JP2014510781A - N置換マンノサミン誘導体、その調製方法及びその使用 - Google Patents

N置換マンノサミン誘導体、その調製方法及びその使用 Download PDF

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Abstract

【課題】
【手段】以下の化合物であって、ヘインズ転位によりフルクトースから形成することができ、遊離D−マンノサミン又はその塩、D−マンノサミン基本単位及びマンノサミン含有オリゴ糖又は多糖、N−アセチル−D−マンノサミン及びその水和物及び溶媒和化合物、ノイラミン酸誘導体及び、ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤の形成に用いることができる。
Figure 2014510781

(式中、Rは水素化分解により除去可能な基であり、RはOHであるか、Rは−NHRである(式中、Rは水素化分解により除去可能な基である))

Description

本発明は新規のマンノサミン誘導体の提供、合成及び使用に関する。
主にN−アセチル化された形態の2−アミノ−2−デオキシ−D−マンノース(D−マンノサミン)(ManNAc)は、いくつかの細菌莢膜多糖及びリポ多糖の基礎単位として見られる。また、N−アセチル−D−マンノサミンは、多くの重要な生物的役割を有するユニークな炭素数9のケトアルドン酸であるシアル酸の生合成前駆体である。
化学的又は酵素的変換によってD−マンノサミン又はN−アセチル−D−マンノサミンを得ることができる。2−エピマー化を介してN−アセチル−D−グルコサミンをN−アセチル−D−マンノサミンに転換することができ、これは塩基(有機又は無機塩基、更に塩基性イオン交換樹脂が好適である)又はエピメラーゼ酵素によって開始することができる(特許文献1、非特許文献1、特許文献2)。これらの方法において、N−アセチル−D−グルコサミンとN−アセチル−D−マンノサミンとの間で平衡が形成されるが、グルコ化合物が好ましく、したがって、残存する出発物質、試薬及び/又は酵素、及びその他の望まない副生成物からこの少量生成物を単離するには、精巧な及び/又は複雑な分離技術が必要である。困難な単離、中程度の化学的収率、及び、出発化合物の相対的な費用、これら全てが、この手順の費用効率の高い大規模化を妨げている。従来の合成方法においては、安価で容易に入手可能な単純な単糖をD−マンノサミン骨格に変換することができる。該D−マンノサミン骨格としては、例えば、D−アラビノース(ニトロンへのチアゾール付加(非特許文献2及び3)、又は、D−アラボ−テトラアセトキシ−1−ニトロ−1−ヘキセンへのアンモニアの付加(非特許文献4)を介したD−アラビノース鎖の立体選択的アミノホモロゲーション)、D−グルコース(良好な脱離基のC−2におけるN−求核試薬による求核置換(非特許文献5)、2−グルクロースオキサミン(gluculose oxime)の立体選択的還元(非特許文献6及び7))、又はD−グルカール(二重結合への塩化ニトロシルの分子間付加(非特許文献8)、二重結合のアジドニトロ化(非特許文献9)、分子間ロジウム(II)で触媒された、グルカール−3−カルバメートの酸化環化(非特許文献10及び11)、グルカールに由来する4−O−トリクロロアセチミジル−ヘキ−2−セノピラノシドの[3,3]シグマトロピー転位(非特許文献12))が挙げられる。これらの化学的経路は、重要な変換工程で影響を受けるかもしれない官能基をマスキングするために保護基の大量使用を常に必要としており、そのため多くの基本的な化学的工程からなる。このような多段階の連続のために、実用性が制限されており、長い技術時間と試薬の大量使用のために大規模開発に適さず(試薬は実際まれではなく有毒であったり、入手しにくかったり、及び/又は高額であったりする)、及び/又は、長く又は面倒な単離/分離手順を必要とする。
ケトースとアミンの反応からケトシルアミンが得られ、続く後者の2−アミノ−2−デオキシ−アルドースへの転位はヘインズ転位として知られている(非特許文献13)。理論的には、両方2−エピマーを形成することができるが、該エピマーの1つの形成が優先し、恐らく立体因子のためである。第一級アミンによるD−フルクトースのヘインズ転位において、対応するグルコ誘導体の排他的形成が観察される。特に、D−フルクトースとベンジルアミンとの反応で中間体として得られる結晶性フルクトシルベンジルアミンは、メタノール中でメタノールで処理することにより、2−ベンジルアミノ−2−デオキシ−D−グルコースのみに転位する(非特許文献14)。一方、加熱下(特許文献3及び4)又は触媒量のベンジルアンモニウムクロリド又はZnClの存在下(非特許文献15及び16)、D−フルクトースとベンジルアミン(後者は反応物にも溶媒にもなる)との反応による、N−ベンジル−2−ベンジルアミノ−2−デオキシ−D−グルコピラノシルアミンの形成が報告されている。
N−アルキル−又はN−(置換アルキル)−マンノサミングリコシドの合成は、アルカナール又は置換されたアルカナールの存在下、2−アジド−2−デオキシ−マンノース誘導体の逐次還元−還元的アルキル化反応において可能である(非特許文献17)。
WO2007/135086A1 EP−A−385287 DE935009 US2884411
S. Yamaguchi et al. Trends Glycosci. Glycotechnol. 18, 245 (2006) A. Dondoni et al. Tetrahedron Lett. 33, 4221 (1992) A. Dondoni et al. Chem. Eur. J. 1, 505 (1995) J.C. Sowden et al. Methods Carbohydr. Chem. 1, 235 (1962) W. Roth et al. J. Org. Chem. 26, 2455 (1961) E. Kaji et al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 61, 1291 (1988) Y. Tsuda et al. Chem. Pharm. Bull. 37, 2673 (1989) R.U. Lemieux et al. Tetrahedron Lett. 6, 4221 (1965) H. Paulsen et al. Carbohydr. Res. 136, 153 (1985) R. Bodner et al. J. Org. Chem. 70, 3988 (2005) J. Calveras et al. Tetrahedron 66, 4284 (2010) K. Takeda et al. Tetrahedron Lett. 33, 7145 (1992) T.M. Wrodnigg et al. Topics Curr. Chem. 215, 115 (2001) J.F. Carson J. Am. Chem. Soc. 78, 3728 (1956) K. Heyns et al. Chem. Ber. 88, 1551 (1955) P.S. Piispanen et al. J. Org. Chem. 68, 628 (2003) L. Chen et al. Tetrahedron Lett. 43, 2705 (2002)
マンノサミン誘導体は生物学的重要であるため、常に容易に大規模化することができる新しい短時間で済む簡易な合成経路の開発が望まれている。本発明の目的はそのような方法を提供することである。
本発明の第1のアスペクトは、下記式1で表されるN置換D−マンノサミン誘導体及びその塩に関する。
Figure 2014510781
(式中、Rは水素化分解により除去可能な基であり、RはOHであるか、又はRは−NHRである(式中、Rは水素化分解により除去可能な基である))
水素化分解により除去可能な各R及びR基は、1以上のフェニル、アルキル又はハロゲン基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であることが好ましく、より好ましくはベンジル基である。
前記化合物は、下記式1A又は1Bを有することが好ましい。
Figure 2014510781
(式中、Rは水素化分解により除去可能な基であり、好ましくはフェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基、より好ましくはベンジル基)
Figure 2014510781
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素化分解により除去可能な基であり、好ましくはフェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基、より好ましくはベンジル基)
本発明の第2及び第3のアスペクトは、式1で表されるN置換D−マンノサミン誘導体を合成する方法に関する。具体的には以下のとおりである。
本発明の第2のアスペクトは、下記式1Aで表されるN置換D−マンノサミン誘導体に関し、それは以下の工程を含む第1の方法により形成される。
a)R−NH、好ましくはベンジルアミンでD−フルクトースを処理し、フルクトシルアミン誘導体を得る工程、
b)混合物からから過剰R−NHを分離することによりフルクトシルアミン誘導体を粗生成物として単離する工程、及び
得られた粗フルクトシルアミン誘導体を酸(好ましくは氷酢酸)で好ましくはメタノール中で処理し、ヘインズ転位により、式1Aで表される化合物を形成する工程。
Figure 2014510781
(式中、Rは水素化分解により除去可能な基である)
好ましくは、R−NHでD−フルクトースを処理してフルクトシルアミン誘導体を得る工程を行うことができる反応時間は、最大で2日間、より好ましくは最大24時間である。
本発明の第3のアスペクトは、下記式1Bで表されるビス−N置換D−マンノサミン誘導体に関し、それはR−NH、好ましくはベンジルアミンでD−フルクトース処理して、ヘインズ転位により式1Bで表される化合物を形成する工程を含む方法により形成される。
Figure 2014510781
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素化分解により除去可能な基である)
好ましくは、D−フルクトースはヘインズ転位のためにR−NHとベンジルアミン塩触媒の両方で処理されることが好ましい。
好ましくは、R−NHでD−フルクトースを処理してフルクトシルアミン誘導体を得る工程を行うことができる反応時間は、最大で4日間、より好ましくは最大2日時間、最も好ましくは24時間である。
また、本発明の第2及び第3のアスペクトによれば、式1Aで表される化合物又は1Bをその塩に変換することにより、式1で表される化合物の塩を形成する方法が提供される。
更に、本発明の第2のアスペクトによれば、以下の工程を含む式1Aで表される化合物を調製する方法が提供される。
a)上述したように、D−フルクトースから式1Bで表される化合物を形成する工程、
b)式1Bで表される化合物を酸で処理し、−NHR基を除去する工程。
本発明の第4のアスペクトは、式1で表される化合物の、遊離したD−マンノサミン又はその塩の合成への使用に関する。
本発明の第5のアスペクトは、式1で表される化合物の、D−マンノサミン基本単位及びマンノサミン含有オリゴ糖又は多糖の合成への使用に関する。
本発明の第6のアスペクトは、式1で表される化合物の、N−アセチル−D−マンノサミン(ManNAc)、そのO−グリコシド又は、その水和物若しくは溶媒和化合物の合成への使用に関する。
本発明の第7のアスペクトは、式1で表される化合物の、ノイラミン酸誘導体若しくはその塩、又はノイラミン酸含有オリゴ糖若しくは多糖の合成への使用に関する。前記ノイラミン酸誘導体は、シアル酸及びその塩であることが好ましい。前記ノイラミン酸含有オリゴ糖又は多糖はシアリル化人乳オリゴ糖であることが好ましい。
本発明の第8のアスペクトは、式1で表される化合物の、ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤の合成への使用に関する。前記ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤はザナミビルであることが好ましい。
本発明の第9のアスペクトは、式1で表される化合物を水素化分解し、R基及び/又R基を除去する工程を含むD−マンノサミンを合成する方法に関する。前記式1で表される化合物は、本発明の第2のアスペクトの方法によりD−フルクトースから形成されることが好ましい。
本発明の第10のアスペクトは、以下の工程を含むD−マンノサミン由来のシントンを合成する方法に関する。
i)第9ノアスペクトにしたがって、D−マンノサミンを合成する工程、
ii)D−マンノサミンのジアゾ転位反応を行い、該D−マンノサミンのアミノ基をアジド基に変換する工程、
iii)保護基の3、4及び6−OH基を保護する工程、及び
iv)アノマー位を活性化し、β−マンノサミニルシントンを得る工程。
本発明の第11のアスペクトは、以下の工程を含むD−マンノサミン由来のシントンを合成する方法に関する。
i)第9ノアスペクトにしたがって、D−マンノサミンを合成する工程、
ii)該D−マンノサミンのアミノ基を、好適な保護基でマスキングする工程、
iii)D−マンノサミンの3、4及び6−OH基を保護する工程、及び
iv)D−マンノサミンのアノマー位を活性化し、β−マンノサミニルシントンを得る工程。
本発明の第12のアスペクトは、第10及び第11のアスペクトのいずれか1つの方法を含み、以下の追加の工程が続く、D−マンノサミン含有オリゴ糖又は多糖を合成する方法に関する。
i)前記β−マンノサミニルシントンを所望の糖部位にカップリングする工程。
本発明の第13のアスペクトは、以下の工程を含むManNAcを合成する方法に関する。
i)第9のアスペクトにしたがって、D−マンノサミンを合成する工程、及び
ii)D−マンノサミンのアミン基をアセチル化し、ManNAcを形成する工程。
本発明の第14のアスペクトは、以下の工程を含むN−アセチルノイラミン酸を合成する方法に関する。
i)第13のアスペクトにしたがって、ManNAcを合成する工程、及び
ii)Neu5Acアルドラーゼの存在下で、ManNAcとピルベートとを反応させる工程。
本発明の第15のアスペクトは、以下の工程を含むシアロオリゴ糖を合成する方法に関する。
(i)第14のアスペクトにしたがって、N−アセチルノイラミン酸を合成する工程、
(ii)前記N−アセチルノイラミン酸から活性シアロシドを形成する工程、及び
(iii)前記活性シアロシドをシアロオリゴ糖に変換する工程。
前記シアロオリゴ糖はシアリル化人乳オリゴ糖であることが好ましい。
本発明の第16のアスペクトは、以下の工程を含むウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤を合成する方法に関する。
i)第14のアスペクトにしたがって、N−アセチルノイラミン酸を合成する工程、
ii)エステルとして前記N−アセチルノイラミン酸のカルボキシル基、及び前記N−アセチルノイラミン酸の非グリコシド性ヒドロキシル基をアシル基で保護する工程、
iii)グリコシド性ヒドロキシル基をアグリコンに変換し、β−脱離に供し、C2−C3不飽和を生成する工程、
iv)立体配置を維持しながらC4に窒素官能基を導入する工程、
v)カルボキシル基及びヒドロキシル基を脱保護する工程、及び
vi)窒素官能基をアミノ又はグアニジノ基に変換する工程。
前記ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤はザナミビルであることが好ましい。
本発明の第17のアスペクトは、N−アセチルD−マンノサミン又はその誘導体の合成における、D−フルクトースの使用に関する。
本発明の第18のアスペクトは、N−アセチルノイラミン酸又はその誘導体の合成における、D−フルクトースの使用に関する。
本発明の第19のアスペクトは、ここに記載されているようにN置換D−マンノサミン誘導体の合成の方法に関する。
本発明の第20のアスペクトは、実質的にここに記載されているようにノイラミン酸誘導体の合成の方法に関する。
本発明の第21のアスペクトは、実質的にここに記載されているようにウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤の合成の方法に関する。
本発明において、用語「水素化分解により除去可能な基」は、コア炭水化物構造に結合している結合が、水素化分解での使用が知られている触媒量のパラジウム、ラネーニッケル又は他の適当な金属触媒の存在下で水素の添加により開裂することができる基であって、その結果、保護された官能基、主に親分子の−OH又は−NHを再生する基を意味する。そのような保護基は当業者によく知られており、P.G.M. Wuts and T.W. Greene: Protective groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons (2007)によく議論されている。好適な保護基としては、これらに限定されないが、ベンジル、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル)、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル又はトリフェニルメチル(トリチル)基、及び、それぞれ任意に以下からなる群より選択された1以上の基で置換されたもの:アルキル、アルコキシ、フェニル、アミノ、アシルアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−アルキルカルバモイル、N,N−ジアルキルカルバモイル、アジド、ハロゲンアルキル又はハロゲンが挙げられる。そのような置換があれば、芳香環上で置換されることが好ましい。好ましくは、これらの基は置換された又は置換されていないベンジル基が好ましい。
上記定義した「水素化分解により除去可能な基」により及び/又はいくつかの置換基そのものにより生じる可能な置換基に関連して、用語「アルキル」は、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシルなどの、炭素原子数1から6の直鎖又は分岐鎖の飽和炭化水素基を意味する。また、用語「アリール」は、フェニル又はナフチルなどのホモ芳香族基を意味する。また、用語「アシル」は、R’−C(=O)基であって、R’がH、アルキル(上記参照)、又はアリール(上記参照)であるものを意味する(例えば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ピバロイル、ベンゾイルなど)。該アルキルもしくはアリール残基は、非置換であってもよく、アルキル(アリール残基のみ)、ハロゲン、ニトロ、アリール、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−アルキルカルバモイル、N,N−ジアルキルカルバモイル、アジド、ハロアルキル又はヒドロキシアルキルから選択される1以上の基で置換されていてもよく、アシル基、例えば、クロロアセチル、トリクロロアセチル、4−クロロベンゾイル、4−ニトロベンゾイル、4−フェニルベンゾイル、4−ベンズアミドベンゾイル、4−(フェニルカルバモイル)−ベンゾイル、グリコリル、アセトアセチルなどを生じる。また、用語「アルキルオキシ」又は「アルコキシ」は、酸素原子を介して親分子部分と結合しているアルキル基(上記参照)、例えばメトキシ、エトキシ、t−ブトキシなどを意味する。また、「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ又はヨードを意味する。また、「アミノ」は、−NH基を意味する。「アルキルアミノ」は、−NH基を介して親分子部分と結合しているアルキル基(上記参照)、例えばメチルアミノ、エチルアミノなどを意味する。また、「ジアルキルアミノ」は、窒素原子を介して親分子部分と結合している同じか又は異なる2つのアルキル基(上記参照)、例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノなどを意味する。また、「アシルアミノ」は、−NH基を介して親分子部分と結合しているアシル基(上記参照)、例えばアセチルアミノ(アセトアミド)、ベンゾイルアミノ(ベンズアミド)などを表す。また、「カルボキシル」は、−COOH基を表す。「アルキルオキシカルボニル」は、−C(=O)基を介して親分子部分と結合しているアルキルオキシ基(上記参照)、例えばメトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニルなどを意味する。また、「カルバモイル」は、HN−C(=O)基である。また、「N−アルキルカルバモイル」は、−HN−C(=O)基を介して親分子部分と結合しているアルキル基(上記参照)、例えばN−メチルカルバモイルなどを意味する。また、「N,N−ジアルキルカルバモイル」は、>N−C(=O)基を介して親分子部分と結合している同じ又は異なる2つのアルキル基(上記参照)、例えばN,N−メチルカルバモイルなどを意味する。
本発明の第1のアスペクトにしたがって、下記式1で表されるN置換D−マンノサミン誘導体及びその塩が提供される。
Figure 2014510781
(式中、Rは水素化分解により除去可能な基であり、RはOHであるか(式1Aで表される)、又は、Rは−NHRである(式中、Rは水素化分解により除去可能な基である)(式1Bで表される))
Figure 2014510781
式1のN置換D−マンノサミン誘導体及びその塩は、結晶性固体、オイル、シロップ状、沈降非晶質物質又は噴霧乾燥物であってもよい。結晶性の場合、これらは、1又は複数の水の分子をその結晶構造に組み込むことで、無水または含水結晶状態のうちいずれかの状態で存在することができる。同様に、式1のN置換D−マンノサミン誘導体及びその塩は、その結晶構造にリガンドを組み入れた結晶性物質として存在することができ、該リガンドとしては、例えば、有機分子及び/又はイオンが挙げられる。式1のN置換D−マンノサミン誘導体及びその塩としては、例えば、α及びβアノマーのアノマー混合物及び/又は純粋なα又はβアノマーも挙げることができる。
強調されるべき点は、式1のN置換D−マンノサミン誘導体は、液体及び固体の両方の状態で環状ヘミアセタールの形態で、特にピラノース及びフラノースの形態で(いずれもα−及びβ−アノマーを有する)、また開鎖状で、存在することができることである。形態の相対的な比率は、溶媒の性質、濃度、温度及び/又は凝固、沈殿、結晶化若しくは溶媒除去の他の手段が行われる条件に依る。
式1の化合物における好ましいR基及びR基は、独立に、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基である。式1Bの化合物において、より好ましくはRはベンジルであり、またR及びRが同一であることも好ましい。これらの好ましい保護基は、それぞれ、水素化分解の副生成物が、もっぱらトルエン、メチルナフタレン、又は、置換トルエン誘導体又は置換メチルナフタレン誘導体であるという利点を有する。このような副生成物は、数トンの規模でも、水溶性オリゴ糖産物から蒸発及び/又は抽出過程を介して容易に除去することができる。
本発明の第2のアスペクトによって、下記式1Aで表されるN置換D−マンノサミン誘導体及びその塩を調製する方法を提供する。
Figure 2014510781
(式中、Rは水素化分解により除去可能な基)
前記方法は以下の工程を含む。
a)R−NHでD−フルクトースを処理し、フルクトシルアミン誘導体を得る工程、
b)混合物から過剰R−NHを分離することによって、フルクトシルアミン誘導体を粗生成物として単離する工程、及び
c)得られた粗フルクトシルアミン誘導体を酸で処理し、ヘインズ転位により式1AのN置換D−マンノサミン誘導体を得る工程。
前記工程a)において、フルクトースを、過剰な(好ましくは3〜10当量)第一級アミン(式R−NHで表される)と反応させる。好ましくは、第一級アミン試薬は、任意に置換されたベンジルアミン又は任意に置換されたナフチルメチルアミン、特にベンジルアミンである。第一級アミン試薬は、必要であれば、溶媒として機能することもでき、又は、アルコール、ジオキサン、THF、DMF、又は他の好適な溶媒中のアミン試薬の高濃度溶液を用いることもできる。好ましくは、約0℃で溶媒としてフルクトースをアミン試薬に添加し、そして混合液を室温まで温め、又はゆっくりと40℃まで昇温し、それにより出発物質が消費される。反応は、出発物質の消費が薄層クロマトグラフィ(TLC)によって観察されるまで継続される(典型的には24時間以内に観察され、通常18〜20時間以内で観察される)。文献[16]に記載されているように、反応を4日間行う必要はない。
前記工程b)において、過剰な第一級アミン試薬は、転位反応c)を開始するために酸を加える前に、粗フルクトシルアミン誘導体から除去される。中間体フルクトシルアミン誘導体を溶解しない非極性溶媒、主に低級炭化水素(例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン)又はそれらの混合物(例えば石油エーテル)は、アミン試薬の抽出に好適である。反応において形成されるフルクトシルアミン誘導体は、非極性溶媒に難溶であるため、アミン試薬を含む有機層を容易に分離することができる。したがって、いずれの過剰アミン試薬も、工程b)において石油エーテルを用いることによって好ましく洗い流すことができる。好ましくは、非極性溶媒の添加後に形成された懸濁液又はエマルジョンを−20℃〜−25℃で凍結し、上澄み有機相をデカントすることが好ましい。上澄み有機相は、有意量の炭水化物様の化合物を含有していないことが分かった。洗浄処置は数回繰り返してもよい。フルクトシルアミン誘導体を沈殿及び/又は結晶化させてはならず、直接工程c)で使用すべきである。換言すれば、「混合物から過剰R−NHを分離することによりフルクトシルアミン誘導体を粗生成物として単離する」が意味するところは、過剰なアミン試薬及び工程a)で使用された追加の溶媒の除去以外、フルクトシルアミン誘導体の精製を行うべきではないということである。特に、フルクトシルアミン誘導体を文献[16]のように結晶化してはいけない。文献[16]の報告とは反対に、工程b)の粗生成物を用いる場合には、工程c)においてマンノ−エピマー(すなわち、N置換D−マンノサミン誘導体)を得ることができることが今は分かっているが、一方、工程a)の生成物を結晶化により精製した文献[16]の著者は、結晶化したフルクトシルアミン誘導体の酸を用いた処理によってもっぱらグルコ−エピマー(すなわち、N置換D−グルコサミン誘導体)を得た。いかなる理論にも囚われたくないが、異なる反応条件、及び、形成され得る異なる複数の中間体化合物(文献[16]における中間体の結晶化の結果、工程c)のヘインズ転位中、存在する)、及び、本発明における中間体を結晶化せずに行うアミンの除去が、これら3つ環境において得られる異なる生成物の原因と考えられている。
工程c)において、粗フルクトシルアミン誘導体を、アルコール、ジオキサン、THF、DMF又はこれらの混合液で溶解し(好ましくはアルコール、より好ましくはメタノールで溶解し)、そして酸を添加してフルクトシルアミン誘導体の転位を促進させる。好ましくは、工程c)において粗フルクトシルアミン誘導体をメタノールに取り、そして酸を添加する。使用する酸の量は触媒量から大過剰までの範囲のいずれであってもよい。前記酸は、無機プロトン酸(例えばHCl、HBr、硫酸又はリン酸)であってもよいし、有機プロトン酸(例えばギ酸、酢酸、シュウ酸、任意に置換されたメタンスルホン酸誘導体、任意に置換されたベンゼンスルホン酸誘導体、ポリマー結合スルホン酸(すなわち、イオン交換樹脂))であってもよいし、ルイス酸(例えばAlCl、ZnCl、CuBr又はBF−エーテラート)であってもよく、氷酢酸が好ましい。前記反応は、典型的には室温で行われ、数時間で完了する(例えば、8時間以内、好ましくは2〜4時間以内)。2種の主要な生成物が形成され、主成分はN−置換−グルコサミンであり、副成分はN−置換−マンノサミンであり、これら成分の比は約6:4〜8:2である。これら2種の生成物の全収率はフルクトースに基づき、75〜80%ほど高く成り得る。生成物はクロマトグラフィーなど従来の分離技術によって単離することができる。
驚いたことに、工程c)のヘインズ転位反応は、多量の対応する2−アミノ−2−デオキシ−D−マンノース誘導体を、2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコース誘導体と共に生成することができることが分かった。したがって、この方法はマンノサミン骨格を構築する新しい方法を示している。
上述したように、文献[16]の転位反応に用いられる特定の環のサイズ、立体配座(conformation)及びアノマー立体配置(anomeric configuration)を有し、精製され、結晶化したフルクトシルベンジルアミンが、本発明の結果と異なる、文献[16]のヘインズ転位の結果の原因と考えられている。驚いたことに、本発明の工程b)における精査処理によって実質的にフルクトシルアミン誘導体のロスがない(ロスは洗浄処理において検知することができる)。工程b)の結果得られる粗フルクトシルアミン誘導体は、1種の特定のコンフォーマーを含むのではなく、平衡においてα−及びβ−ピラノース又はフラノースの混合を含むと考えられており、これらの中でも、いくつかはマンノ化合物(manno-compound)の形成の好ましい前駆体になりうると提案されている。
本発明の第3のアスペクトによれば、下記式1Bで表される置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノサミン誘導体及びその塩を調製する方法が提供される。
Figure 2014510781
(式中、R及びRはそれぞれ独立に水素化分解により除去可能な基である)
この方法は以下の工程を含む。
a)R−NH及びその塩でD−フルクトースを処理する工程、及び
b)反応混合物から式1Bで表される化合物を分離する工程。
工程a)において、フルクトースと過剰(好ましくは2〜10当量、より好ましくは3〜4当量)の第一級アミン(式R−NHで表される)を、該第一級アミンの塩の存在下で反応させる。好ましくは、第一級アミン試薬は、任意に置換されたベンジルアミン又は任意に置換されたナフチルメチルアミン、特にベンジルアミンである。該第一級アミン試薬は、必要であれば、溶媒として機能することもでき、又は、アルコール、ジオキサン、THF、DMF、又は他の好適な溶媒中のアミン試薬の高濃度溶液を用いることもできる。R−NHの塩は好ましくは、R−NHのハロゲン化物、リン酸水素、N−ベンジル−カルバメート、重炭酸塩又は炭酸塩、又は二酸化炭素付加物であり、より好ましくはベンジルアンモニウムクロリドであり、親アミンに対して0.2〜1.0当量、好ましくは0.3〜0.4当量で使用される。好ましくは、フルクトースをアミン試薬に添加し、アミン試薬が溶媒としても機能し、その後、約20〜30℃で、該アミン試薬の塩を添加する。或いは、アミン試薬とその塩の混合物にフルクトースを添加する。反応は、出発物質の消費が薄層クロマトグラフィ(TLC)によって観察されるまで継続される(典型的には4日以内、通常48時間以内、好ましくは24時間以内に観察される)。文献[18]に記載されているように、反応を1か月間行う必要はない。本発明の発明者らによって、該反応を4日を超えて継続されると、マンノ−エピマーの収率が、商業的に許容できる範囲を下回るまで減少し、最終生成物の単離がより困難になることが分かった。
そして、文献[17−19]の報告に対して、上記開示された条件下で、多量のマンノーエピマー(manno-epimer)(すなわち、N,N’−二置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノサミン誘導体)が得られることが分かったが、一方、文献[17−19]の著者はもっぱらグルコ−エピマー(gluco-epimer)(すなわち、N,N’−二置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−グルコサミン誘導体)を得た。工程a)の終わりにおいて、2種の主要な生成物が形成され、主成分はN,N’−二置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−グルコサミン誘導体であり、副成分はN,N’−二置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノサミン誘導体であり、これら成分の比は約6:4〜7:3である。これら2種の生成物の全収率はフルクトースに基づき、75〜100%ほど高く成り得る。工程b)において、2種のアイソマーは沈殿、結晶化又はクロマトグラフィーによって分離される。好ましくは、工程b)において、水又はアルコール水溶液を添加し、反応混合液から式1Bで表される化合物を沈殿又は結晶化させ、式1Bで表される化合物のグルコ−アイソマーは母液に残る。本発明の発明者の経験において、副エピマーと主エピマーとの混合から、副エピマーを結晶化又は沈殿でき、溶液に主エピマーを残すことができるとは予期しなかった。
式1Bで表される化合物は、酸に不安定な−NHR基を除去し、アノマーOH(anomeric OH)を再生するために、酸で処理することによって容易に式1Aで表される化合物に変換することができる。この反応において、水(反応環境に試薬として存在する)は溶媒又は共溶媒としての役割も果たすことができる。酸性条件下で安定性を有し、水と完全に又は部分的に混和性を有する有機プロトン性又は非プロトン性溶媒(例えばC〜Cアルコール、アセトン、THF、ジオキサン、酢酸エチル、MeCN等)を、水と混合して用いることができる。一般的に用いられる酸は、これらに限定されないが酢酸、トリフルオロ酢酸、HCl、ギ酸、硫酸、過塩素酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸及びカチオン交換樹脂から選択される無機プロトン酸、及び、これらに限定されないが酢酸、ギ酸、クロロ酢酸及びシュウ酸などの有機酸であり、これらは触媒量から大過剰の範囲で存在してもよい。加水分解は、20℃から還流に達する温度で完了するまで行ってもよく、温度、濃度及びpHによって約2時間から3日間かかる。好ましくは、加水分解は、濃塩酸又は希塩酸溶液を添加して、アルコール中(より好ましくはメタノール又はエタノール中)で行われ、pHは約3〜4に維持される。このような条件下で、加水分解は典型的には室温で2〜3時間以内で完了する。
式1A又は式1BのN置換D−マンノサミン誘導体のいずれかの塩を生成することが望ましい場合には、従来の手法で無機又は有機の酸又は塩を用いて、該誘導体を酸付加塩に変換することができる。アセトン、水、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN及びこれらの混合液などの溶媒、及び、HCl、HSO、HNO及びHPOなどの無機酸を、濃縮した状態又は水又は他の溶媒(例えば、メタノール、エタノール又はジオキサン)で希釈した状態で用いることができる。ギ酸、酢酸及びシュウ酸などの有機酸も使用することができる。これらの酸の塩を、マンノサミンよりも弱い塩基度の塩基と共に用いることができる。生成物は典型的にはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトン又はアルコール類などの非極性溶媒の添加により選択的沈殿、又は結晶化によって、クロマトグラフィーを一切用いず、高い収率で得られる。
本発明の第2及び第3のアスペクトのヘインズ反応において用いる安価な材料、及び、適用する簡易で短時間の技術的作用によって、現在は低い入手可能性の糖の基本単位であるマンノサミンを作製する、大規模化可能で採算性を有する方法を開発する可能性が高まる。更に、副生成物のグルコサミンも重要で貴重な糖誘導体である。
本発明の第4のアスペクトは、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩の、遊離したD−マンノサミン及び/又はその塩の合成への使用に関する。この方法は式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩(式中、R(そして任意にR)は、水素化分解によって接触水素化反応(スキーム1)において除去される)の利用に基づく。この反応は典型的には、プロトン性溶媒又はプロトン性溶媒の混合液中で行われる。プロトン性溶媒は、水、酢酸またはC〜Cアルコールであってもよい。1以上のプロトン性溶媒と、該プロトン性溶媒と部分的あるいは完全な混和性を有する1以上の適切な非プロトン性有機溶媒の混合液も使用することができる(例えば、THF、ジオキサン、酢酸エチル、アセトン等)。水、1以上のC〜Cアルコール類、又は、水と1以上のC〜Cアルコールとの混合液は、溶媒系として好ましく用いられる。様々な濃度で炭水化物誘導体を含有する溶液、又は炭水化物誘導体と選択した溶媒との懸濁液も使用することができる。反応混合液を10〜100℃の温度範囲内、好ましくは20〜50℃で、1〜50バールの絶対圧(100〜5000kPa)の水素雰囲気下、触媒の存在下で反応が完了するまで撹拌する。該触媒としては、例えば、パラジウム、ラネーニッケル、又はその他の適切な金属触媒が挙げられ、好ましくはチャコール担持パラジウム又はパラジウムブラックが挙げられる。また、水素がシクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ギ酸又はギ酸アンモニウムからその場(in situ)で発生する場合は、水素移動反応(transfer hydrogenation)も行うことができる。また、有機又は無機塩基又は酸及び/又は塩基性及び/又は酸性イオン交換樹脂の添加により、水素化分解の速度を向上することも可能である。式1Aで表される化合物から開始する場合に、ハロゲン置換基が前駆体の置換ベンジル部分上に存在する場合、塩基性物質を用いることが特に好ましく、及び/又は、マンノサミン塩基の形成が望ましい。好ましい有機塩基としてはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。マンノサミン塩が目的生成物である場合には、有機又は無機酸が共溶媒又は添加剤として好ましく用いられる。好ましい酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、HCl、HBr等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。式1Bで表される化合物から開始する場合には、加水分解及び水素化分解が同時に行われている間、酸を用いなければならない。上記条件は、溶媒の簡単、便利且つ精巧な除去を可能にし、これにより純粋なマンノサミン又はその塩化合物を得るものである。
Figure 2014510781
遊離塩基の形態のマンノサミンが還元工程で形成される場合には、それを酸付加塩に変換することができる。塩形成は典型的には、無機又は有機の酸又は塩を用いた溶液中で行われる。これに限定されないがアセトン、水、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN、及びこれらの混合液などの溶媒をこのような変換に用いることができる。好適な無機酸としては、これらに限定されないが、HCl、HSO、HNO及びHPOが挙げられ、濃縮した状態又は水又は他の溶媒(例えば、メタノール、エタノール又はジオキサン)で希釈した状態で用いることができる。好適な有機酸としては、これらに限定されないが、ギ酸、酢酸及びシュウ酸などが挙げられる。これらの酸の塩を、マンノサミンよりも弱い塩基度の塩基と共に用いることができる。生成物は典型的にはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトン又はアルコール類などの非極性溶媒の添加により選択的沈殿、又は結晶化によって、高い収率で得られる。クロマトグラフィーは必要ない。
好ましい形態において、式1A又は1Bで表される化合物(式中、R及びRはフェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基、より好ましくは、R及びRはベンジル基)が遊離D−マンノサミン及び/又はその塩の合成に用いられる。これらの好ましい及びより好ましい保護基は、それぞれ、水素化分解の副生成物が、もっぱらトルエン、メチルナフタレン、又は、置換トルエン誘導体又は置換メチルナフタレン誘導体であるという利点を有する。このような副生成物は数トンの規模でも、水溶性糖類産物から蒸発及び/又は抽出過程を介して容易に除去することができる。
別の形態によれば、第2又は第3のアスペクトによって得られるN−ベンジル/置換されたベンジル−D−マンノサミンとN−ベンジル/置換されたベンジル−D−グルコサミンとの混合、又は、第3のアスペクトによって得られるN,N’−二置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノサミンとN,N’−二置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−グルコサミンとの混合を、酸(好ましくはHCl)の存在下で、触媒水素化分解に供し、D−マンノサミンヒドロクロリドとD−グルコサミンヒドロクロリドとの混合が得られ、ここからそれぞれの成分は選択的結晶化により分離することができ、純粋なD−グルコサミンヒドロクロリド及び純粋なD−マンノサミンヒドロクロリドが結果として得られる。
本発明の第5のアスペクトは、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩の、D−マンノサミン基本単位(すなわち、オリゴ糖又は多糖などのマンノサミン含有化合物の合成に用いることができるマンノサミン誘導体)の合成への使用、マンノサミン含有オリゴ糖又は多糖の製造への使用に関する。
オリゴ糖又は多糖におけるN−アセチル−D−マンノサミンは、好ましくはβ−結合で結合している。β−グリコシド間結合を達成するために、主に2つのルートが開発されている。1つは、間接的なルートであって、最初にグルコピラノシル、グルクロピラノシル(gluculopyranosyl)又はグルクロピラノシルオキシムドナーを用いてβ−結合を形成し、該β−結合の形成後、マンノサミンユニットが構築されるものであり、もう1つは直接的なルートであって、好適なD−マンノサミニルドナーが採用されるものである[21]。後者のルートはD−マンノサミニルドナーの第2位に非関与基を必要とし、可能なシントンの中でも、2−アジド−2−デオキシ−D−マンノピラノシル誘導体だけが合成に関係を有すると証明されている。これらのグリコシルドナーは、D−グルコースから始まる複雑な多段階の経路を介して合成することができる。しかしながら、本発明の式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩はマンノサミニルドナーに容易に変換される。したがって、本発明の第4のアスペクトにしたがってR基、及び任意にR基の除去によって得られた遊離アミンを、トリフリン酸アジド(triflic azide)で、アミノ基をアジドに変換して、ジアゾ転位反応に供することができる[22]。この変換は、グリコシルカップリングに好適なマンノサミンO−又はS−グリコシドにおいても行うことができる(例えば、アルキル又はアリールチオグリコシド、O−ペンテニルグリコシド、文献[23]参照)。更に、遊離マンノサミンが利用可能であることで、グリコシル化反応の前にアミノ基をマスキングできる可能性が出てくる。好適な保護基としては、例えば、フタリル、テトラクロロフタリル、ジチアサクシノイル(dithiasuccinoyl)、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、ジメチルマレオニル、トリクロロエトキシカルボニル又はアリルオキシカルボニル基(これらすべては直ぐにグリコシル化反応に使用することができる)が挙げられる。これらの基は、塩基の存在下、アミンと、無水物、ハロゲン化物又は活性エステルなどの活性化されたアシル誘導体とを反応させることによって導入することができる。但し、ジチアサクシノイル基は例外で、二段階連続(エトキシチオカルボニル化、続いてクロロカルボニルスルフェニルクロリドを用いて環化)を通して形成することができる。得られる2−アジド−又は2−アシルアミノ−2−デオキシ−D−マンノピラノース誘導体を反応させて3,4,6位(エーテル、エステル、アセタール)を保護することができ、適当なアノマー活性化(チオグリコシド、アセテート、ベンゾエート、トリクロロアセトイミダート、グリコシルハロゲン化物)の後、これらはグリコシド間カップリング反応においてβ−マンノサミニル部分を転位させる有用なシントンであると考えられている。
好ましい形態において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合にはR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合にはR)はより好ましくはベンジル基である)は、マンノサミンの合成に用いられ、そして続いてマンノサミン含有オリゴ糖の製造に実用的なD−マンノサミン基本単位に変換される。
更なる形態は、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩の、D−マンノサミン含有オリゴ糖の合成への使用に関する。髄膜炎菌、インフルエンザ菌又は肺炎球菌などのいくつかの病原菌は、2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−マンノピラノシル又は−マンノピラヌロニック酸(mannopyranuronic acid)構造ユニットを含むきょう膜多糖を有する(例えば、文献[24]参照)。細菌の表面に存在するきょう膜多糖は細菌の病原性因子と関連していると認識されてから、上述した微生物によって引き起こされる病気の免疫学的予防に用いられるようにライセンスされたきょう膜多糖ワクチンの開発に至った[25]。これらの抗原の化学的合成には、マンノサミニルユニットを、オリゴ糖又は多糖鎖の特定の位置へ導入する必要がある。アノマー活性化後、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩から、上述したように、水素化分解、及び続く好適なグリコシルドナーへの変換によって得られるマンノサミニル基本単位を、グリコシル化条件下で、適当なアクセプターと反応させる。用語「グリコシル化条件」は、この文脈において、非プロトン性溶媒中又は複数の非プロトン性溶媒の混合液中、活性化因子の存在下で反応を行ない、非隣接基を介した共役の立体選択性、活性保護基戦略、溶媒効果、ハロゲン化物効果、プロモーターの選択及び温度管理を制御することにより所望の配糖化物に至ることを意味する。炭水化物の場合には、一連のグリコシル化のアノマー活性化及びプロモーター設計が開発され、合成炭水化物化学に携わる技術者が利用できるようになっている。これらの手法はレビュー及びハンドブックで広く議論されている(例えば、A.V. Demchenko (ed.): Handbook of Chamical Glycoxylation, Wiley-VCH, 2008)。完全を期して一般的ないくつかの条件を以下に簡潔に述べるが、アノマー置換基に依る(アクセプター及びドナーの保護基は、グリコシル化下で元の状態のままである)。
グリコシルハロゲン化物(アグリコンとはF、Cl、Br、Iを意味する)は頻繁にグリコシル化反応に使われている。なぜなら、これらは容易な入手可能性及び十分な反応性を有しているからである。典型的には、アノマーハロゲン化物は求核置換への反応性の順序F<Cl<Br<Iに従う。グリコシル化反応は一般的に重金属イオン(主に水銀又は銀)及びルイス酸によって促進される。典型的なグリコシル化反応におけるグリコシルトリクロロアセトイミダート(アグリコンは−OC(=NH)CCl)は、触媒量のトリメチルシリルトリフラート又はBF−エーテラート等のルイス酸によって活性を高められる。グリコシル化反応におけるグリコシルアセテート又はベンゾエート(アグリコンは−OAc又は−OBzで表される)は、先ず求電子的活性化されて反応中間体を得て、そして求核性OHアクセプターで処理される。典型的な活性化因子の選択肢としては、ブレンステッド酸(例えば、p−TsOH、HClO又はスルファミン酸)、ルイス酸(例えば、ZnCl、SnCl、トリフラート塩、BF−エーテラート、トリチルペルクロラート、AlCl又はトリフリン酸無水物)又はその混合物が挙げられる。グリコシルドナーとしてのペンテニルグリコシド(アグリコンは−O−(CH−CH=CHである)は、NBS又はNIS等のプロモーターの存在下、適当なグリコシルアクセプターでトランスグリコシル化されてもよい。プロトン性酸又はルイス酸(トリフリン酸、Ag−トリフラート等)は反応を促進することができる。縮合反応においてチオグリコシド(アグリコンは、アルキルチオ基又は任意に置換されたフェニルチオ基を表わす)は、水銀(II)塩、Br、I、NBS、NIS、トリフリン酸、トリフラート塩、BF−エーテラート、トリメチルシリルトリフラート、ジメチル−メチルチオスルホニウムトリフラート、フェニルセレニルトリフラート、ヨードニウムジコリジンペルクロラート、テトラブチルアンモニウムヨージド又はそれらの混合物(好ましくはBr、NBS、NIS又はトリフリン酸)などのチオフィリックプロモーターによって活性化させることができる。
オリゴ糖又は多糖を構築するために、上記で得られる構造二糖ユニットを含有するマンノサミニルは更に変化させる必要がある。これらの反応はOH基の選択的保護/脱保護操作、アジド又は保護アミノ基のN−アセチルへの転換、アクセプターによる追加のクロス−カップリングのための還元末端のアノマー活性化、及び、任意にマンノサミンユニットにおける1級OH基の選択的酸化(2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−マンノピラヌロニック酸残基含有オリゴマーの場合。シントンがドナー、アクセプター又は両方として用いられるかどうかに依る)を含んでもよい。これらの反応は、炭水化物化学のトレーニングを受けた技術者のルーティン技術の範囲内であり、多数のハンドブック及びレビューで議論及び要約されている(例えば、S. Hanessian: Preparative Carbohydrate Chemistry, Marcel Dekker, 1997; M.L. Sinnot: Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, RSC Publishing, 2007; D.E. Levy, P. Fugedi (eds.): The Organic Chemistry of Sugars, Taylor & Francis, 2006; T.K. Lindhorst: Essentials of Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, Wiley-VCH, 2007)。
好ましい形態において、式1の化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、D−マンノサミン含有オリゴ糖の合成に用いられる。この合成は、上記に規定した式1で表される化合物をマンノサミンに還元する工程、続いてマンノサミンをD−マンノサミン基本単位に転換する工程、基本単位と適当なグリコシルアクセプターとのグリコシル化反応、及び、更にD−マンノサミン含有オリゴ糖を生じさせるための官能基操作、グリコシル化反応及び脱保護を含む。
本発明の第6のアスペクトは、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩の、N−アセチル−D−マンノサミン(ManNAc)、そのO−グリコシドの合成への使用に関する。N−アセチル−D−マンノサミンはシアル酸の生合成前駆体として非常に重要である。更に、ManNAc及びそのメチルα−及びβ−グリコシド(いずれもピラノシド及びフラノシドとして)は、マウス形質細胞腫に由来する免疫グロブリンの抗体様活性(antibody-like activity)を引き起こすることが証明されている[26]。
従来技術において、N−アセチル−D−グルコサミンから始まるエピマー化によるN−アセチル−D−マンノサミンの生成は、塩基又はエピメラーゼ酵素で開始される。平衡混合物に達することは、単離及び精製の問題を引き起こす。この問題は本発明により提供される式1で表される置換D−マンノサミン誘導体を用いて克服することができ、該置換D−マンノサミン誘導体は、接触水素化(上記第4のアスペクトを参照)で還元することができ、得られるマンノサミンは2つの方法でN−アセチル誘導体に変化させることができる(スキーム2)。第1の方法は、1以上のヒドロキシルの存在下で行われる選択的N−アセチル化であって、通常の知識を有する当業者に広く知られている反応である。この方法は、無水酢酸、アセチルハロゲン化物又はその他の適当な当業者に知られたアセチル転位試薬(典型的には無水酢酸又はアセチルクロリド)によるマンノサミンの処理を含む。この反応は塩基の存在下又は不存在下で溶液中で行うことができる。このような化学的変化には、これらに限られないが、アセトン、水、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN、及びこれらの混合液などの溶媒をを用いることができる。この反応に用いる好適な塩基は、無機塩基(例えば、KCO、NaCO又はNaHCO)又は有機塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン又はヒューニッヒ塩基)である。この反応の設定温度は−10℃から溶媒の還流温度までであってもよい。反応時間は、典型的には30分から2日間の間で、構造、設定温度及び反応剤の性質によって変わる。当業者には、OH基が影響を受けずに、アミノ部分をアセチル化するためにどのように反応を行えばよいか分かる。最終的に形成されたいずれの過度にアセチル化された副生成物も、例えばNaOH/MeOH又はNaOMe/MeOH処理によってManNAcに容易に変化させることができる。第2の方法は過アセチル化、その後、脱−O−アセチル化を行う。過アセチル化は、塩基の存在下又は不存在下でアシル化剤を用いて溶液中で行うことができる。このような化学的変化には、これらに限られないが、アセトン、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN、及びこれらの混合液などの溶媒をを用いることができる。この反応に用いる好適な塩基は、無機塩基(例えば、KCO、NaCO又はNaHCO)又は有機塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン又はヒューニッヒ塩基)である。好適なアシル化剤は、従来技術において知られた活性化された酢酸誘導体であり、典型的には、無水酢酸及びアセチルクロリドがアシル化剤として用いられる。この反応の設定温度は−10℃から溶媒の還流温度までであってもよい。反応時間は、典型的には30分から2日間の間で、構造、設定温度及び反応剤の性質によって変わる。当業者には、全ての官能基がアセチル化されるまでにどのように反応を行えばよいか分かる。脱−O−アセチル化反応は、塩基の存在下で溶液中で行うことができる。この反応に用いた塩基が無機強塩基(例えば、KCO、LiOH、NaOH、KOH又はBa(OH))である場合には、溶媒の選択肢は、水、アルコール又は水−有機溶媒(例えば、アセトン、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN)及びこれらの混合液である。塩基としてアルコラート(例えば、NaOMe、NaOEt又はKOBu)を選択した場合には、溶媒は対応するアルコール(例えば、NaOMe/MeOH)でなければならない。設定した反応の温度は、0℃から溶媒の還流温度までであってもよい。反応時間は、典型的には30分から1日間の間で、構造、設定温度及び反応剤の性質によって変わる。
Figure 2014510781
還元−アセチル化の一連の手順は、結晶形態の中間体遊離マンノサミンの単離により別々の初期段階で行うこともできるし、又は、粗脱ベンジル化したマンノサミンのアセチル化をワンポット法で行うこともできる。いずれの方法からも純粋な結晶性N−アセチルマンノサミンが高い収率で得られる。必要に応じて、N−アセチルマンノサミンは対応するO−グリコシドに広く知られている方法で変換されてもよい。
好ましい使用において、式1の化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、マンノサミンに還元され、ManNAcにアセチル化される。
本発明の第7のアスペクトは、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩の、ノイラミン酸誘導体(シアル酸及びその塩を含む)、及びシアル酸又は他のノイラミン酸含有オリゴ糖若しくは多糖の合成への使用に関する。
ノイラミン酸は、炭素数9の糖5−アミノ−3,5−デオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌロソン酸、特にN−アセチル−(Neu5Ac)及びN−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5Gc)(C−4、C−7、C−8及びC−9で様々な部分により置換されてもよい)の誘導体である。ノイラミン酸には多くの主要な生物的役割があり、胚形成から神経可塑性、病原体相互作用に及ぶ。これらは遊離形態ではほとんど起こらないが、糖タンパク質及び糖脂質の、非還元末端にある化学的共有結合、又は、オリゴ糖側鎖の内側の位置で通常見られる。最後から2番目の糖(penultimate sugars)(例えば、ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン及びN−アセチル−グルコサミン)に結合したシアル酸の結合は、最も多くはα−2,3−及びα−2,6−ケトシド結合である。
N−アセチル−ノイラミン酸は、Neu5Acアルドラーゼを用いてManNAc及びピルベートから、或いは、GlcNAc 2−エピメラーゼの作用において(on the action of)N−アセチルグルコサミンがエピマー化され、その場(in situ)で得られたManNAcは更にNeu5Acアルドラーゼの存在下でピルベートと反応する2−酵素連続システムにおいてのいずれかの酵素的経路によって通常生成される(例えば、文献[27]及び引用されている文献を参照)。
本発明の第6のアスペクトによって高純度で提供されるN−アセチルマンノサミンは、酵素系におけるノイラミン酸誘導体(好ましくはNeu5Ac)の製造に用いることができる。反応を生成物形成に進め、ManNAcの消費を最大にするために、一般的にアルドール縮合は多量の、通常7〜10倍の、過剰なピルベートを用いて行われる。この反応は連続反応器において行うこともできる。生成物は主にイオン交換クロマトグラフィーによって未反応ManNAc及びピルベートから単離される。単離工程は、過剰なピルビン酸の、揮発アセトアルデヒド及び二酸化炭素への分解を触媒するピルベートデカルボキシラーゼの使用によって簡略化することができる[28]。得られるNeu5Acは、一般的な化学修飾によって他の天然型ノイラミン酸誘導体に変形することができる。更に、アルドラーゼ酵素は幅広い基質を受け入れるため、マンノサミン、N−グリコリルマンノサミン又は他のマンノサミン誘導体(いずれも式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩から始まる簡便な変換で入手可能である)は、酵素的に指向されたアルドール縮合反応によって多くの天然及び非天然のノイラミン酸誘導体を合成するための主成分として機能することができる。
好ましい形態において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、マンノサミンに還元され、N−アセチルマンノサミンにアセチル化され、Neu5Acアルドラーゼの存在下でピルベートと反応し、N−アセチル−ノイラミン酸が形成される。
本発明の更なる形態は、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩の、ノイラミン酸誘導体含有オリゴ糖若しくは多糖、好ましくはシアロ複合糖質の合成への使用に関する。
シアロ複合糖質の中でも、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、3’−シアリル−3−フコシルラクトース、シアリルラクト−N−テトラオース、シアリル−フコシルラクト−N−テトラオース、ジシアリルラクト−N−テトラオース、シアリルラクト−N−フコペンタオース、モノシアリルラクト−N−ヘキサオース、モノフコシル−モノシアリルラクト−N−ヘキサオース、モノフコシル−モノシアリルラクト−N−ネオヘキサオース、モノフコシル−ジシアリルラクト−N−ネオヘキサオース等のシアリル化人乳オリゴ糖が重要であり、抗菌性、抗ウイルス性、免疫システム及び認知発達促進活性などの特有の生物学的活性に直接関連する。シアリル化人乳オリゴ糖は、腸内細菌叢の発達及び維持に寄与するヒト腸内システムでプレバイオティクスとして作用することが分かっている。さらに、シアリル化人乳オリゴ糖は、抗炎症性物質であることも証明されている。従って栄養産業において、これらの化合物は、合成及び天然型化合物及びその塩のいずれもが、乳児用粉ミルク、乳児用シリアル、乳児用臨床栄養製品、幼児用粉ミルクなどの生産において、又は、子供、大人、高齢者又は授乳中の女性向けの栄養補助食品もしくは機能的健康食品として、魅力的な成分である。同様に、これらの化合物は、医薬産業においても各種治療法を開発する上で関心を集めている。人乳オリゴ糖において、シアル酸残基は、常にα−グリコシド結合を通じてD−ガラクトースの末端3−O−及び/又は6−O−位に結合している。
一般的に、複合シアロオリゴ糖の合成は、多段階合成経路に従うか、酵素系で行われるか、又はその両方である。いかなる経路をとっても、好適に保護基で保護された、及び、アノマ中心において活性化されたノイラミン酸/シアル酸誘導体、又は、ノイラミニル/シアリル部分を転位することができる酵素の基質であるノイラミニル/シアリルグリコシドが、これらをホスト分子に結合するために必要である。
したがって、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩は、マンノサミンに還元され、そしてN−アセチルマンノサミンにアセチル化され、又は、アルドラーゼの基質である他の誘導体に変形され、アルドラーゼの存在下でピルベートと反応させて、上述したようにN−アセチル−ノイラミン酸又は他のノイラミン酸誘導体が形成され、そして、公知の方法によって所望のシアリル/ノイラミニルドナーに変換することができる。化学的グリコシル化において、2級OH基、アミノ基及びカルボキシル部分は、保護した形態でなければならず、当業者はそのための一連の保護基(主にエステル、エーテル及びアセタール)を入手することができる。OH保護の可能性の中、任意に置換されたアシル(例えば、アセチル、ベンゾイル、クロロアセチル又はクロロベンゾイル)及びエーテル型の基(例えば、ベンジル)は、合成に有用である。カルボキシル基はエステルで保護することができ、典型的にはメチル又はベンジルエステルにより保護することがでいる。また、アミノ官能基はアジド、ジアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、Troc、Fmoc又はフタルイミド基の形態で、又は、隣接する4−OHと環状カルバメートとしてマスキングすることができる。アノマ中心置換は、ハロ、アルキルチオ又はアリールチオ、ジアルキルホスファイト又はトリハロアセトイミダート(いずれもシアログリコシル化法で一般的に用いられている)の中のいずれであってもよい。上述した保護基導入及びアノマ中心活性化は、公知の方法で行うことができる(例えば、文献[29、30]及び引用されている文献を参照)。炭水化物化学(特にシアロ化学)の当業者は、どのシアル酸ドナーにおける保護基及びアノマーアグリコンが、収量、アノマーの比率及び副生成物の形成などの好ましい結果を高い確率で得られるグリコシル化反応を行うのに好適であるかを選択することができる。これらの要因は、プロモーターの設計、溶媒効果、反応条件、アクセプター構造等に依存する。酵素的シアロ転位プロセスのための、適当な酵素の基質(例えば、シアリルトランスフェラーゼのためのCMP−シアル酸、トランスシアリダーゼのための2−O−(p−ニトロフェニル)−又は2−O−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−シアロシド)は、上記方法で得られるノイラミン酸/シアル酸誘導体から容易に入手可能である。
好ましい使用において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、マンノサミンに還元され、N−アセチルマンノサミンにアセチル化され、そして後者はNeu5Acアルドラーゼの存在下でピルベートと反応させられ、N−アセチル−ノイラミン酸が形成され、シアリル化人乳オリゴ糖の酵素的又は化学的合成に便利な活性シアロシドに変換される。
本発明の第8のアスペクトは、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩の、ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤(例えば、ザナミビル及びその類似体)の合成への使用である[31]。したがって、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩はマンノサミンに還元され、N−アセチルマンノサミンにアセチル化され、又は、アルドラーゼの基質である他の誘導体に変形され、アルドラーゼの存在下でピルベートと反応させて、第7のアスペクトによってN−アセチル−ノイラミン酸が形成される。エステルの形態でカルボキシル基はブロックされており、ヒドロキシルは、好ましくは公知の方法でによりアシル基を用いて保護されている。グリコシドOH基は、C2−C3不飽和が形成されるβ−脱離に容易に供されるアグリコンに変換される。そのような基は、例えば、塩基による処理又はフラッシュ真空熱分解下でβ−脱離を容易に行うことができるハロゲン、アルキルチオ又はアリールチオ、アシルオキシ、又はイミダート(例えば、文献[32]及び引用されている文献を参照)。そして、得られたグリコール型化合物はC−4で処理され、立体配置を維持したままアジド基などの窒素官能基を導入し、そしてアミノ又はグアニジノ基に容易に変形することができ、最後の脱保護工程後、ザナミビル又は関連する誘導体を生じさせることができる(文献[33,34]及び引用されている文献を参照)。
好ましい形態において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、ザナミビルの合成に用いられる。
本発明の第9のアスペクトは、遊離D−マンノサミン及び/又はその塩の合成のために、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩を合成する方法に関する。この方法は、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩の利用に基づき、R(存在する場合にはR)は接触水素化反応において水素化分解により除去される(スキーム1)。この反応は、典型的にはプロトン性溶媒又はプロトン性溶媒の混合液中で行われる。プロトン性溶媒は、水、酢酸またはC〜Cアルコールであってもよい。1以上のプロトン性溶媒と、該プロトン性溶媒と部分的あるいは完全な混和性を有する1以上の適切な非プロトン性有機溶媒の混合液も使用することができる(例えば、THF、ジオキサン、酢酸エチル、アセトン等)。水、1以上のC〜Cアルコール、又は、水と1以上のC〜Cアルコールとの混合液は、溶媒系として好ましく用いられる。炭水化物誘導体を含有する溶液は適切ないかなる濃度であってもよく、炭水化物誘導体と選択した溶媒との懸濁液もまた使用することができる。反応混合液を10〜100℃の温度範囲内、好ましくは20〜50℃で、1〜50バールの絶対圧(100〜5000kPa)の水素雰囲気下、触媒の存在下で反応が完了するまで撹拌する。該触媒としては、例えば、パラジウム、ラネーニッケル、又はその他の適切な金属触媒が挙げられ、好ましくはチャコール担持パラジウム又はパラジウムブラックが挙げられる。また、水素がシクロヘキセン、シクロヘキサジエン、ギ酸又はギ酸アンモニウムからその場(in situ)で発生する場合は、水素移動反応も行うことができる。また、有機又は無機塩基又は酸及び/又は塩基性及び/又は酸性イオン交換樹脂の添加を用いて、水素化分解の反応速度を向上することも可能である。式1Aで表される化合物から開始する場合に、ハロゲン置換基が前駆体の置換ベンジル部分上に存在する場合、塩基性物質を用いることが特に好ましく、及び/又は、マンノサミン塩基の形成が望ましい。好ましい有機塩基としてはトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム、ジエチルアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。マンノサミン塩が目的生成物である場合には、有機又は無機酸が共溶媒又は添加剤として好ましく用いられる。好ましい有機塩基としては、これらに限定されないが、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、アンモニア、アンモニウムカルバメート及びジエチルアミンが挙げられる。マンノサミン塩が目的生成物である場合には、有機又は無機酸が共溶媒又は添加剤として好ましく用いられる。好ましい酸としてはギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、HCl、HBr等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。式1Bで表される化合物から開始する場合には、加水分解及び水素化分解が同時に行われている間、酸を用いなければならない。上記条件は、溶媒の簡単、便利且つ精巧な除去を可能にし、これにより純粋なマンノサミン又はその塩を得るものである。
遊離塩基の形態のマンノサミンが還元工程で形成される場合には、それを酸付加塩に変換することができる。塩形成は典型的には、無機又は有機の酸又は塩を用いた溶液中で行われる。これに限定されないがアセトン、水、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN、及びこれらの混合液などの溶媒をこのような変換に用いることができる。好適な無機酸としては、これらに限定されないが、HCl、HSO、HNO及びHPOが挙げられ、濃縮した状態又は水又は他の溶媒(例えば、メタノール、エタノール又はジオキサン)で希釈した状態で用いることができる。好適な有機酸としては、これらに限定されないが、ギ酸、酢酸及びシュウ酸などが挙げられる。これらの酸の塩を、マンノサミンよりも弱い塩基度の塩基と共に用いることができる。生成物は典型的にはジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、アセトン又はアルコール類などの非極性溶媒の添加により選択的沈殿、又は結晶化によって、高い収率で得られる。クロマトグラフィーは必要ない。
好ましい形態において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、遊離D−マンノサミン及び/又はその塩の合成に用いられる。これらの好ましい及びより好ましい保護基は、それぞれ、水素化分解の副生成物が、もっぱらトルエン、メチルナフタレン、又は、置換トルエン誘導体又は置換メチルナフタレン誘導体であるという利点を有する。このような副生成物は数トンの規模でも、水溶性糖類産物から蒸発及び/又は抽出過程を介して容易に除去することができる。
別の形態によれば、第2又は第3のアスペクトによって得られるN−ベンジル/置換されたベンジル−D−マンノサミンとN−ベンジル/置換されたベンジル−D−グルコサミンとの混合、又は、第3のアスペクトによって得られるN,N’−二置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノサミンとN,N’−二置換1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−グルコサミンとの混合を、酸(好ましくはHCl)の存在下で、触媒水素化分解に供し、D−マンノサミンヒドロクロリドとD−グルコサミンヒドロクロリドとの混合が得られ、ここからそれぞれの成分は選択的結晶化により分離することができ、純粋なD−グルコサミンヒドロクロリド及び純粋なD−マンノサミンヒドロクロリドが結果として得られる。
本発明の第10のアスペクトは、D−マンノサミン由来のシントン(すなわち、オリゴ糖又は多糖などのマンノサミン含有化合物の合成に用いることができるマンノサミン誘導体)を合成する方法に関する。
オリゴ糖又は多糖におけるN−アセチル−D−マンノサミンは、好ましくはβ−結合で結合している。β−グリコシド間結合を達成するために、主に2つのルートが開発されている。1つは、間接的なルートであって、最初にグルコピラノシル、グルクロピラノシル(gluculopyranosyl)又はグルクロピラノシルオキシムドナーを用いてβ−結合を形成し、該β−結合の形成後、マンノサミンユニットが構築されるものであり、もう1つは直接的なルートであって、好適なD−マンノサミニルドナーが採用されるものである[21]。後者のルートはD−マンノサミニルドナーの第2位に非関与基を必要とし、可能なシントンの中でも、2−アジド−2−デオキシ−D−マンノピラノシル誘導体だけが合成に関係を有すると証明されている。これらのグリコシルドナーは、D−グルコースから始まる複雑な多段階の経路を介して合成することができる。しかしながら、本発明の式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩はマンノサミニルドナーに容易に変換することができる。しかしながら、本発明の式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩はマンノサミニルドナーに容易に変換することができる。したがって、本発明の第9のアスペクトにしたがってR基(存在する場合にはR基)の除去によって得られた遊離アミンを、トリフリン酸アジドで、アミノ基をアジドに変換して、ジアゾ転位反応に供することができる[22]。この変換は、グリコシルカップリングに好適なマンノサミンO−又はS−グリコシドにおいても行うことができる(例えば、アルキル又はアリールチオグリコシド、O−ペンテニルグリコシド、文献[23]参照)。得られる2−アジド−又は2−アシルアミノ−2−デオキシ−D−マンノピラノース誘導体を反応させて3,4,6位(エーテル、エステル、アセタール)を保護することができ、適当なアノマー活性化(チオグリコシド、アセテート、ベンゾエート、トリクロロアセトイミダート、グリコシルハロゲン化物)の後、これらはグリコシド間カップリング反応においてβ−マンノサミニル部分を転位させる有用なシントンであると考えられている。
好ましい形態において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、マンノサミンの合成に用いられ、そして続いてマンノサミン含有オリゴ糖の製造に実用的なD−マンノサミン由来のシントンに変換される。
本発明の第11のアスペクトは、本発明の式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩から開始して他のD−マンノサミン由来のシントンを合成する方法に関する。したがって、マンノサミンのアミノ基(本発明の第4のアスペクトによってその化合物はR基(存在する場合にはR基)の除去により得られる)は、グリコシル化反応の前に保護基でマスキングすることができる。好適な保護基としては、例えば、フタリル、テトラクロロフタリル、ジチアサクシノイル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、ジメチルマレオニル、トリクロロエトキシカルボニル又はアリルオキシカルボニル基(これらすべては容易にグリコシル化反応に使用することができる)が挙げられる。これらの基は、塩基の存在下、アミンと、無水物、ハロゲン化物又は活性エステルなどの活性化されたアシル誘導体とを反応させることによって導入することができる。但し、ジチアサクシノイル基は例外で、二段階連続(エトキシチオカルボニル化、続いてクロロカルボニルスルフェニルクロリドを用いて環化)を通して形成することができる。得られる2−アシルアミノ−2−デオキシ−D−マンノピラノース誘導体を反応させて3,4,6位(エーテル、エステル、アセタール)を保護することができ、適当なアノマー活性化(チオグリコシド、アセテート、ベンゾエート、トリクロロアセトイミダート、グリコシルハロゲン化物)の後、これらはグリコシド間カップリング反応においてβ−マンノサミニル部分を転位させる有用なシントンであると考えられている。
本発明の第12のアスペクトは、D−マンノサミン含有オリゴ糖又は多糖を合成する方法に関する。髄膜炎菌、インフルエンザ菌又は肺炎球菌などのいくつかの病原菌は、2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−マンノピラノシル又は−マンノピラヌロニック酸(mannopyranuronic acid)構造ユニットを含むきょう膜多糖を有する(例えば、文献[24]参照)。細菌の表面に存在するきょう膜多糖は細菌の病原性因子と関連していると認識されてから、上述した微生物によって引き起こされる病気の免疫学的予防に用いられるようにライセンスされたきょう膜多糖ワクチンの開発に至った[25]。これらの抗原の化学的合成には、マンノサミニルユニットを、オリゴ糖又は多糖鎖の特定の位置へ導入する必要がある。アノマー活性化後、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩から、上述したように、水素化分解、及び続く好適なグリコシルドナーへの変換によって得られるマンノサミニル基本単位を、グリコシル化条件下で、適当なアクセプターと反応させる。用語「グリコシル化条件」は、この文脈において、非プロトン性溶媒中又は複数の非プロトン性溶媒の混合液中、活性化因子の存在下で反応を行ない、非隣接基を介した共役の立体選択性、活性保護基戦略、溶媒効果、ハロゲン化物効果、プロモーターの選択及び温度管理を制御することにより所望の配糖化物に至ることを意味する。炭水化物の場合には、一連のグリコシル化のアノマー活性化及びプロモーター設計が開発され、合成炭水化物化学に携わる技術者が利用できるようになっている。これらの手法はレビュー及びハンドブックで広く議論されている(例えば、A.V. Demchenko (ed.): Handbook of Chamical Glycoxylation, Wiley-VCH, 2008)。完全を期して一般的ないくつかの条件を以下に簡潔に述べるが、アノマー置換基に依る(アクセプター及びドナーの保護基は、グリコシル化下で元の状態のままである)。
グリコシルハロゲン化物(アグリコンとはF、Cl、Br、Iを意味する)は頻繁にグリコシル化反応に使われている。なぜなら、これらは容易な入手可能性及び十分な反応性を有しているからである。典型的には、アノマーハロゲン化物は求核置換への反応性の順序F<Cl<Br<Iに従う。グリコシル化反応は一般的に重金属イオン(主に水銀又は銀)及びルイス酸によって促進される。典型的なグリコシル化反応におけるグリコシルトリクロロアセトイミダート(アグリコンは−OC(=NH)CCl)は、触媒量のトリメチルシリルトリフラート又はBF−エーテラート等のルイス酸によって活性を高められる。グリコシル化反応におけるグリコシルアセテート又はベンゾエート(アグリコンは−OAc又は−OBzで表される)は、先ず求電子的活性化されて反応中間体を得て、そして求核性OHアクセプターで処理される。典型的な活性化因子の選択肢としては、ブレンステッド酸(例えば、p−TsOH、HClO又はスルファミン酸)、ルイス酸(例えば、ZnCl、SnCl、トリフラート塩、BF−エーテラート、トリチルペルクロラート、AlCl又はトリフリン酸無水物)又はその混合物が挙げられる。グリコシルドナーとしてのペンテニルグリコシド(アグリコンは−O−(CH−CH=CHである)は、NBS又はNIS等のプロモーターの存在下、適当なグリコシルアクセプターでトランスグリコシル化されてもよい。プロトン性酸又はルイス酸(トリフリン酸、Ag−トリフラート等)は反応を促進することができる。縮合反応においてチオグリコシド(アグリコンは、アルキルチオ基又は任意に置換されたフェニルチオ基を表わす)は、水銀(II)塩、Br、I、NBS、NIS、トリフリン酸、トリフラート塩、BF−エーテラート、トリメチルシリルトリフラート、ジメチル−メチルチオスルホニウムトリフラート、フェニルセレニルトリフラート、ヨードニウムジコリジンペルクロラート、テトラブチルアンモニウムヨージド又はそれらの混合物(好ましくはBr、NBS、NIS又はトリフリン酸)などのチオフィリックプロモーターによって活性化させることができる。
オリゴ糖又は多糖を構築するために、上記で得られるマンノサミニル含有構造二糖ユニットは更に変形させる必要がある。これらの反応はOH基の選択的保護/脱保護操作、アジド又は保護アミノ基のN−アセチルへの転換、アクセプターによる追加のクロス−カップリングのための還元末端のアノマー活性化、及び、任意にマンノサミンユニットにおける1級OH基の選択的酸化(2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−マンノピラヌロニック酸残基含有オリゴマーの場合。シントンがドナー、アクセプター又は両方として用いられるかどうかに依る)を含んでもよい。これらの反応は、炭水化物化学のトレーニングを受けた技術者のルーティン技術の範囲内であり、多数のハンドブック及びレビューで議論及び要約されている(例えば、S. Hanessian: Preparative Carbohydrate Chemistry, Marcel Dekker, 1997; M.L. Sinnot: Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, RSC Publishing, 2007; D.E. Levy, P. Fugedi (eds.): The Organic Chemistry of Sugars、Taylor & Francis, 2006; T.K. Lindhorst: Essentials of Carbohydrate Chemistry and Biochemistry, Wiley-VCH, 2007)。
好ましい形態において式1の化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、D−マンノサミン含有オリゴ糖の合成に用いられる。この合成は、上記に規定した式1で表される化合物をマンノサミンに還元する工程、続いてマンノサミンをD−マンノサミン基本単位に変換する工程、基本単位と適当なグリコシルアクセプターとのグリコシル化反応、及び、更にD−マンノサミン含有オリゴ糖を生じさせるための官能基操作、グリコシル化反応及び脱保護を含む。
本発明の第13のアスペクトは、N−アセチル−D−マンノサミン(ManNAc)及びそのO−グリコシドを合成する方法に関する。N−アセチル−D−マンノサミンはシアル酸の生合成前駆体として非常に重要である。更に、ManNAc及びそのメチルα−及びβ−グリコシド(いずれもピラノシド及びフラノシドとして)は、マウス形質細胞腫に由来する免疫グロブリンの抗体様活性を引き起こすることが証明されている[26]。
N−アセチル−D−グルコサミンから始まるエピマー化によるN−アセチル−D−マンノサミンの生成は、塩基又はエピメラーゼ酵素で開始される。平衡混合物に達することは、単離及び精製の問題を引き起こす。この問題は本発明により提供される式1で表される置換D−マンノサミン誘導体を用いて克服することができ、該置換D−マンノサミン誘導体は、接触水素化(上記第9のアスペクトを参照)で還元することができ、得られるマンノサミンは2つの方法でN−アセチル誘導体に変化させることができる(スキーム2)。第1の方法は、1以上のヒドロキシルの存在下で行われる選択的N−アセチル化であって、通常の知識を有する当業者に広く知られている反応である。この方法は、無水酢酸、アセチルハロゲン化物又はその他の適当な当業者に知られたアセチル転位試薬(典型的には無水酢酸又はアセチルクロリド)によるマンノサミンの処理を含む。この反応は塩基の存在下又は不存在下で溶液中で行うことができる。このような化学的変化には、これらに限られないが、アセトン、水、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN、及びこれらの混合液などの溶媒をを用いることができる。この反応に用いる好適な塩基は、無機塩基(例えば、KCO、NaCO又はNaHCO)又は有機塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン又はヒューニッヒ塩基)である。この反応の設定温度は−10℃から溶媒の還流温度までであってもよい。反応時間は、典型的には30分から2日間の間で、構造、設定温度及び反応剤の性質によって変わる。当業者には、OH基が影響を受けずに、アミノ部分をアセチル化するためにどのように反応を行えばよいか分かる。最終的に形成されたいずれの過度にアセチル化された副生成物も、例えばNaOH/MeOH又はNaOMe/MeOH処理によってManNAcに容易に変化させることができる。第2の方法は過アセチル化、その後、脱−O−アセチル化を行う。過アセチル化は、塩基の存在下又は不存在下でアシル化剤を用いて溶液中で行うことができる。このような化学的変化には、これらに限られないが、アセトン、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN、及びこれらの混合液などの溶媒をを用いることができる。この反応に用いる好適な塩基は、無機塩基(例えば、KCO、NaCO又はNaHCO)又は有機塩基(例えば、ピリジン、トリエチルアミン又はヒューニッヒ塩基)である。好適なアシル化剤は、従来技術において知られた活性化された酢酸誘導体であり、典型的には、無水酢酸及びアセチルクロリドがアシル化剤として用いられる。この反応の設定温度は−10℃から溶媒の還流温度までであってもよい。反応時間は、典型的には30分から2日間の間で、構造、設定温度及び反応剤の性質によって変わる。当業者には、全ての官能基がアセチル化されるまでにどのように反応を行えばよいか分かる。脱−O−アセチル化反応は、塩基の存在下で溶液中で行うことができる。この反応に用いた塩基が無機強塩基(例えば、KCO、LiOH、NaOH、KOH又はBa(OH))である場合には、溶媒の選択肢は、水、アルコール又は水−有機溶媒(例えば、アセトン、ジオキサン、DMSO、THF、DMF、アルコール類、MeCN)及びこれらの混合液である。塩基としてアルコラート(例えば、NaOMe、NaOEt又はKOBu)を選択した場合には、溶媒は対応するアルコール(例えば、NaOMe/MeOH)でなければならない。設定した反応の温度は、0℃から溶媒の還流温度までであってもよい。反応時間は、典型的には30分から1日間の間で、構造、設定温度及び反応剤の性質によって変わる。
還元−アセチル化の一連の手順は、結晶形態の中間体遊離マンノサミンの単離により別々の初期段階で行うこともできるし、又は、粗脱ベンジル化したマンノサミンのアセチル化をワンポット法で行うこともできる。いずれの方法からも純粋な結晶性N−アセチルマンノサミンが高い収率で得られる。必要に応じて、N−アセチルマンノサミンは対応するO−グリコシドに広く知られている方法で変換されてもよい。
好ましい使用において、式1の化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、マンノサミンに還元され、ManNAcにアセチル化される。
本発明の第13のアスペクトに続き、本発明の第14のアスペクトは、シアル酸及びその塩などノイラミン酸誘導体を合成する方法に関する。
ノイラミン酸は、炭素数9の糖5−アミノ−3,5−デオキシ−D−グリセロ−D−ガラクト−ノヌロソン酸、特にN−アセチル−(Neu5Ac)及びN−グリコリル−ノイラミン酸(Neu5Gc)(C−4、C−7、C−8及びC−9で様々な部分により置換されてもよい)の誘導体である。ノイラミン酸には多くの主要な生物的役割があり、胚形成から神経可塑性、病原体相互作用に及ぶ。これらは遊離形態ではほとんど起こらないが、糖タンパク質及び糖脂質の、非還元末端にある化学的共有結合、又は、オリゴ糖側鎖の内側の位置で通常見られる。最後から2番目の糖(例えば、ガラクトース、N−アセチル−ガラクトサミン及びN−アセチル−グルコサミン)に結合したシアル酸の結合は、最も多くはα−2,3−及びα−2,6−ケトシド結合である。
N−アセチル−ノイラミン酸は、Neu5Acアルドラーゼを用いてManNAc及びピルベートから、或いは、GlcNAc 2−エピメラーゼの作用において(on the action of)N−アセチルグルコサミンがエピマー化され、その場(in situ)で得られたManNAcは更にNeu5Acアルドラーゼの存在下でピルベートと反応する2−酵素連続システムにおいてのいずれかの酵素的経路によって通常生成される(例えば、文献[27]及び引用されている文献を参照)。
本発明の第13のアスペクトによって高純度で提供されN−アセチルマンノサミンは、酵素系におけるノイラミン酸誘導体(好ましくはNeu5Ac)の製造に用いることができる。反応を生成物形成に進め、ManNAcの消費を最大にするために、一般的にアルドール縮合は多量の、通常7〜10倍の、過剰なピルベートを用いて行われる。この反応は連続反応器において行うこともできる。生成物は主にイオン交換クロマトグラフィーによって未反応ManNAc及びピルベートから単離される。単離工程は、過剰なピルビン酸の、揮発アセトアルデヒド及び二酸化炭素への分解を触媒するピルベートデカルボキシラーゼの使用によって簡略化することができる[28]。得られるNeu5Acは、一般的な化学修飾によって他の天然型ノイラミン酸誘導体に変形することができる。更に、アルドラーゼ酵素は幅広い基質を受け入れるため、マンノサミン、N−グリコリルマンノサミン又は他のマンノサミン誘導体(いずれも式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩から始まる簡便な変換で入手可能である)は、酵素的に指向されたアルドール縮合反応によって多くの天然及び非天然のノイラミン酸誘導体を合成するための主成分として機能することができる。
好ましい形態において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、マンノサミンに還元され、N−アセチルマンノサミンにアセチル化され、Neu5Acアルドラーゼの存在下でピルベートと反応し、N−アセチル−ノイラミン酸が形成される。
本発明の第15のアスペクトは、ノイラミン酸誘導体含有オリゴ糖若しくは多糖、好ましくはシアロ複合糖質を合成する方法に関する。
シアロ複合糖質の中でも、3’−シアリルラクトース、6’−シアリルラクトース、3’−シアリル−3−フコシルラクトース、シアリルラクト−N−テトラオース、シアリル−フコシルラクト−N−テトラオース、ジシアリルラクト−N−テトラオース、シアリルラクト−N−フコペンタオース、モノシアリルラクト−N−ヘキサオース、モノフコシル−モノシアリルラクト−N−ヘキサオース、モノフコシル−モノシアリルラクト−N−ネオヘキサオース、モノフコシル−ジシアリルラクト−N−ネオヘキサオース等のシアリル化人乳オリゴ糖が重要であり、抗菌性、抗ウイルス性、免疫システム及び認知発達促進活性などの特有の生物学的活性に直接関連する。シアリル化人乳オリゴ糖は、腸内細菌叢の発達及び維持に寄与するヒト腸内システムでプレバイオティクスとして作用することが分かっている。さらに、シアリル化人乳オリゴ糖は、抗炎症性物質であることも証明されている。従って栄養産業において、これらの化合物は、合成及び天然型化合物及びその塩のいずれもが、乳児用粉ミルク、乳児用シリアル、乳児用臨床栄養製品、幼児用粉ミルクなどの生産において、又は、子供、大人、高齢者又は授乳中の女性向けの栄養補助食品もしくは機能的健康食品として、魅力的な成分である。同様に、これらの化合物は、医薬産業においても各種治療法を開発する上で関心を集めている。人乳オリゴ糖において、シアル酸残基は、常にα−グリコシド結合を通じてD−ガラクトースの末端3−O−及び/又は6−O−位に結合している。
一般的に、複合シアロオリゴ糖の合成は、多段階合成経路に従うか、酵素系で行われるか、又はその両方である。いかなる経路をとっても、好適に保護基で保護された、及び、アノマ中心において活性化されたノイラミン酸/シアル酸誘導体、又は、ノイラミニル/シアリル部分を転位することができる酵素の基質であるノイラミニル/シアリルグリコシドが、これらをホスト分子に結合するために必要である。
したがって、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩は、マンノサミンに還元され、そしてN−アセチルマンノサミンにアセチル化され、又は、アルドラーゼの基質である他の誘導体に変形され、アルドラーゼの存在下でピルベートと反応させて、上述したようにN−アセチル−ノイラミン酸又は他のノイラミン酸誘導体が形成され、そして、公知の方法によって所望のシアリル/ノイラミニルドナーに変換することができる。化学的グリコシル化において、2級OH基、アミノ基及びカルボキシル部分は、保護した形態でなければならず、当業者はそのための一連の保護基(主にエステル、エーテル及びアセタール)を入手することができる。OH保護の可能性の中、任意に置換されたアシル(例えば、アセチル、ベンゾイル、クロロアセチル又はクロロベンゾイル)及びエーテル型の基(例えば、ベンジル)は、合成に有用である。カルボキシル基はエステルで保護することができ、典型的にはメチル又はベンジルエステルにより保護することがでいる。また、アミノ官能基はアジド、ジアセチル、トリフルオロアセチル、トリクロロアセチル、Troc、Fmoc又はフタルイミド基の形態で、又は、隣接する4−OHと環状カルバメートとしてマスキングすることができる。アノマ中心置換は、ハロ、アルキルチオ又はアリールチオ、ジアルキルホスファイト又はトリハロアセトイミダート(いずれもシアログリコシル化法で一般的に用いられている)の中のいずれであってもよい。上述した保護基導入及びアノマ中心活性化は、公知の方法で行うことができる(例えば、文献[29、30]及び引用されている文献を参照)。炭水化物化学(特にシアロ化学)の当業者は、どのシアル酸ドナーにおける保護基及びアノマーアグリコンが、収量、アノマーの比率及び副生成物の形成などの好ましい結果を高い確率で得られるグリコシル化反応を行うのに好適であるかを選択することができる。これらの要因は、プロモーターの設計、溶媒効果、反応条件、アクセプター構造等に依存する。酵素的シアロ転位プロセスのための、適当な酵素の基質(例えば、シアリルトランスフェラーゼのためのCMP−シアル酸、トランスシアリダーゼのための2−O−(p−ニトロフェニル)−又は2−O−(4−メチルウンベリフェリル)−α−D−シアロシド)は、上記方法で得られるノイラミン酸/シアル酸誘導体から容易に入手可能である。
好ましい使用において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、マンノサミンに還元され、N−アセチルマンノサミンにアセチル化され、そして後者はNeu5Acアルドラーゼの存在下でピルベートと反応させられ、N−アセチル−ノイラミン酸が形成され、シアリル化人乳オリゴ糖の酵素的又は化学的合成に便利な活性シアロシドに変換される。
本発明の第16のアスペクトは、ザナミビル及びその類似体などのウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤を合成する方法を提供する[31]。したがって、式1で表される置換D−マンノサミン誘導体及びその塩はマンノサミンに還元され、N−アセチルマンノサミンにアセチル化され、又は、アルドラーゼの基質である他の誘導体に変形され、アルドラーゼの存在下でピルベートと反応させて、第13のアスペクトによってN−アセチル−ノイラミン酸が形成される。エステルの形態でカルボキシル基はブロックされており、ヒドロキシルは、好ましくは公知の方法でによりアシル基により保護されている。グリコシドOH基は、C2−C3不飽和が形成されるβ−脱離に容易に供されるアグリコンに変換される。そのような基は、例えば、塩基による処理又はフラッシュ真空熱分解下でβ−脱離を容易に行うことができるハロゲン、アルキルチオ又はアリールチオ、アシルオキシ、又はイミダート(例えば、文献[32]及び引用されている文献を参照)。そして、得られたグリカール型化合物はC−4で処理され、立体配置を維持したままアジド基などの窒素官能基を導入し、そしてアミノ又はグアニジノ基に容易に変形することができ、最後の脱保護工程後、ザナミビル又は関連する誘導体を生じさせることができる(文献[33,34]及び引用されている文献を参照)。
好ましい形態において、式1で表される化合物(式中、R(存在する場合はR)は、フェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基であり、R(存在する場合はR)はより好ましくはベンジル基である)は、ザナミビルの合成に用いられる。
当然のことながら、第10〜第17のアスペクトの方法の特徴は、本発明の第2及び第3のアスペクトを組み合わせ、第10〜第17のアスペクトに示されている化合物の形成の全体の方法を形成してもよい
本発明の他の特徴は以下の実施例から明らかになるが、実施例は本発明を説明するものであって、本発明を限定するものではない。
実施例1 N,N’−ジベンジル−1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノピラノース
D(−)−フルクトース(50g、277.5mmol)とベンジルアミン(100ml)の混合液に、室温でベンジルアンモニウムクロリド(30g、208mmol)を添加した。6時間混合液を撹拌し、その間にエタノール(50ml)を添加して混合液を均一にした。一晩撹拌した後、新たにエタノール(50ml)を添加し、均一の混合液を得た。2時間後、水(150ml)を加え、3時間撹拌を続けた。得られた懸濁液を濾過により分離し、濾過物を冷たい水性エタノールで洗浄し、一定重量まで真空下で乾燥し、21.3gの白色固体の見出しの化合物を得た。母液は、N,N’−ジベンジル−1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノピラノースをN,N’−ジベンジル−1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−グルコピラノースと共に含有していた。
融点:105〜111℃
純度:>95%(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による)
H NMR(600MHz、DMSO)δ:(α−及びβ−アノマーの混合) H−1 3.90及び4.40、C−NH 2.60、2.98及び3.11、C−NH−CH 3.68、3.77、3.79及び4.00、Ph 7.16−7.40、H−2 2.77及び2.82、C−NH 1.80、2.00及び2.09、C−NH−CH 3.74、3.88及び4.08、Ph 7.16−7.40、H−3 3.43及び3.67、C−OH 4.66及び4.74、H−4 3.27及び3.30、C−OH 4.66及び4.71、H−5 2.94及び3.45、H−6 3.48、3.49、3.58及び3.68、C−OH 4.30及び4.34.
13C NMR(125MHz、DMSO)δ:(α−及びβ−アノマーの混合)C−1 83.6及び87.3、C−NH−CH 48.1及び48.2、C−2 60.4及び61.5、C−NH−CH 50.7及び53.9、C−3 70.0及び75.6、C−4 67.7及び68.0、C−5 71.9及び78.2、C−6 61.1及び61.3、Ph 141.9、141.1、140.9、140.8、128.1、128.0、127.9、127.7、126.6及び126.4.
実施例2 N−ベンジル−2−アミノ−2−デオキシ−D−マンノース
A)典型的なフルクトースからの手順:
0℃で、18.0g(100mmol)のD−(−)−フルクトースを新しく蒸留したベンジルアミン(3〜8当量)で処理した。反応混合物を室温まで温め、そして40℃で20時間加熱した。薄層クロマトグラフィー(TLC)(ジクロロメタン:メタノール:水酸化アンモニウム=2:1:1)は、出発物質の消失を示した。以下の方法で石油エーテルによって何度も洗浄して過剰なベンジルアミンを除去した:150〜500mLの石油エーテルを反応混合物に添加し、続いて、炭水化物−リッチ相が凍結するまで、-25〜-20℃に冷却した(ドライアイス−アルコール浴)。そして有機層をデカントし、この工程を4〜5回繰り返した。得られた粗フルクトシルアミンをメタノール(200〜300mL)で希釈し、室温で2〜4時間、氷酢酸(15〜20mL)で処理した。TLC(ジクロロメタン:メタノール:水酸化アンモニウム=20:4:0.5)は、ケトシルアミンの消費、及び、主生成物としてN−ベンジル−2−アミノ−2−デオキシ−D−マンノースとN−ベンジル−2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコースの形成(比率2:8〜4:6)を示した。減圧下で溶媒を蒸発させ、残渣をカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン:メタノール:水酸化アンモニウム=20:4:0.5)により精製し、非晶質固体としてN−ベンジル−2−アミノ−2−デオキシ−D−マンノースを得た(4.1〜8.6g)。
H NMR(600MHz、DMSO)δ:α−アノマー H−1 5.02 dd、C−OH 6.21 d、H−2 2.69 dd、NH 1.97 br、CH 3.82、3.70 d、Ph 7.17 − 7.40 m、H−3 3.66 m、C−OH 4.50 d、H−4 3.32 m、C−OH 4.67 d、H−5 3.51 m、H−6x 3.47 m、H−6y 3.62 m、C−OH 4.36 t; β−アノマー H−1 4.95 dd、C−OH 6.15 d、H−2 2.89 t、NH 2.22 br、CH 3.79、3.68 d、Ph 7.17 − 7.40 m、H−3 4.10 m、C−OH 4.50 br、H−4 3.67 m、C−OH 4.76 br、H−5 3.77 m、H−6x 3.33 m、H−6y 3.57 m、C−OH 4.35 t.
13C NMR(125MHz、DMSO)δ:α−アノマー C−1 91.3、C−2 61.4、CH 51.8、Ph 141.0、128.1、127.9、126.6、C−3 69.6、C−4 67.7、C−5 72.6、C−6 61.4; β−アノマー C−1 101.5、C−2 68.0、CH 51.2、Ph 140.7、128.1、127.9、126.6、C−3 69.0、C−4 69.5、C−5 80.3、C−6 63.6.2.
B)実施例1の化合物から:N,N’−ジベンジル−1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノピラノース(10g)のメタノール(30ml)懸濁液に、濃HCl溶液(4ml)を徐々に添加し、2〜3時間、混合液を40℃に加熱した。溶媒を注意深く蒸発させ、残渣をメタノールに取り、再度3〜4回蒸発させた。得られた固体をエタノールに懸濁し、加熱して還流させ、熱濾過によって不溶性物質を除去し、濾液を乾燥するまで蒸発させ、N−ベンジル−2−アミノ−2−デオキシ−D−マンノースのヒドロクロリド塩を得た。
実施例3 D−マンノサミンヒドロクロリド
A)実施例2Aにより得られたN−ベンジル−2−アミノ−2−デオキシ−D−マンノースとN−ベンジル−2−アミノ−2−デオキシ−D−グルコースの粗混合物をメタノール(20〜100mL)に懸濁し、pHを約1〜2になるようにHClで調整した(10〜40mLの2M HCl及び追加の2〜8mLの濃HCl)。チャコール担持パラジウム(10%Pd)(0.4〜1.6g)を添加し、H雰囲気下(5バール(bar)まで)、すべての出発物質が消費されるまで、室温又は45℃で反応混合液を撹拌した。反応混合液をCelite(登録商標)で濾過し、20〜50mLのメタノール:水(2:1)で洗浄した。溶媒を約20〜40mLの体積が残るまで蒸発させた。メタノール(40〜80mL)を糖水溶液に添加してグルコサミンヒドロクロリドの結晶化を開始し、一晩0〜5℃で放置した。結晶を濾別し、冷たいメタノールで洗浄した。母液からメタノールを蒸発させ、残りの水溶液に20〜80mLのイソプロパノールを添加した。溶液を一晩0〜5℃で放置し、形成された結晶を濾過し、冷たいイソプロパノールで洗浄し、乾燥し、3.9gのD−マンノサミンヒドロクロリドが単離された。
B)12.0gの実施例2AのN−ベンジル−マンノサミンに、20ml水に対する10%Pd/C(0.5g)の懸濁液を添加した。反応混合液のpHを10%HCl溶液で4〜4.5に調整した。H圧力下(2.5bar)、40℃で6時間、反応混合液を撹拌した。そしてpHを10%HCl溶液で3に調整した。触媒が沈降するように反応混合液を撹拌せずに一晩放置した(触媒は反応器中に残す)。触媒を濾過し、少量のメタノール:水(2:1)で洗浄した。メタノールを減圧下で除去し、15mLのイソプロパノールで置き換えた。イソプロパノールを蒸留で除き、同じ手順を再度行った。反応混合物に、30mlのiPrOHを添加し、4℃で一晩、生成物を結晶化させた。結晶を濾過して5〜8mLのイソプロパノールで洗浄した。濡れた生成物を室温で乾燥させ、8.4gのD−マンノサミンヒドロクロリドを得た。
C)30mLのメタノールに対する10gのN,N’−ジベンジル−1,2−ジアミノ−1,2−ジデオキシ−D−マンノピラノース懸濁液に、4mLの濃塩酸を徐々に添加した。反応混合液を40℃まで加熱し、この温度で完了するまで撹拌した。チャコール担持パラジウム(10%Pd)を添加して1mLの水中の懸濁液とした。反応混合液をH下に置き、絶対圧2.5atm(253kPa)まで加圧し、40℃まで3時間、加熱した。そして触媒を濾過し、3mLのメタノール:水(2:1)で1回洗浄した。メタノールを減圧下で除去し、10〜15mLのイソプロパノールで数回置き換えた(結晶が形成されるまで毎回蒸留した)。結晶が形成されたら溶媒蒸留を停止し、4℃で少なくとも5時間、反応混合液を撹拌した。D−マンノサミンヒドロクロリドの結晶を濾過し、2mLのイソプロパノールで洗浄し、そして2倍の体積の(2 volumes)エタノール中で再結晶化し、3〜5分間還流させ、熱濾過した。
実施例4 N−アセチル−D−マンノサミン
30mlのエタノール:水(6:1)混合液に対する10.0gの実施例3のD−マンノサミンヒドロクロリドの懸濁液を0℃まで冷却し、トリエチルアミン(1.2当量)を同じ温度で加えた。温度を0〜5℃に維持しながら、無水酢酸(1.2当量)を滴下した。添加完了後(20〜30分)、反応混合液にN−アセチル−D−マンノサミン結晶を生じさせ(seeded with)、一晩4℃で撹拌した。形成された結晶を濾過し、洗浄し、乾燥し、9.65gのN−アセチル−D−マンノサミンを得た。
本明細書において、他に明記のない限り、単語「又は(or)」は、述べられた条件の一方又は両方が満たされる場合に真値を返す演算子という意味で用いられており、これと対照的なのは、複数ある条件の中の1つだけ満たすことを要する「排他的OR(exclusive or)」という演算子である。単語「を含む(comprising)」は「を含む(including)」という意味で用いられているのであって、「からなる(consisting of)」ではない。上記で認めた全ての従来の教示は本明細書に参照することにより組み込まれる)。本明細書における先に発行された文献のいかなる認識も、該文献の教示が本明細書の時点におけるオーストラリア又は他国の共通の一般知識であるという自白又は表明として捉えるべきではない。
文献リスト
全ての下記に引用されている文献及び全ての文中で言及している文献はここに参照することにより本発明の教示に組み込まれる。
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2 S. Yamaguchi et al. Trends Glycosci. Glycotechnol. 18, 245 (2006)
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10 R.U. Lemieux et al. Tetrahedron Lett. 6, 4221 (1965)
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12 R. Bodner et al. J. Org. Chem. 70, 3988 (2005)
13 J. Calveras et al. Tetrahedron 66, 4284 (2010)
14 K. Takeda et al. Tetrahedron Lett. 33, 7145 (1992)
15 T.M. Wrodnigg et al. Topics Curr. Chem. 215, 115 (2001)
16 J.F. Carson J. Am. Chem. Soc. 78, 3728 (1956)
17 DE 935009; US 2884411
18 K. Heyns et al. Chem. Ber. 88, 1551 (1955)
19 P.S. Piispanen et al. J. Org. Chem. 68, 628 (2003)
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30 X. Chen et al. ACS Chem. Biol. 5, 163 (2010)
31 M. von Itzstein et al. Nature 363, 418 (1993)
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33 M. von Itzstein et al. Carbohydr. Res. 244, 181 (1993)
34 WO 2010/061182 A2

Claims (25)

  1. 下記式1で表される化合物又はその塩。
    Figure 2014510781
    (式中、Rは水素化分解により除去可能な基であり、RはOHであるか、Rは−NHRである(式中、Rは水素化分解により除去可能な基である))
  2. 下記式1Aで表されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物又はその塩。
    Figure 2014510781
    (式中、Rは水素化分解により除去可能な基であり、好ましくはフェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基、より好ましくはベンジル基)
  3. 下記式1Bで表されることを特徴とする、請求項1に記載の化合物又はその塩。
    Figure 2014510781
    (式中、R及びRはそれぞれ独立に水素化分解により除去可能な基であり、好ましくはフェニル、アルキル又はハロゲンからなる群より選択された1以上の基で任意に置換されたベンジル又はナフチルメチル基、より好ましくはベンジル基)
  4. 以下の工程を含むことを特徴とする、請求項3に記載の式1Bで表される化合物を調製する方法。
    a)R−NH及びその塩でD−フルクトースを処理する工程、及び
    b)反応混合物から式1Bで表される化合物を分離する工程。
  5. −NHがベンジルアミンであることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
  6. 以下の工程を含むことを特徴とする、請求項2に記載の式1Aで表される化合物を調製する方法。
    a)R−NHでD−フルクトースを処理し、フルクトシルアミン誘導体を得る工程、
    b)混合物から過剰R−NHを分離することによって、フルクトシルアミン誘導体を粗生成物として単離する工程、及び
    c)得られた粗フルクトシルアミン誘導体を酸で処理する工程。
  7. −NHはベンジルアミンであり、工程C)の反応がメタノール中、氷酢酸の存在下で行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
  8. 以下の工程を含むことを特徴とする、請求項2に記載の式1Aで表される化合物を調製する方法。
    a)請求項4又は5に記載のD−フルクトースから式1Bで表される化合物を形成する工程、
    b)式1Bで表される化合物を酸で処理し、−NHR基を除去する工程。
  9. D−マンノサミン若しくはその塩、
    D−マンノサミン基本単位若しくはマンノサミン含有オリゴ糖若しくは多糖、
    N−アセチル−D−マンノサミン、そのO−グリコシド又は、その水和物若しくは溶媒和化合物、
    ノイラミン酸誘導体若しくはその塩、又はノイラミン酸含有オリゴ糖若しくは多糖、或いは、
    ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤の合成への、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物の使用。
  10. 前記ノイラミン酸誘導体がシアル酸又はその塩であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
  11. 前記ノイラミン酸含有オリゴ糖又は多糖がシアリル化人乳オリゴ糖であることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
  12. 前記ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤がザナミビルであることを特徴とする、請求項9に記載の使用。
  13. 以下の工程を含むことを特徴とする、D−マンノサミン又はその塩を合成する方法。
    a)請求項4乃至8のいずれか1項に記載の方法によって、D−フルクトースから式1で表される化合物を形成する工程、及び
    b)前記式1で表される化合物を水素化分解し、R基、及び、任意にR基を除去する工程。
  14. 以下の工程を含むことを特徴とする、D−マンノサミン由来のシントンを合成する方法。
    i)請求項13に記載の方法にしたがって、D−マンノサミンを合成する工程、
    ii)D−マンノサミンのジアゾ転位反応を行い、該D−マンノサミンのアミノ基をアジド基に変換する工程、
    iii)3、4及び6−OH基を保護する工程、及び
    iv)アノマー位を活性化し、β−マンノサミニルシントンを得る工程。
  15. 以下の工程を含むことを特徴とする、D−マンノサミン由来のシントンを合成する方法。
    i)請求項13に記載の方法にしたがって、D−マンノサミンを合成する工程、
    ii)該D−マンノサミンのアミノ基を、適当な保護基でマスキングする工程、
    iii)D−マンノサミンの3、4及び6−OH基を保護する工程、及び
    iv)D−マンノサミンのアノマー位を活性化し、β−マンノサミニルシントンを得る工程。
  16. 以下の工程含むことを特徴とする、D−マンノサミン含有オリゴ糖又は多糖を合成する方法。
    i)請求項15に記載の方法を行う工程、及び、続いて、
    ii)前記工程i)のβ−マンノサミニルシントンを所望の糖部位にカップリングする工程。
  17. 以下の工程を含むことを特徴とする、N−アセチル−D−マンノサミンを合成する方法。
    i)請求項13に記載の方法にしたがって、D−マンノサミンを合成する工程、及び
    ii)D−マンノサミンのアミン基をアセチル化し、N−アセチル−D−マンノサミンを形成する工程。
  18. 以下の工程を含むことを特徴とする、N−アセチルノイラミン酸を合成する方法。
    i)請求項17に記載の方法にしたがって、N−アセチル−D−マンノサミンを合成する工程、及び
    ii)Neu5Acアルドラーゼの存在下で、N−アセチル−D−マンノサミンとピルベートとを反応させる工程。
  19. 以下の工程を含むことを特徴とする、シアロオリゴ糖、好ましくはシアリル化人乳オリゴ糖、を合成する方法。
    (i)請求項18に記載の方法にしたがって、N−アセチルノイラミン酸を合成する工程、
    (ii)前記N−アセチルノイラミン酸から活性シアロシドを形成する工程、及び
    (iii)前記活性シアロシドをシアロオリゴ糖に変換する工程。
  20. ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤、好ましくはザナヴィミル、を合成する方法。
    i)請求項18に記載の方法にしたがって、N−アセチルノイラミン酸を合成する工程、
    ii)エステルとして前記N−アセチルノイラミン酸のカルボキシル基、及び前記N−アセチルノイラミン酸の非グリコシド性ヒドロキシル基をアシル基で保護する工程、
    iii)前記N−アセチルノイラミン酸のグリコシド性ヒドロキシル基をアグリコンに変換し、ββ−脱離に供し、C2−C3不飽和を生成する工程、
    iv)その立体配置を維持しながら前記N−アセチルノイラミン酸のC4に窒素官能基を導入する工程、
    v)前記N−アセチルノイラミン酸のカルボキシル基及びヒドロキシル基を脱保護する工程、及び
    vi)前記N−アセチルノイラミン酸の窒素官能基をアミノ又はグアニジノ基に変換する工程。
  21. N−アセチルD−マンノサミン又はその誘導体の合成における、D−フルクトースの使用。
  22. N−アセチルノイラミン酸又はその誘導体の合成における、D−フルクトースの使用。
  23. N置換D−マンノサミン誘導体を合成する方法。実質的にここに記載されているとおり。
  24. ノイラミン酸誘導体を合成する方法。実質的にここに記載されているとおり。
  25. ウイルス性ノイラミニダーゼ阻害剤を合成する方法。実質的にここに記載されているとおり。
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