本発明の積層ポリエステルフィルムとはポリエステルフィルムの少なくとも片面に塗布層と接着剤層が形成されたフィルムを指す。次に化粧板とは、基材の表面に少なくとも前記積層ポリエステルフィルムと絵柄印刷層とを順次積層してなり、通常、単独商品として取り扱われる建築材料(表面材料)を指し、化粧シートとは、各種の家具、建材、住宅機器などの各種商品の基材の表面に前記積層フィルムを貼合し、かつその表面に絵柄印刷層を積層して使用される装飾材料(表面材料)を指す。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは単層構成であっても多層構成であってもよく、2層、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
本発明において使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。ホモポリエステルからなる場合、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、オキシカルボン酸(例えば、p−オキシ安息香酸など)等の一種または二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
ポリエステルの重合触媒としては、特に制限はなく、従来公知の化合物を使用することができ、例えば、チタン化合物、ゲルマニウム化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、アルミニウム化合物、マグネシウム化合物、カルシウム化合物等が挙げられる。その中でも、チタン化合物やゲルマニウム化合物、アンチモン化合物は触媒活性が高く、少量で重合を行うことが可能であるので好ましい。さらに、チタン化合物やゲルマニウム化合物は高価であることから、アンチモン化合物を用いることがより好ましい。アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、酢酸アンチモン、アンチモンエトキシドおよびアンチモングリコキシド等の公知のアンチモン化合物が挙げられ、含有量に特に規定はないが、ポリエステルフィルムを作成した時のフィルムの黒ずみや異物等のトラブルの観点から、前記アンチモン化合物は生成ポリエステルに対し、0.01〜0.2重量%の触媒量の範囲で用いることが好ましい。
本発明における積層ポリエステルフィルムは、様々な色調を有する基材に広く適用される。したがって、本発明のポリエステルフィルムは、基材の色調によって化粧シートの色調が変化してその高度な意匠性が損なわれることがないように、隠蔽性を有することが重要である。そこで、本発明においては、ポリエステルフィルムの透過濃度は0.1〜5.0の範囲である必要がある。上記の透過濃度は、好ましくは0.2〜4.0、さらに好ましくは0.5〜3.0の範囲である。ポリエステルフィルムの透過濃度が0.1より小さい場合は、ポリエステルフィルムが貼着される基材の色調が化粧シート表面の絵柄模様の色調に影響を与えて本発明の目的を達成することができない。ポリエステルフィルムの透過濃度が5.0より大きくするためには、通常フィルムへの添加物を多くする必要があり、このためフィルム製造時にフィルム破断が多発したり、ポリエステルフィルムの機械的強度が低下したりするという問題がある。
上記の透過濃度で示される隠蔽性は、一般的には、フィルム中に無機または有機の粒子を含有させることによって得られる。粒子としては、二酸化チタン、亜鉄酸亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、二酸化珪素、カ−ボンブラック(チャンネル、ファ−ネス、アセチレン、サーマル等)、カーボンナノチューブ(単層、多層)、アニリンブラック、酸化鉄、酸化クロム等が例示されるが、本願発明で規定する透過濃度を満足し得る限り、使用される粒子の種類は上記の例に限定されないが、本発明においては材料の入手の容易さおよび価格の観点から、二酸化チタン、亜鉄酸亜鉛の使用が好ましく、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、亜鉄酸亜鉛の使用は最も好ましい。
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に、必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、熱線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料等を添加することができる。
また、隠蔽性を付与する方法としては、ポリエステルフィルム中に独立小気泡を含有させる方法も好ましく採用し得る。具体的には、ポリエステルと非相溶性であるポリオレフィンをポリエステルに少量添加して延伸および熱固定を行う方法、ポリエステルフィルムに不活性ガスを含有させる方法などが例示される。
本発明のポリエステルフィルムにより、基材の色調の影響を受けることなく、高意匠の表面絵柄を化粧シートに現出することができる。したがって、本発明のポリエステルフィルムに絵柄模様が印刷された積層ポリエステルフィルムを基材表面に貼着することにより、いわゆる単層表刷りを達成することが可能となる。また、上記の積層ポリエステルフィルムは、建材、家具、住宅機器などに好適である。さらに、単層表刷りにおいては、積層ポリエステルフィルムの上に隠蔽化印刷を施した後、その上に絵柄印刷を行ってもよいし、絵柄印刷の後にエンボス加工を行ってトップコートを施してもよい。
本発明のポリエステルフィルムは、隠蔽性に優れるため、1層のみからなる積層ポリエステルフィルムで単層表刷りを構成することも可能であるが、2層以上の積層ポリエステルフィルムを使用してもよい。例えば、合板などの基材に本発明の積層ポリエステルフィルムを複数枚貼着してもよい。この様な多層構成により、表面のエンボス加工が容易となる。
一方、化粧シートの寸法安定性が悪い場合は、印刷工程でのシワの発生や、印刷時の位置合わせ精度が低下するため絵柄模様の意匠性が損なわれる等の問題が発生することがある。本発明においては、ポリエステルフィルムの180℃で5分間熱処理後の熱収縮率を縦横共に−5.0%〜+7.0%の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは−3.0%〜+5.0%の範囲である。特に縦方向の熱収縮率が−2.0%〜+4.0%の範囲かつ横方向の熱収縮率が−1.0%〜+1.0%の範囲とすることが好ましい。熱収縮率が−5.0%より大きい場合は、化粧シートの表面が膨れ上がり外観が大きく損なわれることがある。熱収縮率が+7.0%を超える場合は、化粧シートが建材や家具などから剥離したり、絵柄模様が歪んだりする等の問題を生じることがある。なお、収縮率が負の値であることは、熱処理後にフィルムが伸張することを表す。
本発明のフィルムの色調は、印刷される色に合わせて選択することができる。例えば木質系の材料として使用する場合は、木肌の色調に合わせ、白色系の材料とする場合には白色フィルムとして、ポリエステルフィルム自身の色調を合わせるのが好ましい。
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは25〜300μmの範囲である。
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を乾燥したペレットを、単軸押出機を用いてダイから押し出し、溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が挙げられる。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法や液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。
その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。塗布層に関しては、ポリエステルフィルムの製膜工程中にフィルム表面を処理する、インラインコーティングにより設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、オフラインコーティングを採用してもよい。より好ましくはインラインコーティングにより形成されるものである。
インラインコーティングは、ポリエステルフィルム製造の工程内でコーティングを行う方法であり、具体的には、ポリエステルを溶融押出ししてから延伸後熱固定して巻き上げるまでの任意の段階でコーティングを行う方法である。通常は、溶融、急冷して得られる未延伸シート、延伸された一軸延伸フィルム、熱固定前の二軸延伸フィルム、熱固定後で巻上前のフィルムの何れかにコーティングする。以下に限定するものではないが、例えば逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムにコーティングした後に横方向に延伸する方法が優れている。
かかる方法によれば、製膜と塗布層形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、塗布層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。また、延伸前にフィルム上に塗布層を設けることにより、塗布層を基材フィルムと共に延伸することができ、それにより塗布層を基材フィルムに強固に密着させることができる。
さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。それゆえ、塗布後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、塗布層の造膜性が向上し、塗布層と基材フィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な塗布層とすることができ、塗布層上に形成され得る各種の接着剤層との接着性等の性能を向上させることができる。
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
本発明のフィルムにおいて、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムには、あらかじめ、コロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
次に本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の形成について説明する。本発明においては、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、ウレタン樹脂と架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層を有することを必須の要件とするものである。
通常、化粧板および化粧シートは20〜40℃の室温条件下において基材への貼合が行われてわれるが、近年冬場での作業など接着性の低下が顕著となる10℃以下においても良好な貼合が行えることが要求されており、これらの要求を満たすためには、前記特定構成の塗布層が不可欠となる。
本発明のフィルムの塗布層の形成に使用されるウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことであり、通常ポリオールとポリイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるもの、ポリカプロラクトン等のラクトン化合物の誘導体ユニットを有するもの等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
本発明においては接着剤層との接着性を向上させる観点から、上記ポリオール類の中でもポリカーボネートポリオール類の使用がより好ましい。
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。また、これらのポリイソシアネート化合物は2量体やイソシアヌル環に代表されるような3量体、あるいはそれ以上の重合体であってもよい。
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用しても良く、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロピリデンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
また、本発明においては、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、アミド樹脂等の各種ポリマーを併用することが可能である。
本発明の塗布層を形成する塗布液には、接着剤層との接着性を大幅に向上させるために、架橋剤を含有することを必須とする。
本発明で用いる架橋剤として特に制限はないが、例えば、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、シランカップリング化合物等が挙げられる。その中でも、接着剤層との接着性向上の観点から、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物の使用は好ましく、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物とエポキシ化合物の併用、オキサゾリン化合物とエポキシ化合物の併用はより好ましい。
本発明におけるイソシアネート化合物とは、ポリイソシアネート化合物やブロックポリイソシアネート化合物の様に、イソシアネート基やイソシアネート誘導体構造を含有している化合物のことであり、例えば、脂肪族系ポリイソシアネート化合物、脂環族系ポリイソシアネート化合物、芳香族系ポリイソシアネート化合物等が挙げられる。また前記イソシアネート化合物の分子量は低分子量であっても高分子量であっても構わないが、接着剤層との接着性向上の観点から高分子量のイソシアネート化合物の使用が好ましい。
脂肪族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ジイソシアナトヘキサン、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートから誘導されるポリイソシアネート化合物、リジントリイソシアネート、4−イソシアナトメチル−1,8−オクタメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)2−イソシアナトグルタレート、あるいはこれらイソシアネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができる。その中でも工業的入手のしやすさからヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
脂環族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(
、1,3−ビス(イソシアナトメチル)―シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシル
メタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネ
ート、あるいはこれらイソシアネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができ
る。その中でも、耐候性、工業的入手の容易さから、イソホロンジイソシアネートが好ま
しい。
芳香族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネ
ート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、あるいはこれらイソシ
アネート化合物から誘導される化合物等を挙げることができる。
これらのポリイソシアネート化合物の中でも、脂肪族系ポリイソシアネート化合物および脂環族系ポリイソシアネート化合物が耐候性に優れるため、好ましい。さらに、脂肪族系ポリイソシアネート化合物の中では、脂肪族系ジイソシアネートから誘導される脂肪族系ポリイソシアネート化合物が好ましい。その中でも、特にヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。また、これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもいいし、2種以上を併用しても構わない。
本発明で用いるブロックポリイソシアネート化合物とは、前駆体であるポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、例えば重亜硫酸塩化合物や活性メチレン化合物等のブロック剤で保護した構造を有する化合物およびその反応物のことである。
本発明におけるブロックポリイソシアネート化合物は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基を、ブロック剤と反応させて作製することができる。
本発明に用いるブロック剤としては、例えば、オキシム系、ピラゾール系、アルコール系、アルキルフェノール系、フェノール系、メルカプタン系、酸アミド系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、アミン系、イミン系、重亜硫酸塩類、活性メチレン化合物等をブロック剤として挙げることができる。またブロック剤は、単独あるいは2種以上使用してもよい。
オキシム系ブロック剤としては、例えば、ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等が挙げられる。ピラゾール系ブロック剤としては、例えば、ピラゾール、3−メチルピラゾール、3,5−ジメチルピラゾール等が挙げられる。アルコール系ブロック剤としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、2−メトキシエタノール、2−エトカシエタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。アルキルフェノール系ブロック剤としては、例えば、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、t−ブチルフェノール、n−ヘキシルフェノール、2−エチルヘキシルフェノール、n−オクチルフェノール、n−ノニルフェノール等のモノアルキルフェノール類、ジ−n−プロピルフェノール、ジイソプロピルフェノール、イソプロピルクレゾール、ジ−n−ブチルフェノール、ジ−t−ブチルフェノール、ジ−sec−ブチルフェノール、ジ−n−オクチルフェノール、ジ−2−エチルヘキシルフェノール、ジ−n−ノニルフェノール等のジアルキルフェノール類等が挙げられる。フェノール系ブロック剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、スチレン化フェノール、ヒドロキシ安息香酸エステル等が挙げられる。メルカプタン系ブロック剤としては、例えば、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等が挙げられる。酸アミド系ブロック剤としては、例えば、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム等が挙げられる。酸イミド系ブロック剤としては、例えば、コハク酸イミド、マレイン酸イミド等が挙げられる。イミダゾール系ブロック剤としては、例えば、イミダゾール、2−メチルイミダゾール等が挙げられる。尿素系ブロック剤としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素等が挙げられる。アミン系ブロック剤としては、例えば、ジフェニルアミン、アニリン、カルバゾール、ジーn−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、イソプロピルエチルアミン等が挙げられる。イミン系ブロック剤としては、例えば、エチレンイミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
活性メチレン化合物のブロック剤としては、例えば、イソブタノイル酢酸エステル、n−プロパノイル酢酸エステル、n−ブタノイル酢酸エステル、n−ペンタノイル酢酸エステル、n−ヘキサノイル酢酸エステル、2−エチルヘプタノイル酢酸エステル、マロン酸エステル、アセト酢酸エステル、アセチルアセトン等を挙げることができる。その中でも、低温硬化性および水存在下の貯蔵安定性に優れるという点で、イソブタノイル酢酸エステル、n−プロパノイル酢酸エステル、n−ブタノイル酢酸エステル、n−ペンタノイル酢酸エステル、n−ヘキサノイル酢酸エステル、2−エチルヘプタノイル酢酸エステルが好ましく、より好ましくは、イソブタノイル酢酸エステル、n−プロパノイル酢酸エステル、n−ペンタノイル酢酸エステルであり、さらに好ましくは、イソブタノイル酢酸エステルである。より具体的には、イソブタノイル酢酸エステルとしては、例えば、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチル、イソブタノイル酢酸n−プロピル、イソブタノイル酢酸イソプロピル、イソブタノイル酢酸n−ブチル、イソブタノイル酢酸イソブチル、イソブタノイル酢酸t−ブチル、イソブタノイル酢酸n−ペンチル、イソブタノイル酢酸n−ヘキシル、イソブタノイル酢酸2−エチルヘキシル、イソブタノイル酢酸フェニル、イソブタノイル酢酸ベンジル等が挙げられる。その中でも、イソブタノイル酢酸メチル、イソブタノイル酢酸エチルが好ましい。n−プロパノイル酢酸エステルとしては、例えば、n−プロパノイル酢酸メチル、n−プロパノイル酢酸エチル、n−プロパノイル酢酸イソプロピル、n−プロパノイル酢酸n−ブチル、n−プロパノイル酢酸t−ブチル等が挙げられる。その中でも、n−プロパノイル酢酸メチル、n−プロパノイル酢酸エチルが好ましい。n−ペンタノイル酢酸エステルとしては、例えば、n−ペンタノイル酢酸メチル、n−ペンタノイル酢酸エチル、n−ペンタノイル酢酸イソプロピル、n−ペンタノイル酢酸n−ブチル、n−ペンタノイル酢酸t−ブチル等が挙げられる。その中でも、n−ペンタノイル酢酸メチル、n−ペンタノイル酢酸エチルが好ましい。
また、上記に示した活性メチレンブロック剤の使用においては上記を単独で用いることも可能であるが、2種以上を併用して使用することもでき、この場合併用する活性メチレンブロック剤としては、低温硬化性に優れるという点で、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチルの使用が好ましい。
接着剤層との接着性向上の観点から、イソシアネート化合物の中でも、ブロックイソシアネート化合物の使用が好ましく、活性メチレンブロックイソシアネート化合物を使用することは特に好ましい。
また、コアシェル構造を有するブロックイソシアネート化合物も接着剤層との接着性向上の観点から好ましい。コアシェル構造の場合、イソシアネートまたはブロックイソシアネートは、コアまたはシェルの少なくともいずれか一方に含有させることとなるが、安定性の観点からコア部に含有することがより好ましい。また、コア部にイソシアネートまたはブロックイソシアネートを含有させる場合、シェル部にはポリマーを使用することが好ましく、ポリマーとしては、従来公知のポリマーを使用することができるが、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂が作成の観点から好ましく、特にウレタン樹脂が接着性向上の観点から好ましい。さらに、水系での使用を考慮し、シェル部にはイオン性基含有化合物が好ましく、その中でもカルボン酸基含有化合物であることが好ましい。
カルボジイミド化合物とは、カルボジイミド構造を有する化合物のことであり、分子内にカルボジイミド構造を1つ以上有する化合物であるが、より良好な接着性等のために、分子内に2つ以上のカルボジイミド構造を有するポリカルボジイミド化合物がより好ましい。
カルボジイミド化合物は、従来公知の技術で合成することができ、一般的にはジイソシアネート化合物の縮合反応が用いられる。ジイソシアネート化合物としては、特に限定されるものではなく、芳香族系、脂肪族系いずれも使用することができ、具体的には、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
カルボジイミド系化合物に含有されるカルボジイミド基の含有量は、カルボジイミド当量(カルボジイミド基1molを与えるためのカルボジイミド化合物の重さ[g])で、通常100〜1000、好ましくは250〜800、より好ましくは300〜700、さらに好ましくは350〜650の範囲である。上記範囲での使用が、接着剤層への接着性が向上し好ましい。
さらに本発明の効果を消失させない範囲において、ポリカルボジイミド化合物の水溶性や水分散性を向上するために、界面活性剤を添加することや、ポリアルキレンオキシド、ジアルキルアミノアルコールの四級アンモニウム塩、ヒドロキシアルキルスルホン酸塩などの親水性モノマーを添加して用いてもよい。
エポキシ化合物としては、例えば、分子内にエポキシ基を含む化合物、そのプレポリマーおよび硬化物が挙げられる。例えば、エピクロロヒドリンとエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ビスフェノールA等の水酸基やアミノ基との縮合物が挙げられ、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等がある。ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトール、ポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアネート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としてはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサン等が挙げられる。
オキサゾリン化合物とは、分子内にオキサゾリン基を有する化合物であり、特にオキサゾリン基を含有する重合体が好ましく、付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであれば制限なく、例えばアルキル(メタ)アクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα,β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα,β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
オキサゾリン化合物に含有されるオキサゾリン基の含有量は、オキサゾリン基量で、通常0.5〜10mmol/g、好ましくは1〜9mmol/g、より好ましくは3〜8mmol/g、さらに好ましくは4〜6mmol/gの範囲である。上記範囲での使用が、接着剤層への接着性が向上し好ましい。
メラミン化合物とは、化合物中にメラミン骨格を有する化合物のことであり、例えば、アルキロール化メラミン誘導体、アルキロール化メラミン誘導体にアルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物、およびこれらの混合物等を用いることができる。エーテル化に用いるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール等が好適に用いられる。また、メラミン化合物としては、単量体、あるいは2量体以上の多量体のいずれであってもよく、あるいはこれらの混合物を用いてもよい。さらに、メラミンの一部に尿素等を共縮合したものも使用できるし、メラミン化合物の反応性を上げるために触媒を使用することも可能である。
なお、前述の架橋剤は、乾燥過程や、製膜過程において、反応させて塗布層の性能を向上させる設計で用いている。できあがった塗布層中には、これら架橋剤の未反応物、反応後の化合物、あるいはそれらの混合物が存在しているものと推測できる。
本発明においては、滑り性やブロッキングを改良するために、塗布層の形成に粒子を併用しても良く、粒子の平均粒径に制限はないが、塗布液における安定性の観点から通常1.0μm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.5μm以下、特に好ましくは0.2μm以下の範囲である。
使用する粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を挙げることができる。特に、塗布層への分散性の観点からは、シリカ粒子が好適である。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層の形成には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料、顔料等を併用してもよい。
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、ウレタン樹脂は、通常5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは40〜85重量%の範囲である。上記の範囲を外れる場合は、接着剤層との接着性が十分でない場合がある。
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、架橋剤は、通常5〜95重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは10〜50重量%の範囲である。上記の範囲を外れる場合は、接着剤層との接着性が十分でない場合がある。
本発明のフィルムにおける塗布層を形成する塗布液中の全不揮発成分に対する割合として、粒子は、粒径やポリエステルフィルムの特性によっても滑り性やブロッキング特性は変化するので一概には言えないが、好ましくは25重量%以下、より好ましくは1〜5重量%である。25重量%を超える場合は塗布液における安定性が低下する場合がある。
本発明のポリエステルフィルムにおいて、上述した塗布層を設けた面と反対側の面にも塗布層を設けることも可能である。例えば、接着剤層を形成した反対側に絵柄印刷等のインク層や金属蒸着、ハードコート等の機能層を形成する場合に、当該機能層との密着性を向上させることが可能である。反対側の面に形成する塗布層の成分としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、エステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のポリマー、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、シランカップリング化合物等の架橋剤、帯電防止剤、粒子、界面活性剤等が挙げられ、これらの材料を単独で用いてもよいし、複数種を併用して用いてもよい。また、上述してきた様なウレタン樹脂と架橋剤を含有する塗布液から形成された塗布層、つまりポリエステルフィルムに両面同一の塗布層を設けてもよい。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の膜厚は、通常0.002〜1.0μm、好ましくは0.005〜0.5μm、より好ましくは0.01〜0.2μmの範囲であり、この範囲において接着剤層との接着性が最も向上する。
塗布層中の成分の分析は、例えば、TOF−SIMS、ESCA、蛍光X線等の分析によって行うことができる。
本発明においては、塗布層上に接着剤層を有することを必須の要件とする。接着剤層に用いる接着剤としては、任意の接着剤を使用することができ、例えば、ウレタン系接着剤、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、ホットメルト接着剤、フェノール樹脂系接着剤、α−オレフィン樹脂接着剤、水性高分子とイソシアネートの混合物による接着剤、エポキシ系接着剤、溶液型酢酸ビニル樹脂系接着剤、エマルジョン型酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリルエマルジョン系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤、SBR系接着剤、変性ゴムエマルジョン系接着剤、エチレン共重合樹脂系接着剤、レゾルシン系接着剤、天然ゴム系接着剤、セルロース系接着剤、でんぷん質糊料、デキストリン等が挙げられる。
基材が木材の場合は、ウレタン系接着剤、ホットメルト接着剤、ユリア樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、α−オレフィン樹脂接着剤、水性高分子とイソシアネートの混合物による接着剤、エマルジョン型酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリルエマルジョン系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、変性ゴムエマルジョン系接着剤、セルロース系接着剤等が主に使用されるが、基材が木材と大きく異なる鋼板などの材質の場合においても幅広く優れた接着性を発現するウレタン系接着剤を本発明において使用することが好ましく、ウレタン系接着剤の中でも、接着性の低下が顕著となる10℃以下においても良好な接着性が発現することから芳香族ウレタン系接着剤の使用がさらに好ましい。
本発明においては反応型接着剤、溶剤型接着剤、エマルジョン型接着剤、固形型接着剤など何れの形態の接着剤を用いることができるが、材料の入手の利便性や基材への接着性の観点から特に溶剤型接着剤や固形型接着剤を用いることが好ましい。
本発明において使用するウレタン系接着剤は、分子内にウレタン結合を有する各種の接着剤が含まれる。またウレタン結合以外に尿素結合、アロファネート結合、ビウレット結合等を複数種含有してもよい。
本発明のウレタン系接着剤を構成するポリオール化合物としては、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−ヘキシル−1,3−プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるもの、ポリカプロラクトン等のラクトン化合物の誘導体ユニットを有するもの等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
本発明においては基材との接着性を向上させる観点から、上記ポリオール類の中でもポリエステルポリオール類の使用が好ましく、中でもポリプロピレングリコールやヘキサンジオールを用いた化合物の使用はより好ましい。
本発明のウレタン系接着剤を構成するポリイソシアネート化合物としては、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられ、これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記ポリオール類の中でも基材との接着性を向上させる観点から、芳香族イソシアネート化合物の使用が好ましく、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびトリレンジイソシアネートの使用が特に好ましい。
ウレタン系接着剤の市販品としては、例えば、大日精化工業株式会社製「セイカボンドE−263」、「セイカボンドC−26」、三井化学ウレタン株式会社製「商品名タケラックA3210」、「タケネートA3072」、東洋モートン株式会社製「EA−W1/08A/B」、「AD−615/CAT−EP5」、住友バイエルウレタン株式会社製「DIispercollUXP2643」、「Bayhydur304」、DIC株式会社製「WS−325A」、「LJ−55」、日立化成ポリマー株式会社製YR010−7、三井武田ケミカル株式会社製「MA−5002」、「MA−5310」、三木理研株式会社製「リケンレヂンY800」等が挙げられる。
本発明においては、材料の入手の利便性や基材との接着性の観点からウレタン系接着剤でも溶剤型のウレタン系接着剤や固形型のウレタン系接着剤の使用が好ましい。
ユリア樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、三井東圧化学株式会社製「ユーーロイド310」、「ユーロイド320」、「ユーロイド701」、「ユーロイド755」、「ユーロイド730」等が挙げられる。メラミン樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、三井東圧化学株式会社製「ユーロイド350」、「ユーロイド775」、「ユーロイド781」、「ストラクトボンドC−1」、「ストラクトボンドC−10」(以上、メラミン・尿素樹脂)、三井東圧化学株式会社製「ユーロイド883」、「ユーロイド811」(以上、メラミン・フェノール樹脂)等が挙げられる。
フェノール樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、三井東圧化学株式会社製「ユーロイドPL−261」、「ユーロイドPL−281」、「ユーロイドPL−211」、「ユーロイドPL−222」、コニシ株式会社製「PR22」等が挙げられる。α−オレフィン樹脂接着剤の市販品としては、例えば、コニシ株式会社製「SH2」、「SH3」、「SH5W」、「SH6」、「SH20」、「SH20L2」等が挙げられる。
水性高分子とイソシアネートの混合物による接着剤の市販品としては、例えば、コニシ株式会社製「CU1」、「CU5」、「CU51」等が挙げられる。
エポキシ系接着剤の市販品としては、例えば、積水化学工業株式会社製「エスダイン3008」、「エスダイン3200」、「エスダイン3710」、「エスダイン3730」、「エスダイン3740」、「エスダイン3750」、「エスダイン3600」、「エスダ
イン3611」、「エスダイン3450」等が挙げられる。溶剤型酢酸ビニル樹脂系接着
剤の市販品としては、例えば、積水化学工業株式会社製「エスダイン1011」、「エスダイン1013」、「エスダイン1015」、「エスダイン1020」、「エスダイン1057」等が挙げられる。
エマルジョン型酢酸ビニル樹脂系接着剤の市販品としては、例えば、セメダイン株式会社製「656」、「605」、「EM−65」、「EM−90」、「602(T)」、積水化学工業株式会社製「エスダイン5100」、「エスダイン5165」、「エスダイン5200」、「エスダイン5300」、「エスダイン5301」、「エスダイン5320」、「エスダイン5400」、「エスダイン5403」、「エスダイン5405」、「エスダイン5406」、「エスダイン5408」、「エスダイン5410」、「エスダイン5440」、「エスダイン5500」、「エスダイン5700」、「エスダイン5800」、「エスダイン5803」、「エスダイン5815」、コニシ株式会社製「CH2」、「CH2W」、「CH3」、「CH5」、「CH18」、「CH20」、「CH7」、「CH7L」、「CH27」、「CH1000」、「CH63」、「CH65」、「CH131」、「CH133」、「CH115」、「CX10」、「CX55」、「CH1500」、「CH1600」、「CH3000L」、「CH72」、「CH73」、「CH74」、「CH77」、「CH107硬化剤付」、「PTS(A/B)」、「CH7000/PTS7000」等が挙げられる。
アクリルエマルジョン系接着剤の市販品としては、例えば、セメダイン株式会社製「EM−315」、「EM−370A・B」、「モルコーン685」、「EM−326」、「679」、「EM−702改」、コニシ株式会社製「CEL10」、「CEL20」、「CEL22」、「CEL25N」、「CEL60」、「CEL63」、「CVC33」、「CVC36」、「CVC36F」、「CV3105シリーズ」、「SP65」、「SP85」、「SP200」、「SP210」、「SP220」、「SP281」、「SP285」、「SP290」、「SP291」、「SP3055」、「CN520」、「CZ100」、「CZ220」、「CE780」、「CE801」、「ネダボンドA」、「ネダボンドW1000」等が挙げられる。
クロロプレンゴム系接着剤の市販品としては、例えば、積水化学株式会社製「エスダイン276AL」、「エスダイン276FS」、「エスダイン276M」、「エスダインSG202D」、「エスダイン278」、「エスダインSG2005E」、コニシ株式会社製「G10」、「G11」、「G12」、「スーパーGエース」、「G17」、「G18」、「G19」、「G5000」、「G5800」、「GS5」、「GU55ブルー」、「GU68Fグリーン」、「G77」、「G78」、「ネダボンドG」、「スーパーGスプレー」、「GW150」等が挙げられる。
変性ゴムエマルジョン系接着剤の市販品としては、例えば、セメダイン株式会社製「CL−5N」、「CL−7N」、コニシ株式会社製「FL200」、「FL105S」、「HB2」、「HB10」等が挙げられる。レゾルシン系接着剤の市販品としては、例えば、コニシ株式会社「KR15」等、セルロース系接着剤の市販品としては、例えば、コニシ株式会社製「工作用ボンド(K)」等が挙げられる。
本発明における接着剤層は、接着剤以外に例えばポリエステル樹脂やアクリル樹脂等の各種ポリマーを適宜含有していても良く、この様なポリマーの添加は接着剤の融点の調整等に適しており、所望の塗工条件が得やすくなるので、本発明においてはより好ましい形態である。接着剤層がウレタン系接着剤の場合は、接着剤の主成分であるウレタン以外のポリマーを含有していることが好ましく、なかでもアクリル樹脂は重合成分を任意に組み込めることから、融点の調整が容易であるため特に好ましい。
また、本発明における接着剤層は、前記の各種架橋剤を適宜含有していても良く、この様な架橋剤の添加は基材との接着性を向上させるため、本発明においてより好ましい形態である。接着剤層がウレタン系接着剤の場合は、架橋剤のなかでもイソシアネート化合物を架橋剤として使用することが基材への接着性の観点から好ましく、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物の使用は特に好ましい。
上記各種ポリマー成分およびまたは架橋剤を含有する接着剤を使用する場合、基材との接着性の観点から、接着剤層の全不揮発成分に対する割合として、接着剤は30重量%以上含有していることが好ましく、より好ましくは40〜90重量%、さらに好ましくは50〜85重量%である。
ポリマーは接着剤層の全不揮発成分に対する割合として、80重量%以下の含有が好ましく、より好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは8〜30重量%である。
架橋剤は接着剤層の全不揮発成分に対する割合として、80重量%以下の含有が好ましく、より好ましくは1〜50重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
本発明における積層ポリエステルフィルムに関して、塗布層上に設けられる接着剤層の膜厚は、通常1〜1000μm、好ましくは1〜100μm、より好ましくは5〜50μmの範囲であり、この範囲において接着剤層との接着性が最も向上する。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
(1)ポリエステルの極限粘度の測定方法
ポリエステルに非相溶な他のポリマー成分および顔料を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
(2)平均粒径の測定方法
TEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製H−7650、加速電圧100V)を使用して塗布層を観察し、粒子10個の粒径の平均値を平均粒径とした。
(3)塗布層の膜厚測定方法
塗布層の表面をRuO4で染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuO4で染色し、塗布層断面をTEM(株式会社日立ハイテクノロジーズ製H−7650、加速電圧100V)を用いて測定し、10箇所の平均値を塗布層の膜厚とした。
(4)隠蔽度(透過濃度)
株式会社伊原テクニーク製Ihac−75を使用し透過光濃度を測定した。この値が大きいほど隠蔽力が高いことを示す。
(5)基材と積層ポリエステルフィルムの接着性評価
本発明の積層ポリステルフイルムの接着剤層上に、幅40mm×長さ100mmの各種基材(木板およびステンレス板)を評価する面が接着剤層と向かい合う様に各種基材を載置して上からローラーをかけて均一に貼り合わせ、その後貼合サンプルを温度が8℃の条件下で1日養生する。作成した貼合サンプルは、次の方法により接着性を評価した。
(5−1)剥離試験機による接着性評価
得られた貼合サンプルを剥離試験機に設置して、貼合サンプルの積層ポリエステルフィルムを100mm/分の速度で180°剥離を行い、各種基材との接着性を見た。
接着性評価は剥離界面を目視判定することで行い、また評価基準は下記の通り。
≪基材が木板の場合の評価基準≫
基材の木材が材料破壊を起こした面積
5:80%以上
4:50%以上80%未満
3:30%以上50%未満
2:10%以上30%未満
1:10%未満
木材の材料破壊が起きている割合が高いほど、積層ポリエステルフィルムの木材への接着性は高いことを示し、5が最も良く1が最も悪い評価となる。また本評価基準において4以上であれば十分な接着性を有しているといえる。
≪基材がステンレス板の場合の評価基準≫
基材のステンレスに接着剤層が残留している面積
5:10%未満
4:10以上30%未満
3:30%以上50%未満
2:50%以上80%未満
1:80%以上
ステンレス板への接着剤層の残留割合が低いほど、積層ポリエステルフィルムの接着剤層は凝集破壊を起こしておらず、ステンレス板への接着性はより高いことを示し、5が最も良く1が最も悪い評価となる。また本評価基準において4以上であれば十分な接着性を有しているといえる。
(6)インク層と積層ポリエステルフィルムの接着性評価
≪インク層への接着性評価≫
積層ポリエステルフィルム上に形成されたインク層表面に、10×10のクロスカットを入れ、その上に18mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−18)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後の剥離面を観察し、剥離面積が10%未満ならば○、10%以上ならば×とした。
実施例および比較例において使用した塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
・ウレタン樹脂(I)
イソホロンジイソシアネート/ポリヘキサメチレンカーボネート/ポリオキシテトラメチレングリコール/ペンタエチレングリコール/ジメチロールプロピオン酸=12/72/5/9/2(mol%)から形成されるウレタン樹脂の水分散体。
・ポリエステル樹脂(IIA)
テレフタル酸/イソフタル酸/5−ソジウムスルホイソフタル酸//エチレングリコール/1,4−ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(mol%)から形成されるポリエステル樹脂の水分散体。
・アクリル樹脂:(IIB)
エチルアクリレート/n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/N−メチロールアクリルアミド/アクリル酸=65/21/10/2/2(重量%)の乳化重合体(乳化剤:アニオン系界面活性剤)
・活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物:(IIIA)
下記方法で合成した活性メチレンブロックポリイソシアネート化合物。
ヘキサメチレンジイソシアネート1000部を60℃で攪拌し、触媒としてテトラメチ
ルアンモニウム・カプリエート0.1部を加えた。4時間後、リン酸0.2部を添加して
反応を停止させ、イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物を得た。得られたイソシ
アヌレート型ポリイソシアネート組成物100部、数平均分子量400のメトキシポリエ
チレングリコール42.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29
.5部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を60℃に保持し、イソブ
タノイル酢酸メチル35.8部、マロン酸ジエチル32.2部、ナトリウムメトキシドの
28%メタノール溶液0.88部を添加し、4時間保持した。n−ブタノール58.9部
を添加し、反応液温度80℃で2時間保持し、その後、2−エチルヘキシルアシッドホス
フェート0.86部を添加して得られたブロックポリイソシアネート
・コアシェル構造を有するブロックイソシアネート化合物:(IIIB)
内部(コア)がヘキサメチレンジイソシアネート3量体312.5部、数平均分子量が700のメトキシポリエチレングリコール55.4部、からなる、分子内にウレタン結合と末端イソシアネート基を含有し、イソシアネート基をMEKオキシムでブロックイソシアネートとした化合物で、その表面(シェル)がイソホロンジイソシアネート80部、ヘキサメチレンジイソシアネート3量体20.2部、数平均分子量が1000のポリヘキサメチレンカーボネート229部、トリメチロールプロパン2.6部、ジメチロールプロピオン酸16.1部、からなりトリエチルアミンで中和し、ジエチレントリアミンで鎖延長したウレタン樹脂であるコアシェル構造を有するブロックイソシアネート化合物。
・ブロックイソシアネート系化合物:(IIIC)
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とマレイン酸とのポリエステル(分子量2000)200部に、ヘキサメチレンジイソシアネート33.6部を添加し、100℃×2時間反応を行い、遊離イソシアネート基4重量%を有するウレタンプレポリマーを得た。次いで系の温度を一旦50℃まで下げ、30%重亜硫酸ナトリウム水溶液84部を添加し、45℃で60分間攪拌を行った後、水で希釈し樹脂分を25%としたブロックイソシアネート化合物。
・エポキシ化合物:(IIID)
ポリグリセロールポリグリシジルエーテル
・カルボジイミド系化合物:(IIIE)
ポリカルボジイミド化合物カルボジライト(カルボジイミド当量=600、日清紡株式会社製)
・オキサゾリン化合物:(IIIF)
オキサゾリン基およびポリアルキレンオキシド鎖を有するアクリルポリマーエポクロス(オキサゾリン基量=4.5mmol/g、株式会社日本触媒製)
・粒子:(IV)平均粒径0.07μmのシリカゾル
実施例および比較例において使用した接着剤層を構成する化合物例は以下のとおりである。
・ウレタン系接着剤(下記数値は重量%)
ウレタン接着剤(4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート/アジピン酸/ドデカン二酸/ポリプロピレングリコール/ヘキサンジオール=18/13/10/48/11から形成されるウレタン接着剤):アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート/ポリブチルメタクリレート=75/25から形成されるアクリル樹脂):4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート=71:20:9からなる芳香族ウレタン系接着剤。
<ポリエステルの製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とし、4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。次にこの反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04重量部を添加した後、三酸化アンチモン0.04重量部を加えて、常法に従い4時間重縮合反応を行った。すなわち、反応温度を230℃から徐々に上げて最終的に280℃とし、一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、固有粘度0.66に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させチップ化してポリエステルを得た。得られたポリエステルの固有粘度(IV)は0.66であった。
実施例1:
IVが0.66で粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル原料を主体とし、粒子径0.3μmのルチル型二酸化チタン7.6重量%、粒子径0.5μmの亜鉄酸亜鉛(ZnO・Fe2O3)3.3重量%、粒子径4.2μmの不定形シリカを0.5重量%を混合した後、押出機に投入して270℃で溶融、混練し、得られた溶融体をスリット状に押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加法により密着、冷却させて無延伸シートを得た。次いで当該無延伸シートを縦方向に82℃で2.7倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す塗布液1を塗工し、テンターに導き、さらに横方向に115℃で3.9倍延伸し、段階的に昇温後、220℃で3秒間熱処理した。次いで190℃の雰囲気下、幅方向に1%の弛緩処理(テンターレール幅を狭める)を行った。最終的にフィルム厚さ45μm、透過濃度が1.4、縦方向の熱収縮率が+3.5、横方向の熱収縮率が+0.5の塗布層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この塗布層が積層されたポリステルフイルムの片面の塗布層上に東洋インキ株式会社製FDカルトンACE墨口を2μm厚さに塗工し、UV照射装置で硬化させてインク層を形成した。次にもう片方の塗布層上に乾燥後の膜厚で14μmとなるように、上述に記載のウレタン系接着剤のメチルエチルケトン溶液を均一に塗工して、120℃の条件下で2分間乾燥を行ない、インク層および接着剤層が形成された積層ポリエステルフィルムを得た。前記積層ポリエステルフィルムの接着性評価を行なったところ、表2に記載のとおりインク層および各種基材に対して優れた接着性を示した。
実施例2:
IVが0.66で粒子を含有しないポリエチレンテレフタレートからなるポリエステル原料を主体とし、粒子径0.3μmのアナターゼ型二酸化チタン15.5重量%、粒子径4.2μmの不定形シリカを0.5重量%を混合した後、二軸押出機に投入して270℃で溶融、混練し、得られた溶融体をスリット状に押出し、30℃の冷却ドラム上に静電印加法により密着、冷却させて無延伸シートを得た。次いで当該無延伸シートを縦方向に82℃で2.7倍延伸した後、この縦延伸フィルムの両面に、下記表1に示す塗布液1を塗工し、テンターに導き、さらに横方向に115℃で3.9倍延伸し、段階的に昇温後、220℃で3秒間熱処理した。次いで190℃の雰囲気下、幅方向に1%の弛緩処理(テンターレール幅を狭める)を行った。最終的にフィルム厚さ45μm、透過濃度が0.7、縦方向の熱収縮率が+3.5、横方向の熱収縮率が+0.5の塗布層を積層した二軸配向ポリエステルフィルムを得た。この塗布層が積層されたポリステルフイルムの片面の塗布層上に東洋インキ株式会社製FDカルトンACE墨口を2μm厚さに塗工し、UV照射装置で硬化させてインク層を形成した。次にもう片方の塗布層上に乾燥後の膜厚で14μmとなるように、上述に記載のウレタン系接着剤のメチルエチルケトン溶液を均一に塗工し、120℃の条件下で2分間乾燥を行ない、インク層および接着剤層が形成された積層ポリエステルフィルムを得た。前記積層ポリエステルフィルムの接着性評価を行なったところ、表2に記載のとおりインク層および各種基材に対して優れた接着性を示した。
実施例3〜8:
実施例2において、塗工した塗布液の組成を表1に示す塗布液組成に変更する以外は実施例2と同様にして製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムの接着性評価を行なったところ、表2に記載のとおりインク層および各種基材に対して優れた接着性を示した。
実施例9〜10:
実施例2において、塗工した塗布液の組成を表1に示す塗布液組成に変更する以外は実施例2と同様にして製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムの接着性評価を行なったところ、表2に記載のとおりインク層に対し優れた接着性を示し、各種基材に対して十分な接着性を示した。
実施例11〜13:
実施例2において、塗工した塗布液の組成を表1に示す塗布液組成に変更する以外は実施例2と同様にして製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムの接着性評価を行なったところ、表2に記載のとおりインク層に対し優れた接着性を示し、各種基材に対して実用可能なレベルの接着性を示した。
比較例1:
実施例2において、塗布層を設けなかったこと以外は実施例2と同様にして製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムの接着性評価を行なったところ、表2に記載のとおり各種基材に対し接着性が低下する様な低温条件下での貼合用途では使用が難しい接着性を示した。またインク層に対しても接着性は不十分であった。
比較例2〜5:
実施例2において、塗工した塗布液の組成を表1に示す塗布液組成に変更する以外は実施例2と同様にして製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。この積層ポリエステルフィルムの接着性評価を行なったところ、表2に記載のとおり各種基材に対し、比較例1よりは良好であるが、接着性が低下する様な低温条件下での貼合用途では不十分となる接着性を示した。インク層に対しては優れた接着性を示した。
下記表中の数値は不揮発成分における塗布剤組成の重量%を意味する。