JP2015140296A - シート状酸化グラフェンとその製造方法、及び電解質膜 - Google Patents

シート状酸化グラフェンとその製造方法、及び電解質膜 Download PDF

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Abstract

【課題】高い電流密度で燃料電池発電を行える電解質膜を得る上で有用なシート状酸化グラフェンを提供する。【解決手段】本発明のシート状酸化グラフェンは、相対湿度95%、25℃における法線方向のプロトン導電率(S/cm)の対数が−3.0以上であることを特徴とする。上記相対湿度95%、25℃における法線方向のプロトン導電率(S/cm)の対数は、好ましくは−2.5以上である。上記シート状酸化グラフェンは、水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液から分散媒及び水溶性高分子を除去することにより製造できる。前記水溶性高分子として、アセチル総置換度0.5〜1.1の酢酸セルロースが好ましい。【選択図】なし

Description

本発明は、シート状酸化グラフェンとその製造方法、及び電解質膜、並びに該電解質膜を備えた燃料電池に関する。
燃料電池は水素と酸素をエネルギー源としたクリーンな次世代エネルギーとして注目されている。そのうち車載動力源として用いられる固体高分子型燃料電池は、一般に、プラス電極(空気極)とマイナス電極(燃料極)が電解質膜を挟んだ構造を有する単セルを、セパレータを介して多数積み重ねたセルスタックを本体としている。
従来、前記電解質膜としてフッ素系イオン交換膜であるナフィオンが用いられている。しかしながら、ナフィオンは酸素透過性が5×10-5cm3/(s・cm2)と高いので、酸素の透過を防ぐため膜厚を100μm以上とする必要があった。そのため、材料コストが高くなるだけでなく、膜抵抗が高くなり発電効率が低いという問題があった。
最近、代替技術として、酸化グラフェン・ペーパーを電解質膜に用いることが提案されている(非特許文献1参照)。酸化グラフェンは、材料として比較的安価であり、しかも酸素透過性が低いので、膜厚を薄くできるという利点を有する。しかしながら、従来の酸化グラフェン・ペーパーは、膜抵抗が必ずしも十分に低いとは言えず、高い発電効率が得られない。
Jounal of The Electrochemical Society, 160(11)、F1175−F1178(2013)
本発明の目的は、高い電流密度で燃料電池発電を行いうる電解質膜を得る上で有用なシート状酸化グラフェンと、その工業的に効率のよい製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記シート状酸化グラフェンにより構成される電解質膜、及び該電解質膜を備えた燃料電池を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、酸化グラフェン・ペーパーの調製に際して、分散剤として水溶性高分子を用いると、酸化グラフェン分散液における酸化グラフェンの分散性が向上するためか、該分散液を濾過、洗浄して得られる酸化グラフェン・ペーパーの厚み方向(法線方向)のプロトン導電率が著しく向上すること、このような酸化グラフェン・ペーパーによれば、膜抵抗が大幅に改善され、高い電流密度で燃料電池発電を行いうることを見出した。本発明は、これらの知見に基づき、さらに検討を重ねて完成したものである。
すなわち、本発明は、相対湿度95%、25℃における法線方向のプロトン導電率(S/cm)の対数が−3.0以上であることを特徴とするシート状酸化グラフェンを提供する。
また、本発明は、相対湿度95%、25℃における法線方向のプロトン導電率(S/cm)の対数が−2.5以上である前記シート状酸化グラフェンを提供する。
本発明は、また、前記シート状酸化グラフェンにより構成される電解質膜を提供する。
本発明は、さらに、前記電解質膜を備えた燃料電池を提供する。
本発明は、さらにまた、前記シート状酸化グラフェンを製造する方法であって、水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液から分散媒及び水溶性高分子を除去してシート状酸化グラフェンを得ることを特徴とするシート状酸化グラフェンの製造方法を提供する。
また、本発明は、水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液を濾過、洗浄することにより分散媒及び水溶性高分子を除去する前記シート状酸化グラフェンの製造方法を提供する。
また、本発明は、水溶性高分子がアセチル総置換度0.5〜1.1の酢酸セルロースである前記シート状酸化グラフェンの製造方法を提供する。
本発明のシート状酸化グラフェンによれば、相対湿度95%、25℃における法線方向のプロトン導電率が非常に高いので、膜抵抗が小さく、高い電流密度で燃料電池発電を行いうる。
本発明のシート状酸化グラフェンの製造方法によれば、上記のような優れた特性を有するシート状酸化グラフェンを工業的に効率よく製造できる。
図1は、シート状酸化グラフェンの法線方向のプロトン導電率の測定方法の概略図である。 図2は、シート状酸化グラフェンの酸素透過性の測定方法の概略図である。
[シート状酸化グラフェン]
本発明のシート状酸化グラフェン(以下、「酸化グラフェン・ペーパー」と称する場合がある)は、相対湿度95%、25℃における法線方向(厚さ方向)のプロトン導電率(S/cm)の対数が−3.0以上であることを特徴とする。なお、前記対数は常用対数を意味する。このようなシート状酸化グラフェン(酸化グラフェン・ペーパー)の想定膜厚における膜抵抗は、従来の酸化グラフェン・ペーパーやナフィオンよりも低く、高い電流密度で燃料電池発電を行いうる。
前記相対湿度95%、25℃における法線方向(厚さ方向)のプロトン導電率(S/cm)の対数は、好ましくは−2.8以上、より好ましくは−2.5以上である。前記プロトン導電率(S/cm)の対数は大きいほどよいが、その上限は、例えば−1.0程度である。
本発明のシート状酸化グラフェンは単層であっても、多層であってもよい。
[シート状酸化グラフェンの製造]
上記本発明のシート状酸化グラフェンは、例えば、水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液から分散媒及び水溶性高分子を除去することにより得ることができる。分散媒及び水溶性高分子の除去方法は特に限定されないが、例えば、前記水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液を濾過、洗浄することにより分散媒及び水溶性高分子を効率よく除去することができる。
水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液は、水溶性高分子と酸化グラフェンと分散媒とを含んでおり、酸化グラフェンが分散媒中に分散している。分散媒としては、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン、2−メトキシエタノール、アセトン、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、スルホラン等の水溶性有機溶剤;水と前記水溶性有機溶剤との混合液などが挙げられる。分散媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、分散媒としては、水、又は水と水溶性有機溶剤との混合液(これらを、「水性溶媒」と称することがある)が好ましい。前記水性溶媒中の水の含有量は、例えば、50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上であり、水100重量%であってもよい。
酸化グラフェンとしては、特に限定されず、従来公知の方法により分散液として製造できる。例えば、グラファイトを濃硫酸及び硝酸ナトリウムと混合し、この混合物に過マンガン酸カリウムを加えて酸化した後、過酸化水素でクエンチし、蒸留水で洗浄することにより酸化グラファイトが得られる。この酸化グラファイトを前記分散媒に分散させ超音波を照射することで、酸化グラファイトが層方向に剥離され、酸化グラフェンの分散液が得られる。これを遠心分離し、上澄み液を回収して酸化グラフェンの分散液としてもよい。
そして、上記で得られた酸化グラフェンの分散液に水溶性高分子を添加し、混合することで、前記水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液を得ることができる。水溶性高分子については後述する。
水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液における酸化グラフェンの濃度は、例えば、0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜2重量%である。酸化グラフェンの濃度を上記の範囲とすることにより、酸化グラフェンの分散性及び分散安定性をより向上させることができる。
水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液における水溶性高分子の濃度は、例えば、0.005〜5重量%、好ましくは0.01〜2重量%である。また、水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液における水溶性高分子の量は、例えば、水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液中の酸化グラフェン100重量部に対して、1〜500重量部、好ましくは5〜300重量部、より好ましくは20〜200重量部である。水溶性高分子の濃度又は量を上記の範囲とすることにより、酸化グラフェンの分散性及び分散安定性をより向上させることができる。
水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液の濾過は、一般的な濾過法を用いることができる。濾過の種類としては、自然濾過、減圧濾過、加圧濾過、遠心濾過のいずれであってもよい。濾材としては、例えば、濾紙、メンブレン・フィルター等のいずれであってもよいが、メンブレン・フィルターが好ましい。メンブレン・フィルターの孔径は、例えば、0.025−0.4μm程度である。
濾過後の洗浄は、例えば、前記分散剤として例示した溶媒(水、水溶性有機溶剤、水と水溶性有機溶剤の混合液)を用いることができる。この洗浄操作により、シート状酸化グラフェンに付着している水溶性高分子を除去することができる。洗浄後、乾燥させることで、シート状酸化グラフェン(酸化グラフェン・ペーパー)を得ることができる。
シート状酸化グラフェン(酸化グラフェン・ペーパー)の厚さ(膜厚)は、例えば、水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液中の酸化グラフェン濃度、濾材に供給する水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液の量などにより調整できる。
[水溶性高分子]
本発明における水溶性高分子としては、水に可溶な高分子化合物であれば特に限定されないが、例えば、水溶性酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等の水溶性セルロース系ポリマーなどの水溶性半合成ポリマー;デンプン、マンナン、ペクチン、アルギン酸、デキストラン、プルラン、にかわ、ゼラチン等の水溶性天然ポリマー;ポリアルキレングリコールやポリアルキレンオキサイド(ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレングリコール、ポリプロピレンオキサイド等)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、ポリビニルピロリドン等の水溶性合成ポリマーなどが挙げられる。
これらのなかでも、酸化グラフェンの分散性及び分散安定性の観点から、水溶性酢酸セルロース等の水溶性セルロース系ポリマーが好ましく、特に水溶性酢酸セルロースが好ましい。以下、水溶性酢酸セルロースについて説明する。
[水溶性酢酸セルロース]
(アセチル総置換度)
本明細書において、水溶性酢酸セルロースのアセチル総置換度は0.5〜1.1である。アセチル総置換度がこの範囲であると水に対する溶解性に優れ、この範囲を外れると水に対する溶解性が低下する傾向となる。前記アセチル総置換度の好ましい範囲は0.55〜1.0であり、さらに好ましい範囲は0.6〜0.95である。アセチル総置換度は、酢酸セルロースを水に溶解し、酢酸セルロースの置換度を求める公知の滴定法により測定できる。また、該アセチル総置換度は、酢酸セルロースの水酸基をプロピオニル化した上で(後述の方法参照)、重クロロホルムに溶解し、NMRにより測定することもできる。
アセチル総置換度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテートなどの試験方法)における酢化度の測定法に準じて求めた酢化度を次式で換算することにより求められる。これは、最も一般的なセルロースアセテートの置換度の求め方である。
DS=162.14×AV×0.01/(60.052−42.037×AV×0.01)
DS:アセチル総置換度
AV:酢化度(%)
まず、乾燥した酢酸セルロース(試料)500mgを精秤し、超純水とアセトンとの混合溶媒(容量比4:1)50mlに溶解した後、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液50mlを添加し、25℃で2時間ケン化する。次に、0.2N−塩酸50mlを添加し、フェノールフタレインを指示薬として、0.2N−水酸化ナトリウム水溶液(0.2N−水酸化ナトリウム規定液)で、脱離した酢酸量を滴定する。また、同様の方法によりブランク試験(試料を用いない試験)を行う。そして、下記式にしたがってAV(酢化度)(%)を算出する。
AV(%)=(A−B)×F×1.201/試料重量(g)
A:0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
B:ブランクテストにおける0.2N−水酸化ナトリウム規定液の滴定量(ml)
F:0.2N−水酸化ナトリウム規定液のファクター
(組成分布指数(CDI))
本発明において、前記酢酸セルロースの組成分布(分子間置換度分布)は特に限定されず、組成分布指数(CDI)は、例えば1.0〜3.0である。組成分布指数(CDI)は、好ましくは1.0〜2.0、より好ましくは1.0〜1.8、さらに好ましくは1.0〜1.6、特に好ましくは1.0〜1.5である。組成分布指数(CDI)が2.0以下であると、酸化グラフェン分散液における酸化グラフェンの分散性及び分散安定性がより向上する。
組成分布指数(CDI)の下限値は0であるが、これは例えば100%の選択性でグルコース残基の6位のみをアセチル化し、他の位置はアセチル化しない等の特別な合成技術をもって実現されるものであり、そのような合成技術は知られていない。グルコース残基の水酸基の全てが同じ確率でアセチル化および脱アセチル化される状況において、CDIは1.0となるが、実際のセルロースの反応においてはこのような理想状態に近付けるためには相当の工夫を要する。前記組成分布指数(CDI)が小さいほど、組成分布(分子間置換度分布)が均一となる。組成分布が均一であると、アセチル総置換度が通常よりも広い範囲で水溶性を確保できる。
ここで、組成分布指数(Compositional Distribution Index, CDI)とは、組成分布半値幅の理論値に対する実測値の比率[(組成分布半値幅の実測値)/(組成分布半値幅の理論値)]で定義される。組成分布半値幅は「分子間置換度分布半値幅」又は単に「置換度分布半値幅」ともいう。
酢酸セルロースのアセチル総置換度の均一性を評価するのに、酢酸セルロースの分子間置換度分布曲線の最大ピークの半値幅(「半価幅」ともいう)の大きさを指標とすることができる。なお、半値幅は、アセチル置換度を横軸(x軸)に、この置換度における存在量を縦軸(y軸)としたとき、チャートのピークの高さの半分の高さにおけるチャートの幅であり、分布のバラツキの目安を表す指標である。置換度分布半値幅は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析により求めることができる。なお、HPLCにおけるセルロースエステルの溶出曲線の横軸(溶出時間)を置換度(0〜3)に換算する方法については、特開2003-201301号公報(段落0037〜0040)に説明されている。
(組成分布半値幅の理論値)
組成分布半値幅(置換度分布半値幅)は確率論的に理論値を算出できる。すなわち、組成分布半値幅の理論値は以下の式(1)で求められる。
Figure 2015140296
m:酢酸セルロース1分子中の水酸基とアセチル基の全数
p:酢酸セルロース1分子中の水酸基がアセチル置換されている確率
q=1−p
DPw:重量平均重合度(GPC−光散乱法による)
なお、重量平均重合度(DPw)の測定法は後述する。
式(1)は、セルロースの全ての水酸基が同じ確率でアセチル化および脱アセチル化された際に必然的に生じる組成分布半値幅であり、所謂二項定理に従って導かれるものである。さらに、組成分布半値幅の理論値を置換度と重合度で表すと、以下のように表される。本発明では下記式(2)を組成分布半値幅の理論値を求める定義式とする。
Figure 2015140296
DS:アセチル総置換度
DPw:重量平均重合度(GPC−光散乱法による)
なお、重量平均重合度(DPw)の測定法は後述する。
ところで、式(1)および式(2)においては、より厳密には重合度分布を考慮に入れるべきであり、この場合には式(1)および式(2)の「DPw」は、重合度分布関数に置き換え、式全体を重合度0から無限大までで積分すべきである。しかしながら、DPwを使う限り、式(1)および式(2)は近似的に十分な精度の理論値を与える。DPn(数平均重合度)を使うと、重合度分布の影響が無視できなくなるので、DPwを使うべきである。
(組成分布半値幅の実測値)
本発明において、組成分布半値幅の実測値とは、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基(未置換水酸基)をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートをHPLC分析して求めた組成分布半値幅である。
一般的に、アセチル総置換度2〜3の酢酸セルロースに対しては、前処理なしに高速液体クロマトグラフィ(HPLC)分析を行うことができ、それによって組成分布半値幅を求めることができる。例えば、特開2011−158664号公報には、置換度2.27〜2.56の酢酸セルロースに対する組成分布分析法が記載されている。
一方、本発明においては、組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値は、HPLC分析前に前処理として酢酸セルロースの分子内残存水酸基の誘導体化を行い、しかる後にHPLC分析を行って求める。この前処理の目的は、低置換度酢酸セルロースを有機溶剤に溶解しやすい誘導体に変換してHPLC分析可能とすることである。すなわち、分子内の残存水酸基を完全にプロピオニル化し、その完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)をHPLC分析して組成分布半値幅(実測値)を求める。ここで、誘導体化は完全に行われ、分子内に残存水酸基はなく、アセチル基とプロピオニル基のみ存在していなければいけない。すなわち、アセチル置換度(DSac)とプロピオニル置換度(DSpr)の和は3である。これは、CAPのHPLC溶出曲線の横軸(溶出時間)をアセチル置換度(0〜3)に変換するための較正曲線を作成するために関係式:DSac+DSpr=3を使用するためである。
酢酸セルロースの完全誘導体化は、ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド混合溶媒中でN,N−ジメチルアミノピリジンを触媒とし、無水プロピオン酸を作用させることにより行うことができる。より具体的には、溶媒として混合溶媒[ピリジン/N,N−ジメチルアセトアミド=1/1(v/v)]を酢酸セルロース(試料)に対して20重量部、プロピオニル化剤として無水プロピオン酸を該酢酸セルロースの水酸基に対して6.0〜7.5当量、触媒としてN,N−ジメチルアミノピリジンを該酢酸セルロースの水酸基に対して6.5〜8.0mol%使用し、温度100℃、反応時間1.5〜3.0時間の条件でプロピオニル化を行う。そして、反応後、沈殿溶媒としてメタノールを用い、沈殿させることにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネートを得る。より詳細には、例えば、室温で、反応混合物1重量部をメタノール10重量部に投入して沈澱させ、得られた沈殿物をメタノールで5回洗浄し、60℃で真空乾燥を3時間行うことにより、完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)を得ることができる。なお、後述の多分散性(Mw/Mn)及び重量平均重合度(DPw)も、酢酸セルロース(試料)をこの方法により完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とし、測定したものである。
上記HPLC分析では、異なるアセチル置換度を有する複数のセルロースアセテートプロピオネートを標準試料として用いて所定の測定装置および測定条件でHPLC分析を行い、これらの標準試料の分析値を用いて作成した較正曲線[セルロースアセテートプロピオネートの溶出時間とアセチル置換度(0〜3)との関係を示す曲線、通常、三次曲線]から、酢酸セルロース(試料)の組成分布半値幅(実測値)を求めることができる。HPLC分析で求められるのは溶出時間とセルロースアセテートプロピオネートのアセチル置換度分布の関係である。これは、試料分子内の残存ヒドロキシ基のすべてがプロピオニルオキシ基に変換された物質の溶出時間とアセチル置換度分布の関係であるから、本発明の酢酸セルロースのアセチル置換度分布を求めていることと本質的には変わらない。
上記HPLC分析の条件は以下の通りである。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度:30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
較正曲線から求めた置換度分布曲線[セルロースアセテートプロピオネートの存在量を縦軸とし、アセチル置換度を横軸とするセルロースアセテートプロピオネートの置換度分布曲線](「分子間置換度分布曲線」ともいう)において、平均置換度に対応する最大ピーク(E)に関し、以下のようにして置換度分布半値幅を求める。ピーク(E)の低置換度側の基部(A)と、高置換度側の基部(B)に接するベースライン(A−B)を引き、このベースラインに対して、最大ピーク(E)から横軸に垂線をおろす。垂線とベースライン(A−B)との交点(C)を決定し、最大ピーク(E)と交点(C)との中間点(D)を求める。中間点(D)を通って、ベースライン(A−B)と平行な直線を引き、分子間置換度分布曲線との二つの交点(A’、B’)を求める。二つの交点(A’、B’)から横軸まで垂線をおろして、横軸上の二つの交点間の幅を、最大ピークの半値幅(すなわち、置換度分布半値幅)とする。
このような置換度分布半値幅は、試料中のセルロースアセテートプロピオネートの分子鎖について、その構成する高分子鎖一本一本のグルコース環の水酸基がどの程度アセチル化されているかにより、保持時間(リテンションタイム)が異なることを反映している。したがって、理想的には、保持時間の幅が、(置換度単位の)組成分布の幅を示すことになる。しかしながら、HPLCには分配に寄与しない管部(カラムを保護するためのガイドカラムなど)が存在する。それゆえ、測定装置の構成により、組成分布の幅に起因しない保持時間の幅が誤差として内包されることが多い。この誤差は、上記の通り、カラムの長さ、内径、カラムから検出器までの長さや取り回しなどに影響され、装置構成により異なる。このため、セルロースアセテートプロピオネートの置換度分布半値幅は、通常、下式で表される補正式に基づいて、補正値Zとして求めることができる。このような補正式を用いると、測定装置(および測定条件)が異なっても、同じ(ほぼ同じ)値として、より正確な置換度分布半値幅(実測値)を求めることができる。
Z=(X2−Y21/2
[式中、Xは所定の測定装置および測定条件で求めた置換度分布半値幅(未補正値)である。Y=(a−b)x/3+b(0≦x≦3)である。ここで、aは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースアセテートの見掛けの置換度分布半値幅(実際は総置換度3なので、置換度分布は存在しない)、bは前記Xと同じ測定装置および測定条件で求めた総置換度3のセルロースプロピオネートの見掛けの置換度分布半値幅である。xは測定試料のアセチル総置換度(0≦x≦3)である]
なお、上記総置換度3のセルロースアセテート(もしくはセルロースプロピオネート)とは、セルロースのヒドロキシル基の全てがエステル化されたセルロースエステルを示し、実際には(理想的には)置換度分布半値幅を有しない(すなわち、置換度分布半値幅0の)セルロースエステルである。
本発明において、前記酢酸セルロースの組成分布半値幅(置換度分布半値幅)の実測値としては、好ましくは0.12〜0.34であり、より好ましくは0.13〜0.25である。
先に説明した置換度分布理論式は、すべてのアセチル化と脱アセチル化が独立かつ均等に進行することを仮定した確率論的計算値である。すなわち、二項分布に従った計算値である。このような理想的な状況は現実的にはあり得ない。酢酸セルロースの加水分解反応が理想的なランダム反応に近づくような、および/または、反応後の後処理について組成について分画が生じるような特別な工夫をしない限り、セルロースエステルの置換度分布は確率論的に二項分布で定まるものよりも大幅に広くなる。
反応の特別な工夫の一つとしては、例えば、脱アセチル化とアセチル化が平衡する条件で系を維持することが考えられる。しかし、この場合には酸触媒によりセルロースの分解が進行するので好ましくない。他の反応の特別な工夫としては、脱アセチル化速度が低置換度物について遅くなる反応条件を採用することである。しかし、従来、そのような具体的な方法は知られていない。つまり、セルロースエステルの置換度分布を反応確率論通り二項分布にしたがうよう制御するような反応の特別な工夫は知られていない。さらに、酢化過程(セルロースのアセチル化工程)の不均一性や、熟成過程(酢酸セルロースの加水分解工程)で段階的に添加する水による部分的、一時的な沈殿の発生などの様々な事情は、置換度分布を二項分布よりも広くする方向に働き、これらを全て回避し、理想条件を実現することは、現実的には不可能である。これは、理想気体があくまで理想の産物であり、実在する気体の挙動はそれとは多かれ少なかれ異なることと似ている。
従来の低置換度酢酸セルロースの合成と後処理においては、このような置換度分布の問題について殆ど関心が払われておらず、置換度分布の測定や検証、考察が行われていなかった。例えば、文献(繊維学会誌、42、p25 (1986))によれば、低置換度酢酸セルロースの溶解性は、グルコース残基2、3、6位へのアセチル基の分配で決まると論じられており、組成分布は全く考慮されていない。
本発明者らの検討によれば、後述するように、酢酸セルロースの置換度分布は、驚くべきことに酢酸セルロースの加水分解工程の後の後処理条件の工夫で制御することができる。文献(CiBment, L., and Rivibre, C., Bull. SOC. chim., (5) 1, 1075 (1934)、Sookne, A. M., Rutherford, H. A., Mark, H., and Harris, M. J . Research Natl. Bur. Standards, 29, 123 (1942)、A. J. Rosenthal , B. B. White Ind. Eng. Chem., 1952, 44 (11), pp 2693-2696.)によれば、置換度2.3の酢酸セルロースの沈澱分別では、分子量に依存した分画と置換度(化学組成)に伴う微々たる分画が起こるとされており、本発明者らが見出したような置換度(化学組成)で顕著な分画ができるとの報告はない。さらに、低置換度酢酸セルロースについて、溶解分別や沈澱分別で置換度分布(化学組成)を制御できることは検証されていなかった。
本発明者らが見出した置換度分布を狭くするもう1つの工夫は、酢酸セルロースの90℃以上の(又は90℃を超える)高温での加水分解反応(熟成反応)である。従来、高温反応で得られた生成物の重合度について詳細な分析や考察がなされて来なかったにもかかわらず、90℃以上の高温反応ではセルロースの分解が優先するとされてきた。この考えは、粘度に関する考察のみに基づいた思い込み(ステレオタイプ)と言える。本発明者らは、酢酸セルロースを加水分解して低置換度酢酸セルロースを得るに際し、90℃以上の(又は90℃を超える)高温下、好ましくは硫酸等の強酸の存在下、多量の酢酸中で反応させると、重合度の低下は見られない一方で、CDIの減少に伴い粘度が低下することを見出した。すなわち、高温反応に伴う粘度低下は、重合度の低下に起因するものではなく、置換度分布が狭くなることによる構造粘性の減少に基づくものであることを解明した。上記の条件で酢酸セルロースの加水分解を行うと、正反応だけでなく逆反応も起こるため、生成物(低置換度酢酸セルロース)のCDIが極めて小さい値となり、水に対する溶解性も著しく向上する。これに対し、逆反応が起こりにくい条件で酢酸セルロースの加水分解を行うと、置換度分布は様々な要因で広くなり、水に溶けにくいアセチル総置換度0.5未満の酢酸セルロース及びアセチル置換度1.1を超える酢酸セルロースの含有量が増大し、全体として水に対する溶解性が低下する。
(2,3,6位の置換度の標準偏差)
本発明において、前記酢酸セルロースのグルコース環の2,3,6位の各アセチル置換度は、手塚(Tezuka,Carbonydr.Res.273,83(1995))の方法に従いNMR法で測定できる。すなわち、酢酸セルロース試料の遊離水酸基をピリジン中で無水プロピオン酸によりプロピオニル化する。得られた試料を重クロロホルムに溶解し、13C−NMRスペクトルを測定する。アセチル基の炭素シグナルは169ppmから171ppmの領域に高磁場から2位、3位、6位の順序で、そして、プロピオニル基のカルボニル炭素のシグナルは、172ppmから174ppmの領域に同じ順序で現れる。それぞれ対応する位置でのアセチル基とプロピオニル基の存在比から、元のセルロースジアセテートにおけるグルコース環の2,3,6位の各アセチル置換度を求めることができる。なお、このように求めた2,3,6位の各アセチル置換度の和はアセチル総置換度であり、この方法でアセチル総置換度を求めることもできる。なお、アセチル総置換度は、13C−NMRのほか、1H−NMRで分析することもできる。
2,3,6位の置換度の標準偏差σは、次の式で定義される。
Figure 2015140296
本発明においては、酢酸セルロースのグルコース環の2,3及び6位のアセチル置換度の標準偏差が0.08以下(0〜0.08)であることが好ましい。該標準偏差が0.08以下である酢酸セルロースは、グルコース環の2,3,6位が均等に置換されており、水に対する溶解性に優れる。
(多分散性(分散度、Mw/Mn))
本発明において、分子量分布(重合度分布)の多分散性(Mw/Mn)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
本発明における前記酢酸セルロースの多分散性(分散度、Mw/Mn)は、1.2〜2.5の範囲であることが好ましい。多分散性Mw/Mnが上記の範囲にある酢酸セルロースは、分子の大きさが揃っており、水に対する溶解性に優れる。
酢酸セルロースの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び多分散性(Mw/Mn)は、HPLCを用いた公知の方法で求めることができる。本発明において、酢酸セルロースの多分散性(Mw/Mn)は、測定試料を有機溶剤に可溶とするため、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、酢酸セルロース(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、以下の条件でサイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより決定される(GPC−光散乱法)。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、同ガードカラム
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
(重量平均重合度(DPw))
本発明において、重量平均重合度(DPw)は、酢酸セルロース(試料)の残存水酸基をすべてプロピオニル化して得られるセルロースアセテートプロピオネートを用いてGPC−光散乱法により求めた値である。
本発明における前記酢酸セルロースの重量平均重合度(DPw)は、50〜800の範囲であることが好ましい。重量平均重合度(DPw)が高すぎると、濾過性が悪くなりやすい。前記重量平均重合度(DPw)は、好ましくは55〜700、さらに好ましくは60〜600である。
上記重量平均重合度(DPw)は、前記多分散性(Mw/Mn)と同じく、前記組成分布半値幅の実測値を求める場合と同様の方法で、酢酸セルロース(試料)を完全誘導体化セルロースアセテートプロピオネート(CAP)とした後、サイズ排除クロマトグラフィー分析を行うことにより求められる(GPC−光散乱法)。
上述のように、水溶性の酢酸セルロースの分子量(重合度)、多分散性(Mw/Mn)はGPC−光散乱法(GPC−MALLS、GPC−LALLSなど)により測定される。なお、光散乱の検出は、一般に水系溶媒では困難である。これは水系溶媒は一般的に異物が多く、一旦精製しても二次汚染されやすいことによる。また、水系溶媒では、微量に存在するイオン性解離基の影響のため分子鎖の広がりが安定しない場合があり、それを抑えるために水溶性無機塩(例えば塩化ナトリウム)を添加したりすると、溶解状態が不安定になり、水溶液中で会合体を形成したりすることがある。この問題を回避するための有効な方法の一つは、水溶性酢酸セルロースを誘導体化し、異物が少なく、二次汚染されにくい有機溶媒に溶解するようにし、有機溶媒でGPC−光散乱測定を行うことである。この目的の水溶性酢酸セルロースの誘導体化としてはプロピオニル化が有効であり、具体的な反応条件及び後処理は前記組成分布半値幅の実測値の説明箇所で記載した通りである。
(6%粘度)
本発明における前記酢酸セルロースの6%粘度は、例えば5〜500mPa・s、好ましくは6〜300mPa・sである。6%粘度が高すぎると濾過性が悪くなる場合がある。
酢酸セルロースの6%粘度は、下記の方法で測定できる。
50mlのメスフラスコに乾燥試料3.00gを入れ、蒸留水を加え溶解させる。得られた6wt/vol%の溶液を所定のオストワルド粘度計の標線まで移し、25±1℃で約15分間整温する。計時標線間の流下時間を測定し、次式により6%粘度を算出する。
6%粘度(mPa・s)=C×P×t
C:試料溶液恒数
P:試料溶液密度(0.997g/cm3
t:試料溶液の流下秒数
試料溶液恒数は、粘度計校正用標準液[昭和石油社製、商品名「JS−200」(JIS Z 8809に準拠)]を用いて上記と同様の操作で流下時間を測定し、次式より求める。
試料溶液恒数={標準液絶対粘度(mPa・s)}/{標準液の密度(g/cm3)×標準液の流下秒数}
(低置換度酢酸セルロースの製造)
本発明における前記酢酸セルロース(低置換度酢酸セルロース)は、例えば、(A)中乃至高置換度酢酸セルロースの加水分解工程(熟成工程)、(B)沈殿工程、及び、必要に応じて行う(C)洗浄、中和工程により製造できる。
[(A)加水分解工程(熟成工程)]
この工程では、中乃至高置換度酢酸セルロース(以下、「原料酢酸セルロース」と称する場合がある)を加水分解する。原料として用いる中乃至高置換度酢酸セルロースのアセチル総置換度は、例えば、1.5〜3、好ましくは2〜3である。原料酢酸セルロースとしては、市販のセルロースジアセテート(アセチル総置換度2.27〜2.56)やセルローストリアセテート(アセチル総置換度2.56超〜3)を用いることができる。
加水分解反応は、有機溶媒中、触媒(熟成触媒)の存在下、原料酢酸セルロースと水を反応させることにより行うことができる。有機溶媒としては、例えば、酢酸、アセトン、アルコール(メタノール等)、これらの混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、酢酸を少なくとも含む溶媒が好ましい。触媒としては、一般に脱アセチル化触媒として用いられる触媒を使用できる。触媒としては、特に硫酸が好ましい。
有機溶媒(例えば、酢酸)の使用量は、原料酢酸セルロース1重量部に対して、例えば、0.5〜50重量部、好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。
触媒(例えば、硫酸)の使用量は、原料酢酸セルロース1重量部に対して、例えば、0.005〜1重量部、好ましくは0.01〜0.5重量部、さらに好ましくは0.02〜0.3重量部である。触媒の量が少なすぎると、加水分解の時間が長くなりすぎ、酢酸セルロースの分子量の低下を引き起こすことがある。一方、触媒の量が多すぎると、加水分解温度に対する解重合速度の変化の度合いが大きくなり、加水分解温度がある程度低くても解重合速度が大きくなり、分子量がある程度大きい酢酸セルロースが得られにくくなる。
加水分解工程における水の量は、原料酢酸セルロース1重量部に対して、例えば、0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部、さらに好ましくは2〜7重量部である。また、該水の量は、有機溶媒(例えば、酢酸)1重量部に対して、例えば、0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜2重量部、さらに好ましくは0.5〜1.5重量部である。水は、反応開始時において全ての量を系内に存在させてもよいが、酢酸セルロースの沈殿を防止するため、使用する水の一部を反応開始時に系内に存在させ、残りの水を1〜数回に分けて系内に添加してもよい。
加水分解工程における反応温度は、例えば、40〜130℃、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜110℃である。特に、反応温度を90℃以上(或いは90℃を超える温度)とする場合には、正反応(加水分解反応)に対する逆反応(アセチル化反応)の速度が増加する方向に反応の平衡が傾く傾向があり、その結果、置換度分布が狭くなり、後処理条件を特に工夫しなくとも、組成分布指数CDIの極めて小さい低置換度酢酸セルロースを得ることができる。この場合、触媒として硫酸等の強酸を用いるのが好ましく、また、反応溶媒として酢酸を過剰に用いるのが好ましい。また、反応温度を90℃以下とする場合であっても、後述するように、沈殿工程において、沈殿溶媒として2種以上の溶媒を含む混合溶媒を用いて沈殿させたり、沈殿分別及び/又は溶解分別を行うことにより、組成分布指数CDIが非常に小さい低置換度酢酸セルロースを得ることができる。
[(B)沈殿工程]
この工程では、加水分解反応終了後、反応系の温度を室温まで冷却し、沈殿溶媒を加えて低置換度酢酸セルロースを沈殿させる。沈殿溶媒としては、水と混和する有機溶剤若しくは水に対する溶解度の大きい有機溶剤を使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトニトリル等の含窒素化合物;テトラヒドロフラン等のエーテル;これらの混合溶媒などが挙げられる。
沈殿溶媒として2種以上の溶媒を含む混合溶媒を用いると、後述する沈殿分別と同様の効果が得られ、組成分布(分子間置換度分布)が狭く、組成分布指数(CDI)が小さい低置換度酢酸セルロースを得ることができる。好ましい混合溶媒として、例えば、アセトンとメタノールの混合溶媒、イソプロピルアルコールとメタノールの混合溶媒などが挙げられる。
また、沈殿して得られた低置換度酢酸セルロースに対して、さらに沈殿分別(分別沈殿)及び/又は溶解分別(分別溶解)を行うことにより、組成分布(分子間置換度分布)が狭く、組成分布指数CDIが非常に小さい低置換度酢酸セルロースを得ることができる。
沈殿分別は、例えば、沈殿して得られた低置換度酢酸セルロース(固形物)を水に溶解し、適当な濃度(例えば、2〜10重量%、好ましくは3〜8重量%)の水溶液とし、この水溶液に貧溶媒を加え(又は、貧溶媒に前記水溶液を加え)、適宜な温度(例えば、30℃以下、好ましくは20℃以下)に保持して、低置換度酢酸セルロースを沈殿させ、沈殿物を回収することにより行うことができる。貧溶媒としては、例えば、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなどが挙げられる。貧溶媒の使用量は、前記水溶液1重量部に対して、例えば1〜10重量部、好ましくは2〜7重量部である。
溶解分別は、例えば、前記沈殿して得られた低置換度酢酸セルロース(固形物)或いは前記沈殿分別で得られた低置換度酢酸セルロース(固形物)に、水と有機溶媒(例えば、アセトン等のケトン、エタノール等のアルコールなど)の混合溶媒を加え、適宜な温度(例えば、20〜80℃、好ましくは25〜60℃)で撹拌後、遠心分離により濃厚相と希薄相とに分離し、希薄相に沈殿溶剤(例えば、アセトン等のケトン、メタノール等のアルコールなど)を加え、沈殿物(固形物)を回収することにより行うことができる。前記水と有機溶媒の混合溶媒における有機溶媒の濃度は、例えば、5〜50重量%、好ましくは10〜40重量%である。
[(C)洗浄、中和工程]
沈殿工程(B)で得られた沈殿物(固形物)は、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなどの有機溶媒(貧溶媒)で洗浄するのが好ましい。また、塩基性物質を含む有機溶媒(例えば、メタノール等のアルコール、アセトン等のケトンなど)で洗浄、中和することも好ましい。なお、中和工程は加水分解工程の直後に設けても良く、その場合には塩基性物質またはその水溶液を加水分解反応浴に添加するのが好ましい。
前記塩基性物質としては、例えば、アルカリ金属化合物(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のアルカリ金属カルボン酸塩;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のナトリウムアルコキシドなど)、アルカリ土類金属化合物(例えば、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属炭酸塩;酢酸マグネシウム、酢酸カルシウム等のアルカリ土類金属カルボン酸塩;マグネシウムエトキシド等のアルカリ土類金属アルコキシドなど)などを使用できる。これらの中でも、特に、酢酸カリウム等のアルカリ金属化合物が好ましい。
洗浄、中和により、加水分解工程で用いた触媒(硫酸等)などの不純物を効率よく除去することができる。
このようにして得られた低置換度酢酸セルロースは、必要に応じて、粉砕、篩別又は造粒して、特定粒度の範囲に調整することができる。
[電解質膜]
本発明の電解質膜は前記本発明のシート状酸化グラフェンにより構成される。この電解質膜は、燃料電池用の電解質膜として利用できる。
[燃料電池]
本発明の燃料電池は前記本発明の電解質膜を備えている。燃料電池の構造は、特に限定されず、例えば従来公知の構造を基本構造とすることができる。例えば、本発明の燃料電池としては、いわゆる固体高分子型燃料電池の固体高分子電解質膜を前記シート状酸化グラフェンに置き換えたもの、例えば、プラス電極(空気極)とマイナス電極(燃料極)が前記本発明の電解質膜を挟んだ構造を有する単セルがセパレータを介して多数積み重ねられたセルスタックを本体とするものなどが挙げられる。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
合成例1
酢酸セルロース(ダイセル社製、商品名「L−50」、アセチル基総置換度2.43、6%粘度:110mPa・s)1重量部に対して、5.1重量部の酢酸および2.0重量部の水を加え、40℃で5時間撹拌して外観均一な溶液を得た。この溶液に0.13重量部の硫酸を加え、得られた溶液を70℃に保持し、加水分解(部分脱アセチル化反応;熟成)を行った。なお、この熟成過程においては、途中で2回、水を系に添加した。すなわち、反応を開始して1時間後に0.67重量部の水を加え、さらに2時間後、1.67重量部の水を加え、さらに6時間反応させた。合計の加水分解時間は9時間である。なお、反応開始時から1回目の水の添加までを第1熟成、1回目の水の添加から2回目の水の添加までを第2熟成、2回目の水の添加から反応終了(熟成完了)までを第3熟成という。
加水分解を実施した後、系の温度を室温(約25℃)まで冷却し、反応混合物に15重量部のアセトン/メタノール=1/2(重量比)混合溶媒(沈殿化剤)を加えて沈殿を生成させた。
固形分15重量%のウェットケーキとして沈殿を回収し、8重量部のメタノールを加え、固形分15重量%まで脱液することにより洗浄した。これを3回繰り返した。洗浄した沈殿物を、酢酸カリウムを0.004重量%含有するメタノール8重量部でさらに2回洗浄して中和し、乾燥して、水溶性酢酸セルロースを得た。
(置換度(DS)の測定)
手塚の方法(Carbohydr. Res. 273, 83(1995))に準じて水溶性酢酸セルロース試料の未置換水酸基をプロピオニル化した。プロピオニル化低置換度酢酸セルロースのアセチル基総置換度は、手塚の方法(同)に準じて13C−NMRにおける169〜171ppmのアセチルカルボニルのシグナルおよび172〜174ppmのプロピオニルカルボニルのシグナルから決定した。このように求めた上記水溶性酢酸セルロースのアセチル基総置換度は0.87であった。
(組成分布指数(CDI)の測定)
酢酸セルロースのCDIは、プロピオニル化酢酸セルロースに導いた後に次の条件でHPLC分析を行うことで決定した。
装置: Agilent 1100 Series
カラム: Waters Nova−Pak phenyl 60Å 4μm(150mm×3.9mmΦ)+ガードカラム
カラム温度: 30℃
検出: Varian 380−LC
注入量: 5.0μL(試料濃度:0.1%(wt/vol))
溶離液: A液:MeOH/H2O=8/1(v/v),B液:CHCl3/MeOH=8/1(v/v)
グラジェント:A/B=80/20→0/100(28min);流量:0.7mL/min
まず、アセチルDS(アセチル基総置換度)が0〜3の範囲でDS既知の標品をHPLC分析することで、溶出時間対DSの較正曲線を作成した。較正曲線に基づき、未知試料の溶出曲線(時間対検出強度曲線)をDS対検出強度曲線(組成分布曲線)に変換し、この組成分布曲線の未補正半値幅Xを決定し、次式により組成分布の補正半値幅Zを決定した。
Z=(X2−Y21/2
なお、Yは次式で定義される装置定数である。
Y=(a−b)x/3+b
a: アセチルDS=3の標品のX値
b: アセチルDS=0の標品のX値
x: 未知試料のアセチルDS
補正半値幅Zから、次式により組成分布指数(CDI)を決定した。
CDI=Z/Z0
ここに、Z0は全ての部分置換酢酸セルロースの調製におけるアセチル化および部分脱アセチル化が全ての分子の全ての水酸基(又はアセチル基)に対して等しい確率で生じた場合に生成する組成分布であり、次式で定義される。
Figure 2015140296
DPw:重量平均重合度
p:(未知試料のアセチルDS)/3
q:1−p
このように求めた上記水溶性酢酸セルロースのCDIは1.4であった。
(重量平均重合度(DPw)、分散度(DPw/DPn)の測定)
酢酸セルロースの重量平均重合度および分散度は、プロピオニル化酢酸セルロースに導いた後に次の条件でGPC−光散乱測定を行うことで決定した。
装置:Shodex製 GPC 「SYSTEM−21H」
溶媒:アセトン
カラム:GMHxl(東ソー)2本、同ガードカラム
流速:0.8ml/min
温度:29℃
試料濃度:0.25%(wt/vol)
注入量:100μl
検出:MALLS(多角度光散乱検出器)(Wyatt製、「DAWN−EOS」)
MALLS補正用標準物質:PMMA(分子量27600)
このように求めた上記水溶性酢酸セルロースのDPwは180、DPw/DPnは1.9であった。
実施例1〜4、比較例1
(酸化グラフェン分散液の調製)
酸化グラフェンは、Journal of the Electrochemical Society, 160(11)、F1175−F1178(2013)に記載される方法で調製した。より具体的には、まず、2.0gのグラファイト粉末(和光純薬、特級)、2.0gの硝酸ナトリウム(和光純薬、特級)、92mlの98重量%硫酸(和光純薬、特級)を約0℃で混合した。この混合物に、合計12gの過マンガン酸カリウム(和光純薬、特級)を少量づつ加えた。この混合物を95℃に昇温し、45分間攪拌し、グラファイト粉末を酸化させた。反応混合物を蒸留水で希釈し、5mlに30重量%過酸化水素水を添加し、残存する過マンガン酸カリウムを中和した。この混合物中の固形物を3,000rpmの遠心分離で回収し、5重量%塩酸水溶液(和光純薬、特級)、蒸留水で順次洗浄し、塩酸を除去した後に70℃で7日間乾燥した。この固形物を蒸留水に分散し、超音波バス中で2時間処理した。この分散液を10,000rpmで遠心分離し、上澄みを酸化グラフェン分散液として使用した。酸化グラフェン分散液の酸化グラフェン濃度は、4mg/mlとなるよう調整した。
(酸化グラフェン・ペーパーの調製)
濃度4mg/mlの酸化グラフェン分散液1,000重量部に、所定量(表1に記載)の上記水溶性酢酸セルロースを添加し、室温(約22℃)で24時間攪拌した(比較例1では水溶性酢酸セルロースを添加することなく次の操作を行った)。この分散液をメンブレン・フィルター(孔径0.025−0.4μm)で減圧ろ過し、メンブレン・フィルター上にシート状の酸化グラフェンを得た。引き続き同じメンブレン・フィルター上で、このシート状の酸化グラフェンを所定量の所定溶媒を所定回数加え減圧ろ過することで、シート状サンプルから水溶性酢酸セルロースを除去した(条件は表1に記載)。メンブレン・フィルター上のシート状サンプルを、70℃で恒量になるまで減圧乾燥し、酸化グラフェン・ペーパーを調製した。酸化グラフェン・ペーパーの厚さは55±4μmとなるよう調整した。
評価試験
(1)法線方向プロトン導電率の測定
実施例及び比較例で得られた酸化グラフェン・ペーパーの法線方向のプロトン導電率は、二端子法で測定した(参考:Sigma−Aldrich社「材料科学の基礎(第2号)」の「固体酸化物形燃料電池の基礎とその材料評価手法の紹介」の図3b;Journal of The Electrochemical Society,160(11)F1175(2013))。図1に酸化グラフェン・ペーパーの法線方向のプロトン導電率の測定方法の概略図を示す。図1において、1は円盤状電極、2は電解質膜(酸化グラフェン・ペーパー)、Dは膜厚(cm)でありまた電極間距離である。上記方法により抵抗R(Ω)を求め、次式により、電解質膜(酸化グラフェン・ペーパー)のプロトン導電率σx(S/cm)を求めることができる。A(cm2)は円盤状電極の面積である。
σx=D/(A・R)
なお、法線方向プロトン導電率の測定は、温度25℃、相対湿度8%、14%、31%、50%、95%の条件で行った。得られた法線方向のプロトン導電率σx(S/cm)の対数(logσx)を表2に示す。
(2)酸素透過性の測定
実施例及び比較例で得られた酸化グラフェン・ペーパーの酸素透過性を、「固体高分子形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案(平成23年1月 燃料電池実用化推進協議会)」項目III−1−2(ガス透過性測定方法)にしたがい、キャリアガスとしてヘリウムを用いて測定した(JIS K7126−2 ガスクロマトグラフ法による試験方法に準じた方法)。測定条件は以下の通りである。
[ガス透過測定(湿潤状態)]
方法:等圧法
試験片サイズ(透過面直径):10〜150mmΦ
試験数:N=3
測定温度:80℃
相対湿度:95%
測定ガス:酸素
キャリアガス:ヘリウム
図2に、酸化グラフェン・ペーパーの酸素透過性の測定方法の概略図を示す。図2において、3は測定ガス(酸素)、4はキャリアガス(ヘリウム)、5はバルブ、6はバブリング装置、7は流量計、8は透過セル、9は計量管、10はガスクロマトグラフ、11及び12は恒温槽である。透過セル8は、チャンバー/試験片(酸化グラフェン・ペーパー)/チャンバーの構成を有している。透過セル8内の試験片を透過するガスは、キャリアガスによって計量管に運ばれ、計量管9の全容量をガスクロマトグラフ10に導入して定量分析する。そして、酸素透過性[cm3/(s・cm2)]は、下記式により求められる。
酸素透過性=酸素透過量[cm3/s]/透過セル有効面積[cm2] なお、酸素透過量決定のためには、別途酸素量とガスクロマトグラフ検出感度の関係を調べておく。
結果を表2に示す。なお、商品名「Nafion 212」の酸素透過性(80℃、相対湿度95%)は5×10-5cm3/(s・cm2)である[神奈川県産業技術センター研究報告、No.15、pp64(2009)]。
(3)想定膜厚におけるプロトン輸送抵抗(Ω・cm2)の試算
以下の方法により、実施例及び比較例で得られた酸化グラフェン・ペーパーの想定膜厚におけるプロトン輸送抵抗(Ω・cm2)を試算した。なお、膜材料の調製においては、膜厚が厚いと膜素材の材料費が嵩むため、この観点からは膜厚は薄い方が好ましい。他方、膜厚が薄いと所望の性能(ガス遮断性など)が達成されない場合もあるが、その他の制約要因は膜材料の取り扱い性である。つまり、膜材料が薄す過ぎると、自立膜としては柔らかすぎて取り扱いが困難であったり、取り扱い中に破断し易くなる。この観点からは膜厚は20μmは確保することが好ましい。プロトン輸送抵抗の試算においては、本発明の材料については酸素遮断性に優れており膜厚は薄く出来るものの、取り扱い性を勘案して、20μmを想定膜厚とした。比較として試算したNafionについては、酸素遮断性の観点から最低100μmの膜厚を要すると考えられることから、想定膜厚は100μmとした。
プロトン輸送抵抗(Ω・cm2)は下式により算出した。 プロトン輸送抵抗[Ω・cm2]=想定膜厚[cm]/プロトン導電率[S/cm]
結果を表3に示す。なお、Nafionのデータは、Nano Lett. 2010, 10, 3785−3790に記載されている値に基づく(30℃、RH90%)。
Figure 2015140296
Figure 2015140296
Figure 2015140296
1 円盤状電極
2 電解質膜(酸化グラフェン・ペーパー)
D 膜厚(電極間距離)(cm)
3 測定ガス(酸素)
4 キャリアガス(ヘリウム)
5 バルブ
6 バブリング装置
7 流量計
8 透過セル
9 計量管
10 ガスクロマトグラフ
11 恒温槽
12 恒温槽

Claims (7)

  1. 相対湿度95%、25℃における法線方向のプロトン導電率(S/cm)の対数が−3.0以上であることを特徴とするシート状酸化グラフェン。
  2. 相対湿度95%、25℃における法線方向のプロトン導電率(S/cm)の対数が−2.5以上である請求項1記載のシート状酸化グラフェン。
  3. 請求項1又は2記載のシート状酸化グラフェンにより構成される電解質膜。
  4. 請求項3記載の電解質膜を備えた燃料電池。
  5. 請求項1又は2記載のシート状酸化グラフェンを製造する方法であって、水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液から分散媒及び水溶性高分子を除去してシート状酸化グラフェンを得ることを特徴とするシート状酸化グラフェンの製造方法。
  6. 水溶性高分子を含む酸化グラフェン分散液を濾過、洗浄することにより分散媒及び水溶性高分子を除去する請求項5記載のシート状酸化グラフェンの製造方法。
  7. 水溶性高分子がアセチル総置換度0.5〜1.1の酢酸セルロースである請求項5又は6記載のシート状酸化グラフェンの製造方法。
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