JP2015059514A - ピストンリングが装着されたピストンおよび前記ピストンが組み込まれたエンジンの製造方法 - Google Patents

ピストンリングが装着されたピストンおよび前記ピストンが組み込まれたエンジンの製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015059514A
JP2015059514A JP2013193968A JP2013193968A JP2015059514A JP 2015059514 A JP2015059514 A JP 2015059514A JP 2013193968 A JP2013193968 A JP 2013193968A JP 2013193968 A JP2013193968 A JP 2013193968A JP 2015059514 A JP2015059514 A JP 2015059514A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
piston
piston ring
ring
coating layer
peripheral surface
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013193968A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6252063B2 (ja
Inventor
征二 松田
Seiji Matsuda
征二 松田
博文 東
Hirofumi Azuma
博文 東
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Motors Corp
Original Assignee
Mitsubishi Motors Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Motors Corp filed Critical Mitsubishi Motors Corp
Priority to JP2013193968A priority Critical patent/JP6252063B2/ja
Publication of JP2015059514A publication Critical patent/JP2015059514A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6252063B2 publication Critical patent/JP6252063B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Lubricants (AREA)
  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)

Abstract

【課題】ピストンリングとピストンの双方に設計変更を要せず、ピストンリングが装着されたピストンを、シリンダブロックの下面側からシリンダに簡単、確実に挿入する上で有利なピストンを提供すること。
【解決手段】ピストン10のリング溝12にピストンリング14が装着されている。ピストンリング14は、ピストンリング被膜層20で覆われている。ピストンリング被膜層20は、3つのピストンリング14を覆う外周面2002を有している。ピストンリング14はピストンリング被膜層20によりリング溝12内で縮径された状態に保持されている。ピストンリング被膜層20は、パラフィンなどの常温で固体の炭化水素系油分で形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明はピストンリングが装着されたピストンとそのピストンが組み込まれたエンジンの製造方法に関する。
シリンダブロックと、シリンダヘッドとが別体のエンジンでは、シリンダヘッドをシリンダブロックに組み付ける前に、従来公知の様々なピストン挿入装置を用いて、ピストンがシリンダブロックのシリンダに挿入されている。
ピストンのリング溝にはピストンリングが装着されており、ピストン挿入装置では、ピストンリングを縮径させた状態でピストンリングをピストンと共にシリンダに挿入し、挿入後、ピストンリングは拡径してシリンダの内周面に圧接される。
このピストンの挿入は、シリンダヘッドが取着されるシリンダブロックの平坦な上面側から行われている。
本出願人は、コストの低減化及びフリクション低減の観点から、シリンダヘッドが一体的に設けられたシリンダブロックを検討(開発)しており、このようなシリンダブロックでは、ピストンを、クランクケースが取着されるシリンダブロックの下面側からシリンダに挿入しなければならない。
一方、シリンダブロックの下面でシリンダの両側には、クランク軸を支持するクランクメタルを含む軸受部が位置し、シリンダブロックの下面は、シリンダブロックの上面のように平坦面となっていない。
そのため、従来のピストン挿入装置を使用できず、シリンダの内径よりも大きい寸法の外径に拡径したピストンリングが装着されたピストンを、シリンダブロックの下面側からシリンダに挿入するには何らかの工夫が必要となる。
特許文献1には、ピストンリングを機械的構成によりリング溝に縮径させた状態とするピストンが提案されている。
この構成によれば、ピストンリングが装着されたピストンを、シリンダブロックの下面側からシリンダに挿入する上で有利となる。
特開2009−228587号公報
しかしながら、上記従来技術は、ピストンリングの両端に被係止部を設け、ピストンのリング溝に被係止部が係止する凹部を設けるなどの機械的構成の追加が必要となる。そのため、ピストンリングとピストンの双方に設計変更を要し、コストダウンを図る上で不利となる。
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、ピストンリングとピストンの双方に設計変更を要せず、ピストンリングが装着されたピストンを、シリンダブロックの下面側からシリンダに簡単、確実に挿入する上で有利なピストンとそのピストンが組み込まれたエンジンの製造方法を提供することにある。
上述の目的を達成するため、請求項1記載の発明は、リング溝にピストンリングが装着されたピストンであって、前記ピストンは常温で固体の炭化水素系油分からなり少なくとも前記ピストンリングの半径方向外周面を覆うピストンリング被覆層を有し、前記ピストンリング被覆層は前記ピストンリングを前記リング溝内で縮径された状態に保持することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、前記ピストンリング被覆層は、前記ピストンリング周方向と交差する方向に延在する凹溝が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、前記ピストンリング被覆層の外周面でピストン頂部寄りの端部に、面取りが形成されていることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、リング溝にピストンリングが装着されたピストンが組み付けられたエンジンの製造方法であって、被覆層成形型の内部に、前記リング溝に前記ピストンリングが装着された前記ピストンの部分を収容可能な略円柱形状の充填室を設け、前記充填室に、前記リング溝に前記ピストンリングが装着された前記ピストンの部分を配置し、溶融状態の炭化水素系油分を前記充填室に充填し固化させ、前記ピストンリングが縮径した状態で前記ピストンに前記ピストンリング被覆層を形成する被覆工程と、前記ピストン被覆層を有する前記ピストンをエンジンに組み付けるエンジン組み付け工程と、前記エンジンに組みつけられた前記ピストンの前記ピストン被覆層を除去し前記ピストンリングをその弾性によって拡径させる被覆除去工程とを有することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、被膜工程において、充填室にリング溝に縮径された状態に保持されたピストンリングが装着されたピストンを配置するピストン配置工程を含むことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、被膜工程において、ピストンリングは炭化水素系油分を冷却し固化する際の炭化水素系油分の凝縮力によって縮径された状態を保持されることを特徴とする。
請求項7記載の発明は、前記被膜工程において、前記炭化水素系油分に圧力を掛けることを特徴とする。
請求項8記載の発明は、前記被覆除去工程において、エンジンのクランキングによって前記炭化水素系油分を融解させることで前記ピストン被覆層を除去することを特徴とする。
請求項9記載の発明は、前記被覆除去工程において、エンジンの暖機によって前記炭化水素系油分を融解させることで前記ピストン被覆層を除去することを特徴とする。
請求項1記載の発明によれば、ピストンリングとピストンの双方に何ら設計変更を要せず、ピストンリングはピストンリング被膜層によりリング溝内で縮径された状態に保持されている。また、常温で固体の炭化水素系油分からなるピストンリング被膜層は、金属に比べて軟らかく、シリンダの内壁に当接することでその形が崩され、シリンダへの挿入時の障害となることはない。また、ピストンリング被膜層は常温で固体の炭化水素系油分で形成されているため、ピストンリングが装着されたピストンをシリンダへ円滑に挿入させる潤滑剤として機能する。
したがって、平坦なシリンダブロックの上面側からでも、凹凸のあるシリンダブロックの下面側からでも、ピストンリングが装着されたピストンのシリンダへの挿入を円滑に行なう上で有利となる。
したがって、シリンダヘッドが一体的に設けられたシリンダブロックに、ピストンリングが装着されたピストンを組み込むことができ、これによりヘッド締付けボルトを省略し、組付け時のヘッド締付けボルトの軸力による筒穴変形を抑制し、ピストンをスムーズに上下運動させフリクションの低減が期待される。
請求項2記載の発明によれば、シリンダへのピストンの挿入時、シリンダ内の空気を凹溝からシリンダ外に逃がすことができるので、ピストンのシリンダへの挿入をより円滑に行なう上で有利となる。
請求項3記載の発明によれば、面取りを目安としてシリンダの軸心に対してピストンリング被膜層の軸心を合わせ易くなり、ピストンのシリンダへの挿入をより円滑に行なう上で有利となる。
請求項4記載の発明によれば、型を用いてピストンリングをリング溝内で縮径された状態に保持するピストンリング被膜層を簡単に確実に製造することができ、ピストンリング被膜層を有するピストンのコストダウンを図る上で有利となる。
請求項5記載の発明によれば、型側でピストンリングの縮径状態を形成するので、ピストンリングを所望の縮径状態としたピストンリング被膜層を形成する上で有利となる。
請求項6記載の発明によれば、炭化水素系油分の凝縮力を利用しているので、リング溝内で縮径された状態に保持するピストンリング被膜層を簡単に確実に製造する上で有利となる。
請求項7記載の発明によれば、炭化水素系油分の凝縮力によりピストンリングをより縮径する上で有利となり、ピストンリングをリング溝内で縮径された状態に保持する保持力がより大きなピストンリング被膜層を形成する上で有利となる。
請求項8または請求項9記載の発明によれば、ピストンリング被膜層は炭化水素系油分で形成され、炭化水素系油分は、燃焼室の熱で速やかに溶融し、気化して燃料と共に燃焼し、あるいは、エンジンオイルに混入してエンジンオイルとして機能する。したがって、ピストンリング被膜層を除去する工程を何ら設ける必要はなく、ピストンリング被膜層を有するピストンを用いたエンジンのコストを上昇させる不具合はない。
(A)は第1の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンの平面図、(B)は同正面図である。 (A)は第1の実施の形態の変形例のピストンリング被覆層が形成されたピストンの平面図、(B)は同正面図である。 (A)は第2の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンの平面図、(B)は同正面図である。 (A)は第3の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンの平面図、(B)は同正面図である。 (A)は第4の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンの平面図、(B)は同正面図である。 (A)、(B)は第5の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンの正面図である。 第1の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンを製造する説明図で、(A)は金型とピストンとの関係を示す断面正面図、(B)は金型内に溶融状態の炭化水素系油分を充填した状態の断面正面図である。 第2の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンを製造する説明図で、(A)は金型内に溶融状態の炭化水素系油分を充填した状態の断面平面図、(B)は同断面正面図である。 第3の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンを製造する説明図で、(A)は金型内に溶融状態の炭化水素系油分を充填した状態の断面平面図、(B)は同断面正面図である。 第4の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンを製造する説明図で、(A)は金型内に溶融状態の炭化水素系油分を充填した状態の断面平面図、(B)は同断面正面図である。 (A)、(B)は第5の実施の形態のピストンリング被覆層が形成されたピストンを製造する説明図で、金型内に溶融状態の炭化水素系油分を充填した状態の断面正面図である。 シリンダヘッド一体型のシリンダブロックの下面から、ピストンリングが装着されたピストンをシリンダに挿入する説明図である。
次に、本発明の実施の形態について説明する。
まず、第1の実施の形態から説明すると、図1に示すように、ピストン10は、燃焼室の底面を構成するヘッド部10Aと、ヘッド部10Aに続くスカート部10Bとを有している。
ヘッド部10Aとスカート部10Bの外周面は円筒面で形成され、ヘッド部10Aの外周面1002には、ピストン10の軸方向に間隔をおいて3つのリング溝12が形成され、リング溝12には、それぞれピストンリング14が装着されている。それらピストンリング14は、コンプレッションリングであるトップリング14A、セカンドリング14Bと、オイルリング14Cである。
なお、図1(A)において符号1410はピストンリング14の切れ目を示し、この切れ目1410は発明を明瞭にするため、図1(B)の正面図、以下の実施の形態の正面図では省略している。
スカート部10Bにはピンボス部16が設けられ、ピンボス部16には、ピストン10とコンロッド17とを連結するためのピストンピン挿通孔18が形成されている。
3つのピストンリング14は、ピストンリング被膜層20で覆われている。
ピストンリング被膜層20は、3つのピストンリング14を覆う単一の外周面2002を有する単一体で構成されている。
外周面2002はピストン10の外周面と同軸上で、外周面2002は、ピストン10の頂部からヘッド部10Aの下端までのヘッド部10Aの外周面1002を3つのピストンリング14と共に覆っている。
なお、ピストンリング被膜層20の外周面2002はヘッド部10Aの外周面1002と同軸上である必要はないが、後述するように、ピストンリング被膜層20の外周面2002をヘッド部10Aの外周面1002と同軸上に位置させると、ピストン10のシリンダ50(図12参照)への挿入時に、シリンダ50の軸心に対してピストン10の軸心を合わせる際にピストンリング被膜層20の外周面2002を目安とする上で有利となる。
また、ピストンリング被膜層20の外周面2002は円筒面に限定されず、多角柱を構成する複数の平坦な側面で形成してもよく、要するに外周面2002は一見してピストンリング被膜層20の中心軸が分かるような形状であれば上述の目安とする上で好ましい。
また、図2に示すように、3つのピストンリング14をそれぞれ個別に覆いピストン10の軸方向に切り離された3つのピストンリング被膜層20を設けてもよいが、本実施の形態のように3つのピストンリング14の全てを覆う単一のピストンリング被膜層20を設けると、後述するようにピストンリング被膜層20を形成する金型の構造を簡単化し、コストダウンを図る上で有利となる。
3つのピストンリング14はピストンリング被膜層20によりリング溝12内で縮径された状態に保持されている。詳細には、ピストン10をシリンダ50に挿入し易いように、ピストンリング14はシリンダ50の内径よりも小さい寸法に縮径された状態に保持されている。あるいは、ピストンリング14は、その外周面1402がヘッド部10Aの外周面1002の直径と同一か、または直径よりも小さい寸法に縮径された状態に保持されている。あるいは、ピストンリング14は、その外周面1402がヘッド部10Aの外周面1002と同一面上に位置するように、あるいは、その内周面1404がリング溝12の底面1202に当接された状態に保持されている。
本実施の形態では、ピストンリング被膜層20によりピストンリング14は、その外周面1402がピストン10のヘッド部10Aの外周面1002と同一面上に位置するように縮径された状態に保持されている。
このピストンリング14の縮径状態は、主として、ピストンリング14の外周面1402の半径方向外方に位置するピストンリング被膜層20部分で形成されている。
ピストンリング被膜層20は、常温で固体の炭化水素系油分で形成されている。
常温で固体の炭化水素系油分は、好ましくは融点が90℃以上であり、製造工程時のクランキング時やならし運転時、暖気運転時に燃焼室の熱で速やかに溶融し、気化して燃料と共に燃焼し、あるいは、エンジンオイルに混入してエンジンオイルとして機能する。
このような常温で固体の炭化水素系油分として、パラフィンなど従来公知の様々な材料が使用可能であり、本実施の形態ではパラフィンを用いている。
本実施の形態のピストンリング14が装着されたピストン10によれば、ピストンリング14はピストンリング被膜層20によりリング溝12内で縮径された状態に保持されている。
また、常温で固体の炭化水素系油分からなるピストンリング被膜層20は、金属に比べて軟らかく、シリンダ50の内壁(あるいはシリンダライナーの内壁)に当接することでその形が崩され、ピストン10のシリンダ50への挿入時の障害となることはない。
また、ピストンリング被膜層20はシリンダ50の内壁に当接することでその形が崩されるものの、常温で固体の炭化水素系油分で形成されているため、ピストン10挿入時の潤滑剤(ワックス)として機能し、ピストンリング14が装着されたピストン10をシリンダ50へ円滑に挿入する上で有利となる。
したがって、図12に示すように、シリンダ50の軸心に対してピストン10の軸心、すなわちピストンリング被膜層20の軸心を合わせ、シリンダ50にピストン10を挿入すればよい。そして、このピストン10の挿入は、ピストンリング14がピストンリング被膜層20によりリング溝12内で縮径された状態に保持されているので、円滑になされる。
したがって、シリンダヘッド一体型のシリンダブロック52でシリンダ50の両側にクランクメタル5202を含む軸受部5204が位置し平端面となっていないシリンダブロック52の下面52A側から、ピストンリング14が装着されたピストン10をシリンダ50に円滑に挿入する上で有利となる。
このようなピストン10のシリンダ50への挿入は手作業で行なってもよく、あるいは、ピストン10をシリンダ50と同軸上に支持し、ピストン10を直線移動させる治具を用い、機械的に自動的に行なうようにするなど任意である。
ピストン10の挿入を手作業で行なう場合には、ピストン10の外径よりも大きい寸法のピストンリング被膜層20の外周面2002を目安としてシリンダ50の軸心に対してピストンリング被膜層20の軸心を合わせることができるため、シリンダ50にピストン10を円滑に挿入する上で有利となる。
シリンダ50へのピストン10挿入の際には、ピストンリング14の外周面1402よりも半径方向外方に位置するピストンリング被膜層20部分がシリンダ50の内壁(あるいはシリンダライナーの内壁)に当接してその形が崩されていき、ピストン10と共にピストンリング14がシリンダ50に挿入される。
シリンダ50へのピストン10挿入の際、ピストンリング14の外周面1402よりも半径方向外方に位置するピストンリング被膜層20部分がシリンダ50の内壁によりその形が崩されると、ピストンリング被膜層20によるピストンリング14の縮径状態が解除される。そして、ピストンリング14はその弾性により拡径し、ピストンリング14の外周面1402はシリンダ50の内壁に直接弾接し、あるいは、残ったピストンリング被膜層20部分を介してシリンダ50の内壁に弾接する。
一方、ヘッド部10Aの外周面1002に残ったピストンリング被膜層20部分や、ピストンリング14の外周面1402よりも半径方向外方に残ったピストンリング被膜層20部分、シリンダ50の内壁に付着したピストンリング被膜層20部分は、製造時のクランキング時やならし運転時、暖機運転時に燃焼室の熱で速やかに溶融し、気化して燃料と共に燃焼し、あるいは、エンジンオイルに混入してエンジンオイルとして機能する。
そして、ピストンリング14がシリンダ50の内壁に弾性することにより、ピストンリング14は、コンプレッションリング、オイルリングとしてそれぞれ機能する。
本実施の形態によれば、ピストンリング14とピストン10の双方に設計変更を要せず、ピストンリング被膜層20によりピストンリング14が縮径された状態に保持されている。そのため、ピストンリング14が装着されたピストン10を、平坦なシリンダブロックの上面側からは無論のこと、凹凸のあるシリンダブロック52の下面52A側からでもシリンダ50に簡単、確実に挿入する上で有利となる。
したがって、特に、シリンダヘッドとシリンダブロック52とが一体化され、ピストンリング14が装着されたピストン10を、シリンダブロック52の下面52A側からシリンダ50に挿入しなければならないエンジンEを簡単に製造する上で有利となり、シリンダヘッドと一体化されたシリンダブロック52を有するエンジンEのコストダウンを図る上で有利となる。
また、ピストンリング被膜層20を有するピストン10が組み込まれたエンジンE(図9参照)は、シリンダブロックの上面側からでも、あるいは、シリンダブロック52の下面52A側からでも、ピストン10がシリンダ50に簡単に確実に挿入されているため、エンジンEのコストダウンを図る上で有利となっている。
更にシリンダヘッドシリンダブロック一体構造により,ヘッド締付けボルトを省略することが可能となる。これにより,組付け時ボルトの軸力による筒穴(シリンダ)変形が抑制され,ピストン10のスムーズな上下運動となりフリクションの低減が期待される。
また、ピストンリング被膜層20は炭化水素系油分で形成され、炭化水素系油分は、燃焼室の熱で速やかに溶融し、気化して燃料と共に燃焼し、あるいは、エンジンオイルに混入してエンジンオイルとして機能する。したがって、ピストンリング被膜層20を除去する工程を何ら設ける必要はなく、ピストンリング被膜層20を有するピストン10を用いたエンジンEのコストを上昇させる不具合もない。
次に、図3を参照して第2の実施の形態について説明する。
なお、以下の実施の形態では、第1の実施の形態と同様な箇所、部材に同一の符号を付してその説明を省略する。
第2の実施の形態では、ピストンリング被膜層20の外周面2002に、外周面2002の周方向と交差する方向に延在する凹溝22が周方向に間隔をおいて複数設けられている。
そして、ピストンリング被膜層20によりピストンリング14は、その外周面1402がピストン10のヘッド部10Aの外周面1002と同一面上に位置するように縮径された状態に保持されている。
図2に示す実施の形態では、凹溝22は、外周面2002の周方向と直交する方向、すなわちピストン10の軸方向に平行する方向に直線状に延在している。
そして、凹溝22の底面2202に、ヘッド部10Aの外周面1002部分とピストンリング14の外周面1402部分とが交互に露出し、それらヘッド部10Aの外周面1002部分とピストンリング14の外周面1402部分が凹溝22の底面2202を構成している。
第2の実施の形態によっても、第1の実施の形態と同様な効果が奏される他、図12に示すように、シリンダブロック52の下面52A側からピストン10をシリンダ50へ挿入する際、不図示の点火プラグ装着孔が閉塞され、また、吸気弁5206により吸気ポート5208が閉塞されると共に不図示の排気弁により排気ポートが閉塞され、シリンダ50のシリンダヘッド側が閉塞されている場合であっても、シリンダ50内の空気を凹溝22からシリンダ50外に逃がすことができるので、ピストン10のシリンダ50への挿入をより円滑に行なう上で有利となる。
また、ピストンリング14の外周面1402が凹溝22の底面2202に露出しているので、ピストンリング被膜層20の形成時、型側からピストンリング14を縮径させた状態に保持できる。そのため、ピストンリング14の外周面1402をヘッド部10Aの外周面1002と同一面上に位置させた縮径状態に限定されず、ピストンリング14をシリンダ50の内径よりも小さい所望の縮径状態としたピストンリング被膜層20を形成する上で有利となる。
次に、図4を参照して第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態では、ピストンリング被膜層20の外周面2002で各ピストンリング14の周方向に間隔をおいた複数箇所に、ヘッド部10Aの外周面1002よりも半径方向内側に窪む凹部24が設けられている。
凹部24の高さは、リング溝12の幅よりも小さく、凹部24の底面にピストンリング14の外周面1402部分が露出している。
第3の実施の形態では、ピストンリング被膜層20は、ピストンリング14の内周面1404をリング溝12の底面1202に当接させた状態に保持している。
第3の実施の形態によっても、ピストンリング14の外周面1402部分が凹部24の底面に露出しているので、ピストンリング被膜層20の形成時、型側からピストンリング14を縮径させた状態に保持できる。そのため、ピストンリング14の内周面1404をリング溝12の底面1202に当接した状態に限定されず、ピストンリング14をシリンダ50の内径よりも小さい所望の縮径状態としたピストンリング被膜層20を形成する上で有利となる。
なお、ピストン10のシリンダ50への挿入を円滑に行なう観点から、ピストンリング被膜層20により、ピストンリング14をシリンダ50の内径よりも小さく縮径させた状態に保持すればよく、ピストンリング14の内周面1404をリング溝12の底面1202に当接させた状態に保持する必要はない。しかしながら、この実施の形態のように、ピストンリング14の内周面1404をリング溝12の底面1202に当接させた状態に保持すると、ピストンリング14が最も縮径した状態となり、ピストン10のシリンダ50への挿入をより円滑に行なう上で有利となる。
次に、図5を参照して第4の実施の形態について説明する。
図5に示す実施の形態では、凹溝22は、ピストンリング被膜層20の外周面2002上を螺旋状に延在している。
また、ピストンリング14の外周面1402は、凹溝22の底面2202に露出しておらず、凹溝22の底面2202よりも半径方向内側に位置している。
第4の実施の形態によっても、第2の実施の形態と同様に、第1の実施の形態と同様な効果が奏される他、シリンダ50のシリンダヘッド側が閉塞されている場合であっても、シリンダ50内の空気を凹溝22からシリンダ50外に逃がすことができるので、ピストン10のシリンダ50への挿入をより円滑に行なう上で有利となる。なお、シリンダ50内の空気をシリンダ50外に逃がす観点からすると、凹溝22は少なくとも1つあればよい。
次に、図6を参照して第5の実施の形態について説明する。
第5の実施の形態では、第1の実施の形態のピストンリング被膜層20の外周面2002でピストン頂部寄りの端部に、面取り2004が形成されている。
面取り2004は、図6(A)に示すように、ピストンリング被膜層20の軸心を通る平面で切断した断面形状が直線2004Aで形成された面取り2004でもよく、図6(B)に示すように、曲線2004Bで形成された面取り2004でもよい。
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様な効果が奏される他、ピストンリング被膜層20の面取り2004を目安としてシリンダ50の軸心に対してピストンリング被膜層20の軸心を合わせ、シリンダ50にピストン10を挿入することができ、ピストン10のシリンダ50への挿入をより円滑に行なう上で有利となる。
次に、ピストンリング被膜層20を有するピストン10の製造方法について説明する。
まず、第1の実施の形態のピストンリング14が装着されたピストン10の製造方法から説明する。
図7(A)に示すように、ピストンリング被膜層20を形成する被膜層成形型30は、上型30Aと下型30Bとで構成されている。上型30Aと下型30Bは金属材料で形成され、あるいは、炭化水素系油分Cよりも融点の高い合成樹脂材料で形成されている。
下型30Bの上向きの合わせ面3002には、ピストン10のスカート部10Bが挿入される円柱状の凹部32が上方に開放状に形成されている。
上型30Aの下向きの合わせ面3004には、ピストンリング被膜層形成用の円柱状の凹部34が下方に開放状に形成され、凹部34の上部には、溶融状態の炭化水素系油分Cが供給される供給路36が開口している。
凹部34の内周面3402は、その弾性により拡径された状態のピストンリング14の外径よりも大きい寸法の内径で形成されている。
したがって、ピストンリング14が装着されたピストン10のスカート部10Bを下型30Bの凹部32に挿入し、下型30Bと上型30Aの合わせ面3002、3004を合わせると、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aは、上型30Aの凹部34に収容される。本実施の形態では、上型30Aの凹部34が、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aを収容する充填室となっており、凹部34の内周面はピストン10と同軸上に設けられている。
なお、ピストンリング被膜層20の外周面2002を円筒面以外の形状、例えば、多角柱を構成する複数の平坦な側面で形成する場合には、凹部34の周面をその側面に対応した形状に形成しておけばよい。したがって、上型30Aの凹部34は、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aを収容する略円柱状の充填室となる。
図7(A)に示すように、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aが、上型30Aの凹部34に収容されたならば、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填する。なお、本実施の形態では、炭化水素系油分Cとしてパラフィンを用いており、パラフィンの融点は105℃であるため、凹部34に充填されるパラフィンの温度は105℃以上である。
そして、凹部34に炭化水素系油分Cを充填したならば、炭化水素系油分Cを常温(20℃〜25℃)まで徐冷していく。
この徐冷により炭化水素系油分Cは固化していき、このときの炭化水素系油分Cの凝縮力によりピストンリング14は縮径される。
炭化水素系油分Cが常温に徐冷されると、炭化水素系油分Cは固化し、固化した炭化水素系油分により、図1に示すように、ピストンリング14をリング溝12内で縮径された状態に保持するピストンリング被膜層20が形成される。
なお、炭化水素系油分Cの凝縮力によるピストンリング14の縮径は、ピストンリング14の外周面1402の外側に位置する炭化水素系油分Cの凝縮力で行なわれるため、炭化水素系油分Cが冷却される際、ピストンリング14の周方向において均等な凝縮力が作用し、ピストンリング14はピストン10とほぼ同軸上で環状に縮径されることになる。
また、ピストンリング14の縮径は、ピストンリング14の外周面1402の外側に位置する炭化水素系油分Cの凝縮力で行なわれるため、ピストンリング14の外周面1402の外側に位置する炭化水素系油分Cの量を多くすれば、ピストンリング14はより縮径されることになる。したがって、凹部34の外径を適宜決定することで、ピストンリング14の外周面1402がヘッド部10Aの外周面1002の直径と同一にピストンリング14が縮径された状態、あるいは、ピストンリング14の外周面1402がヘッド部10Aの外周面1002の直径よりも小さい寸法にピストンリング14が縮径された状態が形成される。
本実施の形態では、ピストンリング被膜層20によりピストンリング14は、その外周面1402がピストン10のヘッド部10Aの外周面1002と同一面上に位置するように縮径された状態に保持されている。
したがって、本実施の形態の製造方法によれば、ピストンリング14をリング溝12内で縮径された状態に保持するピストンリング被膜層20が形成されたピストン10を簡単に確実に製造することが可能となり、ピストンリング被膜層20を有するピストン10のコストダウンを図る上で有利となる。
また、冷却の際の炭化水素系油分Cの凝縮力によりピストンリング14の縮径状態を形成するので、被膜層成形型30の構造の簡単化、ピストンリング被膜層20を有するピストン10のコストダウンを図る上で有利となる。
なお、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填する際に炭化水素系油分Cに圧力を掛け、凹部34内において炭化水素系油分Cに圧力を掛けた状態で炭化水素系油分Cを常温まで徐冷すると、炭化水素系油分Cの凝縮力によりピストンリング14をより縮径する上で有利となり、また、ピストンリング14をリング溝12内で縮径された状態に保持する保持力がより大きなピストンリング被膜層20を形成する上で有利となる。
次に、第2の実施の形態のピストンリング14が装着されたピストン10の製造方法について説明する。なお、以下の製造方法の説明では、上記の製造方法で用いた部材、箇所と同一の部材、箇所に同一の符号を付してその説明を省略する。
図8(A)、(B)に示すように、上型30Aは、互いに離間接近する移動可能な2つの分割体30C、30Cで形成され、それら分割体30C、30Cは、ピストンリング被膜層形成用の円柱状の凹部34の中心を通る合わせ面3006を有している。そして、2つの分割体30C、30Cの合わせ面3006が合わさることにより凹部34が形成される。
ピストンリング14が装着されたピストン10のスカート部10Bを下型30Bの凹部32に挿入し、下型30Bと上型30Aの合わせ面3002、3004を合わせ、分割体30C、30Cの合わせ面3006を合わせると、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aは、上型30Aの凹部34に収容される。上型30Aの凹部34は、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aを収容する充填室となっており、凹部34の内周面はピストン10と同軸上に設けられている。
凹部34の内周面3402に、内周面3402の周方向に間隔をおいて複数の突条38が形成されている。
それら突条38は、凹部34が形成された際に、その先端がヘッド部10Aの外周面1002に当接し、ピストンリング14の外周面1402をヘッド部10Aの外周面1002と同一面上に位置させる寸法で形成されている。
本実施の形態では、複数の突条38は、ピストンリング14の外周面1402の周方向に間隔をおいた複数箇所に当接してピストンリング14を縮径させる縮径手段を構成している。
本実施の形態では、下型30Bの合わせ面3002上で2つの分割体30C、30Cを離間させておき、下型30Bの凹部34にスカート部10Bを挿入し、2つの分割体30C、30Cを接近させて合わせ面3006を合わせると、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aは上型30Aの凹部34に収容され、同時に、突条38がピストンリング14の外周面1402に当接し、ピストンリング14の外周面1402をヘッド部10Aの外周面1002と同一面上に位置させた縮径状態にピストンリング14が保持される。
次に、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填し、炭化水素系油分Cを常温まで徐冷することで、ピストンリング14をリング溝12内で縮径された状態に保持するピストンリング被膜層20が形成される。
そして、突条38により、ピストンリング被膜層20の外周面2002には、図3(B)に示すように、ピストン10の軸方向に平行する方向に直線状に延在している凹溝22が形成される。
本実施の形態では、前記の実施の形態と異なり、固化する際の炭化水素系油分Cの凝縮力によりピストンリング14を縮径するのではなく、突条38によりピストンリング14をリング溝12の半径方向内方に変位させた縮径状態を強制的に作る。
したがって、本実施の形態の製造方法によれば、ピストンリング14が縮径された状態を保持するピストンリング被膜層20が形成されたピストン10を簡単に確実に製造することが可能となり、ピストンリング被膜層20を有するピストン10のコストダウンを図る上で有利となる。
なお、この実施の形態でも、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填する際に炭化水素系油分Cに圧力を掛け、凹部34内において炭化水素系油分Cに圧力を掛けた状態で炭化水素系油分Cを常温まで徐冷すると、ピストンリング14の縮径状態を保持する保持力がより大きいピストンリング被膜層20を形成する上で有利となる。
次に、第3の実施の形態のピストンリング14が装着されたピストン10の製造方法について説明する。
図9(A)、(B)に示すように、上型30Aは、互いに離間接近する移動可能な3つの分割体30D、30D、30Dで形成され、それら分割体30D、30D、30Dは、ピストンリング被膜層形成用の円柱状の凹部34の中心を通る合わせ面3006を有している。そして、3つの分割体30D、30D、30Dの合わせ面3006が合わさることにより凹部34が形成される。
ピストンリング14が装着されたピストン10のスカート部10Bを下型30Bの凹部32に挿入し、下型30Bと上型30Aの合わせ面3002、3004を合わせ、分割体30C、30Cの合わせ面3006を合わせると、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aは、上型30Aの凹部34に収容される。上型30Aの凹部34は、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aを収容する充填室となっており、凹部34の内周面はピストン10と同軸上に設けられている。
凹部34の内周面3402に、内周面3402の周方向に間隔をおき、また、内周面3402の軸方向に間隔をおいて複数の棒状の突起39が形成されている。
それら突起39は、凹部34が形成された際に、それらの先端がピストンリング14の外周面1402に当接してピストンリング14の内周面1404をリング溝12の底面1202に当接させる寸法で形成されている。
本実施の形態では、複数の突起39は、ピストンリング14の外周面1402の周方向に間隔をおいた複数箇所に当接してピストンリング14を縮径させる縮径手段を構成している。
本実施の形態では、下型30Bの合わせ面3002上で3つの分割体30D、30D、30Dを離間させておき、下型30Bの凹部34にスカート部10Bを挿入し、3つの分割体30D、30D、30Dを接近させて合わせ面3006を合わせると、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aは上型30Aの凹部34に収容され、同時に、突起39がピストンリング14の外周面1402に当接してピストンリング14の内周面1404をリング溝12の底面1202に当接させた状態が保持される。
次に、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填し、炭化水素系油分Cを常温まで徐冷することで、ピストンリング14をリング溝12内で縮径された状態に保持するピストンリング被膜層20が形成される。
そして、複数の突起39により、ピストンリング被膜層20の外周面2002には、図4(B)に示すように、周方向に間隔をおき、また、軸方向に間隔をおいて複数の凹部24が形成される。
本実施の形態では、前記の実施の形態と同様に、固化する際の炭化水素系油分Cの凝縮力によりピストンリング14を縮径するのではなく、突起39によりピストンリング14を縮径させた縮径状態を強制的に作る。
そして、本実施の形態では、突起39によりピストンリング14の内周面1404がリング溝12の底面1202に当接され、ピストンリング14が最も縮径された状態のピストンリング被膜層20が形成される。
したがって、本実施の形態の製造方法によれば、ピストンリング14をリング溝12内で最も縮径された状態に保持するピストンリング被膜層20が形成されたピストン10を簡単に確実に製造することが可能となり、ピストンリング被膜層20を有するピストン10のコストダウンを図る上で有利となる。
また、本実施の形態では、被膜層成形型30側の突起39をピストンリング14の外周面1402に当接させ、ピストンリング14の縮径状態を強制的に作るので、ピストンリング14の内周面1404をリング溝12の底面1202に当接した縮径状態に限定されず、ピストンリング14をシリンダ50の内径よりも小さい所望の縮径状態に、あるいは、ピストンリング14をヘッド部10Aの外周面1002よりも小さい所望の縮径状態としたピストンリング被膜層20を形成することも可能となる。
なお、この実施の形態でも、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填する際に炭化水素系油分Cに圧力を掛け、凹部34内において炭化水素系油分Cに圧力を掛けた状態で炭化水素系油分Cを常温まで徐冷すると、ピストンリング14の内周面1404をリング溝12の底面1202に当接させた状態に保持する保持力がより大きいピストンリング被膜層20を形成する上で有利となる。
なお、図8、図9に示す実施の形態では、凹部34の内周面に設けた突条38や突起39など、被膜層成形型30側で縮径手段を構成している場合について説明したが、縮径手段としては、例えば、凹部34の内周面の周方向に間隔を置いた複数箇所から、アクチュエータによりピンを往復移動させ、それらピンによりピストンリング14の外周面1402を変位させピストンリングの縮径状態を形成するなど、縮径手段には従来公知の様々な構造が採用可能である。
次に、第4の実施の形態のピストンリング14が装着されたピストン10の製造方法について説明する。
図10に示すように、上型30Aは図8,9に示す被膜層成形型30のように複数の分割体30Cで構成されておらず、図7に示す被膜層成形型30のように単一であり、上型30Aの凹部34の内周面3402に、螺旋状に延在する突条40が周方向に間隔をおいて形成されている。
突条40の先端は、ピストン10と同軸上でその弾性により拡径された状態のピストンリング14の外径よりも大きい寸法の単一の仮想円筒面上に位置するように形成されている。
この実施の形態では、下型30Bの凹部32にスカート部10Bを挿入し、下型30Bと上型30Aの合わせ面3002,3004を合わせると、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aは、ピストン10と同軸上の上型30Aの凹部34に収容される。
そして、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填し、炭化水素系油分Cを常温(20℃〜25℃)まで徐冷していく。
この徐冷により炭化水素系油分Cは固化していき、このときの炭化水素系油分Cの凝縮力によりピストンリング14は縮径され、固化した炭化水素系油分Cによりピストンリング14をリング溝12内で縮径された状態に保持するピストンリング被膜層20が形成される。
そして、突条40により、ピストンリング被膜層20の外周面2002上を螺旋状に延在する凹溝22が形成される。
したがって、本実施の形態の製造方法によれば、ピストンリング14をリング溝12内で縮径された状態に保持するピストンリング被膜層20が形成されたピストン10を簡単に確実に製造することが可能となり、ピストンリング被膜層20を有するピストン10のコストダウンを図る上で有利となる。
なお、この実施の形態でも、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填する際に炭化水素系油分Cに圧力を掛け、凹部34内において炭化水素系油分Cに圧力を掛けた状態で炭化水素系油分Cを常温まで徐冷すると、炭化水素系油分Cの凝縮力によりピストンリング14をより縮径する上で有利となり、また、ピストンリング14をリング溝12内で縮径された状態に保持する保持力がより大きなピストンリング被膜層20を形成する上で有利となる。
次に、第5の実施の形態のピストンリング14が装着されたピストン10の製造方法について説明する。
図11(A)に示すように、上型30Aの凹部34の上端外周部に、凹部34の軸心を通る平面で切断した断面形状が直線からなる傾斜面42Aが形成されている。あるいは、図11(B)に示すように、上型30Aの凹部34の上端外周部に、凹部34の軸心を通る平面で切断した断面形状が曲線からなる傾斜面42Bが形成されている。
したがって、下型30Bと上型30Aの合わせ面3002、3004合わせ、ピストンリング14が装着されたピストン10のヘッド部10Aを上型30Aの凹部34に収容し、溶融状態の炭化水素系油分Cを供給路36から凹部34に充填し、常温に徐冷することにより、傾斜面42A、42Bにより面取り2004が形成される。
すなわち、ピストン頂部寄りの端部に面取り2004が形成された外周面2002を有するピストンリング被膜層20が得られる。
なお、実施の形態では、ピストンリング被膜層20によりピストンリング14が縮径された状態に保持されたピストン10を、シリンダヘッド一体型のシリンダブロック52のシリンダ50に挿入する場合について説明したが、本発明のピストンリング被膜層20によりピストンリング14が縮径された状態に保持されたピストン10は、シリンダヘッドとシリンダブロック52とが別体の場合にも適用可能であり、シリンダブロック52の平坦な上面側からピストン10をシリンダ50に挿入する場合にも無論適用される。
10……ピストン
1002……ヘッド部の外周面
12……リング溝
1202……リング溝の底面
14……ピストンリング
1402……ピストンリングの外周面
1404……ピストンリングの内周面
20……ピストンリング被膜層
2002……ピストンリング被膜層の外周面
2004……面取り
22……凹溝
2202……凹溝の底面
24……凹部
30……金型
30A……上型
30B……下型
30C、30D……分割体
32、34……凹部
36……供給路
38、40……突条
39……突起
42A、42B……傾斜面
50……シリンダ
52……軸受部
54……シリンダブロック
C……炭化水素系油分

Claims (9)

  1. リング溝にピストンリングが装着されたピストンであって、
    前記ピストンは常温で固体の炭化水素系油分からなり少なくとも前記ピストンリングの半径方向外周面を覆うピストンリング被覆層を有し、
    前記ピストンリング被覆層は前記ピストンリングを前記リング溝内で縮径された状態に保持する、
    ことを特徴とするピストンリングが装着されたピストン。
  2. 前記ピストンリング被覆層は、前記ピストンリング周方向と交差する方向に延在する凹溝が少なくとも1つ設けられている、
    ことを特徴とする請求項1に記載のピストンリングが装着されたピストン。
  3. 前記ピストンリング被覆層の外周面でピストン頂部寄りの端部に、面取りが形成されている、
    ことを特徴とする請求項1または2に記載のピストンリングが装着されたピストン。
  4. リング溝にピストンリングが装着されたピストンが組み付けられたエンジンの製造方法であって、
    被覆層成形型の内部に、前記リング溝に前記ピストンリングが装着された前記ピストンの部分を収容可能な略円柱形状の充填室を設け、
    前記充填室に、前記リング溝に前記ピストンリングが装着された前記ピストンの部分を配置し、
    溶融状態の炭化水素系油分を前記充填室に充填し固化させ、前記ピストンリングが縮径した状態で前記ピストンに前記ピストンリング被覆層を形成する被覆工程と、
    前記ピストンリング被覆層を有する前記ピストンをエンジンに組み付けるエンジン組み付け工程と、
    前記エンジンに組みつけられた前記ピストンの前記ピストンリング被覆層を除去し前記ピストンリングをその弾性によって拡径させる被覆除去工程と、
    を有することを特徴とするエンジンの製造方法。
  5. 前記被膜工程は、前記充填室に前記リング溝に縮径された状態に保持された前記ピストンリングが装着された前記ピストンを配置するピストン配置工程を含む、
    ことを特徴とする請求項4に記載のエンジンの製造方法。
  6. 前記被膜工程において、前記ピストンリングは前記炭化水素系油分を冷却し固化する際の前記炭化水素系油分の凝縮力によって縮径された状態を保持される、
    ことを特徴とする請求項4または5に記載のエンジンの製造方法。
  7. 前記被膜工程において、前記炭化水素系油分に圧力を掛ける、
    ことを特徴とする請求項4から6の何れか1項記載のエンジンの製造方法。
  8. 前記被覆除去工程において、エンジンのクランキングによって前記炭化水素系油分を融解させることで前記ピストンリング被覆層を除去する、
    ことを特徴とする請求項4から7の何れか1項記載のエンジンの製造方法。
  9. 前記被覆除去工程において、エンジンの暖機によって前記炭化水素系油分を融解させることで前記ピストンリング被覆層を除去する、
    ことを特徴とする請求項4から8の何れか1項記載のエンジンの製造方法。
JP2013193968A 2013-09-19 2013-09-19 ピストンリングが装着されたピストンおよび前記ピストンが組み込まれたエンジンの製造方法 Expired - Fee Related JP6252063B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013193968A JP6252063B2 (ja) 2013-09-19 2013-09-19 ピストンリングが装着されたピストンおよび前記ピストンが組み込まれたエンジンの製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013193968A JP6252063B2 (ja) 2013-09-19 2013-09-19 ピストンリングが装着されたピストンおよび前記ピストンが組み込まれたエンジンの製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015059514A true JP2015059514A (ja) 2015-03-30
JP6252063B2 JP6252063B2 (ja) 2017-12-27

Family

ID=52817239

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013193968A Expired - Fee Related JP6252063B2 (ja) 2013-09-19 2013-09-19 ピストンリングが装着されたピストンおよび前記ピストンが組み込まれたエンジンの製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6252063B2 (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5859295A (ja) * 1981-10-06 1983-04-08 Hitachi Powdered Metals Co Ltd 金属表面における潤滑性被膜の形成方法
JPH06248425A (ja) * 1992-12-28 1994-09-06 Riken Corp ピストンリング
JP2002018655A (ja) * 2000-07-06 2002-01-22 Sanyo Mach Works Ltd ピストンの組込み方法および組込み装置
JP2005307811A (ja) * 2004-04-20 2005-11-04 Nippon Container Terminal Kk ピストン挿入補助装置
JP2009228587A (ja) * 2008-03-24 2009-10-08 Toyota Motor Corp ピストンリング、ピストン、エンジン、およびピストンの組付け方法
JP2010209742A (ja) * 2009-03-09 2010-09-24 Toyota Motor Corp 内燃機関の冷却装置
US20120031803A1 (en) * 2010-08-03 2012-02-09 Kim Armstrong Piston assembly transportation and installation apparatus and methods of transporting and installing a piston assembly therewith

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS5859295A (ja) * 1981-10-06 1983-04-08 Hitachi Powdered Metals Co Ltd 金属表面における潤滑性被膜の形成方法
JPH06248425A (ja) * 1992-12-28 1994-09-06 Riken Corp ピストンリング
JP2002018655A (ja) * 2000-07-06 2002-01-22 Sanyo Mach Works Ltd ピストンの組込み方法および組込み装置
JP2005307811A (ja) * 2004-04-20 2005-11-04 Nippon Container Terminal Kk ピストン挿入補助装置
JP2009228587A (ja) * 2008-03-24 2009-10-08 Toyota Motor Corp ピストンリング、ピストン、エンジン、およびピストンの組付け方法
JP2010209742A (ja) * 2009-03-09 2010-09-24 Toyota Motor Corp 内燃機関の冷却装置
US20120031803A1 (en) * 2010-08-03 2012-02-09 Kim Armstrong Piston assembly transportation and installation apparatus and methods of transporting and installing a piston assembly therewith
JP2013534288A (ja) * 2010-08-03 2013-09-02 フェデラル−モーグル コーポレイション ピストン組立品運搬・設置装置およびそれを用いてピストン組立品を運搬および設置する方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP6252063B2 (ja) 2017-12-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CN106837586B (zh) 润滑回路及形成方法
JP4224725B1 (ja) シリンダブロックおよびその製造方法
JP6756299B2 (ja) スパークプラグスリーブ
EP3317500B1 (en) Nozzle combustion shield
US20150211438A1 (en) Piston with oil reservoir
US20160186620A1 (en) Multi-material valve guide system and method
JP5041296B2 (ja) 内燃機関エンジンのシリンダースリーブが装着されたシリンダーブロック
JP6546274B2 (ja) 高温内燃機関のためのキーストーン形の第2のリング溝を有するピストン
AU2015325137A1 (en) Cylinder liner assembly having air gap insulation
US9951714B2 (en) Steel piston with filled gallery
CN109154250A (zh) 活塞及其制造方法
JP6252063B2 (ja) ピストンリングが装着されたピストンおよび前記ピストンが組み込まれたエンジンの製造方法
CN106337755A (zh) 经配置以减少摩擦的活塞环
JP2009052451A (ja) 内燃機関のピストン
EP1818531B1 (en) Piston for internal combustion engine
JP5341616B2 (ja) ピストンのオイルリング機構
JP2010190200A (ja) シリンダライナ
CN104712451A (zh) 用于发动机的机体组及具有它的发动机
JP6344150B2 (ja) エンジンのクランクシャフト軸受構造
JP2008215373A (ja) コネクティングロッド
CN201778904U (zh) 通用汽油机的汽缸套
JP2015151984A (ja) エンジン
JP2018132102A (ja) ピストンリング
JP5564008B2 (ja) 軸部材のすべり軸受構造
CN101631632A (zh) 用于制造具有多个汽缸衬套的汽缸曲轴箱的方法和具有附加的材料带的短汽缸衬套

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20160729

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170425

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20170427

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170615

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20171031

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171113

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6252063

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees