図5乃至図7に、本発明のガス絶縁開閉装置の実施例1を示す。該図に示す本実施例は、2台の相切替用断路器である発電機用断路器とモータ用断路器を垂直に、即ち、発電機用断路器とモータ用断路器の開閉動作の軸を垂直に配置した構成の例である。
図5は、実施例1における2台の相切替断路器である発電機用断路器3とモータ用断路器4を用いた、揚水式の水力発電所におけるガス絶縁開閉装置の構成を示すものである。
該図に示す如く、本実施例のガス絶縁開閉装置は、1つの金属製の密閉容器14内に2台の相切替用断路器である発電機用断路器3とモータ用断路器4(三相一括)が、垂直(発電機用断路器3とモータ用断路器4の極間方向、即ち、開閉動作方向が図5の上下方向)に配置され、合計6相分の相切替用断路器を構成している。このモータ用断路器4と発電機用断路器3は互いに平行に配置され、かつ、電気的に並列に接続されている。また、密閉容器14の一方である三相一括母線用引出口23は気中ブッシング12に接続され、もう一方の三相一括母線用引出口24はケーブルヘッド9に接続されている。
なお、本実施例は、同じ密閉容器14内に三相交流を流す三相一括方式であり、三相交流に3つの密閉容器を用いる単相方式の構成ではない。
気中ブッシング12が送電線側、ケーブルヘッド9が発電機側に接続されていれば、発電時には発電機側から発電機用断路器3を通して送電線側に潮流が流れ、揚水時には送電線側からモータ用断路器4を通して発電機側に潮流が流れることになる。この相切替用断路器である発電機用断路器3とモータ用断路器4を収納する密閉容器14内の詳細構成を図6を用いて、以下に説明する。
図6は、図5における発電機用断路器3とモータ用断路器4を収納する密閉容器14の内部構造の詳細である。
該図に示す如く、発電機用断路器3とモータ用断路器4は、1つの密閉容器14に内包されている。この密閉容器14は、2つの絶縁スペーサ15を介して2つの三相一括母線用引出口23、24を持ち、絶縁スペーサ15に支持され片側の三相一括母線用引出口23から引出される引出用導体21、モータ用断路器4及び発電機用断路器3、モータ用断路器4及び発電機用断路器3を接続する断路器間接続導体18、発電機をモータに切替える相切替導体19、モータを発電機に切替える相切替導体20、絶縁スペーサ15に支持されもう一方の三相一括母線用引出口24から引出される引出用導体22まで順に接続され、それらは全て1つの密閉容器14に内包されている。
また、2つの三相一括母線用引出口23、24は、モータ用断路器4と発電機用断路器3の開閉動作方向(図6の上下方向)と直交する方向(水平方向)に位置していると共に、気中ブッシング12側の三相一括母線用引出口23とケーブルヘッド9側の三相一括母線用引出口24が、モータ側断路器4と発電機側断路器3を介して平面から見て一直線になるように配置されている。
更に、本実施例では、発電機用断路器3とモータ用断路器4は、互いに平行に並んで配置されているが、密閉容器14の長手方向が垂直で構成している図6の場合は、2つの発電機用断路器3とモータ用断路器4を水平方向に並べて配置している。なお、16はSF6ガスなどの絶縁ガス、17aは発電機用断路器3を操作する断路器用操作器、17bはモータ用断路器4を操作する断路器用操作器である。
このような構成の本実施例において、例えば、発電時は、発電機から発生した電気を送電するために発電機用断路器3は「入」とし、モータ用断路器4は「切」の状態とすることで、電気は引出用導体22、相切替導体20、発電機用断路器3、断路器間接続導体18、モータ用断路器4、引出用導体21を介して気中ブッシング12に送電される。
反対に揚水時には、発電機がモータ駆動させるために、モータ用断路器4は「入」に、発電機用断路器3は「切」として運用する(図6の状態)。即ち、揚水時には、気中ブッシング12からの電気が、引出用導体21、モータ用断路器4、相切替導体19、引出用導体22を介して発電機に流れ、発電機をモータとして運転し揚水を行うものである。
このように、発電用とモータ用とを切り替えるためには、前述したモータ用断路器4と発電機用断路器3を操作することにより、発電時と揚水時の三相の相順を切替える必要があり、本実施例では、密閉容器14内で高電圧導体の相順を入れ換える構成をとっている。
また、気中ブッシング12側の三相一括母線用引出口23とケーブルヘッド9側の三相一括母線用引出口24が、モータ側断路器4と発電機側断路器3を介して一直線になるように配置されているので、気中ブッシング12とケーブルヘッド9を連絡する導体を、最も短く構成することができる。また、モータ側断路器4と発電機側断路器3を並べて対称に配置することにより、モータ側断路器4と発電機側断路器3の構成部品を共用することが可能であると共に、モータ側断路器4と発電機側断路器3の操作時の構造物に掛る応力のアンバランスを防止でき、信頼性の高い構造といえる。
ところで、ガス絶縁開閉装置は高電圧機器であるため、本実施例のような三相一括方式の場合は、それぞれの相間の絶縁性能を確保しつつ2つの相を入れ替える必要がある。これを図7を用いて説明する。
図7は、図6における相切替導体19、20の斜視図の一例である。
該図に示すように、発電機用断路器3と相切替導体20は、発電機用断路器3aと相切替導体20a、発電機用断路器3bと相切替導体20b、発電機用断路器3cと相切替導体20cがそれぞれ接続されており、相切替導体20と引出用導体22は、相切替導体20aと引出用導体22a、相切替導体20bと引出用導体22b、相切替導体20cと引出用導体22cがそれぞれ接続されている。そのため、発電機用断路器3を通過する電流は、発電機用断路器3aから引出用導体22a、発電機用断路器3bから引出用導体22b、発電機用断路器3cから引出用導体22cに引出される。
一方、モータ用断路器4と相切替導体19は、モータ用断路器4aと相切替導体19a、モータ用断路器4bと相切替導体19b、モータ用断路器4cと相切替導体19cがそれぞれ接続されており、相切替導体19と相切替導体20は、相切替導体19aと相切替導体20c、相切替導体19bと相切替導体20b、相切替導体19cと相切替導体20aがそれぞれ接続されている。そのため、モータ用断路器4を通過する電流は、モータ用断路器4aから引出用導体22c、モータ用断路器4bから引出用導体22b、モータ用断路器4cから引出用導体22aに引出される。
即ち、発電機用断路器3とモータ用断路器4は、断路器間接続導体18により、発電機用断路器3aとモータ用断路器4a、発電機用断路器3bとモータ用断路器4b、発電機用断路器3cとモータ用断路器4cがそれぞれ接続されているため、発電機用断路器3による運用時とモータ用断路器4による運用時で引出用導体22aと引出用導体22cに引出される電流の相を反転させることができる。
図7では、真ん中の相はそのままで端の2相を入れ替える構成であるが、端相の一方を固定して他の端相と真ん中の相を入れ替える構成でも同様である。
このように、モータ側断路器4と発電機側断路器3の固定側に隣接して相入替導体19、20を配置することにより、1つの密閉容器14内にモータ側断路器4と発電機側断路器3と相入替導体19、20を持つことができると共に、密閉容器14の長手方向の長さをコンパクトにすることが可能となる。
このような本実施例によれば、揚水式の水力発電所に採用されるものであっても、1つの密閉容器14内に、2つのモータ用断路器4と発電機用断路器3を収納しているので、ガス絶縁開閉装置の据付スペースを小さくできるので、用地面積の増大を招くことがなくなり、経済性に優れたガス絶縁開閉装置を得ることができる。
図9に、本発明のガス絶縁開閉装置の実施例3を示す。該図に示す本実施例では、実施例1の構成に加え、発電機用断路器3とモータ用断路器4を有する密閉容器14内に接地開閉器を内包した構成の例であり、発電機回線の1つとして、主母線1に接続されている構成例である。
図9に示す本実施例のモータ側断路器4と発電機側断路器3は、既に図6で説明したものと同一の部品にて構成され、図7で説明した機構により同一の相切替機能を有する。
そして、本実施例では、発電機用断路器3とモータ用断路器4に対して、一方の三相一括母線用引出口23側に接地開閉器7と、もう一方の三相一括母線用引出口24側に接地開閉器8を有し、かつ、その接地開閉器7、8は、発電機用断路器3とモータ用断路器4を有する密閉容器14と同一の密閉容器14内に内包され構成されている。即ち、本実施例では、実施例1及び実施例2で示したような相切替を行うだけでなく、通常の断路器の機能を有することになる。このような構成の場合は、発電機用断路器3とモータ用断路器4に隣接して遮断器2が配置され、その遮断器2は事故電流を遮断する機能を有する。
なお、図9に示す実施例は、発電機用断路器3とモータ用断路器4を垂直に配置し、片方の三相一括母線用引出口23を遮断器2、接地開閉器6、断路器5、主母線1に接続し、もう一方の三相一括母線用引出口24をケーブルヘッド9に接続している。
このような本実施例の構成でも、実施例1と同様な効果が得られる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。