JP2015131997A - 表面処理された銅粉及びその製造方法 - Google Patents

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秀樹 古澤
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Abstract

【課題】 焼結遅延性に優れた表面処理された銅粉及びその製造方法を提供すること。【解決手段】 表面処理された銅粉に対するNの重量%が0.02%以上で式: 50≰x≰1500 、 y≧0.2x+600 (Al、Si、Ti、Zr、Ce及びSnから選択された元素の銅粉1gに対する付着量x(μg)、焼結開始温度をy(℃))を満たし、表面処理された銅粉を銅重量で50%以上含有させた導電性ペーストを非還元性雰囲気600〜900℃で焼成した焼結体の体積抵抗が10μΩcm以下である表面処理された銅粉、及び、銅粉をアルカリ性水溶液と混合した後に分離してアルカリ処理された銅粉を得る工程、アルカリ処理された銅粉をAl、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnから選択された元素を含む表面付着試薬の溶液と混合した後に分離して表面付着試薬処理された銅粉を得る工程を含む表面処理された銅粉の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、チップ積層セラミックコンデンサー用電極及びSi結晶太陽電池用電極の製造に好適に使用可能な、焼結遅延性に優れた、表面処理された銅粉の製造方法に関する。
基板上に金属粉のペーストでパターンを形成して焼成することで導体パターンが得られる。MLCC(積層セラミックコンデンサー)であれば誘電体粉末から構成されるグリーンシート上にNi粉ペーストで、Si結晶太陽電池であれば受光面では反射防止膜上に、裏面であればAlペーストからなる塗膜上にAg粉ペーストでパターンを形成し、焼結される。Agは酸化されにくいので、Agペーストの焼成は大気中でも可能である。
グリーンシートやSi結晶太陽電池は熱膨張係数が小さいので、焼成温度から室温までの降温で熱収縮差によるデラミネーションを防ぐために、ガラスフリットが金属粉ペーストに添加される。Si結晶太陽電池の反射膜上に塗布されるAgペーストは、ペーストの熱膨張係数の調整に加えて、反射防止膜SiNxの分解の役割を果たすガラスフリットが含まれている。これによりSiウェハーと導体層との導通が実現される。
近年、主にコスト、マイグレーションの観点から、Ag粉、Ni粉等をCu粉に置き換えようという試みがある。特に、Si結晶太陽電池ではAgペーストが全量Cu粉ペーストに置き換わった場合、コストが3割下がる試算がある。しかし、Cu粉は酸化する傾向が強いので、還元性雰囲気での焼成でなければ導電性がある焼結体を形成できない。サイズが小さくなると、この傾向は顕著になる。
また、熱膨張係数の調整のためにペーストに添加されるガラスフリットはコストアップを招く。熱膨張係数の用途の観点では、ガラスフリットは添加しないことが望ましい。
一方、粉末サイズが大きければ、焼結開始温度はより高温側にシフトする。このため、MLCC、Si結晶太陽電池ではペーストに熱膨張係数の調整という観点からはガラスフリットを添加せずに、粒子サイズが大きいCu粉を使用する方法も考えられる。しかし、サイズが大きいCu粉は、導体の薄層化、細線化の障害となる可能性がある。
特許文献1(特許第3646259号)は、銅粉表面で加水分解したアルコキシシランをアンモニア触媒で縮合重合させて、SiO2ゲルコーティング膜を形成させる技術である。しかし、粒径1μm以下の銅粉に適用した際に、触媒であるNH3を凝集を防ぐように連続添加しなければならないが、反応制御が添加の具体的な操作技能の巧拙に依存していて非常に難しく、作業性及び生産性の点で、問題がある。
特許文献2(特開2005−314755号)は、フレーク状でD50が0.3〜7μmの比較的大きな扁平銅粉に有機物処理を施す技術である。この有機物処理にはシランカップリング剤が含まれるとされているが、一般的な種類を列挙しているだけで、どのような種類のカップリング剤であるか、その処理方法に関する具体的な記述、および実際の実施は記載されていない。また、これは比較的大きなフレーク状の銅粉を処理する技術であるために、銅粉の形状が球状、もしくはそれに近い形状であったり、高温焼結性も向上させなければならない場合には、この技術では対応できない。
特許第3646259号公報 特開2005−314755号公報
このように、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極やSi結晶太陽電池用電極の製造に好適に使用可能な、焼結遅延性、作業性、及び生産性に優れた、銅粉が求められている。そこで、本発明の目的は、焼結遅延性に優れた、表面処理された銅粉の製造方法を、提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、後述する方法によって表面処理を行って製造した、表面処理された銅粉が、焼結遅延性、作業性、及び生産性に優れ、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極やSi結晶太陽電池用電極の製造に好適に使用可能であることを見いだして、本発明に到達した。
この表面処理された銅粉による銅粉ペーストは、塗布して形成したペースト塗膜が非常に平坦化されたものとなっており、電極の薄層化と細線化に、特に有利なものとなっている。また、この表面処理された銅粉による銅粉ペーストは、十分な焼結遅延性を備えて、高温焼成可能なものとなっている。さらに、この表面処理された銅粉による銅粉ペーストは、還元性雰囲気に加えて、非還元雰囲気においても、焼成可能なものとなっている。
したがって、本発明は次の(1)〜を含む。
(1)
表面処理された銅粉に対するN(窒素)の重量%が0.02%以上で、
Al、Si、Ti、Zr、Ce及びSnからなる群から選択された1種の元素の銅粉1gに対する付着量をx(μg)、焼結開始温度をy(℃)としたとき、次の式:
50≦x≦1500
y≧0.2x+600
を満たし、
表面処理された銅粉を銅の重量で50%以上含有させた導電性ペーストを非還元性雰囲気で600〜900℃で焼成して得られる焼結体の体積抵抗が10μΩcm以下である、表面処理された銅粉。
(2)
xが、次の式: 50≦x≦1000 を満たす、(1)に記載の表面処理された銅粉。
(3)
xが、次の式: 50≦x≦500 を満たす、(1)に記載の表面処理された銅粉。
(4)
表面処理された銅粉の平均粒径D50が0.05〜1μmで、二次粒子が存在しない、(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理された銅粉。
(5)
表面処理された銅粉の平均粒径D50が0.05〜0.5μmで、最大粒子径Dmaxが1μm以下で、二次粒子が存在しない、(1)〜(3)のいずれかに記載の表面処理された銅粉。
(6)
Al、Si、Ti、Zr、Ce及びSnからなる群から選択された1種の元素が、表面付着試薬による処理によって、銅粉の表面に吸着されてなる、(1)〜(5)のいずれかに記載の表面処理された銅粉。
(7)
表面付着試薬が、シラン、チタネート、アルミネートからなる群から選択されたカップリング剤である、(6)に記載の表面処理された銅粉。
(8)
カップリング剤が、中心原子であるAl、Ti、又はSiに配位する分子鎖の末端にアミノ基を有する、アミノシラン、アミノ含有チタネート、又はアミノ含有アルミネートである、(7)に記載の表面処理された銅粉。
さらに、本発明は次の(11)〜を含む。
(11)
(1)〜(8)のいずれかに記載の表面処理された銅粉が、さらに有機化合物で表面処理されてなる、表面処理された銅粉。
(12)
(1)〜(8)及び(11)のいずれかに記載の銅粉を使用して製造された導電性ペースト。
(13)
(12)のペーストを使用して製造されたチップ積層セラミックコンデンサー。
(14)
内部電極断面に、直径10nm以上のSiO2、TiO2、又はAl23のいずれかが存在している、(13)に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。
(15)
内部電極断面に、最大径0.5μm以上のSiO2、TiO2、又はAl23のいずれかが0.5個/μm2以下で存在している、(13)又は(14)に記載のチップ積層セラミックコンデンサー。
(16)
(13)〜(15)のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを最外層に実装した多層基板。
(17)
(13)〜(15)のいずれかに記載のチップ積層セラミックコンデンサーを内層に実装した多層基板。
(18)
(16)又は(17)に記載の多層基板を搭載した電子部品。
(19)
(12)のペーストを使用して製造された電極。
さらに、本発明は次の(21)〜を含む。
(21)
銅粉を、アルカリ性水溶液と混合した後に分離して、アルカリ処理された銅粉を得る工程、
アルカリ処理された銅粉を、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された元素を含む表面付着試薬の溶液と混合した後に分離して、表面付着試薬処理された銅粉を得る工程、
を含む、表面処理された銅粉を製造する方法。
(22)
表面付着試薬の溶液が、アルカリ性の表面付着試薬の溶液であり、
上記工程である、銅粉を、アルカリ性水溶液と混合した後に分離して、アルカリ処理された銅粉を得る工程、と、
上記工程である、アルカリ処理された銅粉を、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された元素を含む表面付着試薬の溶液と混合した後に分離して、表面付着試薬処理された銅粉を得る工程、とが、
銅粉を、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された元素を含むアルカリ性の表面付着試薬の溶液と混合した後に分離して、表面付着試薬処理された銅粉を得る工程、
によって行われる、(21)に記載の方法。
(23)
アルカリ性の表面付着試薬の溶液が、アミノ基を有するカップリング剤の水溶液である、(22)に記載の方法。
(24)
アミノ基を有するカップリング剤が、アミノシラン、アミノ含有チタネート、アミノ含有アルミネートからなる群から選択された1種以上のカップリング剤である、(23)に記載の方法。
(25)
表面付着試薬の溶液が、中性又は酸性のカップリング剤の溶液である、(21)に記載の方法。
(26)
中性又は酸性のカップリング剤が、中性又は酸性の、シラン、チタネート又はアルミネートである、(25)に記載の方法。
(27)
表面付着試薬処理された銅粉を、水性溶媒によって洗浄する工程、
を含む、(21)〜(26)のいずれかに記載の方法。
(28)
表面付着試薬処理された銅粉を、水性溶媒によって洗浄する工程が、
洗浄後の銅粉の質量に対して5倍の質量の水性溶媒を添加した後に得たろ過液の中に、ICP分析によって検出されるAl、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された1種の元素が、50ppm以下の濃度となるまで、銅粉を水性溶媒によって洗浄する工程である、(27)に記載の方法。
(29)
(21)〜(28)のいずれかに記載の方法によって製造された、表面処理された銅粉。
(30)
(29)に記載の表面処理された銅粉を含む、導電性ペースト。
さらに、本発明は次の(31)〜を含む。
(31)
(1)〜(8)、(11)及び(29)のいずれかに記載の表面処理された銅粉を含む導電性ペーストを、400〜1000℃の範囲の温度で焼結して、電極を製造する方法。
(32)
焼結が、非還元性雰囲気で行われる、(31)に記載の方法。
(33)
非還元性雰囲気が、大気圧の気体窒素中である、(32)に記載の方法。
(34)
(31)〜(33)のいずれかに記載の方法によって製造された、電極。
さらに、本発明は次の(41)〜を含む。
(41)
(1)〜(8)、(11)及び(29)のいずれかに記載の銅粉を含む導電性ペースト。
(42)
さらにガラスフリットを含む(41)に記載の導電性ペースト。
(43)
(41)〜(42)のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて製造された電極。
(44)
(43)の電極がSi結晶太陽電池の裏面のAl層上に形成されている電極。
本発明によって製造される表面処理された銅粉は、表面処理後にも凝集することなく、焼結遅延性に優れ、粒子の小さい銅粉であっても高い焼結開始温度を示す。そこで、本発明による表面処理された銅粉が配合されてなる導電性銅粉ペーストを使用すれば、電極剥離などの製造上の問題を回避して、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極やSi結晶太陽電池用電極の製造を、有利に行うことができる。さらに、本発明による表面処理された銅粉が配合されてなる導電性銅粉ペーストは、非常に平坦な塗膜を形成することができるために、薄層電極の製造に特に有利である。また、本発明の製造方法によれば、表面処理された銅粉が、銅粉に対して非常に簡単な処理を行うことで製造でき、この製造方法は、高度な技能を必要とせず、作業性及び生産性に優れたものである。
以下に本発明を実施の態様をあげて詳細に説明する。本発明は以下にあげる具体的な実施の態様に限定されるものではない。
[表面処理された銅粉]
本発明による、表面処理された銅粉は、表面処理された銅粉に対するN(窒素)の重量%が0.02%以上で、Al、Si、Ti、Zr、Ce及びSnからなる群から選択された1種の元素の銅粉1gに対する付着量をx(μg)、焼結開始温度をy(℃)としたとき、次の式: 50≦x≦1500、 y≧0.2x+600 を満たし、表面処理された銅粉を銅の重量で50%以上含有させた導電性ペーストを非還元性雰囲気で600〜900℃で焼成して得られる焼結体の体積抵抗が10μΩcm以下である、表面処理された銅粉である。
[表面処理される銅粉]
表面処理される銅粉は、公知の方法によって製造された銅粉を使用することができる。好適な実施の態様において、例えば、湿式法によって製造された銅粉、乾式法によって製造された銅粉を使用することができる。好適な実施の態様において、湿式法によって製造された銅粉、例えば、不均化法、化学還元法等によって製造された銅粉を使用することができる。湿式法によって製造された銅粉は、本発明による表面の処理まであわせて一貫して湿式プロセスになる点で好適であり、さらに本発明による処理によれば、他の手段では得られない優れた焼結遅延性及び焼結後の導電性を両立することができる。
[表面処理によって吸着される元素]
表面処理された銅粉は、銅粉の表面にAl、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された1種の元素が、表面処理によって吸着(付着)されて、表面処理層となっている。好適な実施の態様において、このように表面処理によって吸着(付着)される元素は、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された1種の元素、好ましくはAl、Si、及びTiからなる群から選択された1種の元素、さらに好ましくはSi又はTiとすることができる。
[元素の付着量]
銅粉の表面の元素の付着量は、実施例に記載のように、ICP(誘導結合プラズマ原子発光分析法)によって求めることができる。好適な実施の態様において、表面処理された銅粉は、銅粉1gに対して、この元素の付着量が、例えば10〜5000μg、好ましくは50〜1000μg、さらに好ましくは50〜500μgとすることができる。銅粉に対する元素の付着量を、ppmで表すこともでき、1ppmは銅粉1gに対して元素が1μgの付着量であることを表す。表面付着試薬によって、この元素を銅粉の表面に付着させることができる。
好適な実施の態様において、アミノ基を有するカップリング剤によって銅粉を表面処理することができ、この場合に、表面処理された銅粉は、カップリング剤のアミノ基に由来する窒素がその表面に含まれている。好適な実施の態様において、表面処理された銅粉に対するN(窒素)の重量%(wt%)が、例えば、0.02重量%以上、好ましくは0.03重量%以上とすることができ、例えば0.02〜0.50重量%、好ましくは0.02〜0.20重量%、さらに好ましくは0.02〜0.15重量%の範囲とすることができる。表面処理された銅粉に対するN(窒素)の重量%は、表面処理された銅粉を高温で溶融させ、発生したNO2から付着N量を算出することができる。
好適な実施の態様において、Tiであれば硫酸チタン(IV)水溶液、Alであれば酸性、またはアルカリ性の水酸化アルミニウム水溶液、Siであればアルカリ性のケイ酸水溶液を表面付着試薬として使用して、これを銅粉を混合、ろ過、水洗、乾燥でそれぞれTi、Al、Siを銅粉表面に吸着させることができる。
[焼結開始温度]
表面処理された銅粉を使用した導電性銅粉ペーストを製造して、これを焼結することによって電極を製造することができる。本発明による表面処理された銅粉は、優れた焼結遅延性を有する。焼結遅延性の指標として、焼結開始温度がある。これは表面処理された銅粉から成る圧粉体を還元性雰囲気中で昇温し、ある一定の体積変化(収縮)が起こったときの温度のことである。本発明では1%の体積収縮が起こるときの温度を焼結開始温度とする。具体的には、実施例の記載の通りに測定した。焼結開始温度が高いことは、焼結遅延性に優れていることを意味する。
好適な実施の態様において、焼結開始温度は、600℃以上、さらに好ましくは620℃以上、さらに好ましくは690℃以上、さらに好ましくは700℃以上とすることができる。
[元素の付着量と焼結開始温度]
本発明に係る表面処理された銅粉は、表面処理された銅粉に対するN(窒素)の重量%が0.02%以上で、Al、Si、Ti、Zr、Ce及びSnからなる群から選択された1種の元素の銅粉1gに対する付着量をx(μg)、焼結開始温度をy(℃)としたとき、次の式:
50≦x≦1500
y≧0.2x+600
を満たすものとなっており、好ましくは次の式: 100≦x≦1000 を満たすものとなっており、さらに好ましくは次の式: 100≦x≦600 を満たすものとなっている。
[平均粒径]
本発明に係る表面処理された銅粉は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した平均粒径D50が、0.05〜1μmの範囲、好ましくは0.05〜0.5μmとすることができ、最大粒子径Dmaxが1μm以下で二次粒子が存在しないものとすることができる。レーザー回折式粒度分布測定装置として、例えば、島津製作所製SALD−2100を使用することができる。本発明において、二次粒子とは、上記方法で粒度分布を測定したときに、極大値が複数ある場合の、大きい極大値側近傍の粒子のことを指す。上記方法で粒度分布の極大値が一つのみの場合、二次粒子が存在しないという。
[導電性ペースト]
本発明に係る表面処理された銅粉を使用して、導電性銅粉ペースト(導電性ペースト)を製造することができる。本発明に係る表面処理された銅粉は、ペーストを製造する場合においても、ペースト中で凝集することなく、容易に分散する。そして、得られた導電性ペーストは、粒子の凝集が低減されていることから、薄層電極に求められる平坦な塗膜を、容易に形成できるものとなっており、平坦な薄層電極の形成に好適なものとなっている。このように、本発明に係る表面処理された銅粉、及びこれを使用した導電性ペーストは、作業性及び生産性に優れ、また、焼結遅延性に優れ、高い焼結開始温度を示すものとなっている。
[塗膜の平坦性]
導電性ペーストによる塗膜の平坦性は、実施例に記載のように、塗膜の最大山高さRzを、接触式表面粗さ計(小坂研究所製、SE−3400)によりJIS−B0601に従ってn=3で測定し、平均値を求めることで評価することができる。本発明による導電性銅粉ペーストは、その塗膜が、Rzが小さく、高い平坦性を発揮できるペーストとなっている。
[焼結体の製造]
好適な実施の態様において、本発明に係る表面処理された銅粉は、圧粉体を還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中で昇温して焼結体を形成することができる。得られた焼結体は、優れた電極として形成される。また、好適な実施の態様において、上述のように、粉体を配合した導電性ペーストを製造して、これを塗工した後に焼結して、電極を製造することができる。本発明に係る表面処理された銅粉を使用した場合に、このように焼結して製造される焼結体(電極)は、平坦な薄層電極として好適であることから、特に、チップ積層セラミックコンデンサーの内部電極及びSi結晶太陽電池用電極として好適に使用可能である。
[高温焼結]
本発明に係る表面処理された銅粉は、上述した高い焼結開始温度を有するために、微細な粒子であるにもかかわらず、高温で焼結することができる。例えば、400℃以上、500℃以上、600℃以上、620℃以上、690℃以上、700℃以上の温度で、例えば、1000℃以下、950℃以下、900℃以下の温度で、例えば、500〜1000℃の範囲、600〜950℃の範囲、600〜900℃の範囲、620〜900℃の範囲の温度で、焼結することができる。
[雰囲気]
焼結は、還元性雰囲気中又は非還元性雰囲気中で行うことができ、非還元性雰囲気中で行うことができる点で、特に有利である。非還元性雰囲気とは、雰囲気中にCO、H2S、SO2、H2、HCHO等の還元性気体が、0.5vol%以下、好ましくは0.1vol%以下で含まれる雰囲気をいう。非還元性雰囲気としては、例えば、大気圧の気体窒素を含む雰囲気を挙げることができる。還元性雰囲気は、上記の還元性気体が、0.5vol%以上、好ましくは1.0vol%以上で含まれる雰囲気をいう。還元性雰囲気としては、例えば、大気圧の気体窒素及び気体水素を含む雰囲気を挙げることができる。
[焼結体の欠陥]
製造された焼結体の欠陥は、実施例に記載のように、光学顕微鏡による観察で検出することができる。
[体積抵抗]
本発明に係る表面処理された銅粉によって製造された焼結体は、非還元性雰囲気中で高温焼結されたにもかかわらず、導電性に優れ、低い体積抵抗値を示す。好適な実施の態様において、例えば、10μΩcm以下、例えば、1.8〜15μΩcmの範囲、1.8〜10μΩcmの範囲の体積抵抗とすることができる。例えば、表面処理された銅粉を銅の重量で50%以上含有させた導電性ペーストを非還元性雰囲気で600〜900℃で焼成して得られる焼結体の体積抵抗が、上記の範囲、例えば10μΩcm以下とすることができる。
[表面処理された銅粉の製造]
本発明による表面処理された銅粉は、銅粉を、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された元素を含む表面付着試薬の溶液と混合した後に分離して、表面付着試薬処理された銅粉を得る工程、を行って得ることができる。好適な実施の態様において、表面付着試薬の溶液は、アルカリ性の溶液を使用することができる。好適な実施の態様において、表面付着試薬の溶液がアルカリ性でない場合、アルカリ性溶液によって前処理をした後に、銅粉は、表面付着試薬の溶液と混合することができる。
好適な実施の態様において、さらに、表面付着試薬処理された銅粉を水性溶媒によって洗浄する工程を、行うことができ、また、洗浄された銅粉を乾燥して、表面処理された銅粉を得る工程、を行うことができる。
本来、銅粉に対して表面付着試薬(例えばカップリング剤)を使用して表面処理を行うのであれば、カップリング剤を十分に吸着させることが望ましいはずであるが、銅粉を水性溶媒によって洗浄して、おそらくはカップリング剤が除去されてしまう操作を行ったところ、そのようにして得られた表面処理された銅粉は、むしろ、優れた焼結遅延性、低い凝集性、高い分散性を示すものとなっていた。
[湿式法による銅粉]
好適な実施の態様において使用される湿式法による銅粉の製造方法として、アラビアゴムの添加剤を含む水性溶媒中に亜酸化銅を添加してスラリーを作製する工程、スラリーに希硫酸を5秒以内に一度に添加して不均化反応を行う工程、を含む方法によって製造される銅粉を使用することができる。好適な実施の態様において、上記スラリーは、室温(20〜25℃)以下に保持するとともに、同様に室温以下に保持した希硫酸を添加して、不均化反応を行うことができる。好適な実施の態様において、上記スラリーは、7℃以下に保持するとともに、同様に7℃以下に保持した希硫酸を添加して、不均化反応を行うことができる。好適な実施の態様において、希硫酸の添加は、pH2.5以下、好ましくはpH2.0以下、さらに好ましくはpH1.5以下となるように、添加することができる。好適な実施の態様において、スラリーへの希硫酸の添加は、5分以内、好ましくは1分以内、さらに好ましくは30秒以内、さらに好ましくは10秒以内、さらに好ましくは5秒以内となるように、添加することができる。好適な実施の態様において、上記不均化反応は10分間で終了するものとすることができる。好適な実施の態様において、上記スラリー中のアラビアゴムの濃度は、0.229〜1.143g/Lとすることができる。上記亜酸化銅としては、公知の方法で使用された亜酸化銅、好ましくは亜酸化銅粒子を使用することができ、この亜酸化銅粒子の粒径等は不均化反応によって生成する銅粉の粒子の粒径等とは直接に関係がないので、粗粒の亜酸化銅粒子を使用することができる。この不均化反応の原理は次のようなものである:
Cu2O+H2SO4 → Cu↓+CuSO4+H2
この不均化によって得られた銅粉は、所望により、洗浄、防錆、ろ過、乾燥、解砕、分級を行って、その後に本発明による表面処理を行うことができるが、所望により、洗浄、防錆、ろ過を行った後に、乾燥を行うことなく、そのまま本発明による表面処理を行うことができる。
[アルカリ処理]
好適な実施の態様において、銅粉は、表面付着試薬処理に先だって、アルカリ処理することができる。表面付着試薬の溶液がアルカリ性でない場合には、このアルカリ処理を前処理として行うことが好ましい。使用されるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液、例えば、0.01M〜2M(モル/リットル)の濃度の水溶液を使用することができる。混合は、公知の手段によって行うことができ、所望により撹拌してもよい。混合後の分離は、公知の手段によって行うことができ、上清の吸引、デカンテーション、ろ過、遠心分離、などを使用してもよい。アルカリ水溶液と混合して分離した後に、所望により、純水によって洗浄した後に、後の工程を行ってもよい。
[表面付着試薬]
表面付着試薬は、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された元素、好ましくはAl、Si又はTiを含む。表面付着試薬の溶液は、例えば、アルカリ性、例えば、中性、例えば、酸性のものを使用することができる。アルカリ性の表面付着試薬の溶液を使用する場合には、アルカリ処理された銅粉を得る工程と表面付着試薬処理された銅粉を得る工程との二工程を兼ねた、一の工程によって処理することができる。好適な表面付着試薬として、例えば、上記金属元素を有するカップリング剤を挙げることができ、例えば、シラン、チタネート又はアルミネートを挙げることができ、例えば、アミノ基を有するカップリング剤を挙げることができる。
[アミノ基を有するカップリング剤]
アミノ基を有するカップリング剤としては、例えば、アミノシラン、アミノ含有チタネート、アミノ含有アルミネートからなる群から選択された1種以上のカップリング剤を使用することができる。アミノ基を有するカップリング剤は、例えば、中心原子であるAl、Ti、又はSiに配位する分子鎖の末端にアミノ基を有する構造のものを使用することができる。
[アミノシラン]
好適な実施の態様において、アミノ基を有するカップリング剤として、次の式I:
2N−R1−Si(OR22(R3) (式I)
(ただし、上記式Iにおいて、
R1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、
R2は、C1〜C5のアルキル基であり、
R3は、C1〜C5のアルキル基、又はC1〜C5のアルコキシ基である。)
で表されるアミノシランを使用することができる。
好ましい実施の態様において、上記式IのR1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、さらに好ましくは、R1は、置換又は非置換の、C1〜C12の直鎖状飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の分枝状飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の直鎖状不飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の分枝状不飽和炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の環式炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の複素環式炭化水素の二価基、置換又は非置換の、C1〜C12の芳香族炭化水素の二価基、からなる群から選択された基とすることができる。好ましい実施の態様において、上記式IのR1は、C1〜C12の、飽和又は不飽和の鎖状炭化水素の二価基であり、さらに好ましくは、鎖状構造の両末端の原子が遊離原子価を有する二価基である。好ましい実施の態様において、二価基の炭素数は、例えばC1〜C12、好ましくはC1〜C8、好ましくはC1〜C6、好ましくはC1〜C3とすることができる。
好ましい実施の態様において、上記式IのR1は、−(CH2n−、−(CH2n−(CH)m−(CH2j-1−、−(CH2n−(CC)−(CH2n-1−、−(CH2n−NH−(CH2m−、−(CH2n−NH−(CH2m−NH−(CH2j−、−(CH2n-1−(CH)NH2−(CH2m-1−、−(CH2n-1−(CH)NH2−(CH2m-1−NH−(CH2j−、−CO−NH−(CH2n−、−CO−NH−(CH2n−NH−(CH2m−からなる群から選択された基である(ただし、n、m、jは、1以上の整数である)とすることができる。(ただし、上記(CC)は、CとCの三重結合を表す。)好ましい実施の態様において、R1は、−(CH2n−、又は−(CH2n−NH−(CH2m−とすることができる。(ただし、上記(CC)は、CとCの三重結合を表す。)好ましい実施の態様において、上記の二価基であるR1の水素は、アミノ基で置換されていてもよく、例えば1〜3個の水素、例えば1〜2個の水素、例えば1個の水素が、アミノ基によって置換されていてもよい。
好ましい実施の態様において、上記式Iのn、m、jは、それぞれ独立に、1以上12以下の整数、好ましくは1以上6以下の整数、さらに好ましくは1以上4以下の整数とすることができ、例えば、1、2、3、4から選択された整数とすることができ、例えば、1、2又は3とすることができる。
好ましい実施の態様において、上記式IのR2は、C1〜C5のアルキル基、好ましくはC1〜C3のアルキル基、さらに好ましくはC1〜C2のアルキル基とすることができ、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はプロピル基とすることでき、好ましくは、メチル基又はエチル基とすることができる。
好ましい実施の態様において、上記式IのR3は、アルキル基として、C1〜C5のアルキル基、好ましくはC1〜C3のアルキル基、さらに好ましくはC1〜C2のアルキル基とすることができ、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、又はプロピル基とすることでき、好ましくは、メチル基又はエチル基とすることができる。また、上記式IのR3は、アルコキシ基として、C1〜C5のアルコキシ基、好ましくはC1〜C3のアルコキシ基、さらに好ましくはC1〜C2のアルコキシ基とすることができ、例えば、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、又はプロポキシ基とすることでき、好ましくは、メトキシ基又はエトキシ基とすることができる。
[アミノ含有チタネート]
好適な実施の態様において、アミノ基を有するカップリング剤として、次の式II:
(H2N−R1−O)pTi(OR2q (式II)
(ただし、上記式IIにおいて、
R1は、直鎖状又は分枝を有する、飽和又は不飽和の、置換又は非置換の、環式又は非環式の、複素環を有する又は複素環を有しない、C1〜C12の炭化水素の二価基であり、
R2は、直鎖状又は分枝を有する、C1〜C5のアルキル基であり、
p及びqは、1〜3の整数であり、p+q=4である。)
で表されるアミノ基含有チタネートを使用することができる。
好適な実施の態様において、上記式IIのR1としては、上記式IのR1として挙げた基を好適に使用することができる。上記式IIのR1として、例えば、−(CH2n−、−(CH2n−(CH)m−(CH2j-1−、−(CH2n−(CC)−(CH2n-1−、−(CH2n−NH−(CH2m−、−(CH2n−NH−(CH2m−NH−(CH2j−、−(CH2n-1−(CH)NH2−(CH2m-1−、−(CH2n-1−(CH)NH2−(CH2m-1−NH−(CH2j−、−CO−NH−(CH2n−、−CO−NH−(CH2n−NH−(CH2m−からなる群から選択された基(ただし、n、m、jは、1以上の整数である)とすることができる。特に好適なR1として、−(CH2n−NH−(CH2m−を挙げることができ(ただし、n+m=4、特に好ましくはn=m=2)を挙げることができる。
上記式IIのR2としては、上記式IのR2として挙げた基を好適に使用することができる。好適な実施の態様において、C3のアルキル基を挙げることができ、特に好ましくは、プロピル基、及びイソプロピル基を挙げることができる。
上記式IIのp及びqは、1〜3の整数であり、p+q=4であり、好ましくはp=q=2の組み合わせ、p=3、q=1の組み合わせを挙げることができる。このように官能基が配置されたアミノ基含有チタネートとして、プレインアクト KR44(味の素ファインテクノ社製)を挙げることができる。
[表面付着試薬の溶液との混合]
銅粉を、表面付着試薬の溶液と混合する場合において、例えば、銅粉1gに対して、表面付着試薬を0.005g以上、0.025g以上、好ましくは0.050g以上、さらに好ましくは0.075g以上、さらに好ましくは0.10g以上を含むものとすることができ、あるいは、例えば、0.005〜0.500g、0.025〜0.250g、0.025〜0.100gの範囲の量を含むものとすることができる。混合は、公知の方法によって行うことができ、公知の方法によって撹拌を行うことができる。混合は、例えば、常温で行うことができ、例えば、5〜80℃、10〜40℃、20〜30℃の範囲の温度で行うことができる。
表面付着試薬の溶液が中性、または酸性の場合、当該溶液との混合前にアルカリ性溶液による前処理を行うことが望ましい。当該溶液が中性、または酸性の場合、前処理を行わずに当該溶液と銅粉との混合を行うと、当該金属、非金属は銅粉にほとんど付着しなかった。例えば、このアルカリ性溶液による前処理として、銅粉とpH9〜10の水酸化ナトリウム水溶液と1〜30分混合することができる。
[水性溶媒による洗浄]
表面付着試薬処理された銅粉は、その後に、水性溶媒によって洗浄する工程を、行うことができる。例えば、いったん残渣として回収した後に洗浄される。残渣としての回収は、公知の手段で行うことができ、例えば、ろ過、デカンテーション、遠心分離等を使用することができ、好ましくはろ過を使用することができる。水性溶媒による洗浄は、水性溶媒を用いて公知の手段で行うことができる。例えば、残渣に水性溶媒を添加して撹拌した後に、再び残渣として回収することによって行うことができ、あるいは例えば、ろ過フィルターに載置された残渣に対して水性溶媒を連続的に添加することによっても行うことができる。
好適な実施の態様において、水性溶媒による洗浄は、洗浄後の銅粉の乾燥質量に対して5倍の質量の水性溶媒を添加した後に得たろ過液の中に、ICP分析によって検出されるSi、Ti、Al、Zr、Ce及びSnからなる群から選択された1種の元素が、50ppm以下の濃度、好ましくは30ppm以下の濃度となるまで、残渣として回収された銅粉を水性溶媒によって洗浄することによって、行うことができる。上記濃度の下限には特に制限はないが、例えば1ppm以上、例えば5ppm以上とすることができる。
[水性溶媒]
洗浄に使用される水性溶媒としては、純水、又は水溶液を使用することができる。水溶液としては、例えば、無機酸、無機酸の塩、有機酸、有機酸の塩、水溶性のアルコール、及び水溶性のエステルから選択された1種以上の溶質又は溶媒が、溶解又は分散した水溶液を使用することができる。無機酸及びその塩としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、及び炭酸、及びそれらの塩を挙げることができる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩を挙げることができる。有機酸及びその塩としては、例えば、1〜3価でC1〜C7のカルボン酸及びその塩を挙げることができ、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、シュウ酸、安息香酸、及びフタル酸、及びそれらの塩を挙げることができる。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、及びカルシウム塩を挙げることができる。アルコールとしては、例えば、1〜3価でC1〜C6のアルコールを挙げることができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、グリセリン、及びフェノールを挙げることができる。水溶性のエステルとしては、例えば、C1〜C12のエステルを挙げることができ、例えば、上述した酸とアルコールによるエステルを挙げることができる。水性溶媒のpHは、好ましくはpH7〜14、さらに好ましくはpH8〜12の範囲とすることができる。純水としては、高度に精製された高純度の水を使用することができるが、工業的に使用される純度の水であって意図的な化合物の添加が行われていない水であれば、使用することができる。水溶液に溶解又は分散させる上記溶質又は溶媒の含有量は、溶質又は溶媒が溶解又は分散可能な範囲の含有量であって、上述したICP分析によって検出される元素の濃度を上述の範囲とすることができるような含有量であれば使用することができる。このような条件を満たす範囲で、上記溶質又は溶媒を、例えば、水溶液の質量に対して、0.0001質量%〜20質量%、0.001質量%〜10質量%の範囲で含有させることができる。
[乾燥]
洗浄された銅粉は、水性溶媒から分離して、所望により乾燥されないまま次の工程に進むこともできるが、所望により乾燥させて、表面処理された銅粉として得ることもできる。この乾燥には、公知の手段を使用することができる。この乾燥は、例えば、酸素雰囲気又は不活性雰囲気下で行うことができる。乾燥は、例えば、加熱によって行うことができ、例えば、50〜90℃、60〜80℃の温度で、例えば、30〜120分間、45〜90分間の加熱処理によって、行うことができる。加熱乾燥に続けて、表面処理された銅粉に対して、所望により、さらに粉砕処理を行ってもよい。
[表面処理された銅粉に対する後処理]
表面処理された銅粉に対して、さらに後処理として表面処理を行ってもよい。防錆、あるいは、ペースト中での分散性を向上させること等を目的として、有機物等をさらに表面処理された銅粉の表面に吸着させてもよい。このような表面処理として、例えば、ベンゾトリアゾール、イミダゾール等の有機防錆剤による防錆処理をあげることができる。
[導電性ペースト及び電極の製造]
表面処理された銅粉は、溶媒及び/又はバインダーと配合して、導電性銅粉ペーストを、製造することができる。好適な実施の態様において、この導電性ペーストでは、ペースト全体の重量に対して、含有される銅の重量の割合(銅重量割合)を、例えば50%以上、例えば60〜95%の範囲とすることができる。この導電性ペーストを、基材に塗布して、基材に塗布された導電性ペーストを加熱焼成することによって、電極を、製造することができる。
[Si結晶太陽電池の裏面の集電電極]
本発明の表面処理された銅粉は、これを含む導電性ペーストを調製して、Si結晶太陽電池の裏面の集電電極の製造に好適に使用できる。また、SiNxを分解するのに必要な量のガラスフリットを表面処理された銅粉を含む導電性ペーストに添加すれば、受光面の電極にも適用可能である。本発明は従来の高温焼成設備を適用できるので、新たな設備投資を必要としない。このため、AgからCuへの置き換えによるコストダウン効果は大きい。
以下に実施例をあげて、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[銅粉]
銅粉を以下の手順で用意した。
(不均化法による銅粉)
表面処理に供される銅粉20gを、不均化法による湿式法によって製造した。これは具体的には以下の手順で行った。
(1) アラビアゴム0.05〜0.4g + 純水350mLに、亜酸化銅50gを添加した。
(2) 次に、希硫酸(25wt%)50mLを一時に添加した。
(3) これを、回転羽で攪拌後(300rpm×10分)、60分放置した。
(4) 次に、沈殿に対して、洗浄を行った。
洗浄は、最初に、上澄み液を除去し、純水350mLを加えて攪拌(300rpm×10分)後、60分放置し、上澄み液を除去し、純水350mLを加えて攪拌(300rpm×10分)後、60分放置し、銅粉を沈降させた。この状態で粒度測定をレーザー回折式粒度分布測定(島津製作所SALD−2100)で行い、表面処理前の粒度測定とした。
得られた銅粉の粒子サイズ(D50)を表1に、銅粉サイズ(処理前)として示す。測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所製SALD−2100)を使用した。
[カップリング剤水溶液の調製]
次の各種のカップリング剤を使用したカップリング剤水溶液をそれぞれ50mL調製した。

シラン:
ジアミノシランA−1120(MOMENTIVE社製)
エポキシシランZ−6040(東レダウコーニング社製)
チタネート:
アミノ基含有 プレインアクト KR44(味の素ファインテクノ社製)
アミノ基非含有 プレインアクト KR44TTS(味の素ファインテクノ社製)

濃度は0.2〜10vol%の範囲で調製した。また、エポキシシラン水溶液は希硫酸でpHを4に調整した。
各種のシランの構造式は、以下である。
ジアミノシランA−1120:
2N−C24−NH−C36−Si(OCH33

エポキシシランZ−6040:
[例A: 実施例1〜6、9〜20、23〜28]
[表面処理]
不均化法で得られた銅粉スラリーから上澄み液を除去し、銅粉を乾燥させることなく、調製したカップリング剤と60分間、以下の方法で混合させた。表面処理に供した銅粉の質量はカップリング剤水溶液50mLに対して、それぞれ20gとした。
回転羽(300rpm)+超音波(株式会社テックジャム製、超音波洗浄器 3周波タイプ / W−113)(出力100W、周波数100kHz)
次にこれらのカップリング剤水溶液をそれぞれアスピレーターで吸引ろ過したのち、銅粉の上に純水を加え、さらにろ過した。ろ過による洗浄は、洗浄後に銅粉の乾燥質量の1.4倍の純水を加えてろ過して得られたろ液をICP(高周波誘導結合プラズマ)分析した場合に、カップリング剤に由来するSi、又はTiの元素が50ppm以下の濃度となるまで行った。上記の場合、洗浄のための純水は約350mlを要した。そこで、ICP分析は、最後の約350mLをろ過後に約100mLを更にろ過し、この約100mLの濾液に対して行った。得られた残渣を窒素雰囲気下で70℃で1時間乾燥し、乳鉢で粉砕した。この状態で再度粒度測定を行った。このようにして表面処理された銅粉を得た。銅粉に対するこれらの表面処理の一覧を、表1に示す。また、350mLの純水でろ過後の100mLのろ液中のSi又はTi(シランカップリング剤の場合にはSi、チタネートの場合にはTi)の濃度(ppm)を表1に示す。
[TMA測定]
表面処理された銅粉によって、サンプルを作製して、TMA(Thermomechanichal Analyzer)を使用して、焼結開始温度を、次の条件で測定した。

サンプル作製条件
圧粉体サイズ:7mmφ×5mm高さ
成型圧力:1Ton/cm2(1000kg重/cm2
(潤滑剤として0.5wt%のステアリン酸亜鉛を添加)
測定条件
装置:島津製作所TMA−50
昇温:5℃/分
雰囲気:2vol%H2−N2(300cc/分)
荷重:98.0mN
このように、測定対象の表面処理された銅粉に0.5wt%のステアリン酸亜鉛を添加して混合し、この混合物を直径7mmの筒体に装填し、上部からポンチを押し込んで1Ton/cm2で3秒保持する加圧を付与し、高さ約5mm相当の円柱状に成形した。この成形体を、軸を鉛直方向にして且つ軸方向に98.0mNの荷重を付与した条件で、昇温炉に装填し、2vol%H2−N2(300cc/分)流量中で昇温速度5℃/分、測定範囲:50〜1000℃に連続的に昇温してゆき、成形体の高さ変化(膨張・収縮の変化)を自動記録した。成形体の高さ変化(収縮)が始まり、その収縮率が1%に達したところの温度を「焼結開始温度」とした。
これらの結果は表1にまとめた。
[付着量の分析]
表面処理された銅粉の表面に付着したSi、及びTiを次の条件で分析した。この結果は、表1にまとめた。

付着量 Si、Ti・・・表面処理された銅粉を酸で溶解し、ICP(誘導結合プラズマ原子発光分析法)で定量して、表面処理された銅粉の単位質量(g)に対する、付着したSi及びTiの質量(μg)を求めた。
[導電性銅粉ペーストによる塗膜]
上述の手順で得られた表面処理された銅粉を、エチルセルロースとテルピネオール(以下、TPO)からなるビークルと、テルピネオールとをミキサーで混練し、3本ロールに通して、表面処理された銅粉による銅粉ペーストを得た。重量組成は
表面処理された銅粉:TPO:エチルセルロース=80.0:17.6:2.4
とした。これをアプリケーターでアルミナ基板上に塗工して櫛形パターンを作製した。これを120℃で10分大気雰囲気下で乾燥させ後、昇温を7.5時間かけ、最高温度で1時間保持し、12時間かけて室温まで降温することで櫛形パターンを焼成させた。焼成は管状炉で行った。昇温から降温までは2vol%のH2を含むN2ガス、またはN2のみを管状炉内に流し続けた。焼成後の塗膜厚みが10μmとなるように塗工した。
得られたパターンの体積抵抗(μΩcm)を測定した。また、得られた焼結体の欠陥を以下のように評価した。
[焼結体の評価]
焼結体を上から光学顕微鏡で200倍で観察し、以下の基準で判定した。
○:焼結体を上から観察して、下地のアルミナ基板が見えていない。
△:下地のアルミナ基板が見える穴の大きさが20μm以下
×:下地のアルミナ基板が見える穴の大きさが20μm以上
[例B: 実施例7、8、21、22]
例Aに記載の湿式法で得られた銅粉スラリーから上澄み液を除去し、銅粉を乾燥させることなく、水酸化ナトリウム水溶液(5g/L)中で撹拌した(表面処理の前処理)。その後、静置し、上澄み液を取り除き、純水350mLとさらに撹拌した。再び、静置し、上澄み液を取り除き、調製したカップリング剤と銅粉を例Aの手順で混合した。粉末の乾燥、粉砕、ペースト作製、各種特性評価は例Aに従った。
[例C: 比較例1、2]
例Aに記載の湿式法で得られた銅粉スラリーから上澄み液を除去し、窒素雰囲気下で70℃で1時間乾燥し、乳鉢で粉砕した。ペースト作製、各種特性評価は例Aに従った。
本発明によれば、焼結遅延性と焼結後の導電性に優れた、表面処理された銅粉を得ることができる。本発明は産業上有用な発明である。

Claims (21)

  1. 表面処理された銅粉に対するN(窒素)の重量%が0.02%以上で、
    Al、Si、Ti、Zr、Ce及びSnからなる群から選択された1種の元素の銅粉1gに対する付着量をx(μg)、焼結開始温度をy(℃)としたとき、次の式:
    50≦x≦1500
    y≧0.2x+600
    を満たし、
    表面処理された銅粉を銅の重量で50%以上含有させた導電性ペーストを非還元性雰囲気で600〜900℃で焼成して得られる焼結体の体積抵抗が10μΩcm以下である、表面処理された銅粉。
  2. 表面処理された銅粉の平均粒径D50が0.05〜1μmで、二次粒子が存在しない、請求項1に記載の表面処理された銅粉。
  3. Al、Si、Ti、Zr、Ce及びSnからなる群から選択された1種の元素が、表面付着試薬による処理によって、銅粉の表面に吸着されてなる、請求項1〜2のいずれかに記載の表面処理された銅粉。
  4. 表面付着試薬が、シラン、チタネート、アルミネートからなる群から選択されたカップリング剤である、請求項3に記載の表面処理された銅粉。
  5. カップリング剤が、中心原子であるAl、Ti、又はSiに配位する分子鎖の末端にアミノ基を有する、アミノシラン、アミノ含有チタネート、又はアミノ含有アルミネートである、請求項4に記載の表面処理された銅粉。
  6. 銅粉を、アルカリ性水溶液と混合した後に分離して、アルカリ処理された銅粉を得る工程、
    アルカリ処理された銅粉を、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された元素を含む表面付着試薬の溶液と混合した後に分離して、表面付着試薬処理された銅粉を得る工程、
    を含む、表面処理された銅粉を製造する方法。
  7. 表面付着試薬の溶液が、アルカリ性の表面付着試薬の溶液であり、
    上記工程である、銅粉を、アルカリ性水溶液と混合した後に分離して、アルカリ処理された銅粉を得る工程、と、
    上記工程である、アルカリ処理された銅粉を、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された元素を含む表面付着試薬の溶液と混合した後に分離して、表面付着試薬処理された銅粉を得る工程、とが、
    銅粉を、Al、Si、Ti、Zr、Ce、及びSnからなる群から選択された元素を含むアルカリ性の表面付着試薬の溶液と混合した後に分離して、表面付着試薬処理された銅粉を得る工程、
    によって行われる、請求項6に記載の方法。
  8. アルカリ性の表面付着試薬の溶液が、アミノ基を有するカップリング剤の水溶液である、請求項7に記載の方法。
  9. アミノ基を有するカップリング剤が、アミノシラン、アミノ含有チタネート、アミノ含有アルミネートからなる群から選択された1種以上のカップリング剤である、請求項8に記載の方法。
  10. 表面付着試薬の溶液が、中性又は酸性のカップリング剤の溶液である、請求項6に記載の方法。
  11. 中性又は酸性のカップリング剤が、中性又は酸性の、シラン、チタネート又はアルミネートである、請求項10に記載の方法。
  12. 表面付着試薬処理された銅粉を、水性溶媒によって洗浄する工程、
    を含む、請求項6〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 請求項6〜12のいずれかに記載の方法によって製造された、表面処理された銅粉。
  14. 請求項1〜5又は請求項13に記載の表面処理された銅粉を含む導電性ペーストを、400〜1000℃の範囲の温度で焼結して、電極を製造する方法。
  15. 焼結が、非還元性雰囲気で行われる、請求項14に記載の方法。
  16. 非還元性雰囲気が、大気圧の気体窒素中である、請求項15に記載の方法。
  17. 請求項14〜16のいずれかに記載の方法によって製造された、電極。
  18. 請求項1〜5のいずれかに記載の銅粉を含む導電性ペースト。
  19. さらにガラスフリットを含む請求項18に記載の導電性ペースト。
  20. 請求項18〜19のいずれかに記載の導電性ペーストを用いて製造された電極。
  21. 請求項20の電極がSi結晶太陽電池の裏面のAl層上に形成されている電極。
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