JP2015212637A - コンクリート強度の推定方法及びコンクリート強度の推定システム - Google Patents
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Abstract
Description
1つ目の測定方法は、既設のコンクリート構造物からコア試験体を採取して、このコア試験体を圧縮強度試験機によって圧縮強度試験を行うことにより、コンクリート構造物の圧縮強度を測定する方法である。
2つ目の測定方法は、テストハンマーでコンクリート構造物の表面を打撃して、その反発硬度から反射時間を測定することによって、コンクリート構造物の圧縮強度を測定する方法、または、弾性波の伝播速度と反射時間を測定することによって、コンクリート構造物の圧縮強度を測定する方法である。
3つ目の測定方法は、試験体に超音波を発信して、その伝播速度の変化から圧縮強度を計測することによって、コンクリート構造物の圧縮強度を測定する方法である。
また、2つ目の測定方法の打撃法の場合は、簡易で使い易いという利点があるものの、コンクリートの表面に比較的近い表層付近の強度しか計測することができないという問題点があった。
また、3つ目の測定方法の超音波計測の場合は、粗骨材の粒径や位置によっては散乱減衰が起こり、伝播速度の計測精度が低下するという問題点があった。
このようなことから、さらに、作業現場で簡易にコンクリート強度を測定することが求められていた。
また、その推定方法では、設定する圧縮空気の圧力によって穿孔が決定されるので、圧縮空気の空気圧の変動により、実用上、適切な穿孔速度に設定することができない可能性があった。
また、従来のコンクリート強度の推定方法は、リアルタイムでコンクリート強度を推定することができないため、リアルタイムでコンクリート強度を推定できる推定方法が望まれていた。
また、硬くて強いコンクリート構造物に孔を開ける場合は、定トルク電動機のトルクが負けて低化し、穿孔速度及び回転数が遅くなる。このため、コンクリート構造物のコンクリート強度は、変化した穿孔速度及び回転数の値から推定することができる。なお、高強度のコンクリートの定義は、例えば、土木学会のコンクリート標準示方書では設計基準強度が50〜100[N/mm2]であり、また、日本建築学会の建築工事仕様書・同解説JASS5では設計基準強度が36[N/mm2](計画供給期間が超長期の場合)超えるものとなっている。このようにコンクリートにおける高強度は、コンクリートが使用される場所によって基準値が相違しているので、設定される高強度域もそれに合わせて相違した値となる。
なお、本発明のコンクリート強度の推定方法で推定するコンクリート強度域には、例えば、圧縮強度18[N/mm2]からの普通コンクリート域と、[100N/mm2]以上の設計強度を求める高強度コンクリート域と、がある。また、コンクリートの圧縮強度は、使用目的、施工環境によっても基準値が相違しているので、設定されるコンクリート強度域もそれに合わせて相違した値となる。
例えば、層状に(バームクーヘンのように)ひび割れた状態のコンクリート構造物におけるコンクリート強度の推定方法は、限りなく0[N/mm2]に近いコンクリート強度が推定される。また、超高強度コンクリートとしては、200[N/mm2]のコンクリートが実フィールドで使用されることが計画されている。このため、本発明のコンクリート強度の推定方法で推定するコンクリート強度域は、0〜200[N/mm2]である。
F=k2・σa
で表し、
前記コンクリート構造物の前記コンクリート強度σを、前記計測した穿孔速度vと下記式(1)を用いて推定することが好ましい。
F=負荷力
σ:コンクリート強度[N/mm2]
a:定数
K0:比例定数
k0:電動機の効率、歯車の摩擦係数を含む定数
k2:比例定数
P0(=2πNT):定トルク電動機の出力
N:定トルク電動機の回転数[rpm]
T:定トルク電動機のトルク[Nm]
v:穿孔部の穿孔速度[mm/s]
また、説明の便宜上、図1に示す穿孔装置1において、支柱22が延設されている方向を上下方向とし、その支柱22に直交する方向の左側を左、右側を右として説明する。
図1に示すように、コンクリート構造物Wは、砂、砂利、水等をセメント等の糊状のもので結合させたコンクリートによって既設された構造物であり、例えば、道路、橋梁、ビル(建築物)、ダム、トンネル、堤防等や、コンクリートで製造された二次製品等の種々の種々のものから成る。被測定物であるコンクリート構造物Wの厚さ、及び穿孔装置1によって開ける孔Waの穿孔深さd(図2参照)は、任意であって、特に限定されない。なお、孔Waは、貫通孔や、予め定めた深さの有底の穴でもよい。なお、二次製品には、荷重によって生ずる引張応力の一部あるいは全部を打ち消すように、予め圧縮応力を加えてあるプレストレストコンクリートと、PC鋼材を予め所定の力・位置に緊張しておき、これにコンクリートを打込み、硬化した後に緊張力を解放してプレストレスを与えるプレテンションコンクリートと、がある。
推定システムSYは、コンクリート構造物Wに孔Waを開ける穿孔装置1を用いてコンクリート構造物Wのコンクリート強度を推定するシステムである。推定システムSYは、前記穿孔装置1と、穿孔装置1の基台21をコンクリート構造物W上に固定するための基台固定装置5と、穿孔装置1に流体を供給する流体供給装置6と、穿孔装置1の駆動状況及び推定されるコンクリート強度等を表示する表示手段8と、を備えている。
穿孔装置1は、本発明のコンクリート強度の推定方法で、既存のコンクリート構造物Wのコンクリート強度を推定するのに使用される装置であり、コンクリート構造物Wに対して孔Waを開けるための穴開け装置である。穿孔装置1は、穿孔装置1の骨組を形成する基台21及び支柱22を有するフレーム2と、穿孔部41及び移動台31を上下動させる定トルク電動機32を備えた推進手段3と、穿孔部41を回転駆動させる電動駆動手段43(駆動手段)を有する穿孔機4と、穿孔部41がコンクリート構造物Wに開けた孔Waの穿孔深さd(図2参照)を間接的に検出するセンサ35と、推進手段3及び穿孔機4を制御する制御手段7と、を主に備えている。
フレーム2は、コンクリート構造物Wの被穿孔面Wb上に載置される基台21と、基台21上に垂直に配置された支柱22と、支柱22の側面に設けられたラック23と、から主に構成されている。
基台21は、下面に形成された逆凹溝形状の複数の凹部21aと、基台固定装置5に設けられた配管52が接続される配管接続口21bと、穿孔部41が挿入される穿孔部挿入口21cと、穿孔部挿入口21cに連通する穿孔部挿通孔21dと、穿孔部挿通孔21dが形成された支持部21eと、穿孔部挿通孔21dに連通する排水管接続口21fと、基台21の下端面全体に設けられたパッキン(図示省略)と、を備えている。基台21は、被穿孔面Wb上に密着した状態に固定されて、穿孔機4及び推進手段3が支持された支柱22を保持している。また、基台21には、コンクリート構造物Wに孔Waを開ける際に、穿孔部41が、この基台21の穿孔部挿入口21cから穿孔部挿通孔21dを挿通してコンクリート構造物Wに向けて送り出される。なお、基台21の高さH1(図2参照)は、特に限定されない。
配管接続口21bは、基台21の上面の端部から凹部21a内に連通した状態に形成されている。配管接続口21bは、複数の凹部21aのうちの一つに形成され、この配管接続口21bに真空ポンプ51に連通した配管52が接続されている。
前記基台固定装置5は、一端が凹部21a内に連通した状態に接続された配管52と、この配管52の他端に接続されて凹部21a内を真空吸引する真空ポンプ51と、真空ポンプ51の駆動、及び、配管52に設けられた不図示の制御バルブを制御する基台固定制御部(図示省略)と、を備えて構成されている。基台固定装置5は、凹部21a内の空気を吸引して負圧状態にすることにより、基台21がコンクリート構造物Wの上部に真空吸着され、穿孔装置1の全体をコンクリート構造物Wの被穿孔面Wb上に固定することができる。
支柱22は、推進手段3を上下動自在に支持するポールベースであり、基台21の上部に垂直に設けられている。支柱22には、穿孔機4側の側面の上部から下部までラック23が設けられ、その反対側の側面にスライドブロック本体31aが回転自在に軸支されたローラ36の外周面が当接している。支柱22には、推進手段3及び穿孔機4を支持した移動台31が上下動可能に支持されている。なお、支柱22及び基台21には、支柱22と基台21に対して傾斜させることができる角度調節機構(図示省略)が設けられている。このため、穿孔機4及び推進手段3は、コンクリート構造物Wに対して様々な角度に孔Waを開けることができると共に、様々な角度の被穿孔面Wbにも対応できるようになっている。
ラック23は、推進手段3のピニオン33が噛合して配置され、定トルク電動機32が回転駆動すると、推進手段3全体がラック23に沿って上下動するように配置されている。
推進手段3は、穿孔部41を上下方向に進退させる定トルク電動機32を備え、穿孔機4を支持した移動台31を支柱22に沿って上下動させる送り装置である。推進手段3は、板状の部材によって形成された移動台31と、移動台31に設けられた定トルク電動機32と、定トルク電動機32の駆動歯車(図示省略)に連動回転するピニオン33と、定トルク電動機32を駆動させる電動機ドライバ34と、移動台31に取り付けられた前記センサ35と、移動台31に軸支された複数のローラ36と、を備えている。推進手段3は、支柱22に上下動自在に支持されて、定トルク電動機32の回転によって推進手段3及び穿孔機4全体を上昇、下降させる。
移動台31は、推進手段3及び穿孔機4を、支柱22に上下動可能に支持させるためのスライドブロックである。移動部材は、支柱22に支持されたスライドブロック本体31aと、スライドブロック本体31aに取り付けられた支持台31bと、支持台31bに取り付けられた取付治具31cと、支持台31bに内設されたジョイント31dと、から主に構成されている。移動台31は、定トルク電動機32の作動によって上下方向に進退されることにより、移動台31に追従して電動駆動手段43及び穿孔部41が上下方向に進退する。なお、移動台31は、穿孔機4の電動駆動手段43(穿孔部41)を、支持装置(図示省略)によって下向き、上向き等に向きを変えて支持することができるようになっている。
定トルク電動機32は、移動台31と、移動台31に設けられた電動駆動手段43及びセンサ35と、電動駆動手段43に連結された穿孔部41と、を上下方向に移動させるためのモータである。定トルク電動機32には、回転数を計測するためのエンコーダ(図示省略)等が回転軸に設けられている。穿孔時に定トルク電動機32の定格トルク値(定格値)は、コンクリート強度の設定された絶対値に対して、前記定トルク電動機の定格トルクが前記絶対値を含む範囲の間に入るように設定されている。定トルク電動機32の定格トルクは、定格値が絶対値を含む相対的な範囲(例えば、定格値の10〜80%の範囲)に設定されている。
また、定トルク電動機32の回転数は、例えば、500(0〜4,000)[rpm]に設定されている。なお、定トルク電動機32の回転数は、ラック23とピニオン33とのギヤ比等によって相違するが、例えば、200[rpm]ではゆっくり過ぎ、また、4,000[rpm]では速過ぎるため、実用的な回転数の範囲の一例を挙げると、500〜1,000[rpm]が望ましい。
ピニオン33は、ラック23に噛合した状態に配置される駆動歯車である。ピニオン33は、例えば、定トルク電動機32のロータ(図示省略)に歯車減速機構を介在して減速して正転及び反転し、ラック23に沿って回転しながら下降、上昇するように配置されている。
電動機ドライバ34は、定トルク電動機32の駆動を制御する装置であり、定トルク電動機32のトルクTを制御するトルク制御部(図示省略)と、定トルク電動機32に流す電流量、電流の方向(回転方向)、タイミング等の回転駆動を制御する駆動制御回路部(図示省略)と、を備えている。
センサ35は、移動台31の上下方向の変位、すなわち、移動台31に電動駆動手段43等を介在して取り付けられている穿孔部41の上下方向の変位を検出するための変位検出手段であり、例えば、レーザー距離計から成る。センサ35は、取り付けられた支持台31bからその下方の基台21の上面に向けてレーザー光を送信し、基台21の上面で反射して戻って来るレーザー光の反射波を受信するまでのレーザー光の往復時間を検出して、その時間の差からセンサ35から基台21の上面までの距離C0を計測する距離計である。計測した距離C0は、センサ35及び穿孔部41と一体に動く移動台31の上下動によって変位する。このため、センサ35は、センサ35から基台21の上面までの距離の変位と同じ距離だけ下方に移動する穿孔部41によってコンクリート構造物Wに開けた孔Waの穿孔深さd(図2参照)、及び穿孔距離を間接的に検出している。
なお、センサ35から穿孔部41までの長さBは、
B>H1+d
に設定する。また、穿孔部41は、
H1+H2+d<H2+B
になるように設定する。
図1に示すローラ36は、支柱22の左側の側面に圧接するように配置されて、定トルク電動機32の回転でピニオン33が連動してスライドブロック本体31aが上昇、下降することによって回転する。
穿孔機4は、シャンク42の先端に取り付けた穿孔部41を高速回転させることによって、コンクリート構造物Wの被穿孔面Wbを研磨しながら深穴切削して孔Waを開ける穿孔ドリル装置から成る。穿孔機4は、推進手段3の支持台31bに穿孔部41を下向きにして取り付けられている。穿孔機4は、孔Waを開けるための穿孔部41と、穿孔部41を先端に取り付けたシャンク42と、シャンク42及び穿孔部41を回転駆動させる電動駆動手段43と、シャンク42を電動駆動手段43に取り付けためのチャック44と、を主に備えている。穿孔機4は、穿孔時に、定トルク電動機32によって回転したピニオン33が噛合したラック23を転動することにより、穿孔部41及びシャンク42と共に支柱22に沿って下降しながら穿孔部41でコンクリート構造物Wに孔Waを開ける。
穿孔部41は、コンクリート構造物Wに直径が38mm以下(更に好ましくは4mm〜25mm)の小口径の穿孔ドリルの機能を果たすダイヤモンドビットといわれる砥石ビートから成る。穿孔部41は、コンクリート構造物Wの被穿孔面Wbに対して研削面が平面に形成される円筒状の砥石本体と、砥石本体の上端部をシャンク42の下端部に取り付ける円筒状の取付部と、から主に構成されている。穿孔部41の砥石本体は、研磨砥粒を結合材で焼結したものであって、周知の各種の砥石ビットから成る。穿孔部41は、穿孔時に、水が供給される後記する水循環路の一部を形成する不図示のコア孔及び側孔を有している。そのコア孔及び側孔は、穿孔時に発生した磨ぎ水及び切削粉を穿孔部41のコア孔(図示省略)と流体供給装置6との内外間で循環させることによって、穿孔部41とコンクリート構造物Wとの間の摩擦熱の上昇を抑制させると共に、切削粉を孔Waから自動排出させている。
シャンク42は、水を穿孔部41に供給する中空状の供給路を有する円筒状(管状)の部材であり、砥石ホルダとも言われている。シャンク42は、上端部がジョイント31dを介してチャック44に固定され、下端部に穿孔部41の取付部が内嵌されている。ジョイント31d内に設けられたシャンク42の上端部側面には、給水管63内に連通する流入孔(図示省略)が形成されている。シャンク42及び穿孔部41は、基台21の穿孔部挿入口21c内、及び、支持部21eの穿孔部挿通孔21d内に、上下方向に移動可能に挿入できるように構成されている。
電動駆動手段43(駆動手段)は、穿孔部41及びシャンク42を回転させる電動モータから成る。電動駆動手段43は、取付治具31c上に取り付けられて、定トルク電動機32が回転することによって、移動台31と一体に上昇、下降する。
チャック44は、シャンク42の上端を着脱自在に固定する保持装置であり、電動駆動手段43の下側に設けられている。このため、シャンク42は、チャック44を締め付けを緩めることによって、別のものに交換することが可能になっている。
流体供給装置6は、穿孔時に、摩擦熱が発生する穿孔部41及びコンクリート構造物Wの孔Waに磨ぎ水等の液体を供給して冷却及び潤滑させると共に、切削したコンクリートの切削粉を排出するための冷却水供給装置である。流体供給装置6は、水が貯留された貯留タンク61と、貯留タンク61に設けられた給水ポンプ62と、貯留タンク61内の水が送られる給水管63と、穿孔部挿通孔21d及び排水管接続口21fに連通する排水管64と、給水ポンプ62の駆動、及び給水管63に設けられた不図示のバルブを制御する注水制御部(図示省略)と、を備えている。流体供給装置6は、貯留タンク61と、給水ポンプ62と、給水管63と、ジョイント31d内の中空部と、シャンク42内の中空部と、穿孔部41内のコア孔と、基台21の穿孔部挿入口21cと、支持部21eの穿孔部挿通孔21d及び排水管接続口21fと、排水管64と、によって水の循環流路を形成している。
貯留タンク61は、磨き水等の液を貯留させておくタンクであり、その内部に穿孔部41から戻った磨ぎ水の中の穿孔粉を取り除いて、穿孔性能を維持するためのフィルタ(図
示省略)が内設されている。磨ぎ水は、例えば、水道水であるが、特に制限はなく、ゲル状液、泡状液等であってもよい。
給水管63は、上流側が給水ポンプ62に接続され、下流側がジョイント31dに接続されている。給水管63には、貯留タンク61から供給される磨ぎ水の量を調整するバルブ(図示省略)が設けられている。
制御手段7は、コンクリート構造物Wに孔Waを開けている穿孔時間を計測する機能を備えた制御装置である。制御手段7は、種々のデータを記憶する記憶部71と、穿孔時間を計測する計測部72と、穿孔速度v及びコンクリート強度σを算出する演算部73と、コンクリート強度σを推定する推定部74と、表示手段8を制御する表示制御部75と、を備えている。なお、制御手段7は、その他に推進手段3等を制御する制御部をまとめて有するコントローラとして構成してもよい。
σ=8.1×v−2.8
とすることができ、この値をコンクリート強度σとしてもよい。なお、予め測定されている既知のコンクリート強度σは、予め推定部74に入力されてある。
表示制御部75は、モニタ等である表示手段8の駆動表示を制御する部位であり、推定部74で推定したコンクリート強度σ等を表示手段8に表示させる。
次に、本発明の実施形態に係るコンクリート強度の推定方法及びコンクリート強度の推定システムの作用を作業工程順に説明する。
本発明は、今までできなかった穿孔深さd(穿孔距離)と穿孔時間とから瞬時に穿孔速度vが確定できるため、既知データと比較することで、リアルタイムでコンクリート強度σの推定ができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造および変更が可能であり、本発明はこれら改造および変更された発明にも及ぶことは勿論である。
また、前記実施形態では、センサ35の一例として、移動台31の上下方向の変位を検出するレーザー距離計を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではない。センサ35は、穿孔部41の上下方向の変位を検出することが可能なものであれば、その種類、構造、取付手段、取付場所等は適宜変更しても構わない。センサ35は、例えば、光学式あるいは超音波式のものであってもよい。
実施例1では、穿孔装置1でコンクリート構造物Wに孔Waを開けるときの穿孔速度v及び回転数の値からコンクリート強度σを推定できることを穿孔実験を行って確認した。その実験を説明する前に、穿孔部41の穿孔速度vと、コンクリート強度σの関係を説明する。
図1に示す穿孔装置1には、コンクリート構造物Wの孔Waを穿孔部41で切削して形成する際に、穿孔部41の送りを自動化するために、移動台31内の歯車(図示省略)に減速機を介在させて定トルク電動機32を設けた。定トルク電動機32は、定格トルク内の負荷に対して、設定した回転数(定格内)で運転できる特性を有している。このため、定トルク電動機32は、設定した回転数が0の状態でも連続回転が可能である。また、コンクリート構造物Wの内部の粗骨材の影響で穿孔速度vが急激に低下しても、定トルク電動機32への負荷は小さく抑えることができる。
v=k0・2πN0T/F (2)
という関係がある。ただし、k0は、定トルク電動機32の効率や、ラック23及びピニオン33の摩擦係数を含む定数を表す。このk0、式(1)〜(4)、定トルク電動機32の回転数、その他の値は、予め定めた値等として、制御条件設定部70(図1参照)から入力されることになる。
となり、穿孔速度vは、一定となる。
v=k0・P0/F (T>T0) (4)
この場合、穿孔速度vは、負荷力Fに反比例した関係が得られる。
F=k2・σa(k2,aは比例定数)
で表され、この関係を式(4)に代入してコンクリート強度σで表すと、
が得られる。式(1)を用いてコンクリート構造物Wのコンクリート強度σを推定することが可能である。
すなわち、定トルク電動機32の設定トルクT0が一定となる範囲(負荷力Fが設定トルクT0以上)で使用して複数の孔Waをそれぞれの条件で開けることで、図4に示すように、穿孔速度vは、コンクリート強度σの値に対して右下がりに変化した曲線となることが分かる。
図5は、実験に使用した穿孔装置の仕様を示す表である。
実施例1では、図5に示す仕様の穿孔装置1を使用して穿孔実験を行った。使用した穿孔装置1は、ダイヤモンドビットから成る穿孔部41と、定格トルクが0.1Nmの定トルク電動機32と、レーザー変位計から成るセンサ35と、流量が2.5m3/minの水を循環させる流体供給装置6と、真空圧が750mmHgの真空ポンプ51と、を備えている。
図6は、実験で使用したコンクリート構造物W(コンクリート試験体)のコンクリートの基本配合を示す表である。実験で使用したコンクリート構造物W(コンクリート試験体)は、図6に示す基本配合のコンクリートであって、水セメント比W/Cを37.8%とし、セメントに早強セメントを用いている。
また、本実験では、コンクリート強度σを変動させる目的で、基本配合に混合して基本配合で混練を行った後、図7に示すように、加水を実施し、パン型ミキサーを用いて再度2分間の混練を行った試験体も作製した。加水量は、1m3当たり、11.6kg、23.2kg、34.8kg、69.6kgの4種類である。コンクリート試験体の大きさは、100cm×100cm×深さ20cmである。加水したコンクリート試験体の大きさは、100cm×50cm×深さ20cmである。
図7に示すように配合して製作したコンクリート試験体の材齢日が1日、3日、7日と、コンクリート強度σとは、図8に示すような関係がある。つまり、コンクリート構造物W(コンクリート試験体)のコンクリート強度σは、材齢が1日から3日、7日と経過するのに従って強度が向上する。
穿孔機4の自動送りの設定を確定するために、基準トルクT(0.1Nm)に対する設定値(定格トルク値の10〜20%)を変化させ、コンクリート試験体に孔Waを開けるときのトルクTを計測した。各試験体に対し、穿孔時のトルクが設定値と常に等しく、負荷力Fが設定トルクT0 以上となる条件を選定した。また、定トルク電動機32の回転数Nは、実際の現場作業で利用できる実用的な値(N=500rpm)を採用した。
図10(a)〜(f)は、抜粋したコンクリート試験体(試験体No.3、及びNo.5)の穿孔実験を行ったときの実際の穿孔深さと穿孔時間との関係を示すグラフである。
図10(a)〜(f)のデータから、コンクリート試験体の穿孔深さdは、穿孔時間tにほぼ比例して右上がりに増加し、コンクリート強度σが同じあれば、ほぼ同じ穿孔状態となることが分かる。また、コンクリート強度σが高いほど、穿孔速度は低下する傾向が見られる。その結果、穿孔速度v(図10(a)〜(f)のグラフの直線を直線とみなしたときのその傾き)の変化は、骨材等の影響と考えられ、粗骨材の種類によっても穿孔時間が異なるものと推定される。これは粗骨材を穿孔する部位を過ぎれば、再び穿孔速度が元の傾きになることからも確認できる。そこで、明らかに粗骨材の影響による時間のロスが見られた実験では、ロス時間を全体の穿孔時間から差引き、差引いた時間と穿孔深さの関係から各穿孔速度を決定した。
図11に示すように、前記粗骨材の影響を考慮して、穿孔速度vを決定した。また、コンクリート強度σが高くなるほど、穿孔速度vは、低下する傾向がある。これは、穿孔部41(穿孔ドリル)に作用する負荷力Fが増加したためと考えられる。
図12に示すように、コンクリート強度σの値は、穿孔速度vに対して考えられる右下がりの曲線を描く値となり、冪数関数を用いて最少二乗近似したσの式はk0=8.1、1/a=2.8として、
σ=8.1×v−2.8
で表され、相関係数(r =0.86)も1に近く、各データの相関が高いことが分かる。このことから、穿孔速度を計測して近似式に代入することで、コンクリート強度σを推定することが可能となった。また、式(4)の中では、穿孔機4に作用する負荷力Fが、コンクリート強度σのα乗に比例する仮定をしたが、実験結果でも同様な関係が見られた。今後、各種の定数値を求めることで、精度の高い推定式が得られるものと考えられる。
図13は、穿孔装置の推進手段に与えるトルクの設定値を変えて、穿孔速度の計測を行った実験結果を示す表である。図14は、実験1で得られた電動機の設定トルクによる穿孔速度とコンクリート強度との関係を示すグラフである。
図15は、穿孔装置を下向き及び上向きにした実施例2の実験で得られた既設のコンクリート構造物のコンクリート強度と穿孔速度との関係を示す表である。穿孔装置を下向き及び上向きにした実施例2の実験で得られた既設のコンクリート構造物のコンクリート強度と穿孔速度との関係を示す表である。図16は、実施例2の実験で使用した上向き状態の穿孔装置を示す要部側面図である。
前記図15に示した穿孔速度vの平均と、コンクリート強度σとの関係を、グラフにすると図17に示すようになる。下向き穿孔実験(定格トルク値の10%)による穿孔速度vは、本実験で得られた近似式(例えば、図12に記載した経験式)に沿う値となり、近似式が既設のコンクリート構造物Wでも対応することが確認できた。
3 推進手段
7 制御手段
21 基台
22 支柱
31 移動台
32 定トルク電動機
35 センサ
41 穿孔部
43 電動駆動手段(駆動手段)
71 記憶部
72 計測部
73 演算部
74 推定部
a 比例定数
d 穿孔深さ
K0 比例定数
k0 電動機の効率、歯車の摩擦係数を含む定数
k2 比例定数
N 定トルク電動機の回転数
N0 定トルク電動機の設定回転数
SY コンクリート強度の推定システム
T 定トルク電動機のトルク
T0 定トルク電動機の設定トルク
W コンクリート構造物
Wa 孔
σ コンクリート強度
v 穿孔部の穿孔速度
Claims (6)
- コンクリート構造物に直径が38mm以下の孔を開ける穿孔部を有する穿孔装置を定トルク電動機により送り、制御手段によって前記コンクリート構造物のコンクリート強度を推定するコンクリート強度の推定方法であって、
基準となるそれぞれのコンクリート構造物についてコンクリート強度に対して前記定トルク電動機のトルクが一定となる範囲で、前記穿孔部を前記コンクリート構造物に向けて移動させる送り速度を予め計測しておくと共に、前記トルクの一定の値を変えて計測した結果に基づいて、前記コンクリート強度と、前記穿孔部が前記コンクリート構造物に前記孔を開けながら移動する穿孔速度との強度及び速度の関係を予め特定しておき、
前記制御手段は、測定対象のコンクリート構造物に前記孔を開ける際に、前記定トルク電動機のトルクを一定に制御して前記孔を開けるときの前記穿孔速度を計測し、前記強度及び速度の関係と前記計測した穿孔速度の変化値から前記コンクリート強度を、前記測定対象のコンクリート構造物のコンクリート強度として推定すること
を特徴とするコンクリート強度の推定方法。 - 前記穿孔部を送る際に前記定トルク電動機に与える設定トルクは、前記基準となるそれぞれのコンクリート構造物について予め求めておいた前記定トルク電動機の既知のトルクの強度域の標準値よりも、高強度域に設定されていること
を特徴とする請求項1に記載のコンクリート強度の推定方法。 - 前記穿孔部を送る際に前記定トルク電動機の定格トルク値は、コンクリート強度の設定された絶対値に対して、前記定トルク電動機の定格トルクが前記絶対値を含む範囲の間に入るように設定されていること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート強度の推定方法。 - 前記制御手段は、前記コンクリート構造物に前記孔を開けるときの前記穿孔部が前記コンクリート構造物を押圧する負荷力Fを、前記コンクリート強度σのa乗に比例するものと仮定して、
F=k2・σa
で表し、
前記コンクリート構造物の前記コンクリート強度σを、前記計測した穿孔速度vと下記式(1)を用いて推定すること
を特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載のコンクリート強度の推定方法。
F=負荷力
σ:コンクリート強度[N/mm2]
a:定数
K0:比例定数
k0:電動機の効率、歯車の摩擦係数を含む定数
k2:比例定数
P0(=2πNT):定トルク電動機の出力
N:定トルク電動機の回転数[rpm]
T:定トルク電動機のトルク[Nm]
v:穿孔部の穿孔速度[mm/s] - 前記穿孔装置は、前記穿孔部を回転駆動させる駆動手段と、
前記穿孔部を推進させる前記定トルク電動機を備えた推進手段と、
前記駆動手段を支持して前記推進手段によって上下動される移動台と、
前記移動台を上下動自在に支持する支柱と、を備え、
前記定トルク電動機は、前記穿孔装置を用いてコンクリート強度を推定する場合、前記穿孔部を下方向に向けて下向きで孔を開けるときの設定トルクと比較して、前記穿孔部を上方向に向けて上向きで孔を開けるときの設定トルクの方が、大きく設定されていること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載のコンクリート強度の推定方法。 - コンクリート構造物に孔を開ける穿孔装置と制御手段とを用いて前記コンクリート構造物のコンクリート強度を推定するコンクリート強度の推定システムであって、
前記穿孔装置は、前記コンクリート構造物に直径が38mm以下の孔を開ける穿孔部と、
前記穿孔部を回転駆動させる駆動手段と、
前記穿孔部を推進させる定トルク電動機を備えた推進手段と、
前記駆動手段を支持して前記推進手段によって上下動される移動台と、
前記コンクリート構造物上に設置される基台と、
前記基台上に設けられ前記移動台を上下動自在に支持する支柱と、
前記穿孔部が前記コンクリート構造物に開けた孔の穿孔深さを検出するためのセンサと、を備え、
前記制御手段は、基準となるそれぞれのコンクリート構造物についてコンクリート強度に対して前記定トルク電動機のトルクが一定となる範囲で、前記穿孔部を前記コンクリート構造物に向けて移動させる送り速度を予め計測しておくと共に、前記トルクの一定の値を変えて計測した結果に基づいて、前記コンクリート強度と、前記穿孔部が前記コンクリート構造物に前記孔を開けながら移動する穿孔速度との強度及び速度の関係を特定したデータを記憶する記憶部と、
前記コンクリート構造物に前記孔を開けている穿孔時間を計測する計測部と、
測定対象のコンクリート構造物に前記孔を開ける際に、前記トルク電動機のトルクを一定に制御して前記孔を開けるときの前記穿孔速度を、前記孔の穿孔深さと前記穿孔時間とから算出する演算部と、
前記強度及び速度の関係と、前記算出した穿孔速度の変化値と、前記記憶しておいた既知のデータと、に基づいて求められた前記コンクリート強度を、前記コンクリート構造物のコンクリート強度として推定する推定部と、を有すること
を特徴とするコンクリート強度の推定システム。
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