JP2015068789A - 熱拡散率を測定する方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い精度で熱拡散率を測定することができる方法及び装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る周期加熱法により熱拡散率を測定する方法は、試験体(10)の周期加熱面(11)から温度波吸収面(12)に向けて温度波を伝播させること;前記周期加熱面における第一温度波を測定すること;前記周期加熱面と前記温度波吸収面との間の前記試験体の内部の所定位置(14)における第二温度波を測定すること;前記第一温度波と前記第二温度波との振幅比又は位相差から前記試験体の熱拡散率を得ること;を含み、測定された一周期分の前記第一温度波及び前記第二温度波の各々を最小二乗法により三角関数に近似し、三角関数に近似された前記第一温度波と前記第二温度波との前記振幅比又は前記位相差から前記試験体の熱拡散率を測定する。
【選択図】図3
【解決手段】本発明に係る周期加熱法により熱拡散率を測定する方法は、試験体(10)の周期加熱面(11)から温度波吸収面(12)に向けて温度波を伝播させること;前記周期加熱面における第一温度波を測定すること;前記周期加熱面と前記温度波吸収面との間の前記試験体の内部の所定位置(14)における第二温度波を測定すること;前記第一温度波と前記第二温度波との振幅比又は位相差から前記試験体の熱拡散率を得ること;を含み、測定された一周期分の前記第一温度波及び前記第二温度波の各々を最小二乗法により三角関数に近似し、三角関数に近似された前記第一温度波と前記第二温度波との前記振幅比又は前記位相差から前記試験体の熱拡散率を測定する。
【選択図】図3
Description
本発明は、熱拡散率を測定する方法に関し、特に、周期加熱法により熱拡散率を測定する方法及び装置に関する。
試験体の熱伝導率を測定するための方法としては、定常法である保護熱板(Guarded Hot Plate:GHP)法や熱流計法の他に、非定常法である周期加熱法がある。
周期加熱法においては、試験体の表面から内部に、一次元方向に温度波を伝播させ、当該表面で測定される温度波と、当該内部で測定される温度波と、の振幅比又は位相差から、当該試験体の熱拡散率を求め、さらに、当該熱拡散率と、別途測定された当該試験体の密度及び比熱とから当該試験体の熱伝導率を求める(特許文献1、特許文献2、非特許文献1、非特許文献2参照)。
大村高弘;熱物性, 21(2), 2007, 86-96
大村高弘、坪井幹憲;熱物性, 13(4), 1999, 264-270
しかしながら、従来の周期加熱法においては、十分に高い精度で熱拡散率を測定することが難しかった。
すなわち、従来、例えば、測定された温度波のピークの位置を適切に特定できないことにより、振幅比又は位相差を正確に求めることができず、その結果、高い精度で熱拡散率を測定することができないことがあった。
本発明は、上記課題に鑑みて為されたものであって、高い精度で熱拡散率を測定することができる方法を提供することをその目的の一つとする。
上記課題を解決するための本発明の一実施形態に係る方法は、周期加熱法により熱拡散率を測定する方法であって、試験体の周期加熱面から温度波吸収面に向けて温度波を伝播させること;前記周期加熱面における第一温度波を測定すること;前記周期加熱面と前記温度波吸収面との間の前記試験体の内部の所定位置における第二温度波を測定すること;前記第一温度波と前記第二温度波との振幅比又は位相差から前記試験体の熱拡散率を得ること;を含み、測定された一周期分の前記第一温度波及び前記第二温度波の各々を最小二乗法により三角関数に近似し、三角関数に近似された前記第一温度波と前記第二温度波との前記振幅比又は前記位相差から前記試験体の熱拡散率を測定することを特徴とする。本発明によれば、高い精度で熱拡散率を測定する方法を提供することができる。
また、前記方法において、前記試験体を伝播する、連続する3周期分の前記温度波において、各1周期分の前記温度波の振幅の中心温度の平均値と、前記3周期分の前記温度波の振幅の中心温度の平均値との差分が、±2℃以内であることとしてもよい。また、前記方法において、前記試験体を伝播する、連続する3周期分の前記温度波において、各1周期分の前記温度波の振幅の中心温度の平均値の、前記3周期分の前記温度波の振幅の中心温度の平均値に対する変化率が、±2%以内であることとしてもよい。
本発明によれば、高い精度で熱拡散率を測定する方法を提供することができる。
以下に、本発明の一実施形態について説明する。なお、本発明は、本実施形態に限られるものではない。
まず、本実施形態に係る熱拡散率測定方法(本方法)及び熱拡散率測定装置(本装置)の概要について説明する。図1は、周期加熱法により試験体の熱拡散率を測定する原理を示す説明図である。図2は、周期加熱法において試験体を伝播する温度波の一例を示す説明図である。図3は、本装置の一例の主な構成を断面視で示す説明図である。
本方法は、周期加熱法により熱拡散率を測定する方法であって、試験体10の周期加熱面11から温度波吸収面12に向けて温度波を伝播させること;当該周期加熱面11における第一温度波T1を測定すること;当該周期加熱面11と当該温度波吸収面12との間の当該試験体10の内部の所定位置14における第二温度波T2を測定すること;当該第一温度波T1と当該第二温度波T2との振幅比又は位相差から当該試験体10の熱拡散率を得ること;を含む。
本装置100は、周期加熱法により熱拡散率を測定するための装置であって、試験体10の周期加熱面11から温度波吸収面12に向けて温度波を伝播させるために、当該周期加熱面11に対向して配置される周期加熱ヒータ110;当該試験体10の当該温度波吸収面12の温度を所定の一定値に維持するために、当該温度波吸収面12に対向して配置される温度波吸収ヒータ120;当該周期加熱面11における第一温度波T1を測定するための第一温度センサ310;当該周期加熱面11と当該温度波吸収面12との間の当該試験体10の内部の所定位置14における第二温度波T2を測定するための第二温度センサ320;当該温度波吸収面12の温度を測定するための第三温度センサ330;
を有する。
を有する。
ここで、周期加熱法について説明する。周期加熱法においては、試験体10の周期加熱面11から内部に、一次元方向(図1に示す矢印Dの指す方向)に温度波を伝播させ、当該周期加熱面11で測定される第一温度波T1(図2に示すθ0sin(ωt)で近似される温度波)と、当該内部の所定の位置14で測定される第二温度波T2(図2に示すθ1sin(ωt+φ)で近似される温度波)との振幅比A(=θ1/θ0:振幅の減衰率を示す比率)又は位相差φから、当該試験体10の熱拡散率を求める。なお、試験体10の内部を伝播する温度波は、次第に減衰するため、第二温度波T2の振幅θ1は、第一温度波T1の振幅θ0より小さい。
また、試験体10の周期加熱面11と反対側の温度波吸収面12(温度波が伝播する一次元方向における周期加熱面11と反対側の試験体10の表面)の温度T3は、図2に示すように、所定の一定値θ2に維持されていると仮定する。
すなわち、周期加熱法においては、試験体10の周期加熱面11から温度波吸収面12への一次元方向の熱流を仮定する。具体的に、例えば、図1に示すように、この一次元方向(矢印Dの指す方向)にx軸を設定し、試験体10の厚さ(周期加熱面11と温度波吸収面12との距離)がdであるとすると,当該x軸の原点(x=0)の位置に当該試験体10の温度波吸収面12が配置され、x=dの位置に当該試験体10の周期加熱面11が配置される。
ここで、原点の温度(温度波吸収面12の温度)は所定の一定値に維持され、x=dの位置の温度(周期加熱面11の温度)は、sin(ωt+η)で表される周期(ωは角振動数[s−1]、t時間[s]、ηは任意の位相[rad]である。)で変化していると仮定する。
そして、上述のとおり、試験体10の周期加熱面11に第一温度波T1が与えられ、当該試験体10の内部の所定位置14に第二温度波T2が到達し、当該試験体10の温度波吸収面12の温度は所定の一定値θ2に維持されるという条件の下で一次元の熱伝導方程式を解くと、x=dの位置(周期加熱面11)で測定される第一温度波T1と、任意の位置x=xm(d>xm>0)(例えば、試験体10の内部の所定位置14)で測定される第二温度波T2と、の振幅比A(=θ1/θ0)(θ0は第一温度波T1の振幅であり、θ1は第二温度波T2の振幅である。)及び位相差φは、それぞれ下記の式(I)及び式(II)により求められる。
上記式(I)、(II)において、kは下記の式(III)で表され、iは虚数単位である。また、下記式(III)において、ωは、下記の式(IV)で表される角振動数であり、κは熱拡散率[m2/s]である。また、下記式(IV)において、fは周期[s]である。
こうして、試験体10の周期加熱面11における第一温度波T1と、当該試験体10の内部の所定位置14における第二温度波T2とを比較することにより得られた振幅比A又は位相差φに基づき、当該試験体10の熱拡散率κが求められる。
すなわち、まず振幅比Aを上記式(I)に代入してkを求め、次いで当該kの値を上記式(III)に代入して、試験体10の熱拡散率κ[m2/s]が得られる。同様に、位相差φ[rad]を上記式(II)に代入してkを求め、当該kの値を上記式(III)に代入して、試験体10の熱拡散率κ[m2/s]が得られる。
さらに、試験体10の熱伝導率λ[W/(m・K)]は,上述のようにして得られた熱拡散率κ[m2/s]と、別途測定された当該試験体10の密度ρ[kg/m3]及び比熱c[J/(kg・K)]とを下記の式(V)に代入することにより求められる。
本装置100は、上述のような周期加熱法により試験体10の熱拡散率を測定する本方法において好ましく使用される。本装置100は、図3に示すように、周期加熱ヒータ110及び温度波吸収ヒータ120を有している。周期加熱ヒータ110は、試験体10の周期加熱面11に温度波を与えるよう当該周期加熱面11を加熱する。
図3に示す例において、周期加熱ヒータ110には、直流電源200と、ファンクションジェネレーター210とが接続されている。直流電源200は、周期加熱ヒータ110に直流電流を供給する。ファンクションジェネレーター210は、周期加熱ヒータ110が発生させる温度波の周期及び振幅を設定する装置である。周期加熱ヒータ110は、ファンクションジェネレーター210によって設定された周期及び振幅を有する温度波を、直流電源200を介して発生させる。
温度波吸収ヒータ120は、試験体10の温度波吸収面12の温度が所定の一定値θ2に維持されるよう当該温度波吸収面12の加熱を調節する。
また、本装置100は、試験体10の側面13(図1及び図3に示すように、周期加熱面11と温度波吸収面12とをつなぐ試験体10の表面)の温度を所定範囲内に維持するために、当該側面13に対向して配置される周囲ヒータ130を有している。周囲ヒータ130は、試験体10の側面13の温度が所定範囲内に維持されるよう当該側面13の加熱を調節する。
周囲ヒータ130の配置は、当該周囲ヒータ130が側面13に対向して配置されれば特に限られないが、図3に示す例において、当該周囲ヒータ130は、隙間Gを介して当該側面13に対向して配置されている。この隙間Gは、気体(例えば、空気)が充填された空間であることとしてもよいし、真空であることとしてもよい。周囲ヒータ130の形状は特に限られないが、当該周囲ヒータ130は、例えば、試験体10の側面13を囲む筒状のヒータ(例えば、円筒ヒータ)であることとしてもよい。
周期加熱ヒータ110、温度波吸収ヒータ120及び周囲ヒータ130は、それぞれ試験体10の周期加熱面11、温度波吸収面12及び側面13を加熱できるヒータであれば特に限られないが、例えば、電熱ヒータ、ランプヒータ又はレーザー照射装置である。
また、本装置100は、第一温度センサ310、第二温度センサ320及び第三温度センサ330とを有している。第一温度センサ310、第二温度センサ320及び第三温度センサ330は、図1及び図3に示すように、温度波が伝播される一次元方向において直線的に配置されることが好ましい。
すなわち、第一温度センサ310、第二温度センサ320及び第三温度センサ330は、例えば、周期加熱面11から温度波吸収面12に引いた仮想的な垂線上に配置されることが好ましく、当該垂線を中心とする半径5mm以下の当該周期加熱面11に平行な仮想的な円内に配置されることとしてもよい。
温度波吸収ヒータ120は、第三温度センサ330による温度波吸収面12の温度の測定結果に基づいて、当該温度波吸収面12の温度が所定の一定値に維持されるよう、当該温度波吸収面12の加熱を調節する。
また、図3に示す例において、本装置100は、周囲ヒータ130による加熱を調節するための第四温度センサ340を有している。この例において、第四温度センサ340は、試験体10の側面13に対向する、周囲ヒータ130の表面と接触して配置されている。周囲ヒータ130は、第四温度センサ340による温度の測定結果に基づいて、当該周囲ヒータ130の出力(当該周囲ヒータ130による加熱)を調節する。
第一温度センサ310、第二温度センサ320、第三温度センサ330及び第四温度センサ340は、例えば、熱電対又は白金抵抗体である。
なお、第一温度センサ310、第二温度センサ320、第三温度センサ330及び第四温度センサ340の厚さが、試験体10の厚さに比べて無視できないくらい大きい場合には、当該温度センサを介した熱損失によって温度波が歪み、測定の誤差が生じる。このため、第一温度センサ310、第二温度センサ320、第三温度センサ330及び第四温度センサ340の厚さは、例えば、試験体10の厚さdの10分の1以下であることが好ましい。
すなわち、例えば、第一温度センサ310、第二温度センサ320、第三温度センサ330及び第四温度センサ340が、筐体を有する熱電対である場合には、当該筐体の厚さ(熱電対が円筒状の筐体を有する場合には、当該筐体の直径)が試験体10の厚さdの10分の1以下であることが好ましい。
また、図3に示す例において、本装置100は、温度波吸収ヒータ120の試験体10と反対側に配置された冷却装置140を有する。冷却装置140は、温度波が温度波吸収面12に効率よく吸収されるように、温度波吸収ヒータ120を冷却する。冷却装置140は、例えば、冷媒を含む冷却タンクである。
また、図3に示す例において、本装置100は、周期加熱ヒータ110の試験体10と反対側に配置された補助ヒータ150を有する。補助ヒータ150は、周期加熱ヒータ110からの熱損失を低減させるよう当該周期加熱ヒータ110を保温する。補助ヒータ150は、例えば、電熱ヒータである。
また、図3に示す例において、本装置100は、周囲ヒータ130と補助ヒータ150との間に配置された断熱材160を有する。この断熱材160は、試験体10の周囲の熱的安定性を確保する。また、図3に示す例において、本装置100は、冷却装置140の周囲に配置された断熱材170を有する。この断熱材170は、試験体10の周囲の熱的安定性を確保する。また、図3に示す例においては、上述した測定系が金属板180(例えば、ステンレス板)の上に配置されるとともに、筐体190(例えば、ベルジャー)により覆われている。
測定の対象となる試験体10は、周期加熱ヒータ110と温度波吸収ヒータ120との間に配置されるものであれば特に限られない。具体的に、試験体10は、例えば、断熱材、断熱材と他の部材との積層体、プラスチック、金属、木材、石膏ボード及びセメントからなる群より選択されることとしてもよい。より具体的に、断熱材は、例えば、繊維質断熱材、多孔質断熱材又は真空断熱材であることとしてもよい。
繊維質断熱材は、例えば、ロックウール断熱材、グラスウール断熱材、アルミナ系繊維質断熱材(例えば、アルミナファイバーウール断熱材)、及びアルミナシリカ系繊維質断熱材からなる群より選択されることとしてもよい。
多孔質断熱材は、例えば、無機多孔質断熱材(例えば、ケイ酸カルシウム断熱材)又は発泡樹脂断熱材(例えば、発泡ゴム成形体、発泡ポリウレタン成形体又は発泡スチロール成形体)からなる群より選択されることとしてもよい。
断熱材と他の部材との積層体は、例えば、当該断熱材と、当該断熱材に積層された金属部材及び/又はガラス部材とを有する積層体であることとしてもよい。
また、本方法においては、後述のとおり、比較的高い温度(例えば、800℃以上)で比較的低い熱伝導率を示す試験体10の熱拡散率を高い精度で測定することができる。そこで、例えば、試験体10は、例えば、1000℃において0.5W/(m・K)以下の熱伝導率を有することとしてもよく、1000℃において0.3W/(m・K)以下の熱伝導率を有することとしてもよく、1000℃において0.2W/(m・K)以下の熱伝導率を有することとしてもよい。なお、試験体10の熱伝導率の下限値は特に限られないが、例えば、当該試験体10は、1000℃において0.01W/(m・K)以上の熱伝導率を有することとしてもよい。
試験体10の形状は、周期加熱ヒータ110と温度波吸収ヒータ120との間に配置されるものであれば特に限られないが、例えば、平板状であることが好ましい。試験体10が平板状である場合には、周期加熱面11と温度波吸収面12とは略平行に配置される。
試験体10は、1つの試験体からなることとしてもよいし、温度波が伝播する方向に積層された2つ以上の同質の試験体からなることとしてもよい。すなわち、試験体10は、例えば、1つの板状断熱材であることとしてもよいし、2つ以上の同一種類の板状断熱材が積層してなる積層体であることとしてもよい。
試験体10が2つ以上の試験体を積層してなる場合、隣接する2つの試験体の間に隙間が形成されると、当該2つの試験体の間に気体(空気)の層が形成され、測定結果が気体の熱伝導率の影響を受け、誤差が生じる。
このため、試験体10が2つ以上の試験体を積層してなる場合、温度波が伝播する方向に隣接する一対の当該試験体において、一方の試験体の表面と、当該表面に対向する他方の試験体の表面との間には、例えば、0.5mm以上の隙間を形成しないことが好ましい。
そして、本方法においては、まず、試験体10の周期加熱面11から温度波吸収面12に向けて温度波を伝播させる。すなわち、周期加熱面11に対向する周期加熱ヒータ110によって、所定の周期及び所定の振幅を有する温度波を発生させる。その結果、試験体10の周期加熱面11には、周期加熱ヒータ110が発生させた温度波に対応する温度波が与えられる。
本方法において、周期加熱面11に与えられ、試験体10の内部を伝播する温度波は、完全に減衰することはなく、温度波吸収面12に到達する。すなわち、周期加熱ヒータ110は、試験体10の温度波吸収面12に到達する温度波を、当該試験体10の周期加熱面11に与える。
また、周期加熱ヒータ110は、振幅の中心が所定温度である温度波を発生させる。振幅の中心の温度は、特に限られないが、例えば、−190〜1500℃の範囲内の所定温度であることとしてもよく、25〜1500℃の範囲内の所定温度であることとしてもよく、700〜1500℃の範囲内の所定温度であることとしてもよく、800〜1500℃の範囲内の所定温度であることとしてもよい。本方法においては、このような比較的高い温度(例えば、700〜1500℃又は800〜1500℃)においても、試験体10の熱拡散率を高い精度で測定することができる。
なお、例えば、試験体10の1000℃における熱拡散率を測定する場合には、周期加熱面11における温度波の振幅の中心温度と、温度波吸収面12における所定の一定温度との算術平均値が1000℃となるような条件で測定を行う。
また、温度波の振幅が大きすぎる場合には、例えば、試験体10の周囲の気体(試験体10の側面13と接している気体(隙間Gに充填されている気体))、当該気体と接している周囲ヒータ130、熱損失を防ぐために配置されている断熱材160,170等の他の部材の温度が周期的に変化して別の温度波が形成されてしまう。
そして、この別の温度波が試験体10の側面13から当該試験体10の内部へ侵入し、周期加熱面11から温度波吸収面12に向けて伝播している本来の温度波と重なり、測定誤差が生じる。
このため、周期加熱ヒータ110で発生させる温度波の振幅は、例えば、1〜10℃の範囲内の所定値であることが好ましく、1〜5℃の範囲内の所定値であることがより好ましく、2〜4℃の範囲内の所定値であることが特に好ましい。
また、周期加熱ヒータ110で発生させる温度波は、例えば、所定温度±10℃の範囲内で変化することが好ましく、所定温度±5℃の範囲内で変化することが好ましく、所定温度±2℃の範囲内で変化することが好ましい。
温度波の振幅が上記の適切な範囲内であることにより、試験体10に温度波を適切に伝播させることができ、測定精度を高めることができる。なお、例えば、温度波の振幅の中心の温度が1000℃であり、当該振幅が5℃である場合、当該温度波は、1000±5℃の範囲内(995℃〜1005℃)で周期的に変化する。
また、温度波の周期が長すぎる場合、試験体10の温度が、当該試験体10内の当該温度波が伝播する方向における全ての位置でほぼ均一に変化してしまい、当該試験体10の内部を当該温度波が伝播するという状態を形成することができなくなり、測定誤差が生じる。一方、温度波の周期が短すぎる場合、当該温度波が試験体10の内部を伝播する間に、当該温度波が途中で完全に減衰して消滅してしまい、測定誤差が生じる。
このため、周期加熱ヒータ110で発生させる温度波の周期は、例えば、1〜120分の範囲内の所定値であることが好ましく、15〜100分の範囲内の所定値であることがより好ましく、30〜60分の範囲内の所定値であることが特に好ましい。温度波の周期が上記の適切な範囲内であることにより、試験体10に温度波を適切に伝播させることができ、測定精度を高めることができる。
また、温度波の振幅の中心の温度が一定とならず、時間の経過とともに上昇又は下降する場合(温度波がドリフトする場合)には、当該温度波が歪んでしまうため、周期加熱面11における第一温度波T1と、試験体10の内部の所定位置14における第二温度波T2との振幅比又は位相差を正確に測定できなくなり、測定誤差が生じる。
このため、例えば、試験体10を伝播する、連続する3周期分の温度波(例えば、第一温度センサ310及び/又は第二温度センサ320により測定される)において、各1周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値と、当該3周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値との差分が、±2℃以内であることが好ましく、±1℃以内であることがより好ましく、±0.2℃以内であることが特に好ましい。
また、例えば、試験体10を伝播する、連続する3周期分の温度波において、各1周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値の、当該3周期分の振幅の中心温度の平均値に対する変化率(当該各1周期分の平均値から当該3周期分の平均値を減じた値を、当該3周期分の平均値で除して得られた値に、100を乗じて算出される変化率)が、±2%以内であることが好ましく、±0.5%以内であることがより好ましく、±0.2%以内であることが特に好ましい。このように温度波のドリフトを抑制することにより、温度波の振幅比又は位相差を正確に測定することができ、熱拡散率の測定精度を高めることができる。
また、本方法においては、試験体10の周期加熱面11から温度波吸収面12に向けて温度波を伝播させている間、当該温度波吸収面12の温度を、所定の一定値となるよう調節する。
すなわち、温度波吸収面12の温度が所定の一定値となるよう、温度波吸収ヒータ120による当該温度波吸収面12の加熱を調節する。このとき、温度波吸収ヒータ120は、第三温度センサ330による温度波吸収面12の温度の測定結果に基づき、温度波吸収面12の加熱を調節する。
具体的に、温度波吸収ヒータ120は、温度波吸収面12の温度が所定の一定値を下回った場合には、その出力を上げて当該温度波吸収面12の加熱を強め、当該温度波吸収面12の温度を上昇させる。
また、温度波吸収ヒータ120は、温度波吸収面12の温度が所定の一定値を上回った場合には、その出力を下げて当該温度波吸収面12の加熱を弱め、当該温度波吸収面12の温度を低下させる。なお、温度波吸収面12の加熱を弱める場合、上述した冷却装置140を作動させて、温度波吸収ヒータ120を冷却することとしてもよい。
温度波吸収面12の温度が調節されるべき所定の一定値は、例えば、周期加熱面11における温度波の振幅の中心温度より、0〜20℃の範囲内の所定値だけ低い又は高い温度であることとしてもよく、当該振幅の中心温度より、0〜10℃の範囲内の所定値だけ低い又は高い温度であることとしてもよく、当該振幅の中心温度より、0〜5℃の範囲内の所定値だけ低い又は高い温度であることとしてもよい。すなわち、温度波吸収面12の温度が調節されるべき所定の一定値は、例えば、周期加熱面11における温度波の振幅の中心温度±20℃の範囲内の所定の一定値であることとしてもよく、当該中心温度±10℃の範囲内の所定の一定値であることとしてもよく、中心温度±5℃の範囲内の所定の一定値であることとしてもよい。
また、本方法においては、上述のとおり、上記式(I)〜(III)を使って熱拡散率κを求める。この測定原理は、試験体10の一方の表面(周期加熱面11)の温度を周期的に変化させ、且つその反対側の表面(温度波吸収面12)の温度を一定にするという条件で熱伝導方程式を解いて得られる解を使うというものであるが、実際には、温度波吸収面12の温度を完全に一定にすることは不可能である。このため、温度波吸収面12における温度の変動をどの程度まで抑えることができるかが、測定精度に大きく影響する。
この点、温度波吸収面12の温度は、所定の一定値±0.5℃の範囲内に維持することが好ましく、所定の一定値±0.2℃の範囲内に維持することがより好ましく、所定の一定値±0.05℃の範囲内に維持することが特に好ましい。温度波吸収面12の温度を上記のように所定の一定値又はその極近傍の温度に維持することにより、測定精度を高めることができる。
また、温度波吸収面12と温度波吸収ヒータ120との間に他の部材を配置すると、周期加熱面11から伝播してきた温度波が、当該温度波吸収面12で効率よく吸収されず(消滅せず)、測定誤差が生じることがある。
そこで、温度波吸収面12と温度波吸収ヒータ120との間には他の部材を配置せず、当該温度波吸収面12と温度波吸収ヒータ120とを接触させることとしてもよい。なお、温度波吸収面12の温度を測定するための第三温度センサ330は、例えば、当該温度波吸収面12と接触して配置されることとしてもよい。この場合、第三温度センサ330は、温度波吸収ヒータ120と接触することなく配置されることとしてもよい。
また、本方法においては、試験体10の周期加熱面11から温度波吸収面12に向けて温度波を伝播させている間、当該試験体10の側面13の温度を、所定範囲内となるよう調節する。
すなわち、側面13の温度が所定範囲内となるよう、周囲ヒータ130による当該側面13の加熱を調節する。このとき、周囲ヒータ130は、第四センサ340が温度を測定した結果に基づき、試験体10の側面13の加熱を調節する。
具体的に、周囲ヒータ130は、測定温度が所定範囲を下回った場合には、その出力を上げて当該側面13の加熱を強め、当該側面13の温度を上昇させる。また、周囲ヒータ130は、測定温度が所定範囲を上回った場合には、その出力を下げて当該側面13の加熱を弱め、当該側面13の温度を低下させる。
側面13の温度が調節されるべき所定範囲は、例えば、周期加熱面11における温度波の振幅の中心温度と温度波吸収面12の所定の一定温度との算術平均値±50℃の範囲であることが好ましく、当該算術平均値±20℃の範囲であることがより好ましく、当該算術平均値±5℃の範囲であることが特に好ましい。
また、本方法においては、試験体10の周期加熱面11から温度波吸収面12に向けて温度波を伝播させている間、当該試験体10の側面13の温度を調節するための周囲ヒータ130の温度を、所定の範囲内となるよう調節することとしてもよい。
すなわち、上述のとおり、周囲ヒータ130の温度が周期的に変化すると、周期加熱面11から温度波吸収面12に向けて伝播している本来の温度波と異なる別の温度波が形成され、測定誤差が生じる。
このため、周囲ヒータ130の温度の変化は可能な限り抑えることが好ましい。そこで、周囲ヒータ130の温度を、所定の範囲内、すなわち所定の一定値及びその近傍に維持する。
具体的に、図3に示すように、第四温度センサ340を、試験体10の側面13に対向する、周囲ヒータ340の表面に配置し、当該第四温度センサ340による温度の測定結果に基づき、当該測定される温度が所定の範囲内となるよう、当該周囲ヒータ130の出力(当該周囲ヒータ130による加熱)を調節する。
周囲ヒータ130の温度が調節されるべき所定範囲は、例えば、周期加熱面11における温度波の振幅の中心温度と温度波吸収面12の所定の一定温度との算術平均値±50℃の範囲であることが好ましく、当該算術平均値±20℃の範囲であることがより好ましく、当該算術平均値±5℃の範囲であることが特に好ましい。
次に、本方法においては、試験体10の周期加熱面11における第一温度波T1と、当該試験体10の内部の所定位置14における第二温度波T2とを測定する。すなわち、周期加熱ヒータ110から周期加熱面11に与えられた温度波T1を第一温度センサ310によって測定するとともに、当該周期加熱面11から試験体10の内部の所定位置14に伝播された第二温度波T2を第二温度センサ320によって測定する。
そして、本方法においては、上述のようにして測定された第一温度波T1と第二温度波T2との振幅比又は位相差から試験体10の熱拡散率を得る。すなわち、上述のとおり、第一温度波T1の振幅θ0と、第二温度波T2の振幅θ1とから振幅比A(=θ1/θ0)を求め、上記の式(I)と式(III)とから熱拡散率κを求める。また、第一温度波T1と第二温度波T2との位相のずれから位相差φを求め、上記の式(II)と式(III)とから熱拡散率κを求める。
ここで、本実施形態において特徴的なことの一つは、本方法において、測定された一周期分の第一温度波T1及び第二温度波T2の各々を最小二乗法により三角関数に近似し、三角関数に近似された当該第一温度波T1と当該第二温度波T2との振幅比又は位相差から試験体10の熱拡散率を測定することである。
すなわち、上述した測定原理においては、温度波は三角関数で表されるとして扱っているが、実際に測定される温度波は、完全な三角関数で表現されるものではない。このため、実際に測定された温度波の波形に歪みが生じている場合には、振幅比又は位相差を正確に求めることができず、測定誤差が生じる。
具体的に、振幅比は、周期加熱面11における第一温度波T1の振幅と、試験体10の内部の所定位置14における第二温度波T2の振幅との比で決定される。また、位相差は、周期加熱面11における第一温度波T1が、試験体10の内部の所定位置14に到達するまでの時間で決定され、その時間を測定するための基点として、測定された第一温度波T1のピーク及び第二温度波T2のピークに対応する時刻を使う。
したがって、測定される温度波のピーク付近の波形が歪んでいると、振幅比又は位相差を求めるための基点、例えば当該温度波のピーク点を正確に求めることができず、測定誤差が生じる。
この点、例えば、測定された温度波のピーク近傍部分のみを最小二乗法により二次関数で近似し、当該近似により得られた二次関数を微分してピークの時間及び温度を求めることが考えられる。
しかしながら、例えば、測定された温度波の波形の一部又は全体に歪みがある場合は、ピーク近傍のどの範囲までのデータを使って二次関数近似を行うかで振幅比又は位相差に違いが生じ、測定誤差が生じる。
また、例えば、試験体10の熱伝導率が小さい場合や、真空下で測定を実施する場合には、温度波が激しく減衰するため、測定中の僅かな温度の変化が、試験体10の内部を伝播する温度波の波形を乱してしまう。また、例えば、温度波がドリフトしている場合(温度波の振幅の中心温度が時間の経過とともに上昇又は低下している場合)には、測定される温度波の波形が歪んでしまう。
このように測定される温度波の波形が歪んでいる場合には、測定された温度波のピーク近傍部分のみを使用して近似を行っても、振幅比又は位相差を正確に求めることができず、測定誤差が生じる。
これに対し、本方法においては、測定された一周期分の温度波を最小二乗法により三角関数に近似することにより、当該温度波のピーク位置を適切に特定することができ、その結果、振幅比及び位相差を正確に求めることができる。
実際の測定では、時間tに対する温度θを測定し、最小二乗法を使って、温度波の一周期分のデータから位相差φを決定する。この時、上記式(IV)より角振動数ωは既知である。
この方法は、温度波の特徴的な一点、例えば波形のピークの時刻又は温度を使って、周期加熱面11における温度波と試験体10の内部における温度波との振幅比又は位相差を求める方法とは全く違う。
温度波の特徴的な点のみを使う場合は、当該特徴的な点をデータから特定しなければならないが、例えば、波形が歪んでいる場合には、当該特徴的な点を特定することが難しくなる。
特に試験体10の熱伝導率が小さい場合には、当該試験体10内部における温度波の振幅は小さくなり、当該試験体10の周囲の温度(例えば、当該試験体10の側面13と接している気体Gの温度)の僅かな変化により、当該温度波の波形が歪んでしまうことがある。このような場合、温度波の特徴的な点を特定することは難しく、当該特徴的な点のみを使って近似を行うと、測定誤差が生じてしまう。
これに対し、上記式(VII)を、1周期全域に渡って最小二乗法により三角関数に近似することで、温度波の歪みの影響を最小限に抑えて、振幅比又は位相差を求めることができ、測定精度を向上させることができる。
なお、周期加熱面11における温度波の振幅が大きすぎると、三角関数からかけ離れた温度波が発生してしまう。すなわち、この場合、温度波のうち温度が上昇する部分は三角関数に近い曲線を描くが、温度が低下する部分は、温度の低下が三角関数の曲線に追いつかず、その結果、当該温度波の全体としては、歪んだ波形になってしまうことがある。
この場合には、試験体20の熱容量及び熱拡散率に応じて、温度波の振幅を決めることができる。すなわち、次のような方法を使って、周期加熱面11に与えられる温度波の振幅を決定する。
ここで、cは比熱、Sは熱流面積、tは時間、vは体積、ρは密度、θaは放熱側の温度、θ0は温度波の振幅、αは熱拡散率であり、ωは上記式(IV)で表される。
温度波の勾配が最大になる時(具体的には、cos(ωt)=1、すなわちsin(ωt)=0の時)、温度波の曲線が三角関数から外れてしまう可能性が高くなる。この条件を上記式(XI)に代入すると、下記式(XII)を得る。
したがって、周期加熱面11にかける温度波の振幅θ0を上記式(XII)で決定することができる。上記式(XII)で得られる振幅は目安であり、厳密な値ではないが、下記式(XIII)に基づき、振幅θ0を決定することが好ましい。
また、本方法においては、試験体10を伝播する、連続する3周期分の温度波において、各1周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値と、当該3周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値との差分が、±2℃以内であることが好ましく、±1℃以内であることがより好ましく、±0.5℃以内であることが特に好ましい。
また、本方法においては、試験体10を伝播する、連続する3周期分の温度波において、各1周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値の、当該3周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値に対する変化率が、±2%以内であることが好ましく、±1%以内であることがより好ましく、±0.5%以内であることが特に好ましい。
このように、温度波のドリフトを抑制した上で、一周期分の温度波を最小二乗法により三角関数に近似することにより、より正確に振幅比又は位相差を求めることができる。
次に、本実施形態に係る具体的な実施例について説明する。
周期加熱ヒータ110により所定の温度波を発生させ、試験体10の周期加熱面11において温度波を測定した。そして、この測定された一周期分の温度波を最小二乗法により三角関数に近似した。
図4には、実際に測定された温度波のデータを細線で示し、一周期分の当該温度波を最小二乗法により三角関数に近似した結果を太線で示す。図4に示すように、測定された一周期分のデータを使用し、且つ最小二乗法を使用することにより、測定された温度波を三角関数に適切に近似することができた。
図3に示すような本装置100を使用する本方法により試験体10の熱拡散率を測定し、さらに当該熱拡散率から当該試験体10の熱伝導率を求めた。
すなわち、周期加熱面11と、試験体10の内部の所定位置14とで測定された一周期分の温度波を最小二乗法により三角関数に近似して、当該温度波のピークの位置を特定し、当該特定されたピークに基づき温度波の位相差を求め、当該位相差から当該試験体10の熱拡散率を求めた。
また、周期加熱ヒータ110、温度波吸収ヒータ120及び周囲加熱ヒータ130としては、電熱ヒータを使用した。また、周囲ヒータ130は、予め出力を所定値±0.05%の範囲に制限して使用した。第一温度センサ310、第二温度センサ320、第三温度センサ330及び第四温度センサ340としては、熱電対を使用した。
また、図示はしていないが、周期加熱面11に溝を形成して当該溝内に第一温度センサ310を配置するとともに、当該周期加熱面11と周期加熱ヒータ110との間(当該第一温度センサ310と当該周期加熱ヒータ110との間)に、無機繊維製のフリースを配置した。
また、図示はしていないが、温度波吸収面12と温度波吸収ヒータ120との間に、隙間を空けて2枚のアルミナ板を配置するとともに、当該2枚のアルミナ板に挟まれた当該隙間に第三温度センサ330を配置した。
まず、試験体10としてアルミナ−シリカ系繊維質断熱材(150mm×100mm、厚さ30mm)1枚を使用し、当該試験体10の100℃、200℃、400℃、600℃、800℃、1000℃、1200℃、1400℃及び1500℃における熱拡散率を測定し、当該熱拡散率から熱伝導率を求めた。周期加熱ヒータ110で発生させた温度波の振幅は3℃であり、周期は60分であった。試験体10の温度波吸収面12の温度は、所定値±0.05℃の範囲内に維持された。また、試験体10を伝播する、連続する3周期分の温度波において、各1周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値と、当該3周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値との差分は、±2℃以内であった。また、比較のため、この試験体10の熱伝導率をGHP法によっても測定した。
また、試験体10として繊維補強セメント板(150mm×100mm、厚さ20mm)2枚を使用し、当該試験体10の100℃、300℃及び500℃における熱拡散率を測定し、当該熱拡散率から熱伝導率を求めた。周期加熱ヒータ110で発生させた温度波の振幅は2℃であり、周期は60分であった。試験体10の温度波吸収面12の温度は、所定値±0.05℃の範囲内に維持された。また、試験体10を伝播する、連続する3周期分の温度波において、各1周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値と、当該3周期分の温度波の振幅の中心温度の平均値との差分は、±2℃以内であった。また、比較のため、この試験体10の熱伝導率をGHP法によっても測定した。
図5及び図6に、アルミナ−シリカ系繊維質断熱材及び緻密質多孔質体の熱伝導率を周期加熱法で測定した結果をそれぞれ示す。図5及び図6において、横軸は熱伝導率を測定した温度(℃)(周期加熱面11における温度波の振幅の中心温度と、温度波吸収面12の所定の一定温度との算術平均値)を示し、縦軸は各温度で測定された熱伝導率(W/(m・K))を示す。また、図5及び図6において、丸印は周期加熱法を使用した本方法で測定した結果を示し、四角印はGHP法で測定した結果を示している。
図5及び図6に示すように、本装置100を使用した本方法による測定結果は、GHP法による測定結果とほぼ一致した。すなわち、本装置100を使用した本方法によれば、広い温度範囲において高い精度で熱拡散率及び熱伝導率を測定できることが確認された。
10 試験体、11 周期加熱面、12 温度波吸収面、13 側面、14 試験体内部の所定位置、100 熱拡散率測定装置、110 周期加熱ヒータ、120 温度波吸収ヒータ、130 側面ヒータ、140 冷却装置、150 補助ヒータ、160,170 断熱材、180 金属板、190 筐体、200 直流電源、210 ファンクションジェネレータ、310 第一温度センサ、320 第二温度センサ、330 第三温度センサ、340 第四温度センサ。
Claims (3)
- 周期加熱法により熱拡散率を測定する方法であって、
試験体の周期加熱面から温度波吸収面に向けて温度波を伝播させること;
前記周期加熱面における第一温度波を測定すること;
前記周期加熱面と前記温度波吸収面との間の前記試験体の内部の所定位置における第二温度波を測定すること;
前記第一温度波と前記第二温度波との振幅比又は位相差から前記試験体の熱拡散率を得ること;
を含み、
測定された一周期分の前記第一温度波及び前記第二温度波の各々を最小二乗法により三角関数に近似し、三角関数に近似された前記第一温度波と前記第二温度波との前記振幅比又は前記位相差から前記試験体の熱拡散率を測定する
ことを特徴とする方法。 - 前記試験体を伝播する、連続する3周期分の前記温度波において、各1周期分の前記温度波の振幅の中心温度の平均値と、前記3周期分の前記温度波の振幅の中心温度の平均値との差分が、±2℃以内である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。 - 前記試験体を伝播する、連続する3周期分の前記温度波において、各1周期分の前記温度波の振幅の中心温度の平均値の、前記3周期分の前記温度波の振幅の中心温度の平均値に対する変化率が、±2%以内である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
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