JP2015224373A - ガスバリア性フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】基材に対してガスバリア層の形成面とは反対側の表面に保護フィルムを配置した状態でガスバリア層を真空成膜法により形成するガスバリア性フィルムの製造方法において、基材の変形や保護フィルムの基材からの剥離を抑制しつつ、高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムの製造を可能としうる手段を提供する。
【解決手段】主基材の一方の面に真空成膜法によりガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程を含むガスバリア性フィルムの製造方法であって、
保護フィルム基材と粘着層とを有する保護フィルムが前記粘着層を介して前記主基材のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に配置された状態で、前記ガスバリア層形成工程を行い、
前記ガスバリア層形成工程前の前記主基材と前記保護フィルムとの間の剥離力をA[N/25mm]とし、前記ガスバリア層形成工程後の前記主基材と前記保護フィルムとの間の剥離力をB[N/25mm]としたときに、A<B、0.03<A<0.25、および0.05<B<0.30を満足することを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ガスバリア性フィルムの製造方法に関する。
従来、食品、包装材料、医薬品などの分野で、水蒸気や酸素等のガスの透過を防ぐため、樹脂基材の表面に金属や金属酸化物の蒸着膜等の無機膜を設けた比較的簡易な構造を有するガスバリア性フィルムが用いられてきた。
包装用途以外にも、フレキシブル性を有する太陽電池素子、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等のフレキシブル電子デバイスへの展開が要望され、多くの検討がなされている。
特に有機ELなどの光学用途では、ガスバリア性フィルムに対して高いガスバリア性と透明性が求められる。ここで、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂基材を使用したガスバリア性フィルムにおいて、製造加工時・搬送時の傷つきや汚れに起因してガスバリア層が損傷・汚染を受けるとガスバリア性が低下してしまう。このためガスバリア層の表面を保護する目的でガスバリア層の表面に保護フィルムを設ける技術が知られている。
一方、基材に対してガスバリア層の形成面とは反対側の表面に保護フィルムを配置する技術も知られている。例えば特許文献1には、ガスバリア性フィルム等の機能性フィルムをロール・トゥ・ロール方式で連続的に製造するにあたって、基材(支持体)の表面に有機膜を溶剤塗布にて付与する場合などにおける溶剤ダメージによる支持体の変性と、その後の真空成膜法による無機膜の形成時の脱ガスの発生を防止することを目的とした技術が開示されている。具体的には、基材(支持体)の裏面側に耐溶剤性を有するラミネートフィルムを配置した状態で当該基材(支持体)を搬送しながらその表面側に有機膜を溶剤塗布にて付与し、次いでこの有機膜上に無機膜を真空成膜法により形成する技術が開示されている。
特許第5274342号公報
本発明者の検討によれば、特許文献1等により従来提案されている、基材に対してガスバリア層の形成面とは反対側の表面に保護フィルムを配置した状態でガスバリア層を真空成膜法により形成する技術では、十分に高いガスバリア性を達成することができないことが判明した。また、場合によっては基材が変形したり、保護フィルムが基材から剥離したりすることで、ガスバリア性フィルムの生産性が低下してしまうことも判明した。
そこで本発明は、基材に対してガスバリア層の形成面とは反対側の表面に保護フィルムを配置した状態でガスバリア層を真空成膜法により形成するガスバリア性フィルムの製造方法において、基材の変形や保護フィルムの基材からの剥離を抑制しつつ、高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムの製造を可能としうる手段を提供することを目的とする。
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、主基材に対してガスバリア層の形成面とは反対側の表面に保護フィルム(保護フィルム基材と粘着層との積層体)を配置した状態でガスバリア層を真空成膜法により形成するガスバリア層形成工程を行うにあたって、ガスバリア層形成工程前の主基材と保護フィルムとの間の剥離力(A)の値、およびガスバリア層形成工程後の主基材と保護フィルムとの間の剥離力(B)の値を特定の範囲に制御し、かつ、ガスバリア層形成工程の前後で上記剥離力が大きくなる(つまり、A<Bを満たす)ようにすることで上記課題が解決されうることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の上記課題は、主基材の一方の面に真空成膜法によりガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程を含むガスバリア性フィルムの製造方法であって、保護フィルム基材と粘着層とを有する保護フィルムが前記粘着層を介して前記主基材のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に配置された状態で、前記ガスバリア層形成工程を行い、前記ガスバリア層形成工程前の前記主基材と前記保護フィルムとの間の剥離力をA[N/25mm]とし、前記ガスバリア層形成工程後の前記主基材と前記保護フィルムとの間の剥離力をB[N/25mm]としたときに、A<B、0.03<A<0.25、および0.05<B<0.30を満足することを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法により、解決される。
本発明によれば、基材の変形や保護フィルムの主基材からの剥離を抑制しつつ、高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを製造することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法においてガスバリア層の形成に用いられる真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。 本発明の一実施形態に係るガスバリア性フィルムの製造方法においてガスバリア層の形成に用いられる他の製造装置の一例を示す模式図である。
本発明の一形態は、主基材の一方の面に真空成膜法によりガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程を含むガスバリア性フィルムの製造方法に関する。当該製造方法では、保護フィルム基材と粘着層とを有する保護フィルムが前記粘着層を介して前記主基材のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に配置された状態で、前記ガスバリア層形成工程を行う。そして、前記ガスバリア層形成工程前の前記主基材と前記保護フィルムとの間の剥離力をA[N/25mm]とし、前記ガスバリア層形成工程後の前記主基材と前記保護フィルムとの間の剥離力をB[N/25mm]としたときに、A<B、0.03<A<0.25、および0.05<B<0.30を満足する点に特徴がある。
以下、本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみには限定されない。
[主基材]
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、主基材の一方の面に真空成膜法によりガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程を含む。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法において用いられる主基材は、通常、プラスチックフィルムである。主基材として用いられるプラスチックフィルムは、バリア性積層体を保持できるフィルムであれば材質、厚み等に特に制限はなく、使用目的等に応じて適宜選択することができる。前記プラスチックフィルムとしては、具体的には、ポリエステル樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレン樹脂、透明フッ素樹脂、ポリイミド、フッ素化ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、セルロースアシレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、シクロオレフィルンコポリマー、フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂、脂環変性ポリカーボネート樹脂、フルオレン環変性ポリエステル樹脂、アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
ガスバリア性フィルムは有機EL素子等の電子デバイスの基材などに利用されることから、プラスチックフィルムは透明であることが好ましい。すなわち、光線透過率が通常80%以上、好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上である。光線透過率は、JIS K7105:1981に記載された方法、すなわち積分球式光線透過率測定装置を用いて全光線透過率および散乱光量を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引いて算出することができる。
ただし、ガスバリア性フィルムをディスプレイ用途に用いる場合であっても、観察側に設置しない場合などは必ずしも透明性が要求されない。したがって、このような場合は、プラスチックフィルムとして不透明な材料を用いることもできる。不透明な材料としては、例えば、ポリイミド、ポリアクリロニトリル、公知の液晶ポリマーなどが挙げられる。
主基材の厚みは、用途によって適宜選択されるため特に制限がないが、典型的には1μm以上であり、好ましくは10μm以上である。一方、典型的には800μm以下であり、好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。このように、主基材の厚みは10〜60μmであることが特に好ましい。ここで、主基材の厚みが10μm以上であれば、ガスバリア層形成後にガスバリア性フィルムをロールに巻き取った場合であってもフィルムに皺ができにくく、ガスバリア層にクラックが発生することに起因するガスバリア性の低下が防止される。また、主基材の厚みが60μm以下であれば、主基材の剛性が高くなりすぎずに本発明の作用効果を十分に発現させることができる結果、高いガスバリア性を確保することができる。
主基材のガスバリア層を設ける側には、接着性向上のための公知の種々の処理、コロナ放電処理、火炎処理、酸化処理、プラズマ処理等を、必要に応じて組み合わせて行うことができる。
[保護フィルム]
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法においては、ガスバリア層形成工程を、保護フィルムが主基材のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に配置された状態で行う。このように、主基材の一方の面に保護フィルムが配置された状態で、基材の他方の面に真空成膜法によりガスバリア層を形成することで、屈曲性および屈曲後のガスバリア性に優れるガスバリア性フィルムが得られる。これは、基材が薄い場合でも基材に負荷のかかる真空成膜条件の設定が可能となり、CVD条件の設定域が広がることによるものと推定されている。
ここで、保護フィルムは保護フィルム基材と粘着層とを有するものであり、この保護フィルムは粘着層を介して上記主基材のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に配置される。
(保護フィルム基材)
保護フィルム基材としては、通常、樹脂材料が用いられる。この樹脂材料としては、特に制限はないが、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステルフィルム・ヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド系フィルム;ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリフルオロエチレン等の含ハロゲン系フィルム;ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン酢酸ピニル共重合体等の酢酸ビニルおよびその誘導体フィルム等のプラスチックフィルムが、紙とは異なり微細塵を発生しないことから好ましい。なお、本発明においては、耐熱性および、入手の容易性の観点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いられる。
保護フィルム基材の厚さも特に制限はされないが、例えば10μm〜300μmのものが使用される。好ましくは25μm〜150μmのものである。10μm以上であればフィルムが十分に厚く取り扱いが容易であり、300μm以下であれば十分に柔軟であり搬送性やロールへの密着性に優れる。
(粘着層)
粘着層は、粘着剤を含む層である。粘着層に用いられる粘着剤の種類としては特に制限はないが、アクリル系粘着剤が、耐久性、透明性、粘着特性の調整の容易さなどの面から好ましい。ただし、ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコン系粘着剤、紫外線硬化型粘着剤、ポリオレフィン系粘着剤、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)系粘着剤などが用いられてもよい。
アクリル系粘着剤は、アクリル酸アルキルエステルを主成分とし、これに極性単量体成分を共重合したアクリル系ポリマーを用いたものである。上記アクリル酸アルキルエステルとはアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルであって、特に限定されるものではないが、例えば、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル等が挙げられる。具体的には、東洋インキ社製BPS5978が使用できる。
アクリル系粘着剤の硬化剤としては、例えば、イソシアネート系、エポキシ系、アリジリン系硬化剤が利用できる。イソシアネート系硬化剤では、長期保存後も安定した粘着力を得ることと、より硬い粘着層とする目的で、トノレイレンジイソシアネート(TDI)等の芳香族系のタイプを好ましく用いることができる。具体的には、東洋インキ社製BXX5134を使用することができる。
硬化剤の添加量は、粘着剤に対して3質量%〜9質量%であることが好ましく、より好ましくは5質量%〜7質量%である。このような範囲であれば、粘着剤成分を十分に硬化させ耐熱性ラミネートフィルムをガスバリア性フィルムから剥がした後に粘着剤が残りにくく、十分な接着力も確保できる。
粘着層を構成する粘着剤の重量平均分子量は、40万以上140万以下であることが好ましい。重量平均分子量がこの範囲内の値であれば、過度の粘着力となることなく、十分な粘着力を得ることができる。さらに、上記の重量平均分子量の範囲であれば、ガスバリア層上への粘着剤の残留を防止することができ、また、特にプラズマCVD法によりガスバリア層を形成する際には、熱やエネルギーがかかるため、適当な分子量範囲であれば、粘着材料の転写や剥離が生じることを防止することができる。
粘着層の厚みは、取扱いの面から10μm以上50μm以下であることが好ましい。このような範囲であれば、保護フィルムと主基材との十分な密着力を得ることができ、保護フィルムを剥離する際にも、ガスバリア性フィルムに対して過度な力をかける必要がなく、ガスバリア層の損傷を防ぐことができる。
粘着層を保護フィルム基材の表面に形成(塗工)する方法は特に限定されないが、例えば、スクリーン法、グラビア法、メッシュ法、バー塗工法等が用いられうる。
(主基材への保護フィルムの貼合)
主基材への保護フィルムの貼合の手法は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。好ましい一実施形態としては、保護フィルムの貼合と連続して後述する真空成膜法によるガスバリア層の形成を行うオンライン方式が例示される。また、主基材へ保護フィルムを貼合した後に、一旦、巻き取り軸で保護フィルムと主基材との積層体を巻き取った後、別工程で、当該積層体を巻き出してガスバリア層の形成を行うオフライン方式であってもよい。
[主基材と保護フィルムとの間の剥離力]
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法においては、ガスバリア層形成工程前およびガスバリア層形成工程後のそれぞれにおける主基材と保護フィルムとの間の剥離力(上記工程前の剥離力をA[N/25mm]とし、上記工程後の剥離力をB[N/25mm]とする)の絶対値が制御される。また、AよりもBの方が大きくなる(A<Bを満たす)ように構成される。
具体的に、A[N/25mm]は0.03<A<0.25を満たすことが必須であり、好ましくは0.05<A<0.22を満たし、より好ましくは0.12<A<0.20を満たす。ここで、Aが0.03[N/25mm]以下であると、真空成膜法によるガスバリア層の形成時における、保護フィルムによる主基材のサポート能が低下し、主基材の熱収縮によってガスバリア層にマイクロクラックが多数発生する結果、十分なガスバリア性を確保することができないという問題がある。一方、本発明では、ガスバリア層形成後にガスバリア性フィルムを保護フィルム付きの状態でロールに巻き取ることが好ましく、この場合にはガスバリア層と保護フィルムとが接触することがある。このときAが0.25以上であると、ガスバリア層の表面にかけられた応力を保護フィルム側に十分に逃がしてやることができなくなり(言い換えれば、応力緩和能が低く)、ガスバリア層に損傷(クラック、表面ひび)が発生してしまい、やはり十分なガスバリア性を確保できないという問題が生じる。
また、後述するガスバリア層形成工程(真空成膜法によるガスバリア層の形成)後における主基材と保護フィルムとの間の剥離力B[N/25mm]は、A[N/25mm]よりも大きいことが必要である。ここで、ガスバリア層形成工程の前から後にかけて剥離力が増加しないと(A≧Bであると)、ガスバリア層形成工程においてガスバリア層が形成された面の側に収縮応力が残存してしまう。その結果、ガスバリア層が歪みを持った状態で形成されてしまい、その後の取扱い時においてガスバリア層に損傷(クラック、表面ひび)が発生して、ガスバリア性の低下が引き起こされるという問題が生じる。A<Bとなることが必須としたのはこのためであるが、本発明の作用効果をよりいっそう発現させるという観点からは、B≧1.1Aをさらに満足することが好ましく、B≧1.11Aをさらに満足することがより好ましく、B≧1.38Aをさらに満足することが特に好ましい。特にこの関係を満たすことによりガスバリア性がより向上するのは、ガスバリア層形成工程において主基材の平面性が維持されることによるものと考えられる。なお、上述したAの範囲に鑑みると、「A<B」なる関係式を満たすBの値は0.05<B<0.30を満たすことが必須であり、好ましくは0.08<B<0.25を満たし、より好ましくは0.10<B<0.20を満たす。
なお、上述したAおよびBの値としては、後述する実施例の欄に記載の手法により測定された値を採用するものとする。また、上述したAの値(ひいてはBの値)の絶対値は、粘着剤および硬化剤の種類並びに硬化度を変更することにより調整することができる。また、主基材と保護フィルムとを貼合する際の温度を変更することによっても調整することができる。さらに、主基材と保護フィルムとを貼合した後、ガスバリア層形成工程前にシーズニング処理を施すことで、Aの値をさらに調整することもできる。また、「A<B」なる関係式を満たすようにするには、例えば、ガスバリア層形成工程における真空成膜時の温度を調整(高く)したり、真空成膜時の原材料ガスと酸素ガスとの比率を固定したまま酸素ガスの絶対量を調整(少なく)したりすればよい。
[ガスバリア層形成工程]
上述したように、本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法においては、ガスバリア層形成工程を、保護フィルムが主基材のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に配置された状態で、真空成膜法により行う。真空成膜法としては、化学気相蒸着法(CVD法)または物理蒸着法(PVD法)が挙げられる。なお、真空成膜法によるガスバリア層の形成は2層以上行ってもよく、真空成膜法によって2層のガスバリア層を形成することが好ましい。また、真空成膜法によってガスバリア層(以下、「第一無機層」とも称する)を少なくとも1層形成した後、さらにこのガスバリア層上に、ケイ素化合物を含有する溶液を塗布してなる塗膜を改質することによりガスバリア層(以下、「第二無機層」とも称する)を形成してもよい。
(真空成膜法によるガスバリア層(第一無機層)の成膜方法)
真空成膜法により形成されるガスバリア層(第一無機層)は、無機化合物を含む。第一無機層に含まれる無機化合物としては、特に限定されないが、例えば、ケイ素、アルミニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物、窒化物、酸窒化物または酸炭化物の少なくとも1種を含む。ケイ素、アルミニウムおよびチタンからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物、窒化物、酸窒化物または酸炭化物としては、具体的には、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素(SiON)、酸炭化ケイ素(SiOC)、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、およびアルミニウムシリケートなどのこれらの複合体が挙げられる。このうち好ましくは酸窒化ケイ素(SiON)、窒化ケイ素(SiN)、酸炭化ケイ素(SiOC)、酸化ケイ素(SiO)、アルミニウムシリケート(SiAlO)および酸窒化炭化ケイ素(SiONC)である。これらは、副次的な成分として他の元素を含有してもよい。
第一無機層の厚みは、5〜200nmであることが好ましく、より好ましくは10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜100nmである。
第一無機層は上記化合物を有することで、ガスバリア性を有する。ここで、第一無機層のガスバリア性は、主基材上にガスバリア層を形成させた積層体で算出した際に、後述の実施例に記載の方法により測定される水蒸気透過量が0.1g/(m・24h)以下であることが好ましく、0.01g/(m・24h)以下であることがより好ましい。
物理蒸着法(PVD法)は、気相中で物質の表面に物理的手法により、目的とする物質、例えば、炭素膜等の薄膜を堆積する方法であり、例えば、スパッタリング法(DCスパッタリング、RFスパッタリング、イオンビームスパッタリング、およびマグネトロンスパッタリング等)、真空蒸着法、イオンプレーティング法などが挙げられる。
原料化合物としては、ケイ素化合物、チタン化合物、およびアルミニウム化合物を用いる。これらは、従来公知の化合物を用いることができ、好ましくはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)である。
また、金属を含む原料ガスを分解して無機化合物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、アンモニアガス、亜酸化窒素ガス、酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、酸素ガス、水蒸気などが挙げられる。また、上記分解ガスを、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスと混合してもよい。
以下、CVD法のうち、好適な形態であるプラズマCVD法について具体的に説明する。
図1は、本発明に係る第一無機層の形成に用いられる真空プラズマCVD装置の一例を示す模式図である。
図1において、真空プラズマCVD装置101は、真空槽102を有しており、真空槽102の内部の底面側には、サセプタ105が配置されている。また、真空槽102の内部の天井側には、サセプタ105と対向する位置にカソード電極103が配置されている。真空槽102の外部には、熱媒体循環系106と、真空排気系107と、ガス導入系108と、高周波電源109が配置されている。熱媒体循環系106内には熱媒体が配置されている。熱媒体循環系106には、熱媒体を移動させるポンプと、熱媒体を加熱する加熱装置と、冷却する冷却装置と、熱媒体の温度を測定する温度センサと、熱媒体の設定温度を記憶する記憶装置とを有する加熱冷却装置160が設けられている。図1に記載の真空プラズマCVD装置の詳細については、国際公開第2012/014653号パンフレットを参照することができる。
(第一無機層の他の好適な形態)
また、本発明の第一無機層の他の好適な一実施形態として、構成元素に炭素、ケイ素、および酸素を含む層がある。より好適な形態は、以下の(i)〜(ii)の要件を満たす第一無機層である。
(i)第一無機層の膜厚方向における第一無機層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有する、
(ii)炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値と最小値との差の絶対値が3at%以上である。
かような組成をもつことで、ガスバリア性と屈曲性を高度に両立する観点から好ましい。
さらに、第一無機層の全層厚の90%以上の領域において、ケイ素原子、酸素原子及び炭素原子の合計量(100at%)に対する各原子の平均原子比率が、下記式(A)または(B)で表される序列の大小関係を有することが、屈曲性に優れるという点で好ましい。
式(A)
(炭素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(酸素平均原子比率)
式(B)
(酸素平均原子比率)<(ケイ素平均原子比率)<(炭素平均原子比率)
以下、上記好適な実施形態について説明する。
(i)前記第一無機層の膜厚方向における前記第一無機層表面からの距離(L)と、ケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対するケイ素原子の量の比率(ケイ素の原子比)との関係を示すケイ素分布曲線、前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する酸素原子の量の比率(酸素の原子比)との関係を示す酸素分布曲線、ならびに前記Lとケイ素原子、酸素原子、および炭素原子の合計量に対する炭素原子の量の比率(炭素の原子比)との関係を示す炭素分布曲線において、炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有することが好ましい。上記第一無機層は、前記炭素分布曲線が少なくとも3つの極値を有することが好ましく、少なくとも4つの極値を有することがより好ましいが、5つ以上有してもよい。炭素分布曲線が少なくとも2つの極値を有することで、炭素原子比率が濃度勾配を有して連続的に変化し、屈曲時のガスバリア性能が高まる。なお、炭素分布曲線の極値の上限は、特に制限されないが、例えば、好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。極値の数は、ガスバリア層の膜厚にも起因するため、一概に規定することはできない。
ここで、少なくとも3つの極値を有する場合においては、前記炭素分布曲線の有する1つの極値および該極値に隣接する極値における前記第一無機層の膜厚方向における前記第一無機層の表面からの距離(L)の差の絶対値(以下、単に「極値間の距離」とも称する)が、いずれも200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、75nm以下であることが特に好ましい。このような極値間の距離であれば、第一無機層中に炭素原子比が多い部位(極大値)が適度な周期で存在するため、第一無機層に適度な屈曲性を付与し、ガスバリア性フィルムの屈曲時のクラックの発生をより有効に抑制・防止できる。なお、本明細書において極値とは、前記第一無機層の膜厚方向における前記第一無機層の表面からの距離(L)に対する元素の原子比の極大値または極小値のことをいう。また、本明細書において極大値とは、第一無機層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素または炭素)の原子比の値が増加から減少に変わる点であって、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点から第一無機層の膜厚方向における第一無機層の表面からの距離をさらに4〜20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上減少していればよい。これは、第一無機層の膜厚により変動する。例えば、第一無機層が300nmである場合は、第一無機層の膜厚方向における第一無機層の表面からの距離を20nm変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上減少する点が好ましい。さらに、本明細書において極小値とは、第一無機層の表面からの距離を変化させた場合に元素(酸素、ケイ素または炭素)の原子比の値が減少から増加に変わる点であり、かつその点の元素の原子比の値よりも、該点から第一無機層の膜厚方向における第一無機層の表面からの距離をさらに4〜20nmの範囲で変化させた位置の元素の原子比の値が3at%以上増加する点のことをいう。すなわち、4〜20nmの範囲で変化させた際に、いずれかの範囲で元素の原子比の値が3at%以上増加していればよい。ここで、少なくとも3つの極値を有する場合の、極値間の距離の下限は、極値間の距離が小さいほどガスバリア性フィルムの屈曲時のクラック発生抑制/防止の向上効果が高いため、特に制限されない。
さらに、該第一無機層は、(ii)前記炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が3at%以上であることが好ましく、5at%以上であることがより好ましく、7at%以上であることがさらに好ましい。炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が3at%以上であることで、屈曲時のガスバリア性能が高まる。なお、本明細書において、「最大値」とは、各元素の分布曲線において最大となる各元素の原子比であり、極大値の中で最も高い値である。同様にして、本明細書において、「最小値」とは、各元素の分布曲線において最小となる各元素の原子比であり、極小値の中で最も低い値である。
また、第一無機層の膜厚の90%以上(上限:100%)の領域で、(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)、(炭素の原子比)の順で多い(原子比がO>Si>C)ことが好ましい。かような条件となることで、得られるガスバリア性フィルムのガスバリア性や屈曲性が十分となる。ここで、上記炭素分布曲線において、上記(酸素の原子比)、(ケイ素の原子比)および(炭素の原子比)の関係は、ガスバリア層の膜厚の、少なくとも90%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましく、少なくとも93%以上(上限:100%)の領域で満たされることがより好ましい。ここで、ガスバリア層の膜厚の少なくとも90%以上とは、ガスバリア層中で連続していなくてもよく、単に90%以上の部分で上記した関係を満たしていればよい。
前記ケイ素分布曲線、前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線、および前記酸素炭素分布曲線は、X線光電子分光法(XPS:Xray Photoelectron Spectroscopy)の測定とアルゴン等の希ガスイオンスパッタとを併用することにより、試料内部を露出させつつ順次表面組成分析を行う、いわゆるXPSデプスプロファイル測定により作成することができる。このようなXPSデプスプロファイル測定により得られる分布曲線は、例えば、縦軸を各元素の原子比(単位:at%)とし、横軸をエッチング時間(スパッタ時間)として作成することができる。なお、このように横軸をエッチング時間とする元素の分布曲線においては、エッチング時間は膜厚方向における前記第一無機層の膜厚方向における前記第一無機層の表面からの距離(L)に概ね相関することから、「第一無機層の膜厚方向における第一無機層の表面からの距離」として、XPSデプスプロファイル測定の際に採用したエッチング速度とエッチング時間との関係から算出される第一無機層の表面からの距離を採用することができる。なお、本発明では、ケイ素分布曲線、酸素分布曲線、炭素分布曲線および酸素炭素分布曲線は、下記測定条件にて作成した。
(測定条件)
エッチングイオン種:アルゴン(Ar);
エッチング速度(SiO熱酸化膜換算値):0.05nm/sec;
エッチング間隔(SiO換算値):10nm;
X線光電子分光装置:Thermo Fisher Scientific社製、機種名”VG Theta Probe”;
照射X線:単結晶分光AlKα
X線のスポット及びそのサイズ:800×400μmの楕円形。
膜面全体において均一でかつ優れたガスバリア性を有する第一無機層を形成するという観点から、第一無機層が膜面方向(第一無機層の表面に平行な方向)において実質的に一様であることが好ましい。ここで、第一無機層が膜面方向において実質的に一様とは、XPSデプスプロファイル測定により第一無機層の膜面の任意の2箇所の測定箇所について前記酸素分布曲線、前記炭素分布曲線および前記酸素炭素分布曲線を作成した場合に、その任意の2箇所の測定箇所において得られる炭素分布曲線が持つ極値の数が同じであり、それぞれの炭素分布曲線における炭素の原子比の最大値および最小値の差の絶対値が、互いに同じであるかもしくは5at%以内の差であることをいう。
さらに、前記炭素分布曲線は実質的に連続であることが好ましい。ここで、炭素分布曲線が実質的に連続とは、炭素分布曲線における炭素の原子比が不連続に変化する部分を含まないことを意味し、具体的には、エッチング速度とエッチング時間とから算出される前記第一無機層のうちの少なくとも1層の膜厚方向における該第一無機層の表面からの距離(x、単位:nm)と、炭素の原子比(C、単位:at%)との関係において、下記数式(1)で表される条件を満たすことをいう。
なお、第一無機層がサブレイヤーを有する場合、上記条件(i)〜(ii)を全て満たすサブレイヤーが複数積層されて第一無機層を形成していてもよい。サブレイヤーを2層以上備える場合には、複数のサブレイヤーの材質は、同一であってもよいし異なっていてもよい。
第一無機層の好適な形態である、(i)〜(ii)の要件を満たす層は、プラズマCVD(PECVD)法により形成される層であることが好ましく、さらに対向ロール型のロール・トゥ・ロール真空成膜装置を用いたプラズマCVD法により形成されることがより好ましい。かような構成とすることで、ガスバリア層の膜厚方向に向かって炭素原子の存在比を連続的(擬周期的)に変化させることができ、ガスバリア性フィルムの屈曲耐性を向上させてたわみの発生を防止できるという利点がある。なお、前記プラズマCVD法はペニング放電プラズマ方式のプラズマCVD法であってもよい。
プラズマCVD法においてプラズマを発生させる際には、複数の成膜ローラーの間の空間にプラズマ放電を発生させることが好ましく、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラーのそれぞれに前記基材を配置して、一対の成膜ローラー間に放電してプラズマを発生させることがより好ましい。このようにして、一対の成膜ローラーを用い、その一対の成膜ローラー上に基材を配置して、かかる一対の成膜ローラー間に放電することにより、成膜時に一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分を成膜しつつ、もう一方の成膜ローラー上に存在する基材の表面部分も同時に成膜することが可能となって効率よく薄膜を製造できるばかりか、通常のローラーを使用しないプラズマCVD法と比較して成膜レートを倍にでき、なおかつ、略同じ構造の膜を成膜できるので前記炭素分布曲線における極値を少なくとも倍増させることが可能となり、効率よく上記条件(i)〜(ii)を全て満たす層を形成することが可能となる。
また、このようにして一対の成膜ローラー間に放電する際には、前記一対の成膜ローラーの極性を交互に反転させることが好ましい。さらに、このようなプラズマCVD法に用いる成膜ガスとしては、有機ケイ素化合物と酸素とを含むものが好ましく、その成膜ガス中の酸素の含有量は、前記成膜ガス中の前記有機ケイ素化合物の全量を完全酸化するのに必要な理論酸素量未満であることが好ましい。また、本発明のガスバリア性フィルムにおいては、前記ガスバリア層が連続的な成膜プロセスにより形成された層であることが好ましい。
また、ロール・トゥ・ロール方式で主基材の表面上に前記第一無機層を形成させることは生産性の観点からも好ましい。また、このようなプラズマCVD法により第一無機層を製造する際に用いることが可能な装置としては、特に制限されないが、少なくとも一対の成膜ローラーと、プラズマ電源とを備え、かつ前記一対の成膜ローラー間において放電することが可能な構成となっている装置であることが好ましく、例えば、図2に示す製造装置を用いた場合には、プラズマCVD法を利用しながらロール・トゥ・ロール方式で製造することも可能となる。
以下、図2を参照しながら、第一無機層の形成方法について、より詳細に説明する。なお、図2は、第一無機層を製造するために好適に利用することが可能な製造装置の一例を示す模式図である。また、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図2に示す製造装置31は、送り出しローラー32と、搬送ローラー33、34、35、36と、成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、成膜ローラー39および40の内部に設置された磁場発生装置43、44と、巻取りローラー45とを備えている。また、このような製造装置においては、少なくとも成膜ローラー39、40と、ガス供給管41と、プラズマ発生用電源42と、磁場発生装置43、44とが図示を省略した真空チャンバ内に配置されている。さらに、このような製造装置31において前記真空チャンバは図示を省略した真空ポンプに接続されており、かかる真空ポンプにより真空チャンバ内の圧力を適宜調整することが可能となっている。装置に関する詳細は従来公知の文献、例えば、特開2011−73430号公報を参照することができる。
上記したように、本実施形態のより好ましい態様としては、第一無機層を、図2に示す対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロール・トゥ・ロール方式)を用いたプラズマCVD法によって成膜する。これは、対向ロール電極を有するプラズマCVD装置(ロールツーロール方式)を用いて量産する場合に、可撓性(屈曲性)に優れ、機械的強度、特にロールツーロールでの搬送時の耐久性と、バリア性能とが両立する第一無機層を効率よく製造することができるためである。このような製造装置は、太陽電池や電子部品などに使用される温度変化に対する耐久性が求められるガスバリア性フィルムを、安価でかつ容易に量産することができる点でも優れている。
本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法は、上記第一無機層上にさらに第二無機層を形成する工程を有していてもよい。第二無機層を形成する方法は特に制限されず、例えば、ケイ素化合物を含む層を加熱して改質する方法、ポリシラザン(好ましくはパーヒドロポリシラザン(PHPS))などのケイ素化合物を含む層に対して活性エネルギー線を照射して改質する方法等が挙げられる。
ガスバリア層の厚みは、目的に応じて適切に設定されうる。例えば、ガスバリア層の厚みは、1nm〜100μm程度であることが好ましく、10nm〜10μm程度であることがより好ましく、50nm〜1μmであることがさらにより好ましく、20nm〜2μmであることが特に好ましい。ガスバリア層の膜厚が1nm以上であれば十分なバリア性を得ることができ、100μm以下であれば、高い光線透過性を実現できる。
また、ガスバリア層は、適度な表面の平滑性を有することが好ましい。具体的には、ガスバリア層の表面の平滑性としては、ガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)が、50nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。このようなガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)の下限は、特に制限されないが、実用上、0.01nm以上であり、0.1nm以上であることが好ましい。このようなRaを有するガスバリア層であれば、当該ガスバリア層中の凹凸に良好に対応して当該ガスバリア層上にさらに別のガスバリア層を形成することもできる。このため、ガスバリア層に生じるクラックやダングリングボンド等の欠陥を別のガスバリア層がより効率よく被覆して、密な表面を形成することができる。ゆえに、高温高湿条件下でのガスバリア性(例えば、低酸素透過性、低水蒸気透過性)の低下をより有効に抑制・防止できる。なお、本明細書において、ガスバリア層の中心線平均粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM)を使用し、試料の表面を測定したAFMトポグラフィー像につき傾斜自動補正処理を行い、次いで3次元粗さ解析を行うことにより求めることができる。
[その他の層]
本発明に係る製造方法により製造されるガスバリア性フィルムは、ガスバリア層/主基材/保護フィルム(粘着層+保護フィルム基材)の順に積層されてなる構成を有している。ただし、本発明に係る製造方法は、適宜その他の層(中間層)を形成する工程を有していてもよい。中間層としては、アンカーコート層、平滑層、ブリードアウト防止層およびクリアハードコート層等が挙げられる。これらのうち、主基材上にクリアハードコート層を形成することが好ましい。特に、主基材の両面にクリアハードコート層を有することが好ましい。
(クリアハードコート層(CHC層))
クリアハードコート層は、主基材とガスバリア層との密着性向上、高温高湿下での主基材とガスバリア層との膨張・収縮の差から生じる内部応力の緩和、ガスバリア層を設ける下層の平坦化、主基材からのモノマー、オリゴマー等の低分子量成分のブリードアウト防止等の機能を有する。このような機能を有するクリアハードコート層は、感光性樹脂組成物(通常、感光性樹脂、光重合開始剤、および溶媒を含む)を主基材上に塗布した後、硬化させることによって形成されうる。
クリアハードコート層の厚さとしては、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜7μmである。クリアハードコート層の厚さが1μm以上であると、ガスバリア性フィルムの耐熱性が向上しうることから好ましい。一方、クリアハードコート層の厚さが10μm以下であると、ガスバリア性フィルムの光学特性が好適に調整され、また、ガスバリア性フィルムのカールを抑制しうることから好ましい。
(平滑層(下地層、プライマー層))
平滑層は、突起等が存在する主基材の粗面を平坦化するために、または、主基材に存在する突起に起因してガスバリア層に生じた凹凸やピンホールを埋めて平坦化するために設けられる。このような平滑層は、いずれの材料で形成されてもよいが、炭素含有ポリマーを含むことが好ましく、炭素含有ポリマーから構成されることがより好ましい。すなわち、本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法においては、主基材とガスバリア層との間に、炭素含有ポリマーを含む平滑層をさらに設けてもよい。
平滑層の平滑性は、JIS B 0601:2001年で規定される表面粗さで表現される値で、最大断面高さRt(p)が、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。
(アンカーコート層)
本発明に係る主基材の表面には、接着性(密着性)の向上を目的として、アンカーコート層を易接着層として形成してもよい。このアンカーコート層に用いられるアンカーコート剤としては、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ビニル変性樹脂、エポキシ樹脂、変性スチレン樹脂、変性シリコン樹脂、およびアルキルチタネート等を、1種または2種以上併せて使用することができる。上記アンカーコート剤は、市販品を使用してもよい。具体的には、シロキサン系UV硬化型ポリマー溶液(信越化学工業株式会社製、「X−12−2400」の3%イソプロピルアルコール溶液)を用いることができる。なお、アンカーコート層の厚さは、特に制限されないが、0.5〜10μm程度が好ましい。
(ブリードアウト防止層)
表面に平滑層が形成された主基材は、加熱処理の際にその内部から表面に未反応のオリゴマー等が移行して、表面が汚染されうる。ブリードアウト防止層は、当該主基材表面の汚染を抑制する機能を有する。当該ブリードアウト防止層は、通常、平滑層が配置された主基材の当該平滑層とは反対側の面に設けられる。
ブリードアウト防止層は、上記機能を有していれば、平滑層と同じ構成であってもよい。すなわち、ブリードアウト防止層は、感光性樹脂組成物を主基材上に塗布した後、硬化させることによって形成されうる。
主基材上に、上述のクリアハードコート層、平滑層、アンカーコート層、およびブリードアウト防止層からなる群から選択される少なくとも1つの中間層が形成される場合、主基材および中間層の総膜厚は、5〜500μmであることが好ましく、25〜250μmであることがより好ましい。
上述したように、本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法によれば、基材の変形や保護フィルムの基材からの剥離を抑制しつつ、高いガスバリア性(低い水蒸気透過率)を有するガスバリア性フィルムを製造することが可能となる。ガスバリア性フィルムの水蒸気透過率は低いほど好ましいが、本発明に係る製造方法により得られるガスバリア性フィルムについて、保護フィルムを剥離した状態で測定される水蒸気透過率の値は、1×10−2g/m/day以下であることが好ましく、より好ましくは3×10−3g/m/day以下であり、さらに好ましくは5×10−4g/m/day以下である。
[電子デバイス]
上記したような本発明の製造方法によって製造されるガスバリア性フィルムは、優れたガスバリア性、透明性、屈曲性を有する。このため、本発明に係るガスバリア性フィルムは、電子デバイス等のパッケージ、光電変換素子(太陽電池素子)や有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶表示素子等の等の電子デバイスに用いられるガスバリア性フィルムおよびこれを用いた電子デバイスなど、様々な用途に使用することができる。
(電子素子本体)
電子素子本体は電子デバイスの本体であり、ガスバリア性フィルムのガスバリア層側に配置される。電子素子本体としては、ガスバリア性フィルムによる封止が適用されうる公知の電子デバイスの本体が使用できる。例えば、有機EL素子、太陽電池(PV)、液晶表示素子(LCD)、電子ペーパー、薄膜トランジスタ、タッチパネル等が挙げられる。本発明の効果がより効率的に得られるという観点から、該電子素子本体は、有機EL素子または太陽電池であることが好ましい。これらの電子素子本体の構成についても、特に制限はなく、従来公知の構成を有しうる。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、また、デバイスの膜封止に用いることができる。すなわち、デバイス自体を支持体として、その表面に本発明のガスバリア性フィルムを設ける方法である。ガスバリア性フィルムを設ける前にデバイスを保護層で覆ってもよい。
本発明に係るガスバリア性フィルムは、デバイスの基板や固体封止法による封止のためのフィルムとしても用いることができる。固体封止法とはデバイスの上に保護層を形成した後、接着剤層、ガスバリア性フィルムを重ねて硬化する方法である。接着剤は特に制限はないが、熱硬化性エポキシ樹脂、光硬化性アクリレート樹脂等が例示される。
(有機EL素子)
ガスバリア性フィルムを用いた有機EL素子の例は、特開2007−30387号公報に詳しく記載されている。
(液晶表示素子)
反射型液晶表示装置は、下から順に、下基板、反射電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、透明電極、上基板、λ/4板、そして偏光膜からなる構成を有する。本発明におけるガスバリア性フィルムは、前記透明電極基板および上基板として使用することができる。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を反射電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。透過型液晶表示装置は、下から順に、バックライト、偏光板、λ/4板、下透明電極、下配向膜、液晶層、上配向膜、上透明電極、上基板、λ/4板および偏光膜からなる構成を有する。カラー表示の場合には、さらにカラーフィルター層を下透明電極と下配向膜との間、または上配向膜と透明電極との間に設けることが好ましい。液晶セルの種類は特に限定されないが、より好ましくはTN型(Twisted Nematic)、STN型(Super Twisted Nematic)またはHAN型(Hybrid Aligned Nematic)、VA型(Vertically Alignment)、ECB型(Electrically Controlled Birefringence)、OCB型(Optically Compensated Bend)、IPS型(In−Plane Switching)、CPA型(Continuous Pinwheel Alignment)であることが好ましい。
(太陽電池)
本発明のガスバリア性フィルムは、太陽電池素子の封止フィルムとしても用いることができる。ここで、本発明のガスバリア性フィルムは、バリア層が太陽電池素子に近い側となるように封止することが好ましい。本発明のガスバリア性フィルムが好ましく用いられる太陽電池素子としては、特に制限はないが、例えば、単結晶シリコン系太陽電池素子、多結晶シリコン系太陽電池素子、シングル接合型、またはタンデム構造型等で構成されるアモルファスシリコン系太陽電池素子、ガリウムヒ素(GaAs)やインジウム燐(InP)等のIII−V族化合物半導体太陽電池素子、カドミウムテルル(CdTe)等のII−VI族化合物半導体太陽電池素子、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子、色素増感型太陽電池素子、有機太陽電池素子等が挙げられる。中でも、本発明においては、上記太陽電池素子が、銅/インジウム/セレン系(いわゆる、CIS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン系(いわゆる、CIGS系)、銅/インジウム/ガリウム/セレン/硫黄系(いわゆる、CIGSS系)等のI−III−VI族化合物半導体太陽電池素子であることが好ましい。
(その他)
その他の適用例としては、特表平10−512104号公報に記載の薄膜トランジスタ、特開平5−127822号公報、特開2002−48913号公報等に記載のタッチパネル、特開2000−98326号公報に記載の電子ペーパー等が挙げられる。
<光学部材>
本発明のガスバリア性フィルムは、光学部材としても用いることができる。光学部材の例としては円偏光板等が挙げられる。
(円偏光板)
本発明におけるガスバリア性フィルムを基板としλ/4板と偏光板とを積層し、円偏光板を作製することができる。この場合、λ/4板の遅相軸と偏光板の吸収軸とのなす角が45°になるように積層する。このような偏光板は、長手方向(MD)に対し45°の方向に延伸されているものを用いることが好ましく、例えば、特開2002−86554号公報に記載のものを好適に用いることができる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。また、下記操作において、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で行う。
[実施例1]
《ガスバリア性フィルム1の作製》
(主基材)
両面に易接着加工された厚み23μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人株式会社製)を長尺で1000m用意し、主基材として用いた。
(ブリードアウト防止層の形成)
上記で用意した主基材の片面に、JSR株式会社製 UV硬化型有機/無機ハイブリッドハードコート材(OPSTAR Z7535)を、乾燥後の膜厚が4μmになるようにダイコーターで塗布した後、乾燥条件;80℃、3分で乾燥後、空気下で高圧水銀ランプ使用して硬化条件;1.0J/cmで硬化を行い、ブリードアウト防止層を形成した。
(保護フィルムの貼合)
厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの片面にシリコン系剥離剤を塗布し、その上層に、アクリル系粘着剤(ブチルアクリレートを主モノマーとする重合体100質量部、架橋剤として75質量%濃度のヘキサメチレンジイソシアネート・トリメチロールプロパンアダクト溶液(商品名コロネートHL、固形分濃度75質量%、日本ポリウレタン株式会社製))1質量部を、乾燥後の厚さが15μmとなるように塗布し、乾燥装置により100℃で3分間乾燥させて粘着層を形成した。その直後、当該粘着層を、上記主基材のブリードアウト防止層が形成されていない面に貼り合わせて、成膜用基材を作製した。その後、50℃、50%RHの条件下で10分間のシーズニング処理を施すことにより、主基材と保護フィルムとの間の剥離力(A)を下記の表1に示す値に調整した。なお、本実施例において「成膜用基材」とは、主基材に有機層や保護フィルム等が積層されてなる積層体を意味するものとする。また、上記剥離力(A)および後述する剥離力(B)は、以下の測定方法により測定される値である。
剥離力の測定方法
100mm×100mmの試料を25℃50%RHの条件下に2時間放置後、JIS Z0237:2009(粘着テープ・粘着シート試験方法)に規定される180度剥離試験法により、300mm/minの条件で、剥離力を測定した。
(ガスバリア層(1)の形成)
上記で作製した成膜用基材のブリードアウト防止層上に、図1に示す真空プラズマCVD装置を用い、下記成膜条件にて膜厚300nmのガスバリア層(1)を形成し、ロールに巻き取った:
成膜条件
・成膜ガスの混合比(HMDSO/酸素):1/10
・真空チャンバ内の真空度:2.0Pa
・プラズマ発生用電源からの印加電力:1.5kW
・プラズマ発生用電源の周波数:80kHz
・基板温度(ロール表面温度):B値が下記の表1に示す値になるように調整した
・フィルムの搬送速度:5m/min
※「HMDSO」はヘキサメチルジシロキサンの略である。
(ガスバリア層(2)の形成)
上記でガスバリア層(1)を形成した後に巻き取ったロールからガスバリア層(1)付き成膜用基材を再度巻き出しながら、上記で形成したガスバリア層(1)上に、上記と同様の装置を用い、上記と同様の成膜条件にて膜厚300nmのガスバリア層(2)を形成した。このようにして、成膜用基材のブリードアウト防止層上に、ガスバリア層(1)およびガスバリア層(2)がこの順に積層されてなるガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム1を作製した。
《ガスバリア性フィルム2の作製》
「保護フィルムの貼合」におけるシーズニング処理の条件を変化させる(具体的には、80℃50%RHの条件下で処理時間を変化させる)ことで主基材と保護フィルムとの間の剥離力(A)を下記の表1に示す値に調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム2を作製した。
《ガスバリア性フィルム3の作製》
「保護フィルムの貼合」におけるシーズニング処理の条件を変化させる(具体的には、80℃50%RHの条件下で処理時間を変化させる)ことで主基材と保護フィルムとの間の剥離力(A)を下記の表1に示す値に調整し、かつ、ガスバリア層(1)および(2)の形成時における成膜条件を変化させることで主基材と保護フィルムとの間の剥離力(B)を下記の表1に示す値に調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム1の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム3を作製した。
《ガスバリア性フィルム4の作製》
ガスバリア層(1)および(2)の形成時における成膜条件を変化させる(具体的には、印加電力および搬送速度を変化させる)ことで主基材と保護フィルムとの間の剥離力(B)を下記の表1に示す値に調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム3の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム4を作製した。
《ガスバリア性フィルム5〜11の作製》
ガスバリア層(1)および(2)の形成時における成膜条件を変化させる(具体的には、印加電力および搬送速度を変化させる)ことで主基材と保護フィルムとの間の剥離力(B)を下記の表1に示す値に調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム3の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム5〜11を作製した。
《ガスバリア性フィルム12〜18の作製》
「保護フィルムの貼合」におけるシーズニング処理の条件を変化させる(具体的には、80℃50%RHの条件下で処理時間を変化させる)ことで主基材と保護フィルムとの間の剥離力(A)を下記の表1に示す値に調整し、かつ、ガスバリア層(1)および(2)の形成時における成膜条件を変化させることで主基材と保護フィルムとの間の剥離力(B)を下記の表1に示す値に調整したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム4の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム12〜18を作製した。
[実施例2]
《ガスバリア性フィルム19〜22の作製》
保護フィルムとして、下記の表2に示す厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は、それぞれ上述したガスバリア性フィルム1〜4の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム19〜22を作製した。
《ガスバリア性フィルム23〜33の作製》
保護フィルムとして、下記の表2に示す厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、場合によってはさらに下記の表2に示す材質の主基材を用いたこと以外は、上述したガスバリア性フィルム10の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム23〜33を作製した。
[実施例3]
《ガスバリア性フィルム34〜39の作製》
主基材として、下記の表3に示す厚みを有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いたこと以外は、上述したガスバリア性フィルム10の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム23〜39を作製した。
[実施例4]
《ガスバリア性フィルム40の作製》
図3に示す対向ロール型のロール・トゥ・ロール真空成膜装置を用いたプラズマCVD法によりガスバリア層を形成したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム10の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム40を作製した。
具体的には、上記で作製した成膜用基材図3に示すプラズマCVD成膜装置31にセットし、搬送させた。次いで、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に磁場を印加すると共に、成膜ローラー39と成膜ローラー40にそれぞれ電力を供給して、成膜ローラー39と成膜ローラー40との間に放電してプラズマを発生させた。その後、形成された放電領域に、成膜ガス(原料ガスとしてのヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)と反応ガスとしての酸素ガス(放電ガスとしても機能する)との混合ガス)を供給し、成膜用基材のブリードアウト防止層上に、下記成膜条件にて膜厚450nmのガスバリア層を形成して、ガスバリア性フィルム40を作製した。
成膜条件
・原料ガス(HMDSO)の供給量:50sccm(Standard Cubic Centimeter per Minute)、
・反応ガス(O)の供給量:500sccm、
・真空チャンバ内の真空度:3Pa、
・プラズマ発生用電源からの印加電力:0.8kW、
・プラズマ発生用電源の周波数:70kHz、
・フィルムの搬送速度:0.8m/min。
《ガスバリア性フィルム41の作製》
ガスバリア層(2)を形成せず、ガスバリア層(1)のみからなるガスバリア層を形成したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム10の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム41を作製した。
《ガスバリア性フィルム42の作製》
下記成膜条件にて、スパッタリング法により単層からなるガスバリア層を形成したこと以外は、上述したガスバリア性フィルム10の作製と同様にして、ガスバリア性フィルム42を作製した。
成膜条件
成膜用基材をスパッタ装置の真空槽内にセットして10−4Pa台まで真空引きし、反応ガスとして酸素を分圧0.015Paで導入し、さらに系全体の圧力が0.13Paになるように放電ガスとしてアルゴンを導入した。雰囲気圧力が安定したところで放電を開始し、Siターゲット上にプラズマを発生させて、スパッタリングプロセスを開始した。プロセスが安定したところでシャッターを開き基板への酸化珪素(SiO)層の形成を開始した。250nmの膜が堆積したところでシャッターを閉じて、ガスバリア層の成膜を終了した。
《ガスバリア性フィルムの評価》
上記のようにして作製したガスバリア性フィルム1〜42について、以下の評価を行った。
[基材変形の有無の観察]
ガスバリア性フィルムの幅1m×長さ10mの領域を視認にて観察し、基材変形の有無を以下の基準に従って評価した。なお、以下の基準に基づく補間評価の結果を下記の表1〜4に示す:
5:変形なし
4:若干の変形と認められる部分が分かる程度
3:変形は認められるが問題ないレベル
2:平面性が良い部分は面積領域で50%未満
1:面積領域で80%以上に変形が見られる。
[保護フィルムの剥離の有無の観察]
ガスバリア性フィルムの幅1m×長さ10mの領域を視認にて観察し、保護フィルムの剥離の有無を以下の基準に従って評価した。なお、以下の基準に基づく補間評価の結果を下記の表1〜4に示す:
5:剥離なし
4:20%以下の領域に点状の剥離が認められる
3:20%超30%以下の領域に点状の剥離が認められる
2:30%超45%以下の領域に点状の剥離が認められる
1:45%超の領域に点状の剥離が認められる。
《水蒸気バリア性(水蒸気透過率WVTR)の評価》
ガスバリア性フィルムから保護フィルムを剥離した後、以下の手法により水蒸気バリア性の評価を実施した。
水蒸気バリア性の評価は、MOCON社製AQUATRAN MODEL1を用い、40℃90%RHの条件下で数値が安定するのを待って水蒸気透過率WVTR(g/m/day)を測定した。結果を下記の表1〜4に示す。
表1〜4に示す結果から、本発明に係るガスバリア性フィルムの製造方法によれば、主基材に対してガスバリア層の形成面とは反対側の表面に保護フィルム(保護フィルム基材と粘着層との積層体)を配置した状態でガスバリア層を真空成膜法により形成するガスバリア層形成工程を行うにあたって、ガスバリア層形成工程前の主基材と保護フィルムとの間の剥離力(A)の値、およびガスバリア層形成工程後の主基材と保護フィルムとの間の剥離力(B)の値を特定の範囲に制御し、かつ、ガスバリア層形成工程の前後で上記剥離力が大きくなる(つまり、A<Bを満たす)ようにすることで、基材の変形や保護フィルムの主基材からの剥離を抑制しつつ、高いガスバリア性を有するガスバリア性フィルムを製造することが可能となることがわかる。
また、表1や表3に示す結果から、B≧1.1Aである形態や、主基材の厚みが10〜60μmである形態によると、上記の作用効果の観点から特に優れたガスバリア性フィルムが得られることがわかる。
1 ガスバリア性フィルム、
2、110 主基材、
3 ガスバリア層、
21 装置チャンバ、
22 Xeエキシマランプ、
23 ホルダー、
24 試料ステージ、
25 試料、
26 遮光板、
31 製造装置、
32 送り出しローラー、
33、34、35、36 搬送ローラー、
39、40 成膜ローラー、
41 ガス供給管、
42 プラズマ発生用電源、
43、44 磁場発生装置、
45 巻取りローラー、
101 プラズマCVD装置、
102 真空槽、
103 カソード電極、
105 サセプタ、
106 熱媒体循環系、
107 真空排気系、
108 ガス導入系、
109 高周波電源、
160 加熱冷却装置。

Claims (4)

  1. 主基材の一方の面に真空成膜法によりガスバリア層を形成するガスバリア層形成工程を含むガスバリア性フィルムの製造方法であって、
    保護フィルム基材と粘着層とを有する保護フィルムが前記粘着層を介して前記主基材のガスバリア層を形成する面とは反対側の面に配置された状態で、前記ガスバリア層形成工程を行い、
    前記ガスバリア層形成工程前の前記主基材と前記保護フィルムとの間の剥離力をA[N/25mm]とし、前記ガスバリア層形成工程後の前記主基材と前記保護フィルムとの間の剥離力をB[N/25mm]としたときに、A<B、0.03<A<0.25、および0.05<B<0.30を満足することを特徴とする、ガスバリア性フィルムの製造方法。
  2. B≧1.1Aをさらに満足する、請求項1に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  3. 前記主基材の厚みが10〜60μmである、請求項1または2に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
  4. 前記真空成膜法が、対向ロール型のロール・トゥ・ロール真空成膜装置を用いたプラズマCVD法である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリア性フィルムの製造方法。
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