JP2015041580A - フィラメントおよび光源 - Google Patents
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Abstract
【課題】電力を可視光や近赤外光に変換する効率が高いフィラメントを提供する。
【解決手段】バンドギャップを有する材料で少なくとも一部が構成されたフィラメントが提供される。バンドギャップを有する材料は、バンドギャップ未満のエネルギー領域の放射率がほぼゼロになるため、供給されたエネルギーをバンドギャップ以上のエネルギー領域において放射することができる。これを利用して、可視光や近赤外光の放射効率の高いフィラメントが得られる。フィラメント材料は、半導体、電気伝導性を生じる構造が導入された誘電体、ならびに、カーボンナノチューブ等を好適に用いることができる。
【選択図】図3
【解決手段】バンドギャップを有する材料で少なくとも一部が構成されたフィラメントが提供される。バンドギャップを有する材料は、バンドギャップ未満のエネルギー領域の放射率がほぼゼロになるため、供給されたエネルギーをバンドギャップ以上のエネルギー領域において放射することができる。これを利用して、可視光や近赤外光の放射効率の高いフィラメントが得られる。フィラメント材料は、半導体、電気伝導性を生じる構造が導入された誘電体、ならびに、カーボンナノチューブ等を好適に用いることができる。
【選択図】図3
Description
本発明は、エネルギー利用効率を改善した光源用フィラメントに関する。
タングステンフィラメント等に電流を流すことにより、フィラメントを加熱し、電球とする白熱電球が広く用いられている。白熱電球は、太陽光に近い演色性に優れた放射スペクトルが得られ、白熱電球の電力から光への変換効率は80%以上になるが、放射光の波長成分は、図1に示すように赤外放射光成分が90%以上である(図1の3000Kの場合)。このため、白熱電球の電力から可視光への変換効率は、凡そ15 lm/Wと低い値になる。一方、蛍光灯は、電力から可視光への変換効率が約90 lm/Wであり、白熱電球よりも大きい。このため、白熱電球は、演色性に優れているが、環境負荷が大きいという問題がある。
白熱電球を高効率化・高輝度化・長寿命化する試みとして,様々な提案がなされている。例えば、特許文献1および2には、電球内部に不活性ガスやハロゲンガスを封入することにより、蒸発したフィラメント材料をハロゲン化してフィラメントに帰還させ(ハロゲンサイクル)、フィラメント温度をより高くする構成が提案されている。一般的にこれらはハロゲンランプと呼ばれている。これにより、可視光への電力変換効率の上昇およびフィラメント寿命の延長の効果が得られる。この構成では、高効率化並びに長寿命化のために、封入ガスの成分並びに圧力の制御が重要となる。
特許文献3−5には、電球ガラスの表面に赤外線反射コートを施し、フィラメントから放射された赤外光を反射して、フィラメントに戻し、吸収させる構成が開示されている。これにより、赤外光をフィラメントの再加熱に利用し、高効率化を図っている。
特許文献6−9には、フィラメント自体に微細構造体を作製し,その微細構造体の物理的効果により,赤外放射を抑制し,可視光放射の割合を高めるという構成が提案されている。
F.Kusunoki et al.,Jpn.J.Appl.Phys.43,8A,5253(2004).
しかしながら,特許文献1,2のようにハロゲンサイクルを利用する技術は、寿命延伸効果を図ることはできるが、変換効率を大きく改善することは困難であり、現状,20 lm/W程度の効率である。
また,特許文献3−5のように、赤外放射を赤外線反射コートで反射して、フィラメントに再吸収させる技術は、フィラメントによる赤外光の反射率が70%と高いために再吸収が効率良く起こらない。また,赤外線反射コートで反射された赤外光が、フィラメント以外の他の部分,例えばフィラメント保持部分並びに口金等に吸収され,フィラメントの加熱に利用されない。このため,本技術により、変換効率を大きく改善することは困難である。現状,20 lm/W程度の効率となる。
特許文献6−9のように微細構造により赤外放射光の抑制効果を図る技術は、赤外放射スペクトルの極一部分の波長に対して放射増強並びに抑制効果を示す報告は存在するが(非特許文献1)、広範囲な赤外光全体に亘って赤外放射光の抑制を図ることは非常に困難である。これは、ある波長が抑制されると,別の波長は増強される性質のためである。このため、本技術を利用して大幅な効率改善を図ることは難しいと考えられている。また,微細構造作製に際して,電子ビームリソグラフィー等の高度な微細加工技術を利用するため,これを使用した光源は非常に高価なものとなる。更に,高温耐熱部材であるW基体上に微細構造を作り込んでも1000℃程度の加熱温度で微細構造部分が溶融並びに破壊してしまうと言う問題も存在する。
本発明の目的は、電力を可視光や近赤外光に変換する効率が高いフィラメントを提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明によればバンドギャップを有する材料で少なくとも一部が構成されたフィラメントが提供される。
本発明では、バンドギャップを有する材料のバンドギャップ未満のエネルギー領域の放射率がほぼゼロになることを利用して、赤外波長領域の放射率が低く、可視光や近赤外光の放射率の高いフィラメントが得られる。
本発明のフィラメントの原理について図面を用いて説明する。
本発明では、バンドギャップを有する材料で少なくとも一部が構成されたフィラメントが提供される。バンドギャップを有する材料は、バンドギャップ未満のエネルギー領域の放射率がほぼゼロになるため、供給されたエネルギーをバンドギャップ以上のエネルギー領域において放射することができる。これを利用して、可視光や近赤外光(波長1200nm以下)の放射効率の高いフィラメントが得られる。
フィラメントの材料は、バンドギャップエネルギーが、可視から赤外波長領域にあることが望ましい。特に、可視から近赤外波長領域(1200nm以下)にあることが望ましい。例えば、バンドギャップエネルギーが、波長700nm付近にあることが望ましい。
フィラメントの材料は、反射率と透過率の和が、可視波長領域より赤外波長領域で高いことが望ましい。
フィラメント材料は、半導体、電気伝導性を生じる構造が導入された誘電体、ならびに、カーボンナノチューブやグラフェン等のナノ構造のカーボンを好適に用いることができる。例えば、Si(バンドギャップエネルギー:1.1eV),GaAs(同:1.4eV),β−SiC(同:2.2eV),GaN(同:3eV),カーボンナノチューブ(直径2nmの場合バンドギャップエネルギー:0.5eV、直径0.5nmの場合:1.5eV)を用いることができる。(なお、カーボンナノチューブのバンドギャップエネルギーの直径依存については、非特許文献 Kataura,et al.,Synthetic Metals,103,2555(1999)参照.)
また、半導体、または、電気導電性を生じる構造が導入された誘電体をフィラメント材料として用いる場合には、フィラメントの表面を鏡面研磨することが望ましい。鏡面研磨後の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)が1μm以下、最大高さ(Rmax)10μm以下、および、十点平均粗さ(Rz)10μm以下の少なくとも一つを満たすことが望ましい。
半導体をフィラメント材料として用いる場合、半導体には不純物がドープされていることが望ましい。この不純物により、半導体の反射率と透過率が制御され、同時に電気伝導性を備えることができる。
上記フィラメント材料は、1500K以上においても耐えられるものが望ましい。
また、半導体を材料とするフィラメントは、両端に電極が備えられ、外周には可視光反射膜が配置された構造にすることも可能である。この場合、可視光反射膜は、フィラメント内部で発生した可視光を共振させる共振器を構成することができるため、レーザー光を出射することが可能になる。
上記フィラメントを気密容器内に配置し、フィラメントに電流を供給するための電極をフィラメントに接続することによりフィラメントを加熱励起し、可視光や近赤外光(波長1200nm以下)を出射する光源を構成することができる。気密容器内には、105Paから107Paの圧力で不活性ガスが封入されていることが好ましい。
フィラメント励起部は、電流供給手法の他に、マイクロ波励起部,RF波励起部,放電励起部,伝導励起部,等,様々な物理的励起手法を採用することが出来る。特に,電気伝導性が低いフィラメントの場合,マイクロ波励起並びにRF波励起等のフィラメント加熱励起手法が有効となる。
本発明のフィラメントを構成する半導体並びに誘電体材料としては,上述してきた材料の他に,融点が1500K以上である半導体ならびに誘電体材料を用いることが出来る。例えば、融点が1500K以上である材料であって、禁制帯幅(バンドギャップ)が広く、絶縁特性を有する誘電体材料に,広義な意味での不純物を添加し、放射制御特性並びに電気伝導性を持たせた材料をフィラメントに用いることも可能である。具体的には、ダイヤモンド半導体のように、窒素ドープによる不純物準位形成方法や,イオン注入による欠陥準位形成方法、または、電子線照射による結晶欠陥生成方法等により誘電体に伝導特性を形成した材料によりフィラメントを形成することができる。
また、ダイヤモンド以外にも、誘電体材料としては、酸化物であるCaO,CeO2,Cr2O3,CoO,Dy2O3,Gd2O3,Ga2O3,HfO2,HoO3,SnO2,Fe2O3,La2O3,MgAl2O4,MgO,Nd2O3,NbO,Nb2O3,Os2O3,ReO3,Sm2O3,Sc2O3,SiO,SiO2,SrO,Ta2O5,Tb2O3,ThO2,TiO,Ti2O3,TiO2,UO2,VO2,Yb2O3,Y3Al5O12,Y2O3,ZnO,ZrO2,ZrSiO4等,また,窒化物であるAlN,BN,HfN,NbN,Si3N4,TaN,TiN,VN,ZrN等,炭化物材料であるBe2C,B4C,グラフェン,ダイヤモンドライクカーボン,Cr3C2,Mo2C,NbC,4H−SiC,6H−SiC,ThC2,TiC,W2C,UC2,VC,ZrC等、硫化物であるCdS,ThS2,US,ZnS等、ホウ化物であるCrB,MoB2,HfB2,NbB2,TaB2,TiB2,WB2,VB2,ZrB2等,ケイ素化物,および、リン化物GaP,VSi2,ZrSi2等を用いることが可能である。
また、本発明では、フィラメントの全体が半導体並びに誘電体で構成されたものに限定されるものではなく、高温耐熱性を有する導電性基材の表面に半導体や誘電体を配置した構成にすることも可能である。この場合,導電性基材としては、Ta,Os,Ir,Mo,Re,W,Ru,Nb,Cr,Zr,V,Rh,C,B4C,ZrC,TaC,HfC,AlN,BN,ZrN,HfN,TiN,LaB6,ZrB2,HfB2等を用いることができる。
つぎに、本発明のフィラメントが、バンドギャップ以上のエネルギー領域(可視光や近赤外光(波長1200nm以下))の光を効率よく出射する原理について説明する。
自然対流熱伝達の無い条件下(例えば真空中)における材料(ここではフィラメント)の入力エネルギーに対するエネルギー損失は平衡状態では以下の式(1)で与えられる。
(数1)
P(total)=P(conduction)+P(radiation) ・・・(1)
(数1)
P(total)=P(conduction)+P(radiation) ・・・(1)
ここで,P(total)は、全入力エネルギー,P(conduction)は、フィラメントに電流を供給するリード線を経て損失されるエネルギー,P(radiation)は、フィラメントが、加熱された温度で外部空間に光を放射して損失するエネルギーである。フィラメントは、その温度が2500K以上の高温になると,リード線を経て損失されるエネルギーはわずか5%程度になり,残りの95%以上のエネルギーは、光放射によって外部にエネルギー損失されるため,入力電力の殆ど全てのエネルギーを光に代えることが出来る。しかしながら,従来の一般的なフィラメントから放射される放射光の内,可視光成分の割合はわずか10%程度で,大部分が赤外放射光成分であるため,そのままでは効率の良い可視光源とはならない。
上記式(1)におけるP(radiation)の項は一般的に、下記式(2)で記述することができる。
式(2)においては、ε(λ)は、各波長における放射率,αλ-5/(exp(β/λT)−1)の項は、プランクの放射則を示す。α=3.747×108 Wμm4/m2,β=1.4387×104 μmK,である。また,ε(λ)は、キルヒホッフの法則によって、半導体の透過率τ(λ)および反射率R(λ)と式(3)の関係にある。
(数3)
ε(λ)=1−τ(λ)−R(λ) ・・・(3)
(数3)
ε(λ)=1−τ(λ)−R(λ) ・・・(3)
式(2)と式(3)を関連付けて議論すると,仮に、透過率と反射率の和が全ての波長に亘って1である半導体材料は,式(3)よりε(λ)=0となり,ひいては,式(2)における積分値が0となるため放射による損失が起こらなくなる。この物理的意味は,P(total)=P(conduction)となるため,少量の入力エネルギーでも光放射による損失が無く,フィラメントが非常に高い温度まで達することを意味している。一方,反射率と透過率の和が全ての波長に亘って0である材料は、完全黒体とよばれ,(3)式よりε(λ)=1となる。この結果,(2)式における積分値は最大となり,ひいては,放射による損失量が最大となる。通常の材料は、放射率ε(λ)が0< ε(λ)<1の間に存在し、かつ、その波長依存性は、劇的に変化することは無い(波長λ,温度Tに対する緩慢な依存性は存在する)。そのため、赤外から可視光領域における光放射は、図2の2点鎖線で示すように略可視から赤外領域に亘って均一に起こる。なお、図2では、議論を簡略化するため全波長領域でε(λ)=1として黒体放射スペクトルをプロットしている。
式(4)において、θ(λ−λ0) は、長波長から可視光のある波長λ0までは放射率が0であり,ある波長λ0よりも短波長の領域では放射率が1である階段関数的振る舞いを示す関数である。得られる放射スペクトルは階段関数的な放射率と黒体放射スペクトルを畳み込んだ形状となり,計算の結果は、図2の破線で示すスペクトルとなる。即ち,式(4)の物理的意味は,フィラメントへの入力エネルギーの小さい低温領域では輻射損失が抑えられており,式(4)のP (radiation)の項が0となるため,エネルギー損失がP (conduction)のみとなり,非常に効率良くフィラメント温度が上昇する。一方、フィラメント温度が高温になり,黒体放射スペクトルのピーク波長がλ0より短くなるような温度領域になると,フィラメントに入力したエネルギーを図2の破線で示したスペクトルのように可視光放射として損失するようになる。
式(4)におけるθ(λ−λ0)は、上述のように長波長から可視光のある波長λ0までは放射率が0であり,ある波長λ0よりも短波長の領域では放射率が1である材料である。このような材料は、式(3)のキルヒホッフの法則により、図2に実線で示したように、波長λ0以下で反射率と透過率の和が0で、波長λ0よりも長波長領域で反射率と透過率の和が1となる。
そこで本発明は、波長λ0以下の可視光域の反射率と透過率の和が0に近く、波長λ0よりも長波長領域で反射率と透過率の和が1に近い値を有するフィラメントとして、バンドギャップを有する材料で構成されたフィラメントを提供する。このフィラメントは、バンドギャップ未満のエネルギー領域(例えば、700nm以上の赤外光)の放射率がほぼゼロになる。
(実施形態1)
実施形態1として、Si半導体を材料とするフィラメントについて説明する。このフィラメントは、1700 Kの温度でも赤外領域の放射率がほぼゼロ(すなわち、透過率と反射率の和がほぼ1)の放射特性を示す。
実施形態1として、Si半導体を材料とするフィラメントについて説明する。このフィラメントは、1700 Kの温度でも赤外領域の放射率がほぼゼロ(すなわち、透過率と反射率の和がほぼ1)の放射特性を示す。
まず、Si半導体を材料とするフィラメントの製造方法について説明する。P型またはN型で、比抵抗0.01Ωcm程度の面方位(100)のSi基板を用意する。Si基板は、FZ(フローティングゾーン)法等で成長させたものが望ましい。CZ(Czochralski)法で成長させたSi基板は、酸素を大量に含み0.1eVから0.5eVに亘って多数の不純物準位が形成されている(例えば,半導体デバイス,S.M.Sze,産業図書出版P.22参照)ため、加熱すると、不純物準位内の束縛電子が励起され自由電子となり,これに起因した長波長赤外放射が出現する(赤外放射抑制効果の劣化)。このため、不純物に起因する赤外線放射をなるべく少なく抑制したSi基板を用意することが望ましい。
用意したSi基板を、図3に示すように、直方体や円柱状等の棒状やコイル形状等所望のフィラメント形状に加工する。棒状に加工する場合、サイズとしては、例えば0.1×0.1×10(mm3)〜0.5×0.5×20 (mm3)程度に加工することができる。棒状に加工する際には、劈開、ダイシング、レーザースクライビング等のSi基板の加工に用いられる周知のプロセスを用いる。劈開により加工する場合、劈開の容易さから結晶面が面方位(100)のSi基板を準備することが好ましい。レーザースクライビング等の加工プロセスを用いる場合は,フィラメントの加工が面方位に影響を受けないので,他の面方位,例えば(110),(111),等の基板を用いることをできる。コイル形状等、他の所望の形状にSi基板を加工する場合には、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)の加工プロセス等を用いることができる。
形成した所望の形状のSiフィラメントの表面を鏡面研磨することが望ましい。これにより、表面粗さが大きな半導体表面に生じる表面準位を抑制できるため、表面準位が加熱時に放射する赤外放射を防止できる。よって、フィラメントの赤外光の放射抑制の作用をより高めることができる。鏡面研磨後の表面粗さは、中心線平均粗さ(Ra)が1μm以下,最大高さ(Rmax)10μm以下、および,十点平均粗さ(Rz)10μm以下のうち少なくとも一つを満たすことが望ましい。
加工並びに研磨によって生じた歪が、Siフィラメントに種々の欠陥・表面準位を形成し、赤外光を放射する恐れがあるため、フィラメント作製後,バッファードHF等を用いて酸化被膜除去並びに表面洗浄を行い,その後,フィラメントを加熱して,結晶欠陥の回復作業等を施すことが望ましい。さらに,このような結晶欠陥の回復作業を施したフィラメントの表面に、Si半導体をホモエピタキシャル成長させることも可能である。これにより、結晶欠陥・表面準位の発生をさらに抑えることができるため、より高品質なフィラメントを形成すること出来る。
すでに述べたように、形成したフィラメントは、比抵抗0.01Ωcm程度であることが好ましい。これにより、Siフィラメントに低電圧(10V程度)である程度の電流(1〜10Aオーダー)を流して加熱することができるためである。ただし、必ずしも比抵抗は0.01Ωcm以下でなくてもよい。フィラメントが短い場合や、フィラメントが薄膜形状である場合には、比抵抗が大きくても,以下の(5)式に示すように,フィラメント長さLの3乗に反比例し、フィラメント電圧Vの2乗に比例する空間電化制限電流Jを流して加熱することができる。
(数5)
J ∝ V2/L3 ・・・(5)
(数5)
J ∝ V2/L3 ・・・(5)
一般的には,比抵抗の大きい半導体材料の方が,不純物準位が少なく,加熱による自由電子の生成,延いてはこれによる長波長赤外放射生成の影響を受け難いより良好な赤外光の放射抑制の効果を期待することが出来る。
半導体材料の不純物特性は、P型であってもN型であってもよい。
上記工程により製造されたSiフィラメントを、1700Kに加熱することによって,図4に示すような放射特性を得ることが出来る。図4から明らかなように、Siフィラメントは、波長1000nm以上において、反射率と透過率の和がほぼ1で,放射率は0になっており,波長1000nm以上の赤外放射が抑制され、比較的低温の1700Kの加熱温度においても可視光が28.3 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を1700Kに加熱した際に得られる光束効率は高々1.5 lm/Wであり,Si半導体材料を用いることによってタングステン材料の略20倍の光束効率を実現出来る。
(実施形態2)
実施形態1と同様の製造工程により、GaAsからなるフィラメントを製造した。図5に、GaAsフィラメントを1500Kに加熱した場合の放射特性を示す。図5から明らかなようにGaAsフィラメントは、波長900nm以上において反射率と透過率の和がほぼ1であり,放射率が0になっており,波長900nm以上の赤外放射が抑制され、比較的低温の1500Kの加熱温度においても可視光が29.3 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を1500Kに加熱した際に得られる光束効率は高々0.4 lm/Wであり,GaAs半導体材料を用いることによってタングステン材料の略70倍の光束効率を実現出来る。
実施形態1と同様の製造工程により、GaAsからなるフィラメントを製造した。図5に、GaAsフィラメントを1500Kに加熱した場合の放射特性を示す。図5から明らかなようにGaAsフィラメントは、波長900nm以上において反射率と透過率の和がほぼ1であり,放射率が0になっており,波長900nm以上の赤外放射が抑制され、比較的低温の1500Kの加熱温度においても可視光が29.3 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を1500Kに加熱した際に得られる光束効率は高々0.4 lm/Wであり,GaAs半導体材料を用いることによってタングステン材料の略70倍の光束効率を実現出来る。
(実施形態3)
実施形態1と同様の製造工程により、GaNからなるフィラメントを製造した。図6に、GaNフィラメントを2500Kに加熱した場合の放射特性を示す。図6から明らかなようにGaNフィラメントは、波長700nm以上において反射率と透過率の和がほぼ1であり,放射率が0になっており,波長700nm以上の赤外放射が抑制され、2500Kの加熱温度において可視光が208.1 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を2500Kに加熱した際に得られる光束効率は高々17 lm/Wであり,GaN半導体材料を用いることによってタングステン材料の略12倍の光束効率を実現出来る。
実施形態1と同様の製造工程により、GaNからなるフィラメントを製造した。図6に、GaNフィラメントを2500Kに加熱した場合の放射特性を示す。図6から明らかなようにGaNフィラメントは、波長700nm以上において反射率と透過率の和がほぼ1であり,放射率が0になっており,波長700nm以上の赤外放射が抑制され、2500Kの加熱温度において可視光が208.1 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を2500Kに加熱した際に得られる光束効率は高々17 lm/Wであり,GaN半導体材料を用いることによってタングステン材料の略12倍の光束効率を実現出来る。
(実施形態4)
図7に直径1nmのカーボンナノチューブ(CNT)をフィラメントとし、3000Kに加熱した場合の放射特性を示す。図7から明らかなようにCNTフィラメントは、波長1200nm以上において反射率と透過率の和がほぼ1であり,放射率が0になっており,波長1200nm以上の赤外放射が抑制され、3000Kの加熱温度において可視光が71.6 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を3000Kに加熱した際に得られる光束効率は高々36.7 lm/Wであり,CNT材料を用いることによってタングステン材料の略2倍の光束効率を実現出来る。
図7に直径1nmのカーボンナノチューブ(CNT)をフィラメントとし、3000Kに加熱した場合の放射特性を示す。図7から明らかなようにCNTフィラメントは、波長1200nm以上において反射率と透過率の和がほぼ1であり,放射率が0になっており,波長1200nm以上の赤外放射が抑制され、3000Kの加熱温度において可視光が71.6 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を3000Kに加熱した際に得られる光束効率は高々36.7 lm/Wであり,CNT材料を用いることによってタングステン材料の略2倍の光束効率を実現出来る。
CNTフィラメント等に代表されるナノ構造カーボン材料は,105Paにおける昇華温度が凡そ3800Kと高いので,優れた放射特性を示すことが出来る。
(実施形態5)
ダイヤモンド半導体をフィラメントとし、2500Kに加熱した場合の放射特性を図8に示す。このダイヤモンド半導体は、窒素ドープによる不純物準位形成方法や,イオン注入による欠陥準位形成方法、または、電子線照射による結晶欠陥生成方法等により、ダイヤモンドに放射制御性及び伝導特性を形成した材料である。図8から明らかなようにダイヤモンドフィラメントは、波長1000nm以上において反射率と透過率の和がほぼ1であり,放射率が0になっており,波長1200nm以上の赤外放射が抑制され、2500Kの加熱温度において可視光が67.7 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を2500Kに加熱した際に得られる光束効率は高々17 lm/Wであり,ダイヤモンド材料を用いることによってタングステン材料の略4倍の光束効率を実現出来る。
ダイヤモンド半導体をフィラメントとし、2500Kに加熱した場合の放射特性を図8に示す。このダイヤモンド半導体は、窒素ドープによる不純物準位形成方法や,イオン注入による欠陥準位形成方法、または、電子線照射による結晶欠陥生成方法等により、ダイヤモンドに放射制御性及び伝導特性を形成した材料である。図8から明らかなようにダイヤモンドフィラメントは、波長1000nm以上において反射率と透過率の和がほぼ1であり,放射率が0になっており,波長1200nm以上の赤外放射が抑制され、2500Kの加熱温度において可視光が67.7 lm/Wという高効率で放射されている。因みに一般的に電球で使用されているタングステン材料を2500Kに加熱した際に得られる光束効率は高々17 lm/Wであり,ダイヤモンド材料を用いることによってタングステン材料の略4倍の光束効率を実現出来る。
(実施形態6)
半導体で構成されたフィラメントをレーザー共振器構造とした実施形態について図9を用いて説明する。
半導体で構成されたフィラメントをレーザー共振器構造とした実施形態について図9を用いて説明する。
図9のように、直方体形状の半導体材料のフィラメントの両端には、電極11が備えられ、4つの側面は、可視光反射膜12で覆われている。4つの側面のうち3面の可視光反射膜12の反射率は、99.9%以上であり、1面(前面)の可視光反射膜12aの反射率は、90%である。可視光反射膜12は、フィラメント内部で発生した可視光を共振させる共振器を構成し、レーザー光が、前面の可視光反射膜12aを透過して、出射される。これにより、半導体にPN接合を形成しなくても,フィラメントからコヒーレンスの高い光を出射させることができる。
可視光反射膜12としては、一般的に利用されている誘電体多層膜ミラー等の公知の薄膜ミラーを用いることができる。また、可視光反射膜12に代えてフォトニック結晶構造をフィラメントに形成して共振器を形成することも可能である。
(実施形態7)
実施形態7として、本発明のフィラメントを用いた光源を図10を用いて説明する。光源1は、気密容器2と、気密容器2内に配置されたフィラメント3と、フィラメント3に電流を供給するための電極(リード線)4,5とを有する。気密容器2は、可視光または近赤外光(波長1200nm以下)を透過する材料、例えばガラスにより構成される。リード線4,5は、フィラメント3の両端に電気的に接続されると共にフィラメント3を支持している。
実施形態7として、本発明のフィラメントを用いた光源を図10を用いて説明する。光源1は、気密容器2と、気密容器2内に配置されたフィラメント3と、フィラメント3に電流を供給するための電極(リード線)4,5とを有する。気密容器2は、可視光または近赤外光(波長1200nm以下)を透過する材料、例えばガラスにより構成される。リード線4,5は、フィラメント3の両端に電気的に接続されると共にフィラメント3を支持している。
フィラメント3は、上述してきた本発明のフィラメントであり、バンドギャップを有する材料(半導体、誘電体、カーボンナノ材料等)により構成されている。フィラメント3を構成する材料が、半導体並びにカーボンナノ構造材料である場合には、金属と比較して融点・沸点が低いので,気密容器2内に不活性ガスを例えば10気圧程度に加圧した環境下において使用することが好ましい。
気密容器2の封止部には、口金9が接合されている。口金9は、側面電極6と、中心電極7と、側面電極6と中心電極7とを絶縁する絶縁部8とを備える。リード線4の端部は、側面電極6に電気的に接続され、リード線5の端部は、中心電極7に電気的に接続されている。
フィラメント3は、図10の例では、線材形状のフィラメントをらせん状に巻き回した構造であるが、上述してきたように棒状や他の形状のものを用いることができる。
本実施形態のフィラメントは、赤外光の放射が抑制され、可視光や近赤外光(波長1200nm以下)を高効率で放射することができるため、図10の光源は、エネルギー変換効率のよい光源となる。
本発明のフィラメントを用いた光源は、照明用光源,自動車用照明光源,プロジェクター用光源,液晶バックライト光源等の各種光源として、用いることが可能である。また、近赤外光の加熱効果を利用して、コピー機やプリンターのトナーを定着させる加熱装置等の加熱装置として用いることができる。
1…光源、2…気密容器、3…フィラメント、4…リード線、5…リード線、6…側面電極、7…中心電極、8…絶縁部、9…口金、11…電極、12…可視光
Claims (11)
- バンドギャップを有する材料で少なくとも一部が構成されていることを特徴とするフィラメント。
- 請求項1に記載のフィラメントにおいて、前記材料は、バンドギャップエネルギーが、可視波長領域から赤外波長領域にあることを特徴とするフィラメント。
- 請求項1に記載のフィラメントにおいて、前記材料は、反射率と透過率の和が、可視波長領域より赤外波長領域で高いことを特徴とするフィラメント。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフィラメントにおいて、前記材料は、半導体であることを特徴とするフィラメント。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフィラメントにおいて、前記材料は、電気伝導性を生じる構造が導入された誘電体であることを特徴とするフィラメント。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフィラメントにおいて、前記材料は、ナノ構造炭素材料であることを特徴とするフィラメント。
- 請求項4または5に記載のフィラメントにおいて、フィラメントの表面粗さは、中心線平均粗さが1μm以下、最大高さ10μm以下、および、十点平均粗さ10μm以下の少なくとも一つを満たすことを特徴とするフィラメント。
- 請求項4に記載のフィラメントにおいて、前記半導体には、不純物がドープされ,その不純物により反射率と透過率が制御され、同時に電気伝導性を備えることを特徴とするフィラメント。
- 請求項4または8に記載のフィラメントにおいて、前記半導体は、両端に電極が備えられ、外周には可視光反射膜が配置され、前記可視光反射膜は、内部で発生した可視光を共振させる共振器を構成していることを特徴とするフィラメント。
- 気密容器と、前記気密容器内に配置されたフィラメントと、前記フィラメントに電流を供給するための電極とを有する光源であって、
前記フィラメントは、請求項1ないし9のいずれか1項に記載のものであることを特徴とする光源。 - 請求項9に記載の光源において,前記気密容器内には、105Paから107Paの圧力で不活性ガスが封入されていることを特徴とする光源。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2013173247A JP2015041580A (ja) | 2013-08-23 | 2013-08-23 | フィラメントおよび光源 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPWO2019225726A1 (ja) * | 2018-05-25 | 2021-06-17 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 | 積層型ふく射光源 |
-
2013
- 2013-08-23 JP JP2013173247A patent/JP2015041580A/ja active Pending
Cited By (2)
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JP6994274B2 (ja) | 2018-05-25 | 2022-02-04 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 | 積層型ふく射光源 |
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