JP2015193046A - 切削工具 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属からなる中間層を設けることなく、硬質被覆膜の工具基材に対する付着強度を向上できるとともに、硬質被覆膜の品質を安定化できる切削工具を提供すること。【解決手段】cBN焼結体である工具基材2と、少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなる硬質被覆膜12と、少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなり、前記工具基材2と前記硬質被覆膜12の間に設けられる付着強化膜11と、を備え、前記硬質被覆膜12の圧縮残留応力が、前記付着強化膜11の圧縮残留応力よりも高いことを特徴とする。【選択図】図1

Description

本発明は、cBN焼結体である工具基材上に、硬質被覆膜が形成された切削工具に関するものである。
従来、cBN(立方晶窒化ホウ素)焼結体からなる工具基材の表面に、硬質被覆膜を形成して耐摩耗性を高めた切削工具が知られている。
cBNは、高硬度であり、耐熱性が高く、鉄系金属との反応性が低いという、切削工具に適した特徴を有する。このため、cBN焼結体の工具基材を備えた切削工具によれば、例えば鉄系難削材の加工において、加工能率の向上や生産費用の低減などの効果が得られる。
例えば下記特許文献1〜3には、この種の切削工具が開示されている。
特許文献1には、cBNが高含有された工具基材が開示されている。
特許文献2には、cBN基材と硬質被覆膜の間に、金属(Cr、V、Zr)からなる中間層を設けた切削工具が開示されている。すなわち、cBNは絶縁物質であり帯電しにくく、硬質被覆膜との付着強度を十分に確保することが難しいため、これを改善する目的で金属の中間層を設けている。
特許文献3には、硬質被覆膜の内部に応力差を設けた切削工具が開示されている。この硬質被覆膜の内部応力(圧縮残留応力)は、膜の表面から基材側へ向けて変化させられており、これにより、耐摩耗性と靱性とを両立させようとするものである。
特開2008−222485号公報 欧州特許第1195452号明細書 特許第4653789号公報
しかしながら、上記従来の切削工具では、下記の課題を有していた。
すなわち、特許文献1では、工具基材に対する硬質被覆膜の付着強度が十分に得られにくい。これは、上述したようにcBNが非導電性物質(絶縁物質)であることに起因する。一般に、cBN焼結体からなる工具基材は、超硬合金からなる工具基材に比べて、硬質被覆膜の付着強度が劣る。特に、工具基材のcBN含有率が高くなるほど、工具基材の表面に硬質被覆膜が付着しづらくなる。
また特許文献2では、工具基材と硬質被覆膜との間に金属からなる中間層を設けているが、金属は耐摩耗性に劣るため、摩耗しやすい。また、硬質被覆膜と金属層の熱膨張係数差が大きくなりやすく、硬質被覆膜が剥離しやすい。
また特許文献3では、硬質被覆膜を安定して成膜することが難しい。すなわち、硬質被覆膜の内部応力を膜の表面から基材側へ向けて変化させるには、硬質被覆膜の成膜中に、バイアス電圧等の成膜条件を変更する必要がある。しかしながら、成膜条件を変更しつつ成膜することは、結晶成長や結晶性を不均一にさせる(多結晶膜の粒径の制御に影響し、ミスマッチが生じる)おそれがある。このため、硬質被覆膜の性能が安定せず、膜の品質が不安定になりやすい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、金属からなる中間層を設けることなく、硬質被覆膜の工具基材に対する付着強度を向上できるとともに、硬質被覆膜の品質を安定化できる切削工具を提供することを目的とする。
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
すなわち本発明の切削工具は、cBN焼結体である工具基材と、少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなる硬質被覆膜と、少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなり、前記工具基材と前記硬質被覆膜の間に設けられる付着強化膜と、を備え、前記硬質被覆膜の圧縮残留応力が、前記付着強化膜の圧縮残留応力よりも高いことを特徴とする。
本発明の切削工具によれば、硬質被覆膜の圧縮残留応力が付着強化膜の圧縮残留応力よりも高いので、下記の効果を奏する。
すなわち、圧縮残留応力が高く設定された硬質被覆膜により、工具の耐摩耗性が向上する。また、付着強化膜は、圧縮残留応力が低く設定されるので、工具基材に対する硬質被覆膜の付着強度を向上させる作用効果が得られる。さらに付着強化膜は、工具基材と硬質被覆膜の間において靱性のある緩衝層として作用する。従って、硬質被覆膜の剥離が顕著に防止される。
また付着強化膜は、上述した付着強度向上の効果を奏しつつも、いわゆる金属層ではない。従って、付着強化膜自体の耐摩耗性が確保される。また、付着強化膜と硬質被覆膜の熱膨張係数差を小さく抑えることが容易であり、硬質被覆膜の剥離を防止する効果が安定的に得られる。
また本発明では、硬質被覆膜を成膜するにあたって、膜の内部の圧縮残留応力を一定に設定することができる。つまり、硬質被覆膜の成膜中に、バイアス電圧等の成膜条件を変更しないで成膜できる。このため、硬質被覆膜の結晶成長や結晶性を均一化でき、粒径の制御を精度よく行うことが可能である。
従って、高性能で工具寿命の長い、品質の安定した製品(切削工具)を、継続的に(安定的に)得ることができる。
以上より、本発明によれば、金属からなる中間層を設けることなく、硬質被覆膜の工具基材に対する付着強度を向上できるとともに、硬質被覆膜の品質を安定化できるのである。
また、本発明の切削工具において、前記硬質被覆膜は、圧縮残留応力が一定に設定されることとしてもよい。
この場合、硬質被覆膜を成膜するときに、バイアス電圧等の成膜条件を変更する必要がない。従って、硬質被覆膜の品質を安定化できる。
また、本発明の切削工具において、前記付着強化膜は、圧縮残留応力が一定に設定されることとしてもよい。
この場合、付着強化膜を成膜するときに、バイアス電圧等の成膜条件を変更する必要がない。従って、付着強化膜の品質を安定化できる。
また、本発明の切削工具において、前記硬質被覆膜と前記付着強化膜が、同一の材料成分からなることとしてもよい。
この場合、硬質被覆膜と付着強化膜の成膜処理を共通化しやすくなるので、安価に効率よく成膜することが可能になる。
また、本発明の切削工具において、前記硬質被覆膜と前記付着強化膜が、異なる材料成分からなることとしてもよい。
この場合、様々な材料を組み合わせることができるので、硬質被覆膜と付着強化膜の成膜の自由度が大きくなる。
本発明の切削工具によれば、金属からなる中間層を設けることなく、硬質被覆膜の工具基材に対する付着強度を向上できるとともに、硬質被覆膜の品質を安定化できる。
本発明の一実施形態に係る切削工具の要部を示す縦断面図である。 本発明の実施例及び従来の比較例における、硬質被覆体の耐剥離性確認試験の結果を示すグラフである。 本発明の実施例及び従来の比較例における、逃げ面の摩耗量の推移(逃げ面摩耗量確認試験Aの結果)を示すグラフである。 本発明の実施例及び従来の比較例における、逃げ面の摩耗量の推移(逃げ面摩耗量確認試験Bの結果)を示すグラフである。
以下、本発明の一実施形態に係る切削工具1について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る切削工具1の要部(硬質被覆体3近傍)を示す縦断面図である。
切削工具1は、例えば、炭素鋼等の金属材料からなる被削材に穴開け加工を行うドリル、正面削り加工や肩削り加工等を行うエンドミル、及び、周面加工や端面加工等を行うバイト等である。或いは、例えばフライスカッター等の刃先交換式切削工具において、ホルダに着脱可能に装着される切削インサート(切削工具1)であってもよい。
切削工具1は、少なくとも工具基材2における被削材との接触箇所(つまり切れ刃や該切れ刃領域を含む刃部)に、表面被覆が施された表面被覆切削工具である。
図1に示すように、切削工具1は、cBN(cubic boron nitride、立方晶窒化ホウ素)焼結体である工具基材2と、工具基材2の表面2aに形成された硬質被覆体3と、を備える。
工具基材2は、cBNを20体積%以上有するcBN焼結体からなる。また工具基材2は、バインダーがセラミックス及び金属からなる。
硬質被覆体3は、付着強化膜11と硬質耐熱被膜(硬質被覆膜)12が積層されて形成されている。硬質被覆体3は、工具基材2の表面2aに、付着強化膜11と硬質耐熱被膜12が一層ずつそれぞれ成膜されて形成されている。
付着強化膜11は、工具基材2の表面2aに直接成膜されており、例えば0.5〜10μmの平均膜厚を有している。付着強化膜11は、工具基材2と硬質耐熱被膜12の間に設けられる。
付着強化膜11は、少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなる。付着強化膜11は、いわゆる金属層ではない。具体的には、付着強化膜11は、例えばAl60Ti40Nや、Ti50Al50N等からなる。
付着強化膜11は、例えば、上記以外の(Al1−XTi)N(X値は原子比)や、TiSiN、AlCrN等であってもよい。
硬質耐熱被膜(硬質被覆膜)12は、付着強化膜11の表面に成膜されており、例えば0.5〜10μmの平均膜厚を有している。硬質耐熱被膜12は、切削工具1の外部に露出して、被削材に接触する。
硬質耐熱被膜12は、少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなる。硬質耐熱被膜12は、いわゆる金属層ではない。具体的には、硬質耐熱被膜12は、例えばAl54Ti41SiNや、Ti50Al50N等からなる。
硬質耐熱被膜12は、例えば、上記以外の(Al1−Y−ZTiSi)N(Y値、Z値は原子比)、(Al1−XTi)N(X値は原子比)や、TiSiN、AlCrN等であってもよい。
硬質耐熱被膜12と付着強化膜11は、同一の材料成分からなることとしてもよい。或いは、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11は、異なる材料成分からなることとしてもよい。
付着強化膜11と硬質耐熱被膜12は、いずれも膜の内部に圧縮応力が残留するように成膜される。付着強化膜11と硬質耐熱被膜12の圧縮残留応力(内部応力)は、互いに異なる大きさに設定される。
そして、硬質耐熱被膜12の圧縮残留応力が、付着強化膜11の圧縮残留応力よりも高くなっている。具体的には、硬質耐熱被膜12の圧縮残留応力と付着強化膜11の圧縮残留応力とが、1GPa以上の応力差を有するように、付着強化膜11の圧縮残留応力に対して硬質耐熱被膜12の圧縮残留応力が高く設定される。
付着強化膜11の圧縮残留応力と硬質耐熱被膜12の圧縮残留応力は、それぞれ一定になるように設定される。
言い換えれば、付着強化膜11と硬質耐熱被膜12の圧縮残留応力は、膜厚方向(工具基材2の表面2aから硬質耐熱被膜12の表面に向かう方向)において、それぞれ変化しない。つまり、膜厚方向において、圧縮残留応力が徐々に変化することはない。
付着強化膜11と硬質耐熱被膜12は、圧縮残留応力がそれぞれ一定となるように成膜されるので、安定した膜となる。また、成膜が容易となるので、膜の品質が良好になる。
硬質被覆体3は、例えば以下の手順で工具基材2の表面2aに成膜される。
アークイオンプレーティング装置を用い、その炉内に工具基材2を配設し、炉内をヒータ等の加熱手段により500〜600℃程度の温度に加熱する。
そして、所定組成のAl−Ti合金がセットされたカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に、電流:100〜200Aの条件でアーク放電を発生させる。同時に、反応ガスとして窒素ガス(N)を炉内に導入して圧力:2.5〜10.0Paの反応雰囲気とし、工具基材2にバイアス電圧:−10〜−50Vを印加する。尚、成膜中にバイアス電圧は変化させない。
これにより、工具基材2の表面2aに、(Al,Ti)Nからなる付着強化膜11を蒸着形成する。
次いで、所定組成のAl−Ti合金がセットされたカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に、電流:100〜200Aの条件でアーク放電を発生させる。同時に、反応ガスとして窒素ガス(N)を炉内に導入して圧力:2.5〜10.0Paの反応雰囲気とし、工具基材2にバイアス電圧:−30〜−100Vを印加する。それ以外の条件については、上述の付着強化膜11の成膜条件と同じとする。尚、成膜中にバイアス電圧は変化させない。
これにより、付着強化膜11の表面に、(Al,Ti)Nからなる硬質耐熱被膜12を蒸着形成する。
尚、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の平均膜厚については、装置の稼働時間等により制御可能である。例えば、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の平均膜厚を、それぞれ1μmにすることができる。この場合、硬質被覆体3の膜厚は2μmであり、硬質耐熱被膜12の平均膜厚と付着強化膜11の平均膜厚とは、互いに略同一である。或いは、硬質耐熱被膜12の平均膜厚を2.0μmとし、付着強化膜11の平均膜厚を0.5μmとして、硬質耐熱被膜12の平均膜厚が付着強化膜11の平均膜厚よりも厚くなるようにしてもよい。
以上説明したように、切削工具1は、cBN焼結体である工具基材2と、工具基材2の表面2aに成膜される付着強化膜11と、付着強化膜11の表面に成膜される硬質耐熱被膜12と、を備える。硬質耐熱被膜12と付着強化膜11は、それぞれ、少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなる。
そして、硬質耐熱被膜12の圧縮残留応力が付着強化膜11の圧縮残留応力よりも高くなるように設定される。
このため、本実施形態の切削工具1によれば、圧縮残留応力が高く設定された硬質耐熱被膜12により、工具の耐摩耗性が向上する。また、付着強化膜11は、圧縮残留応力が低く設定されるので、工具基材2に対する硬質耐熱被膜12の付着強度を向上させる作用効果が得られる。さらに付着強化膜11は、工具基材2と硬質耐熱被膜12の間において靱性のある緩衝層として作用する。従って、硬質耐熱被膜12の剥離が顕著に防止される。
また付着強化膜11は、上述した付着強度向上の効果を奏しつつも、いわゆる金属層ではない。従って、付着強化膜11自体の耐摩耗性が確保される。また、付着強化膜11と硬質耐熱被膜12の熱膨張係数差を小さく抑えることが容易であり、硬質耐熱被膜12の剥離を防止する効果が安定的に得られる。
以上より、本実施形態によれば、金属からなる中間層を設けることなく、硬質耐熱被膜12の工具基材2に対する付着強度を向上できるとともに、硬質耐熱被膜12の品質(ひいては硬質耐熱被膜12及び付着強化膜11を含む硬質被覆体3全体の品質)を、顕著に安定化できるのである。
また本実施形態では、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11を成膜するにあたって、各膜の内部の圧縮残留応力を、それぞれ一定に設定している。つまり、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の各成膜中に、バイアス電圧等の成膜条件を変更することなく、それぞれ成膜している。このため、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の結晶成長や結晶性を均一化でき、粒径の制御を精度よく行うことが可能になる。つまり、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の品質を、それぞれ安定化できる。
従って、高性能で工具寿命の長い、品質の安定した製品(切削工具1)を、継続的に(安定的に)得ることができる。
また、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11が、同一の材料成分からなる場合には、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の成膜処理を共通化しやすくなるので、安価に効率よく成膜することが可能になる。
また、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11が、異なる材料成分からなる場合には、様々な材料を組み合わせることができるので、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の成膜の自由度が大きくなる。
尚、上述した効果は、炭素鋼を被削材に用いた場合は勿論のこと、被削材として炭素鋼以外の材料を用いた場合にも、硬質被覆体3の摩耗や剥離を確実に抑制することができ、工具寿命を延長できる。
例えば、ドリル(切削工具1)のマージン部分を硬質被覆体3により被覆した場合は、被削材として炭素鋼以外の材料を用いる際には勿論のこと、被削材に炭素鋼を用いる際においても、マージン摩耗を顕著に抑制することができ、工具寿命が延長される。
尚、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、前述の実施形態では、硬質被覆体3が、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11を一層ずつ積層して形成された構成について説明したが、これに限定されるものではない。
すなわち、硬質被覆体3が、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11を交互に複数層積層して形成されてもよい。
また、硬質被覆体3とは別個に、硬質被覆体3の表面に、硬質耐熱被膜12や付着強化膜11よりも薄い層厚の外観装飾用の有色層(化粧層)を設けてもよい。
また、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の膜厚や内部応力(圧縮残留応力)の差は、前述の実施形態で説明したものに限定されず、適宜変更することができる。
また、硬質耐熱被膜12と付着強化膜11の各材料成分についても、前述の実施形態で説明した一例に限定されるものではない。
その他、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において、前述の実施形態、変形例及び尚書き等で説明した各構成(構成要素)を組み合わせてもよく、また、構成の付加、省略、置換、その他の変更が可能である。また本発明は、前述した実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。ただし本発明はこの実施例に限定されるものではない。
[耐剥離性確認試験]
本発明の実施例1〜3として、前述した実施形態の切削工具1(バイト)を用いて鉄鋼部材(被削材)の切削を行った。また、比較例1〜5として、以下の工具を用いて、切削工具1(実施例1〜3)と同一条件で鉄鋼部材の切削を行った。
そして、硬質被覆体3に剥離が生じるまでの時間(加工時間)を比較した。
<切削工具>
工具基材2については、すべて前述の実施形態で説明したcBN焼結体である。硬質被覆体3については、下記の通りである。
[実施例1]
硬質被覆体3
付着強化膜11:Ti50Al50N (圧縮残留応力:低い)
硬質耐熱被膜12:Ti50Al50N (圧縮残留応力:高い)
[実施例2]
硬質被覆体3
付着強化膜11:Al60Ti40N (圧縮残留応力:低い)
硬質耐熱被膜12:Al54Ti41SiN (圧縮残留応力:高い)
[実施例3]
硬質被覆体3
付着強化膜11:Al70Cr30N (圧縮残留応力:低い)
硬質耐熱被膜12:Ti95SiN (圧縮残留応力:高い)
[比較例1]
硬質被覆体
付着強化膜:なし
硬質耐熱被膜:Ti50Al50N (圧縮残留応力:低い)
[比較例2]
硬質被覆体
付着強化膜:なし
硬質耐熱被膜:Ti50Al50N (圧縮残留応力:高い)
[比較例3]
硬質被覆体
付着強化膜:Ti50Al50N (圧縮残留応力:高い)
硬質耐熱被膜:Ti50Al50N (圧縮残留応力:低い)
[比較例4]
硬質被覆体
付着強化膜:なし
硬質耐熱被膜:Al54Ti41SiN (圧縮残留応力:高い)
[比較例5]
硬質被覆体
付着強化膜:なし
硬質耐熱被膜:Ti95SiN (圧縮残留応力:高い)
<切削対象・切削条件>
被削材:SCr420(硬さ:HRC60)
切削速度:150m/min
送り:0.2mm/rev
切り込み:0.2mm
切削形態:乾式
切削時間:20min
切削方法:外周旋削(丸棒の連続加工)
<結果>
図2は、実施例1〜3及び比較例1〜5における硬質被覆体3の耐剥離性確認試験の結果を示すグラフである。グラフの縦軸は、硬質被覆体3に剥離が生じるまでの時間(連続加工時間)を表す。
図2に示すように、比較例1〜5では、いずれも加工時間が10分程度になると、硬質被覆体に剥離が発生した。
これに対して、実施例1〜3では、加工時間が16分を過ぎても硬質被覆体3に剥離が発生せず、中でも実施例1、2は、加工時間が20分に達しても、硬質被覆体3に剥離は発生せず、さらに切削加工を続行することができる状態にあった。
このように、本発明の切削工具1(実施例1〜3)によれば、比較例1〜5よりも大幅に工具寿命が延長(確保)されることがわかった。
[逃げ面摩耗量確認試験A]
次に、上述した耐剥離性確認試験に用いた本発明の実施例1と同仕様の切削工具1を用意して、本試験の実施例1とし、従来の比較例としては上述した比較例3と同仕様のものを用いて、鉄鋼部材の切削を行い、逃げ面の摩耗量の推移を比較した。
<切削対象・切削条件>
被削材:SCr420(硬さ:HRC60)
切削速度:180m/min
送り:0.15mm/rev
切り込み:0.2mm
切削形態:乾式
切削時間:30min
切削方法:外周旋削(丸棒の連続加工)
<結果>
この試験の結果を、図3のグラフに示す。グラフの縦軸は、逃げ面の摩耗量を表す。グラフの横軸は、切削時間(連続加工時間)を表す。
図3に示すように、比較例3では、加工時間が増えるに従って逃げ面の摩耗量が徐々に増加し、加工時間が13分になったときに硬質被覆体が剥離して、逃げ面の摩耗量が急激に増加した。
これに対して、実施例1では、加工時間が15分を過ぎ、20分を過ぎ、さらに30分を超えても、硬質被覆体3が剥離することなく、逃げ面の摩耗量は微増する程度であった。そして、さらに切削加工を続行することができる状態にあった。
このように、本発明の切削工具1(実施例1)によれば、比較例3よりも大幅に工具寿命が延長されることがわかった。
[逃げ面摩耗量確認試験B]
次に、上述した耐剥離性確認試験に用いた本発明の実施例1と同仕様の切削工具1を用意して、本試験の実施例1とし、従来の比較例としては上述した比較例3と同仕様のものを用いて、鉄鋼部材の切削を行い、逃げ面の摩耗量の推移を比較した。
尚、この試験では、上述した逃げ面摩耗量確認試験Aとは異なり、被削材(丸棒)に8本の溝を設けて断続加工を行った。
<切削対象・切削条件>
被削材:SCM415(硬さ:HRC60)
切削速度:150m/min
送り:0.2mm/rev
切り込み:0.2mm
切削形態:乾式
切削時間:10min
切削方法:外周旋削(8本の溝を設けた丸棒の断続加工)
<結果>
この試験の結果を、図4のグラフに示す。グラフの縦軸は、逃げ面の摩耗量を表す。グラフの横軸は、切削時間(断続加工時間(つまり被削材の外周に断続的に切り込む加工を連続して行った時間))を表す。
図4に示すように、比較例3では、加工時間が増えるに従って逃げ面の摩耗量が徐々に増加し、加工時間が6分になったときに硬質被覆体が剥離して、逃げ面の摩耗量が急激に増加した。
これに対して、実施例1では、加工時間が10分を超えても、硬質被覆体3が剥離することなく、逃げ面の摩耗量は微増する程度であった。そして、さらに切削加工を続行することができる状態にあった。
このように、本発明の切削工具1(実施例1)によれば、比較例3よりも大幅に工具寿命が延長されることがわかった。
1 切削工具
2 工具基材
3 硬質被覆体
11 付着強化膜
12 硬質耐熱被膜(硬質被覆膜)

Claims (5)

  1. cBN焼結体である工具基材と、
    少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなる硬質被覆膜と、
    少なくともTi又はAlを含む炭化物、窒化物、炭窒化物及び酸化物のいずれかからなり、前記工具基材と前記硬質被覆膜の間に設けられる付着強化膜と、を備え、
    前記硬質被覆膜の圧縮残留応力が、前記付着強化膜の圧縮残留応力よりも高いことを特徴とする切削工具。
  2. 請求項1に記載の切削工具であって、
    前記硬質被覆膜は、圧縮残留応力が一定に設定されることを特徴とする切削工具。
  3. 請求項1又は2に記載の切削工具であって、
    前記付着強化膜は、圧縮残留応力が一定に設定されることを特徴とする切削工具。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削工具であって、
    前記硬質被覆膜と前記付着強化膜が、同一の材料成分からなることを特徴とする切削工具。
  5. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の切削工具であって、
    前記硬質被覆膜と前記付着強化膜が、異なる材料成分からなることを特徴とする切削工具。
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