JP2015067533A - セメント組成物用収縮低減剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】下記式[1]で表される化合物A及び下記式[2]で表される化合物(B)を含み、化合物Aと化合物BをA:B=99:1〜50:50の質量比で含むことを特徴とする、セメント組成物用収縮低減剤。
(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して炭素原子数1乃至4のアルキル基を表し、但し、nはオキシエチレン(EO)基の平均付加モル数であって2又は3を表す。)
(式中、R3は炭素原子数9乃至24の炭化水素基を表し、m1及びm2はそれぞれ独立してオキシエチレン(EO)基の平均付加モル数であって0乃至30を表し、但しm1とm2の合計値は1乃至30を表す。)
【選択図】なし
Description
これまで提案された上記低級アルコールのアルキレンオキシド付加物においても、化合物の構造を最適化することにより、打設直後の極若材齢における自己収縮の低減を図る提案がなされている(例えば特許文献2)。
例えば特許文献3には、乾燥収縮低減効果と、減水剤との相溶性を考慮した水硬性材料用収縮低減剤として、アルキルアミンのアルキレンオキシド付加物が提案されている。また特許文献4には、減水剤と乾燥収縮低減剤とを配合した水硬性組成物用の一液型添加剤が提案されている。
また収縮低減剤は、特に自己収縮低減効果を考慮すると、減水剤投入時に同時に投入されることが好ましく、その場合、減水剤との相溶性に優れ、減水剤と一液化できることが望ましく、自己収縮低減性及び減水剤との一液化性の何れをも十分に満足できるような収縮低減剤の提案が求められている。
加物を併用することにより、自己収縮低減効果の向上のみならず、特にポリカルボン酸系減水剤との優れた相溶性を実現でき、技術的に困難とされた一液化を実現できる、セメント組成物用収縮低減剤を提供することを課題とする。
また、実際の施工現場において為される収縮低減剤と減水剤の一液化しての使用を踏まえ、上記化合物とともに高級アミンのアルキレンオキシド付加物を本発明の収縮低減剤の一成分として採用することにより、常温における両添加剤の相溶性を向上させることができる、すなわち一液性に優れる収縮低減剤となることを見出した。
さらにこれら成分に加え、低級アルコールのアルキレンオキシド付加物を配合することにより、高温(例えば40℃)における当該収縮低減剤と減水剤との分離性を改善し、一液性をさらに強化できることを見出し、本発明を完成させた。
またさらに低級アルコールのアルキレンオキシド付加物を配合した本発明のセメント組成物用収縮低減剤は、常温(例えば20℃)下だけでなく、高温(例えば40℃)下における減水剤との一液安定性に優れたものとすることができる。
本発明は、低級アルコールのアルキレンオキシド付加物を変性した化合物(化合物A)、高級アミン、例えば高級アルキルアミン又は高級アルケニルアミンのアルキレンオキシド付加物(化合物B)とを含みて構成され、さらに低級アルコールのアルキレンオキシド付加物(化合物C)を含み得る、セメント組成物用収縮低減剤を対象とする。
以下、本発明のセメント組成物用収縮低減剤を構成する各化合物について詳述する。
本発明のセメント組成物用収縮低減剤を構成する化合物Aは下記式[1]で表される化合物である。本発明において、従来使用されてきた低級アルコールのアルキレンオキシド付加物(片末端をアルキル化した化合物)に替えて、両末端をアルキル化した化合物を採用することにより、片末端をアルキル化した化合物を用いた場合に比べ、自己収縮低減効果を高めることができる。
上記アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状のアルキル基が挙げられる。従って、R1及びR2の好ましい基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基等が挙げられる。
化合物AにおけるR1及びR2のアルキル基の炭素原子数の合計は、練り混ぜ性向上の観点からは2乃至6であることが好ましく、一液性向上の観点からは、炭素原子数3乃至6が好ましい。さらに自己収縮低減性向上の観点からは3乃至8であることが好ましく、より好ましくは4乃至8である。
中でもR1及びR2のうち一方がn−ブチル基、他方がメチル基を表すことが好ましい。
なかでもnを3とすることで、自己収縮低減性向上、練り混ぜ性向上の観点から、状態が更に良好となる。
本発明のセメント組成物用収縮低減剤を構成する化合物Bは下記式[2]で表される化合物である。下記化合物B(高級アルキルアミン又は高級アルケニルアミンのアルキレンオキシド付加物)を上記化合物Aと併用することにより、当該収縮低減剤と減水剤等の他の添加剤との常温における相溶性を向上させる(一液化を向上させる)ことができる。
上記炭素原子数9乃至24の炭化水素基としては、炭素原子数9乃至24のアルキル基又は炭素原子数9乃至24のアルケニル基が挙げられ、これらは直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよい。
R3の好ましい基としては、デシル基、ドデシル基(ラウリル基)、テトラデシル基(ミリスチル基)、ヘキサデシル基(パルミチル基)、オクタデシル基(ステアリル基)、エイコシル基、ミリストレイル基、パルミトレイル基、オレイル基、リノイル基、リノレイル基、リシノレイル基等が挙げられ、特に好ましくはラウリル基、オレイル基である。
中でも、自己収縮低減効果及び一液性向上の観点から、m1とm2の合計値は2乃至20が好ましく、特に2乃至10がより好ましい。
好ましくは、上記化合物A:化合物Bの質量比率の数値範囲を、99:1〜60:40とすることにより、水和反応の遅延や阻害といった影響を少なくすることができ、さらに99:1〜80:20とすることで、流動性を向上させ、より一層水和反応への影響を少なくすることができ、早期強度発現性を得ることができる。例えば、これらの配合比(質量比)は87.5:12.5〜80:20が挙げられる。
また本発明のセメント組成物用収縮低減剤は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記式[1]で表される化合物A、式[2]で表される化合物Bに加え、さらに低級アルコールのアルキレンオキシド付加物を配合することができる。このような化合物として、例えば下記式[3]で表される化合物Cを挙げることができる。
本発明において、化合物Cを適正使用することにより、高温(例えば40℃)における当該収縮低減剤と分散剤との分離性を改善し、一液性を強化できる。
上記アルキル基は直鎖状、分枝鎖状又は環状のいずれであってもよい。
R4の好ましい基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基等が挙げられ、中でも好ましいものとして、メチル基及びn−ブチル基を挙げることができる。
また、qはオキシアルキレン基AOの平均付加モル数であって2乃至10を表し、好ましくは2乃至8、より好ましくは3乃至4である。
なお、付加するオキシアルキレン基は同一のオキシアルキレン基であっても、2種以上の異なるオキシアルキレン基であってもよく、異なるオキシアルキレン基が付加する場合
にはランダム付加又はブロック付加の何れであってもよい。
本発明のセメント組成物用収縮低減剤は、コンクリート又はモルタルを練り混ぜた後(打設直前)に添加し再度均一に混練してもよいが、優れた自己収縮低減効果を得るには、コンクリート混練時に減水剤とともに原液添加するか、又は予め混練水に希釈して添加することにより使用する。
本発明のセメント組成物用収縮低減剤は、優れた収縮低減性とともに、水及び減水剤との優れた相溶性を有するため、これらに任意の割合で溶解させることが可能である。このため、水/セメント比の適用範囲が広く、水/セメント比(質量%)で60〜15%の種々の強度を有するコンクリートに適用可能である。なかでも、水/セメント比が20%以下となるような超高強度コンクリートにおいて好適に適用可能であり、優れた自己収縮低減効果を発揮できる。
本発明のセメント組成物用収縮低減剤は、公知公用の化学混和剤等を適宜採用して組合せ、セメント混和剤とすることができ、該セメント混和剤も本発明の対象である。具体的には、該セメント混和剤には、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、空気連行剤(AE剤)、起泡剤、消泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤及び凝結遅延剤からなる群から選択される少なくとも一種の他のコンクリート添加剤を配合することができる。
本発明のセメント混和剤とは、本発明のセメント組成物用収縮低減剤以外に公知の混和剤を配合しセメント混和剤とした形態、又はコンクリート製造時に本発明のセメント組成物用収縮低減剤と公知公用の混和剤が別々に添加され最終的にはコンクリート中で混合される形態の何れをも含む。
オン系空気連行剤、<3>両性系空気連行剤が挙げられる。<1>アニオン系空気連行剤としては高級アルコール(又はそのアルキレンオキシド付加物)の硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ロジン石鹸、マレイン化ロジン石鹸などの樹脂石鹸塩、高級アルコール(又はそのアルキレンオキシド付加物)のリン酸エステル塩など、<2>ノニオン系空気連行剤としてはアルキレングリコール、高級アルコールのアルキレンオキシド付加物、脂肪酸とアルキレングルコールとのエステル、糖アルコールのアルキレングルコール付加物など、<3>アニオン、カチオンからなる両性系空気連行剤としてはアルキルベタイン型、アルキルアミドベタイン型、アミノ酸系両性活性剤型などが挙げられる。
剤(a−1)(2−エチルヘキサノール3モルEO付加物)を採用し、製造例1(段落[0033]に記載の手順に従い、調製した。
各収縮低減剤を水で希釈し、5及び16質量%水溶液を調製し、曇点を測定した。
《粒度分布の測定方法》
各収縮低減剤を水で希釈して16質量%水溶液を調製し、各水溶液の曇点における粒度分布をレーザ回折式粒子径分布測定装置 SALD−2300((株)島津製作所製)を用いて測定した。
《減水剤への一液性確認試験》
市販の減水剤(シーカメント1100NT(日本シーカ(株)製)85部と、各収縮低減剤15部とを混合した。混合後、20℃及び40℃で3ヶ月間静置保存し、目視にて外観の比較を行った。以下の評価指標に従い、収縮低減剤の一液性安定性を評価した。
<一液性安定性の評価指標>
◎:減水剤の外観が、透明均一を保っている状態
○:減水剤の外観は霞んでいるが、均一に分散している状態
×:減水剤と収縮低減剤が2層に分離している状態
なお、収縮低減剤の粒子径が収縮低減性や強度発現性に及ぼし得る影響は未だ解明されていない。ただ、本発明のセメント組成物用収縮低減剤において化合物A及びBを最適な比率で組み合わせることにより、水中で温度刺激により粒子径が調節される機能を有する会合体を形成しているものと考えられる。粒子径が調節された収縮低減剤は、セメント組成物の微細構造中に最適な大きさでとどまるとみられ、これにより、水和反応の進行に伴う収縮を低減しているものと推察される。
セメント及び細骨材に、減水剤(シーカメント1200N(日本シーカ(株)製))、セメントに対して2.0質量%)のみ(比較例1)、又は減水剤(同上、セメントに対して2.0質量%)と上記各収縮低減剤(セメントに対する添加量は表4参照)を予め加えて調製した練り混ぜ水を加え、ハイパワーミキサー((株)丸東製作所製)を用い、低速で練り混ぜた。低速での練り混ぜは、目視で材料が一体化するまで継続し、一体化した時間を練り混ぜ時間として記録した。次いで高速で120秒間練り混ぜ、試験モルタルを作製した。なお試験に供したモルタルの各材料の単位量を表3に示す。
これら練り上がり直後のモルタルについて、JIS A 1171「ポリマーセメントモルタルの試験方法」に準拠したミニスランプコーン(上端内径50mm、下端内径100mm、高さ150mm)を用い、モルタルの広がり(ミニフロー)を測定した。ミニフロー測定後、モルタルの状態を目視にて確認した。また、練り上がり直後及び60分後の空気量を測定した。空気量の測定には全質量方式を採用し、メスシリンダーを用いて測定した結果より、下記式により空気量を算出した。
空気量(%)=[1−(モルタル質量)/(配合から求める空気量0%でのモルタル質量
)]×100
尚、試験に用いたモルタルには適宜消泡剤(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル脂肪酸エステル系消泡剤)を併用し、この使用量を調節することで、練り上がり直後のモルタル空気量が2.0%以下となるように調整した。収縮低減剤を含めたこれらの薬剤は、すべて水の一部として計量して試験に供した。
得られた結果を表4に示す。
試験1の手順にて作製したモルタルを、φ10cm、高さ12cmのプラスチック製容器に充填し、これをウレタンフォーム製の簡易断熱箱の中心部に入れ、(株)共和電業製コンクリート埋込型ひずみゲージ:KMC−70−120−H4、データロガー:NTB−100A−120及びNTB−201Aを用いて、モルタルの内部温度及び水和反応過程における収縮ひずみを測定した。
そしてモルタルの内部温度の履歴から、最高温度及び最高温度への到達時間(発熱ピーク)を確認した。本試験は、凝結時間や初期強度に影響を与える初期の水和反応の活性状態をはかる試験であり、最高温度はセメントの水和反応に伴う反応熱を反映し、収縮低減剤を配合していない例における最高温度及び発熱ピークを大きく逸脱する結果は、初期の水和反応に与える影響が大きいことを示す。
また、試験1の手順にて作製したモルタルを、φ5cm、高さ10cmのプラスチック製モールドに充填し、24時間後に脱型した。脱型した供試体を20℃にて水中養生し、材齢7日及び28日における圧縮強度をJIS A 1108の手順に従って測定した。
得られた結果を表4に示す。
JIS R 5201の規定に従い、下記表5に示すモルタル配合にてモルタルを調製し、モルタル試験に供した。
詳細には、モルタルの練り混ぜにはホバートミキサーを使用し、はじめに水とセメントを低速で30秒間練り混ぜたのち、砂を投入し低速で30秒練り混ぜた。なお本試験において、収縮低減剤X3及びX10を使用する場合、セメント質量に対して一律2質量%の添加量で、練り水と共に加えた。その後高速で30秒練り混ぜたのちに撹拌を停止し、90秒間静置した。静置開始から15秒間で容器の壁に付着したモルタルを掻き落とし、静
置後、高速で60秒練り混ぜを行った。ここでモルタルの空気量は7〜9%となるように、適宜AE剤と消泡剤にて調整した。
モルタルフローの測定はJISフローコーンを使用して試験1と同様に実施し、また空気量の測定についても試験1と同様に行った。
収縮低減率の測定は、JIS R 5201に従い、4×4×16cmの型枠に充填して作製したモルタルの供試体を用いて行なった。硬化後の供試体を24時間後に脱型し、その後1週間の水中養生(20℃)を行った。水中養生終了後、JIS A 1129−2記載のコンタクトゲージ方法にて供試体の寸法を測定し、これを乾燥材齢1日の基準値とした。その後、供試体を温度20℃、湿度60%の条件にて保存し、乾燥材齢56日で再度供試体の寸法を測定し、乾燥材齢1〜56日での長さ変化率を算出した。収縮低減率の値は、前述のモルタル供試体の長さ変化率と、ブランクとして収縮低減剤を使用していないモルタル供試体の長さ変化率とを用いて、下記式により算出した。尚、収縮低減率の値が大きい供試体(すなわち、供試体の長さ変化率がブランクに比べて少ない)ほど、収縮を抑制できていることを意味する。
収縮低減率(%)=[1−(実施例の供試体の長さ変化率)/(収縮低減剤を使用してい
ないブランクの長さ変化率)]×100
以上、得られた結果を表6に示す。
また実施例1〜11は、比較例2〜7と比べ発熱ピークが早く且つ最高温度が高く、収縮低減剤無添加の比較例1の結果と同程度の結果が得られていることから、初期の水和反応への影響が小さい(水和反応の遅延や阻害が少ない)と推察される。また圧縮強度に関しても収縮低減剤無添加の比較例1に匹敵する強度を得られるという結果が得られており
、この結果も水和反応の進行を阻害しないという効果を反映した結果と推察される。
さらに、本発明のセメント組成物用収縮低減剤X1〜X11を使用した実施例1〜11は、収縮低減剤無添加の比較例1と比べて水和反応過程における収縮ひずみがおよそ23%〜33%程度も低減され、比較収縮低減剤Y1〜Y5を用いた比較例2〜6と比べても1割以上も収縮低減されるという結果を得た。なお比較例7は収縮低減剤を2倍量使用することにより、実施例と同程度の収縮低減効果を発揮しているが、発熱ピークや最高温度の結果にみられるように初期の水和反応への影響が非常に大きく、圧縮強度に劣るとする結果となった。
Claims (4)
- さらに低級アルコールのアルキレンオキシド付加物を含むことを特徴とする、請求項1に記載のセメント組成物用収縮低減剤。
- 化合物Aと化合物Bと低級アルコールのアルキレンオキシド付加物とを、98:1:1〜25:25:50の質量比で含むことを特徴とする、請求項2に記載のセメント組成物用収縮低減剤。
- 請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載のセメント組成物用収縮低減剤と、高性能AE減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、減水剤、AE剤、起泡剤、消泡剤、養生剤、撥水剤、凝結促進剤及び凝結遅延剤からなる群から選択される少なくとも一種の他のコンクリート添加剤とを含有することを特徴とする、セメント混和剤。
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