JP2015229772A - 熱伝導性ペーストの製造と製造方法 - Google Patents

熱伝導性ペーストの製造と製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 第一に、熱伝導を担う物質が連続構造を形成する。第二に、金属に近い熱伝導性と優れた絶縁性とが安価な製法で付与される。第三に、極めて軽量で厚みがごく薄い部材で熱伝導性が付与される。これらの要件を兼備して部品ないしは基材に熱伝導性が付与される。
【解決策】 熱分解によって金属に近い熱伝導性と優れた絶縁性を兼備する金属酸化物を析出する有機金属化合物をアルコールに分散し、この分散液に、有機金属化合物の熱分解温度より沸点が低い有機化合物を混合して、熱伝導性ペーストを製造する。この熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷して熱処理し、金属酸化物微粒子の集まりからなる膜状体を部品ないしは基材の表面に形成することによって、部品ないしは基材の表面を金属に近い熱伝導性で電気絶縁性の性質とする。
【選択図】図2

Description

本発明における熱伝導性ペーストは、熱分解によって熱伝導性で電気絶縁性の金属酸化物を析出する有機金属化合物をアルコールに分散し、この分散液に有機金属化合物の熱分解温度より低い温度で気化する有機化合物を混合して製造する。この熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布して熱処理すると、金属酸化物微粒子の集まりからなる膜状物質が部品ないしは基材の表面に形成され、部品ないしは基材は新たに熱伝導性で電気絶縁性の性質を持つ。このため、固体の熱伝導性粒子の集まりを、融解した高分子材料に充填する従来の熱伝導性部品ないしは従来の熱伝導性基材とは、材料構成と製法とが全く異なるため、従来における問題点を一切持たない。なお、本発明において基材とは、部品を製作する際に用いる材料を基材と定義する。例えば、銅板を加工して銅の部品を製造する場合は、銅の部品を加工する際に用いる材料である銅板が基材になる。
近年、エレクトロニクス技術の発展が目覚しく、これに伴い、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、これによって、電子回路の高密度化に伴う絶縁性に係わる信頼性の向上や、電子デバイスの発熱と高密度実装とによる電子機器の熱劣化防止に役立つ放熱性の向上などが強く求められている。
いっぽう、エレクトロニクス分野では、絶縁材の多くは熱伝導性に劣る高分子材料が用いられている。このため、高分子材料の熱伝導性を高めるために、固体の熱伝導性粒子を熱伝導の担い手として高分子材料に充填する方法が用いられている。この方法では、熱伝導性粒子の集まりが、高分子材料の内部に熱伝導経路を形成することで、優れた熱伝導性が実現する。いっぽう、熱伝導性粒子が高分子材料の内部に熱伝導経路を形成するには、熱伝導性粒子の充填率を高めることが必要になるが、融解した高分子材料に熱伝導性粒子を充填させる割合は粘度の上昇によって限度がある。この結果、固体の熱伝導性粒子を高分子材料に充填させる従来の方法では、高分子材料の熱伝導性の向上には限界がある。
いっぽう、部品ないしは基材に熱伝導性を付与する技術には様々な方法がある。例えば、特許文献1には、酸化アルミニウムや窒化アルミニウムなどの絶縁性で熱伝導性の球状粒子を有機結着剤で凝集させた凝集体の製造技術が記載されている。つまり、熱伝導性粒子同士を有機結着剤を介して凝集させた凝集体を熱伝導の担い手とする。
また、特許文献2には、熱伝導性、制振性、緩衝性を兼備したエラストマー材料の製造技術が記載されている。つまり、熱可塑性エラストマーの重量に対し、3倍〜10倍の軟化剤を加えることで、制振性と緩衝性とを確保し、また、熱伝導性の担い手としてピッチ系炭素繊維を用い、成形体の体積の10%〜40%の体積割合でピッチ系炭素繊維を充填することで、制振性と緩衝性とを犠牲にすることなく熱伝導性を確保する、としている。
さらに、特許文献3には、ポリフェニレンサルファイド系樹脂とポリアミド系樹脂とからなる2種類の樹脂のうちの一方の樹脂を島状構造とし、他方の樹脂を海状構造とする三次元網目構造を形成し、熱伝導性付与剤を海状構造の樹脂中に偏在させることで、機械的強度及び成形性を低下させることなく、熱伝導率が向上する樹脂組成物の製造技術が記載されている。つまり、熱伝導性付与剤を海状構造樹脂中に充填させることで、海状構造樹脂の熱伝導性を高め、海状構造の部分に沿って熱を伝導させ、これによって、樹脂組成物の熱伝導性を高める、としている。
また、特許文献4には、電気絶縁性を低下させることなく、機械的強度、耐熱性、寸法精度、薄肉成形性に優れ、且つ熱伝導性の熱硬化性樹脂の成形材料の製造技術が記載されている。つまり、第一のフィラーとして針状形状で、モース硬度が4.5〜5.0の値を持つウォラストナイトを充填することで、引張強度と曲げ強度とを確保し、また、ウォラストナイトの熱膨張係数が6.5×10−6/℃と小さいため、寸法安定性と薄肉成形性が確保される。さらに、ウォラストナイトの融点が1540℃と高いため耐熱性が得られる。また、第二のフィラーとして絶縁性で熱伝導性であるアルミナの球状粒子を用いることで、熱硬化性樹脂の電気絶縁性を低下させることなく、熱導電性を向上させる構成としている。
しかしながら、前記した特許文献1に記載された技術は、熱伝導性を向上させるうえで次の2つの問題点を持つ。第一に、溶剤によって有機結着剤を溶解させ、溶解した有機結着剤に熱伝導性粒子の集まりを分散させたスラリー液を作成した後に、溶剤を気化させて易変形性凝集体と呼ぶ物質を作成する。この易変形性凝集体における熱伝導性の大きさは、熱伝導性粒子が互いに接近した構造を取ることに大きく依存する。なぜならば、熱伝導性粒子のみが熱伝導の担い手になるからである。熱伝導性粒子同士を互いに接近させるには、有機結着剤に対する熱伝導粒子の混合割合を著しく高めることが必要になるが、熱伝導粒子の混合割合を高めるほど、易変形性凝集体における有機結着剤の割合が減少し、有機結着剤を介して球状の熱伝導粒子を結合させることが困難になるという問題点を持つ。第二に、易変形性凝集体を熱伝導性に劣るバインダー樹脂と混合し、この混合物を圧縮することで、熱硬化性のシートを製作する。なぜならば、易変形性凝集体のみでは熱伝導性シートの製造できないため、バインダー樹脂と混合することで、易変形性凝集体の集まりを結合させ、バインダー樹脂で結合した易変形性凝集体の集まりを圧縮することで、熱伝導性シートが製作できる。しかしながら、バインダー樹脂は非熱伝導性であるため、バインダー樹脂の混合割合を低下させなければ、易変形性凝集体の熱伝導性が熱伝導シートに反映されない。いっぽう、バインダー樹脂の混合割合を低下させるほど、易変形性凝集体同士の結合が困難になり、熱伝導シートの製作ができないという問題点を持つ。
さらに、特許文献1に記載された技術は、分断された複数の製作工程によって、熱伝導シートを製造するため製造費用が高価になる。また、原料として用いる熱伝導性粒子が、高価な球状微粒子でかつ使用量が少量でないため、高い付加価値、例えば、金属並みの熱伝導性を持ち、かつ、絶縁性であればよいが、本技術で得られた熱伝導性は、金属の熱伝導性より1桁以上低いため、本技術が適応できる製品分野は制限される。
また、前記した特許文献2に記載された技術は、ピッチ系炭素繊維の体積割合に応じて、エラストマー材料における熱伝導性が増大するが、非常に高価なピッチ系炭素繊維を50%体積割合まで増大させても、熱伝導率は8.21W/mKであり、製造費用が極めて高い割には熱伝導率が低い。これは、ピッチ系炭素繊維の熱伝導率が異方性を持っており、繊維軸方向の熱伝導率が500W/mKという大きな熱伝導率を持つが、ピッチ系炭素繊維を繊維軸方向に配向させてエラストマー材料に充填することが困難であることに依る。さらに、ピッチ系炭素繊維は、体積抵抗率が2×10−5cmからなる導電性を持ち、ピッチ系炭素繊維の充填率を高めるほどエラストマー材料は導電性を示す。このため、エラストマー材料が電気絶縁性を保って他の部品と組み合わせる場合は、電気絶縁性で非熱伝導性の接着剤を用いることになり、エラストマー材料の熱伝導性が非熱伝導性の接着層によって損なわれる。また、ピッチ系炭素繊維の体積割合が増えるほど、エラストマー材料の硬度が増大し、制振性と緩衝性が低下する。従って、本技術についても、適応できる製品分野は限定される。
さらに、前記した特許文献3に記載された技術は、ポリフェニレンサルファイド系樹脂に特殊な相溶化剤を混合した第1のマスターバッチを調製する工程と、ポリアミド系樹脂に表面が改質された熱伝導性付与剤を混合した第2のマスターバッチを調製する工程と、第1のマスターバッチと第2のマスターバッチを溶融混練する工程との3つの製造工程から樹脂成形体が製造される。従って、本技術は3つの分断された工程から樹脂成形体が製造され、また、特殊な相溶化剤を事前に調整する複雑な処理工程と、さらに、熱伝導性付与剤の表面を事前に改質する処理工程とが必要となるため、樹脂成形体の製造費用は高価なものになる。いっぽう、熱伝導性を担う粒子を60%重量割合で充填させても、樹脂成形体の熱伝導率は1〜2W/mKと低い。これは、熱伝導性付与剤である熱伝導性粒子をフィラーとして海状構造の樹脂中に充填する割合が、樹脂溶解時の粘度の増大によって制限され、フィラーを互いに接近させることが困難であることに依る。また、熱伝導性粒子が導電性を持つ場合は、海状構造の樹脂中に熱伝導性粒子の充填率を高めるほど、海状構造の樹脂の導電性が増大し、樹脂が海状構造であるため、樹脂成形体の導電率が増大する。このため、樹脂成形体が電気絶縁性を保って他の部品と組み合わせる場合は、電気絶縁性で非熱伝導性の接着剤を用いることになり、樹脂成形体の熱伝導性が非熱伝導性の接着層によって損なわれる。従って、本技術についても、適応できる製品分野は限定される。
また、前記した特許文献4に記載された技術は、第一のフィラーとしてウォラストナイトの針状粒子を用いることに大きな特徴があるが、第二のフィラーとしてアルミナの粒子を用いることは、従来の導電性フィラーとしてアルミナ粒子を樹脂に充填させる技術と変わりない。このため、アルミナ粒子を充填させる割合は、熱硬化性樹脂の溶解時の粘度の上昇から80%重量割合に制限され、80%の重量割合でアルミナ粒子を充填しても、アルミナ粒子同士を互いに熱硬化性樹脂に接近させることは困難であるため、得られた熱硬化性樹脂の成形体の熱伝導度は1W/mK程度に過ぎない。従って、本技術についても、適応できる製品分野は限定される。
ここで、部品ないしは基材に熱伝導性を付与する従来技術に係わる課題を整理する。
熱伝導性を担う物質が、部品ないしは基材において、連続した構造ないしは近接した構造が取れれば、熱伝導経路が部品ないしは基材に形成され、熱伝導性が著しく増大する。いっぽう、従来技術においては、熱伝導性を担う物質の間に必ず非熱伝導性の物質が介在し、これによって、熱伝導を妨げる抵抗が形成され、熱伝導性の向上が抑制された。このため、第一の課題は、熱伝導性を担う物質が、部品ないしは基材において、連続した構造ないしは近接した構造を取ることである。従って、熱伝導性の物質を非熱伝導性の物質に複合化するないしは混合する従来技術では、この課題を解決することはできない。
第二の課題は、熱伝導性を担う物質の分散性である。つまり、熱伝導性を担う物質の体積占有率が増大するほど、部品ないしは基材の内部で、熱伝導性を担う物質同士が互いに接触ないしは近接する確率が高くなり、これによって、熱伝導性を担う物質が連続した構造ないしは近接した構造が取りやすくなり、この結果、部品ないしは基材の熱伝導性が増大する。しかしながら、熱伝導性を担う物質が固体である場合は、部品ないしは基材の内部に分散できる割合には限度がある。すなわち、従来技術で説明したように、熱伝導性粒子の充填率を高めるほど、融解した高分子材料の粘度が高まり、融解した高分子材料が押出や射出といった成形加工ができなくなる。また、特許文献2の問題点で説明したように、融解した高分子材料にピッチ系炭素繊維を繊維軸方向に配向させて分散することは困難である。また、特許文献4における針状粒子を針状方向に配向させて分散することも困難である。このため、固体からなる熱伝導性の物質を、非熱伝導性の物質に複合化するないしは混合する従来技術では、熱伝導性を担う物質の分散性の課題を解決することはできない。
第三の課題は、熱伝導性を担う物質の凝集である。つまり、特許文献1、特許文献3および特許文献4には、熱伝導性粒子を融解した高分子材料に充填する技術が記載されているが、粒子が微細になるほど、また、粒子が対称形状であるほど、粒子が凝集しやすくなる。粒子の凝集が起こると、部品ないしは基材の内部で粒子が偏在し、結果として前記した分散性と同様の問題が起こる。従って、微細な粒子や球状粒子を、融解した高分子材料に充填する従来技術では、熱伝導性を担う物質の凝集の課題を解決することはできない。
第四の課題は、部品ないしは基材に付与される性質が、熱伝導性が金属に近く、かつ、優れた絶縁性であることである。特に、エレクトロニクス分野に用いる製品は、こうした性質が必要となる。つまり、部品ないしは基材に金属に近い熱伝導性が付与されたとしても、導電性である場合は、電気絶縁性を確保することが必要になり、多くの場合は電気絶縁性で非熱伝導性である安価な接着剤を用いるが、非熱伝導性の接着層によって、部品同士ないしは基材同士の熱伝導性を伴った接合ができない。なお、熱伝導性が高いほど、部品ないしは基材が持つ付加価値は高い。前記した従来技術の熱伝導性は、金属の熱伝導性に比べ1桁以上熱伝導性が低いため、付加価値は低い。
第五の課題は、安価な製造方法で部品ないしは基材に熱伝導性を付与できることである。特に、エレクトロニクス分野に用いる製品は、安価な部品ないしは安価な基材が採用される。従って、前記した従来技術のように、分断された複数の工程からなる製法や、非常に高価な原料を用いる製法や、原料に事前処理が必要になる製法を伴う場合は、製造費用が高騰し、安価な工業用製品を製造する製法として適切でない。
第六の課題は、熱伝導性が付与された部品ないしは基材が、容易に製品として組み付けられることである。つまり、安価な製造方法で部品ないしは基材に熱伝導性を付与できても、容易に製品として組み付けられなければ、部品ないしは基材の付加価値は低い。
第七の課題は、熱伝導性が付与された部品ないしは基材が、軽量で厚みが薄いことである。特に、エレクトロニクス分野における製品は、小型化、軽量化および薄肉化が進んでいるため、重量がかさみ、厚みを占有する部品ないしは基材の付加価値は低い。
特開2014−03261号公報 特開2011−63716号公報 特開2009−263476号公報 特開2009−221308号公報
前記した部品ないしは基材に熱伝導性を付与する課題の多くは、固体の熱伝導性物質を非熱伝導性物質、例えば融解した高分子材料に複合化ないしは混合することで起こる。従って、固体の熱伝導性物質を非熱伝導性物質に複合化ないしは混合する製法を用いる限り、これらの課題は解決できない。このため、従来の製法に係わる概念を払拭する全く新たな製法でない限り、これらの課題は解決できない。このように、全く新規な考え方に基づく熱伝導性を付与する部品ないしは基材を製造する技術が強く求められている。
本発明が解決しようとする課題は、部品ないしは基材に熱伝導性を付与するに際し、8段落で説明した7つの課題が同時に解決される全く新たな技術を実現することにある。
本発明における熱伝導性ペーストの製造に関わる第一特徴手段は、熱分解によって熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物が析出する有機金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールに溶解した溶解液ないしは前記アルコールに混和した混和液は、前記アルコールより高い粘度を有する第二の性質と、沸点が前記有機金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とからなる3つの性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して熱伝導性ペーストを製造する点にある。
つまり、本特徴手段で製造した熱伝導性ペーストを、部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷し、この後、部品ないしは基材を熱処理すると、最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化し、この後、有機金属化合物が熱分解し、大きさが10nm〜100nmの範囲に入る粒状の金属酸化物微粒子の集まりが析出し、この金属酸化物微粒子の集まりからなる膜状体が部品ないしは基材の表面に形成される。この金属酸化物が金属に近い熱伝導性と優れた電気絶縁性との性質を兼備するため、部品ないしは基材の表面は、新たに金属に近い熱導電性と優れた電気絶縁性との性質を併せ持つ。
つまり、本特徴手段における熱伝導性ペーストは、有機金属酸化物のアルコール分散液に、アルコールに溶解ないしは混和する有機化合物を混合した液状物質からなる。このため、部品ないしは基材に熱伝導性を付与するに際し、8段落で説明した多くの課題が同時に解決される全く新たな技術である。従って、固体からなる熱伝導性粒子の集まりを、融解した高分子材料に充填する従来の熱伝導性部品ないしは熱伝導性基材とは、材料構成と製法とが全く異なる新規な技術であるため、前記した従来の熱伝導性部品ないしは熱伝導性基材における問題点を一切持たない。
また、有機金属化合物と有機化合物とは安価な汎用的な工業用薬品であるため、熱伝導性ペーストは安価な費用で製造できる。さらに、熱伝導性ペーストを部品なしは基材の表面に塗布ないしは印刷し、この部品ないしは基材を熱処理するだけで、金属酸化物微粒子の集まりが析出するため、製造費用も安価である。さらに、部品ないしは基材が、有機金属化合物の熱分解温度に対する耐熱性を持てば、様々な部品や基材の表面に熱伝導性で電気絶縁性の性質を併せ持つ金属酸化物の微粒子の集まりからなる膜状体が形成できる。
さらに、熱伝導性で電気絶縁性の性質を併せ持つ膜状体の厚みは、熱伝導性ペーストの塗布ないしは印刷した厚みに応じて自在に変えられ、ミクロンレベルのごく薄い厚みが容易に形成でき、膜状体の重量は1g以下であり、重量をほとんど持たない。
また、金属酸化物微粒子の大きさが、部品ないしは基材の表面粗さより2桁近く小さいため、金属酸化物微粒子は部品ないしは基材の表面の凹部にも入り込んで析出し、部品ないしは基材の表面に、金属酸化物微粒子の集まりの連続構造が形成される。このため、部品ないしは基材の表面は、確実に熱導電性と電気絶縁性との性質を併せ持つことになる。
なお、有機化合物はアルコールに溶解ないしは混和し、有機化合物のアルコール溶解液ないしはアルコール混和液の粘度はアルコールの粘度より高まり、熱伝導性ペーストの塗布ないしは印刷が可能になる。熱伝導性ペーストは液状物質であり、従来のペースト材のように固体の粒子を含まないため粘度は低く、塗布ないしは印刷が容易になる。
以上に説明したように、本特徴手段によれば、液状物質の熱伝導性ペーストが製造でき、この熱伝導性ペーストを用いることで、金属に近い熱伝導性で優れた電気絶縁性の膜状体が部品ないしは基材の表面に形成され、8段落で説明した7つの課題が同時に解決できる。
本発明における熱伝導性ペーストの製造に関わる第二特徴手段は、前記した第1特徴手段における有機金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物であって、該カルボン酸金属化合物は、熱分解によって熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物を析出する有機金属化合物である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、熱分解によって熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物を析出する。従って、こうしたカルボン酸金属化合物は、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物を析出する原料になる。
すなわち、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、最も大きいイオン半径を有する金属イオンに配位子イオンである酸素イオンが近づいて配位結合するため、両者の距離は短くなる。これによって、金属イオンと配位結合する酸素イオンが、金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの距離が最も長くなる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボン酸金属化合物を構成するカルボン酸の沸点を超えると、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンの反対側で共有結合するイオンとの結合部が最初に分断され、金属イオンと酸素イオンとの化合物である金属酸化物とカルボン酸とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に金属酸化物が析出する。こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などがある。なお、カルボン酸金属化合部の熱分解温度は、大気雰囲気では窒素雰囲気より40℃程度低い。
このようなカルボン酸金属化合物をアルコールに分散し、この分散液にカルボン酸金属化合物が熱分解される温度より低い沸点を有する有機化合物を混合して熱伝導性ペーストを作成し、この熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布して熱処理すると、最初にアルコールが気化し、次に有機化合物が気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解し、大きさが10nm〜100nmの範囲に入る粒状の金属酸化物微粒子の集まりが析出し、微粒子の集まりからなるごく薄い膜状体が部品ないしは基材の表面に形成される。
さらに、前記したカルボン酸金属化合物は、いずれも容易に合成できる安価な工業用薬品である。すなわち、カルボン酸を強アルカリと反応させるとカルボン酸アルカリ金属化合物が生成される。この後、カルボン酸アルカリ金属化合物を無機金属化合物と反応させると、カルボン酸金属化合物が合成される。また、カルボン酸は有機酸の沸点の中で相対的に低い沸点を有する有機酸であるため、大気雰囲気においては300℃程度の比較的低い熱処理温度で熱分解して金属酸化物が析出するため、熱処理費用も安価で済む。
本発明における熱伝導性ペーストの製造に関わる第三特徴手段は、前記した第2特徴手段におけるカルボン酸金属化合物は、熱分解によって酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを析出するカルボン酸金属化合物である点にある。
つまり、本特徴手段によれば、熱分解で酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを析出するカルボン酸金属化合物を熱伝導性ペーストの原料として用い、この熱伝導性ペーストが塗布ないしは印刷された部品ないしは基材を熱処理すると、金属に近い熱伝導性と優れた電気絶縁性との性質を兼備する膜状物質が部品ないしは基材の表面に形成される。すなわち、酸化マグネシウムは熱伝導度が60W/mKであり、体積抵抗率が1014Ωcm以上である。また、酸化アルミニウムは熱伝導度が40W/mKであり、体積抵抗率が1014Ωcm以上である。ちなみに、電子回路のヒートシンクに用いられるアルミニウムの熱伝導率は236W/mKである。従って、酸化マグネシウム微粒子ないしは酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる膜状物質は、金属に近い熱伝導性と優れた電気絶縁性との性質を併せ持つ。
なお、酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムより熱伝導性が優れた絶縁性材料として窒化アルミニウムがあるが、窒化アルミニウムはその製法によって極めて高価な材料である。すなわち、窒化アルミニウムの製法として還元窒化法と直接窒化法とがある。還元窒化法は、アルミナAl粒子を出発原料として用い、アルミナ粒子を炭素還元しながら窒化反応によって窒化アルミニウムを製造する。従って、高純度のアルミナ粒子を用いることで、優れた熱伝導性と絶縁性を兼ねる窒化アルミニウム粒子が製造されるが、長時間の高温加熱処理が必要になり、出発原料のアルミナ粒子の10倍近い製造費用が掛かるいっぽう、直接窒化法は、高純度のアルミニウム粒子を直接高温環境下で窒化させる製法であるため、還元窒化法に比べると製造時に消費する熱エネルギーは少ないが、高温の反応時に窒化アルミニウム粒子の粒成長と焼結が進み、後処理として強制粉砕が必須になる。しかしながら、窒化アルミニウムは非常に硬い物質であるため、強制粉砕の際に酸素と金属のコンタミネーションを伴う。このため、純度の高い窒化アルミニウム粒子を製造する費用は、アルミナ粒子の製造費の10倍に近くなる。
なお、熱分解で酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを析出するカルボン酸金属化合物としては、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などの汎用的な安価なカルボン酸金属化合物の中で、カルボン酸マグネシウム化合物ないしはカルボン酸アルミニウム化合物を選択すればよい。
本発明における熱伝導性ペーストの製造に関わる第四特徴手段は、前記した第1特徴手段における有機化合物は、カルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類からなるエステル類、ないしはグリコール類、ないしは液状モノマーからなるいずれかの有機化合物であって、該有機化合物は、前記した第1特徴手段における3つの性質を兼備する有機化合物である点にある。
つまり、本特徴手段に依れば、カルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類からなるエステル類、ないしはグリコール類、ないしはスチレンモノマーなどの液状モノマーからなるいずれかの有機化合物には、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコール溶解液ないしはアルコール混和液は前記アルコールより高い粘度を有し、第三に熱処理で金属酸化物を析出する有機金属化合物が熱処理される温度より低い沸点を有する、これらの3つの性質を兼備するものがある。
熱処理で金属酸化物を析出する有機金属化合物を、メタノールやn−ブタノールなどのアルコールに分散して分散液を作成し、この分散液に前記したいずれかの有機化合物を混合すると、アルコール分散液より高い粘度を有する液状物質となって熱伝導性ペーストが製造できる。この熱伝導性ペーストを、部品ないしは基材に塗布ないしは印刷して熱処理する。最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、さらに昇温すると、有機金属化合物が熱分解して熱伝導性で電気絶縁性の金属酸化物微粒子が析出し、この金属酸化物の粒状微粒子の集まりからなる膜状物質が、部品ないしは基材の表面に形成される。
本発明における熱伝導性ペーストの製造に関わる第五特徴手段は、前記した第一特徴手段に準じて製造した熱伝導性ペーストを、部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷し、該部品ないしは該基材を熱処理し、該部品ないしは該基材の表面に、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物の微粒子の集まりを析出させる、さらに、前記部品の表面ないしは前記基材の表面に、別の部品ないしは別の基材を重ね合わせ、該重ね合わされた部品の一方の部品に、ないしは、該重ね合わされた基材の一方の基材に圧縮荷重を加える、これによって、前記金属酸化物の微粒子の集まりを介して、前記重ね合わされた部品同士、ないしは、前記重ね合わされた基材同士が接合される点にある。
つまり、本特徴手段に依れば、表面に金属酸化物微粒子の集まりが析出した部品ないしは基材を、別の部品ないしは別の基材と重ね合わせ、一方の部品ないしは一方の基材に圧縮荷重を加えると、部品同士ないしは基材同士は、金属酸化物微粒子の集まりを介して接合される。この結果、部品同士ないしは基材同士の間隙には、金属酸化物微粒子の連続構造が形成され、部品同士ないしは基材同士は、優れた熱伝導性と電気絶縁性を持つ金属酸化物の微粒子の集まりを介して接合される。
すなわち、金属酸化物微粒子の大きさが、部品ないしは基材の表面粗さより2桁近く小さいため、金属酸化物微粒子は部品ないしは基材の表面の凹部にも入り込んで析出する。また、金属酸化物微粒子の集まりに圧縮荷重が加えられると、金属酸化物微粒子は部品ないしは基材の表面の凹部に食い込む。さらに、金属酸化物微粒子は粒状形状であるため、金属酸化物微粒子は互いに点接触に近い接触で接しているため、複数の接触点に過大な摩擦熱が発生し、摩擦熱で微粒子同士が互いに接合される。このため、一定の接合強度を持って部品同士ないしは基材同士が接合される。
例えば、ヒートシンクの表面に金属酸化物微粒子の集まりを析出させ、このヒートシンクをプリント基板に載せて圧縮荷重を加えると、硬度が大きい金属酸化物微粒子の集まりが、ヒートシンクの表面とプリント基板の表面とに食い込むとともに、金属酸化物微粒子同士が互いに接触する部位で発生する摩擦熱で接合する。この結果、ヒートシンクとプリント基板とは、金属酸化物微粒子の集まりを介して接合される。これによって、プリント基板の熱が金属酸化物微粒子の集まりを介して効率よくヒートシンクに伝達され、ヒートシンクから大気に放出される。従って、プリント基板に多くの発熱素子を実装しても、プリント基板に実装された半導体素子が熱劣化することはない。
なお、発熱素子としては、例えば、発光ダイオード素子、ワイドギャップ半導体からなるICチップないしはIGBTチップないしはパワーMOSFETなどの発熱素子が挙げられる。
本発明における熱伝導性ペーストの製造に関わる第六特徴手段は、前記した第一特徴手段に準じて製造した熱伝導性ペーストを、部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷し、該部品の表面ないしは該基材の表面に、別の部品ないしは別の基材を重ね合わせ、該重ね合わされた部品の一方の部品に、ないしは、該重ね合わされた基材の一方の基材に圧縮荷重を加え、該重ね合わされた部品ないしは該重ね合わされた基材を熱処理する、これによって、該重ね合わされた部品同士、ないしは、該重ね合わされた基材同士が、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物の微粒子の集まりを介して接合される点にある。
つまり、本特徴手段に依れば、一対になった部品ないしは基材の間隙に、粒状の金属酸化物微粒子の集まりが析出し、金属酸化物微粒子の硬度が大きいため、印加された圧縮荷重で部品ないしは基材の表面に金属酸化物微粒子が食い込む。また、粒状の金属酸化物微粒子が、点接触に近い状態で互いに接触しているため、圧縮荷重を受けると、複数の接触点に過大な摩擦熱が発生し、金属酸化物の微粒子同士が摩擦熱で互いに接合される。この結果、一定の接合強度を持って部品同士ないしは基材同士が、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物微粒子の集まりからなるごく薄い膜を介して接合される。
例えば、基板の表面に熱伝導性ペーストを印刷ないしは塗布し、この基板に金属箔を載せて圧縮荷重を加えて熱処理すると、析出した硬度が大きい金属酸化物微粒子の集まりが、基板の表面と金属箔の表面とに食い込むとともに、金属酸化物微粒子同士が互いに接触する部位で発生する摩擦熱で接合する。この結果、基板と金属箔とは、金属酸化物微粒子の集まりを介して接合される。この後、金属箔を導体パターンが形成されたプリント配線に加工とすると、金属酸化物が化学的に極めて安定であるため、金属酸化物微粒子の集まりが残存してプリント基板が作成される。このプリント基板においては、プリント配線の熱が、効率よく金属酸化物微粒子の集まりからなる膜状体に伝達され、この膜状体から大気に放出される。従って、プリント配線に多くの発熱素子を実装しても、プリント配線に実装された半導体素子が熱劣化することはない。
なお、発熱素子としては、例えば、発光ダイオード素子、ワイドギャップ半導体からなるICチップないしはIGBTチップないしはパワーMOSFETなどの素子が挙げられる。
本発明における熱伝導性ペーストを製造する製造方法に関わる特徴手段は、熱分解によって熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物を析出する有機金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールへの溶解液ないしは前記アルコールへの混和液は、前記アルコールより高い粘度を有する第二の性質と、沸点が前記有機金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とからなる3つの性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合する第二の工程とからなり、これら2つの工程を連続して実施することで、熱伝導性ペーストが製造される製造方法にある。
つまり、本特徴手段によれば、極めて簡単な2つの工程を連続して実施することで、熱伝導性ペーストが製造できる。また、原料として用いる有機金属化合物と有機化合物とは、いずれも汎用的な安価な工業用薬品である。このため、本特徴手段によれば、極めて安価な製造費用で熱伝導性ペーストが製造できる。
ガラスエポキシ基板にアルミニウム板を接合した状態を説明する図である。 図1における接合面の断面を模式的に示した図である。
実施形態1
本実施形態は、熱分解で金属酸化物を析出する原料に係わる実施形態である。以下の説明では、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムが、熱分解で析出する原料について説明する。
熱分解で酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを析出する物質が、熱伝導性ペーストを構成するには、液相化しなければならない。亜硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、硝酸マグネシウムなどの無機マグネシウム化合物は、液相化された無機マグネシウム化合物にマグネシウムイオンが溶出し、多くのマグネシウムイオンが酸化マグネシウムの析出に参加できなくなる。従って、マグネシウム化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質が必要になる。
同様に、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの無機アルミニウム化合物は、液相化された無機アルミニウム化合物にアルミニウムイオンが溶出し、多くのアルミニウムイオンが酸化アルミニウムの析出に参加できなくなる。従って、アルミニウム化合物は溶剤に溶解せず、溶剤に分散する性質が必要になる。
また、アルコールなどの汎用的な有機溶剤に分散できれば、マグネシウム化合物ないしはアルミニウム化合物が溶剤中に均一に分散するため、熱伝導性ペーストの原料になる。無機マグネシウム化合物ないしは無機アルミニウム化合物は、アルコールに分散しない。このため、熱分解で酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを析出する物質は、無機金属化合物ではなく有機金属化合物が望ましい。
さらに、有機金属化合物は熱分解で金属酸化物を析出しなければならない。いっぽう、有機金属化合物から金属酸化物が生成される化学反応の中で、最も簡単な化学反応に熱分解反応がある。つまり、有機金属化合物のアルコール分散液を昇温するだけで、有機金属化合物が熱分解して金属酸化物が析出する。さらに、有機金属化合物の合成が容易でれば、有機金属化合物を安価に製造できる。こうした性質を兼備する有機金属化合物にカルボン酸金属化合物がある。
つまり、カルボン酸金属化合物を構成する物質の中で、最も大きい共有結合半径を持つ物質は金属イオンである。いっぽう、金属イオンとカルボキシル基を構成する酸素イオンとが共有結合するカルボン酸金属化合物は、金属イオンと酸素イオンとの距離が最大になる。こうした分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物を昇温させると、カルボン酸の沸点において、カルボン酸と金属とに分解する。さらに昇温すると、カルボン酸が気化熱を奪って気化し、カルボン酸の気化が完了した後に金属が析出する。従って、熱分解によって金属酸化物を析出するカルボン酸金属化合物は、金属イオンと結合する酸素イオンとの距離が短く、酸素イオンが金属イオンの反対側で結合するイオンと結合する距離が最も長い分子構造上の特徴を持つ必要がある。つまり、カルボン酸金属化合物を昇温させると、カルボン酸の沸点において、酸素イオンが金属イオンの反対側で結合するイオンと結合する部位が最初に切れ、金属酸化物とカルボン酸とに分解する。このような分子構造上の特徴を持つカルボン酸金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンが配位子になって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物である。
また、有機金属化合物の中でカルボン酸金属化合物は、合成が容易で、安価な有機金属化合物である。つまり、カルボン酸を水酸化ナトリウムなどの強アルカリ溶液と反応させると、カルボン酸アルカリ金属が生成される。このカルボン酸アルカリ金属を、硫酸塩などの無機金属塩と反応させると、カルボン酸金属化合物が生成される。また、カルボン酸や沸点が低い有機酸であるため、熱分解温度が比較的低い。このため、カルボキシル基を構成する酸素イオンが、配位子となって金属イオンに近づいて配位結合するカルボン酸金属化合物は、安価な工業用薬品であり、熱処理費用も安価で済む。
こうしたカルボン酸金属化合物として、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などが挙げられる。従って、酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを熱分解で析出する原料は、酢酸金属化合物、カプリル酸金属化合物、安息香酸金属化合物、ナフテン酸金属化合物などからなるカルボン酸マグネシウム化合物ないしはカルボン酸アルミニウム化合物である。
実施形態2
本実施形態は、第一にアルコールに溶解ないしは混和し、第二にアルコール溶解液ないしはアルコール混和液が、アルコールより高い粘度を有し、第三にカルボン酸金属化合物を熱処理する温度より低い沸点を有する有機化合物に関する実施形態である。つまり、こうした3つの性質を兼備する有機化合物を、カルボン酸金属化合物のアルコール分散液に混合させると、アルコール分散液より高い粘度を有する液状物質となって熱伝導性ペーストが製造できる。この熱伝導性ペーストを、部品ないしは基材に塗布ないしは印刷して熱処理すると、最初にアルコールが気化し、次いで有機化合物が気化し、さらに昇温すると、有機金属化合物が熱分解して金属酸化物微粒子の集まりが析出し、この金属酸化物の粒状微粒子の集まりからなる膜状物質が、部品ないしは基材の表面に形成される。
このような有機化合物として、カルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類などのエステル類、グリコール類、ないしは、スチレンモノマーなどの液状モノマーに、前記した3つの性質を兼備するものがある。
カルボン酸ビニルエステル類は、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、ピパリン酸ビニル、オクチル酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニル、アジピン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニルなど様々なカルボン酸ビニルがある。
例えば、酢酸ビニルは化学式がCHCOO‐CH=CHで示され、メタノールに溶解し、メタノールより高い粘性を持ち、沸点がメタノールより高い72.7℃である。従って、カルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、この分散液に酢酸ビニルを混合すると、混合した酢酸ビニルの量に応じて粘度が増大する。このような方法で熱伝導性ペーストを製造し、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷する。その後、大気雰囲気で熱処理すると、メタノールが気化した後に酢酸ビニルが気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解し、金属酸化物の微粒子の集まりからなるごく薄い膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、酢酸ビニルは、酢酸とビニルアルコールとを反応させたエステルで、ポリ酢酸ビニルの合成に用いる原料であって、汎用的な工業用薬品である。
また、モノクロロ酢酸ビニルは化学式がCl‐CHCOO‐CH=CHで示され、n−ブタノールに溶解し、沸点がn−ブタノールより高い136℃である。従って、カルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にモノクロロ酢酸ビニルを混合すると、混合したモノクロロ酢酸ビニルの量に応じて粘度が増大する。このような方法で熱伝導性ペーストを製造し、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷する。その後、大気雰囲気で熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にモノクロロ酢酸ビニルが気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解され、金属酸化物の微粒子の集まりからなるごく薄い膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、モノクロロ酢酸ビニルは、アクリルゴムの架橋サイトとして用いられている汎用的な工業用薬品である。
さらに、アクリル酸エステル類は、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2エチルヘキシルなどの様々なアクリル酸エステルがある。
例えば、アクリル酸メチルは化学式がCH2=CH‐COOCHで示され、メタノールに溶解し、沸点がメタノールより高い80℃である。従って、カルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、この分散液にアクリル酸メチルを混合すると、アクリル酸メチルの量に応じて粘度が増大する。このような方法で熱伝導性ペーストを製造し、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷する。その後、大気雰囲気で熱処理すると、メタノールが気化した後にアクリル酸メチルが気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解し、金属酸化物微粒子の集まりからなるごく薄い膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、アクリル酸メチルはアクリル樹脂の原料であって、汎用的な工業用薬品である。
また、アクリル酸ブチルは化学式がCH=CH‐COOCで示され、n−ブタノールに溶解し、沸点がn−ブタノールより高い148℃である。従って、カルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にアクリル酸ブチルを混合すると、アクリル酸ブチルの量に応じて粘度が増大する。このような方法で熱伝導性ペーストを製造し、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷する。その後、大気雰囲気で熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にアクリル酸ブチルが気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解され、金属酸化物微粒子の集まりからなるごく薄い膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、アクリル酸ブチルは、アクリル酸とn−ブタノールを反応させたエステルで、繊維処理剤、粘接着剤、塗料、合成樹脂、アクリルゴム、エマルションの原料として使用される汎用的な工業用薬品である。
また、メタクリル酸エステル類は、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸アルキル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリルなど様々なメタクリル酸エステルがある。
例えば、メタクリル酸エチルは化学式がHC=C(CH)COOCで示され、メタノールに溶解し、沸点がメタノールより高い117℃である。従って、カルボン酸金属化合物をメタノールに分散し、この分散液にメタクリル酸エチルを混合すると、メタクリル酸エチルの量に応じて粘度が増大する。このような方法で熱伝導性ペーストを製造し、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷する。その後、大気雰囲気で熱処理すると、メタノールが気化した後にメタクリル酸エチルが気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解し、金属酸化物の微粒子の集まりからなるごく薄い膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、メタクリル酸エチルは、顔料、塗料、接着剤、繊維処理剤、成形材料、歯科用材料の原料として用いられている汎用的な工業用薬品である。
さらに、メタクリル酸nブチルは化学式がCHC(CH)COO(CHCHで示され、n−ブタノールに溶解し、沸点がn−ブタノールより高い163.5℃である。従って、カルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にメタクリル酸nブチルを混合すると、メタクリル酸nブチルの量に応じて粘度が増大する。このような方法で熱伝導性ペーストを製造し、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷する。その後、大気雰囲気で熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にメタクリル酸nブチルが気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解され、金属酸化物微粒子の集まりからなるごく薄い膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、メタクリル酸nブチルは、塗料、分散剤、繊維処理剤の原料として用いられている汎用的な工業用薬品である。
さらに、スチレンモノマーは化学式がCCH=CHで示され、n−ブタノールと混和し、沸点がn−ブタノールより高い145℃の液状モノマーである。カルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液にスチレンモノマーを混合すると、スチレンモノマーの量に応じて粘度が増大する。このような方法で熱伝導性ペーストを製造し、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷する。その後、大気雰囲気で熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にスチレンモノマーが気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解され、金属酸化物微粒子の集まりからなるごく薄い膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。なお、スチレンモノマーは、ポリスチレンを始めとして、発泡ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン、不飽和ポリエステルなどの合成樹脂の原料となる汎用的な工業用薬品である。
また、化学式がC(OH)で示されるエチレングリコールは、n−ブタノールと混和し、沸点が197.3℃の液状モノマーである。さらに、化学式がO(CHCHOH)で示されるジエチレングリコールは、n−ブタノールと混和し、沸点が244.3℃の液状モノマーである。さらに、化学式がCHCHOHCHOHで示されるプロピレングリコールは、n−ブタノールと混和し、沸点が188.2℃の液状モノマーである。さらに、ジプロピレングリコールは、化学式が[CHCH(OH)CHOで示され、n−ブタノ−ルと混和し、沸点が232.2℃の液状モノマーである。また、トリプロピレングリコールは、化学式が[CHCH(OH)CHOで示され、n−ブタノールと混和し、沸点が265.1℃の液状モノマーである。従って、カルボン酸金属化合物をn−ブタノールに分散し、この分散液に前記したグリコール類を混合すると、グリコール類の量に応じて粘度が増大する。このような方法で熱伝導性ペーストを製造し、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷する。その後、大気雰囲気で熱処理すると、n−ブタノールが気化した後にグリコール類が気化し、この後、カルボン酸金属化合物が熱分解され、金属酸化物微粒子の集まりからなるごく薄い膜が、部品ないしは基材の表面に形成される。また、グリコール類は、樹脂の中間原料として用いるほか、溶剤としての性質に優れ、さらに湿潤作用、保湿作用、保存作用、乳化作用、高沸点、低凝固点などの特長を活かして、食品、医薬品、化粧品、熱媒、冷媒、不凍液などに幅広く用いられる汎用的な工業用薬品である。
本実施例は、アルミニウム板の表面に、酸化マグネシウムの微粒子の集まりを析出させる実施例である。なお、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷して熱処理することで、部品ないしは基材の表面に形成される酸化マグネシウム微粒子の集まりからなる膜状物質の厚みは、塗布ないしは印刷した熱伝導性ペーストの厚みと、熱伝導性ペーストにおけるカルボン酸マグネシウム化合物の混合割合とで一義的に決まる。このため、酸化マグネシウム微粒子の集まりからなる膜状物質の厚みは、部品ないしは基材の形状や材質に依存しない。従って、アルミニウム板がフィンを有するか否かに係わらず、また、アルミニウム板の板厚に係わらず、膜状体の厚みは変わらない。
本実施例において用いたアルミニウム板は、2cm×2cmで板厚が2mmである。また、酸化マグネシウムの原料は、安息香酸マグネシウム・四水和物Mg(CCOO)O(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。また有機化合物は、沸点が245℃のジエチレングリコール(CHCHOH)O(例えば、三菱化学の製品)を用いた。アルコールは、試薬1級のn−ブタノールを用いた。
最初に、安息香酸マグネシウムを10重量%としてn−ブタノールに分散し、この分散液にジエチレングリコールが5重量%になるように混合し、熱伝導性ペーストを作成した。この熱伝導性ペーストを、アルミニウム板の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷にあたっては、厚みが60μmで開口率が37%のスクリーンを用い、マイクロテック社の印刷装置MT−320TVを用いて印刷した。
次に、熱伝導性ペーストが印刷された試料を大気雰囲気で熱処理した。最初に、120℃に昇温してn−ブタノールを気化させ、さらに、250℃に昇温してジエチレングリコールを気化させ、310℃に1分間放置して安息香酸マグネシウムを熱分解した。
次に、試料の表面を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、JFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。この装置は、100Vからの極低加速電圧による表面観察が可能で、試料に導電性の被膜を形成せずに直接試料の表面が観察できる特徴を持つ。最初に、反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。表面には40nm〜60nmの大きさからなる粒状粒子が、表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、基板表面に形成された微粒子を構成する元素を分析した。マグネシウム原子と酸素原子とがほぼ同じ頻度で存在していることが確認できた。さらに、試料の断面の観察から、粒状微粒子が200層に近い厚みで多層構造を形成していることが分かった。以上の表面観察の結果から、40nm〜60nmの大きさの幅に入る酸化マグネシウムの粒状微粒子の集まりが、200層前後の層をなして析出していることが確認できた。
本実施例は、実施例1で作成した試料を、ガラスエポキシ基板に接合させる実施例である。つまり、電子回路を構成する発熱素子が発する熱を、効率よく大気中に放出する手段として、熱伝導性が大きく密度が小さいアルミニウムから構成され、大きな表面積を有するフィンが形成されたヒートシンクを、発熱素子の近傍ないしはプリント基板の裏面に設置する方法が用いられている。本実施例は、実施例1におけるアルミニウム板によってヒートシンクを代表させ、ガラスエポキシ基板によってプリント基板を代表する実施例で、ヒートシンクとプリント基板とは、金属に近い熱伝導性と優れた電気絶縁性の性質を兼備する酸化マグネシウム微粒子の集まりからなる膜状体で接合される。
なお、プリント基板は、柔軟性を持たないリジッド基板と柔軟性を持つフレキシブル基板に2分される。さらに、リジッド基板は、屈曲強度、はんだ耐熱性、熱膨張係数、電気絶縁性、誘電率特性などの性質によって、紙フェノール基板、紙エポキシ基板、ガラスコンポジッド基板、ガラスエポキシ基板、テフロン基板、アルミナ基板、低温同時焼成(LTCC)基板、コンポジッド基板、ハロゲンフリー基板などの様々な材質からなるリジッド基板を使分けている。また、フレキシブル基板は、ポリイミドやポリエステルのフィルムの上に銅箔の配線パターンを持ち、表面が絶縁フィルムで被覆されている。
このように、プリント基板は様々な材質で構成されるが、酸化マグネシウム微粒子がモース硬度5.5の硬さを持つため、酸化マグネシウム微粒子の集まりが析出したヒートシンクをプリント基板に載せて、ヒートシンクに圧縮荷重を加えると、ヒートシンクの表面とアルミナ基板を除く全ての材質からなるプリント基板の表面とに、酸化マグネシウム微粒子が食い込み、また、酸化マグネシウム微粒子同士が摩擦熱で接合し、酸化マグネシウム微粒子の集まりを介して、ヒートシンクがプリント基板に接合される。従って、ガラスエポキシ基板によってプリント基板を代表させても支障がない。なお、カルボン酸アルミニウム化合物の熱分解で析出する酸化アルミニウムは、アルミナ基板を構成するアルミナより純度が高いため、酸化アルミニウム微粒子はアルミナ基板のアルミナより硬い。このため、酸化アルミニウム微粒子の集まりが析出したヒートシンクをアルミナ基板に載せ、ヒートシンクに圧縮荷重を加えると、ヒートシンクの表面とアルミナ基板の表面とに、酸化アルミニウム微粒子が食い込み、また、酸化アルミニウム微粒子同士が摩擦熱で接合し、酸化アルミニウム微粒子の集まりを介して、ヒートシンクがアルミナ基板に接合される。
ガラスエポキシ基板は、FR‐4のガラスエポキシ基板で、大きさが20cm×20cmで、厚さが1.6mmからなる。このガラスエポキシ基板の表面に、実施例1で製作したアルミニウム板の6個を離散的に載せ、6個のアルミニウム板に治具を用いて10トン/cmの圧縮荷重を同時に加え、6個のアルミニウム板をエポキシ基板に接合した。アルミニウム板が接合された部位を切断し、切断面を前記した電子顕微鏡で観察した。この結果、酸化マグネシウム微粒子がアルミニウム板の表面とガラスエポキシ基板の表面との双方に食い込むとともに、隣接する酸化マグネシウム微粒子同士が接合され、酸化マグネシウム微粒子の集まりが約8μmの厚さからなる多層構造を形成していた。このため、酸化マグネシウム微粒子の集まりによって、ガラスエポキシ基板とアルミニウム板とが確実に絶縁化されるとともに、酸化マグネシウム微粒子を介して、ガラスエポキシ基板の熱が効率よくアルミニウム板に伝導され、アルミニウム板から大気に熱が放出される。さらに、アルミニウム板の接合強度を引張試験機によって調べた結果、引張応力は20MPaに近い引張強度を有した。
図1は、ガラスエポキシ基板1にアルミニウム板2の6枚を接合した状態を模式的に示す図である。図2は、接合面の断面を模式的に示した図であり、ガラスエポキシ基板1とアルミニウム板2との接合面は、酸化マグネシウム微粒子の集まり3を介して接合される。
本実施例は、アルミニウム板の表面に、酸化アルミニウムの微粒子の集まりを析出させる実施例である。なお、熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷して熱処理し、部品ないしは基材の表面に形成される酸化アルミニウムの微粒子の集まりからなる膜状体の厚みは、前記した酸化マグネシウム微粒子の場合と同様に、塗布ないしは印刷した熱伝導性ペーストの厚みと、熱伝導性ペーストにおけるカルボン酸アルミニウム化合物の混合割合とで一義的に決まる。
本実施例におけるアルミニウム板は、実施例1と同様に2cm×2cmで板厚が2mmである。また、酸化アルミニウムの原料は安息香酸アルミニウムAl(CCOO)(例えば、三津和化学薬品株式会社の製品)を用いた。有機化合物は実施例1と同様に沸点が245℃のジエチレングリコールを用いた。アルコールは、試薬1級のn−ブタノールを用いた。
最初に、安息香酸アルミニウムを10重量%としてn−ブタノールに分散し、この分散液にジエチレングリコールが5重量%になるように混合し、熱伝導性ペーストを作成した。この熱伝導性ペーストを、前記したアルミニウム板の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷にあたっては、実施例1と同様のスクリーン印刷機を用いた。
熱伝導性ペーストが印刷された試料を、大気雰囲気で熱処理した。最初に、120℃に昇温してn−ブタノールを気化させ、さらに、250℃に昇温してジエチレングリコールを気化させ、310℃に1分間放置して安息香酸アルミニウムを熱分解した。
次に、試料の表面を電子顕微鏡で観察した。電子顕微鏡は、実施例1で用いたJFEテクノリサーチ株式会社の極低加速電圧SEMを用いた。最初に、反射電子線の900V〜1kVの間にある2次電子線を取り出して画像処理を行った。表面には40nm〜60nmの大きさからなる粒状粒子が、表面全体に形成されていることが分かった。次に、反射電子線の900V〜1kVの間にあるエネルギーを抽出して画像処理を行い、画像の濃淡によって材質の違いを観察した。濃淡が認められなかったので、同一の物質から形成されていることが分かった。さらに、特性X線のエネルギーとその強度を画像処理し、基板表面に形成された微粒子を構成する元素を分析した。酸素原子がアルミニウム原子より過剰に存在していることが確認できた。さらに、試料の断面の観察から、粒状微粒子が200層に近い厚みで多層構造を形成していることが分かった。以上の表面観察の結果から、40nm〜60nmの大きさの幅に入る酸化アルミニウムの粒状微粒子の集まりが、200層前後の層をなして析出していることが確認できた。
本実施例は、前記した実施例3で作成した試料を、アルミナ基板に接合させる実施例である。本実施例は、実施例1における酸化マグネシウムより硬い酸化アルミニウムからなる微粒子を介して、プリント回路板の中で最も硬いアルミナ基板と、ヒートシンクを構成するアルミニウム板とを接合する実施例で、ヒートシンクとプリント回路板とは、金属に近い熱伝導性と優れた電気絶縁性の性質を兼備する酸化アルミニウムの微粒子の集まりからなる膜状体で接合される。なお、アルミナ基板は、グリーンシートと呼ばれるアルミナにタングステンなどでパターンを形成して積層したものを焼成して製造する。最も高価なプリント基板であるが、高周波特性と熱伝導率に優れるため、主にUHF帯やSHF帯のパワー回路などに限定して使用されている。
アルミナ基板は、96%が酸化アルミニウムからなるアルミナ基板を用い、大きさが60cm×50cmで、厚さが0.5mmからなる(例えば、株式会社フォノン明和の製品)。このアルミナ基板の表面に、実施例3で製作したアルミニウム板の6個を離散的に載せ、6個のアルミニウム板に治具を用いて50トン/cmの圧縮荷重を同時に加え、6個のアルミニウム板をアルミナ基板に接合した。アルミニウム板が接合された部位を切断し、切断面を前記した電子顕微鏡で観察した。この結果、酸化アルミニウム微粒子がアルミニウム板の表面とアルミナ基板の表面との双方に食い込むとともに、隣接する酸化アルミニウム微粒子同士が接合され、酸化アルミニウム微粒子の集まりが約9μmの厚さからなる多層構造を形成していた。この結果、酸化アルミニウム微粒子がアルミニウム板の表面とアルミナ基板の表面との双方に食い込むとともに、隣接する酸化アルミニウム微粒子同士が接合され、酸化アルミニウム微粒子の集まりが約9μmの厚さからなる多層構造を形成していた。このため、酸化アルミニウム微粒子の集まりによって、アルミナ基板とアルミニウム板とが確実に絶縁化されるとともに、酸化アルミニウム微粒子を介して、アルミナ基板の熱が効率よくアルミニウム板に伝導され、アルミニウム板から大気に熱が放出される。さらに、アルミニウム板の接合強度を引張試験機によって調べた結果、引張応力は60MPaに近い引張強度を有した。なお、アルミニウム板がアルミナ基板に接合される状態は、実施例3の図1及び図2と同様であるため図示しない。
本実施例は、金属箔を酸化アルミニウム微粒子の集まりを介して金属板に接合し、これによって、メタル基板を製造する実施例である。従来のメタル基板は、プリント配線が形成される金属箔を、非熱伝導性の接着剤によって金属板に接着していたため、接着層が熱抵抗を形成し、金属箔の熱が金属板に伝導しにくい構造であった。本実施例に依れば、優れた熱伝導性と絶縁性とを兼備する酸化アルミニウム微粒子の集まりを介して、金属箔が金属板に接合されるため、金属箔の熱が金属板に効率よく伝導される。なお、金属箔としてアルミ箔を、金属板として銅板を用いることもできる。
本実施例では、厚みが35μmからなる銅箔を10cm×10cmに切断した。また、アルミニウム板は厚みが1mmからなり、12cm×12cmの大きさに切断した。また、実施例3と同様に、酸化アルミニウムの原料は安息香酸アルミニウムを用い、有機化合物はジエチレングリコールを用い、アルコールは試薬1級のn−ブタノールを用いた。
実施例3と同様に、安息香酸アルミニウムを10重量%としてn−ブタノールに分散し、この分散液にジエチレングリコールが5重量%になるように混合し、熱伝導性ペーストを作成した。この熱伝導性ペーストを、前記したアルミニウム板の表面にスクリーン印刷した。スクリーン印刷にあたっては、実施例1と同様のスクリーン印刷機を用いた。
次に、熱伝導性ペーストが印刷されたアルミニウム板の表面に、前記した銅箔を載せ、治具を用いて10トン/cmの圧縮荷重を銅箔全体に加え、窒素雰囲気で熱処理した。最初に、120℃に昇温してn−ブタノールを気化させ、さらに、250℃に昇温してジエチレングリコールを気化させ、350℃に1分間放置して安息香酸アルミニウムを熱分解した。
さらに、得られた試料を切断し、切断面を前記した電子顕微鏡で観察した。この結果、酸化アルミニウム微粒子がアルミニウム板の表面と銅箔の表面との双方に食い込むとともに、隣接する酸化アルミニウム微粒子同士が接合され、酸化アルミニウム微粒子の集まりが約8μmの厚さからなる多層構造を形成していた。また、銅箔の接合強度を引張試験機によって調べた結果、引張応力は10MPaに近い引張強度を有した。
なお、本実施例で製造した片面銅張メタル基板に対して、エッチングレジストからなるドライフィルムを銅箔にラミネートし、露光と現像とエッチングとエッチングレジストのはく離とによって、銅箔を導体パターンが形成されたプリント配線とすると、酸化アルミニウムは化学的に極めて安定な物質であるため、酸化アルミニウム微粒子はアルミ板の表面に残留し、絶縁性の熱伝導層として作用する。こうしたメタル基板をプリント基板として用いると、プリント配線に実装される発熱素子の熱が、酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる膜状体によって、効率よくアルミ板に伝わる。このため、酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる膜状体とアルミ板とはヒートシンクの作用を発揮し、プリント配線に多くの発熱素子を実装しても、プリント配線に実装された半導体素子は熱劣化しない。
なお、本実施例では、銅箔をアルミ板の片面にのみ接合したが、本実施例に準じて、アルミ板の両面に銅箔を接合することができる。これによって、両面銅張メタル基板が製造される。この両面銅張メタル基板についても、銅箔を導体パターンが形成されたプリント配線とすることができる。片面銅張メタル基板と同様に、酸化アルミニウム微粒子の集まりはアルミ板の表面に残留するため、酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる膜状体とアルミ板とはヒートシンクの作用を発揮し、プリント配線に多くの発熱素子を実装しても、プリント配線に実装された半導体素子は熱劣化しない。
本実施例は、ガラス繊維からなる布を重ね合わせ、これをエポキシ樹脂に含浸させて製造したガラスエポキシ樹脂からなる基板の両面に、プリント配線板を構成する金属箔を、酸化アルミニウム微粒子の集まりを介して接合し、これによって、両面銅張ガラスエポキシ樹脂基板を製造する実施例である。従来の両面銅張ガラスエポキシ樹脂基板は、プリント配線板を構成する銅箔を、非熱伝導性の接着剤によってガラスエポキシ樹脂からなる基板の両面に接着していたため、接着層がガラスエポキシ樹脂と共に熱抵抗を形成し、金属箔の熱が伝導しにくい構造であった。本実施例に依れば、優れた熱伝導性と絶縁性を兼備する酸化アルミニウム微粒子を介して、両面の銅箔がガラスエポキシ樹脂基板に接合されるため、両面の銅箔の熱が酸化アルミニウム微粒子の集まりに効率よく伝導される。なお、金属箔としてアルミ箔を用いることもできる。また、本実施例では、熱分解温度が350℃以上のガラスエポキシ樹脂を用いる。
本実施例では、厚みが35μmからなる銅箔を10cm×10cmに切断した。また、ガラスエポキシ樹脂基板の厚みが0.6mmからなり、12cm×12cmの大きさに切断した。また、実施例3と同様に、酸化アルミニウムの原料は安息香酸アルミニウムを用い、有機化合物はジエチレングリコールを用い、アルコールは試薬1級のn−ブタノールを用いた。
実施例3と同様に、安息香酸アルミニウムを10重量%としてn−ブタノールに分散し、この分散液にジエチレングリコールが5重量%になるように混合し、熱伝導性ペーストを作成した。この熱伝導性ペーストを、ガラスエポキシ樹脂の両面に10cm×10cmの面積でスクリーン印刷した。スクリーン印刷は、実施例1と同様のスクリーン印刷機を用いた。
熱伝導性ペーストが印刷されたガラスエポキシ樹脂の両面に、前記した銅箔を載せ、治具を用いて10トン/cmの圧縮荷重を加え、窒素雰囲気で熱処理した。最初に、120℃に昇温してn−ブタノールを気化させ、さらに、250℃に昇温してジエチレングリコールを気化させ、350℃に1分間放置して安息香酸アルミニウムを熱分解した。
さらに、得られた試料を切断し、切断面を前記した電子顕微鏡で観察した。この結果、酸化アルミニウム微粒子が銅箔の表面とガラスエポキシ樹脂基板の表面との双方に食い込むとともに、隣接する酸化アルミニウム微粒子同士が接合され、酸化アルミニウム微粒子の集まりが約8μmの厚さからなる多層構造を形成していた。また、銅箔の接合強度を引張試験機によって調べた結果、引張応力は10MPaに近い引張強度を有した。
なお、本実施例で製造した両面銅張ガラスエポキシ樹脂基板に対して、エッチングレジストからなるドライフィルムを銅箔にラミネートし、露光と現像とエッチングとエッチングレジストのはく離とによって、銅箔を導体パターンが形成されたプリント配線とすると、酸化アルミニウムは化学的に極めて安定な物質であるため、酸化アルミニウム微粒子の集まりは、ガラスエポキシ樹脂基板の表面に残留し、絶縁性の熱伝導層として作用する。こうした両面銅張ガラスエポキシ樹脂基板をプリント基板として用いると、プリント配線に実装される発熱素子の熱が、酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる膜状体に伝わり、この膜状体から大気に発散される。このため、プリント配線に多くの発熱素子を実装しても、プリント配線に実装された半導体素子は熱劣化しない。
さらに、本実施例で製造した両面銅張ガラスエポキシ樹脂基板を用いて多層基板を製造する際は、プリント配線が形成された内層基板を、プリント配線が形成されていない2枚の外層基板で挟み、圧縮荷重を加えると、酸化アルミニウム微粒子の集まりを介して基板同士が接合される。従来は、プリプレグと呼ばれる接着シートを介して基板同士を積層するため、非熱伝導性の接着シートによって、熱伝導性がさらに悪化する。この後、穴あけ加工を行い、貫通穴の内側を銅メッキし、さらに、内層基板と同様に外層基板にプリント配線を形成する。このようにして製造した多層基板をプリント基板として用いると、プリント配線に実装される発熱素子の熱が、酸化アルミニウム微粒子からなる膜状体に伝わり、この膜状体から大気に発散される。さらに、多層基板の内部に酸化アルミニウム微粒子からなる膜状体が形成されているため、多層基板内部の熱は、酸化アルミニウム微粒子からなる膜状体に伝わり、この膜状体の側面から大気に発散される。このため、プリント配線に多くの発熱素子を実装しても、プリント配線に実装された半導体素子は熱劣化しない。
本実施例は、ベースフィルムとなるポリイミドフィルムの片面に熱伝導性ペーストを印刷し、この上に、銅箔を載せて圧縮荷重を加えて熱処理し、析出した酸化アルミニウム微粒子の集まりを介して、ベースフィルムを銅箔と接合させる実施例である。従来は、ベースフィルムとなるポリイミドフィルムと銅箔とを非熱伝導性の接着剤によって接着し、この後、銅箔を導体パターンが形成されたプリント配線とし、さらに、カバーフィルムとなるポリイミドフィルムをプリント配線に接着剤によって接着していたため、2層からなる非熱伝導性の接着層がポリイミドフィルムと共に熱抵抗を形成し、プリント配線に実装された発熱素子の熱が伝導しにくい構造であった。なお、ポリイミドフィルムは、400℃を超える耐熱性を持つ。
本実施例では、厚みが12μmからなる銅箔を2cm×10cmに切断した。また、ポリイミドフィルムの厚みが25μmからなり、2.5cm×11cmの大きさに切断した。また、実施例3と同様に、酸化アルミニウムの原料は安息香酸アルミニウムを用い、有機化合物はジエチレングリコールを用い、アルコールは試薬1級のn−ブタノールを用いた。
実施例3と同様に、安息香酸アルミニウムを10重量%としてn−ブタノールに分散し、この分散液にジエチレングリコールが5重量%になるように混合し、熱伝導性ペーストを作成した。この熱伝導性ペーストを、ポリイミドフィルムの表面に2cm×10cmの面積でスクリーン印刷した。スクリーン印刷は、実施例1と同様のスクリーン印刷機を用いた。
熱伝導性ペーストが印刷されたポリイミドフィルムの上に、前記した銅箔を載せ、治具を用いて10トン/cmの圧縮荷重を加え、窒素雰囲気で熱処理した。最初に、120℃に昇温してn−ブタノールを気化させ、さらに、250℃に昇温してジエチレングリコールを気化させ、350℃に1分間放置して安息香酸アルミニウムを熱分解した。
さらに、得られた試料を切断し、切断面を前記した電子顕微鏡で観察した。この結果、酸化アルミニウム微粒子が銅箔の表面とガラスエポキシ樹脂基板の表面との双方に食い込むとともに、隣接する酸化アルミニウム微粒子同士が接合され、酸化アルミニウム微粒子の集まりが約8μmの厚さからなる多層構造を形成していた。また、銅箔の接合強度を引張試験機によって調べた結果、引張応力は10MPaに近い引張強度を有した。
本実施例で製造した片面銅張ポリイミドフィルムに対して、エッチングレジストからなるドライフィルムを銅箔にラミネートし、露光と現像とエッチングとエッチングレジストのはく離とによって、銅箔を導体パターンが形成されたプリント配線とすると、酸化アルミニウムは化学的に極めて安定な物質であるため、酸化アルミニウム微粒子の集まりは、ポリイミドフィルムの表面に残留し、絶縁性の熱伝導層として作用する。この後、前記した方法に準じて、ポリイミドフィルムの片面に酸化アルミニウムの微粒子の集まりを析出させ、このポリイミドフィルムをカバーフィルムとして、導体パターンが形成されたプリント配線の上に載せて圧縮荷重を加えると、ポリイミドフィルムが酸化アルミニウム微粒子の集まりを介してプリント配線に接合し、片面フレキシブル基板が製作される。この片面フレキシブル基板は、プリント配線の上下に酸化アルミニウム微粒子の膜状体が形成されるため、プリント配線に実装される発熱素子の熱が、酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる膜状体に伝わり、この膜状体から大気に発散される。このため、プリント配線に多くの発熱素子を実装しても、プリント配線に実装された半導体素子は熱劣化しない。
なお、両面フレキシブル基板の製作に当たっては、ベースフィルムの両面に熱伝導性ペーストを印刷し、ベースフィルムの両面に銅箔を載せ、圧縮荷重を加えて熱処理する。さらに、銅箔を導体パターンが形成されたプリント配線とする。さらに、カバーフィルムとして用いるポリイミドフィルムの片面に、酸化アルミニウム微粒子の集まりを析出させ、このポリイミドフィルムの2枚の各々を、導体パターンが形成されたプリント配線に接合させると、両面フレキシブル基板が製作される。この両面フレキシブル基板は、プリント配線の上下とカバーフィルムの内側の4カ所に、酸化アルミニウム微粒子の膜状体が形成されるため、プリント配線に実装される発熱素子の熱が、酸化アルミニウム微粒子の集まりからなる膜状体に伝わり、この膜状体から大気に発散される。このため、プリント配線に多くの発熱素子を実装しても、プリント配線に実装された半導体素子は熱劣化しない。
以上に、酸化マグネシウム微粒子の集まり、ないしは、酸化アルミニウム微粒子の集まりを介して、金属板とプリント基板との接合、および、金属箔とプリント基板との接合に係わる実施例を説明した。いずれの実施例においても、安価な工業用薬品からなる熱伝導性ペーストを接合面に印刷して熱処理し、この後、接合面を重ね合わせ、重ね合わされた被接合体に圧縮荷重をかける、ないしは、熱伝導性ペーストを接合面に印刷して接合面を重ね合わせ、重ね合わされた被接合体に圧縮荷重をかけて熱処理するという極めて簡単な処理によって、酸化マグネシウム微粒子の集まり、ないしは、酸化アルミニウム微粒子の集まりを介して、接合面同士が金属に近い熱伝導性と優れた絶縁性の膜状体を介して接合される。このため、部品ないしは基材が熱処理温度に対する耐熱性を持てば、実施例に限定されることなく、異質の材質の組み合わせであっても、また、どのような材質の組み合わせであっても部品同士ないしは基材同士の接合が容易にできる。また、接合面の清浄化、平坦化や、接合面の溶融や軟化を伴う高温処理などの一切の事前処理が不要である。これによって、安価な費用で部品同士ないしは基材同士の接合ができる。この結果、部品同士ないしは基材同士が、金属に近い熱伝導性と優れた絶縁性の膜状体を介して接合される。

Claims (7)

  1. 熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷し、該部品ないしは該基材を熱処理すると、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する膜状物質が、前記部品の表面ないしは前記基材の表面に形成される熱伝導性ペーストの製造は、
    熱分解によって熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物が析出する有機金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成し、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールに溶解した溶解液ないしは前記アルコールに混和した混和液は、前記アルコールより高い粘度を有する第二の性質と、沸点が前記有機金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とからなる3つの性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合して熱伝導性ペーストを製造することを特徴とする、熱伝導性ペーストの製造。
  2. 請求項1における有機金属化合物は、カルボキシル基を構成する酸素イオンが金属イオンに配位結合するカルボン酸金属化合物であって、該カルボン酸金属化合物は、熱分解によって熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物を析出する有機金属化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した有機金属化合物。
  3. 請求項2におけるカルボン酸金属化合物は、熱分解によって酸化マグネシウムないしは酸化アルミニウムを析出するカルボン酸金属化合物であることを特徴とする、請求項2に記載したカルボン酸金属化合物。
  4. 請求項1における有機化合物は、カルボン酸ビニルエステル類、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類からなるエステル類、ないしはグリコール類、ないしは液状モノマーからなるいずれかの有機化合物であって、該有機化合物は、請求項1における3つの性質を兼備する有機化合物であることを特徴とする、請求項1に記載した有機化合物。
  5. 請求項1に準じて製造した熱伝導性ペーストを、部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷し、該部品ないしは該基材を熱処理する、さらに、該部品の表面ないしは該基材の表面に、別の部品ないしは別の基材を重ね合わせ、該重ね合わされた部品の一方に、ないしは、該重ね合わされた基材の一方に圧縮荷重を加える、これによって、該重ね合わされた部品ないしは該重ね合わされた基材が、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物の微粒子の集まりを介して接合されることを特徴とする、請求項1に準じて製造した熱伝導性ペーストを用いた部品同士ないしは基材同士の接合。
  6. 請求項1に準じて製造した熱伝導性ペーストを、部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷し、該部品の表面ないしは該基材の表面に、別の部品ないしは別の基材を重ね合わせ、該重ね合わされた部品の一方に、ないしは、該重ね合わされた基材の一方に圧縮荷重を加え、該重ね合わされた部品ないしは該重ね合わされた基材を熱処理する、これによって、該重ね合わされた部品、ないしは、該重ね合わされた基材が、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物の微粒子の集まりを介して接合されることを特徴とする、請求項1に準じて製造した熱伝導性ペーストを用いた部品同士ないしは基材同士の接合。
  7. 熱伝導性ペーストを部品ないしは基材の表面に塗布ないしは印刷し、該部品ないしは該基材を熱処理すると、熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する膜状物質が前記部品の表面ないしは前記基材の表面に形成される熱伝導性ペーストを製造する製造方法は、
    熱分解によって熱伝導性と電気絶縁性との性質を兼備する金属酸化物を析出する有機金属化合物を、アルコールに分散してアルコール分散液を作成する第一の工程と、前記アルコールに溶解ないしは混和する第一の性質と、前記アルコールに溶解した溶解液、ないしは、前記アルコールに混和した混和液は、前記アルコールより高い粘度を有する第二の性質と、沸点が前記有機金属化合物の熱分解温度より低い第三の性質とからなる3つの性質を兼備する有機化合物を、前記アルコール分散液に混合する第二の工程とからなり、これら2つの工程を連続して実施することで、熱伝導性ペーストが製造される製造方法であることを特徴とする、熱伝導性ペーストを製造する製造方法。
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