべての技術的および科学的用語は当業者に普通に理解されるのと同じ意味を有する。
用語「人間」、「対象」および「患者」は本願明細書においては区別しないで使われ、診断、治療、または療法が望まれるいかなる哺乳類の対象、特にヒトをいう。本願で使用される「対象」は、通常如何なる生きている多細胞生物を示す。対象は、動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、イヌおよびネコ)および植物に限定されないが、ヒト上科の動物(例えば、ヒト、チンパンジーおよびモンキー)が挙げられる。その用語にはトランスジェニックおよびクローンの種も含まれる。用語「患者」は人も獣医学上の対象も示す。
「投与」は、当業者に公知の種々の方法および送達システムのいずれかを使用して作用または行われる手段で送達することを意味する。投与は、例えば、経口または静脈内、埋め込み、経粘膜、経皮、皮内、筋肉内、皮下、もしくは腹腔内で行い得る。また投与は、例えば1回、数回および/または1つ以上の延長期間を超えて行われうる。
フレーズ「治療有効量」は、治療結果を生み出すのに十分な量を意味する。一般的に、治療結果は、客観的または主観的に疾患または状態が改善することであり、生理学的プロセスを誘導もしくは高め、生理学的プロセスを遮断もしく阻害することにより達成されるものであり、疾患もしくは状態の除去もしくは緩和を助けるもしくは寄与する生物学的機能を達成するという一般的用語によってなし得る。例えば、疾患の重症度もしくは一連の1つ以上の症状を除去または減少することである。十分な治療効果は、必ずしも一回の投与によりおこるわけではなく一連の投与後にのみ起こるかもしれない。したがって治療有効量は、1回以上の投与において投与されるかもしれない。
疾患を「治療する」は、有効なまたは所望の結果を得るためのステップを採ることを意味し、疾患の1つ以上の症状の緩和、軽減もしくは改善;疾患の広がりの減少;疾患の進行の遅延もしくは緩慢化;メトリック(metric)(統計的)疾患を改善および一時的抑制もしくは一定に保つなどの臨床結果が挙げられる。「治療」はとられるステップを示す。
「緩和」は疾患または疾患の症状を減少または改善することを意味する。例えば、緩和は疾患の表現型の発現前に(すなわち疾患の症状が現れる前に)治療剤を投与することにより達成しうる。緩和は、疾患もしくは疾患の症状を避ける、阻止する、減少するもしくは除去することにより、疾患の影響を軽快することが挙げられる。本願明細書で記載されている列挙された疾患を緩和することは症状が生じる前に列挙された疾患を「治療する」という定義の中にはいる。疾患を緩和する治療剤の量は本願明細書では「治療有効量」として示される。
実施例
材料と方法
材料と方法
ショウジョウバエストック。smnX7(Chang et al.,2008)は小さな欠失であり、転写開始部位の93bp上流から3’UTRの最後44bpまでの全smnコード領域を他の座を破壊することなく取り除く。通常の培養条件では、3齢まで生存したホモ接合性smnX7変異体の数は、これまでの報告(Chang et al.,2008)通り、ほとんどない。しかしながら、もしストックが低密度で培養されれば、この段階まで生存した数の増加を確実にみることができるであろう。そうするために、親ストックおよびコントロールを、イーストペーストを添加したグレープジュース寒天プレート上に一夜放置し、プレートを移動させ、第3幼虫齢に達するまで25℃で培養した。smn73Aoは機能欠失型点変異アレルであり、不安定なタンパク質を生成する。その結果は、これらの動物のNMJでの誘発性神経伝達物質放出における減少が報告されているこれまでのSMN73Aoアレルに基づく電気生理学的観察とは異なる(Chan et al.,2003)。この知見は1つのSMN73Aoストック(B#4802)でも見られた。しかしながら、この欠陥はトランスジェニックSMNではレスキューすることができなかった(データ示さず)。別のSMN73Aoストック(Greg Matera,UNCより贈呈)はSMNが低いことが確認されており、戻し交雑を複数回行い野生型バックグラウンドとなり、ホモ接合性及びトランスヘテロ接合性の両方の組み合わせにおいてeEPSPの振幅がsmnX7や他のsmn変異体アレルと同じぐらい迄に増大した(補足図2D)。従前の知見は第二の部位突然変異のせいである可能性があると結論づけられた。同様に、SMN73Aoアレルについて、以前にはその減少が報告されていた(Chan et al.,2003;Chang et al.,2008)が、smnX7変異体では、形態学的シナプスボタンにおいてX変化なし、が観察された。これらの結果は、NMJ形態学的変化がほとんどない、もしくはない、ということを示した他の「強い」smnアレルの観察と一致する(Chang et al.,2008)。以前の研究におけるように、トランスジェニックSMNの遍在的発現が、成虫の生存能力、移動力および筋肉サイズをレスキューすることができる(Chan et al.,2003;Chang et al.,2008;Rajendra et al.,2007)。しかしながら、筋肉もしくはニューロン発現で十分という以前の報告(Chan et al.,2003)とは対照的に、SMN変異体の移動力をレスキューするにはnsyb−Gal4もしくはジーンスイッチ(geneswitch)elav−Gal4との、SMNのニューロンに限定された発現だけが必要であるということがわかった。この不一致に対する可能な説明としては、これらの研究に用いられた中胚葉性how24B−Gal4ドライバー(Brand and Perrimon,1993)が強い筋肉発現に加えて有意なニューロン発現を示す、ということである。UAS::Flag−Smn−染色体IIに挿入されたアミノ末端Flag配列を有する全長Smnタンパク質(Chang et al.,2008)。ターゲット発現が抗−Flag免疫組織化学を用いて確認された(データ示さず)。UAS−PLTXII(分泌シグナル配列としてN末端からC末端へ構築されたメンブレンテザー PLTXII、成熟し切断されたPLTX−IIペプチド配列、埋込みc−Mycエピトープタグを有する親水性リンカー配列、およびGPIターゲット配列(B.C,Michael Nitabach and BDM 未出版)Gal4株:nsyb−Gal4(Bushey et al.,2009),OK6−Gal4,G14−Gal4(Aberle et al.,2002),OK371−Gal4(Mahr and Aberle,2006),アクチン−Gal4(Ito et al., 1997),Cha−Gal4(Salvaterra and Kitamoto,2001),clh201−Gal4,1003.3−Gal4(Hughes and Thomas,2007),ppk−Gal4(Ainsley et al.,2003)NP2225−Gal4(Sugimura et al.,2003),Gad1−Gal4(Ng et al.,2002)およびelav−ジーンスイッチ(geneswitch)(Osterwalder et al.,2001)。UAS株:UAS−Flag−Smn(Chang et al.,2008),UAS−Kir2.1(Paradis et al.,2001),UAS−PLTXIIおよびUAS−SDN(Mosca et al.,2005)電気生理学。NMJ電気生理学:筋肉6,セグメントA3からの細胞内レコーディングを既報(Imlach and McCabe,2009)のようにして行った。簡単に述べると、3幼虫齢を切開し、1.0mM Ca2+を含有するHL3生理食塩水中でレコーディングを行った。静止膜電位が−55mV未満の場合のレコーディングデータのみを分析した。Axoclamp 2Bアンプを用いてレコーディングを行った。データを1kHzでローパスフィルタにかけ、デジタル化し、Digidata1322Aインターフェースを用いてディスクに記録した。MiniAnalysisプログラム(Synaptosoft,Inc.)のピーク検出特性を用いてeEPSPとmEPSP振幅の両方を測定した。全ての事象を遺伝子型にかかわらず手作業で確認した。mEPSPの振幅および周波数は刺激なしでの連続レコーディングから計算した(50-100s)。非線形積算誤差を補正(Martin,1955)した後(eEPSP振幅/mEPSP振幅)(Davis et al.,1998)を計算することによって、それぞれ個々のレコーディングについて素量的含有量を得た。運動リズム:自発的運動リズムを既報(Fox et al.,2006)のようにして記録した。簡単に述べると、CNSおよび運動ニューロンに影響をおよぼさない標準生理食塩水中で、腹腔セグメントA1の筋肉6からレコーディングを行った(Jan and Jan,1976)。平均イベント間インターバルを測定するために、3分間に起こった全ての自発的eEPSPイベントを、MiniAnalysis(Synaptosoft,Inc.)のピーク検出特性を用いて検出した。移動力:基本的に、既報(Suster and Bate,2002)に記載したようにしてアッセイを行った。簡単に述べると、一匹の幼虫をライトボックス上の1%アガロースプレートに置いた(25℃、70%湿度)。1分間の馴化の後、移動経路のビデオ記録をEMZ−8TR顕微鏡に搭載したカメラ(Sentech STC−620CCビデオカメラ)に取込み、ファイナルカットエクスプレス v 4.0(Apple)で記録した。それらをQuickTime v7.6.4(Apple)でquicktime.movファイルに変換した。経路長と速度をDIAS v 3.4.2(Soll Technologies)ソフトを用いて分析した。NMJ免疫組織化学。ワンダリングする3幼虫齢を解剖し、既報(Brent et al.,2009a;Brent et al.,2009b)のようにして染色した。筋肉4腹腔セグメントA3で、IbおよびIs型ボタンをZeiss Axio Imager Z1顕微鏡上の40x対物レンズを用いて数えた。用いた抗体はマウス抗−システインストリングタンパク質(CSP,1:200,Developmental Studies Hybridoma Bank at the University of Iowa)、Cy5−コンジュゲート ヤギ抗−セイヨウワサビペルオキシダーゼ(1:400,Jackson ImmunoResearch)およびヤギ抗−マウスAlexa488(1:2000,Invitrogen)であった。幼虫の標本をZeiss LSM 510共焦点顕微鏡でイメージ化した。
ウエスタンブロッティング。ウエスタンブロッティングには下記モノクロナール抗体を用いた:ショウジョウバエ−特異的抗−SMN(Chang et al.,2008)、抗−βアクチン(Sigma)、抗−チューブリンDM 1A(Sigma)および抗−FLAG(Sigma)。ウエスタンブロット解析用総タンパク質抽出物はSDSサンプルバッファ(2%SDS、10%グリセロール、5%bメルカプトエタノール、60mMトリス−HCl pH6.8、ブロモフェノールブルー)中でのショウジョウバエ3幼虫齢のホモジナイゼーション後、短時間超音波処理と煮沸を行って作製した。タンパク質濃度はRC DCプロテインアッセイ(Bio−Rad)で測定した。全てのタンパク質サンプルは12%ポリアクリルアミドゲルを用いたSDS/PAGE後ニトロセルロース膜に転写して分析した。
ショウジョウバエストック:smnX7(Chang et al.,2008)、smn73Ao(Chan et al.,2003)、smnE33(Rajendra et al.,2007)。
筋肉測定:筋肉面積測定はファロイジン(phallodin)染色された筋肉フィレ標本のセグメントA3の筋肉6で行った(Brent et al.,2009)。
移動力:幼虫の移動力評価は基本的に既報(Suster and Bate,2002)の通りにして行った(補足情報参照)。
運動リズム:自発的運動リズムを既報(Fox et al.,2006)の通りにして記録した。平均スパイク間インターバルを測定するために、3分間に起こった全ての自発的eEPSPイベントを、MiniAnalysis(Synaptosoft,Inc.)のピーク検出特性を用いて検出した。
NMJ電気生理学:筋肉6,セグメントA3からの細胞内レコーディングを既報(Imlach and McCabe,2009)のようにして行った。
薬物処理:ジーンスイッチGAL4 SMN発現は、SMN変異体での表現型測定前の148時間、96時間、72時間もしくは48時間、幼虫をRU486(10g/ml)で育てることで誘発した(コントロールはすべてワンダリングL3期で分析した)。SMN誘導はウエスタンブロットで確認した。4−AP処理のために、2mM 4−AP(Sigma)をイーストペーストに加え、幼虫は孵化後すぐ、及び続く幼虫期を通じてその上で育てられた。
統計方法:有意性は指示通りInstat 3.0(GraphPad)を用いてANOVAでテストされた。すべての図において、誤差バーは平均標準誤差を示す。*=p<0.05,**=p<0.01,***=p<0.001。
実施例1。 ショウジョウバエsmn変異体モデルの検証。
実施例1。 ショウジョウバエsmn変異体モデルの検証。
SMA患者にみられる低SMNレベルをショウジョウバエにてモデル化するために、接合タンパク質を持たないSMNアレル(smnX7)を使った。該アレルは、その近くにある座を破壊することなく全smnコード領域を取り除く小さな欠損を有する(Chang et al.,2008)。これらにおける残存SMNは、3幼虫齢段階のコントロールと比べてSMNレベルの6%未満を提供した母系タンパク質によるものである(補足図1A)。他のsmn変異体アレルについてのこれまでの報告(Chan et al.,2003)通り、smnX7変異体は決して蛹化せず、その代わり3幼虫齢であることに固執し、しばしばこの段階で5日間以上生き続けた。
この表現型がSMNに依存していることを確認するために、アクチン−Gal4を用いてsmnX7変異体でトランスジェニックUAS flag−タグ化されたSMNコンストラクトを遍在的に発現させた(Chang et al.,2008)。これによりsmnX7変異体の通常の蛹化が回復し、100%幼虫蛹化開始および80%を超えてその後生きた成虫を産み出すところまでいった(データ示さず)。従って、smnX7変異体は幼虫後半段階では低SMNレベルであるが、トランスジェニックSMNでレスキューされうる。注記がある場合を除いて、この変異体アレルを以後の全ての実験で使用した。
ショウジョウバエsmn変異体幼虫はコントロール動物よりも小さかった。これに筋肉サイズ低下が伴うかどうかを評価するために、smn変異体およびコントロール幼虫の筋肉をファロイジン標識した。その結果、smn変異体はコントロールに比べて筋肉表面積が46%(P<0.001)減少していた(図1A−C,またTable S1も参照)。この欠陥はトランスジェニックSMNの遍在的発現により完全にレスキューされた。smn変異体の幼虫は動きが遅く、動く頻度はコントロールより少なかった。この欠陥を定量するために、ビデオ捕獲追跡ソフトを使ってsmn変異体およびコントロール幼虫の移動力を測定した。その結果、smn変異体は移動速度がコントロール動物に比べて63%(P<0.001)低かったが、トランスジェニックSMNの遍在的発現によってコントロールレベルにまでレスキューされた(図1D−F)。従って、SMA患者と同様に、低SMNレベルを示すショウジョウバエは筋肉および移動力に欠陥がある。
ショウジョウバエ幼虫の移動力は腹神経索(VNC)におけるセグメント中枢パターン−生成ネットワーク(CPGs)の律動的活動にリンクしており(Fox et al.,2006)、該ネットワークは脳半球(Cattaert and Birman,2001)と固有受容性感覚ニューロン(Cheng et al.,2010;Hughes and Thomas,2007;Song et al.,2007)の両方からの入力を受け取り、運動ニューロンへ活動を出力する。このパターン−生成ニューロンの活動を測定するために、運動ニューロンの自発的活動を、脳を残しVNCをin situで残した標本に記録した(Fox et al.,2006)。コントロール動物において、運動活性が一定間隔で律動的に一挙に起こるのはこれまでの研究の通りだった(Cattaert and Birman,2001;Fox et al.,2006)(図1G)。対照的に、長さが一定しない、短期間の不規則的突発を生じていたsmn変異体においてはその活動が乱れた(図1H)。この欠陥は、smn変異体とコントロールにおける全ての自発的スパイクイベント間の平均スパイクインターバルを一定期間測定することで定量した。コントロールと比較して、smn変異体はスパイク間インターバルが90%(P<0.001)増加した(図1I)。移動力と同様,トランスジェニックSMNの遍在的発現により、正常な律動的運動活性が完全に復活した。従って、ショウジョウバエsmn変異体は運動回路の出力に欠陥がある。
個々の運動ニューロンの神経伝達物質放出特性
個々の運動ニューロンの神経伝達物質放出特性
脳を摘出し運動ニューロンを吸引電極で直接刺激した(Imlach and McCabe,2009)。コントロールと比較して、smn変異体のNMJにおいて誘発興奮性シナプス後電位(eEPSP)振幅は23%(P<0.005)増加した(図1J−L)。smnX7変異体におけるNMJ eEPSP振幅の増加はトランスジェニックSMNの遍在的発現によってコントロールレベルにまで復活した(図1L)。微小興奮性シナプス後電位(mEPSP)周波数も60%(P<0.05)増加していた。対照的に、smn変異体NMJ末端におけるmEPSP振幅はコントロールと差がなく(補足図2A,B)、素量含有量の64%(P<0.001)増加につながった(補足図2C)。これらの知見はsmn変異体における運動ニューロンの神経伝達物質放出特性のシナプス前変化と一致する。smnX7と他のsmn変異体アレルとのトランス−ヘテロ接合組合せを行った結果、これらの変異体におけるeEPSP振幅の同様の変化を確認した。ヘテロ接合smnX7動物では見られなかった変化である(補足図2D)。smnX7変異体NMJの形態学的特性を研究した際には、シナプスボタン数にコントロールと比べて有意差は見られなかった(補足図2E)。要約すると、ショウジョウバエsmn変異体は、筋肉成長、移動力や運動リズムの欠陥を伴うNMJ誘発性神経伝達物質放出を増加させた。
実施例2。 神経系におけるSMNの復活はsmn変異表現型を救う。
実施例2。 神経系におけるSMNの復活はsmn変異表現型を救う。
SMNの枯渇はショウジョウバエの筋肉成長に加えて運動システムの複数の出力に障害を与えた。通常のSMNレベルに対する細胞自律的な要件を同定するため、より多くの組織限定Gal4ドライバーをsmn変異体のレスキュー評価に繰り返し用いた。まず、G14−Gal4(幼虫の筋肉特異的ドライバー)を用いてトランスジェニックSMNをsmnX7変異体の筋肉においてのみ発現させた。これによってsmnX7変異体における、筋肉表面積の有意な増加(図2C,E)もしくは移動力、律動的な運動出力およびNMJ eEPSP振幅に対する効果は生じなかった(図2F−H)。
次に、ニューロン特異的nsyb−Gal4ドライバーを用いて、smn変異体の神経系においてのみSMN回復を調べた。SMNの筋肉回復とは対照的に、SMNの汎ニューロン的な回復によってsmn変異体の筋肉表面積はコントロールレベルに迄回復し(図2B,D,E)、移動速度、律動的運動出力およびNMJ eEPSP振幅も完全に回復した(図2F−H)。smn変異体のニューロン単独でのレスキューでは生きたショウジョウバエ成虫を生み出すのに十分ではないが(データ示さず)、それは多分に、レスキューされない組織におけるSMNレベルが細胞生存度を損なうほどまで完全に枯渇するせいである(Chan et al.,2003)。それらの結果は、smn変異体幼虫において筋肉が成長しないことが、筋肉繊維そのものにおいてではなく、神経系における通常のSMNレベルに対する非自律的な要件のせいであることを証明した。
実施例3。 SMNはコリン作動性ニューロンにおいて必要とされるが運動ニューロンにおいては必要とされない。
実施例3。 SMNはコリン作動性ニューロンにおいて必要とされるが運動ニューロンにおいては必要とされない。
ショウジョウバエVNCには、ヒトの脊髄のように、多様な神経伝達物質発現を示すニューロンが集まっている。一部の中枢性介在ニューロンに加えて全てのショウジョウバエ運動ニューロンはグルタミン酸作動性である(Daniels et al.,2008)。smn変異体のNMJにおける神経伝達物質放出にはシナプス前欠陥があるため、運動ニューロンにおけるトランスジェニックSMN発現が有するsmn変異体レスキュー能力をテストした。smn変異体のグルタミン酸作動性ニューロンにおいてのみトランスジェニックSMNを発現させるために、OK371−Gal4を小胞グルタミン酸輸送体プロモーターに挿入し、エンハンサートラップとして用いた。そうすることによって、smn変異体単独と比較して筋肉表面積、移動速度、律動的運動出力に差が生じることはなかった(図3F−G)。驚いたことに、これらの動物のNMJでのeEPSP振幅の異常な増加は減少しなかった(図3B,C,E)。この予想外の結果は、二つ目の別の運動ニューロン特異的なドライバーOK6−Gal4を使って確認した(図3E−H)。従って、筋肉成長にSMNが必要であるのと同様、smn変異体のNMJにおける異常な神経伝達物質放出は、運動ニューロンでのSMNの細胞自律的喪失の結果ではない。この結果はショウジョウバエ運動回路中の他のニューロンタイプがSMNを必要とするかどうかを解明する研究を促した。
抑制的入力は運動回路機能の重要な制御因子である(Featherstone et al.,2000)ので、グルタミン酸脱炭酸酵素1プロモーターGal4をGABA作動性ニューロンでのSMNの回復に使用した。しかしながら如何なるsmn変異表現型も有意にレスキューされなかった(図3EH)。ショウジョウバエ神経系の興奮性ニューロンの大部分はコリン作動性であり(Salvaterra and Kitamoto,2001)、運動ニューロンはコリン作動性ニューロンからのシナプス入力を受け取る(Baines,2006)。従って、コリンアセチルトランスフェラーゼ(Cha)プロモーター駆動Gal4を用いてsmn変異体のトランスジェニックSMNを回復させた。グルタミン作動性およびGABA作動性のドライバーとは対照的に、コリン作動性ニューロンにおけるトランスジェニックSMNレベルの発現は、smn変異体の筋肉成長、移動力および律動的活動の欠陥を完全にレスキューした(図3E−G)。さらに、コリン作動性ニューロンでのSMN発現もsmn変異体のNMJ末端でのeEPSP振幅をコントロールレベルにまで完全にレスキューした(図3D,H)。従って、コリン作動性ニューロンのみにおけるSMN発現はsmn変異表現型を完全にレスキューするのに十分であり、運動ニューロンと筋肉の両方のSMN依存性の欠陥を非自律的にレスキューすることができる。
SMNは固有受容性ニューロンと中枢性コリン作動性ニューロンの両方に必要である。
SMNは固有受容性ニューロンと中枢性コリン作動性ニューロンの両方に必要である。
全てのショウジョウバエ幼虫の感覚ニューロンは、興奮性中枢性ニューロンの大部分に加えてコリン作動性である(Salvaterra and Kitamoto,2001)。これら2つの集団間における通常のSMNレベルの要件を精査するために、感覚ニューロンのみにおけるトランスジェニックSMN発現がsmn変異表現型をレスキューする能力を評価した。ショウジョウバエ感覚ニューロンは主に3つのタイプに分類され、それらは5つのサブクラス(bd,I,II,III,IV)がある多重樹状突起ニューロン(md)、外感覚器ニューロン(es)と弦音器官ニューロン(ch)である。感覚ニューロンGal4ドライバーのパネル(図4A)を、感覚ニューロンの主要タイプにおいてのみSMNを回復するために使用した。SMNを全てのmdニューロンとes感覚ニューロンで発現させ、chニューロンもしくは中枢ニューロンでは発現させなかった場合、smn変異体の律動的運動出力と誘発性NMJ eEPSP振幅の両方がコントロールレベルにまで回復し、筋肉表面積はコントロールの83.5%にまで増加した(P<0.05)(図4D,F,G)。しかしながら、このドライバーを用いたトランスジェニックSMNの発現はsmn変異体の移動力を有意に変化させることはなかった(図4E)。対照的に、chニューロンにおけるSMNの発現は如何なるsmn変異表現型をもレスキューしなかった(図4D−G)。smn変異体の律動的運動出力、NMJ神経伝達の欠陥をレスキューし、筋肉成長を増加させるには、bdおよびI型mdニューロンにおいてのみSMNをレスキューすれば充分であることが、より小さなサブセットであるmdもしくはes感覚ニューロンで発現する追加のGal4ドライバー(図4A)を用いてわかった(図4D,F,G)。Cha−Gal4を用いて、CNSおよび末梢コリン作動性ニューロンの両方においてSMNを発現させると、移動力と筋肉サイズを含む全ての表現型が完全にレスキューされた(図4D−G)。これは、smn変異体の移動力を完璧に補正し、筋肉サイズを完全に復活させるためには、bdおよびI型md感覚ニューロンに加えて、CNS内に存在する別の少なくとももう一つ追加的なコリン作動性ニューロン集団においてSMNが復活しなければならないということを示している。ショウジョウバエ幼虫の運動回路への固有受容フィードバックにはbdおよびI型md感覚ニューロンの両方が必要であることが最近実証された(Cheng et al.,2010; Hughes and Thomas,2007)。これらのニューロンがSMNの枯渇により形態的な障害を受けるのかを判定するために、smn変異体における標識bdおよびI型mdニューロンの感覚もしくは軸索突起を調べたが、感覚プロセス(データ示さず)およびコントロールと同様にCNS内に突出しているこれらのニューロンの軸索において明らかな欠陥は発見されなかった(図4B,C)。従って、データは、固有受容性ニューロンのSMNが減るとその発達や連結性よりも機能に障害を与える可能性があることを示している。
Smn変異表現型は胚発生後にレスキューできる。
Smn変異表現型は胚発生後にレスキューできる。
ショウジョウバエ幼虫のニューロンは、孵化に先立つ胚発生24時間の間に発達し、連結して機能的になる(Baines,2006)。SMN枯渇がこの時期に神経系アセンブリーを妨害し得たかを判定するために、「ジーンスイッチ(geneswitch)」RU486−薬誘導性Gal4システムを用いてトランスジェニックSMNの一時的な回復をコントロールした。胚発生完了に続いてトランスジェニックSMNを発現することでsmn変異表現型をレスキューすることができたかを調べるために、ニューロン特異的elav−ジーンスイッチ(geneswitch)ドライバーを担持するsmn変異体幼虫およびコントロールを孵化直後、及び続く幼虫期を通じてRU486含有培地に曝した(図5A)。トランスジェニックSMN発現が誘発されなかった場合はsmn変異体単独の場合との違いはなかった(図5C−F)。対照的に、胚発生直後にSMN発現が誘発された場合は、3幼虫齢の筋肉サイズ、移動力、律動的運動出力および運動ニューロンeEPSP振幅はコントロール動物と区別がつかなかった(図5B−F)。この結果により、胚発生後のSMN発現回復は、運動回路アセンブリーに持続的欠陥を有さないsmn変異体をレスキューすることができるということが立証された。
smn変異体の神経系統におけるSMN発現を漸進的に幼虫期後期まで延ばした。胚孵化より48もしくは96時間後にトランスジェニックSMNをsmn変異体に誘発した場合、コントロールに比べて筋肉容積、運動リズム欠陥および移動力が部分的にしか回復されていない表現型中間体が得られた(図5C−D)。対照的に、smn変異体におけるNMJ eEPSP振幅は、48時間のSMN発現だけで完全にコントロールレベルにまで回復した(図5B,F)。これらの結果は、SMN回復のタイミングに対する示差的表現型感受性を示すもので、NMJ神経伝達物質は後の段階であってもSMNレベルを上昇させることで完全に補正される一方、移動力、運動リズムおよび筋肉成長のためにはより早い時期に、より長い時間高いSMNレベルにさらす必要があった。
コリン作動性ニューロン活性の阻害はSMN枯渇の態様を模倣する。
コリン作動性ニューロン活性の阻害はSMN枯渇の態様を模倣する。
ショウジョウバエ胚発生の間、運動ニューロンへのコリン作動性入力を完全に取り除くと、運動ニューロンの過剰興奮性および神経伝達増加を生じる(Baines et al.,2001)。smn変異体における運動ニューロン特性における非自律的変化は、運動回路におけるコリン作動性ニューロンからの不完全な興奮性入力によって説明されるかもしれないとの仮説が立てられた。全てのコリン作動性ニューロン活性の完全なる喪失もしくは阻害は胚致死性を生じる(Kitamoto et al.,2000)。この仮説を試すために、コリン作動性ニューロンにおける神経伝達を部分的に阻害するようデザインされたトランスジェニックツールを採用した。膜脱分極を阻害するヒト内向き整流チャンネルKir2.1を中等度レベルで発現している系統(Paradis et al.,2001)もしくはシナプスN−型電位開口型カルシウムチャンネルを阻害する、メンブレンテザー Plectreurys毒素II(PLTXII)を発現する系統(B.C.,Michael Nitabach and B.D.M,未出版)を用いた。このアプローチの有効性を判定するために、まず、これらの導入遺伝子をOK6−Gal4を用いて運動ニューロンのみに発現させた。Kir2.1はeEPSP振幅を32%減少させ(P<0.001)、一方PLTXII発現はeEPSP振幅を96%減少させ(P<0.001)、両導入遺伝子は神経伝達を部分的に阻害できることがわかった。
コリン作動性ニューロン機能の阻害が運動システムにもたらす影響を調べるために、Cha−Gal4を用いてKir2.1もしくはPLTXIIを野生型動物のコリン作動性ニューロンで発現させた。どちらの導入遺伝子のコリン作動性ニューロンにおける発現も筋肉表面積には効果がなかった(図6C)。しかしながら、これらの導入遺伝子の発現は、移動力をそれぞれ41%(P<0.001)と42%(P<0.001)も有意に阻害した(図6D)。それらはまた自発的律動的運動活性を乱し、平均スパイク間インターバルを54%(P<0.05)もしくは59%(P<0.05)増加させた(図6B,E)。重要なことは,コリン作動性ニューロン機能の阻害がグルタミン酸作動性運動ニューロンのNMJにおけるeEPSP振幅も増加させたということである(図6A,F)。コリン作動性ニューロンにおけるKir2.1発現はNMJ eEPSP振幅を50%増加させ(P<0.001)、PLTX発現は45%増加させた(P<0.001)(図6F)。従って、smn変異体における機能が低下した運動回路内のコリン作動性ニューロンと同様に、コリン作動性ニューロン活性の阻害は、運動ニューロンの神経伝達物質放出特性に及ぼす非細胞自律的効果を含む多数のsmn変異体の特徴を再現した。
実施例4. ニューロンの興奮性の増加はsmn変異表現型をレスキューする。
実施例4. ニューロンの興奮性の増加はsmn変異表現型をレスキューする。
smn変異体における運動回路は機能的欠損を有するという仮説に基づいて、これらの動物においてコリン作動性ニューロンの興奮性を増加させると運動ネットワーク活動を増加させることができ、smn変異表現型を変えることができるかを判定するために実験が行われた。ドミナントネガティブ(SDN)導入遺伝子でシェイカー(Sh)IA型外向きK+電流を阻害すると膜興奮性を増強し、シナプス終末におけるeEPSPの振幅および持続時間を増加させる(Mosca et al.,2005)。K+チャンネル活性を阻害する遺伝学的手法はsmn変異表現型に有益であったので、K+チャネルの薬理学的アンタゴニストも有効になりうるかを調べる実験を行った。4−アミノピリジン(4−AP)(FDA認可された脊椎動物用の電位活性型低分子阻害剤)(Hayes, 2007)およびショウジョウバエK+チャネル(Wicher et al.,2001)を調べた。幼虫の培地に4−APを加え、化合物を滴定して、野生型幼虫が致死性なしに薬に耐えうる最大用量(2mM)を同定した。幼虫期間を通じて4−APにさらすことで得られる効果をコントロールおよびsmn変異体の両方において調べた。コントロール動物において、4−APは筋肉サイズには効果がなかったが幼虫の移動力を35%減少させ(P<0.01)、律動的運動活性を40%低下させ(P<0.01)、NMJ eEPSP振幅を21%減少させ(P<0.001)、この用量は軽度の全身毒性を示した(図7D−G)。それにもかかわらず、smn変異体は幼虫期間を通じて4−AP含有培地で生育し、筋肉表面積が未処置smn変異体に比べて66%増加した(P<0.001)(図7D)。移動力も55%増加し(P<0.05)、4−AP処理したコントロールと有意に異なることはなかった(図7E)。smn変異体の律動的運動活性における欠陥は実質的に改善され、スパイク間インターバルの異常な増加は減少し、4−AP処理したコントロールよりたった31%多いだけであった(p<0.001)(図7F)。最後に、4−AP処理したsmn変異体のNMJ EPSP振幅増加は27%減少し(P<0.001)、4−AP処理したコントロールと有意に異なることはなかった(図7G)。従って、K+チャネルの薬理学的な阻害は遺伝的阻害同様、SMN枯渇がもたらす重大な結果である運動回路の興奮性障害に伴って起こるsmn変異表現型にとって確実に有益でありうる。
本発明を具体的な態様を参照して記載した。しかしながら、本発明のより広い精神と範囲を逸脱することなく、様々な修正および変更をなし得ることは明らかであろう。従って、本明細書や図面は限定する意味においてではなく説明を意図した意味において考慮する。上に記載した実験例および以下の実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで本出願を通じて引用されたすべての文献、係属中の特許出願や公開された特許に記載された内容は、ここに引用されたことによって、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。特異なタームを採用しているが、特に記載していない場合それらはその分野で用いられるのと同様の意味で使われている。
参考文献
Claims (16)
- 脊髄性筋萎縮症の対象を同定する工程および
K+チャネル遮断薬の治療有効量を対象に投与する工程
を含む方法。 - K+チャネル遮断薬が、広域ベースのK+チャネル遮断薬である請求項1に記載の方法。
- K+チャネル遮断薬が、4−アミノピリジンである請求項1に記載の方法。
- K+チャネル遮断薬が、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(メチルアミノ)ピリジンおよび4−(アミノメチル)ピリジンからなる群より選ばれる請求項1に記載の方法。
- 治療有効量が、投与あたり約0.5mg〜100mgの範囲の量であり、当該遮断薬は1日1〜3回投与される請求項1に記載の方法。
- 治療有効量が、投与あたり約10mgである請求項1に記載の方法。
- K+チャネル遮断薬が、経口投与用に製剤化されている請求項1に記載の方法。
- 治療有効量が、投与あたり約0.5mg〜10mgの量である請求項1に記載の方法。
- 4−APならびに4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(メチルアミノ)ピリジンおよび4−(アミノメチル)ピリジンからなる群より選ばれる一つ以上の剤を含む医薬製剤。
- 4−APおよび一つ以上の剤が、血液脳関門通過送達用リポソームに製剤化される請求項8の医薬製剤。
- 血液脳関門通過送達用リポソームに製剤化された4−APを含む医薬製剤。
- SMAが、1型SMAである請求項1に記載の方法。
- SMAが、2型SMAである請求項1に記載の方法。
- SMAが、3型SMAである請求項1に記載の方法。
- K+チャネル遮断薬が、硬膜外静脈叢、脳、脊椎または髄液へ直接投与される請求項1に記載の方法。
- K+チャネル遮断薬が、ドフェチリド、ソタロール、イブチリド、アジミリド、ブレチリウム、クロフィリウム、E−4031、ニフェカラント、テジサミルおよびセマチリドからなる群より選ばれる請求項1に記載の方法。
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