JP2015055809A - 低含水性軟質眼用レンズの製造方法 - Google Patents

低含水性軟質眼用レンズの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】湿潤性が高く維持しながらも、細菌の繁殖リスクが小さく、かつ、低含水軟質レンズ基材の形状変化が誘発されにくい低含水性軟質眼用レンズを、簡便なプロセスで安価に製造する方法を提供すること。【解決手段】本発明は、シランカップリング反応により、シランカップリング基を有する親水性高分子を低含水軟質レンズ基材の表面に結合させて低含水性軟質眼用レンズを得る工程を備える、低含水性軟質眼用レンズの製造方法を提供する。【選択図】図1

Description

本発明は、低含水性軟質眼用レンズの製造方法に関し、特にレンズ基材の表面処理方法に関する。
市販の軟質眼用レンズの代表例としてソフトコンタクトレンズがある。市販のソフトコンタクトレンズには25%程度〜80%程度の含水率を有するハイドロゲル素材が一般的に用いられている。しかしながら、ハイドロゲル素材からなる含水性ソフトコンタクトレンズは、水を含んでいるためにコンタクトレンズから水が蒸発する現象が生じる。これにより、ある一定割合のコンタクトレンズ装用者は裸眼のときよりも強い乾燥感をおぼえ、不快と感じる場合があった。中にはコンタクトレンズドライアイといわれる症状を訴える者も存在した。また、ハイドロゲル素材からなる含水性ソフトコンタクトレンズは、涙液中の成分によって汚染されやすく、しかも多量の水を含んでいることから細菌繁殖のリスクもあった。
一方、高酸素透過性の低含水性ソフトコンタクトレンズとしては、例えば分子鎖両末端がビニルメチルシリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサンとメチルハイドロジェンポリシロキサンとの混合物に白金系の触媒を加え、モールディング法で加熱硬化させ、ついでこれを水蒸気含有雰囲気中で放電処理し、表面にSi−OH結合を多量に生成させて親水化処理層とする方法が知られている(特許文献1参照)。
また、複数の重合性官能基を有するポリシロキサンを主体とした酸素透過性の高いコンタクトレンズ材料も特許文献2、3等に記載されている。このうち、特許文献3には、2官能性有機シロキサンマクロマー単独で、または他のモノマーと共重合させて得られる重合体からなるコンタクトレンズ材料が開示されており、共重合に用いられるモノマーとしてはアクリル酸フルオロアルキルエステルまたはメタクリル酸フルオロアルキルエステル、及びアクリル酸アルキルエステル又はメタクリル酸アルキルエステルが開示されており、表面濡れ性を向上させるためのモノマーを共重合させることについても記載がある。
しかしながら、従来の高酸素透過性の低含水性ソフトコンタクトレンズにも次のような問題点が見られた。まずシリコーンラバーレンズについては、レンズ表面の疎水性を改善するために施した親水化処理層が剥離したり、弾力性が大きすぎるために角膜への固着が起こるなどの欠点があって、広く実用化されるまでには到らなかった。
また、複数の重合性官能基を有するポリシロキサンを主体とする材料は、酸素透過性が高く、柔軟性も持ち合わせており、コンタクトレンズに適する材料の1つと考えられるものの、重合後のレンズ表面に粘着性が残るために角膜に固着する懸念があり、また、かかる固着の課題に取り組んだ特許文献6においても、レンズの柔軟性と耐折り曲げ性などの機械物性のバランスが不十分であった。
上記問題を解決するために、その表面特性を改善する多くの方法が用いられてきた。非含水性ソフトコンタクトレンズの表面を親水性化させる方法としては、表面に親水性モノマーをグラフト重合することにより表面を親水性化する方法(特許文献4及び5)、ラジカル反応性基を有する親水性重合体で被覆した型中で、疎水性重合体を形成するのに必要な単量体混合物を型と接触させて重合し、親水性重合体表面を形成する方法(特許文献6)等が挙げられる。
しかしながら、特許文献4及び5に記載の表面処理法では、形成される表面処理層が薄く、またレンズ基材との密着強度が小さいために耐久性に劣り、元の濡れ性に戻ってしまうという欠点を有している。また、特許文献6に記載の表面処理法では、疎水性重合体表面上に均一な親水性重合体表面を形成しにくく、またレンズ基材との密着強度が小さいために耐久性に劣り、元の濡れ性に戻ってしまうという欠点を有している。
また、シリコーンコンタクトレンズの表面特性を改善するために、プラズマ表面処理が利用されている。プラズマ処理により、レンズ表面は、より親水性、防汚性、引っ掻き耐性を有するものとなる。プラズマ表面処理が開示された例としては、コンタクトレンズ表面を、希ガス又は酸素(特許文献7);種々の炭化水素モノマー(特許文献8);ならびに水及びエタノールのような酸化剤及び炭化水素の組合せ(特許文献9及び特許文献10)を含むプラズマに供することが挙げられる。特許文献11は、まず、レンズを炭水化物雰囲気に供し、続いて流動放電(flow discharge)の間、このレンズを酸素に供することによって実施される電気的グロー放電(プラズマ)処理にこのレンズを供し、それによってレンズ表面の親水性を増大させる、シリコーンレンズ又はポリウレタンレンズ上にバリアコーティングを提供するためのプロセスを開示する。
このような表面処理はシリコーンコンタクトレンズの表面特性を改変するものとして開示されているが、この結果は疑わしく、商業的な実施可能性に問題が多かった。これを示唆するものとして、特許文献12では、酸素を用いるプラズマ放電に対象物の表面を曝露することでかかる表面の湿潤性又は親水性を増強させることが可能であるが、効果はもっぱら一時的であると述べている。
したがって、改善された湿潤性を示すだけでなく、ヒトの眼に使用することが可能なほどの耐久性を有し、かつ光学的に透明な、親水性表面フィルムを有するシリコーンヒドロゲルコンタクトレンズを提供することが望ましい。シリコーンレンズを長時間装着する場合を考えれば、酸素及び水に対しても高度に透過性である表面を有するコンタクトレンズを提供することが非常に望ましい。このような表面処理されたレンズは、実際の使用に際して装着が快適であり、そして角膜に対する刺激又は他の有害な影響を有することなく、レンズの長時間の装着を可能にする。かかるレンズを経済的かつ商業的な製造が実現可能であるならば一層望ましい。
湿潤性の効果をより持続させるための手法として、特許文献13では低分子のシランカップリング剤を用いてコンタクトレンズを含むデバイス表面を処理した後、親水性高分子を反応させることが記載されている。しかしながら、ここではデバイス表面にシランカップリング剤を反応させるステップ、次いで所望の親水性高分子と反応させるステップを経て親水性高分子をデバイス表面に被覆しており、結果として親水性高分子がシロキサン結合を介して共有結合によりデバイス表面に固定化されている。
しかしながら、本発明者らの検討によれば、当該デバイス表面には未反応部分に係る有機官能基又は反応により遊離した有機官能基が残存することとなり、これらの有機官能基は、たとえ微量であっても、目にとってよい影響を与えることがない場合がある。また、特に、基材が軟質である場合、有機官能基の種類によってはレンズの形状変化が誘起されやすい問題がある。そのため、場合によっては残存官能基のマスキング処理などが必要となるが、操作が煩雑となる。また、2ステップで反応させる際、末端官能基の種類が異なることから、反応条件をその都度最適化する必要があり、汎用性に欠け、広く実用化されるまでには到らなかった。
特開昭54−81363号公報 特開昭54−24047号公報 特開平5−5861号公報 特開平2−278224号公報 特開平4−316013号公報 特開平2−124523号公報 米国特許第4,055,378号 米国特許第4、143,949号 国際公開第1995/04609号 米国特許第4,632,844号 米国特許第4,312,575号 米国特許第5、080,924号 特開2000−137195号公報
そこで本発明は、湿潤性が高く維持しながらも、細菌の繁殖リスクが小さく、かつ、低含水軟質レンズ基材の形状変化が誘発されにくい低含水性軟質眼用レンズを、簡便なプロセスで安価に製造する方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は下記の構成を有する。
(1) シランカップリング反応により、シランカップリング基を有する親水性高分子を低含水軟質レンズ基材の表面に結合させて低含水性軟質眼用レンズを得る工程を備える、低含水性軟質眼用レンズの製造方法。
(2) 上記シランカップリング反応は、上記低含水軟質レンズ基材の表面を、酸素ガス、炭酸ガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種の雰囲気中で行う、上記(1)に記載の製造方法。
(3) 上記親水性高分子は、以下の式(I)に示される、上記(1)又は(2)に記載の製造方法。
式(I): ZSi−L−Y
[式中、Zは、クロロ基、メトキシ基又はエトキシ基を表し、Lは、炭素数3〜12の2価の有機基を表し、Yは、親水性高分子を表す。]
(4) 上記親水性高分子は、エチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMAA)、ポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)(PMVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンオキシドビス酢酸及びこれらの共重合体からなる群から選択される、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
本発明の低含水性軟質眼用レンズの製造方法によれば、1ステップのシランカップリング反応により直接親水性層をレンズ基材に付与することから、簡便なプロセスで安価に基材の親水性化が達成可能である。また、シランカップリング反応を採用するため、有機官能基による目への悪影響を排除することができ、さらに、細菌の繁殖リスクを軽減でき、かつ、低含水軟質レンズ基材の形状変化をも防ぐことができるため、安全性が高く、目への装着性のよい低含水性軟質願用レンズを得ることが可能である。
実施例におけるレンズ基材及びSi−PEG処理レンズ基材のXPS測定グラフ
本発明の低含水性軟質眼用レンズにおいて、低含水性とは含水率が10質量%以下であることを意味する。また、軟質とは引張弾性率が10MPa以下であることを意味する。
ここで、含水率は、コンタクトレンズ形状の試験片の乾燥状態での質量と、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試験片の表面水分を拭き取った際の質量(湿潤状態での質量)とから、{(湿潤状態での質量)−(乾燥状態での質量)/湿潤状態での質量}により与えられる。
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、低含水性であることから、装用者の眼の乾燥感が小さく装用感に優れるという特徴を有する。また本発明の低含水性軟質眼用レンズは、低含水性であることから、細菌の繁殖リスクが小さいという利点を有する。含水率は5%以下がより好ましく、2%以下がさらに好ましく、1%以下が最も好ましい。含水率が高すぎると、眼用レンズ装用者の眼の乾燥感が大きくなったり、細菌の繁殖リスクが高まるなどするために好ましくない。
本発明の低含水性軟質眼用レンズの引張弾性率は、0.01〜5MPaが好ましく、0.1〜3MPaがより好ましく、0.1〜2MPaがさらに好ましく、0.1〜1MPaがよりいっそう好ましく、0.1〜0.6MPaが最も好ましい。引っ張り弾性率が小さすぎると、軟らかすぎてハンドリングが難しくなる傾向がある。引っ張り弾性率が大きすぎると、硬すぎて装用感が悪くなる傾向がある。引っ張り弾性率2MPa以下になると良好な装用感が得られ、1MPa以下になるとさらに良好な装用感が得られるので好ましい。引張弾性率は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
本発明の低含水性軟質眼用レンズの引張伸度(破断伸度)は100%〜1000%が好ましく、200%〜700%がより好ましい。引張伸度が小さいと、低含水性軟質眼用レンズが破れやすくなるので好ましくない。引張伸度が大きすぎる場合には、低含水性軟質眼用レンズが変形しやすくなる傾向があり好ましくない。引張伸度は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、動的接触角(前進時、浸漬速度:0.1mm/sec)が、100度以下であることが好ましく、90度以下がより好ましく、80度以下がさらに好ましい。装用者の角膜への貼り付きを防止する観点からは、動的接触角はより低いことが好ましく、65度以下が好ましく、60度以下がより好ましく、55度以下がさらに好ましく、50度以下が一層好ましく、45度以下が最も好ましい。動的接触角は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて、ホウ酸緩衝液に対して測定される。
また、本発明の軟質眼用レンズの生体への馴染みの良さという観点から、また本発明の態様が低含水性軟質コンタクトレンズである場合は装用者の角膜への貼り付きを防止する観点から、眼用レンズの表面の液膜保持時間が長いことが好ましい。ここで、液膜保持時間とは、ホウ酸緩衝液に浸漬した眼用レンズを液から引き上げ、空中に直径方向が垂直になるように保持した際に、眼用レンズ表面の液膜が切れずに保持される時間である。液膜保持時間は、5秒以上が好ましく、10秒以上がさらに好ましく、20秒以上が最も好ましい。ここで、直径とは、眼用レンズの縁部が構成する円の直径である。
本発明の低含水性軟質眼用レンズの生体への馴染みの良さという観点から、また本発明の態様が低含水性軟質コンタクトレンズである場合は装用者の角膜への貼り付きを防止する観点から、眼用レンズの表面が優れた易滑性を有することが好ましい。易滑性を表す指標としては、本明細書の実施例に示した方法で測定される摩擦が小さい方が好ましい。摩擦は、60gf(0.59N)以下が好ましく、50gf(0.49N)以下がより好ましく、40gf(0.39N)以下がさらに好ましく、30gf(0.29N)以下が最も好ましい。また、摩擦が極端に小さいと脱着用時の取扱が難しくなる傾向があるので、摩擦は5gf(0.049N)以上、好ましくは10gf(0.098N)以上であることが好ましい。摩擦は、ホウ酸緩衝液による湿潤状態の試料にて測定される。
本発明の低含水性軟質眼用レンズの防汚性は、ムチン付着、脂質(パルミチン酸メチル)付着、及び人工涙液浸漬試験により、評価することができる。これらの評価による付着量が少ないものほど、装用感に優れるとともに、細菌繁殖リスクが低減されるために好ましい。ムチン付着量は5μg/cm以下が好ましく、4μg/cm以下がより好ましく、3μg/cm以下が最も好ましい。
眼用レンズ装用者の眼への大気からの酸素供給の観点から、低含水性軟質眼用レンズは高い酸素透過性を有することが好ましい。酸素透過係数[×10−11(cm/sec)mLO/(mL・hPa)]は50〜2000が好ましく、100〜1500がより好ましく、200〜1000がさらに好ましく、300〜700が最も好ましい。酸素透過性を大きくしすぎると機械物性などの他の物性に悪影響が出る場合があり好ましくない。酸素透過係数は、乾燥状態の試料にて測定される。
眼用レンズ基材におけるケイ素原子の含有量は以下の方法で測定することができる。十分乾燥したレンズ基材を白金るつぼに秤取し、硫酸を加えてホットプレート及びバーナーで加熱灰化する。灰化物を炭酸ナトリウムで融解し、水を加えて加熱溶解した後、硝酸を加え水で定容する。この溶液について、ICP発光分光分析法によりケイ素原子を測定し、レンズ基材中の含有量を求める。
眼用レンズ基材は、1分子あたり複数の重合性官能基を有し、数平均分子量が6000以上のポリシロキサン化合物である重合体(以下、成分Aとする。)、又は、上記成分A及び成分Aとは異なる重合性官能基を有する化合物との共重合体を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは乾燥状態のレンズ基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。
ここで、ポリシロキサン化合物とは Si−O−Si−O−Si で表される結合を有する化合物である。
成分Aの数平均分子量が6000以上の範囲にあることで、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質眼用レンズが得られる。耐折り曲げ性などの機械物性の向上により優れた低含水性軟質眼用レンズが得られる観点からは、当該数平均分子量が8千以上であることがより好ましく、9千以上であることが一層好ましく、1万以上であることが特に好ましい。一方で、成分Aの数平均分子量の上限としては10万以下の範囲にあることが好ましく、7万以下の範囲にあることがより好ましく、5万以下の範囲にあることが一層好ましい。成分Aの数平均分子量が大きすぎる場合、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、光学製品であるので、透明性が高いことが好ましい。透明性の基準としては、目視した際に透明で濁りがないことが好ましい。さらに眼用レンズは、レンズ投影機で観察した場合、濁りがほとんど、又は、全く観察されないことが好ましく、濁りが全く観察されないことが最も好ましい。
成分Aの分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)は、6以下が好ましく、3以下がより好ましく、2以下がさらに好ましく、1.5以下が最も好ましい。成分Aの分散度が小さい場合、他の成分との相溶性が向上し、得られるレンズの透明性が向上する、得られるレンズに含まれる抽出可能な成分が減る、レンズ成型に伴う収縮率が小さくなる、などの利点が生じる。レンズ成型に伴う収縮率は、レンズ成型比=[レンズ直径]/[モールドの空隙部の直径]で評価することができる。ここで、直径とは、レンズの縁部が構成する円の直径である。レンズ成型比は、1に近いほど高品位のレンズを安定に製造することが容易となる。成型比は0.85〜2.0の範囲が好ましく、0.9〜1.5の範囲がより好ましく、0.91〜1.3の範囲が最も好ましい。
ここで、成分Aを含め、本発明における数平均分子量とは、クロロホルムを溶媒として用いたゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量である。質量平均分子量及び分散度(質量平均分子量を数平均分子量で除した値)も同様の方法で測定される。
なお、本明細書においては、質量平均分子量をMw、数平均分子量をMnで表す場合がある。また分子量1000を1kDと表記することがある。例えば「Mw33kD」という表記は「質量平均分子量33000」を表す。
成分Aの重合性官能基の数は、1分子あたり2個以上であればよいが、より柔軟(低弾性率)な眼用レンズが得られやすいという観点からは、1分子あたり2個が好ましい。特に分子鎖の両末端に重合性官能基を有する構造が好ましい。
成分Aの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、及びシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
なお、本明細書において(メタ)アクリロイルという語はメタクリロイル及びアクリロイルの両方を表すものであり、(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートなどの語も同様である。
成分Aとしては、下記式(A1)の構造を有するものが好ましい。
Figure 2015055809
式(A1)中、X及びXはそれぞれ独立に重合性官能基を表す。R〜Rはそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、及び炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。L及びLは、それぞれ独立に2価の基を表す。a及びbは、それぞれ独立に各繰返し単位の数を表す。
及びXとしては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、及びシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
〜Rの好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、及びノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、眼用レンズに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点からさらに好ましいのは、水素及びメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
及びLとしては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも式(A1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(LE1)〜(LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(LE1)、(LE3)、(LE9)及び(LE11)で表される基がより好ましく、下記式(LE1)及び(LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(LE1)〜(LE12)は、左側が重合性官能基X又はXに結合する末端、右側がケイ素原子に結合する末端として描かれている。
Figure 2015055809
式(A1)中、a及びbは、それぞれ独立に各繰返し単位の数を表す。a及びbはそれぞれ独立に0〜1500の範囲が好ましい。aとbの合計値(a+b)は、80以上が好ましく、100以上がより好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。
〜Rが全てメチル基の場合、b=0であることが好ましく、aは、80〜1500が好ましく、100〜1400がより好ましく、120〜950がより好ましく、130〜700がさらに好ましい。この場合、aの値は、成分Aのポリシロキサン化合物の分子量によって決まる。
本発明の成分Aは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
成分Aと共重合させる他の化合物として、フルオロアルキル基を有する重合性モノマーである成分(以下、成分Bとする。)が好ましい。成分Bはフルオロアルキル基に起因する臨界表面張力の低下により、撥水撥油性の性質を持ち、これにより、眼用レンズ表面が涙液中のタンパク質や脂質などの成分によって汚染されることを抑える効果がある。また、成分Bは、柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質眼用レンズを与える効果がある。成分Bのフルオロアルキル基として好適な具体例は、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、及びノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。より好ましくは、炭素数2〜8のフルオロアルキル基、例えば、トリフルオロエチル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、オクタフルオロペンチル基、及びドデカフルオロオクチル基であり、最も好ましくはトリフルオロエチル基である。
成分Bの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、及びシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
柔軟で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れた低含水性軟質眼用レンズが得られる効果が大きいことから、成分Bとして最も好ましいのは(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルである。かかる(メタ)アクリル酸フルオロアルキルエステルの具体例としては、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、ヘプタフルオロブチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ノナフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレート、及びトリデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレートが挙げられる。トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ドデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。最も好ましくはトリフルオロエチル(メタ)アクリレートである。
本発明のB成分は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
共重合体中における成分Bの好ましい含有量は、成分A100質量部に対して、10〜500質量部、より好ましくは20〜400質量部、さらに好ましくは20〜200質量部である。成分Bの使用量が少なすぎる場合は、得られる眼用レンズに白濁が生じたり、耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりすることがある。
また、レンズ基材に用いる共重合体としては、成分A及び成分Bに加えて、成分A及び成分Bとは異なる成分(以下成分C)をさらに共重合させたものを用いてもよい。
成分Cとしては、共重合体のガラス移転点を室温あるいは0℃以下に下げるものがよい。これらは凝集エネルギ−を低下させるので、共重合体にゴム弾性と柔らかさを与える効果がある。
成分Cの重合性官能基としてはラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基及びシトラコン酸残基などであるが、これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
成分Cとして、柔軟性や耐折り曲げ性などの機械的特性の改善のために好適な例は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、好ましくはアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、その具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及びn−ステアリル(メタ)アクリレート等を挙げることができ、より好ましくは、n−ブチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、n−ラウリル(メタ)アクリレート、n−ステアリル(メタ)アクリレートである。これらの中でアルキル基の炭素数が1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルはさらに好ましい。アルキル基の炭素数が大きすぎると得られるレンズの透明性が低下する場合があり好ましくない。
さらにまた、レンズ基材に用いる共重合体として、成分Aに、1分子あたり1個の重合性官能基、及びシロキサニル基を有する単官能モノマー(以下、成分Mとする)を加えてもよい。
本明細書において、シロキサニル基とはSi−O−Si結合を有する基を意味する。
成分Mのシロキサニル基は直鎖状であることが好ましい。シロキサニル基が直鎖状であれば、得られる低含水性軟質眼用レンズの形状回復性が向上する。ここで直鎖状とは、重合性基を有する基と結合したケイ素原子を起点とする、一本の線状に連なるSi−(O−Si)n−1−O−Si結合で示される構造を指す(ただし、nは2以上の整数を表す)。得られる医療デバイスが十分な形状回復性を得るためにはnは3以上の整数が好ましく、4以上がより好ましく、5以上がさらに好ましく、6以上が最も好ましい。ここで、「シロキサニル基が直鎖状である」とはシロキサニル基が上記の直鎖状構造を有し、かつ直鎖状構造の条件を満たさないSi−O−Si結合を有さないことを意味する。
レンズ基材は、数平均分子量が300〜120000である成分Mを含む共重合体を主成分とすることが好ましい。ここで、主成分とは乾燥状態のレンズ基材質量を基準(100質量%)として50質量%以上含まれる成分であることを意味する。
成分Mの数平均分子量が上記範囲にあることで、柔軟(低弾性率)で装用感に優れ、しかも耐折り曲げ性などの機械物性に優れたレンズ基材が得られる。成分Mの数平均分子量は、耐折り曲げ性などの機械物性により優れ、かつ形状回復性に優れたレンズ基材が得られることから、500以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましく、5000以上が特に好ましく、一方で25000以下の範囲にあることがより好ましく、15000以下の範囲にあることが一層好ましい。成分Mの数平均分子量が小さすぎる場合には耐折り曲げ性や形状回復性などの機械物性が低くなる傾向があり、特に500未満では耐折り曲げ性、及び形状回復性が低くなることがある。成分Mの数平均分子量が大きすぎる場合には、柔軟性や透明性が低下する傾向があり好ましくない。
成分Mの重合性官能基としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものがより好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、及びシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
成分Mとしては、下記式(ML1)の構造を有するものが好ましい。
Figure 2015055809
式(ML1)中、Xは重合性官能基を表す。R11〜R19はそれぞれ独立に、水素、炭素数1〜20のアルキル基、フェニル基、及び炭素数1〜20のフルオロアルキル基から選ばれた置換基を表す。Lは2価の基を表す。c及びdは、それぞれ独立に0〜700の整数を表す。ただしcとdは同時に0ではない。
としては、ラジカル重合可能な官能基が好ましく、炭素炭素二重結合を有するものが好ましい。好ましい重合性官能基の例としては、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基、α−アルコキシメチルアクリロイル基、マレイン酸残基、フマル酸残基、イタコン酸残基、クロトン酸残基、イソクロトン酸残基、及びシトラコン酸残基などである。これらの中でも高い重合性を有することから(メタ)アクリロイル基が最も好ましい。
また、成分Mの重合性官能基は、良好な機械物性の低含水性軟質眼用レンズが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と共重合可能であることがより好ましく、成分Mと成分Aが均一に共重合されることで良好な表面特性を有する低含水性軟質眼用レンズが得られやすいことから、成分Aの重合性官能基と同一であることがさらに好ましい。
11〜R19の好適な具体例は、水素;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基などの炭素数1〜20のアルキル基;フェニル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、トリフルオロプロピル基、テトラフルオロプロピル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ヘプタフルオロペンチル基、ノナフルオロヘキシル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロペンチル基、ノナフルオロペンチル基、ドデカフルオロヘプチル基、トリデカフルオロヘプチル基、ドデカフルオロオクチル基、トリデカフルオロオクチル基、ヘキサデカフルオロデシル基、ヘプタデカフルオロデシル基、テトラフルオロプロピル基、ペンタフルオロプロピル基、テトラデカフルオロオクチル基、ペンタデカフルオロオクチル基、オクタデカフルオロデシル基、及びノナデカフルオロデシル基などの炭素数1〜20のフルオロアルキル基である。これらの中で、低含水性軟質眼用レンズに良好な機械物性と高酸素透過性を与えるという観点から特に好ましいのは、水素及びメチル基であり、最も好ましいのはメチル基である。
としては、炭素数1〜20の2価の基が好ましい。中でも式(ML1)の化合物が高純度で得られやすい利点を有することから、下記式(LE1)〜(LE12)で表される基が好ましく、中でも下記式(LE1)、(LE3)、(LE9)及び(LE11)で表される基がより好ましく、下記式(LE1)及び(LE3)で表される基がさらに好ましく、下記式(LE1)で表される基が最も好ましい。なお、下記式(LE1)〜(LE12)は、左側が重合性官能基Xに結合する末端、右側がケイ素原子に結合する末端として描かれている。
Figure 2015055809
式(ML1)中、cとdの合計値(c+d)は、3以上が好ましく、10以上がより好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がさらに好ましく、50〜200が特に好ましい。
11〜R18が全てメチル基の場合、d=0であり、cは、3〜700が好ましく、10〜500がより好ましく、30〜300がより好ましく、50〜200がさらに好ましい。この場合、cの値は、成分Mの分子量によって決まる。
本発明の低含水性軟質眼用レンズ基材において、成分Mは1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
本発明の低含水性軟質眼用レンズ基材が適当な量の成分Mを含有することにより、架橋密度が減少してポリマーの自由度が大きくなり、適度に柔らかい低弾性率のレンズ基材を実現することができる。これに対し、成分Mの含有量が少なすぎると架橋密度が高くなり、レンズ基材が硬くなることがある。また、成分Mの含有量が多すぎると軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。
また、本発明の低含水性軟質眼用レンズの基材において、成分Mと成分Aを併用する場合、その質量比は、成分A100質量部に対して成分Mが5〜200質量部、より好ましくは7〜150質量部、最も好ましくは10〜100質量部、であることが好ましい。成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し5質量部を下回ると、架橋密度が高くなり、レンズ基材が硬くなる。また、成分Mの含有量が、成分A100質量部に対し200質量部を超えると、軟らかくなりすぎ、破れやすくなるため好ましくない。
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、紫外線吸収剤、色素、着色剤、湿潤剤、スリップ剤、医薬及び栄養補助成分、相溶化成分、抗菌成分、離型剤等の成分をさらに含んでいてもよい。上記した成分はいずれも、非反応性形態又は共重合形態で含有され得る。
紫外線吸収剤を含む場合、眼用レンズ装用者の眼を有害紫外線から保護することができる。また、着色剤を含む場合、眼用レンズが着色されて、識別が容易になり、取扱時の利便性が向上する。
上記した成分はいずれも、非反応性形態又は共重合形態で含有され得る。上記成分を共重合した場合、すなわち重合性基を有する紫外線吸収剤、重合性基を有する着色剤などを使用した場合は、該成分がレンズ基材に共重合されて固定化されて溶出の可能性が小さくなるので好ましい。
さらに、機械的性質、表面濡れ性、レンズの寸法安定性などを向上させるためには、所望に応じ、以下に述べるモノマーを共重合させることができる。
機械的性質を向上させるためのモノマーとしては、例えばスチレン、tert−ブチルスチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
表面濡れ性を向上させるためのモノマーとしては、例えばメタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、グリセロールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、及びN−ビニル−N−メチルアセトアミド等が挙げられる。中でもN,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルアセトアミド、及びN−ビニル−N−メチルアセトアミドなどのアミド基を含有するモノマーが好ましい。
レンズの寸法安定性を向上させるためのモノマーとしては、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビニルメタクリレート、アクリルメタクリレート及びこれらのメタクリレート類に対応するアクリレート類、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる。
レンズ基材は、紫外線吸収剤や着色剤を用いる場合、これに加えて2種類以上の上記成分C(以下、成分Ck)を含むことが好ましい。かかる成分Ckとしては、炭素数1〜10の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから少なくとも1種類、上記表面濡れ性を向上させるためのモノマーから少なくとも1種類が選ばれることが好ましい。成分Ckを2種類以上使用することにより、紫外線吸収剤や着色剤との親和性が増し、透明なレンズ基材を得ることが容易になる。
紫外線吸収剤を用いる場合、その好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.01〜20質量部、より好ましくは0.05〜10質量部、さらに好ましくは0.1〜2質量部である。着色剤を用いる場合、その好ましい使用量は、成分A100質量部に対して、0.00001〜5質量部、より好ましくは0.0001〜1質量部、さらに好ましくは0.0001〜0.5質量部である。紫外線吸収剤や着色剤の含有量が少なすぎる場合は、紫外線吸収効果や着色効果が得られにくくなる。逆に、多すぎる場合はこれらの成分をレンズ基材中に溶解せしめることが難しくなる。成分Ckの好ましい使用量は、それぞれ、成分A100質量部に対して、0.1〜100質量部、より好ましくは1〜80質量部、さらに好ましくは2〜50質量部である。成分Ckの使用量が少なすぎる場合は、紫外線吸収剤や着色剤との親和性が不足して透明なレンズ基材を得るのが難しくなる傾向がある。成分Ckの使用量が多すぎる場合も得られる眼用レンズに白濁が生じたり耐折り曲げ性などの機械物性が不十分になったりする傾向があり好ましくない。
また、本発明の低含水性軟質眼用レンズの基材は、架橋度が2.0〜18.3の範囲であることが好ましい。架橋度は、下記式(Q1)で表される。
Figure 2015055809
式(Q1)において、Qnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計ミリモル量、Wnは1分子あたりn個の重合性基を有するモノマーの合計質量(kg)を表す。また、モノマーの分子量が分布を有する場合は、数平均分子量を用いてミリモル量を計算することとする。
本発明のレンズ基材の架橋度が、2.0より小さくなると、柔らかすぎてハンドリングが難しくなり、18.3より大きくなると硬すぎて装用感が悪くなる傾向があるので好ましくない。架橋度のより好ましい範囲は3.5〜16.0であり、さらに好ましい範囲は8.0〜15.0であり、最も好ましい範囲は9.0〜14.0である。
低含水性軟質眼用レンズ基材、すなわちレンズ形状の成型体を製造する方法としては、公知の方法を使用することができる。例えば、いったん、丸棒や板状の重合体を得て、これを切削加工等によって所望の形状に加工する方法、モールド重合法、及びスピンキャスト重合法などを使用することができる。レンズを切削加工で得る場合には、低温での冷凍切削が好適である。
一例として、成分Aを含む原料組成物をモールド重合法により重合して眼用レンズを製造する方法について、次に説明する。まず、一定の形状を有する2枚のモールド部材間の空隙に原料組成物を充填する。モールド部材の材料としては、樹脂、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。光重合を行う場合は光学的に透明な素材が好ましいので、樹脂又はガラスが好ましく使用される。モールド部材の形状や原料組成物の性状によっては、眼用レンズに一定の厚みを与え、かつ、空隙に充填した原料組成物の液モレを防止するために、ガスケットを用いてもよい。空隙に原料組成物を充填したモールドは、続いて紫外線、可視光線又はこれらの組み合わせなどの活性光線を照射されるか、もしくはオーブンや液槽中などで加熱されることにより、充填した原料組成物を重合する。2通りの重合方法を併用する方法もありうる。すなわち、光重合の後に加熱重合したり、又は加熱重合後に光重合することもできる。光重合の具体的態様は、例えば水銀ランプや紫外線ランプ(例えばFL15BL、東芝製)の光のような紫外線を含む光を短時間(通常は1時間以下)照射する。熱重合を行う場合には、組成物を室温付近から徐々に昇温し、数時間ないし数十時間かけて60℃〜200℃の温度まで高めて行く条件が、眼用レンズの光学的な均一性及び品位を保持し、かつ再現性を高めるために好まれる。
重合においては、重合をしやすくするために過酸化物やアゾ化合物に代表される熱重合開始剤又は光重合開始剤を添加することが好ましい。熱重合を行う場合は、所望の反応温度において最適な分解特性を有するものが選択される。一般的には、10時間半減期温度が40〜120℃のアゾ系開始剤及び過酸化物系開始剤が好適である。光重合を行う場合の光開始剤としてはカルボニル化合物、過酸化物、アゾ化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物、及び金属塩などを挙げることができる。これらの重合開始剤は単独又は混合して用いられる。重合開始剤の量は、重合混合物に対し最大で5質量%までが好ましい。
重合する際は、重合溶媒を使用することができる。溶媒としては有機系、無機系の各種溶媒が適用可能である。溶媒の例としては、水;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ノルマルブチルアルコール、イソブチルアルコール、t−ブチルアルコール、t−アミルアルコール、テトラヒドロリナロール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール及びポリエチレングリコール等のアルコール系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル及びポリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、乳酸エチル及び安息香酸メチル等のエステル系溶媒;ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン及びノルマルオクタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;シクロへキサン及びエチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ベンゼン、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;並びに石油系溶媒が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を混合して用いてもよい。
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、コンタクトレンズ形状の試験片をホウ酸緩衝液に浸漬した後、試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、人指で所定回数擦った時の感応評価として、非常に優れた易滑性があり、又は、優れた易滑性がある(中程度の易滑性と非常に優れた易滑性との中間程度)ことが好ましい。
また、本発明の低含水性軟質眼用レンズは、コンタクトレンズ形状の試験片をホウ酸緩衝液に浸漬した後、試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、空中に直径方向が垂直になるように保持した際の表面の様子に対する目視観察において、表面の液膜が5秒以上保持されて切れる程度の水濡れ性を少なくとも有することが好ましい。ここで、直径とは、コンタクトレンズの縁部が構成する円の直径である。
なお、低含水性軟質眼用レンズの耐久性は、例えば手のひらの中央に窪みを作ってそこにサンプル(コンタクトレンズ形状)を置き、そこに所定の洗浄液を加えて、所定の方法で所定回数擦った後、サンプルをホウ酸緩衝液中に浸漬した状態で、上記水濡れ性及び易滑性を判断することにより評価される。本発明においては、親水性高分子が共有結合によりレンズ基材表面に結合しているため、上述した擦り洗い処理を施した後でも、良好な水濡れ性及び易滑性を有する。
より具体的には、本発明の低含水性軟質眼用レンズでは、レンズ基材表面の少なくとも一部に、シランカップリング基を有する親水性高分子が当該シランカップリング基におけるケイ素原子がレンズ基材表面と反応し、反応の結果生成されたシロキサン結合を介して親水性高分子が基材表面に共有結合している。これにより、レンズの表面に良好な濡れ性と易滑性が付与され、優れた装用感を与えることができ、さらに共有結合により結合されているため、剥離耐久性がよい。
本発明で記載する「シランカップリング基を有する親水性高分子」としては、式Z−Si−L−Yで示されるものが好ましい。ここで、Lは炭素数3〜12の2価の有機基である。Zは加水分解性基であり、好ましくはクロロ基(Cl),メトキシ基(CHO)又はエトキシ基(CO)であり、3つのZが同一の基であっても、異なる基の組み合わせであってもよい。
Yは親水性高分子であり、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMAA)、ポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)(PMVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンオキシドビス酢酸、及びこれらの共重合体からなる群より選択されることが好ましい。一種、又はそれ以上のシランカップリング基を有する親水性高分子を同時に用いることも好ましく行われる。
本発明において、親水性高分子とは、20℃で、100gの水に1g以上溶解するものである。また、1分子中に、2個以上の炭素原子及び1個以上のヘテロ原子からなる繰り返し単位が3個以上連なった構造を有する化合物をいう。ここでヘテロ原子として好ましいものは酸素、窒素、硫黄、及びリンであり、特に好ましいのは酸素及び窒素である。前記繰返し単位が2種以上のヘテロ原子を有することも好ましい。
また、上記した特開2000−137195号公報に記載の方法では、2ステップでシランカップリング反応を行うものであり、好適なシランカップリング剤として有機官能基を有する構造のものが挙げられ、具体的には(メタ)アクリル基,アミノ基,塩素原子,イソシアナト基、エポキシ基,グリシドキシ基,メルカプト基,ビニル基が挙げられている。ここでは、デバイス(本発明ではレンズ)表面に当該シランカップリング剤を反応させるステップ、所望の親水性高分子と反応させるステップを経て親水性高分子をデバイス表面に被覆しており、結果として親水性高分子がシロキサン結合を介して共有結合によりデバイス表面に固定化されている。しかしながら、当該表面には未反応部分に係る有機官能基又は反応により遊離した有機官能基が残存することとなり、具体的には上記した通りであるが、これらは目にとってよくない影響を生じさせることが有り得るため、できるだけ除いた方がよいものである。また、本発明では軟質の基材を用いるため、有機官能基の種類によってはレンズ基材の形状変化を誘起する可能性がある。
しかしながら、本発明の低含水性軟質眼用レンズの製造方法においては、シランカップリング基を有する親水性高分子を用いるため、かかる有機官能基の発生がなく、目によくない現象、又はレンズの形状変化のおそれがない。
上記シランカップリング基を有する親水性高分子でレンズ基材表面を処理することにより、レンズ基材に直接的に親水性を付与することが可能である。また、当該化合物は親水性高分子の影響で水溶性が高いため、水溶液としての添加が容易であり、上記特開2000−137195号公報に記載の方法のように複数種類の溶媒を用いることにより基材の形状変化をもたらす必要もない。
上記シランカップリング基を有する親水性高分子はレンズ基材の表面と接触して当該表面と反応してシロキサン結合を形成する。上記シランカップリング基を有する親水性高分子の重量平均分子量は、250〜200000であることが好ましい。
本発明の低含水性軟質眼用レンズでは、そのレンズ基材表面の少なくとも一部が反応に有効な量の1種又はそれ以上のシランカップリング基を有する親水性高分子と反応してなる。「反応に有効な量」とは所望の親水性表面に変換するのに十分なシランカップリング剤の量をいう。
上記シランカップリング基を有する親水性高分子が上記レンズ基材表面と接触するときの温度については、0℃以上が好ましく、20℃以上がより好ましく、25℃がさらに好ましく、一方で、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。上記カップリング剤は、水溶液の形態で上記レンズ基材表面と反応させることが好ましい。但し、上記カップリング剤が溶解しにくい場合には、メタノール,エタノール又はプロパノール等のアルコール又はベンゼン、トルエン、ヘキサン等の有機溶媒を含む溶液を用いることもできる。
ここで、上記溶液を含めて「表面処理液」として、シランカップリング基を有する親水性高分子を適切な液体に溶解した液体を指すものとする。
上記表面処理液をレンズ基材の表面に接触させて表面処理を施すことが好ましいが、上記表面処理液をレンズ基材の表面に接触させる方法としては、たとえば浸漬法(ディップ法)、刷毛塗り法、スプレーコーティング法、スピンコート法、ダイコート法、スキージ法などの種々のコーティング手法を適用できる。なかでも表面処理液にレンズ基材を浸漬させる方法、表面処理液をレンズ基材に塗布する方法などが好ましく採用される。
表面処理液にレンズ基材を浸漬させるには、たとえば適切な器に表面処理液を入れ、かかる表面処理液中にレンズ基材全体を充分に浸漬させるなどすればよい。この場合、表面処理液中のシランカップリング剤が十分にレンズ基材に結合するためには、浸漬する時間は30分以上が好ましく、より好ましいのは1時間以上、さらに好ましいのは2時間以上である。
表面処理液中のシランカップリングを有する親水性高分子の含有量は、レンズ基材表面の親水性の付与効果を充分に発現させるためには、0.01mg/mL以上が好ましく、0.1mg/mL以上であることがより好ましく、さらに好ましいのは1mg/mL以上である。またレンズ基材表面に形成される表面処理層の透明性が損なわれ、外観が悪くなるおそれをなくすためには、100mg/mL以下が好ましく、50mg/mL以下であることがより好ましい。さらに製造コストを下げる観点から5mg/mL〜20mg/mLが最も好ましい。選択された上記カップリング剤によっては、酸触媒又は塩基触媒を使用してもよい。
上記酸触媒とは、たとえば酢酸が挙げられ、表面処理液中で0.1〜2体積%程度の濃度が好ましい。
上記塩基触媒とは、たとえば水酸化ナトリウム、アンモニアが挙げられる。
なお、上記表面処理液はレンズ基材を浸漬する前に、攪拌しながらアルコキシ基の加水分解を行ってもよい。
なお、本発明においては、レンズ基材の表面への表面処理層の安定化という点から、表面処理液をレンズ基材の表面に接触させる前に、レンズ基材をあらかじめ酸処理、塩基処理が好ましく、プラズマ処理が最も好ましい。
前記酸処理は、たとえば塩酸、硫酸、酢酸などの酸の溶液中にレンズ基材を浸漬させるなどして行なえばよい。
前記アルカリ処理は、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアなどの塩基の溶液中にレンズ基材を浸漬させるなどして行なえばよい。
前記酸処理法とは、0.001〜1M程度の酸溶液中に、そのレンズ基材表面を浸漬させ、酸処理を施す方法である。
前記塩処理法とは、0.5〜7.5M程度の塩基溶液中に、そのレンズ基材表面を浸漬させ、塩基処理を施す方法である。
本発明におけるプラズマ処理とは、例えば酸素ガス及び/又は炭酸ガス、及び/又はアルゴンガス雰囲気中で行われるものであるが、これらに限られものではない。
プラズマ処理において使用されるガスは、約0.01〜1.0トルクの圧力で、適切には、出力が約100〜1000ワットの間、好ましくは200〜800ワットの間、より好ましくは300〜500ワットの間で処理するのが好ましい。
プラズマ処理時間は、有効かつ効率的な製造のためには、片面につき20秒以上、好ましくは片面につき30秒以上、より好ましくは片面につき約60秒〜600秒であり、最も好ましくは、片面につき約60〜300秒処理することである。
なお、プラズマ処理においてガスのフロー速度は、例えば、好ましくは10〜100sccm(standard cm3/min)、より好ましくは30〜100sccmの流速が好ましい。
また、前記のごとき前処理を施す前に、たとえばノニオン性界面活性剤や、アセトン、メタノール、エタノール、2−プロパノールなどの有機溶媒などでレンズ基材を洗浄しておくことが好ましい。また洗浄する際、超音波を併用してもよい。
かくして表面処理液をレンズ基材の表面に接触させて表面処理を施したのち、かかる接触によって付着した表面処理液をシランカップリング反応させ、親水性にすぐれた表面層を形成させる。
表面処理液のシランカップリング反応は、該表面処理液中に含まれるアルコキシシラン化合物に由来したアルコキシシラン基同士の縮合反応による架橋反応である。
かくして形成される表面層の厚さは、すぐれた親水性が充分に発現されるようにするには、0.001μm以上、好ましくは0.1μm以上であることが望ましく、またコンタクトレンズの透明度を保持するためには、500μm以下、好ましくは100μm以下であることが望ましい。
なお、本発明においては、前記シランカップリング反応を行なう前に、かかるシランカップリング反応をより充分に促進させるために、その表面に表面処理液が付着したレンズ基材を、たとえば室温、好ましくは100度以上、より好ましくは110度以上で30分間〜24時間程度乾燥させることが好ましい。
表面処理層が形成された表面処理レンズ基材は、たとえば蒸留水や有機溶媒などで十分に洗浄するのが好ましい。
本発明の低含水性軟質眼用レンズに適用可能な表面分析装置としては、XPS分析装置が好ましく、その他の表面分析装置を併用しても構わない。その他の表面分析装置としては、オージェ電子分光法(AES)、二次イオン質量分析法(SIMS)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)、全反射赤外分光法(FT−IR ATR法)、全反射蛍光X線分析法(TREX)等が挙げられる。
また、レンズ基材と結合したシランカップリング剤は、一例として、レンズ基材表面を走査型プローブ顕微鏡(Scanning Probe Microscope、SPM)により測定することができる。SPMにおける計測方式は、コンタクトモードとダイナミックフォースモードと呼ばれる2つに大分類される。ソフトコンタクトレンズのような柔らかい基材表面を分析する際には、ダイナミックフォースモードがより好ましい。
本発明の低含水性軟質眼用レンズの製造方法の好ましい態様の1つは、下記工程1〜工程3をこの順に含むものである。
<工程1>
モノマーの混合物を重合して低含水性軟質のレンズ形状の成型体を得る工程。
<工程2>
成型体を有機溶媒に接触させた後、未反応モノマーを洗浄除去する工程。
<工程3>
成型体を親水性高分子シランカップリング溶液に接触させた後、余剰のシランカップリング剤を洗浄除去する工程。
上記のように、レンズ形状の成型体をシランカップリング基を有する親水性高分子と反応することにより、該成型体上に親水性ポリマーからなる層を形成することができる。その後、余剰のシランカップリング剤を十分に洗浄除去することが好ましい。
本発明の低含水性軟質眼用レンズは、低含水性ソフトコンタクトレンズ、眼内レンズ、人工角膜、角膜インレイ、角膜オンレイ、メガネレンズなどの眼用レンズとして有用である。中でも低含水性ソフトコンタクトレンズに特に好適である。
以下、実施例により本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
〈分析方法及び評価方法〉
(1)含水率
コンタクトレンズ形状の試験片を使用した。試験片をホウ酸緩衝液に浸漬し室温で24時間以上おいた後、表面水分をワイピングクロス(日本製紙クレシア製“キムワイプ“(登録商標))で拭き取って質量(Ww)を測定した。その後、試験片を真空乾燥器で40℃、16時間乾燥し質量(Wd)を測定した。次式にて含水率を求めた。得られた値が1%未満の場合は測定限界以下と判断し、「1%未満」と表記した。
含水率(%)=100×(Ww−Wd)/Ww
(2)水濡れ性
コンタクトレンズ形状の試験片を、室温でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(30秒間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、空中に直径方向が垂直になるように保持した際の表面の様子を目視観察し、下記の基準で判定した。ここで、直径とは、コンタクトレンズの縁部が構成する円の直径である。
A:静止接触角が40°以下。
B:静止接触角が40°以上60°以下。
C:静止接触角が60°以上。
(3)接触角の測定
静止接触角はKYOWA社製のWET−6000を使用し、液滴法により測定した。コンタクトレンズ基材及び表面処理したレンズ基材は、RO水に24時間以上浸漬した。それぞれ、マイクロシリンジにて約1μLの液滴(RO水)を付け、かかるレンズ表面と液滴との接する角度を接触角として測定した。
(4)易滑性
コンタクトレンズ形状の試験片を、室温でビーカー中のホウ酸緩衝液中に24時間以上浸漬した。試験片とホウ酸緩衝液の入ったビーカーを超音波洗浄器にかけた(30秒間)。試験片をホウ酸緩衝液から引き上げ、人指で5回擦った時の感応評価で行った。
A:非常に優れた易滑性がある。
B:AとCの中間程度の易滑性がある。
C:中程度の易滑性がある。
D:易滑性がほとんど無い(CとEの中間程度)。
E:易滑性が無い。
(5)擦り洗い耐久性
球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを使用した。手のひらの中央に窪みを作ってそこにサンプルを置き、そこに洗浄液(日本アルコン、“オプティフリー”(登録商標))を加えて、もう一方の手の人差し指の腹で表裏10回ずつ擦った後、清浄な“オプティフリー”(登録商標)の入ったスクリュー管に入れ4時間以上静置した。以上の操作を1サイクルとして、15サイクル繰り返した。その後、サンプルを純水で洗浄し、ホウ酸緩衝液中に浸漬した。その後、上記(4)の易滑性評価を行った。
(6)脂質付着
500mlのビーカーに攪拌子(36mm)を入れ、パルミチン酸メチル1.5gと純水500gを入れた。ウォーターバスの温度を37℃に設定し、前述のビーカーをウォーターバスの中央に置き、マグネチックスターラーで1時間攪拌した。回転速度は600rpmとした。球冠形状(縁部の直径約14mm、厚さ約0.1mm)のサンプルを1枚ずつバスケットに入れ、前述のビーカー内に投入し、そのまま攪拌した。1時間後、攪拌を止め、バスケット内のサンプルを40℃の水道水と家庭用液体洗剤(ライオン製“ママレモン”(登録商標))でこすり洗いした。洗浄後のサンプルをホウ酸緩衝液(pH7.1〜7.3)の入ったスクリュー管内に入れ、氷浴に1時間浸漬した。スクリュー管を氷浴が取り出した後にサンプルの白濁を目視観察し、下記の基準でサンプルへのパルミチン酸メチルの付着量を判定した。
A:白濁が無く透明である。
B:白濁した部分がわずかにある。
C:白濁した部分が相当程度ある。
D:大部分が白濁している。
E:全体が白濁している。
(7)ムチン付着
ムチンとしてCALBIOCHEM社の Mucin、 Bovine Submaxillary Gland(カタログ番号499643)を使用した。コンタクトレンズ形状のサンプルを0.1重量%のムチン水溶液に20時間37℃の条件で浸漬させた後、BCA(ビシンコニン酸)プロテインアッセイ法によってサンプルに付着したムチンの量を定量した。
(8)人工涙液浸漬試験
人工涙液として、オレイン酸プロピルエステルの代わりにオレイン酸を使用する以外は国際公開第2008/127299号パンフレット、32頁、5〜36行に記載の方法にしたがって調製した涙様液(TLF)緩衝液を使用した。培養用マルチプレート(24ウェル型、材質ポリスチレン、放射線滅菌済み)の1ウェル中に人工涙液2mLを入れ、サンプル(コンタクトレンズ形状)1枚を浸漬した。100rpm、37℃で24時間振とうした。その後サンプルを取り出し、リン酸緩衝塩溶液(PBS;pH約7.2)で軽く洗浄した後、人工涙液2mLを入れ替えたウェル中にサンプルを浸漬した。さらに、100rpm、37℃で24時間振とうした後、PBSで軽く洗浄し、目視でサンプルの白濁度合いを評価することで付着物量を観察した。評価は下記基準で行った。
A:白濁が観察されない。
B:白濁した部分がわずかにある(面積で1割未満)。
C:白濁した部分が相当程度ある(面積で1割〜5割)。
D:大部分(面積で5割〜10割)が白濁しているが裏側が透けて見える。
E:全体が濃く白濁しており、裏側が透けて見えにくい。
(9)酸素透過係数
フィルム形状のサンプル(20mm×20mm×0.1mm)を2枚重ねて測定に用いた。酸素透過率測定装置OX−TRAN2/21形(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて酸素透過係数測定を行った。キャリアガスとして窒素98%/水素2%の混合ガスを用い、測定ガスとして窒素79.3%/酸素20.7%の混合ガスを用いた。またガスの加湿は行わなかった。
(10)動的接触角測定
ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルにて測定した。動的接触角サンプルとして、フィルム状に成型したサンプルから切り出した5mm×10mm×0.1mm程度のサイズのフィルム状の試験片、又はコンタクトレンズ状サンプルから切り出した幅5mmの短冊状試験片を使用し、ホウ酸緩衝液に対する前進時の動的接触角を測定した。浸漬速度は0.1mm/sec、浸漬深さは7mmとした。
(11)引張弾性率、引張伸度(破断伸度)
ホウ酸緩衝液による湿潤状態のサンプルを用いて測定した。コンタクトレンズ形状のサンプルから規定の打抜型を用いて幅(最小部分)5mm、長さ14mm、厚さ0.2mmの試験片を切り出した。該試験片を用い、オリエンテック社製のRTG−1210型試験機(ロードセルUR−10N−D型)を用いて引張試験を実施した。引張速度は100mm/分で、グリップ間の距離(初期)は5mmであった。また、フィルム形状のサンプルの場合は、5mm×20mm×0.1mm程度のサイズの試験片を用いて、同様の方法で測定した。
(12)X線光電子分光分析(XPS)
プラズマ処理前及びプラズマ処理後のレンズ、及び前記表面処理液で処理したレンズを、乾燥状態で分析した。完全に処理したレンズを、バイアルから取り出し、そして逆浸透膜で濾過して精製した水(RO水)中で定常的な様式で少なくとも15分間、脱塩した。各ロットの、プラズマ処理前のレンズ、プラズマ処理後のレンズ、及び表面処理液で処理したレンズを、XPSによって分析した。
XPSデータはアルバックファイ社製モデル5400を使用して獲得した。X線源はMg Kα線である。全ての元素を、炭素結合エネルギーの285.0eVのCHxピークに対して電荷補正した。
レンズ基材及び表面処理レンズ基材標本の各々を、低分解能調査スペクトル[0−1100eV]を利用するXPSによって分析し、サンプル表面上に存在する元素を同定した。高分解能スペクトルを、低分解能スキャンから検出された元素に対して行った。元素の組成を、高分解能スペクトルから決定した。原子組成を、装置の伝達機能で増感した後の光電子ピーク下の領域、及び目的のオービタルについての原子断面から計算し、窒素元素含量を求めた。
ここで、窒素元素含量(窒素含量ともいう)とは、炭素、ケイ素、フッ素、酸素、窒素元素の割合の合計を100%とした際、窒素元素が占める割合を示す。XPSのほかにIR、TOF−SIMS、などの手法により、確認することができる。
(13)走査型プローブ顕微鏡(SPM)
コンタクトレンズ表面の形態を研究するためにSPMを利用した。SPMは島津製作社製WET−SPM9500J3型を用いて、ダイナミックモードにより測定した。
(参考例1)基材の作成
成分Aとして両末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(FM7726、JNC、式(M2)の化合物、質量平均分子量29kD、数平均分子量26kD)(50質量部)、成分Bとしてトリフルオロエチルアクリレート(ビスコート3F、大阪有機化学工業)(45質量部)、成分Cとして2−エチルヘキシルアクリレート(3質量部)、成分Cとして以下の化合物を用いて、成分A、B及びCを混合し攪拌した。
ジメチルアミノエチルアクリレート(1質量部)
重合性基を有する紫外線吸収剤(RUVA−93、大塚化学)(1質量部)
酸型Uniblue A(0.04質量部)
重合開始剤“イルガキュア”(登録商標)819(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ、0.75質量部)
t−アミルアルコール(10質量部)
この混合物をメンブレンフィルター(0.45μm)でろ過して不溶分を除いてモノマー混合物を得た。このモノマー混合物を試験管に入れ、タッチミキサーで攪拌しながら減圧20Torr(27hPa)にして脱気を行い、その後アルゴンガスで大気圧に戻した。この操作を3回繰り返した。窒素雰囲気のグローブボックス中で透明樹脂(ベースカーブ側ポリプロピレン、フロントカーブ側ゼオノア)製のコンタクトレンズ用モールドにモノマー混合物を注入し、蛍光ランプ(東芝、FL−6D、昼光色、6W、4本)を用いて光照射(1.01mW/cm、20分間)して重合した。重合後に、モールドごと60質量%イソプロピルアルコール水溶液中に浸漬して、モールドからコンタクトレンズ形状の成型体を剥離した。得られた成型体を、大過剰量の80質量%イソプロピルアルコール水溶液に60℃、2時間浸漬した。さらに、成型体を大過剰量の50質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の25質量%イソプロピルアルコール水溶液に室温、30分間浸漬し、次に大過剰量の純水に室温、2時間以上浸漬した。得られたレンズ基材の縁部の直径は約14mm、中心部の厚みは約0.07mmであった。
(実施例1〜7)
表1にそれぞれ示した重量平均分子量250〜20000のポリエチレングリコール片末端トリメトキシシラン(Si−PEG)を用いて、エチレングリコール鎖の長さが水濡れ性及び防汚性に及ぼす影響について調べた。Si−PEGはそれぞれ1体積%の酢酸溶液に濃度10mg/mlとなるように溶解した。重量平均分子量250、500、750のSi−PEG(それぞれ実施例1、2、3にて使用)は液体となっているため、原液を1体積%の酢酸水溶液で100倍希釈して使用した。
参考例1で得られたレンズ基材をイソプロピルアルコール(IPA)に入れ、超音波洗浄を2分間行った後、清浄なタッパーに入れ、乾燥した。その後、プラズマ処理機に入れ、0.07Torrの減圧下において、酸素プラズマ処理出力100W、流速35sccm、片面2分ずつプラズマ処理を実施した。その後、Si−PEG溶液に浸漬し、37℃、100rpmの条件で振とうしながら24時間反応した。反応終了後、120度のオーブンに入れ、1時間脱水縮合反応を行った。さらに2分間の超音波洗浄を2回行った後、ホウ酸緩衝液を充填した5mlのバイアル瓶にコンタクトレンズを一枚ずつ入れ、120℃で煮沸滅菌を30分行った。
バイアル瓶からコンタクトレンズを取り出し、新しいホウ酸緩衝液で洗浄した後、ホウ酸緩衝液に浸漬し、次の測定を行うまで保存した。
表1に示す結果より、Si−PEG表面処理液によりすべてのレンズ基材はよい水濡れ性を示した。さらに、重量平均分子量1000〜5000のSi−PEGで処理したレンズ基材はよりよい易滑性を示した。
Figure 2015055809
(実施例8〜10、比較例2)
表2にSi−PEGの固定化濃度を検討した結果を示す。実施例1〜7において濡れ性、易滑性ともよい実施例5のSi−PEG2000を選択して、Si−PEGによる表面処理濃度を変化させて、他は実施例5と同じ条件として表面処理を行った。処理濃度はそれぞれ5mg/mL(実施例8)10mg/mL(実施例9[実施例5と同じ])及び20mg/mL(実施例10)となるように調製した。
Si−PEG処理レンズ基材は、静止接触角、易滑性、及び脂質吸着実験により評価した。表2に示す結果から分かるように、分子量が同じ場合において、表面処理液中のSi−PEGの濃度が高い場合、防汚性に有効であることが示された。
さらにSi−PEGで表面処理した基材レンズの表面状態をSPMにより観測した。比較例2は、Si−PEG処理をしていないレンズ基材を観測した結果を示す。自乗平均面粗さ(RSM)の値から、Si−PEG表面処理液の濃度が高いほうが、RSM値が低く、表面処理していないレンズ基材より表面が均一であることが分かった。
Figure 2015055809
上記実施例10及び比較例2のXPS計測結果を図1に示す。実施例10に示す通りSi−PEGを処理したレンズ基材(図中の「Si−PEG」、ピークが2つ存在する方)は、比較例2に示す通り処理していないレンズ基材(図中の「レンズ基材」、ピークが1つのみの方)と比較し、287eV付近のピーク(PEG由来のC−O結合)が増えることが確認できた。
(実施例11、比較例3)
参考例1で作成したレンズ基材を用いて、まずイソプロパノールで2分間超音波洗浄した後、室温で乾燥し、酸素プラズマ処理を片面2分ずつ行った。その後、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTS)をエタノールに10体積%に希釈したAPTS表面処理液に浸漬し、一時間反応した。その後、10mg/mLのNHS−PEG溶液に浸漬し、4時間反応した。
Si−PEGを直接固定化したレンズと比較し、APTSを処理した後、スクシンイミドポリエチレングリコール(NHS−PEG)を固定化した場合には、レンズ基材より有意義に窒素含量が多い。これはAPTSのアミン基が残っているためである。
Figure 2015055809

Claims (4)

  1. シランカップリング反応により、シランカップリング基を有する親水性高分子を低含水軟質レンズ基材の表面に結合させて低含水性軟質眼用レンズを得る工程を備える、低含水性軟質眼用レンズの製造方法。
  2. 前記シランカップリング反応は、前記低含水軟質レンズ基材の表面を、酸素ガス、炭酸ガス及びアルゴンガスからなる群から選択される少なくとも一種の雰囲気中で行う、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記親水性高分子は、以下の式(I)で示される、請求項1又は2記載の製造方法。
    式(I): ZSi−L−Y
    [式中、Zは、クロロ基、メトキシ基又はエトキシ基を表し、Lは、炭素数3〜12の2価の有機基を表し、Yは、親水性高分子を表す。]
  4. 前記親水性高分子は、エチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリルアミド(PAAm)、ポリジメチルアクリルアミド(PDMAA)、ポリ(N−メチル−N−ビニルアセトアミド)(PMVA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンオキシドビス酢酸及びこれらの共重合体からなる群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項記載の製造方法。
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WO2022224717A1 (ja) * 2021-04-19 2022-10-27 国立研究開発法人物質・材料研究機構 軟質眼用レンズ及びその製造方法

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