JP2015119664A - 二枚貝の蓄養方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水揚げした二枚貝を蓄養立体区画の水面下に沈設した蓄養容器内に収容し、外部天然環境水を流動的に供給して、蓄養立体区画内の蓄養環境水を入替えながら、短期間で被蓄養個体を肥育可能とする。
【解決手段】天面が開口し他面に取水口7と排水口6を備えた蓄養水槽1を餌料に恵まれた天然水域に蓄養立体区画として構設するとともに、水揚げされた二枚貝(被蓄養個体に同じ)を、水を透過し、かつ、該被蓄養個体が脱落しない構造の1又は複数の蓄養容器5に収容し、該蓄養容器5を蓄養水槽1内で水面下に没水させて配置し、天然水域の任意の水深から餌料を含んだ天然環境水を取水口7を介し動力源2を利用して槽内導入し、自然水流よりも大きい流量で連続的に蓄養容器5に供給し、排水口6から槽外へ排出することにより、該蓄養水槽1内の蓄養環境水を入替えながら所定期間にわたり被蓄養個体を肥育するようにしている。
【選択図】 図1
【解決手段】天面が開口し他面に取水口7と排水口6を備えた蓄養水槽1を餌料に恵まれた天然水域に蓄養立体区画として構設するとともに、水揚げされた二枚貝(被蓄養個体に同じ)を、水を透過し、かつ、該被蓄養個体が脱落しない構造の1又は複数の蓄養容器5に収容し、該蓄養容器5を蓄養水槽1内で水面下に没水させて配置し、天然水域の任意の水深から餌料を含んだ天然環境水を取水口7を介し動力源2を利用して槽内導入し、自然水流よりも大きい流量で連続的に蓄養容器5に供給し、排水口6から槽外へ排出することにより、該蓄養水槽1内の蓄養環境水を入替えながら所定期間にわたり被蓄養個体を肥育するようにしている。
【選択図】 図1
Description
本発明は、二枚貝の蓄養方法に係り、詳しくはプランクトン(餌料に同じ)を摂食して生長しその外殻が出荷サイズに達した二枚貝を採捕又は収穫(以下、水揚げと総称する)した後、該二枚貝(被蓄養個体に同じ)を生きたまま一時的に蓄養環境下に置いて浄化、治癒、栄養強化、肥育、出荷調整その他の目的管理を行う二枚貝の蓄養方法に関する。
ここで、蓄養とは、収穫した
養殖魚貝類、又は採捕した天然魚貝類を市場に出荷する前に、これらの魚貝類を浄化、治癒、栄養強化、出荷調整、肥育、シーズン調整などの目的で一定期間、生簀などに収容しておくことである。本発明は、二枚貝の肥育を主目的とした蓄養技術に関するものである。また、プランクトンは、光合成独立栄養生物である植物プラントンを指称するものである。なお、魚貝類は魚介類と同義である。
養殖魚貝類、又は採捕した天然魚貝類を市場に出荷する前に、これらの魚貝類を浄化、治癒、栄養強化、出荷調整、肥育、シーズン調整などの目的で一定期間、生簀などに収容しておくことである。本発明は、二枚貝の肥育を主目的とした蓄養技術に関するものである。また、プランクトンは、光合成独立栄養生物である植物プラントンを指称するものである。なお、魚貝類は魚介類と同義である。
従来、プランクトンを餌料とする貝類など水産生物の養殖では、天然水域で養殖されその外殻が出荷サイズに達した水産生物の商品価値をさらに高めるために、出荷前の一定期間、養殖物を肥育促進水域に移動させる蓄養が一般的に行われている。
また、マガキなど一部の貝類では、生長効率の非常に悪い稚貝の時期に、人工的な水流を供給して稚貝を攪拌することで好適な生長と生残を得る手法が用いられている。
ところで、魚貝類の養殖において、魚貝類の発育を促進する技術はほぼ次の5つの手法に分類することが可能である。(1)餌料の供給、(2)餌料が豊富な水域への魚貝類の移動、(3)養殖容器の改善、(4)水流・循環・動揺の各制御、および(5)飼育環境の管理と改善である。
こうしたなかで、餌料の供給技術に関する先行特許文献として、特開2011−223908号公報〔下記特許文献1〕がある。
この公報には二枚貝の養殖方法および施設が開示されている。養殖池に二枚貝の稚貝の蒔き付けを行い、クルマエビの養殖池を繁殖池として利用して二枚貝の餌となるプランクトンを繁殖させ、繁殖池で培養したプランクトンを順次二枚貝の養殖池に供給しながら養殖を行う。このためアサリ等二枚貝の餌を安定して供給することができる。
また、特開2011−010637号公報〔下記特許文献2〕には、分子量540以下であり、かつ貯蔵糖あるいは貯蔵糖を構成している糖またはセロビオースを有効成分とする二枚貝飼育剤が開示されている。
この二枚貝飼育剤をアサリ、カキ、アコヤガイ、シジミ等の二枚貝の幼生飼育、初期稚貝の種苗生産、成貝養殖に適用することで、よく肥育した活性の高い貝類の生産が可能である。またこの二枚貝飼育剤を砂抜きの時など、成貝の蓄養時に適用することで、身痩せの防止だけでなく、クエン酸やコハク酸など呈味性の有機酸含量の増加したおいしい二枚貝を得ることにも役立つ。しかしながら、これら餌料の供給技術では、餌料に掛かる費用が蓄養コストを大幅に引き上げる懸念がある。
また、餌料が豊富な水域への魚貝類の移動に関する特許文献として、特開平10−234248号公報〔下記特許文献3〕がある。
この公報には殻付きカキの養殖方法が開示されている。カキの種付着器を筏垂下式にする養殖方法において、波が荒くなく台風にも影響されない養殖域に、垂下連を吊り下げた状態で一定期間養殖を行い、カキが所定の大きさに成長した段階で、垂下連を一旦引き揚げて、垂下連のまま又は垂下連からネット袋にカキを入れ替えて、別途はなれたプランクトンの豊富な身入り漁場へと移動させて、垂下連又はネット袋を再度吊り下げて養殖を行い、殻付き状態のままでカキを大きく成長させる。しかしながら、この技術では、養殖域から身入り漁場への移動のための労力を必要とする。垂下連からネット袋へのカキの入れ替えを選択する場合にはさらに多くの労力を必要とする。
養殖容器の改善に関する先行特許文献として、特表平11−503020号公報〔下記特許文献4〕がある。この公報には養殖対象物である軟体動物が使用中にコンテナの中で転動する養殖装置が開示されている。
ここでは、軟体動物を養殖するための回転可能に支持されたコンテナと、水位の変化に応答する浮揚部材、この浮揚部材に回転可能に取り付けられた梃子と、浮揚部材と梃子の動きに応答してコンテナの回転運動を達成する手段とを備え、コンテナの回転によって軟体動物を栄養物に均等に接近させることで、軟体動物の均一な成長が可能となり、さらに成長フリルを除去することによって均一な貝殻形状になる。しかしながら、この技術では、コンテナの製造コストが蓄養コストを引き上げる懸念や、コンテナへの各種海洋付着物による回転阻害の懸念がある。
また、水流・循環・動揺の各制御に関する先行特許文献として、特開2006−304676号公報〔下記特許文献5〕がある。この公報には海産稚貝の飼育方法が開示されている。採苗後の海産稚貝を中間育成するための海産稚貝の飼育方法の改善を目的とし、底面をメッシュ形成した飼育容器に採苗後の海産稚貝を収容して海水中に半沈設又は半没水設置し、容器内に海水を給排しながら育成する。
ここでは、飼育容器は樹脂製ポットで、これらは海面筏から懸垂され、波浪により揺動又は振動可能に保持される。また、海水の給排は、餌料が豊富で付着生物の少ない水深から採取した海水を容器開口上部から流下供給し容器底部より開放排水する。
しかしながら、この技術は稚貝の中間育成技術であり、この技術を外殻が出荷サイズにまで成長したカキへ適用すると、養殖水域面積当りの蓄養数に限界があり効率的な蓄養ができないという懸念がある。
また、実用新案登録第3108828号公報〔下記特許文献6〕には貝類を蓄養する循環蓄養装置が開示されている。この装置は、蓄養水槽、フィルター槽、濾過槽、殺菌槽、熱交換器付ポンプ槽によって一体的に構成される。
その蓄養水槽には、底部の所定位置に排水口を設けると共に、各種構成材料よりなる仕切板に縦設し、この仕切板には、一方の端部を壁面等に固定部を設けて取着け、他方の端部には所定間隔の開放した循環流水路を形成して一方の循環を強制的に流水させる。これにより新鮮な海水等を供給し成育と蓄養とを著しく向上できるとしている。しかしながら、この技術は陸上での蓄養技術のため、天然水域での蓄養と比較し全体的にコスト高となる懸念がある。
また、飼育環境の管理と改善に関する先行特許文献として、特開2003−158942号公報〔下記特許文献7〕がある。この公報には養殖貝類用酸素供給装置及び養殖貝類用酸素供給方法が開示されている。
ここで、酸素供給装置はカキ、アコヤ貝あるいはホタテ貝等の貝類を養殖するための養殖筏に取付けられ、溶存酸素量の多い表層部の海水(表層水)を、溶存酸素量の少ない底層部へ供給する。これにより底層水の溶存酸素量を容易に増やして、底層水で養殖される貝類の生育を促進することができるとしている。しかしながら、この技術では貝類の斃死を防ぐことは可能であるが、肥育に必要となる餌料の摂取量は変わらないので、その肥育効果は大きくないという懸念がある。
さらに、特開2009−038999号公報〔下記特許文献8〕にはマガキ蓄養装置が開示されている。この装置には、身入状態に養殖されたマガキを蓄養温度に維持する蓄養恒温槽、この蓄養恒温槽に清浄海水を供給する海水前処理手段と、蓄養恒温槽内の海水を浄化して再使用に供する循環手段が備えられている。
この技術の目的は、安定した高品質のマガキを年間を通じて、特に海水の温度が上昇する時期にも供給することである。蓄養中は清浄な循環海水中に浮遊するプランクトンを餌としている。しかしながら、この技術は陸上での蓄養技術のため、天然水域での蓄養と比較し全体的にコスト高となる懸念がある。
まず、従来技術の問題点を総括すると、肥育促進水域を利用した二枚貝の蓄養工程における肥育は水域の餌量に頼ったものであり、餌量は随時変化するため、年間を通して一定の効果を得ることはできない。したがって、肥育促進水域の利用効果は比較的餌量が多い時期に限られていた。
また、稚貝期における人工水流供給による成長促進効果は、水流によって対象物が攪拌できるほど小さいサイズである稚貝期にその利用は限られており、商品サイズに達した蓄養対象物に対する餌の供給には利用できなかった。
また、二枚貝のうち、特に殻付きのカキ類、アサリ、シジミ、ハマグリなどでは、殻の大きさが市場へ出荷できる商品サイズに達していても、内部の身のサイズ・質量が殻の大きさに応じた十分な水準に達しているとは限らない。しかも内部の身のサイズ・質量は消費直前に開殻するまで生産者をはじめ、飲食店の調理人や消費者にはわからない。
この結果、調理人や消費者が殻付き二枚貝を調理あるいは消費するために開殻した際、身の小さい肥育不良の二枚貝を見出す場合が少なくない。
このため二枚貝の生産者は、肥育不良の個体数割合を見込んで注文数よりも多い数の二枚貝を出荷せざるを得ない状況にある。そこで、年間を通して水揚げ後の殻付き二枚貝の身のサイズ・質量をその殻の大きさに見合った高い水準に揃えるための短期間高効率肥育技術が求められていた。
これらの問題点に対し、上記特許文献に記載された公知技術は一定の効果を示す。しかしながら、これらの技術についても費用対効果や効率性に関する課題が認められる。以下(イ)〜(ホ)に、主な懸念としてまとめる。
(イ)餌料に掛かる費用が蓄養コストを大幅に引き上げる懸念がある。
(ロ)多くの労力とそれに伴うコストを必要とする場合があることへの懸念がある。
(ハ)蓄養容器コストが蓄養コストを引き上げる懸念がある。
(ニ)蓄養水域面積当りの蓄養数の限界から生じる非効率性への懸念がある。
(ホ)陸上での蓄養技術のため、天然水域での蓄養と比較し全体的にコスト高となる懸念がある。
(ロ)多くの労力とそれに伴うコストを必要とする場合があることへの懸念がある。
(ハ)蓄養容器コストが蓄養コストを引き上げる懸念がある。
(ニ)蓄養水域面積当りの蓄養数の限界から生じる非効率性への懸念がある。
(ホ)陸上での蓄養技術のため、天然水域での蓄養と比較し全体的にコスト高となる懸念がある。
本発明者らは、上記課題や懸念を解決するために鋭意研究を行った結果、天然水域の蓄養立体区画(代表的には半閉鎖的な水槽)において、動力を利用して天然水域の水(天然環境水に同じ)を取水し、水流を発生させて蓄養対象物(被蓄養個体に同じ)に流動供給することにより、蓄養環境下で天然環境水に含まれるプランクトンの摂食機会又は摂餌量を増補し、普通肥育の場合よりも短期間で好適な肥育促進効果を発揮する人工的な管理環境下での蓄養手法を開発した。なお、蓄養環境が人工的な管理環境として設定されるという点で、天然水域の蓄養立体区画の構設という設置条件は、天然水域沿岸に陸上設置した蓄養設備(水槽や動力源を含む)に代替することも考慮されてよい。
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、上記課題を解消し、水揚げした二枚貝を蓄養立体区画の水面下に沈設した蓄養容器内に収容し、天然環境水を流動的に供給して、蓄養立体区画内の蓄養環境水を入替えながら、所定期間にわたり被蓄養個体を肥育するようにしたことを特徴とする二枚貝の蓄養方法を提供するものである。
課題を解決するために本発明は、二枚貝の蓄養方法において、
水揚げされた二枚貝(被蓄養個体に同じ)を透水性の蓄養容器に収容し、天然水域の任意の水深から餌料を含んだ天然環境水を動力を利用して供給し、所定期間にわたり餌料の摂食機会又は摂餌量を増補することにより被蓄養個体を肥育するようにしたことを特徴とするものである。
水揚げされた二枚貝(被蓄養個体に同じ)を透水性の蓄養容器に収容し、天然水域の任意の水深から餌料を含んだ天然環境水を動力を利用して供給し、所定期間にわたり餌料の摂食機会又は摂餌量を増補することにより被蓄養個体を肥育するようにしたことを特徴とするものである。
より詳しくは、上記二枚貝の蓄養方法において、天面が開口し他面に取水口と排水口を備えた蓄養水槽を、餌料に恵まれた天然水域に蓄養立体区画として構設又は該天然水域沿岸に陸上設置するとともに、水揚げされた二枚貝(被蓄養個体に同じ)を、水を透過し、かつ、該被蓄養個体が脱落しない構造の1又は複数の蓄養容器に収容し、該蓄養容器を前記蓄養水槽内で水面下に没水させて配置し、前記天然水域の任意の水深から餌料を含んだ天然環境水を前記取水口を介し動力を利用して前記蓄養水槽内に導入し、自然水流よりも大きい流量で連続的に前記蓄養容器に供給し、前記排水口から前記蓄養水槽外へ排出することにより、該蓄養水槽内の蓄養環境水を入替えながら所定期間にわたり前記被蓄養個体を肥育するようにしたことを特徴とするものである。
本発明によれば、これまで利用してきた天然水域等を利用して、従来の天然水域のコンディション(設置環境に限定されるプランクトン量)に依存した肥育より効果的な蓄養肥育を行うことができる。
しかも、肥育操作(蓄養管理)が天然水域(天然環境水)を利用して短期間で効果的に行えるので、高品質、計画生産が可能であり商品価値の向上に寄与することが期待できる。さらに、本発明方法は環境水に栄養添加するものではないため、環境負荷がほとんどない。
後述するように、本発明方法は、所謂シングルシード養殖技術、とりわけマガキのシングルシード養殖の出荷前肥育技術を確立し、オイスターバー等への安定供給が期待できる点で、産業上の利用可能性は大である。
本発明を実施するための形態は、上記構成において、プランクトンを摂食して生長しその外殻が出荷サイズに達した二枚貝を水揚げした後、該二枚貝(被蓄養個体に同じ)を生きたまま一時的に蓄養環境下に置いて浄化、治癒、栄養強化、肥育、出荷調整その他の目的管理を行う二枚貝の蓄養方法であって、天然水域に半閉鎖的な蓄養立体区画を設け、該区画内の水面下に透水可能な蓄養容器を沈設し、かつ、被蓄養個体を収容して蓄養環境を構設し、動力源を用いて前記蓄養立体区画近傍の外部天然資源水を導入し、かつ、水流を発生させて前記被蓄養個体に供給することにより、前記区画内の蓄養環境水を入替えながら餌料の摂食機会又は摂餌量を増補するようにしたことを特徴とするものである。
好適な実施形態では、半閉鎖的な蓄養立体区画が、天面と他面の給排水に係る操作領域を開放した蓄養水槽を用いるものであり、透水可能な蓄養容器が網籠である。
また、水流の発生が、蓄養立体区画の全周囲から方向選択されるものであり、外部天然環境水の導入が動力を利用して天然水域の任意の水深から取水選択されるものであり、蓄養環境水の入替えが前記蓄養立体区画内外への給排水操作である。通常、水深範囲は0.2〜5mである。
また、被蓄養個体がカキ、アサリ、シジミその他の二枚貝であり、蓄養立体区画内に並列設置および/または多段設置したそれぞれの蓄養容器に1個体又はそれ以上の個体群を収容するものである。
さらに、至適にはカキがマガキであって、養殖により出荷サイズ(後述の商品サイズに同じ)に成長した個体を水揚げして蓄養に供するものである。
本発明の一実施例を添付図面を参照して以下詳説する。
図1は、本発明方法の原理を示す蓄養装置の側面視概要説明図である。当然のことながら、蓄養装置は本発明方法を実施するために用いられるものである。
図1に示すように、棲息や養殖に適した天然水域に浮体とアンカー機能を持つ蓄養立体区画、具体的には半閉鎖的な蓄養水槽1を構設する。したがって、既存の養殖設備に付属する形態であってもよい。
蓄養水槽1は、動力源2を用いて起こした水流が拡散して効果を失うことを防ぐため、少なくとも3面以上を有する。これによって、動力源2から発生した水流は矢印3の方向へ流れる。この水流の方向は、横方向の他に下から上、上から下の垂直方向や円方向などであっても良い。また、蛇行させることで肥育効果が向上する可能性も期待できる。
被蓄養個体は蓄養容器5に収容し、水流が行き届くようにする。蓄養容器5は水域の水面4に依存して冠水するよう蓄養水槽1内に沈設する。水流は最終的に排水口6若しくは容器の天面(上面)から排水する。取水口7は、任意の水深から取水できる構造とし、使用する季節の水域の水温や餌環境に応じて水深を調節する機能を持たせる。
要するに、外部天然環境水の槽内供給を受けた蓄養環境水が、カキなどの蓄養対象物(被蓄養個体)にとってプランクトンの摂食機会又は摂餌量を増補するような流動環境(入替えを含む)を創出できればよい。
図2は、本発明方法の工程フロー説明図である。
図2に示すように、本発明方法は、以下の処理工程(処理操作をともなう)を包含するものである。
(1)水揚げ後の二枚貝をサイズ選別して被蓄養個体とする個体選別工程。
(2)被蓄養個体を蓄養容器ごとに所定個数(重なり合わない程度の被蓄養個体群)を収容する容器収容工程。
(3)天然水域に構設した半閉鎖的な蓄養立体区画内の蓄養環境水中に蓄養容器を垂下(沈水)する容器沈設工程。
(4)蓄養立体区画外の天然環境水を任意の水深から汲み上げる取水工程。
(5)取水した天然環境水を動力を利用して(水流発生手段を介して)蓄養立体区画内に導入して蓄養容器内の被蓄養個体群に連続的に供給し、蓄養環境水を入れ替えながら蓄養管理を推進する給排水工程。
(1)水揚げ後の二枚貝をサイズ選別して被蓄養個体とする個体選別工程。
(2)被蓄養個体を蓄養容器ごとに所定個数(重なり合わない程度の被蓄養個体群)を収容する容器収容工程。
(3)天然水域に構設した半閉鎖的な蓄養立体区画内の蓄養環境水中に蓄養容器を垂下(沈水)する容器沈設工程。
(4)蓄養立体区画外の天然環境水を任意の水深から汲み上げる取水工程。
(5)取水した天然環境水を動力を利用して(水流発生手段を介して)蓄養立体区画内に導入して蓄養容器内の被蓄養個体群に連続的に供給し、蓄養環境水を入れ替えながら蓄養管理を推進する給排水工程。
なお、天然環境水を給排可能な沿岸に蓄養水槽を陸上設置する場合〔図示省略〕も考慮されてよい(上述)。
実験的事実に基づく本発明方法の至適な実施例であって、養殖により商品サイズ(先述の出荷サイズに同じ)に達したマガキを水揚げし、被蓄養個体(群)としてフィールド試験を行ったものである。
参考までに、本出願人の一人であるかなわ水産株式会社が採用している商品サイズの選別方法(識別・判断方法) を例示しておく。〔上記(1)個体選別工程〕
1.選別機のφ45mm孔を通過できなかったマガキを合格とする。
2.同φ45mm孔を通過したマガキのうち、殻付きの重量が40g以上60g以下のものは合格とする。
1.選別機のφ45mm孔を通過できなかったマガキを合格とする。
2.同φ45mm孔を通過したマガキのうち、殻付きの重量が40g以上60g以下のものは合格とする。
図3は、本発明方法を実施するために用いる蓄養装置の側面視概要説明図である。ここでは、図1とは異なる符号体系を用いている。なお、筏を海面に固定するアンカーは図示をしていない。当然のことながら、図3から看取される装置規模の拡縮は、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて許容される。
試験区として、蓄養水槽303 は上面が開口した5面の直方体としている。より具体的には、垂下式養殖に使用されるフロート102 付き筏101a(101b)の水面下にFRP製水槽〔長さ:約10m,幅:約2m,深さ:約0.6m〕を沈設し、筏フレーム101a(101b)から蓄養容器を垂下(懸吊)している。図示の蓄養容器301 は、所謂、提灯かごである。一般的な提灯かごの底面は350mm角である。
この寸法形状の場合、商品サイズのマガキがお互いに重なり合わないで蓄養できるマガキ収容個数は、1かごあたり約50個である。なお、蓄養容器として提灯かご以外にも公知の積層型樹脂製かご〔図示省略〕を用いる場合がある。いずれの蓄養容器も、それらの表面に生物付着防止処理がなされることが好ましい。
なお、図示のとおり、蓄養水槽303 の底面から約100mm上に網304 を設置するのが好ましい。蓄養容器301 が蓄養水槽303 の底面にべた付きになって、蓄養容器301 内外の水流が抑制されたり、停止したりする弊害を防止するためである。
動力源として小型船舶201 用の推進機関である回転プロペラ202 を用い、FRP製水槽303 に開口部303a(取水口に同じ)を設けて水流Bを供給した。水流速度は約0.05m/secから約1.00m/secまでの範囲で設定が可能である。
図示の提灯かご301 の設置構成(直列2段)では、0.25m/secの水流速度で蓄養した。流速が0.25m/secより大きいと、提灯かご301 が傾いて、マガキ302 ・・302 (被蓄養個体群)が寄り集まってしまうという不都合が発生するからである。
そして、図示のとおり、回転プロペラ202 によって発生した水流を、FRP製水槽303 の開口部303a(側壁面がない片側短辺)から水槽303 内に導入し、対面の短辺から水槽303 の外部へオーバーフローさせるようにしている。
そこで、商品サイズに達したマガキ1,000個を水揚げし、FRP製水槽303 に20体(横方向2列×縦方向5列×深さ方向2段)の提灯かご301 に50個ずつ収容し、本発明方法により3週間蓄養した。
同時に対照区として、同じロットの(同じ海域から水揚げした)商品サイズに達したマガキ100個を提灯かご2段に分散収容し、同海域に垂下し、試験区と同じ期間で通常肥育を行った。〔図示省略〕
3週間後にそれぞれの蓄養方法で肥育したマガキを任意に各50個抽出し、これらのマガキの全重量とむき身(軟体部)の重量を測定し、全重量に対するむき身の割合〔身入率(%)=むき身重量 [A] /全重量 [B] ×100〕を算出して比較した。その結果を表1に示す。
表1に示すとおり、通常肥育のマガキでは平均29.9%だったのに比べ、本発明方法により蓄養したマガキでは平均31.8%と、むき身部分の重量が相対的に大きくなる肥育効果が確認できた。なお、表1中に記載の身入れ促進機とは本発明方法における蓄養装置(の蓄養容器)を指称するものである。
品質の特徴としては、深い殻で身入りが良く白色部分(蓄積物質であるグリコーゲン)の呈色も良いこと、丸みがあり若い身特有の歯触りが良いこと等が挙げられる。もちろん、高度衛生管理により海外の食品衛生規格(例えば、アメリカのFDA)にも対応可能である。
種苗生産(屋内種苗育成)から中間育成を経て海面養殖(シングルシード養殖)を行う育成期間の短縮化に加えて、水揚げ後出荷前に本発明の蓄養手法を導入することにより、高度衛生管理を含む品質を向上した生食用商品規格の標準化が可能であり、この蓄養手法を確立をもって斯界に貢献することが期待できる。
特に、産地を展開し各地から規格商品を集荷可能であり、地域ブランド、国産ブランドのいずれの銘柄でも統一規格の生食用商品を市場供給できるという利点がある。カキに関して至適な利用先としては、近年のオイスターバーと指称される提供場所があり、海外のオイスターバーへの商品供給も問題なく対応可能である。
1 蓄養水槽〔蓄養立体区画〕
2 動力源
3 水流の方向
4 水面
5 蓄養容器
6 排水口
7 取水口
101a 筏フレーム
101b 筏フレーム
102 フロート
201 小型船舶
202 回転ブロペラ〔動力源〕
301 提灯かご〔蓄養容器〕
302 マガキ〔被蓄養個体〕
303 FRP製水槽〔蓄養水槽〕
303a 開口部〔取水口〕
304 網
A 海面
B 水流
C オバーフロー
2 動力源
3 水流の方向
4 水面
5 蓄養容器
6 排水口
7 取水口
101a 筏フレーム
101b 筏フレーム
102 フロート
201 小型船舶
202 回転ブロペラ〔動力源〕
301 提灯かご〔蓄養容器〕
302 マガキ〔被蓄養個体〕
303 FRP製水槽〔蓄養水槽〕
303a 開口部〔取水口〕
304 網
A 海面
B 水流
C オバーフロー
Claims (7)
- 二枚貝の蓄養方法において、
水揚げされた二枚貝(被蓄養個体に同じ)を透水性の蓄養容器に収容し、天然水域の任意の水深から餌料を含んだ天然環境水を動力を利用して供給し、所定期間にわたり餌料の摂食機会又は摂餌量を増補することにより被蓄養個体を肥育するようにしたことを特徴とする二枚貝の蓄養方法。 - 請求項1記載の二枚貝の蓄養方法において、
天面が開口し他面に取水口と排水口を備えた蓄養水槽を、餌料に恵まれた天然水域に蓄養立体区画として構設又は該天然水域沿岸に陸上設置するとともに、水揚げされた二枚貝(被蓄養個体に同じ)を、水を透過し、かつ、該被蓄養個体が脱落しない構造の1又は複数の蓄養容器に収容し、該蓄養容器を前記蓄養水槽内で水面下に没水させて配置し、前記天然水域の任意の水深から餌料を含んだ天然環境水を前記取水口を介し動力を利用して前記蓄養水槽内に導入し、自然水流よりも大きい流量で連続的に前記蓄養容器に供給し、前記排水口から前記蓄養水槽外へ排出することにより、該蓄養水槽内の蓄養環境水を入替えながら所定期間にわたり前記被蓄養個体を肥育するようにしたことを特徴とする二枚貝の蓄養方法。 - 二枚貝の蓄養方法において、
プランクトン(餌料に同じ)を摂食して生長しその外殻が出荷サイズに達した二枚貝を採捕又は収穫(以下、水揚げと総称する)した後、該二枚貝(被蓄養個体に同じ)を生きたまま一時的に蓄養環境下に置いて浄化、治癒、栄養強化、肥育、出荷調整その他の目的管理を行う二枚貝の蓄養方法であって、
垂下式養殖を行う天然水域に半閉鎖的な蓄養立体区画を設け、該区画内の水面下に透水可能な1又は複数の蓄養容器を沈設し、かつ、被蓄養個体を収容して蓄養環境を構設し、動力源を用いて前記蓄養立体区画近傍の外部天然資源水を導入し、かつ、水流を発生させて前記被蓄養個体に供給することにより、前記区画内の蓄養環境水を入替えながら餌料の摂食機会又は摂餌量を増補するようにしたことを特徴とする二枚貝の蓄養方法。 - 半閉鎖的な蓄養立体区画が、天面と他面の給排水に係る操作領域を開放した蓄養水槽を用いるものであり、透水可能な蓄養容器が網籠である請求項3記載の二枚貝の蓄養方法。
- 水流の発生が小型船舶の推進機関を利用するものであり、
外部天然環境水の導入が天然水域の任意の水深から取水選択されるものであり、
蓄養環境水の入替えが蓄養立体区画内外への給排水操作であって、オーバーフローによる排水を含むものである請求項3又は4記載の二枚貝の蓄養方法。 - 被蓄養個体がカキ、アサリ、シジミその他の二枚貝であり、蓄養立体区画内に並列設置および/または多段設置したそれぞれの蓄養容器に1個体又はそれ以上の個体群を収容するものである請求項1乃至3のいずれか1項記載の二枚貝の蓄養方法。
- カキがマガキであって、養殖により出荷サイズに成長した個体を水揚げして蓄養に供するものである請求項6記載の二枚貝の蓄養方法。
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