JP2015231216A - 光学ユニット及び車載用撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本件発明は、外環境の変化によらず長期間に渡って良好な画質の画像を得ることができる光学ユニットを提供することを課題とする。【解決手段】上記課題を解決するため、開口部11を有する筐体10と、筐体10内に収容されると共に開口部11から露出する光学素子面31を有する光学系とを備え、当該光学素子面31と、当該光学素子面31の周囲とには、水に対する接触角が20?以下の親水層51が設けられたことを特徴とする光学ユニットを提供する。【選択図】図3
Description
本件発明は、光学ユニット及び光学ユニットを適用した車載用撮像装置に関する。
従来より、自動車やバイク等の移動体の車両の後方等には、ユーザの死角となる車両後方の視界を確保するためのバックカメラ等のビューカメラが搭載されている。また、このような視界確保のためのビューカメラに加えて、車両の前方や側方に、運転支援のため車線や障害物を検知するための画像認識用カメラや、夜間の視界を確保するための赤外線カメラ等が搭載されるようになってきている。近年、重要事故を未然に防止する観点から、車載用撮像装置の搭載が義務付けられる方向にあり、ユーザの安全確保、運転支援を行う上で、車載用撮像装置により取得される画像データは今後益々重要になってくる。
このように、車載用撮像装置により取得された画像データの重要性が増すにつれて、車載用撮像装置に対しては長期間の安定動作が要求されるのは勿論、天候など外環境の変化によらず長期間に良好な画質の画像データを渡って安定的に取得可能であることが要求される。しかしながら、車載用撮像装置は車両の外部に配置されることが多く、レンズ面に雨雪等の水滴や、砂埃等の汚れが付着する場合があり、レンズ面に水滴や汚れ等が付着すると良好な画質の画像データを得ることができなくなる。
そこで、特許文献1に記載の車載用撮像装置では、防水性を有する透明なケーシング内に光学ユニット等を収納することが行われている。そして、ケーシングに対して撥水処理を施すことにより、ケーシング表面に雨水等を付着させにくくし、雨天時にも良好な状態で当該車載用撮像装置による撮像を可能としている。
また特許文献2には、撮像装置の前面ガラスに高圧の空気を吹き付ける圧縮空気発生ユニットを備えた車載用撮像装置が開示されている。当該車載用撮像装置によれば、圧縮空気発生ユニットを遠隔操作等することができ、雨天時等に撮像装置の前面ガラスに高圧の空気を吹き付けることにより、前面ガラスに付着した水滴、泥、汚れ等を取り除くことができるとしている。
しかしながら、特許文献1に記載されるように、例えば、ケーシングの表面等に撥水処理を施すという方法では、撥水膜の表面に付着した水滴の接触角は120°程度であり、撥水膜の表面から完全に除去するのは困難である。その結果、ケーシング等の表面に水滴が付着した状態で撮像が行われると、被写体像の一部に歪みが生じるなど画質が低下する。また、撥水膜表面に付着した水滴が撥水膜上で乾燥すると、水滴に含まれていた粉塵等によりケーシング等の表面に汚れが付着することになる。ケーシングの表面等に撥水処理を施して、重力により水滴を完全にケーシングの表面等から除去するようにするには、水に対する接触角が150°以上の撥水膜を設ける必要がある。しかし、このような超撥水膜を実現することは困難であり、且つ、このような超撥水性を長期に渡って維持することは極めて困難である。
一方、特許文献2に記載されるように、圧縮空気発生ユニットを設け、圧縮空気発生ユニットにより撮像装置の前面ガラスに高圧の空気等を吹き付ける方法によれば、レンズ表面に付着した水滴等を完全に除去することはできる。しかしながら、特許文献2に記載の方法では、光学ユニットとは別に、圧縮空気発生ユニットが必要になる。上述したとおり、近年、種々の車載用撮像装置が車両に設けられる傾向にあり、各車載用撮像装置毎にこのような圧縮空気発生ユニットを設けることは、コストやスペースの観点から現実的ではない。さらに、このようなメカニカルな方法では、故障リスクを常に考慮する必要がある。このため当該機能の維持管理が煩雑になると共に、圧縮空気ユニットが故障した場合には、レンズ面に付着した水滴等を除去することができない。従って、全ての車種に特許文献2に記載の車載用撮像装置を搭載する事は非現実的である。
そこで、本件発明は、外環境の変化によらず長期間に渡って良好な画質の画像を得ることができる光学ユニットを提供することを課題とする。
本発明者等は、鋭意研究を行った結果、以下の光学ユニットを採用することで上記課題を達成するに到った。
本件発明に係る光学ユニットは、開口部を有する筐体と、当該筐体内に収容されると共に当該開口部から露出する光学素子面を有する光学系と、を備えた光学ユニットであって、当該光学素子面と、当該光学素子面の周囲には、水に対する接触角が20°以下の親水層が設けられたことを特徴とする。
本件発明に係る光学ユニットにおいて、前記光学系は鏡筒に収容された状態で、筐体内に収容されており、前記光学素子面の周囲には、当該鏡筒を前記筐体内に収容したときに、前記開口部から露出する鏡筒の露出部分が含まれるものとする。
本件発明に係る光学ユニットにおいて、前記親水層は、光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする層であることが好ましい。
本件発明に係る光学ユニットにおいて、前記親水層は、有機金属化合物を主成分とする層であることが好ましい。
本件発明に係る光学ユニットにおいて、表面に親水性の高い官能基を有する層であることが好ましい。
本件発明に係る光学ユニットにおいて、前記親水層は、光学干渉層として設計された光学薄膜であることが好ましい。
本件発明に係る光学ユニットにおいて、前記光学素子面には、蒸着積層膜が設けられており、当該蒸着積層膜と、当該蒸着積層膜表面に積層された前記親水層とにより、光学素子面に入射する光の反射を防止する反射防止膜として機能することが好ましい。
本件発明に係る光学ユニットにおいて、前記光学素子面に設けられた親水層と、前記光学素子面の周囲に設けられた親水層とは、同じ材質の層であることが好ましい。
本件発明に係る光学ユニットは車両に搭載される車載用撮像装置であることが好ましい。
本件発明によれば、筐体の開口部から露出する光学素子面と、例えば、筐体の開口部の周囲等の光学素子面の周囲とに、水に対する接触角が20°以下の親水層が設けられているため、当該親水層に接触した水滴は光学素子面に広がる。当該光学素子面が地面等に対して、垂直又は傾斜している場合、光学素子面に広がった水は、光学素子面の周囲に設けられた親水層側に直ちに広がり、重力により光学素子面から除去される。豪雨等により大量の水滴が光学素子面に連続的に接触する場合も、光学素子面の濡れ性が極めて高いため、光学素子面において水滴が均一な厚みで広がり、光学素子面において球状の水滴となって留まることなく、光学素子面周囲に流れる。このように、光学素子面には球状の水滴が付着しないため、当該球状の水滴がレンズとなって被写体像に局部的な歪みが生じたり、当該レンズユニット本来の画角では撮像することのできない被写体像が写り込むのを防止することができる。従って、本件発明によれば、天候等の外環境の変化によらず長期間に渡って良好な画質の画像を得ることができ、車載用撮像装置等の屋外で使用される撮像装置に好適である。
1.光学ユニットの構成
以下、本件発明に係る光学ユニットの実施の形態を説明する。本実施の形態では、図1及び図2に示す光学ユニット100を例に挙げて説明する。図1に示す光学ユニット100は、車載用撮像装置等の屋外で車両等に設置されて使用されるカメラユニット(撮像装置)であり、筐体10内に鏡筒20、基板40、受光素子41等が収容されている。鏡筒20には、少なくとも1枚のレンズ30(光学素子)から構成される光学系が収容される。光学系の最も被写体側に配置されるレンズ30の被写体側のレンズ面31(光学素子面)は、鏡筒20の前面側において露出すると共に、筐体10に形成された開口部11からこのレンズ面31及び鏡筒20の前面側の一部は露出している。このレンズ面31とレンズ面31の周囲には、水に対する接触角が20°以下の親水層51が設けられている(図3〜図8参照)。但し、本実施の形態において、レンズ面31の周囲とは、筐体10の開口部11の周囲及び、筐体10の開口部11から露出する鏡筒20の露出部を含む。
以下、本件発明に係る光学ユニットの実施の形態を説明する。本実施の形態では、図1及び図2に示す光学ユニット100を例に挙げて説明する。図1に示す光学ユニット100は、車載用撮像装置等の屋外で車両等に設置されて使用されるカメラユニット(撮像装置)であり、筐体10内に鏡筒20、基板40、受光素子41等が収容されている。鏡筒20には、少なくとも1枚のレンズ30(光学素子)から構成される光学系が収容される。光学系の最も被写体側に配置されるレンズ30の被写体側のレンズ面31(光学素子面)は、鏡筒20の前面側において露出すると共に、筐体10に形成された開口部11からこのレンズ面31及び鏡筒20の前面側の一部は露出している。このレンズ面31とレンズ面31の周囲には、水に対する接触角が20°以下の親水層51が設けられている(図3〜図8参照)。但し、本実施の形態において、レンズ面31の周囲とは、筐体10の開口部11の周囲及び、筐体10の開口部11から露出する鏡筒20の露出部を含む。
車載用撮像装置には、バックモニタ等のビューカメラ、車線確認或いは障害物確認のための運転支援カメラ、夜間等の視界確保のための赤外線カメラ等、各種の用途で各種の態様があるが、いずれも通常、車両の外側に設置されて使用される。このため、雨天時には、水滴(雨滴)がレンズ面31に対して直接打ち付けられることになる。レンズ面31に水滴が球状に付着した場合、この水滴を通過した光がレンズ面31に入射すると、被写体像に局部的な歪みが生じたり、当該光学ユニット100本来の画角では撮像することのできない被写体像が写り込むことになる。この場合、天候等の外環境の変化によって得られる画質が変化し、長期間に渡って良好な画像を得ることが困難になる。そこで、本件発明では、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に上記親水層51を設けることにより、これらの課題を解決するものとした。以下、図1及び図2に示す車載用撮像装置としての光学ユニット100を例に挙げて、光学ユニット100の構成を説明した後に、上記親水層51について詳細に説明するものとする。
(1)筐体10
まず、筐体10の構成及び筐体10内の構成について説明する。図1に示す例では、筐体10は、開口部11を備えた前面側筐体10aと、後面側筐体10bとを備え、前面側筐体10aと後面側筐体10bとが接合されることにより、略立体形状を呈する。筐体10内には、光学系を収容する鏡筒20は支持板22(図2参照)を介して筐体10の内側に形成された突起部(図示略)に固定される。また、基板40には受光素子41が取り付けられており、受光素子41の受光面が前面側に配置されるように基板40が筐体10の内側に形成された突起部(図示略)に固定される。前面側筐体10aと、後面側筐体10bとの接合部10cにはOリング等が設けられ、前面側筐体10aと後面側筐体10bとを接合したときに、接合部10cから筐体10の内側に水や埃等が侵入しないように構成されている。但し、本件発明において、筐体10の上記開口部11を備える面、すなわちレンズ面31に被写体側から光が入射する側の面を前面と称するものとする。
まず、筐体10の構成及び筐体10内の構成について説明する。図1に示す例では、筐体10は、開口部11を備えた前面側筐体10aと、後面側筐体10bとを備え、前面側筐体10aと後面側筐体10bとが接合されることにより、略立体形状を呈する。筐体10内には、光学系を収容する鏡筒20は支持板22(図2参照)を介して筐体10の内側に形成された突起部(図示略)に固定される。また、基板40には受光素子41が取り付けられており、受光素子41の受光面が前面側に配置されるように基板40が筐体10の内側に形成された突起部(図示略)に固定される。前面側筐体10aと、後面側筐体10bとの接合部10cにはOリング等が設けられ、前面側筐体10aと後面側筐体10bとを接合したときに、接合部10cから筐体10の内側に水や埃等が侵入しないように構成されている。但し、本件発明において、筐体10の上記開口部11を備える面、すなわちレンズ面31に被写体側から光が入射する側の面を前面と称するものとする。
また、本実施の形態の光学ユニット100では、開口部11の周囲は、筐体10面から短筒状に突出する短筒部11aと、この短筒部11aの先端に設けられた円環状の被覆部11bとを備えている。鏡筒20を筐体10内に収容したとき、鏡筒20の前面側が筐体10の前面から僅かに突出し、鏡筒20の前面側はこの短筒部11a及び被覆部11bにより被覆される。但し、開口部11の周囲の形状は、図1に示す例に限定されるものではなく、開口部11の周囲が筐体10の前面から突出している必要はなく、筐体10の前面とレンズ面を露出させるための開口とが同一面上に形成されていてもよい。
筐体10の材質は特に限定されるものではなく、例えば、金属製、セラミックス製、ガラス製、樹脂製の筐体10を用いることができる。また、樹脂と異素材との複合樹脂材料等からなる筐体10であってもよい。例えば、筐体10の材質が金属である場合、当該光学ユニット100が屋外で使用されること等を考慮すると、アルミ、アルミ合金、ステンレス、真鍮等であることが好ましく、耐腐食性のある金属又は、表面に耐腐食性処理が施された金属からなることが好ましい。また、セラミックスとしては、陶器、ファインセラミック等が挙げられる。樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、AS樹脂、ABS樹脂、PET、ポリアミド、ポリスチレン、ポリカーボネイト、アクリル、ポリアセタール等が挙げられる。さらに、複合樹脂材料としては、これらの例示した樹脂等にガラスフィラーや黒色顔料を混合させたものや、数種類の樹脂を混合したコンポジット材料等を用いることができる。これらの中でも、精度の良い精密加工が可能であるという観点から、筐体10の材質としては、射出成型可能な熱可塑樹脂であることが好ましい。但し、上述したとおり、筐体10の材質は限定されるものではなく、当該光学ユニット100の用途や、当該光学ユニット100の意匠等に応じて、適宜適切な材質とすることができる。
(2)光学系
次に、光学系について説明する。光学系は、上述のとおり、少なくとも1枚のレンズ30(上記レンズ面31を有するレンズ30)を含む。光学系が複数のレンズにより構成される場合、各レンズはそのコバ形状、あるいはレンズ間に設けられるスペーサー等によって、精密に位置決めされる。鏡筒20内において、各レンズは接着、融着、レンズ枠等の手段によって、鏡筒20に固定される。また、鏡筒20内にレンズ駆動モータ等を有するレンズ移動機構等を設け、光学系を構成するレンズのうち、一部のレンズを移動可能に構成してもよい。本件発明において、光学系の構成、レンズ(30)の固定の方法等は特に限定されるものではない。また、本実施の形態では、当該光学系は鏡筒20内に収容されるが、当該光学系は筐体10内に直接収容されてもよい。
次に、光学系について説明する。光学系は、上述のとおり、少なくとも1枚のレンズ30(上記レンズ面31を有するレンズ30)を含む。光学系が複数のレンズにより構成される場合、各レンズはそのコバ形状、あるいはレンズ間に設けられるスペーサー等によって、精密に位置決めされる。鏡筒20内において、各レンズは接着、融着、レンズ枠等の手段によって、鏡筒20に固定される。また、鏡筒20内にレンズ駆動モータ等を有するレンズ移動機構等を設け、光学系を構成するレンズのうち、一部のレンズを移動可能に構成してもよい。本件発明において、光学系の構成、レンズ(30)の固定の方法等は特に限定されるものではない。また、本実施の形態では、当該光学系は鏡筒20内に収容されるが、当該光学系は筐体10内に直接収容されてもよい。
また、当該光学系を構成するレンズ(30)は、ガラス製であってもよく、プラスチック製であってもよく、その材質は特に限定されるものではない。例えば、ガラス製の球面レンズ(30)の表面に樹脂製の非球面フィルムが貼り合わされた複合レンズや、曲率半径の異なる二つのレンズを接合した接合レンズ等であってもよい。また、各レンズの表面には、防塵、防汚等の目的で各種のコーティングが施されてもよい。
(3)鏡筒20
鏡筒20は円筒形状を呈し、その前面には上記レンズ開口21が設けられている。光学系を構成するレンズのうち、最も被写体側に配置されるレンズ30、いわゆる前玉レンズの外側のレンズ面31は、このレンズ開口21から露出し、被写体光が当該前玉レンズを介して鏡筒20内に入射するように構成されている。鏡筒20のレンズ開口21の周囲には、鏡筒20内に収容されたレンズ30の外周部分、すなわち前玉レンズの有効径の外側の部分を被覆する円環状の被覆部23が設けられている。例えば、熱可塑性樹脂製の鏡筒20の場合、鏡筒20内に各レンズを組み付けた後、鏡筒20に熱が加えられ、前玉レンズ30と鏡筒20の前面側(被覆部を含む)とが熱により加締められる。この熱加締を行うことにより、前玉レンズ30の外周部分と鏡筒20の前面側とが密着され、鏡筒20の内側へ水や埃等が侵入しないように構成されている。このとき、鏡筒の被覆部23と、レンズ30との間に押え環等を介在させてもよいし、鏡筒20と前玉レンズ30との間を接着剤により封止してもよい。
鏡筒20は円筒形状を呈し、その前面には上記レンズ開口21が設けられている。光学系を構成するレンズのうち、最も被写体側に配置されるレンズ30、いわゆる前玉レンズの外側のレンズ面31は、このレンズ開口21から露出し、被写体光が当該前玉レンズを介して鏡筒20内に入射するように構成されている。鏡筒20のレンズ開口21の周囲には、鏡筒20内に収容されたレンズ30の外周部分、すなわち前玉レンズの有効径の外側の部分を被覆する円環状の被覆部23が設けられている。例えば、熱可塑性樹脂製の鏡筒20の場合、鏡筒20内に各レンズを組み付けた後、鏡筒20に熱が加えられ、前玉レンズ30と鏡筒20の前面側(被覆部を含む)とが熱により加締められる。この熱加締を行うことにより、前玉レンズ30の外周部分と鏡筒20の前面側とが密着され、鏡筒20の内側へ水や埃等が侵入しないように構成されている。このとき、鏡筒の被覆部23と、レンズ30との間に押え環等を介在させてもよいし、鏡筒20と前玉レンズ30との間を接着剤により封止してもよい。
2.レンズ面31及びレンズ面31の周囲における層構成
次に、上記レンズ面31及びレンズ面31の周囲に設けられる親水層51及び、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に設けられる各種層構成について説明する。なお、レンズ面31の周囲とは上述したとおりである。
次に、上記レンズ面31及びレンズ面31の周囲に設けられる親水層51及び、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に設けられる各種層構成について説明する。なお、レンズ面31の周囲とは上述したとおりである。
本件発明では、少なくともレンズ面31及びレンズ面31の周囲に水に対する接触角が20°以下の親水層51(図3〜図6参照)が設けられていればよい。従って、筐体10前面の全面に当該親水層51が設けられていてもよく、筐体10全面等に親水層51が設けられていてもよい。本件発明では、当該親水層51をレンズ面31及びレンズ面31の周囲に設けることにより、レンズ面31に水滴が付着した場合、その接触角が20°以下となるため水滴が球状になることがない。例えば、当該レンズ面31が地面に対して垂直又は傾斜している場合、レンズ面31に広がった水滴はレンズ面31の周囲の親水層51の側に直ちに移行し、レンズ面31及びレンズ面31の周囲から速やかに水滴を排除することを目的に設けられる。これにより、被写体光が球状の水滴に入射して、意図しない角度で屈折してレンズ面31に入射することを防止し、画像の歪みが生じるのを防止している。従って、当該目的を達成する上では、筐体10の全面等の広い範囲に親水層51を設ける必要はなく、筐体10の開口部11から露出するレンズ面31の有効径の外側を取り囲む一定の範囲内に親水層51が設けられれば足りる。
親水層51は、水に対する接触角が20°以下となるような水に対する濡れ性の高い層であればよく、当該接触角は、15°以下であることがより好ましく、10°以下であることがさらに好ましい。当該接触角が小さい方が、親水層51表面における水の塗れ性が高く、親水層51の表面に水滴が付着しても、親水層51の表面に水滴をより速やかに広げることができ、レンズ面31等の表面に付着した水滴により、被写体光が意図せず屈折するのをより有効に防止することができる。また、当該接触角が低いほど、レンズ面31等の表面において水滴が薄く均一に広がるため、豪雨時のように大量の水滴がレンズ面31に連続的に接触する場合においても、レンズ面31表面に均一な厚みの薄い水の膜を形成することができ、レンズ面31に球状の水滴が大量に付着し、障害物等の周囲の状況を撮像することができなくなるといった事態を避けることができる。
親水層51は、例えば、有機金属化合物を主成分とする層や、表面にベタイン基やシラノール基等の親水性の高い官能基を有する層とすることができる。これらの層は、その表面に水が接触したとき、接触角を20°以下であればよく、例えば、層形成後に親水化処理が施されることにより、水に対する接触角が20°以下になるようにされたものであってもよい。
また、本件発明において、レンズ面31に設ける親水層51と、レンズ面31の周囲に設ける親水層51とは、同じ方法で成膜された同じ材質の親水層51であることが好ましい。レンズ面31及びレンズ面31の周囲に同じ方法で成膜された同じ材質の親水層51を設けることにより、例えば、筐体10内に鏡筒20を収容した後に、鏡筒20から露出するレンズ面31及び筐体10の開口部11や鏡筒20の被覆部23等のレンズ面31の周囲に同時に親水層51を形成することもでき、処理の簡素化を図ることができる。また、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に同じ親水層51を設けることで、レンズ面31からレンズ面31の周囲に速やかに水滴を移行させることができ、大量の水滴がレンズ面31に付着するような環境下においてもレンズ面31に球状に水滴が付着したり、レンズ面の周囲に水滴が溜まるのを防止することができる。さらに、レンズ面31とレンズ面31の周囲に設けた親水層51の経年劣化の程度を等しくすることができ、メンテナンスの面においても好ましい。
さらに、本件発明において、レンズ面31やレンズ面31の周囲に親水層51を設ける際に、レンズ面31やレンズ面31の周囲に、これらの基材と、親水層51との密着性を向上させるための下地層52を設けることも好ましい。具体的には、レンズ30が硝子製であり、筐体10や鏡筒20が樹脂製である場合等、レンズ面31とレンズ面31の周囲とが異なる材質である場合、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に同じ材質の親水層51を密着性よく形成することができない場合がある。このような場合、レンズ面31及び/又はレンズ面31の周囲に、適宜、下地層52を設けることにより、材質の異なる場合であっても、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に同じ材質の親水層51をそれぞれの基材に対して密着性よく形成することができる。
また、レンズ面31に下地層52を設ける場合は、下地層52を基材と親水層51とを密着させる密着層としての機能だけでなく、下地層52と親水層51との積層膜を反射防止膜等の光学的な機能を有する層とすることが好ましい。また、レンズ面31には光学干渉層53を設け、当該光学干渉層53と親水層51との積層膜、或いは、下地層52、光学干渉層53及び親水層51の積層膜により反射防止膜等の光学的な機能を有する層としてもよい。
以下、親水層51、下地層52、光学干渉層53について順に説明するが、本件発明において、レンズ面31及びレンズ面31の周囲には少なくとも親水層51が設けられていればよく、下地層52及び光学干渉層53はそれぞれ任意の層構成である。また、基材とは、親水層51を設ける対象面を有するレンズ30、筐体10、鏡筒20等を指し、レンズ面31やレンズ面31の周囲に予め下地層52や光学干渉層53が設けられている場合、これらの下地層52や光学干渉層53を含めて基材と称する。
2−1.親水層51
(1)光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする層
まず、親水層51として、光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする層(以下、「光触媒層」と称する。)を設ける場合について説明する。ここで、光触媒機能を有する金属酸化物として、酸化チタンが知られている。当該親水層51として、この光触媒層を採用する場合は、特に、アナターゼ型酸化チタンを主成分とする層とすることが好ましい。
(1)光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする層
まず、親水層51として、光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする層(以下、「光触媒層」と称する。)を設ける場合について説明する。ここで、光触媒機能を有する金属酸化物として、酸化チタンが知られている。当該親水層51として、この光触媒層を採用する場合は、特に、アナターゼ型酸化チタンを主成分とする層とすることが好ましい。
当該光触媒層を基材の表面に形成する際には、スパッタリング法、RFスパッタリング法、EB蒸着法、イオンプレーティング法等を用いることができる。特に、プラスチック基材の表面に、酸化チタンを主成分とする光触媒層を成膜する際には、比較的低温で基材に成膜することができ、且つ、基材への損傷が少ないスパッタリング法やRFスパッタリング法を採用することが好ましい。
例えば、金属チタンをターゲットとした反応性スパッタリングや酸化チタンをターゲットとしたRFスパッタリング等により、酸化チタンを主成分とする光触媒層を基材の表面に形成することができる。このとき、基材の加熱温度は、プラスチック基材の場合は、基材の耐熱温度を超えない範囲で、室温(25℃)以上、好ましくは50℃以上とすることが好ましい。光触媒効果の高い酸化チタン薄膜を得るために基板の加熱温度は高い方が好ましい。従って、基材がガラス等の耐熱温度の高い基材を用いる場合は、基材の加熱温度を300℃程度であることが好ましく、250℃程度であることがより好ましい。
また、プラスチック基材の表面に、この光触媒層を直接設けた場合、光触媒機能を有する金属酸化物が光により活性化されてプラスチック基材の表面自体を浸食する場合がある。従って、プラスチック基材の表面に光触媒層を設ける場合には、プラスチック基材の表面に、二酸化ケイ素等の光触媒によって浸食されにくい、無機材料やシリコーン等の材料からなる保護層54を設けることが好ましい。例えば、二酸化ケイ素等を主成分とする保護層は真空雰囲気のスパッタリング装置内に基材を収容し、二酸化ケイ素からなるターゲットをスパッタリング等することにより得ることができる。また、シリコーンを主成分とする保護層は、例えば、湿式法等によりプラスチック基材の表面に形成することができる。このような光触媒によって浸食されにくい成分からなる保護層をプラスチック基材の表面に設け、保護層54上に光触媒層を設けることにより、プラスチック基材の表面が光触媒により浸食されるのを防止することができる。
(2)有機金属化合物を主成分とする層
親水層51として、有機金属化合物を主成分とする層(以下、有機金属化合物層)を設ける場合について説明する。なお、有機金属化合物とは、分子中に少なくとも一つの金属−炭素結合を有する化合物を指し、金属と有機基が金属−炭素の直接結合により結びついた化合物をいう。当該有機金属化合物としては、特に、有機ケイ素化合物層又は4族の金属元素を含む有機金属化合であることが好ましい。4族の金属元素を含む有機金属化合物としては、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物が挙げられ、これらの酸化物、すなわち有機金属酸化物を主成分とする親水層とすることも好ましい。これらの有機金属化合物を主成分とする層を基材の表面に成膜する際には、真空成膜法及び湿式成膜法のいずれも好適に用いることができる。
親水層51として、有機金属化合物を主成分とする層(以下、有機金属化合物層)を設ける場合について説明する。なお、有機金属化合物とは、分子中に少なくとも一つの金属−炭素結合を有する化合物を指し、金属と有機基が金属−炭素の直接結合により結びついた化合物をいう。当該有機金属化合物としては、特に、有機ケイ素化合物層又は4族の金属元素を含む有機金属化合であることが好ましい。4族の金属元素を含む有機金属化合物としては、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物が挙げられ、これらの酸化物、すなわち有機金属酸化物を主成分とする親水層とすることも好ましい。これらの有機金属化合物を主成分とする層を基材の表面に成膜する際には、真空成膜法及び湿式成膜法のいずれも好適に用いることができる。
真空成膜法によりレンズ面31等の基材の表面に上記有機金属化合物層を成膜する際には、物理蒸着法及び化学蒸着法のいずれも好適に用いることができる。物理蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法を挙げることができる。また、化学蒸着法としては、CVD法(プラズマCVD法を含む)を挙げることができる。
化学蒸着法とは、薄膜構成材料の構成元素を含む化合物を原料ガスとし、当該原料ガスをチャンバーチャンバー内に供給し、気相または基材表面での化学反応により薄膜を形成する方法をいう。ここで、薄膜構成材料とは、親水層51の構成材料をいう。すなわち、親水層51として有機金属化合物層を形成する場合、薄膜構成材料としてその有機金属化合物の構成元素を含む化合物を原料ガスとする。CVD法によれば、酸素ガスを導入しながら成膜することにより、酸素を含まない化合物を上記薄膜構成材料として用いた場合であっても、有機金属酸化物を主成分とする層を得ることができる。
例えば、有機金属化合物を主成分とする親水層51を化学蒸着法により成膜する際には、特に、プラズマCVD法を採用することが好ましい。プラズマCVD法によれば、上述したように、親水層51を成膜した後、チャンバーをリークせずに親水層51の表面にプラズマを照射して、親水層51の表面の濡れ性を向上することができる。従って、プラズマCVD法によれば、水に対する接触角のより小さい、濡れ性の良好な親水層51を効率的に得ることができる。
また、有機ケイ素化合物を主成分とする親水層51を成膜する場合、有機ケイ素化合物の構成元素を含む化合物を上記薄膜構成材料として用いる。このとき、酸素ガスを導入しながらCVD法により基材上に親水層51を成膜すると、有機ケイ素酸化物を主成分とする親水層51を得ることができる。
さらに、4族の金属元素を有する有機金属化合物を主成分とする親水層51を成膜する場合、4族の金属元素を有する有機金属化合物の構成元素を含む化合物を上記薄膜構成材料として用いることができる。具体的には、有機チタン化合物、有機ジルコニウム化合物等を用いることができ、有機チタン酸化物、有機ジルコニウム酸化物を用いることが好ましい。このとき、真空成膜法によりこれらの有機金属化合物層を基材上に設けた後、大気圧プラズマ処理、減圧プラズマク処理、UV洗浄処理等を施して、当該有機金属化合物層の表面の濡れ性を向上するための改質処理を施すことにより、当該有機金属化合物層の表面の水に対する接触角がより小さくなるように親水処理を施してもよい。
(3)表面に親水性の高い官能基を有する層
次に、親水層51として、表面にベタイン基やシラノール基等の親水性の高い官能基を有する層について説明する。このような表面に親水性の高い官能基を有する層は、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルリン酸ナトリウム、アミン脂肪酸塩、塩化アルキルアンモニウム、アミノ酢酸ベタイン、脂肪酸エステル、アルキルエーテル等の親水性官能基を持つ界面活性剤、表面改質剤、シランカップリング剤等の塗工液を従来公知の湿式成膜法により基材の表面に塗布することにより、基材の表面にこれらの親水性の官能基を有する層を形成することができる。基材の表面にこれらの塗工液を塗布する方法として、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の湿式成膜法の中から、適宜、適切な方法を選定すればよい。
次に、親水層51として、表面にベタイン基やシラノール基等の親水性の高い官能基を有する層について説明する。このような表面に親水性の高い官能基を有する層は、例えば、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルリン酸ナトリウム、アミン脂肪酸塩、塩化アルキルアンモニウム、アミノ酢酸ベタイン、脂肪酸エステル、アルキルエーテル等の親水性官能基を持つ界面活性剤、表面改質剤、シランカップリング剤等の塗工液を従来公知の湿式成膜法により基材の表面に塗布することにより、基材の表面にこれらの親水性の官能基を有する層を形成することができる。基材の表面にこれらの塗工液を塗布する方法として、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の従来公知の湿式成膜法の中から、適宜、適切な方法を選定すればよい。
また、他の方法として、例えば、シラノール基を豊富に有するコロイダルシリカやシルセスキオキサン等に、テトラエトキシシラン等のアルコキシシランと水とを加え、ゾルゲル法により、表面にシラノール基を有する層を形成することができる。
更に、アナタース型酸化チタンの様な光触媒機能を持つ金属酸化物の微粒子の分散液を基材の表面にコーティングすることによっても、表面に親水性の高い官能基を有する層を形成することができる。
以上説明した親水化処理を基材の表面に施すことにより、基材の表面にベタイン基やシラノール基等の親水性の極めて高い官能基を豊富に有する層を形成することができる。当該親水層51は水に対する強い濡れ性、すなわち超親水性を示し、表面に水が接触した場合、その接触は10°以下になる。
2−2.下地層52
次に、下地層52について説明する。上述したとおり、下地層52は任意の層構成であり、上記親水層51は基材の表面に直接設けても良いが、基材や親水層51の材質に応じて、適宜、下地層52を設け、基材の表面と親水層51との密着性を向上させることが好ましい。基材と親水層51との双方に対して密着性の良好な層であれば、下地層52の材質は特に限定されるものではなく、次に説明する有機金属下地層或いは無機下地層等を採用することができる。これらの下地層52を設けることにより、基材の表面と親水層51との密着性を良好にすることができる。
次に、下地層52について説明する。上述したとおり、下地層52は任意の層構成であり、上記親水層51は基材の表面に直接設けても良いが、基材や親水層51の材質に応じて、適宜、下地層52を設け、基材の表面と親水層51との密着性を向上させることが好ましい。基材と親水層51との双方に対して密着性の良好な層であれば、下地層52の材質は特に限定されるものではなく、次に説明する有機金属下地層或いは無機下地層等を採用することができる。これらの下地層52を設けることにより、基材の表面と親水層51との密着性を良好にすることができる。
(1)有機金属下地層
例えば、親水層51として上記親水性の官能基を有する層を湿式成膜法により形成する場合、下地層52として、有機金属化合物を主成分とする下地層(有機金属下地層)を設けることが好ましい。当該有機金属下地層としては、上述した親水層51としての有機金属化合物層と同様の層とすることができる。
例えば、親水層51として上記親水性の官能基を有する層を湿式成膜法により形成する場合、下地層52として、有機金属化合物を主成分とする下地層(有機金属下地層)を設けることが好ましい。当該有機金属下地層としては、上述した親水層51としての有機金属化合物層と同様の層とすることができる。
(2)無機下地層
また、親水層51として上記有機金属化合物層を採用する場合、下地層52として、無機材料からなる無機下地層を設けることが好ましい。無機下地層を成膜する際には、真空成膜法を採用することが好ましい。真空成膜法により基材の表面に無機下地層を成膜することにより、無機下地層を介して基材の表面に、有機金属化合物層等からなる親水層51を強固に密着させることができる。真空成膜法としては、親水層51の成膜方法において説明した物理蒸着法及び化学蒸着法の各種方法を採用することができ、親水層51と同様に真空蒸着法、スパッタ法、CVD法を好適に採用することができる。
また、親水層51として上記有機金属化合物層を採用する場合、下地層52として、無機材料からなる無機下地層を設けることが好ましい。無機下地層を成膜する際には、真空成膜法を採用することが好ましい。真空成膜法により基材の表面に無機下地層を成膜することにより、無機下地層を介して基材の表面に、有機金属化合物層等からなる親水層51を強固に密着させることができる。真空成膜法としては、親水層51の成膜方法において説明した物理蒸着法及び化学蒸着法の各種方法を採用することができ、親水層51と同様に真空蒸着法、スパッタ法、CVD法を好適に採用することができる。
2−3.光学干渉層53
次に、光学干渉層53について説明する。光学干渉層53をレンズ面31の表面に設け、光学干渉層53と親水層51との積層膜、又は、光学干渉層53、下地層52及び親水層51の積層膜により、反射防止膜として機能させることが好ましい。これらの場合、積層膜における光学干渉層53の配置は特に限定されるものではなく、親水層51の表面に設けられていてもよく、親水層51の両面に光学干渉層53が設けられていてもよい。
次に、光学干渉層53について説明する。光学干渉層53をレンズ面31の表面に設け、光学干渉層53と親水層51との積層膜、又は、光学干渉層53、下地層52及び親水層51の積層膜により、反射防止膜として機能させることが好ましい。これらの場合、積層膜における光学干渉層53の配置は特に限定されるものではなく、親水層51の表面に設けられていてもよく、親水層51の両面に光学干渉層53が設けられていてもよい。
また、上記親水層51及び/又は下地層52が当該光学干渉層53として光学設計された層であってもよい。例えば、親水層51自体が光学干渉層53として光学設計された層である場合、親水層51自体が反射防止膜としての機能を有していてもよい。また、下地層52が光学干渉層53として光学設計された層である場合は、下地層52と親水層51との積層膜が反射防止膜として機能してもよい。但し、光学干渉層とは、入射光に対する界面反射光の位相変化を所定の値とすべく、薄膜の特性マトリックスに基づいて、屈折率と光学膜厚とが所定の値になるように光学設計された光学薄膜をいう。
当該光学干渉層53を構成する光学薄膜は、上記無機下地層と同様に、真空蒸着法、スパッタ法、CVD法等により成膜することができる。これらの方法により上記光学薄膜を成膜することにより、1nm以上150nm以下の範囲の物理膜厚の光学薄膜を精度よく成膜することができる。このため、当該光学薄膜の構成材料の屈折率に応じて、物理膜厚を精密に制御することにより、所定の位相変化を有する光学薄膜を形成することが容易になる。また、当該光学干渉層53は、単層の光学薄膜から構成されたものであってもよいし、複数の蒸着膜(サブ層)が積層された蒸着積層膜であってもよい。当該光学干渉層53が蒸着積層膜から構成される場合、各蒸着膜は上記のようにして成膜することができる。
また、光学干渉層53の表面(光学干渉層53が蒸着積層膜である場合にはその最表層の表面)に対してプラズマ処理等を施してもよい。この場合、光学干渉層53の最表面の濡れ性が良好になるため、光学干渉層53の表面に親水層51を湿式成膜法により直接形成した場合であっても、光学干渉層53と密着性の良好な湿式成膜法による親水層51を得ることができる。さらに、光学干渉層53を親水層51の表面に保護層として積層してもよい。この場合、光学干渉層53が最表面に積層された場合であっても、親水層51の親水効果を発現できるよう、光学干渉層53は十分に薄くなければならない。
さらに、レンズ面31の表面に、光学干渉層53と親水層51との積層膜、又は、光学干渉層53、下地層52及び親水層51の積層膜を反射防止膜とする場合、親水層51及び下地層52の物理膜厚はそれぞれ150nm以下であることが好ましい。親水層51及び下地層52の物理膜厚がそれぞれ150nmを超える場合、当該反射防止膜全体の位相変化を適切な値とすることが困難になり、例えば、光学干渉層53自体の反射防止性能が優れている場合であっても、当該積層膜全体でみたときの反射防止性能が低下する恐れがあるため、好ましくない。
以上説明した本実施の形態の光学ユニット100によれば、レンズ面31やレンズ面31の周囲に水に対する接触角が20°以下の濡れ性の極めて高い親水層51を設けることにより、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に水滴が球状に付着することを防止し、被写体像の歪みや画質の低下を抑制することができる。従って、天候等の外環境の変化によらず、長期間に渡って良好な画質の画像を得ることができる。このため、当該光学ユニット100は、車載用撮像装置や監視カメラ等の屋外に設置されて長期間に渡って使用される撮像装置等に好適である。
なお、本実施の形態では、車載用撮像装置を例に挙げて、本件発明に係る光学ユニット100について説明したが、本件発明に係る光学ユニット100は車載用撮像装置に限定されるものではなく、監視カメラ等の屋外に設置されて使用される撮像装置に好適である他、一眼レフカメラ等のレンズ30交換式カメラ、デジタルスチルカメラ(DSC)、携帯電話等の携帯型電子機器に搭載されるカメラユニット等の可搬式の撮像装置にも好適である。また、撮像装置に限らず、例えば、一眼レフカメラ等の交換レンズや、各種撮像装置のレンズユニットであってもよいし、望遠鏡や顕微鏡等の各種光学機器自体或いは、これらの光学素子が組み込まれる鏡筒部分であってもよい。
さらに上記実施の形態では、光学素子として、撮像装置等の光学系を構成するレンズ30を例に挙げて説明したが、本件発明において光学素子は、レンズに限定されるものではなく、例えば、カバーガラス、プリズム(色分解プリズム、色合成プリズム等)、偏向ビームスプリッター(PBS)、カットフィルタ(赤外線用カットフィルタ、紫外線用カットフィルタ等)等であってもよく、光学ユニット100はこれらの光学素子を筐体内に収容すると共に、筐体に形成された開口部からこれらの光学素子の光が入射する面(光学素子面)が露出するように構成されたものであればよい。
以下、実施例を挙げて本件発明をより具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本件発明の趣旨の範囲内で適宜変更可能であるのは勿論である。また、図面を参照して説明するが、図面に記載した光学ユニット100等は、本件発明の一例を模式的に表したものであり、実際の大きさや形状を表すものではない。
図1及び図2に実施例1の光学ユニット100としての車載用撮像装置のカメラユニットの構成例を示す。これらの構成は、上記実施の形態で説明したとおりであるため、同様の構成については同じ符号を付して、ここでは構成についての説明を省略する。前面側筺体10a、後面側筺体10b及び鏡筒20はいずれもポリカーボネイトにガラスフィラー及び黒色顔料が混合された複合樹脂材料から構成される。本実施例では、鏡筒20の内部に4枚のレンズから構成される光学系が収納されている。各レンズは、最も受光素子41側に配置されるレンズから順に鏡筒20の前面側から受光素子41側に向けて鏡筒20内に押し込まれる。このとき、各レンズのコバ形状や、レンズ間に配置されるスペーサーによって、各レンズは精密に位置決めされると共に鏡筒20内に固定される。そして、光学系を構成するレンズのうち、最も被写体側に配置されるレンズ30(前玉レンズ)が鏡筒20内に収容された後、熱加締めを行い、鏡筒20の前面側をレンズ30の外形に密着させる。
鏡筒20は支持板22を介して筺体10内に固定され、支持板22と筐体10の内壁面との間はOリング等に密封されており、鏡筒20側から受光素子41側に水や埃が浸入しないようにされている。受光素子41は基板40の裏面に取り付けられ、上述したとおり、筐体10の内側に固定される。このとき、受光素子41の受光面に光学系の焦点位置が合うように、鏡筒20を支持する支持板22と受光素子41が取り付けられた基板40とがスペーサー等により精密に位置決めされる。
本実施例では、光学系を構成する4枚のレンズの表面(両面)には反射防止膜が形成されている。この4枚のレンズのうち最も被写体側に配置され、外部に露出するレンズ30(前玉レンズ)は、画角を稼ぐため高屈折率であり、なおかつ耐酸性と耐擦傷性に優れたSCHOTT社製N−LASF31A(n=1.879)を用いた。
鏡筒20内へ上述したようにして光学系を組み込み、熱加締めを行い、その後、筺体10に鏡筒20、受光素子41、基板40を組み込み固定した後、次の方法で光学ユニット100の筐体10の前面全面に対して、以下のように親水処理を施し、筐体10の開口部11から露出するレンズ面31及びこのレンズ面31の周囲を含む筐体10の前面全面に親水層51等を設けた。以下、この親水層51等が形成される対象物を基材(レンズ30のレンズ面31、筐体10の開口部11の周囲、鏡筒20のレンズ開口21の周囲が含まれる)と称する。
親水層51は次のように形成した。まず、基材の表面に、真空蒸着法により、株式会社シンクロン社製のBMC1300を用いて98nmの厚みのSiO2蒸着層を成膜した。そして、このSiO2蒸着層の表面に、芝浦メカトロニクス株式会社製マイクロ波プラズマ処理装置を用いて、プラズマ処理を施し親水化処理を施した。具体的にはアルゴンをプラズマ化した雰囲気下で、周波数2450MHzのマイクロ波を利用し発生したプラズマを、チャンバー内に設置した基材の表面に形成したSiO2蒸着層の表面に照射した。これにより、SiO2蒸着層の表面は高濃度のシラノール基で化学修飾され、水に対する接触角が10°以下の超親水性を示す親水層51となる。以上の方法により、図3に示すように、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に対して、接触角が10°以下の超親水性を示す親水層51が設けられた光学ユニットを製造することができた。大塚電子社製膜厚測定機FE−3000を用いて、親水化されたレンズ面31の反射率を測定したところ、500nmにおける反射率は0.6%であった。すなわち、本実施例1においてレンズ面31に設けられたSiO2蒸着層は光学干渉層として光学設計された光学薄膜であり、レンズ面31の表面に当該親水層51を設けることにより、表面反射が抑制されていることが確認された。
実施例2では、前玉レンズ30のレンズ面31及びレンズ面31の周囲に設ける親水層51等の層構成及び親水層51等の形成方法が異なる以外は、実施例1と同様であるため、親水層51等の層構成及び親水層51等の形成方法以外の点については、説明を省略する。
実施例2では、光学系を鏡筒20内に組み込む前に、前玉レンズ30のレンズ面31の表面に、真空蒸着法により、株式会社シンクロン社製のBMC1300を用いて60nmの厚みのSiO2蒸着層を成膜した。当該SiO2蒸着層は上記光学干渉層53として用いられる。そして、実施例1と同様に、鏡筒20内に光学系を組み込む等の作業を行い光学ユニット100を得た。
そして、当該光学ユニット100の前面に対して、すなわち基材の表面に次の様にして親水層51を形成した。まず、株式会社宮崎化学社製太陽電池用コーティング剤M−50の塗布膜を成膜した。具体的には、コーティング液を染み込ませた回転パフをレンズ面31及び筐体の表面に対して液を強く擦りつけた。その後に、100℃の温度環境下で10時間静置した。そして、当該塗布膜が形成された基材を200度の温度環境下で10時間静置した。これにより表面に親水性のシラノール基を持つシリカゾルが微小な凹凸のナノ構造を有することで、水に対する接触角が10°以下となる超親水性を示す親水層51を得た。以上の方法により、図4に示すように、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に対して、接触角が10°以下の超親水性を示す親水層51が設けられた光学ユニットを製造することができた。大塚電子社製膜厚測定機FE−3000を用いて、親水化されたレンズ面31の反射率を測定したところ、500nmにおける反射率は0.4%であった。すなわち、親水層51は光学干渉層53として光学設計された光学薄膜であり、上記SiO2蒸着層からなる光学干渉層53と親水層51との積層膜は、反射防止膜として機能している事を示す。
実施例3では、前玉レンズ30のレンズ面31及びレンズ面31の周囲に設ける親水層51等の層構成及び親水層51等の形成方法が異なる以外は、実施例1と同様であるため、親水層51等の層構成及び親水層51等の形成方法以外の点については、説明を省略する。
実施例3では、光学系を鏡筒20内に組み込む前に、実施例2と同様に、前玉レンズ30のレンズ面31の表面に、真空蒸着法により、株式会社シンクロン社製のBMC1300を用いて98nmの厚みのSiO2蒸着層を成膜し、これを光学干渉層53とした。そして、実施例1と同様に、鏡筒20内にレンズ30を組み込む等の作業を行い光学ユニットを得た。ただし、レンズの固定は押え環24を用いた。
そして、当該光学ユニットの前面に対して、すなわち基材の表面に次の様にして下地層52を形成した。まず、基材の表面に、Leybold Optics社製のARES1510に付属のプラズマ銃を用いて、プラズマCVD法により有機ケイ素酸化物膜を成膜した。具体的にはプラズマ銃(APS)により酸素やアルゴンをプラズマ化した雰囲気下に、薄膜構成材料としてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)ガスを導入し、チャンバー内に設置した基材の表面にプラズマ重合反応により生じた有機ケイ素酸化物膜を堆積させた。このとき、チャンバー内に導入するヘキサメチルジシロキサンガスを400sccm、酸素ガスを10sccm、放電電圧90V、放電電流 20Aとすることにより、屈折率が1.54、物理膜厚が10nmの有機ケイ素酸化物膜から成る下地層52を得た。
次に、この下地層52の表面に湿式成膜法により親水層51を形成した。まず、エタノール900重量部に対してN−メタクリロイルオキシエチルNN−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体液100重量部、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン10重量部、0.1規定塩酸水溶液1重量部、及びアゾビスイソブチロニトリル10重量部を加え、80℃で3時間攪拌加熱した溶液を冷却後、下地層52の表面全面が十分に濡れるまで当該溶液を霧吹きで吹き付けした。吹付後80℃で1時間加熱した後に、余剰の成分を水洗いした。
上記処理により、N−メタクリロイルオキシエチルNN−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタイン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体と3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランがアクリル重合し、なおかつ3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランが基材上に下地層52として形成された有機ケイ素酸化物膜と結合する事で、基材の表面はN−メタクリロイルオキシエチルNN−ジメチルアンモニウム−α−N−メチルカルボキシベタインのベタイン基が豊富に存在し、このベタイン基により、水に対する接触角が10°以下の超親水性を示す親水層51が得られた。以上の方法により、図5に示すように、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に対して、接触角が10°以下の超親水性を示す親水層51が設けられた光学ユニットを製造することができた。大塚電子社製膜厚測定機FE−3000を用いて、親水化されたレンズ面31の反射率を測定したところ、500nmにおける反射率は0.6%であった。すなわち、HMDSO薄膜からなる下地層52及び親水層51はそれぞれ光学干渉層として光学設計された光学薄膜であり、レンズ面31に設けられた光学干渉層53、下地層52及び親水層51の積層膜は反射防止膜として機能している事を示す。
実施例4では、予め筐体10(前面側筐体)の前面に約1μmの厚みのシリコーン保護膜(保護層54)を設けた筐体10を用い、前玉レンズ30のレンズ面31に予め70nmの厚みのSiO2蒸着層を実施例2と同様に設けた以外は、実施例1と同様にして光学ユニット100を組み立てた。そして、前玉レンズ30のレンズ面31及びレンズ面31の周囲に親水層51等を設けた。以下では、主として、親水層51の層構成及び親水層51等の形成方法について述べる。他の点については実施例1等と同様であるため、ここでは説明を省略する。
実施例4では、次のようにして前玉レンズ30のレンズ面31及びレンズ面31の周囲に親水層51等を形成した。まず、株式会社シンクロン社製RAS1100を使用してラジカル・アシステッド・スパッタリング法により、基材の表面にTiO2(アナターゼ型)からなる光触媒機能を有する親水層51を10nmの厚みで形成した。そして、この親水層51の表面に、保護層54としてSiO2層を98nmの厚みで形成した。その後、当該光学ユニット100を日光に曝す事で光触媒機能を発現させ、水に対する接触角が10°以下超親水性を示す親水層51を得た。以上の方法により、図6に示すように、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に対して、接触角が10°以下の超親水性を示す光学ユニット100を製造することができた。大塚電子社製膜厚測定機FE−3000を用いて、親水化されたレンズ面31の反射率を測定したところ、500nmにおける反射率は0.3%であった。すなわち、レンズ表面上に形成された親水層51としてのTiO2蒸着層及び保護層54としてのSiO2蒸着層はそれぞれ光学干渉層53として光学設計された光学薄膜であり、これらの積層膜は反射防止膜として機能している事を示す。
[比較例1]
次に、比較例について説明する。比較例では、鏡筒20内に光学系を組み込む前に、前玉レンズ30のレンズ面31に対して、実施例2と同様の方法で、SiO2蒸着層を形成し、その後親水化処理を施し下地層52とした上で、当該下地層52上に実施例2と同様の方法で、表面に親水性のシラノール基を持つシリカゾルが微小な凹凸のナノ構造を有する水に対する接触角が10°以下の親水層51を設けた。その後、当該下地層52及び親水層51を備えたレンズを、実施例1と同様の方法で鏡筒20内に組み込む作業等を行い比較例の光学ユニットを組み立てた。以上の方法により、図7に示すようにレンズ面31にのみ親水層51を備えた光学ユニットを製造した。
次に、比較例について説明する。比較例では、鏡筒20内に光学系を組み込む前に、前玉レンズ30のレンズ面31に対して、実施例2と同様の方法で、SiO2蒸着層を形成し、その後親水化処理を施し下地層52とした上で、当該下地層52上に実施例2と同様の方法で、表面に親水性のシラノール基を持つシリカゾルが微小な凹凸のナノ構造を有する水に対する接触角が10°以下の親水層51を設けた。その後、当該下地層52及び親水層51を備えたレンズを、実施例1と同様の方法で鏡筒20内に組み込む作業等を行い比較例の光学ユニットを組み立てた。以上の方法により、図7に示すようにレンズ面31にのみ親水層51を備えた光学ユニットを製造した。
[比較例2]
比較例2では、実施例1と同様の光学ユニットを組み立てた後、光学ユニットの前面に対して、本件発明にいう親水層51を設けるのではなく、当該前面に撥水層55を設けた。撥水層55は、以下の方法で当該光学ユニットの前面に対して撥水処理を行うことにより得た。具体的には、株式会社ソフト99コーポレーション社製のガラスコーティング剤(商品名「ガラコ」)を光学ユニットの前面がガラスコーティング剤により十分濡れるまで霧吹きで吹き付けした。吹付後80℃で1時間加熱した後に、余剰の成分を水洗いした。以上の方法により、図8に示すように、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に撥水層55を備えた光学ユニットを製造した。
比較例2では、実施例1と同様の光学ユニットを組み立てた後、光学ユニットの前面に対して、本件発明にいう親水層51を設けるのではなく、当該前面に撥水層55を設けた。撥水層55は、以下の方法で当該光学ユニットの前面に対して撥水処理を行うことにより得た。具体的には、株式会社ソフト99コーポレーション社製のガラスコーティング剤(商品名「ガラコ」)を光学ユニットの前面がガラスコーティング剤により十分濡れるまで霧吹きで吹き付けした。吹付後80℃で1時間加熱した後に、余剰の成分を水洗いした。以上の方法により、図8に示すように、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に撥水層55を備えた光学ユニットを製造した。
[評価]
1.評価方法
以上の実施例および比較例において形成した光学ユニット(100)について、レンズ面31の水に対する接触角及び外観について評価した。
1.評価方法
以上の実施例および比較例において形成した光学ユニット(100)について、レンズ面31の水に対する接触角及び外観について評価した。
(1)接触角
レンズ面31に設けた親水層51の表面の水に対する静接触角をFirst Ten Angstroms社製接触角計 FTA−1000Bを用いて測定した。さらに、85℃95%の高温高湿環境に、当該光学ユニットを100時間暴露した後のレンズ面31の親水層51における水の静触角についても測定した。なお、比較例2については、撥水層55の表面において同様の測定を行った。
レンズ面31に設けた親水層51の表面の水に対する静接触角をFirst Ten Angstroms社製接触角計 FTA−1000Bを用いて測定した。さらに、85℃95%の高温高湿環境に、当該光学ユニットを100時間暴露した後のレンズ面31の親水層51における水の静触角についても測定した。なお、比較例2については、撥水層55の表面において同様の測定を行った。
(2)外観
各光学ユニット(100)のレンズ面31を含む筐体10の前面全面に霧吹きで水を掛け、レンズ面31に対する水滴の付着状態を目視で確認した。さらに、85℃95%の高温高湿環境に、当該光学ユニット(100)を100時間暴露した後のレンズ面31に対する水滴の付着状態についても目視で確認した。
各光学ユニット(100)のレンズ面31を含む筐体10の前面全面に霧吹きで水を掛け、レンズ面31に対する水滴の付着状態を目視で確認した。さらに、85℃95%の高温高湿環境に、当該光学ユニット(100)を100時間暴露した後のレンズ面31に対する水滴の付着状態についても目視で確認した。
2.評価結果
表1に接触角及び外観に関する評価結果を示す。表1に示すように、実施例1〜実施例4で製造した光学ユニット100では、レンズ面31の水に対する接触角が10°以下と小さく、且つ、環境試験の後も水に対する接触角を20°以下に維持することができ、当該光学ユニット100が長期間に渡って過酷な外環境に晒されたとしても、レンズ面31の表面に設けた親水層51の親水性を維持することができることが確認された。また、水を霧吹きで吹き付けたときに、実施例の光学ユニット100ではレンズ面31に水滴が球状に付着することはなく、レンズ面31又はレンズ面31の周囲でいくつかの水滴が集合した大きな水滴を形成するようなこともなく、外観は良好であった。
表1に接触角及び外観に関する評価結果を示す。表1に示すように、実施例1〜実施例4で製造した光学ユニット100では、レンズ面31の水に対する接触角が10°以下と小さく、且つ、環境試験の後も水に対する接触角を20°以下に維持することができ、当該光学ユニット100が長期間に渡って過酷な外環境に晒されたとしても、レンズ面31の表面に設けた親水層51の親水性を維持することができることが確認された。また、水を霧吹きで吹き付けたときに、実施例の光学ユニット100ではレンズ面31に水滴が球状に付着することはなく、レンズ面31又はレンズ面31の周囲でいくつかの水滴が集合した大きな水滴を形成するようなこともなく、外観は良好であった。
一方、比較例1の光学ユニットは、レンズ面に対して接触角が10°の親水層51を設けられているが、光学ユニットに対して水を霧吹きで吹き付けたときに、レンズ面31に水滴が付着していた。これはレンズ面31の周囲に親水層51が設けられていないため、レンズ面31の表面に付着した水滴はレンズ面31において広がるものの、水滴を速やかに鏡筒20や筐体10側に移行させることができず、レンズ面31と、これらの界面において水滴が溜まった結果、レンズ面31にも水滴が付着した状態になるものと考えられる。また、比較例2の光学ユニットでは、レンズ面31の表面全面に細かい水滴が球状に多数付着した。従って、比較例1や比較例2の光学ユニットを用いた場合、レンズ面31に付着した水滴により、画像の歪み等が発生し、天候等の外環境によっては画質の良好な画像を得ることができなくなる。
以上、実施例及び比較例とを比較すると、本件発明に係る光学ユニット100は、レンズ面31及びレンズ面31の周囲に親水層51を設けることにより、レンズ面31及びレンズ面31の周囲の濡れ性が極めて高いため、レンズ面31において水滴が均一な厚みで広がり、レンズ面31において球状の水滴となって留まることなく、速やかにレンズ面31の周囲に流れ、レンズ面31には水滴の付着がほとんどないことが確認された。このため、当該球状の水滴がレンズとして機能し、水滴を通過した光によって被写体像に局部的な歪みが生じたり、当該光学ユニット100本来の画角では撮像することのできない被写体像が写り込むのを防止することができる。また、過酷な環境下に長期間暴露した場合にも、本件発明に係る光学ユニット100では、レンズ面31の親水性を維持することが可能であり、長期間に渡って良好な画質の画像を得ることができる可能性が高いことが確認された。但し、実施例3では、レンズ面31と、レンズ面31の周囲に対する親水層51の成膜方法等が異なる。実施例3の光学ユニット100では環境試験後において部分的な親水性の失活があったと考えられ、その結果環境試験後の外観が不良となっていると考えられる。従って、レンズ面とレンズ面の周囲に対しては、同じ方法で成膜した同じ材質の親水層51を設けることが好ましい。
本件発明は、外環境の変化によらず長期間に渡って良好な画質の画像を得ることができる光学ユニットを提供することができるため、車両等に設置されて使用される車載用撮像装置や監視用撮像装置などの屋外で使用される撮像装置等の光学ユニットに好適である。
10・・・筐体
11・・・開口部
20・・・鏡筒
30・・・光学素子(レンズ)
31・・・光学素子面(レンズ面)
51・・・親水層
52・・・下地層
53・・・光学干渉層
54・・・保護層
100・・・光学ユニット
11・・・開口部
20・・・鏡筒
30・・・光学素子(レンズ)
31・・・光学素子面(レンズ面)
51・・・親水層
52・・・下地層
53・・・光学干渉層
54・・・保護層
100・・・光学ユニット
Claims (9)
- 開口部を有する筐体と、当該筐体内に収容されると共に当該開口部から露出する光学素子面を有する光学系と、を備えた光学ユニットであって、
当該光学素子面と、当該光学素子面の周囲とには、水に対する接触角が20°以下の親水層が設けられたこと、
を特徴とする光学ユニット。 - 前記光学系は、前記光学素子面を有するレンズを含む光学系と、当該光学系を収容する鏡筒とを備え、
前記光学素子面の周囲には、当該鏡筒を前記筐体内に収容したときに、前記開口部から露出する鏡筒の露出部分が含まれる請求項1に記載の光学ユニット。 - 前記親水層は、光触媒機能を有する金属酸化物を主成分とする層である請求項1又は請求項2に記載の光学ユニット。
- 前記親水層は、有機金属化合物を主成分とする層である請求項1又は請求項2に記載の光学ユニット。
- 前記親水層は、表面に親水性の高い官能基を有する層である請求項1又は請求項2に記載の光学ユニット。
- 前記親水層は、光学干渉層として設計された光学薄膜である請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の光学ユニット。
- 前記光学素子面には、蒸着積層膜が設けられており、
当該蒸着積層膜と、当該蒸着積層膜表面に積層された前記親水層とにより、光学素子面に入射する光の反射を防止する反射防止膜として機能する請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の光学ユニット。 - 前記光学素子面に設けられた親水層と、前記光学素子面の周囲に設けられた親水層とは、同じ材質の層である請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の光学ユニット。
- 当該光学ユニットは車両に搭載される車載用撮像装置である請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の光学ユニット。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2014118022A JP2015231216A (ja) | 2014-06-06 | 2014-06-06 | 光学ユニット及び車載用撮像装置 |
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-
2014
- 2014-06-06 JP JP2014118022A patent/JP2015231216A/ja active Pending
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