まず、実施形態に係るトナー製造装置に採用されているトナー製造方法について詳述する。このトナー製造方法では、分散液生成工程と脱溶媒工程とを経てトナー粒子を製造する。分散液生成工程では、結着樹脂及び結着樹脂前駆体のうちの少なくとも一方と、着色剤とを含むトナー組成物を有機溶剤中に溶解または分散させた油相を用意する。また、水系溶媒(水系媒体)も用意する。そして、油相と水系溶媒とを混合して乳化液を得ながら、乳化液中で樹脂粒子を造粒する。これにより、有機溶剤中に樹脂粒子を分散せしめた分散液を得る。ここまでの工程が分散液生成工程である。また、分散液生成工程で生成した分散液から有機溶剤を除去して複数の樹脂粒子(トナー粒子)を得る。これが脱溶媒工程である。実際には、脱溶媒工程の後、粉体の洗浄及び乾燥を繰り返した後、トナー粒子に外添剤を添加して両者を混合する工程や、不要な凝集物や粗大粒子等を除去する工程も実施する。
有機溶剤中に添加する結着樹脂としては、有機溶剤に少なくとも一部は溶解するものを用いるが、その酸価が2〜26[mgKOH/g]の範囲にあるものが好ましい。酸価が26[mgKOH/g]を超えると、水相(水系溶媒)への移行が起こり易くなることから、製造過程における結着樹脂のロス量を増加させてしまう。また、油相内での樹脂粒子の分散安定性を悪化させてしまうこともある。一方、酸価が2[mgKOH/g]未満になると、樹脂の極性が極端に低くなることから、着色剤を油相内で均一に分散させることが困難になる。
結着樹脂としては、ポリエステル;ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン系単独重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸系単独重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のビニル系単独重合体;エポキシ樹脂;エポキシポリオール樹脂;ポリウレタン;ポリアミド;ポリビニルブチラール;ポリアクリル酸;ロジン;変性ロジン;テルペン樹脂;脂肪族及び脂環族炭化水素樹脂;芳香族系石油樹脂等を例示することができる。これらを単独で使用しても良いし、2種類以上を併用してもよい。
製造されたトナーを電子写真方式の静電潜像現像用トナーとして用いる場合には、結着樹脂として、ポリエステル骨格を有する樹脂を用いることで、良好な定着性を実現できるようにすることが好ましい。ポリエステル骨格を有する樹脂としては、ポリエステル樹脂や、ポリエステルと他の骨格を有する樹脂とのブロックポリマーなどを例示することができるが、ポリエステル樹脂の方が樹脂粒子の分散均一性が高いことから好ましい。さらに、低温定着性を向上させる目的で、添加する樹脂の一部として、結晶性のポリエステル樹脂を用いてもよい。
ポリエステル樹脂としては、ラクトン類の開環重合物、ヒドロキシカルボン酸の縮重合物、ポリアルコールとポリカルボン酸との重縮合物などが挙げられる。設計の自由度の観点からすると、ポリオールとポリカルボン酸との重縮合物を用いることが好ましい。ポリエステル樹脂のピーク分子量としては、通常1000〜30000、好ましくは1500〜10000、さらに好ましくは2000〜8000を例示することができる。1000未満では耐熱保存性が悪化し、30000を超えると静電潜像現像用トナーとしては低温定着性が悪化するので、何れも好ましくない。
ポリエステルは、ポリアルコールとポリカルボン酸とを、テトラブトキシチタネート、ジブチルスズオキサイド等の触媒の存在下で、150〜280℃に加熱し、必要に応じて、減圧しながら、生成する水を溜去して、縮重合することによって得られる。
ポリアルコールの種類は、特に限定されるものではない。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビスフェノールA等の2価のアルコール;3価以上のアルコールを例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ポリカルボン酸の種類は、特に限定されるものではない。マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の2価のカルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の3価以上のカルボン酸などを例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
結着樹脂前駆体(プレポリマー)の種類は、特に限定されるものではない。スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系単量体;アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等の(メタ)アクリル酸系単量体;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン系単量体等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、活性水素基と反応することが可能な官能基を有するプレポリマーが好ましい。活性水素基と反応することが可能な官能基を有するプレポリマーは、活性水素基を有する化合物と反応させることができる。
活性水素基の種類は、特に限定されるものではい。水酸基(アルコール性水酸基又はフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基等を例示することができる。これらのうち、1種類だけを具備していてもよいし、2種類以上を具備していてもよい。中でも、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーと反応させてウレア変性ポリエステルが得られることから、アミノ基が好ましい。
活性水素基と反応することが可能な官能基を有するプレポリマーにおける官能基の種類は、特に限定されるものではない。イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、クロロカルボニル基等を有するポリエステル、ポリオール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができる。これらのうち、1種類だけを具備していてもよいし、2種類以上を具備していてもよい。これらの官能基を具備するプレポリマーの中でも、アミノ基を有する化合物と反応させてウレア変性ポリエステルが得られることから、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーが好ましい。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーは、ヒドロキシル基を有するポリエステルとポリイソシアネートを、必要に応じて、有機溶剤を添加して、40〜140℃で反応させることによって得られる。
有機溶剤(溶媒)としては、ポリイソシアネートに対して不活性なものであれば、特に限定されるものではない。トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類などを例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
ヒドロキシル基を有するポリエステルは、前述と同様にして、ポリアルコールとポリカルボン酸を重縮合することにより得られる。
ポリアルコールの種類は特に限定されるものではない。2価のアルコール、3価以上のアルコール、2価のアルコールと3価以上のアルコールの混合物等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、2価のアルコール、又は2価のアルコールと3価以上のアルコールの混合物が好ましい。
2価のアルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリアルキレングリコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の脂環式ジアルコール;脂環式ジアルコールに、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等の脂環式ジアルコールのアルキレンオキサイド付加物;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等のビスフェノール類;ビスフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等のビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等を例示することができる。中でも、炭素数が2〜12のアルキレングリコール、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物が好ましい。更には、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物と炭素数が2〜12のアルキレングリコールの混合物が特に好ましい。
3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の3価以上の多価脂肪族アルコール;トリスフェノール体(トリスフェノールPA(本州化学工業社製)等)、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等の3価以上のポリフェノール類;3価以上のポリフェノール類に、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドを付加したもの等の3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物等を例示することができる。
ポリカルボン酸の種類は、特に限定されるものではない。2価のカルボン酸、3価以上のカルボン酸、2価のカルボン酸と3価以上のカルボン酸の混合物等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、2価のカルボン酸、又はジカルボン酸と3価以上のカルボン酸の混合物が好ましい。
2価のカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸等のアルキレンジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸等のアルケニレンジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。中でも、炭素数が4〜20のアルケニレンジカルボン酸や、炭素数が8〜20の芳香族ジカルボン酸が好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸等の3価以上の芳香族カルボン酸等が挙げられる。中でも、炭素数が9〜20の3価以上の芳香族カルボン酸が好ましい。なお、ポリカルボン酸の代わりに、ポリカルボン酸の無水物又は低級アルキルエステルを用いることもできる。低級アルキルエステルとしては、特に限定されないが、メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステル等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有するポリエステルを合成する際のポリカルボン酸のカルボキシル基に対するポリアルコールのヒドロキシル基の当量比は、1〜2であることが好ましい。1〜1.5がさらに好ましく、1.02〜1.3が特に好ましい。
ポリイソシアネートの種類は、特に限定されるものではない。テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、オクタメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、テトラデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネート、テトラメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、ジフェニレン−4,4'−ジイソシアネート、4,4'−ジイソシアナト−3,3'−ジメチルジフェニル、3−メチルジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネート、ジフェニルエーテル−4,4'−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート;トリス(イソシアナトアルキル)イソシアヌレート、トリイソシアナトシクロアルキルイソシアヌレート等のイソシアヌレート類等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
なお、ポリイソシアネートの代わりに、ポリイソシアネートのイソシアネート基をフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタム等でブロックしたものを用いることもできる。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーを合成する際のヒドロキシル基を有するポリエステルのヒドロキシル基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比は、1〜5であることが好ましい。1.2〜4がさらに好ましく、1.5〜2.5が特に好ましい。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー中におけるポリイソシアネート由来の構成単位の含有量は、0.5〜40質量%であることが好ましく、1〜30質量%がさらに好ましく、2〜20質量%が特に好ましい。
アミノ基を有する化合物の種類は、特に限定されるものではない。ジアミン、3価以上のアミンアミノアルコール、アミノメルカプタン、アミノ酸等が挙げられる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、ジアミン、ジアミンと少量の3価以上のアミンの混合物が好ましい。
ジアミンとしては、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ジアミン;4,4'−ジアミノ−3,3'−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン等が挙げられる。3価以上のアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、等が挙げられる。アミノアルコールとしては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリン等が挙げられる。
アミノメルカプタンとしては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタン等が挙げられる。アミノ酸としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸等が挙げられる。
なお、アミノ基を有する化合物の代わりに、アミノ基を有する化合物のアミノ基をブロックしたケチミン、オキサゾリン等を用いてもよい。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物とを反応させる際のアミノ基を有する化合物のアミノ基に対するポリエステルプレポリマーのイソシアネート基の当量比は、0.5〜2であることが好ましい。2/3〜1.5がさらに好ましく、5/6〜1.2が特に好ましい。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物とを反応させる際に、ジブチルスズラウレート、ジオクチルスズラウレート等の触媒を用いてもよい。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物との反応温度は、通常、0〜150℃であり、40〜98℃が好ましい。また、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物のと反応時間は、通常、10min〜40hであり、2〜24hが好ましい。
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物との反応を停止させるためには、反応停止剤を用いることが好ましい。これにより、ウレア変性ポリエステルの分子量を制御することができる。
反応停止剤としては、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミン等のモノアミン又はこれらのアミノ基をブロックしたケチミン、オキサゾリン等が挙げられる。なお、トナー組成物は、結着樹脂として、ウレア変性ポリエステルを含んでもよい。このようなウレア変性ポリエステルは、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマーとアミノ基を有する化合物を、必要に応じて、有機溶剤を添加して、0〜140℃で反応させることにより得られる。
この場合、有機溶剤の種類は、イソシアネート基に対して不活性であれば、特に限定されるものではない。トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
着色剤(顔料又は染料)の種類は、特に限定されるものではない。カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミウムレッド、カドミウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロロオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロムバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
トナー組成物中の着色剤の含有量は、通常、1〜15質量%であり、3〜10質量%が好ましい。着色剤の含有量が1質量%未満であると、トナーの着色力が低下することがある。また、15質量%を超えると、母体粒子中で顔料の分散不良が発生し、トナーの着色力が低下したり、トナーの電気特性が低下したりすることがある。
顔料は、樹脂と複合化して、マスターバッチとしてもよい。前記樹脂の種類は、特に限定されるものではない。ポリエステル;ポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン系単独重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロロメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体等のスチレン系共重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル等のメタクリル酸系単独重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のビニル系単独重合体;エポキシ樹脂;エポキシポリオール樹脂;ポリウレタン;ポリアミド;ポリビニルブチラール;ポリアクリル酸;ロジン;変性ロジン;テルペン樹脂;脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂;芳香族系石油樹脂;塩素化パラフィン;パラフィンワックス等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
マスターバッチは、顔料と樹脂に、高せん断力を印加して混合混練することにより得られる。この際、顔料と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を添加することが好ましい。また、顔料のウエットケーキをそのまま用いることができ、乾燥する必要がないことから、フラッシング法を用いてマスターバッチを製造することが好ましい。フラッシング法は、顔料の水性ペーストを、樹脂と有機溶剤と共に混合混練し、顔料を樹脂に移行させた後、水及び有機溶剤を除去する方法である。混合混練する際には、三本ロールミル等の高せん断分散装置を用いることが好ましい。
トナー組成物は、離型剤を含んでいてもよい。離型剤の種類は、特に限定されるものではない。ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス;パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素;カルボニル基を有するワックス等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、カルボニル基を有するワックスが好ましい。
カルボニル基を有するワックスとしては、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート等のポリアルカン酸エステル;トリメリット酸トリステアリル、マレイン酸ジステアリル等のポリアルカノールエステル;エチレンジアミンジベヘニルアミド等のポリアルカン酸アミド;トリメリット酸トリステアリルアミド等のポリアルキルアミド;ジステアリルケトン等のジアルキルケトン等が挙げられる。中でも、ポリアルカン酸エステルが好ましい。
離型剤の融点は、通常、40〜160℃であり、50〜120℃が好ましく、60〜90℃がさらに好ましい。離型剤の融点が40℃未満であると、トナーの耐熱保存性が低下することがある。また、160℃を超えると、トナーを低温で定着させると、コールドオフセットが起こることがある。
離型剤の融点よりも20℃高い温度における溶融粘度は、0.005〜1[Pa・s]であることが好ましく、0.01〜0.1[Pa・s]がさらに好ましい。離型剤の融点よりも20℃高い温度における溶融粘度が1[Pa・s]を超えると、トナーの耐ホットオフセット性及び低温定着性を向上させる効果が不十分になることがある。
トナー組成物中の離型剤の含有量は、通常、0〜40質量%であり、3〜30質量%が好ましい。
油相調製用の有機溶剤について説明する。ここで言う有機溶剤は、結着樹脂及び結着樹脂前駆体のうちの少なくとも一方と、着色剤と含むトナー組成物を溶解または分散させた油相を調製する際に用いられる有機溶剤である。かかる有機溶剤の種類は、結着樹脂や結着樹脂前駆体が可溶であれば、特に限定されるものではない。トルエン、キシレン等の芳香族類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;等のエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;テトラヒドロフラン等のエーテル類等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。一般的には、沸点が150℃未満の揮発性のものであることが、後の溶剤除去が容易になる点から好ましい。なお、トナー組成物が結着樹脂前駆体を含むものである場合には、有機溶剤が結着樹脂前駆体に対して不活性である必要がある。
変性層状無機鉱物について説明する。トナー組成物の1つとして、変性層状無機鉱物を使用しても良い。変性層状無機鉱物における層状無機鉱物は、厚み数nmの層が重ね合わさってできている層状の無機鉱物である。ここで言う変性とは、層状無機鉱物の層間に存在するイオンに有機物イオンを導入することを意味する。このことは、広義には、インターカレーションと呼ばれている。
層状無機鉱物としては、例えばスメクタイト族(モンモリロナイト、サポナイト等)、カオリン族(カオリナイト等)、マガディアイト、カネマイト、などが挙げられる。変性層状無機鉱物は、その変性された層状構造により親水性が高い。このため、層状無機鉱物を変性することなしに水系媒体中に分散して造粒するトナーに用いると、水系媒体中に層状無機鉱物が移行し、トナーを異形化することができない。但し、変性することにより、疎水性が高くなって、造粒時に容易に異形化し、分散して微細化し、電荷調整機能を十分に発揮する。このように、変性層状無機鉱物は、適度な疎水性を持つことから、液滴界面に存在し易くなるので、表面偏在して良好な帯電性を発揮することができる。 変性層状無機鉱物は、トナー粒子の表面部分に特に多く存在し、電荷調節機能を果たすとともに、低温定着性の向上にも貢献する。
変性層状無機鉱物としては、スメクタイト系の基本結晶構造を持つものを有機カチオンで変性させたものが好ましい。また、層状無機鉱物の2価金属の一部を3価金属に置換することにより、金属アニオンを導入することができる。しかし、金属アニオンを導入すると親水性が高いため、金属アニオンの少なくとも一部を有機アニオンで変性した層状無機化合物が好ましい。
層状無機鉱物が有するイオンの少なくとも一部を有機物イオンで変性させた層状無機鉱物の、有機物イオン変性剤としては、例えば第4級アルキルアンモニウム塩、フォスフォニウム塩やイミダゾリウム塩、などが挙げられる。これらの中でも、第4級アルキルアンモニウム塩が特に好ましい。第4級アルキルアンモニウムとしては、例えばトリメチルステアリルアンモニウム、ジメチルステアリルベンジルアンモニウム、ジメチルオクタデシルアンモニウム、オレイルビス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、などが挙げられる。
有機物イオン変性剤として、分岐、非分岐又は環状アルキル(C1?C44)、アルケニル(C1?C22)、アルコキシ(C8?C32)、ヒドロキシアルキル(C2?C22)、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を有する硫酸塩、スルフォン酸塩、カルボン酸塩、又はリン酸塩などを用いてもよい。これらの中でも、エチレンオキサイド骨格を持ったカルボン酸が特に好ましい。
層状無機鉱物を少なくとも一部を有機物イオン変性剤で変性させて適度な疎水性を発揮させることで、トナー材料を含む油相に非ニュートニアン粘性を発揮させて、トナーを異形化させることができる。このとき、変性層状無機鉱物を、分散液中に固形分で0.1質量%〜5質量%含有させることがより好ましい。含有量が、0.1質量%未満であると、トナー帯電性能への効果が低下することがある。また、5質量%を超えると、定着性能が悪化することがある。
変性層状無機鉱物の種類は、特に制限されるものではなく、目的に応じて適宜選択される。例えばモンモリロナイト、ベントナイト、ヘクトライト、アタパルジャイト、セピオライト、又はこれらの混合物、などを例示することができる。これらの中でも、トナー特性に影響を与えず、容易に粘度調整ができ、添加量を少量にできることから、有機変性モンモリロナイト又はベントナイトが好ましい。
一部を有機カチオンで変性させた層状無機鉱物の市販品としては、例えばBentone 3、Bentone 38、Bentone38V(以上、レオックス社製);チクソゲルVP(Unitedcatalyst社製);クレイトン34、クレイトン40、クレイトンXL(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18ベントナイト;Bentone27(レオックス社製);チクソゲルLG(Unitedcatalyst社製);クレイトンAF、クレイトンAPA(以上、サザンクレイ社製)等のステアラルコニウムベントナイト;クレイトンHT、クレイトンPS(以上、サザンクレイ社製)等のクオタニウム18/ベンザルコニウムベントナイト、などが挙げられる。これらの中でも、クレイトンAF、クレイトンAPAが特に好ましい。
一部を有機アニオンで変性した層状無機鉱物としては、例えばDHT−4A(協和化学工業株式会社製)を「R1(OR2)nOSO3M」という化学式で表される有機アニオンで変性させたものが特に好ましい。前記化学式で表される有機アニオンの市販品としては、例えばハイテノール330T(第一工業製薬株式会社製)などが挙げられる。なお、前記化学式において、R1は、炭素数13を有するアルキル基を示している。また、R2は、炭素数2〜6を具備するアルキレン基を示している。また、nは、2〜10の整数を示し、Mは、1価の金属元素を示している。
トナー組成物として使用される荷電制御剤について説明する。添加される帯電制御剤の種類は、特に限定されるものではない。ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、リンの単体又は化合物、タングステンの単体又は化合物、フッ素系界面活性剤、サリチル酸金属塩、サリチル酸誘導体の金属塩、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、スルホン酸基、カルボキシル基、4級アンモニウム塩基等の官能基を有する高分子化合物等を例示することができる。
帯電制御剤の市販品としては、ニグロシン系染料のボントロン03、4級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、4級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、4級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、4級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLR−147(日本カーリット社製)等が挙げられる。
帯電制御剤は、粒子の表面に均一に固定させることを考慮すると、フルオロ基を有する4級アンモニウム塩が好ましい。フルオロ基を有する4級アンモニウム塩は、カルボキシル基に対する親和性に優れることに加え、アルコールを含む水に溶解し易い。なお、フルオロ基を有する4級アンモニウム塩を、含金属アゾ染料と併用してもよい。
フルオロ基を有する4級アンモニウム塩の種類は、特に限定されるものではない。次の化学式を具備するものを例示することができる。なお、この化学式において、Rfは、パーフルオロアルキル基を示している。また、Xは、2価の有機基を示している。また、R1〜R4は、それぞれ独立した、水素原子、フルオロ基又は炭化水素基を示している。また、Y−は、対イオンを示している。また、mは、1以上の整数を示している。
Rfの炭素数は、通常、3〜60であり、3〜30が好ましく、3〜15がさらに好ましい。Rfの種類は、特に限定されるものではない。CF3(CF2)5−、CF3(CF2)6−、CF3(CF2)7−、CF3(CF2)8−、CF3(CF2)9−、CF3(CF2)10−、CF3(CF2)11−、CF3(CF2)12−、CF3(CF2)13−、CF3(CF2)14−、CF3(CF2)15−、CF3(CF2)16−、CF3(CF2)17−、(CF3)2CF(CF2)6−等を例示することができる。
Y−の種類は、特に限定されるものではない。ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、リン酸イオン、チオシアン酸イオン、有機酸イオン等を例示することができる。中でも、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等のハロゲン化物イオンが好ましい。
Xの種類は、特に限定されるものではない。−SO2−、−CO−、−(CH2)x−、−SO2N(R5)−(CH2)x−、−(CH2)x−CH(OH)−(CH2)x−等を例示することができる。ここで、xは、1〜6の整数である。また、R5は、炭素数が1〜10のアルキル基である。列記したxの中でも、−SO2−、−CO−、−(CH2)2−、−SO2N(C2H5)−(CH2)2−、又は−CH2CH(OH)CH2−が好ましく、−SO2−又は−CO−が特に好ましい。
mは、1〜20であることが好ましく、1〜10がさらに好ましい。
R1〜R4における炭化水素基の種類は、特に限定されるものではない。アルキル基、アルケニル基、アリール基等などを例示することができる。これらは、置換基で置換されていてもよい。
アルキル基は、炭素数が1〜10であるものが好ましい。この場合、アルキル基の種類は、特に限定されるものではない。メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、n−デシル基、イソデシル基等を例示することができる。
アルケニル基は、炭素数が2〜10であるものが好ましい。この場合、アルケニル基の種類は、特に限定されるものではない。ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等を例示することができる。
アリール基は、炭素数が6〜24であるものが好ましい。この場合、アリール基の種類は、特に限定されるものではない。フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、スチリル基、メシチル基、シンナミル基、フェネチル基、ベンズヒドリル基等を例示することができる。
荷電制御剤の使用量は、結着樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、及び分散方法を考慮して決定されることが望ましい。このため、一義的に決定される数値ではないが、一例として、結着樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲を挙げることができる。特に0.2〜5重量部の範囲が好ましい。10重量部を越える場合には、トナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。
分散液生成工程では、結着樹脂及び結着樹脂前駆体の少なくとも何れか一方と、着色剤とを含むトナー組成物を溶解または分散させた油相と、水系溶媒とを混合して得られる乳化液で樹脂粒子を造粒することで、樹脂粒子を分散させた分散液を得る。この際、樹脂粒子の体積平均粒径としては、3〜8[μm]を例示することができる。3〜7[μm]がより好ましく、4〜7[μm]が特に好ましい。
造粒した樹脂粒子の個数平均粒径に対する体積平均粒径の比は、通常、1.00〜1.20であり、1.00〜1.17が好ましく、1.00〜1.15が特に好ましい。これにより、フルカラー複写機等を用いて、画像を形成する場合に、飛散やカブリの発生を抑制することができ、長期的に現像性が良好で高画質な画像を形成することができる。
油相と混合する水系溶媒(水系媒体)は、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。水と混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
分散液生成工程においては、分散剤 (界面活性剤)を使用することも可能である。この場合、分散剤の種類は、特に限定されるものではない。アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステル等の陰イオン性界面活性剤;アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリン等のアミン塩型の陽イオン性界面活性剤;アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウム等の4級アンモニウム塩型の陽イオン性界面活性剤;脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体等の非イオン性界面活性剤;アラニン、ドデシルビス(アミノエチル)グリシン、ビス(オクチルアミノエチル)グリシン、N−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムベタイン等の両性界面活性剤を例示することができる。なお、分散剤として、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いると、分散剤の添加量を減少させることができる。
フルオロアルキル基を有する陰イオン性界面活性剤の種類は、特に限定されるものではない。炭素数が2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステル等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
フルオロアルキル基を有する陰イオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102、(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(DIC社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F−150(ネオス社製)等が挙げられる。
フルオロアルキル基を有する陽イオン性界面活性剤の種類は、特に限定されるものではない。フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級又は3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩等の脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
フルオロアルキル基を有する陽イオン性界面活性剤の市販品としては、サーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキン工業社製)、メガファックF−150、F−824(DIC社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)等が挙げられる。
分散剤として、樹脂微粒子及び無機粒子のうち、少なくとも何れか一方を使用してもよい。これにより、油滴同士の合一が抑制されるため、結着樹脂又は結着樹脂前駆体を含むトナー組成物を有機溶剤中に溶解又は分散させた有機相分散液を均一に分散させることができる。
分散液生成工程において使用される樹脂微粒子からなる分散剤の材料の種類は、特に限定されるものではない。ビニル系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート等を例示することができる。これらを単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。中でも、微細な球状の樹脂微粒子の水性分散液が得られ易いことから、ビニル系樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステルが好ましい。
ビニル系樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等が挙げられる。
樹脂微粒子は、表面に帯電制御剤を固定させるために、カルボキシル基を有する樹脂を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を有する樹脂を含むことがさらに好ましい。
分散液生成工程において使用される無機粒子からなる分散剤を構成する材料は、特に限定されるものではない。シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等を例示することができる。中でも、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、コロイド状酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイトが好ましい。水中でリン酸ナトリウムと塩化カルシウムを塩基性条件下で反応させて合成したヒドロキシアパタイトが特に好ましい。
分散液生成工程においては、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。 例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸β−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸3−クロロ2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの窒素原子、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフエニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などを分散安定剤として使用することができる。なお、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いる場合には、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、微粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。分散剤を使用する場合には、その分散剤がトナー粒子表面に残存したままとすることもできるが、伸長反応及び架橋反応のうちの少なくとも一方の後、洗浄除去する方がトナーの帯電面から好ましい。
分散液生成工程においては、後述する水溶性ポリマーの添加によって分散液滴の更なる安定化を図っても良い。水溶性ポリマーとしては、セルロース系化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびそれらのケン化物など)、ゼラチン、デンプン、デキストリン、アラビアゴム、キチン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミド、アクリル酸(塩)含有ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリル酸カリウム、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸の水酸化ナトリウム部分中和物、アクリル酸ナトリウム−アクリル酸エステル共重合体)、スチレン−無水マレイン酸共重合体の水酸化ナトリウム(部分)中和物、水溶性ポリウレタン(ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトンジオール等とポリイソシアネートの反応生成物等)などが挙げられる。
脱溶媒工程によって得られたトナー粒子には、流動性、現像性、帯電性などを補助する狙いで外添剤を添加してもよい。外添剤としては、無機微粒子を好ましく用いることができる。この無機微粒子の一次粒子径は、5nm〜2μmであることが好ましく、特に、5nm〜500nmであることが好ましい。 また、BET法による比表面積は、20〜500[m2/g]であることが好ましい。この無機微粒子の使用割合は、トナーの0.01〜5重量%であることが好ましく、特に、0.01〜2.0重量%であることが好ましい。
前述した無機微粒子の具体例としては、例えばシリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ペンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。 この他、高分子系微粒子、たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
このような無機微粒子については、表面処理の施工によって疎水性を上げることで、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することが可能になる。 表面処理で用いる表面処理剤としては、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどを例示することができる。
画像形成装置の感光体や中間転写体の表面に残存する転写残トナーを除去する際のクリーニング性を向上させる狙いで、トナーに次のような物質を添加してもよい。ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などである。ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01〜1μmであるものが好ましい。
実施形態に係るトナー製造装置によって製造されたトナーは、トナーとキャリアとを含有する二成分系現像剤として用いることができる。この場合には、二成分系現像剤中におけるキャリアとトナーとの含有比は、キャリア100重量部に対してトナー1〜10重量部であることが好ましい。キャリアとして用いる磁性キャリアとしては、粒子径20?200μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど、従来から公知のものを例示することができる。
磁性キャリアの表面を被覆する被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。 また、ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂及びスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂及びポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、及びシリコーン樹脂等でもよい。また、必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化錫、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものであることが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。
実施形態に係るトナー製造装置で製造されたトナーは、キャリアと混合しない一成分系現像剤として使用することもできる。また、プラスチックボトルタイプ、内側に撹拌バネ内蔵タイプ及びプロセスカートリッジのような従来公知のトナー用容器に収納され、その容器を画像形成装置に搭載して用いられる。
分散液生成工程についてより詳しく説明する。水系溶媒中において、例えばイソシアネート基を有する結着樹脂前駆体(プレポリマー)と、その他のトナー組成物と、揮発性有機溶剤とを含有する油相中の分散成分を、アミン類と反応させることで、樹脂粒子を造粒することが可能である。また、油相中にあらかじめ製造しておいた変性ポリエステルを存在させておき、それをアミン類と反応させてもよい。有機溶剤中に、結着樹脂及び結着樹脂前駆体の少なくとも一方と、着色剤などとを溶解あるいは分散させた油相を作製する方法としては、従来から周知の方法を採用することができる。基本的には、撹拌している有機溶剤中に樹脂、着色剤などを徐々に添加していき、溶解あるいは分散させればよい。但し、着色剤として顔料を用いる場合や、離型剤や帯電制御剤などのなかで有機溶剤に溶解し難いようなものを添加する場合には、有機溶剤への添加に先立って粒子を小さくしておくことが好ましい。
着色剤のマスターバッチ化もそのための方法の一つであり、同様の方法を離型剤や帯電制御剤に展開することもできる。また、別の方法として、有機溶剤中で、必要に応じて分散助剤を添加し、着色剤、離型剤、帯電制御剤を湿式で分散を行いウエットマスターを得ることも可能である。また、有機溶剤の沸点未満で溶融するようなものを分散するのであれば、次のような方法を採用することも可能である。即ち、有機溶剤中で、必要に応じて分散助剤を添加し、分散質とともに攪拌しながら加熱を行い一旦溶解させた後、攪拌もしくはせん断しながら冷却を行うことによって晶析を行い、分散質の微結晶を生成させる方法である。
有機溶媒中に分散せしめられた着色剤、離型剤、帯電制御剤を、有機溶剤中に樹脂とともに溶解あるいは分散させた後に、さらに分散させてもよい。分散に際しては、通常の攪拌による混合機、より好ましくは高速回転体とステータを有すホモジナイザー、高圧ホモジナイザーの他ボールミル、ビーズミル、サンドミルといったメディアを用いた分散機など公知のものを用いることができる。また、着色剤、離型剤、荷電制御剤などの他のトナー原料については、必ずしも、水系媒体中で粒子を形成する時に混合しておく必要はなく、粒子を形成せしめた後に、添加してもよい。例えば、着色剤を含まない粒子を形成した後、公知の染着の方法で着色剤を添加することもできる。
分散液生成工程において、少なくとも界面活性剤を有する水系媒体と、前述のようにして得られた油相とを混合して乳化液を得ながら、樹脂粒子を造粒して分散液を生成するにあたって使用される機器は、特定のものに限定されるものではない。低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の機器を使用することが可能である。樹脂粒子の粒径を2〜20[μm]にするには、高速せん断式が好ましい。
乳化液を得る際に水系溶媒と油相とを混合する装置は、回転羽根によって両者を混合するものが好ましい。回転羽根によって両者を混合する装置としては、乳化機や、分散機として一般に市販されているものなど、公知のものを使用することができる。例えば、ウルトラタラックス(IKA社製)、ポリトロン(キネマティカ社製)、TKオートホモミクサー(特殊機化工業(株)製)、エバラマイルダー(荏原製作所(株)製)、TKパイプラインホモミクサー、TKホモミックラインフロー(特殊機化工業(株)製)、コロイドミル(神鋼パンテック社製)、スラッシャー、トリゴナル湿式微粉砕機(三井三池化工機(株)製)、キャビトロン(ユーロテック社製)、ファインフローミル(太平洋機工(株)製)等の連続式乳化機、クレアミックス(エムテクニック社製)、フィルミックス(特殊機化工業(株)製)等のバッチまたは連続両用乳化機等が挙げられる。
高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜15000rpmである。分散時間に特に制限はないが、バッチ方式の場合には、通常1〜5min程度である。5minを超えて分散を行うと、望ましくない小径の粒子が残存してしまったり、分散が過分散状態になって系が不安定になり凝集体や粗大粒子が発生したりすることがあるので好ましくない。逆に1minより短いと粒子の均一性が悪く、所望の分布を得ることが難しい。分散時の温度は、通常0〜40℃、好ましくは10〜30℃である。40℃を超えると分子運動が活発になることから分散安定性が低下し凝集体や粗大粒子が発生し易くなるので好ましくない。また、0℃未満になると分散体の粘度が高くなり、分散に必要なせん断エネルギーが増大することから、製造効率が低下する。
分散液生成工程によって生成された分散液は、脱溶媒工程に送られる。脱溶媒工程では、減圧環境下で分散液中の有機溶剤の蒸発を促すことで、分散液から殆どの有機溶媒を除去する。これにより、トナー前駆粉体が得られる。得られたトナー前駆粉体については、気流乾燥機や循環乾燥機、減圧乾燥機、振動流動乾燥機などにより乾燥する。これにより、トナー粉末が得られる。乾燥されたトナー粉体は最終的に水分が1%未満になることが好ましい。この際、遠心分離などでトナーの微粒子成分を取り除いても良いし、また、乾燥後に必要に応じて公知の分級機を用いて所望の粒径分布にすることができる。
トナー粉体には、既に述べたように、外添剤を添加してもよい。この場合、トナー粉体と外添剤との混合粉体に機械的衝撃力を与えることによって表面で固定化、融合化させ、得られる複合体粒子の表面からの外添剤の脱離を防止することができる。具体的手段としては、高速で回転する羽根によって混合物に衝撃力を加える方法、高速気流中に混合物を投入し、加速させ、粒子同士または複合化した粒子を適当な衝突板に衝突させる方法などがある。装置としては、ノビルタ(ホソカワミクロン社製)、メテオレインボー(日本ニューマチック社製)、ハイブリダイゼイションシステム(奈良機械製作所社製)、などが挙げられる。
次に、回分式でトナーを製造する従来のトナー製造装置について説明する。
図1は、かかるトナー製造装置における脱溶媒装置350を示す概略構成図である。同図において、脱溶媒装置350は、撹拌タンク351、攪拌機353、気液分離器355、吸引ポンプ356、凝縮回収槽357、凝縮液移送ポンプ358などを具備している。撹拌タンク351は、配管を通じて図示しない貯蔵タンクに接続されている。この貯蔵タンクには、図示しない分散液生成装置によって生成された、樹脂粒子と有機溶剤とを含有する分散液が大量に貯蔵されている。そして、貯蔵タンクに貯蔵されている分散液は、図中矢印Cで示されるように、少しずつ脱溶媒装置350の撹拌タンク351に移送される。
脱溶媒装置350の攪拌機353は、撹拌シャフトの先端に固定された回転羽根の回転により、撹拌タンク351内の分散液を撹拌するものである。撹拌タンク351の上壁には、移送管が接続されており、その移送管の下端には気液分離器355が接続されている。また、気液分離器355には、真空ポンプからなる吸引ポンプ356や、凝縮回収槽357が接続されている。
吸引ポンプ356は、気液分離器355を介して、撹拌タンク351内の分散液や、分散液から蒸発した有機溶剤を強く吸引する。この吸引により、撹拌タンク351内の分散液の圧力は、効率良い脱溶媒を可能にするように大気圧よりも低い値まで減じられる。これにより、分散液からの有機溶剤の蒸発が促される。吸引ポンプ356の吸引力によって気液分離器355内に移送された分散液の有機溶剤ガスは、気液分離器355内で、液化して回収される。撹拌タンク351内の分散液は、有機溶剤ガスの回収によって凝縮する。
凝縮回収槽357内で凝縮した分散液は、凝縮液移送ポンプ358の駆動力により、図示しない洗浄・乾燥装置に移送される。
図示しない貯蔵タンクから脱溶媒装置350の撹拌タンク351への分散液の移送は、貯蔵タンクと撹拌タンク351との圧力差を利用して行われる。具体的には、上述したように、吸引ポンプ356が作動すると、撹拌タンク351内の分散液の圧力は負圧になる。これに対し、図示しない貯蔵タンク内では、分散液の圧力がほぼ大気圧に維持されている。負圧と大気圧との差により、貯蔵タンク内の分散液が撹拌タンク351に向けて吸引される。この吸引力によって分散液が移送されるのである。
回分式では、図示しない分散液生成装置における分散液の生成と、脱溶媒装置350における分散液からの脱溶媒処理とを、それぞれ独立して個別に管理することができるので、維持管理が容易であるというメリットがある。
なお、撹拌タンク351には、必要に応じて、図中矢印Dで示されるように純水が送り込まれたり、図中矢印Eで示されるように消泡剤が送り込まれたりする。純水や消泡剤の送り込みについては、それぞれ専用の供給ポンプの駆動によって行われる。それらの供給ポンプは密閉式のものであることから、それら供給ポンプが停止している状態では、ポンプよりも上流側に存在する純水や消泡剤が撹拌タンク351内の負圧によって吸われることはない。
次に、連続式でトナーを製造する従来のトナー製造装置について説明する。
図2は、かかるトナー製造装置における脱溶媒装置450を示す概略構成図である。同図において、脱溶媒装置450は、撹拌タンク451、攪拌機453、気液分離器455、吸引ポンプ456、凝縮回収槽457、凝縮液移送ポンプ458などを具備している。なお、撹拌タンク451、攪拌機453、気液分離器455、吸引ポンプ456、凝縮回収槽457の役割はそれぞれ、図1の脱溶媒装置350における同じ名称のものと同様である。
脱溶媒装置450よりも上流側には、圧送ポンプ410と、減圧弁たる背圧弁411とが配設されている。圧送ポンプ410は、図示しない分散液生成装置に接続されている。図示しない分散液生成装置では、分散液の前駆体である乳化液中で樹脂粒子を効率良く造粒できるように、内部の圧力が大気圧よりも高い高圧に維持されている。
圧送ポンプ410が作動すると、分散液生成装置内の分散液が図中矢印Cで示されるように吸引されて、背圧弁11に向けて送られる。圧送ポンプ410から送り出された分散液は、圧送ポンプ410の吐出口と背圧弁411とを結ぶ配管の中で、分散液生成装置内よりも少し高い圧力まで加圧される。一方、脱溶媒装置450の撹拌タンク451内では、上述のように、分散液の圧力が負圧に維持される。
背圧弁411は、圧送ポンプ410から送り出された分散液の圧力が所定の閾値を超えると、自動で弁を開く一方で、その圧力が閾値まで下がると、自動で弁を閉じる。これにより、圧送ポンプ410と背圧弁411との間における分散液の圧力が分散液生成装置内の圧力よりも少し高い値に維持される。また、分散液生成装置内では、圧送ポンプ410の駆動の有無にかかわらず、分散液が高圧に維持される。
連続式においては、分散液生成装置と図示の脱溶媒装置450との間に貯蔵タンクを設ける必要がないことから、省スペース化を図ることができる。なお、撹拌タンク451には、必要に応じて、図中矢印Dで示されるように純水が送り込まれたり、図中矢印Eで示されるように消泡剤が送り込まれたりする。純水や消泡剤の送り込みについては、それぞれ専用の供給ポンプの駆動によって行われる。
本発明者らは、図1に示される脱溶媒装置350を備える回分式のトナー製造装置や、図2に示される脱溶媒装置450を備える連続式のトナー製造装置を試作して、それぞれを用いてトナーを製造した。そして、それぞれのトナーにおけるトナー粒子の粒径分布を測定したところ、連続方式の方が、トナーの粒径分布をよりシャープにし得ることを見出した。回分方式では、貯蔵タンク内における分散液の貯蔵時間が長くなるにつれて、樹脂粒子の平均粒径が大きくなり、それに伴って粒径分布のばらつきも大きくなっていくことが解った。
また、本発明者らは、連続方式において粒径分布の更なる狭小化を図るべく、連続方式のトナー製造装置を用いて様々な実験を行った。すると、連続方式においては、分散液生成装置内における分散液と、脱溶媒装置450内における分散液との圧力差が、トナーの粒径分布の狭小化を阻害していることがわかった。具体的には、図2において、圧送ポンプ410と背圧弁411との間では、分散液の圧力が高圧に維持されている。これに対し、背圧弁411よりも下流側では、分散液の圧力が負圧に維持されている。背圧弁411が開くと、圧送ポンプ4100と背圧弁411との間で高圧に維持されていた分散液が脱溶媒装置450の撹拌タンク451内の負圧に勢い良く引かれて、背圧弁411と撹拌タンク451との間の配管内を非常に高速で移動する。この際、分散液中のトナー粒子が配管内壁に勢い良く接触することで、細かく粉砕されたり、逆に、複数のトナー粒子が同時に配管内壁に擦られて1つの粒子に一体化したりする。これにより、トナーの粒径分布を拡大させてしまうことが解った。
次に、実施形態に係るトナー製造装置について説明する。
図3は、実施形態に係るトナー製造装置を示す構成図である。同図において、トナー製造装置は、これまで説明してきた分散液生成工程を実施して分散液を生成する分散液生成装置1、圧送ポンプ10、背圧弁11、貯留設備20、上述した脱溶媒工程を実施する脱溶媒装置50、図示しない制御装置などを備えている。
分散液生成装置1は、上述した油相及び水系溶媒の混合によって得られる乳化液や分散液を一時的に貯留するための混合液槽を有している。この混合液槽内で油相及び水系溶媒を混合して乳化液を得たり、得られた乳化液中で造粒を図って分散液を得たりする。混合液槽は密閉された容器である。この混合液槽に対して、油相や水系溶媒が圧送されることで、混合液槽中の乳化液や分散液の圧力が大気圧よりも高い値まで加圧される。つまり、実施形態に係るトナー製造装置では、混合液槽に対して油相を圧送する油相圧送ポンプや、混合液槽に対して水系溶媒を圧送する水系溶媒圧送ポンプが、分散液生成装置1内の分散液を大気圧よりも高い圧力まで加圧する加圧手段として機能している。
分散液生成装置1の混合液槽の底には、圧送ポンプ10と背圧弁11とが接続されている。圧送ポンプ10は、混合液槽内の分散液を後述する貯留設備20に向けて圧送するポンプである。圧送ポンプ10から送り出された分散液は、圧送ポンプ10の吐出口と背圧弁11とを結ぶ配管の中で、混合液槽内の圧力よりも少し高い圧力まで加圧される。なお、以下、分散液生成装置1の混合液槽内における分散液の圧力を生成時圧力PAという。また、前記配管内における分散液の圧力を圧送出口圧力PBという。
背圧弁11は、圧送出口圧力PBが所定の閾値を超えると、自動で弁を開く一方で、圧送出口圧力PBがその閾値まで下がると、自動で弁を閉じる。これにより、圧送出口圧力PBが、生成時圧力PAよりも少し高い値〜前記閾値の範囲内に維持される。
なお、実施形態に係るトナー製造装置においては、分散液生成装置1の混合液槽の底に直接接続された配管から、圧送ポンプ10と、背圧弁11と、後述する貯留設備20とを経て、後述する脱溶媒装置50に至るまでの経路が、送液経路となっている。この送液経路において、背圧弁11を通過した分散液は、配管を経由した後に貯留設備20に送られる。
貯留設備20は、貯留槽21、ヒーター22、温度センサー23、圧力調整器24、純水タンク25、純水供給ポンプ26、消泡剤タンク27、消泡剤供給ポンプ28、供給停止弁29、開度調整弁30、液位センサー31などを有している。上述した背圧弁11を通過した分散液は、貯留槽21内に一時的に貯留される。貯留槽21の外周面には、ヒーター22が装着されている。このヒーター22は、貯留槽21の壁を介して、貯留槽21内の分散液を加熱することができる。
温度センサー23は、貯留槽21内に貯留されている分散液の温度を検知して、その結果を図示しない制御装置に送信するものである。また、液位センサー31は、貯留槽21内に貯留されている分散液の液位を検知して、その結果を図示しない制御装置に送信するものである。
圧力調整器24は、貯留槽21の上壁に接続された流入弁24aと、貯留槽21の上壁に接続された流出弁24bとを具備している。流入弁24aの弁構造は、貯留槽21の外部から貯留槽21の内部に向けての流れだけを許容する逆止弁構造になっている。そして、流入弁24aは、貯留槽21内の圧力が所定の下限圧力を下回るか、あるいは下限圧力以下になったときだけ、弁を自動で開く。流入弁24aの入口側には、N2ガス等の不活性ガスを貯留する図示しないガスタンクが接続されている。このため、貯留槽21内の圧力が前記下限圧力を下回るか、あるいは前記下限圧力以下になって流入弁24aが作動すると、ガスタンク内の不活性ガスが貯留槽21内に流入して貯留槽21内の圧力を増加させる。この増加によって貯留槽21内の圧力が下限値まで、あるいは下限値未満まで上昇すると、流入弁24aが弁を閉じる。
圧力調整器24bの流出弁24bの弁構造は、貯留槽21の内部から外部に向けての流れだけを許容する逆止弁構造になっている。そして、流出弁24bは、貯留槽21内の圧力が所定の上限圧力を上回るか、あるいは上限圧力以上になったときだけ、弁を自動で開く。これにより、貯留槽21内の上部に溜まっているガスが貯留槽21の外部に排出されることで、貯留槽21内の圧力が低下する。そして、貯留槽21内の圧力が前記上限圧力まで、あるいは前記上限圧力超まで上昇すると、流出弁24bが弁を閉じる。
このように流入弁24aや流出弁24bが作動することで、貯留槽21内の圧力は、所定の範囲内に維持される。なお、以下、貯留槽21内の分散液やガスの圧力を、貯留槽内圧力PCという。
純水供給ポンプ26は、純水タンク25内に貯留されている純水を貯留槽21内に供給するものである。また、消泡剤供給ポンプ28は、消泡剤タンク27内に貯留されている消泡剤を貯留槽21内に供給するものである。
貯留槽21の底には、排出管が接続されており、この排出管には供給停止弁29が接続されている。供給停止弁29は、モーター弁からなり、モーターの駆動力によって弁を開閉する。なお、モーター弁に代えて、電磁弁を供給停止弁29として用いてもよい。
貯留槽21から、後述する脱溶媒装置50への分散液の供給は、貯留槽21内と、脱溶媒装置50内との圧力差を利用して行われる。具体的には、貯留槽内圧力Pcは、上述した圧力調整器24により、脱溶媒装置50内の圧力よりも高く維持される。このため、供給停止弁29が弁を開いた状態では、圧力差によって貯留槽21内の分散液が脱溶媒装置50内に移動する。開度調整弁30は、供給停止弁29と脱溶媒装置50との間に配設されており、弁の開き度合いを所定の値にする。供給停止弁29が全開の状態になると、前述の圧力差による分散液の移動の流速が、開度調整弁30による弁の開き度合いに応じた値になる。つまり、開度調整弁30は、貯留槽21から脱溶媒装置50への分散液の流速を調整する役割を担っている。
脱溶媒装置50は、撹拌タンク51、ヒーター52、攪拌機53、圧力センサー54、気液分離器55、吸引ポンプ56、凝縮回収槽57、凝縮液移送ポンプ58などを具備している。貯留設備20の貯留槽21から送り出された分散液は、供給停止弁29と開度調整弁30とを経由した後に、脱溶媒装置50の撹拌タンク51内に流入してそこに一次貯留される。
攪拌機53は、撹拌シャフトの先端に固定された回転羽根53aの回転により、撹拌タンク51内の分散液を撹拌するものである。また、圧力センサー54は、撹拌タンク51内における分散液やガスの圧力を検知して、その検知結果を図示しない制御装置に送信するものである。
撹拌タンク51の上壁には、移送管が接続されており、その移送管の下端には気液分離器55が接続されている。また、気液分離器55には、真空ポンプからなる吸引ポンプ56や、凝縮回収槽57が接続されている。
吸引ポンプ56は、気液分離器55を介して、撹拌タンク51内の分散液や、分散液から蒸発した有機溶剤を強く吸引する。この吸引により、撹拌タンク51内の分散液の圧力は、大気圧よりも低い値まで減じられる。すると、撹拌タンク51内の分散液の温度が分散液中の有機溶剤の沸点よりも低くなる。これにより、分散液からの有機溶剤の蒸発が促される。吸引ポンプ56の吸引力によって気液分離器55内に移送された分散液と有機溶剤ガスとの混合流体は、気液分離器55内で、トナー粒子を高濃度に含有する濃縮液と、蒸発した有機溶剤ガスとに分離される。そして、有機溶剤ガスは、吸引ポンプ56の内部を経由した後に、吸引ポンプ56に接続されている図示しない溶剤回収タンクに回収される。溶剤回収タンクでは、有機溶剤の圧力が大気圧まで増加されることから、有機溶剤が液体の状態に戻る。なお、以下、脱溶媒装置50の撹拌タンク51内における分散液や有機溶剤ガスの圧力を、脱溶媒時圧力PDという。
一方、気液分離器55内で分離された濃縮液は、その自重によって気液分離器55から凝縮回収槽57内に落下する。凝縮回収槽57内の圧力は、大気圧程度に維持されている。凝縮回収槽57内に貯留された濃縮液は、凝縮液移送ポンプ58の駆動力により、図示しない洗浄・乾燥装置に移送される。
分散液生成装置1の混合液槽内における分散液の圧力である生成時圧力PAは、例えば、20〜80[kPa]の範囲の値で設定される。また、圧送ポンプ10と背圧弁11との間の配管内における分散液の圧力である圧送出口圧力PBは、圧送時に150〜200[kPa]の範囲に維持されている。それらの範囲は、従来の連続式のトナー製造装置におけるものと同様である。
脱溶媒装置50の撹拌タンク51内における分散液や有機溶剤ガスの圧力である脱溶媒時圧力PDは、−40〜−98[kPa]の範囲の値で設定される。この範囲も、従来の連続式のトナー製造装置におけるものと同様である。脱溶媒時圧力PDは、従来の減圧を伴う脱溶剤と同様の範囲で行うことができる。溶剤種にもよるが、減圧下で効率良く溶剤を除去するためには−40[kPa]〜−98[kPa]の範囲であることが好ましい。また、酢酸エチルなどをより低温で脱溶剤処理したい場合は−80[kPa]〜−98[kPa]の範囲で処理することが好ましい。工程を安定に稼動させ、溶剤を安定に気化させるためには、狙いの設定値に対して±5[kPa]の範囲に維持されることが好ましく、±2[kPa]の範囲に維持されることがより好ましい。つまり設定値が−90[kPa]の場合、−85[kPa]〜−95[kPa]の範囲に制御されている状態が好ましく、−88[kPa]〜−92[kPa]の範囲に制御されている状態がより好ましい。
同図において、貯留設備20は、従来の連続式のトナー製造装置には備わっていなかったものである。この貯留設備20の貯留槽21内における分散液の圧力である貯留槽内圧力PCは、圧力調整器24により、−2〜10[kPa]の範囲に維持されている。その値は、圧送出口圧力PBと脱溶媒時圧力PDとの間の値である。好ましくは−5〜20[kPa]、より好ましくは−2〜10[kPa]の範囲である。
従来の連続式のトナー製造装置において、背圧弁(411)が開いたときにおける背圧弁(411)の入口側と出口側との圧力差(以下、従来圧力差という)は、「圧送出口圧力PB−脱溶媒時圧力PD」という式によって求められる。一方、実施形態に係るトナー製造装置において、背圧弁11が開いたときにおける背圧弁11の入口側と出口側との圧力差(以下、本件圧力差という)は、「圧送出口圧力PB−貯留槽内圧力PC」という式によって求められる。この式における貯留槽内圧力PCは、圧送出口圧力PBよりも少し低い生成時圧力PAと、負圧である脱溶媒時圧力PDとの間の値であることから、本件圧力差は従来圧力差よりも小さくなる。このように圧力差を小さくすることで、背圧弁11と貯留槽21との間の配管内における分散液の流速をより遅くして、配管内における分散液に対するストレスを軽減する。これにより、ストレスによる分散液中の樹脂粒子の粉砕や合体の発生を抑えることで、トナー粒子の粒径分布の拡大化を抑えることができる。
制御装置は、貯留槽21内における分散液の液位を検知する液位センサー31による検知結果が所定の下限値(貯留量についての下限量)を下回った場合、又は下限値以下になった場合に、供給停止弁29を閉じる。
また、制御装置は、貯留量検知手段としての液位センサー31による検知結果が前記下限値以上になった場合、又は前記下限値を超えた場合に供給停止弁29を開く。
なお、先に説明した2つの処理の代わりに、次のような処理を実施させるように、制御装置を構成してもよい。即ち、液位センサー31による検知結果が所定の上限値を超えた場合、又は上限値以上になった場合に、圧送ポンプ11を停止させる。この一方で、前記検知結果が前記上限値以下になった場合、又は前記上限値を下回った場合に、圧送ポンプ11を作動させる。かかる構成においても、生成速度と脱溶媒速度とが釣り合っていなくても、それぞれの装置を空運転させることなく、分散液の生成処理や脱溶媒処理を適切に行うことができる。
また、純水供給ポンプ26によって純水を供給することに代えて、分散液生成工程などで使用する公知の成分、例えば、各種機能付与剤を供給するようにしてもよい。純水を供給する場合には、分散液に対して50重量%以下となる割合で供給量を制御することが樹脂粒子の表面特性や熱特性、生産性への影響などの点から好ましい。より好ましくは30重量%以下である。
分散液中における樹脂粒子の凝集を抑制するためには、貯留槽21内で溶剤濃度を低下させることが望ましい。溶剤濃度を15.0重量%以下まで低下させることが好ましく、より好ましくは12.5重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。例示した範囲外であっても、溶剤濃度を低下させることで、溶剤濃度を維持した場合と比較してある程度の効果を得ることができる。但し、その範囲よりも大きな値であると、生産スケールに依らずに粒子径が均一でかつ狭い粒度分布で安定に得ることは困難になる。
純水供給ポンプ26の駆動によって貯留槽21に純水を供給することで、貯留槽21内の分散液における溶剤濃度や樹脂粒子濃度を低下させることが可能である。実施形態に係るトナー製造装置では、制御装置が吸引ポンプ56の駆動量を適切に調整することで、貯留槽21における分散液の溶剤濃度を15.0重量%以下まで低下させるようになっている。具体的には、制御装置は、撹拌タンク51内の分散液や有機溶剤ガスの圧力を検知する圧力センサー54による検知結果を所定の範囲内にするように、吸引ポンプ56の駆動量(ポンプ回転速度)を調整する処理を実施する。この処理により、貯留槽21内に適量の分散液が存在していて吸引ポンプ56が駆動している限り、撹拌タンク51内の分散液や有機溶剤ガスの圧力が所定範囲内に維持される。すると、撹拌タンク51内の分散液の温度が狙いの温度で安定化して分散液からの溶剤の蒸発量が適切にコントロールされることから、溶剤濃度が15.0重量%以下まで低下する。
但し、貯留槽21内の分散液の温度が狙いの温度からずれていると、撹拌タンク51内の圧力を所定範囲内に維持していても、撹拌タンク51内の分散液の温度が狙いの値からずれてしまう。これにより、分散液の溶剤濃度が15.0重量%を超えてしまうおそれがある。そこで、制御装置は、貯留槽21内の分散液の温度を検知する温度センサー23による検知結果を所定範囲内にするように、加温手段としてのヒーター22のオンオフを制御する。これにより、貯留槽21内に流入する分散液の温度を所定範囲内に制御する。
また、制御装置は、撹拌タンク51内の温度を検知する図示しない温度センサーによる検知結果を所定範囲内にするように、加温手段としてのヒーター52のオンオフを制御する。このときの検知結果の目標値は、貯留設備20の貯留槽21内の温度についての目標値よりも高い値になっている。つまり、制御装置は、撹拌タンク51内の分散液の温度を、貯留槽21内の分散液の温度よりも高い所定の範囲内になるように、ヒーター52のオンオフを制御する。これは次に説明する理由による。即ち、溶剤濃度がある程度高い状態の分散液を比較的高温に加熱すると、溶剤の急激な蒸発などによるトラブルを引き起こす。このため、溶剤濃度が比較的高い値になっている分散液を貯留する貯留槽21については、加熱温度を比較的低い温度に設定せざるを得ない。一方、撹拌タンク51内では、減圧下で分散液から多くの溶剤が蒸発していることから、分散液の溶剤濃度は貯留槽21内のときに比べて低くなっている。このため、撹拌タンク51については、貯留槽21よりも加熱温度を高く設定することが可能である。加熱温度を高く設定する、即ち、分散液の温度をより高くすることで、分散液からの溶剤の蒸発量効率をより高くすることができる。
貯留槽21内の分散液の温度管理と、撹拌タンク51内の分散液の温度管理と、撹拌タンク51内の圧力管理(吸引ポンプ56の駆動量調整)とにより、撹拌タンク51内の分散液の溶剤濃度を精度良くコントロールすることができる。
なお、連続式脱溶剤で処理しながら分散液を収容した後は、公知の加熱や減圧などを伴う脱溶剤手法により、残存モノマー、低揮発成分等の臭気因物質、反応開始剤の分解物、残留溶剤などを低減させても良い。
また、貯留槽21内における分散液の温度tについては、5[℃]以上、「トナーの母材樹脂のガラス転移温度−10」℃以下に制御することが望ましい。こうすることで、分散液中での樹脂粒子の凝集を起こり難くして、粒径分布の悪化を抑えることができる。また、分散液をヒーター22によって加熱する際、樹脂粒子の表面の軟化を助長して粒子表面積を低下させたり、樹脂粒子の固着によって溶剤除去効率を悪化させたりしてしまう。このことからも、温度tの上限については、「トナーの母材樹脂のガラス転移温度−10」℃に制御することが望ましい。
一方、温度tを5℃未満にすると、気化させた溶剤を凝縮するために大型の凝縮設備や大量のエネルギーを必要とする。このため、温度tの下限については、5℃にすることが望ましい。より好ましくは下限は10℃、特に好ましくは15℃である。
実施形態に係るトナー製造装置においては、消泡剤供給ポンプ28により、貯留槽21内の分散液に消泡剤を供給することで、工程を複雑にすることなく、少ない製造環境負荷で分散液の発泡を容易に抑えることができる。消泡剤としては、公知のものを使用することができる。シリコーン、界面活性剤、ポリエーテル、高級アルコールなどを含む有機系物質などが、消泡能力に優れることから好ましい。特にシリコーンを含む物質が即効性に優れることから、良く用いられる。消泡剤は、オイル型、オイルコンパウンド、溶液型、粉末型、エマルジョン型、自己乳化型などに分類されるが、分散液の組成に応じて、それらの中から適切なものを選択すれば良い。貯留槽21内の発泡の度合いを検知するセンサーを設け、それによる検知結果に基づいて、消泡剤供給ポンプ28の駆動量を調整する処理を実行するように、制御装置を構成してもよい。こうすることで、消泡剤の無駄な使用量を削減することができる。
脱溶媒装置50によって溶剤を除去した濃縮液については、図示しない熟成装置や乾燥装置に送られる。熟成装置は、例えば、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを樹脂粒子の材料として用いている場合に、イソシアネートの伸長反応や架橋反応を促進するための処理を実施する。熟成時間は、通常1h〜12h、好ましくは3h〜10hである。反応温度は、通常、25〜65℃、好ましくは35〜55℃である。
洗浄装置は、熟成装置を経由した後の濃縮液中のトナー粒子を洗浄するためのものである。水系溶媒を含む濃縮液では、トナー粒子が水系溶媒中に分散している。このような濃縮液中のトナー粒子を洗浄する方法としては、公知の技術を用いることが可能である。実施形態に係るトナー製造装置の洗浄装置では、フィルタープレスで洗浄および脱水したした後、トナーケーキを常温〜約40℃の範囲の温度に調整されたイオン交換水に再分散させ、トナー粒子を含む分散液とする。このとき、pHを3.0〜6.0に調整した後に、濾別することが好ましい。これにより、分散剤などの原材料成分を効率的に除去することができる。pHが3.0未満であると、不純物が析出することがあり、6.0を超えると、分散剤などの原材料成分を効率的に除去し難くなることがある。フィルタープレスによる洗浄は必要に応じて何度か繰り返しても良い。帯電制御剤を用いる場合は、フィルタープレスによる洗浄後に添加することが好ましい。洗浄されたトナー粒子を乾燥する方法としては、公知の技術を用いることが可能である。実施形態に係るトナー製造装置の乾燥装置では、トナー粒子を含む分散液を遠心分離装置で脱水することでケーキとした後に、気流乾燥装置において30〜70℃の気流によって処理することで乾燥したトナー粒子を得る。
次に、本発明者らが行った実験について説明する。
本発明者らは、図1の脱溶媒装置350を備える回分式の従来装置の試作機と、図2の脱溶媒装置450を備える連続式の従来装置の試作機と、図3に示される実施形態に係るトナー製造装置の試作機とを用意した。そして、それぞれの装置によって製造したトナーの性状(粒径分布など)を測定した。
トナー粒子の分子量については、GPC(gel permeation chromatography)を用いて以下の条件で測定した。
・装置:GPC−150C(ウォーターズ社製)
・カラム:KF801〜807(ショウデックス社製)
・温度:40℃
・溶媒:THF(テトラヒドロフラン)
・流速:1.0ml/分
・試料:濃度0.05〜0.6%の試料を0.1ml注入した。
以上の条件で測定したトナー粒子の分子量の分布と、単分散ポリスチレン標準試料によって作製した分子量校正曲線とに基づいて、トナー粒子の個数平均分子量および重量平均分子量を算出した。
検量線作製用の標準ポリスチレン試料としては、昭和電工社製ShowdexSTANDARDのStd.No S−7300、S−210、S−390、S−875、S−1980、S−10.9、S−629、S−3.0、S−0.580、トルエンを用いた。また、検出器としては、RI(屈折率)検出器を用いた。
トナー粒子の樹脂のガラス転移温度Tgについては、次のようにして測定した。即ち、測定機器として、理学電機社製TG−DSCシステムTAS−100を用いた。まず、試料約10mgをアルミ製試料容器に入れ、それをホルダユニットにのせ、電気炉中にセットした。そして、室温から昇温速度10[℃/min]の条件で150℃まで加熱した後、150℃で10min間放置した。その後、室温まで試料を冷却して10min放置した後、窒素雰囲気下で再度150℃まで昇温速度10[℃/min]の条件で加熱してから、DSC測定を行った。ガラス転移温度Tgについては、TAS−100システム中の解析システムを用いて、ガラス転移温度Tg近傍の吸熱カーブの接線とベースラインとの接点に基づいて算出した。
トナー粒子の樹脂の酸価については、JISK1557−1970に準じて測定した。具体的には、試料の粉砕品を約2g精秤した(W(g))。そして、200mlの三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5h溶解した後、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加えた。その後、0.1規定の水酸化カリウムアルコール溶液をビュレットで滴下して、フェノールフタレインの色の変化点までの滴下量を特定した。この時の滴下量をS(ml)とした。また、ブランクテストをし、この時のKOH溶液の滴下量をB(ml)とした。「酸価=〔(S−B)×f×5.61〕/W(f:KOH溶液のファクター)」という式に基づいて、酸価を求めた。
トナー粒子を製造するための原材料の粒径や粒径分布については、次のようにして測定した。粒径については、UPA−150EX(日機装社製)を用いて、次のようにして測定した。即ち、UPA−150EXのセルの中に純水を3ml入れ、次に適度に希釈した原材料の分散液を、ローディングインデックスが0.5〜3.0の範囲になるように少しずつ添加した。その後、UPA−150EXによって原材料の体積や個数を測定して、体積分布と個数分布とを算出した。測定範囲は0.8〜6500nm、測定時間は6secとした。
以下、実施形態に係るトナー製造装置によってトナーを製造する例を実施例と言う。また、図1に示される脱溶媒装置350を備える回分式の従来装置や、図2に示される脱溶媒装置450を備える連続式の従来装置によってトナーを製造する例を比較例と言う。
[実施例1]
トナーの製造に必要な分散液を分散液生成装置1により、次のようにして生成した。即ち、撹拌機及び温度計を設置した反応容器に、次の材料を仕込んだ。
・水:683重量部
・メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩[エレミノールRS−30(三洋化成工業社製)]:11重量部
・スチレン:83重量部
・メタクリル酸:83重量部
・アクリル酸ブチル:110重量部
・過硫酸アンモニウム:1重量部
そして、反応容器内の溶液を400rpmで15min撹拌して白色の乳濁液を得た。次に、系内温度が75℃になるまで加熱し、5h反応させた。次いで、1質量%過硫酸アンモニウム水溶液を30重量部だけ添加し、75℃で5h熟成させてビニル系樹脂(スチレン−メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液(有機樹脂微粒子分散液1)を得た。得られた有機樹脂微粒子分散液1の粒径を、LA−920(HORIBA社製)によって測定したところ、体積平均粒径は105nmであった。また、有機樹脂微粒子分散液1の一部を乾燥して単離して得たトナー粒子を調べたところ、そのガラス転移温度Tgは59℃であり、その重量平均分子量は150000であった。
分散液生成装置1には、前記反応容器の他に、第2反応容器を設けている。冷却設備、攪拌機及び窒素導入管を具備する第2反応容器中に、次の物質を投入した。
・ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物:229重量部
・ビスフェノールAのプロピオンオキサイド3モル付加物:529重量部
・テレフタル酸:208重量部
・イソフタル酸:46重量部
・ジブチルスズオキサイド:2重量部
そして、それらを第2反応容器内にて、常圧下230℃で5h反応させた。次に、1.3〜2.0[kPa]の減圧下で5h反応させた後、第2反応容器中に44重量部の無水トリメリット酸を添加した。そして、常圧下、180℃で2h反応させて、ポリエステル1を合成した。得られたポリエステル1は、THF可溶分の重量平均分子量が5200、ガラス転移温度Tgが45℃、酸価が20mgKOH/gであった。
分散液生成装置1には、第2反応容器の他に、第3反応容器を設けている。冷却設備、攪拌機及び窒素導入管を具備する第3反応容器中に、次の材料を投入した。
・ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物:795重量部
・イソフタル酸:200重量部
・テレフタル酸:65重量部
・ジブチルスズオキサイド:2重量部
そして、第3反応容器内に常圧の窒素気流を流し込みながら、先に掲げた材料を第3反応容器内にて210℃の温度で8h反応させた。次に、1.3〜2.0[kPa]の減圧下で脱水しながら5h反応させた後、80℃まで冷却した。さらに、170重量部のイソホロンジイソシアネートと2h反応させて、プレポリマー1を合成した。得られたプレポリマー1は、重量平均分子量が5000であった。
分散液生成装置1には、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)を設けている。次の材料を、そのヘンシェルミキサーによって混合した。
・水:1200重量部
・4級アンモニウムイオンでイオン交換された変性ベントナイトBENTONE57(ELEMENTIS社製):174重量部
・ポリエステル1:1570重量部
得られた混合物を、二本ロールにて150℃で30min混練した後、圧延冷却し、パルペライザー(ホソカワミクロン社製)で粉砕して、マスターバッチ1を作製した。マスターバッチ中の変性ベントナイトは、体積平均粒径が0.4μmであった。また、粒径が1μm以上である粒子の含有量が2体積%であった。
分散液生成装置1には、撹拌槽を設けている。この撹拌槽に、次の材料を入れた。
・プレポリマー1:23.4重量部
・ポリエステル1:123.6重量部
・マスターバッチ1:20重量部
これらの材料を撹拌槽内で撹拌した。一方、カルナバワックス:15重量部、カーボンブラック:20重量部及び酢酸エチル120重量部を、ビーズミルを用いて1h分散した。得られた2つの液を3h混合した後に、高能率分散機(エバラマイルダー、荏原製作所製)を用いて6h循環分散し、さらにイソホロンジアミン:2.9重量部を添加し、1h循環分散することで油相を調製した。
イオン交換水529.5:重量部、有機樹脂微粒子分散液1:70重量部、及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム:0.5重量部を混合攪拌して、水系溶媒を調製した。
その水系媒体を438kg/h、上述した油相を282kg/hの速度で分散液生成装置1のパイプラインホモミキサー(特殊機化工業製)に供給し、2960rpmの回転数で960minの連続運転を行ない、23℃の分散液を11520kg得た。分散液の溶剤濃度は20.5重量%であった。
このような分散液の生成と並行して、分散液生成装置1から貯留設備20への分散液の移送、貯留設備20から脱溶媒装置50への分散液の移送、及び脱溶媒装置50での溶媒除去を行った。分散液生成装置1のパイプラインホモミキサーにおける分散液の圧力については、10[kPa]に維持した。また、貯留槽21内における分散液の圧力については、0〜5[kPa]に維持した。また、撹拌タンク51内における分散液や有機溶剤ガスの圧力については、−95.5[kPa]に維持した。吸引ポンプ56による吸引速度については、分散液生成装置1内における乳化フィード速度の10倍以下にして、撹拌タンク51内における分散液の溶剤濃度を常に一定濃度まで低下させた。このとき、発泡抑制のために、消泡剤供給ポンプ28により、消泡剤(ポリエーテル変成シリコーン化合物のエマルション型オクタメチルシクロテトラシロキン:D4含有率5重量%)を撹拌タンク51内に供給した。なお、図3に示されるように、消泡剤供給ポンプ28は、撹拌タンク51ではなく、貯留槽21に消泡剤を供給するものであるが、実施例1においては、消泡剤供給ポンプ28に仮設配管を繋いで、撹拌タンク51に消泡剤を供給するようにした。このように、貯留槽21に代えて、撹拌タンク51に消泡剤を供給してもよい。供給速度については、撹拌タンク51内の分散液の樹脂粒子に対する消泡剤濃度を約1080ppmにする値に調整した。
分散液生成装置1を出てから、貯留設備20を経て、脱溶媒装置50に進入するまでの時間が0〜60分の範囲になるように、分散液生成装置1における分散液の生成速度や、脱溶媒装置50における脱溶媒速度を調整した。そして、凝縮液の溶媒濃度が500ppm以下になるようにした。
凝縮液は、有機溶剤が除去されており、液分はそのほぼ全てが水系溶媒であることから、凝縮液を放置しても凝縮液中の樹脂粒子の粒径には影響を与えない。実施例1では、濃縮液を凝縮回収槽57内において45℃の温度で10hほど滞留させた後、後段の乾燥装置に移送して濾別、洗浄、乾燥などの処理を行った。乾燥によって得られたトナーの樹脂成分のガラス転移温度Tgは50℃であった。
[実施例2]
脱溶媒装置50の撹拌タンク51内の圧力を、−94.5[kPa]にするように、吸引ポンプ56の駆動量を調整した点の他は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
[実施例3]
純水供給ポンプ26により、分散液の10重量%に相当する量の純水を貯留槽21に供給するようにした点の他は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
[実施例4]
貯留槽21内の分散液の温度tをヒーター22のオンオフによって27℃に制御した点の他は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
[実施例5]
処理(※)において、タンクT内の樹脂粒子分散液の温度tを、19℃を目標にジャケット温水によって間接的に加熱維持したこと以外は消泡剤の添加量も含めて実施例1と同様にしてトナー(5)を得た。
[実施例6]
純水供給ポンプ26により、分散液に対して10重量%に相当する純水を貯留槽21に供給し、ヒーター22の制御によって貯留槽21内の分散液の温度tを27℃にし、且つ、タンクT内の樹脂粒子分散液の温度を、19℃を目標にジャケット温水によって間接的に加熱維持したこと以外は消泡剤の添加量も含めて実施例1と同様にしてトナー(6)を得た。
[実施例7]
貯留槽21内の分散液の温度tをヒーター22のオンオフによって40℃に制御した点の他は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
[実施例8]
吸引ポンプ56の駆動量の調整によって撹拌タンク51内の圧力を−85.0[kPa]に調整し、且つ、ヒーター52のオンオフによって撹拌タンク51内の分散液の温度を40℃に制御した点の他は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
[実施例9]
消泡剤供給ポンプ28により、消泡剤を撹拌タンク51ではなく貯留槽21に供給した点の他は、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
[実施例10]
貯留槽21に対して消泡剤を供給しない点の他は、実施例1と同様にしてトナーを製造する処理を試みた。しかし、貯留槽21内での分散液の発泡を許容レベルまで抑えるためには、吸引ポンプ56による吸引量を、分散液生成装置1内における乳化フィードの2倍以下に設定する必要があった。このため、かかる設定でトナーを製造した。また、脱溶剤工程を回分式で実施する際は、発泡を穏やかにするために消泡剤使用時の約2倍の時間を使用してゆっくりと処理する必要があった。上述の点以外は実施例1と同様にしてトナー(10)を得た。
[比較例1]
図2に示される脱溶媒装置450を備える連続式の従来装置を用いた。図2中の矢印Eで示されるように、圧送ポンプ410によって圧送されている分散液に消泡剤を供給した。消泡剤の組成、濃度、供給量については、実施例1と同様に設定した。また、前述した点の他は、実施例1と同様の条件でトナーを製造した。
[比較例2]
図1に示される脱溶媒装置350を備える回分式の従来装置を用いた。脱溶媒装置350よりも上流側の貯蔵タンク内では、分散液の圧力を常圧にし、貯蔵タンクから撹拌タンク351への分散液の移送については、撹拌タンク351内で発生する負圧だけを利用して行った。図1中の矢印Eで示されるように、撹拌タンク351内に消泡剤を供給した。消泡剤の組成や濃度は実施例1と同様にした。また、消泡剤の供給量については、実施例1よりもタンク内の発泡量が多かったことから、実施例1の1.5倍(約1620ppm)にした。前述した点の他は、実施例1と同様の条件でトナーを製造した。
[比較例3]
図1に示される脱溶媒装置350を備える回分式の従来装置を用いた。脱溶媒装置350よりも上流側の貯蔵タンク内では、分散液の圧力を常圧にし、貯蔵タンクから撹拌タンク351への分散液の移送については、撹拌タンク351内で発生する負圧だけを利用して行った。図1中の矢印Dで示されるように、移送中の分散液に純水を供給した。供給量は、分散液の30重量%に相当する量とした。また、図1中の矢印Eで示されるように、撹拌タンク351内に消泡剤を供給した。消泡剤の組成や濃度は実施例1と同様にした。また、消泡剤の供給量については、実施例1よりもタンク内の発泡量が多かったことから、実施例1の1.5倍(約1620ppm)にした。前述した点の他は、実施例1と同様の条件でトナーを製造した。
実施例1〜10、比較例1〜3においてそれぞれ、脱溶媒装置(50、350、450)の撹拌タンク(51、351、451)に進入する直前の分散液をサンプリング用の分岐配管から採取した。そして、その分散液の溶剤濃度を受入直後溶剤濃度として測定した。また、凝縮回収槽(57、357、457)内に貯まった濃縮液(貯留の瞬間から30分後)の溶剤濃度を終点溶剤濃度として測定した。
分散液の有機溶剤は酢酸エチルであるので、溶剤濃度としては、酢酸エチルの濃度を測定した。具体的には、島津製作所製の、ガスクロマトグラフ装置GC−2010を使用した。そして、50mlのスクリューバイアルに、測定試料1.5gと、内部標準液10ml(500mlメスフラスコに1.00gのトルエンを加え、DMFで500mlにメスアップすることで調整)と、DMFとを加えて全量を50mlにして撹拌した。これをサンプルとし、1.5mlのスクリューバイアルに清浄なピペットで投入し、ガスクロマトグラフ装置にセットして酢酸エチルの濃度を測定した。
測定条件は次の通りである。
・試料気化室注入モード:スプリット
・気化室温度:180℃
・キャリアガス:He
・圧力:40.2kPa
・全流量:56.0ml/min
・カラム流量:1.04ml/min
・線速度:20.0cm/sec
・パージ流量:3.0ml/min
・スプリット比:50.0
・カラム名称:ZB−50
・液相の膜厚:0.25μm
・長さ:30.0m
・内径:0.32mm
・ID カラム上限温度:340℃
・カラムオーブンカラム温度:60℃
・温度プログラム:60℃ホールド6min→昇温速度60℃/min→230℃ホールド5min
・検出器検出器温度:250℃
・メイクアップガス:N2/Air
・メイクアップ流量:30.0ml/min
・N2流量:47.0ml/min
・Air流量:400ml/min
得られたトナーについては、それぞれトナー粒子の粒径分布を測定した。具体的には、まず、コールターカウンター法によって体積平均粒子径を測定した。測定装置としては、コールターカウンターTA−IIを用いたが、コールターマルチサイザーII、コールターマルチサイザーIII(いずれもコールター社製)などでもよい。測定にあたっては、まず、電解水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤(好ましくはアルキルベンゼンスルフォン酸塩)を0.1〜5ml加えた。 電解水溶液は、1級塩化ナトリウムを約1%NaCl水溶液に調製したものである。かかる電解水溶液として、例えばISOTON−II(コールター社製)を使用することができる。界面活性剤の添加後、更に測定試料を2〜20mg加えた。試料を懸濁した電解水溶液に対し、超音波分散器にて約1〜3minの条件で分散処理を施した。得られた溶液を、100μmのアパーチャーをセットした測定装置にセットして、無作為に複数のトナー粒子を選定しながらそれぞれの粒径を測定した。そして、粒径を測定した全てのトナーの体積や個数を測定した結果と、粒径の測定結果とに基づいて、トナー粒子の体積分布と個数分布を調べた。得られた分布から、トナーの体積平均粒子径Dv、個数平均粒子径Dn、分布(Dv/Dn)、微粉率(3.17μm以下の粒子の比率)、及び粗粉率(10.08μm以上の粒子の比率)を求めた。なお、粒径2.00μm以上、40.30μm未満の粒子を粒径の測定対象とした。
チャンネルとしては、次の13チャンネルを用いた。
・2.00〜2.52μm未満
・2.52〜3.17μm未満
・3.17〜4.00μm未満
・4.00〜5.04μm未満
・5.04〜6.35μm未満
・6.35〜8.00μm未満
・8.00〜10.08μm未満
・10.08〜12.70μm未満
・12.70〜16.00μm未満
・16.00〜20.20μm未満
・20.20〜25.40μm未満
・25.40〜32.00μm未満
・32.00〜40.30μm未満
分散液生成装置から排出された直後の分散液における樹脂粒子の粒径分布と、撹拌タンク(51、351、451)に供給される直前の分散液における樹脂粒子の粒径分布とを調べた。そして、両者の差の絶対値を、送液過程粒度分布変化|△Dv1|、|△Dn1|、|△(Dv/Dn)1|、|△微粉率1|、|△粗粉率1|として求めた。これらは、送液過程における樹脂粒子の微細化や粗大化の程度を評価するためのものである。
|△Dv1|が0.05μm以下であるケースを◎、0.05μm超〜0.10μm以下であるケースを○、0.10μm超〜0.20μm以下であるケースを△、0.20μm超のケースを×として評価した。また、|△(Dv/Dn)1|が0.005以下であるケースを◎、0.005超〜0.01以下であるケースを○、0.01超〜0.02以下であるケースを△、0.02超を×として評価した。また、|△微粉率1|が1.0%以下であるケースを◎、1,0%超〜2.0%以下であるケースを○、2.0%超〜3.0%以下であるケースを△、3.0%超を×として評価した。
凝縮回収槽(57、357、457)に貯まった濃縮液の樹脂粒子の粒径分布値から、撹拌タンク(51、351、451)に供給された分散液の樹脂粒子の粒径分布値を差し引いた値を反映する受入後粒径分布変化として、△Dv2、△Dn2、△(Dv/Dn)2、△微粉率2、△粗粉率2を求めた。これらは、連続的な脱溶媒処理における凝集抑制効果を評価する指標となる。
△Dv2が0.05μm以下であるケースを◎、0.05μm超〜0.10μm以下であるケースを○、0.10μm超〜0.20μm以下であるケースを△、0.20μm超であるケースを×として評価した。また、△(Dv/Dn)2が0.005以下であるケースを◎、0.005超〜0.01以下であるケースを○、0.01超〜0.02以下であるケースを△、0.02超であるケースを×として評価した。また、△粗粉率2が1.0%以下であるケースを◎、1,0%超〜2.0%以下であるケースを○、2.0%超〜3.0%以下であるケースを△、3.0%超であるケースを×として評価した。
目開き25μmのメッシュ上に、得られた各トナーを0.5g乗せ、反対側からトナーを吸引した。メッシュ上に残ったトナー母体粒子の重量から、粒径25μm以上のトナー粒子の含有率(%)を算出した。そして、粗大粒子率が0.5%以下であるケースを◎、0.5%超〜1.0%以下であるケースを○、1.0%超〜2.0%以下であるケースを△、2.0%超であるケースを×として評価した。
得られた各トナーについて、消泡剤に由来する残留成分を定量するために、島津製作所社製の、ガスクロマトグラフ装置GC−2010を使用した。消泡剤とトナーとについてそれぞれ成分測定してピークを比較することで、トナー測定時のピークの中から消泡剤由来のVOC成分残留量を特定した。各実施例、各比較例の何れにおいても、残留成分として、オクタメチルテトラシロキサン(D4)が確認できた。
具体的な測定方法は次の通りである。50mlのスクリューバイアルに、トナーあるいは消泡剤1.5gと、内部標準液10ml(500mlメスフラスコに1.00gのトルエンを加え、DMFで500mLにメスアップすることで調整)とを計量投入した。さらにDMFを加えて全量を50mlにしたものを撹拌してサンプルとした。消泡剤中の一部の成分が完全には溶解しない場合にはフィルターなどでろ過したものを測定サンプルとした。調整したサンプルを1.5mlスクリューバイアルに清浄なピペットで投入し、ガスクロマトグラフ装置にセットして成分測定を行った。
測定条件は次の通りである。
・試料気化室注入モード:スプリット
・気化室温度:180℃
・キャリアガス:He
・圧力:40.2kPa
・全流量:56.0ml/min
・カラム流量:1.04mkl/min
・線速度:20.0cm/sec
・パージ流量:3.0ml/min
・スプリット比:50.0
・カラム名称:ZB−50
・液相の膜厚:0.25μm
・長さ:30.0m
・内径:0.32mm
・ID カラム上限温度:340℃
・カラムオーブンカラム温度:70℃
・温度プログラム:70℃ホールド6min→昇温速度60℃/min→230℃ホールド5min
・検出器検出器温度:250℃
・メイクアップガス:N2/Air
・メイクアップ流量:30.0ml/min
・N2流量:47.0ml/min
・Air流量:400ml/min
D4残留量が1ppm以上〜10ppm以下であるケースを◎、10ppm超〜30ppm以下であるケースを○、30ppm超〜40ppm以下であるケースを△、40ppm超であるケースを×として評価した。
以上の評価を総合的にまとめたものを、総合評価とした。何れの評価においても、◎を+1、○を0、△を−1、×を−2として数値変換し、それらの数値の合計によって総合評価値を求めた。総合評価値が+5以上であるケースを◎、0〜+4であるケースを○、−2〜−1であるケースを△、それら以外のケースを×として評価した。
これらの表から、以下のことがわかる。
実施形態に係るトナー製造装置を用いた各実施例では、連続式の従来装置を用いた比較例1や、回分式の従来装置を用いた比較例2、3に比べて、分散液を移送したり、脱溶媒処理をしたりする過程で発生する粒径分布の拡大化を抑えることができている。特に、脱溶媒処理を施す前の分散液に対して純水を10重量%の割合で供給して溶剤濃度を低下させた実施例3や実施例6では、粒径分布の拡大化を有効に抑えることができている。
また、実施例7より、造粒時の粒径分布を維持するためには、脱溶媒処理を施す前の分散液の温度tを5℃≦t≦(ガラス転移温度Tg−10)℃の範囲内にすることが好ましいことが分かる。
また、実施例10、比較例1から、分散液からの連続的な脱溶媒処理を効率良く行うためには、消泡剤による発泡抑制や破泡が有効であることが分かる。
また、比較例1より、連続式の従来装置(図2)では、次のようになっていることがわかる。即ち、|△Dv1|、|△Dn1|、|△(Dv/Dn)1|、|△微粉率1|、|△粗粉率1|の評価結果が比較的悪いのに対し、△Dv2、△Dn2、△(Dv/Dn)2、△微粉率2、△粗粉率2の評価結果が比較的良くなっている。このことから、脱溶媒処理を施した後の濃縮液中では、粒径分布の変化をきたしていないが、分散液の送液中に樹脂粒子の微細化が生じていることがわかる。
送液中(連続式)や貯蔵中(回分式)の分散液における粒径分布の抑制や粗大粒子率の低減については、終点溶剤濃度が低いほど良い効果が得られることがわかる。
また、実施例5及び実施例8により、5℃≦t≦(Tg−10)℃の範囲内で脱溶媒処理を行うことで、分散液中の樹脂粒子の凝集抑制効果を損なうことなく、粒径分布の拡大化を抑え得ることが分かる。
比較例3では、分散液に対し、品質や生産性に対する影響を考慮した上限量の純水を投入したが、その効果は不十分であり、回分式ではなくて連続式が有効であることが分かる。
消泡剤由来のVOC成分残留量(D4残留量)は、消泡剤の濃度、投入位置、終点溶剤濃度によって変化していることが分かる。
連続脱溶剤処理を実施した実施例1〜9および比較例1と回分式脱溶剤のみを実施した比較例2〜3(図4)を比較すると、連続脱溶剤処理を実施することで消泡剤の必要量を削減することができており、D4残留量も低いことが分かる。これはタンクT受入れ時点で樹脂粒子分散液から溶剤が一定量除去されており、タンクT内の液量を減少させ、発泡面を低下させることができるためである。
投入位置で異なるのは、その時点の樹脂粒子分散液の溶剤濃度の影響を受けるためであり、投入時の樹脂粒子分散液の溶剤濃度が低いほど残留率が低下し、トナーから検出される残留量を低下させることができたためである。
連続脱溶剤を実施した場合は、回分式脱溶剤開始前の送液過程終点溶剤濃度が低く、その後の脱溶剤時間を短くすることで、短時間で大量生産を可能とした。
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[態様A]
溶媒中に樹脂粒子を分散せしめた分散液を貯留するための貯留設備(20)であって、前記分散液を生成する分散液生成装置(1)から、前記分散液から溶媒を除去する脱溶媒装置(50)に向けて前記分散液を送液するための送液経路内で前記分散液を貯留する貯留槽(21)と、前記貯留槽内の圧力を、前記分散液生成装置内における前記分散液の圧力と、前記脱溶媒装置内における前記分散液の圧力との間の値に調整する圧力調整手段(圧力調整器24)とを有することを特徴とするものである。
態様Aにおいては、圧力調整手段が、分散液生成装置と脱溶媒装置との間の送液経路内で分散液を貯留する貯留槽内における分散液の圧力を、分散液生成装置内の分散液の圧力と、脱溶媒装置内における分散液の圧力との間の値に調整する。かかる構成において、分散液生成装置内の分散液を脱溶媒装置に送るための経路内における貯留設備の貯留槽の前に減圧弁を設ければ、従来構成に比べて、減圧弁の前後における分散液の圧力差を小さくすることが可能である。よって、減圧弁の前後の圧力差に起因するトナーの粒径分布の拡大を抑えることができる。
[態様B]
態様Bは、態様Aであって、前記貯留槽内の圧力が所定の上限値を超えた場合又は前記上限値以上になった場合にだけ前記貯留槽内の流体の外部への流出を許容する一方で、前記貯留槽内の圧力が所定の下限値を下回った場合又は前記下限値以下になった場合にだけ前記貯留槽の外部から前記貯留槽内への流体の流入を許容するように、前記圧力調整手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様C]
態様Cは、態様Bにおいて、前記貯留槽内の圧力が所定の下限値を下回った場合又は前記下限値以下になった場合に前記貯留槽の外部から前記貯留槽内への流入を許容される流体として、不活性ガスを用いたことを特徴とするものである。
[態様D]
態様Dは、溶媒、及び溶媒中に分散せしめられた樹脂粒子を含有する分散液を生成する分散液生成装置と、前記分散液から溶媒を除去する脱溶媒装置とを用いてトナーを製造するトナー製造装置において、態様A〜Cの何れかの貯留設備を設けたことを特徴とするものである。
[態様E]
態様Eは、態様Dにおいて、前記分散液生成装置内の分散液を大気圧よりも高い圧力まで加圧する加圧手段を前記分散液生成装置内に設けるとともに、前記脱溶媒装置内における、前記分散液、及び前記分散液から蒸発した溶媒、の混合流体から、前記溶媒を吸引して前記混合流体の圧力を大気圧よりも低い圧力まで減圧する吸引ポンプ(56)を前記脱溶媒装置に設けたことを特徴とするものである。
[態様F]
態様Fは、態様Eにおいて、前記送液経路における前記貯留槽と前記脱溶媒装置との間で前記分散液の流れを止めるための弁と、前記貯留槽内における前記分散液の貯留量を検知する貯留量検知手段(液位センサー31)と、前記貯留量検知手段による検知結果が所定の下限量を下回った場合又は前記下限量以下になった場合に前記弁(供給停止弁29)を閉じる一方で、前記検知結果が前記下限値以上になった場合又は前記下限値を超えた場合に前記弁を開くように、前記弁の開閉動作を制御する制御手段(制御装置)とを設けたことを特徴とするものである。
[態様G]
態様Gは、態様Fにおいて、前記分散液生成装置内の前記分散液を前記貯留槽に向けて圧送する圧送ポンプ(10)と、前記送液経路における前記圧送ポンプと前記貯留槽との間に配設された減圧弁(背圧弁11)とを設けたことを特徴とするものである。
[態様H]
態様Hは、態様Eにおいて、前記分散液生成装置内の前記分散液を前記貯留槽に向けて圧送する圧送ポンプと、前記送液経路における前記圧送ポンプと前記貯留槽との間に配設された減圧弁と、前記貯留槽内における前記分散液の貯留量を検知する貯留量検知手段と、前記貯留量検知手段による検知結果が所定の上限値を超えた場合又は前記上限値以上になった場合に前記圧送ポンプを停止させる一方で、前記検知結果が前記上限値以下になった場合又は前記上限値を下回った場合に前記圧送ポンプを作動させる制御手段とを設けたことを特徴とするものである。
[態様I]
態様Iは、態様F〜Hの何れかにおいて、前記脱溶媒装置内の前記混合流体の圧力を検知する圧力検知手段(圧力センサー54)を設けるとともに、前記吸引ポンプの駆動量の調整によって前記圧力検知手段による検知結果を所定の範囲内にする処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。
[態様J]
態様Jは、態様F〜Iの何れかにおいて、前記貯留槽内又は前記脱溶媒装置内の前記分散液を加温する加温手段(ヒーター22、ヒーター52)と、前記貯留槽内又は前記脱溶媒装置内の前記分散液の温度を検知する温度検知手段(温度センサー23)とを設けるとともに、前記加温手段による加温量の調整によって前記温度検知手段による検知結果を所定の範囲内にする処理を実施するように、前記制御手段を構成したことを特徴とするものである。