JP2015185620A - 有機半導体膜及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
基板表面上に前記有機半導体液を付着する工程2と、
基板表面上の前記有機半導体液から3−クロロチオフェンを蒸発させる工程3と、
を含む有機半導体膜の製造方法である。
有機半導体を3−クロロチオフェンに溶かして有機半導体溶液を調製する工程1と、
基板表面に対して起立する端面を有する接触部材が戴置された基板を準備する工程2と、
工程1で得られた溶液を前記基板に供給して、前記端面と前記基板表面に同時に接触する液滴を形成する工程2と、
工程2で得られた液滴から3−クロロチオフェンを蒸発させる工程3と、
を含む有機半導体膜の製造方法である。
本発明に係る単結晶性有機半導体膜は一実施形態において、膜のクラックが抑制され、膜の欠損した領域も抑制されることから基板上での膜の被覆率が高いという特徴を有する。膜内にクラックが生じたり、膜形成領域内に欠損領域が生じたりすると被覆率が低下する。被覆率が低下すると、歩留まり低下や有機半導体デバイスの品質安定性の低下につながる。本発明によれば、有機半導体膜の被覆率を0.98以上とすることができ、好ましくは0.99以上とすることができる。ここで、被覆率というのは膜が形成されている領域から任意に抽出した104μm2の範囲を複数箇所観察したときの膜が占める割合の平均値として定義される。
また、本発明に係る単結晶性有機半導体膜は一実施形態において、単結晶性が高いため、結晶のドメイン数を極めて少なくすることができる。具体的には、1mm2当たりのドメイン数を10以下とすることができ、好ましくは5以下とすることができ、より好ましくは1とすることができる。ドメイン数が1というのはいわゆるシングルドメインの単結晶であることを指し、結晶配向が揃っていることを表している。
本発明に係る単結晶性有機半導体膜の一実施形態においては、クラックが生じたとしてもクラックの入る方向(角度)が移動度の高い結晶軸に揃っている。通常、電流はこの移動度が高い方向に沿って流すため、クラックはトランジスタの移動度又はトランジスタ特性にあまり影響を与えないという利点が得られる。具体的には、クラックの角度の標準偏差を0.5rad以下とすることができ、好ましくは0.3rad以下とすることができ、より好ましくは0.2rad以下とすることができ、更により好ましくは0.15rad以下とすることができ、例えば0.1〜0.5radとすることができる。
本発明に係る有機半導体膜は一実施形態において、結晶軸の均一性が高い単結晶膜である。具体的には、結晶軸の分布範囲を10°以内とすることができ、好ましくは8°以内とすることができ、更により好ましくは7°以内とすることができる。このような単結晶膜は、大面積の電子デバイスへ適用するに当たって有利である。
移動度は半導体デバイスの応答速度を左右する重要な特性である。有機半導体は移動度が小さいことが実用化のために解決すべき課題であったが、本発明に係る有機半導体膜は一実施形態においてアモルファスシリコンを超える優れた移動度を有することができ、好ましい実施形態においては多結晶シリコンに匹敵する移動を有することができる。具体的には、本発明に係る有機半導体膜は一実施形態において、5cm2/Vs以上の平均移動度を有することができ、好ましくは7cm2/Vs以上の平均移動度を有することができ、より好ましくは8cm2/Vs以上の平均移動度を有することができ、更により好ましくは10cm2/Vs以上の平均移動度を有することができ、例えば、8〜12cm2/Vsの平均移動度を有することができる。
Id=(W/2L)・μ・Cox(Vg-Vt)^2 ・・・ 飽和領域の場合
(式中、Id:ドレイン電流、Vg:ゲート電圧、Vt:閾値電圧、μ:移動度、Cox:酸化膜容量、W:チャンネル幅、L:チャンネル長を表す。)
から移動度μに関する式に変形し、FETのIdVgの測定値から移動度を決定する。
有機半導体膜の均質性が高いことは、高い歩留まりを実現する上で重要な特性であるところ、移動度の変動係数が小さいというのは均質性の観点から有利である。この点、本発明に係る有機半導体膜は一実施形態において、制御された移動度の変動係数を有する。具体的には、本発明に係る有機半導体膜は一実施形態において、移動度の変動係数が40以下であり、好ましくは移動度の変動係数が35以下であり、より好ましくは移動度の変動係数が30以下であり、更により好ましくは移動度の変動係数が30以下であり、例えば移動度の変動係数が20〜30である。
(移動度の変動係数)=(移動度の標準偏差)/(移動度の平均値)×100
有機半導体膜に求められる膜厚は用途によって異なるので特に制限はないが、一般にはチャネル領域以外の抵抗を低減するために薄いのが望ましい。本発明に係る有機半導体膜は、一実施形態において平均膜厚を1μm以下とすることができ、別の一実施形態においては100nm以下とすることができ、更に別の一実施形態においては50nm以下とすることができる。本発明に係る有機半導体膜は好ましい一実施形態において平均膜厚を20nm以下とすることができ、別の一実施形態においては15nm以下とすることができ、更に別の一実施形態においては10nm以下とすることができる。
本発明に係る有機半導体膜を構成する有機半導体の種類については特に制限は無いが、自己凝縮機能の高い材料であることが望ましい。自己凝縮機能とは、分子が溶媒から析出する際に、自発的に凝集して、結晶化しやすい傾向を意味する。また、溶剤である3−クロロチオフェンに対する相性との兼ね合いから、チオフェン誘導体が好ましい。チオフェン誘導体としては、ポリチオフェンやチエノアセン(含チオフェン縮合多環芳香族化合物)が挙げられ、例えば以下の化学構造で示される化合物が挙げられる。単結晶を得る観点から、有機半導体は単独で使用することが必要であり、複数種類の有機半導体を混合して使用することは望ましくない。
ポリチオフェン半導体は、オン/オフ率(オフ状態の伝導度に対するオン状態の伝導度)が高く、また、移動度も高いことからトランジスタ等の半導体デバイスに好適に適用可能である。
式(i)中、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数が4〜10のアルキル基である。アルキル基はヘテロ原子(典型的には酸素原子及び硫黄原子から選択される。)を含んでもよい。また、R1及びR2は一緒になって環を形成することもできる。自己凝集能の理由により、好ましくは、R1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数が5〜8のアルキル基である。より好ましくはR1及びR2はそれぞれ独立に水素原子又はヘキシル基である。
次の式(ii)〜(ix)で表されるチエノアセンは大気安定性が高く、また、高移動度が得られることから好ましい。
式(ii)中、R3、R4、R5及びR6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数が1〜14のアルキル基である。アルキル基はヘテロ原子(典型的には酸素原子及び硫黄原子から選択される。)を含んでもよく、アルキル基中の水素原子はハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。自己凝集能の理由により、R4=R5であることが好ましく、R3=R6であることが好ましい。溶解性の観点から、好ましくは、R4及びR5が水素原子であり、R3及びR6がそれぞれ独立に炭素数が1〜14のアルキル基であるか、又は、R3及びR6が水素原子であり、R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数が1〜14のアルキル基である。より好ましくは、R3及びR6が水素原子であり、R4及びR5がそれぞれ独立に炭素数が1〜14のアルキル基である。自己凝集能の理由により、アルキル基の好ましい炭素数は4〜12であり、より好ましくは6〜10である。
式(viii)中、R15、R16、R17及びR18はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数が1〜14のアルキル基である。アルキル基はヘテロ原子(典型的には酸素原子及び硫黄原子から選択される。)を含んでもよく、アルキル基中の水素原子はハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。自己凝集能の理由により、R15=R17であることが好ましく、R16=R18であることが好ましい。溶解性の観点から、好ましくは、R16及びR18が水素原子であり、R15及びR17がそれぞれ独立に炭素数が1〜14のアルキル基であるか、又は、R15及びR17が水素原子であり、R16及びR18がそれぞれ独立に炭素数が1〜14のアルキル基である。より好ましくは、R16及びR18が水素原子であり、R15及びR17がそれぞれ独立に炭素数が1〜14のアルキル基である。自己凝集能の理由により、アルキル基の好ましい炭素数は5〜12であり、より好ましくは8〜10である。
本発明に係る有機半導体膜の好適な製造方法について説明する。高品質な単結晶性の有機半導体膜を製造する上では、有機半導体の溶液作製ステップが極めて重要である。有機半導体の溶剤としては、これまでハロゲン系溶剤であるクロロホルム、ハロゲン系芳香族溶剤であるクロロベンゼンやo−ジクロロベンゼン、非ハロゲン系芳香族溶剤であるトルエン、テトラリンなどが用いられてきたが、有機半導体は溶剤への溶解性が悪かったり容易にゲル化したりするという問題がある。これらの溶剤であっても、有機半導体を加熱することにより溶解することはできるが、温度による溶解度の差が大きいことから急速に結晶化が起こりやすく、均質な単結晶膜を作製することが困難であった。
有機半導体としては、以下の材料を用意した。
(1A) 3,11−ジデシルジナフト[2,3−d:2’,3’−d’]ベンゾ[1,2−b:4,5−b’]ジチオフェン粉末(TM026)
(1B) 3,9−ジヘキシルジナフト[2,3−b:2’,3’−d]チオフェン粉末
(1C) 6,13−ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン粉末
溶剤としては、以下を用意した。
(2A) 3−クロロチオフェン
(2D) 2−クロロチオフェン
(2E) 3−フェノキシトルエン
(2F) 1,2−ジメトキシベンゼン
(2G) 1,2−ジメトキシベンゼン
(2H) オルトジクロロベンゼン(ODCB)
(2I) テトラリン
(2J) ブトキシベンゼン
(2K) チオアニソール
有機半導体粉末をビーカー中の溶剤に所定の濃度となるように投入し、ホットプレートで所定温度(溶解温度)まで加熱することにより完全に溶解させた。得られた有機半導体溶液をエッジキャスト法によりホットプレート上の薄膜電極付きガラス基板上に塗布し、所定温度(成膜温度)に加熱して溶媒を蒸発させ、有機半導体薄膜を形成した。有機半導体と溶剤の組み合わせ、有機半導体の溶解条件、及び有機半導体薄膜を形成する際のホットプレートの温度条件は表1に示す通りとした。
作製された薄膜を以下の方法に従って評価した。
(1)被覆率
ニコン社製ECLIPSE LV100N POL型の顕微鏡を用いてクロスニコルな状態で薄膜を観察した。薄膜の大部分が最も明るくなる角度で、10倍の対物レンズとSONY社製NEX−5R型カメラを用いてISO感度200、露光時間1.3秒の条件で撮影を行った。偏光顕微鏡写真の色情報から結晶の被覆率を先述した定義に基づき、任意の104μm2の範囲を複数箇所観察してその平均値を算出した。
具体的には、上述した偏光顕微鏡写真において、膜厚と明るさの関係が最も顕著である緑色の明るさ情報を元に算出した。被覆率の低下は主に非常に細いクラックに由来するものである。この場合厚い膜に存在するクラックは、明るく写る膜の光がクラック部分に広がるため、薄い膜の色よりも明るく写る傾向にある。このため被覆率を求めるためには、ピクセルの明るさを周辺部分と相対的に比較する必要がある。まず写真から目測で平均的なクラック間隔の平均を計算する。縦方向にクラックが入っている写真の場合、それぞれのピクセルの左右それぞれクラック間隔の半分だけ緑の明るさの平均を計算する。対象のピクセルよりも左右の平均どちらとも3以上暗ければそのピクセルがクラックであると判断した。
なお、実験番号13の場合には、被覆率が目視でも明らかに低く、上記の判断手法が該当しないので別の方法で評価した。得られた写真において緑の明るさ情報は0から255までの256段階で記録されている。そこで、実験番号13の場合には緑色の明るさが基板と同じ30より小さい部分を基板部分、それより明るい部分を結晶とした。
(2)平均膜厚
先述した偏光顕微鏡写真において最も明るくなる角度で撮影された結晶におけるピクセルの色情報や反射型顕微鏡写真における色情報と原子間力顕微鏡により測定した結晶の厚みが高い相関を示していることを確認した。この関係を利用し、結晶方向が揃っている薄膜については偏光顕微鏡写真をヒストグラム解析することによって平均膜厚を見積もった。結晶方向が不揃いである薄膜については反射型顕微鏡の写真をヒストグラム解析することにより平均膜厚を見積もった。
(3)キャリア移動度
成膜された結晶を活性層として電界効果トランジスタを多数作製し、その伝達特性から移動度を見積もった。まず薄膜上にチャネル長が 50μmとなるように設計されたシャドウマスクを用いてアクセプタ分子である2,3,5,6−tetrafluoro−7,7,8,8−tetracyanoquinodimethane 2 nmと金30 nmを電極として蒸着した。チャネル外を電流が流れることを防ぐため、波長355 nmのパルスレーザーによってチャネル幅が正確に50μmになるようにエッチングした。絶縁層としては比誘電率3.9、厚さ200nmの二酸化シリコンを用いた。Keithley社製4200−SCS型半導体パラメータアナライザを用いて、ドレイン電圧−50Vの下でゲート電圧を+10Vから−50Vの範囲でスイープし伝達特性を測定した。得られた伝達特性においてゲート電圧が−25Vから−50Vの範囲をフィッティングすることにより、飽和領域におけるキャリア移動度を先述したFETのIdVgの測定値から求めた。なお、移動度の測定値は活性層に流す電流の方向によって変動するが、ここではそれぞれ最も移動度が高くなる方向に対して電流が流れるようにチャンネルの方向を設定した。
実験番号1(溶剤:3−クロロチオフェン)及び実験番号2(溶剤:2−クロロチオフェン)については、被覆率の測定と同様の手法で薄膜を複数箇所観察し(1視野当たり104μm2の範囲)、緑の色情報を元にWeveMetrics社製Igor Proのパーティクル解析機能を用いて1mm2当たりに存在する結晶のドメイン数を測定した。連続して緑色の明るさが60よりも大きい領域を1ドメインとした。その結果、実験番号1においては、1ドメイン/mm2であったのに対し、実験番号2においては5000ドメイン/mm2であった。
実験番号1(溶剤:3−クロロチオフェン)及び実験番号2(溶剤:2−クロロチオフェン)については、被覆率の測定と同様の手法で薄膜を観察し(任意の104μm2の範囲)、各クラックの角度を測定した。図7に実験番号1で得られた偏光顕微鏡写真を、図8に実験番号2で得られた偏光顕微鏡写真をそれぞれ示す。筋状の箇所がクラックであり、Adobe社製Photoshopのものさしツールによってクラック上をなぞることによってクラックの長さおよび角度を測定した。クラックの角度をクラックの長さで重み付けて標準偏差を計算した。その結果、実験番号1においては、0.15radであったのに対し、実験番号2においては0.83radであった。なお、図7及び図8の偏光顕微鏡写真において、薄膜の色が変化している様子がうかがえるが、これは薄膜の厚みの変化を表しているのであって、クラックではない。
実験番号1(溶剤:3−クロロチオフェン)については、先述した方法に従って、Rigaku社製型式SartLabGIXD装置を用いて結晶軸の分布範囲を調べた。光源はCuKα線(1.5418Å)を用いた。測定された強度分布にガウシアン曲線をフィッティングすることにより、回折強度分布の標準偏差を得た。その結果、結晶軸の分布範囲が7°であった。
2 接触部材
2a 端面
3 液滴
4 有機半導体膜
5 原料溶液
6 溶液供給ノズル
L 光源
D 検出器
Claims (16)
- 1mm2当たりの面積中に存在するドメイン数が10以下である単結晶性有機半導体膜。
- 被覆率が0.98以上である請求項1に記載の単結晶性有機半導体膜。
- 結晶軸の分布範囲が10°以内である請求項1又は2に記載の単結晶性有機半導体膜。
- クラックの角度の標準偏差が0.5rad以下である請求項1〜3の何れか一項に記載の単結晶性有機半導体膜。
- 有機半導体がポリチオフェン又はチアノアセンである請求項1〜4の何れか一項に記載の単結晶性有機半導体膜。
- 平均移動度が5cm2/Vs以上である請求項1〜5の何れか一項に記載の単結晶性有機半導体膜。
- 移動度の変動係数が40以下である請求項1〜6の何れか一項に記載の単結晶性有機半導体膜。
- 平均膜厚が1μm以下である請求項1〜7の何れか一項に記載の単結晶性有機半導体膜。
- 有機半導体を3−クロロチオフェンに溶かして有機半導体溶液を調製する工程1と、
基板表面上に前記有機半導体液を付着する工程2と、
基板表面上の前記有機半導体液から3−クロロチオフェンを蒸発させる工程3と、
を含む有機半導体膜の製造方法。 - 有機半導体を3−クロロチオフェンに溶かして有機半導体溶液を調製する工程1と、
基板表面に対して起立する端面を有する接触部材が戴置された基板を準備する工程2と、
工程1で得られた溶液を前記基板に供給して、前記端面と前記基板表面に同時に接触する液滴を形成する工程2と、
工程2で得られた液滴から3−クロロチオフェンを蒸発させる工程3と、
を含む有機半導体膜の製造方法。 - 有機半導体がチオフェン誘導体である請求項9又は10に記載の有機半導体膜の製造方法。
- 有機半導体溶液中の有機半導体濃度が0.2質量%以下である請求項9〜11の何れか一項に記載の有機半導体膜の製造方法。
- 溶液は印刷法によって基板上に供給される請求項9〜12の何れか一項に記載の有機半導体膜の製造方法。
- 有機半導体膜が単結晶性である請求項9〜13の何れか一項に記載の有機半導体膜の製造方法。
- 基板と、その表面上に形成された請求項1〜8の何れか一項に記載の単結晶性有機半導体膜とを備えた有機半導体デバイス。
- 請求項1〜8の何れか一項に記載の単結晶性有機半導体膜を半導体チャンネルとして備えたトランジスタ。
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