JP2015161023A - 冷延鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた延性、伸びフランジ性を有する引張強度が780MPa以上の高張力冷延鋼板を提供する
【解決手段】所定の化学組成を有し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、面積%で、ベイナイトを50%以上、ポリゴナルフェライトを2%以上30%未満、残留オーステナイトを3%以上有し、残部が15.0%以下であって、かつ残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径が7μm以下であるとともに、下記式(1)および式(2)を満足する鋼組織を有する。
Vαs>1.1Vαq (1)
Ds<Dq (2)
【選択図】なし

Description

本発明は、冷延鋼板に関する。より詳しくは、プレス加工等により様々な形状に成形して利用される冷延鋼板、特に、延性、伸びフランジ性に優れた高張力冷延鋼板に関する。
産業技術分野が高度に分業化した今日、各技術分野において用いられる材料には、特殊かつ高度な性能が要求されている。例えば、プレス成形して使用される冷延鋼板についても、プレス形状の多様化に伴い、より優れた成形性が必要とされている。また、高い強度が要求されるようになり、高張力冷延鋼板の適用が検討されている。特に、自動車用鋼板に関しては、地球環境への配慮から、車体を軽量化して燃費を向上させるために、薄肉高成形性高張力冷延鋼板の需要が著しく高まってきている。プレス成形においては、使用される鋼板の厚さが薄いほど、割れやしわが発生しやすくなるため、より延性や伸びフランジ性に優れた鋼板が必要とされる。しかし、これらのプレス成形性と鋼板の高強度化とは、背反する特性であり、これらの特性を同時に満足させることは困難である。
これまでに、高張力冷延鋼板のプレス成形性を改善する方法として、ミクロ組織の微細粒化に関する技術が多く提案されている。例えば特許文献1には、熱間圧延工程においてAr点近傍の温度域で合計圧下率80%以上の圧延を行う、極微細粒高強度熱延鋼板の製造方法が開示されており、特許文献2には、熱間圧延工程において、圧下率40%以上の圧延を連続して行う、超細粒フェライト鋼の製造方法が開示されている。
これらの技術により、熱延鋼板において強度と延性のバランスが向上するが、冷延鋼板の組織を微細粒化しプレス成形性を改善する方法については何ら記載されていない。本発明者らの検討によると、大圧下圧延によって得られた細粒熱延鋼板を母材として通常の冷間圧延および焼鈍を行うと、結晶粒が粗大化し易く、プレス成形性に優れた冷延鋼板を得ることは困難である。特に、Ac点以上の高温域で焼鈍することが必要な、金属組織に低温変態生成相や残留オーステナイトを含む複合組織冷延鋼板の製造においては、結晶粒の粗大化が顕著であり、延性に優れるという複合組織冷延鋼板の利点を享受することができない。
特許文献3には、熱間圧延工程において、動的再結晶域での圧下を5スタンド以上の圧下パスで行う、超微細粒を有する熱延鋼板の製造方法が開示されている。しかし、熱間圧延時の温度低下を極度に低減させる必要があり、通常の熱間圧延設備で実施することは困難である。また、熱間圧延後、冷間圧延および焼鈍を行った例が示されているが、得られた冷延鋼板は引張強度と穴拡げ性のバランスが悪く、プレス成形性が不十分である。
微細組織を有する冷延鋼板に関しては、特許文献4に平均結晶粒径が10μm以下であるフェライト中に平均結晶粒径が5μm以下である残留オーステナイトを分散させた、耐衝突安全性および成形性に優れた自動車用高強度冷延鋼板が開示されている。金属組織に残留オーステナイトを含む鋼板では、加工中にオーステナイトがマルテンサイト化し変態誘起塑性により大きな伸びを示すが、硬質なマルテンサイトの生成により穴拡げ性が損なわれる。特許文献4において開示される冷延鋼板では、フェライトおよび残留オーステナイトを微細化することにより、延性および穴拡げ性が向上するとされているが、穴拡げ比は高々1.5であり十分なプレス成形性を備えるとは言い難い。
特許文献5には、結晶粒内に残留オーステナイトおよび/またはマルテンサイトからなる第二相を微細に分散させた、伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度鋼板が開示されている。しかし、第二相をナノサイズにまで微細化し結晶粒内に分散させるために、CuやNi等の高価な元素を多量に含有させたり、高温で長時間の溶体化処理を行う必要があり、製造コストの上昇や生産性の低下が著しい。また、同文献の実施例にはベイナイトを母相組織とし残留オーステナイトを17%含有する冷延鋼板が開示されているものの、強度および伸びフランジ性に加えてさらに延性をも兼備するためには、さらに鋼組織を検討する必要がある。
特許文献6には、平均結晶粒径が10μm以下であるフェライトおよび焼戻マルテンサイト中に残留オーステナイトおよび低温変態生成相を分散させた延性、伸びフランジ性および耐疲労特性に優れた高張力溶融亜鉛めっき鋼板が開示されている。焼戻マルテンサイトは伸びフランジ性および耐疲労特性の向上に有効な相であり、焼戻マルテンサイトを細粒化するとこれらの特性が一層向上するとされている。しかし、焼戻マルテンサイトと残留オーステナイトとを含む金属組織を得るためには、マルテンサイトを生成させるための一次焼鈍と、マルテンサイトを焼戻しさらに残留オーステナイトを得るための二次焼鈍が必要となり、生産性が大幅に損なわれる。また、主相がフェライトや焼戻しマルテンサイトの場合、高強度で優れた伸びフランジ性を示すためには、必ずしも最適な組織であるとは言い難い。
特許文献7には、熱間圧延直後に720℃以下まで急冷し、得られた熱延鋼板に冷間圧延および焼鈍を施す、低温変態相を主相とした組織中に残留オーステナイトが微細に分散した冷延鋼板の製造方法が開示されている。
特開昭58−123823号公報 特開昭59−229413号公報 特開平11−152544号公報 特開平11−61326号公報 特開2005−179703号公報 特開2001−192768号公報 特開2013−32580号公報
上述の特許文献7において開示される発明は、熱間圧延終了直後に急速冷却することにより、オーステナイトに蓄積された加工歪みを解放させず、加工歪みを駆動力として変態させることにより、微細粒組織を有する熱延板とし、冷間圧延後の焼鈍工程において、組織の粗大化を抑制する焼鈍を施すことで、高い強度と良好な延性と良好な伸びフランジ性を有する優れた冷延鋼板の発明である。しかし、この方法では数100℃/s以上の急速冷却を700℃近傍の温度まで続けるため、量産工程では板温の制御が容易ではない。
したがって、特許文献7記載の製造方法により得られた冷延鋼板は微細粒組織が得られるものの、板温の制御が容易ではないために組織が不均一になる場合があり、近年のさらなる高性能化のニーズに対応可能な、高い強度と良好な延性と良好な伸びフランジ性とを同時に具備する冷延鋼板を提供するためには、さらなる検討が必要である。
本発明は、そのような問題点を解決するためになされたものであり、さらに具体的にはその課題は、優れた延性、伸びフランジ性を有する引張強度が780MPa以上の高張力冷延鋼板を提供することである。
本発明者らは、上述の課題に鑑み、冷延鋼板の化学組成および鋼組織と機械特性との関係について鋭意研究を重ねた結果、以下に列記の知見a〜iを得て、本発明を完成した。
(a)高い強度を得るためには鋼組織は硬質であることが好ましく、優れた伸びフランジ性を得るためには鋼組織は均質であることが好ましい。したがって、高い強度と優れた伸びフランジ性とを兼備させるためには、硬質かつ均質な組織であるベイナイトが最も適しており、ベイナイトを主体とする鋼組織とすることが重要である。
(b)しかし、ベイナイトは延性に乏しい組織であるため、単にベイナイトを主体とする鋼組織とするだけでは、優れた延性を確保することが困難である。
(c)優れた延性を兼備させるためには、適量のポリゴナルフェライトと残留オーステナイトとを含有させることが効果的であるが、板厚方向の全域にわたって均一な組織とするよりも、鋼板の表層近傍のフェライト量を増加することにより伸びフランジ性を維持でき、一層の延性向上を図ることができる。
(d)鋼板の表層近傍に軟質なフェライトを鋼板の内部に比べて多く生成させることによって鋼板の表層近傍の加工性が増加し、打ち抜き加工時の微小クラックの生成を抑制することが可能となる。さらに、鋼板内部をベイナイト主体の組織とすることにより、微小なクラックの伝播を抑制することが可能となる。これにより、延性および伸びフランジ性が高められる。
(e)また、適量の残留オーステナイトを含有させることにより変態誘起塑性(TRIP)により延性が高められる。
(f)ここで、残留オーステナイトは、変態誘起塑性(TRIP)により延性を高めることができる反面、変態誘起塑性(TRIP)により硬質なマルテンサイトに変態して伸びフランジ性を低下させる。このため、残留オーステナイトを単に有するのでは、ベイナイトが主体の鋼組織とすることによる伸びフランジ性の向上作用が減殺されてしまい、優れた伸びフランジ性を確保することが困難となる。
(g)残留オーステナイトは、主として15°以上の結晶方位差を有する粒の間に生成する粒状のものと、ベイナイトラス間に生成するラス状のものに分類されるが、後者は残留オーステナイト中の炭素濃度がより高まる傾向にあり、変態誘起塑性(TRIP)により、粒状の残留オーステナイトよりも硬質なマルテンサイトを生じ易く、伸びフランジ性を低下させる。
(h)粒状の残留オーステナイトは、ラス状の残留オーステナイトに比べて、粗大化し易い傾向にあり、打ち抜き加工時に粗大なクラックを生じて伸びフランジ性を低下させる。このため、15°以上の結晶方位差を有する粒の平均粒径を小さくして、粒状の残留オーステナイトの生成サイトを増加させ、微細に生成させることが有効である。
(i)さらに、鋼板の表層部において15°以上の結晶方位差を有する粒の平均粒径を小さくして、粒状の残留オーステナイトを微細に生成させることにより、打ち抜き加工時に粗大なクラックを抑制することで、鋼板の表層部の延性を維持でき、一層の伸びフランジ性向上を図ることができる。
上記知見に基づいてなされた本発明は、以下のとおりである。
(1)質量%で、C:0.020%超0.30%未満、Si:0.10%超3.00%以下、Mn:1.00%超3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:2.00%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、面積%で、ベイナイトを50%以上、ポリゴナルフェライトを2%以上30%未満、残留オーステナイトを3%以上有し、残部が15.0%以下であって、かつ残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径が7μm以下であるとともに、下記式(1)および式(2)を満足する鋼組織を有することを特徴とする冷延鋼板。
Vαs>1.1Vαq (1)
Ds<Dq (2)
ここで、
Vαsは鋼板表面から50μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、
Dsは鋼板表面から50μm深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)であり、
Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、
Dqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)である。
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.20%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)に記載の冷延鋼板。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の冷延鋼板。
(4)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする上記(1)から上記(3)のいずれかに記載の冷延鋼板。
本発明によれば、プレス成形などの加工に適用できる十分な延性、伸びフランジ性を兼ね備えた高張力冷延鋼板が提供される。したがって、本発明は自動車の車体軽量化を通じて地球環境問題の解決に寄与できるなど、産業の発展に寄与するところ大である。
本発明に係る高張力冷延鋼板における化学組成、金属組織およびその鋼板を効率的、安定的かつ経済的に製造しうる製造方法における圧延、焼鈍条件等について、以下に詳述する。以下の説明において、鋼板の化学組成に関する%は特に指定しない限り質量%である。
1.化学組成
(1−1)C:0.020%超0.30%未満
Cは、ベイナイトの生成を促進する作用と残留オーステナイトを安定化する作用とを有する。C含有量が0.020%以下では、目的とするベイナイト面積率や残留オーステナイト面積率を確保することが困難となる。したがって、C含有量は0.020%超とする。好ましくは0.070%超、さらに好ましくは0.10%超、特に好ましくは0.14%超である。一方、C含有量が0.30%以上では鋼板の伸びフランジ性が損なわれるばかりか溶接性が劣化する。したがって、C含有量は0.30%未満とする。好ましくは0.25%未満、さらに好ましくは0.20%未満、特に好ましくは0.17%未満である。
(1−2)Si:0.10%超3.00%以下
Siは、Alと同様に、セメンタイトの析出を遅延させる作用を有し、これにより、オーステナイトが未変態で残留する量、すなわち残留オーステナイトの面積率を高めることを可能とするとともに、固溶強化により鋼板の強度を高めることを可能とする。また、Siは脱酸により鋼を健全化する作用を有する。Si含有量が0.10%以下では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Si含有量は0.10%超とする。好ましくは0.60%超、さらに好ましくは0.90%超、特に好ましくは1.20%超である。一方、Si含有量が3.00%超では鋼板の表面性状が劣化する。さらに、化成処理性およびめっき性が著しく劣化する。したがって、Si含有量は3.00%以下とする。好ましくは2.00%未満、さらに好ましくは1.80%未満、特に好ましくは1.60%未満である。後述するAlを含有する場合は、Si含有量とsol.Al含有量が下記式(3)を満足することが好ましく、下記式(4)を満足するとさらに好ましく、下記式(5)を満足すると特に好ましい。
Si+sol.Al>0.60・・・(3)
Si+sol.Al>0.90・・・(4)
Si+sol.Al>1.20・・・(5)
ここで、式中のSiは鋼中でのSi含有量を、sol.Alは酸可溶性のAl含有量を質量%にて表したものである。
(1−3)Mn:1.00%超3.50%以下
Mnは、フェライト変態を抑制してベイナイトの生成を促進する作用を有する。Mn含有量が1.00%以下では、目的とするベイナイト面積率を確保することが困難である。したがって、Mn含有量は1.00%超とする。好ましくは1.50%超、さらに好ましくは1.80%超、特に好ましくは2.10%超である。一方、Mn含有量が3.50%超では、フェライト変態が過度に抑制され、目的とするポリゴナルフェライト面積率を確保することが困難となる。また、ベイナイト変態の完了が遅延するためにオーステナイトへの炭素濃化が促進されず、残留オーステナイトの生成が不十分となり、目的とする残留オーステナイト面積率を確保することが困難となるとともに、残留オーステナイト中の炭素濃度を高めることが困難となる。したがって、Mn含有量は3.50%以下とする。好ましくは3.00%未満、さらに好ましくは2.80%未満、特に好ましくは2.60%未満である。
(1−4)P:0.10%以下
Pは、一般に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により強度を高める作用を有する元素でもある。したがって、Pを積極的に含有させてもよい。しかし、Pは、偏析し易い元素であり、その含有量が0.10%を超えると、粒界偏析に起因する成形性や靭性の低下が顕著となる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。好ましくは0.050%未満、さらに好ましくは0.020%未満、特に好ましくは0.015%未満である。P含有量の下限は、特に規定する必要はないが精錬コストの観点から、0.001%以上とすることが好ましい。
(1−5)S:0.010%以下
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して伸びフランジ性を劣化させる。このため、S含有量は少ないほど好ましい。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.005%未満、さらに好ましくは0.003%未満、特に好ましくは0.002%未満である。S含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの観点からはS含有量は0.0001%以上とすることが好ましい。
(1−6)sol.Al:2.00%以下
Alは、Siと同様に、鋼を脱酸して鋼板を健全化する作用を有する。本発明においては、Alと同様に脱酸作用を有するSiを含有させるため、Alは必ずしも含有させる必要はない。脱酸の促進を目的として含有させる場合には、sol.Alとして0.0050%以上含有させることが好ましい。さらに好ましいsol.Al含有量は0.020%超である。また、Alは、Siと同様にオーステナイトからのセメンタイトの析出を抑制することで残留オーステナイトの生成を促進する作用を有する。残留オーステナイトの生成を促進を目的として含有させる場合には、sol.Al含有量は好ましくは0.040%超、さらに好ましくは0.050%超、特に好ましくは0.060%超である。一方、sol.Al含有量が0.010%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、sol.Al含有量は、0.010%以上であり、好ましくは0.20%以上である。一方、sol.Al含有量が高すぎると、アルミナに起因する表面疵が発生しやすくなるばかりか、変態点が大きく上昇し、焼鈍後にベイナイトを主相とする金属組織を得ることが困難となる。したがって、sol.Al含有量は2.00%以下とする。好ましくは0.60%未満、さらに好ましくは0.20%未満、特に好ましくは0.10%未満である。
(1−7)N:0.010%以下
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼板の成形性を低下させる作用を有する。N含有量が0.010%超では成形性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.006%以下であり、さらに好ましくは0.005%以下である。N含有量の下限は特に規定する必要はないが、後述するようにTi、NbおよびVの1種または2種以上を含有させて鋼組織の微細化を図る場合を考慮すると、炭窒化物の析出を促進させるためにN含有量は0.0010%以上とすることが好ましく、さらに好ましくは0.0020%以上である。
本実施の形態に係る鋼板は、以下に列記する元素を任意元素として含有してもよい。
(1−8)Ti:0.20%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、いずれも、鋼中に炭化物または窒化物として析出し、そのピン止め効果によって鋼組織を微細化する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させても、上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ti含有量は0.20%未満、Nb含有量は0.10%未満、V含有量は0.50%以下とする。これらの元素の上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.005%以上、Nb:0.002%以上、およびV:0.005%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
(1−9)Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Cr、Mo、Bは、いずれも、焼入性を高める作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。
しかしながら、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Cr含有量は1.0%以下、Mo含有量は0.50%以下、B含有量は0.010%以下とする。Cr含有量は好ましくは0.50%以下であり、Mo含有量は好ましくは0.20%以下であり、B含有量は好ましくは0.0030%以下である。上記作用による効果をより確実に得るには、Cr:0.20%以上、Mo:0.05%以上およびB:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
(1−10)Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Ca、MgおよびREMは介在物の形状を調整することにより、Biは凝固組織を微細化することにより、ともに伸びフランジ性を改善する作用を有する。したがって、これらの元素の1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、過剰に含有させても上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ca含有量は0.010%以下、Mg含有量は0.010%以下、REM含有量は0.050%以下、Bi含有量は0.050%以下とする。好ましくは、Ca含有量は0.0020%以下、Mg含有量は0.0020%以下、REM含有量は0.0020%以下、Bi含有量は0.010%以下である。上記作用をより確実に得るには、Ca:0.0005%以上、Mg:0.0005%以上、REM:0.0005%以上およびBi:0.0010%以上のいずれかを満足させることが好ましい。なお、REMとは希土類元素を意味し、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REM含有量はこれらの元素の合計含有量である。
化学成分における上記以外の残部は、Feおよび不純物である。
2.鋼組織
本発明に係る冷延鋼板の組織は、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置および鋼板表面から50μm深さ位置での鋼組織に特徴を有する。ここで、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置は、鋼板表面と鋼板の板厚中心との中間点であるので、この位置での鋼組織は鋼板の平均的な組織を示している。一方、鋼板表面から50μm深さの位置での鋼組織は、鋼板の表面近傍における組織を示す。鋼板の表層は、酸化スケールや冷却の影響によって組織が乱れる可能性があるので、そのような乱れを避けるために、表面から50μm深さ位置での組織によって鋼板表面近傍の組織を規定する。
(2−1)鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのベイナイト面積率:50%以上
上述したように、ベイナイトは、硬質かつ均質な組織であり、高い強度と優れた伸びフランジ性とを兼備させるのに最も適した組織である。ベイナイト面積率が50%未満では高い強度と優れた伸びフランジ性とを鋼板に兼備させることが困難である。したがって、ベイナイト面積率は50%以上とする。好ましくは60%以上である。ベイナイト面積率の上限は特に規定する必要はない。しかし、後述する他の相や組織の面積率の下限値より、ベイナイト面積率は95%以下となる。なお、本発明におけるベイナイトには上部ベイナイトおよび下部ベイナイトの双方が含まれる。
(2−2)鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのポリゴナルフェライト面積率:2%以上30%未満
軟質なポリゴナルフェライトを含有させることにより、鋼板の変形初期の加工硬化指数が向上する。さらに、反射的効果として残留オーステナイトへの炭素濃化が促進されるため、変形後期の加工硬化指数も向上する。その結果、鋼板の延性および伸びフランジ性が向上する。ポリゴナルフェライト面積率が2.0%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、ポリゴナルフェライト面積率は2.0%以上とする。
一方、ポリゴナルフェライト面積率が30%以上になると、ボイドの発生起点となり易いポリゴナルフェライトとマルテンサイトとの界面や、ポリゴナルフェライトとパーライトとの界面が増加することに起因して、特に伸びフランジ性が低下する場合がある。したがって、ポリゴナルフェライト面積率は30%未満とする。好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下である。
(2−3)鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オーステナイト面積率:3%以上
残留オーステナイトは、変態誘起塑性(TRIP)により延性を高める作用を有する。残留オーステナイト面積率が3%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、残留オーステナイト面積率は3%以上とする。好ましくは5%以上、さらに好ましくは7%以上である。残留オーステナイト面積率の上限は特に規定する必要はないが、上記化学組成において確保し得る残留オーステナイト面積率は概ね40%未満である。
なお、残留オーステナイト中の炭素濃度Cγを0.4質量%以上とすることにより、残留オーステナイトは適度に安定化し、変形後期の高歪域において変態誘起塑性(TRIP)を多く生じるようになるため、延性および伸びフランジ性が一層向上する。したがって、残留オーステナイト中の炭素濃度Cγは0.4質量%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.6質量%以上、特に好ましくは0.8質量%以上である。また、残留オーステナイト中の炭素濃度Cγを2.0質量%以下とすることにより、残留オーステナイトの過度な安定化を抑制し、変態誘起塑性(TRIP)をより確実に発現させることができる。したがって、残留オーステナイト中の炭素濃度Cγは2.0質量%以下とすることが好ましく、さらに好ましくは1.8質量%以下である。
なお、残留オーステナイトの定量方法には、X線回折、EBSP(電子後方散乱回折像、Electron Back Scattering Pattern)解析、磁気測定による方法などがあり、方法によって定量値が異なる場合がある。本発明で規定する残留オーステナイトの面積率はX線回折による測定値である。
X線回折による残留オーステナイト面積率の測定では、Co−Kα線を用いてα(110)、α(200)、α(211)、γ(111)、γ(200)、γ(220)の計6ピークの積分強度を求め、強度平均法を用いて算出した。
(2−4)鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのベイナイト、ポリゴナルフェライトおよび残留オーステナイトを除く残部の面積率:15%以下
本発明に係る冷延鋼板の組織は、上述したベイナイト、ポリゴナルフェライトおよび残留オーステナイトから構成されることが成形性の観点から好ましいが、マルテンサイト、パーライト、セメンタイトなど上記以外の組織が混在したとしても、その面積率が15%以下であれば許容できる。上記残部の面積率は好ましくは10%以下である。
(2−5)鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径:7μm以下
上述したように、残留オーステナイトは、主に15°以上の結晶方位差を有する粒の間とベイナイトラス間とに形成される。そして、前者の方が後者に比して粗大化する傾向にあるため、前者の残留オーステナイトを微細に分散させることが重要である。そのためには、15°以上の結晶方位差を有する粒の平均粒径を小さくして、残留オーステナイトの生成サイトを増加させることが有効である。
上記平均粒径が7μm超では、残留オーステナイトを微細に分散させることが不十分となり、残留オーステナイトによる伸びフランジ性の低下作用を効果的に抑制することが困難である。したがって、上記平均粒径は、7μm以下が好ましく、6μm以下であればさらに好ましく、5μm以下であれば特に好ましい。平均粒径は小さいほど好ましいので平均粒径の下限は特に規定する必要はない。
平均粒径(D)は、下記(6)式で算出される値とする。(6)式中、Nは平均粒径の評価領域に含まれる粒の数を示し、Aiはi番目(i=1、2、・・、N)の粒の面積を示し、diはi番目の結晶粒の円相当直径を示す。これらのデータはEBSP解析により容易に求められる。具体的には、鉄の面心立方格子(FCC)と体心立方格子(BCC)の結晶構造定義を用いて相を区別し、その内、体心立方格子(BCC)として認識された相だけを解析することにより求められる。
Figure 2015161023
なお、15°以上の結晶方位差を有する粒は、主に、フェライト粒やベイナイトブロックである。JIS G0552に準じたフェライト粒径の測定方法では、結晶方位差が15°未満である粒についても粒径が算定されてしまい、さらに、ベイナイトブロックは算定されないため、残留オーステナイトの分散形態を適切に規定することができない。したがって、本発明ではEBSP解析により求めた値を採用する。
具体的には、EBSP測定装置にTSL製OIMTM5を使用し、圧延方向に平行な縦断面を電解研磨した後、板厚方向に50μm、圧延方向に100μmの大きさの領域において0.1μmピッチで電子ビームを照射し、得られた測定データの内、信頼性指数が0.1以上のものを有効なデータとしてbcc粒の判定を行う。bcc粒として観察された、方位差15゜以上の粒界で囲まれた領域を一つのbcc粒として、個々のbcc粒の円相当直径および面積を求め、前述した(6)式にしたがって平均粒径を算出する。なお、EBSPによる金属組織評価では格子定数を考慮しないため、マルテンサイトのようなbct(体心正方格子)構造の粒も一緒に測定される。従って、bcc粒とは、bcc構造の粒とbct構造の粒の両者を包含するものである。
(2−6)鋼板表面から50μm深さ位置と鋼板表面から板厚の1/4深さ位置とにおけるフェライトの面積率および残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径の関係
伸びフランジ成形や曲げ成形等のように、鋼板内部に比して鋼板表層部における歪量が大きい成形法では、鋼板表層部における変形能を高めるとともに、打ち抜き加工時の微小クラックの生成を抑制することが重要である。そのため、本発明に係る冷延鋼板の組織は、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織を以上のように規定するほかに、鋼板表面から50μm深さ位置での鋼組織と板厚の1/4深さ位置での鋼組織との関係を以下のように規定する。
鋼板表面から50μm深さ位置でのフェライトの面積率が鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率の1.1倍以下であったり、鋼板表面から50μm深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径が鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径以上であったりすると、鋼板内部に比べて鋼板表面近傍の変形能を高めることができず、打ち抜き加工時の微小クラックの生成を抑制することが困難となる。また、残留オーステナイトの均一微細分散を促進することも不可能となって、微小クラックの伝播を抑制することが困難となり、結果として穴拡げ性を飛躍的に向上させることができない。したがって、下記式(1)および(2)を満足するものとする。
Vαs>1.1Vαq (1)
Ds<Dq (2)
ここで、
Vαsは鋼板表面から50μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、Dsは鋼板表面から50μm深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)であり、Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、Dqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)である。
3.製造条件
本発明に係る冷延鋼板は、上述した化学組成と板厚方向の傾斜組織を含む鋼組織を有するものであればよく、その製造方法は特に限定されないが、本発明に係る冷延鋼板を得るのに好適な製造方法を以下に説明する。
本発明に係る冷延鋼板を得るには、以下の手法が好ましい。すなわち、熱延時にオーステナイトに蓄積された加工歪みを解放させず、加工歪みを駆動力として変態させることにより、微細粒組織を有する熱延板を作成する。さらに熱間圧延により導入されるせん断歪みを利用して、熱延板の組織を鋼板表層部が鋼板内部よりもさらに細粒となる傾斜組織を作る。この熱延板を冷間圧延し、焼鈍工程において、組織の粗大化を抑制し、熱延板の組織傾斜を効率的に利用することで、板厚方向の傾斜組織を有し、結晶粒径が細粒であるベイナイトを主体とする金属組織を有する焼鈍板を得る。
具体的には、熱間圧延において、最終圧延パスと最終圧延パスの1つ前の圧延パスおよび2つ前の圧延パスにおける圧下率を30%以上50%以下とし、860℃以上1050℃以下の温度域で下記式(7)を満足する多パス熱間圧延を施し、圧延完了後0.3秒間以内に冷却を開始して、200℃/秒以上の冷却速度で850℃未満Ar点以上の温度域まで冷却し、この温度域で1秒間以上3秒間未満の時間滞留させた後に、20℃/秒以上の冷却速度で600℃以上750℃未満の温度域まで冷却し、この温度域で1秒間以上15秒間以内滞留させ、500℃超の温度域で巻き取ることが好ましい。
0.002/exp(−6080/(T+273))≦t≦2.0 (7)
ここで、各記号の意味は次の通りである。
t:最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了から最終圧延パスの圧延開始までのパス間時間(秒)
T:最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了温度(℃)
このような方法にて製造した熱延板を母材として採用し、焼鈍工程において、加熱速度、均熱温度、冷却速度等を制御することで、組織の粗大化を抑制し、上記化学組成、板厚方向の傾斜組織を含む鋼組織を有する冷延鋼板を製造することが容易になる。以下に製造方法についてより詳しく説明する。
(3−1)スラブ、熱間圧延に供する際のスラブ温度、熱間圧延態様
熱間圧延に供するスラブは、連続鋳造により得られたスラブや鋳造・分塊により得られたスラブなどを用いることができ、必要によってはそれらに熱間加工または冷間加工を加えたものを用いることができる。
熱間圧延に供するスラブの温度は、熱間圧延をオーステナイト域で行うためにオーステナイト単相域となる温度に加熱すればよく、特に限定する必要はないが、後述する好適な圧延完了温度を確保する観点からは1050℃以上とすることが好ましく、スケールロスを抑制する観点からは1350℃以下とすることが好ましい。なお、熱間圧延に供するスラブが連続鋳造により得られたスラブや分塊圧延により得られたスラブであって高温状態にある場合には、加熱することなしに熱間圧延に供してもよい。
熱間圧延は、多パス圧延としてレバースミルまたはタンデムミルを用いるのが好ましい。特に工業的生産性の観点から、少なくとも最終の数段はタンデムミルを用いた圧延とすることがより好ましい。
(3−2)最終圧延パス、最終圧延パスの1つ前の圧延パスおよび最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧下率:30%以上50%以下
最終圧延パス、最終圧延パスの1つ前の圧延パスおよび最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧下率は30%以上50%以下とすることが好ましい。
最終圧延パス、最終圧延パスの1つ前の圧延パスおよび最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧下率をそれぞれ30%以上とすることにより、主に再結晶オーステナイト粒の微細化が図られるとともに、鋼板の表層近傍に導入されるせん断歪みの効果によって鋼板の表層近傍の再結晶オーステナイト粒が鋼板の内部に比べて一層微細化される。さらに、最終圧延パスの圧下率を30%以上とすることにより、後述する熱間圧延後の冷却条件と相俟って、導入される歪みを変態駆動力および変態核生成サイトとして、鋼板の内部に比べて鋼板の表層近傍のフェライト変態を促進することが可能となる。各圧延パスでの圧下率が30%未満では、鋼板表層近傍に導入されるせん断歪み量が不十分となり、鋼板表層部が鋼板内部よりも細粒となる傾斜組織を有する熱延鋼板が得られない。したがって、最終圧延パス、最終圧延パスの1つ前の圧延パスおよび最終圧延パスの2つ前の圧延パスにおける圧下率は、30%以上が好ましく、40%以上とすることがより好ましい。
一方、鋼板の平坦性や導入した歪みの加工発熱による解放を抑制する観点から、各圧延パスでの圧下率は好ましくは50%以下である。
(3−3)圧延完了温度:860℃以上1050℃以下
圧延完了温度は860℃以上1050℃以下とすることが好ましい。圧延完了温度を860℃以上とすることにより、圧延時の変形抵抗が低減され、圧延が容易になる。したがって、圧延完了温度は860℃以上とすることが好ましい。さらに好ましくは880℃以上、特に好ましくは900℃以上である。
また、圧延完了温度を1050℃以下とすることにより、圧延により導入した歪の解放が抑制され、後続する冷却処理を適切に施すことにより、上記歪による駆動力を効率的に利用したフェライト変態およびベイナイト変態が実現され、鋼板表層部が鋼板内部よりも細粒となる傾斜組織を有する熱延鋼板を容易に得ることができる。したがって、圧延完了温度は1050℃以下とすることが好ましい。さらに好ましくは1030℃以下、特に好ましくは1000℃以下、最も好ましくは980℃以下である。なお、これらの温度は鋼材の表面温度であり、放射温度計等により測定することができる。
(3−4)最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了から最終圧延パスの圧延開始までのパス間時間:式(7)を満足
上記式(7)を満足することにより、最終圧延パスの1つ前の圧延パスの圧延完了から最終圧延パスの圧延開始までのパス間において、オーステナイトの再結晶が促進されるとともにオーステナイトの粒成長が抑制されるため、圧延中の再結晶オーステナイト粒の微細化が図られ、熱延鋼板の金属組織が微細化し、冷間圧延および焼鈍後の金属組織を微細化し、延性、伸びフランジ性を向上させる。
(3−5)圧延完了後の一次冷却:圧延完了後0.3秒間以内に冷却を開始して、200℃/秒以上の冷却速度で850℃未満Ar点以上の温度域まで冷却
圧延により導入した歪による駆動力を効率的に活用して変態させるため、圧延完了の一次冷却は0.3秒間以内に冷却を開始して、200℃/秒以上の冷却速度で850℃未満Ar点以上の温度域まで冷却することが好ましい。
圧延完了後0.3秒間以内に冷却を開始して、200℃/秒以上の冷却速度で850℃未満Ar点以上の温度域まで冷却することで、後述する滞留時間と相俟って、鋼板の表層近傍でのフェライト変態駆動力を残したまま、鋼板の内部の蓄積歪みを解放させることが可能となる。これにより、鋼板表層部が鋼板内部よりも細粒となる傾斜組織を有する熱延鋼板を得ることができる。圧延完了後、冷却開始までの時間が0.3秒間を超える場合や冷却速度が200℃/秒未満では鋼板の表面に導入された歪みが解放してしまい、このような傾斜組織を有する熱延鋼板が得られない。また、一次冷却の停止温度が850℃以上では、鋼板の表層近傍の蓄積歪みの解放が顕著となり所望の組織を有する熱延鋼板が得られない。一方、一次冷却の停止温度がAr点を下回ると一部フェライト変態が起こるが、Ar点付近ではフェライト粒の核生成が不十分になりやすいために、混粒組織となりやすく、組織の微細化が不十分になり、良好な機械特性が得られなくなる。したがって、圧延完了の一次冷却は0.3秒間以内に冷却を開始して、200℃/秒以上の冷却速度で850℃未満Ar点以上の温度域まで冷却することが好ましい。
圧延完了から冷却開始までの時間はより好ましくは0.2秒間以内、さらに好ましくは0.15秒間以内である。また、冷却速度はより好ましくは250℃/秒以上、さらに好ましくは300℃/秒以上である。冷却速度の上限値は特に規定しないが、冷却速度を速くすると冷却設備が大掛かりとなり、設備コストが高くなる。このため、設備コストを考えると、600℃/秒以下が好ましい。
(3−6)850℃未満Ar点以上の温度域での滞留時間:1秒間以上3秒間未満
850℃未満Ar点以上の温度域での滞留時間は1秒間以上3秒間未満とすることが好ましい。これによって、鋼板の表層近傍でのフェライト変態駆動力を残したまま、鋼板の内部の蓄積歪みを解放されることが可能となり、鋼板表層部が鋼板内部よりも細粒となる傾斜組織を有する熱延鋼板を容易に得ることができる。1秒間未満では、鋼板の内部の歪み解放が不十分なため所望の傾斜組織を有する熱延鋼板を得ることができない。一方、3秒間以上では鋼板の表面に導入された歪みが解放してしまい、同様に所望の傾斜組織を有する熱延鋼板を得ることができない。したがって、850℃未満Ar点以上の温度域での滞留時間は1秒間以上3秒間未満とすることが好ましい。
(3−7)600℃以上750℃未満の温度域への冷却速度:20℃/秒以上、該温度域での滞留時間:1秒間以上15秒間以内
上述した鋼板表層部と鋼板内部の蓄積歪みの差を有効に利用して、熱延板の傾斜組織を得る為には、フェライト変態が活発となる600℃以上750℃未満の温度域まで20℃/秒以上の冷却速度で冷却し、この温度域にて1秒間以上15秒間以内滞在させることが好ましい。冷却速度が20℃/秒未満の場合、鋼板の内部で冷却中に一部フェライト変態が生じ、混粒組織となりやすいために、微細均一な熱延板組織と成り難い。したがって、この温度域への冷却速度は20℃/秒以上とすることが好ましく、より好ましくは40℃/秒、さらに好ましくは60℃/秒、特に好ましくは80℃/秒である。
上記温度域に滞在させる時間が1秒間未満では、フェライト変態が十分に進行せず、混粒組織となりやすいために、微細均一な熱延板組織と成り難い。一方、上記の温度域に滞在させる時間が15秒間超の場合、オーステナイトに導入された歪みが解放され、粗大なフェライトが析出するため、やはり混粒組織となりやすくなる。したがって、上記温度域に滞在させる時間は1秒間以上15秒間以内とすることが好ましい。
(3−8)巻取温度までの平均冷却速度:30℃/秒以上、巻取温度:400℃超
巻取温度までの平均冷却速度は、オーステナイトに導入された歪みの解放による粗大なフェライトの析出を抑制するため、30℃/秒以上とすることが好ましい。平均冷却速度は、40℃/秒以上であればさらに好ましく、50℃/秒であれば特に好ましい。
巻取温度は400℃超とすることが好ましい。巻取温度が400℃超であると、熱延鋼板において鉄炭化物が充分に析出し、この鉄炭化物が冷間圧延および焼鈍後の金属組織の粗大化抑制効果を有するからである。巻取温度は500℃超であることがさらに好ましい。550℃超であると特に好ましく、580℃超であると最も好ましい。一方、巻取温度が高すぎると、熱延鋼板においてフェライトが粗大となり、冷間圧延および焼鈍後の金属組織が粗大化する。このため巻取温度は650℃未満とすることが好ましく、620℃未満とするとさらに好ましい。
(3−9)熱延板板厚
熱延鋼板の板厚は1.2mm超6mm以下が好ましい。熱延鋼板の板厚が1.2mm以下では、圧延完了温度の確保が困難になるとともに圧延荷重が過大となって、熱間圧延が困難となる場合がある。したがって、本発明に係る熱延鋼板の板厚は1.2mm超が好ましい。さらに好ましくは1.4mm以上である。一方、板厚が6mm超では、熱延板組織の微細化が困難となるだけでなく、上述した傾斜組織を得ることも困難となる。したがって、板厚は6mm以下とする。好ましくは5mm以下である。
(3−10)冷間圧延工程
熱間圧延された鋼板は、酸洗等により脱スケールされた後に、常法に従って冷間圧延される。冷間圧延は、再結晶を促進して冷間圧延および焼鈍後の金属組織を均一化し、伸びフランジ性をさらに向上させるために、冷圧率を40%以上とすることが好ましい。冷圧率が高すぎると、圧延荷重が増大して圧延が困難となるため、冷圧率の上限を70%未満とすることが好ましく、60%未満とすることはさらに好ましい。
(3−11)焼鈍工程
冷間圧延後の鋼板は、必要に応じて公知の方法に従って脱脂等の処理が施された後、焼鈍される。
焼鈍における加熱過程では、再結晶を促進して焼鈍後の金属組織を均一化すると共に、熱延板の組織傾斜を効率よく焼鈍板の組織に反映させ、傾斜組織による伸びフランジ性を向上させるために、700℃から均熱温度までの加熱速度を10.0℃/秒未満とすることが好ましい。8.0℃/秒未満とするとさらに好ましく、5.0℃/秒未満とすると特に好ましい。熱延板の粒径が細粒であると再結晶の核生成が起こりやすく、逆変態前の再結晶組織が微細均一となり、逆変態後のオーステナイトの粒径も微細となる。すなわち、熱延板組織を鋼板表層部が鋼板内部よりも細粒となる傾斜組織とし、10.0℃/秒未満の加熱速度で焼鈍することで、焼鈍均熱時のオーステナイト粒径も鋼板表層部が鋼板内部より微細となり、熱延板の組織傾斜を焼鈍板の組織に効率よく反映させることができる。
焼鈍における均熱温度の下限は、(Ac点−40℃)以上とすることが好ましい。これは、主相がベイナイト相となる金属組織を得るためである。ベイナイト相の体積率を増加させ、伸びフランジ性を向上させるために、均熱温度は(Ac点−20℃)超とすることが好ましく、Ac点超とするとさらに好ましい。しかしながら、均熱温度が高くなり過ぎると、オーステナイトが過度に粗大化して焼鈍板の組織が粗粒化するだけでなく、板厚内でのオーステナイト粒の粒径差が小さくなり、焼鈍板の組織傾斜も小さくなるため、延性、伸びフランジ性が劣化し易くなる。このため、均熱温度の上限は、(Ac点+100℃)未満とすることが好ましい。(Ac点+50℃)未満とするとさらに好ましく、(Ac点+20℃)未満とすると特に好ましい。
均熱温度での保持時間(均熱時間)は特に限定する必要はないが、安定した機械特性を得るために、15秒間超とすることが好ましく、60秒間超とするとさらに好ましい。一方、保持時間が長くなりすぎると、焼鈍板の組織が粗粒化するだけでなく、板厚内でのオーステナイト粒の粒径差が小さくなり、焼鈍板の組織傾斜も小さくなるため、延性、伸びフランジ性が劣化し易くなる。このため、保持時間は、150秒間未満とすることが好ましく、120秒間未満とするとさらに好ましい。
上述のように、熱延板組織を鋼板表層部が鋼板内部よりも細粒となる傾斜組織を有する場合は、焼鈍均熱時のオーステナイト粒径も鋼板表層部が鋼板内部より微細となる。焼鈍における均熱後の冷却過程において徐冷を行うことで、オーステナイト粒径が微細な鋼板表層部では、鋼板内部よりも微細なポリゴナルフェライトの生成が促進され、延性を向上させることができる。一方、冷却速度が速すぎると、鋼板表層部でのポリゴナルフェライトの生成が不十分となる。熱延板の組織傾斜を効率よく焼鈍板の組織に反映させ、鋼板表層部の微細なポリゴナルフェライトの生成を促進し、延性を向上させるために、5.0℃/秒未満の冷却速度で均熱温度から50℃以上冷却することが好ましい。均熱後の冷却速度は2.0℃/秒未満であることが特に好ましい。鋼板表層部の微細なポリゴナルフェライトの面積率をさらに増加させるためには、5.0℃/秒未満の冷却速度で均熱温度から80℃以上冷却することが好ましい。100℃以上冷却することはさらに好ましく、120℃以上冷却することは特に好ましい。
また、ベイナイトを主相とする金属組織を得るために、650〜500℃の温度範囲を15℃/秒以上の冷却速度で冷却することが好ましい。650〜450℃の温度範囲を15℃/秒以上の冷却速度で冷却することはさらに好ましい。冷却速度が速いほどベイナイト相の体積率が高まるので、冷却速度を30℃/秒超とするとさらに好ましく、50℃/秒超とすると特に好ましい。一方、冷却速度が速すぎると鋼板の形状が損なわれるので、650〜500℃の温度範囲における冷却速度を200℃/秒以下とすることが好ましい。150℃/秒未満であるとさらに好ましく、130℃/秒未満であればさらに好ましい。
また、残留オーステナイトを得るために、500〜300℃の温度域で30秒間以上保持する。残留オーステナイトの安定性を高めて延性、伸びフランジ性を向上させるためには、保持温度域を475〜320℃とすることが好ましい。450〜340℃とすることはさらに好ましく、430〜360℃とすることは特に好ましい。また、保持時間を長くするほど残留オーステナイトの安定性が高まるので、保持時間を60秒間以上保持することが好ましい。120秒間以上とすることはさらに好ましく、300秒間超とすることは特に好ましい。
(3−12)めっき工程
電気めっき鋼板を製造する場合には、上述した方法で製造された冷延鋼板に、常法に従って電気めっきを行えばよく、めっき皮膜の化学組成は限定されない。電気めっきの種類として、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。
溶融めっき鋼板を製造する場合には、上述した方法で焼鈍工程まで行い、500〜300℃の温度域で30秒間以上保持した後、必要に応じて鋼板を加熱してから、めっき浴に浸漬し溶融めっきを施す。残留オーステナイトの安定性を高めて延性、伸びフランジ性を向上させるためには、保持温度域を475〜320℃とすることが好ましい。450〜340℃とすることはさらに好ましく、430〜360℃とすることは特に好ましい。また、保持時間を長くするほど残留オーステナイトの安定性が高まるので、保持時間を60秒間以上保持することが好ましい。120秒間以上とすることはさらに好ましく、300秒間超とすることは特に好ましい。溶融めっき後再加熱して合金化処理を行ってもよい。めっき皮膜の化学組成は限定されず、溶融めっきの種類として、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。
このようにして得られた冷延鋼板およびめっき鋼板には、常法にしたがって調質圧延を行ってもよい。しかし、調質圧延の伸び率が高いと延性の劣化を招くので、調質圧延の伸び率は1.0%以下とすることが好ましい。さらに好ましい伸び率は0.5%以下である。
実験用真空溶解炉を用いて、表1に示される化学組成を有する鋼を溶解し鋳造した。
Figure 2015161023
これらの鋼塊を、熱間鍛造により厚さ30mmの鋼片とした。この鋼片を次いで1250℃の温度に加熱し、試験用小型タンデムミルにて表2に示す条件で熱間圧延を実施して板厚2mmの鋼板に仕上げた。なお、第一次冷却での冷却停止温度が低い場合には、第二次冷却および第三次冷却を省略した。また、冷却後は巻取温度と同温度に保持された電気加熱炉中に装入して30分間保持した後、20℃/時の冷却速度で室温まで炉冷却して巻取後の徐冷をシミュレートした。
Figure 2015161023
得られた熱延鋼板を酸洗して冷間圧延母材とし、圧下率50%で冷間圧延を施し、厚さ1.0mmの冷延鋼板を得た。連続焼鈍シミュレーターを用いて、得られた冷延鋼板を、10℃/秒の加熱速度で550℃まで加熱した後、2℃/秒の加熱速度で表3に示される種々の温度まで加熱し95秒間均熱した。その後、一次冷却停止温度である700℃まで冷却し、700℃からの平均冷却速度を60℃/秒として表3に示される種々の二次冷却停止温度まで冷却し、その温度に330秒間保持した後、室温まで冷却して焼鈍鋼板を得た。
得られた焼鈍鋼板について、鋼板の圧延方向と直交する板厚断面を鏡面研磨し、ナイタール腐食液またはレペラ腐食液で腐食した後、光学顕微鏡または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて組織観察を行った。さらに、鏡面研磨後に電解研磨で調製した試料を用いて、EBSP法による結晶方位の測定および解析を行なった
光学顕微鏡やSEMによる観察像では、ベイナイト、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの区別が困難な場合があるため、以下の方法で各々の相および組織の面積率を定量した。
まず、ベイナイト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの合計面積率をSEM観察像およびEBSP解析結果を用いて画像解析により測定した。次に、レペラ腐食した組織から残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計面積率を測定し、この合計面積率を先に測定したベイナイト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトの合計面積率から差し引いた値をベイナイト面積率とした。
ポリゴナルフェライト面積率は、SEM観察像およびEBSP解析結果を用いた画像解析により測定した。残留オーステナイト面積率は、X線回折により測定した。そして、上記で測定したベイナイト、ポリゴナルフェライトおよび残留オーステナイトの面積率の合計を、100%から差し引いた値を残部組織の面積率とした。
残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径は、EBSP解析により求めた。
機械特性として、引張特性および伸びフランジ性を評価した。引張特性は、JIS Z2201およびJIS Z 2241に準拠して引張試験を行ない、引張強度(TS)と全伸び(El)を測定し、伸びフランジ性は、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001に準拠して穴拡げ試験を行ない、穴拡げ率(λ)を求めた。
得られた鋼板の鋼組織および機械特性を表3にまとめて示す。
Figure 2015161023
発明例である試験番号5〜9,11,13,15,17〜27は、高い引張強度(TS)を有するとともに、優れた強度−延性バランス(TS×El)と優れた強度−伸びフランジバランス(TS×λ)とを有している。
一方、本発明で定める範囲を外れる比較例1〜4,10,12,14,15,16は、強度−延性バランス(TS×El)あるいは強度−伸びフランジバランス(TS×λ)の一方、または両方の特性が劣っている。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.020%超0.30%未満、Si:0.10%超3.00%以下、Mn:1.00%超3.50%以下、P:0.10%以下、S:0.010%以下、sol.Al:2.00%以下およびN:0.010%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有し、鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における鋼組織が、面積%で、ベイナイトを50%以上、ポリゴナルフェライトを2%以上30%未満、残留オーステナイトを3%以上有し、残部が15.0%以下であって、かつ残留オースナイトを除く鋼組織において15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径が7μm以下であるとともに、下記式(1)および式(2)を満足する鋼組織を有することを特徴とする冷延鋼板。
    Vαs>1.1Vαq (1)
    Ds<Dq (2)
    ここで、
    Vαsは鋼板表面から50μm深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、
    Dsは鋼板表面から50μm深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)であり、
    Vαqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置でのフェライトの面積率(%)であり、
    Dqは鋼板表面から板厚の1/4深さ位置での残留オースナイトを除く鋼組織における15°以上の結晶方位差を有する粒界で囲まれる粒の平均粒径(μm)である。
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.20%未満、Nb:0.10%未満およびV:0.50%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1に記載の冷延鋼板。
  3. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Cr:1.0%以下、Mo:0.50%以下およびB:0.010%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷延鋼板。
  4. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Ca:0.010%以下、Mg:0.010%以下、REM:0.050%以下およびBi:0.050%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の冷延鋼板。
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