JP2015169433A - 超音波式音速測定装置及び超音波式音速測定方法 - Google Patents
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Abstract
Description
このため、従来から、当該透過波の超音波受信信号の強度を上げるため、管の肉厚から算出される当該管の管壁の共振周波数にて超音波の送信を行うことが提案されている。
前記送信用トランスデューサにて送信された超音波を前記管の表面にて受信する受信用トランスデューサと、
前記受信用トランスデューサを前記送信用トランスデューサより下流側に配置した第1測定モードにおける超音波受信信号と前記受信用トランスデューサを前記送信用トランスデューサより上流側に配置した第2測定モードにおける超音波受信信号との両伝播時間から、前記管内流体の音速を算出する音速算出部と、を備えた超音波式音速測定装置であって、その特徴構成は、
前記送信用トランスデューサが、前記第1測定モード及び前記第2測定モードの夫々において、前記管の肉厚から算出される前記管の管壁の共振周波数に対して所定の周波数だけずれた特定送信周波数の特定超音波を前記管の表面から斜角入射し、
前記受信用トランスデューサが、前記第1測定モード及び前記第2測定モードの夫々において、当該受信用トランスデューサに到達する超音波を受信し、
前記音速算出部が、前記第1測定モード及び前記第2測定モードの夫々において前記受信用トランスデューサが受信した超音波の超音波受信信号から前記共振周波数に対応する受信信号を抽出して、これら両受信信号の伝播時間から前記管内流体の音速を算出する点にある。
前記管の表面に配置された受信用トランスデューサにより当該受信用トランスデューサに到達した超音波を受信するステップと、
前記受信用トランスデューサを前記送信用トランスデューサより下流側に配置した第1測定モードにおける超音波受信信号から前記共振周波数に対応する受信信号を抽出するとともに、前記受信用トランスデューサを前記送信用トランスデューサより上流側に配置した第2測定モードにおける超音波受信信号から前記共振周波数に対応する受信信号を抽出するステップと、
抽出された前記両受信信号の伝播時間から前記管内流体の音速を算出するステップと、を備えた点にある。
この受信用トランスデューサに到達し受信した超音波の超音波受信信号には、主として特定送信周波数成分及び共振周波数成分の各受信信号が含まれている。
即ち、送信用トランスデューサが、共振周波数に対して所定の周波数だけずれた特定送信周波数の特定超音波を管の表面から入射すると、管自体を伝播する周回波(ノイズ波)は、略特定送信周波数のままで受信用トランスデューサに到達するのに対して、特定送信周波数が管の管壁の共振周波数に比較的近い周波数範囲に設定されているため、管の内部の流体を通過(透過)する透過波は、管の管壁による共振により増幅された状態で、共振周波数にて受信用トランスデューサに到達する。さらに、管自体を伝播する周回波(ノイズ波)と透過波とでは、伝播速度が異なるため、受信用トランスデューサへの到達時間(伝播時間)に差を生じる。
なお、共振周波数に対する特定送信周波数のずれ幅が±5%よりも小さい場合には、周回波(ノイズ波)と透過波との判別が困難となる可能性があり、共振周波数に対する特定送信周波数のずれ幅が±50%よりも大きな場合には、透過波の共振による増幅が十分ではなくなるため、共振周波数に対する特定送信周波数のずれ幅が±5%以上±50%以下の周波数の範囲内に設定されている。
超音波式音速測定装置は、超音波を送受信可能な一対の超音波トランスデューサを管1の表面に配置するクランプオン式であり、一方側の超音波トランスデューサが送信用トランスデューサ2として機能し、他方側の超音波トランスデューサが受信用トランスデューサ3として機能する。送信用トランスデューサ2により管1の表面(外周面)11に送信され、流体を通過した超音波を受信用トランスデューサ3により管1の表面(外周面)11から受信し、この受信信号を評価することで管1の内部を流れる流体の音速を測定する。
具体的には、超音波を送受信可能な一対の超音波トランスデューサが上流側と下流側に配置される。上流側の超音波トランスデューサ(送信用トランスデューサ2)から超音波を送信して下流側の超音波トランスデューサ(受信用トランスデューサ3)で受信するまでの伝播時間と、下流側の超音波トランスデューサ(送信用トランスデューサ2)から超音波を送信して上流側の超音波トランスデューサ(受信用トランスデューサ3)で受信するまでの伝播時間との逆数和から、管1の内部を流れる流体の音速(当該流体中を伝播する超音波の音速)が求められる。ここでは、前者の配置構成での測定を第1測定モードと称し、後者の配置構成での測定を第2測定モードと称する。即ち、第1測定モードと第2測定モードとでは、2つの超音波トランスデューサにおいて、送信用トランスデューサ2と受信用トランスデューサ3との機能が逆転する。
ここで、流体を斜め横断する縦波超音波の伝播経路長をLとし、管1を流れている気体の音速をCとし、流体の速度をVとし、第1測定モードでの伝播時間をT1とし、第2測定モードでの伝播時間をT2とすると、流体の音速Cは以下の式で表すことができる。
C=((1/T1)+(1/T2))・(L/2) ・・・(式1)
よって、流体の音速Cは、T1、T2、Lにより求めることができる。
超音波式音速測定装置は、図1を用いて説明した基本原理を実施するものであり、管1の表面11に斜め対向設置される送信用(受信用)トランスデューサ2(3)及び受信用(送信用)トランスデューサ3(2)と、超音波処理ユニット5とを備えている。送信用トランスデューサ2と受信用トランスデューサ3の位置関係は、管1の表面11から斜角入射された横波超音波が管1の内面12でのモード変換で縦波超音波に変換され、流体を横断伝播した縦波超音波が再びガス管1の内面12でモード変換して生じた横波超音波を管1の表面11で受信されるように設定されている。
送信用トランスデューサ2及び受信用トランスデューサ3の超音波励起面には、管1の曲面とのマッチングおよび斜角入射を行なうためのシュー部材31が装着されている。
有効超音波(以下、透過波という場合がある)は、管1の表面11から内面12に向かって通過する超音波(縦波超音波であり、図2では符号Wp1で示している)と管1に内在する流体を横断(透過)して伝播する超音波(横波超音波であり、図2では符号Wsで示している)と管1の内面12から表面11に向かって通過する超音波(縦波超音波であり、図2では符号Wp2で示している)といった形態を経て、受信用トランスデューサ3に達する。
ノイズ波(以下、周回波という場合があり、図2では符号Wnで示している)は、送信用トランスデューサ2から送信された超音波が板波や表面波に分解されたものであり、その分解された超音波が、管壁に沿って拡散し、受信用トランスデューサ3に達して受信される。
図3に示すように、超音波処理ユニット5は、送信用トランスデューサ2から送信され受信用トランスデューサ3に到達した超音波受信信号を評価する。その結果、第1測定モード及び第2測定モードでの、気体を斜め伝播する超音波の伝播時間T1、T2を算定し、気体の音速Cが算出され、結果的には気体のガス種が判定される。
このため、この超音波処理ユニット5には、切替スイッチ50a、モード切替部50、送信回路51、受信回路52、信号評価部53、パラメータ設定部54、表示部55、送信用トランスデューサ2から送信される送信周波数の周波数を設定する送信周波数設定部56が設けられている。
受信回路52は、受信用トランスデューサ3で受信された超音波受信信号に対して増幅等の前処理を行なう。受信回路52は、当該超音波受信信号の波形を表示部55に送信し当該表示部55に表示させることもできる。
表示部55は、超音波受信信号の波形や算出された気体の音速Cや判定されたガス種などの情報を表示する、液晶等のディスプレイである。
この共振周波数は、管1の材質、肉厚及び管1自体の音速との関係で下記式2が成立するため、予めこの式2をパラメータ設定部54に記録しておくことで、管1の材質、肉厚及び管1自体の音速に応じて共振周波数を設定することができる。設定された共振周波数は、制御信号として送信周波数設定部56に送られる。
fn=(N×W)/2d ・・・(式2)
fn:共振周波数、N:整数、W:管自体の音速、d:管の肉厚
特定超音波の特定送信周波数は、共振周波数に対して±5%以上±50%以下ずれた範囲内の周波数に設定され、より好ましくは、±8%以上±40%以下ずれた範囲内の周波数に設定される。
例えば、後述するように、管1の材質が鉄、肉厚が3.2mm、管1自体の音速が3240m/secであるから、共振周波数は1.1MHzに設定され、特定超音波の特定送信周波数は1.0MHzに設定される。
設定された特定超音波の特定送信周波数は、制御信号として送信回路51に送られ、送信用トランスデューサ2により特定送信周波数の特定超音波を管1の表面11に送信する。
音速算出部53aは、第1測定モードにおける超音波受信信号(図1及び図3の実線)と第2測定モードにおける超音波受信信号(図1及び図3の破線)とから両超音波受信信号の伝播時間T1、T2を算出する。なお、シュー部材31を含め、2つの超音波トランスデューサは同一形状であるので、第1測定モードと第2測定モードとにおいて管1の管壁を伝播する時間は同じである。したがって、伝播時間は流体(ここでは都市ガスなどの気体)を斜め横断する際の流体伝播経路(図1では長さLで示されている)における伝播時間T1、T2に相当する。
その後、これら伝播時間T1、T2及び伝播経路長Lから、式1を用いて管1内の気体の音速Cを算出する。音速算出部53aは、抽出した共振周波数成分の受信信号の波形、算出した伝播時間T1、T2や気体の音速Cを、表示部55に送信し当該表示部55に表示させることもできる。
続いて、管1の材質、肉厚及び管1自体の音速を、予めパラメータ設定部54に記録された管1の材質、肉厚及び管1自体の音速と照合して、当該管1の共振周波数を設定する(ステップ♯1)。例えば、管1の材質を鉄、肉厚を3.2mm、管1自体の音速を3240m/secとして、管1の共振周波数を1.1MHzに設定する。設定された共振周波数は、パラメータ設定部54から制御信号として送信周波数設定部56に送られる。
そして、送信周波数設定部56では、設定された共振周波数に対して所定の周波数だけずれた特定超音波の特定送信周波数を設定する。具体的には、特定送信周波数を、共振周波数から0.1MHzだけマイナス側にずれた1.0MHzに設定する。
また、第2測定モードにおいて、下流側の送信用トランスデューサ2から特定送信周波数の特定超音波を送信し、受信用トランスデューサ3に到達した超音波を受信する(ステップ♯5〜7)。
即ち、送信用トランスデューサ2が、共振周波数に対して所定の周波数だけずれた特定送信周波数の特定超音波を管1の表面11から入射すると、管1自体を伝搬する周回波(ノイズ波)は、略特定送信周波数のままで受信用トランスデューサ3に到達するのに対して、管1の内部の気体を通過(透過)する透過波は、特定送信周波数が管1の管壁の共振周波数に比較的近い周波数範囲に設定されているため、管1の管壁による共振により増幅された状態で、共振周波数にて受信用トランスデューサ3に到達するのである。さらに、管1自体を伝播する周回波(ノイズ波)と透過波とでは、伝播速度が異なるため、受信用トランスデューサ3への到達時間(伝播時間)に差を生じる。
具体的には、ステップ♯8では、図6に示すように、超音波受信信号(図5参照)から共振周波数成分のみを周波数分離して抽出する。そして、この抽出した共振周波数成分(受信信号の波形)においては、共振により透過波の強度が向上しておりS/N比が向上しているため、透過波を容易に特定することができると共に、当該透過波の強度ピーク値が明確に表れており、ステップ♯9において、強度ピーク値が現出するまでの時間(伝播時間T1、T2)を容易に特定することができる。
特に、特定送信周波数が、共振周波数に対して±5%以上±50%以下という比較的ずれの小さな範囲内の周波数に設定されているので、受信用トランスデューサ3にて受信される超音波受信信号のうち、主として共振周波数成分からなる透過波を確実に増幅させて当該透過波のS/N比を十分に向上させることができる構成としながら、加えて、当該超音波受信信号から透過波を含む共振周波数成分のみを抽出することにより、特定送信周波数成分における周回波(ノイズ波)及び共振周波数成分におけるノイズ波から、透過波をより容易に判別することができる。
よって、超音波受信信号のうちの透過波を容易に判別できると共にS/N比を向上させ、当該透過波の伝播時間及び気体の音速Cの正確な算出を行うことができる。
よって、より正確に算出された気体の音速Cを用いてガス種の判定を行うことができ、ガス種の判定も正確に行うことができる。
(1)上記実施形態では、管1の管壁の共振周波数を1.1MHzに設定し、送信用トランスデューサ2が送信する特定超音波の特定送信周波数を1.0MHzに設定する例について説明したが、共振周波数は、管1の材質や肉厚等に応じて適宜設定することができ、特定超音波の特定送信周波数も、共振周波数成分のS/N比を向上させ共振周波数成分のうちの透過波を適切に判別できる構成であれば、当該共振周波数に対して所定の周波数だけずれた周波数に適宜設定することができる。
この場合、図7に示すように、受信用トランスデューサ3により受信された超音波受信信号の波形には、主として共振周波数成分(1.1MHz)及び特定送信周波数成分(800kMHz)の各受信信号が混在している状態である。
この超音波受信信号から、共振周波数成分のみを周波数分離して抽出し、抽出した共振周波数成分の受信信号の強度ピーク値を特定し、特定超音波の送信から当該強度ピーク値が現出するまでの時間を伝播時間T1、T2として算出する。
従って、受信用トランスデューサ3にて受信された超音波受信信号において、共振周波数成分における透過波は共振により強度が増幅され、S/N比が向上している。そして、当該超音波受信信号から透過波を含む共振周波数成分のみを抽出することにより、特定送信周波数成分における周回波(ノイズ波)及び共振周波数成分におけるノイズ波から、透過波を容易に判別することができる。これにより、共振周波数成分における透過波から、当該透過波の伝播時間T1、T2を正確に算出することができ、また、このような正確な伝播時間T1、T2に基づいて流体の音速Cを正確に算出することができる。
なお、図7に示すように、受信用トランスデューサ3にて受信された超音波受信信号において、抽出した共振周波数成分は、基本的に当該超音波受信信号と同様の強度変動(超音波受信信号の強度に対して所定割合で減衰した強度)を備えた波形となっているが、共振周波数成分のうち管1内の気体を通過(透過)した部分(透過波)については、共振により強度が増幅されているため、当該超音波受信信号の強度に対する減衰割合が低くなる。従って、抽出した共振周波数成分のうち、当該減衰割合が低い部位を透過波と特定することができ、当該透過波の強度ピーク値を伝播時間T1、T2の算出に用いることができる。
加えて、共振周波数成分である透過波は、共振により強度が増幅されているので、当該透過波の伝播時間をより正確に算出することができ、このような正確な伝播時間に基づいて流体の音速を正確に算出することができる。
2 送信用トランスデューサ(超音波トランスデューサ)
3 受信用トランスデューサ(超音波トランスデューサ)
11 表面
53a 音速算出部
T1 伝播時間(第1測定モード)
T2 伝播時間(第2測定モード)
C 気体(流体)の音速
Claims (5)
- 管内流体が通流する管の表面から超音波を斜角入射する送信用トランスデューサと、
前記送信用トランスデューサにて送信された超音波を前記管の表面にて受信する受信用トランスデューサと、
前記受信用トランスデューサを前記送信用トランスデューサより下流側に配置した第1測定モードにおける超音波受信信号と前記受信用トランスデューサを前記送信用トランスデューサより上流側に配置した第2測定モードにおける超音波受信信号との両伝播時間から、前記管内流体の音速を算出する音速算出部と、を備えた超音波式音速測定装置であって、
前記送信用トランスデューサが、前記第1測定モード及び前記第2測定モードの夫々において、前記管の肉厚から算出される前記管の管壁の共振周波数に対して所定の周波数だけずれた特定送信周波数の特定超音波を前記管の表面から斜角入射し、
前記受信用トランスデューサが、前記第1測定モード及び前記第2測定モードの夫々において、当該受信用トランスデューサに到達する超音波を受信し、
前記音速算出部が、前記第1測定モード及び前記第2測定モードの夫々において前記受信用トランスデューサが受信した超音波の超音波受信信号から前記共振周波数に対応する受信信号を抽出して、これら両受信信号の伝播時間から前記管内流体の音速を算出する超音波式音速測定装置。 - 前記送信用トランスデューサにより送信される前記特定超音波の前記特定送信周波数が、前記共振周波数に対して±5%以上±50%以下ずれた範囲内の周波数に設定されている請求項1に記載の超音波式音速測定装置。
- 前記音速算出部が、前記伝播時間を前記共振周波数に対応して抽出された受信信号の強度ピーク値が現出するまでの時間に設定するとともに、前記両伝播時間の逆数和に基づいて前記管内流体の音速を算出する請求項1又は2に記載の超音波式音速測定装置。
- 管内流体が通流する管の表面に配置された送信用トランスデューサから、管の肉厚から算出される前記管の管壁の共振周波数に対して所定の周波数だけずれた特定送信周波数の特定超音波を、前記管の表面から斜角入射するステップと、
前記管の表面に配置された受信用トランスデューサにより当該受信用トランスデューサに到達した超音波を受信するステップと、
前記受信用トランスデューサを前記送信用トランスデューサより下流側に配置した第1測定モードにおける超音波受信信号から前記共振周波数に対応する受信信号を抽出するとともに、前記受信用トランスデューサを前記送信用トランスデューサより上流側に配置した第2測定モードにおける超音波受信信号から前記共振周波数に対応する受信信号を抽出するステップと、
抽出された前記両受信信号の伝播時間から前記管内流体の音速を算出するステップと、を備えた超音波式音速測定方法。 - 前記送信用トランスデューサにより送信される前記特定超音波の前記特定送信周波数を、前記共振周波数に対して±5%以上±50%ずれた範囲内の周波数に設定するステップを備える請求項4に記載の超音波式音速測定方法。
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