JP2015146300A - リチウムイオン二次電池の負極用粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】リチウムイオン二次電池の負極用粉末であって、二次電池として、高い初回放電容量、および高いサイクル特性が得られる負極用粉末を提供する。【解決手段】この粉末は、全体の平均組成として、モル比で、O/Si比xが、0.5<x<1.5の関係を満たし、細孔構造を有する珪素酸化物の粒子を含み、珪素酸化物の粒子の少なくとも一部に、金属珪化物、たとえば、SiMnが形成されている。この粉末は、酸化珪素の蒸気と、金属の蒸気とから、珪素酸化物と前記金属との共析出物を形成する工程と、この共析出物から、前記金属を除去する工程とを含む製造方法により製造できる。【選択図】図3
Description
この発明は、リチウムイオン二次電池の負極に用いられる粉末、およびその製造方法に関し、より詳しくは負極活物質として珪素酸化物を用いた粉末、およびその製造方法に関する。
近年、携帯型の電子機器、通信機器等の著しい発展に伴い、経済性と機器の小型化および軽量化との観点から、高エネルギー密度の二次電池の開発が強く要望されている。現在、高エネルギー密度の二次電池として、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池、およびポリマー電池等がある。このうち、リチウムイオン二次電池は、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池に比べて格段に高寿命かつ高容量であることから、その需要は電源市場において高い伸びを示している。
図1は、コイン形状のリチウムイオン二次電池の構成例を示す図である。リチウムイオン二次電池は、同図に示すように、正極1、負極2、電解液を含浸させたセパレータ3、ならびに、正極1、および負極2の電気的絶縁性を保つとともに電池内容物を封止するガスケット4を備えている。充放電を行うと、リチウムイオンがセパレータ3の電解液を介して正極1と負極2との間を往復する。
正極1は、対極ケース1aと、対極集電体1bと、対極1cとで構成される。対極1cには、主に、コバルト酸リチウム(LiCoO2)や、マンガンスピネル(LiMn2O4)が使用される。負極2は、作用極ケース2aと、作用極集電体2bと、作用極2cとで構成される。作用極2cに用いる負極材は、一般に、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な活物質(負極活物質)と、導電助剤およびバインダー(樹脂からなる結着剤)とで構成される。これらの材料を混練してスラリーを調製し、銅箔上に塗布、および乾燥して、負極2が形成される。
負極活物質としては、従来より、炭素系材料、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛、無定形炭素、メソフェーズ炭素などが用いられている。リチウムイオン二次電池の高容量化を図るために、炭素系材料に比してリチウムイオンの吸蔵・放出量が多い材料を使用することが試みられている。そのような材料として、たとえば、特許文献1には、珪素(Si)を使用することが記載されている。
しかし、珪素は、リチウムイオンを吸蔵することにより、体積が約4倍に膨張し、リチウムイオンを放出すると、体積が約1/4に収縮する。このため、珪素を負極活物質として用いた作用極2cは、リチウムイオン二次電池の充放電時に、激しく膨張および収縮する。これに伴って、作用極2cが、作用極集電体2bから剥離したり、作用極2cを構成する粒子間の電気的伝導が失われたりしやすい。このため、リチウムイオン二次電池のサイクル特性(充放電を繰り返したときの初回充放電容量の維持率)が低下する。
また、下記特許文献2には、負極活物質として、非晶質の珪素酸化物を用いることが記載されている。珪素酸化物は、たとえば、一般式SiOx(0<x<2)で表され、二酸化珪素と珪素との混合物を加熱して生成した一酸化珪素蒸気を冷却し、析出させて得られる。
珪素酸化物は、充放電時のリチウムイオンの吸蔵・放出によっては、原子レベルでの構造が破壊され難いとともに、不可逆物質が生成され難い。このため、珪素酸化物は、リチウムイオンを可逆的に、吸蔵および放出することが可能である。また、珪素酸化物は、リチウムイオンの吸蔵・放出に伴う体積変化が、珪素に比して小さい。このため、負極活物質として、珪素酸化物を用いることにより、炭素を用いた場合と比較して、高容量であり、かつ、珪素を用いた場合と比較して、サイクル特性が良好なリチウムイオン二次電池が得られている。
日本金属学会編、「金属データブック 改訂第3版」、丸善出版株式会社、平成5年3月25日発行、p.86〜92
しかし、本発明者が検討したところ、特許文献2に記載の珪素酸化物を負極活物質として用いたリチウムイオン二次電池を作製し、この電池に対して、充放電を繰り返すと、容量が突然低下するという問題があることがわかった。これは、充放電時の珪素酸化物の体積変化が十分には小さくなく、負極の構造の破壊を十分に抑えられないことによるものと考えられる。
また、リチウムイオンが、珪素酸化物の粒子の全体に渡っては吸蔵されない場合(たとえば、リチウムイオンが、当該粒子の周縁部にのみ入り込み、中心部付近までは入り込まない場合)、当該粒子において、リチウムイオンが吸蔵された部分のみが膨張する。すなわち、当該粒子の局所的な膨張が生じ、これにより、当該粒子が破壊されることがある。これによっても、サイクル特性が低下するものと考えられる。
本発明は、これらの問題に鑑みてなされたものであり、リチウムイオン二次電池の負極用粉末であって、リチウムイオン二次電池として、高い初回放電容量、および高いサイクル特性が得られる負極用粉末を提供することを目的としている。
本発明の他の目的は、リチウムイオン二次電池の負極用粉末の製造方法であって、リチウムイオン二次電池として、高い初回放電容量、および高いサイクル特性が得られる負極用粉末の製造方法を提供することである。
本発明の要旨は、下記(A)〜(G)の負極用粉末、および下記(H)の負極用粉末の製造方法にある。
(A)リチウムイオン二次電池の負極用粉末であって、
当該負極用粉末全体の平均組成として、モル比で、O/Si比xが、0.5<x<1.5の関係を満たし、
細孔構造を有する珪素酸化物の粒子を含み、
前記珪素酸化物の粒子の少なくとも一部に、金属珪化物が形成されていることを特徴とする、負極用粉末。
当該負極用粉末全体の平均組成として、モル比で、O/Si比xが、0.5<x<1.5の関係を満たし、
細孔構造を有する珪素酸化物の粒子を含み、
前記珪素酸化物の粒子の少なくとも一部に、金属珪化物が形成されていることを特徴とする、負極用粉末。
(B)前記金属珪化物を構成する金属が、Mn、Al、Zn、およびGaからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする上記(A)の負極用粉末。
(C)X線回折測定で、前記金属珪化物に起因するピークが検出されることを特徴とする上記(A)または(B)の負極用粉末。
(D)Kを形状因子とし、Kの値を0.9とし、λをX線回折測定に用いるX線の波長とし、βを前記ピークの半値全幅(rad)とし、θをブラッグ角とすると、下記(1)式から求められる結晶子の平均サイズDが、0.5〜100nmであることを特徴とする上記(C)に記載の負極用粉末。
D=K×λ/(β×cosθ) (1)
D=K×λ/(β×cosθ) (1)
(E)前記金属珪化物の含有率が、100〜300000質量ppmであることを特徴とする上記(A)〜(D)のいずれかに記載の負極用粉末。
(F)当該負極用粉末を構成する粒子について、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒径をD50とすると、0.5μm≦D50≦50μmの関係を満たすことを特徴とする上記(A)〜(E)のいずれかに記載の負極用粉末。
(G)BET比表面積が、2〜100m2/gであることを特徴とする上記(F)に記載の負極用粉末。
(H)リチウムイオン二次電池の負極用粉末の製造方法であって、
酸化珪素の蒸気を生成する工程と、
金属の蒸気を生成する工程と、
前記酸化珪素の蒸気と、前記金属の蒸気とから、珪素酸化物と前記金属との共析出物を形成する工程と、
前記珪素酸化物と前記金属との反応により、前記金属の珪化物を形成する工程と、
前記共析出物から、前記金属を除去する工程とを含むことを特徴とする製造方法。
酸化珪素の蒸気を生成する工程と、
金属の蒸気を生成する工程と、
前記酸化珪素の蒸気と、前記金属の蒸気とから、珪素酸化物と前記金属との共析出物を形成する工程と、
前記珪素酸化物と前記金属との反応により、前記金属の珪化物を形成する工程と、
前記共析出物から、前記金属を除去する工程とを含むことを特徴とする製造方法。
本発明の負極用粉末は、珪素酸化物を含むので、リチウムイオン二次電池の負極に用いた場合に、当該リチウムイオン二次電池の初期充放電容量を大きくすることができる。
また、この負極用粉末は、細孔構造を有することにより、リチウムイオン二次電池の負極に用いた場合に、充放電時のリチウムイオンの吸蔵および放出による珪素酸化物の粒子径の変化を抑制することができる。
さらに、この負極用粉末に含まれる珪素酸化物の粒子には、金属珪化物(金属シリサイド)が形成されている。金属珪化物の導電率は、通常、珪素酸化物の導電率よりも高い。したがって、珪素酸化物の粒子に金属珪化物が形成されていることより、リチウムイオンの吸蔵時に、珪素酸化物粒子中でのリチウムイオンの移動が容易となる。このため、リチウムイオンが珪素酸化物の粒子全体に渡って吸蔵されやすいので、当該粒子の局所的な膨張による破壊を抑えることができる。
したがって、本発明の粉末を負極に用いたリチウムイオン二次電池のサイクル特性を高くすることができる。
本発明の負極用粉末の製造方法により、本発明の負極用粉末を製造することができる。
本発明の負極用粉末の製造方法により、本発明の負極用粉末を製造することができる。
1.本発明の負極用粉末
上述のように、本発明の負極用粉末は、リチウムイオン二次電池(以下、単に、「電池」という。)の負極に用いられるものであり、「当該負極用粉末全体の平均組成として、モル比で、O/Si比xが、0.5<x<1.5の関係を満たし、細孔構造を有する珪素酸化物の粒子を含み、前記珪素酸化物の粒子の少なくとも一部に、金属珪化物が形成されている」ことを特徴とする。
上述のように、本発明の負極用粉末は、リチウムイオン二次電池(以下、単に、「電池」という。)の負極に用いられるものであり、「当該負極用粉末全体の平均組成として、モル比で、O/Si比xが、0.5<x<1.5の関係を満たし、細孔構造を有する珪素酸化物の粒子を含み、前記珪素酸化物の粒子の少なくとも一部に、金属珪化物が形成されている」ことを特徴とする。
本発明において、「珪素酸化物」とは、非晶質のものをいう。金属珪化物の含有率が十分に小さければ、珪素酸化物のO/Si比(モル比)は、ほぼ、0.5〜1.5の範囲にある。この組成の珪素酸化物は、リチウムイオンを吸蔵、および放出し、電池の充放電を担う負極活物質として機能する。リチウムイオンの吸蔵・放出量を大きくするために、0.5<x<1.1であることが好ましい。
珪素酸化物の粒子は、細孔構造を有する。すなわち、珪素酸化物の内部には、細孔が形成されている。本発明の粉末を電池の負極(作用極)に用いた場合、珪素酸化物は、リチウムイオンを吸蔵すると、細孔の容積を減少させるように膨張することができる。これにより、珪素酸化物の粒子が外方に広がることが抑えられる。すなわち、珪素酸化物の粒子径の変化が、抑制される。
これにより、作用極は、作用極集電体から剥離し難く、作用極を構成する粒子間の電気的伝導は失われ難い。したがって、本発明の粉末を負極に用いた電池のサイクル特性を高くすることができる。
細孔の径は、たとえば、数十nm〜数百nmである。細孔は、珪素酸化物の粒子内に、一様に分布していることが好ましい。珪素酸化物の内部には、複数の細孔が形成されていてもよい。細孔の大部分が、珪素酸化物粒子の表面に開口する開気孔であってもよい。
本発明の粉末において、珪素酸化物の粒子の少なくとも一部に、金属珪化物が形成されている。金属珪化物の導電率は、通常、珪素酸化物の導電率よりも高い。したがって、珪素酸化物の粒子に金属珪化物が形成されていることより、リチウムイオンの吸蔵時に、珪素酸化物粒子中でのリチウムイオンの移動が容易となる。このため、リチウムイオンが珪素酸化物の粒子全体に渡って吸蔵されやすいので、当該粒子の局所的な膨張による破壊を抑えることができる。このような効果によっても、電池のサイクル特性を高くすることができる。
金属珪化物を構成する金属は、Mn(マンガン)、Al(アルミニウム)、Zn(亜鉛)、およびGa(ガリウム)からなる群から選択される1種以上であるものとすることができる。この場合、後述の本発明の製造方法により、この負極用粉末を、容易に製造することができる。金属珪化物は、たとえば、SiMnであってもよい。
この負極用粉末は、X線回折測定で、前記金属珪化物に起因するピークが検出されるものであってもよい。この場合、金属珪化物が存在することを、容易に確認することができる。たとえば、金属珪化物としてSiMnが形成されている場合、CuKα線を用いたX線回折測定を行うと、回折角2θが44.0〜45.0°の範囲に、最強線に対応するピーク((210)面によるもの)が現れ得る。
X線回折測定で検出される金属珪化物に起因するピークに基づいて、下記(1)式から求められる結晶子の平均サイズDは、0.5〜100nmであることが好ましい。
D=K×λ/(β×cosθ) (1)
ただし、Kは、形状因子であり(Kの値は、0.9とする)、λは、X線回折測定に用いるX線の波長であり、βは、ピーク半値全幅(rad)であり、θは、ブラッグ角である。
D=K×λ/(β×cosθ) (1)
ただし、Kは、形状因子であり(Kの値は、0.9とする)、λは、X線回折測定に用いるX線の波長であり、βは、ピーク半値全幅(rad)であり、θは、ブラッグ角である。
上記(1)式は、シェラーの式とよばれるものである。結晶子の平均サイズDは、およそ、珪素酸化物の表面(細孔の内表面を含む。)付近に形成された金属珪化物の厚さに対応しているものと考えられる。
結晶子の平均サイズDが0.5nmより小さいと、電池のサイクル特性が低下する。これは、金属珪化物の導電性によりリチウムイオンの移動を容易にするという上述の効果が、十分に得られなくなるためであると考えられる。
結晶子の平均サイズDが100nmより大きい場合も、電池のサイクル特性が低下する。珪素酸化物粒子において、珪素酸化物からなる部分は、リチウムイオンを吸蔵・放出する一方、金属珪化物からなる部分は、実質的に、リチウムイオンを吸蔵・放出しない。このため、電池の充放電時に、珪素酸化物からなる部分と金属珪化物からなる部分との界面付近に大きな応力がかかる。結晶子のサイズが大きくなると、この応力が大きくなり、金属珪化物からなる部分が、珪素酸化物からなる部分から剥がれてしまう。このため、結晶子の平均サイズDが100nmより大きいと、電池のサイクル特性が低下すると考えられる。
上記の問題を解消し、十分に高いサイクル特性を得るためには、結晶子の平均サイズDは、0.5〜30nmであることが、さらに好ましい。
この負極用粉末の金属珪化物の含有率は、100〜300000質量ppmであることが好ましい。
金属珪化物の含有率が100質量ppm未満である場合、電池の充電容量、およびサイクル特性が低下する。これは、金属珪化物が少ないために、金属珪化物の導電性によりリチウムイオンの移動を容易にするという効果が、十分に得られなくなるためであると考えられる。
金属珪化物の含有率が300000質量ppm(30質量%)を超える場合、珪素酸化物の量が、相対的に少なくなる。したがって、この場合、この負極用粉末全体としてのリチウムイオンの吸蔵量は少なくなり、電池の充電容量が小さくなる。
電池の充電容量を十分大きくし、サイクル特性を十分高くするために、金属珪化物の含有率は、10000〜200000質量ppmであることが好ましい。
金属珪化物を構成するものと同じ金属が、実質的に、当該金属珪化物以外の形態(たとえば、当該金属単体、酸化物の形態など)では存在しないとみなすことができる場合、金属珪化物の含有率は、たとえば、以下のようにして求めることができる。まず、この負極用粉末をふっ硝酸に溶解する。得られた溶液を用いて、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法により、当該金属の含有率を求める。この含有率から、計算により、金属珪化物の含有率を求める。
当該粉末を構成する粒子について、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒径(以下、「体積メディアン径」という。)をD50とすると、0.5μm≦D50≦50μmの関係を満たすことが好ましい。体積メディアン径D50は、粉体の平均的な粒径の指標となる。
体積メディアン径D50が、0.5μm未満であると、負極を形成する際に、この粉末を用いてスラリーを作製すると、スラリー中で、この粉末の粒子の凝集が生じやすくなる。スラリーは、通常、活物質となる粉末以外に、導電助剤、バインダー(結着剤)、溶媒等を含む。負極用粉末の粒子が凝集すると、スラリーを構成するこれらの成分が不均一に分布するようになり、負極として良好な特性が得られなくなる。具体的には、不均一なスラリーから作製した負極では、活物質層の厚さが大きくばらつく。活物質層の厚さが大きい部分では、厚さ方向に関して電気抵抗が高くなるため、活物質層の表面から遠い部分ではリチウムイオンが吸蔵され難くなるので、充電容量が低下する。厚さが小さい部分では、活物質量が少ないため、吸蔵できるリチウムの量も少なくなり、充電容量が低下する。
体積メディアン径D50が、50μmより大きい場合、その粉末は、50μmより大きな粒径の粒子を多く含む。電池の充電時に、リチウムイオンは、このような大きな粒子の中心部付近までは入り込み難い。このため、電池の充電容量が低下する。
負極として良好な特性を有し、かつ電池の充電容量を高くするためには、この負極用粉末は、1μm≦D50≦10μmの関係を満たすことが、さらに好ましい。
累積粒度分布は、たとえば、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
累積粒度分布は、たとえば、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。
体積メディアン径D50が、0.5μm≦D50≦50μmの関係を満たすとき、この負極用粉末のBET比表面積は、2〜100m2/gであることが好ましい。
BET比表面積が2m2/gより小さいと、珪素酸化物の粒子の細孔の容積率は小さい。このため、電池の充放電時に、珪素酸化物の粒子径の変化を抑制する効果が、十分に得られなくなる。これにより、電池のサイクル特性が低くなる。
BET比表面積が2m2/gより小さいと、珪素酸化物の粒子の細孔の容積率は小さい。このため、電池の充放電時に、珪素酸化物の粒子径の変化を抑制する効果が、十分に得られなくなる。これにより、電池のサイクル特性が低くなる。
BET比表面積が100m2/gより大きいと、珪素酸化物の粒子の細孔の容積率が大きくなりすぎる。このような珪素酸化物の粒子に応力が加わると、当該粒子は容易に破壊される。このため、電池の充放電時に、珪素酸化物の粒子が、リチウムイオンを吸蔵・放出し、体積膨張・収縮すると、それに伴って生じる応力により、当該粒子は破壊され、微粉化する。
珪素酸化物の粒子径の変化を十分に抑制し、かつ珪素酸化物の粒子の破壊を抑制するためには、BET比表面積は、5〜50m2/gであることが、さらに好ましい。
BET比表面積は、たとえば、窒素ガス吸着式によるBET一点法により測定することができる。
BET比表面積は、たとえば、窒素ガス吸着式によるBET一点法により測定することができる。
2.本発明の負極用粉末の製造方法
上述のように、本発明の、リチウムイオン二次電池の負極用粉末の製造方法は、
酸化珪素の蒸気を生成する工程と、
金属の蒸気を生成する工程と、
前記酸化珪素の蒸気と、前記金属の蒸気とから、珪素酸化物と前記金属との共析出物を形成する工程と、
前記珪素酸化物と前記金属との反応により、前記金属の珪化物を形成する工程と、
前記共析出物から、前記金属を除去する工程とを含むことを特徴とする。
上述のように、本発明の、リチウムイオン二次電池の負極用粉末の製造方法は、
酸化珪素の蒸気を生成する工程と、
金属の蒸気を生成する工程と、
前記酸化珪素の蒸気と、前記金属の蒸気とから、珪素酸化物と前記金属との共析出物を形成する工程と、
前記珪素酸化物と前記金属との反応により、前記金属の珪化物を形成する工程と、
前記共析出物から、前記金属を除去する工程とを含むことを特徴とする。
以下、本発明の製造方法の一実施形態について説明する。
図2は、本発明の製造方法を実施するために用いることができる製造装置の断面図である。この製造装置により、本発明の製造方法において、酸化珪素の蒸気を生成する工程と、金属の蒸気を生成する工程と、共析出物を形成する工程と、金属の珪化物を形成する工程とを実施することができる。
図2は、本発明の製造方法を実施するために用いることができる製造装置の断面図である。この製造装置により、本発明の製造方法において、酸化珪素の蒸気を生成する工程と、金属の蒸気を生成する工程と、共析出物を形成する工程と、金属の珪化物を形成する工程とを実施することができる。
この製造装置10は、第1の加熱チャンバ11と、第2の加熱チャンバ15と、析出チャンバ22とを備えている。析出チャンバ22は、第1および第2の加熱チャンバ11、15の上方に配置されており、第1および第2の加熱チャンバ11、15のそれぞれと連通している。第1の加熱チャンバ11と、第2の加熱チャンバ15とは、互いに、析出チャンバ22を介してのみ連通している。
第1の加熱チャンバ11内には、負極用粉末の第1の原料Msを収容する第1の原料容器12と、第1の原料容器12の周囲に配置され、第1の原料容器12を加熱するための第1のヒータ13と、第1のヒータ13の周囲に配置された第1の断熱材14とが設けられている。
第2の加熱チャンバ15内には、負極用粉末の第2の原料Mmを収容する第2の原料容器16と、第2の原料容器16の周囲に配置され、第2の原料容器16を加熱するための第2のヒータ17と、第2のヒータ17の周囲に配置された第2の断熱材18とが設けられている。
第1のヒータ13の出力と、第2のヒータ17の出力とは、互いに独立に制御可能である。
第1のヒータ13の出力と、第2のヒータ17の出力とは、互いに独立に制御可能である。
析出チャンバ22内には、平板状の基体20が、ほぼ水平に配置されている。基体20は、熱交換器(図示せず)により、冷却できるように構成されている。析出チャンバ22には、真空ポンプ21が接続されている。真空ポンプ21により、析出チャンバ22、ならびに第1および第2の加熱チャンバ11、15内のガスを排気することができる。析出チャンバ22には、圧力計19が取り付けられている。圧力計19により、析出チャンバ22内の圧力を測定することができる。
本発明の負極用粉末は、以下のようにして製造することができる。
まず、第1の原料Msとして、珪素酸化物の原料、具体的には、珪素と二酸化珪素との混合物を、第1の原料容器12に収容する。珪素と二酸化珪素との混合物は、全体として、モル比で、ほぼSi:SiO2=1:1の組成比を有する。そして、第2の原料Mmとして、金属、好ましくは、Mn、Al、Zn、およびGaからなる群から選択される1種以上を、第2の原料容器16に収容する。
まず、第1の原料Msとして、珪素酸化物の原料、具体的には、珪素と二酸化珪素との混合物を、第1の原料容器12に収容する。珪素と二酸化珪素との混合物は、全体として、モル比で、ほぼSi:SiO2=1:1の組成比を有する。そして、第2の原料Mmとして、金属、好ましくは、Mn、Al、Zn、およびGaからなる群から選択される1種以上を、第2の原料容器16に収容する。
次に、真空ポンプ21により、析出チャンバ22、ならびに第1および第2の加熱チャンバ11、15内のガスを排気する。析出チャンバ22内の圧力が、所定の圧力(たとえば、50Pa)以下になると、第1および第2のヒータ13、17を通電し、また、熱交換器による基体20の冷却を開始する。真空ポンプ21による排気は継続する。
第1のヒータ13により、第1の原料容器12、およびその中に収容された第1の原料Msが加熱される。第2のヒータ17により、第2の原料容器16、およびその中に収容された第2の原料Mmが加熱される。第1の原料Msは、酸化珪素の蒸気が生成される温度に加熱する。第1の原料Msである珪素と二酸化珪素との混合物は、たとえば、1300℃以上に加熱すると、Si+SiO2→2SiO↑の反応により、酸化珪素の蒸気を生じる。第2の原料Mmは、第2の原料Mmとしての金属の蒸気が生成される温度に加熱する。
第2の原料Mmとしての金属は、同じ温度で比較して、Alと同等、またはこれより高い蒸気圧を有することが好ましい。このような条件を満たす金属として、Al以外に、Mn、Zn、Ga、Na、Ca、Li、Mg、Cd、およびPbが挙げられる(上記非特許文献1参照)。これにより、金属を蒸気化するための加熱温度が過剰に高くならないようにすることができ、電力コストを抑えることができるとともに、安価な加熱源、および炉材を使用することが可能となる。したがって、生産コストを抑えることができる。
Na、Ca、Li、Mg、Cd、およびPbは、化学的に活性である等の理由により、取り扱いが困難である。したがって、第2の原料Mmとしての金属は、Mn、Al、Zn、およびGaからなる群から選択された1種以上とすることが好ましい。原料コストを考慮すると、これらのうち、第2の原料Mmとしての金属は、Mn、Al、およびZnからなる群から選択された1種以上とすることが、さらに好ましい。
酸化珪素の蒸気が生じることにより、第1の加熱チャンバ11内の圧力は、析出チャンバ22内の圧力に比して高くなる。第1の加熱チャンバ11内と析出チャンバ22内との圧力差により、第1の加熱チャンバ11内の酸化珪素の蒸気は、析出チャンバ22内へと流入する。同様に、金属の蒸気が生じることにより、第2の加熱チャンバ15内の圧力は、析出チャンバ22内の圧力に比して高くなる。第2の加熱チャンバ15内と析出チャンバ22内との圧力差により、第2の加熱チャンバ15内の金属の蒸気は、析出チャンバ22内へと流入する。
酸化珪素の蒸気、および金属の蒸気が、基体20に接触すると、基体20(特に、基体20の下面)上に、珪素酸化物と当該金属とが、共析出する。この共析出物は、非晶質の珪素酸化物中に、金属からなる部分が分散した構造を有する。また、この共析出物において、主として、珪素酸化物と金属からなる部分との間には、当該金属の珪化物が存在する。この金属珪化物は、当該金属と、珪素酸化物との反応により形成される。
珪素と二酸化珪素との混合物(第1の原料Ms)の加熱温度は、基体20上に珪素酸化物が所望の速度で析出するように設定する。同様に、第2の原料Mmである金属の加熱温度は、基体20上にこの金属が所望の速度で析出するように設定する。第1および第2の原料Ms、Mmの温度は、たとえば、熱電対(図示せず)によりモニタする。
負極用粉末の製造に先立って、第1の原料容器12に収容された珪素と二酸化珪素との混合物の温度と、珪素酸化物が基体20上に析出する速度との関係を調べておく。これにより、当該混合物の温度を制御することによって、基体20上の珪素酸化物の析出速度を制御することが可能となる。同様に、負極用粉末の製造に先立って、第2の原料容器16に収容された金属の温度と、当該金属が基体20上に析出する速度との関係を調べておく。これにより、当該金属の温度を制御することによって、基体20上の当該金属の析出速度を制御することが可能となる。珪素と二酸化珪素との混合物の温度と、金属の温度とを同時に制御することにより、共析出物中の珪素酸化物/金属比を制御できる。
基体20の温度を、700℃以下にすることにより、上記(1)式から求められる金属珪化物の結晶子の平均サイズDを、0.5〜100nmにすることができる。また、基体20の温度を、550℃以下にすることにより、この結晶子の平均サイズDを、0.5〜50nmにすることができる。
共析出は、たとえば、第1または第2の原料Ms、Mmが実質的に無くなるまで続けてもよい。この場合、圧力計19の値をモニタして、析出チャンバ22内の圧力が、所定の圧力(たとえば、5Pa)より低くなったとき、第1または第2の原料Ms、Mmが実質的に無くなったと判断してもよい。
そして、第1および第2のヒータ13、17の通電を終了する。これにより、第1および第2の加熱チャンバ11、15、ならびに析出チャンバ22内の温度が下がり始める。基体20の温度が、たとえば、100℃以下になると、真空ポンプ21による排気を停止し、析出チャンバ22に設けられたリークバルブ(図示せず)を開いて、析出チャンバ22内、ならびに第1および第2の加熱チャンバ11、15内を大気圧にする。
次に、基体20上に形成された共析出物を回収し、粉砕する。粉砕は、たとえば、ボールミルによるものとすることができる。これにより、共析出物を、たとえば、体積メディアン径D50が1〜20μm程度の粉末にする。
続いて、共析出物中の金属を溶解可能な酸を用いて、共析出物の粉末を酸処理する。これにより、共析出物から金属を除去する。酸処理は、共析出物の粉末を、酸の溶液中で撹拌しながら行ってもよい。酸として、たとえば、塩酸(HCl)、硫酸(H2SO4)、または硝酸(HNO3)を用いることができる。負極用粉末を用いた電池の初回放電容量を高くするためには、酸化性酸(硝酸)より、非酸化性酸(塩酸、硫酸)を用いる方が好ましい。
共析出物の粒子から金属が除去されることにより、細孔構造を有する珪素酸化物の粒子であって、少なくとも一部に金属珪化物が形成されたものが得られる。細孔の直径は、たとえば、数nm〜数百nmである。酸処理を行った後、珪素酸化物の粒子を水洗する。
上述のように、珪素酸化物の粒子が細孔構造を有することにより、電池の充放電時に珪素酸化物の粒子径の変化を抑制し、電池のサイクル特性を向上させることができる。このような効果を十分に得るため、共析出物を形成する工程において、共析出物中の金属の含有率が5質量%以上になるようにすることが好ましい。この場合、金属を除去する工程を実施した後の珪素酸化物の粒子における細孔の容積率を、電池の充放電時に珪素酸化物の粒子径の変化を抑制できる程度に、高くすることができる。
共析出物中の金属の含有率が、5質量%未満であると、仮に、当該金属のすべてが除去されたとしても、珪素酸化物中の細孔の容積率を、上述の効果が十分に得られる程度に高くすることはできない。
また、共析出物において、金属の含有率が5質量%未満であると、金属からなる部分が珪素酸化物により分断されやすくなる。この場合、共析出物を粉砕しても、金属からなる部分であって、共析出物の粒子の表面に露出していないもの(以下、「内部金属」という。)ができやすい。この粒子において、内部金属を外部へと移動させるための経路は、実質的に存在しないので、粒子の構造を破壊することなく内部金属を除去することはできない。また、酸の溶液により金属を除去する場合は、酸の溶液は、内部金属に接触することができないので、内部金属を溶解することができない。
すなわち、共析出物中の金属の含有率が、5質量%未満であると、金属を除去する工程を実施しても、内部に金属が残存した珪素酸化物の粒子が得られやすい。これにより、このような粒子における細孔の容積率は小さくなる。これに対して、共析出物中の金属の含有率が、5質量%以上であると、金属を除去する工程により、通常、珪素酸化物の粒子から、大部分の金属を除去することができるので、内部金属は生じ難い。
また、共析出物中の金属の含有率は、75質量%以下にすることが好ましい。金属の含有率が75質量%より多いと、金属を除去する工程を実施した後、珪素酸化物中の細孔の容積率が大きくなりすぎ、この珪素酸化物の強度は低下する。この場合、この珪素酸化物の粒子を用いて電池の負極(作用極)を作製すると、当該電池の充電時に、珪素酸化物の粒子がリチウムイオンを吸蔵して膨張すると、その際に生じる応力によって、その粒子は破壊され、微粉化する。微粉化した粒子は、作用極集電体2b(図1参照)から脱落する。
共析出物を形成する工程において、共析出物中の金属の含有率が10〜50質量%になるようにすることが、さらに好ましい。これにより、珪素酸化物の粒子径の変化をさらに抑制し、かつ、珪素酸化物の粒子がさらに高い強度を有するようにすることができる。
金属を除去する工程を実施した後、必要により、珪素酸化物に対して、粒度を調整するための粉砕を行う。
図2に示すものと同様の構造を有する製造装置を用いて、下記の条件で、本発明の要件を満たす負極用粉末(実施例1および2)、および本発明の要件を満たさない負極用粉末(比較例)を作製した。いずれの負極用粉末を作製する際も、第1の原料として、珪素粉末40gと二酸化珪素粉末80gとを混合したものを、第1の原料容器に収容した。
実施例1および2の粉末を作製する際は、第2の原料として、マンガン粉末25gを、第2の原料容器に収容した。そして、真空ポンプにより、析出チャンバ、ならびに第1および第2の加熱チャンバ内のガスを排気し、析出チャンバ内の圧力が50Paまで下がったことを確認した後、第1および第2のヒータの通電を開始した。
第1および第2の原料は、それぞれ、1300℃、および1100℃になるように加熱した。これにより、第1および第2の原料から、それぞれ酸化珪素の蒸気と、マンガンの蒸気とを発生させ、析出チャンバ内の基体上に、珪素酸化物とマンガンとを共析出させた。基体は、約400℃になるように冷却した。
比較例の粉末を作製する際は、第2の原料を用いず、実施例1および2と同様にして、第1の原料を加熱し、実質的に、酸化珪素の蒸気のみを生成して、基体上に珪素酸化物を析出させた。
いずれの粉末を作製する場合も、析出チャンバ内の圧力が5Paまで下がると、第1および第2のヒータの通電を終了した。基体の温度が、100℃以下になると、真空ポンプによる排気を停止し、析出チャンバに設けられたリークバルブを開いて、析出チャンバ内を大気圧にした。
次に、基体上に形成された共析出物(実施例1および2の場合)、および析出物(比較例の場合)を回収した。実施例1および2では、いずれも約70gの共析出物を回収することができた。比較例では、約50gの析出物を回収することができた。回収した共析出物、および析出物を、それぞれ、ボールミルにより、粉砕した。これにより、共析出物、および析出物を、いずれも、体積メディアン径D50が10μm程度の粉末にした。
そして、実施例1の粉末については、50gの当該粉末を、酸溶液として、10Lの塩酸水溶液に投入し、室温で4時間攪拌することにより、酸処理を行った。酸溶液の濃度は、6Mとした。実施例2の粉末については、酸溶液として、硫酸水溶液を用いた他は、実施例1と同様にして、酸処理を行った。比較例の粉末については、酸処理を行わなかった。
いずれの粉末についても、酸処理終了後、吸引濾過し、水洗し、250℃で乾燥した。さらに、これらの粉末を、体積メディアン径D50が約5μmになるように、ジェットミルにより粉砕し、負極用粉末とした。
これらの粉末について、走査型電子顕微鏡により確認したところ、実施例1および2の粉末は、細孔構造を有していたのに対して、比較例の粉末は、細孔構造を有していなかった。
各負極用粉末について、O/Si比(モル比)を測定した。O/Si比は、各負極用粉末をふっ硝酸により溶液化して、ICP発光分光分析により求めた。実施例1および2、ならびに比較例の負極用粉末のO/Si比は、いずれも、1.0〜1.1の範囲内にあった。
各負極用粉末について、O/Si比(モル比)を測定した。O/Si比は、各負極用粉末をふっ硝酸により溶液化して、ICP発光分光分析により求めた。実施例1および2、ならびに比較例の負極用粉末のO/Si比は、いずれも、1.0〜1.1の範囲内にあった。
実施例1の粉末について、X線回折測定を行った。測定にあたり、X線は、CuKα線を用いた。
図3に、実施例1の粉末のX線回折強度曲線を示す。図3に示されるように、SiMnに起因するピークが検出され、かつ、マンガン(Mn)に起因するピークは検出されなかった。したがって、実施例1の粉末の製造工程において、Mnの珪化物であるSiMnが形成され、Siと化合していないMnは、酸処理により除去されたものと考えられる。
図3に、実施例1の粉末のX線回折強度曲線を示す。図3に示されるように、SiMnに起因するピークが検出され、かつ、マンガン(Mn)に起因するピークは検出されなかった。したがって、実施例1の粉末の製造工程において、Mnの珪化物であるSiMnが形成され、Siと化合していないMnは、酸処理により除去されたものと考えられる。
回折角2θが44.0〜45.0°の範囲に、SiMnに起因するピークのうち、最強線に対応するピーク((210)面によるもの)が現れている。このピークの半値全幅は、約0.02radであり、上記(1)式に基づき、結晶子の平均サイズDの値を求めると、7.7nmとなる。ただし、λ=0.154nm、θ=22.5°とした。
その後、これらの粉末をそれぞれ用いて負極を作製し、さらにこの負極を用いて、電池(コインセル)を作製し、電池の充放電特性を測定した。負極、および電池の作製条件は、以下の通りとした。
まず、負極用粉末と、アセチレンブラックと、ポリアクリル酸とを、65:10:25の質量比で混合し、適量のn−メチルピロリドンを添加してスラリーを作製した。このスラリーを、厚さ20μmの銅箔に塗布し、120℃で120分乾燥後、1cm2(1cm×1cm)に打ち抜いて、負極を得た。
上記負極と、対極としてリチウム箔とを用い、負極と対極との間に、厚さ30μmのポリエチレン製多孔質フィルムのセパレータであって、電解液を含浸させたものを配置して、電池を作製した。電解質は、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを1:1の体積比で混合して得た液に、六フッ化リンリチウム(LiPF6)を、1モル/Lの割合になるように溶解させたものとした。
得られた電池について、電池特性として、初回放電容量、およびサイクル特性を測定した。初回放電容量は、以下に説明する方法によるサイクル特性の測定において、1サイクル目の放電容量とした。
サイクル特性は、株式会社ナガノ製の二次電池充放電試験装置を用いて測定した。充電は、電圧が0Vに達するまでは0.1Cの定電流で行い、電圧が0Vに達した後はセル電圧を0Vに保ったまま行った。電流値が20μAを下回った時点で、充電を終了した。放電は、電圧が1.5Vに達するまで0.1Cの定電流で行った。以上の充放電を50サイクル行い、初回放電容量に対する50サイクル目の放電容量の割合(%)を、サイクル特性とした。
電流値の計算に際し、1Cの値は、SiOの放電容量を1500mAh/g、Siの放電容量を2400mAh/gとして計算した。たとえば、負極中の活物質としてのSiOの重量をM(mg)としたとき、0.1Cの電流値Iは、
I=1500mAh/g×M×10-3×0.1
として算出した。
I=1500mAh/g×M×10-3×0.1
として算出した。
表1に、珪素酸化物(負極用粉末)の製造条件、および電池評価の結果を示す。表1の「総合評価」の欄は、以下の通りとした。
○:初回放電容量が1800mAh-1以上、かつサイクル特性が95%以上
×:初回放電容量が1800mAh-1未満、またはサイクル特性が95%未満
表1から明らかなように、実施例1および2の粉末は、比較例の粉末に比して、初回放電容量、およびサイクル特性の双方が高い。
○:初回放電容量が1800mAh-1以上、かつサイクル特性が95%以上
×:初回放電容量が1800mAh-1未満、またはサイクル特性が95%未満
表1から明らかなように、実施例1および2の粉末は、比較例の粉末に比して、初回放電容量、およびサイクル特性の双方が高い。
Claims (8)
- リチウムイオン二次電池の負極用粉末であって、
当該負極用粉末全体の平均組成として、モル比で、O/Si比xが、0.5<x<1.5の関係を満たし、
細孔構造を有する珪素酸化物の粒子を含み、
前記珪素酸化物の粒子の少なくとも一部に、金属珪化物が形成されていることを特徴とする、負極用粉末。 - 前記金属珪化物を構成する金属が、Mn、Al、Zn、およびGaからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の負極用粉末。
- X線回折測定で、前記金属珪化物に起因するピークが検出されることを特徴とする請求項1または2に記載の負極用粉末。
- Kを形状因子とし、Kの値を0.9とし、λをX線回折測定に用いるX線の波長とし、βを前記ピークの半値全幅(rad)とし、θをブラッグ角とすると、下記(1)式から求められる結晶子の平均サイズDが、0.5〜100nmであることを特徴とする請求項3に記載の負極用粉末。
D=K×λ/(β×cosθ) (1) - 前記金属珪化物の含有率が、100〜300000質量ppmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の負極用粉末。
- 当該負極用粉末を構成する粒子について、体積基準の累積粒度分布の微粒側から累積50%の粒径をD50とすると、0.5μm≦D50≦50μmの関係を満たすことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の負極用粉末。
- BET比表面積が、2〜100m2/gであることを特徴とする請求項6に記載の負極用粉末。
- リチウムイオン二次電池の負極用粉末の製造方法であって、
酸化珪素の蒸気を生成する工程と、
金属の蒸気を生成する工程と、
前記酸化珪素の蒸気と、前記金属の蒸気とから、珪素酸化物と前記金属との共析出物を形成する工程と、
前記珪素酸化物と前記金属との反応により、前記金属の珪化物を形成する工程と、
前記共析出物から、前記金属を除去する工程とを含むことを特徴とする製造方法。
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