JP2015169677A - 偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法 - Google Patents

偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】基材フィルムに対する親水性高分子層の塗布性が高く、製造時の折れ込みの発生を抑制できる偏光性積層フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも基材フィルムと偏光子とが積層されてなる偏光性積層フィルムの製造方法であって、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点T1、T2を少なくとも二つ以上有する基材フィルム上に、逐次塗布又は共押出により、親水性高分子を含有する親水性高分子層を積層して積層フィルムを形成する工程と、積層フィルムを延伸する工程と、親水性高分子層を二色性物質により染色する工程と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法に関する。特に、基材フィルムに対する親水性高分子層の塗布性が高く、搬送時の折れ込みの発生を抑制できる偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法に関する。
偏光板は、液晶表示装置等の表示装置における偏光の供給素子等として広く用いられている。かかる偏光板として、従来、ポリビニルアルコール系樹脂からなる偏光子にトリアセチルセルロース等からなる偏光板保護フィルムを接着したものが使用されているが、近年、液晶表示装置のノート型パーソナルコンピュータや携帯電話等モバイル機器への展開に伴い、薄肉軽量化が求められている。
そのような薄型の偏光子を得る方法して、基材フィルム表面にポリビニルアルコール系樹脂からなる親水性高分子層を設けた後、その積層フィルムを延伸及び染色することにより、基材フィルム上に偏光子が積層されてなる偏光性積層フィルムを製造する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
上記従来の方法によれば、基材フィルム表面上へ直接ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液をコーティングすることで層を形成し、延伸することにより、ポリビニルアルコール系樹脂のフィルム原反を用いる場合と比較して格段に薄い親水性高分子層(偏光子)を形成することができるというメリットがある。
しかしながら、上記従来の製造方法においては、基材フィルムとして、ポリエチレンテレフタレート樹脂やポリプロピレン樹脂等からなるものを用いて行うものであり、基材フィルムと親水性高分子層(偏光子)との塗布性が不十分である場合があった。これに対しては両者の間に易接着層を設ける方法も考えられるが、偏光性積層フィルム全体の厚さが増大し、しかも、易接着層を形成するための新たな工程が増えることになり、好ましくない。
また、上記従来の製造方法においては、ポリビニルアルコール系樹脂の架橋処理はホウ酸を含む架橋溶液中で行うが、架橋処理後の乾燥工程において、ホウ酸架橋が著しく進行して幅方向に親水性高分子層が収縮し、基材フィルムの両端が親水性高分子層側に反り返る現象が生じることがある。この状態のまま連続で積層フィルムを流し続けると、乾燥炉内や乾燥炉出口で基材フィルムの端部が折れ込んでしまう不具合を引き起こすことがある。また、延伸により積層フィルムに負荷が生じ、その後の工程で延伸方向に亀裂が生じやすくなるという問題も生じる(例えば、特許文献4参照。)。
上記従来の製造方法において用いられる基材フィルムは、高倍率の延伸ができるようにTgが低く柔らかいため、ポリビニルアルコール系樹脂の架橋による収縮力に基材フィルムの剛性が負けてしまう。このため、上記のような現象が生じるものと考えられる。基材フィルムの折れ込みの対策として、基材フィルムの一方の面に親水性高分子層を形成した後、もう一方の面に支持フィルムを貼合してから積層フィルムを延伸し、更に支持フィルムを剥離する方法が提案されているが、支持フィルムの貼合と剥離の工程が増えプロセスが煩雑になり、コストが増大してしまう。
特開2012−68677号公報 特開2013−011837号公報 特開2013−011838号公報 特開2012−133295号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、基材フィルムに対する親水性高分子層の塗布性が高く、搬送時の折れ込みの発生を抑制できる偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法を提供することである。
本発明に係る上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、少なくとも基材フィルムと偏光子とが積層されてなる偏光性積層フィルムの製造方法であって、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有する前記基材フィルム上に、逐次塗布又は共押出により、親水性高分子を含有する親水性高分子層を積層して積層フィルムを形成する工程と、前記積層フィルムを延伸する工程と、前記親水性高分子層を二色性物質により染色する工程と、を有することで、基材フィルムに対する親水性高分子層の密着性が高く、搬送時の折れ込みの発生を抑制できる偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法を提供できることを見いだした。
1.少なくとも基材フィルムと偏光子とが積層されてなる偏光性積層フィルムの製造方法であって、
少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有する前記基材フィルム上に、逐次塗布又は共押出により、親水性高分子を含有する親水性高分子層を積層して積層フィルムを形成する工程と、
前記積層フィルムを延伸する工程と、
前記親水性高分子層を二色性物質により染色する工程と、
を有することを特徴とする偏光性積層フィルムの製造方法。
2.前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムの延伸温度が、前記基材フィルムの少なくとも二つのガラス転移点の間の温度であることを特徴とする第1項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
3.前記基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点のうち最も高いガラス転移点が、70℃以上であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
4.前記基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点のうち最も高いガラス転移点と最も低いガラス転移点との温度差が、30℃以上であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
5.前記基材フィルムが、重量平均分子量10万〜100万の範囲内の樹脂を少なくとも一種類含むことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
6.前記基材フィルムに含有されるカルボン酸ビニルエステル樹脂(樹脂A)の質量組成比率を(rA)、前記基材フィルムに含有される前記二種以上の樹脂のうちカルボン酸ビニルエステル樹脂以外の樹脂であってガラス転移点が最も高い樹脂(樹脂B)の質量組成比率を(rB)としたときに、(rA):(rB)=9:1〜1:9の範囲内であることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
7.前記積層フィルムを延伸する工程及び前記親水性高分子層を染色する工程の後の前記基材フィルムの厚さが、10〜60μmの範囲内であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
8.前記積層フィルムを形成する工程において、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む前記二種以上の樹脂と溶媒とを含有するドープを金属支持体上に流延し、剥離したのち、乾燥させることで前記基材フィルムを形成し、形成した前記基材フィルム上に溶液流延法により前記親水性高分子を積層することを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
9.前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムを4倍以上の延伸倍率で一軸延伸し、
前記積層フィルムを形成する工程、前記積層フィルムを延伸する工程及び前記親水性高分子層を染色する工程をこの順番に行うことを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
10.前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムをホウ酸水溶液中で湿式延伸し、
前記積層フィルムを形成する工程、前記親水性高分子層を染色する工程及び前記基材フィルムを延伸する工程をこの順番に行うことを特徴とする第1項から第8項までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
11.前記親水性高分子層を染色する工程の前に、前記積層フィルムを空中延伸する工程を行うことを特徴とする第10項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
12.第1項から第11項までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法により偏光性積層フィルムを製造する工程に続いて、前記偏光性積層フィルムの前記偏光子の少なくとも一方の面に偏光板保護フィルムを貼合する工程を有することを特徴とする偏光板の製造方法。
13.前記偏光板保護フィルムを貼合する工程は、前記偏光性積層フィルムから前記基材フィルムを剥離した後、前記偏光子の前記基材フィルムが接していた面に前記偏光板保護フィルムを貼合することを特徴とする第12項に記載の偏光板の製造方法。
本発明によれば、基材フィルムに対する親水性高分子層の塗布性が高く、搬送時の折れ込みの発生を抑制できる偏光性積層フィルムの製造方法及び偏光板の製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
基材フィルムは少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有するため、カルボン酸ビニルエステル樹脂と他の樹脂とは、相溶状態ではなくミクロ相分離の状態になるものと考えられる。したがって、基材フィルムの物性はカルボン酸ビニルエステル樹脂と他の樹脂との各々の性質を発揮することができ、カルボン酸ビニルエステル樹脂に起因する延伸工程時の良好な取扱い性と、他の樹脂に起因する効果を両立させることができるものと推察している。これにより、基材フィルムの剛性を高めることができ、ポリビニルアルコール樹脂の架橋や水分の抜け等に起因して親水性高分子層が収縮しても、基材フィルムが偏光性積層フィルムのカールの発生を抑制することができる。このため、製造時の折れ込みを抑制することができる。
また、基材フィルムにはカルボン酸ビニルエステル樹脂が含有されており、ポリ酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル樹脂は、親水性高分子層に含有されるポリビニルアルコール等の親水性高分子材料の原料であるため、基材フィルムと親水性高分子層との親和性が高く、親水性高分子層の塗布性を高めることができるものと推察している。なお、本発明において、塗布性とは、基材フィルムに対して親水性高分子層をどの程度均一に形成できるかを評価したものであって、親水性高分子層を基材フィルム上に塗布することによって形成する場合のみならず、基材フィルムと親水性高分子層とを共押出によって同時成型する場合にも用いられる。
示差走査熱量測定器による示差熱分析結果を模式的に示した図
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法は、少なくとも基材フィルムと偏光子とが積層されてなる偏光性積層フィルムの製造方法であって、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有する前記基材フィルム上に、逐次塗布又は共押出により、親水性高分子を含有する親水性高分子層を積層して積層フィルムを形成する工程と、前記積層フィルムを延伸する工程と、前記親水性高分子層を二色性物質により染色する工程と、を有することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項13までの各請求項に共通する又は対応する技術的特徴である。
また、本発明は、前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムの延伸温度が、前記基材フィルムの少なくとも二つのガラス転移点の間の温度であることが好ましい。これにより、延伸工程以降の搬送性を良好とすることができる。
また、本発明は、前記基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点のうち最も高いガラス転移点が、70℃以上であることが好ましい。これにより、基材フィルムの剛性が高められ、搬送時の折れ込みの抑制効果を更に高めることができる。
また、本発明は、前記基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点のうち最も高いガラス転移点と最も低いガラス転移点との温度差が、30℃以上であることが好ましい。これにより、基材フィルムと親水性高分子層との親和性を高めることができ、配向ムラを低減することができる。
また、本発明は、前記基材フィルムが、重量平均分子量10万〜100万の範囲内の樹脂を少なくとも一種類含むことが好ましい。これにより、基材フィルムの剛性が高められ、搬送時の折れ込みの抑制効果を更に高めることができる。
また、本発明は、前記基材フィルムに含有されるカルボン酸ビニルエステル樹脂(樹脂A)の質量組成比率を(rA)、前記基材フィルムに含有される前記二種以上の樹脂のうちカルボン酸ビニルエステル樹脂以外の樹脂であってガラス転移点が最も高い樹脂(樹脂B)の質量組成比率を(rB)としたときに、(rA):(rB)=9:1〜1:9の範囲内であることが、本発明の効果を得る観点から、好ましい。
また、本発明は、前記積層フィルムを延伸する工程及び前記親水性高分子層を染色する工程の後の前記基材フィルムの厚さが、10〜60μmの範囲内であることが好ましい。これにより、より薄型の偏光性積層フィルムを製造することができるとともに、生産性を向上することができる。
また、本発明は、前記積層フィルムを形成する工程において、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む前記二種以上の樹脂と溶媒とを含有するドープを金属支持体上に流延し、剥離したのち、乾燥させることで前記基材フィルムを形成し、形成した前記基材フィルム上に溶液流延法により前記親水性高分子を積層することが好ましい。これにより、これにより、基材フィルムの剛性が高められ、搬送時の折れ込みの抑制効果を更に高めることができる。
また、本発明は、前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムを4倍以上の延伸倍率で一軸延伸し、前記積層フィルムを形成する工程、前記積層フィルムを延伸する工程及び前記親水性高分子層を染色する工程をこの順番に行うことが好ましい。これにより、基材フィルムと親水性高分子層との間にストレスがかかりにくく、配向ムラを低減させることができる。
また、本発明は、前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムをホウ酸水溶液中で湿式延伸し、前記積層フィルムを形成する工程、前記親水性高分子層を染色する工程及び前記積層フィルムを延伸する工程をこの順番に行うことが好ましい。これにより、基材フィルムに対する親水性高分子層の塗布性を高めることができる。
また、本発明は、前記親水性高分子層を染色する工程の前に、前記積層フィルムを空中延伸する工程を行うことが好ましい。これにより、基材フィルムに対する親水性高分子層の塗布性を更に高めることができる。
また、本発明の偏光板の製造方法は、上記偏光性積層フィルムの製造方法により偏光性積層フィルムを製造する工程に続いて、前記偏光性積層フィルムの前記偏光子の少なくとも一方の面に偏光板保護フィルムを貼合する工程を有することを特徴とする。基材フィルムに対する親水性高分子層の塗布性が良好であるため、配向ムラの少ない偏光板を製造することができる。
また、本発明は、前記偏光板保護フィルムを貼合する工程は、前記偏光性積層フィルムから前記基材フィルムを剥離した後、前記偏光子の前記基材フィルムが接していた面に前記偏光板保護フィルムを貼合することが好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
《偏光性積層フィルムの構成》
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法により製造される偏光性積層フィルムは、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有する基材フィルムと、親水性高分子を含有する親水性高分子層を延伸するとともに二色性物質で染色して得られる偏光子とを備えている。
このように、本発明に係る偏光性積層フィルムは、少なくとも基材フィルムと偏光子とが積層されて構成されている。
以下、各構成要素について詳細に説明する。
《基材フィルム》
本発明に係る基材フィルムは、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有する。
本発明に係る基材フィルムとしては、カルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有するものであるが、それらのうち重量平均分子量10万〜100万の範囲内の樹脂を少なくとも一種類含むことが好ましい。これにより、基材フィルムの剛性が高められ、搬送時の折れ込みの抑制効果を更に高めることができる。
以下、本発明に係る基材フィルムに用いられる材料について説明する。
(1)カルボン酸ビニルエステル樹脂
本発明に係るカルボン酸ビニルエステル樹脂は、下記一般式(A)で示されるカルボン酸を用いて製造することが好ましい。
一般式(A) RCOOH
(式中、Rは置換又は非置換の1価の炭化水素基を表す。)
本発明に係るカルボン酸ビニルエステル樹脂の製造方法において、原料は一般式(A)で示される脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸であるが、式中のRは1価の炭化水素基又はこれらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基、アミノ基等で置換された置換1価炭化水素基である。これらを例示すると、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ウンデシル、ヘプタデシル、オクタデシル等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、シアノ基、アミノ基等で置換された1価の炭化水素基である。
すなわち、一般式(A)で示される脂肪族カルボン酸又は芳香族カルボン酸を例示すると、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ラウリン酸、ステアリン酸等の飽和カルボン酸;アクリル酸、(メタ)アクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸;安息香酸、ケイ皮酸等の芳香族系カルボン酸が例示される。また、例えば、ハロゲン置換1価炭化水素基を有するカルボン酸としてはモノクロロ酢酸等が例示される。本発明において、カルボン酸ビニルエステル樹脂の製造に用いられる、もう一方の原料は酢酸ビニルである。
本発明において、触媒は、(a)パラジウム化合物、(b)カルボン酸のリチウム塩、(c)ハロゲン化リチウムを用いることが好ましい。触媒として使用されるパラジウム化合物は酢酸パラジウム、プロピオン酸パラジウム等のパラジウムのカルボン酸塩;塩化パラジウム、臭化パラジウム等のパラジウムの無機塩;パラジウムの錯化合物等が例示されるが、本発明に使用可能なパラジウム化合物はこれらに限定されない。また、パラジウム化合物触媒とともに、助触媒としてカルボン酸のリチウム塩、ハロゲン化リチウムが使用される。カルボン酸のリチウム塩としては酢酸リチウム、プロピオン酸リチウム等を主体とする低級脂肪族カルボン酸のリチウム塩が、ハロゲン化リチウムとしては塩化リチウム、臭化リチウム等が例示され、特に臭化リチウムが好ましいが、助触媒は、これらの例示に限定されるものではない。
カルボン酸ビニルエステル樹脂の製造方法は、エステル交換反応を利用したものであるが、この反応を行うにあたって、前記一般式(A)で表されるカルボン酸と酢酸ビニルのモル比はエステル交換反応の平衡関係に応じて任意に決めれば良い。また、一旦、未反応の酢酸ビニル、副生した酢酸を除去した後、再度酢酸ビニルを添加して反応を継続する際の酢酸ビニルの添加量もエステル交換反応の平衡関係に応じて任意に決めれば良い。また、目的に応じて、再反応液から未反応の酢酸ビニル、副生した酢酸を除去した後、更に、再度、未反応の酢酸ビニルを添加して再々反応を行うことによりカルボン酸の反応率を高めることもできる。反応液から未反応の酢酸ビニル、副生した酢酸を除去する方法は、蒸留による方法が一般的であるが、本発明のカルボン酸ビニルエステルの製造方法はこれに限定されるものではない。
本発明に係るカルボン酸ビニルエステル樹脂おいては、一部又は全部の助触媒を、あらかじめ、カルボン酸と酢酸ビニルの混合液に添加しておいても良い。また、使用するカルボン酸の種類によっては当然溶解度が異なるから、溶解度に応じて、溶媒を選択使用する。溶媒としてはテトラヒドロフラン、アセトニトリル等が好適である。
本発明に係るカルボン酸ビニルエステル樹脂は、熱による膨張のしやすさや、フィルム生産時の金属支持体からの剥離性、有機溶媒の乾燥性、耐熱性及び機械的強度の改善の観点で、重量平均分子量(Mw)が6万〜100万の範囲内であることが好ましく、10万〜100万の範囲内であることがより好ましく、20万〜80万の範囲内であることが特に好ましい。
6万以上であれば、機械的強度に優れ、100万以下であれば、溶液流延法による製膜では溶解性に優れ、また溶融流延法による製膜では高温での押し出しが必要ではなく樹脂劣化を招くことがない。
(2)その他の樹脂
本発明に係る基材フィルムに含有される樹脂のうち、カルボン酸ビニルエステル樹脂以外の樹脂としては、カルボン酸ビニルエステル樹脂よりもガラス転移点が高いものが好ましく、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリロニトリル樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂等を用いることができる。
(2−1)アクリル樹脂
本発明に係る基材フィルムには、カルボン酸ビニルエステル樹脂とともに、アクリル樹脂を含有させることができる。基材フィルムに含有されるアクリル樹脂は、アクリル酸エステルあるいはメタアクリル酸エステルの重合体であって、ほかのモノマーとの共重合体も含まれる。
したがって、本発明に係るアクリル樹脂には、メタクリル樹脂も含まれる。樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位が50〜99質量%の範囲内、及びこれと共重合可能な他の単量体単位が1〜50質量%の範囲内からなるものが好ましい。
共重合で形成されるアクリル樹脂を構成する他の単位としては、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、メタクリル酸イソボルニル、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、アクリロイルモルホリン、Nヒドロキシフェニルメタクリルアミド等のアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有2価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタルイミド、グルタル酸無水物等が挙げられる。
上記単位より、グルタルイミド及びグルタル酸無水物を除いた単位を形成する共重合可能な単量体としては、上記単位に対応した単量体が挙げられる。すなわち、アルキル数の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、メタクリル酸イソボルニル、2−ヒドロキシエチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、アクリロイルモルホリン、Nヒドロキシフェニルメタクリルアミド等のアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有2価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、等の単量体が挙げられる。
また、グルタルイミド単位は、例えば(メタ)アクリル酸エステル単位を有する中間体ポリマーに1級アミン(イミド化剤)を反応させてイミド化することにより形成できる(特開2011−26563号公報参照。)。
グルタル酸無水物単位は、例えば(メタ)アクリル酸エステル単位を有する中間体ポリマーを加熱することにより形成することができる(特許第4961164号公報参照。)。
本発明に係るアクリル樹脂には、上記の構成単位の中でも、機械的強度の観点から、メタクリル酸イソボルニル、アクリロイルモルホリン、N−ヒドロキシフェニルメタクリルアミド、N−ビニルピロリドン、スチレン、ヒドロキシエチルメタクリレート、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物又はグルタルイミドが含まれることが、特に好ましい。
本発明に係るアクリル樹脂は、環境の温湿度雰囲気の変化に対する寸法変化を制御する観点や、フィルム生産時の金属支持体からの剥離性、有機溶媒の乾燥性、耐熱性及び機械的強度の改善の観点から、重量平均分子量(Mw)が5万〜100万の範囲内であることが好ましく、10万〜100万の範囲内であることがより好ましく、20万〜80万の範囲内であることが特に好ましい。
5万以上であれば、耐熱性及び機械的強度が優れ、100万以下であれば、金属支持体からの剥離性及び有機溶媒の乾燥性に優れる。
本発明に係るアクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下のとおりである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=500〜2800000の範囲内の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
本発明に係るアクリル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法のいずれを用いても良い。ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃の範囲内、塊状又は溶液重合では80〜160℃の範囲内で実施しうる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
アクリル樹脂のガラス転移温度Tgは、80〜120℃の範囲内であることが、フィルムの機械的強度を保持する観点から、好ましい。
本発明に係るアクリル樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N、980N、SR8200(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88、EMB−143、EMB−159、EMB−160、EMB−161、EMB−218、EMB−229、EMB−270、EMB−273(以上、三菱レイヨン(株)製)、KT75、TX400S、IPX012(以上、電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル樹脂は二種以上を併用することもできる。
本発明に係るアクリル樹脂は、添加剤を含有することが好ましく、添加剤の一例としては、国際公開第2010/001668号に記載のアクリル粒子(ゴム弾性体粒子)を、フィルムの機械的強度向上や寸法変化率の調整のために含有しても良い。このような多層構造アクリル系粒状複合体の市販品の例としては、例えば、三菱レイヨン社製の「メタブレンW−341」、カネカ社製の「カネエース」、クレハ社製の「パラロイド」、ロームアンドハース社製の「アクリロイド」、アイカ社製の「スタフィロイド」、ケミスノーMR−2G、MS−300X(以上、綜研化学(株)製)及びクラレ社製の「パラペットSA」などが挙げられ、これらは、単独ないし二種以上を用いることができる。
アクリル粒子の体積平均粒子径は0.35μm以下であり、好ましくは0.01〜0.35μmであり、より好ましくは0.05〜0.30μmである。粒子径が一定以上であれば、フィルムを加熱下で伸びやすくでき、粒子径が一定以下であれば、得られるフィルムの透明性を損ないにくい。
本発明の基材フィルムは、柔軟性の観点から、曲げ弾性率(JIS K7171)が1500MPa以下であることが好ましい。この曲げ弾性率は、より好ましくは1300MPa以下であり、更に好ましくは1200MPa以下である。この曲げ弾性率は、基材フィルム中のアクリル樹脂やゴム弾性体粒子の種類や量などによって変動し、例えば、ゴム弾性体粒子の含有量が多いほど、一般に曲げ弾性率は小さくなる。また、アクリル樹脂として、メタクリル酸アルキルの単独重合体を用いるよりも、メタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキル等との共重合体を用いる方が、一般に曲げ弾性率は小さくなる。
(2−2)ウレタン系樹脂
本発明に係る基材フィルムには、カルボン酸ビニルエステル樹脂とともに、ウレタン樹脂を含有させることができる。この場合、基材フィルムに対する親水性高分子層(偏光子)に対する接着性が向上する。
ウレタン樹脂は特に限定されず、典型的には、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得た樹脂である。ポリオールは、分子中にヒドロキシ基を2個以上有する、任意のポリオールを採用できる。ポリオールは、例えば、ポリアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールである。二種以上のポリオールを組み合わせても良い。
ポリアクリルポリオールは、典型的には、(メタ)アクリル酸エステル単量体と、水酸基を有する単量体との共重合体である。
(メタ)アクリル酸エステル単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルである。
水酸基を有する単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシペンチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;グリセリン、トリメチロールプロパン等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸モノエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミドである。
ポリアクリルポリオールは、更なる他の単量体との共重合体であっても良い。他の単量体は、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体及び水酸基を有する単量体と共重合が可能である限り、限定されない。
当該他の単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸並びにその無水物及びモノ又はジエステル類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化α,β−不飽和脂肪族単量体;スチレン、α−メチルスチレン等のα,β−不飽和芳香族単量体である。
ポリエステルポリオールは、典型的には、多塩基酸成分とポリオール成分との反応により得られる。多塩基酸成分は、例えば、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、酒石酸、アルキルコハク酸、リノレイン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸等の脂肪族ジカルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;あるいは、これらの酸無水物、アルキルエステル、酸ハライド等の反応性誘導体である。
ポリオール成分は、例えば、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1−メチル−1,3−ブチレングリコール、2−メチル−1,3−ブチレングリコール、1−メチル−1,4−ペンチレングリコール、2−メチル−1,4−ペンチレングリコール、1,2−ジメチル−ネオペンチルグリコール、2,3−ジメチル−ネオペンチルグリコール、1−メチル−1,5−ペンチレングリコール、2−メチル−1,5−ペンチレングリコール、3−メチル−1,5−ペンチレングリコール、1,2−ジメチルブチレングリコール、1,3−ジメチルブチレングリコール、2,3−ジメチルブチレングリコール、1,4−ジメチルブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、典型的には、多価アルコールにアルキレンオキシドを開環重合して付加させることにより得られる。多価アルコールは、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンである。アルキレンオキシドは、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
ポリイソシアネートは、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ブタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート、3−メチルペンタン−1,5−ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、4,4′−シクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環族ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、2,2′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4′−ジベンジルジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート;ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、α,α,α,α−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネートである。
ウレタン樹脂は、好ましくは、カルボキシ基を有する。カルボキシ基を有することにより、易接着性が向上する。この効果は、特に、高温・高湿の環境下において顕著である。
カルボキシ基を有するウレタン樹脂は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートとに加え、遊離カルボキシ基を有する鎖長剤を反応させることにより得られる。遊離カルボキシ基を有する鎖長剤は、例えば、ジヒドロキシカルボン酸、ジヒドロキシスクシン酸等が挙げられる。ジヒドロキシカルボン酸は、例えば、ジメチロールアルカン酸(例えば、ジメチロール酢酸、ジメチロールブタン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ジメチロールペンタン酸)等のジアルキロールアルカン酸である。
ウレタン樹脂の酸価は、好ましくは10以上、更に好ましくは10〜50、特に好ましくは20〜45である。これらの場合、偏光子との密着性がより向上する。
ウレタン樹脂は、上述した各成分に加えて、更に他のポリオールあるいは他の鎖長剤との反応によって得たものでも良い。
他のポリオールは、例えば、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトラオール、1,4−ソルビタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等、3以上の水酸基を有するポリオールである。
他の鎖長剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、アミノエチルエタノールアミン等の脂肪族ジアミン;イソホロンジアミン、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン;キシリレンジアミン、トリレンジアミン等の芳香族ジアミンである。
ウレタン樹脂は、公知の方法を応用して形成できる。当該方法は、例えば、各成分を一度に反応させるワンショット法、段階的に反応させる多段法である。カルボキシ基を有するウレタン樹脂は、カルボキシ基の導入が容易であることから、多段法により形成することが好ましい。ウレタン樹脂の形成に用いる触媒は、特に限定されない。
基材フィルムにウレタン樹脂が含有される場合、当該基材フィルムの形成に用いられる基材フィルム形成用樹脂組成物は、中和剤を含むことが好ましい。この場合、基材フィルム形成用樹脂組成物におけるウレタン樹脂の安定性が向上する。中和剤は、例えば、アンモニア、N−メチルモルホリン、トリエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
ウレタン樹脂を含有する基材フィルム形成用樹脂組成物が水系である場合、ウレタン樹脂を形成する際に、ポリイソシアネートに対して不活性であるとともに水と相溶する有機溶媒を用いることが好ましい。有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブアセテート等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジオキサン、テトラハイドロフラン、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒である。
ウレタン樹脂を含有する基材フィルム形成用樹脂組成物は、架橋剤を含有することが好ましく、この場合、易接着性が向上する。架橋剤は、特に限定されない。ウレタン樹脂がカルボキシ基を有する場合、架橋剤は、当該カルボキシ基と反応し得る基を有するポリマーが好ましい。
カルボキシ基と反応し得る基は、例えば、有機アミノ基、オキサゾリン基、エポキシ基、カルボジイミド基であり、オキサゾリン基が好ましい。オキサゾリン基を有する架橋剤は、ウレタン樹脂と混合したときの室温でのポットライフが長く、加熱によって架橋反応が進行するため、作業性が良好である。当該ポリマーは、例えば、(メタ)アクリルポリマー、スチレン・アクリルポリマーであり、(メタ)アクリルポリマーが好ましい。架橋剤が(メタ)アクリルポリマーである場合、易接着層の性能が更に向上する。これに加えて、(メタ)アクリルポリマーは、水系の易接着組成物に安定的に相溶し、ウレタン樹脂を良好に架橋する。
ウレタン樹脂を含む基材フィルム形成用樹脂組成物において、当該組成物におけるウレタン樹脂の含有率は、1.5〜15質量%が好ましく、2〜10質量%がより好ましい。この樹脂組成物が架橋剤を更に含む場合、架橋剤の含有量は、ウレタン樹脂(固形分)100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、3〜20質量部がより好ましい。ウレタン樹脂を含む基材フィルム形成用樹脂組成物における微粒子の含有率は、ウレタン樹脂(固形分)100質量部に対して、0.3〜10質量部が好ましく、0.5〜1質量部がより好ましい。
(2−3)アクリロニトリル樹脂
本発明に係る基材フィルムには、カルボン酸ビニルエステル樹脂とともに、アクリロニトリル樹脂を含有させることができる。
アクリロニトリル樹脂としては、アクリロニトリル単独重合体のみならず、アクリロニトリルと共重合可能な化合物の一種又は二種以上と共重合したものであっても良い。このような化合物としては、特に限定されるものではなく、例えば、ニトリルゴム(NBR)等のゴム成分、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアルキルアクリレート類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルメタアクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸類、塩化ビニル、フッ化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類、アクリルアミド、ビニルピロリドン等のビニルアミド類、スチレン等のビニル芳香族化合物類、ビニルカルボン酸類、ビニルスルホン酸類、無水マレイン酸等のΑ、Β−不飽和カルボン酸類、N−フェニルマレイミド、N−メチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド類、酢酸ビニル等のビニルエステル類、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基含有モノマー等が挙げられる。共重合する化合物の割合は、30モル%以下であることが好ましく、15モル%以下であることがより好ましい。
ビニル芳香族化合物類は、アクリロニトリル樹脂の耐水性を高める機能を有している。ビニル芳香族化合物類としては、スチレン系化合物であることが好ましい。スチレン系化合物の具体例には、スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのアルキル置換スチレン類;4−クロロスチレン、4−ブロモスチレン等のハロゲン置換スチレン類;p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレン、2−メチル−4−ヒドロキシスチレン、3,4−ジヒドロキシスチレン等のヒドロキシスチレン類;ビニルベンジルアルコール類;p−メトキシスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、m−tert−ブトキシスチレン等のアルコキシ置換スチレン類;3−ビニル安息香酸、4−ビニル安息香酸等のビニル安息香酸類;4−ビニルベンジルアセテート;4−アセトキシスチレン;2−ブチルアミドスチレン、4−メチルアミドスチレン、p−スルホンアミドスチレン等のアミドスチレン類;3−アミノスチレン、4−アミノスチレン、2−イソプロペニルアニリン、ビニルベンジルジメチルアミン等のアミノスチレン類;3−ニトロスチレン、4−ニトロスチレン等のニトロスチレン類;3−シアノスチレン、4−シアノスチレン等のシアノスチレン類;ビニルフェニルアセトニトリル;フェニルスチレン等のアリールスチレン類、インデン類等が含まれる。
中でも、他のスチレン系樹脂や(メタ)アクリル樹脂と良好に相溶し得ること等から、スチレンやα−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。これら芳香族ビニルモノマーは、一種類で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
アクリロニトリル樹脂を得る方法としては、例えば、完全撹拌混合槽に、モノマー、開始剤、溶媒等を連続的にフィードし、連続的に反応槽から抜き出し、熱時、脱揮系で揮発分を除去する方法が挙げられる。脱揮系でのポリマー滞留は極力少なくすることが好ましい。
例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体の製造は、一般的に乳化重合方法、懸濁重合方法及び塊状重合方法が用いられている中で、組成分布を狭くする方法としては、塊状重合における完全混合型反応機が用いる製造方法等が挙げられる。
ここで、重合開始剤としては、通常のパーオキサイド系及びアゾ系のものを用いることができ、また、レドックス系とすることもできる。重合温度については、懸濁又は乳化重合では30〜100℃の温度範囲で、塊状又は溶液重合では80〜160℃の温度範囲で実施することができる。得られた共重合体の還元粘度を制御するために、アルキルメルカプタン等を連鎖移動剤として用いて重合を実施することもできる。
例えば、重合は完全混合型反応機を用いて、かつ気層部の存在がない満液状態で重合し、重合後の未反応単量体は、速やかに除去することが好ましい。未反応モノマーの除去としては、1段又は多段の減圧装置等で行うことができる。
(2−4)セルロースエステル樹脂
本発明に係る基材フィルムには、カルボン酸ビニルエステル樹脂とともに、セルロースエステル樹脂を含有させることができる。
セルロースエステル樹脂としては、脂肪族のアシル基、芳香族のアシル基のいずれで置換されていても良いが、アセチル基で置換されていることが好ましい。
セルロースエステル樹脂が、脂肪族アシル基とのエステルであるとき、脂肪族アシル基は炭素原子数が2〜20で、具体的には、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ピバロイル、ヘキサノイル、オクタノイル、ラウロイル、ステアロイル等が挙げられる。
セルロースエステル樹脂が、芳香族アシル基とのエステルであるとき、芳香族環に置換する置換基の数は0又は1〜5個であり、好ましくは1〜3個で、特に好ましいのは1又は2個である。
更に、芳香族環に置換する置換基の数が2個以上のとき、互いに同じであっても異なっていても良いが、互いに連結して縮合多環化合物(例えば、ナフタレン、インデン、インダン、フェナントレン、キノリン、イソキノリン、クロメン、クロマン、フタラジン、アクリジン、インドール、インドリン等)を形成していても良い。
上記セルロースエステル樹脂において、置換又は無置換の脂肪族アシル基、置換又は無置換の芳香族アシル基の中の少なくともいずれかの構造を含む、セルロースの単独又は混合酸エステルである。
セルロースエステル樹脂の置換度は、アシル基の総置換度(T)が2.00〜3.00であり、そのうちアセチル基置換度(ac)が0〜2.50である。より好ましくはアセチル基以外のアシル基置換度(r)が1.50〜2.90である。
アセチル基以外のアシル基は炭素数が3〜7であることが好ましい。
セルロースエステル樹脂としては、炭素原子数2〜7のアシル基を置換基として有するもの、すなわち、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、及びセルロースベンゾエートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これらの中で特に好ましいセルロースエステル樹脂としては、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等が挙げられる。
混合脂肪酸として、更に好ましくは、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートの低級脂肪酸エステルであり、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有するものが好ましい。
アシル基で置換されていない部分は通常水酸基として存在しているものである。これらは公知の方法で合成することができる。
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めたものである。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは75000以上、より好ましくは1000000程度であるが、生産性を考慮すると75000〜280000のものが好ましく、100000〜240000のものが更に好ましい。
(2−5)ポリビニルアルコール樹脂
本発明に係る基材フィルムに用いられるポリビニルアルコール樹脂としては、後述する偏光子に用いられるポリビニルアルコール樹脂と同様のものを用いることができる。
(3)カルボン酸ビニルエステル樹脂(樹脂A)とその他の樹脂(樹脂B)の混合比
本発明に係る基材フィルムは、カルボン酸ビニルエステル樹脂(樹脂A)の質量組成比率を(rA)、基材フィルムに含有される二種以上の樹脂のうちカルボン酸ビニルエステル樹脂以外の樹脂であってガラス転移点が最も高い樹脂(樹脂B)の質量組成比率を(rB)としたときに、(rA):(rB)=9:1〜1:9の範囲内であることが、機械的強度と延伸時取扱い性を両立する観点から、好ましい。
好ましくは、(rA):(rB)=8:2〜2:8の範囲内であり、更に好ましくは、(rA):(rB)=7:3〜3:7の範囲内、特に好ましくは、(rA):(rB)=6:4〜4:6の範囲内である。
(4)添加剤
(4−1)可塑剤
本発明に係る基材フィルムには、可塑剤が含有されているものとしても良い。可塑剤が含有されていることで、基材フィルムの機械的強度や光学特性、耐湿性等を向上することができる。
本発明に好ましく用いられる可塑剤は、例えば、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル(フタル酸エステルを含む)、グリコレート化合物、脂肪酸エステル、リン酸エステル等が挙げられる。これらは、単独で用いても二種類以上を組み合わせて用いても良い。
(4−2)酸化防止剤
本発明に係る基材フィルムには、酸化防止剤が含有されているものとしても良い。酸化防止剤は、劣化防止剤ともいわれ、高湿高温環境下における基材フィルムの劣化を抑制することができる。酸化防止剤は、例えば、基材フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により基材フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有する。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系加工安定剤を併用しても良い。
これらの化合物の添加量は、基材フィルム中の樹脂に対して質量割合で1ppm〜1.0%の範囲が好ましく、10〜1000ppmの範囲が更に好ましい。
(4−3)紫外線吸収剤
本発明に係る基材フィルムには、紫外線吸収剤が含有されているものとしても良い。これにより、基材フィルムに紫外線吸収機能を付与することができる。
紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾトリアゾール系、2−ヒドロキシベンゾフェノン系又はサリチル酸フェニルエステル系等の紫外線吸収剤が挙げられる。例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン類を例示することができる。
なお、紫外線吸収剤のうちでも、分子量が400以上の紫外線吸収剤は、昇華しにくいか、あるいは高沸点で揮発しにくく、フィルムの高温乾燥時にも飛散しにくいため、比較的少量の添加で効果的に紫外線吸収性を発現できる観点から好ましい。
分子量が400以上の紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]等のベンゾトリアゾール系、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミン系、更には2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、1−[2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の分子内にヒンダードフェノールとヒンダードアミンの構造をともに有するハイブリッド系のものが挙げられ、これらは単独で、あるいは二種以上を併用して使用することができる。これらのうちでも、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2−ベンゾトリアゾールや2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]が、特に好ましい。
これら紫外線吸収剤としては、市販品を用いても良く、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928等のチヌビンシリーズ、あるいは2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](分子量659;市販品の例としては、株式会社ADEKA製のLA31)を好ましく使用できる。
上記紫外線吸収剤は、一種単独で又は二種以上組み合わせて用いることができる。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、一般には、基材フィルム中の樹脂に対して、0.05〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲で添加される。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから添加するか、又は直接添加しても良い。
無機粉体のように有機溶媒に溶解しないものは、有機溶媒と樹脂中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してから添加する。
(4−4)微粒子(マット剤)
本発明に係る基材フィルムには、微粒子(マット剤)が含有されているものとしても良い。これにより、基材フィルムの表面の滑り性を高めることができる。
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であっても良い。無機微粒子の例には、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等が含まれる。中でも、二酸化ケイ素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、二酸化ケイ素がより好ましい。
二酸化ケイ素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。中でも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られるフィルムの濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させるため特に好ましい。
微粒子の一次粒子径は、5〜50nmの範囲であることが好ましく、7〜20nmの範囲であることがより好ましい。一次粒子径が大きいほうが、得られるフィルムの滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの範囲の二次凝集体として含有されていても良い。微粒子の一次粒子又はその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50万〜200万倍で一次粒子又は二次凝集体を観察し、一次粒子又は二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は基材フィルム中の樹脂に対して0.05〜1.0質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜0.8質量%の範囲であることがより好ましい。
(5)基材フィルムの形成方法
本発明に係る基材フィルムの形成方法としては、通常のインフレーション法、T−ダイ法、カレンダー法、切削法、流延法、エマルジョン法、ホットプレス法等の形成法が使用できるが、着色抑制、異物欠点の抑制、ダイライン等の光学欠点の抑制等の観点から、形成方法は溶液流延製膜法と溶融流延製膜法が選択でき、特に溶液流延製膜法であることが、カルボン酸ビニルエステル樹脂及びその他の樹脂の分布状態を制御して、均一で平滑な表面を得ることができる観点から好ましい。
(5−1)溶液流延法
以下、本発明に係る基材フィルムを溶液流延法で製膜する製膜方法について説明する。
本発明に係る基材フィルムの形成は、カルボン酸ビニルエステル樹脂、その他の樹脂、可塑剤及び添加剤等を溶媒に溶解させてドープを調製し、濾過する処理、調製したドープをベルト状又はドラム状の金属支持体上に流延しウェブを形成する処理、形成したウェブを金属支持体から剥離してフィルムとする処理、前記フィルムを延伸、乾燥する処理、及び乾燥させたフィルムを冷却後ロール状に巻取る処理により行われる。本発明に係る基材フィルムは、好ましくは固形分中にカルボン酸ビニルエステル樹脂及びその他の樹脂を60〜95質量%の範囲で含有するものである。
以下、各処理について説明する。
(5−1−1)溶解処理
樹脂に対する良溶媒を主とする有機溶媒に、溶解釜中で当該樹脂、場合によって、本発明に係る可塑剤又はその他の化合物を撹拌しながら溶解しドープを形成する処理、あるいは当該樹脂溶液に、前記可塑剤又はその他の化合物溶液を混合して主溶解液であるドープを形成する処理である。
本発明に係る基材フィルムを溶液流延法で製造する場合、ドープを形成するのに有用な有機溶媒は、樹脂、可塑剤及びその他の化合物を同時に溶解するものであれば制限なく用いることができる。
例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン等を挙げることができ、例えば主たる溶媒として、塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトンを好ましく使用することができ、塩化メチレン又は酢酸エチルであることが特に好ましい。
ドープには、上記有機溶媒の他に、1〜40質量%の範囲で炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有させることが好ましい。ドープ中のアルコールの比率が高くなるとウェブがゲル化し、金属支持体からの剥離が容易になり、また、アルコールの割合が少ないときは非塩素系有機溶媒系での樹脂及びその他の化合物の溶解を促進する役割もある。基材フィルムの形成においては、得られる基材フィルムの平面性を高める点から、アルコール濃度が0.5〜15.0質量%の範囲内にあるドープを用いて製膜する方法を適用することができる。
特に、メチレンクロライド、及び炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールを含有する溶媒に、樹脂及びその他の化合物を、計15〜45質量%の範囲で溶解させたドープ組成物であることが好ましい。
炭素原子数1〜4の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールを挙げることができる。これらの内ドープの安定性、沸点も比較的低く、乾燥性も良いこと等からメタノール及びエタノールが好ましい。
樹脂、可塑剤又はその他の化合物の溶解には、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法、特開平9−95544号公報、特開平9−95557号公報、又は特開平9−95538号公報に記載の如き冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号公報に記載されている高圧で行う方法等種々の溶解方法を用いることができるが、特に主溶媒の沸点以上で加圧して行う方法が好ましい。
ドープ中の樹脂の濃度は、10〜40質量%の範囲であることが好ましい。溶解中又は後のドープに化合物を加えて溶解及び分散した後、濾材で濾過し、脱泡して送液ポンプで次工程に送る。
ドープの濾過については、好ましくはリーフディスクフィルターを具備する主濾過器で、ドープを例えば90%捕集粒子径が微粒子の平均粒子径の10〜100倍の濾材で濾過することが好ましい。
本発明において、濾過に使用する濾材は、絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると、濾過材の目詰まりが発生しやすく、濾材の交換を頻繁に行わなければならず、生産性を低下させるという問題点ある。
このため、本発明において、ドープに使用する濾材は、絶対濾過精度0.008mm以下のものが好ましく、0.001〜0.008mmの範囲が、より好ましく、0.003〜0.006mmの範囲の濾材が更に好ましい。
濾材の材質には、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック繊維製の濾材やステンレス繊維等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
本発明において、濾過の際のドープの流量が、10〜80kg/(h・m)、好ましくは20〜60kg/(h・m)であることが好ましい。ここで、濾過の際のドープの流量が、10kg/(h・m)以上であれば、効率的な生産性となり、濾過の際のドープの流量が、80kg/(h・m)以内であれば、濾材にかかる圧力が適正となり、濾材を破損させることがなく、好ましい。
濾圧は、3500kPa以下であることが好ましく、3000kPa以下であることがより好ましく、2500kPa以下であることが更に好ましい。なお、濾圧は、濾過流量と濾過面積を適宜選択することで、コントロールできる。
多くの場合、主ドープには返材が10〜50質量%程度含まれることがある。
返材とは、例えばアクリルフィルムを細かく粉砕した物で、アクリルフィルムを製膜するときに発生する、フィルムの両サイド部分を切り落とした物や、擦り傷などでフィルムの規定値を越えたアクリルフィルム原反が使用される。
また、ドープ調製に用いられる樹脂の原料としては、あらかじめ樹脂及びその他の化合物等をペレット化したものも、好ましく用いることができる。
(5−1−2)流延
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無限に移送する無端の金属支持体、例えば、ステンレスベルト、あるいは回転する金属ドラム等の金属支持体上の流延位置に、加圧ダイスリットからドープを流延する。
流延(キャスト)における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましく、金属支持体としては、ステンレススティールベルト若しくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。キャストの幅は1〜4mの範囲、好ましくは1.5〜3mの範囲、更に好ましくは2〜2.8mの範囲とすることができる。流延処理の金属支持体の表面温度は−50℃〜溶媒が沸騰して発泡しない温度以下、更に好ましくは−30〜0℃の範囲に設定される。温度が高い方がウェブの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎるとウェブが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。好ましい支持体温度としては0〜100℃で適宜決定され、5〜30℃の範囲が更に好ましい。あるいは、冷却することによってウェブをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。特に、流延から剥離するまでの間で支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
ダイの口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一にしやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイには、コートハンガーダイやTダイ等があり、いずれも好ましく用いられる。金属支持体の表面は鏡面となっている。製膜速度を上げるために加圧ダイを金属支持体上に2基以上設け、ドープ量を分割して積層しても良い。
(5−1−3)溶媒蒸発
ウェブ(流延用支持体上にドープを流延し、形成されたドープ膜をウェブという。)を流延用支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる。
溶媒を蒸発させるには、ウェブ側から風を吹かせる方法又は支持体の裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法等があるが、裏面液体伝熱方法が、乾燥効率が良く好ましい。また、それらを組み合わせる方法も好ましく用いられる。流延後の支持体上のウェブを40〜100℃の雰囲気下、支持体上で乾燥させることが好ましい。40〜100℃の雰囲気下に維持するには、この温度の温風をウェブ上面に当てるか赤外線等の手段により加熱することが好ましい。
面品質、透湿性、剥離性の観点から、30〜120秒以内で当該ウェブを支持体から剥離することが好ましい。
(5−1−4)剥離
金属支持体上で溶媒が蒸発したウェブを、剥離位置で剥離する処理である。剥離されたウェブはフィルムとして次工程に送られる。
金属支持体上の剥離位置における温度は好ましくは10〜40℃の範囲であり、更に好ましくは11〜30℃の範囲である。
なお、剥離する時点での金属支持体上でのウェブの剥離時残留溶媒量は、乾燥の条件の強弱、金属支持体の長さ等により50〜120質量%の範囲で剥離することが好ましいが、残留溶媒量がより多い時点で剥離する場合、ウェブが柔らか過ぎると剥離時平面性を損ね、剥離張力によるツレや縦スジが発生しやすいため、経済速度と品質との兼ね合いで剥離時の残留溶媒量が決められる。
ウェブの残留溶媒量は下記式(Z)で定義される。
式(Z)
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を行うことを表す。
金属支持体とフィルムとを剥離する際の剥離張力は、通常、196〜245N/mの範囲内であるが、剥離の際に皺が入りやすい場合、190N/m以下の張力で剥離することが好ましい。
本発明においては、当該金属支持体上の剥離位置における温度を−50〜40℃の範囲内とするのが好ましく、10〜40℃の範囲内がより好ましく、15〜30℃の範囲内とするのが最も好ましい。
(5−1−5)乾燥
乾燥処理は予備乾燥処理、本乾燥処理に分けて行うこともできる。
金属支持体から剥離して得られたウェブを乾燥させる。ウェブの乾燥は、ウェブを、上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させても良いし、テンター乾燥機のようにウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させても良い。
ウェブを乾燥させる手段は特に制限なく、一般的に熱風、赤外線、加熱ローラー、マイクロ波等で行うことができるが、簡便さの点で、熱風で行うことが好ましい。
ウェブの乾燥処理における乾燥温度は好ましくはフィルムのガラス転移点−5℃以下であって、100℃以上の温度で10〜60分の範囲内の熱処理を行うことが効果的である。乾燥温度は100〜200℃の範囲内、更に好ましくは110〜160℃の範囲内で乾燥が行われる。
(5−2)溶融流延法
以下、本発明に係る基材フィルムを溶融流延法で製膜する製膜方法について説明する。
(溶融ペレットの製造処理)
溶融流延法で行う場合には、基材フィルムを形成するためのポリマーと、添加剤との混合物をそれぞれあらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法で良く、例えば、基材フィルムを形成するためのポリマー、可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷又は空冷し、カッティングすることでできる。
原材料は、押出する前に乾燥しておくことが原材料の分解を防止する上で重要である。特にセルロースエステルは吸湿しやすいので、除湿熱風乾燥機や真空乾燥機で70〜140℃で3時間以上乾燥し、水分率を200ppm以下、更に100ppm以下にしておくことが好ましい。
添加剤は、押出機に供給押出機合しておいても良いし、それぞれ個別のフィーダーで供給しても良い。酸化防止剤等少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
酸化防止剤の混合は、固体同士で混合しても良いし、必要により、酸化防止剤を溶剤に溶解しておき、基材フィルムを形成するためのポリマーに含浸させて混合しても良く、あるいは噴霧して混合しても良い。
真空ナウターミキサー等が乾燥と混合を同時にできるので好ましい。また、フィーダー部やダイからの出口等空気と触れる場合は、除湿空気や除湿したNガス等の雰囲気下にすることが好ましい。
押出機は、せん断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないようにペレット化可能でなるべく低温で加工することが好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーで押出機に供給し、そのままフィルム製膜することも可能である。
(溶融混合物をダイから冷却ロールへ押し出す処理)
基材フィルムを形成するためのポリマーを溶融混合物としてから流延ダイまで導入するラインが設けられ、溶融混合物が流延ダイにおいて積層される。
まず、作製したペレットを一軸や二軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度Tmを200〜300℃程度とし、リーフディスクタイプのフィルター等でろ過し異物を除去した後、Tダイからフィルム状に押し出し、冷却ロール上で固化し、弾性タッチロールと押圧しながら流延する。
供給ホッパーから押出機へ導入する際は真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下にして酸化分解等を防止することが好ましい。なお、Tmは、押出機のダイ出口部分の温度である。
ダイに傷や可塑剤の凝結物等の異物が付着するとスジ状の欠陥が発生する場合がある。このような欠陥のことをダイラインとも呼ぶが、ダイライン等の表面の欠陥を小さくするためには、押出機からダイまでの配管には樹脂の滞留部が極力少なくなるような構造にすることが好ましい。ダイの内部やリップにキズ等が極力無いものを用いることが好ましい。
押出機やダイ等の溶融樹脂と接触する内面は、表面粗さを小さくしたり、表面エネルギーの低い材質を用いたりする等して、溶融樹脂が付着し難い表面加工が施されていることが好ましい。具体的には、ハードクロムメッキやセラミック溶射したものを表面粗さ0.2S以下となるように研磨したものが挙げられる。
本発明の冷却ロールには特に制限はないが、高剛性の金属ロールで内部に温度制御可能な熱媒体又は冷媒体が流れるような構造を備えるロールであり、大きさは限定されないが、溶融押し出されたフィルムを冷却するのに十分な大きさであれば良く、通常冷却ロールの直径は100mm〜1m程度である。
冷却ロールの表面材質は、例えば、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、チタン等が挙げられる。更に表面の硬度を上げたり、樹脂との剥離性を改良するため、ハードクロムメッキや、ニッケルメッキ、非晶質クロムメッキ等や、セラミック溶射等の表面処理を施したりすることが好ましい。
冷却ロール表面の表面粗さは、Raで0.1μm以下とすることが好ましく、更に0.05μm以下とすることが好ましい。ロール表面が平滑であるほど、得られるフィルムの表面も平滑にできるのである。もちろん表面加工した表面は更に研磨し上述した表面粗さとすることが好ましい。
本発明の弾性タッチロールとしては、特開平03−124425号公報、特開平08−224772号公報、特開平07−100960号公報、特開平10−272676号公報、国際公開第97/028950号、特開平11−235747号公報、特開2002−36332号公報、特開2005−172940号公報、特開2005−280217号公報に記載されているような表面が薄膜金属スリーブ被覆シリコンゴムロールを使用することができる。
冷却ロールからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
(5−3)延伸
上記溶液流延法又は溶融流延法で製膜した基材フィルムは、延伸されることでフィルム内の分子の配向を制御することができ、目標とする位相差値Ro及びRtを得ることができる。
本発明に係る基材フィルムは、長手方向(MD方向ともいう。)及び/又は幅手方向(TD方向ともいう。)に延伸することが好ましく、少なくとも長手方向又は幅手方向に延伸倍率として1.01〜10倍の範囲内で延伸することが好ましい。
延伸操作は多段階に分割して実施しても良い。また、二軸延伸を行う場合には同時二軸延伸を行っても良いし、段階的に実施しても良い。この場合、段階的とは、例えば、延伸方向の異なる延伸を順次行うことも可能であるし、同一方向の延伸を多段階に分割し、かつ異なる方向の延伸をそのいずれかの段階に加えることも可能である。
すなわち、例えば、次のような延伸ステップも可能である:
・流延方向に延伸→幅手方向に延伸→流延方向に延伸→流延方向に延伸
・幅手方向に延伸→幅手方向に延伸→流延方向に延伸→流延方向に延伸
また、同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方を、張力を緩和して収縮する場合も含まれる。
延伸開始時の残留溶媒量は2〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
当該残留溶媒量は、2質量%以上であれば、膜厚偏差が小さくなり、平面性の観点から好ましく、10質量%以内であれば、表面の凹凸が減り、平面性が向上し好ましい。
本発明に係る基材フィルムは、延伸後の膜厚が所望の範囲になるようにMD方向及び/又はTD方向に、好ましくはTD方向に延伸しても良い。基材フィルムのガラス転移点(Tg)のうち最も低いTgをTgL、最も高いTgをTgHとしたときに、(TgL+15)〜(TgH+50)℃の温度範囲で延伸することが好ましい。上記温度範囲で延伸すると、リターデーションの調整がしやすく、また延伸応力を低下できるのでヘイズが低くなる。また、破断の発生を抑制し、平面性、フィルム自身の着色性に優れた基材フィルムが得られる。延伸温度は、(TgL+20)〜(TgH+40)℃の範囲で行うことが好ましい。
本発明に係る基材フィルムは、ウェブを少なくともMD方向又はTD方向に1.01倍〜10倍の範囲内で延伸することが好ましい。延伸の範囲は、元幅に対して1.1〜10倍の範囲であることが好ましく、1.2〜8倍の範囲であることがより好ましい。上記範囲内であれば、フィルム中の分子の移動が大きく、所望の位相差値が得られるばかりではなく、フィルムを薄膜化でき、フィルムの平面性を向上することができる。
MD方向に延伸するために、剥離張力を130N/m以上で剥離することが好ましく、特に好ましくは150〜170N/mである。剥離後のウェブは高残留溶媒状態であるため、剥離張力と同様の張力を維持することで、MD方向への延伸を行うことができる。ウェブが乾燥し、残留溶媒量が減少するにしたがって、MD方向への延伸率は低下する。
なお、MD方向の延伸はローラーの周速差を利用したローラー延伸機を用いることができ、延伸倍率は、ベルト支持体の回転速度とローラー延伸機の運転速度から算出できる。
TD方向に延伸するには、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全処理あるいは一部の処理を幅方向にクリップ又はピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式と呼ばれる)、中でも、クリップを用いるテンター方式、ピンを用いるピンテンター方式が好ましく用いられる。
TD方向への延伸に際し、フィルム幅手方向に250〜500%/minの延伸速度で延伸することが、フィルムの平面性を向上する観点から、好ましい。
延伸速度は250%/min以上であれば、平面性が向上し、またフィルムを高速で処理することができるため、生産適性の観点で好ましく、500%/min以内であれば、フィルムが破断することなく処理することができ、好ましい。
好ましい延伸速度は、300〜400%/minの範囲内である。延伸速度は下記式(2)によって定義されるものである。
式(2) 延伸速度(%/min)=[(d/d)−1]×100(%)/t
(式(2)において、dは延伸後の樹脂フィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、dは延伸前の樹脂フィルムの前記延伸方向の幅寸法であり、tは延伸に要する時間(min)である。)
本発明に係る基材フィルムの面内位相差値Ro、及び厚さ方向の位相差値Rtは自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下、590nmの波長において、三次元屈折率測定を行い、得られた屈折率n、n、nから算出することができる。
本発明に係る基材フィルムは、下式(i)により定義されるリターデーション値(Ro)が0〜70nmの範囲内にあり、下式(ii)により定義されるリターデーション値(Rt)が−40〜40nmの範囲内にあることが、IPS型液晶表示装置に具備された場合に、視野角やコントラスト等の視認性を向上する観点から好ましい。基材フィルムは、少なくとも前記MD方向又はTD方向に延伸倍率を調整しながら延伸することで、上記位相差値の範囲内に調整することができる。より好ましいリターデーション値の範囲は、Roが0〜30nmの範囲内、Rtが−30〜30nmの範囲内、特に好ましくはRoが0〜10nmの範囲内、Rtが−20〜20nmの範囲内である。
式(i):Ro=(n−n)×d(nm)
式(ii):Rt={(n+n)/2−n}×d(nm)
〔式(i)及び式(ii)において、nは、フィルムの面内方向において屈折率が最大になる方向xにおける屈折率を表す。nは、フィルムの面内方向において、前記方向xと直交する方向yにおける屈折率を表す。nは、フィルムの厚さ方向zにおける屈折率を表す。dは、フィルムの厚さ(nm)を表す。〕
(ナーリング加工)
所定の熱処理又は冷却処理の後、巻取り前にスリッターを設けて端部を切り落とすことが良好な巻姿を得るため好ましい。更に、幅手両端部にはナーリング加工をすることが好ましい。
ナーリング加工は、加熱されたエンボスローラーを押し当てることにより形成することができる。エンボスローラーには細かな凹凸が形成されており、これを押し当てることでフィルムに凹凸を形成し、端部を嵩高くすることができる。
本発明に係る基材フィルムの幅手両端部のナーリングの高さは4〜20μm、幅5〜20mmが好ましい。
また、本発明においては、上記のナーリング加工は、フィルムの製膜処理において乾燥終了後、巻取りの前に設けることが好ましい。
(5−4)巻取り処理
残留溶媒量が2質量%以下となってからフィルムとして巻取る処理であり、残留溶媒量を0.4質量%以下にすることにより寸法安定性の良好なフィルムを得ることができる。
巻取り方法は、一般に使用されているものを用いればよく、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等があり、それらを使い分ければ良い。
(6)基材フィルムの物性
(6−1)ガラス転移点
本発明に係る基材フィルムは、上記したようにカルボン酸ビニルエステル樹脂とその他の樹脂を含有しており、これによりガラス転移点を少なくとも二つ以上有している。
ガラス転移点とは、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた中間点ガラス転移温度(Tmg)である。
ガラス転移点を少なくとも二つ以上有するとは、上記示差走査熱量測定器による測定で得られた示差熱分析結果において、ガラス転移点を示すTgピークが二つ以上現れていることをいう。
基材フィルムがこのように構成されていることで、基材フィルムは、カルボン酸ビニルエステル樹脂と、その他の樹脂との性質とをそれぞれ発揮することができ、カルボン酸ビニルエステル樹脂の延伸工程時取扱い性と、その他の樹脂の性質を両立させることができる。
図1は、示差走査熱量測定器による示差熱分析結果を模式的に示した図である。図1に示す示差熱分析結果では、二つのTgピークT1、T2が現れており、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有している。
本発明においては、基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点のうち最も高いガラス転移点が90℃以上であることが好ましい。例えば図1においては、TgピークT2が90℃以上に表れていることが好ましい。これにより、基材フィルムの剛性が高められ、搬送時の折れ込みを更に効果的に抑制することができる。
また。本発明においては、基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点のうち最も高いガラス転移点と最も低いガラス転移点との温度差が、30℃以上であることが好ましい。例えば図1においては、TgピークT1とT2との差dが30℃以上となっていることが好ましい。これにより、基材フィルムと親水性高分子層との親和性を高めることができ、配光ムラを低減することができる。
(6−2)ヘイズ
本発明に係る基材フィルムは、ヘイズが1%未満であることが好ましく、0.5%未満であることがより好ましい。ヘイズを1%未満とすることにより、基材フィルムの透明性がより高くなるという利点がある。
(6−3)平衡含水率
本発明に係る基材フィルムは、25℃、相対湿度60%における平衡含水率が4%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。平衡含水率を4%以下とすることにより、湿度変化に対応しやすく、光学特性や寸法がより変化しにくく好ましい。
(6−4)フィルム長、幅、膜厚
本発明に係る基材フィルムは、長尺であることが好ましく、具体的には、100〜10000m程度の長さであることが好ましく、ロール状に巻き取られる。また、本発明に係る基材フィルムの幅は1m以上であることが好ましく、更に好ましくは1.4m以上であり、特に1.4〜4mであることが好ましい。
後述する延伸工程後における基材フィルムの厚さは、偏光性積層フィルムの薄型化、生産性の観点から、10〜60μmの範囲内であることが好ましい。厚さが10μm以上であれば、一定以上のフィルム強度や位相差を発現させることができる。厚さが60μm以下であれば、所望の位相差を具備し、かつ偏光性積層フィルムの薄型化に寄与できる。好ましくは、20〜50μmの範囲内である。
なお、後述する延伸処理を複数回行う場合には、全ての延伸処理を行った後の厚さが上記範囲であることが好ましい。
《偏光子》
偏光子は、親水性高分子を含有する親水性高分子層を延伸するとともに二色性物質により染色したものである。親水性高分子層に対して行われる延伸及び染色は、いずれが先に行われても偏光子を形成することができる。親水性高分子層に含有される親水性高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂(以下、「PVA樹脂」ともいう。)が好適に用いられる。PVA樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有するアクリルアミド類などが挙げられる。
PVA樹脂のケン化度は、99.0モル%以下である。本発明において、ケン化度が99.0モル%以下のPVA樹脂を用いる理由としては、5倍超の一軸延伸を実施した場合にも一定の染色速度を維持できるためであり、これによって、偏光性能が高い薄型偏光性積層フィルムを、効率良く生産できるメリットがある。一方、ケン化度が99.0モル%を超えるPVA樹脂を使用した場合には、著しく染色速度が遅くなり、十分な偏光性能を有する偏光子が得られない場合があり、また製造において通常の数倍もの時間を要する不具合を生じる場合がある。
また、PVA樹脂のケン化度は、90モル%以上であることが好ましく、94モル%以上であることがより好ましい。ケン化度が90モル%より小さいと、耐水性等の強度が十分でない場合がある。
ここでいうケン化度とは、PVA樹脂の原料であるポリ酢酸ビニル系樹脂に含まれる酢酸基がケン化工程により水酸基に変化した割合をユニット比(モル%)で表したものであり、下記式で定義される数値である。JIS K 6726(1994)で規定されている方法で求めることができる。
ケン化度(モル%)=(水酸基の数)÷(水酸基の数+酢酸基の数)×100
ケン化度が高いほど、水酸基の割合が高いことを示しており、すなわち結晶化を阻害する酢酸基の割合が低いことを示している。また、本発明に用いるPVA樹脂は、ケン化度が99.0モル%以下であれば特に限定されるものではなく、一部が変性されている変性ポリビニルアルコールでも良い。例えば、PVA樹脂をエチレン、プロピレン等のオレフィン、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸のアルキルエステル、アクリルアミド等で数%ほど変性したもの等が挙げられる。PVA樹脂の平均重合度も特に限定されるものではないが、100〜10000が好ましく、1500〜10000がより好ましい。
このような特性を有するPVA樹脂としては、例えば(株)クラレ製のPVA124(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA117(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、PVA624(ケン化度:95.0〜96.0モル%)及びPVA617(ケン化度:94.5〜95.5モル%);例えば日本合成化学工業(株)製のAH−26(ケン化度:97.0〜98.8モル%)、AH−22(ケン化度:97.5〜98.5モル%)、NH−18(ケン化度:98.0〜99.0モル%)及びN−300(ケン化度:98.0〜99.0モル%);例えば日本酢ビ・ポバール(株)のJF−17(ケン化度:98.0〜99.0モル%)、JF−17L(ケン化度:98.0〜99.0モル%)及びJF−20(ケン化度:98.0〜99.0モル%)などが挙げられ、本発明において好適に用いることができる。
偏光子は、好ましくは5倍超、更に好ましくは5倍超でかつ17倍以下の延伸倍率で一軸延伸されている。
偏光子は、上述のようなPVA樹脂に二色性物質が吸着配向されている。偏光子の厚さは10μm以下であり、好ましくは7μm以下である。偏光子の厚さを10μm以下とすることにより、薄型の偏光性積層フィルムを構成することができる。
《他の光学層》
以上のようして構成される本発明の偏光性積層フィルムは、実用に際して他の光学層を積層した偏光性積層フィルムとして用いることができる。また、上記基材フィルムがこれらの光学層の機能を有していても良い。他の光学層の例としては、ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルム、表面に凹凸形状を有する防眩機能付きフィルム、表面反射防止機能付きフィルム、表面に反射機能を有する反射フィルム、反射機能と透過機能とを併せ持つ半透過反射フィルム、視野角補償フィルムが挙げられる。
ある種の偏光光を透過し、それと逆の性質を示す偏光光を反射する反射型偏光フィルムに相当する市販品としては、例えばDBEF(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)、APF(3M社製、住友スリーエム(株)から入手可能)が挙げられる。視野角補償フィルムとしては基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルム、ポリカーボネート系樹脂からなる位相差フィルム、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムが挙げられる。基材表面に液晶性化合物が塗布され、配向されている光学補償フィルムに相当する市販品としては、WVフィルム(富士フイルム(株)製)、NHフィルム(新日本石油(株)製)、NRフィルム(新日本石油(株)製)等が挙げられる。また、環状ポリオレフィン系樹脂からなる位相差フィルムに相当する市販品としては、アートン(登録商標)フィルム(JSR(株)製)、エスシーナ(登録商標)(積水化学工業(株)製)、ゼオノア(登録商標)フィルム(日本ゼオン(株)製)等が挙げられる。
《偏光性積層フィルムの製造方法》
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法は、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有する基材フィルム上に、逐次塗布又は共押出により、親水性高分子を含有する親水性高分子層を形成する工程(親水性高分子層形成工程)と、積層フィルムを延伸する工程(延伸工程)と、親水性高分子層を二色性物質により染色する工程(染色工程)と、を有することを特徴とする。
本発明の製造方法においては、延伸工程及び染色工程をこの順に行うものでなくとも良い。すなわち、親水性高分子層形成工程の後に、染色工程を行い、更にその後に延伸工程を行うものとしても良い。また、後述するように、本発明の製造方法は、親水性高分子層形成工程、延伸工程及び染色工程以外の工程を更に有するものであっても良い。
本発明の偏光性積層フィルムは、親水性高分子層(偏光子)の片側の面に、基材フィルムを有する。基材フィルムは偏光板保護フィルムとしてそのまま用いることができ、偏光子の基材フィルムと接していない側の面に偏光板保護フィルムを貼合することで偏光板として使用することができる。また、親水性高分子層を基材フィルムから剥離し、当該親水性高分子層の両面に偏光板保護フィルムを貼合し偏光板として使用しても良い。
[1]親水性高分子層形成工程
まず、上記した基材フィルム上に、逐次塗布、又は共押出により、親水性高分子を含有する親水性高分子層を形成する親水性高分子層形成工程を行う。
親水性高分子層は、例えば基材フィルム上に前記PVA樹脂を含む塗布液を塗布し、乾燥することにより得ることができる(逐次塗布)。
上記塗布液は、代表的には、上記PVA系樹脂を溶媒に溶解させた溶液である。溶媒としては、例えば、水、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン、各種グリコール類、トリメチロールプロパン等の多価アルコール類、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類が挙げられる。これらは単独で、又は、二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、好ましくは、水である。溶液のPVA系樹脂濃度は、溶媒100質量部に対して、好ましくは3〜20質量部である。このような樹脂濃度であれば、基材フィルムに密着した均一な塗布膜を形成することができる。
塗布液に、添加剤を配合しても良い。添加剤としては、例えば、可塑剤、界面活性剤等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、エチレングリコールやグリセリン等の多価アルコールが挙げられる。界面活性剤としては、例えば、非イオン界面活性剤が挙げられる。これらは、得られるPVA系樹脂層の均一性や染色性、延伸性をより一層向上させる目的で使用し得る。
塗布液の塗布方法としては、任意の適切な方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、スピンコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレコート法、ナイフコート法(コンマコート法等)等が挙げられる。
上記乾燥温度は、基材フィルムのガラス転移点(Tg)の最も高いTgをTgHとしたときに、TgH℃以下であることが好ましく、更に好ましくは(TgH−10)℃以下である。このような温度範囲で乾燥することにより、親水性高分子層を形成する前に基材フィルムが変形することを防止して、得られる親水性高分子層の配向性が悪化することを防止することができる。こうして、基材フィルムが親水性高分子層とともに良好に変形し得、後述の延伸を良好に行うことができる。その結果、親水性高分子層に良好な配向性を付与することができ、優れた光学特性を有する薄型偏光板を得ることができる。ここで、「配向性」とは、PVA樹脂層の分子鎖の配向性を意味する。
また、本発明に係る積層フィルムは、例えば、基材フィルムの形成材と、親水性高分子層の形成材の共押出により形成することができる。かかる共押出により基材フィルムと親水性高分子層が一体化した状態の積層フィルムが得られる。共押出にあたっては、基材フィルムの材料及び親水性高分子層の材料を、それぞれ各層の形成材として共押出機に仕込み、共押出される基材フィルム及び親水性高分子層の厚さが、前記範囲になるように制御することが好ましい。
形成する親水性高分子層の層厚は、3μm超かつ30μm以下であることが好ましく、更には5〜20μmが好ましい。3μm以下であると延伸後に薄くなりすぎて染色性が著しく悪化してしまい、30μmを超えると、最終的に得られる偏光子の厚さが10μmを超えてしまうことがあり好ましくない。
なお、基材フィルム上に親水性高分子層を形成する前に、基材フィルムと親水性高分子層(偏光子)との塗布性を更に向上させるために、基材フィルムの親水性高分子層が形成される側の面に、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理等を行っても良い。
[2]延伸工程
延伸工程においては、基材フィルム及び親水性高分子層からなる積層フィルムを、積層フィルムの元長に対して、1.01〜17.0倍の延伸倍率となるように一軸延伸し延伸フィルムを得ることが好ましい。好ましくは、4.0倍超かつ17.0倍以下、更に好ましくは5.0倍超かつ8.0倍以下の延伸倍率となるように一軸延伸する。延伸倍率が5倍以上とすると、PVA樹脂からなる親水性高分子層がより十分に配向し、結果として、偏光子の偏光度をより十分に高くすることができる。また、延伸倍率を17倍以下とすると、延伸時の積層フィルムの破断が生じにくくなると同時に、延伸フィルムの厚さが必要以上に薄くなることを抑制し、後工程での加工性・ハンドリング性を向上させることができる。延伸工程における延伸処理は、一段での延伸に限定されることはなく多段で行うこともできる。多段で行う場合は、延伸処理の全段を合わせて上記延伸倍率となるように延伸処理を行う。
延伸工程においては、積層フィルムの長手方向に対して行う縦延伸処理が好ましいが、偏光性能をさほど求めない場合にはテンター法による横一軸延伸等に代表される固定端一軸延伸であっても構わない。縦延伸方式としては、ロール間延伸方法、圧縮延伸方法、テンターを用いた延伸方法等が挙げられる。延伸処理は、縦延伸処理に限定されることはなく、斜め延伸処理等であっても良い。また、自由端一軸延伸であることが好ましい。
また、延伸処理は、湿式延伸方法と乾式延伸方法のいずれも採用できるが、乾式延伸方法を用いる方が、積層フィルムを延伸する際の温度を広い範囲から選択することができる点で好ましい。
通常、延伸温度は基材フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+50℃の範囲内とすることが好ましく、Tg〜Tg+40℃の範囲内とすることがより好ましいが、本発明においては、基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点の間の温度であることが好ましい。すなわち、基材フィルムが二つのガラス転移点を有する場合には、その二つのガラス転移点の間の温度とし、基材フィルムが三つ以上のガラス転移点を有する場合には、それらのうち最も高いガラス転移点と最も低いガラス転移点との間とする。これにより、延伸工程以降の搬送性を良好とすることができる。
(湿式延伸)
また、本発明においては、延伸工程において、積層フィルムを水中で延伸する(以下、「湿式延伸」ともいう。)ものとしても良い。
湿式延伸における延伸方法は、任意の適切な方法を採用することができる。具体的には、固定端延伸でも良いし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層フィルムを通して一軸延伸する方法)でも良い。積層フィルムの延伸は、一段階で行っても良いし、多段階で行っても良い。多段階で行う場合、後述の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。
湿式延伸は、例えば、純水、蒸留水、イオン交換水、水道水等に積層フィルムを浸漬させて行うものとしても良いが、好ましくは、ホウ酸水溶液中に積層フィルムを浸漬させて行う(ホウ酸水中湿式延伸)。延伸浴としてホウ酸水溶液を用いることで、PVA樹脂を含有する親水性高分子層に、延伸時にかかる張力に耐える剛性と、水に溶解しない耐水性とを付与することができる。具体的には、ホウ酸は、水溶液中でテトラヒドロキシホウ酸アニオンを生成してPVA樹脂と水素結合により架橋し得る。その結果、PVA樹脂に剛性と耐水性とを付与して、良好に延伸することができ、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光性積層フィルムを作製することができる。
上記ホウ酸水溶液は、好ましくは、溶媒である水にホウ酸及び/又はホウ酸塩を溶解させることにより得られる。ホウ酸濃度は、水100質量部に対して、好ましくは1〜10質量部である。ホウ酸濃度を1質量部以上とすることにより、PVA樹脂の溶解を効果的に抑制することができ、より高特性の偏光性積層フィルムを作製することができる。なお、ホウ酸又はホウ酸塩以外に、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒド等を溶媒に溶解して得られた水溶液も用いることができる。
後述の染色工程により、あらかじめ親水性高分子層に二色性物質(代表的には、ヨウ素)が吸着されている場合、好ましくは、上記延伸浴(ホウ酸水溶液)にヨウ化物を配合する。ヨウ化物を配合することにより、親水性高分子層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは、ヨウ化カリウムである。ヨウ化物の濃度は、水100質量部に対して、好ましくは0.05〜15質量部、より好ましくは0.5〜8質量部である。
湿式延伸における延伸温度(延伸浴の液温)は、好ましくは40〜85℃、より好ましくは50〜85℃である。このような温度であれば、親水性高分子層に含有されるPVA樹脂の溶解を抑制しながら高倍率に延伸することができる。一方、延伸浴の温度が高温になるほど、PVA樹脂の溶解性が高くなって、優れた光学特性が得られないおそれがある。積層フィルムの延伸浴への浸漬時間は、好ましくは15秒〜5分である。
湿式延伸における延伸倍率は、1.01〜8.0倍程度であり、好ましくは5.0〜8.0倍程度である。
[3]染色工程
染色工程では、積層フィルムの親水性高分子層を二色性物質で染色する。二色性物質としては、例えば、ヨウ素や有機染料等が挙げられる。有機染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック等が使用できる。これらの二色性物質は、一種類でも良いし、二種類以上を併用して用いても良い。
染色工程は、例えば、上記二色性物質を含有する溶液(染色溶液)に、積層フィルム全体を浸漬することにより行う。染色溶液としては、上記二色性物質を溶媒に溶解した溶液を使用できる。染色溶液の溶媒としては、一般的には水が使用されるが、水と相溶性のある有機溶媒が更に添加されても良い。二色性物質の濃度としては、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.02〜7質量%であることがより好ましく、0.025〜5質量%であることが特に好ましい。
二色性物質としてヨウ素を使用する場合、染色効率をより一層向上できることから、更にヨウ化物を添加することが好ましい。このヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、ヨウ化チタン等が挙げられる。これらヨウ化物の添加割合は、染色溶液において、0.01〜10質量%であることが好ましい。ヨウ化物の中でも、ヨウ化カリウムを添加することが好ましい。ヨウ化カリウムを添加する場合、ヨウ素とヨウ化カリウムの割合は質量比で、1:5〜1:100の範囲にあることが好ましく、1:6〜1:80の範囲にあることがより好ましく、1:7〜1:70の範囲にあることが特に好ましい。
染色溶液への積層フィルムの浸漬時間は、特に限定されないが、通常は15秒〜15分間の範囲であることが好ましく、1〜3分間であることがより好ましい。また、染色溶液の温度は、10〜60℃の範囲にあることが好ましく、20〜40℃の範囲にあることがより好ましい。
[4]その他の工程
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法においては、上記積層工程、延伸工程及び染色工程以外に、その他の工程を含み得る。その他の工程としては、例えば、上記延伸工程とは別の空中延伸工程、不溶化工程、架橋工程、洗浄工程、乾燥工程等が挙げられる。その他の工程は、任意の適切なタイミングで行い得る。
(空中延伸工程)
染色工程の後に延伸工程を行うものであって、当該延伸工程においてホウ酸水溶液中で湿式延伸を行う場合にあっては、本発明の偏光性積層フィルムの製造方法は、染色工程の前に積層フィルムを空中延伸する空中延伸工程を有することが好ましい。
空中延伸工程においては、積層工程にて形成された積層フィルムを、本発明に係る基材フィルムの二つ以上のガラス転移点(Tg)のうち最も低いTgをTgLとしたときに、(TgL+15)℃以上で空中延伸する。このような空中延伸工程は、ホウ酸水溶液中での湿式延伸に対する予備的又は補助的な延伸として位置付けることができる。
空中延伸工程を行うことで、積層フィルムをより高倍率に延伸することができる場合がある。その結果、より優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光性積層フィルムを製造することができる。空中延伸を行うことで、基材フィルムの配向を抑制しながら延伸することができる。当該基材フィルムは、その配向性が向上するにつれて延伸張力が大きくなり、安定的な延伸が困難となったり、基材フィルムが破断したりする。そのため、基材フィルムの配向を抑制しながら延伸することで、積層フィルムをより高倍率に延伸することができる。
また、空中延伸を組み合わせることで、PVA樹脂の配向性を向上させ、これにより、ホウ酸水中溶液での湿式延伸後においてもPVA樹脂の配向性を向上させ得る。具体的には、あらかじめ、空中延伸によりPVA樹脂の配向性を向上させておくことで、ホウ酸水溶液中での湿式延伸の際にPVA樹脂がホウ酸と架橋しやすくなり、ホウ酸が結節点となった状態で延伸されることで、湿式延伸後もPVA樹脂の配向性が高くなるものと推定される。その結果、優れた光学特性(例えば、偏光度)を有する偏光性積層フィルムを製造することができる。
空中延伸工程における延伸方法は、上記延伸工程、固定端延伸でも良いし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でも良い。また、延伸は、一段階で行っても良いし、多段階で行っても良い。多段階で行う場合、後述の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。本工程における延伸方向は、好ましくは、上記延伸工程の延伸方向と略同一である。
空中延伸における延伸倍率は、好ましくは3.5倍以下である。
(架橋工程)
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法は、架橋工程を有するものとしても良い。架橋処理を施すことにより、親水性高分子層に耐水性を付与することができる。架橋工程は、延伸工程の前に行うことが好ましく、また、染色工程の後に延伸工程を行う場合には、染色工程の後であって延伸工程の前に行うことが好ましい。
架橋処理は、例えば、架橋剤を含む溶液(架橋溶液)中に積層フィルムを浸漬することにより行うことができる。
架橋剤としては、従来公知の物質を使用することができる。例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒド等が挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。
架橋溶液として、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。溶媒としては、例えば水が使用できるが、更に、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1〜20質量%の範囲にあることが好ましく、6〜15質量%であることがより好ましい。
架橋溶液中には、ヨウ化物を添加しても良い。ヨウ化物の添加により、親水性高分子層の面内における偏光特性をより均一化させることができる。また、ヨウ化物の添加は、上記染色工程後に架橋工程を行う場合に特に好ましい。ヨウ化物を添加することにより、親水性高分子層に吸着させたヨウ素の溶出を抑制することができる。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化スズ、ヨウ化チタンが挙げられる。ヨウ化物の含有量は、0.05〜15質量%、より好ましくは0.5〜8質量%である。
架橋溶液への積層フィルムの浸漬時間は、通常、15秒〜20分間であることが好ましく、30秒〜15分間であることがより好ましい。また、架橋溶液の温度は、10〜80℃の範囲にあることが好ましい。
(洗浄工程)
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法においては、上記延伸工程及び染色工程の後に、洗浄工程を行うことが好ましい。洗浄工程としては、水洗浄処理を行うことができる。水洗浄処理は、通常、イオン交換水、蒸留水等の純水に、延伸及び染色後の積層フィルムを浸漬することにより行うことができる。水洗浄温度は、通常3〜50℃、好ましくは4〜20℃の範囲内である。浸漬時間は通常2〜300秒間、好ましくは3〜240秒間である。
洗浄工程は、ヨウ化物溶液による洗浄処理と水洗浄処理を組み合わせても良く、適宜にメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、プロパノール等の液体アルコールを配合した溶液を用いることもできる。
(乾燥工程)
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法においては、洗浄工程の後に、乾燥工程を行うことが好ましい。乾燥工程としては、任意の適切な方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)を採用し得る。例えば、加熱乾燥の場合の乾燥温度は、基材フィルムの二つ以上のガラス転移点(Tg)のうち最も高いTgをTgHとしたときに、TgH℃以下であることが好ましく、更に好ましくは(TgH−10)℃以下である。
また、乾燥工程では、積層フィルムを乾燥させながら延伸するものとしても良い。乾燥させながら延伸することにより、当該延伸方向と略直交する方向(例えば、幅方向)に積層体をより収縮(ネックイン)させて、親水性高分子層の配向性をより高めることができる。その結果、親水性高分子層のヨウ素錯体の配向性が向上し得、光学特性(例えば、偏光度)に極めて優れた偏光性積層フィルムを製造することができる。
乾燥工程における延伸方法は、固定端延伸でも良いし、自由端延伸(例えば、周速の異なるロール間に積層体を通して一軸延伸する方法)でも良い。また、延伸は、一段階で行っても良いし、多段階で行っても良い。多段階で行う場合、後述の延伸倍率は、各段階の延伸倍率の積である。本工程における延伸方向は、好ましくは、上記延伸工程の延伸方向と略同一である。
上記自由端延伸は、通常、一方向のみに延伸する延伸方法を意味する。ここで、フィルムをある一方向に延伸すると、当該延伸方向に対して略垂直方向にフィルムが収縮し得る。この収縮を抑制することなく延伸する方法を自由端延伸という。一方、延伸方向に対して略垂直方向へのフィルムの収縮を抑制しながら延伸する方法を、通常、固定端延伸という。固定端延伸の方法としては、例えば、搬送ロールを用いたロール延伸においてロール間の距離を短くして搬送方向に延伸する方法や、搬送方向に対して略垂直方向(幅方向)のフィルム端部を延伸機のチャック等で固定した状態で搬送方向に延伸する方法が挙げられる。これらの方法は、幅方向の収縮率を制御することができる。具体的には、ロール延伸においては、ロール間の距離を短くするほど収縮量を減らすことができ、ロール間の距離を長くするほど収縮量は大きくなって自由端延伸の収縮量へ近づく。フィルム端部をチャックで固定して延伸する場合は、延伸と同時にチャックの幅を適切に狭めていくことで幅方向の収縮率を制御できる。
乾燥温度(延伸温度)は、本発明に係る基材フィルムの二つ以上のガラス転移点(Tg)のうち最も低いTgをTgLとしたときに、(TgL+15)℃以上であることが好ましい。
乾燥工程における延伸倍率は、好ましくは1.01〜1.5倍、より好ましくは1.01〜1.25倍である。
《偏光板の製造方法》
本発明の偏光板の製造方法は、上記のようにして偏光性積層フィルムを製造する工程に続いて、当該偏光性積層フィルムの偏光子の少なくとも一方の面に偏光板保護フィルムを貼合する工程を有する。
本発明の偏光性積層フィルムの製造方法としては、偏光子の片側の面に接する基材フィルムを、偏光板保護フィルムとしてそのまま用い、偏光子の基材フィルムと接していない側の面に偏光板保護フィルムを貼合することで偏光板として使用することができる。また、偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥離した後、少なくとも偏光子の基材フィルムが接していた面、好ましくは偏光子の両面に偏光板保護フィルムを貼合し偏光板として使用しても良い。
本発明の偏光板の製造方法に用いられる偏光板保護フィルムとしては、従来公知の偏光板保護フィルムが用いられるが、例えば、偏光板の視認性や取扱いのしやすさから、セルロースエステル等のポリマーフィルムからなることが好ましい。
このような偏光板保護フィルムの厚さとしては、偏光板の薄膜化及び偏光板の強度の観点から、15〜65μmが好ましく、18〜40μmが更に好ましく、20〜35μmが最も好ましい。
以下、偏光板の製造方法をより具体的に説明する。
偏光板は、光硬化性接着剤を用いて、偏光子の一方の面に、上述した偏光板保護フィルムを貼り合せることにより製造することができる。偏光板保護フィルムの両面で接着性が異なる場合は、接着性の良い方を貼り合わせることが好ましい。
偏光板は、偏光板保護フィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程と、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着面のうち、少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、接着剤層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとを接着し、貼り合せる貼合工程と、接着剤層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとが接着された状態で接着剤層を硬化させる硬化工程とを含む製造方法によって製造することができる。
前処理工程では、偏光板保護フィルムの偏光子との接着面に対して易接着処理する。偏光子の両面にそれぞれ偏光板保護フィルム及び位相差フィルムが接着される場合は、それぞれの偏光板保護フィルム及び位相差フィルムに対し易接着処理が行われる。次の接着剤塗布工程では、易接着処理された表面が偏光子との貼合面として扱われるので、偏光板保護フィルムの両表面のうち、光硬化型樹脂層と貼合する面に、易接着処理を施す。
接着剤塗布工程では、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、光硬化性接着剤が塗布される。偏光子又は偏光板保護フィルムの表面に直接、光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法は特に限定されるものではない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の湿式塗布方式が利用できる。また、偏光子と偏光板保護フィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させたのち、ロール等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
上記の方法により光硬化性接着剤を塗布した後は、貼合工程を行う。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこに偏光板保護フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で偏光板保護フィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と偏光板保護フィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と偏光板保護フィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面に偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して偏光板保護フィルム及び位相差フィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面に偏光板保護フィルムを重ね合わせた場合は、偏光子側と偏光板保護フィルム側、また偏光子の両面に偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを重ね合わせた場合は、その両面の偏光板保護フィルム及び位相差フィルム側)からロール等で挟んで加圧することになる。ロールの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるロールは、同じ材質であっても良いし、異なる材質であっても良い。
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、カチオン重合性化合物(例えば、エポキシ化合物やオキセタン化合物)やラジカル重合性化合物(例えば、アクリレート系化合物、アクリルアミド系化合物等)を含む光硬化型樹脂層を硬化させ、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と偏光板保護フィルム、あるいは偏光子と位相差フィルムとを接着させる。偏光子の片面に偏光板保護フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は偏光板保護フィルム側のいずれから照射しても良い。また、偏光子の両面に偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して偏光板保護フィルム及び位相差フィルムを重ね合わせた状態で、活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
硬化に適用される活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができるが、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般には電子線や紫外線が好ましく用いられる。
電子線の照射条件は、前記接着剤を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5〜300kVであり、更に好ましくは10〜250kVである。加速電圧が5kV以上の場合、硬化不足となることがなく、加速電圧が300kV以内の場合、偏光子にダメージを与えることがない。照射線量としては、5〜100kGy、更に好ましくは10〜75kGyである。
紫外線の照射条件は、前記接着剤を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は積算光量で50〜1500mJ/cmであることが好ましく、100〜500mJ/cmであるのが更に好ましい。
前記製造方法を連続ラインで行う場合、ライン速度は、接着剤の硬化時間によるが、好ましくは1〜500m/min、より好ましくは5〜300m/min、更に好ましくは10〜100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、又は偏光板保護フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験等に耐え得る偏光板が作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、接着剤の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
以上のようにして得られた偏光板において、接着剤層の層厚は、特に限定されないが、通常0.01〜10μmであり、好ましくは0.5〜5μmである。
なお、本発明の偏光板の製造方法としては、上記した光硬化性接着剤を用いる場合に限られるものではなく、下記の方法を採用するものであっても良い。
すなわち、偏光板保護フィルムの偏光子側をアルカリケン化処理し、ヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。もう一方の面には他の偏光板保護フィルムを貼合することができる。
この場合、偏光板保護フィルムとしては、例えば、KC8UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC6UA、KC4UA、KC2UA(以上、コニカミノルタ(株)製)等が好ましく用いられる。
また、本発明に係る偏光板を液晶表示装置に用いる場合は、液晶セル側に配置される偏光板保護フィルムとして、位相差フィルムを用いることができる。
本発明に係る位相差フィルムは、市販品として入手することができ、例えば、VA用位相差フィルムとしては、コニカミノルタタック KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC4FR、KC4KR、KC4DR、KC4SR(以上、コニカミノルタ(株)製)等が挙げられる。その他、VA用位相差フィルム以外で使用できるフィルムとしては、KC4UE、KC8UE、KC4CZ(以上、コニカミノルタ(株)製)等が挙げられる。
表示装置の表面側に用いられる偏光板保護フィルムには、防眩層又はクリアハードコート層のほか、反射防止層、帯電防止層、防汚層、バックコート層を有することが好ましい。
本発明に係る偏光板を液晶表示装置に用いることによって、種々の視認性に優れた液晶表示装置を作製することができる。
《液晶表示装置の製造方法》
本発明の製造方法により製造された偏光板は、液晶表示装置等の各種装置の製造等に好ましく用いることができる。
液晶表示装置の製造は、従来公知の方法に準じて行い得る。すなわち、液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光板又は光学フィルム、及び必要に応じての照明システム等の構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造されるが、本発明においては本発明の偏光板の製造方法を用いる点を除いて特に限定はなく、従来公知の方法に準じ得る。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型、VA型、IPS型等の任意のタイプのものを用いることができる。特にIPS型液晶表示装置を用いることが好ましい。
(IPS型液晶表示装置)
IPS型液晶表示装置における液晶パネルの液晶層は、初期状態で基板面と平行なホモジニアス配向で、かつ基板と平行な平面で液晶層のダイレクターは電圧無印加時で電極配線方向と平行又は幾分角度を有し、電圧印加時で液晶層のダイレクターの向きが電圧の印加に伴い電極配線方向と垂直な方向に移行し、液晶層のダイレクター方向が電圧無印加時のダイレクター方向に比べて45°電極配線方向に傾斜したとき、当該電圧印加時の液晶層は、まるで1/2波長板のように偏光の方位角を90°回転させ、出射側偏光板の透過軸と偏光の方位角が一致して白表示となる。
一般に、液晶層の層厚は一定であるが、横電タブレット型表示装置やスマートフォン等の携帯用機器界駆動であるため、液晶層の層厚に若干凹凸を設ける方がスイッチングに対する応答速度を上げることができるとも考えられるが、液晶層の層厚が一定でない場合であっても、その効果を最大限生かすことができるものであり、液晶層の層厚の変化に対して影響が少ない。本形態に係る液晶表示装置は、大型の液晶テレビに用いられるほか、タブレット型表示装置やスマートフォン等の携帯用機器にも好ましく用いられ得る。本発明に係る偏光板は薄膜の偏光板とすることができることから、タブレット型表示装置やスマートフォン等の携帯用機器に用いることが好ましい。
なお、IPS型液晶セルの詳細について特に制限はなく、従来公知の他の技術的事項(例えば、特開2010−3060号公報等)を参照することで、本発明を実施してももちろん良い。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
[実施例1]
《偏光性積層フィルム1の作製》
(1)積層工程
(1−1)基材フィルムの形成
まず、以下のようにして溶液流延製膜法にて基材フィルムを形成した。
(カルボン酸ビニルエステル樹脂(樹脂A)の調製)
樹脂Aとして、カルボン酸ビニルエステル樹脂を公知の方法によって調製した。
すなわち、撹拌機付きの反応器に、酢酸ビニル1600g、プロピオン酸メチル650g及び酢酸メチル50gを仕込み、反応器内部を充分に窒素置換した後、60℃に昇温し、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.233g、酢酸パラジウムを22.4mg(0.1ミリモル)を添加し、60℃、4時間の反応をさせた。反応終了後、反応器を冷却し、反応液をヘキサンで再沈し、得られた重合体を50℃の熱風乾燥及び100℃の真空乾燥を行うことにより、重量平均分子量8万、ガラス転移点(Tg)30℃のポリ酢酸ビニルを得た。該重合体の収率は48%であった。
(ドープの調製)
下記成分を密閉容器に投入し、加熱及び撹拌しながら完全に溶解させた。得られた溶液をリーフディスクフィルターを装着した濾過器にて、温度50℃で濾過して、主ドープを得た。濾材は、公称濾過精度20μmのものを用いた。
<ドープの組成>
樹脂Aとしてポリ酢酸ビニル 10質量部
樹脂Bとしてポリ乳酸(重量平均分子量:9万、ガラス転移点:57℃)
90質量部
紫外線吸収剤として2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](株式会社ADEKA製のLA31、分子量659) 2質量部
ジクロロメタン 430質量部
メタノール 11質量部
なお、樹脂A及び樹脂Bの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。また、樹脂A及び樹脂Bのガラス転移点(Tg)は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DSC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めた。
(製膜)
得られたドープを、ベルト流延装置を用いてステンレスバンド支持体上に、ドープの液温度35℃、幅1.95mの条件で、最終膜厚が170μmとなる条件で均一に流延させた。ステンレスバンド支持体上で、得られたドープ膜中の有機溶媒を、残留溶媒量が100質量%になるまで蒸発させてウェブを形成した後、ステンレスバンド支持体からウェブを剥離した。得られたウェブを、110℃で更に5分予備乾燥させて残留溶媒量を10質量%にした後、ウェブをテンターで、160℃の条件でTD方向の元幅に対して1.2倍に延伸した。延伸速度は300%/minの速度で延伸した。
テンターで延伸後、130℃で5分間緩和を行った後、乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させた。乾燥温度は130℃で、搬送張力は100N/mとした。得られたフィルムを、2.0m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm高さ5μmのナーリング加工を施し、初期張力220N/m、終張力110N/mで内径15.24cmコアに巻取り、長さ4000m、厚さ174.3μmの基材フィルムを得た。
(1−2)親水性高分子層の積層
ポリビニルアルコール粉末(クラレ(株)製、平均重合度2400、ケン化度98.0〜99.0モル%、商品名:PVA124)を95℃の熱水中に溶解させ濃度8質量%のポリビニルアルコール水溶液を調製した。
次に、基材フィルムの表面にコロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、基材フィルムのコロナ放電処理面に、調製した水溶液を基材フィルムの上にリップコーターを用いて塗工し80℃で20分間乾燥させ、基材フィルム及び親水性高分子層からなる二層の積層フィルムを形成した。
(2)延伸工程
テンター装置を用いて上記積層フィルムに対して160℃で5.8倍の自由端一軸延伸を実施した。延伸後の水溶性高分子層の層厚は6.1μmであった。
(3)染色工程
その後、積層フィルムを60℃の温浴に60秒浸漬し、30℃のヨウ素とヨウ化カリウムの混合水溶液である下記組成の染色溶液に150秒ほど浸漬して染色した後、10℃の純水で余分なヨウ素液を洗い流した。次いで76℃のホウ酸とヨウ化カリウムの混合水溶液である下記組成の架橋溶液に600秒浸漬させた。その後10℃の純水で4秒間洗浄し、最後に50℃で300秒間乾燥させた。このようにして、偏光性積層フィルム1を作製した。
<染色溶液>
水:100質量部
ヨウ素:0.6質量部
ヨウ化カリウム:10質量部
<架橋溶液>
水:100質量部
ホウ酸:9.5質量部
ヨウ化カリウム:5質量部
《偏光性積層フィルム2〜22の作製》
上記偏光性積層フィルム1の作製において、基材フィルムの材料として表1に記載の樹脂A及び樹脂Bを用い、表1に記載の樹脂A:樹脂Bの質量組成比率で組成し、延伸工程における延伸温度を表1に記載の温度に変更した以外は同様にして、偏光性積層フィルム2〜22を作製した。
なお、表1中、MMA−Stは、メチルメタクリレートとスチレンとの共重合比が50:50である樹脂を示し、MMA−ACMOは、メチルメタクリレートとアクリロイルモルホリンとの共重合比が70:30である樹脂を示し、PMMAは、ポリメチルメタクリレートを示し、AS樹脂は、スチレンとアクリロニトリルとの共重合比が70:30である樹脂を示している。
《偏光性積層フィルム23の作製》
上記偏光性積層フィルム1の作製において、基材フィルムの形成方法を以下の溶融流延製膜法に変更した以外は同様にして偏光性積層フィルム23を作製した。
まず、下記成分を混合した。
<樹脂組成物の組成>
樹脂Aとしてポリ酢酸ビニル 50質量部
樹脂Bとしてポリメチルメタクリレート:PMMA 50質量部
可塑剤:アセチルトリブチルシトレート(ATBC) 5質量部
紫外線吸収剤として2,2′−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](株式会社ADEKA製のLA31、分子量659) 2質量部
得られた混合物を、二軸押出機にて235℃で溶融混練して、ストランド状に押し出した。ストランド状に押し出された樹脂組成物を水冷した後、カッティングしてペレットを得た。
得られたペレットに、温度70℃の除湿空気を5時間以上循環させて乾燥させた後、温度100℃の温度を保ったまま、一軸押出機に投入した。一軸押出機に投入されるペレットの水分量は120ppmであった。
得られたペレットを用いて、溶融流延にてフィルムを製造した。
具体的には、得られたペレットを、一軸押出機にて235℃で溶融混練した後、Tダイから、表面温度が90℃である冷却ローラー上に押し出した。そして、冷却ローラー上に押し出された樹脂を、表面の金属層の厚さが2mmである弾性タッチローラーで押圧した後、二つの冷却ローラーで更に冷却して、厚さ60μmのウェブを得た。
冷却固化したウェブを剥離ローラーで剥離した後、予熱ゾーン、延伸ゾーン、保持ゾーン、及び冷却ゾーンを有し、各ゾーン間にニュートラルゾーンを更に有するテンター延伸機でTD方向に175℃、延伸倍率1.5倍延伸した。その後フィルム温度が30℃となるまで冷却し、テンター延伸機のクリップを外した。そして、フィルムの幅方向の両端部を切り落として、膜厚172.6μmの基材フィルムを得た。
《偏光性積層フィルム24、25の作製》
上記偏光性積層フィルム1の作製において、基材フィルムの材料として、表1に記載の一種のみの樹脂を用いた以外は同様にして、偏光性積層フィルム24、25を作製した。
《偏光性積層フィルム26の作製》
上記偏光性積層フィルム1の作製において、基材フィルムを以下のようにして作製した以外は同様にして、偏光性積層フィルム26を作製した。
ポリエステル原料A(カルボン酸単位としてTPA:91モル%+IPA:9モル%、グリコール単位としてEG:84モル%+CHDM:16モル%、IV=0.73dl/g)に、平均粒子径4.2μmの不定形シリカを0.1質量%混合したものを押出機に供給し、280℃で溶融した後、キャスティングドラム上に押し出し、静電印加法を適用して急冷固化させて無延伸シートを得た。得られたシートを縦方向に78℃で3.6倍延伸した後、更に横方向に85℃で3.8倍延伸し、段階的に昇温後、181℃で3秒間熱処理すると同時に、幅方向に18%の熱処理弛緩(テンターレール幅を狭める)を行った。最終的に厚さ75μmのPET(Polyethylene Terephthalate)製の基材フィルムを得た。
《偏光性積層フィルム27の作製》
上記偏光性積層フィルム1の作製において、基材フィルムを以下のようにして作製した以外は同様にして、偏光性積層フィルム27を作製した。
ポリプロピレン系樹脂であるプロピレン/エチレン共重合体(エチレン含量=0.4質量%、MFR=9g/10分)100質量部をホッパーより275℃に加熱した50mmφ押出機に供給した後、この押出機にて溶融混練し、次いで600mm巾Tダイより溶融状態でシート状に押し出し、38℃に温調した冷却ロールにて接触させ、エアチャンバーよりエアを吹き付けて冷却し、厚さ75μmのフィルムを得た。このプロピレン系樹脂フィルムを上巻方式にて、エア吹付け面が内側となるように1800m巻き取った。次いで、23℃の温度条件下で1時間ほど経った後、スリッターの繰り出し機に設置し、下出し方式にて繰出し、上巻方式にてエア吹付け面が外側となるように巻取りフィルムロールを形成し、常温で2日間保管した。このようにして、エア吹付け面が外側となるように巻き取ったPP(Polypropylene)製の基材フィルムを得た。
《偏光性積層フィルム1〜27の評価》
上記のようにして作製した偏光性積層フィルム1〜27について下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。なお、紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名「V7100」)を用いて偏光性積層フィルム1〜27の偏光度を測定したところ、いずれも99.95%以上であった。
(1)塗布性
親水性高分子層の積層後、延伸工程前に、積層フィルムの複数箇所の膜厚をJ.A.Woollam Co.Inc.製のVB−250型VASEエリプソメーターで測定し、その測定結果を下記基準で評価した。
◎:全面に均一に塗布膜形成され、膜厚誤差も10%以内
○:全面に均一に塗布膜形成され、膜厚誤差も20%以内
△:全面に均一に塗布膜形成されるが、膜厚誤差が20%以上の部分がある
×:塗布できていない個所が発生している
(2)搬送時折れ込み
作製した偏光性積層フィルム1〜27をロール搬送し、連続搬送による各偏光性積層フィルムの変化を目視にて確認し、その確認結果を下記基準で評価した。
○:カールもほとんどなく、連続搬送できた
○△:搬送中にカールは発生するが連続搬送できた
△:カールにより端部1cmの折れ込みが発生したが、連続搬送できた
×:カールにより折れ込んで破断し、連続搬送できなかった
Figure 2015169677
《偏光板1−1〜1−25の作製》
続いて、上記作製した偏光性積層フィルム1〜23、25、26を用いて、偏光板1−1〜1−25を作製した。具体的には、作製した偏光性積層フィルム1〜23、25、26から基材フィルムを剥離し、得られた偏光子の両面に、下記のようにして得られる偏光板保護フィルム1、2を貼合することで、偏光板1−1〜1−25を作製した。
(1)偏光板保護フィルム1の作製
(重縮合エステル化合物P1の合成)
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸244g、アジピン酸103g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステル化合物P1を得た。酸価0.10、数平均分子量450であった。
(重縮合エステル化合物P2の合成)
1,2−プロピレングリコール251g、テレフタル酸354g、p−トロイル酸680g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。重合度を観察しながら脱水縮合反応させた。反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステル化合物P2を得た。酸価0.30、数平均分子量400であった。
(二酸化ケイ素分散希釈液の調製)
アエロジルR812(日本アエロジル(株)製) 10質量部
エタノール 90質量部
以上をディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行った。二酸化ケイ素分散液に88質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合し、二酸化ケイ素分散希釈液を作製した。微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過した。
(ドープ1の作製)
TAC:トリアセチルセルロース(アセチル基置換度2.89、Mw=190000、Ca含有量25ppm) 100質量部
チヌビン928(BASFジャパン(株)製) 2.5質量部
重縮合エステル化合物P1 1.6質量部
重縮合エステル化合物P2 7.0質量部
メチレンクロライド 540質量部
エタノール 35質量部
以上を密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、濾過した。これに二酸化ケイ素分散希釈液を4質量部、撹拌しながら加えて、更に30分間撹拌した。
(製膜・延伸・乾燥)
次いで、ベルト流延装置を用い、温度35℃、2m幅でステンレスバンド支持体に均一にセルロースアシレートのドープ1を流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が100質量%になるまで溶剤を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離した光学フィルムのウェブを50℃で乾燥しながら搬送させ、スリットし、その後、テンターでTD方向(フィルムの搬送方向と直交する方向)に160℃の温度条件下、10%の延伸倍率で延伸した。このときテンターで延伸を始めたときの残留溶剤量は5.0%であった。その後、120℃の乾燥装置内を多数のロールで搬送させながら15分間乾燥させた後、スリットし、フィルム両端に幅15mm、高さ10μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻取り偏光板保護フィルム1を得た。フィルムの残留溶剤量は0.1%未満であり、膜厚は24μm、幅1.5m、巻長さは3000mであった。
なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.05倍であった。
(2)偏光板保護フィルム2の作製
(ドープ2の調製)
下記組成のドープ2を調製した。まず加圧溶解タンクにメチレンクロライドとエタノールを添加した。溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルAを撹拌しながら投入し、これを加熱し、撹拌しながら完全に溶解した。
セルロースアセテート(置換度2.85、重量平均分子量280000)
100質量部
アセチルサッカロース(置換度7.8) 7質量部
重縮合エステル化合物P1 4質量部
マット剤:R812の12%エタノール分散液(日本アエロジル(株)製)
1.4質量部
メチレンクロライド 430質量部
エタノール 40質量部
更に上記添加剤成分を密閉容器に投入し、撹拌しながら溶解して、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ2を調製した。
(製膜)
上記調製したドープ2を、ベルト流延装置を用い、温度22℃、1.8m幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が20%になるまで溶媒を蒸発させ、剥離張力162N/mでステンレスバンド支持体上から剥離した。
次いで、剥離したドープ2のウェブを35℃で溶媒を蒸発させ、1.6m幅にスリットし、その後、テンター延伸機を用いて、偏光板保護フィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、(Tg+20)℃の温度で幅手方向(TD方向)に元幅に対して1.05倍延伸した。この時、テンターによる延伸を開始したときの残留溶媒量は、4%であった。
その後、120℃、140℃の乾燥ゾーンを多数のローラーで搬送させながら乾燥を終了させ、1.3m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2.5μmのナーリング加工を施した後、コアに巻取り、偏光板保護フィルム2を作製した。膜厚は25μm、巻きの長さは5000mであった。
(3)偏光板保護フィルムの貼合
まず、下記の各成分を混合した後、脱泡して、紫外線硬化型接着剤液1を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート 45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂) 40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル 15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート 2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン 0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン 2.0質量部
偏光板保護フィルム1を使用し、その表面にコロナ放電処理を施した。なお、コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、偏光板保護フィルム1のコロナ放電処理面に、上記調製した紫外線硬化型接着剤液1を、硬化後の層厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して紫外線硬化型接着剤層を形成した。得られた紫外線硬化型接着剤層に、上記作製した偏光性積層フィルム1〜25の偏光子側を貼合し、その後基材フィルムは剥離した。
次いで、上記作製した偏光板保護フィルム2を用い、コロナ放電処理を施した。コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、速度18m/分とした。
次いで、偏光板保護フィルム2のコロナ放電処理面に、上記調製した紫外線硬化型接着剤液1を、硬化後の層厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗工して紫外線硬化型接着剤層を形成した。
この紫外線硬化型接着剤層に、偏光板保護フィルム1の片面に貼合された偏光子を貼合して、偏光板保護フィルム1/紫外線硬化型接着剤層/本発明に係る偏光子/紫外線硬化型接着剤層/偏光板保護フィルム2が積層された積層体を得た。
この積層体の両面側から、ベルトコンベヤー付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cmとなるように紫外線を照射し、それぞれの紫外線硬化型接着剤層を硬化させ偏光板1−1〜1−25を作製した。
《偏光板1−1〜1−25の評価》
上記のようにして作製した偏光性積層フィルム1〜25について下記の評価を行った。評価結果を表2に示す。
(配向ムラ)
偏光板1−1〜1−25の上下それぞれに市販の偏光板を重ね合わせた状態で下方から光を照射し、上方から目視にて配向ムラを確認した。その際、2枚の偏光板を、互いの吸収軸が平行となるように配置させた。また、積層フィルムの延伸方向が、偏光板の吸収軸に対して45°の角度をなすように配置させた。目視による確認結果を下記基準で評価した。なお、基材フィルムと親水性高分子層との親和性が低いものほど親水性高分子層形成時の塗布性が悪く、配向ムラが起きやすいものである。
◎:配向ムラ無し
○:端部にまばらに配向ムラ有り
△:全長の端部に配向ムラ有り
×:全面に配向ムラ有り
Figure 2015169677
(4)まとめ
表1、2に示されるように、本発明の製造方法は、基材フィルムが充分な剛性を持ち、ポリビニルアルコール樹脂が架橋しても積層フィルムの折れ込みの発生を抑制できていることが明らかである。更に、基材フィルムがポリビニルアルコール樹脂と親和性が高いため、均一にポリビニルアルコール層を均一に塗布することができ、配向ムラの抑制効果も得られることが分かった。
また、比較例の偏光性積層フィルム26、27で基材フィルムとして用いられているPETやPPは、易接着加工が施されていないと親水性高分子層の塗布性が悪いが、本発明では易接着加工が施されていなくとも十分に優れた塗布性を示していることが分かる。
[実施例2]
《偏光性積層フィルム28〜30の作製》
実施例1における偏光性積層フィルム14の作製において、作製される偏光性積層フィルムの基材フィルム及び偏光子の厚さがそれぞれ表3に記載の値となるように変更した以外は同様にして、偏光性積層フィルム28〜30を作製した。
《偏光性積層フィルム28〜30の評価》
上記のようにして作製した偏光性積層フィルム28〜30に対し、実施例1と同様に、塗布性及び搬送時折れ込みについて評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、紫外可視分光光度計(日本分光社製、製品名「V7100」)を用いて偏光性積層フィルム26〜28の偏光度を測定したところ、いずれも99.95%以上であった。
また、表3には、実施例1における偏光性積層フィルム14も併せて示している。また、表3中、PMMAは、ポリメチルメタクリレートを示している。
Figure 2015169677
《偏光板2−1〜2−3の作製》
続いて、作製した偏光性積層フィルム28〜30を用いて、上記実施例1における偏光板1−1〜1−25の作製方法と同じ方法で、偏光板2−1〜2−3を作製した。
《偏光板2−4の作製》
作製した偏光性積層フィルム29から基材フィルムを剥離せずに、基材フィルムの両面のうち偏光子が積層されていない面のみに、実施例1と同様の方法で作製した偏光板保護フィルム1を貼合した。このようにして、偏光板2−4を作製した。
《偏光板2−1〜2−4の評価》
上記のようにして作製した偏光性積層フィルム2−1〜2−4に対し、実施例1と同様に、配向ムラについて評価を行った。評価結果を表4に示す。
なお、表4には、実施例1における偏光性積層フィルム1−14も併せて示している。また、表4中において、偏光板の作製方法として、偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥離し、得られた偏光子の両面に偏光板保護フィルムを貼合する方法を「方法1」とし、偏光性積層フィルムから基材フィルムを剥離せずに、偏光子の片面に偏光板保護フィルムを貼合する方法を「方法2」として示した。
Figure 2015169677
表3、4に示されるように、偏光性積層フィルム作製時の基材フィルムの厚さが60.0μmと10.0μmの偏光性積層フィルムは、基材フィルムの厚さが7.9μmの偏光性積層フィルムよりも搬送時の折れ込みが良好であり、基材フィルムの厚さが薄すぎると折れ込みが悪化することが分かった。
更に、偏光性積層フィルム作製時の基材フィルムの厚さが60.0μmと10.0μmの偏光性積層フィルムは、基材フィルムの厚さが71.6μmの偏光性積層フィルムよりも配向ムラが良好であり、厚すぎると延伸ムラが出やすいことが明らかになった。
[実施例3]
上記実施例1の偏光性積層フィルムの作製においては、積層工程、延伸工程及び染色工程の順に各工程を行うものとしたが、本実施例では、積層工程を行った後、染色工程を行い、更にその後に延伸工程を行うものとして、偏光性積層フィルム3Aを作製した。
また、延伸工程を、積層フィルムをホウ酸水溶液中で湿式延伸するものとした。具体的には、積層工程で形成した積層フィルムを、液温75℃のホウ酸水溶液(水100質量部に対して、ホウ酸を4質量部配合し、ヨウ化カリウムを5質量部配合して得られた水溶液)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に自由端一軸延伸を行った。このときの延伸倍率を4倍とした。
なお、本実施例において、積層工程及び染色工程は、上記実施例1における偏光性積層フィルム1の作製と同様に行った。
このようにして得られた偏光性積層フィルム3Aに対して、実施例1と同様の方法で塗布性を評価したところ、実施例1の偏光性積層フィルム1〜27よりも優れた塗布性を示した。
また、偏光性積層フィルム3Aの作製において、更に空中延伸工程を行うものとし、偏光性積層フィルム3Bを作製した。具体的には、積層工程を行った後であって染色工程及び延伸工程を行う前に、積層フィルムを、130℃のオーブン内で周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に1.8倍に自由端一軸延伸した。このようにして得られた偏光性積層フィルム3Bに対して、実施例1と同様の方法で塗布性の評価を行ったところ、偏光性積層フィルム3Aよりも更に優れた塗布性を示した。
更に、上記作製した偏光性積層フィルム3A、3Bを用いて、上記実施例1の偏光板1−1の作製方法と同様の方法で、偏光板3−1、3−2を作製した。作製した偏光板3−1、3−2について、上記実施例1と同様の方法で配向ムラを評価したところ、実施例1の偏光板1−1〜1−25よりも更に配向ムラが低減した。
[実施例4]
表示領域の対角長さが4インチのIPSモード液晶表示装置として、アップル社製のi−phone5sを準備し、それから2枚の偏光板を剥離した。次いで、上記作製した本発明に係る偏光板1−1〜1−25のうち同一番号の偏光板を2枚準備し、液晶セルの両面にそれぞれ貼り合わせて、表示装置を得た。貼り合わせは、偏光板保護フィルム2が液晶セルと接するように配置した。偏光板の吸収軸と、あらかじめ貼られていた偏光板の吸収軸とが同一方向となるようにした。
本発明の偏光板を用いて作製した表示装置は視認性が良好であった。

Claims (13)

  1. 少なくとも基材フィルムと偏光子とが積層されてなる偏光性積層フィルムの製造方法であって、
    少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む二種以上の樹脂を含有し、ガラス転移点を少なくとも二つ以上有する前記基材フィルム上に、逐次塗布又は共押出により、親水性高分子を含有する親水性高分子層を積層して積層フィルムを形成する工程と、
    前記積層フィルムを延伸する工程と、
    前記親水性高分子層を二色性物質により染色する工程と、
    を有することを特徴とする偏光性積層フィルムの製造方法。
  2. 前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムの延伸温度が、前記基材フィルムの少なくとも二つのガラス転移点の間の温度であることを特徴とする請求項1に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  3. 前記基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点のうち最も高いガラス転移点が、70℃以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  4. 前記基材フィルムの少なくとも二つ以上のガラス転移点のうち最も高いガラス転移点と最も低いガラス転移点との温度差が、30℃以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  5. 前記基材フィルムが、重量平均分子量10万〜100万の範囲内の樹脂を少なくとも一種類含むことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  6. 前記基材フィルムに含有されるカルボン酸ビニルエステル樹脂(樹脂A)の質量組成比率を(rA)、前記基材フィルムに含有される前記二種以上の樹脂のうちカルボン酸ビニルエステル樹脂以外の樹脂であってガラス転移点が最も高い樹脂(樹脂B)の質量組成比率を(rB)としたときに、(rA):(rB)=9:1〜1:9の範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  7. 前記積層フィルムを延伸する工程及び前記親水性高分子層を染色する工程の後の前記基材フィルムの厚さが、10〜60μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  8. 前記積層フィルムを形成する工程において、少なくともカルボン酸ビニルエステル樹脂を含む前記二種以上の樹脂と溶媒とを含有するドープを金属支持体上に流延し、剥離したのち、乾燥させることで前記基材フィルムを形成し、形成した前記基材フィルム上に溶液流延法により前記親水性高分子を積層することを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  9. 前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムを4倍以上の延伸倍率で一軸延伸し、
    前記積層フィルムを形成する工程、前記積層フィルムを延伸する工程及び前記親水性高分子層を染色する工程をこの順番に行うことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  10. 前記積層フィルムを延伸する工程において、前記積層フィルムをホウ酸水溶液中で湿式延伸し、
    前記積層フィルムを形成する工程、前記親水性高分子層を染色する工程及び前記基材フィルムを延伸する工程をこの順番に行うことを特徴とする請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  11. 前記親水性高分子層を染色する工程の前に、前記積層フィルムを空中延伸する工程を行うことを特徴とする請求項10に記載の偏光性積層フィルムの製造方法。
  12. 請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の偏光性積層フィルムの製造方法により偏光性積層フィルムを製造する工程に続いて、前記偏光性積層フィルムの前記偏光子の少なくとも一方の面に偏光板保護フィルムを貼合する工程を有することを特徴とする偏光板の製造方法。
  13. 前記偏光板保護フィルムを貼合する工程は、前記偏光性積層フィルムから前記基材フィルムを剥離した後、前記偏光子の前記基材フィルムが接していた面に前記偏光板保護フィルムを貼合することを特徴とする請求項12に記載の偏光板の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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