JP2015003900A - ワクモ防除剤 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、家禽類に経口投与する場合には、安全性の観点から、水で500〜1000倍(容積)に希釈して用いることが好ましい。一方、ワクモの生育場所や家禽類に直接散布等して適用する場合には0〜500倍希釈で用いることが好ましい。このような液剤を平面に適用する場合には、原液が1m2あたり1〜10ml程度の散布量になるよう適用すればよい。適用方法としては、噴霧、散布、湿布等が挙げられる。例えば、ワクモは家禽類の飼育ケージの隙間等にコロニーを形成するが、このようなコロニーなどのワクモの生息場所に対して、本発明のワクモ防除剤を噴霧等によって適用することにより、ワクモに対し忌避効果および殺虫効果が奏される。また、ワクモの寄生が重度になると、鶏の総***孔付近にコロニーを形成するものもいる。家禽類に直接適用する場合には、下から羽毛に逆らうように吹付けることでこれらの駆除と寄生予防効果が得られる。家禽類としては、鶏、ウズラ、七面鳥、ダチョウなどが挙げられる。また本発明にいて、防除対象のワクモには、卵、幼虫、若虫、成虫のいずれの段階も含まれる。
木酢液の調製:
南九州産のカシ、シイなどを主とする広葉樹をローリングバーガーにより剥皮して樹皮を得た。樹皮を縦5m×横5m×深さ1.1mの平窯に重ねて入れ、約390℃で炭化処理した。発生した蒸留物をファンで吸引し、平窯の側面に設けられた2個の穴から煙道を通って冷却水層まで移送して、冷却水層内に配管されたステンレス管を通過させて冷却し、貯留タンクに粗木酢液として貯留した。粗木酢液を貯留タンク内に約3ヶ月静置して、上層(油分)、中間層、下層(タール分等)に分離させてから、中間層を分取して精製木酢液を得た。この木酢液のpHは3.4であった。また中和滴定法により酸度を測定したところ2.73%であった。
固形製剤の調製:
製造例1で得られた樹皮炭を、粉砕機により粒度1mm以下の粒子が96質量%以上となるように粉砕した。この樹皮炭粉末16kgに対し製造例1の精製木酢液4kgを噴霧、混合して、樹皮炭粉末に木酢液を担持させた固形製剤を調製した。
ワクモに対する殺虫作用(1):
鶏舎に生育するワクモの成虫を採取し、シャーレ(底面積22cm2)に入れ密閉した。シャーレ内に製造例1で調製した木酢液を1ml注入した。室温で暗室に5時間放置後、シャーレ内のワクモの生死を確認し、供試虫数に対する死虫数の割合を駆除率(%)とした。木酢液に代えて同量の水道水を注入したものおよび何も加えなかったものについても同様にして駆除率を調べた。結果を表1に示す。
ワクモに対する殺虫作用(2):
プラスチック容器(底面積22cm2)に、製造例1で調製した木酢液0.8mlを含浸させたキッチンペーパー(約50cm2)を側面まで敷詰め、その上に鶏舎から採取したワクモの成虫を載せ密閉した。室温で1夜放置後、シャーレ内のワクモの生死を確認し、供試虫数に対する死虫数の割合を駆除率(%)として求めた。木酢液に代えて同量の水道水または市販の純米酢を使用したものについても同様にして駆除率を調べた。結果を表2に示す。
ワクモに対する忌避作用(コロニーへの散布):
鶏舎のケージの繋ぎ目に形成されたワクモのコロニーに製造例1で調製した木酢液を霧吹きで2ml/m2吹き付け、コロニーの状態の変化を目視および画像解析により調べた。木酢液は、1回目の吹き付け後、16時間後および19時間後の合計3回吹き付けた。ワクモは吸血により鶏を貧血状態に陥らせたり、あるいは吸血による不快感により鶏の産卵能力等を低下させるため、その吸血量がワクモの鶏に対する影響の指標になると考えられる。ワクモは、未吸血時は灰白色であるが吸血すると赤色になるため、画像解析では、吹き付け20分後のコロニーをデジタルカメラで撮影し、画像解析ソフト(MITANI CORPORATION.Win Roof)を用いて、吸血したワクモに対応する色(RGBカラーモデルでR82-99,G47-67,B69-82をしきい値とする)のドット数を自動カウントした。画像解析の結果を表3に示す。
ワクモに対する忌避作用(経口投与):
木酢液を樹皮炭粉末に担持させたスーパーネッカリッチ(宮崎みどり製薬社製、木酢液含有量20質量%)を鶏に摂取させ、ケージ内に形成されたワクモのコロニーの状態の変化を調べた。83週齢のボリス鶏種を5羽ずつ3区に分け、2週間標準飼料(日和産業株式会社製、ニュースター)を給餌した後、スーパーネッカリッチ1%添加飼料(標準飼料にスーパーネッカリッチを1質量%添加)、スーパーネッカリッチ2%添加飼料、または標準飼料(対照)をそれぞれ与え、ウインドレス三段高床式で3週間飼養した。ワクモのコロニーの状態の変化は、試験例3と同様にして目視観察および画像解析により評価した。各区5地点のコロニーについて、ネッカリッチ添加飼料給餌開始前と給餌開始2週間後に画像解析してワクモに対応する色のドット数を自動カウントした。各地点における、給餌開始前のドット数に対する給餌開始2週間後のドット数の割合を求め、5地点の平均値を各区におけるワクモ増減率(%)とした。結果を表4に示す。
卵生産性に対する影響:
616日齢ソニア鶏種を16羽ずつ3区に分け、スーパーネッカリッチ0.5%添加飼料(標準飼料にスーパーネッカリッチを0.5質量%添加)、スーパーネッカリッチ1%添加飼料、または標準飼料(対照)をそれぞれ与え、ウインドレス三段高床式で9週間(5〜7月)飼養した。飼養開始5週間目から製造例1で調製した木酢液を、飼育中の鶏およびケージの隙間のワクモのコロニーに霧吹きで1日1回2ml吹き付けた。木酢液吹き付け開始前の4週間および吹き付け開始後5週間において、週毎の摂食量(g)、産卵率(%)、産卵日量(g)の変化を下記のようにして求めた。試験は各区2羽ずつの8反復で行った。結果を表5に示す。
(摂食量)
1反復ごとにバケツに2kgの飼料を作り置きし、週一回残量を計測し計算した。週毎のグループ内の平均値から最少二乗法を用いた回帰分析により測定期間中の変化率を求め、摂食量の変化とした。
(産卵率)
1反復ごとに卵を採取し、週2回産卵個数を数えた。週毎の産卵個数を日数×2(羽数)で割り、グループ内の平均値から最少二乗法を用いた回帰分析により測定期間中の変化率を求め、産卵率の変化とした。
(産卵日量)
1反復ごとに卵を採取し、週2回卵の重量を計測した。週毎の産卵重量を日数×2(羽数)で割り、グループ内の平均値から最少二乗法を用いた回帰分析により測定期間中の変化率を求め、産卵日量の変化とした。
安全性テスト:
8日齢の採卵鶏用讃岐コーチン(オス)を用いて安全性テストを行った。安全性テストは、「飼料の安全性評価基準及び評価手続」(平成20年5月19日付20消安第597号農林水産省消費・***長通知)の「鶏ひなの成長試験」に従い実施した。製造例1で調製した木酢液を水で500倍(容積)、1000倍に希釈し、ひなを6羽ずつ4区に分け、1000倍希釈木酢液、500倍希釈木酢液、木酢液原液、水道水を摂取させて体重の増減及び死亡率を調べた。試験期間は8日齢を1日目として13日齢までの6日間とした。試験期間中は朝、晩の1日2回、チューブを▲素▼嚢まで入れ、被験試料1mlを直接注入した。結果を表6に示す。
ワクモの同定:
採卵鶏用実験鶏舎において採取した寄生虫について、走査型顕微鏡を用いてワクモであると同定した。吸血被害が考えられるダニ目にはワクモとトシサシダニがいるが、肛板(Anal plate)に対し下側に肛門(Anue)が位置するのがワクモであり、上側に位置するのがトリサシダニである。図1に示す通り、採取したものは、肛板に対し、肛門が下側に位置しており、ワクモであることが確認された。
木酢液の揮発成分の効果検証:
製造例1で調製した木酢液の揮発成分の効果について検証した。9mlの捕集瓶を二本連結し、片方にワクモを9匹、片方に<1>1,800μl水、<2>1,800μl木酢液<3>900μl木酢液、<4>450μl木酢液、<5>180μl木酢液、<6>18μl木酢液を入れた。この状態で37℃のプレート上に一晩おいた。捕集瓶中の液体はすべて揮発し瓶内に充満した。瓶内の揮発成分濃度に対するワクモ致死率を対数変換したものをプロットして近似直線を引き(図2)、これからLC50(半数致死濃度)を求めたところ18.9μl/cm3であった。
この結果から、木酢液に含まれる揮発成分のワクモに対する半数致死濃度は18.9μl/cm3であることを示すと同時に、ワクモの駆除液の効果を比較検証する方法を確立した。
木酢液中の粒子による効果の検証:
9ml捕集瓶に製造例1の木酢液を9ml入れ、10分程度、瓶の中を浸した後、液体のみ取り除き、その後2日間風乾させた(WV1)。20羽飼養の、採卵鶏用実験鶏舎において、ケージ上にたまった埃内のワクモのコロニーを埃ごと適量入れた。これをオートクレープを用いて120℃で20分間滅菌処理した清潔な捕集瓶(WV2)と開口部を併せて連結した。一方、清潔な捕集瓶にワクモのコロニーを同程度の量埃ごといれ(CON1)、別の清潔な捕集瓶(CON2)と同様にして連結した。
この状態で2日間暗室においたところ、WV1の埃内のワクモは忌避行動を示しWV2へ移動した。これに対し、CON1内のワクモはCON2に移動せず、CON1の埃内で活動を続けた(図3)。
この結果から、木酢液中の粒子はワクモに対し忌避作用があり、これを持続させる効果を有することが示された。
鶏体の総***孔付近の糞塊中のワクモに対する駆除効果:
500倍に希釈した製造例1の木酢液を、鶏体の総***孔付近の糞塊にいるワクモに吹付けた。吹付けは、500倍希釈木酢液を1羽あたり200mlの量で、鶏体の下から羽毛に逆らうようにして、産卵後の午前10時前後に1回、3日間にわたって行った。木酢液吹付け前後の鶏体の総***孔付近の写真を図4に示す。Aが吹付け前であり、Bが吹付け3日後の写真である。吹付け開始3日後には、鶏体上のワクモを駆除でき、産卵率も吹付け前は20羽平均で30%であったのに対し、吹付け3日後には70%に回復した。
木酢液吹付けによる産卵成績及び卵質に対する影響:
鶏体に木酢液を吹付けたことによる産卵成績、卵質に対する影響を調べた。168日齢ソニア鶏種8羽を用い、製造例1で調製した木酢液を鶏の顔に1日2回霧吹きで1mlずつ8日間吹き付けた。試験開始時及び8日後における飼料消費量(g)、産卵率(%)、産卵日量(g)、平均卵重(g)、飼料効率を下記のようにして求めた。産卵成績に関する結果を表7に示す(上段:吹付け前、下段:吹付け8日後)。
(飼料消費量)
各区ごとにバケツに2kgの飼料を作り置きし、週一回残量を計測し摂食量を計算した。測定期間中の平均値を、飼料消費量とした。
(産卵率)
各区ごとに卵を採取し、週2回産卵個数を数えた。(測定期間中の産卵数)を(飼養羽数4羽×測定期間8日)で除したものを産卵率とした。
(産卵日量)
各区ごとに卵を採取し、週2回産卵重量を計測した。(上文で求めた産卵率)×(飼養羽数4羽が測定期間中に産んだ卵の総重量)を100で除したものを産卵日量とした。
(平均卵重)
各区ごとに卵を採取し、週2回産卵重量を計測し、産卵個数を数えた。(測定期間中に産んだ卵の総重量)を(測定期間中の産卵数)で除したものを平均卵重とした。
(飼料効率)
各区ごとに卵を採取し、週2回産卵重量を計測した。また、各区ごとにバケツに2kgの飼料を作り置きし、週一回残量を計測し計算した。
(卵殻破壊強度)
富士平工業株式会社製「卵殻強度計」を用いて計測した。
(卵殻厚)
ダイヤルシックネスゲージを用いて卵殻の厚さを計測した。
(卵殻割合)
卵殻重量を卵重で除して求めた。
(アルブミン割合)
卵重から卵黄重量と卵殻重量を差し引いたものをアルブミン割合とした。
(卵黄割合)
卵黄重量を卵重で除して求めた。
(卵黄色)
ロボットメーション株式会社、東北リズム株式会社製「EGGマルチテスタ(EMT-5000)」を用いて計測した。
(ハウユニット)
ロボットメーション株式会社、東北リズム株式会社製「EGGマルチテスタ(EMT-5000)」を用いて計測した。
製造例2の固形製剤の構造解析:
製造例2で得られた樹皮炭粉末に木酢液を担持させた固形製剤について、スペクトル分析を用いた構造解析を行った。測定装置としては、エネルギー分散型X線分析装置を備える走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ、卓上顕微鏡TM3030、エネルギー分散型X線分析装置SwiftED3000)を用いた。
(1)木酢液添加前後の樹皮炭粉末について、元素分析を行った。結果を表9に示す。また、樹皮炭粉末の空孔断面を図5に示す。
ワクモの顕微鏡観察:
吸血後のワクモを捕獲し、水、500倍希釈木酢液又は木酢液原液に一日漬け込んだ後、実体顕微鏡下で観察した。さらに、2日間乾燥させた後、同様に実体顕微鏡下で観察した。それぞれの顕微鏡写真を図8に示す。A,Dは水(A:浸漬後、D:乾燥後)、B、Eは500倍希釈木酢液(B:浸漬後、E:乾燥後)、C、Fは木酢液原液(C:浸漬後、F:乾燥後)の写真である。また、木酢液原液に浸漬したものについて乾燥後解剖した(図9)。
Claims (6)
- 樹皮を乾留して得られる木酢液を有効成分として含有することを特徴とするワクモ防除剤。
- 樹皮が、カシ、シイ、タブ、キハダおよびカシワよりなる群から選ばれる1種または2種以上の広葉樹である請求項1記載のワクモ防除剤。
- 乾留の温度が380〜420℃である請求項1または2記載のワクモ防除剤。
- 請求項1〜3のいずれかの項記載のワクモ防除剤をワクモの生息場所に適用することを特徴とするワクモの防除方法。
- 請求項1〜3のいずれかの項記載のワクモ防除剤を家禽類に適用することを特徴とするワクモの防除方法。
- 請求項1〜3のいずれかの項記載のワクモ防除剤を家禽類に経口投与することを特徴とするワクモの防除方法。
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Citations (3)
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JPS62263162A (ja) * | 1986-04-30 | 1987-11-16 | チバ−ガイギ− アクチエンゲゼル シヤフト | 置換2,4−ジアミノ−5−シアノピリミジン及び該化合物を含有する有害生物防除剤 |
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2013
- 2013-12-24 JP JP2013265210A patent/JP2015003900A/ja active Pending
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Title |
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村上司: ""中規模採卵養鶏場における種々のワクモ対策の検討"", ONLINE, JPN7013004023, 2008 * |
養鶏の友, vol. No.587, JPN6017016892, 2011, pages 58-62 * |
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