以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
<<第1実施形態>>
図1は、第1実施形態に係る印刷システム100を示す。印刷システム100は、主に印刷装置110及び記録媒体加熱装置120(以下「加熱装置」という)を有する。さらに、印刷システム100は、印刷装置110の前段に、印刷装置110に用紙などからなる記録媒体10を送る給紙装置130や、加熱装置120の後段に、記録媒体10乾燥後に編集や回収を行う折機または巻き取り装置140を有してもよい。
印刷装置110は、インクヘッドユニット等からなる画像形成部110aでインク等を記録媒体10上に付着させることにより画像情報を形成する印刷装置、例えば、輪転機の印刷部、インクジェットプリンタ、ファクシミリ等である。加熱装置(記録媒体加熱装置)120は、例えば、インクジェットプリンタ等の印刷装置110で印刷した記録媒体10上のインクの溶媒を蒸発させるインク乾燥装置に該当する。
記録媒体10は、図1に矢印Xで示される記録媒体10の搬送方向に、印刷装置110から供給用搬送ローラ30によって加熱装置120に送られる。加熱装置120は印刷装置110の記録媒体搬送方向Xの下流に設けられている。記録媒体10は、図1では長さが任意の連続紙であるが、比較的長尺の一枚の記録媒体であってもよい。記録媒体10の材質としては、熱によりシワや変形等のダメージ(損傷)を受けるおそれのあるもの、例えば紙の他、プラスチックシート等でもよい。
加熱装置120は第1段加熱ローラセット40、第2段加熱ローラセット50、第3段加熱ローラセット60、排出用搬送ローラ70、制御装置80を有する。第1段加熱ローラセット40は、第1段裏面加熱ローラ40a及び第1段表面加熱ローラ40bを備える。第2段加熱ローラセット50は第2段裏面加熱ローラ50a及び第2段表面加熱ローラ50bを備える。第3段加熱ローラセット60は第3段裏面加熱ローラ60a及び第3段表面加熱ローラ60bを備える。
第1段加熱ローラセット40、第2段加熱ローラセット50、第3段加熱ローラセット60は、記録媒体10の搬送経路20中の搬送方向Xの上流から下流に平行に並べて配置される。
各加熱ローラ40a、40b、50a、50b、60a、60b(以下、「40a〜60b」と表す)は、長手方向の両端部において軸受けによって回転可能に支持される。
第1段裏面加熱ローラ40aと第1段表面加熱ローラ40b、第2段裏面加熱ローラ50aと第2段表面加熱ローラ50b、第3段裏面加熱ローラ60aと第3段表面加熱ローラ60bは、互いに上下方向および搬送方向に離間して正面から見ると千鳥状に配置される。例えば、裏面加熱ローラ40a、50a、60aそれぞれの回転中心を結ぶ線と、表面加熱ローラ40b、50b、ローラ60bそれぞれの回転中心を結ぶ線とが上下方向および搬送方向に平行且つ離間するように、配置される。また、隣りあう、第1段表面加熱ローラ40bと第2段裏面加熱ローラ50a、第2段表面加熱ローラ50bと第3段裏面加熱ローラ60aにおいても。それぞれの回転中心を結ぶ線が上下方向および搬送方向に平行且つ離間するように、配置される。
各加熱ローラ40a〜60bは、ローラ内部の中央に配置されたハロゲンランプ等のヒーター41a、41b、51a、51b、61a、61b(以下、「41a〜61b」と表す)をそれぞれ有する。この構成により、各ヒーター41a〜61bは、それぞれ加熱ローラ40a〜60bの表面を内側から加熱することができ、加熱手段として機能する。
また、各加熱ローラ40a〜60bの温度を検出する温度検知手段として、サーミスタやサーモパイル等の温度センサ42a、42b、52a、52b、62a、62b(以下、「42a〜62b」と表す、図2参照)が、加熱ローラ40a〜60bのヒーター41a〜61b内部またその周辺にそれぞれ設けられる。
さらに、各加熱ローラ40a〜60bの内部にヒートパイプ(図示せず)が設けられていてもよい。このヒートパイプにより、各加熱ローラ40a〜60bの長手方向に熱を効率良く伝達し、ローラ表面の温度を均一にすることができ、記録媒体10への効率的な熱供給を行うことができる。
各加熱ローラ40a〜60bの表面は、フッ素樹脂等、非粘着性の膜でコーティングされる。このコーティングによって、ローラ表面へのインク等の付着を抑制し、ローラ表面の付着物による記録媒体10への熱伝達効率の低下を抑制することができる。
記録媒体10は、搬送方向Xの上流から下流に、正面からみて千鳥状に配置された第1段裏面加熱ローラ40a、第1段表面加熱ローラ40b、第2段裏面加熱ローラ50a、第2段表面加熱ローラ50b、第3段裏面加熱ローラ60a、第3段表面加熱ローラ60bに順に搬送方向Xの上流から下流に例えば所定の接触角で接触しながら搬送される。そして、記録媒体10は、各加熱ローラ40a〜60bをジグザグ状に順に通過する。
したがって、搬送中、記録媒体10の図1中の下方に面する裏面(一方の面)は、第1段裏面加熱ローラ40a、第2段裏面加熱ローラ50a、第3段裏面加熱ローラ60aに接触する。また、記録媒体10の図1中の上方に面する表面(他方の面)は、第1段表面加熱ローラ40b、第2段表面加熱ローラ50b、第3段表面加熱ローラ60bに接触して加熱される。
記録媒体10は、各加熱ローラに順に千鳥掛け状に掛け渡され、搬送用ローラ30及びび排出用搬送ローラ70により、加熱装置120の中を搬送される。各加熱ローラ40a〜60bは、搬送される記録媒体10に従動して回転し、記録媒体10を加熱して記録媒体10に付着されているインクを乾燥させる。供給用搬送ローラ30、排出用搬送ローラ70にはローラ30、70を駆動する搬送駆動部である搬送モーター31、71がそれぞれ設けられている。このような構成では、各加熱ローラ40a〜60bは記録媒体10に従動して回転するため、各加熱ローラ40a〜60bを回転駆動させる駆動手段として例えばモーター等を設ける必要がなく、モーター設置スペースが省略されて加熱装置120の小型化が可能になっている。
なお、加熱ローラユニット40、50、60の数は、上述のように表面加熱用と裏面加熱用の3段の計6個に限られるものではなく、例えば、2段の計4個、4段の計8個、5段の計10個或いはそれ以上であっても良い。
図2は、図1の印刷システム100に備えられた加熱装置120のブロック図である。図2に示すように、制御装置80は、加熱装置120外部の、供給用搬送ローラ30を駆動する搬送駆動部である搬送モーター31及び印刷装置110と接続する。さらに、加熱装置120内部で、制御装置80は、紙幅検知センサ90、温度センサ42a〜62b、ヒーター41a〜61b、排出用搬送ローラ(搬送手段)70の搬送駆動部である搬送モーター71と接続する。紙幅検知センサ90は記録媒体10の搬送方向と直交する方向の幅を非接触で検知する幅検知手段であり、例えば光学センサからなる。
また、加熱装置120の外側には操作パネル121が設けられており、制御装置80と入力操作可能に接続されている。本実施形態では、ユーザーやオペレータが操作パネル121を操作して、印刷に使用される記録媒体10の種類(厚みや紙質、幅等)を直接設定することができる。また、操作パネル121以外でも印刷システム100と接続した制御システム等から、記録媒体10に種類を直接設定することもできる。
温度センサ42a〜62bで測定した各加熱ローラ40a〜60bの温度並びに排出用搬送ローラ70及び/又は供給用搬送ローラ30の回転速度等の作動状態に基づいて、制御装置80は、各ヒーター41a〜61bの温度を制御することで各加熱ローラ40a〜60bの温度を制御する。
次に、加熱ローラ40a〜60bの幅と記録媒体10の幅の関係について、図3を利用して説明する。
図3は加熱ローラ40aと記録媒体10を真上から見た図である。例として加熱ローラ40aについて説明するが、他の加熱ローラ40b、50a、50b、60a、60bも同様である。
加熱ローラ40aの中に、加熱手段であるヒーター41a〜61bが配置されており、ヒーター41a〜61bは記録媒体搬送方向Xと直行する方向に、所定方向の長さを有している。ここで、所定の長さのヒーターとは、当該所定の長さの範囲でほぼ均一に発熱するものをいう。一つの加熱ローラ40aの中に複数個のヒーターを設ける場合は、例えば所定の長さのヒートパイプにより所定の長さに沿ってほぼ均一に発熱する必要がある。例えば、図3において、加熱ローラ40aでは加熱ローラ40aの全周であって、ヒーター41a(図2参照)の長さと対応する幅の範囲が、ヒーター41aによって加熱される加熱領域43となる(図3の網掛け部)。記録媒体10の幅は、用紙の種類ごとに異なる寸法となる。
図3で示すように、記録媒体10の幅が第1段加熱ローラ40aの加熱領域43よりも狭い場合、第1段加熱ローラ40aの加熱領域43には、記録媒体10と接触する接触領域40cと記録媒体10と接触しない非接触領域40dとが存在する。
記録媒体10と接触する接触領域40cでは、記録媒体10の温度は加熱ローラ40aの表面の温度より低いので、加熱ローラ40aから搬送されている記録媒体10へ絶えず熱の移動が発生するため、温度が下がる。しかし、制御装置80によって温度を設定温度に保つ制御を行うため、ヒーター41aに熱が加えられ、記録媒体10と接触する接触領域40cの温度が設定温度に保たれる。
また、記録媒体10と接触しない非接触領域40dは、記録媒体10への熱移動は無いが、ヒーター41aよって熱が加えられるため、非接触領域40dは設定温度以上に温度が上昇し、温度が過度に上がる過熱状態となる。例えば、加熱状態だと、加熱ローラ40a〜40bのローラ部が硬化したり、軸受けが変形したりするおそれがある。
そのため、幅が狭い記録媒体を加熱ローラ40aへ接触させる場合に、幅が広い記録媒体と同じだけの熱量を加えて加熱すると、加熱ローラ40aの加熱領域43の内、記録媒体と接触しない非接触領域40dが過加熱となる。そのため、幅の狭い記録媒体を加熱する場合は、幅の広い記録媒体の場合より熱量を低く制御することが好ましい。
そこで、第1段加熱ローラセット40の設定温度を記録媒体搬送方向下流側の加熱ローラセット60より下げることで、加熱ローラ40a、40bの接触領域40cでの記録媒体10へ熱の移動によって起こる熱損失を軽減し、非接触領域40dの過度の温度上昇を防止する事が可能になる。
なお、記録媒体10の幅が加熱領域43の幅よりも広くてもよいが、その場合は、記録媒体10の表面のうち余白部分を除いた画像を形成しインクが付着する印刷領域の幅は、加熱領域43の幅と等しいか狭いものとする。
表1は、加熱ローラ40a〜60bの設定温度と記録媒体10の幅(下記、用紙幅を例にして説明する)と加熱領域43の幅(加熱幅)についての設定例を表す。
すなわち、表1で示すように、各設定温度T1、T2、T3が設定されると、各加熱ローラ40a〜60bがその設定された設定温度を保つように、制御装置80が各ヒーター41a〜61bへの通電量を制御する。より詳しくは、制御装置80は、第1段加熱ローラセット40の第1段裏面加熱ローラ40a及び第1段表面加熱ローラ40bの温度が第1段設定温度T1になるようにヒーター41a、41bを制御する。また、第2段加熱ローラセット50の第2段裏面加熱ローラ50a及び第2段表面加熱ローラ50bの温度が第2段設定温度T2になるようにヒーター51a、51bを制御する。さらに、第3段加熱ローラセット60の第3段裏面加熱ローラ60a及び第3段表面加熱ローラ60bの温度が第3段設定温度T3になるようにヒーター61a、61bを制御する。
なお、表1において、コート紙Bはコート紙Aより紙厚が厚い点が異なる。記録媒体10の厚みは上述した操作パネル121から設定される。記録媒体の幅と同様、記録媒体10が厚くなるほど、記録媒体10の温度を上げるためにより多くの熱量が必要となる。よって、表1において、コート紙Bについて、コート紙Aより加熱ローラ40a〜60bの設定温度の最高到達温度(T3)と加熱量の総量を高く設定している。
なお、上述の各設定温度の値は、単なる例示であり、この値に限定されるものではない。また、各設定温度は、実験等に基づいて、適宜設定されるものである。
<制御装置の動作>
ここで、制御装置80の具体的な制御動作の一例について、図4を用いて説明する。図4は制御装置80の制御動作のフローチャートである。
はじめに、制御装置80は、ステップS1で印刷システム100のうち、例えば給紙装置130に記録媒体10をセットされたことを確認する。記録媒体10のセットが確認されない場合はNOへ進み、待機状態となる。
そして、ステップS2で、ユーザーやオペレータが操作パネル121を操作して、又は別途設置された制御システムより、印刷に使用される記録媒体10の物性(種類、厚みや紙質、幅等)を設定する。これにあわせて、ユーザーやオペレータが操作パネル121等を操作して、記録媒体の種類や厚みに応じた、記録媒体10にダメージに与えず、かつ記録媒体10におけるインクが付着している印刷領域が乾燥する温度である最高到達温度になるように第3段設定温度T3を設定する。
ここで最高到達温度(設定温度の上限)として、第3段加熱ローラセット60のヒーター61は例えば50℃〜80℃に設定される。80℃を超えると、記録媒体が乾燥装置外に出るときの出口温度が高くなりすぎるからである。例えば、最高到達温度として、コート紙Bが記録媒体の場合は80℃に設定され、フィルムなどの樹脂を使用している記録媒体の場合は熱変形を考慮して50℃に設定し、シール状の記録媒体の場合は55℃に設定されることが推奨される。
また、上記表1で説明したように、同じ種類の記録媒体であっても、厚みが異なる場合は、厚い記録媒体では記録媒体の温度を上げるために薄い厚みの記録媒体よりも、より多くの熱量が必要となるため、最高到達温度を高く設定することが好ましい。
次に、ステップS3で記録媒体幅センサ90が搬送方向Xと直交する方向の記録媒体10の幅を検知する。
ここで、記録媒体10の幅が各加熱ローラ40a〜60bの加熱領域43より広いか等しい場合(ステップS4でNO)、ステップS9に進み、各加熱ローラ40a〜60bの各ヒーター41a〜61bをすべて同じ最高到達温度T3に制御する。(T1=T2=T3)
一方、記録媒体10の幅が各加熱ローラの加熱領域43より狭い場合(ステップS4でYES)、第1段加熱ローラ40a、40bの各ヒーター41a、41bを、上記最高到達温度T3より低い50℃に制御する(ステップS5)。
その後、ステップS6で、第3段ローラセット60に設置された温度センサ62a、62bがヒーター温度(第3段設定温度T3)と所定の閾値(例えば65℃)を比較する。ここで、ヒーター温度が所定の閾値(例えば65℃)よりも低いと検知した場合(ステップS6でNO)、ステップS8へ進み、制御装置80は、第2段および第3段加熱ローラ50a〜60bの各ヒーター51a〜61bを最高到達温度に制御する。(T1<T2=T3、例えば、T1=50℃、T2=60℃、T3=60℃)。
記録媒体10の幅が各加熱ローラ40a〜60bの加熱領域43より狭く、かつ第3段設定温度T3が65℃より高い場合は(ステップS6でYES)、ステップS8へ進む。このとき、制御装置80は、第2段加熱ローラ50a、50bの各ヒーター51a、51bを65℃に、第3段加熱ローラ60a、60bの各ヒーター61a、61bを最高到達温度に制御する。(T1<T2<T3、例えば、T1=50℃、T2=65℃、T3=80℃)(ステップS7)
なお、制御装置80は、各加熱ローラ40a〜60bの温度経過から変化推移を監視し、各加熱ローラ40a〜60bの設定温度T1、T2、T3と現時点での温度とを比較する。これにより、或る期間先の温度を予測しながら各加熱ローラ40a〜60bに配置した各ヒーター41a〜61bを制御する。或いは、制御装置80は、設定温度に到達するまで各ヒーターをONにし続け、設定温度に到達したらヒーター41a〜61bをOFFにする二値制御を行ってもよい。
上述のように、記録媒体10の幅が加熱領域43より狭い場合、幅が広い記録媒体と同じだけの熱量を投入して加熱すると、記録媒体10と接触しない非接触領域40dは、記録媒体10への熱移動は無いがヒーター41aよって熱せられるため、過加熱となる。すると、設定温度以上に温度が上昇し、100℃まで過度に温度が上昇する可能性がある。
そこで幅の狭い記録媒体を加熱する場合は、幅の広い記録媒体の場合より熱量を低く制御することにより、熱損失を軽減し、非接触領域40dの過度な温度上昇を防止する事が可能になる。
本例では、記録媒体搬送方向上流側に配置された第1段加熱ローラセット40の温度を50℃まで下げることで、加熱ローラ40a、40bにおける熱損失を軽減し、非接触領域40dの過度な温度上昇を防止する事が可能になる。
さらに、記録媒体10の材質や厚さ等の条件に応じて第2段加熱ローラセット50の温度を最高到達温度よりも低く設定してもよい。
((実施例1))
図5は記録媒体が受ける熱量と加熱ローラの関係を表す図である。制御装置80は、記録媒体10の幅が加熱領域43の幅と等しい時、記録媒体10に供給される総熱量W(=熱量W1+熱量W2+熱量W3)が、記録媒体10上に付着したインクの溶媒成分を所定値以下まで蒸発させることができる十分な熱量を上回る熱量となるように、各ヒーター41a〜61bを制御する。
一方、各加熱ローラ40a〜60bの加熱領域43よりも幅の狭い記録媒体を加熱する場合は、幅の広い記録媒体の場合より第1段加熱ローラセット40の温度を下げることで、投入熱量総量を低くW'に制御する。なお、必要に応じて、第2段ローラセット50の温度を下げてもよい。
記録媒体10の幅が狭い場合、図5に示すように、第1段加熱ローラセット40から記録媒体10に供給される熱量をW1'、第2段加熱ローラセット50から供給される熱量をW2'、第3段加熱ローラセット60から供給される熱量W3'となるように制御する。図5では、第1段加熱ローラセット40での投入熱量(設定温度)はΔ1下げ、第2段ローラセット50での投入熱量をΔ2下げて、第3段ローラセット60での投入熱量は変えていない。(W1=W1'+Δ1、W2=W2'+Δ2、W3=W3'、W>W'+Δ、Δ=Δ1+Δ2)
ここで、設定温度を入力する一例として、図5に示すように、記録媒体10が第2段加熱ローラセット50、第3段加熱ローラセット60に搬送されるにつれて、記録媒体10と各加熱ローラセット40〜60との間の温度差を順に小さくなるように設定している。(T1−スタート温度>T2−T1>T3−T2)そして、記録媒体10が各加熱ローラセット40、50、60から供給される熱量も、搬送方向Xの下流になるにしたがって少なくすることができる。(W1'>W2'>W3')
このため、第2段加熱ローラセット50のヒーター51a及びヒーター51bへの熱負荷による断線等のダメージの発生、並びに第3段加熱ローラセット60のヒーター61a及びヒーター61bへの熱負荷による断線等のダメージの発生を抑えることができる。
なお、制御装置80は、記録媒体10の幅が加熱ローラ40a〜60bの加熱領域43より狭いことにより生じる非接触部40dの温度上昇に対応する過加熱の分、上流側に配置された加熱ローラ40a、40bの温度が低くなるように、ヒーター41a、41bを制御してもよい。
より詳しくは、記録媒体10の幅が狭い場合に投入熱量総量を下げた分Δを、記録媒体10の幅が加熱ローラ40a〜60bの加熱領域43より狭いことにより生じる加熱ローラ40の非接触領域40dの温度上昇に対応させるように制御してもよい(Δ=W1−W1'=非接触領域の過加熱分の総計)。
((実施例2))
ここで、設定温度を入力する際の別の例について、図6、7に示す。図6は加熱ローラの温度に対応する熱損失の関係を表すグラフである。図7は加熱ローラの設定温度と温度における熱損失の一例のグラフである。
図6で示したように、加熱ローラ40a〜60bの温度を上げていくと、記録媒体が搬送される接触領域40cでは、記録媒体の通過に伴って記録媒体に奪われる熱量(熱損失)が大きくなる。一方、記録媒体が搬送されない非接触領域40dでは、空気中への放熱と加熱ローラを構成する素材等で失われる熱量(熱損失)に限られ、記録媒体への熱損失がないため、熱損失の量が少ない。なお、各加熱ローラ40a〜60bの表面は、フッ素樹脂等、非粘着性の膜でコーティングされているため、加熱ローラ表面の付着物による記録媒体10への熱伝達効率の低下が抑制されている。
そのため、図6のように、加熱領域43のうち、接触領域40cと非接触領域40dの熱損失の差が、温度が高くなるにつれて大きくなる。
そこで、記録媒体10の幅が加熱ローラ40a〜60bの加熱領域43より狭い場合、制御装置80がヒーター41a〜51bの出力と温度センサ42a〜52bで検知された温度により加熱ローラ40a〜60bの記録媒体搬送による熱損失をそれぞれ算出する。そして、制御装置80がそれぞれの加熱ローラ40a〜60bの熱損失をほぼ同一にするようにヒーター41a〜51bを制御している。
記録媒体10の幅が加熱領域43より狭い時に、第1段ローラセット40のヒーター41a、41bをT1=T2=T3と最高到達温度に同じ値で制御する場合について検討する。このケースでは、上流に配置された加熱ローラセット40では常温(例えば25℃)の記録媒体10がローラ表面上を通るので、記録媒体10が通過する接触領域40cでは温度差が大きくなり、加えられた熱量における熱損失が大きくなる。このような状況で、温度センサ42の検知結果を踏まえて、T1をT3と同じ温度に制御しようとすると、与える熱量は、上流側で最も大きくなる。与える熱量が大きくなると、その分、記録媒体10が接しない非接触領域40dの温度が上がりやすくなり、過度な温度上昇である100℃までより達する可能性が高まる。
そこで、図7に示すように、それぞれの加熱ローラ40a〜60bの熱損失がほぼ同じになるようにヒーター41a〜61bを制御すると、加熱ローラ40a〜60bの接触領域40cと非接触領域40dの間の温度差が、ローラ40、50、60で一定になる。よって、過度な温度上昇が起きるリスクが分散でき、各ヒーター41a〜61b装置の寿命を延ばすことができる。
このとき、記録媒体10の幅が広い場合と狭い場合の、加熱ローラ40a〜60bへ投入される熱量総量の差は過熱分に相当する分に設定してもいいし、過熱分とは異なる値となってもよい。
実施例1の制御にするか実施例2の制御にするか、必要に応じて適宜設定することができる。
上記実施例1および実施例2において、第3段加熱ローラセット60は入力された最高到達温度で維持されるため、記録媒体10は、第3段加熱ローラセット60においてインク中の溶媒成分を所定の値以下へ蒸発させることができる十分な熱量を供給される。このため、印刷システム100は、記録媒体10上に形成された画像情報の印刷品質を向上させることができる。
さらに、制御装置80は、記録媒体10の種類(記録媒体の種類)、インクの種類、画像形成領域の位置や面積(例えば、表側印刷、裏側印刷、両面印刷、印刷領域の大小)等に応じて、各ヒーター41a〜61bをそれぞれ制御(例えば最高到達温度の変更等)するようにしてもよい。
これにより、印刷システム100は、記録媒体10に投入される熱負荷をより効果的に抑制することができ、記録媒体10の熱負荷によるシワや変形等のダメージの発生をより効果的に抑制することができ、印刷品質の向上をより効果的に達成することができる。
なお、第1の実施形態では、図1のような印刷システムの一部としての印刷装置110の外部にあるインクを乾燥させるための加熱装置120として説明したが、本実施形態の加熱装置は、印刷装置110の中に組み込むこともできる。
<<第2実施形態>>
図8は、第二の実施形態に係る印刷システム200の概略構成を例示する図である。図8に示す様に、印刷システム200は、給紙装置210、前処理装置220、第1インクジェットプリンタ230、反転装置240、第2インクジェットプリンタ250、後乾燥装置260、巻取装置270を有する。図9は、図8の印刷システムに備えられた第2実施形態に係る記録媒体加熱装置(加熱ユニット)350を含む前処理装置220の概略構成図である。
給紙装置210は、ロール状に巻き回された長尺の連続紙等の記録媒体10を、後段に設けられている前処理装置220に供給する。
前処理装置220は、記録媒体前処理装置の一例であり、後段の第1インクジェットプリンタ230等で記録媒体10に吐出されるインクジェットインクの滲みや裏写りを抑えるために、記録媒体10の表面に前処理液を塗布する。また、前処理装置220は、記録媒体10に塗布された前処理液を加熱して乾燥させた後、後段の第1インクジェットプリンタ230に記録媒体10を排出する。
前処理装置220は前処理液を乾燥させるための加熱ユニット350を有する。(図9、10参照)ここで、前処理装置220に含まれている加熱ユニット350は、前出の加熱装置120と同じ構成であり、加熱ローラ40a〜60bを有する。また、加熱ユニット350においても、前出した制御装置80による制御処理(図4参照)が実行され、夫々の加熱ローラ40a〜60bの各ヒーター41a〜61bの加熱量(温度)を制御している。
第1インクジェットプリンタ230は、前処理装置220において前処理液が塗布された記録媒体10の第1面(表面)に、画像データに基づいてインク滴を吐出して所望の画像を形成する。
反転装置240は、記録媒体10の表裏を反転させ、反転させた記録媒体10を後段の第2インクジェットプリンタ250に搬送する。また、反転装置240は、乾燥手段として不図示のドライヤを有し、第1インクジェットプリンタ230により形成された記録媒体10の第1面側の画像を乾燥させる。
第2インクジェットプリンタ250は、反転装置240で表裏が反転された記録媒体10の第2面(反転前の裏面)に、画像データに基づいてインク滴を吐出して所望の画像を形成する。
後乾燥装置260は、乾燥手段としてドライヤを有し、記録媒体10の両面に形成された画像をドライヤからの熱風で乾燥させる。
巻取装置270は、片面又は両面に画像が形成され、後乾燥装置260にて画像形成面のインクが乾燥された記録媒体10を巻取って回収する。
次に、図9を参照して、前処理装置220について説明する。図9で示された前処理システムに該当する前処理装置220は前処理液を記録媒体10に塗布する前処理液塗布装置(前処理液塗布ユニット)330を有し、記録媒体10の前処理液を乾燥させるために加熱ユニット(記録媒体加熱装置)350は前前処理塗布ユニット330の記録媒体搬送方向の下流に設けられている。
さらに、前処理装置220は、先に述べた前処理液塗布ユニット330と加熱ユニット350の他にエアループユニット320、前処理液供給ユニット340、ダンサーユニット380を有する。
エアループユニット320は、回転自在に支持されたガイドローラ321、記録媒体10を狭持して搬送するフィードイン(FI)ローラ322、FIニップローラ323を有する。
エアループユニット320では、ガイドローラ321、回転駆動するFIローラ322、従動回転するFIニップローラ23が給紙装置210から供給される記録媒体10を搬送し、エアループユニット320内に記録媒体10を引き込む。このとき、不図示の光学センサにより、記録媒体10の弛み量が一定となるエアループALが形成される様に、FIローラ322の回転が制御される。エアループALを通過した記録媒体10は、不図示のテンションシャフトにより搬送安定化のための張力が付加され、前処理液塗布ユニット330に搬送される。
前処理液塗布ユニット330は、回転駆動するインフィードローラ331、インフィードローラ331との間で記録媒体10を挟持搬送するフィードニップローラ332、裏面塗布ユニット33、表面塗布ユニット34、回転駆動するアウトフィードローラ335、アウトフィードローラ335との間で記録媒体10を挟持搬送するフィードニップローラ336を有する。
裏面塗布ユニット33は、スクイーズローラ337、塗布ローラ338、加圧ローラ339を有する。裏面塗布ユニット33に搬送される記録媒体10は、スクイーズローラ337により前処理液が供給される塗布ローラ338と加圧ローラ339との間で挟持搬送される際に、塗布ローラ338により第2面(裏面)側に前処理液が塗布される。裏面塗布ユニット33を通過した記録媒体10は、表面塗布ユニット34に搬送される。
表面塗布ユニット34は、スクイーズローラ347、塗布ローラ348、加圧ローラ349を有し、記録媒体10の第1面(表面)側に前処理液を塗布する。表面塗布ユニット34を通過した記録媒体10は、アウトフィードローラ335とフィードニップローラ336により、加熱装置である加熱ユニット350に搬送される。
なお、裏面塗布ユニット33及び表面塗布ユニット34は、選択的に作動する様に制御され、記録媒体10は、第1面(表面)及び第2面(裏面)のいずれか一方又は両面に前処理液が塗布される。
前処理液供給ユニット340は前処理液を貯留し、裏面塗布ユニット33及び表面塗布ユニット34に前処理液を適宜供給する。
加熱ユニット350は、記録媒体加熱装置の一例であり、前出の第1実施形態における加熱装置120と類似の構造を有し、記録媒体10を加熱し、記録媒体10に塗布された前処理液を乾燥させる。ここで、加熱装置120と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより、重複した説明を省く。
加熱ユニット350は、上述の加熱装置120と同じ構成であり、記録媒体10の搬送方向Xの上流から、第1段裏面加熱ローラ40a、第1段表面加熱ローラ40b、第2段裏面加熱ローラ50a、第2段表面加熱ローラ50b、第3段裏面加熱ローラ60a、第3段表面加熱ローラ60bを有する。
また、加熱ユニット350においても、前出した制御装置80による制御処理(図4参照)が実行され、夫々の加熱ローラ40a〜60bの各ヒーター41a〜61bの実施形態1のときと同様に加熱量(温度)を制御している。
記録媒体10は、各加熱ローラ40a〜60bに順に千鳥掛け状に掛け渡され、アウトフィードローラ335及びフィードニップローラ336と、フィードローラ359及びフィードニップローラ360とにより、加熱ユニット350の中を搬送される。各加熱ローラ40a〜60bは、搬送される記録媒体10に従動して回転し、記録媒体10を加熱して記録媒体10に塗布されている前処理液を乾燥させる。
なお、加熱ユニット350においても、各加熱ローラ40a〜60bは記録媒体10に従動して回転するため、各加熱ローラを回転駆動させる駆動手段として例えばモーター等を設ける必要がなく、モーター設置スペースが省略されて小型化が可能になっている。
加熱ユニット350において表面に塗布された前処理液が乾燥した記録媒体10は、回転駆動するフィードローラ359及びフィードニップローラ360に挟持され、ダンサーユニット380に搬送される。
ダンサーユニット380は、2つのガイドローラ381、382、可動フレーム384、可動フレーム384の位置を検出する不図示の位置検出手段、可動フレーム384に回転自在に取り付けられた2つのダンサーローラ385、386を有する。可動フレーム384は、下部に錘383が設けられ、ダンサーローラ385,386と共に矢印A方向に移動可能に設けられている。記録媒体10は、2つのガイドローラ381、382及び2つのダンサーローラ385、386にW字状に掛け渡される。
ダンサーユニット380は、不図示の位置検出手段の出力に基づいて、フィードローラ359の搬送量を制御して、可動フレーム834の上下方向の位置を調整する。可動フレーム384の位置が調整されることで、前処理装置220と後段の第1インクジェットプリンタ230との間の記録媒体10のバッファが確保される。
加熱ユニット350によって加熱された記録媒体10は、ダンサーユニット380にて冷却された後に、後段の第1インクジェットプリンタ230に搬送される。
このような構成により、前処理装置220において、前処理液塗布ユニット330は、インクのにじみ防止や浸透補助等、画質向上のための前処理液を、記録媒体10に塗布する。その後、加熱ユニット350において前処理液を蒸発させ、ダンサーユニット380にて冷却された後に、後段の第1インクジェットプリンタ230に搬送される。
なお、前処理液塗布ユニット330は、記録媒体10の表面、裏面、又は両面に前処理液を塗布する前処理部となる。加熱ユニット(記録媒体加熱装置)350は、前処理液を蒸発させる前処理液乾燥装置に該当する。
次に、加熱ユニット350の加熱制御について図面に基づいて説明する。図10は図9の前処理装置220に備えられた、加熱ユニット350のブロック図である。図10の加熱ユニット350においても、前出した制御装置80による制御処理(図4参照)が実行され、夫々の加熱ローラ40a〜60bの各ヒーター41a〜61bの実施形態1のときと同様に加熱量(温度)を制御している。
ただし、第1実施形態では加熱装置120はインクを乾燥させたが、加熱ユニット350は前処理液を乾燥させる点が異なる。
また、図10で示した加熱ユニット350では、図2で表した加熱装置120と、操作パネル221が、加熱ユニット350の外面ではなく、前処理装置220、またはその他印刷システム200の外面に設けられている点が異なる。その他の点はほぼ同一のため、第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付し説明を割愛し、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
加熱ユニット350の中でも、図3で示すように、記録媒体10の幅が第1段加熱ローラ40aの加熱領域43がより狭い場合、第1段加熱ローラ40の加熱領域43には、記録媒体10と接触する接触領域40cと接触しない非接触領域40dとが存在する。
記録媒体10と接触する接触領域40cでは、加熱ローラ40aから記録媒体10への熱の移動が発生するため、温度が下がるが、制御装置80によって温度を設定温度に保つ制御を行われるため、ヒーター41aに熱が加えられるため、温度が設定温度に保たれる。記録媒体10と接触しない非接触領域40dは、記録媒体10への熱移動は無いが、ヒーター41aよって熱が加えられるため、非接触領域40dは設定温度以上に温度が上昇し、過度に温度が上がる可能性がある。
図11は記録媒体10の幅と乾燥必要熱量との関係を示すグラフである。図11で示すように、記録媒体10の幅が広くなるほど、前処理液の乾燥必要熱量が大きくなる。逆に、記憶媒体の幅が狭い場合は、前処理液の必要熱量が少なくなる。
図11より、記録媒体10の幅が加熱領域43より狭い場合に、幅が広い記録媒体と同じだけの熱量を加えて加熱すると、記録媒体10と接触しない非接触領域40dは、記録媒体10への熱移動は無いがヒーター41aよって加熱されるため、過加熱となる。すると、設定温度以上に温度が上昇し、100℃まで過度に温度が上昇する可能性がある。
そこで、幅の狭い記録媒体を加熱する場合は、幅の広い記録媒体の場合より熱量を低く制御することにより、熱損失を軽減し、非接触領域40dの過度な温度上昇を防止する事が可能になる。
第2の実施形態では、記録媒体10の幅が加熱領域43の幅と等しい時、制御装置80は、記録媒体10に供給される総熱量が、記録媒体10上に塗布された前処理液の水分を蒸発させる十分な熱量を上回る熱量となるように、各ヒーター41a〜61bを制御する。
一方、各加熱ローラ40a〜60bの加熱領域43よりも幅の狭い記録媒体を加熱する場合は、幅の広い記録媒体の場合より第1段加熱ローラセット40の温度を下げることで、投入熱量総量を低く制御する。なお、必要に応じて、第2段ローラセット50の温度を下げてもよい。
この際、図4で示した制御フローのように、最高到達温度を第3段ローラセットの設定温度T3として設定し、記録媒体の幅、温度状況により、第1段、第2段ローラセットの設定温度T1、T2を加熱制御する。
なお、制御装置80は、記録媒体10の幅が加熱ローラ40a〜60bの加熱領域43より狭いことにより生じる加熱ローラ(加熱ローラ40の非接触部40d)の温度上昇に対応する過加熱の分、上流側に配置された加熱ローラ40a、40bの温度が低くなるように、ヒーター41a、41bを制御してもよい。
ここで、実施例1のように、設定温度を入力する際、記録媒体10が第2段加熱ローラセット50、第3段加熱ローラセット60に搬送されるにつれて、記録媒体10と各加熱ローラ40〜60との間の温度差を順に小さくなるように設定してもよい。
または、実施例2のように、記録媒体10の幅が加熱領域43より狭い場合は、制御装置80がヒーター41a〜51bの出力と温度センサ42a〜52bにより検知された温度によりそれぞれの加熱ローラ40a〜60bの記録媒体搬送による熱損失を算出する。そして、制御装置80がそれぞれの加熱ローラ40a〜60bの熱損失を均一にするようにヒーター41a〜51bを制御してもよい。
このとき、熱量総量の差は過熱分に相当する分に設定してもいいし、過熱分とは異なる値となってもよい。
実施例1の制御にするか実施例2の制御にするか、必要に応じて適宜設定することができる。
上述の構成により、第2の実施形態にかかわる加熱ユニット350において、第1の実施形態にかかわる加熱装置120と同一の効果を奏する。
上記の制御において、第3段加熱ローラセット60は入力された最高到達温度で維持されるため、記録媒体10は、第3段加熱ローラセット60において前処理液中の処理液の水分を蒸発させる(前処理液を乾燥させる)ことができる十分な熱量を供給される。このため、印刷システム200は、記録媒体10上に形成された画像情報の印刷品質を向上させることができる。
さらに、制御装置80は、各加熱ローラから記録媒体10に供給される熱量は、搬送速度、記録媒体10の種別(用紙種別)、前処理液の塗布量(例えば、両面への塗布、片面への塗布等の塗布パターン)等に基づいて、各設定温度T1、T2、T3を変更することもできる。
ここで、搬送速度、記録媒体の種類、前処理液の塗布量の基づく各設定温度の変更する例について、表2に表す。これらの表2での設定例は、記録媒体10の幅が加熱領域43より狭いときの例であることが好ましいが、記録媒体10の幅が加熱領域43より広いときや幅が等しいときに、これらの設定例を利用してもよい。
また、表2において、同じ種類の紙の場合、搬送速度が速い(50m/分)ときのほうが、搬送速度が遅い(30m/分)ときよりも投入される設定温度が高い。ここで、ハロゲンランプ等からなるヒーター41a〜61bは、電力と時間に比例する熱量により、加熱ローラ40a〜60bを加熱している。そのため、搬送速度が速いほど、記録媒体10は加熱ローラ40a〜60bの表面上を素早く通るため、記録媒体10へ熱を与えている時間が短くなる。熱量は電力と時間に比例するため、同じ熱量を与える場合は、時間が短いとより多くの電力が必要となる。そこで、搬送速度が速いほど、設定温度を高くしてヒーターへの電力を大きくするように制御される。
ここで、記録媒体の搬送速度に応じた制御手順の例を述べる。前提として、加熱ユニット350(50)はさらに搬送モーター(搬送駆動部)71を含む排出用搬送ローラ(搬送手段)70を有しており、搬送モーター71より、記録媒体10の搬送速度が制御されている。そして、制御装置80は、搬送モーター71により入力された記録媒体10の搬送速度に応じて、ヒーター41a〜61bを制御する。このとき、記録媒体10の搬送速度が速いほど、ヒーター41a〜61bでの制御された各設定温度T1,T2、T3が高くなるように制御する。
また、表2において、記録媒体の厚さはコート紙A<コート紙B<コート紙Cの順に分厚い。よって記録媒体が厚いほど、必要熱量が大きくなる。熱量を大きくするため、それぞれの設定温度T1、T2、T3が、記録媒体が厚いほど高く設定されている。
記録媒体の厚みと前処理液の乾燥に必要な熱量との関係について図12に示す。図12に示すように、記録媒体が厚いほど、必要熱量が大きい。
ここで、記録媒体の種類と厚みに応じた制御手順の例を述べる。前提として、記録媒体10の物性を入力する入力手段として操作パネル121を有し又は操作パネル221に接続している。そして、制御装置80は、操作パネル221により入力された記録媒体の物性(厚み)に応じて、ヒーター41a〜61bを制御する。このとき、記録媒体10が厚いほど、ヒーター41a〜61bに加える各熱量が大きくなるように制御する。
なお、記録媒体10が厚くなるときに熱量が大きくする方法として、温度を上げる方法を表2では表しているが、設定温度を変えずに記録媒体の搬送速度を遅くすることによっても、熱量を大きくすることができる。
このように、加熱媒体10の制御に加えて、搬送速度、記録媒体10の種別(用紙種別)、前処理液の塗布量(例えば、両面への塗布、片面への塗布等の塗布パターン)等に基づいて、各設定温度T1、T2、T3を変更してもよい。
なお、前処理液は記録媒体10の少なくとも一方の面にほぼ全面に塗布されており、必要熱量の測定が容易なため、図11、図12、表2では、前処理液での必要熱量を用いて説明した。しかし、第1実施形態のインクを乾燥させる場合の必要熱量も、前処理液の必要熱量を示した図11と同様に、記録媒体10の幅に応じて同様に変化する。
なお、第2実施形態では図8に示した印刷システム200において、本発明の記録媒体加熱装置である加熱ユニット350は前処理液を乾燥させる前処理液乾燥装置として前処理装置220の中に配置されていた。しかし、図9の印刷システムにおいて、第2のインクジェットプリンタ250の後段にあるインク乾燥装置としての後乾燥装置260として、上述の構成を有する記録媒体加熱装置を配置してもよい。
これにより、印刷システム200は、第1の実施形態と同様に、記録媒体10に投入される熱負荷をより効果的に抑制することができ、記録媒体10の熱負荷によるシワや変形等のダメージの発生をより効果的に抑えることができ、印刷品質の向上をより効果的に達成することができる。