JP2015228292A - 固体高分子電解質膜、膜−電極接合体、燃料電池、水電解セルおよび水電解装置 - Google Patents

固体高分子電解質膜、膜−電極接合体、燃料電池、水電解セルおよび水電解装置 Download PDF

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宣彰 若林
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Abstract

【課題】電解質膜内部での白金の析出を抑制できる固体高分子電解質膜の提供。
【解決手段】イオン交換基を有する重合体を含む電解質膜(A)と、スルホン酸基を実質的に含まない重合体を有する非電解質層とを含む、固体高分子電解質膜。前記非電解質層は、pKaが3以下である官能基を有する重合体を実質的に含まない層であり、厚みが5μm以下であり、前記電解質膜(A)を2枚以上有し、該電解質膜(A)を折り曲げて使用する固体高分子電解質膜。
【選択図】なし

Description

本発明は、固体高分子電解質膜、膜−電極接合体、燃料電池、水電解セルおよび水電解装置に関するものである。
燃料電池は、水素ガスやメタノールと酸素ガスとを電気化学的に反応させて直接電気を取り出す発電装置であり、化学エネルギーを電気エネルギーに高効率で直接変換できる無公害な発電装置として注目を集めている。
このような燃料電池は、通常、触媒を担持した一対の電極膜(アノード極およびカソード極)と該電極膜に挟持された1枚のプロトン伝導性の固体高分子電解質膜とから構成される。アノード極では、水素イオンと電子が生じ、水素イオンは固体高分子電解質膜を通って、カソード極で酸素と反応して水が生じる。
ここで用いられる固体高分子電解質膜は、十分なプロトン伝導性や、供給されるガスやメタノール等の燃料が直接反応することがないようにこれらの透過を抑制することなどが求められ、長期に安定した性能を示す燃料電池を得るために、これらの固体高分子電解質膜に求められる性質も長期にわたって発揮できることが求められている。
前記固体高分子電解質膜として、従来より、Nafion(登録商標、DuPont社製)などの様々な電解質膜が知られているが、上記のような構成の燃料電池において、これらの電解質膜は、燃料電池の長時間の運転に際し、十分な耐久性を示さないため、長期に安定した性質を示す燃料電池を得ることは容易ではなかった。
ここで、特許文献1および2には、高耐久性を有する高分子電解質膜として、イオン交換基を有する重合体を含むフィルム2層以上の積層体からなる高分子電解質積層膜が開示されている。
特開2006−155924号公報 特開2006−128095号公報
一般的に、燃料電池の電極には、触媒層が設けられ、触媒層に含まれる触媒として白金が用いられている。この白金は、取り出される電気エネルギーの元となる化学反応を促進するため重要であるが、一方で、電池作動中に、触媒層にある白金の一部が電解質膜内で析出し、この析出した白金により、電解質膜の劣化が引き起こされ、燃料電池の長期安定性が低下する要因になっていると考えられている。
また、水の電気分解により水素と酸素を生成する水電解装置に用いられる水電解セルには電極触媒層が設けられ、電極触媒層の全部または一部に白金が使用されている。水電解装置でも、燃料電池の場合と同様に、水電解中に電極触媒層にある白金の一部が電解質膜内で析出し、この析出した白金により、電解質膜の劣化が引き起こされ、水電解装置の長期安定性が低下する要因となっていると考えられている。
従って、燃料電池や水電解装置の長期安定性を向上させるためには、電解質膜内部での白金の析出を抑制することが望まれる。
しかしながら、前記特許文献1および2に記載の高分子電解質膜では、電解質膜内部での白金の析出を抑制できなかった。
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、電解質膜内部での白金の析出を抑制できる固体高分子電解質膜を提供することを目的とする。
このような状況のもと、本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成の固体高分子電解質膜によれば、前記の目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
[1] イオン交換基を有する重合体を含む電解質膜(A)と、スルホン酸基を実質的に含まない重合体を有する非電解質層とを含む、固体高分子電解質膜。
[2] 前記非電解質層が、pKaが3以下である官能基を有する重合体を実質的に含まない層である、[1]に記載の固体高分子電解質膜。
[3] 前記非電解質層の厚みが5μm以下である、[1]または[2]に記載の固体高分子電解質膜。
[4] 前記電解質膜(A)を2枚以上有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
[5] 前記電解質膜(A)を折り曲げてなる構造体を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
[6] 前記固体高分子電解質膜が、カソードおよびアノード間に用いられる電解質膜であり、前記非電解質層がアノードに接していない、[1]〜[5]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜。
[7] ガス拡散層、触媒層、[1]〜[6]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体。
[8] [7]に記載の膜−電極接合体を有する燃料電池。
[9] 触媒層、[1]〜[6]のいずれかに記載の固体高分子電解質膜および触媒層がこの順で積層された積層体を含む、水電解セル。
[10] [9]に記載の水電解セルを有する水電解装置。
本発明によれば、耐久性に優れ、十分なプロトン伝導性ならびに燃料および酸素等の透過抑制性を有し、電解質膜内部での白金の析出を抑制できる固体高分子電解質膜を得ることができる。
図1は、電解質膜を2枚以上有する本発明の固体高分子電解質膜を含む膜−電極接合体の一例を示す概略模式図である。 図2は、電解質膜を折り曲げてなる構造体を含む本発明の固体高分子電解質膜の一例を示す概略模式図である。
≪固体高分子電解質膜≫
本発明の固体高分子電解質膜は、イオン交換基を有する重合体を含む電解質膜(A)と、スルホン酸基を実質的に含まない重合体を有する非電解質層とを含む。
このような本発明の固体高分子電解質膜は耐久性に優れ、十分なプロトン伝導性ならびに燃料および酸素等の透過抑制性を有し、該電解質膜内部での白金の析出を抑制できるものである。
本発明の固体高分子電解質膜は、電解質膜(A)と非電解質層とを有すれば特に制限されず、これらの膜(層)の他に、従来公知の膜(層)が存在していてもよいが、本発明の前記効果をより効果的に発揮できる等の点から、実質的に電解質膜(A)および非電解質層のみからなる固体高分子電解質膜であることが好ましい。
従来、燃料電池では、アノード極で生じた水素イオンが電解質膜を通ってカソード極で反応するため、プロトン伝導性の観点からは、高いプロトン伝導性を示す固体高分子電解質膜を用いることが望ましいと考えられてきた。
しかしながら、本発明の固体高分子電解質膜は、非電解質層を有するにもかかわらず、十分なプロトン伝導性を有し、さらに、該電解質膜内部での白金の析出を抑制できる。
本発明の固体高分子電解質膜によれば、この様な効果が得られる理由は定かではないが、非電解質層は白金のような大きなイオンは非電解質層を構成する高分子間を通過することができないが、プロトンのような小さなイオンはその高分子間を通過することができるためであると考えられる。つまり、本発明の固体高分子電解質膜は、通過させるイオンサイズを選択し、白金のような大きなイオンの通過を阻害できるため、前記効果を奏すると考えられる。
本発明の固体高分子電解質膜は、下記実施例に記載のように燃料電池を作成し、該電池を下記実施例に記載のように作動させた場合の電位サイクルによる固体高分子電解質膜内部での白金析出量は、好ましくは5μg/cm2以下であり、より好ましくは3μg/cm2以下である。
また、本発明の固体高分子電解質膜を用い、下記実施例に記載のように燃料電池を作成し、該電池を下記実施例に記載のように作動させた場合の電位サイクルによる固体高分子電解質膜内部での白金析出量(μg/cm2)は、該固体高分子電解質膜を構成する電解質膜(A)に含まれるイオン交換基を有する重合体と同じ重合体からなる1枚の電解質膜(なお、該電解質膜は、前記固体高分子電解質膜と略同じ厚さである)を用いて同様に測定した電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の、0.8倍以下であることが好ましく、0.6倍以下であることがより好ましい。
なお、本発明の固体高分子電解質膜として、2種類以上の異なる電解質膜(A)を有する固体高分子電解質膜を用いる場合、本発明の固体高分子電解質膜と比較する1枚の電解質膜は、前記と同様の方法で測定した白金析出量の最も少ない電解質膜のことをいう。
固体高分子電解質膜内部での白金析出量が前記範囲にあると、耐久性に優れ、分子量の経時的な低下が抑制された固体高分子電解質膜が得られ、発電・水電解性能および長期安定性バランスよく優れる燃料電池および水電解装置が得られるため好ましい。
電解質膜内部での白金析出量が前記範囲にあるような固体高分子電解質膜は、例えば、以下の方法で製造することができる。
本発明の固体高分子電解質膜の厚みは、燃料電池や水電解セルに通常用いられる固体高分子電解質膜と同程度の厚みであればよいが、好ましくは5〜200μm、より好ましくは10〜150μmである。
<固体高分子電解質膜の製造方法等>
本発明の固体高分子電解質膜は、電解質膜(A)と非電解質層とを有すれば特に制限されず、複数の電解質膜(A)および複数の非電解質層を有していてもよいが、プロトン伝導性や機械的強度等の点から、1枚または2枚の電解質膜(A)と非電解質層1層とからなる固体高分子電解質膜であることが好ましい。
本発明の固体高分子電解質膜が、複数の電解質膜(A)や複数の非電解質層を含む場合、これらの電解質膜(A)および非電解質層は、それぞれ、全て同じ膜や層であってもよいし、種類の異なる膜や層であってもよい。
また、本発明の固体高分子電解質膜は、前記電解質膜(A)を折り曲げてなる構造体を含んでいてもよい。
前記構造体は、1枚の電解質膜(A)を折り曲げた構造体であってもよいし、2枚以上の電解質膜(A)を積層し折り曲げた構造体であってもよいし、1枚または複数枚の電解質膜(A)と非電解質層との積層体を折り曲げた構造体であってもよいし、これらの構造体と、他の電解質膜(折り曲げたものまたは折り曲げていないもの)または非電解質層とを含む構造体であってもよい。
本発明の固体高分子電解質膜の製造方法は、特に制限されないが、例えば、
電解質膜(A)上に、非電解質層形成用組成物を用いて非電解質層を形成する方法、
予め形成した電解質膜(A)と非電解質層とを単に重ね合わせる、または、従来公知の方法で積層する方法、
電解質膜(A)形成用組成物と非電解質層形成用組成物とを共押出する方法
が挙げられる。
電解質膜(A)を2枚以上有する本発明の固体高分子電解質膜の製造方法は、特に制限されないが、例えば、非電解質層と2枚以上の電解質膜(A)とを用い、これらを、
(i)単に重ね合わせること、
(ii)加熱下で貼り合わせること、または、
(iii)加熱下で架橋させること、
で製造することができる。
前記構造体を含む本発明の固体高分子電解質膜の製造方法は、特に制限されないが、例えば、
電解質膜(A)と非電解質層とを単に重ね合わせる、または、従来公知の方法で積層し、この積層体を
(i−1)単に折り曲げること、
(ii−1)折り曲げ、加熱下で貼り合わせること、または、
(iii−1)折り曲げ、加熱下で架橋させること、
で製造することができ、
また、前記電解質膜(A)を
(i−2)単に折り曲げること、
(ii−2)折り曲げ、加熱下で貼り合わせること、または、
(iii−2)折り曲げ、加熱下で架橋させること、
で得られた構造体と非電解質層とを積層することで製造することができ、さらに、(i−2)で得られた構造体の電解質膜間に非電解質層を配置することでも製造することができる。
前記(i)、(i−1)または(i−2)の方法で得られた固体高分子電解質膜は、実質的に、接着剤などの不純物を含まないため、燃料電池や水電解装置の作動中における、該不純物による電池や水電解特性の劣化などが起こりにくく好ましい。
また、前記(i)、(i−1)および(i−2)の方法によれば、電解質膜(A)の少なくとも1枚が剥離可能である、または、折り曲げることで形成される面間が剥離可能である固体高分子電解質膜を得ることができ、このような固体高分子電解質膜は、特に、発電・水電解性能および耐久性にバランスよく優れ、分子量の経時的な低下や電解質膜内部での白金の析出を抑制できるため好ましい。
前記(i)の方法では、非電解質層と2枚以上の電解質膜(A)とを単に重ね合わせること、または、電解質膜(A)と非電解質層および電解質膜(A)の積層体とを単に重ね合わせることが、耐久性に優れ、分子量の経時的な低下や電解質膜内部での白金の析出を抑制できる固体高分子電解質膜が得られるなどの点から好ましい。
前記(ii)、(ii−1)または(ii−2)の方法における加熱温度としては、前記電解質膜(A)を構成する重合体のガラス転移温度(Tg)未満の温度であることが好ましく、該温度としては、特に制限されないが、好ましくはTgより10〜90℃低い温度であり、より好ましくはTgより20〜50℃低い温度である。なお、本発明の固体高分子電解質膜として、2種類以上の異なるTgを有する重合体を含む電解質膜を用いる場合には、「前記電解質膜を構成する重合体のTg未満の温度」とは、用いる電解質膜全てのうち、最も低いTgを有する重合体のTg未満の温度のことをいう。
前記貼り合わせる際には、従来公知の接着剤を用いてもよく、2枚以上の電解質膜を重ね合わせた状態で、ホットプレス、ロールプレス、真空プレス等の公知のプレス技術等により貼り合わせたものであってもよい。
なお、前記貼り合わせは、折り曲げた後行ってもよいが、折り曲げながら行ってもよい。
前記(ii)の方法としては、好ましくは、非電解質層と2枚以上の電解質膜(A)とを単に重ね合わせた後、または、電解質膜(A)と非電解質層および電解質膜(A)の積層体とを単に重ね合わせた後、該電解質膜(A)を構成する重合体のTg未満の温度で貼り合わせる方法が、耐久性に優れ、分子量の経時的な低下や電解質膜内部での白金の析出を抑制できる固体高分子電解質膜が得られるなどの点から好ましい。
前記(ii)、(ii−1)または(ii−2)の方法で得られた固体高分子電解質膜は、該電解質膜がばらばらにならず、後述する膜−電極接合体や水電解セルを製造する際の作業容易性などの点で好ましい。
前記(iii)、(iii−1)または(iii−2)の方法における加熱温度としては、前記電解質膜(A)を構成する重合体のTg未満の温度であることが好ましく、該温度としては、特に制限されないが、架橋反応が進行するような温度であることが好ましく、より好ましくはTgより10〜90℃低い温度であり、特に好ましくはTgより20〜50℃低い温度である。
前記(iii)、(iii−1)または(iii−2)の方法は、架橋剤を含む電解質膜や非電解質層を用いることで行ってもよく、架橋させる際に、界面に架橋剤を塗布することで行ってもよい。
また、架橋の際には、非電解質層および電解質膜(A)を重ね合わせた状態で、ホットプレス、ロールプレス、真空プレス等の公知のプレス技術等により圧力をかけながら行ってもよい。
なお、前記架橋は、折り曲げた後行ってもよいが、折り曲げながら行ってもよい。
前記(iii)の方法としては、好ましくは、非電解質層と2枚以上の電解質膜(A)とを単に重ね合わせた後もしくは架橋剤を介在させて重ね合わせた後、または、電解質膜(A)と非電解質層および電解質膜(A)の積層体とを単に重ね合わせた後もしくは架橋剤を介在させて重ね合わせた後、前記電解質膜(A)を構成する重合体のTg未満の温度で架橋させる方法が、耐久性に優れ、分子量の経時的な低下や電解質膜内部での白金の析出を抑制できる固体高分子電解質膜が得られるなどの点から好ましい。
前記(iii)、(iii−1)または(iii−2)の方法で得られた固体高分子電解質膜は、該電解質膜がばらばらにならず、後述する膜−電極接合体や水電解セルを製造する際の作業容易性などの点で好ましい。また、架橋により、機械的強度の高い固体高分子電解質膜を得ることができる。これは、特に厚みの薄い電解質膜を用いる場合に有効である。
前記架橋剤としては電解質膜間または電解質膜と非電解質層との間を架橋できるものであれば特に制限なく使用することができるが、例えば下記構造を有する架橋剤が好ましい。
(式中R1は水素または任意の有機基である。)
前記架橋剤としては、具体的には、RESITOP C357(群栄化学工業(株)製)、DM−BI25X−F、46DMOC、46DMOIPP、46DMOEP(商品名、旭有機材工業(株)製)、DML−MBPC、DML−MBOC、MDL−OCHP、DML−PC、DML−PCHP、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP、DML−POP、DML−OC、ジメチロール−Bis−C、ジメチロール−BisOC−P、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MB25、DML−MTrisPC、DML−Bis25X−34XL、DML−Bis25X−PCHP(商品名、本州化学工業(株)製)、”ニカラック”(登録商標)MX−290(商品名、(株)三和ケミカル製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、TriML−P、TriML−35XL、TriML−TrisCR−HAP(商品名、本州化学工業(株)製)、TM−BIP−A(商品名、旭有機材工業(株)製)、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP(商品名、本州化学工業(株)製)、”ニカラック”MX−280、”ニカラック”MX−270(商品名、(株)三和ケミカル製)、HML−TPPHBA、HML−TPHAP(商品名、本州化学工業(株)製)等を挙げることができる。
前記(i)〜(iii)、(i−1)〜(iii−1)または(i−2)〜(iii−2)の方法で得られた固体高分子電解質膜は、1枚の電解質膜(A)や、2枚以上の電解質膜(A)が接合または融着された積層体を有する固体高分子電解質膜と同程度の十分なプロトン伝導性ならびに燃料および酸素等の透過抑制性を有し、さらに、1枚の電解質膜や、接合または融着された2枚以上の電解質膜の積層体を用いた場合に比べ、同じ電解質膜を用いた場合であっても、発電・水電解性能および耐久性にバランスよく優れ、固体高分子電解質膜内部での白金の析出を抑制することができる傾向にある。
<非電解質層>
前記非電解質層は、スルホン酸基を実質的に含まない重合体(以下「重合体(b)」ともいう。)を有する非電解質層であれば特に制限されない。
本発明の固体高分子電解質膜がこのような非電解質層を有することで、固体高分子電解質膜内部での白金の析出を抑制することができる。
非電解質層には、重合体(b)を、1種単独で含んでもよく、2種以上含んでもよい。
また、非電解質層には、重合体(b)以外の添加剤等が含まれていてもよい。
前記非電解質層は、本発明の固体高分子電解質膜が、カソードおよびアノード間に用いられる電解質膜である場合、燃料電池の発電性能および水電解装置の水電解性能等の点から、該非電解質層がアノードに接していないこと、つまり、該非電解質層はカソード側や電解質膜(A)間に存在することが好ましく、カソード側に存在することがより好ましい。
なお、「非電解質層がアノードに接していない」とは、例えば、本発明の固体高分子電解質膜が触媒層に接して用いられる場合には、非電解質層がアノード側触媒層に接していないことを意味する。
前記非電解質層は、固体高分子電解質膜内部での白金の析出をより抑制することができる等の点から、pKaが3以下である官能基を有する重合体を実質的に含まない層であることが好ましい。
このようなpKaが3以下である官能基としては、スルホン酸基およびホスホン酸基等の従来の電解質膜において、イオン交換基として用いられてきた基以外の基であることが好ましい。
前記重合体(b)としては、例えば、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシフェノール、ポリビニルアルコール、ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン、脂肪族ポリカーボネート等の脂肪族系重合体、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール等の主鎖の一部または全部に芳香族環を有する芳香族系重合体などが挙げられる。これらの中でも、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリヒドロキシフェノール、ポリビニルアルコールが好ましい。
前記重合体(b)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)は、好ましくは100〜100万、より好ましくは200〜50万、さらに好ましくは300〜30万であり、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は、好ましくは1.2〜10.0、より好ましくは1.5〜8.0、さらに好ましくは2.0〜5.0である。重合体(b)の平均分子量は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
前記非電解質層は、例えば、前記重合体(b)と該重合体(b)を溶解する溶媒とを含む混合物を、公知の方法により電解質膜(A)や基材上に塗布する工程を含むことにより製造することができる。具体的には、前記混合物を電解質膜(A)や樹脂製(例:ポリエチレンテレフタレート(PET)製)、金属製またはガラス製などの基材上に塗布した後、塗布した組成物を乾燥させることで作成することができる。
前記重合体(b)を溶解する溶媒は、該重合体(b)に応じ適宜選択すればよく、従来公知のものを使用することができる。
前記混合物を塗布する対象として電解質膜(A)や燃料電池の構成材料であり、本発明の固体高分子電解質膜に接して積層されるもの、例えば、下記触媒層(カソード)を用いる場合には、得られた電解質膜(A)を基材から剥離せずに用いてもよいが、それ以外の基材を用いる場合には、基材から剥離して用いればよい。
前記非電解質層の厚みは、固体高分子電解質膜内部での白金の析出を抑制することができ、十分なプロトン伝導性を有する固体高分子電解質膜を得ることができる等の点から、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは2μm以下である。
<電解質膜(A)>
前記電解質膜(A)は、イオン交換基を有する重合体(以下「重合体(a)」ともいう。)を含む。このような電解質膜(A)としては、特に制限されず、従来より固体高分子電解質膜として使用されていたものであってもよい。
前記電解質膜(A)は、例えば、前記重合体(a)と該重合体(a)を溶解する溶媒とを含む組成物を、公知の方法により基材上に塗布する工程を含むことにより製造することができる。具体的には、前記組成物を樹脂製(例:ポリエチレンテレフタレート(PET)製)、金属製またはガラス製などの基材上に塗布した後、塗布した組成物を乾燥させ、基材から剥離することで作成することができる。なお、基材として、燃料電池の構成材料であり、本発明の固体高分子電解質膜に接して積層されるもの、例えば、下記触媒層を用いる場合には、得られた電解質膜(A)を基材から剥離せずに用いてもよい。
前記電解質膜(A)としては、前記組成物を多孔質材料やシート状の繊維質物質などからなる補強層に含浸させたり、塗布したりすることで得られる、補強層を含む電解質膜であってもよく、繊維、フィラー状の補強材などを含む電解質膜であってもよい。
前記電解質膜(A)は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、白金親和度の高い化合物(例:硫黄原子などを含む化合物)、酸化スズやスズイオンなどの金属含有化合物および金属イオンからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属成分等の添加剤を含んでいてもよい。
また、前記組成物には、前記重合体(a)および溶媒に加え、さらに、硫酸、リン酸などの無機酸;リン酸ガラス;タングステン酸;リン酸塩水和物;β−アルミナプロトン置換体;プロトン導入酸化物等の無機プロトン伝導体粒子;カルボン酸を含む有機酸;スルホン酸を含む有機酸;ホスホン酸を含む有機酸;適量の水などを配合してもよい。
前記電解質膜(A)の厚みは、燃料電池や水電解装置に通常用いられる電解質膜と同程度の厚みであればよいが、好ましくは3〜200μm、より好ましくは5〜150μmである。
前記重合体(a)のTgは、燃料電池や水電解装置の作動中に固体高分子電解質膜を構成する電解質膜同士が融着せず、所望の効果を有する燃料電池や水電解装置を得ることができるなどの点から、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上、特に好ましくは150℃以上である。該Tgの上限は特に制限されないが、例えば、250℃であればよい。
前記重合体(a)のTgが前記範囲にあることで、耐久性に優れ、分子量の経時的な低下や電解質膜内部での白金の析出を抑制できる固体高分子電解質膜を得ることができ、さらに、耐久性等に優れる燃料電池および水電解装置を得ることができる。
なお、本発明の固体高分子電解質膜として、2種類以上の異なる電解質膜(A)を用いる場合には、用いる電解質膜(A)を構成する全ての重合体(a)のTgが100℃以上であることが好ましい。前記重合体(a)が2つ以上のガラス転移温度を有する場合、前記重合体(a)のTgとは、その低い方のガラス転移温度のことをいう。
前記重合体(a)のGPCによるポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1万〜100万、より好ましくは2万〜80万、さらに好ましくは5万〜30万であり、数平均分子量(Mn)は、好ましくは3000〜100万、より好ましくは6000〜80万、さらに好ましくは15000〜30万である。重合体(a)の平均分子量は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
前記重合体(a)のイオン交換容量は、好ましくは0.5〜3.5meq/g、より好ましくは0.5〜3.0meq/g、さらに好ましくは0.8〜2.8meq/gである。イオン交換容量が0.5meq/g以上であれば、プロトン伝導度が高く、かつ発電・水電解性能の高い固体高分子電解質膜が得られるため好ましい。一方、3.5meq/g以下であれば、充分に高い耐水性を有する固体高分子電解質膜が得られるため好ましい。重合体(a)のイオン交換容量は、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
前記イオン交換容量は、重合体(a)に含まれる構造単位の種類、その割合、組み合わせなどを変更することにより、調整することができる。したがって、重合時に構造単位を誘導する前駆体(モノマー・オリゴマー)の仕込み量比、種類等を変えれば調整することができる。
概して、イオン交換基を含む構造単位の存在割合が重合体(a)中に多くなると、得られる固体高分子電解質膜のイオン交換容量が増えプロトン伝導性が高くなるが、耐水性が低下する傾向にあり、一方、該構造単位の存在割合が少なくなると、得られる固体高分子電解質膜のイオン交換容量が小さくなり、耐水性が高まるが、プロトン伝導性が低下する傾向にある。
前記イオン交換基としては、特に制限されないが、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシ基、ビススルホニルイミド基などが挙げられ、スルホン酸基が好ましい。
前記重合体(a)としては、例えば、ポリアセタール、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリスチレン−グラフト−エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリスチレン−グラフト−ポリテトラフルオロエチレン、脂肪族ポリカーボネート等の脂肪族系重合体にスルホン酸基が導入された重合体、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、芳香族ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール等の主鎖の一部または全部に芳香族環を有する芳香族系重合体にスルホン酸基が導入された重合体が挙げられる。
また、これらの重合体に導入する基を、スルホン酸基からホスホン酸基等のイオン交換基に変えた重合体、またはこれらの基が共存する重合体等が挙げられる。
前記重合体としては、公知の重合体を用いることができ、特に限定されないが、例えば、Nafion(登録商標、デュポン(株)製)、アシプレックス(登録商標、旭化成工業(株)製)、フレミオン(登録商標、旭硝子(株)製)の商品名で市販されているスルホン酸基を有する全フッ化炭素系高分子重合体;ポリ芳香族炭化水素系、ポリエーテルエーテルケトン系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリイミド系またはポリベンザゾール系などの芳香族環を主鎖骨格に有し、スルホン酸基を有する高分子重合体;等を使用することができる。この中でも、国際公開第2013/018677号、特開2012−067216号公報、特開2010−238374号公報、特開2010−174179号公報、特開2010−135282号公報、特開2004−137444号公報、特開2004−345997号公報、特開2004−346163号公報等に記載の重合体が好ましく、下記重合体(1)がより好ましい。
・重合体(1)
前記重合体(1)は、プロトン伝導性基を有する構造単位と疎水性構造単位とを有する重合体であり、ポリマーまたはオリゴマーである。
本発明において、プロトン伝導性基を有する構造単位は、単にプロトン伝導性基であってもよく、プロトン伝導性基としては、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシ基、ビススルホニルイミド基などが挙げられ、スルホン酸基が好ましい。
前記重合体(1)は、具体的には、プロトン伝導性基を有する構造単位となる親水性セグメント(A1)と、疎水性構造単位となる疎水性セグメント(B1)とからなる重合体であることが好ましい。この場合、該重合体(1)は、ブロック重合体であってもよく、ランダム重合体であってもよいが、より発電や水電解性能および乾湿サイクル時の寸法安定性に優れる固体高分子電解質膜が得られる等の点から、親水性セグメント(A1)と疎水性セグメント(B1)とのブロック共重合体が好ましい。
・親水性セグメント(A1)
親水性セグメント(A1)としては、プロトン伝導性基を有し、親水性を示すセグメントであれば特に制限されないが、例えば、主鎖に芳香環を有し、スルホン酸基などのプロトン伝導性基を含有する親水性セグメントが挙げられ、親水性セグメントの連続性が高く、プロトン伝導度が高い電解質膜(A)が得られるなどの点から、下記式(5)で表される構造単位(以下「構造単位(5)」ともいう。)を含むセグメントであることが好ましく、構造単位(5)からなるセグメントであることがより好ましい。
親水性セグメント(A1)は、1種類の構造単位のみからなってもよく、2種類以上の構造単位を含んでもよい。
式(5)中、Ar11、Ar12およびAr13はそれぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトリル基、炭素数1〜20の1価の炭化水素基もしくは炭素数1〜20の1価のハロゲン化炭化水素基で置換されていてもよい、ベンゼン環、縮合芳香環または含窒素複素環を有する芳香族基を示し、YおよびZはそれぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−(CH2u−、−(CF2u−(uは1〜10の整数である。)、−C(CH32−または−C(CF32−を示し、R17は独立に、直接結合、−O(CH2p−、−O(CF2p−、−(CH2p−または−(CF2p−(pは1〜12の整数を示す。)を示し、R18およびR19はそれぞれ独立に、水素原子または保護基を示す。ただし、前記構造単位(5)中に含まれる全てのR18およびR19のうち少なくとも1個は水素原子である。
1は独立に、0〜6の整数を示し、x2は1〜7の整数を示し、aは0または1を示し、bは0〜20の整数を示す。
前記保護基とは、反応性の基(−SO3−または−SO3 -)を一時的に保護する目的で使用されるイオン、原子または原子団等のことをいう。具体的には、アルカリ金属原子、脂肪族炭化水素基、脂環基、含酸素複素環基および含窒素カチオンなどが挙げられる。
親水性セグメント(A1)は、スルホン酸基を有する前記構造単位(5)以外にも、スルホン酸基以外のプロトン伝導性基を有する構造単位として、例えば、ホスホン酸基を有する構造単位や、特開2011−089036号公報および国際公開第2007/010731号等に記載の含窒素複素環を有する芳香族系構造単位などを含んでもよい。
・疎水性セグメント(B1)
疎水性セグメント(B1)としては、疎水性を示すセグメントであれば特に制限されない。
親水性セグメント(B1)は、1種類の構造単位のみからなってもよく、2種類以上の構造単位を含んでもよい。
疎水性セグメント(B1)としては、好ましくは、主鎖に芳香環を有し、スルホン酸基などのプロトン伝導性基を含有しない疎水性セグメントが挙げられ、より熱水膨潤抑制に優れる電解質膜(A)が得られるなどの点から、下記式(1)で表される構造単位(以下「構造単位(1)」ともいう。)、下記式(2)で表される構造単位(以下「構造単位(2)」ともいう。)および下記式(3')で表される構造単位(以下「構造単位(3')」ともいう。)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位を含むセグメントであることが好ましく、構造単位(1)および構造単位(2)からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位からなるセグメントであることがより好ましい。
前記重合体(1)が、構造単位(1)〜(3')のいずれか、特には、構造単位(1)または(2)を含有することにより、該重合体の疎水性が著しく向上する。このため、従来と同様のプロトン伝導性を具備しながら、優れた熱水耐性を有する電解質膜(A)を得ることができる。また、セグメント(B1)がニトリル基を含む場合は、靭性および機械的強度の高い電解質膜(A)を製造できる。
・構造単位(1)
疎水性セグメント(B1)が、構造単位(1)を含有することにより、該セグメント(B1)の剛直性が高くなり、かつ芳香環密度が高くなることで、得られる重合体(1)を含む電解質膜(A)の熱水耐性、過酸化物に対するラジカル耐性、ガスバリア性、機械的強度および寸法安定性等を向上させることができる。
前記疎水性セグメント(B1)は、1種類の構造単位(1)を含んでもよく、2種類以上の構造単位(1)を含んでもよい。
式(1)中、芳香環を構成する少なくとも1つの置換可能な炭素原子は窒素原子に置き換えられてもよく、R21は独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(Eは、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−CONH−、−COO−、−CF2−、−CH2−、−C(CF32−または−C(CH32−を示し;R22は、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、ハロゲン化アリール基または含窒素複素環を示し、これらの基の少なくとも1つの水素原子は、さらにヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基およびR22−E−からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい。)を示し、複数のR21が結合して環構造を形成してもよい。
なお、R21がR22−E−であり、かつ、該R22がさらにR22−E−で置換される場合、複数のEは同一でも異なっていてもよく、複数のR22(ただし、置換によって生じる構造の差異を除く部分の構造)も同一でも異なっていてもよい。同様に、本発明において、一つの式中に同一の符号で表される基が複数存在する場合には、これらの基は、同一でも異なっていてもよい。ただし、一つの式中に複数のR22が含まれる場合、その上限は5個であることが好ましい。
1およびc2は独立に0または1以上の整数を示し、dは1以上の整数を示し、eは独立に、0〜(2c1+2c2+4)の整数を示す。
・構造単位(2)
前記疎水性セグメント(B1)が構造単位(2)を含むと、過酸化物などに対するラジカル耐性が向上し、発電・水電解耐久性に優れる電解質膜(A)が得られると考えられるため好ましい。
また、前記疎水性セグメント(B1)が構造単位(2)を含有することにより、該セグメント(B1)に適度な屈曲性(柔軟性)を付与することができ、得られる重合体を含む電解質膜(A)の靭性を向上させることができる。
前記疎水性セグメント(B1)は、1種類の構造単位(2)を含んでもよく、2種類以上の構造単位(2)を含んでもよい。
式(2)中、芳香環を構成する少なくとも1つの置換可能な炭素原子は窒素原子に置き換えられてもよく、R31は独立に、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、前記式(1)中のEおよびR22と同義である。)を示し、複数のR31が結合して環構造を形成してもよい。
fは0または1以上の整数を示し、gは0〜(2f+4)の整数を示す。ただし、式(2)で表される構造単位は、式(1)で表される構造単位以外の構造単位である。
・構造単位(3')
前記疎水性セグメント(B1)が構造単位(3')を含有することにより、該セグメント(B1)に適度な屈曲性(柔軟性)を付与することができ、得られる重合体を含む電解質膜(A)の靭性を向上させることができる。
前記疎水性セグメント(B1)は、1種類の構造単位(3')を含んでもよく、2種類以上の構造単位(3')を含んでもよい。
式(3')中、A'およびD'はそれぞれ独立に、直接結合、−O−、−S−、−CO−、−SO2−、−SO−、−CONH−、−COO−、−(CF2i−(iは1〜10の整数である)、−(CH2j−(jは1〜10の整数である)、−CR'2−(R'は脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基を示す。)、シクロヘキシリデン基またはフルオレニリデン基を示し、B'は独立に、酸素原子または硫黄原子を示し、R1〜R16はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、ニトロ基、ニトリル基またはR22−E−(EおよびR22はそれぞれ独立に、式(1)中のEおよびR22と同義である。)を示し、R1〜R16のうちの複数の基が結合して環構造を形成してもよい。
sおよびtはそれぞれ独立に、0〜4の整数を示し、rは0または1以上の整数を示す。
・重合体(1)の合成方法
前記重合体(1)は、従来公知の方法で合成することができ、特に制限されないが、例えば、前記構造単位となる化合物を触媒や溶媒の存在下で反応させ、必要によりスルホン酸エステル基などをスルホン酸基に変換する、または、スルホン化剤を用いてスルホン化する等の方法でプロトン伝導性基を導入することにより合成することができる。
≪膜−電極接合体≫
本発明に係る膜−電極接合体は、ガス拡散層、触媒層、本発明の固体高分子電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体である。具体的には、本発明の固体高分子電解質膜の一方の面にはカソード電極用の触媒層が、他方の面にはアノード電極用の触媒層が設けられており、さらにカソード電極用およびアノード電極用の各触媒層の固体高分子電解質膜と反対側に接して、それぞれガス拡散層が設けられたものであることが好ましい。
非電解質層と2枚の電解質膜(A)とを含有する固体高分子電解質膜を含む膜−電極接合体としては、例えば、図1に示すような膜−電極接合体が挙げられる。このように、非電解質層と2枚の電解質膜(A)とを含む固体高分子電解質膜は、該非電解質層および電解質膜(A)のうち、最も面積の広い面が重なり合うように、これらの膜(層)が前記の方法で積層等されたものであることが、発電性能に優れる燃料電池、および、水電解性能に優れる水電解装置が得られるなどの点から好ましい。
また、電解質膜(A)を折り曲げてなる構造体を含む固体高分子電解質膜を用いる場合、図1の固体高分子電解質膜17の代わりに、図2の固体高分子電解質膜17'を図の向きで含む膜−電極接合体が好ましい。つまり、電解質膜(A)を折り曲げる際には、該電解質膜(A)のうち、最も面積の広い面が対向するように、また、折り曲げることでできる電解質膜界面が、触媒層などとの積層方向と略垂直方向になるように電解質膜(A)を折り曲げることが好ましい。
前記ガス拡散層としては、特に制限されず公知のものを使用することができるが、多孔性基材または多孔性基材と微多孔層との積層構造体等が挙げられる。ガス拡散層が多孔性基材と微多孔層との積層構造体からなる場合には、微多孔層が触媒層に接することが好ましい。また、前記ガス拡散層は、撥水性を付与するために含フッ素重合体を含んでいることが好ましい。
前記ガス拡散層の厚みは、燃料電池に通常用いられるガス拡散層と同程度の厚みであればよいが、好ましくは50〜400μm、より好ましくは100〜300μmである。
前記触媒層は、特に制限されず公知のものを使用することができるが、例えば、触媒、イオン交換樹脂電解質などから構成される。
触媒としては、白金、パラジウム、金、ルテニウム、イリジウムなどの貴金属触媒が好ましく用いられる。また、貴金属触媒は、合金や混合物などのように、2種以上の元素を含むものであってもよい。このような貴金属触媒は、高比表面積カーボン微粒子に担持したものを用いてもよい。
イオン交換樹脂電解質は、前記触媒を結着させるバインダー成分として働くとともに、アノード極では触媒上の反応によって発生したイオンを固体高分子電解質膜へ効率的に供給し、また、カソード極では固体高分子電解質膜から供給されたイオンを触媒へ効率的に供給する物質であることが好ましい。
前記イオン交換樹脂電解質としては、触媒層内のプロトン伝導性を向上させるためにプロトン交換基を有するポリマーが好ましい。
このようなポリマーに含まれるプロトン交換基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基などが挙げられるが特に限定されるものではない。
また、このようなプロトン交換基を有するポリマーも、特に限定されることなく用いられるが、フルオロアルキルエーテル側鎖とフルオロアルキル主鎖とから構成されるプロトン交換基を有するポリマーや、スルホン酸基を有する芳香族炭化水素系重合体などが好ましく用いられる。また、前記電解質膜(A)の欄で例示した重合体(a)をイオン交換樹脂電解質として使用してもよく、さらに、プロトン交換基を有し、フッ素原子を含むポリマー、エチレンやスチレンなどから得られる他のポリマー、これらの共重合体やブレンドであっても構わない。
このようなイオン交換樹脂電解質は、公知のものを特に制限なく使用可能であり、例えば、Nafionであってもよい。
前記触媒層は、必要に応じてさらに、炭素繊維、イオン交換基を有しない樹脂等の添加剤を含んでもよい。この添加剤としては撥水性の高い成分であることが好ましく、例えば、含フッ素共重合体、シランカップリング剤、シリコーン樹脂、ワックス、ポリホスファゼンなどを挙げることができるが、好ましくは含フッ素共重合体である。
前記触媒層の厚みは、燃料電池や水電解装置に通常用いられる触媒層と同程度の厚みであればよいが、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜50μmである。
≪燃料電池≫
本発明に係る燃料電池は、前記膜−電極接合体を有する。このため、本発明に係る燃料電池は、特に耐久性に優れ、発電性能の経時的な低下が抑制され、長期にわたって安定な発電が可能である。
本発明に係る燃料電池は、具体的には、少なくとも一つの膜−電極接合体の両外側に位置する、セパレータを含む少なくとも一つの電気発生部;燃料を前記電気発生部に供給する燃料供給部;および酸化剤を前記電気発生部に供給する酸化剤供給部を含む燃料電池であることが好ましい。
前記セパレータとしては、通常の燃料電池に使用されるものを用いることができる。具体的にはカーボンタイプのセパレータ、金属タイプのセパレータ等が挙げられる。
また、燃料電池を構成する部材としては、公知のものを特に制限なく使用することが可能である。本発明の燃料電池は単セルであってもよいし、複数の単セルを直列に繋いだスタックセルであってもよい。スタックの方法としては公知の方法を用いることができる。具体的には単セルを平面状に並べた平面スタッキングであってもよいし、および燃料または酸化剤の流路が、セパレータの裏表面にそれぞれ形成されているセパレータを介して単セルを積み重ねるバイポーラースタッキングであってもよい。
≪水電解セル≫
本発明に係る水電解セルは、触媒層、本発明の固体高分子電解質膜および触媒層がこの順で積層された積層体を含む。
前記触媒層としては、公知のものを特に制限なく使用可能であり、具体的には、前記膜−電極接合体で説明した触媒層と同様の層などが挙げられる。
≪水電解装置≫
本発明に係る水電解装置は、前記水電解セルを有する。このため、本発明に係る水電解装置は、特に耐久性に優れ、性能の経時的な低下が抑制され、長期にわたって安定な電気分解が可能である。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔スルホン酸基を有する重合体のイオン交換容量〕
以下の合成例で得られた重合体のイオン交換容量は以下のようにして測定した。
以下の合成例で得られた重合体を脱イオン水に浸漬することで、該重合体中に残存している酸を完全に除去した後、重合体1mg当たり2mLの2N食塩水に浸漬してイオン交換させることにより塩酸水溶液を調製した。この塩酸水溶液を、フェノールフタレインを指示薬として、0.001N水酸化ナトリウムの標準水溶液にて中和滴定した。イオン交換後の重合体を脱イオン水で洗浄し、110℃で2時間真空乾燥させて乾燥重量を測定した。下記式に示すように、水酸化ナトリウムの滴定量と重合体の乾燥重量とから、スルホン酸基の当量(以下「イオン交換容量」という。)を求めた。
イオン交換容量(meq/g)=水酸化ナトリウムの滴定量(mmol)/重合体の乾燥重量(g)
〔分子量の測定〕
以下の合成例で得られた化合物の分子量の測定は、測定する化合物に応じて以下の(A)または(B)の方法を用いた。
(A)測定する化合物をN−メチル−2−ピロリドン緩衝溶液(以下「NMP緩衝溶液」という。)に溶解し、溶離液としてNMP緩衝溶液を、装置としてTOSOH HLC−8220(東ソー(株)製)を、カラムとしてTSKgel α−M(東ソー(株)製)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)を求めた。
NMP緩衝溶液は、NMP(3L)/リン酸(3.3mL)/臭化リチウム(7.83g)の比率で調製した。
(B)測定する化合物をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、溶離液としてTHFを、装置としてTOSOH HLC−8220(東ソー(株)製)を、カラムとしてTSKgel α−M(東ソー(株)製)を用いたGPCにより、ポリスチレン換算のMnおよびMwを求めた。
〔合成例1〕
(1)疎水性ユニットの合成
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管および窒素導入の三方コックを取り付けた1Lの三つ口のフラスコに、2,6−ジクロロベンゾニトリル49.4g(0.29モル)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン88.4g(0.26モル)、および炭酸カリウム47.3g(0.34モル)を量り取った。得られたフラスコを窒素置換後、該フラスコにスルホラン346mLおよびトルエン173mLを加えて攪拌した。フラスコをオイルバスにつけ、150℃で加熱還流させた。反応により生成した水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。反応温度を徐々に上げながら大部分のトルエンを除去した後、200℃で3時間反応を続けた。次いで、2,6−ジクロロベンゾニトリル12.3g(0.072モル)を加え、さらに5時間反応させた。得られた反応液を放冷後、トルエン100mLを加えて希釈した。副生した無機化合物の沈殿物を濾過除去し、濾液を2Lのメタノール中に投入した。沈殿した生成物を濾別回収し、乾燥させた後、テトラヒドロフラン250mLに溶解させた。得られた溶液をメタノール2Lに投入し、再沈殿させ、目的の化合物(沈殿物)107gを得た。
得られた目的の化合物のGPC(溶媒:THF)で求めたポリスチレン換算のMnは7,300であった。得られた化合物は下記構造式で表されるオリゴマーであった。
(2)親水性ユニットの合成
攪拌機および冷却管を備えた3Lの三つ口フラスコに、クロロスルホン酸233.0g(2モル)を加え、続いて2,5−ジクロロベンゾフェノン100.4g(400ミリモル)を加え、得られたフラスコを100℃のオイルバスに入れ、8時間反応させた。8時間後、反応液を砕氷1000gにゆっくりと注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、酢酸エチルを留去し、淡黄色の粗結晶3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸クロリドを得た。粗結晶は精製せず、そのまま次工程に用いた。
2,2−ジメチル−1−プロパノール(ネオペンチルアルコール)38.8g(440ミリモル)をピリジン300mLに加え、約10℃に冷却した。ここに前記で得られた粗結晶を約30分かけて徐々に加えた。全量添加後、さらに30分撹拌し反応させた。反応後、反応液を塩酸水1000mL中に注ぎ、析出した固体を回収した。得られた固体を酢酸エチルに溶解させ、炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で順次洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させ、酢酸エチルを留去することで粗結晶を得た。これをメタノールで再結晶し、下記構造式で表される3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチルの白色結晶を得た。
(3)塩基性ユニットの合成
撹拌羽根、温度計および窒素導入管を取り付けた2Lの3つ口フラスコに、フルオロベンゼン240.2g(2.50モル)を取り、氷浴で10℃まで冷却し、2,5−ジクロロ安息香酸クロライド134.6g(0.50モル)、および塩化アルミニウム86.7g(0.65モル)を反応温度が40℃を超えないように徐々に添加した。添加後、40℃で8時間撹拌した。薄層クロマトグラフィーにより原料の消失を確認した後、攪拌後の混合物を氷水に滴下し、酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を5%重曹水により中和した後、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後、エバポレーターで溶媒を留去した。これをメタノールで再結晶させることで、中間体の2,5−ジクロロ−4'−フルオロベンゾフェノンを130g、収率97%で得た。
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管および窒素導入の三方コックを取り付けた2Lの3つ口フラスコに、前記2,5−ジクロロ−4'−フルオロベンゾフェノン130.5g(0.49モル)、2−ヒドロキシピリジン46.1g(0.49モル)、および炭酸カリウム73.7g(0.53モル)を取り、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)500mLおよびトルエン100mLを加え、オイルバス中、窒素雰囲気下で撹拌しながら130℃で反応させた。反応により生成した水をトルエンと共沸させ、Dean−Stark管で系外に除去しながら反応させると、約3時間で水の生成がほとんど認められなくなった。その後、大部分のトルエンを除去し、130℃で10時間反応を続けた。得られた反応液を放冷後濾過し、濾液を2Lの水/メタノール(9/1)中に投入した。沈殿した生成物を濾別により回収し、乾燥させた。
撹拌機、温度計、冷却管、Dean−Stark管および窒素導入の三方コックを取り付けた2Lの3つ口フラスコに前記乾燥物を取り、トルエン1L中、100℃で撹拌し、残留した水分を留去しながら溶解させた。放冷後、析出した結晶を濾過することにより下記構造式で表される淡黄色の2,5−ジクロロ−4'−(2−ピリジニルオキシ)ベンゾフェノンを142g、収率83%で得た。
(4)スルホン酸基を有する重合体の合成
撹拌機、温度計および窒素導入管を接続した1Lの3つ口フラスコに、乾燥したDMAc166mLを入れ、そこに(1)で合成したオリゴマー13.4g(1.8ミリモル)、(2)で合成した3−(2,5−ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル37.6g(93.7ミリモル)、(3)で合成した2,5−ジクロロ−4'−(2−ピリジニルオキシ)ベンゾフェノン1.61g(4.7ミリモル)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.62g(4.0ミリモル)、トリフェニルホスフィン10.5g(40.1ミリモル)、ヨウ化ナトリウム0.45g(3.0ミリモル)、および亜鉛15.7g(240.5ミリモル)の混合物を窒素下で加えた。
得られた混合物を撹拌下に加熱し(最終的には82℃まで加温)、3時間反応させた。反応途中で系中の粘度上昇が観察された。反応後の溶液をDMAc175mLで希釈し、30分撹拌した後、セライトを濾過助剤として用い濾過した。得られた濾液を、撹拌機を取り付けた1Lの3つ口フラスコに入れ、ここに臭化リチウム24.4g(281ミリモル)を1/3ずつ3回に分け1時間間隔で加え、内温120℃で5時間、窒素雰囲気下で反応させた。反応後、室温まで冷却し、アセトン4Lに注ぎ、凝固させた。凝固物を濾集、風乾後、ミキサーで粉砕し、1N硫酸1500mLに入れ、攪拌しながら洗浄を行った。濾過後、濾物を洗浄液のpHが5以上になるまで、イオン交換水で洗浄後、80℃で一晩乾燥し、目的の塩基性ユニットが導入されたスルホン酸基を有する重合体38.0gを得た。得られたスルホン酸基を有する重合体のGPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したポリスチレン換算の分子量は、Mn=63000、Mw=194000であった。また、この重合体のイオン交換容量は2.33meq/gであった。得られたスルホン酸基を有する重合体は、下記構造式で表される化合物(樹脂A)であった。
(式中、o、m、kおよびnは、その構造単位を形成する原料の仕込み量から算出される値である。)
〔合成例2〕
(1)親水性ユニットの合成
攪拌機を備えた1Lのフラスコに、ネオペンチルアルコール(45.30g、514mmol)のピリジン(300mL)溶液を加え、続いて3,5−ジクロロベンゼンスルホニルクロライド(114.65g、467mmol)を少量ずつ攪拌しながら15分かけて添加した。この間、反応温度は18〜20℃に保った。反応混合物の入ったフラスコを、氷浴中で冷却しながらさらに30分攪拌した後、氷冷した10% HCl水溶液(1600mL)を添加した。水に不溶の成分を700mLの酢酸エチルで抽出し、1N HCl水溶液で2回(各700mL)洗浄し、次いで、5% NaHCO3水溶液で2回(各700mL)洗浄し、その後硫酸マグネシウムで乾燥させた。回転乾燥機を用いて溶媒を除去し、残渣を500mLのメタノールで再結晶させた。その結果、下記構造式で表される3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ネオペンチルの光沢のある無色結晶を収量105.98g、収率76%で得た。
(2)スルホン酸基を有する重合体の合成
添加系:得られた3,5−ジクロロベンゼンスルホン酸ネオペンチル29.15g(98.09mmol)およびトリフェニルホスフィン1.65g(6.28mmol)の混合物中に、脱水したDMAc71mLを窒素下で加えて添加系溶液を調製した。
反応系:2,5−ジクロロベンゾフェノン23.03g(91.71mmol)、2,6−ジクロロベンゾニトリル1.75g(10.19mmol)、トリフェニルホスフィン1.92g(7.34mmol)および亜鉛15.99g(244.57mmol)の混合物中に、脱水したDMAc66mLを窒素下で加えた。この反応系を撹拌下に60℃まで加熱した後、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド1.60g(2.45mmol)を加えて重合を開始し、80℃で20分間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。
得られた反応系に添加系溶液を窒素下で加えた。この系を撹拌下に60℃まで加熱した後、亜鉛15.39g(235.43mmol)およびビス(トリフェニルホスフィン)ニッケルジクロリド2.05g(3.14mmol)を加えてさらに重合を促進させ、80℃で3時間撹拌した。反応に伴い発熱や粘度上昇が観察された。
得られた溶液をDMAc273mLで希釈し、セライトを濾過助剤として用いて濾過した。濾液に臭化リチウム29.82g(343.33mmol)を加え、100℃で7時間反応させた。反応後、反応液を室温まで冷却し、水3.2Lに投入して凝固させた。凝固物にアセトンを加え、撹拌しながら4回洗浄・濾過を行った。洗浄物を1N硫酸で撹拌しながら7回洗浄・濾過を行った。さらに洗浄物を洗浄液のpHが5以上になるまで脱イオン水で洗浄・濾過を行った。得られた洗浄物を75℃で24時間乾燥させることにより目的のスルホン酸基を有する重合体26.3gを得た。
このスルホン酸基を有する重合体のGPC(溶媒:NMP緩衝溶液)で測定したポリスチレン換算の分子量は、Mnが53000であり、Mwが120000であった。また、この重合体のイオン交換容量は2.30meq/gであった。NMRで確認したところ、得られたスルホン酸基を有する重合体は、下記構造単位(q:r=90:10)を有する化合物(樹脂B)であった。
(式中、pは、その構造単位を形成する原料の仕込み量から算出される値である。)
〔触媒ペーストの作製〕
80mLのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)容器に、直径5mmのジルコニアボール((株)ニッカトー製「YTZボール」)80g、白金ルテニウム担持カーボン粒子(田中貴金属工業(株)製「TEC61E54」、Pt:29.8質量%担持、Ru:23.2質量%担持)1.28g、および蒸留水3.60gを入れ、遊星ボールミル(フリッチュ社製「P−5」)を用いて200rpmで10分間混練した。その後、更にn−プロピルアルコール12.02gおよびNafion D2020(DuPont社製、ポリマー濃度21%分散液、イオン交換容量1.08meq/g)3.90gを加え、200rpmで30分間混練した後、ジルコニアボールを除去することで、アノード触媒ペーストを得た。
80mLのPTFE容器に、直径5mmのジルコニアボール(YTZボール)80g、白金担持カーボン粒子(田中貴金属工業(株)製「TEC10E50E」、Pt:45.6質量%担持)1.25g、および蒸留水3.64gを入れ、遊星ボールミル(P−5)を用いて200rpmで10分間混練した。その後、更にn−プロピルアルコール11.91gおよびNafion D2020(4.40g)を加え、200rpmで30分間混練した後、ジルコニアボールを除去することで、カソード触媒ペーストを得た。
〔ガス拡散電極の作製〕
80mLのPTFE容器に直径5mmのジルコニアボール(YTZボール)80g、カーボンブラック(ライオン(株)製「ケッチェンブラックEC」)0.48g、蒸留水12.14g、n−プロピルアルコール4.05g、およびNafion D2020(3.33g)を入れ、遊星ボールミル(P−5)を用いて200rpmで5分間混練した後、ジルコニアボールを除去することで、カーボンブラックペーストを作製した。
得られたカーボンブラックペーストをSGL CARBON社製のガス拡散層25BC上にドクターブレードにて乾燥後の重量増加が0.3mg/cm2になるように塗布し、80℃で15分間乾燥させることで下地層塗布ガス拡散層を作製した。
アノード触媒ペーストを、下地層塗布ガス拡散層の下地層上にPtとRuとの合計量が0.6mg/cm2になるようにドクターブレードにて塗布後、80℃で15分間乾燥し、アノードガス拡散電極を作製した。
カソード触媒ペーストを、下地層塗布ガス拡散層の下地層上にPtの量が0.6mg/cm2になるようにドクターブレードにて塗布後、80℃で15分間乾燥し、カソードガス拡散電極を作製した。
[比較例1]
(1)製膜
合成例1で得られた樹脂A16gをメタノール/NMP=40/60(質量比)の混合溶媒84mLに溶解した溶液をPETフィルム上にダイコーターにてキャスト塗工し、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。乾燥後の塗膜付PETフィルムを大量の蒸留水に一晩浸漬し、塗膜中の残存NMPを取り除いた後、風乾し、PETフィルムから剥離することで膜厚が20μmである電解質膜1を得た。
(2)ガラス転移温度の測定
動的粘弾性装置(アイティー計測制御(株)製「DVA−200」)を用い、変形様式:引張、下限弾性率:1000Pa、下限動ちから:0cN、昇温速度:2℃/分、測定周波数10Hz、歪:0.05%、静/動力比:1.5、上限伸び率:50%、最小加重:0.5cNの条件で測定することで、温度と弾性率との曲線を得、得られた曲線の変曲点からガラス転移温度を求めた。電解質膜1のガラス転移温度は190℃であった。
なお同一の樹脂および同様の製法から得られる膜のガラス転移温度は膜厚によらず同一である。
(3)燃料電池の作製
1枚の電解質膜1の両面に5cm×5cmに切り出したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を触媒ペースト塗布側と電解質膜1表面が接するようにそれぞれ重ね合わせ、評価用セル((株)ケミックス製「JFC−025−01H」)に組み込み、有効面積25cm2の評価用燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた評価用燃料電池のアノードガス拡散電極側に、純水素ガスに露点80℃の水蒸気を含ませたものを0.5L/minで供給し、カソードガス拡散電極側に、空気に露点80℃の水蒸気を含ませたものを2L/minで供給し、燃料電池の温度を80℃に制御し、0〜1A/cm2までの電流掃引を120回繰り返し、前処理をした。
評価用燃料電池のカソード電極側に背圧120kPa、利用率40%で空気を供給し、アノード電極側に背圧120kPa、利用率70%で純水素を供給し、セル温度を90℃、カソード電極側相対湿度を30%、アノード電極側相対湿度を30%として、電流密度1.0A/cm2での出力電圧を測定した。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
(4)で使用した評価用燃料電池のアノードガス拡散電極側に、純水素ガスに露点45℃の水蒸気を含ませたものを0.05L/minで供給し、カソードガス拡散電極側に、窒素ガスに露点45℃の水蒸気を含ませたものを0.1L/minで供給し、燃料電池の温度を50℃に制御し、ポテンショガルバノスタット(ソーラトロン社製 1287型)を用いアノードに対するカソードの電圧を0.6Vから1.5Vまで掃引速度0.1V/sで100回往復させた。その後、燃料電池から膜を取り出し、膜に付着した電極を除去後、膜内に析出した白金量を蛍光X線分析装置(スペクトリ(株)「Magix」)にて元素分析することで定量した。結果を表1に示す。
[実施例1]
(1)製膜
合成例1で得られた樹脂A16gをメタノール/NMP=40/60(質量比)の混合溶媒84gに溶解した溶液をPETフィルム上にダイコーターにてキャスト塗工し、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。その後、乾燥後の塗膜上に、ポリヒドロキシスチレン(SIGMA−ALDRICH社製)5gをメタノール/NMP=20/80(質量比)の混合溶媒120gに溶解した溶液を、ダイコーターにて乾燥後の膜厚が1μmになるように厚みを制御してキャスト塗工し、120℃で60分乾燥した。乾燥後の塗膜付PETフィルムを大量の蒸留水に一晩浸漬し、塗膜中の残存NMPを取り除いた。その後、風乾することで、厚み1μmのポリヒドロキシスチレン層と、樹脂Aのみからなる、厚み20μmの層とがこの順で積層された積層体が得られた。なお、使用したポリヒドロキシスチレンが有する官能基はフェノール性水酸基であるため、そのpKaは3以上である。また、以下の評価では、この積層体からPETフィルムを取り除いたものを電解質膜2(厚み21μm)として用いた。
(3)燃料電池の作製
1枚の電解質膜2の両面に5cm×5cmに切り出したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を、カソードガス拡散電極の触媒ペースト塗布側がポリヒドロキシスチレン層と接し、アノードガス拡散電極の触媒ペースト塗布側が樹脂Aからなる層と接するようにそれぞれ重ね合わせ、評価用セル((株)ケミックス製「JFC−025−01H」)に組み込み、有効面積25cm2の燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
(1)製膜
合成例2で得られた樹脂B15gをメタノール/NMP=40/60(質量比)の混合溶媒85gに溶解した溶液をPETフィルム上にダイコーターにてキャスト塗工し、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。乾燥後の塗膜付PETフィルムを大量の蒸留水に一晩浸漬し、塗膜中の残存NMPを取り除いた後、風乾し、PETフィルムから剥離することで膜厚が20μmである電解質膜3を得た。
(2)ガラス転移温度の測定
比較例1と同様の方法で測定した電解質膜3のガラス転移温度は166℃であった。
(3)燃料電池の作製
電解質膜3を使用した他は比較例1と同様の方法で燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[実施例2]
(1)製膜
合成例2で得られた樹脂B15gをメタノール/NMP=40/60(質量比)の混合溶媒85gに溶解した溶液をPETフィルム上にダイコーターにてキャスト塗工し、80℃で40分予備乾燥した後、120℃で40分乾燥した。その後、乾燥後の塗膜上に、ポリヒドロキシスチレン(SIGMA−ALDRICH社製)5gをメタノール/NMP=20/80(質量比)の混合溶媒120gに溶解した溶液を、ダイコーターにて乾燥後の膜厚が1μmになるように厚みを制御してキャスト塗工し、120℃で60分乾燥した。乾燥後の塗膜付PETフィルムを大量の蒸留水に一晩浸漬し、塗膜中の残存NMPを取り除いた。その後、風乾することで、厚み1μmのポリヒドロキシスチレン層と、樹脂Bのみからなる、厚み20μmの層とがこの順で積層された積層体が得られた。なお、以下の評価では、この積層体からPETフィルムを取り除いたものを電解質膜4(厚み21μm)として用いた。
(3)燃料電池の作製
電解質膜4を使用した他は実施例1と同様の方法で燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
(1)製膜
実施例2において、ポリヒドロキシスチレンの代わりにポリスチレン(SIGMA−ALDRICH社製)を用いた以外は実施例2と同様にして、厚み1μmのポリスチレン層と、樹脂Bのみからなる、厚み20μmの層とがこの順で積層された積層体を得た。なお、使用したポリスチレンは酸性を示す官能基を有さない。また、以下の評価では、この積層体からPETフィルムを取り除いたものを電解質膜5(厚み21μm)として用いた。
(3)燃料電池の作製
1枚の電解質膜5の両面に5cm×5cmに切り出したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を、カソードガス拡散電極の触媒ペースト塗布側がポリスチレン層と接し、アノードガス拡散電極の触媒ペースト塗布側が樹脂Bからなる層と接するようにそれぞれ重ね合わせ、評価用セル((株)ケミックス製「JFC−025−01H」)に組み込み、有効面積25cm2の燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
電解質膜1の代わりに、厚み50μmのNafion NRE212CS(DuPont社製)を電解質膜6として用いた以外は、比較例1と同様の方法で燃料電池を作製し、出力電圧の測定を行った。また、比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
(1)製膜
Nafion NRE212CS膜上に、ポリヒドロキシスチレン(SIGMA−ALDRICH社製)5gをメタノール/NMP=20/80(質量比)の混合溶媒120gに溶解した溶液を、ダイコーターにて乾燥後の膜厚が1μmになるように厚みを制御してキャスト塗工し、120℃で60分乾燥した。乾燥後の塗膜付Nafion膜を大量の蒸留水に一晩浸漬し、塗膜中の残存NMPを取り除いた。その後、風乾することで、厚み1μmのポリヒドロキシスチレン層と、Nafion NRE212CSのみからなる、厚み50μmの層とがこの順で積層された積層体(電解質膜7(厚み51μm))が得られた。
(3)燃料電池の作製
電解質膜7を使用した他は実施例1と同様の方法で燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[参考例1]
(1)製膜
膜厚を10μmに調整した以外は比較例2と同様の方法で電解質膜8を得た。
(3)燃料電池の作製
2枚の電解質膜8を重ね合わせ、更にその外側に5cm×5cmに切り出したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を触媒ペースト塗布側と電解質膜8表面とが接するようにそれぞれ重ね合わせ、評価用セル(「JFC−025−01H」)に組み込み、有効面積25cm2の燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[実施例5]
(1)製膜
参考例1で得られたPETフィルム付きの電解質膜8上に、ポリスチレン(SIGMA−ALDRICH社製)5gをテトラヒドロフラン溶媒120gに溶解した溶液を、ダイコーターにて乾燥後の膜厚が0.5μmになるように厚みを制御してキャスト塗工し、80℃で60分乾燥することで、厚み0.5μmのポリスチレン層と、樹脂Bのみからなる、厚み10μmの層とがこの順で積層された積層体を得た。なお、以下の評価では、この積層体からPETフィルムを取り除いたものを電解質膜9(厚み10.5μm)として用いた。
(3)燃料電池の作製
電解質膜8と電解質膜9とをポリスチレン層が外側にくるように重ね合わせ、更にその外側に5cm×5cmに切り出したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を、アノードガス拡散電極の触媒ペースト塗布側が電解質膜8と接し、カソードガス拡散電極の触媒ペースト塗布側が電解質膜9のポリスチレン層と接するようにそれぞれ重ね合わせ、評価用セル(「JFC−025−01H」)に組み込み、有効面積25cm2の燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[実施例6]
(1)製膜
参考例1で得られたPETフィルム付きの電解質膜8上に、ポリビニルアルコール(SIGMA−ALDRICH社製)5gをアセトン溶媒120gに溶解した溶液を、ダイコーターにて乾燥後の膜厚が1μmになるように厚みを制御してキャスト塗工し、80℃で60分乾燥することで、厚み1μmのポリビニルアルコール層と、樹脂Bのみからなる、厚み10μmの層とがこの順で積層された積層体を得た。なお、使用したポリビニルアルコールが有する官能基はヒドロキシ基であるため、そのpKaは3以上である。また、以下の評価では、この積層体からPETフィルムを取り除いたものを電解質膜10(厚み11μm)として用いた。
(3)燃料電池の作製
電解質膜8と電解質膜10とをポリビニルアルコール層が中間にくるように重ね合わせ、更にその外側に5cm×5cmに切り出したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を触媒ペースト塗布側と電解質膜8表面が接するようにそれぞれ重ね合わせ、評価用セル(「JFC−025−01H」)に組み込み、有効面積25cm2の燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[実施例7]
(1)製膜
実施例6において、ポリビニルアルコールの代わりにポリヒドロキシスチレン(SIGMA−ALDRICH社製)を用い、厚み0.5μmのポリヒドロキシスチレン層が得られるようにキャスト塗工した以外は実施例6と同様にして、厚み0.5μmのポリヒドロキシスチレン層と、樹脂Bのみからなる、厚み10μmの層とがこの順で積層された積層体を得た。また、以下の評価では、この積層体からPETフィルムを取り除いたものを電解質膜11(厚み10.5μm)として用いた。
(3)燃料電池の作製
電解質膜8と電解質膜11とをポリヒドロキシスチレン層が中間にくるように重ね合わせ、更にその外側に5cm×5cmに切り出したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を触媒ペースト塗布側と電解質膜8表面が接するようにそれぞれ重ね合わせ、評価用セル(「JFC−025−01H」)に組み込み、有効面積25cm2の燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
[実施例8]
(3)燃料電池の作製
電解質膜11をポリヒドロキシスチレン層が内側になるように折り重ね、その外側両面に5cm×5cmに切り出したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を触媒ペースト塗布側と電解質膜8表面が接するようにそれぞれ重ね合わせ、評価用セル((株)ケミックス製「JFC−025−01H」)に組み込み、有効面積25cm2の燃料電池を作製した。
(4)出力電圧測定
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で出力電圧の測定を行った。結果を表1に示す。
(5)電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量
得られた燃料電池を用いた他は比較例1と同様の方法で電位サイクルによる電解質膜内部での白金析出量の定量を行った。結果を表1に示す。
本発明の固体高分子電解質膜によれば、出力電圧の低下がなく、電解質膜内部での白金析出量を低減できることが分かった。従って、本発明の固体高分子電解質膜は劣化が起こりにくく、このような固体高分子電解質膜を用いることで、長期安定性に優れる燃料電池や水電解装置が得られると考えられる。
10:膜−電極接合体
11:アノードガス拡散層
12:アノード触媒層
13:電解質膜(A)
14:非電解質層
15:カソード触媒層
16:カソードガス拡散層
17:固体高分子電解質膜
13':電解質膜(A)を折り曲げてなる構造体
14':非電解質層
17':固体高分子電解質膜

Claims (10)

  1. イオン交換基を有する重合体を含む電解質膜(A)と、スルホン酸基を実質的に含まない重合体を有する非電解質層とを含む、固体高分子電解質膜。
  2. 前記非電解質層が、pKaが3以下である官能基を有する重合体を実質的に含まない層である、請求項1に記載の固体高分子電解質膜。
  3. 前記非電解質層の厚みが5μm以下である、請求項1または2に記載の固体高分子電解質膜。
  4. 前記電解質膜(A)を2枚以上有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜。
  5. 前記電解質膜(A)を折り曲げてなる構造体を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜。
  6. 前記固体高分子電解質膜が、カソードおよびアノード間に用いられる電解質膜であり、
    前記非電解質層がアノードに接していない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜。
  7. ガス拡散層、触媒層、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜、触媒層およびガス拡散層がこの順で積層された膜−電極接合体。
  8. 請求項7に記載の膜−電極接合体を有する燃料電池。
  9. 触媒層、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜および触媒層がこの順で積層された積層体を含む、水電解セル。
  10. 請求項9に記載の水電解セルを有する水電解装置。
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