JP2015167914A - 乾式複合分離膜および乾式複合分離膜エレメント - Google Patents

乾式複合分離膜および乾式複合分離膜エレメント Download PDF

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雅樹 東
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Abstract

【課題】分離膜の表面保護層を付与し、かつ高い造水量および高い分離除去性能を保持した乾式分離膜および乾式分離膜エレメントを提供すること。
【解決手段】基材と、前記基材の一方の面に積層される多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に積層される分離機能層と、を備えた乾式複合分離膜であって、前記多孔性支持層に保湿成分を含有し、かつ、前記乾式複合分離膜の前記分離機能層側が親水性高分子により被覆されており、前記被覆の厚みが前記乾式複合分離膜の前記機能層部分の高さの0.6〜10倍である乾式複合分離膜。
【選択図】図9

Description

本発明は、液体、気体等の流体に含まれる成分を分離するために使用される乾式複合分離膜および乾式複合分離膜エレメントに関する。
海水およびかん水などに含まれるイオン性物質を除くための技術においては、近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして、分離膜エレメントによる分離法の利用が拡大している。分離膜エレメントに使用される分離膜は、目的とする分離成分及び分離性能によって使い分けられている。
分離膜エレメントとしては、用途や目的に合わせて、スパイラル型、中空糸型、プレート・アンド・フレーム型、回転平膜型、平膜集積型などの各種の形状が提案されている。
これら分離膜エレメントは、使用に先立ち、分離膜あるいは分離膜エレメントを構成する部材からの溶出物や未反応成分を除去することを目的として、十分な洗浄を行っている。
近年、造水コストの低減への高まりから、分離膜エレメントの高性能化が求められている。分離膜エレメントの分離性能の向上および、単位時間あたりの透過流体量を増やす上では、分離膜の性能向上が提案されてきた。特許文献1および2では、分離膜が乾燥しても分離機能を発現させるために、糖、有機酸金属塩又は無機酸金属塩を分離膜に含有させることが開示されている。
特開2000−117074号公報 特開2008−93543号公報
上述した提案にもかかわらず、分離膜エレメントの性能向上は十分であるとはいえず、従来の技術には改善の余地がある。特に保護層付与による造水量の低下が大きく、保護層の付与前後で造水量変化を抑制することが望ましい。
そこで、本発明は、分離膜の表面保護層を付与し、かつ高い造水量および高い分離除去性能を保持した乾式分離膜および乾式分離膜エレメントを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は次の(1)〜(5)の構成からなる。
(1)基材と、前記基材の一方の面に積層される多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に積層される分離機能層と、を備えた乾式複合分離膜であって、前記多孔性支持層に保湿成分を含有し、かつ、前記乾式複合分離膜の前記分離機能層側が親水性高分子により被覆されており、前記被覆の厚みが前記乾式複合分離膜の前記機能層部分の高さの0.6〜10倍である乾式複合分離膜。
(2)基材と、前記基材の一方の面に積層される多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に積層される分離機能層と、を備えた乾式複合分離膜であって、前記乾式複合分離膜は、保湿成分を含有し、かつ、前記複合分離膜における前記保湿成分のうち、前記基材中に含まれる前記保湿成分の割合は、3重量%以上40重量%以下であり、さらに、前記乾式複合分離膜の前記分離機能層側が親水性高分子により被覆されており、前記被覆の厚みが前記乾式複合分離膜の前記機能層部分の高さの0.6〜10倍である乾式複合分離膜。
(3)前記親水性高分子は、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種の親水性高分子である(1)または(2)記載の乾式複合分離膜。
(4)前記保湿成分が、糖鎖化合物またはアルコール類である(1)〜(3)のいずれかに記載の乾式複合分離膜。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載の乾式複合分離膜を備えた乾式複合分離膜エレメント。
本発明によって、ハンドリング性に優れ高い除去率を保持した分離膜および分離膜エレメントを提供することができる。
本発明の実施の一形態である、透過側流路材を有する複合分離膜の一例を示す断面図。 透過側流路材を有する複合分離膜の他の例を示す断面図。 透過側流路材を有する複合分離膜のさらに他の例を示す断面図。 透過側流路材を有する複合分離膜のさらに他の例を示す平面図。 透過側流路材を有する複合分離膜のさらに他の例を示す平面図。 複合分離膜エレメントの一例を示す展開図。 本発明の実施の一形態である、表面保護層を有する複合分離膜の表面図(SEM観察)。 従来の複合分離膜の表面図(SEM観察)。 本発明の実施の一形態である、表面保護層を有する複合分離膜の断面模式図。
以下、本発明の実施の一形態について、詳細に説明する。
1.複合分離膜
複合分離膜は、基材と、前記基材の一方の面に積層される多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に積層される分離機能層とを備える。
本書において、「供給側の面」とは、複合分離膜の分離機能層側の面を意味する。「透過水の面」とは、その逆側の面、すなわち基材側の面を意味する。
(1−1)分離機能層
分離機能層の厚みは具体的な数値に限定されないが、分離性能と透過性能の点で5nm以上3000nm以下であることが好ましい。特に逆浸透膜、正浸透膜、ナノろ過膜では5nm以上300nm以下であることが好ましい。
分離機能層の厚みは、これまでの複合分離膜の膜厚測定法に準ずることができる。例えば、複合分離膜を樹脂により包埋し、それを切断することで超薄切片を作製し、得られた切片に染色などの処理を行う。その後、透過型電子顕微鏡により観察することで、厚みの測定が可能である。また、分離機能層がひだ構造を有する場合、多孔性支持層より上に位置するひだ構造の断面長さ方向に50nm間隔で測定し、ひだの数を20個測定し、その平均から求めることができる。もしくは3D解析機能をもつ電子顕微鏡によってひだ高さ方向のデータを得ることが出来る。
分離機能層としては、孔径制御が容易であり、かつ耐久性に優れるという点で架橋高分子が好ましく使用される。特に、原水中の成分の分離性能に優れるという点で、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを重縮合させてなるポリアミド分離機能層、有機−無機ハイブリッド機能層などが好適に用いられる。これらの分離機能層は、多孔性支持層上でモノマーを重縮合することによって形成可能である。
例えば、分離機能層は、ポリアミドを主成分として含有することができる。このような膜は、公知の方法により、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物とを界面重縮合することで形成される。例えば、多孔性支持層に多官能アミン水溶液を塗布し、余分なアミン水溶液をエアーナイフなどで除去し、その後、多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布することで、ポリアミド分離機能層が得られる。
なお、本書において、「XがYを主成分として含有する」とは、XにおけるYの含有率が、50質量%以上であることを意味し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、最も好ましくは95質量%以上である。また、Yに該当する複数の成分が存在する場合は、それら複数の成分の合計量が、上述の範囲を満たせばよい。
また、分離機能層の構成成分はポリアミドに限定されるものではなく、Si元素などを有する有機−無機ハイブリッドであってもよい。
なお、いずれの分離機能層についても、使用前に、例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させてもよい。
(1−2)多孔性支持層
多孔性支持層は、分離機能層を支持する層であり、多孔性樹脂層とも言い換えられる。
多孔性支持層に使用される材料やその形状は特に限定されないが、例えば、多孔性樹脂によって基板上に形成されてもよい。多孔性支持層としては、ポリスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂あるいはそれらを混合、積層したものが使用され、化学的、機械的、熱的に安定性が高く、孔径が制御しやすいポリスルホンを使用することが好ましい。
多孔性支持層は、複合分離膜に機械的強度を与え、かつイオン等の分子サイズの小さな成分に対して複合分離膜のような分離性能を有さない。多孔性支持層の有する孔のサイズおよび孔の分布は特に限定されないが、例えば、多孔性支持層は、均一で微細な孔を有してもよいし、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面にかけて径が徐々に大きくなるような孔径の分布を有してもよい。また、いずれの場合でも、分離機能層が形成される側の表面で原子間力顕微鏡または電子顕微鏡などを用いて測定された細孔の投影面積円相当径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。特に界面重合反応性および分離機能層の保持性の点で、多孔性支持層において分離機能層が形成される側の表面における孔は、3nm以上50nm以下の投影面積円相当径を有することが好ましい。
多孔性支持層の厚みは特に限定されないが、複合分離膜に強度を与えるため等の理由から、20μm以上500μm以下の範囲にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上300μm以下である。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3kV〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、株式会社日立製作所製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真に基づいて、多孔性支持層の膜厚、表面の投影面積円相当径を測定することができる。
多孔性支持層の厚み、孔径は、平均値であり、多孔性支持層の厚みは、断面観察で厚み方向に直交する方向に20μm間隔で測定し、20点測定の平均値である。また、孔径は、200個の孔について測定された、各投影面積円相当径の平均値である。
次に、多孔性支持層の形成方法について説明する。多孔性支持層は、例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(以降、DMFと記載)溶液を、後述する基材、例えば密に織ったポリエステル布あるいは不織布の上に一定の厚さに注型し、それを水中で湿式凝固させることによって、製造することができる。
多孔性支持層は、”オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法に従って形成することができる。なお、所望の形態を得るために、ポリマー濃度、溶媒の温度、貧溶媒は調整可能である。
例えば、所定量のポリスルホンをDMFに溶解し、所定濃度のポリスルホン樹脂溶液を調製する。次いで、このポリスルホン樹脂溶液をポリエステル布あるいは不織布からなる基材上に略一定の厚さに塗布した後、一定時間空気中で表面の溶媒を除去した後、凝固液中でポリスルホンを凝固させることによって得ることができる。
(1−3)基材
基材としては、強度、凹凸形成能、流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。また、基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は、優れた製膜性を有するので、高分子重合体の溶液を流延した際に、その溶液が過浸透により裏抜けすること、多孔性支持層が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、及びピンホール等の欠点が生じたりすることを抑制できるため好ましい。また、基材が熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。さらに、複合分離膜は、連続製膜されるときに、製膜方向に対し張力がかけられるため、寸法安定性に優れる長繊維不織布を基材として用いることが好ましい。
長繊維不織布は、成形性、強度の点で、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維が、多孔性支持層側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造によれば、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現されるだけでなく、複合分離膜に凹凸を付与する際の、多孔性支持層と基材とを含む積層体としての成形性も向上し、複合分離膜表面の凹凸形状が安定するので好ましい。
より具体的には、長繊維不織布の、多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度は、0°以上25°以下であることが好ましく、また、多孔性支持層側表層における繊維配向度との配向度差が10°以上90°以下であることが好ましい。
複合分離膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性支持層または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において、収縮は顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と多孔性支持層側表層における繊維配向度との差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することもでき、好ましい。
ここで、繊維配向度とは、多孔性支持層を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標である。具体的には、繊維配向度とは、連続製膜を行う際の製膜方向(MD)、つまり不織布基材の長手方向と、不織布基材を構成する繊維の長手方向との間の角度の平均値である。つまり、繊維の長手方向が製膜方向と平行であれば、繊維配向度は0°である。また、繊維の長手方向が製膜方向に直角であれば、すなわち不織布基材の幅方向に平行であれば、その繊維の配向度は90°である。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
繊維配向度は以下のように測定される。まず、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取する。次に、そのサンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影する。撮影像の中で、各サンプルあたり10本の繊維を選び、不織布の長手方向を0°としたときの、繊維の長手方向の角度を測定する。ここで、不織布の長手方向とは、不織布製造時の“Machine direction”を指す。また、不織布の長手方向は、多孔性支持層の製膜方向に一致する。これらの方向は、図6中の長さ方向(y方向)に一致する。図6中のx方向は不織布の幅方向であり、不織布製造時の“Cross direction”に一致する。こうして、1枚の不織布あたり計100本の繊維について、角度の測定が行われる。こうして測定された100本の繊維について長手方向の角度から平均値を算出する。得られた平均値の小数点以下第一位を四捨五入して得られる値が、繊維配向度である。
基材の厚みは、30μm以上300μm以下の範囲とするのが好ましく、50μm以上250μm以下の範囲とすることがより好ましい。
(1−4)保湿成分
保湿成分は、複合分離膜の機能層および多孔性支持層の少なくとも一方に含まれ、基材にも含まれる。
保湿成分として、具体的な化合物は、後述の「2. 複合分離膜の製造方法」欄に挙げたとおりである。
保湿成分は、複合分離膜の表面にだけ塗布されていても、複合分離膜の内部にまで浸透していてもよい。また、複合分離膜の表面とは、平膜であればその機能層側を指す。
複合分離膜が、上述した場所に保湿成分を含有することで、複合分離膜が乾燥されたときも、複合分離膜の透水性や溶質除去性の変動が小さくなる。さらに、このように保湿成分の配置場所を限定することで、加圧ろ過した際の保湿成分の溶出を速めることができ、その結果複合分離膜から良質な透過水を得る前に実施する予備洗浄を短縮できる。ここで、乾燥させるとは、複合分離膜の含水率を20%以下にすることを意味する。複合分離膜の含水率は、(絶乾処理前の複合分離膜の重量−絶乾状態の複合分離膜の重量)/絶乾処理前の複合分離膜重量×100(%)で表される。また、保湿成分とは水に可溶である物質を指し、具体的には水に対して重量比100分の1以上溶解する物質のことである。絶乾状態の複合分離膜は、複合分離膜の構造が変化または変形しない可能な限り高い温度で、複合分離膜を十分な時間乾燥させることで得られる。具体的には、絶乾とは、複合分離膜を70℃、2時間で乾燥処理することである。
本発明では、絶乾後の(すなわち絶乾状態における)複合分離膜における保湿成分のうち、基材中に含まれる保湿成分の割合は、複合分離膜に含まれる保湿成分のうちの3重量%以上であることが好ましく、5重量%以上であるとさらに好ましい。また、複合分離膜に含まれる保湿成分のうちの基材中に含まれる保湿成分の割合は、40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であるとさらに好ましい。複合分離膜中の保湿成分のうち基材に3重量%以上含まれていることで、乾燥後における複合分離膜の膜性能低下を抑制できる。さらに、樹脂を溶融させて複合分離膜の基材側に透過側流路材を固着させる際、基材に保湿成分が含まれていることで複合分離膜の機能層への熱伝達を抑制でき、機能層の熱劣化を低減できる。
(1−5)親水性高分子
親水性高分子は、複合分離膜の表層部に存在する機能層を被覆する形で存在する。
親水性高分子として、具体的な化合物は、後述の「2. 複合分離膜の製造方法」欄に挙げたとおりである。
機能層表面を被覆している状態とは、膜全体が機能層の高さの0.6〜10.0倍の厚さで被覆されている状態が好ましい。0.6倍を下回る場合は、機能層が露出している部分が発生しやすくなり、十分な保護層としての機能を示すことが難しい。10倍を上回る場合は濾過抵抗が高くなり、造水能力が低下する。
また、この複合分離膜に保湿成分を付与してもよい。保湿成分としては、グリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコールなど水に可溶な物質を適用出来る。
複合分離膜が上述した場所に親水性高分子を含有することで、複合分離膜を使用する際、膜表面部分への接触、表面擦過させても性能低下が発生しにくくなるため、ハンドリング性が向上する。さらに、複合分離膜が乾燥したときも、複合分離膜の透水性や溶質除去性の変動が小さくなる。ここで、乾燥させるとは、複合分離膜の含水率を20%以下にすることを意味する。複合分離膜の含水率は、(絶乾処理前の複合分離膜の重量−絶乾状態の複合分離膜の重量)/絶乾処理前の複合分離膜重量×100(%)で表される。また、親水性高分子とは水に可溶である物質を指し、具体的には水に対して重量比100分の1以上溶解する物質のことである。絶乾状態の複合分離膜は、複合分離膜の構造が変化または変形しない可能な限り高い温度で、複合分離膜を十分な時間乾燥させることで得られる。具体的には、絶乾とは、複合分離膜を70℃、2時間で乾燥処理することである。
(1−6)透過側流路材
複合分離膜は、その透過側の面、すなわち基材側の面上に固着した突起を、透過側流路材として備えてもよい。このような突起は、図6に示すような、連続的な透過側流路材4に代えて設けられる。このような突起は、透過側流路を形成するように設けられていることが好ましい。「透過側流路を形成するように設けられる」とは、複合分離膜が後述の複合分離膜エレメントに組み込まれたときに、複合分離膜を透過した透過流体が集水管に到達できるように、流路材が形成されていることを意味する。
透過側流路材を設ける工程と、他の工程との実施の順序は特に限定されないが、複合分離膜を保湿成分溶液へ接触させ、機能層側に親水性高分子を付与した工程の後に本工程を行うと、複合分離膜に付着した親水性高分子が保護層として機能するため、後述するホットメルトや溶融樹脂による流路材形成効率が向上すると共に、エレメント巻囲時の膜擦れによる損傷を軽減できる。そうすると、複合分離膜の脱塩率低下やエレメント回収率の低下を抑制できる。ここで、エレメント回収率とは、複合分離膜エレメントを水中でエアリークテストし、リークが発生したリーフ数をカウントして、エアリークが発生したリーフ数/評価に供したリーフ数を意味する。
透過側流路材の構成の詳細は以下の通りである。なお、透過側流路材も複合分離膜の構成要素の1つであるため、透過側流路材を除いた部分を「複合分離膜本体」と称し、複合分離膜本体と透過側流路材とを含む構成を「複合分離膜」と称することがある。
<透過側流路材の構成成分>
透過側流路材を構成する材料としては特に限定されないが、樹脂が好ましく用いられる。具体的には、耐薬品性の点で、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンやオレフィン共重合体などが好ましく、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂などのポリマーも選択でき、これらを単独もしくは2種類以上からなる混合物として用いることができる。特に、熱可塑性樹脂は成形が容易であるため、均一な形状の透過側流路材を形成することができる。
透過側流路材は、複合分離膜がエレメントに組み込まれ、圧力が付与されたときでも、透過側流路を安定に形成できるだけでなく、従来のトリコットよりも流動抵抗が少なく、高効率な流路を形成することができる。
また、透過側流路材は、少なくともエレメントの幅方向に不連続であることが好ましい。長さ方向に関しては不連続でも連続でもよいが、連続の場合は加圧ろ過時の複合分離膜の膜落込みを抑制できるため好ましい。「不連続」とは、複合分離膜の面に対する投影像が不連続である形状を指す。つまり、不連続部材は、複数の部分に分かれており、つまり複数の部材の集合物であり、それぞれの部材は、互いに分離可能である。また、不連続とは、部材の間を流体が流れることができる程度に、隣り合う部材の距離が離れていることである、とも言い換えられる。
個々の透過側流路材の形状としては、例えば、半球状、錐状(円錐状、角錐状を含む)、柱状(円柱状、角柱状等を含む)、又は壁状等が挙げられる。すなわち、透過側流路材の平面形状(複合分離膜本体の面方向に平行な方向の形状)としては、具体的には、円形状(楕円および真円を含む)、線状が挙げられる。また、複合分離膜の厚み方向における透過側流路材の断面形状としては、半球状、矩形状等が挙げられる。1枚の複合分離膜上に設けられた、線状又は壁状の複数の流路材は、互いに交差しないように配置されていればよく、例えば、互いに平行に配置されてもよい。
例として、図1〜図3に示す複合分離膜11〜13はいずれも平坦な複合分離膜本体111を備えるが、透過側流路材の断面形状は異なる。すなわち、図1の透過側流路材21の断面は、上部が丸く、下部が矩形である。図2の透過側流路材22の断面は台形である。図3の透過側流路材23の断面は長方形である。
図4および図5に示す複合分離膜14および15は、透過側流路材としてそれぞれ、円形のドット状の部材24、壁状の部材25を備える。図1〜図3の断面は、図4および図5の形態のいずれに適用されてもよい。
複合分離膜の透過側の面に流路材を配置させる方法は特に限定されないが、ホットメルトによる樹脂の塗布、印刷、噴霧などの方法が好ましく用いられる。
このように、流路材を複合分離膜の透過側の面側、すなわち基材面側に配置することで、耐圧性、流動安定性に優れる膜エレメントを設計することができる。さらに、高温流体を扱う際にも、従来のトリコットなどに比べて、流路材の膜面における移動が少なく、膜の傷つきを防止でき、脱塩率が飛躍的に安定化する。
また、従来のトリコットなどに比べて流路が広く、その結果、透過側の流動抵抗が低くなりエレメントの造水量が向上し、さらには膜中の保湿成分を速やかに除くことができる。
<透過側流路材による効果>
以下の記述は、透過側流路材の形成方法および形状等に関わらず、透過側流路材を有する種々の複合分離膜に適用される。
複合分離膜の透過側の面における高低差(凸部と凹部との高さの差)は、要求される分離特性および水透過性能を満足できるように、変更可能である。高低差は、例えば、ホットメルト法で透過側流路材を配置させる場合では処理温度を変更することで、自由に調整することができる。
しかしながら、複合分離膜透過側の面の高低差が大きすぎると流動抵抗が小さくなるが、エレメント化した場合にベッセルに充填できる複合分離膜リーフ数が少なくなる。高低差が小さいと流路の流動抵抗が大きくなり、分離特性や水透過性能が低下する。そのため、エレメントの造水能力が低下し、造水量を増加させるための運転コストが高くなる。従って、上述した各性能のバランスおよび運転コストを考慮すると、複合分離膜の透過側の面における高低差は、80μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。また、透過側の面における高低差は、2000μm以下であることが好ましく、1000μm以下であることがより好ましく、500μm以下であることがさらに好ましい。
複合分離膜における高低差は、市販の形状測定システムを用いて計測できる。例えば、レーザー顕微鏡によって、複合分離膜の断面を観察することで高低差を測定することもできるし、キーエンス製高精度形状測定システムKS−1100によって複合分離膜の表面を観察することで高低差を測定することもできる。測定は高低差が存在する箇所について実施すればよく、各測定箇所の高さの値を総和した値を測定箇所の総数で割ることで得られた平均値を、「高低差」とみなすことができる。高低差は、本書に挙げたいずれかの測定方法において上述の範囲を満たせばよい。具体的な測定方法については実施例で説明する。
高低差の大きさと同様の理由から、分離膜の高低差のピッチは、0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。また、ピッチは、10mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましい。また、同様の理由によって、ピッチは溝幅の10分の1倍以上であることが好ましく、50倍以下であることが好ましい。ピッチとは、高低差が存在する複合分離膜の片面における凸部での最も高い点から、その凸部の隣に位置する他の凸部での最も高い点までの水平距離のことである。
膜表面上部および/または下部からの観察面積(2次元面積)に対する、複合分離膜の透過側の面に存在する高低差の中心線よりも表面上部および/または下部方向に高い位置を有する凸面積の比率は、要求される分離特性および水透過性能が満たされるように自由に調整できる。この比率が高すぎると流動抵抗が大きくなりすぎて、エレメント化しても造水量が小さくなってしまう。一方、比率が低すぎると流動抵抗は小さくなるが流動の均一化が困難となり、濃度分極が生じてエレメントの性能が低下してしまう。このような観点から、比率は、膜表面上部からの観察面積(2次元面積)に対して、5%以上95%以下であることが好ましく、流動抵抗と流路安定性の点で35%以上85%以下であることが特に好ましい。
2.複合分離膜の製造方法
複合分離膜の製造方法は、複合分離膜の基材側から保湿成分を付与し、機能層側に親水性高分子を含む溶液をコートし、溶媒を除去する工程を備えることで製造することができる。また、あらかじめ保湿成分付与し、溶媒を除去する工程後に機能層側に親水性高分子を含む溶液をコートしてもよい。
なお、本書では、完成した膜も、仕掛品(製造途中の膜であるが、分離機能は有してもよい。例えば、凹凸を形成させる膜において未形成である膜、および親水性高分子を含有しない膜を含む。)についても、説明の便宜上「複合分離膜」と称する。
複合分離膜に保湿成分を接触させる工程は、たとえば、保湿成分を水、又は水とアルコールやケトン類との混合液に溶解し、その溶液に複合分離膜の機能層側および/または基材側に接触させることを含んでもよい。また、後述するように、複合分離膜に保湿成分を接触させる工程は、この分離機能層の上に親水基を有する水可溶性有機重合体を被覆し、次いで水可溶性有機重合体を架橋させて親水基を有する水不溶性の保護層を形成することを含んでいてもよい。以下では、複合分離膜に保湿成分を接触させるこれらの2つの工程を区別するとき、保湿成分を接触させた後にその架橋を行わない工程を特に接触処理と呼ぶ。
接触処理に用いる保湿成分としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、例えば糖鎖化合物およびアルコール類などが挙げられる。
糖鎖化合物としてはグルコース、マンニトール、ソルビトール、デキストリン、トレハロース、ガラクトース、キシリトール、乳糖、ヒアルロナン、コンドロイチン硫酸などが挙げられる。複合分離膜の乾燥による性能低下が特に小さいという点から、糖鎖化合物は、単糖類、二糖類、及び三糖類から選ばれる少なくとも1種の糖類であることが好ましく、それらの中でもグルコース、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ラフィノースから選ばれる少なくとも1種の糖類であることがさらに好ましい。
また、アルコール類としては、メタノール;エタノール;2−プロパノールなどの単価アルコール、エチレングリコール;1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール;ポリエチレングリコール;ポリプロピレングリコール;ポリブチレングリコールなどのグリコール類や、グリセリン;ポリグリセリン;ポリビニルアルコール;ジグリセリン誘導体;グリセリン脂肪酸エステル;ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられ、中でも複合分離膜の乾燥による性能低下が特に小さいという点からポリビニルアルコール、グリコール類、グリセリン、ポリグリセリンから選ばれる少なくとも1種の多価アルコールが好ましい。なお、グリセリン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステルは水に可溶であれば特に限定されないが、脂肪酸の例として、ステアリン酸、オレイン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸、エルカ酸などが挙げられる。
他にも可溶性コラーゲン、エラスチン、ケラチンなどのタンパク質加水分解物や、ポリグルタミン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウムなどのカルボン酸およびその塩類、アロエエキス、黒砂糖エキス、海藻エキス、酵母エキス、コメヌカエキス、ダイズエキス、エイジツエキス、クララエキス、クチナシエキス、オタネニンジンエキス、カワラヨモギエキス、ローズマリーエキス、ビフィズス菌発酵エキス、ヒトオリゴペプチド等保湿作用を有する各種動植物エキスを使用しても良い。
また、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエピアミノヒドリン、アミン変性ポリエピクロルヒドリン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アミド、セルロース誘導体などを用いることもできる。
上述した保湿成分は単独または組み合わせて使用してもよい。
複合分離膜に親水性高分子をコートする工程は、たとえば、親水性高分子を水、又は水とアルコールやケトン類との混合液に溶解し、その溶液に複合分離膜の機能層側に接触させることで製造することができ、より好ましくは塗布する方法がよい。以下では、複合分離膜に親水性高分子を接触させるこれらの2つの工程を区別するとき、親水性高分子を接触させた後にその架橋を行わない工程を特に接触処理と呼ぶ。
接触処理に用いる親水性高分子としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエピアミノヒドリン、アミン変性ポリエピクロルヒドリン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸アミド、セルロース誘導体などを用いることができる。
親水性高分子の分子量は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されないが、重合度200〜1500のものが好ましい。200以下の場合では、溶媒除去後の親水性高分子の強度が不足しているため、十分な耐久性を持たない。1500を超える場合は、耐久性は十分あるが、複合分離膜の造水能力を阻害し、大きく低下する。上述した親水性高分子は単独または組み合わせて使用してもよい。
保湿成分と親水性高分子の配置として、複合分離膜の機能層側に保護層として親水性高分子を配置し、基材側には保湿性の高い保湿成分を配置するのが望ましい。このように配置することにより、保護層付与時に膜の透水性能低下を抑制できる。
複合分離膜を保湿成分の溶液に接触させるにあたって、接触処理時間は特に限定されないが、常温付近においては1秒以上5分以下が好ましく、10秒以上3分以下が特に好ましい。接触処理時間が短いと接触処理液の成分が膜中に到達せず、乾燥後の複合分離膜の膜性能が低下してしまうことがある。逆に、接触処理時間が長くなると処理効率が低下することがある。
保護層付与において、複合分離膜を親水性高分子の溶液に接触させるにあたって、接触処理時間は特に限定されないが、常温付近においては1秒以上5分以下が好ましく、10秒以上3分以下が特に好ましい。接触処理時間が短いと接触処理液の成分が膜中に到達せず、乾燥後の複合分離膜の膜性能が低下してしまうことがある。逆に、接触処理時間が長くなると処理効率が低下することがある。
また、接触処理において、複合分離膜を保湿成分、および親水性高分子の溶液に接触させる方法としては、例えば、複合分離膜の溶液への浸漬、複合分離膜への溶液の塗布等が挙げられる。具体的には、塗布方法として、スピンコーター、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレーなどの装置を用いる方法が挙げられる。
接触処理温度は膜を劣化させない範囲であれば特に限定されないが、例えば、0℃未満での処理では膜中に含まれる水分の凍結により膜が破損する恐れが高く、また、基材、多孔質支持層が溶融する高温であると膜が劣化して複合分離膜としての機能は果たせなくなる。高温側の制限は、処理対象とされる複合分離膜素材によって異なり、複合分離膜がポリエチレンテレフタレート製基材、ポリスルホン製の多孔性支持層および架橋ポリアミドからなる分離機能層で構成される場合であれば、加熱温度は50℃以上140℃以下の条件化で膜中の水分量が1〜20%になるように処理することが望ましい。1%を下回る場合は多孔質支持膜が収縮するため複合支持膜の透水量が減少する。20%を超えると、高分子化合物が十分複合支持膜に固定化されていないため、保護層としての役割を果たすことが出来ない。
接触処理に先立ち、複合分離膜を十分に洗浄することが好ましい。複合分離膜の洗浄が不十分であると、複合分離膜の形成工程における未反応物および添加剤等が保湿成分の溶液中に不純物として存在することになり、これらの不純物は浸漬処理の効率が低下する原因となる。洗浄方法は特に限定されないが、純水、酸水溶液、アルカリ水溶液、還元剤水溶液、酸化剤水溶液、アルコール水溶液等に浸漬または加圧通水することが例として挙げられる。最も好適な例は、水または炭素数1〜4のアルコールまたはその水溶液と接触させることである。洗浄温度は特に限定されないが、膜性能に悪影響を与えない範囲で高い温度としたほうが、高効率に洗浄できる。
また、複合分離膜の基材側の面に透過側流路材を付与する場合、接触処理の工程は透過側流路材を付与する工程の前に実施することが好ましい。接触処理工程後に透過側流路材を付与する工程を実施することで、保湿剤が保護層として機能するため、加工による分離膜の劣化を抑制できる。
また、接触処理後、複合分離膜を乾燥させる工程を行ってもよい。接触処理後の乾燥方法については、従来公知のあらゆる方法を使用することができる。好適な乾燥方法の例としては、常温または加熱された気体の流通下におく、乾燥された気体の流通下におく、赤外線を照射する、マイクロ波を照射する、加熱ローラーと接触させる等の方法があり、また複数の乾燥方法を同時並行的に、あるいは時系列的に併用することも可能である。また、乾燥に先だって、接触処理溶液を自然流下、遠心脱液等の方法によって概略除去することは、乾燥工程の負荷を下げるために有効な方法である。
複合分離膜を乾燥する時期および乾燥時の膜の形状は、最終的な膜分離素子の形状に近い形状、例えば複合分離膜の形態が平膜の場合では、複合分離膜表面に分離機能層を形成させて十分に洗浄した後に実施できる。中空糸膜や管状膜である場合には、糸束あるいは糸束を分離膜素子のケースに挿入した状態等に成形した後であってもよく、あるいはそれ以前の状態、すなわち振り落とし玉やボビン巻きの状態であっても差し支えない。
乾燥を行う複合分離膜の範囲は特に限定されないが、乾燥処理によって複合膜性能の向上を狙う場合には、当然ながら膜全体を乾燥することが好ましい。
乾燥する際の温度および時間は、その膜の耐熱性を考慮して決める必要がある。例えば、分離膜がポリエチレンテレフタレート製基材、ポリスルホン製の多孔性支持層および架橋ポリアミドからなる分離機能層で構成される場合であれば、乾燥温度は50℃以上180℃以下であってもよく、乾燥温度が80℃を超えても優れた透水性と溶質除去性を示すことができる。ただし、乾燥温度が180℃を超えると、分離膜に水を保持し難くなる。なお、本発明の目的を損なわない範囲であれば乾燥時間を適宜調整できる。
本発明の複合分離膜は、乾燥による透水性能低下を抑制できる。乾燥によって透水性能が実質的に低下しているか否かについては、透水量と阻止性能を評価して判断する。すなわち、複合分離膜が乾燥することで疎水化や細孔が小さくなり透水量が低下することがないか、また、複合分離膜が乾燥することでクラックが発生して透水量は大きくなるが阻止性能が低下することがないかを評価する。
3.複合分離膜エレメント
複合分離膜エレメントは、上述した複合分離膜のいずれかを備えることができる。複合分離膜エレメントの構成の一例について、図6を参照しながら説明する。
図6に示すように、複合分離膜エレメント100は、複合分離膜2、供給側流路材3、透過側流路材4、集水管6、第1端板7および第2端板8を備える。
複合分離膜2としては、上述した複合分離膜のいずれも適用可能である。複合分離膜2は、貼り合わされることで封筒状膜20を形成している。封筒状膜20は、集水管6の周囲にスパイラル状に巻き付けられることで、巻囲体28を形成している。巻囲体28の外周には、巻囲体28の保護のため、フィルムおよびフィラメント等の他部材が巻き付けられていてもよい。
供給側流路材3は、複合分離膜2の供給側面に対向するように配置され、かつ複合分離膜2と共に集水管6の周囲に巻き付けられる。供給側流路材3としては、具体的には、ネットが好ましく用いられる。
透過側流路材4は、複合分離膜2の透過側面に対向するように配置され、かつ複合分離膜2と共に集水管6の周囲に巻き付けられる。透過側流路材4としては、具体的には、トリコット、または樹脂などで形成された複数の突起を有するシートなどを用いることができる。
透過側流路剤4として、その上に突起が形成したシートを用いる場合、流路材を複合分離膜の基材面に直接固着させる場合と同様に、耐圧性、流動安定性に優れる膜エレメントを設計することができ、従来のトリコットなどに比べて、流路材の膜面における移動が少なく、膜の傷つきを防止でき、脱塩率が飛躍的に安定化する。また、従来のトリコットなどに比べて流路が広く、その結果、透過側の流動抵抗が低くなりエレメントの造水量が向上し、さらには膜中の親水性高分子を速やかに除くこともできる。なお、シートへの流路の形成は、複合分離膜への流路材の形成と同様の方法にて実施可能である。
シートとしては、不織布、織物、フィルム等が挙げられる。
なお、複合分離膜の基材側の面に突起(透過側流路材)が直接固着している場合は、透過側流路材4は、省略可能である。
集水管6は、中空の筒状部材であり、側面に複数の孔を有する。
第1端板7は、複数の供給口を備える円盤状の部材である。第1端板7は、巻囲体28の第1端に配置される。
第2端板8は、濃縮流体の排出口と透過流体の排出口とを備える。第2端板8は、巻囲体28の第2端に配置される。
複合分離膜エレメント100による流体の分離について説明する。原流体101は、第1端板7の供給口から巻囲体28に供給される。原流体101は、複合分離膜2の供給側面において、供給側流路材3で形成された供給側流路内を移動する。複合分離膜2を透過した流体(図中に透過流体102として示す)は、透過側流路材4によって形成された透過側流路内を移動する。集水管6に到達した透過流体102は、集水管6の孔を通って集水管6の内部に入る。集水管6内を流れた透過流体102は、第2端板8から外部へと排出される。一方、分離膜2を透過しなかった流体(図中に濃縮流体103として示す)は、供給側流路を移動して、第2端板8から外部へと排出される。こうして、原流体101が透過流体102と濃縮流体103とに分離される。
次に、複合分離膜エレメントの製造方法について説明する。
スパイラル型分離膜エレメントは分離膜、および、必要に応じて供給側流路材および/または透過側流路材の積層体の単数または複数が、有孔の中空状集水管の周りに巻きつけられたものである。本発明の複合分離膜エレメントの製造方法は限定されないが、ポリアミド分離機能層を多孔性支持層、基材に積層し、複合分離膜を得た後に成形、透過側流路材を配置してエレメントを製造する代表的な方法について述べる。
良溶媒に樹脂を溶解し、得られた樹脂溶液を基材にキャストして純水中に浸漬して多孔性支持層と基材を複合させる。その後、上述したように、多孔性支持層上に分離機能層を形成する。さらに、必要に応じて分離性能、透過性能を高めるべく、塩素、酸、アルカリ、亜硝酸などの化学処理を施し、さらにモノマー等を洗浄し複合分離膜の連続シートを作製する。
前述のシートの膜表面側に親水性高分子に接触させ、多孔質部分に保湿成分を接触さることで、親水性高分子による保護層を含有する複合分離膜が作製される。親水性高分子の付与後に、流路材配置により、複合分離膜に透過側流路材が形成することも出来る。
従来のエレメント製作装置を用いて、例えば、リーフ数26枚、リーフ有効面積37mの8インチエレメントを作製する。エレメント作製方法としては、参考文献(特公昭44−14216、特公平4−11928、特開平11−226366)に記載される方法を用いることができる。詳細には以下の通りである。
集水管の周囲に複合分離膜を巻囲するときは、複合分離膜を、リーフの閉じられた端部、つまり封筒状膜の閉口部分が集水管を向くように配置する。このような配置で集水管の周囲に複合分離膜を巻きつけることで、複合分離膜をスパイラル状に巻囲する。
集水管にトリコットや基材のようなスペーサーを巻囲しておくと、エレメント巻囲時に集水管へ塗布した接着剤が流動し難く、リークの抑制につながり、さらには集水管周辺の流路が安定に確保される。なお、スペーサーは集水管の円周より長く巻囲しておけばよい。
複合分離膜エレメントの製造方法は、上述のように形成された複合分離膜の巻囲体の外側に、フィルムおよび/またはフィラメント等をさらに巻きつけることを含んでいてもよい。後述する流体分離装置の操作圧力が2MPaを超える場合は、巻囲体の破損を防ぐため、フィラメントを巻きつけ巻囲体を強固にしておくことが好ましい。さらに、複合分離膜エレメントの製造方法は、集水管の長手方向における分離膜の端を切りそろえるエッジカット、端板の取り付け等のさらなる工程を含んでいてもよい。
本発明の複合分離膜は低含水率であるので、リーフ同士を接着させる接着剤の吸湿がほとんどなく、接着剤の吸湿による発泡を抑制できる。接着剤が発泡すると接着剤の反応が阻害され、強度が低下する。そうすると、エレメントを加圧運転した際に発泡部からのリークが生じてしまい分離膜エレメントとしての機能を果たさなくなるので、分離膜エレメントの回収率が低下してしまう。
4.複合分離膜エレメントの利用
このように製造される複合分離膜エレメントは、さらに、直列または並列に接続して圧力容器に収納されることで、複合分離膜モジュールとして使用されてもよい。
また、上記の複合分離膜エレメント、モジュールは、それらに流体を供給するポンプ、およびその流体を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、例えば供給水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
複合分離膜エレメントによって処理される流体は特に限定されないが、水処理に使用する場合、供給水としては、海水、かん水、廃水等の500mg/L〜100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「質量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5〜40.5℃の温度で蒸発させ残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定されるものではない。
(複合分離膜の膜性能)
複合分離膜エレメントを圧力容器に入れて、500mg/L食塩水を用い、運転圧力0.5MPa、運転温度25℃、pH7で1時間運転後、透過水を採取して単位時間あたりの透水量、透過水中の塩濃度、原水の塩濃度を測定し、膜の脱塩率と造水能力を測定する。
(複合分離膜エレメントの造水量)
供給水の複合分離膜エレメント透過水量について、複合分離膜エレメントあたり、1日あたりの透水量(立方メートル)を薬液処理前の造水量(m/日)として表した。
(複合分離膜エレメントの脱塩率(脱塩率))
薬液処理前の脱塩率(%)=100×(1−透過水中の塩濃度/供給水中の塩濃度)として算出した。
(複合分離膜表面に存在する親水性高分子の被覆厚み)
複合支持膜をコートしている保護層の厚さは走査型電子顕微鏡を使って以下の方法で測定する。複合支持膜製膜後、2つに分け、1つは80℃熱水で1時間洗浄する(サンプル(1))。もう1つはそのまま使用する(サンプル(2))。サンプル(1)、(2)をカーボンテープを貼った電子顕微鏡用ステージ上におき、25℃条件化4時間、真空乾燥させる。その後、このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3kV〜6kVの加速電圧で、高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)で3D観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、株式会社日立製作所製H−7650型電子顕微鏡などが使用できる。得られた電子顕微鏡写真により、サンプル(1)、(2)の機能層構造の高さを測定する。
被覆厚さ(nm)=(サンプル(1)の機能層高低差)−(サンプル(2)の機能層高低差)として算出した。
(複合支持膜の耐擦過性テスト)
耐擦過性の指標として、下記耐擦過テスト前後の脱塩率の変化率とした。
50cm×50cmに切断した複合支持膜を平坦なガラス板上に貼り付ける。その際、機能層面を上にして貼り付ける。その上にネット、5kgのおもりの順に乗せる。ネットはPP製、ストランド数7本/インチ、ストランド角70°のネットを使用する。おもりとネットの接触する面積は20cm×30cmである。ネットを1cm/secの速度で移動し、ネットが擦過した部分の膜性能を測定する。耐擦過性の判定は以下の式で算出した。
耐擦過性=
(100−擦過テスト後の膜の脱塩率)/(100−擦過テスト前の膜の脱塩率)
1に近い程、耐擦過性が優れていると判断する。
(複合分離膜中の保湿成分の重量)
複合分離膜を保湿成分に接触させ、乾燥処理を行った後にさらに70℃、2時間で乾燥処理(絶乾処理)して得られた複合分離膜を幅100mm×長さ200mmでカットし、その重量をAとした。次いで、カットした複合分離膜を和光純薬工業社製エタノールを純水で70%に希釈した水溶液で十分に洗浄して絶乾処理した複合分離膜の重量をBとして複合分離膜中の保湿成分の重量(g/m)を(A−B)で算出できる。
(参考例1)エレメントの造水量と脱塩率
ポリエチレンテレフタレート繊維からなる不織布(繊度:1デシテックス、厚み:約90μm、通気度:1cc/cm/sec、密度0.80g/cm)上にポリスルホンの17.0質量%のDMF溶液を180μmの厚みで室温(25℃)にてキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置し、80℃の温水で1分間浸漬することによって繊維補強ポリスルホン支持膜からなる、多孔性支持層(厚さ130μm)ロールを作製した。
その後、多孔性支持膜のポリスルホンからなる層の表面をメタフェニレンジアミンの2.5質量%、εカプロラクタム2.5質量%の水溶液中に2分間浸漬してから、垂直方向にゆっくりと引き上げた。さらに、エアーノズルから窒素を吹き付けることで、支持膜表面から余分な水溶液を取り除いた。
その後、トリメシン酸クロリド0.08質量%を含むn−デカン溶液を、膜の表面が完全に濡れるように塗布してから、1分間静置した。その後、膜から余分な溶液をエアブローで除去し、80℃の熱水で1分間洗浄して、複合分離膜ロールを得た。
このようにして得られた複合分離膜を、エレメントでの有効面積が0.45mになるように折り畳み断裁加工し、ネット(厚み:700μm、ピッチ:3mm×3mm、繊維径:0.35mm、投影面積比:0.18)を供給側流路材として挟み込み、次いで透過側流路材であるトリコット(厚み:260μm、溝幅:200μm、畦幅:300μm、溝深さ:105μm)を積層して、254mmの幅を有する2枚のリーフ状物を作製した。
こうして得られたリーフ状物を集水管にスパイラル状に巻き付け、巻囲体を得た。巻囲体の外周にフィルムを巻き付け、テープで固定した後に、エッジカットおよび端板取りつけを行うことで、2インチエレメントを作製した。
このようにして得られた複合分離膜を圧力容器に入れて、250mg/L食塩水を用い、運転圧力0.5MPa、運転温度25℃、pH7で1時間運転したところ、造水量および脱塩率は0.85m3/m2/dおよび98.0%であった。
参考例1の複合分離膜の表面図を図8に示す。
(実施例1)
参考例1と同じ方法で複合分離膜ロールを作製した後、25℃の20%グリセリン水溶液を複合分離膜の基材側から塗布し、さら機能層側に1.0%ポリビニルアルコール水溶液(重合度500)を20g/m2塗布した。その後、70℃で5分間の乾燥処理を行った。得られた複合分離膜について、膜性能および各パラメータを測定したところ、表1のとおりであった。
参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント除去率は表1のとおりであった。
実施例1の表面保護層を有する複合分離膜の表面図(SEM観察)を図7に示す。また、図9に、表面保護層を有する複合分離膜の断面模式図を示す。
(実施例2)
機能層側に1.0%ポリビニルアルコール水溶液(重合度500)を30g/m2塗布した以外は、全て実施例1と同様の方法により複合分離膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例3)
機能層側に1.0%ポリビニルアルコール水溶液(重合度500)を40g/m2塗布した以外は全て実施例1と同様の方法により複合分離膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例4)
機能層側に1.0%ポリビニルアルコール水溶液(重合度500)を300g/m2塗布し、70℃で20分間の乾燥処理を行った以外は全て実施例1と同様の方法により複合分離膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例5)
基材側から塗布するグリセリン水溶液濃度を15%にする以外は実施例1と同様の方法により複合支持膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例6)
基材側から塗布するグリセリン水溶液濃度を15%にする以外は実施例2と同様の方法により複合支持膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例7)
基材側から塗布するグリセリン水溶液濃度を15%にする以外は実施例3と同様の方法により複合支持膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例8)
基材側から塗布するグリセリン水溶液濃度を15%にする以外は実施例4と同様の方法により複合支持膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例9)
機能層側に塗布する親水性高分子をポリビニルピロリドン(日本触媒製 K−30)にする以外は実施例1と同様の方法により複合支持膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例10)
機能層側に塗布する親水性高分子をポリビニルピロリドン(日本触媒製 K−30)は実施例2と同様の方法により複合支持膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例11)
機能層側に塗布する親水性高分子をポリビニルピロリドン(日本触媒製 K−30)にする以外は実施例3と同様の方法により複合支持膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(実施例12)
機能層側に塗布する親水性高分子をポリビニルピロリドン(日本触媒製 K−30)にする以外は実施例4と同様の方法により複合支持膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(比較例1)
グリセリン水溶液に接触させなかったこと以外は、全て実施例1と同様の方法により複合分離膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(比較例2)
機能層側に1.0%ポリビニルアルコール水溶液(重合度500)を10g/m2塗布すること以外は、全て実施例1と同様の方法により複合分離膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(比較例3)
機能層側に1.0%ポリビニルアルコール水溶液(重合度500)を17g/m2塗布すること以外は、全て実施例1と同様の方法により複合分離膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(比較例4)
機能層側に1.0%ポリビニルアルコール水溶液(重合度500)塗布しないこと以外は、全て実施例1と同様の方法により複合分離膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
(比較例5)
機能層側に1.0%ポリビニルアルコール水溶液(重合度500)を350g/m2塗布すること以外は、全て実施例4と同様の方法により複合分離膜を作製した。得られた複合分離膜について、参考例1と同じ方法で2インチエレメントを作製し、参考例1と同じ条件で洗浄の後運転した。このときのエレメント性能および各パラメーターは表1の通りであった。
表1の結果から明らかなように、実施例1〜12の複合分離膜エレメントは、高い表面耐擦過性を持ちながら高い造水量を有していることがわかった。
一方、比較例1では、グリセリンを含有しない膜を乾燥したため、透水性が得られなかった。
比較例2、3では、基材中に含まれる親水性高分子の被覆厚が少ないため、実施例1、2、3、4と比較して耐擦過テスト、およびエレメント化後の脱塩率低下が大きかった。
比較例4では、機能層面が親水性高分子で被覆されていないため、擦過テスト後、およびエレメントの脱塩率低下が大きかった。
比較例5では、基材中に含まれる親水性高分子の被覆厚が多すぎるため、実施例1、2、3、4と比較して耐擦過テスト、およびエレメント化後の脱塩率低下は少ないが造水量低下が大きかった。
本願発明の複合分離膜エレメントは、特に、かん水および海水の脱塩に好適に用いることができる。
2,11〜16 複合分離膜
100 複合分離膜エレメント
101 原流体
102 透過流体
103 濃縮流体
111 複合分離膜本体
20 封筒状膜
21〜25 透過側流路材
26 巻囲体
3 供給側流路材
4 透過側流路材
6 集水管
7 第1端板
8 第2端板
H 透過側流路材高さ

Claims (5)

  1. 基材と、前記基材の一方の面に積層される多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に積層される分離機能層と、を備えた乾式複合分離膜であって、前記多孔性支持層に保湿成分を含有し、かつ、前記乾式複合分離膜の前記分離機能層側が親水性高分子により被覆されており、前記被覆の厚みが前記乾式複合分離膜の前記機能層部分の高さの0.6〜10倍であることを特徴とする乾式複合分離膜。
  2. 基材と、前記基材の一方の面に積層される多孔性支持層と、前記多孔性支持層上に積層される分離機能層と、を備えた乾式複合分離膜であって、前記乾式複合分離膜は、保湿成分を含有し、かつ、前記複合分離膜における前記保湿成分のうち、前記基材中に含まれる前記保湿成分の割合は、3重量%以上40重量%以下であり、さらに、前記乾式複合分離膜の前記分離機能層側が親水性高分子により被覆されており、前記被覆の厚みが前記乾式複合分離膜の前記機能層部分の高さの0.6〜10倍であることを特徴とする乾式複合分離膜。
  3. 前記親水性高分子は、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種の親水性高分子であることを特徴とする請求項1または2記載の乾式複合分離膜。
  4. 前記保湿成分が、糖鎖化合物またはアルコール類であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の乾式複合分離膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の乾式複合分離膜を備えたことを特徴とする乾式複合分離膜エレメント。
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