JP2015140292A - 非水系電解質二次電池用正極活物質、および、非水系電解質二次電池 - Google Patents

非水系電解質二次電池用正極活物質、および、非水系電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】二次電池の正極活物質として用いた場合に、その高出力化が可能なスピネル型結晶構造を有するリチウムマンガンニッケル複合酸化物粒子の前駆体であるマンガンニッケル複合水酸化物粒子の提供。【解決手段】晶析反応において、Mn及びNiを含有し、Tiを含有しない混合水溶液1と、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン水溶液とを混合し、pH値を12.0〜14.0に制御し、酸化性雰囲気下で核生成を行う核生成工程と、核生成工程で生成された核を含む水溶液のpH値を10.5〜12.0に制御し、粒成長を行う粒子成長工程により、Mn−Ni複合水酸化物粒子を得る製造方法。この際、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、酸化性雰囲気を、弱酸化性ないしは非酸化性雰囲気に、混合水溶液1を、Mn、Ni及びTiを含有する混合水溶液2に切り換えるMn−Ni−Ti複合水酸化物の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子とその製造方法、このマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子を前駆体として用いて得られる非水系電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および、この正極活物質を正極材料に用いた非水系電解質二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高エネルギ密度を有する小型で軽量な二次電池に対する要求が高まっている。また、モータ駆動用電源、特に輸送機器用電源の電池として高出力の二次電池の開発も強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、非水系電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、その負極および正極の材料として用いられる活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が使用される。
このようなリチウムイオン二次電池については、現在、研究開発が盛んに行われているところである。この中でも、リチウム金属複合酸化物、特に合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の電圧が得られるため、高エネルギ密度を有する電池として実用化が進んでいる。このリチウムコバルト複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発がこれまで数多く行われてきており、すでにさまざまな成果が得られている。
しかしながら、リチウムコバルト複合酸化物は、埋蔵量が少なく、高価なコバルト化合物を用いるため、電池のコストアップの原因となる。このため、コバルトよりも安価でありながらも、高エネルギ密度を実現できる代替材料を用いた正極活物質の開発が求められている。
リチウムイオン二次電池用正極活物質として新たに提案されている材料としては、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)や、ニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)を挙げることができる。このうち、リチウムマンガン複合酸化物は、原料が安価である上、その結晶構造がスピネル型構造であることに起因して、熱安定性、特に、発火などについての安全性に優れるため、リチウムコバルト複合酸化物の有力な代替材料と考えられる。特に、リチウムマンガン複合酸化物のMnの一部をNiに置換したリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn1.5Ni0.54)は、4.5V以上の作動電圧を実現できる高エネルギ密度の材料として、近年、注目を集めている。
ここで、リチウムイオン二次電池が、優れた出力特性を備えるためには、正極が低抵抗であることが必要であり、このためには、粒度分布が狭く、かつ、粒径が適度に小さい正極活物質を用いることが必要である。すなわち、正極活物質の粒径が大きいと、比表面積が小さくなり、電解液との反応面積を確保することができなくなることに起因して、反応抵抗が上昇するため、高出力の二次電池が得られない。また、正極活物質の粒度分布が広いと、電極内で粒子に印加される電圧が不均一になり、充放電を繰り返すうちに微粒子が選択的に劣化することに起因して、電池容量が低下するとともに、二次電池の反応抵抗が上昇して、やはり高出力の二次電池は得られない。
したがって、リチウムマンガンニッケル複合酸化物についても、粒度分布が狭く、かつ、粒径が適度に小さいという粒子性状を達成するための研究が進められている。たとえば、特開2011−116583号公報には、少なくともマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で12.0〜14.0に制御して核生成を行った後(核生成工程)、生成された核を含む水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0に制御して、この核を成長させることにより(粒子成長工程)、マンガンニッケル複合水酸化物を得て、このマンガンニッケル複合水酸化物を前駆体として用いることで、粒度分布が狭く、かつ、粒径が適度に小さいという粒子性状を備えた中実構造のリチウムマンガンニッケル複合酸化物を得ることが記載されている。
リチウムイオン二次電池の高出力化を図るためには、その正極材料を構成する正極活物質について、その粒子性状を調整するのみではなく、その粒径を過度に小さくすることなく、その反応面積を大きくすることが効果的である。すなわち、正極活物質の電池反応に寄与する表面積を大きくすることにより、反応抵抗を低減することが可能となる。
これに対して、特開2012−246199号公報には、核生成工程および粒子成長工程における反応雰囲気を制御することにより、得られるマンガンニッケル複合水酸化物を低密度の中心部と高密度の外殻部から構成されたものとし、このマンガンニッケル複合水酸化物を前駆体とすることで、粒度分布が狭く、かつ、粒径が適度に小さい、中空構造のリチウムマンガンニッケル複合酸化物を得ることが記載されている。すなわち、正極活物質を中空構造とすることにより、その粒径を変えることなく、電解液との反応面積を増大させ、これによって二次電池の高出力化を図っている。
さらに、J.H.Kima,S.T.Myungb,C.S.Yoonc,I.H.Ohd and Y.K.Suna,J.Electrochem.Soc.151(11)A1911−A1918(2004)には、スピネル型のリチウムマンガンニッケル複合酸化物の結晶構造を構成するマンガンの一部をチタンに置換することで、充放電中における結晶構造の変化を抑制し、これによって、リチウムイオン二次電池の高出力化を図る技術が記載されている。
しかしながら、これらの文献に記載のリチウムマンガンニッケル複合酸化物を正極活物質として用いた二次電池は、従来技術との比較では出力特性の改善が見られるものの、携帯電子機器や輸送機器用電源としての用途を前提とした場合、さらなる高出力化が要求される。
特開2011−116583号公報 特開2012−246199号公報
J.H.Kima,S.T.Myungb,C.S.Yoonc,I.H.Ohd and Y.K.Suna,J.Electrochem.Soc.151(11)A1911−A1918(2004)
本発明は、二次電池の正極活物質として用いた場合に、その高出力化が可能である、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子およびその前駆体であるマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子を提供することを目的とする。また、本発明は、このようなリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子およびマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子を、工業規模の生産において、容易に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
本発明のマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の製造方法は、一般式(A):Mn1-x-y-zNixTiyz(OH)2+α(0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、0≦α≦0.5、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表されるマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の製造方法であって、少なくともマンガンとニッケルを含有し、かつ、チタンを含有しない水溶液と、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを混合し、液温25℃基準におけるpH値が12.0〜14.0となるように制御して、酸化性雰囲気下で、核生成を行う核生成工程と、前記核生成工程で生成された核を含む水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が10.5〜12.0となるように制御して、該核を成長させる粒子成長工程とを備え、前記粒子成長工程の開始時から該粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、前記酸化性雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り換えるとともに、前記少なくともマンガンとニッケルを含有し、かつ、チタンを含有しない水溶液を、少なくともマンガンとニッケルとチタンを含有する水溶液に切り換えることを特徴とする。
本発明のマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子は、一般式(A):Mn1-x-y-zNixTiyz(OH)2+α(0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、0≦α≦0.5、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子からなり、前記二次粒子は、平均粒径が1μm〜7μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、微細一次粒子からなる中心部と、該中心部の外側に、該微細一次粒子よりも大きな一次粒子からなる外殻部を有し、該外殻部にのみTiが存在することを特徴とする。
前記微細一次粒子は、平均粒径が0.01μm〜0.3μmであり、かつ、前記微細一次粒子よりも大きな一次粒子は、平均粒径が0.3μm〜3μmであることが好ましい。
前記外殻部の厚みは、前記二次粒子の粒径に対する比率で5%〜47%であることが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法は、一般式(B):LitMn2(1-x-y-z)Ni2xTi2y2z4(0.96≦t≦1.20、0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、スピネル構造を有する立方晶系のリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子からなる正極活物質の製造方法であって、前記マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子に対して、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る混合工程と、前記リチウム混合物を、850℃を超えて950℃未満の温度で焼成する焼成工程とを備えることを特徴とする。
前記焼成工程後に、酸化性雰囲気下、500℃〜800℃で、5時間〜40時間焼成する、アニール処理工程をさらに備えることが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式(B):LitMn2(1-x-y-z)Ni2xTi2y2z4(0.96≦t≦1.20、0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、スピネル構造を有する立方晶系のリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子からなり、平均粒径が2μm〜8μmであり、粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.70以下であり、粒子内部の中空部と、該中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えることを特徴とする。
前記外殻部の厚みは、前記二次粒子の粒径に対する比率で5%〜35%であることが好ましい。
前記非水系電解質二次電池用正極活物質の比表面積は、0.5m2/g〜3.0m2/gであることが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水系電解質とを備え、前記正極の正極材料として、請求項2〜4のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質が用いられていることを特徴とする。
本発明によれば、粒度分布が狭く、かつ、適度に粒径が小さく、中空構造を備えたリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子およびその前駆体であるマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子を提供することができる。また、本発明によれば、このようなリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子およびマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子を、工業規模の生産において、容易に得ることができる製造方法を提供することができる。このため、本発明の工業的意義はきわめて大きい。
図1は、本発明の複合水酸化物粒子を製造する工程を示す、概略フローチャートである。 図2は、本発明の複合水酸化物粒子のSEM写真(倍率:1000倍)である。 図3は、電池評価に使用した2032型コイン電池の概略断面図である。
本発明者らは、上述した問題に鑑みて、リチウムマンガンニッケル複合酸化物粒子を正極活物質として用いた二次電池のさらなる高出力化を図るため、特開2012−246199号公報に記載のリチウムマンガンニッケル複合酸化物粒子にチタンを添加することを試みた。具体的には、このリチウムマンガンニッケル複合酸化物粒子の前駆体であるマンガンニッケル複合水酸化物粒子を製造する際、マンガン化合物、ニッケル化合物およびチタン化合物を溶解した水溶液を原料として用いて、核生成工程および粒子成長工程を行い、これにより、マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子を得ることを試みた。しかしながら、このようにして得られたマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子は、中心部と外殻部の密度差が小さく、これを焼成しても、得られるリチウムマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の内部に中空部を形成することができなかったり、あるいは、中空部を十分な大きさとすることができなかった。
本発明者らは、この点について研究を重ねた結果、チタンはほぼ4価で安定した金属であり、晶析反応中の雰囲気(反応雰囲気)が酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気に変化しても、析出する固体の密度が変化しないため、晶析反応の初期段階、特に、核生成工程の段階で、反応水溶液中にチタンが存在すると、酸化性雰囲気で核生成し、非酸化性雰囲気で粒成長させた場合であっても、粒子内部に密度差を生じさせることが困難であることを突き止めた。そして、この点について、さらに研究を重ねた結果、マンガンニッケルチタン複合酸化物粒子を、上述した核生成工程と粒子成長工程とを備える晶析反応により製造する際、核生成工程ではチタンを添加せず、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して特定の範囲でチタンを添加することにより、得られるマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の内部に密度差を生じさせることができ、これを前駆体とするリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子を、中空構造を備えたものとすることができるとの知見を得た。本発明は、この知見に基づき完成されたものである。
1.マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子
本発明のマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子(以下、「複合水酸化物粒子」という)は、一般式(A):Mn1-x-y-zNixTiyz(OH)2+α(0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、0≦α≦0.5、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子からなり、この二次粒子の平均粒径が1μm〜7μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、微細一次粒子からなる中心部と、この中心部の外側に、この微細一次粒子よりも大きな一次粒子からなる外殻部を有し、外殻部にのみTiが存在することを特徴とする。
(1)組成
ニッケル(Ni)は、二次電池の高電位化および高容量化に寄与する元素である。ニッケルの添加量を示すxの値は、0.20以上0.28以下、好ましくは0.20以上0.26以下、より好ましくは0.20以上0.25以下とする。xの値が0.20未満では、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質を正極として構成した二次電池において、5V級の電圧における電池容量が減少してしまう。一方、xの値が0.28を超えると、スピネル構造単相からなる正極活物質を得ることができなくなる。
チタン(Ti)は、二次電池の充放電中における結晶構造の変化を抑制し、入出力特性の向上に寄与する元素である。チタンの含有量を示すyの値は、0を超えて0.05以下、好ましくは0を超えて0.025以下、より好ましくは0.015以上0.025以下とする。yの値が0.05を超えると、スピネル構造単相からなる正極活物質を得ることができなくなる。なお、本発明の複合水酸化物粒子では、チタンは、二次粒子の内部の中心部には存在せず、中心部の外側の外殻部にのみ存在する。
また、本発明の複合水酸化物粒子では、上記金属元素に加えて、所定量の添加元素Mを含有させてもよい。このような添加元素Mとしては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選択される少なくとも1種の元素を用いることができる。これらの添加元素Mは、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質を用いて構成される二次電池の用途や要求される性能に応じて適宜選択されるものである。
マンガンに対する添加元素Mの添加量を示すzの値は、0以上0.05以下、好ましく0以上0.025以下、より好ましくは0.015以上0.025以下とする。zの値をこのような範囲に制御することにより、所望の電池特性を確保しつつ、目的とする二次電池に必要な特性を付与することができる。これに対して、zの値が0.05を超えると、Redox反応に寄与する金属元素が減少し、電池容量が低下するばかりでなく、正極抵抗の上昇の原因となる。
(2)粒子構造
本発明の複合水酸化物粒子は、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子からなるように調整されている。さらに、粒子内部に、微細一次粒子からなる中心部を有し、中心部の外側に、この微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子からなる外殻部を有するように調整されている。このような構造を採ることにより、この複合水酸化物粒子を前駆体として正極活物質を合成する際の焼成工程において、粒子内部へのリチウムの拡散が十分に行われ、リチウムの分布が均一で良好な正極活物質が得られる。
ここで、中心部は、微細一次粒子が連なった隙間の多い構造であるため、より大きく厚みのある板状一次粒子からなる高密度の外殻部と比べると、焼成工程において焼結による収縮が低温から発生する。このため、焼成時に低温から焼結が進行し、粒子の中心部から焼結の進行が遅い外殻部に収縮して中心部に空間が生じる。また、中心部は低密度と考えられ、収縮率も大きいことから、中心部は十分な大きさを有する空間となる。これにより、焼成後に得られる正極活物質が中空構造となり、粒径に対して比表面積を十分に大きくすることができ、出力特性に優れる正極活物質を得ることができる。
なお、複合水酸化物粒子の中心部は、二次粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などによって断面観察が可能な状態とした後、この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した場合において、白く見える二次粒子の外殻部に対して、内部の灰色ないしは黒色に見える部位を指す(図2参照)。
本発明の複合水酸化物粒子においては、上述したように、二次粒子は略球状であることが必要とされる。ここで、略球状とは、二次粒子が球状であるばかりでなく、表面に微細な凹凸を有する球状や楕円球状などを含むことを意味する。二次粒子の形状が略球状であれば、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質も略球状とすることができ、高い充填性を備えたものとすることができるため、二次電池の容量特性を向上させることが可能となる。
また、二次粒子は、板状一次粒子がランダムな方向に凝集して二次粒子を形成したものであることが好ましい。板状一次粒子がランダムな方向に凝集することで、一次粒子間にほぼ均一に空隙が生じて、リチウム化合物と混合して焼成するとき、溶融したリチウム化合物が二次粒子内へ行き渡り、リチウムの拡散が十分に行われる。さらには、ランダムな方向に凝集していることで、焼成工程における中心部の収縮も均等に生じることから、正極活物質内部に十分な大きさの空間を形成することができる。
なお、二次粒子の中心部を構成する微細一次粒子は、その形状が限定されることはないが、板状、針状、あるいは、その両者の形状であることが好ましい。微細一次粒子が、これらの形状となることで、中心部は十分に低密度となり、焼成によって大きな収縮を発生させることができる。
(3)外殻部の厚み
本発明の複合水酸化物粒子においては、外殻部の厚みが、二次粒子の粒径に対する比率で5%〜47%であることが好ましく、7%〜35%であることがより好ましく、23%〜35%であることがさらに好ましい。上述したように、本発明の複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質は、中空構造を有し、その粒径に対する外殻部の厚みの比率は、複合水酸化物粒子の外殻部の厚みの比率がほぼ維持される。したがって、二次粒子の粒径に対する外殻部の厚みの比率を、上記範囲とすることで、正極活物質の内部に十分な空間を形成することができる。これに対して、外殻部の厚みの比率が5%未満では、焼成工程における複合水酸化物粒子の収縮が大きく、粒子間の焼結が進行し、正極活物質の粒度分布が悪化する。一方、外殻部の厚みの比率が47%を超えると、正極活物質の内部に十分な大きさの空間を形成することができなくなる。
なお、外殻部の厚みの比率は、次のようにして求めることができる。はじめに、複合水酸化物粒子(二次粒子)を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などによって断面観察が可能な状態とする。次に。この断面をSEMにより観察し、粒子中心の断面が観察可能な粒子を選択して、3箇所以上の任意の位置で外殻部の外周上と中心部の内周上の距離が最短となる2点間の距離を測定して粒子ごとの外殻部の平均厚みを求める。その後、二次粒子の外周上で距離が最大となる任意の2点間の距離を二次粒子の粒径として、その平均厚みを除することで、粒子ごとの外殻部の厚みの比率を求める。さらに、10個以上の二次粒子について求めた粒子ごとの外殻部の厚みの比率を平均することで、上記外殻部の厚みの比率を求めることができる。
(4)平均粒径
本発明の複合水酸化物粒子では、二次粒子の平均粒径が1μm〜7μm、好ましくは2μm〜7μm、より好ましくは3μm〜7μmに制御されている。なお、二次粒子の平均粒径とは体積平均粒径を意味し、たとえば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
二次粒子の平均粒径がこのような範囲にあれば、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径を所定の範囲(2μm〜8μm)に制御することが可能となり、得られる二次電池の容量特性および出力特性を改善することが可能となる。これに対して、二次粒子の平均粒径が1μm未満では、正極活物質の平均粒径が2μm未満となり、充填性が低下するため、得られる二次電池を高容量のものとすることができなくなる。一方、複合水酸化物粒子の平均粒径が7μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下し、電解液との界面が減少するため、得られる二次電池の正極抵抗が増加し、出力特性の低下を招くこととなる。
また、二次粒子の中心部を構成する微細一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.01μm〜0.3μm、より好ましくは0.01μm〜0.25μm、さらに好ましくは0.02μm〜0.25μmとする。微細一次粒子の平均粒径がこのような範囲にあれば、焼成時に低温域から収縮が開始し、焼成後において、中心部に十分な大きさの空間を有する、中空構造の正極活物質を得得ることができる。これに対して、微細一次粒子の平均粒径が0.01μm未満では、一次粒子が微細すぎるため、十分な大きさの中心部が形成されない場合がある。一方、微細一次粒子の平均粒径が0.3μmを超えると、焼成時に低温域から収縮が開始されず、収縮量が不十分になり、焼成後において、中心部に十分な大きさの空間を形成することができなくなる場合がある。
さらに、二次粒子の外殻部を構成する、微細一次粒子よりも大きな一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.3μm〜3.0μm、より好ましくは0.5μm〜2.0μm、さらに好ましくは0.5μm〜1.0μmとする。外殻部を構成する一次粒子の平均粒径をこのような範囲に制御することにより、外殻部の一次粒子が収縮を開始する温度を、中心部を構成する微細一次粒子との比較で十分に高温としつつ、得られる正極活物質の結晶性を高いものとすることができる。これに対して、外殻部を構成する一次粒子の平均粒径が0.3μm未満では、焼成時に低温から収縮が開始することとなり、焼成後において、中心部に十分な大きさの空間を形成することができなくなる場合がある。一方、外殻部を構成する一次粒子の平均粒径が3μmを超えると、得られる正極活物質の結晶性を十分なものとするためには焼成温度を高温とすることが必要となり、粒子間の焼結が進行し、正極活物質の平均粒径を所定の範囲に制御することが困難となる。
なお、複合水酸化物粒子の中心部および外殻部を構成する一次粒子の平均粒径は、複合水酸化物粒子(二次粒子)を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などによって断面観察が可能な状態とした後、この断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、中心部を構成する微細一次粒子または外殻部を構成する一次粒子について、それぞれ10個以上の最大径を測定し、その平均値を算出することにより求めることができる。
(5)粒度分布
本発明の複合水酸化物粒子では、二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕を、0.60以下、好ましくは0.59以下、より好ましくは0.58以下に制御することが必要とされる。ここで、d10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を、d90は、同様に粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味する。また、平均粒径とは、体積平均粒径を意味する。d10、d90および平均粒径を求める方法は特に限定されないが、たとえば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
本発明の正極活物質の粒度分布は、その前駆体である複合水酸化物粒子の影響を強く受ける。このため、複合水酸化物粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕を上記範囲に制御することにより、正極活物質の粒度分布を狭くすることができ、得られる二次電池の出力特性やサイクル特性を改善することができる。
これに対して、複合水酸化物粒子の〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60を超えると、複合水酸化物粒子の粒度分布が広くなり、これを前駆体とする正極活物質に、粒径が2μm未満の微細二次粒子や8μmを超える粗大二次粒子が多く含まれるようになる。微細二次粒子が多く含まれる正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、微細二次粒子の局所的な反応に起因して発熱量が増大するとともに、この微細二次粒子が選択的に劣化することに起因してサイクル特性が悪化する。また、粗大二次粒子が多く含まれる正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、電解液と正極活物質との反応面積を十分に確保することができず、正極抵抗の増加により、出力特性が低下する。
2.マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の製造方法
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、少なくともマンガンとニッケルを含有し、かつ、チタンを含有しない水溶液(以下、「混合水溶液1」という)と、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを混合し、液温25℃基準におけるpH値が12.0〜14.0となるように制御して、酸化性雰囲気下で、核生成を行う核生成工程と、核生成工程で生成された核を含む水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が10.5〜12.0となるように制御して、該核を成長させる粒子成長工程とを備える。特に、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、粒子成長工程の開始時から、好ましくは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、酸化性雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り換えるとともに、混合水溶液1を、少なくともマンガンとニッケルとチタンを含有する水溶液(以下、「混合水溶液2」という)に切り換えることにより、上述した複合水酸化物粒子を得ることを特徴とする。
すなわち、特開2012−246199号公報に記載の技術で、チタンを含有するマンガンニッケル複合水酸化物粒子を得ようとする場合、晶析反応の初期、特に核生成工程の段階において、反応水溶液中にチタンが存在すると、得られる複合水酸化粒子の中心部と外殻部に密度差を形成することができず、これを前駆体とする正極活物質を中空構造とすることができない。
これに対して、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、核生成工程、好ましくは、核生成工程および粒子成長工程の初期段階において、チタンを含有しない混合水溶液1を用いることにより低密度の中心部を形成するとともに、粒子成長工程の開始時から、好ましくは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して特定の範囲で、酸化性雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り換えるとともに、混合水溶液1を、チタンを含有する混合水溶液2に切り換えて粒成長を継続することにより、低密度の中心部の外側に、チタンを含有する高密度の外殻部を形成することを可能としている。
このような本発明の複合水酸化物粒子の製造方法によれば、粒度分布が狭く、適度に粒径が小さく、かつ、中空構造を有するという粒子性状を維持しつつ、チタン添加による効果を得ることができるため、この複合水酸化物粒子を用いて最終的に得られる二次電池の容量特性や安全性を損なうことなく、その出力特性を大幅に向上させることが可能となる。
以下、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法について詳細に説明するが、上述したように本発明の製造方法は、特開2012−246199号公報に記載の技術をベースとしているため、以下では、本発明の特徴部分ないしは特開2012−246199号公報に記載の技術との相違点を中心に説明する。
(1)晶析反応
(1−a)核生成工程
核生成工程では、はじめに、少なくともマンガンおよびニッケンを含有し、かつ、チタンを含有しない混合水溶液1を作製する。本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子に含まれる各金属元素の組成比は、混合水溶液1および混合水溶液2に含まれる金属元素の原子数の合計に対する、各金属元素の原子数の比率と概ね同様となる。したがって、混合水溶液1中における各金属元素の組成比は、チタンを除き、目的とする複合水酸化物粒子の組成比と同一となるように調製する必要がある。
次に、反応槽内に、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、水を供給し、これらを混合することにより、反応前水溶液を形成する。この際、各水溶液の供給量を調整して、反応前水溶液のpH値を、液温25℃基準で12.0〜14.0に調整するとともに、アンモニウムイオン濃度を3g/L〜25g/Lに調整する。また、反応前水溶液の温度を20℃〜60℃に調整するとともに、反応槽内の雰囲気を酸化性雰囲気とする。なお、反応前水溶液のpH値、アンモニウムイオン濃度および温度は、それぞれ一般的なpH値、イオンメータ、温度計によって測定することができる。
反応前水溶液のpH値、アンモニウムイオン濃度、温度および雰囲気が、上記範囲に調整されたことを確認した後、この反応前水溶液を撹拌しながら、混合水溶液1を供給する。これにより、反応槽内に反応前水溶液と混合水溶液1とが混合した反応水溶液が形成され、この反応水溶液中に、本発明の複合水酸化物粒子の中心部を構成する、マンガンニッケル複合水酸化物粒子からなる微細な核(微細一次粒子)が析出する。なお、反応水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度は、核生成に伴って変化するため、反応水溶液には、混合水溶液1とともに、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給して、pH値およびアンモニウムイオン濃度が上記範囲に維持されるように制御することが必要である。
核生成工程において析出させる核の量は、特に限定されるものではないが、粒度分布の良好な複合水酸化物粒子を得るためには、核生成工程および粒子成長工程で供給する金属化合物の全質量に対して、0.1質量%〜2質量%とすることが好ましく、0.1質量%〜1.5質量%とすることがより好ましい。
なお、核生成工程は、反応水溶液中に所定量の核が生成された時点で終了する。この際、核の生成量は、反応水溶液に供給した金属化合物の量によって判断することができる。
(1−b)粒子成長工程
粒子成長工程では、はじめに、核生成工程終了後の反応水溶液に硫酸などの酸性水溶液を供給し、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0となるように調整する。反応水溶液のpH値をこのような範囲に調整および維持することにより、反応水溶液中における新たな核生成を抑制し、粒成長を優先して起こさせることができる。
同時に、少なくともマンガン、ニッケルおよびチタンを含有する混合水溶液2を作製する。上述したように、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子に含まれる各金属元素の組成比は、チタンを含めて、混合水溶液1および混合水溶液2に含まれる金属元素の原子数の合計に対する、各金属元素の原子数の比率と概ね同様となる。したがって、混合水溶液2中のチタン量を、目的とする複合水酸化物粒子におけるチタン量と、混合水溶液1と混合水溶液2の合計量に対する混合水溶液2の量の比率を考慮して決定するとともに、混合水溶液1と同様に、混合水溶液2中における各金属元素の組成比は、チタンを除き、目的とする複合水酸化物粒子の組成比と同様とする必要がある。
粒子成長工程の開始時から、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行う場合、反応水溶液のpH値を切り換えた後、反応槽内の雰囲気を、弱酸性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に置換することが必要となる。具体的には、反応槽内に窒素などの不活性ガスを導入し、反応槽内の酸素濃度を1容量%以下に調整する。
続いて、反応水溶液に混合水溶液2の供給を開始し、目的とする粒径(平均粒径で1μm〜7μm)となるまで、混合水溶液2の供給を継続して、複合水酸化物粒子を粒成長させる。この際、反応水溶液に、混合水溶液2とともに、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給し、反応水溶液のpH値が液温25℃基準で10.5〜12.0の範囲となるように、および、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜25g/Lの範囲に維持されるように制御することが必要である。
なお、本発明のおいては、粒子成長工程の初期段階、具体的には、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、反応雰囲気および混合水溶液を切り換えることが好ましい。核生成工程の終了時点において、生成した核はある程度凝集しており、反応水溶液のpH値の切り換えにより、この核が粒成長を開始し、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行う時点では、目的とする複合水酸化物粒子の中心部としてある程度適切な大きさとなっているが、粒子成長工程の初期段階において、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行う前に、反応水溶液のpH値のみを切り換えて、所定時間だけ核を粒成長させることにより、得られる複合水酸化物粒子において、最適な大きさの中心部を形成することが可能となる。
この場合、マンガンニッケル複合水酸化物粒子が、目的とする複合水酸化物粒子の中心部として十分な大きさまで成長した時点で、混合水溶液1、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給を一旦停止する。各水溶液の供給停止後、反応槽内の雰囲気を、弱酸性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に置換した状態で、反応水溶液に混合水溶液2の供給を開始する。
なお、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、好ましくは20%以下の範囲で、さらに好ましくは10%以下の範囲で行う必要がある。反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%を超えた範囲で行うと、得られる複合水酸化物粒子の外殻部を十分な厚みとすることができない。
粒子成長工程は、複合水酸化物粒子の粒径が目的とする粒径に達した時点で、各水溶液の供給を停止することにより終了する。粒成長工程の各段階におけるマンガンニッケル複合水酸化物粒子またはマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の粒径は、予め、核生成工程と粒子成長工程における反応水溶液への金属化合物の添加量と得られる粒子の大きさとの関係を求めておくことで、金属化合物の添加量から容易に判断することができる。
このようにして得られた複合水酸化物粒子を、固液分離し、残留するアルカリカチオンなどの不純物を洗浄した後、100℃以上の温度で乾燥することにより、粉末状の複合水酸化物粒子を得ることができる。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、粒子成長工程の開始時に、好ましくは、粒子成長工程の途中で、反応雰囲気および混合水溶液を切り替えることにより、晶析反応により得られる複合水酸化物粒子、すなわち、チタンを含有するマンガンニッケル複合水酸化物粒子を、微細一次粒子からなる低密度の中心部と、この微細一次粒子よりも大きな一次粒子からなる外殻部とを備えた構造とすることができる。
(2)供給水溶液
次に、本発明の複合水酸化物粒子の原料となる混合水溶液、pH制御のためのアルカリ水溶液およびアンモニウムイオン濃度を制御するためのアンモニウムイオン供給体を含む水溶液について説明する。
(2−a)混合水溶液
混合水溶液1を作製するためのマンガン化合物およびニッケル化合物、ならびに、混合水溶液2を作製するためのマンガン化合物、ニッケル化合物およびチタン化合物は、特に限定されることはないが、取扱いの容易性から、水溶性の硝酸塩、硫酸塩および塩酸塩などを用いることができる。特に、コストやハロゲンの混入を防止する観点から硫酸塩、具体的には、硫酸マンガン、硫酸ニッケルおよび硫酸チタンを用いることが好ましい。
また、複合水酸化物粒子中に添加元素M(Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選ばれる少なくとも1種の元素)を含有させる場合、添加元素Mを供給するための化合物としては、同様に水溶性の化合物が好ましく、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸鉄、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸銅、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを好適に用いることができる。
混合水溶液の濃度は、混合水溶液1および混合水溶液2のいずれの場合においても、混合水溶液に含まれる金属化合物の合計で、好ましくは1mol/L〜2.6mol/L、より好ましくは1mol/L〜2.3mol/Lとする。混合水溶液の濃度が1mol/L未満では、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるため、生産性が低下する。一方、混合水溶液の濃度が2.6mol/Lを超えると、反応温度が低下した際に、飽和濃度を超え、各金属化合物の結晶が再析出して、配管などを詰まらせるおそれがある。
なお、上述したマンガン化合物、ニッケル化合物、チタン化合物および添加元素Mの化合物は、必ずしも混合水溶液1または混合水溶液2として反応槽に供給しなくてもよい。たとえば、混合すると反応して目的とする化合物以外の化合物が生成されてしまう金属化合物を用いて晶析反応を行う場合、全金属化合物水溶液の合計の濃度が上記範囲となるように、個別に金属化合物水溶液を調製して、個々の金属化合物の水溶液として、所定の割合で反応槽内に供給してもよい。
また、混合水溶液1および混合水溶液2の供給量は、晶析反応終了時点で、反応水溶液中の生成物の濃度が、好ましくは30g/L〜200g/L、より好ましくは50g/L〜150g/Lとなるようにする。生成物の濃度が30g/L未満では、一次粒子の凝集が不十分になる場合がある。一方、200g/Lを超えると、反応水溶液に供給する混合水溶液1または混合水溶液2が十分に拡散せず、粒成長に偏りが生じる場合がある。
(2−b)アルカリ水溶液
アルカリ水溶液は、特に限定されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、20質量%〜50質量%とすることが好ましく、20質量%〜30質量%とすることがより好ましい。アルカリ金属水溶液の濃度をこのような範囲に規制することにより、反応系に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができるため、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を効率的に得ることができる。
なお、アルカリ水溶液の供給方法は、反応水溶液のpH値が局所的に高くならず、かつ、所定の範囲に維持される限り、特に限定されることはなく、たとえば、反応水溶液を十分に撹拌しながら、定量ポンプなどの流量制御が可能なポンプにより供給すればよい。
(2−c)アンモニウムイオン供給体を含む水溶液
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に限定されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくはフッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
アンモニウムイオン供給体として、アンモニア水を使用する場合、その濃度は、好ましくは20質量%〜30質量%、より好ましくは22質量%〜28質量%とする。アンモニア水の濃度をこのような範囲に規制することにより、揮発などによるアンモニアの損失を最小限に抑制することができるため、生産効率の向上を図ることができる。
なお、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給方法も、アルカリ水溶液と同様に、流量制御が可能なポンプにより供給することができる。
(3)反応条件
(3−a)pH値
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、液温25℃基準におけるpH値を、核生成工程においては12.0〜14.0の範囲に、粒子成長工程においては10.5〜12.0の範囲に制御することが必要となる。なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内とすることが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合、核生成量と粒子成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得ることができなくなる場合がある。
[核生成工程]
核生成工程においては、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で12.0〜14.0、好ましくは12.3〜14.0、より好ましくは12.3〜13.5の範囲に制御する。pH値が12.0未満では、核生成とともに、核の成長(粒成長)が進むため、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。一方、pH値が14.0を超えると、生成する核が微細になりすぎるため、反応水溶液がゲル化するという問題が生じる。
[粒子成長工程]
粒子成長工程においては、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0、好ましくは10.7〜12.0、より好ましくは10.7〜11.8の範囲に制御する。粒子成長工程におけるpH値をこのような範囲に制御することにより、新たな核の生成が抑制され、粒成長が優先的に進行するため、得られる複合水酸化物粒子を均質で、粒度分布が狭いものとすることができる。これに対して、pH値が10.5未満では、アンモニウムイオン濃度が上昇し、金属イオンの溶解度が高くなるため、晶析反応の速度が遅くなるばかりでなく、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、生産性が悪化する。一方、pH値が12.0を超えると、粒子成長工程における核生成量が増加し、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。
なお、pH値が12.0の場合は、核生成と核成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、核生成工程または粒子成長工程のいずれかの条件とすることができる。すなわち、核生成工程のpH値を12.0より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、粒成長が優先して起こり、粒径分布が狭い複合水酸化物粒子を得ることができる。一方、核生成工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長工程のpH値を12.0より小さくすることで、生成した核が成長して良好な複合水酸化物粒子を得ることができる。
(3−b)反応雰囲気
本発明の複合水酸化物粒子の構造は、核生成工程および粒子成長工程における反応雰囲気の制御によって規制される。具体的には、核生成工程では、好ましくは、核生成工程および粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体の30%以下の範囲では、反応雰囲気を酸化性雰囲気とすることによって、微細一次粒子を析出させ、粒子成長工程においては低密度の中心部が形成される。これに対して、粒子成長工程における反応雰囲気の切り換え後においては、反応雰囲気を弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に制御することによって、前述した微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子を析出させ、これにより、中心部の外側に高密度の外殻部を形成する。
このように、反応雰囲気の変化により、析出する一次粒子の大きさが異なる理由は、反応雰囲気内の酸素濃度に応じて金属元素の価数が変化するためと考えられる。したがって、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、各工程における反応雰囲気を適切に制御することが重要となる。
[酸化性雰囲気]
核生成工程では、好ましくは、核生成工程および粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体の30%以下の範囲では、反応雰囲気を酸化性雰囲気、すなわち、酸素濃度が1容量%を超える雰囲気とすることが必要である。特に、雰囲気制御が容易な大気雰囲気とすることが好ましい。このような反応雰囲気では、析出する微細一次粒子の平均粒径が0.01μm〜0.3μmとなるため、この微細一次粒子が凝集することによって形成される二次粒子からなる中心部を十分に低密度なものとすることができる。これに対して、酸素濃度が1容量%以下では、一次粒子が粗大化し、平均粒径が3μmを超えてしまうおそれがある。
なお、酸素濃度の上限は、特に制限されることはないが、30容量%程度とすることが好ましい。酸素濃度が30容量%を超えると、一次粒子が微細になりすぎたり、一次粒子の凝集が抑制され、二次粒子を形成することができなくなったりする場合がある。
[弱酸化性雰囲気〜非酸化性雰囲気]
粒子成長工程の開始時(反応水溶液のpH値の切り換え後)から、好ましくは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体の30%を超えた範囲では、反応雰囲気を、弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気とする。具体的には、反応雰囲気を、1容量%以下、好ましくは0.5容量%以下、より好ましくは0.2容量%以下の酸素と、窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合雰囲気に制御することが必要となる。このような反応雰囲気では、析出する一次粒子の平均粒径が0.3μm〜3μmとなるため、前述した中心部の外側に、高密度の外殻部を形成することができる。
なお、反応雰囲気を、酸化性雰囲気から弱酸性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り替え、維持するための手段としては、微細一次粒子からなる中心部が十分な大きさまで成長した後、反応槽内に不活性ガスを導入し、好ましくは反応水溶液を不活性ガスによってバブリングする手段を挙げることができる。
(3−c)アンモニウムイオン濃度
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、好ましくは3g/L〜25g/L、より好ましくは5g/L〜25g/L、さらに好ましくは5g/L〜15g/Lの範囲内で一定値に保持する。
反応水溶液中においてアンモニウムイオンは錯化剤として機能するため、アンモニウムイオン濃度が3g/L未満では、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、また、反応水溶液がゲル化しやすくなり、形状や粒径の整った複合水酸化物粒子を得ることが困難となる。一方、アンモニウムイオン濃度が25g/Lを超えると、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎるため、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、組成ずれなどの原因となる。
なお、晶析反応中にアンモニウムイオン濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一な複合水酸化物粒子が形成されなくなる。このため、核生成工程と粒子成長工程を通じて、アンモニウムイオン濃度の変動幅を一定の範囲に制御することが好ましく、具体的には、±5g/Lの変動幅に制御することが好ましい。
(3−d)反応温度
反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程と粒子成長工程を通じて、好ましくは20℃以上、より好ましくは20℃〜60℃の範囲に制御することが必要となる。反応温度が20℃未満の場合、反応水溶液の溶解度が低くなることに起因して、核生成が起こりやすくなり、得られる複合水酸化物粒子の平均粒径や粒度分布の制御が困難となる。なお、反応温度の上限は、特に制限されることはないが、60℃を超えると、アンモニアの揮発が促進され、反応水溶液中のアンモニウムイオンを一定範囲に制御するために供給するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の量が増加し、生産コストが増加してしまう。
(3−e)複合水酸化物粒子の粒径制御
複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程の時間により制御できるので、所望の粒径に達するまで粒子成長工程を継続すれば、所望の粒径を有する複合水酸化物粒子を得ることができる。
また、複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程のみならず、核生成工程のpH値と核生成のために投入した金属化合物の量によっても制御することができる。すなわち、核生成時のpH値を高pH値側とすることにより、または、核生成時間を長くすることにより、投入する金属化合物量を増やし、生成する核の数を多くすれば、粒子成長工程を同条件で行った場合でも、得られる複合水酸化物粒子の粒径を小さくすることができる。一方、生成する核の数が少なくなるように、pH値や核生成時間を制御すれば、得られる複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
3.非水系電解質二次電池用正極活物質
本発明の正極活物質は、一般式(B):LitMn2(1-x-y-z)Ni2xTi2y2z4(0.96≦t≦1.20、0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、スピネル構造を有する立方晶系のリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子からなり、平均粒径が2μm〜8μmであり、粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.70以下であり、粒子内部の中空部と、該中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えることを特徴とする。
(1)組成
リチウム(Li)の含有量を示すtの値は、0.96以上1.20以下、好ましく0.98以上1.20以下、より好ましくは1.00以上1.20以下とする。tの値を上記範囲に規制することにより、この正極活物質を正極として構成される二次電池の出力特性および容量特性を向上させることができる。これに対して、tの値が0.96未満では、二次電池の正極抵抗が大きくなるため、出力特性を向上させることができない。一方、1.20を超えると、初期放電容量が低下する。
なお、本発明の正極活物質においては、一般式(B)における、xの値、yの値およびzの値の範囲ならびにその臨界的意義は、上述した一般式(A)における各値の範囲ならびにその臨界的意義と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)粒子構造
本発明の正極活物質は、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備える。このような中空構造を備えることにより、電解液との反応面積を大きくすることができ、かつ、殻部の一次粒子間の粒界または空隙を介して中空部に電解液が浸入し、粒子外殻部の反応界面のみならず、粒子内部の反応界面を通じてリチウムの脱離および挿入を行うことが可能となるため、リチウムイオンや電子の移動が促進され、出力特性を大幅に向上させることができる。
(3)外殻部の厚み
本発明の正極活物質においては、外殻部の厚みが、粒径に対する比率で5%〜35%であることが好ましく、10%〜35%であることがより好ましい。外殻部の厚みが5%未満では、中空部が大きくなりすぎるため、反応界面の減少により正極抵抗が高くなり、出力特性が低下するばかりでなく、粒子強度が低下するため、二次電池の正極を構成する際に、粒子が破壊され、微粉が発生するおそれがある。一方、外殻部の厚みが35%を超えると、電解液が中空部に浸入可能な、外殻部の一次粒子間の粒界または空隙が減少し、十分な反応界面を確保することができなくなるため、正極抵抗が上昇し、出力特性が低下してしまう。なお、正極活物質の外殻部の厚みは、上述した複合水酸化物粒子の外殻部の厚みと同様の方法により求めることができる。
(4)平均粒径
本発明の正極活物質の平均粒径は2μm〜8μm、好ましくは3μm〜8μm、より好ましくは3μm〜6μmとする。なお、正極活物質の平均粒径とは、正極活物質を構成する二次粒子の体積平均粒径を意味し、たとえば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
正極活物質の平均粒径がこのような範囲にあれば、この正極活物質を用いた二次電池の容量特性や出力特性を向上させることが可能となる。これに対して、平均粒径が2μm未満では、正極活物質の充填性が低下するため、二次電池の容量特性を改善することができない。一方、平均粒径が8μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下することに起因して、電解液との反応面積が減少し、正極抵抗が上昇してしまう。
(5)粒度分布
本発明の正極活物質において、粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕は、0.70以下、好ましくは0.69以下、より好ましくは0.68以下に制御することが必要となる。なお、d10、d90および平均粒径は、複合水酸化物粒子におけるd10、d90および平均粒径と同様の方法により求めることができる。
正極活物質の粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕の値を上記範囲に制御することにより、この正極活物質中の微細二次粒子や粗大二次粒子の割合を少なくすることができ、この正極活物質を正極に用いた二次電池の出力特性、サイクル特性および安全性を改善することができる。これに対して、〔(d90−d10)/平均粒径〕の値が0.70を超えると、正極活物質中における微細二次粒子および粗大二次粒子の割合が増加することとなる。微細二次粒子が多く含まれる正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、微細二次粒子の局所的な反応に起因して発熱量が増大するとともに、この微細二次粒子が選択的に劣化することに起因してサイクル特性が悪化する。また、粗大二次粒子が多く含まれる正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、電解液と正極活物質との反応面積を十分に確保することができず、正極抵抗の増加により、出力特性が低下する。
(6)比表面積
本発明の正極活物質の比表面積は、0.5m2/g〜3.0m2/gであることが好ましく、0.5m2/g〜2.5m2/gであることがより好ましい。なお、正極活物質の比表面積は、窒素ガス吸着によるBET法により測定することができる。正極活物質の比表面積が0.5m2/g未満では、二次電池を構成した場合において、電解液との反応面積を十分に確保することができず、出力特性を向上させることができない場合がある。一方、正極活物質の比表面積が3.0m2/gを超えると、電解液との副反応によって被膜が形成され、抵抗が増加する場合がある。
4.非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法
本発明の正極活物質の製造方法は、上述の複合水酸化物粒子にリチウムを混合し、リチウム混合物とした後(混合工程)、これを所定条件の下で焼成することにより(焼成工程)、上述した正極活物質を得ることを特徴とする。なお、本発明の正極活物質の製造方法では、混合工程および焼成工程のほかに、必要に応じて、焼成工程前にリチウム混合物を仮焼する工程(仮焼工程)、焼成後のリチウム複合酸化物粒子を解砕する工程(解砕工程)および/またはリチウム複合酸化物粒子をアニール処理する工程(アニール処理工程)などを行ってもよい。以下、工程ごとに詳細に説明する。
(1)混合工程
混合工程は、上述した複合水酸化物粒子に、リチウム以外の金属(Mn、Ni、Tiおよび添加元素M)の原子数の合計(Me)に対する、リチウムの原子数(Li)の比(Li/Me)が0.48〜0.60、好ましくは0.49〜0.60、より好ましくは0.50〜0.60となるように、リチウム化合物を混合し、リチウム混合物を得る工程である。すなわち、焼成工程前後でLi/Meは変化せず、この混合工程におけるLi/Meが、リチウム複合酸化物粒子におけるLi/Meとなるので、リチウム混合物におけるLi/Meが、得ようとするリチウム複合酸化物粒子のLi/Meと同じになるように、複合水酸化物粒子にリチウム化合物を混合することが必要となる。
複合水酸化物粒子に混合するリチウム化合物としては、特に制限されることはなく、たとえば、水酸化リチウム、硝酸リチウムもしくは炭酸リチウムまたはこれらの混合物を使用することができる。特に、取扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、炭酸リチウムを用いることが好ましい。
複合水酸化物粒子とリチウム化合物は、焼成前に、微粉が生じない程度に十分に混合しておくことが好ましい。混合が不十分であると、個々の粒子間でLi/Meにばらつきが生じ、十分な電池特性を得ることができない。なお、混合には、一般的な混合機を使用することができる。たとえば、シェーカーミキサやレーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができる。
(2)仮焼工程
リチウム化合物として水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合、リチウム混合物を後述する焼成温度で焼成する前に、焼成温度よりも低く、かつ、350℃〜750℃の温度で1時間〜10時間程度保持して、仮焼することが好ましい。すなわち、水酸化リチウムや炭酸リチウムの融点近傍または反応温度近傍で一定時間保持することにより、複合水酸化物粒子中へのリチウムの拡散を促進することが好ましく、これによって、得られるリチウム複合酸化物粒子の組成をより均一なものとすることができる。
なお、仮焼温度は、焼成温度よりも低く、かつ、400℃〜700℃とすることがより好ましく、この温度での保持時間は5時間以下とすることがより好ましい。
(3)焼成工程
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を、所定温度で焼成する工程である。なお、焼成工程で使用する炉は、後述する雰囲気でリチウム混合物を焼成することができる限り、特に制限されることなく、バッチ式または連続式のいずれの炉も用いることができるが、
ガス発生のない電気炉を使用することが好ましい。
焼成雰囲気は酸化性雰囲気とするが、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気、すなわち、大気〜酸素気流中で行うことが好ましく、コスト面を考慮すると、空気気流中で行うことがより好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、酸化反応が十分に進行せず、リチウム複合酸化物粒子の結晶性が十分なものとならない場合がある。
また、焼成温度は、850℃を超えて950℃未満、好ましくは860℃以上940℃以下、より好ましくは875℃以上925℃以下とする。焼成温度が850℃以下では、得られる正極活物質の比表面積が大きくなりすぎるため、二次電池内で、正極活物質と電解液との間で生じる副反応により被膜が形成され、正極抵抗が増加する。一方、焼成温度が950℃以上では、複合水酸化物粒子間またはリチウム複合酸化物粒子間での焼結が進行することに起因して、中空構造が消失してしまう。このようなリチウム複合酸化物粒子は、比表面積が低下するため、これを正極活物質として二次電池を構成した場合に正極抵抗が増加し、出力特性が低下する。
上記焼成温度における保持時間(焼成時間)は、3時間以上とすることが好ましく、5時間〜24時間とすることがより好ましい。焼成時間が3時間未満では、複合水酸化物粒子とリチウム化合物とを十分に反応させることができない場合がある。一方、24時間を超えてもそれ以上の効果を得ることができないばかりか、生産性の悪化を招く。
(4)解砕工程
焼成後のリチウム複合酸化物粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。この場合、リチウム複合酸化物粒子の凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これにより、リチウム複合酸化物粒子を適度な粒径を有する粉体として取り扱うことができるため、正極活物質として用いた場合の充填性をより向上させることができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく二次粒子を分離させて、凝集体をほぐす操作のことである。
解砕の方法としては、公知の手段を用いることができ、たとえば、ピンミルやハンマーミルなどを使用することができる。なお、この際、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することが好ましい。
(5)アニール処理工程
本発明の正極活物質の製造方法では、焼成工程後または解砕工程後のリチウム複合酸化物粒子を、さらに酸化性雰囲気下、500℃〜800℃で、5時間〜40時間焼成するアニール処理をすることが好ましい。このように、焼成工程後に、焼成温度よりも低温域でアニール処理することにより、高温域の焼成で生成したリチウム複合酸化物粒子中の酸素欠陥を回復させ、その結晶性を高めることができる。
アニール処理工程における雰囲気は酸化性雰囲気とするが、焼成工程における雰囲気と同様に、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気、すなわち、大気〜酸素気流中で行うことが好ましく、コスト面を考慮すると、空気気流中で行うことがより好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、酸化反応が十分に進行せず、リチウム複合酸化物粒子中の酸素欠陥が十分に回復しない場合がある。
また、アニール処理工程における焼成温度(アニール処理温度)は、上述した焼成温度よりも低温とし、具体的には、500℃〜800℃、好ましくは600℃〜800℃、より好ましくは650℃〜750℃とすることが必要となる。アニール処理温度が500℃未満では、酸素欠陥を十分に回復することができない。一方、アニール処理温度が800℃を超えると、リチウム複合酸化物粒子中に、さらに酸素欠陥が生成し、結晶性が悪化する。
上記アニール処理温度での保持時間(アニール処理時間)は、5時間〜40時間、好ましくは10時間〜40時間、より好ましくは20時間〜40時間とする。アニール処理時間が5時間未満では、酸素欠陥を十分に回復することができない。一方、アニール処理時間が40時間を超えても、それ以上の効果が得られないばかりか、生産性が悪化する。
5.非水系電解質二次電池
本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水系電解液などからなり、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成される。なお、以下に説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態をもとに、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に限定するものではない。
(1)正極
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。
まず、粉末状の正極活物質、導電材および結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材ペースト中のそれぞれの混合比は、二次電池の用途や要求される性能に応じて適宜選択されるものであり、特に限定されるものではないが、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60質量部〜95質量部とし、導電材の含有量を1質量部〜20質量部とし、結着剤の含有量を1質量部〜20質量部とすることが望ましい。
得られた正極合材ペーストを、たとえば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断などをして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、上述した例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極の作製にあたって、導電材としては、たとえば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸を用いることができる。
必要に応じて、正極活物質、導電材および活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(2)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金など、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
(3)セパレータ
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(4)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
さらに、非水系電解液は、電池特性を改善するために、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
(5)電池の形状、構成
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
(6)特性
本発明の正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、高い作動電位を有しながらも、高容量で、出力特性に優れる。具体的には、本発明の正極活物質を正極に用いて、2032型コイン電池を構成し、電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧5.0Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電した場合に、130mAh/g以上、好ましくは135mAh/g以上の初期放電容量が得られる。また、この2032型コイン電池の正極抵抗を22Ω以下、好ましくは21Ω以下とすることができる。
(7)非水系電解質二次電池の用途
本発明の非水系電解質二次電池は、上記特性を有するため、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。また、本発明の非水系電解質二次電池は小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源としても好適である。なお、本発明の非水系電解質二次電池は、純粋に電気エネルギのみで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用する、いわゆるハイブリッド車用の電源としても用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
[複合水酸化物粒子の製造]
(1)核生成工程
はじめに、反応槽(5L)内に、水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。このとき、反応槽内を大気雰囲気とした。この反応槽内の水に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、反応槽内のpH値が、液温25℃基準で13.0、アンモニウムイオン濃度が5g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を調製した。また、硫酸マンガンと硫酸ニッケルの水和物を、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=2.90:1.00となるように純水に溶かして、1.85mol/Lの混合水溶液1を調整した。同時に、硫酸マンガンと硫酸ニッケルの水和物と、硫酸チタンを、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.105となるように純水に溶かして1.90mol/Lの混合水溶液2を調整した。
次に、反応槽内に、10mL/minで混合水溶液1を供給するとともに、一定速度で、25質量%アンモニア水と25質量%水酸化ナトリウム水溶液を供給することで、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で13.0に、アンモニウムイオン濃度を5g/Lに維持した。この状態で1分間の晶析を行うことで、マンガンニッケル複合水酸化物粒子の核生成を行った。
なお、核生成工程では、反応水溶液のpH値を反応槽に設置したpHコントローラにより測定し、設定値に対して±0.2の範囲に制御した。この点については、粒子成長工程も同様である。
(3)粒子成長工程
核生成工程の終了後、混合水溶液1、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液の供給を停止するとともに、反応水溶液中に硫酸を加えて、この反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で11.6となるように調整した。
この状態で、混合水溶液1の供給を再開するとともに、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で11.6に、アンモニウムイオン濃度が5g/Lに維持されるようにアンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液の供給をし、15分間の晶析を行った。
この時点で、一旦、全ての水溶液の供給を停止するとともに、反応槽内に、窒素ガスを5L/minで流通させ、酸素濃度が0.2容量%以下となるように調整した。
その後、混合水溶液1に代えて、チタンを含有する混合水溶液2の供給を開始するとともに、反応水溶液のpH値が液温25℃基準で11.6に、アンモニウムイオン濃度が5g/Lに維持されるように、25質量%アンモニア水と25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給し、4.75時間の晶析を行った。すなわち、本実施例では、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体で5%の時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行ったことになる。
[複合水酸化物粒子の評価]
チタン添加工程終了後、生成物を水洗、ろ過および乾燥させて、複合水酸化物粒子を得た。
この複合水酸化物粒子の組成をICP発光分光器(VARIAN社、725ES)により測定したところ、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであることが確認された。
次に、レーザー光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3000II)を用いて、この複合水酸化物粒子の平均粒径を測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径を〕を算出した。
また、この複合水酸化物粒子をクロスセクションポリッシャ加工により断面観察可能な状態にし、SEM(JEOL製、JSM-7001F)を用いて粒子構造を観察した結果、この複合水酸化物粒子は、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。なお、このSEM観察では、同時に、微細一次粒子および板状一次粒子の平均粒径ならびに二次粒子の粒径に対する外殻部の厚みを測定した。
[正極活物質の製造]
上述のようにして得られた複合水酸化物粒子に、Li/Me=50原子%となるように秤量した炭酸リチウムを添加し、ターブラーシェーカミキサ(株式会社ダルトン製、T2F)を用いて混合することにより、リチウム混合物を得た。
このリチウム混合物を、雰囲気焼成炉(株式会社広築製、HAF−2020S)を用いて、大気雰囲気下、500℃で2時間仮焼し、900℃で12時間焼成した後、室温まで冷却し、得られたリチウム複合酸化物粒子をハンマーミル(IKAジャパン株式会社製、MF10)を用いて解砕した。
さらに、このリチウム複合酸化物粒子を、雰囲気焼成炉を用いて、大気雰囲気下、700℃で36時間焼成することにより(アニール処理)、正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
この正極活物質の組成をICP発光分光分析器により測定したところ、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであることが確認された。
次に、レーザー光回折散乱式粒度分析計を用いて、この複合水酸化物粒子の平均粒径を測定するとともに、同様にして、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径を〕を算出した。同時に、この正極活物質の比表面積を、窒素吸着式BET法測定機(ユアサアイオニックス株式会社製、カンタソーブQS−10)を用いて測定した。
また、この正極活物質をクロスセクションポリッシャ加工により断面観察可能な状態にし、SEMを用いて粒子構造を観察した結果、この正極活物質は、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。なお、このSEM観察では、同時に、正極活物質の粒径に対する外殻部の厚みを測定した。
さらに、得られた正極活物質をCu−Kα線による粉末X線回折で分析したところ、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。これらの結果を表4に示す。
[二次電池の作製]
得られた正極活物質の評価には、図3に示す2032型コイン電池1(以下、「コイン型電池」という)を使用した。
コイン型電池1は、ケース2と、ケース2内に収容された電極3とから構成されている。ケース2は、中空かつ一端が開口された正極缶2aと、この正極缶2aの開口部に配置される負極缶2bとを有しており、負極缶2bを正極缶2aの開口部に配置すると、負極缶2bと正極缶2aとの間に電極3を収容する空間が形成されるように構成されている。また、電極3は、正極3a、セパレータ3cおよび負極3bとからなり、この順で並ぶように積層されており、正極3aが正極缶2aの内面に接触し、負極3bが負極缶2bの内面に接触するようにケース2に収容されている。なお、ケース2はガスケット2cを備えており、このガスケット2cによって、正極缶2aと負極缶2bとの間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。また、ガスケット2cは、正極缶2aと負極缶2bとの隙間を密封してケース2内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
このようなコイン型電池1は、以下のようにして作製した。
初めに、得られた正極活物質52.5mgと、アセチレンブラック15mgと、ポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgとを混合し、直径10mmで10mg程度の重量になるまで薄膜化して、正極3aを作製し、これを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
次に、正極3aを用いて、コイン型電池1を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。この際、負極3bには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれたリチウム箔、または平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用いた。また、セパレータ3cには、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を、電解液には、1MのLiPF6を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の3:7混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
[二次電池の評価]
コイン型電池1の性能を示す初期放電容量および正極抵抗は、以下のように評価した。
初期放電容量は、負極にリチウム箔を用いたコイン型電池1を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧5.0Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量(初期放電容量)を測定することにより評価した。
正極抵抗は、DC−IR抵抗を測定することにより評価した。具体的には、コイン型電池1を初期放電容量の60%まで充電し、1分間の休止を挟み、電流密度を0.4mA/cm2として10秒間放電した後、再度1分間の休止を挟み、電流密度を0.4mA/cm2として10秒間充電した。この操作を、1.3mA/cm2、4.0mA/cm2および6.6mA/cm2の条件で繰り返し、各電流密度における放電開始時の電圧と、放電終了までの電圧の差を測定した。次に、電流密度を縦軸に、電圧差を横軸にプロットし、得られた直線関係について、一次線形近似により傾きを求め、この傾きを正極抵抗(DC−IR抵抗)とした。これらの結果を表4に示す。
(実施例2)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.111、濃度が1.91mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から30分経過した時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、その後、晶析を4.50時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例3)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.125、濃度が1.91mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から60分経過した時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、その後、晶析を4.00時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例4)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.100、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、晶析を5.00時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例5)
混合水溶液1として、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=2.80:1.00、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと、混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.80:1.00:0.211、濃度が1.91mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.700Ni0.25Ti0.050(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.40Ni0.50Ti0.104で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例6)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.87:1.00:0.144、濃度が1.92mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から90分経過した時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、その後、晶析を3.50時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.700Ni0.25Ti0.050(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.40Ni0.50Ti0.104で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例7)
混合水溶液1として、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=2.94:1.00、濃度が1.87mol/Lであるものを使用したこと、混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.94:1.00:0.063、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.700Ni0.25Ti0.050(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.40Ni0.50Ti0.104で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例1)
混合水溶液1および混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.100、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと、核生成工程と粒子成長工程を通じて、反応雰囲気を酸素濃度が0.2容量%以下の窒素雰囲気に制御したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例2)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.150、濃度が1.92mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から100分経過した時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、その後、晶析を3.33時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例3)
焼成工程における焼成温度を950℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部には中空部が存在せず、中実構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例4)
焼成工程における焼成温度を850℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例5)
混合水溶液1および混合水溶液2として、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=3.00:1.00、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.75Ni0.25(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.50Ni0.504で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例6)
混合水溶液1として、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=2.70:1.00、濃度が1.76mol/Lであるものを使用したこと、混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.70:1.00:0.316、濃度が1.91mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.675Ni0.25Ti0.075(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.35Ni0.50Ti0.154で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物相と、Li2NiTiO4相とが混在したものであることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例7)
混合水溶液1および混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni=2.90:1.00:0.100、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電離1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
1 コイン型電池1
2 ケース2
2a 正極缶
2b 負極缶
2c ガスケット
3 電極
3a 正極
3b 負極
3c セパレータ

本発明は、非水系電解質二次電池用正極活物質、および、この正極活物質を正極材料に用いた非水系電解質二次電池に関する。
近年、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯電子機器の普及に伴い、高エネルギ密度を有する小型で軽量な二次電池に対する要求が高まっている。また、モータ駆動用電源、特に輸送機器用電源の電池として高出力の二次電池の開発も強く望まれている。
このような要求を満たす二次電池として、非水系電解質二次電池の一種であるリチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池は、負極、正極、電解液などで構成され、その負極および正極の材料として用いられる活物質には、リチウムを脱離および挿入することが可能な材料が使用される。
このようなリチウムイオン二次電池については、現在、研究開発が盛んに行われているところである。この中でも、リチウム金属複合酸化物、特に合成が比較的容易なリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2)を正極材料に用いたリチウムイオン二次電池は、4V級の電圧が得られるため、高エネルギ密度を有する電池として実用化が進んでいる。このリチウムコバルト複合酸化物を用いたリチウムイオン二次電池では、優れた初期容量特性やサイクル特性を得るための開発がこれまで数多く行われてきており、すでにさまざまな成果が得られている。
しかしながら、リチウムコバルト複合酸化物は、埋蔵量が少なく、高価なコバルト化合物を用いるため、電池のコストアップの原因となる。このため、コバルトよりも安価でありながらも、高エネルギ密度を実現できる代替材料を用いた正極活物質の開発が求められている。
リチウムイオン二次電池用正極活物質として新たに提案されている材料としては、マンガンを用いたリチウムマンガン複合酸化物(LiMn24)や、ニッケルを用いたリチウムニッケル複合酸化物(LiNiO2)を挙げることができる。このうち、リチウムマンガン複合酸化物は、原料が安価である上、その結晶構造がスピネル構造であることに起因して、熱安定性、特に、発火などに対する安全性に優れるため、リチウムコバルト複合酸化物の有力な代替材料と考えられる。特に、リチウムマンガン複合酸化物のMnの一部をNiに置換したリチウムマンガンニッケル複合酸化物(LiMn1.5Ni0.54)は、4.5V以上の作動電圧を実現できる高エネルギ密度の材料として、近年、注目を集めている
ここで、リチウムイオン二次電池が、優れた出力特性を備えるためには、正極が低抵抗であることが必要であり、このためには、粒度分布が狭く、かつ、粒径が適度に小さい正極活物質を用いることが必要である。すなわち、正極活物質の粒径が大きいと、比表面積が小さくなり、電解液との反応面積を確保することができなくなることに起因して、反応抵抗が上昇するため、高出力の二次電池が得られない。一方、正極活物質の粒度分布が広いと、電極内で粒子に印加される電圧が不均一になり、充放電を繰り返すうちに微粒子が選択的に劣化することに起因して、電池容量が低下するとともに、二次電池の反応抵抗が上昇して、やはり高出力の二次電池は得られない。
したがって、リチウムマンガンニッケル複合酸化物についても、粒度分布が狭く、かつ、粒径が適度に小さいという粒子性状を達成するための研究が進められている。たとえば、特開2011−116583号公報には、少なくともマンガンを含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で12.0〜14.0に制御して核生成を行った後(核生成工程)、生成された核を含む水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0に制御して、この核を成長させることにより(粒子成長工程)、マンガンニッケル複合水酸化物を得て、このマンガンニッケル複合水酸化物を前駆体として用いることで、粒度分布が狭く、かつ、粒径が適度に小さいという粒子性状を備えた中実構造のリチウムマンガンニッケル複合酸化物を得る技術が記載されている。
また、リチウムイオン二次電池の高出力化を図るためには、その正極材料を構成する正極活物質について、その粒子性状を調整するのみではなく、その粒径を過度に小さくせずに、その反応面積を大きくすることが効果的である。すなわち、正極活物質の電池反応に寄与する表面積を大きくすることにより、反応抵抗を低減することが可能となる。
たとえば、特開2012−246199号公報には、核生成工程および粒子成長工程における反応雰囲気を制御することにより、得られるマンガンニッケル複合水酸化物を低密度の中心部と高密度の外殻部から構成されたものとし、このマンガンニッケル複合水酸化物を前駆体とすることで、粒度分布が狭く、かつ、粒径が適度に小さい、中空構造のリチウムマンガンニッケル複合酸化物を得る技術が記載されている。すなわち、正極活物質を中空構造とすることにより、その粒径を変えることなく、電解液との反応面積を増大させ、これによって二次電池の高出力化を図っている。
さらに、J.H.Kima,S.T.Myungb,C.S.Yoonc,I.H.Ohd and Y.K.Suna,J.Electrochem.Soc.151(11)A1911−A1918(2004)には、スピネル構造のリチウムマンガンニッケル複合酸化物を構成するマンガンの一部をチタンに置換することで、充放電中における結晶構造の変化を抑制し、これによって、リチウムイオン二次電池の高出力化を図る技術が記載されている。
しかしながら、これらの文献に記載のリチウムマンガンニッケル複合酸化物を正極活物質として用いた二次電池は、従来技術との比較では出力特性の改善が見られるものの、携帯電子機器や輸送機器用電源としての用途を前提とした場合、さらなる高出力化が要求される。
特開2011−116583号公報 特開2012−246199号公報
J.H.Kima,S.T.Myungb,C.S.Yoonc,I.H.Ohd and Y.K.Suna,J.Electrochem.Soc.151(11)A1911−A1918(2004)
本発明は、二次電池の正極活物質として用いた場合に、その高出力化が可能である、スピネル構造を有するリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子からなる正極活物質を提供することを目的とする。また、本発明は、このような正極活物質を用いた非水系電解質二次電池を提供することを目的とする。
発明の非水系電解質二次電池用正極活物質は、一般式(B):LitMn2(1-x-y-z)Ni2xTi2y2z4(0.96≦t≦1.20、0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、スピネル構造を有する立方晶系のリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子からなり、平均粒径が2μm〜8μmであり、粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.70以下であり、粒子内部の中空部と、該中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えることを特徴とする。
前記外殻部の厚みは、前記二次粒子の粒径に対する比率で5%〜35%であることが好ましい。
前記非水系電解質二次電池用正極活物質の比表面積は、0.5m2/g〜3.0m2/gであることが好ましい。
本発明の非水系電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水系電解質とを備え、前記正極の正極材料として、前記非水系電解質二次電池用正極活物質が用いられていることを特徴とする。
本発明によれば、粒度分布が狭く、かつ、適度に粒径が小さく、中空構造を備えたリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子からなる正極活物質を提供することができる。また、本発明によれば、このような正極活物質を正極材料として用いることで、出力特性に優れた非水系電解質二次電池を提供することができる。このため、本発明の工業的意義はきわめて大きい。
図1は、本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子を製造する工程を示す、概略フローチャートである。 図2は、本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子のSEM写真(倍率:1000倍)である。 図3は、電池評価に使用した2032型コイン電池の概略断面図である。
本発明者らは、上述した問題に鑑みて、リチウムマンガンニッケル複合酸化物粒子を正極活物質として用いた二次電池のさらなる高出力化を図るため、特開2012−246199号公報に記載のリチウムマンガンニッケル複合酸化物粒子にチタンを添加することを試みた。具体的には、このリチウムマンガンニッケル複合酸化物粒子の前駆体であるマンガンニッケル複合水酸化物粒子を製造する際、マンガン化合物、ニッケル化合物およびチタン化合物を溶解した水溶液を原料として用いて、核生成工程および粒子成長工程を行い、これにより、マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子を得ることを試みた。しかしながら、このようにして得られたマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子は、中心部と外殻部の密度差が小さく、これを焼成しても、得られるリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子の内部に中空部を形成することができなかったり、あるいは、中空部を十分な大きさとすることができなかった。
本発明者らは、この点について研究を重ねた結果、チタンはほぼ4価で安定した金属であり、晶析反応中の雰囲気(反応雰囲気)が酸化性雰囲気から非酸化性雰囲気に変化しても、析出する固体の密度が変化しないため、晶析反応の初期段階、特に、核生成工程の段階で、反応水溶液中にチタンが存在すると、酸化性雰囲気で核生成し、非酸化性雰囲気で粒成長させた場合であっても、粒子内部に密度差を生じさせることが困難であることを突き止めた。そして、この点について、さらに研究を重ねた結果、マンガンニッケルチタン複合酸化物粒子を、上述した核生成工程と粒子成長工程とを備える晶析反応により製造する際、核生成工程ではチタンを添加せず、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して特定の範囲でチタンを添加することにより、得られるマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の内部に密度差を生じさせることができ、これを前駆体とするリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子を、中空構造を備えたものとすることができるとの知見を得た。本発明は、この知見に基づき完成されたものである。
1.マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子
はじめに、本発明の正極活物質の前駆体であるマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子について説明する。このマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子(以下、「複合水酸化物粒子」という)は、一般式(A):Mn1-x-y-zNixTiyz(OH)2+α(0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、0≦α≦0.5、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子からなり、この二次粒子の平均粒径が1μm〜7μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、微細一次粒子からなる中心部と、この中心部の外側に、この微細一次粒子よりも大きな一次粒子からなる外殻部を有し、外殻部にのみTiが存在することを特徴とする。
(1)組成
ニッケル(Ni)は、二次電池の高電位化および高容量化に寄与する元素である。ニッケルの添加量を示すxの値は、0.20以上0.28以下、好ましくは0.20以上0.26以下、より好ましくは0.20以上0.25以下とする。xの値が0.20未満では、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質を正極として構成した二次電池において、5V級の電圧における電池容量が減少してしまう。一方、xの値が0.28を超えると、スピネル構造単相からなる正極活物質を得ることができなくなる。
チタン(Ti)は、二次電池の充放電中における結晶構造の変化を抑制し、入出力特性の向上に寄与する元素である。チタンの含有量を示すyの値は、0を超えて0.05以下、好ましくは0を超えて0.025以下、より好ましくは0.015以上0.025以下とする。yの値が0.05を超えると、スピネル構造単相からなる正極活物質を得ることができなくなる。なお、本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子では、チタンは、二次粒子の内部の中心部には存在せず、中心部の外側の外殻部にのみ存在する。
また、の複合水酸化物粒子は、上記金属元素に加えて、所定量の添加元素Mを含有させてもよい。このような添加元素Mとしては、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、バリウム(Ba)、ストロンチウム(Sr)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)から選択される少なくとも1種の元素を用いることができる。これらの添加元素Mは、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質を用いて構成される二次電池の用途や要求される性能に応じて適宜選択されるものである。
マンガンに対する添加元素Mの添加量を示すzの値は、0以上0.05以下、好ましく0以上0.025以下、より好ましくは0.015以上0.025以下とする。zの値をこのような範囲に制御することにより、所望の電池特性を確保しつつ、目的とする二次電池に必要な特性を付与することができる。これに対して、zの値が0.05を超えると、Redox反応に寄与する金属元素が減少し、電池容量が低下するばかりでなく、正極抵抗の上昇の原因となる。
(2)粒子構造
本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子は、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子からなるように調整されている。さらに、粒子内部に、微細一次粒子からなる中心部を有し、中心部の外側に、この微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子からなる外殻部を有するように調整されている。このような構造を採ることにより、この複合水酸化物粒子を前駆体として正極活物質を合成する際の焼成工程において、粒子内部へのリチウムの拡散が十分に行われ、リチウムの分布が均一で良好な正極活物質が得られる。
ここで、中心部は、微細一次粒子が連なった隙間の多い構造であるため、より大きく厚みのある板状一次粒子からなる高密度の外殻部と比べると、焼成工程における焼結による収縮が低温から発生する。このため、微細一次粒子は、焼成時に低温から焼結が進行し、粒子の中心部から焼結の進行が遅い外殻部に収縮して中心部に空間が生じる。しかも、低密度の中心部は収縮率が大きいため、この空間は、十分な大きさをもったものとなる。これにより、焼成後に得られる正極活物質が中空構造となり、粒径に対して比表面積を十分に大きくすることができ、出力特性に優れる正極活物質を得ることができる。
なお、複合水酸化物粒子の中心部は、二次粒子を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などによって断面観察が可能な状態とした後、この断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した場合において、白く見える二次粒子の外殻部に対して、内部の灰色ないしは黒色に見える部位を指す(図2参照)。
本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子においては、上述したように、二次粒子は略球状であることが必要とされる。ここで、略球状とは、二次粒子が球状であるばかりでなく、表面に微細な凹凸を有する球状や楕円球状などを含むことを意味する。二次粒子の形状が略球状であれば、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質も略球状とすることができ、高い充填性を備えたものとすることができるため、二次電池の容量特性を向上させることが可能となる。
また、二次粒子は、板状一次粒子がランダムな方向に凝集して二次粒子を形成したものであることが好ましい。板状一次粒子がランダムな方向に凝集することで、一次粒子間にほぼ均一に空隙が生じて、リチウム化合物と混合して焼成する際に、溶融したリチウム化合物が二次粒子内へ行き渡り、リチウムの拡散が十分に行われる。さらには、ランダムな方向に凝集していることで、焼成工程における中心部の収縮も均等に生じることから、正極活物質内部に十分な大きさの空間を形成することができる。
なお、二次粒子の中心部を構成する微細一次粒子は、その形状が制限されることはないが、板状、針状、あるいは、その両者の形状であることが好ましい。微細一次粒子が、これらの形状となることで、中心部は十分に低密度となり、焼成によって大きな収縮を発生させることができる。
(3)外殻部の厚み
本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子において、外殻部の厚み、二次粒子の粒径に対する比率で5%〜47%であることが好ましく、7%〜35%であることがより好ましく、23%〜35%であることがさらに好ましい。上述したように、の複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質は、中空構造を有し、その粒径に対する外殻部の厚みの比率は、複合水酸化物粒子(二次粒子)の粒径に対する外殻部の厚みの比率がほぼ維持される。したがって、二次粒子の粒径に対する外殻部の厚みの比率を、上記範囲とすることで、正極活物質の内部に十分な空間を形成することができる。これに対して、外殻部の厚みの比率が5%未満では、焼成工程における複合水酸化物粒子の収縮が大きく、粒子間の焼結が進行し、正極活物質の粒度分布が悪化する。一方、外殻部の厚みの比率が47%を超えると、正極活物質の内部に十分な大きさの空間を形成することができなくなる。
なお、外殻部の厚みの比率は、次のようにして求めることができる。はじめに、複合水酸化物粒子(二次粒子)を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などによって断面観察が可能な状態とする。次に。この断面をSEMにより観察し、粒子中心の断面が観察可能な粒子を選択して、3箇所以上の任意の位置で外殻部の外周上と中心部の内周上の距離が最短となる2点間の距離を測定して粒子ごとの外殻部の平均厚みを求める。その後、二次粒子の外周上で距離が最大となる任意の2点間の距離を二次粒子の粒径として、外殻部の平均厚みを二次粒子の粒径で除することにより、粒子ごとの外殻部の厚みの比率を求める。最後に、10個以上の二次粒子について求めた粒子ごとの外殻部の厚みの比率を平均することで、上記外殻部の厚みの比率を求めることができる。
(4)平均粒径
本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子では、二次粒子の平均粒径が1μm〜7μm、好ましくは2μm〜7μm、より好ましくは3μm〜7μmに制御されている。なお、二次粒子の平均粒径とは体積平均粒径を意味し、たとえば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
二次粒子の平均粒径がこのような範囲にあれば、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径を所定の範囲(2μm〜8μm)に制御することが可能となり、得られる二次電池の容量特性および出力特性を改善することが可能となる。これに対して、二次粒子の平均粒径が1μm未満では、正極活物質の平均粒径が2μm未満となり、充填性が低下するため、得られる二次電池を高容量のものとすることができなくなる。一方、複合水酸化物粒子の平均粒径が7μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下し、電解液との界面が減少するため、得られる二次電池の正極抵抗が増加し、出力特性の低下を招くこととなる。
また、二次粒子の中心部を構成する微細一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.01μm〜0.3μm、より好ましくは0.01μm〜0.25μm、さらに好ましくは0.02μm〜0.25μmとする。微細一次粒子の平均粒径がこのような範囲にあれば、焼成時に低温域から収縮が開始し、焼成後において、中心部に十分な大きさの空間を有する、中空構造の正極活物質を得ることができる。これに対して、微細一次粒子の平均粒径が0.01μm未満では、一次粒子が微細すぎるため、十分な大きさの中心部が形成されない場合がある。一方、微細一次粒子の平均粒径が0.3μmを超えると、焼成時に低温域から収縮が開始されず、収縮量が不十分になり、焼成後において、中心部に十分な大きさの空間を形成することができなくなる場合がある。
さらに、二次粒子の外殻部を構成する、微細一次粒子よりも大きな一次粒子の平均粒径は、好ましくは0.3μm〜3.0μm、より好ましくは0.5μm〜2.0μm、さらに好ましくは0.5μm〜1.0μmとする。外殻部を構成する一次粒子の平均粒径をこのような範囲に制御することにより、外殻部の一次粒子が収縮を開始する温度を、中心部を構成する微細一次粒子との比較で十分に高温としつつ、得られる正極活物質の結晶性を高いものとすることができる。これに対して、外殻部を構成する一次粒子の平均粒径が0.3μm未満では、焼成時に低温から収縮が開始することとなり、焼成後において、中心部に十分な大きさの空間を形成することができなくなる場合がある。一方、外殻部を構成する一次粒子の平均粒径が3μmを超えると、得られる正極活物質の結晶性を十分なものとするためには焼成温度を高温とすることが必要となり、粒子間の焼結が進行し、正極活物質の平均粒径を所定の範囲に制御することが困難となる。
なお、複合水酸化物粒子の中心部および外殻部を構成する一次粒子の平均粒径は、複合水酸化物粒子(二次粒子)を樹脂などに埋め込み、クロスセクションポリッシャ加工などによって断面観察が可能な状態とした後、この断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察し、中心部を構成する微細一次粒子または外殻部を構成する一次粒子について、それぞれ10個以上の最大径を測定し、その平均値を算出することにより求めることができる。
(5)粒度分布
本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子では、二次粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕を、0.60以下、好ましくは0.59以下、より好ましくは0.58以下に制御することが必要とされる。ここで、d10は、各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の10%となる粒径を、d90は、同様に粒子数を累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の90%となる粒径を意味する。また、平均粒径とは、体積平均粒径を意味する。d10、d90および平均粒径を求める方法は特に制限されないが、たとえば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
本発明の正極活物質の粒度分布は、その前駆体である複合水酸化物粒子の影響を強く受ける。このため、複合水酸化物粒子の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕を上記範囲に制御することにより、正極活物質の粒度分布を狭くすることができ、得られる二次電池の出力特性やサイクル特性を改善することができる。
これに対して、複合水酸化物粒子の〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60を超えると、複合水酸化物粒子の粒度分布が広くなり、これを前駆体とする正極活物質に、粒径が2μm未満の微細二次粒子や8μmを超える粗大二次粒子が多く含まれるようになる。微細二次粒子が多く含まれる正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、微細二次粒子の局所的な反応に起因して発熱量が増大するとともに、この微細二次粒子が選択的に劣化することに起因してサイクル特性が悪化する。また、粗大二次粒子が多く含まれる正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、電解液と正極活物質との反応面積を十分に確保することができず、正極抵抗の増加により、出力特性が低下する。
2.マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の製造方法
続いて、本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子の製造方法について説明する。この複合水酸化物粒子の製造方法は、少なくともマンガンとニッケルを含有し、かつ、チタンを含有しない水溶液(以下、「混合水溶液1」という)と、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを混合し、液温25℃基準におけるpH値が12.0〜14.0となるように制御して、酸化性雰囲気下で、核生成を行う核生成工程と、核生成工程で生成された核を含む水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が10.5〜12.0となるように制御して、該核を成長させる粒子成長工程とを備える。特に、の複合水酸化物粒子の製造方法は、粒子成長工程の開始時から、好ましくは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、酸化性雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り換えるとともに、混合水溶液1を、少なくともマンガンとニッケルとチタンを含有する水溶液(以下、「混合水溶液2」という)に切り換えることにより、上述した複合水酸化物粒子を得ることを特徴とする。
すなわち、特開2012−246199号公報に記載の技術で、チタンを含有するマンガンニッケル複合水酸化物粒子を得ようとする場合、晶析反応の初期、特に核生成工程の段階において、反応水溶液中にチタンが存在すると、得られる複合水酸化粒子の中心部と外殻部に密度差を形成することができず、これを前駆体とする正極活物質を中空構造とすることができない。
これに対して、本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子の製造方法では、核生成工程、好ましくは、核生成工程および粒子成長工程の初期段階において、チタンを含有しない混合水溶液1を用いることにより低密度の中心部を形成するとともに、粒子成長工程の開始時から、好ましくは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して特定の範囲で、酸化性雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り換えるとともに、混合水溶液1を、チタンを含有する混合水溶液2に切り換えて粒成長を継続することにより、低密度の中心部の外側に、チタンを含有する高密度の外殻部を形成することを可能としている。
このような複合水酸化物粒子の製造方法によれば、粒度分布が狭く、適度に粒径が小さく、かつ、中空構造を有するという粒子性状を維持しつつ、チタン添加による効果を得ることができるため、この複合水酸化物粒子を用いて最終的に得られる二次電池の容量特性や安全性を損なうことなく、その出力特性を大幅に向上させることが可能となる。
以下、本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子の製造方法について詳細に説明するが、上述したように、この複合水酸化物粒子の製造方法は、特開2012−246199号公報に記載の技術をベースとしているため、以下では、この複合水酸化物粒子の製造方法の特徴部分ないしは特開2012−246199号公報に記載の技術との相違点を中心に説明する。
(1)晶析反応
(1−a)核生成工程
核生成工程では、はじめに、少なくともマンガンおよびニッケンを含有し、かつ、チタンを含有しない混合水溶液1を作製する。本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子に含まれる各金属元素の組成比は、混合水溶液1および混合水溶液2に含まれる金属元素の原子数の合計に対する、各金属元素の原子数の比率と概ね同様となる。したがって、混合水溶液1中における各金属元素の組成比は、チタンを除き、目的とする複合水酸化物粒子の組成比と同一となるように調製する必要がある。
次に、反応槽内に、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液と、水を供給し、これらを混合することにより、反応前水溶液を形成する。この際、各水溶液の供給量を調整して、反応前水溶液のpH値を、液温25℃基準で12.0〜14.0に調整するとともに、アンモニウムイオン濃度を3g/L〜25g/Lに調整する。また、反応前水溶液の温度を20℃〜60℃に調整するとともに、反応槽内の雰囲気を酸化性雰囲気とする。なお、反応前水溶液のpH値、アンモニウムイオン濃度および温度は、それぞれ一般的なpH値、イオンメータ、温度計によって測定することができる。
反応前水溶液のpH値、アンモニウムイオン濃度、温度および雰囲気が、上記範囲に調整されたことを確認した後、この反応前水溶液を撹拌しながら、混合水溶液1を供給する。これにより、反応槽内に反応前水溶液と混合水溶液1とが混合した反応水溶液が形成され、この反応水溶液中に、複合水酸化物粒子の中心部を構成する、マンガンニッケル複合水酸化物粒子からなる微細な核(微細一次粒子)が析出する。なお、反応水溶液のpH値およびアンモニウムイオン濃度は、核生成に伴って変化するため、反応水溶液には、混合水溶液1とともに、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給して、pH値およびアンモニウムイオン濃度が上記範囲に維持されるように制御することが必要である。
核生成工程において析出させる核の量は、特に制限されるものではないが、粒度分布の良好な複合水酸化物粒子を得るためには、核生成工程および粒子成長工程で供給する金属化合物の全質量に対して、0.1質量%〜2質量%とすることが好ましく、0.1質量%〜1.5質量%とすることがより好ましい。
なお、核生成工程は、反応水溶液中に所定量の核が生成された時点で終了する。この際、核の生成量は、反応水溶液に供給した金属化合物の量によって判断することができる。
(1−b)粒子成長工程
粒子成長工程では、はじめに、核生成工程終了後の反応水溶液に硫酸などの酸性水溶液を供給し、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0となるように調整する。反応水溶液のpH値をこのような範囲に調整および維持することにより、反応水溶液中における新たな核生成を抑制し、粒成長を優先して起こさせることができる。
同時に、少なくともマンガン、ニッケルおよびチタンを含有する混合水溶液2を作製する。上述したように、本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子に含まれる各金属元素の組成比は、チタンを含めて、混合水溶液1および混合水溶液2に含まれる金属元素の原子数の合計に対する、各金属元素の原子数の比率と概ね同様となる。したがって、混合水溶液2中のチタン量を、目的とする複合水酸化物粒子におけるチタン量と、混合水溶液1と混合水溶液2の合計量に対する混合水溶液2の量の比率を考慮して決定するとともに、混合水溶液1と同様に、混合水溶液2中における各金属元素の組成比は、チタンを除き、目的とする複合水酸化物粒子の組成比と同様とする必要がある。
粒子成長工程の開始時から、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行う場合、反応水溶液のpH値を切り換えた後、反応槽内の雰囲気を、弱酸性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に置換することが必要となる。具体的には、反応槽内に窒素などの不活性ガスを導入し、反応槽内の酸素濃度を1容量%以下に調整する。
続いて、反応水溶液に混合水溶液2の供給を開始し、目的とする粒径(平均粒径で1μm〜7μm)となるまで、混合水溶液2の供給を継続して、複合水酸化物粒子を粒成長させる。この際、反応水溶液に、混合水溶液2とともに、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給し、反応水溶液のpH値が液温25℃基準で10.5〜12.0の範囲となるように、および、アンモニウムイオン濃度が3g/L〜25g/Lの範囲に維持されるように制御することが必要である。
なお、この複合水酸化物粒子の製造方法においては、粒子成長工程の初期段階、具体的には、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、反応雰囲気および混合水溶液を切り換えることが好ましい。核生成工程の終了時点において、生成した核はある程度凝集しており、反応水溶液のpH値の切り換えにより、この核が粒成長を開始し、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行う時点では、目的とする複合水酸化物粒子の中心部としてある程度適切な大きさとなっているが、粒子成長工程の初期段階において、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行う前に、反応水溶液のpH値のみを切り換えて、所定時間だけ核を粒成長させることにより、得られる複合水酸化物粒子において、最適な大きさの中心部を形成することが可能となる。
この場合、マンガンニッケル複合水酸化物粒子が、目的とする複合水酸化物粒子の中心部として十分な大きさまで成長した時点で、混合水溶液1、アルカリ水溶液およびアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給を一旦停止する。各水溶液の供給停止後、反応槽内の雰囲気を、弱酸性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に置換した状態で、反応水溶液に混合水溶液2の供給を開始する。
なお、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、好ましくは20%以下の範囲で、さらに好ましくは10%以下の範囲で行う必要がある。反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体に対して30%を超えた範囲で行うと、得られる複合水酸化物粒子の外殻部を十分な厚みとすることができない。
粒子成長工程は、複合水酸化物粒子の粒径が目的とする粒径に達した時点で、各水溶液の供給を停止することにより終了する。粒成長工程の各段階におけるマンガンニッケル複合水酸化物粒子またはマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の粒径は、予め、核生成工程と粒子成長工程における反応水溶液への金属化合物の添加量と得られる粒子の大きさとの関係を求めておくことで、金属化合物の添加量から容易に判断することができる。
このようにして得られた複合水酸化物粒子を、固液分離し、残留するアルカリカチオンなどの不純物を洗浄した後、100℃以上の温度で乾燥することにより、粉末状の複合水酸化物粒子を得ることができる。
の複合水酸化物粒子の製造方法では、粒子成長工程の開始時に、好ましくは、粒子成長工程の途中で、反応雰囲気および混合水溶液を切り替えることにより、晶析反応により得られる複合水酸化物粒子、すなわち、チタンを含有するマンガンニッケル複合水酸化物粒子を、微細一次粒子からなる低密度の中心部と、この微細一次粒子よりも大きな一次粒子からなる外殻部とを備えた構造とすることができる。
(2)供給水溶液
次に、複合水酸化物粒子の原料となる混合水溶液、pH制御のためのアルカリ水溶液およびアンモニウムイオン濃度を制御するためのアンモニウムイオン供給体を含む水溶液について説明する。
(2−a)混合水溶液
混合水溶液1を作製するためのマンガン化合物およびニッケル化合物、ならびに、混合水溶液2を作製するためのマンガン化合物、ニッケル化合物およびチタン化合物は、特に制限されることはないが、取扱いの容易性から、水溶性の硝酸塩、硫酸塩および塩酸塩などを用いることができる。特に、コストやハロゲンの混入を防止する観点から硫酸塩、具体的には、硫酸マンガン、硫酸ニッケルおよび硫酸チタンを用いることが好ましい。
また、複合水酸化物粒子中に添加元素M(Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選ばれる少なくとも1種の元素)を含有させる場合、添加元素Mを供給するための化合物としては、同様に水溶性の化合物が好ましく、たとえば、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸ストロンチウム、硫酸チタン、ペルオキソチタン酸アンモニウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸バナジウム、バナジン酸アンモニウム、硫酸鉄、硫酸クロム、クロム酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸銅、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、シュウ酸ニオブ、モリブデン酸アンモニウム、タングステン酸ナトリウム、タングステン酸アンモニウムなどを好適に用いることができる。
混合水溶液の濃度は、混合水溶液1および混合水溶液2のいずれの場合においても、混合水溶液に含まれる金属化合物の合計で、好ましくは1mol/L〜2.6mol/L、より好ましくは1mol/L〜2.3mol/Lとする。混合水溶液の濃度が1mol/L未満では、反応槽当たりの晶析物量が少なくなるため、生産性が低下する。一方、混合水溶液の濃度が2.6mol/Lを超えると、反応温度が低下した際に、飽和濃度を超え、各金属化合物の結晶が再析出して、配管などを詰まらせるおそれがある。
なお、上述したマンガン化合物、ニッケル化合物、チタン化合物および添加元素Mの化合物は、必ずしも混合水溶液1または混合水溶液2として反応槽に供給しなくてもよい。たとえば、混合すると反応して目的とする化合物以外の化合物が生成されてしまう金属化合物を用いて晶析反応を行う場合、全金属化合物水溶液の合計の濃度が上記範囲となるように、個別に金属化合物水溶液を調製して、個々の金属化合物の水溶液として、所定の割合で反応槽内に供給してもよい。
また、混合水溶液1および混合水溶液2の供給量は、晶析反応終了時点で、反応水溶液中の生成物の濃度が、好ましくは30g/L〜200g/L、より好ましくは50g/L〜150g/Lとなるようにする。生成物の濃度が30g/L未満では、一次粒子の凝集が不十分になる場合がある。一方、200g/Lを超えると、反応水溶液に供給する混合水溶液1または混合水溶液2が十分に拡散せず、粒成長に偏りが生じる場合がある。
(2−b)アルカリ水溶液
アルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、20質量%〜50質量%とすることが好ましく、20質量%〜30質量%とすることがより好ましい。アルカリ金属水溶液の濃度をこのような範囲に規制することにより、反応系に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができるため、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を効率的に得ることができる。
なお、アルカリ水溶液の供給方法は、反応水溶液のpH値が局所的に高くならず、かつ、所定の範囲に維持される限り、特に制限されることはなく、たとえば、反応水溶液を十分に撹拌しながら、定量ポンプなどの流量制御が可能なポンプにより供給すればよい。
(2−c)アンモニウムイオン供給体を含む水溶液
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に制限されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくはフッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
アンモニウムイオン供給体として、アンモニア水を使用する場合、その濃度は、好ましくは20質量%〜30質量%、より好ましくは22質量%〜28質量%とする。アンモニア水の濃度をこのような範囲に規制することにより、揮発などによるアンモニアの損失を最小限に抑制することができるため、生産効率の向上を図ることができる。
なお、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液の供給方法も、アルカリ水溶液と同様に、流量制御が可能なポンプにより供給することができる。
(3)反応条件
(3−a)pH値
本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子の製造方法においては、液温25℃基準におけるpH値を、核生成工程においては12.0〜14.0の範囲に、粒子成長工程においては10.5〜12.0の範囲に制御することが必要となる。なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内とすることが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合、核生成量と粒成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得ることができなくなる場合がある。
[核生成工程]
核生成工程においては、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で12.0〜14.0、好ましくは12.3〜14.0、より好ましくは12.3〜13.5の範囲に制御する。pH値が12.0未満では、核生成とともに、核の成長(粒成長)が進むため、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。一方、pH値が14.0を超えると、生成する核が微細になりすぎるため、反応水溶液がゲル化するという問題が生じる。
[粒子成長工程]
粒子成長工程においては、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5〜12.0、好ましくは10.7〜12.0、より好ましくは10.7〜11.8の範囲に制御する。粒子成長工程におけるpH値をこのような範囲に制御することにより、新たな核の生成が抑制され、粒成長が優先的に進行するため、得られる複合水酸化物粒子を均質で、粒度分布が狭いものとすることができる。これに対して、pH値が10.5未満では、アンモニウムイオン濃度が上昇し、金属イオンの溶解度が高くなるため、晶析反応の速度が遅くなるばかりでなく、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、生産性が悪化する。一方、pH値が12.0を超えると、粒子成長工程における核生成量が増加し、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。
なお、pH値が12.0の場合は、核生成と核成長の境界条件であるため、反応水溶液中に存在する核の有無により、核生成工程または粒子成長工程のいずれかの条件とすることができる。すなわち、核生成工程のpH値を12.0より高くして多量に核生成させた後、粒子成長工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に多量の核が存在するため、粒成長が優先して起こり、粒径分布が狭い複合水酸化物粒子を得ることができる。一方、核生成工程のpH値を12.0とすると、反応水溶液中に成長する核が存在しないため、核生成が優先して起こり、粒子成長工程のpH値を12.0より小さくすることで、生成した核が成長して良好な複合水酸化物粒子を得ることができる。
(3−b)反応雰囲気
本発明の正極活物質の前駆体である複合水酸化物粒子の構造は、核生成工程および粒子成長工程における反応雰囲気の制御によって規制される。具体的には、核生成工程では、好ましくは、核生成工程および粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体の30%以下の範囲では、反応雰囲気を酸化性雰囲気とすることによって、微細一次粒子を析出させ、粒子成長工程においては低密度の中心部が形成される。これに対して、粒子成長工程における反応雰囲気の切り換え後においては、反応雰囲気を弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に制御することによって、前述した微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子を析出させ、これにより、中心部の外側に高密度の外殻部を形成する。
このように、反応雰囲気の変化により、析出する一次粒子の大きさが異なる理由は、反応雰囲気内の酸素濃度に応じて金属元素の価数が変化するためと考えられる。したがって、の複合水酸化物粒子の製造方法においては、各工程における反応雰囲気を適切に制御することが重要となる。
[酸化性雰囲気]
核生成工程では、好ましくは、核生成工程および粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体の30%以下の範囲では、反応雰囲気を酸化性雰囲気、すなわち、酸素濃度が1容量%を超える雰囲気とすることが必要である。特に、雰囲気制御が容易な大気雰囲気とすることが好ましい。このような反応雰囲気では、析出する微細一次粒子の平均粒径が0.01μm〜0.3μmとなるため、この微細一次粒子が凝集することによって形成される二次粒子からなる中心部を十分に低密度なものとすることができる。これに対して、酸素濃度が1容量%以下では、一次粒子が粗大化し、平均粒径が3μmを超えてしまうおそれがある。
なお、酸素濃度の上限は、特に制限されることはないが、30容量%程度とすることが好ましい。酸素濃度が30容量%を超えると、一次粒子が微細になりすぎたり、一次粒子の凝集が抑制され、二次粒子を形成することができなくなったりする場合がある。
[弱酸化性雰囲気〜非酸化性雰囲気]
粒子成長工程の開始時(反応水溶液のpH値の切り換え後)から、好ましくは、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体の30%を超えた範囲では、反応雰囲気を、弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気とする。具体的には、反応雰囲気を、1容量%以下、好ましくは0.5容量%以下、より好ましくは0.2容量%以下の酸素と、窒素やアルゴンなどの不活性ガスとの混合雰囲気に制御することが必要となる。このような反応雰囲気では、析出する一次粒子の平均粒径が0.3μm〜3μmとなるため、前述した中心部の外側に、高密度の外殻部を形成することができる。
なお、反応雰囲気を、酸化性雰囲気から弱酸性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り替え、維持するための手段としては、微細一次粒子からなる中心部が十分な大きさまで成長した後、反応槽内に不活性ガスを導入し、好ましくは反応水溶液を不活性ガスによってバブリングする手段を挙げることができる。
(3−c)アンモニウムイオン濃度
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、好ましくは3g/L〜25g/L、より好ましくは5g/L〜25g/L、さらに好ましくは5g/L〜15g/Lの範囲内で一定値に保持する。
反応水溶液中においてアンモニウムイオンは錯化剤として機能するため、アンモニウムイオン濃度が3g/L未満では、金属イオンの溶解度を一定に保持することができず、また、反応水溶液がゲル化しやすくなり、形状や粒径の整った複合水酸化物粒子を得ることが困難となる。一方、アンモニウムイオン濃度が25g/Lを超えると、金属イオンの溶解度が大きくなりすぎるため、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、組成ずれなどの原因となる。
なお、晶析反応中にアンモニウムイオン濃度が変動すると、金属イオンの溶解度が変動し、均一な複合水酸化物粒子が形成されなくなる。このため、核生成工程と粒子成長工程を通じて、アンモニウムイオン濃度の変動幅を一定の範囲に制御することが好ましく、具体的には、±5g/Lの変動幅に制御することが好ましい。
(3−d)反応温度
反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程と粒子成長工程を通じて、好ましくは20℃以上、より好ましくは20℃〜60℃の範囲に制御することが必要となる。反応温度が20℃未満の場合、反応水溶液の溶解度が低くなることに起因して、核生成が起こりやすくなり、得られる複合水酸化物粒子の平均粒径や粒度分布の制御が困難となる。なお、反応温度の上限は、特に制限されることはないが、60℃を超えると、アンモニアの揮発が促進され、反応水溶液中のアンモニウムイオンを一定範囲に制御するために供給するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の量が増加し、生産コストが増加してしまう。
(3−e)複合水酸化物粒子の粒径制御
複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程の時間により制御できるので、所望の粒径に達するまで粒子成長工程を継続すれば、所望の粒径を有する複合水酸化物粒子を得ることができる。
また、複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程のみならず、核生成工程のpH値と核生成のために投入した金属化合物の量によっても制御することができる。すなわち、核生成時のpH値を高pH値側とすることにより、または、核生成時間を長くすることにより、投入する金属化合物量を増やし、生成する核の数を多くすれば、粒子成長工程を同条件で行った場合でも、得られる複合水酸化物粒子の粒径を小さくすることができる。一方、生成する核の数が少なくなるように、pH値や核生成時間を制御すれば、得られる複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
3.非水系電解質二次電池用正極活物質
本発明の正極活物質は、一般式(B):LitMn2(1-x-y-z)Ni2xTi2y2z4(0.96≦t≦1.20、0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、スピネル構造を有する立方晶系のリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子(以下、「リチウム複合酸化物粒子」という)からなり、平均粒径が2μm〜8μmであり、粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.70以下であり、粒子内部の中空部と、該中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えることを特徴とする。
(1)組成
リチウム(Li)の含有量を示すtの値は、0.96以上1.20以下、好ましく0.98以上1.20以下、より好ましくは1.00以上1.20以下とする。tの値を上記範囲に規制することにより、この正極活物質を正極として構成される二次電池の出力特性および容量特性を向上させることができる。これに対して、tの値が0.96未満では、二次電池の正極抵抗が大きくなるため、出力特性を向上させることができない。一方、tの値が1.20を超えると、初期放電容量が低下する。
なお、本発明の正極活物質においては、一般式(B)における、xの値、yの値およびzの値の範囲ならびにその臨界的意義は、上述した一般式(A)における各値の範囲ならびにその臨界的意義と同様であるため、ここでの説明は省略する。
(2)粒子構造
本発明の正極活物質は、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備える。このような中空構造を備えることにより、電解液との反応面積を大きくすることができ、かつ、殻部の一次粒子間の粒界または空隙を介して中空部に電解液が浸入し、粒子外殻部の反応界面のみならず、粒子内部の反応界面を通じてリチウムの脱離および挿入を行うことが可能となるため、リチウムイオンや電子の移動が促進され、出力特性を大幅に向上させることができる。
(3)外殻部の厚み
本発明の正極活物質においては、外殻部の厚みが、粒径に対する比率で5%〜35%であることが好ましく、10%〜35%であることがより好ましい。外殻部の厚みが5%未満では、中空部が大きくなりすぎるため、反応界面の減少により正極抵抗が高くなり、出力特性が低下するばかりでなく、粒子強度が低下するため、二次電池の正極を構成する際に、粒子が破壊され、微粉が発生するおそれがある。一方、外殻部の厚みが35%を超えると、電解液が中空部に浸入可能な、外殻部の一次粒子間の粒界または空隙が減少し、十分な反応界面を確保することができなくなるため、正極抵抗が上昇し、出力特性が低下してしまう。なお、正極活物質の外殻部の厚みは、上述した複合水酸化物粒子の外殻部の厚みと同様の方法により求めることができる。
(4)平均粒径
本発明の正極活物質の平均粒径は2μm〜8μm、好ましくは3μm〜8μm、より好ましくは3μm〜6μmとする。なお、正極活物質の平均粒径とは、正極活物質を構成する二次粒子の体積平均粒径を意味し、たとえば、レーザー光回折散乱式粒度分析計で測定した体積積算値から求めることができる。
正極活物質の平均粒径がこのような範囲にあれば、この正極活物質を用いた二次電池の容量特性や出力特性を向上させることが可能となる。これに対して、平均粒径が2μm未満では、正極活物質の充填性が低下するため、二次電池の容量特性を改善することができない。一方、平均粒径が8μmを超えると、正極活物質の比表面積が低下することに起因して、電解液との反応面積が減少し、正極抵抗が上昇してしまう。
(5)粒度分布
本発明の正極活物質において、粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕は、0.70以下、好ましくは0.69以下、より好ましくは0.68以下に制御することが必要となる。なお、d10、d90および平均粒径は、複合水酸化物粒子におけるd10、d90および平均粒径と同様の方法により求めることができる。
正極活物質の粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕の値を上記範囲に制御することにより、この正極活物質中の微細二次粒子や粗大二次粒子の割合を少なくすることができ、この正極活物質を正極に用いた二次電池の出力特性、サイクル特性および安全性を改善することができる。これに対して、〔(d90−d10)/平均粒径〕の値が0.70を超えると、正極活物質中における微細二次粒子および粗大二次粒子の割合が増加することとなる。微細二次粒子が多く含まれる正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、微細二次粒子の局所的な反応に起因して発熱量が増大するとともに、この微細二次粒子が選択的に劣化することに起因してサイクル特性が悪化する。また、粗大二次粒子が多く含まれる正極活物質を用いて二次電池を構成した場合、電解液と正極活物質との反応面積を十分に確保することができず、正極抵抗の増加により、出力特性が低下する。
(6)比表面積
本発明の正極活物質の比表面積は、0.5m2/g〜3.0m2/gであることが好ましく、0.5m2/g〜2.5m2/gであることがより好ましい。なお、正極活物質の比表面積は、窒素ガス吸着によるBET法により測定することができる。正極活物質の比表面積が0.5m2/g未満では、二次電池を構成した場合において、電解液との反応面積を十分に確保することができず、出力特性を向上させることができない場合がある。一方、正極活物質の比表面積が3.0m2/gを超えると、電解液との副反応によって被膜が形成され、抵抗が増加する場合がある。
4.非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法
本発明の正極活物質の製造方法は、上述の複合水酸化物粒子にリチウムを混合し、リチウム混合物とした後(混合工程)、これを所定条件の下で焼成することにより(焼成工程)、上述した正極活物質を得ることを特徴とする。なお、本発明の正極活物質の製造方法では、混合工程および焼成工程のほかに、必要に応じて、焼成工程前にリチウム混合物を仮焼する工程(仮焼工程)、焼成後のリチウム複合酸化物粒子を解砕する工程(解砕工程)および/またはリチウム複合酸化物粒子をアニール処理する工程(アニール処理工程)などを行ってもよい。以下、工程ごとに詳細に説明する。
(1)混合工程
混合工程は、上述した複合水酸化物粒子に、リチウム以外の金属(Mn、Ni、Tiおよび添加元素M)の原子数の合計(Me)に対する、リチウムの原子数(Li)の比(Li/Me)が0.48〜0.60、好ましくは0.49〜0.60、より好ましくは0.50〜0.60となるように、リチウム化合物を混合し、リチウム混合物を得る工程である。すなわち、焼成工程前後でLi/Meは変化せず、この混合工程におけるLi/Meが、リチウム複合酸化物粒子におけるLi/Meとなるので、リチウム混合物におけるLi/Meが、得ようとするリチウム複合酸化物粒子のLi/Meと同じになるように、複合水酸化物粒子にリチウム化合物を混合することが必要となる。
複合水酸化物粒子に混合するリチウム化合物としては、特に制限されることはなく、たとえば、水酸化リチウム、硝酸リチウムもしくは炭酸リチウムまたはこれらの混合物を使用することができる。特に、取扱いの容易さや品質の安定性を考慮すると、炭酸リチウムを用いることが好ましい。
複合水酸化物粒子とリチウム化合物は、焼成前に、微粉が生じない程度に十分に混合しておくことが好ましい。混合が不十分であると、個々の粒子間でLi/Meにばらつきが生じ、十分な電池特性を得ることができない。なお、混合には、一般的な混合機を使用することができる。たとえば、シェーカーミキサやレーディゲミキサ、ジュリアミキサ、Vブレンダなどを用いることができる。
(2)仮焼工程
リチウム化合物として水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合、リチウム混合物を後述する焼成温度で焼成する前に、焼成温度よりも低く、かつ、350℃〜750℃の温度で1時間〜10時間程度保持して、仮焼することが好ましい。すなわち、水酸化リチウムや炭酸リチウムの融点近傍または反応温度近傍で一定時間保持することにより、複合水酸化物粒子中へのリチウムの拡散を促進することが好ましく、これによって、得られるリチウム複合酸化物粒子の組成をより均一なものとすることができる。
なお、仮焼温度は、焼成温度よりも低く、かつ、400℃〜700℃とすることがより好ましく、この温度での保持時間は5時間以下とすることがより好ましい。
(3)焼成工程
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を、所定温度で焼成する工程である。なお、焼成工程で使用する炉は、後述する雰囲気でリチウム混合物を焼成することができる限り、特に制限されることなく、バッチ式または連続式のいずれの炉も用いることができるが、ガス発生のない電気炉を使用することが好ましい。
焼成雰囲気は酸化性雰囲気とするが、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気、すなわち、大気〜酸素気流中で行うことが好ましく、コスト面を考慮すると、空気気流中で行うことがより好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、酸化反応が十分に進行せず、リチウム複合酸化物粒子の結晶性が十分なものとならない場合がある。
また、焼成温度は、850℃を超えて950℃未満、好ましくは860℃以上940℃以下、より好ましくは875℃以上925℃以下とする。焼成温度が850℃以下では、得られる正極活物質の比表面積が大きくなりすぎるため、二次電池内で、正極活物質と電解液との間で生じる副反応により被膜が形成され、正極抵抗が増加する。一方、焼成温度が950℃以上では、複合水酸化物粒子間またはリチウム複合酸化物粒子間での焼結が進行することに起因して、中空構造が消失してしまう。このようなリチウム複合酸化物粒子は、比表面積が低下するため、これを正極活物質として二次電池を構成した場合に正極抵抗が増加し、出力特性が低下する。
上記焼成温度における保持時間(焼成時間)は、3時間以上とすることが好ましく、5時間〜24時間とすることがより好ましい。焼成時間が3時間未満では、複合水酸化物粒子とリチウム化合物とを十分に反応させることができない場合がある。一方、24時間を超えてもそれ以上の効果を得ることができないばかりか、生産性の悪化を招く。
(4)解砕工程
焼成後のリチウム複合酸化物粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。この場合、リチウム複合酸化物粒子の凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これにより、リチウム複合酸化物粒子を適度な粒径を有する粉体として取り扱うことができるため、正極活物質として用いた場合の充填性をより向上させることができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく二次粒子を分離させて、凝集体をほぐす操作のことである。
解砕の方法としては、公知の手段を用いることができ、たとえば、ピンミルやハンマーミルなどを使用することができる。なお、この際、二次粒子を破壊しないように解砕力を適切な範囲に調整することが好ましい。
(5)アニール処理工程
本発明の正極活物質の製造方法では、焼成工程後または解砕工程後のリチウム複合酸化物粒子を、さらに酸化性雰囲気下、500℃〜800℃で、5時間〜40時間焼成するアニール処理をすることが好ましい。このように、焼成工程後に、焼成温度よりも低温域でアニール処理することにより、高温域の焼成で生成したリチウム複合酸化物粒子中の酸素欠陥を回復させ、その結晶性を高めることができる。
アニール処理工程における雰囲気は酸化性雰囲気とするが、焼成工程における雰囲気と同様に、酸素濃度が18容量%〜100容量%の雰囲気、すなわち、大気〜酸素気流中で行うことが好ましく、コスト面を考慮すると、空気気流中で行うことがより好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、酸化反応が十分に進行せず、リチウム複合酸化物粒子中の酸素欠陥が十分に回復しない場合がある。
また、アニール処理工程における焼成温度(アニール処理温度)は、上述した焼成温度よりも低温とし、具体的には、500℃〜800℃、好ましくは600℃〜800℃、より好ましくは650℃〜750℃とすることが必要となる。アニール処理温度が500℃未満では、酸素欠陥を十分に回復することができない。一方、アニール処理温度が800℃を超えると、リチウム複合酸化物粒子中に、さらに酸素欠陥が生成し、結晶性が悪化する。
上記アニール処理温度での保持時間(アニール処理時間)は、5時間〜40時間、好ましくは10時間〜40時間、より好ましくは20時間〜40時間とする。アニール処理時間が5時間未満では、酸素欠陥を十分に回復することができない。一方、アニール処理時間が40時間を超えても、それ以上の効果が得られないばかりか、生産性が悪化する。
5.非水系電解質二次電池
本発明の非水系電解質二次電池は、正極、負極、セパレータおよび非水系電解液などからなり、一般の非水系電解質二次電池と同様の構成要素により構成される。なお、以下に説明する実施形態は例示に過ぎず、本発明の非水系電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態をもとに、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。また、本発明の非水系電解質二次電池は、その用途を特に制限するものではない。
(1)正極
本発明の非水系電解質二次電池用正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにして、非水系電解質二次電池の正極を作製する。
まず、粉末状の正極活物質、導電材および結着剤を混合し、さらに必要に応じて活性炭や、粘度調整などの目的の溶剤を添加し、これを混練して正極合材ペーストを作製する。正極合材ペースト中のそれぞれの混合比は、二次電池の用途や要求される性能に応じて適宜選択されるものであり、特に制限されるものではないが、溶剤を除いた正極合材の固形分を100質量部とした場合、一般の非水系電解質二次電池の正極と同様、正極活物質の含有量を60質量部〜95質量部とし、導電材の含有量を1質量部〜20質量部とし、結着剤の含有量を1質量部〜20質量部とすることが望ましい。
得られた正極合材ペーストを、たとえば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し、乾燥して、溶剤を飛散させる。必要に応じ、電極密度を高めるべく、ロールプレスなどにより加圧することもある。このようにして、シート状の正極を作製することができる。シート状の正極は、目的とする電池に応じて適当な大きさに裁断などをして、電池の作製に供することができる。ただし、正極の作製方法は、上述した例示のものに限られることなく、他の方法によってもよい。
正極の作製にあたって、導電材としては、たとえば、黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛および膨張黒鉛など)や、アセチレンブラックやケッチェンブラック(登録商標)などのカーボンブラック系材料を用いることができる。
結着剤は、活物質粒子をつなぎ止める役割を果たすもので、たとえば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂およびポリアクリル酸を用いることができる。
必要に応じて、正極活物質、導電材および活性炭を分散させ、結着剤を溶解する溶剤を正極合材に添加する。溶剤としては、具体的には、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。また、正極合材には、電気二重層容量を増加させるために、活性炭を添加することができる。
(2)負極
負極には、金属リチウムやリチウム合金など、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
負極活物質としては、たとえば、天然黒鉛、人造黒鉛およびフェノール樹脂などの有機化合物焼成体、およびコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。この場合、負極結着剤としては、正極同様、PVDFなどの含フッ素樹脂を用いることができ、これらの活物質および結着剤を分散させる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
(3)セパレータ
正極と負極との間には、セパレータを挟み込んで配置する。セパレータは、正極と負極とを分離し、電解質を保持するものであり、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微少な孔を多数有する膜を用いることができる。
(4)非水系電解液
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート、また、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート、さらに、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物、エチルメチルスルホン、ブタンスルトンなどの硫黄化合物、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチルなどのリン化合物等から選ばれる1種を単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
支持塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiN(CF3SO22、およびそれらの複合塩などを用いることができる。
さらに、非水系電解液は、電池特性を改善するために、ラジカル捕捉剤、界面活性剤および難燃剤などを含んでいてもよい。
(5)電池の形状、構成
以上のように説明してきた正極、負極、セパレータおよび非水系電解液で構成される本発明の非水系電解質二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極を、セパレータを介して積層させて電極体とし、得られた電極体に非水系電解液を含浸させ、正極集電体と外部に通ずる正極端子との間、および、負極集電体と外部に通ずる負極端子との間を、集電用リードなどを用いて接続し、電池ケースに密閉して、非水系電解質二次電池を完成させる。
(6)特性
本発明の正極活物質を用いた非水系電解質二次電池は、高い作動電位を有しながらも、高容量で、出力特性に優れる。具体的には、本発明の正極活物質を正極に用いて、2032型コイン電池を構成し、電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧5.0Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電した場合に、130mAh/g以上、好ましくは135mAh/g以上の初期放電容量が得られる。また、この2032型コイン電池の正極抵抗を22Ω以下、好ましくは21Ω以下とすることができる。
(7)非水系電解質二次電池の用途
本発明の非水系電解質二次電池は、上記特性を有するため、常に高容量を要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや携帯電話端末など)の電源に好適である。また、本発明の非水系電解質二次電池は小型化、高出力化が可能であることから、搭載スペースに制約を受ける電気自動車用電源としても好適である。なお、本発明の非水系電解質二次電池は、純粋に電気エネルギのみで駆動する電気自動車用の電源のみならず、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの燃焼機関と併用する、いわゆるハイブリッド車用の電源としても用いることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明する。
(実施例1)
[複合水酸化物粒子の製造]
(1)核生成工程
はじめに、反応槽(5L)内に、水を半分の量まで入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。このとき、反応槽内を大気雰囲気とした。この反応槽内の水に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量加えて、反応槽内のpH値が、液温25℃基準で13.0、アンモニウムイオン濃度が5g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を調製した。また、硫酸マンガンと硫酸ニッケルの水和物を、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=2.90:1.00となるように純水に溶かして、1.85mol/Lの混合水溶液1を調整した。同時に、硫酸マンガンと硫酸ニッケルの水和物と、硫酸チタンを、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.105となるように純水に溶かして1.90mol/Lの混合水溶液2を調整した。
次に、反応槽内に、10mL/minで混合水溶液1を供給するとともに、一定速度で、25質量%アンモニア水と25質量%水酸化ナトリウム水溶液を供給することで、反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で13.0に、アンモニウムイオン濃度を5g/Lに維持した。この状態で1分間の晶析を行うことで、マンガンニッケル複合水酸化物粒子の核生成を行った。
なお、核生成工程では、反応水溶液のpH値を反応槽に設置したpHコントローラにより測定し、設定値に対して±0.2の範囲に制御した。この点については、粒子成長工程も同様である。
(3)粒子成長工程
核生成工程の終了後、混合水溶液1、アンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液の供給を停止するとともに、反応水溶液中に硫酸を加えて、この反応水溶液のpH値を、液温25℃基準で11.6となるように調整した。
この状態で、混合水溶液1の供給を再開するとともに、反応水溶液のpH値が、液温25℃基準で11.6に、アンモニウムイオン濃度が5g/Lに維持されるようにアンモニア水および水酸化ナトリウム水溶液の供給をし、15分間の晶析を行った。
この時点で、一旦、全ての水溶液の供給を停止するとともに、反応槽内に、窒素ガスを5L/minで流通させ、酸素濃度が0.2容量%以下となるように調整した。
その後、混合水溶液1に代えて、チタンを含有する混合水溶液2の供給を開始するとともに、反応水溶液のpH値が液温25℃基準で11.6に、アンモニウムイオン濃度が5g/Lに維持されるように、25質量%アンモニア水と25質量%水酸化ナトリウム水溶液の供給し、4.75時間の晶析を行った。すなわち、本実施例では、粒子成長工程の開始時から粒子成長工程時間の全体で5%の時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行ったことになる。
[複合水酸化物粒子の評価]
チタン添加工程終了後、生成物を水洗、ろ過および乾燥させて、複合水酸化物粒子を得た。
この複合水酸化物粒子の組成をICP発光分光器(VARIAN社、725ES)により測定したところ、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであることが確認された。
次に、レーザー光回折散乱式粒度分析計(日機装株式会社製、マイクロトラックMT3000II)を用いて、この複合水酸化物粒子の平均粒径を測定するとともに、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径を〕を算出した。
また、この複合水酸化物粒子をクロスセクションポリッシャ加工により断面観察可能な状態にし、SEM(JEOL製、JSM-7001F)を用いて粒子構造を観察した結果、この複合水酸化物粒子は、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。なお、このSEM観察では、同時に、微細一次粒子および板状一次粒子の平均粒径ならびに二次粒子の粒径に対する外殻部の厚みを測定した。
[正極活物質の製造]
上述のようにして得られた複合水酸化物粒子に、Li/Me=50原子%となるように秤量した炭酸リチウムを添加し、ターブラーシェーカミキサ(株式会社ダルトン製、T2F)を用いて混合することにより、リチウム混合物を得た。
このリチウム混合物を、雰囲気焼成炉(株式会社広築製、HAF−2020S)を用いて、大気雰囲気下、500℃で2時間仮焼し、900℃で12時間焼成した後、室温まで冷却し、得られたリチウム複合酸化物粒子をハンマーミル(IKAジャパン株式会社製、MF10)を用いて解砕した。
さらに、このリチウム複合酸化物粒子を、雰囲気焼成炉を用いて、大気雰囲気下、700℃で36時間焼成することにより(アニール処理)、正極活物質を得た。
[正極活物質の評価]
この正極活物質の組成をICP発光分光分析器により測定したところ、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであることが確認された。
次に、レーザー光回折散乱式粒度分析計を用いて、この複合水酸化物粒子の平均粒径を測定するとともに、同様にして、d10およびd90を測定し、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径を〕を算出した。同時に、この正極活物質の比表面積を、窒素吸着式BET法測定機(ユアサアイオニックス株式会社製、カンタソーブQS−10)を用いて測定した。
また、この正極活物質をクロスセクションポリッシャ加工により断面観察可能な状態にし、SEMを用いて粒子構造を観察した結果、この正極活物質は、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。なお、このSEM観察では、同時に、正極活物質の粒径に対する外殻部の厚みを測定した。
さらに、得られた正極活物質をCu−Kα線による粉末X線回折で分析したところ、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。これらの結果を表4に示す。
[二次電池の作製]
得られた正極活物質の評価には、図3に示す2032型コイン電池1(以下、「コイン型電池」という)を使用した。
コイン型電池1は、ケース2と、ケース2内に収容された電極3とから構成されている。ケース2は、中空かつ一端が開口された正極缶2aと、この正極缶2aの開口部に配置される負極缶2bとを有しており、負極缶2bを正極缶2aの開口部に配置すると、負極缶2bと正極缶2aとの間に電極3を収容する空間が形成されるように構成されている。また、電極3は、正極3a、セパレータ3cおよび負極3bとからなり、この順で並ぶように積層されており、正極3aが正極缶2aの内面に接触し、負極3bが負極缶2bの内面に接触するようにケース2に収容されている。なお、ケース2はガスケット2cを備えており、このガスケット2cによって、正極缶2aと負極缶2bとの間が非接触の状態を維持するように相対的な移動が固定されている。また、ガスケット2cは、正極缶2aと負極缶2bとの隙間を密封してケース2内と外部との間を気密液密に遮断する機能も有している。
このようなコイン型電池1は、以下のようにして作製した。はじめに、得られた正極活物質52.5mgと、アセチレンブラック15mgと、ポリテトラフッ化エチレン樹脂(PTFE)7.5mgとを混合し、直径10mmで10mg程度の重量になるまで薄膜化して、正極3aを作製し、これを真空乾燥機中120℃で12時間乾燥した。
次に、正極3aを用いて、コイン型電池1を、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス内で作製した。この際、負極3bには、直径14mmの円盤状に打ち抜かれたリチウム箔、または平均粒径20μm程度の黒鉛粉末とポリフッ化ビニリデンが銅箔に塗布された負極シートを用いた。また、セパレータ3cには、膜厚25μmのポリエチレン多孔膜を、電解液には、1MのLiPF6を支持電解質とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の3:7混合液(富山薬品工業株式会社製)を用いた。
[二次電池の評価]
コイン型電池1の性能を示す初期放電容量および正極抵抗は、以下のように評価した。
初期放電容量は、負極にリチウム箔を用いたコイン型電池1を製作してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2としてカットオフ電圧5.0Vまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量(初期放電容量)を測定することにより評価した。
正極抵抗は、DC−IR抵抗を測定することにより評価した。具体的には、コイン型電池1を初期放電容量の60%まで充電し、1分間の休止を挟み、電流密度を0.4mA/cm2として10秒間放電した後、再度1分間の休止を挟み、電流密度を0.4mA/cm2として10秒間充電した。この操作を、1.3mA/cm2、4.0mA/cm2および6.6mA/cm2の条件で繰り返し、各電流密度における放電開始時の電圧と、放電終了までの電圧の差を測定した。次に、電流密度を縦軸に、電圧差を横軸にプロットし、得られた直線関係について、一次線形近似により傾きを求め、この傾きを正極抵抗(DC−IR抵抗)とした。これらの結果を表4に示す。
(実施例2)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.111、濃度が1.91mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から30分経過した時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、その後、晶析を4.50時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例3)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.125、濃度が1.91mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から60分経過した時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、その後、晶析を4.00時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例4)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.100、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、晶析を5.00時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例5)
混合水溶液1として、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=2.80:1.00、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと、混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.80:1.00:0.211、濃度が1.91mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.700Ni0.25Ti0.050(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.40Ni0.50Ti0.104で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例6)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.87:1.00:0.144、濃度が1.92mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から90分経過した時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、その後、晶析を3.50時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.700Ni0.25Ti0.050(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.40Ni0.50Ti0.104で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(実施例7)
混合水溶液1として、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=2.94:1.00、濃度が1.87mol/Lであるものを使用したこと、混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.94:1.00:0.063、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.700Ni0.25Ti0.050(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.40Ni0.50Ti0.104で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例1)
混合水溶液1および混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.100、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと、核生成工程と粒子成長工程を通じて、反応雰囲気を酸素濃度が0.2容量%以下の窒素雰囲気に制御したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例2)
混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.90:1.00:0.150、濃度が1.92mol/Lであるものを使用したこと、粒子成長工程の開始時から100分経過した時点で、反応雰囲気および混合水溶液の切り換えを行い、その後、晶析を3.33時間継続したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例3)
焼成工程における焼成温度を950℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部には中空部が存在せず、中実構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例4)
焼成工程における焼成温度を850℃としたこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例5)
混合水溶液1および混合水溶液2として、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=3.00:1.00、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.75Ni0.25(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.50Ni0.504で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例6)
混合水溶液1として、マンガンとニッケルのモル比が、Mn:Ni=2.70:1.00、濃度が1.76mol/Lであるものを使用したこと、混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni:Ti=2.70:1.00:0.316、濃度が1.91mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.675Ni0.25Ti0.075(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.35Ni0.50Ti0.154で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物相と、Li2NiTiO4相とが混在したものであることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
(比較例7)
混合水溶液1および混合水溶液2として、マンガンとニッケルとチタンのモル比が、Mn:Ni=2.90:1.00:0.100、濃度が1.90mol/Lであるものを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子および正極活物質を得た。
この複合水酸化物粒子および正極活物質を、実施例1と同様にして評価した。その結果、この複合水酸化物粒子は、一般式:Mn0.725Ni0.25Ti0.025(OH)2で表されるものであること、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子から構成されていること、この二次粒子の中心部は針状の微細一次粒子から形成されていること、および、外殻部は、微細一次粒子よりも大きな板状一次粒子から形成されていることが確認された。また、この正極活物質は、一般式:LiMn1.45Ni0.50Ti0.054で表されるものであること、および、粒子内部の中空部と、この中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備えたものであることが確認された。さらに、この正極活物質の結晶構造は、スピネル構造を持つリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物単相であることが確認された。その他の粒子性状については、表2および表4に示す。
最後に、実施例1と同様に、この正極活物質を用いてコイン型電1を構成し、その特性を評価した。この結果を表4に示す。
1 コイン型電
2 ケー
2a 正極缶
2b 負極缶
2c ガスケット
3 電極
3a 正極
3b 負極
3c セパレータ

Claims (10)

  1. 一般式(A):Mn1-x-y-zNixTiyz(OH)2+α(0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、0≦α≦0.5、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表されるマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子の製造方法であって、
    少なくともマンガンとニッケルを含有し、かつ、チタンを含有しない水溶液と、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液とを混合し、液温25℃基準におけるpH値が12.0〜14.0となるように制御して、酸化性雰囲気下で、核生成を行う核生成工程と、
    前記核生成工程で生成された核を含む水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が10.5〜12.0となるように制御して、該核を成長させる粒子成長工程とを備え、
    前記粒子成長工程の開始時から該粒子成長工程時間の全体に対して30%以下の範囲で、前記酸化性雰囲気を、酸素濃度が1容量%以下の弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に切り換えるとともに、前記少なくともマンガンとニッケルを含有し、かつ、チタンを含有しない水溶液を、少なくともマンガンとニッケルとチタンを含有する水溶液に切り換える、
    マンガンニッケルチタン複合水酸化物の製造方法。
  2. 一般式(A):Mn1-x-y-zNixTiyz(OH)2+α(0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、0≦α≦0.5、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、一次粒子が複数凝集して形成された略球状の二次粒子からなり、
    前記二次粒子は、平均粒径が1μm〜7μmであり、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.60以下であり、微細一次粒子からなる中心部と、該中心部の外側に、該微細一次粒子よりも大きな一次粒子からなる外殻部を有し、該外殻部にのみTiが存在する、マンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子。
  3. 前記微細一次粒子は、平均粒径が0.01μm〜0.3μmであり、かつ、前記微細一次粒子よりも大きな一次粒子は、平均粒径が0.3μm〜3μmである、請求項2に記載のマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子。
  4. 前記外殻部の厚みは、前記二次粒子の粒径に対する比率で5%〜47%である、請求項2または3に記載のマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子。
  5. 一般式(B):LitMn2(1-x-y-z)Ni2xTi2y2z4(0.96≦t≦1.20、0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、スピネル構造を有する立方晶系のリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子からなる正極活物質の製造方法であって、
    請求項2〜4のいずれかに記載のマンガンニッケルチタン複合水酸化物粒子に対して、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る混合工程と、
    前記リチウム混合物を、850℃を超えて950℃未満の温度で焼成する焼成工程と
    を備える、非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  6. 前記焼成工程後に、酸化性雰囲気下、500℃〜800℃で、5時間〜40時間焼成する、アニール処理工程をさらに備える、請求項5に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
  7. 一般式(B):LitMn2(1-x-y-z)Ni2xTi2y2z4(0.96≦t≦1.20、0.20≦x≦0.28、0<y≦0.05、0≦z≦0.05、Mは、Mg、Ca、Ba、Sr、V、Fe、Cr、Co、Cu、Zr、Nb、Mo、Wから選択される少なくとも1種の元素)で表され、スピネル構造を有する立方晶系のリチウムマンガンニッケルチタン複合酸化物粒子からなり、
    平均粒径が2μm〜8μmであり、粒度分布の広がりを示す〔(d90−d10)/平均粒径〕が0.70以下であり、粒子内部の中空部と、該中空部の外側の外殻部とから構成される中空構造を備える、非水系電解質二次電池用正極活物質。
  8. 前記外殻部の厚みは、前記二次粒子の粒径に対する比率で5%〜35%である、請求項7に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
  9. 比表面積が0.5m2/g〜3.0m2/gである、請求項7または8に記載の非水系電解質二次電池用正極活物質。
  10. 正極と、負極と、セパレータと、非水系電解質とを備え、前記正極の正極材料として、請求項2〜4のいずれかに記載の非水系電解質二次電池用正極活物質が用いられている、非水系電解質二次電池。
JP2014014961A 2014-01-29 2014-01-29 非水系電解質二次電池用正極活物質、および、非水系電解質二次電池 Active JP6346448B2 (ja)

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