JP2015183749A - 回転軸シール - Google Patents

Abstract

【課題】部品の組立作業能率が低く、部品点数も多く、かつ、製品単価が高価になる点、また、ガスケットを省略すると、シールエレメントが共回りしたり、抜け出す虞れがある点を解決し、潤滑性を有さない気体を密封するシールエレメントの寿命を延ばし、安定したシール性能を長期にわたって発揮できる回転軸シールを提供する。
【解決手段】樹脂製シールエレメント１０と金属製アウターケース４とを有する回転軸シールに於て、上記アウターケース４の内鍔部４Ｂをラジアル内方向に延伸して、該内鍔部４Ｂの内周端面２０を回転軸３に接近状態とし、縦断面Ｌ字状又はＪ字状の上記シールエレメント１０の背面１０Ａと、上記内鍔部４Ｂとの間に、グリース溜り２５を形成した回転軸シール。
【選択図】図１

Description

本発明は、回転軸シールに関する。

従来から、樹脂製のシールエレメントを有する回転軸シールは広く使用されている。即ち、金属製アウターケースと金属製インナーケースにて、樹脂製のシールエレメントを挾圧保持して組立てられた回転軸シールは公知である（例えば、特許文献１参照）。

特開２０１０−０６５７２９号公報 特開２００９−１０３２６４号公報

真空ポンプ等のポンプ、コンプレッサ等の気体（ガス）用機械に於て、高効率化及び大型化に伴って高排出（吐出）能力のものが求められている。このような気体（ガス）用機械に使用される回転軸シールは、高速回転対応性、低リーク、耐久性等に関して厳しい性能要求がある。
このような用途の回転軸シールとしては、樹脂製シールエレメントを有するもの（特許文献１，２参照）が使用される場合が多いが、長期にわたっての安定したシール性能を発揮するか否か、及び、耐久性の面で不十分であった。しかも、回転軸シールとしての構造を簡素なままで、コスト面でも低く抑えつつ、長期にわたっての安定したシール性能、耐久性を満足させることは、至難であった。

本発明に係る回転軸シールは、樹脂製シールエレメントと金属製アウターケースとを有する回転軸シールに於て、上記アウターケースの内鍔部をラジアル内方向に延伸して、該内鍔部の内周端面を回転軸に接近状態とし、縦断面Ｌ字状又はＪ字状の上記シールエレメントの背面と、上記内鍔部との間に、グリース溜りを形成したものである。

また、上記シールエレメントの上記背面と、上記内鍔部の間に、スペーサ兼用ガスケットを介在させて、上記グリース溜りの容積を増加した。
また、上記アウターケースの上記内鍔部の縦断面形状において、外周端からラジアル中間位置までを軸心直交状とし、かつ、中間位置にて上記シールエレメントから離れる方向に弯曲部をもって弯曲させて、上記弯曲部から上記内周端面側にわたって、グリース溜り容積増大用の屈曲壁部又は傾斜壁部を形成して構成されたものである。
また、上記シールエレメントの上記背面に対して、軸心直交状の円環平板型当て板を当接させ、上記シールエレメントの上記グリース溜り側への受圧変形を抑制するように構成した。

本発明によれば、構造が簡素で、かつ、製造も容易で、コストも安いままで、シールエレメントと回転軸との摺動面に対して、シールエレメント背面側からグリース溜りに充填しておいたグリースを徐々に、長期にわたって少しずつ補給でき、シールエレメントの摩耗を防止し、回転時の加熱を防ぎ、安定して優れたシール性（密封性能）を発揮できる。特に、気体（ガス）用の大型機械用回転軸シールとして、油膜が常に保持でき、気体（ガス）のシール性能が向上され、高速回転にも十分に適用可能で、耐久性にも優れる。

本発明の第１の実施の形態を示す要部縦断面図である。 本発明の第２の実施の形態を示す要部縦断面図である。 本発明の第３の実施の形態を示す要部縦断面図である。

以下、図示の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
図１，図２，図３は各々異なる本発明の実施の形態を示す。まず、共通する構成等から説明すれば、本発明に係る回転軸シールＳは、ハウジング（ボディー）１の孔部２と、回転軸３との間の円筒状空間Ｚを密封するように、上記孔部２に嵌着される。４は金属製アウターケースであり、図例では、孔部２の段付部２Ａに当接して位置決めしつつ、Ｃ型止め輪５にて抜け止め（固定）している。また、このアウターケース４は、孔部２に嵌着される円筒壁部４Ａと、ラジアル内方向に延伸状の内鍔部４Ｂとを、有する。

10は、フッ素系樹脂等の耐摩耗性樹脂から成るシールエレメントであり、図１〜図３の装着状態では、縦断面形状がＬ字状（又は、図示省略したＪ字状）であり、軸心Ｌ₃ に直交する直交平面壁部11と、回転軸３の外周面に摺動自在に接触する円筒壁部12と、両者を連続状に結ぶ弯曲壁部13と、から成る。但し、このシールエレメント10の未装着状態―――単独の部品の状態―――では、平面状の円環平板形状であったり、あるいは、図１中に２点鎖線で示すように、縦断面が緩やかに曲がったＪ字状であっても、良い。
また、６は金属製インナーケースであり、縦断面Ｌ字状として、アウターケース４の円筒壁部４Ａに内嵌状に内挿される円筒壁部６Ａと、内鍔部６Ｂと、を有する。なお、インナーケース４はＩ字状や角形ブロック状の場合もある。

そして、図１〜図３の各図に示すように、アウターケース４の内鍔部４Ｂは、ラジアル内方向Ｒ₁ に延伸されると共に、この内鍔部４Ｂの内周端縁の内周端面20を、回転軸３に接近状態とする。本発明に於て、内周端面20が回転軸３に「接近状態」とは、片側間隙寸法εは、 0.2mm以下であって、常に回転軸３に非接触を維持できる微小寸法を言う。
さらに、縦断面Ｌ字状（又はＪ字状）のシールエレメント10の背面10Ａと、（回転軸３に接近状態としてラジアル内方向Ｒ₁ に延伸した）上記内鍔部４Ｂとの間に、グリース溜り（の空間）25が、形成される。
前記背面10Ａとは、この空間Ｘの方向を向いた面を指し、具体的には、シールエレメント10の直交平面壁部11及び弯曲壁部13に於て、空間Ｘの方向を向いた面を言う。

ところで、図１について追加説明すると、アウターケース４の内鍔部４Ｂは、軸心直交平面状の平面壁から成り、しかも、縦断面でストレート状としてラジアル内方向Ｒ₁ へ延伸して、内周端面20は回転軸３（の外周面）に接近状態を保つ。15はガスケットであり、シールエレメント10の背面10Ａと、内鍔部４Ｂとの間に、このガスケット15を介在させることで、グリース溜り25の容積を増加させている。つまり、ガスケット15が無いと仮定すれば、グリース溜り25は、シールエレメント10の弯曲壁部13にのみ対応した背面10Ａと、内鍔部４Ｂとによって形成される略三角形状の小容積となってしまうのであるが、図１中に点々をもって描いたように、大きなグリース溜り25が、スペーサ兼用ガスケット15にて、確保できることが判る。

次に、図２について追加説明する。図１と相違する主たる点は、アウターケース４の内鍔部４Ｂの形状、及び、点々をもって示したグリース溜り25の形状と大容積である。即ち、アウターケース４の内鍔部４Ｂの縦断面形状において、外周端からラジアル中間位置までを軸心直交状とし、かつ、中間位置にて、シールエレメント10から離れる（ラジアル）方向に、弯曲部４Ｃをもって弯曲させ、この弯曲部４Ｃから上記内周端面20側にわたって、グリース溜り容積増大用の屈曲壁部４Ｅ（図２中の実線参照）、又は、傾斜壁部４Ｆ（図２中の二点鎖線参照）を形成している。
上記容積増大用屈曲壁部４Ｅは、具体的には、弯曲部４Ｃに連続する傾斜壁部と、その下端を軸心直交状に折り曲げた軸心直交面壁部と、から成る。なお、図２に於ても、スペーサ兼用ガスケット15も、併用している。また、図２に於て、ガスケット15を省略し、若しくは、このガスケット15を、インナーケース６とシールエレメント10との挾圧面間に介在しても良い（図示省略）。

次に、図３に示す第３の実施の形態について追加説明する。基本構成は図２と同様であり、同一符号は同様の構成である。この図３に示したように、シールエレメント10の（直交平面壁部11の）背面10Ａに対して、軸心直交状の金属製円環平板型当て板17を当接させて、シールエレメント10が、図３の２点鎖線に示したように、グリース溜り25側への受圧変形（受圧持の変形）を抑制している。
シールエレメント10が密封空間Ｙ側の圧力によって、仮に、２点鎖線で示すように変形すれば、グリース溜り25内に予め充填しておいた潤滑剤としてのグリースが、内周端面20と回転軸３との微小間隙から空間Ｘへ漏洩してしまう。このような漏洩を防止しているのが当て板17である。しかも、この当て板17は、シールエレメント10の２点鎖線にて示した変形によって、シール性も低下してしまうことを、防止する機能をも発揮する。

本発明は、以上述べたように、樹脂製シールエレメント10と金属製アウターケース４とを有する回転軸シールに於て、上記アウターケース４の内鍔部４Ｂをラジアル内方向Ｒ₁ に延伸して、該内鍔部４Ｂの内周端面20を回転軸３に接近状態とし、縦断面Ｌ字状又はＪ字状の上記シールエレメント10の背面10Ａと、上記内鍔部４Ｂとの間に、グリース溜り25を形成したので、真空ポンプやコンプレッサ等の気体（ガス）用機械に於て、高速回転に対応して、優れた密封性能（シール性）を、長期間にわたって安定して発揮する。特に、潤滑性に乏しい、ガス（気体）であっても、シールエレメント10を背面側からグリースを摺動部へ浸入させつつ、潤滑性を維持して、シールエレメント10の寿命は、著しく延びる。しかも、回転軸シールの構造は、簡素で済み、コストアップもほとんど無いという利点もある。

また、上記シールエレメント10の上記背面10Ａと、上記内鍔部４Ｂの間に、スペーサ兼用ガスケット15を介在させて、上記グリース溜り25の容積を増加したので、シールエレメント10とアウターケース４の内周面側の挾圧部位を介しての流体漏洩が防止でき、かつ、グリースの充填量も多くなって、一層、使用期間が延長可能となる。

また、上記アウターケース４の上記内鍔部４Ｂの縦断面形状において、外周端からラジアル中間位置までを軸心直交状とし、かつ、中間位置にて上記シールエレメント10から離れる方向に弯曲部４Ｃをもって弯曲させて、上記弯曲部４Ｃから上記内周端面20側にわたって、グリース溜り容積増大用の屈曲壁部４Ｅ又は傾斜壁部４Ｆを形成して構成されたので、金属製アウターケース４をプレス加工等で簡単に屈曲壁部４Ｅ又は傾斜壁部４Ｆを塑性加工可能であり、安価に、グリース溜り25の容積を増加して、グリースを一層多く貯溜でき、長期にわたって、シールエレメント10の摺動部の潤滑を確保し、耐久性が一層改善できる。

また、上記シールエレメント10の上記背面10Ａに対して、軸心直交状の円環平板型当て板17を当接させ、上記シールエレメント10の上記グリース溜り25側への受圧変形を抑制するように構成したので、シールエレメント10の受圧時の変形（図３の２点鎖線参照）を阻止できて、グリース溜り25内のグリースが外部（空間Ｘ）へ押し出されることを防止できる。これによって、さらなる長期の使用を実現できる。

３ 回転軸
４ アウターケース
４Ａ 円筒壁部
４Ｂ 内鍔部
４Ｃ 弯曲部
４Ｅ 屈曲壁部
４Ｆ 傾斜壁部
10 シールエレメント
10Ａ 背面
15 ガスケット
17 当て板
20 内周端面
25 グリース溜り（空間）
Ｒ₁ ラジアル内方向

Claims (4)

1. 樹脂製シールエレメント（10）と金属製アウターケース（４）とを有する回転軸シールに於て、上記アウターケース（４）の内鍔部（４Ｂ）をラジアル内方向（Ｒ₁ ）に延伸して、該内鍔部（４Ｂ）の内周端面（20）を回転軸（３）に接近状態とし、縦断面Ｌ字状又はＪ字状の上記シールエレメント（10）の背面（10Ａ）と、上記内鍔部（４Ｂ）との間に、グリース溜り（25）を形成したことを特徴とする回転軸シール。
2. 上記シールエレメント（10）の上記背面（10Ａ）と、上記内鍔部（４Ｂ）の間に、スペーサ兼用ガスケット（15）を介在させて、上記グリース溜り（25）の容積を増加した請求項１記載の回転軸シール。
3. 上記アウターケース（４）の上記内鍔部（４Ｂ）の縦断面形状において、外周端からラジアル中間位置までを軸心直交状とし、かつ、中間位置にて上記シールエレメント（10）から離れる方向に弯曲部（４Ｃ）をもって弯曲させて、上記弯曲部（４Ｃ）から上記内周端面（20）側にわたって、グリース溜り容積増大用の屈曲壁部（４Ｅ）又は傾斜壁部（４Ｆ）を形成して構成された請求項１又は２記載の回転軸シール。
4. 上記シールエレメント（10）の上記背面（10Ａ）に対して、軸心直交状の円環平板型当て板（17）を当接させ、上記シールエレメント（10）の上記グリース溜り（25）側への受圧変形を抑制するように構成した請求項１，２又は３記載の回転軸シール。

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