JP2015110708A - 黄色蛍光体 - Google Patents
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Abstract
【課題】青色光に対する励起特性が優れた、黄色蛍光体を提供することを目的とする。【解決手段】LaSi3N5と同じ斜方晶系のP212121を空間群とし、下記の式1:(式1中、0<x<1、0<y<0.1、0<1−x−y、0≰z≰2であり;AはCa、Ba、Sr、及びMgからなる群より選択される少なくとも1つであり;LnはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びYからなる群より選択される少なくとも1つである。)で表わされる、黄色蛍光体が提供される。【選択図】なし
Description
本発明は、青色光に対する励起特性が優れた、黄色蛍光体に関する。
近紫外発光ダイオード(近紫外LED:light emitting diode)や青色発光ダイオード(青色LED)と、黄色に発光する蛍光体(黄色蛍光体)とを組み合わせたLEDランプは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)や一般照明など、産業界において幅広く利用されている。
かようなLEDランプに応用可能な酸窒化物蛍光体として、特許文献1には(A1−x,Eux)DaEbNcOd(式中、Aはバリウム(Ba)を必須とするアルカリ土類金属元素を示し、Euはユーロピウム(Eu)を必須とする付活剤元素を示し、Dはケイ素(Si)を必須とする4価の金属元素を示し、Eはアルミニウム(Al)を必須とする3価の金属元素を示し、xは0.0001≦x≦0.20を満たす数を示し、a、b、c及びdは、それぞれ、1.2≦a<2、1<b≦1.8、2.2≦c<3、2<d≦2.8、2.6<a+b<3.4、4.6<c+d<5.4を満たす数を示す。)で表される組成を有する結晶相を含むことを特徴とする蛍光体に関する発明が開示されている。
また、特許文献2には、400から480nmまでの範囲におけるピーク波長を有するダイオードより放出された光の一部を吸収する、一般式:AE1−y−zLnySi3−xAlx−aBaO1+x−yN4−x+y:Euz(AEは、Sr、Ca、Ba、Mg及びZnの群より選択されたアルカリ土類金属であり;Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びYの群より選択されたランタニドの金属であり;Bは、ホウ素、ガリウム及びスカンジウムの群より選択された三価の金属であり、且つ0≦a<2、0≦x<2、0≦y≦1、0.001<z≦0.1である。)で表わされる発光体を含む照明系に関する発明が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の酸窒化物蛍光体は、黄色ではなく、青〜緑色に発光するものであり、さらには、ランタン(La)を含めたランタノイド元素と第2族元素との共存については開示されていない。
また、特許文献2では、ランタノイド元素と第2族元素との共存については、製造の難しさもあってか、実施例において開示されていない。実際に製造可能な程度に開示されている範囲は、上記AE及びLnが全てストロンチウム(Sr)であるもの(すなわち、Lnが含まれないもの。)に止まっている。また、特許文献2に開示の蛍光体については、励起スペクトルのピーク波長における励起強度を100%としたとき、波長450nmにおける励起強度が50%に満たないものであり、青色光による励起特性が十分なものではなかった。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、青色光に対する励起特性が優れた、黄色蛍光体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の問題を解決すべく、鋭意研究を行った結果、下記の式1で表わされる黄色蛍光体によって上記課題が解決されることを見出し、本願発明の完成に至った。本願発明は、以下の内容をその骨子とする。
(1) 下記の式1:
(1) 下記の式1:
(式1中、0<x<1、0<y<0.1、0<1−x−y、0≦z≦2であり;AはCa、Ba、Sr、及びMgからなる群より選択される少なくとも1つであり;LnはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びYからなる群より選択される少なくとも1つである。)
で表わされる、黄色蛍光体。
(2) 波長300nm〜500nmの範囲の光で励起したとき、500nm〜590nmの範囲に発光ピークを有する、(1)に記載の黄色蛍光体。
(3) 励起スペクトルのピーク波長における励起強度Ex(max)と、励起波長450nmにおける励起強度Ex(450)とが、下記の式2を満たす、(1)または(2)に記載の黄色蛍光体。
で表わされる、黄色蛍光体。
(2) 波長300nm〜500nmの範囲の光で励起したとき、500nm〜590nmの範囲に発光ピークを有する、(1)に記載の黄色蛍光体。
(3) 励起スペクトルのピーク波長における励起強度Ex(max)と、励起波長450nmにおける励起強度Ex(450)とが、下記の式2を満たす、(1)または(2)に記載の黄色蛍光体。
(4) 前記LnがLaである、(1)〜(3)のいずれか1つに記載の黄色蛍光体。
(5) 前記AがCaまたはSrである、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の黄色蛍光体。
(6) 波長380nm〜480nmの範囲の光を発する光源と、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の黄色蛍光体とを含む、発光素子。
(5) 前記AがCaまたはSrである、(1)〜(4)のいずれか1つに記載の黄色蛍光体。
(6) 波長380nm〜480nmの範囲の光を発する光源と、(1)〜(5)のいずれか1つに記載の黄色蛍光体とを含む、発光素子。
本発明によれば、青色光に対する励起特性が優れた、黄色蛍光体が提供される。
本発明に係る黄色蛍光体は、LaSi3N5と同じ斜方晶系のP212121を空間群とする結晶構造を有し、青色光に対する励起特性が優れる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味し、「重量」と「質量」、「重量%」と「質量%」及び「重量部」と「質量部」は同義語として扱う。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
本発明は、青色光に対する励起特性が優れた、黄色蛍光体に関する。
本発明に係る蛍光体は、下記の式1で表わされ、黄色に発光する蛍光体(黄色蛍光体)である。
式1中、0<x<1、0<y<0.1、0<1−x−y、0≦z≦2であり;AはCa、Ba、Sr、及びMgからなる群より選択される少なくとも1つであり;LnはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びYからなる群より選択される少なくとも1つである。
式1中、xは、0.005<x<0.8であることが好ましく、0.01<x<0.75であることがより好ましく、0.015<x<0.67であることがさらに好ましい。
式1中、yは、0.005<y<0.1であることが好ましく、0.01<y<0.075であることがより好ましく、0.015<y<0.06であることがさらに好ましい。
式1中、1−x−yは、0.1<1−x−y<0.99であることが好ましく、0.225<1−x−y<0.98であることがより好ましく、0.27<1−x−y<0.97であることがさらに好ましい。
式1中、LnはLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びYからなる群より選択される少なくとも1つ(以降、「本発明におけるランタノイド元素」、とも称する。)であるが、輝度の観点から、Y、Gd、Ce、La、またはLuが好ましい。温度特性の観点から、La、Ce、Gd、またはYがより好ましく、Laが更に好ましい。これらの本発明におけるランタノイド元素のうち、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
式1中、AはCa、Ba、Sr、Mgのうち少なくとも1つ(以降、「本発明における第2族元素」、または単に「第2族元素」とも称する。)であるが、Ca、Sr、Mgが好ましく、Ca、Srがより好ましい。Caに少量のSrやMgを添えることも可能である。これらの第2族元素のうち、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明に係る黄色蛍光体はLaSi3N5型であるが、式1で表わされる通り、Siの一部がAlで置換されてもよい。AlによるSiサイトの置換量zは、1未満が好ましい。すなわち、式1においてzは、例えば0≦z<1である。式1のzが1未満であることにより、蛍光体の発光ピークが長波長側となり、さらに、青色光に対する励起特性が優れた黄色蛍光体を得ることができる。
Ln(Ln3+)を第2族元素A(A2+)で置き換えると、また、Si元素(Si4+)をAl元素(Al3+)で置き換えると、カチオンの変化(Ln3+→A2+、Si4+→Al3+)に伴う電荷補償の観点から、窒素(N3−)が酸素(O2−)に置換される。即ち、式1において、xLn→xA、及び、zSi→zAlの置換により、カチオンのプラスの電荷がx+zモルだけ減少すると、アニオンでは、酸素がx+zだけ増えて、窒素がx+zだけ減少することにより、マイナスの電荷がx+zだけ減少するので、電荷がバランスされる。
上記のLnから第2族元素Aへの置換と、窒素から酸素への置換とが行われることにより、原子間の距離、配位角度、及び、結合の電子状態が変化し、結晶性が変化する。本発明の技術的範囲を限定するものではないが、これらの結晶構造の変化により、青色光に対する励起特性が優れた黄色蛍光体を得ることができるものと考えられる。
本発明における第2族元素は、Ln1モルに対して、0.005〜5モルであることが好ましく、0.01〜3モルであることがより好ましく、0.015〜2モルであることが更に好ましい。
本発明に係る黄色蛍光体は、LaSi3N5と同じ斜方晶系のP212121を空間群とし、ランタノイド元素と第2族元素とが共存した結晶構造を有する。ランタノイド元素と第2族元素とが共存することにより、賦活元素であるEu2+が入る場所が結晶構造に作られるため、3価の賦活元素であるCe3+が置換された時より、発光波長が長波長側にシフトするという効果が得られる。
特許文献2のように、ランタノイド元素と第2族元素とが共存するのではなく、これらのうち第2族元素のみが存在すると、窒素の5分の1が酸素に置換されることになる。窒素が酸素に置き換える割合が増えるほど、賦活剤の周辺の共有結合性が下がる結果になる。このような傾向は、Siの代わりにAlを置換することによっても、置換するAlの量によって酸素の数が増えるため、同じ効果が得られる。賦活剤の周辺の共有結合性が下がると、本願技術分野では、電子雲膨張効果(Nephelauxetic effect)が下がり、450nm付近の長波長領域の励起強度が下がる恐れがあることで知られている。本発明では、Nephelauxetic effect増大効果を持つランタノイド元素と、Eu2+のサイトを提供できる第2族元素を、LaSi3N5構造を維持しながらも共存させる手段により、課題を解決した。
式1に含まれるEuは、賦活剤(付活剤)として機能する。Euは、Ln1モルに対して、0.005〜0.12モルであることが好ましく、0.01〜0.08モルであることがより好ましく、0.015〜0.06モルであることが更に好ましい。Ln1モルに対してEuが0.005モル以上含まれていることにより、十分に賦活され、発光ピークが大きくなり、0.12モル以下であることにより濃度消光による発光スペクトルの減少を抑えることができる。なお、賦活剤としてはEuのみが含まれていても良いが、Ce、Pr、Mn、Eu、Tb、Yb等が微量成分として含まれていても良い。
本発明の黄色蛍光体は、焼成後、主たる結晶構造がLaSi3N5型であればよく、本発明の作用効果を損なわない程度に異なる結晶相を有することを妨げない。本発明の黄色蛍光体は、蛍光体全体に対して、異なる結晶相を10モル%含有してもよく、好ましくは5モル%以下にする。黄色蛍光体に含まれるLaSi3N5型の結晶構造の割合について、上限は特に制限されないが、好ましくは実質的に100%である。LaSi3N5は熱的安定性に優れるという特徴がある。
本発明の黄色蛍光体がLaSi3N5型結晶構造を有することを、図1〜4に例示するX線回折パターンを用いて説明する。図1〜4は、化1で表わされる蛍光体のX線回折パターンである。図1〜4に示す通り、本発明の蛍光体は、Cu Kα線源のX線回折パターンのプロファイルにおいて、2θが30°〜31°、31.5°〜32.5°に強度が最も強いピークを有することを特徴とする。
一実施態様においては、本発明の蛍光体は、式1で表わされる黄色蛍光体であって、波長300nm〜500nmの範囲の光で励起したとき、500nm〜590nmの範囲に発光ピークを有することが好ましい。本発明に係る蛍光体を波長300nm〜500nmの範囲の光で励起したとき、本発明の蛍光体が発する光の発光ピークは、より好ましくは波長510nm〜580nmの範囲であり、更に好ましくは波長520nm〜570nmの範囲であり、特に好ましくは波長530nm〜570nmの範囲である。
本発明の更に別の実施態様においては、本発明に係る黄色蛍光体は、式1で表わされ、該黄色蛍光体の励起スペクトルのピーク波長(励起ピーク)における励起強度Ex(max)と、励起波長450nmにおける励起強度Ex(450)とが、下記の式2を満たす。
式2における励起強度Ex(max)及びEx(450)は任意単位であり、分光蛍光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製F7000)によって測定できる励起強度である。これらの励起強度を求めるプロセスを以下に示す。まず、励起波長450nmにおける発光スペクトルを測定し、その発光ピークの波長を固定して励起スペクトルを測定する。この励起スペクトルの450nmでの高さが上述のEx(450)であり、この励起スペクトルの最大高さがEx(max)である。なお、実施例に添付した励起・発光スペクトルは、このプロセスによって得られたスペクトルである。
式2を満たす黄色蛍光体は、近紫外LEDや青色LED(例えば波長450nm)で励起したときの励起効率、特に青色光までの長波長側での励起効率が高いため、本願技術分野において現在主流になっている青色光を用いたLEDバックライトや照明に適用する場合に有利である。
式2においては、黄色蛍光体の励起スペクトルのピーク波長における励起強度Ex(max)に対する、励起波長450nmにおける励起強度Ex(450)が、50%以上であることが好ましいが、より好ましくは52%以上であり、さらに好ましくは60%以上である。励起ピークの波長の光で励起したときの励起強度に対する、波長450nmにおける励起強度の上限は、特に制限されないが、例えば100%以下である。
(黄色蛍光体の製造方法)
本発明に係る黄色蛍光体の原料として用いることができる化合物(原料化合物)は、特に制限されるものではなく、金属;金属の酸化物、窒化物、炭化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酢酸塩、ハロゲン化物、酸窒化物、硫酸塩等;から適宜、式1におけるAの原料、Euの原料、Lnの原料、Siの原料、またはAlの原料を選択すればよい。例えば、a)Aの原料としてCa、Ba、Sr、及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物、窒化物、炭酸塩、フッ化物や塩化物などのハロゲン化物、または硝酸塩;b)Euの原料としてEuの金属、酸化物、窒化物、炭酸塩、フッ化物や塩化物などのハロゲン化物、または酸窒化物;c)Lnの原料としてLnの金属、酸化物、窒化物、ケイ化物、炭酸塩、フッ化物や塩化物などのハロゲン化物、または酸窒化物;d)Siの原料としてSiの酸化物、窒化物、炭酸塩、硝酸塩、または水酸化物;e)Alの原料としてAlの酸化物、窒化物、フッ化物や塩化物などのハロゲン化物、または炭化物、等を採用することができる。
本発明に係る黄色蛍光体の原料として用いることができる化合物(原料化合物)は、特に制限されるものではなく、金属;金属の酸化物、窒化物、炭化物、炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酢酸塩、ハロゲン化物、酸窒化物、硫酸塩等;から適宜、式1におけるAの原料、Euの原料、Lnの原料、Siの原料、またはAlの原料を選択すればよい。例えば、a)Aの原料としてCa、Ba、Sr、及びMgからなる群より選択される少なくとも1種の酸化物、窒化物、炭酸塩、フッ化物や塩化物などのハロゲン化物、または硝酸塩;b)Euの原料としてEuの金属、酸化物、窒化物、炭酸塩、フッ化物や塩化物などのハロゲン化物、または酸窒化物;c)Lnの原料としてLnの金属、酸化物、窒化物、ケイ化物、炭酸塩、フッ化物や塩化物などのハロゲン化物、または酸窒化物;d)Siの原料としてSiの酸化物、窒化物、炭酸塩、硝酸塩、または水酸化物;e)Alの原料としてAlの酸化物、窒化物、フッ化物や塩化物などのハロゲン化物、または炭化物、等を採用することができる。
より具体的には、原料化合物として、Aの原料としてCaO、CaCO3、Ca(NO3)2、CaF2、CaCl2、BaO、BaCO3、Ba(NO3)2、BaF2、BaCl2、SrO、SrCO3、Sr(NO3)2、SrF2、SrCl2、MgO、MgCO3、Mg(NO3)2、MgF2、MgCl2等;Euの原料としてEu2O3、Eu2(CO3)3、Eu(NO3)3等;Lnの原料としてLaN、LaSi、La2O3、CeO2、Tb4O7、Yb2O3等;Siの原料としてSi3N4、SiO2、SiO、Si、SiC等;Alの原料としてAlN、Al2O3、Al4C3等;が例示できる。フラックスとしての効果を得るため、CeF2、AlF3、CaF2、YF3等のフッ化物を原料化合物として用いることもできる。
式1におけるOの原料やNの原料は、上記a)、b)、c)、d)、またはe)から供給されても良いし、焼成雰囲気(例えばN2ガス)から供給されても良い。上記a)、b)、c)、d)、またはe)をOまたはNの原料として用いることができるという点から、上記a)、b)、c)、d)、またはe)は酸化物または窒化物であることが好ましい。例えば、原料化合物としてEu2O3やAlNを用いる場合、これらの化合物に含まれる酸素(O)や窒素(N)を式1におけるOやNの原料とし、目標とする本発明の黄色蛍光体における酸素(O)や窒素(N)との割合から原料化合物の配合を設計することができる。
これらの原料化合物の使用量は、式1でのモル比を満たすように選択すればよい。例えば、原料としてSrCO3、Eu2O3、LaN、Si3N4、及びAlNを採用する場合、モル比が式1の組成比となるように原料化合物を秤量して混合する。本発明に係る黄色蛍光体の製造に際しては、これらの混合物を、大気雰囲気、または窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で焼成すればよい。
原料化合物の混合(混合工程)は、特に制限されるものではなく、従来公知の方法が採用でき、湿式法、乾式法のいずれであってもよい。
湿式法の場合、秤量した原料化合物と溶媒とを合一し、乳鉢と乳棒、ミキサー、ミルなどで混合する。溶媒としては、水;メタノール、エタノールなどのアルコール類;ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素溶媒;等を、1種単独で、または2種以上を混合して採用できる。原料化合物と溶媒とを1〜24時間混合した後、乾燥工程にて溶媒を除去する。乾燥温度は、特に制限されるものではないが、例えば50〜200℃である。乾燥工程には、オーブン等による加熱乾燥、噴霧乾燥などを採用すればよい。また、乾燥雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下等のいずれの条件であってもよいが、原料化合物の酸化を防止するため、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、または真空雰囲気下が好ましい。
乾式法によって混合する場合、溶媒を用いることなく、乳鉢と乳棒、ミキサー、ボールミル、ジェットミル等によって原料化合物を混合する。乾式法の場合、乾燥工程が必要ないため、作業効率がよく、原料化合物の酸化を防止しやすい。また、混合時の雰囲気は、大気雰囲気下、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、真空雰囲気下等のいずれの条件であってもよいが、原料化合物の酸化を防止するため、窒素雰囲気下、アルゴン雰囲気下、または真空雰囲気下が好ましい。特に、原料化合物としてLaN等の窒化物を使用すると、空気中の水分と反応し、容易に酸化物となる。従って、原料化合物として窒化物を使用する場合は、まず、LaN等の窒化物以外の原料化合物を所定の比率で混合し、その後にグローブボックス内で原料化合物に窒化物を混合する等、原料化合物の酸化を抑止しえる手段を採用することが好ましい。この時、雰囲気の水分及び酸素量は、いずれも0.1ppm以下であることが好ましい。
原料化合物の混合物を、篩を用い、所望のサイズに分級してもよい。
本発明に係る蛍光体の製造に際しては、混合した原料化合物を焼成する工程が含まれる。焼成工程は、原料化合物の混合物をアルミナ製、ジルコニア製、窒化ホウ素製、白金製、またはイリジウム製等の容器(坩堝など)に充填して行う。充填率は特に制限されないが、例えば10〜50%である。
焼成工程では、窒素雰囲気下若しくはアルゴン雰囲気下、または水素が1〜10モル%含まれた混合窒素ガスを用いた雰囲気下で行われる。
焼成工程では、例えば、1800〜2100℃、好ましくは1900〜2000℃で原料化合物の混合物の焼成を行う。本願発明においては、前記温度にて、例えば、1〜24時間、好ましくは2〜10時間程度焼成を行う。焼成温度が1800℃未満であると、結晶相が2相以上に分離してしまい、ランタノイド元素と第2族元素とが共存した結晶構造の形成が十分に行われないおそれがある。一方、焼成温度が2100℃を超えると、原料化合物や焼成による生成物が昇華してしまうおそれがある。焼成工程における昇温速度は、特に限定されるものではないが、例えば1〜30℃/分であり、好ましくは5〜20℃/分である。
焼成工程において焼成炉内の圧力は任意に設定できるが、制御された圧力下で焼成工程が行われることが好ましい。この場合、減圧下(例えば真空度0.13Pa(1×10−3Torr)以下であり、好ましくは0.01Pa(1×10−4Torr)以下)で比較的低温域(1300℃以下、好ましくは1200℃以下)まで昇温し、その後、温度を維持しつつ、10〜60分かけて窒素ガスやアルゴンガス等、不活性ガスを炉内に導入して加圧する。不活性ガスの導入によって、炉内の気圧は0.5〜2MPa程度まで加圧される。その後、目的とする上述の焼成温度まで炉内温度を昇温し、所定の時間焼成(焼結)を行う。減圧下で昇温後、低温域で窒素ガス等により加圧し、その後焼成することで、窒化物原料の分解や酸化を抑えつつ、蛍光体が形成できる。焼成後、例えば10〜30℃/分の速度で室温付近まで炉内を冷却する。合成された蛍光体の酸化を防止するため、冷却中は炉内圧を維持したまま行うことが好ましい。
焼成によって得られた焼成物を粉砕した後、焼成工程を1回〜3回繰り返し行うこともできる。焼成工程を複数回行うことで、結晶性の高い蛍光体を得ることができる。
焼成工程を経て得られた焼成物を、乳鉢と乳棒、ミキサー、ロールミル、ボールミル、ジェットミル、ブレンダ―等によって粉砕しても良い。粉砕物の粒度は、例えば、メジアン径(D50値)が1〜30μmの範囲であり、好ましくは5〜20μmの範囲である。粉砕物の粒度分布は、例えばレーザー回折散乱法によって測定できる。焼成物を粉砕することで、蛍光体を発光素子などへ利用しやすくなる。
粉砕後の焼成物は、焼成工程中に生成される副反応物を除去するために、洗浄工程に供しても良い。この場合、例えば、水、有機または無機酸、及びエタノール等のアルコールからなる群のうち、1種または2種以上を組み合わせた溶液にて粉砕物を洗浄すればよい。酸洗浄には、無機酸および有機酸を広く利用できるが、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、クエン酸などが例示できる。酸洗浄においては、1〜10N程度の酸に対して、粉砕後の焼成物が0.5〜10重量%となるよう、酸と粉砕後の焼成物とを合一する。洗浄時間は任意に設定すればよいが、例えば0.5〜10時間であり、攪拌下で行っても良い。
焼成工程、並びに、任意に、粉砕工程及び/または洗浄工程を経て得られた蛍光体の成分組成は、例えばSEM−EDX(Scanning Electron Microscope Energy Dispersive X−ray Spectroscopy)法等によって確認することができる。
(蛍光体の利用)
本発明に係る黄色蛍光体は、発光ダイオード(近紫外LED、青色LED)と組み合わせることにより、発光素子に利用することができる。すなわち、本発明の別の側面においては、波長380nm〜480nmの範囲の光を発する光源と、上述の本願黄色蛍光体とを含む、発光素子が提供される。
本発明に係る黄色蛍光体は、発光ダイオード(近紫外LED、青色LED)と組み合わせることにより、発光素子に利用することができる。すなわち、本発明の別の側面においては、波長380nm〜480nmの範囲の光を発する光源と、上述の本願黄色蛍光体とを含む、発光素子が提供される。
図17は、本発明に係る発光素子の概略図であるが、本発明の技術的範囲を制限するものではない。発光素子1はリードワイヤ2,3、光源4、樹脂5,8、導電性ワイヤ6、蛍光体7を含む。リードワイヤ2には、凹部があり、光源4が設置され、該凹部と光源4とは電気的に接続される。光源4は導電性ワイヤ6を介してリードワイヤ3と電気的に接続される。本発明に係る蛍光体7が分散された第1の樹脂5は、光源4を被うように形成される。凹部を含むリードワイヤ2の先端部、光源4、及び第1の樹脂5は、第2の樹脂8によって封止される。樹脂5,8としては、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等公知の熱硬化性樹脂を採用できる。
前記発光素子において、前記光源は、近紫外LEDまたは青色LEDであって、380〜480nmの範囲の光を発するものが採用し得る。
前記発光素子において、前記蛍光体の発光スペクトルのピーク波長は、例えば500nm〜590nmの範囲であり、好ましくは波長520nm〜580nmの範囲であり、更に好ましくは波長530nm〜570nmの範囲である。
本発明に係る発光素子は、例えば、白色発光素子であり、砲弾型であり得る。
本発明に係る発光素子は、青色蛍光体、緑色蛍光体および赤色蛍光体の少なくとも一つをさらに含んでも良い。
青色蛍光体の例としては、例えば、(Sr,Ba,Ca)5(PO4)3Cl:Eu2+、BaMg2Al16O27:Eu2+、Sr4Al14O25:Eu2+、BaAl8O13:Eu2+、BaMgAl10O17:Eu2+、Sr2Si3O8(2SrCl2):Eu2+、Ba3MgSi2O8:Eu2+、(Sr,Ca)10(PO4)6(nB2O3):Eu2+などを挙げることができ、これらを一つ以上混合して含むことができる。
緑色蛍光体の例としては、例えば、(Ba,Sr,Ca)2SiO4:Eu2+、Ba2MgSi2O7:Eu2+、Ba2ZnSi2O7:Eu2+、BaAl2O4:Eu2+、SrAl2O4:Eu2+、BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+、BaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+などを挙げることができ、これらを一つ以上混合して含むことができる。
赤色蛍光体の例としては、例えば、(Ba,Sr,Ca)2Si5N8:Eu2+、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu2+、Y2O3:Eu3+,Bi3+、(Ca,Sr)S:Eu2+、CaLa2S4:Ce3+、(Sr,Ca,Ba)2P2O7:Eu2+,Mn2+、(Ca,Sr)10(PO4)6(F,Cl):Eu2+,Mn2+、(Y,Lu)2WO6:Eu3+,Mo6+、(Gd,Y,Lu,La)2O3:Eu3+,Bi3+、(Gd,Y,Lu,La)2O2S:Eu3+,Bi3+、(Gd,Y,Lu,La)BO3:Eu3+,Bi3+、(Gd,Y,Lu,La)(P,V)O4:Eu3+,Bi3+、(Ba,Sr,Ca)MgP2O7:Eu2+,Mn2+などを挙げることができ、これらを一つ以上混合して含むことができる。
発光素子が黄色蛍光体だけではなく、赤色蛍光体及び青色蛍光体を含む場合は、青色LEDまたは近紫外LEDが用いられる。発光素子が、黄色蛍光体及び赤色蛍光体のみを含む場合は、青色LEDが用いられる。この方法によって、発光素子は、本明細書に開示の黄色蛍光体;青色LEDまたは近紫外LED;並びに、必要に応じて、青色蛍光体、緑色蛍光体及び/または赤色蛍光体を含む。
本発明の蛍光体は、上記に挙げた発光素子以外に、バックライト光源、青色光励起のディスプレイ用塗料にも応用することもできる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
(製造例1)
(混合工程)
原料化合物として、LaN、Si3N4、SiO2、Eu2O3、SrCO3、AlNを使用した。これらの原料化合物のうち、LaNは空気中の水分と反応し、アンモニアのガスを発生させながら酸化物に変化する。従って、最初に、LaN以外の原料化合物を大気中にて所定の比率で混合した。水分や酸素との接触を避けるため、混合物(LaN以外)をグローブボックスに入れ、LaNを一定の比率で添加して混合した。グローブボックス内の雰囲気が、0.1ppmの以下の水分と酸素になるよう、管理された雰囲気下で混合した。
(混合工程)
原料化合物として、LaN、Si3N4、SiO2、Eu2O3、SrCO3、AlNを使用した。これらの原料化合物のうち、LaNは空気中の水分と反応し、アンモニアのガスを発生させながら酸化物に変化する。従って、最初に、LaN以外の原料化合物を大気中にて所定の比率で混合した。水分や酸素との接触を避けるため、混合物(LaN以外)をグローブボックスに入れ、LaNを一定の比率で添加して混合した。グローブボックス内の雰囲気が、0.1ppmの以下の水分と酸素になるよう、管理された雰囲気下で混合した。
(焼成工程)
グローブボックス内にて、BN(窒化ホウ素製)坩堝に、LaNを混合した混合物を充填した。混合物を充填した坩堝を焼成炉に導入した。
グローブボックス内にて、BN(窒化ホウ素製)坩堝に、LaNを混合した混合物を充填した。混合物を充填した坩堝を焼成炉に導入した。
焼成には加圧焼成炉を用いた。
焼成工程においては、まず、炉内の真空度を0.01Pa(1×10−4Torr)以下まで減圧した後、室温から1100℃まで昇温した。1100℃に到達後、温度を保持しつつ窒素ガス(N2)を炉内に導入し、30分をかけて0.92MPaまで加圧した。圧力が目的の値まで上昇した後、圧力を維持しつつ1950℃まで10℃/分の速度で再昇温した。1950℃の目的温度に達したところで、圧力や温度を維持しながら3時間保持した。3時間保持後、圧力を維持しながら25℃/分の速度で炉内温度を室温まで冷却した。
(粉砕工程、洗浄工程)
焼成物を坩堝から取り出し、アルミナ乳鉢を用いて粉砕した。
焼成物を坩堝から取り出し、アルミナ乳鉢を用いて粉砕した。
焼成工程中に生成された副反応物を除去するため、粉砕物を酸洗浄した。酸洗浄には6N塩酸を用い、粉砕物が約2.5重量%となるように塩酸と粉砕物とを合一し、2時間洗浄した。
(特性分析)
日立ハイテクノロジーズ社製のF7000を用い、得られた蛍光体の励起発光特性を分析した。励起光源としては、紫外線から可視光まで広い発光領域を有するキセノンランプを使用した。発光スペクトル解析には、単色化した450nmの波長を用いた。励起スペクトル解析では、発光ピークに対する励起波長の励起強度を測定した。
日立ハイテクノロジーズ社製のF7000を用い、得られた蛍光体の励起発光特性を分析した。励起光源としては、紫外線から可視光まで広い発光領域を有するキセノンランプを使用した。発光スペクトル解析には、単色化した450nmの波長を用いた。励起スペクトル解析では、発光ピークに対する励起波長の励起強度を測定した。
結晶構造の解析にはXRD(X線回折装置:RINT−2000、株式会社リガク製)を用い、最新の結晶構造データベースであるPDF2−2012を参照し、分析した回折データを同定した。
(実施例1〜6)
実施例1〜6はLaとSrの共存系であり、Alの有無による影響を検討した。
実施例1〜6はLaとSrの共存系であり、Alの有無による影響を検討した。
表1の比率にて1.5gのスケールにて秤量した原料化合物を、製造例1に従って蛍光体を製造した。
表2に、実施例1〜6の蛍光体の組成比と、励起発光特性を示す。
図5〜10に、それぞれ実施例1〜6の励起スペクトル(破線)及び発光スペクトル(実線)を示す。
(製造例2)
製造例1における原料化合物を、SrCO3からCaOに変更した以外は、製造例1と同様の方法によって蛍光体を製造した。
製造例1における原料化合物を、SrCO3からCaOに変更した以外は、製造例1と同様の方法によって蛍光体を製造した。
(実施例7〜12)
実施例7〜12はLaとCaの共存系であり、Alの有無による影響を検討した。
実施例7〜12はLaとCaの共存系であり、Alの有無による影響を検討した。
表3の比率にて1.5gのスケールにて秤量した原料化合物を、製造例2に従って蛍光体を製造した。
表4に、実施例7〜12の蛍光体の組成比と、励起発光特性を示す。
図11〜16に、それぞれ実施例7〜12の励起スペクトル(破線)及び発光スペクトル(実線)を示す。
表2、4、図5〜16に示す通り、本願に係る黄色蛍光体は良好な青色励起特性を示す。
1 発光素子、
2、3 リードワイヤ、
4 光源、
5、8 樹脂、
6 導電性ワイヤ、
7 蛍光体。
2、3 リードワイヤ、
4 光源、
5、8 樹脂、
6 導電性ワイヤ、
7 蛍光体。
Claims (6)
- 下記の式1:
で表わされる、黄色蛍光体。 - 波長300nm〜500nmの範囲の光で励起したとき、500nm〜590nmの範囲に発光ピークを有する、請求項1に記載の黄色蛍光体。
- 励起スペクトルのピーク波長における励起強度Ex(max)と、励起波長450nmにおける励起強度Ex(450)とが、下記の式2を満たす、請求項1または2に記載の黄色蛍光体。
- 前記LnがLaである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の黄色蛍光体。
- 前記AがCaまたはSrである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の黄色蛍光体。
- 波長380nm〜480nmの範囲の光を発する光源と、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の黄色蛍光体とを含む、発光素子。
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