本発明に基づいた実施の形態における湿式現像装置およびこの湿式現像装置を備える湿式画像形成装置について、以下、図を参照しながら説明する。以下に説明する各実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。
(実施の形態1)
以下、本実施の形態における湿式画像形成装置100について、図を参照しながら説明する。
(湿式画像形成装置100の全体構成および動作)
図1を参照して、本実施の形態に係る湿式画像形成装置100の構成を説明する。作像部は、像担持体としての感光体ドラム1、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、中間転写体5、2次転写部材6、像担持体クリーニング装置7、および、中間転写体クリーニング装置8を備える。
感光体ドラム1は、表面に感光体層(不図示)が形成された円筒形状である。感光体ドラム1は、図1中の矢印A方向に回転駆動する。感光体ドラム1の外周には、帯電装置2、露光装置3、湿式現像装置4、中間転写体5、像担持体クリーニング装置7が、感光体ドラム1の回転方向(A方向)に沿って順次配置されている。
帯電装置2は、感光体ドラム1の表面を所定電位に帯電させる。露光装置3は、感光体ドラム1の表面に光を照射し照射領域内の帯電レベルを低下させて静電潜像を形成する。湿式現像装置4は、感光体ドラム1上に形成された潜像を現像する。すなわち、感光体ドラム1の現像領域へ湿式現像剤を搬送し、その湿式現像剤に含まれるトナー粒子を感光体ドラム1の表面の静電潜像に供給してトナー像を形成する。
現像プロセスにおいては、湿式現像装置4の現像剤担持体9に電源(不図示)から現像バイアス電圧が印加される。感光体ドラム1上の潜像の電位とのバランスで生じた電界に従って現像剤中のトナー粒子が感光体ドラム1の潜像部分に静電吸着され、感光体ドラム1上の潜像が現像される。
図1に示す湿式画像形成装置100において、中間転写部は、中間転写体5、2次転写部材6、中間転写体クリーニング装置8を備える。
中間転写体5は、感光体ドラム1と対向するように配置されており、感光体ドラム1と接触しながら図中の矢印E方向に回転する。中間転写体5と感光体ドラム1とのニップ部で、感光体ドラム1から中間転写体5への一次転写が行なわれる。
一次転写プロセスにおいては、中間転写体5に、電源(不図示)から転写バイアス電圧が印加される。これにより、一次転写位置における中間転写体5と感光体ドラム1との間に電界が形成され、感光体ドラム1上のトナー像が、中間転写体5に静電吸着され、中間転写体5上に転写される。
感光体ドラム1上のトナー像が中間転写体5に転写されると、像担持体クリーニング装置7が感光体ドラム1上の残存トナー像を除去し、次の画像形成が行なわれる。必要に応じて、像担持体クリーニング装置7と帯電装置2との間にはイレーサーランプ10が設置される。
中間転写体5と2次転写部材6とは、記録材としての記録媒体11を挟んで対向するように配置されており、記録媒体11を介して接触回転する。中間転写体5と2次転写部材6とのニップ部で、中間転写体5から記録媒体11への二次転写が行なわれる。記録媒体11は、二次転写のタイミングに合わせて二次転写位置へ図中の矢印F方向に搬送される。
二次転写プロセスにおいては、2次転写部材6に、電源(不図示)から転写バイアス電圧が印加される。これにより、中間転写体5と2次転写部材6との間に電界が形成され、中間転写体5と2次転写部材6との間を通過させた記録媒体11上へ中間転写体5上のトナー像が静電吸着され、記録媒体11上に転写される。
トナー像が記録媒体11上に転写されると、中間転写体クリーニング装置8が中間転写体5上の残存トナー像を除去し、次の一次転写が行なわれる。記録媒体11は、その後図示しない定着装置へと搬送され、記録媒体11上のトナー粒子を加熱溶融してトナー粒子を記録用紙に定着させる。
図1では、感光体ドラム1と湿式現像装置4とを1組として、単色の湿式画像形成装置100を示しているが、感光体ドラム1と湿式現像装置4とを合計4組用意し、それぞれにCMYK(シアン(Cyan)、マゼンタ(Magenta)、イエロー(Yellow)、黒(Black))の各色の画像形成をさせ、中間転写体5上で重ね合わせる構成にしたカラーの画像形成装置に対しても本発明は適用可能である。その他、従来から用いられる電子写真各プロセス技術は、画像形成装置の目的に応じて任意の構成と組み合わせることができる。
(湿式現像剤の構成)
現像に用いる湿式現像剤について説明する。湿式現像剤は、溶媒であるキャリア液体中に着色されたトナー粒子を高濃度で分散している。湿式現像剤には、分散剤、荷電制御剤などの添加剤を適宜、選んで添加してもよい。
キャリア液としては、絶縁性の溶媒が用いられる。トナー粒子は、主として樹脂と着色のための顔料または染料からなる。樹脂には、顔料または染料をその樹脂中に均一に分散させる機能と、記録媒体11に定着される際のバインダとしての機能がある。
トナー粒子としては、一般に電子写真方式の湿式現像剤に用いるものであれば、特に制限することなく使用することができる。トナー粒子用結着樹脂としては、たとえばポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、その他熱可塑性樹脂を用いることができる。これらの樹脂を複数、混合して用いることも可能である。トナー粒子の着色に用いられる顔料および染料も一般に市販されているものを用いることができる。
トナー粒子の体積平均粒子径は、0.1μm以上、5μm以下の範囲が適当である。トナー粒子の平均粒子径が0.1μmを下回ると現像性が大きく低下する。一方、平均粒子径が5μmを超えると画像の品質が低下する。
湿式現像剤の調製方法としては、一般に用いられる技法に基づいて調製することができる。たとえば、結着剤樹脂と顔料とを所定の配合比で、加圧ニーダ、ローラーミルなどを用いて溶融混練して均一に分散させ、得られた分散体をたとえばジェットミルによって微粉砕する。得られた微粉末をたとえば風力分級機などにより分級することで、所望の粒径の着色トナー粒子を得ることができる。
得られたトナー粒子をキャリア液としての絶縁性液体と所定の配合比で混合する。この混合物をボールミル等の分散手段により均一に分散させ、湿式現像剤を得ることができる。
湿式現像剤に対するトナー粒子の割合は、10〜50質量%程度が適当である。10質量%未満の場合、トナー粒子の沈降が生じやすく、長期保管時の経時的な安定性に問題がある。必要な画像濃度を得るため、多量の現像剤を供給する必要があり、記録媒体11上に付着するキャリア液が増加し、定着時に乾燥せねばならず、蒸気が発生し環境上の問題が生じる。50質量%を超える場合には、湿式現像剤の粘度が高くなりすぎ、製造上も取り扱いも困難になる。
本実施の形態においては、ポリエステル樹脂を100部、銅フタロシアニン15部をヘンシェルミキサー(登録商標)で十分混合した後、ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出し機を用い溶融混練を行なう。得られた混合物を冷却、粗粉砕して粗粉砕トナー粒子を得た。
IPS2028(出光興産社製)75部、粗粉砕トナー粒子を25部、分散剤としてV216(IPS社製)を0.8部混合し、サンドミルにより4日間湿式粉砕し、湿式現像剤を得た。その時の粒径は2.0μmであった。粒径はレーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2200(島津製作所社製))にて測定した。
(現像プロセスの詳細)
上記湿式画像形成装置100を用いた湿式現像装置4における現像プロセスの詳細に説明する。湿式現像剤12が現像剤槽13中に貯められている。汲み上げ部材14は一部が湿式現像剤12中に浸漬され、図中D方向に回転する。その回転により湿式現像剤12は汲みあげられる。汲み上げ部材14に当接して設けられた規制ブレード15により、湿式現像剤12は一定の膜厚に規制される。
湿式現像剤12が規制された後、汲み上げ部材14は供給部材16に当接し、湿式現像剤12を供給部材16に受け渡す。供給部材16は現像剤担持体9の回転方向とは逆方向の図中C方向に回転しており、その方向に受け渡された湿式現像剤12を搬送する。湿式現像剤12は、その後供給部材16と現像剤担持体9との対向部にて現像剤担持体9上に受け渡される。現像剤担持体9の特徴、およびトナー粒子の帯電の詳細については後述する。
現像剤担持体9上の湿式現像剤12は、コロトロンチャージャー、帯電ローラー、その他のトナー帯電装置17によって湿式現像剤12中のトナー粒子の帯電が行なわれる。このようにトナー粒子の帯電を外部のトナー帯電装置17によって行なう方式を外部荷電方式とここでは呼ぶことにする。
一方、湿式現像剤12のトナー粒子をキャリア液との間の電荷授受で常に荷電した状態となるよう、湿式現像剤12の材料を選択しておき、プロセス中では特に荷電を付与しない非外部荷電方式のトナー帯電方法、キャリア粒子および/または部材との摩擦帯電でトナー粒子を荷電する乾式の電子写真現像剤の荷電方式も知られている。
本実施の形態で採用している外部荷電方式のメリットとしては、材料選択の時点で基本的な荷電量が決まってしまうその他方式と比べ、外部環境変化、耐久変化、紙種などに応じ、トナー粒子の荷電を最適な状態に容易に変更できる点である。
トナー粒子を帯電された湿式現像剤12は、感光体ドラム1と現像剤担持体9との対向部である現像ニップnに移動する。現像剤担持体9上に形成されたトナー層は、感光体ドラム1に当接し、感光体ドラム1上の静電潜像を現像する。
現像に使用されず現像剤担持体9上に残存した湿式現像剤12は現像クリーニング部材18により回収される。現像クリーニング部材18により回収された湿式現像剤12は元の湿式現像剤12とトナー濃度が異なるため、現像剤槽13とは別のタンク(図示せず)に回収され、トナー濃度を調整後、再び現像剤槽13に戻される。
汲み上げ部材14には、ウレタン製またはNBR製のゴムローラー、または、表面に凹部を設けたアニロックスローラーを用いることができる。供給部材16には、ウレタン製またはNBR製のゴムローラーを用いることができる。供給部材16なしで、汲み上げ部材14が供給部材16を兼ねてもよい。
本実施の形態では、現像剤担持体9、湿式現像剤12、現像剤槽13、汲み上げ部材14、規制ブレード15、供給部材16、および現像クリーニング部材18により湿式現像装置4を構成しているが、すべてが必須の構成ではない。湿式現像装置は、現像剤担持体9を備え、感光体ドラム1上の静電潜像を画像に現像する構成であればよい。
本実施の形態に示した湿式現像装置4内の各のローラー間の相対的な回転方向の関係が異なる形態でも、後述する本実施の形態の特徴部分である現像剤担持体9の構成は有効である。
(現像剤担持体9の抵抗ムラとトナー荷電との関係について)
図2(A)、(B)を参照して、現像剤担持体9の抵抗ムラとトナー荷電との関係について説明する。本実施の形態では現像剤担持体9として金属等の基材上に弾性層を設けて一定の導電性を付与した弾性導電性ローラーが用いられる。そのような導電性弾性ローラーは、ポリウレタンなどの弾性部材にカーボン、金属粒子などの導電性粒子を一定部数含有させて導電性を付与することで作成される。
従来の湿式画像形成装置に用いられてきた導電性弾性体においては、現像剤担持体9として用いた場合、他のローラーまたは部材、たとえば図1の供給部材16、感光体ドラム1、および現像クリーニング部材18といった周辺部材との接触によって圧縮が生じた際には、導電性(電気抵抗)が変化することが知られている。
これは、図2(A)から(B)に示すように、圧縮時の変形(図中の矢印F方向)によって、湿式現像剤12の層厚さが変化(h1→h2)し、湿式現像剤12に含有された導電性粒子であるトナー粒子12aの間の距離が変わるためである。ここで、図2中において、湿式現像剤12は、トナー粒子12aとキャリア液12bとを含んでいる。
図3に示すように、湿式現像剤12の導電性が変化すると、その部分の抵抗が圧縮を解除した後も抵抗変化が履歴として一部残ってしまういわゆるヒステリシスを持つことも知られている。
このような材料を上記のように湿式画像形成装置100における現像剤担持体9に使用すると、停止時などに周辺部材との接触によって圧縮していた所などにヒステリシスが残り、現像剤担持体9上に一部のみ抵抗の低い部分が発生してしまう。このような状態で、湿式現像装置4内でトナー帯電装置17によってトナー帯電を行なうような湿式画像形成装置100においてトナー粒子を帯電させると、次のような課題があることが分かった。
その課題の説明に先立ち、トナー帯電装置17によって帯電された、湿式現像剤12中のトナー粒子12aの帯電について説明する。トナー帯電装置17によって帯電されたトナー粒子12aの帯電量は時間とともに減少していく。この現象の様子は現像剤担持体9の金属基体を接地して基準とし測定したトナー粒子12aの表面電位によって間接的に把握することができる。
図4に示す湿式現像装置4の構成で、トナー帯電装置17の通過後に現像剤担持体9の回転を停止することでトナー層の表面電位が時間とともにどのように推移するかを表面電位計19によって測定する。その結果を図5に示す。
図5に示すように、トナー帯電装置17によって荷電されたトナー粒子12aが時間とともにその電位を失っていく過程が表面電位の減衰として観測される。このようなトナー荷電の減衰挙動はトナー粒子12aの帯電を外部のトナー帯電装置17によって行なう外部荷電方式の特徴である。
トナー帯電装置17によって荷電されたトナー粒子12aの帯電量の低下の程度は1つには用いるトナー粒子12aの特性によるものである。しかし、それ以外に、現像剤担持体9の抵抗によっても変化する。
図6および図7に、抵抗値の異なる現像剤担持体9を用いた場合の、トナー層表面電位の減衰特性を示す。両者の違いは、図7は図6のデータを横軸対数プロットに変更して表現したものである。
ローラーの抵抗値はそれぞれ、2.6×106Ω・cm2、3.2×107Ω・cm2、3.1×108Ω・cm2であった。便宜上、それぞれのローラーを、「抵抗6乗ローラー」、「抵抗7乗ローラー」、「抵抗8乗ローラー」と呼ぶ。各現像剤担持体9の抵抗値の測定は後述する方法にて測定した。
これらを踏まえ、湿式現像装置4内でトナー帯電装置17によってトナー帯電を行なう湿式画像形成装置において、停止時などに周辺部材との接触によって圧縮していた所などにヒステリシスが強く残り、現像剤担持体9上に一部のみ抵抗の低い部分が発生してしまうことに伴う課題を説明する。
図6を参照して、ローラーの抵抗が変わると、トナー粒子12aの荷電減衰特性が変化している。これは、ローラーの抵抗自体を大きく変化させた場合の例であるが、ここまで大きな変動ではなくとも、上記した圧縮解放のヒステリシスによって1本のローラーの中に1部抵抗の低い部分が発生すると、その部分の抵抗が低下し、トナー粒子12aの荷電が局所的に低下してしまうことが考えられる。
そのことを示すため、現像剤担持体9を感光体ドラム1に一定時間停止状態で圧接したのちに画像形成を行ない、圧接していた部分にトナー粒子12aの濃度低下に伴う悪影響が発生するかどうか確認した。この実験では、圧縮解放によるヒステリシスによる抵抗ムラが引き起こす問題を確認するためのものなので、現像剤担持体9として、本実施の形態の現像剤担持体9とは異なり、導電性弾性層が1層のみで構成された現像剤担持体9を使用した。
その結果、現像剤担持体9が圧接されていた部分に対応して、画像濃度が濃くなる現象(濃度ムラ)を確認した。これは圧縮されていた部分の抵抗が低下したことでその部分に担持搬送されていたトナー粒子12aの現像ニップnへの到達時点での帯電量が低下し、潜像電位と現像バイアスの差である現像電位差を埋めるのに必要なトナー量が増加して画像濃度が濃くなったと考えられる。
すなわち、湿式現像装置4内でトナー帯電装置17によってトナー帯電を行なうような湿式画像形成装置において、圧縮・解放による抵抗変動のヒステリシスが残るようなローラーを現像剤担持体9として用いると、画像にトナー粒子の荷電ムラに起因する濃度ムラが発生するという問題が生じる。
(本実施の形態の現像剤担持体9の構成)
図8(A),(B)を参照して、本実施の形態においては、特に現像剤担持体9に用いられる導電性ローラーの感圧導電特性に伴うヒステリシスの影響をなくし、画像形成時の抵抗ムラの発生を回避するため、現像剤担持体として以下のような構成を採用する。
現像剤担持体9として、弾性層として複数の弾性層を設け、各弾性層の構成としてはポリウレタンなどの樹脂材料にカーボン、金属粒子などの導電性粒子を一定部数含有させて特定の導電性を付与する。その際、そのうちの第1層は弾性層として像担持体(感光体ドラム1など)との間でニップを形成できるよう、弾性を持たせた低硬度弾性層とし、第2層は低硬度弾性層に比べて弾性を抑えあるいは実質的に弾性のない高硬度弾性層とする。
各層の電気抵抗については、低硬度弾性層である第1層の抵抗が高硬度弾性層である第2層の抵抗に対して低くなるよう設定し、実質的に第2層(高硬度弾性層)の抵抗がローラー抵抗を規定するようにしておく。
たとえば、第1層(低硬度弾性層)の抵抗を、単位面積当たり(深さ方向全体で)105Ω・cm2、第2層(高硬度弾性層)の抵抗を、単位面積当たり(深さ方向全体で)107Ω・cm2というように差をつけておく。
このような構成を採ることで、第1層(低硬度弾性層)が変形することでローラー全体としては弾性が得られ、像担持体(感光体ドラム1など)の周辺部材との間でニップを形成することができる。
一方、現像剤担持体9の抵抗に関しては、ローラーの層方向の総抵抗は第1層(低硬度弾性層)および第2層(高硬度弾性層)の和で決定されるため、従来の課題であった弾性層(低硬度弾性層)の変形に伴う抵抗ムラが発生したとしても、ローラーの層方向の総抵抗は実質的に変形がなく、かつ抵抗の高い第2層(高硬度弾性層)の抵抗で規定されて実質的に抵抗ムラが生じない。
具体的に第1層(低硬度弾性層)および第2層(高硬度弾性層)の抵抗が上記の数字の場合を仮定してこのことを説明すると、第1層(低硬度弾性層)の一部の抵抗が圧縮解放に伴うヒステリシスで105Ω・cm2からたとえば30%低下したとしても、現像剤担持体9の層方向の総抵抗は非ヒステリシス発生部分では、107Ω・cm2+105Ω・cm2=1.01×107Ω・cm2、ヒステリシス発生部分では、107Ω・cm2+105×(1−0.3)=1.007×107Ω・cm2と実質的にほとんど変動が生じず、抵抗ムラも生じない。その結果、従来課題であったトナー粒子12aの荷電ムラを、本実施の形態の現像剤担持体9によって回避することが可能になる。
以上、本実施の形態の現像剤担持体9の特徴部分について記載してきたが、それを構成するための材料等については以下のようなものが挙げられる。現像剤担持体9の基体9aの材質としては、たとえば、アルミ系あるいはステンレス系あるいは鉄系などの金属材料、それらの合金を用いることができる。
第1層(低硬度弾性層)に用いる弾性材料としてはシリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴム材料、ポリウレタン、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化樹脂の発泡体、あるいはポリエチレン、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂のゴム発泡体などの発泡材料が例として挙げられる。
第2層(高硬度弾性層)に用いる樹脂材料としてはポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポルスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂材料を例として挙げられる。
第1層(低硬度弾性層)および第2層(高硬度弾性層)への導電性付与に用いられるフィラーとしては、ケッチンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラック、金属粉、金属酸化物の微粒子等、あるいはそれらの混合物が挙げられる。
複層構成の作成方法としては、たとえば、次のような方法が挙げられる。基体をセットした金型中に上記第1層(低硬度弾性層)の原料を注入する。反応、冷却によって固化させた後脱型することで基体の外周に第1層(低硬度弾性層)を周設する。さらに所定の厚みになるよう表面研磨を行なう。
次に、上記の第2層(高硬度弾性層)の原料を溶液中に希釈したものに先のローラーをディッピングして第1層(低硬度弾性層)の上に第2層(高硬度弾性層)の材料を塗布し、それを乾燥させることで現像剤担持体9を得ることができる。
ただしここに挙げた方法は一例であり、従来知られている別の方法で本実施の形態に規定の構成の現像剤担持体9が得られる場合、その方法を用いてもよい。
実際の使用においては、抵抗と硬度の大小以外に、表層と弾性層を合わせた現像剤担持体9としての総抵抗が高すぎると連続で画像形成したときに現像剤担持体9の表面がチャージアップし、連続画像形成において全体の濃度が経時変化していくなどの不具合が発生する。
特に、第2層(高硬度弾性層)にフィラーを導入せず、実質的に絶縁性としてしまうとチャージアップした電荷が全く減衰されず、実用に堪えない。フィラーを加え、一定の導電性を付与する必要がある。
一方、現像剤担持体9の総抵抗が低すぎると、電圧印加の瞬間にスパイク電圧が加わる場合など現像剤担持体9と感光体ドラム1との間にリークが発生した際、リーク電流が大きく流れ、リーク経路となった感光体ドラム1の箇所にスポット状の特性不良が発生する原因となる。そのため、望ましくは現像剤担持体9のローラーの層方向の総抵抗は単位面積当たり6〜8乗Ω・cm2の値になるよう調整するのが望ましい。
図8(A)に示すように、第1層(低硬度弾性層)9bと第2層(高硬度弾性層)9cの位置関係として、第1層(低硬度弾性層)9bを内側(基体9a側)、第2層(高硬度弾性層)9cを外側に配置する構成、または、図8(B)に示すように、第2層(高硬度弾性層)9cを内側(基体9a側)、第1層(低硬度弾性層)9bを外側に配置する構成のいずれの採用も可能である。実際の使用においては、図8(A)に示す、第1層(低硬度弾性層)9bと第2層(高硬度弾性層)9cの位置関係として、第2層(高硬度弾性層)9cを外側に設定した方が、現像剤担持体9の耐久性が向上するため好ましい。
以上は現像剤担持体(現像ローラー)9として本実施の形態のローラーを適用した場合について説明してきたが、上記ローラー部材上にトナー粒子を搬送し、そのうえでコロナチャージャーなどの荷電付与部材でトナー粒子を外部荷電するような構成であれば、中間転写体として同様の構成のローラーを用いた場合でも同じ効果が期待できる。
(ローラー抵抗の測定方法)
ローラー抵抗(現像剤担持体9の抵抗)の測定は以下の方法で行なった。圧縮解放による導電性の変化(ヒステリシス)の影響を排除するため、無負荷の状態で十分時間を経過した現像剤担持体9を平面の金属板に0.4N/cm2程度の弱い力で接触させ、金属板との間でニップを形成した。
その状態で現像剤担持体9の基体(芯金)9aと金属板との間にV=100Vの電圧を印加し、電流I[A]を測定した。別途金属板との間のニップ面積S[cm2]を測定し、以下の式1に基づき、ローラー表面単位面積当たりの基体からの抵抗値Rを導いた。
単位面積当たりの抵抗値 R=[V/I]×S・・・(式1)
この式から、ニップ面積および現像剤担持体9の弾性層の厚みに左右されない、単位面積当たりの厚み方向を通しての抵抗値が導かれる。この値がトナー荷電の現像剤担持体9の基体9aへの電流の流れ込みを、現像剤担持体9の弾性層がどの程度阻害するかの指標となる。単位は[Ω・cm2]である。
(実施の形態2)
以下、実施の形態2における湿式画像形成装置100について説明する。本実施の形態では、湿式現像剤12として、外部荷電したあとのトナー帯電の減衰が、減衰の早い第1の減衰過程と減衰の遅い第2の減衰過程とをもつような現像剤を用い、トナー帯電装置通過から現像ニップnまでの時間として、トナー粒子の荷電減衰が第一の減衰過程の間であるような構成を採用している。
(本実施の形態の湿式現像剤12の特徴)
図9、10は本実施の形態の湿式画像形成装置100に用いる湿式現像剤12のトナー層表面電位の減衰特性を示したものである。実施の形態1で用いた湿式現像剤12の場合(図6、図7参照)と同様に、抵抗の異なる現像剤担持体9を用いた場合も含め示してある。
本実施の形態で用いた現像剤担持体9は、上記実施の形態で説明した第1層(低硬度弾性層)および第2層(高硬度弾性層)を有している。現象面から考えて、同様の抵抗の現像剤担持体であればトナー帯電の減衰過程は同じになると考えられる。
現像剤担持体の抵抗はそれぞれ、3.3×106Ω・cm2、2.5×107Ω・cm2、3.0×108Ω・cm2であった。便宜上、それぞれのローラーを「抵抗6乗ローラー」、「抵抗7乗ローラー」、「抵抗8乗ローラー」と呼ぶ。各現像剤担持体の抵抗の測定は実施の形態1で説明した方法にて測定した。図9および図10のグラフの違いは、図10は図9のデータを横軸対数プロットに変更して表現したものである。
図7と図10とを比較すると、図7に示す実施の形態1の湿式現像剤を用いた場合、トナー粒子の減衰は横軸対数で見た場合直線的に減少していく。一方、図10に示す、本実施の形態の湿式現像剤を用いた場合、(負の)傾きの大きい第1直線部(第1の減衰過程)と、(負の)傾きの小さい第2直線部(第2の減衰過程)の2過程に分かれて減衰が起こっている。
すなわち、本実施の形態のトナー粒子は、初めに非常に早いトナー荷電の減衰が起こり、一定時間の後、残りのトナー荷電がゆっくりと減衰していくという減衰過程をたどる。このような特性を以下「2段減衰特性」と呼ぶ。
このような特性となる湿式現像剤の別の特徴として、以下のようなことが分かっている。図11および図12は、湿式現像剤に対するトナー荷電装置による帯電を、キャリア液を含む通常の状態で行なった場合と、キャリア液を揮発させてトナー層のみに対して行なった場合とを、実施の形態1の湿式現像剤と本実施の形態の湿式現像剤とのそれぞれの場合で示したものでる。図11が実施の形態1の湿式現像剤の場合、図12が本実施の形態の湿式現像剤の場合である。
実施の形態1の湿式現像剤(図11)では、キャリア液揮発後も多少の値の低下(キャリア液がなくなったことで実質的なトナー層厚みが若干変化したことによると考えられる)はあるものの、トナー層の表面電位は観測され、トナー層が現像剤の状態と同様、絶縁性を持って存在していることが確認できる。
一方、本実施の形態の湿式現像剤(図12)では、キャリア液揮発後はほとんどトナー層の表面電位が観測されず、キャリア液がない状態ではトナー粒子が帯電できないという特徴を持っていることが分かる。
実施の形態1で用いたトナー粒子はトナー粒子は実質的に絶縁性の物質から構成されていたのに対し、実施の形態2で用いたトナー粒子は導電性を有している。実施の形態2で用いたトナー粒子の場合は、乾燥状態でトナー粒子の表面に直接トナー荷電装置によって荷電した場合には与えた電荷がトナーバルクを通って速やかに散逸してしまっているためと考えられる。
本実施の形態で用いたトナー粒子は、キャリア液の存在により、トナー荷電装置によって与えられた電荷はすぐにトナー粒子に直接触れず、一定の(極短い)距離を置きながらトナー粒子の周囲にまとわりついたような状態でトナー粒子と一体となっていると考えられる。
第1の減衰過程は、比較的電荷が散逸しやすいトナーバルクを何らかの経路から伝って通って電荷が減衰していく現象を表していると考えられる。一方、第2の減衰過程はトナーバルクを通じずに減衰していくような実施の形態1で用いたトナー粒子と共通の減衰現象を表していると考えられる。
このような特徴を持つトナー粒子を、我々は以下のような製法により得た。実施の形態1においてトナー原料として用いた、ポリエステル樹脂を100部、銅フタロシアニン15部に加え、トナーバルクに一定の導電性を持たせるため、イオン導電剤1部を添加し、ヘンシェルミキサー(登録商標)で十分混合した後、ロール内加熱温度100℃の同方向回転二軸押出し機を用い溶融混練を行ない、得られた混合物を冷却、粗粉砕して粗粉砕トナー粒子を得た。
その他については実施の形態1と同様に、IPS2028(出光興産社製)75部、粗粉砕トナー粒子を25部、分散剤としてV216(IPS社製)を0.8部混合し、サンドミルにより4日間湿式粉砕し、湿式現像剤を得た。その時のトナー粒子の粒径は、2.0μmであった。トナー粒子の粒径はレーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−2200(島津製作所社製))にて測定した。
(本実施の形態のトナー粒子を用いた場合のメリット)
図1および図13を参照して、このような2段階減衰特性を持つトナー粒子を本実施の形態の現像剤担持体(2層構造)と組み合わせて用いた場合のメリットについて説明する。
現像時のトナー粒子12aの荷電量は、初期的にトナー帯電装置17によって与えた電荷量と、トナー帯電装置17によるトナー粒子12aの帯電から現像ニップnまでの時間が経過したときまでの減衰によって決まる。
装置レイアウトと現像剤担持体9の周速からトナー粒子12aの帯電から現像ニップまでの時間は決まるため、荷電量の調整は主にトナー帯電装置17からトナー粒子12aへ与える電流量によって調整される。トナー帯電装置17にコロトロンチャージャーを用いた場合はワイヤー電流からケーシングに流れ込む電流を差し引いた値がトナー粒子12aへ与える電流量(電荷量)となる。
図13に示した通り、本実施の形態のトナー粒子12aでは,荷電直後は荷電減衰の早い第1の減衰過程に従って減衰する。本実施の形態では、トナー粒子12aの帯電から現像ニップnまでの時間を、第1の減衰過程の間に設定することとしている。そのような設定ではトナー粒子12aは現像前後の間も帯電量がどんどん減衰していくこととなる。
再び図1を参照して、現像ニップnの通過後は現像されずに現像剤担持体9上に残った現像残トナーを現像クリーニング部材18にて回収することとしている。この現像クリーニング部材18での回収は、現像クリーニング部材18の当接部でトナー粒子を掻き取ることによって行なわれる。この工程はトナー粒子12aの帯電量が低いほど、トナー粒子12aの静電的付着力が小さくなるため行ないやすい。
本実施の形態のように、トナー粒子12aの帯電から現像ニップnまでの時間を第1の減衰過程の間に設定することにより、現像時に所定の帯電量をもったトナー粒子12aが、現像前後の間も帯電量がどんどん減衰していくことで現像クリーニング部材18との当接部に到達するまでにクリーニングに適した低荷電のトナー粒子12aへと変化する。その結果、現像クリーニング部材18の当接圧力を低く設定することができる。これにより、現像クリーニング部材18および現像剤担持体9の長寿命化に繋がる。
しかし、減衰の早い第1の減衰過程の間にトナー粒子12aの現像を行なうことは、現像剤担持体9の抵抗ムラの影響が大きいところで現像を行なうことになる。図13において、仮に±1/3乗程度の抵抗ムラが発生した場合のトナー荷電量のムラの程度を、0.1秒時点(第1の減衰過程領域)および0.6秒時点(第2の減衰過程領域)それぞれで示している。
0.1秒時点でのムラの程度は非常に大きいものになることが確認できる。図14において、2段減衰特性を持たないトナー粒子(実施の形態1のトナー粒子)でも同様の図示をしているが、同じ0.1秒時点でほぼ同じ50Vのトナー帯電量になる場合でも、2段減衰特性のトナー粒子の方が、荷電減衰が緩やかな通常のトナー粒子に比べ、トナー荷電量のムラに繋がりやすいことが分かる。
しかしながら現像剤担持体9として実施の形態1で示した2層構造を用いた場合は、このような大きな抵抗ムラが発生しないため、第1の減衰過程に現像ニップnまでの時間を設定しても、荷電ムラを生じることなく使用することができる。
以上、実施の形態1で説明した現像剤担持体9と実施の形態2で説明した2段減衰特性を持つようなトナー粒子を組み合わせて使い、第1の減衰過程中に現像を行なうよう設定することで、第1の減衰過程の減衰の早さを活かして現像ニップnの通過後、現像クリーニング時のトナー粒子の荷電量を抑えることができる。
さらに、第1の減衰過程の早さの悪影響である現像剤担持体9の抵抗ムラの発生し易さを、実施の形態1で説明した現像剤担持体9の2層構造の現像剤担持体9の特徴である抵抗ムラが発生し難い特性よって補完することができる。その結果、クリーニング性の向上、それに伴う部材耐久性の向上、および、画像の濃度ムラの解消を実現させることが可能になる。
(実施の形態3)
実施の形態3における湿式画像形成装置100について説明する。本実施の形態では、実施の形態2で説明した減衰過程が2段階となるトナー粒子を用いるが、トナー帯電装置17から現像ニップnまでの時間は、第2の減衰過程とする。
このような設定を採用すると実施の形態2で説明したような現像クリーニング時にトナー荷電が低下電荷しているというメリットは失われる。しかし、荷電の減衰が安定していることで駆動ムラ(ローラー回転の速度ムラ)などによってトナー帯電装置から現像ニップnまでの時間に微小なむらが生じた時でも、それがトナー粒子の荷電ムラ、ひいては画像の濃度ムラに繋がることがなくなる。
抵抗ムラに起因する荷電ムラを本実施の形態の現像剤担持体9を用いることで解消し、駆動ムラに起因する荷電ムラを減衰過程が2段階となるトナー粒子12aを本実施の形態の設定で使用することで、荷電ムラに起因する濃度ムラを解消できる。
(実施例)
上記各実施の形態の形態における湿式画像形成装置100の効果を確認するために、後述する各実施例、比較例の条件で実験を行なった。
実験手順としては、図1に示す湿式画像形成装置100を用い、現像剤担持体9を像担持体に8時間以上圧接状態で放置した後、図15に示す、一面塗(ベタ)とハーフトーンとの2種類のチャートが通紙方向にわたって続くような画像パターンを出力し、圧接部に対応した現像剤担持体周期の濃度ムラが発生するかどうかを目視により確認した。
現像剤担持体9の外径はφ100である。トナー帯電装置17中心と現像ニップnの中心の現像剤担持体9の中心を挟んでなす角は45°に、トナー帯電装置17中心と現像クリーニング部材18の当接部が現像剤担持体9中心を挟んでなす角は180°になるようレイアウトした。
現像剤担持体9の周速をv[mm/s]とすると湿式現像剤がトナー帯電装置17直下を通過してからの時間は、現像ニップnまでは、(100×π×45/360)/v[sec]、現像クリーニング部材18の当接部までは、(100×π×180/360)/v[sec]となる。
トナー粒子12aの帯電量については上記現像タイミングでのトナー層表面電位が50V前後となるよう、トナー粒子12aの種類および現像剤担持体9の周速に応じてトナー帯電装置17の電流を調整した。
現像剤槽13中のトナー濃度は25%に調整し、現像剤担持体9上の湿式現像剤12の搬送量は6g/m2になるよう調整した。現像部のバイアスとしては、現像剤担持体9に印加するバイアスは400V、感光体ドラム1(像担持体)の非画像部電位は600V、画像部電位は20Vであった。
各条件で現像部クリーニング部材の当接圧を変化させ、現像残トナーのクリーニング不良が発生する限界のクリーニング部材圧接力(限界クリーニング圧)と、その限界クリーニング圧で連続耐久試験した時のクリーニング不良発生枚数を確認した。
(比較例1)
比較例1では現像剤担持体9として2.5×107Ω・cm2に調整された単層の弾性層からなるローラーを用いた。弾性層の厚みは3mm、硬度はデュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度で30度とした。トナー粒子12aとしては実施の形態1で示した荷電減衰特性が2段減衰特性ではないトナー粒子を用いた。
現像剤担持体9の周速は400mm/sに設定した。トナー帯電装置17〜現像ニップn間の時間は0.10秒、トナー帯電装置17〜現像クリーニング部材18の当接部間の時間は0.39秒になる。
これらの条件下で、トナー帯電装置17の電流を調整した結果、トナー帯電装置17の電流は120μAとし、現像時トナー層電位は54Vとした。周速との関係から算出したその時の面積当たり供給電荷量は1000μC/m2である。この電流設定のときの現像クリーニング時トナー層電位は49Vであった。
(比較例2)
比較例2では、現像剤担持体9として比較例1と同じ単層の弾性層からなるローラーを用い、トナー粒子12aとしては比較例1と異なり、実施の形態2で示した荷電減衰特性が2段減衰特性のトナー粒子12aを用いた。現像剤担持体9の周速については、トナー帯電装置17〜現像ニップn間の時間が第1の減衰過程に入るよう、400mm/sに設定した。この時、トナー帯電装置17〜現像ニップn間の時間は0.10秒、トナー帯電装置17〜現像クリーニング部材18の当接部間の時間は0.39秒になる。一方、第1の減衰時間は0.35秒であった。
これらの条件下でトナー帯電装置17の電流を調整した結果、トナー帯電装置17の電流は120μA、その時の現像時トナー層電位は52Vであった。周速との関係から算出したその時の面積当たり供給電荷量は1000μC/m2である。この電流設定のときの現像クリーニング時トナー層電位は23Vであった。
(実施例1)
実施例1では現像剤担持体9として弾性層が2層構成の現像剤担持体を用いた。下層の第1層(低硬度弾性層)は厚み3mm、デュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度で30度に調整した。表層に第2層(高硬度弾性層)を塗布する前に、第1層(低硬度弾性層)のみでの電気抵抗を測定したところ、4.8×105Ω・cm2であった。
第1層(低硬度弾性層)の上に30μmの厚みになるよう第2層(高硬度弾性層)を塗布した。別途バルクで測定した第2層(高硬度弾性層)の材料としての硬度はデュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度で85度であった。第2層(高硬度弾性層)塗布後のローラーの電気抵抗は2.3×107Ω・cm2であった。第1層(低硬度弾性層)のみの電気抵抗との差異から、ほぼこの値が第2層(高硬度弾性層)の電気抵抗とみなすことができる。
トナー粒子12aとしては,比較例1と同じトナー粒子を用い、現像剤担持体9の周速も同じ400mm/sに設定した。
これらの条件下でトナー帯電装置の電流を調整した結果、トナー帯電装置17の電流は比較例1と同じ120μA、その時の現像時トナー層電位は54Vであった。周速との関係から算出したその時の面積当たり供給電荷量は1000μC/m2である。この電流設定のときの現像クリーニング時のトナー層電位は49Vであった。
(比較例3)
比較例3は、実施例1の構造において、現像剤担持体9として、内側に第2層(高硬度弾性層)を設け、外側に第1層(低硬度弾性層)を設けたものである。比較例3は比較例1と同様に、トナー荷電が減衰せず、しかも表層材料が低硬度のため、表面研磨してもRzが大きいため、限界クリーニング圧を下げることができず、その結果、耐久性能も低いものであった。
(実施例2〜5)
実施例2〜5は、現像剤担持体9の全体抵抗値の適正範囲に関する実施例である。全体抵抗値が6乗Ω・cm2を切ると、現像剤担持体9と感光体ドラム1との間でリークが発生し感光体ドラム1上に不規則にスポット状の特性不良が発生した。その結果、特性不良に対応する場所で感光体ドラム1に黒点(ボイド)が周期的に発生した。全体抵抗値が8乗Ω・cm2を超えると(実施例5は、全体抵抗値が9乗Ω・cm2)、現像剤担持体9がチャージアップし、連続駆動の際、画像部濃度が濃くなるとともに非画像部へのかぶりが発生した。
(実施例6)
実施例6は、実施例1と同様の構成において、第2層(高硬度弾性層)と第1層(低硬度弾性層)との抵抗差が10倍以下になった場合に関する実施例である。第2層と第1層との抵抗差が小さいため、全体抵抗に占める低硬度弾性層の抵抗がやや高まり、ほぼ認識不可なレベルだが、若干の画像ムラが発生した。画像ムラのレベルについては、以下に濃度ムラ評価法を説明する。
(実施例7〜11)
実施例7〜11は、実施例1の構成において、第1層(低硬度弾性層)および第2層(高硬度弾性層)の各層の硬度に関する実施例である。第2層(高硬度弾性層)のデュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度が70度以下、あるいは第1層(低硬度弾性層)のデュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度が40度以上になると第2層(高硬度弾性層)の変形が生じ、第2層(高硬度弾性層)の抵抗変化によって濃度ムラが発生する。さらに第2層(高硬度弾性層)のデュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度が70度以下かつ第1層(低硬度弾性層)のデュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度が40度以上になると画像ムラの程度がやや悪化している。
(実施例12)
実施例12ではトナー粒子12aとして実施の形態2で示した荷電減衰特性が2段減衰特性のトナー粒子を用いた。現像剤担持体9の周速は、トナー帯電装置17〜現像ニップnの間の時間が第2の減衰過程に入るよう、80mm/sの低速に設定した。この時、トナー帯電装置17〜現像ニップn間の時間は0.49秒、トナー帯電装置17〜現像クリーニング部材18の当接部間の時間は1.96秒になる。一方、第1の減衰時間は0.35秒であった。
これらの条件下でトナー帯電装置17の電流を調整した結果、トナー帯電装置の電流は48μA、その時の現像時トナー層電位は49Vであった。周速との関係から算出したその時の面積当たり供給電荷量は2000μC/m2である。この電流設定のときの現像クリーニング時のトナー層電位は37Vであった。
(実施例13)
実施例13では実施例12と同様に、トナー粒子12aとして実施の形態2で示した荷電減衰特性が2段減衰特性のトナー粒子を用い、かつ現像剤担持体9の周速については、トナー帯電装置17〜現像ニップ間の時間が第1の減衰過程に入るよう、400mm/sに設定した。
この時、トナー帯電装置17〜現像ニップn間の時間は0.10秒、トナー帯電装置17〜現像クリーニング部材18の当接部間の時間は0.39秒になる。一方、第1の減衰時間は0.35秒であった。
これらの条件下でトナー帯電装置17の電流を調整した結果、トナー帯電装置17の電流は120μA、その時の現像時トナー層電位は52Vであった。周速との関係から算出したその時の面積当たり供給電荷量は1000μC/m2である。この電流設定のときの現像クリーニング時トナー層電位は22Vであった。
(実施例14)
実施例14では実施例13と同様、トナー粒子12aとして実施の形態2で示した荷電減衰特性が2段減衰特性のトナー粒子を用い、かつ現像剤担持体9の周速については、さらに速くし800mm/sに設定した。この時、トナー帯電装置17〜現像ニップn間の時間は0.05秒、トナー帯電装置17〜現像クリーニング部材18の当接部間の時間は0.20秒になる。一方、第1の減衰時間は0.35秒であった。
これらの条件下でトナー帯電装置17の電流を調整した結果、トナー帯電装置17の電流は160μA、その時の現像時トナー層電位は48Vであった。周速との関係から算出したその時の面積当たり供給電荷量は667μC/m2である。この電流設定のときの現像クリーニング時トナー層電位は23Vであった。
(比較例4)
比較例4は、実施例13の構造において、現像剤担持体9として、内側に第2層(高硬度弾性層)を設け、外側に第1層(低硬度弾性層)を設けたものである。比較例4は比較例2と同様に、トナー荷電は減衰しているものの、表層材料が低硬度のため、表面研磨してもRzが大きいため、限界クリーニング圧を下げることができず、その結果、耐久性能も低いものであった。
(濃度ムラ評価法)
図15に、画像ムラの評価に用いるチャートを示す。一面印刷(ベタ塗)およびハーフトーン印刷のそれぞれで、画像ムラ発生部とその隣接する箇所の反射濃度を測定し、その差を画像ムラの程度の指標とした。
ランクとしてはいずれかの濃度差が0.03以下の場合(認識不可)を評価「A」、濃度差が0.03〜0.06以下の場合(ほぼ認識不可)を評価「B」、0.06〜0.1(やや分かるも問題なし)の場合を評価「C」、1.0以上を「D」(ムラとして認識される)とした。画像ムラの測定、メモリーの評価とも測定にはX−Rite社製濃度計「X−Rite310」を用いた。
(評価)
比較例1から4および実施例1〜14の評価結果を図16および図17に示す。比較例1と実施例1との比較から、現像剤担持体9として単層のものを用いた比較例1では画像ムラが発生しているのに対し、2層構成の本実施の形態の現像剤担持体9を用いた実施例1ではヒステリシスに伴う抵抗ムラが発生しないため、画像ムラが解消されている。
一方、比較例1および実施例1どちらの場合も、クリーニング時のトナー層電位は49Vと現像時からほとんど減衰しておらず、限界クリーニング圧も35N/mと高めであった。その限界クリーニング圧で連続耐久試験した時のクリーニング不良発生枚数は、比較例は195k、実施例1は、110kといずれも短かった。
比較例2では,トナー粒子12aの荷電は低下しているものの、表層が低硬度弾性層のためクリーニング性が悪く、結果的に限界クリーニング圧を下げることができずクリーニング耐久枚数も低いままであった。
2段減衰特性を持つトナー粒子を用いた実施例12〜14と、2段減衰特性ではないトナー粒子を用いた実施例1〜11との比較から、いずれの場合も2層構成の現像剤担持体9を用いており画像ムラは解消している。しかし、クリーニング時のトナー層電位、限界クリーニング圧、クリーニング不良発生枚数に差が生じた。
特に、2段減衰特性をもつトナー粒子の場合、第1の減衰過程で現像が行なわれるよう設定した実施例13および実施例14では、クリーニング時のトナー層電位が20V程度まで減衰しており、それに伴って限界クリーニング圧も10N/mと低めであった。その限界クリーニング圧で連続耐久試験した時のクリーニング不良発生枚数も実施例13は610k、実施例14は550kと長寿命となった。
一方、トナー粒子12aは、2段減衰特性を持つものの、第2の減衰過程で現像が行なわれるよう設定した実施例12では、クリーニング時のトナー層電位が37Vと実施例13、14の場合ほど減衰しておらず、限界クリーニング圧も30N/mであった。その限界クリーニング圧で連続耐久試験した時のクリーニング不良発生枚数も、220kであった。
現像剤担持体9は感光体との接触によって一定幅以上の現像ニップnを形成する必要があるため全体としての硬度はデュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度で40度以下程度の低硬度が求められる。単層の現像剤担持体を用いた場合、当然表層硬度も同じデュロメータ硬さ試験(JIS K6253, ISO7169-1)A型に従って測定したゴム硬度でA40度以下になる。
クリーニングを容易にするには、表面粗さRzをトナーの平均粒径以下まで下げることが有効である。しかし、そのような低硬度の弾性材料では表面研磨してもRzを湿式現像装置に用いられるトナー粒子のサイズ(2μm程度)まで高めることが困難である。
そのため、比較例2では、荷電減衰特性が2段減衰特性のトナー粒子12aを用い、トナー粒子の荷電が低下しているにもかかわらず、クリーニングのためには現像クリーニング部材18を強く押し当てる必要があり、クリーニング耐久枚数も低いままである。
現像剤担持体9として硬度の異なる2層以上の構成とし最表層を高硬度弾性層とすることで、全体硬度が低硬度で現像ニップ幅を確保しつつ、表面が平滑でクリーニング性の良い現像剤担持体9を得ることができる。このような構成の現像剤担持体9にクリーニング時の荷電を低減できる荷電減衰特性が2段減衰特性のトナー粒子を組み合わせた実施例12〜14の場合のみ、現像ニップn幅が確保できる全体硬度を確保しつつ現像剤担持体9の表面が平滑で、かつクリーニング時のトナーの荷電が低いというクリーニングにとって理想的な状態を達成することができる。
以上、本実施の形態における現像剤担持体9を含む湿式現像装置4、および、この湿式現像装置4を備える湿式画像形成装置100によれば、トナー粒子を現像剤担持体9上でトナー帯電装置(外部荷電装置)17によって荷電して現像を行なう湿式電子写真方式において、荷電ムラに起因する濃度ムラの発生を解消することができる。
さらにトナー粒子として減衰過程が2段階となる特性を持つものを用いることで、さらにクリーニング性の向上に伴う部材寿命の延長効果、さらなる濃度ムラ抑制効果などが得られる。
特に導電性ローラーの感圧導電特性に伴うヒステリシスの影響をなくし、画像形成時の抵抗ムラの発生を回避するため、以下のような構成を採用している。実質的に現像剤担持体9の抵抗を規定する層として、変形が少なく感圧導電効果の生じにくい高硬度で比較的高抵抗の第1層を設け、一方他の部材との間でニップを形成するための弾性層としては低硬度でかつ低抵抗の第2層を用いる。
このような構成を採用することで、第2層(弾性層)が変形し感圧導電効果による抵抗変動およびそのヒステリシスが生じたとしても、現像剤担持体9の層方向全体の抵抗としては高抵抗の第1層の抵抗値で規定されるため実質的に抵抗ムラは発生せず、トナー粒子の荷電ムラを回避することができる。
上記構成の現像剤担持体9と組み合わせて、トナー粒子として、外部荷電した後の荷電量の減衰特性が、減衰の早い第1の減衰過程と減衰の遅い第2の減衰過程とをもつようなトナー粒子を含む現像剤を用い、トナー帯電装置通過から現像ニップnまでの時間を、減衰過程特性に対して適切に設定することで、さらにクリーニング性の向上に伴う部材寿命の延長効果、さらなる濃度ムラ抑制効果などが得られる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。