本発明は、治療タンパク質のための処方物の分野に関する。より具体的には、本発明は、粘度が低減された処方物およびその製造方法に関する。
発明の背景
タンパク質を含んでなる多くの製剤は、効能のある患者応答を達成するために高い治療用量を必要とする。血流中で治療レベルを達成するためには、モノクローナル抗体を含む治療タンパク質は、それらの大きさおよびタンパク質加水分解に対する感受性のために静脈注射または皮下注射のいずれかで投与する必要がある。これらの2つの投与経路のうち、患者にとっては皮下注射の方が便利であり、これは製剤標的皮下投与経路は在宅でも可能であるためである。皮下投与経路用の充填済みシリンジ中の、新規にまたは生産ライン拡張として開発されたモノクローナル抗体製剤がいくつかある。一般に、皮下空間における用量投与の容量制限のために、充填済みシリンジによる単回のボーラス用量として投与できるのは1mL以下の製剤溶液である。しかしながら、投与の総容量および期間は、投与溶液中のモノクローナル抗体の濃度によって決まる。注入またはボーラス投与に関して、より少容量でより高用量の投与を達成するためには、溶液中に高濃度のモノクローナル抗体が必要である。
100mg/mLを超える濃度範囲では多くのモノクローナル抗体が、また、より高い濃度の200mg/mLではほとんどのモノクローナル抗体が比較的高い粘度を有し、モノクローナル抗体製剤溶液の取り扱いに問題をきたす。抗体を高レベルに濃縮するタンジェンシャルフロー・フィルトレーションおよび無菌濾過などの製造プロセスは、高粘度溶液の場合には難しく、損失につながる。また、充填済みシリンジを用いて皮下用量の製剤を送達するためにおよそ20ニュートンを超える力をかけなければならない場合には、患者または医療専門家による製剤の取り扱いおよび注射性能に伴う問題も浮上し得る。粘度の低下を与える処方アプローチが必要とされるのは明らかであり、処方物開発の際の減粘賦形剤の使用は実行可能なアプローチである。
本発明は、酢酸塩と治療タンパク質を含有する処方物の粘度を減じる方法に関する。
一つの実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にグリシンおよび/またはアルギニンを約1.0%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、グリシンおよび/またはアルギニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、グリシンおよび/またはアルギニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にメチオニンを約0.04%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、メチオニンを含む処方物の粘度は、メチオニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、メチオニンを含む処方物の粘度は、メチオニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、メチオニンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にフェニルアラニンを約0.8%w/vの濃度となるように添加すること含んでなり、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は、フェニルアラニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は、フェニルアラニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減じられる。一つの実施態様では、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は、約20cP未満または約15cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にトリプトファンを約0.2%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、トリプトファンを含む処方物の粘度は、トリプトファンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、トリプトファンを含む処方物の粘度は、トリプトファンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減じられる。一つの実施態様では、トリプトファンを含む処方物の粘度は、約20cP未満または約15cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にプロリンを約4.0%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、プロリンを含む処方物の粘度は、プロリンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、プロリンを含む処方物の粘度は、プロリンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、プロリンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
本発明はまた、本発明の方法のいずれかにより製造される安定な処方物に関する。
本発明はまた、本発明の処方物を含有する容器を含んでなる製品に関する。
酢酸バッファー:直鎖アミノ酸が低濃度(グリシン0.5%w/v、アルギニン0.5%w/v、メチオニン0.01%w/v)の場合、抗IL5 mAbサンプルの粘度は、アミノ酸不在の場合に比べて高かったが、直鎖アミノ酸が高濃度(グリシン1.0%w/v、アルギニン1%w/vおよびメチオニン0.04%)の場合には、サンプルの粘度は、アミノ酸不在の場合に比べて低かった。
酢酸バッファー:フェニルアラニン、トリプトファン、およびプロリンは抗IL5 mAb処方物の粘度を減じたが、チロシンは抗IL5 mAb処方物の粘度を高めた。
酢酸バッファー:供試した総てのアミノ酸が抗ELR mAb処方物の粘度を減じた。プロリンは最大の減粘を達成し、トリプトファン、フェニルアラニン、およびグリシンがこれに次いだ。
発明の具体的説明
本発明は特定の方法、試薬、化合物、組成物、または生物系に限定されず、当然のことながら変更可能であると理解すべきである。また、本明細書で用いる用語は単に特定の実施態様を記載するためのものであって、限定されるものではないと理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈がそうではないことを明らかに示さない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「1つのポリペプチド」という場合には、2以上のポリペプチドの組合せを含むなどである。
本明細書において「約」は、量、時間などの測定可能な値に関する場合、特定の値から±20%または±10%(±5%、±1%、および±0.1%を含む)の変動を包含することを意味し、これはこのような変動が開示の方法を実施するのに適当であるためである。
特に断りのない限り、本明細書で用いる総ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の熟練者が共通に理解しているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと類似または同等の方法および材料はいずれも、本発明の試験のための実施に使用可能であるが、好ましい材料および方法を本明細書に記載する。本発明を記載および特許請求するに当たって、下記の用語を用いる。
本発明は、酢酸塩と治療タンパク質を含有する処方物の粘度を減じる方法に関する。
本発明の例示的実施態様では、製造される液体ポリペプチド組成物は、望ましい粘度および表面張力の特徴などの望ましい特徴を示す。
用語「表面張力」とは、気体の低分子濃度に比べて液体の高分子濃度によって起こる表面/空気界面での、その表面下の分子によって発揮される引力を意味する。非極性液体などの表面張力値の低い液体は、水よりも流動しやすい。一般に、表面張力の値は、ニュートン/メートルまたはダイン/センチメートルで表される。
本明細書に言及される場合「動的表面張力」は表面/空気界面であり、動的表面張力は表面/表面界面である。動的表面張力の測定には、例えば、捕捉気泡表面張力計または拍動気泡表面張力計などのいくつかの選択的方法がある。
用語「粘度」とは、特定温度の流体によって発揮される流動に対する内部抵抗、すなわち、剪断応力と剪断速度の比である。液体は、1ダイン/平方センチメートルの力が1平方センチメートル離れた面積1平方センチメートルの2つの並行な液体表面を1cm/秒の速度で互いに通過させる場合に1ポアズの粘度を有する。1ポアズは、100センチポアズに等しい。
見掛け粘度という場合には、その粘度値が、使用温度、剪断速度および剪断応力などの測定が行われる条件に依存すると理解される。見掛け粘度は、剪断応力と適用される剪断速度の比と定義される。見掛け粘度を測定には、いくつかの選択的方法がある。例えば、粘度は、好適なコーンおよびプレート、並行プレートまたは他のタイプの粘度計またはレオメーターによって試験することができる。
特定の実施態様では、粘度が低減された処方物は、約50cP未満、約45cP未満、約40cP未満、約35cP未満、約30cP未満、約25cP未満、約20cP未満、または約15cP未満の粘度を有する。
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、本明細書ではアミノ酸残基のポリマーを意味して互換的に用いられる。ポリペプチドは、天然(組織由来)起源、組換えまたは原核生物もしくは真核細胞調製物からの自然発現したものであってもよいし、または合成法により化学的に生産されたものであってもよい。これらの用語は、1以上のアミノ酸残基が、対応する天然アミノ酸の人工的化学ミメティックであるアミノ酸ポリマー、ならびに天然アミノ酸ポリマーおよび非天然アミノ酸ポリマーにも当てはまる。アミノ酸ミメティックとは、アミノ酸の一般化学構造とは異なる構造を有するが天然アミノ酸と同様に機能する化学化合物を意味する。非天然残基は科学文献および特許文献に十分記載されており、天然アミノ酸残基のミメティックとして有用な非天然組成物の少数の例および指針を以下に示す。芳香族アミノ酸のミメティックは、例えば、D−またはL−ナフチルアラニン(naphylalanine);D−またはL−フェニルグリシン;D−またはL−チエニルアラニン(thieneylalanine);D−またはL−1、−2、3−、もしくは4−ピレニルアラニン(pyreneylalanine);D−またはL−3チエニルアラニン(thieneylalanine);D−またはL−(2−ピリジニル)−アラニン;D−またはL−(3−ピリジニル)−アラニン;D−またはL−(2−ピラジニル)−アラニン;D−またはL−(4−イソプロピル)−フェニルグリシン:D−(トリフルオロメチル)−フェニルグリシン;D−(トリフルオロメチル)−フェニルアラニン:D−p−フルオロ−フェニルアラニン;D−またはL−p−ビフェニルフェニルアラニン;K−またはL−p−メトキシ−ビフェニルフェニルアラニン;D−またはL−2−インドール(アルキル)アラニン;およびD−またはL−アルキルアラニン(alkylainines)(ここで、アルキルは、置換または非置換メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソ−ブチル、sec−イソチル(sec-isotyl)、イソ−ペンチル、または非酸性アミノ酸であり得る)により置換することによって作出することができる。非天然アミノ酸の芳香環としては、例えば、チアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリル、およびピリジル芳香環が含まれる。
本明細書において「ペプチド」は、本明細書に具体的に例示されるペプチドの保存的バリエーションであるペプチドが含まれる。本明細書において「保存的バリエーション」は、アミノ酸残基の、別の生物学的に類似する残基による置換を表す。保存的バリエーションの例としては、限定されるものではないが、イソロイシン、バリン、ロイシン、アラニン、システイン、グリシン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、チロシン、ノルロイシンまたはメチオニンなどのある疎水性残基の別のものとの置換、またはある極性残基の別のものとの置換、アルギニンのリシンとの置換、グルタミン酸のアスパラギン酸との置換、またはグルタミンのアスパラギンとの置換などが挙げられる。互いに置換可能な中性親水性アミノ酸としては、アスパラギン、グルタミン、セリンおよびトレオニンが含まれる。「保存的バリエーション」はまた、非置換親アミノ酸に代わる置換アミノ酸の使用を含む(ただし、その置換ポリペプチドに対して生成された抗体も非置換ポリペプチドと免疫反応性がある場合に限る)。このような保存的置換は、本発明のペプチドのクラスの定義内にある。本明細書において「陽イオン性」とは、pH7.4で正味の正電荷を有するいずれのペプチドも意味する。これらのペプチドの生物活性は、当業者に公知であり、本明細書に記載される標準的方法によって測定することができる。
タンパク質に関して使用する場合「組換え」とは、そのタンパク質が異種核酸もしくはタンパク質の導入、または天然核酸もしくはタンパク質の変更によって改変されていることを示す。
本明細書において「治療タンパク質」とは、例えば研究者または臨床医により求められる組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を惹起するために哺乳類に投与することができるいずれのタンパク質および/またはポリペプチドも意味する。治療タンパク質は2つ以上の生物学的または医学的応答を惹起する場合もある。さらに、用語「治療上有効な量」とは、そのような量を受容しなかった対応する被験体に比べて、限定されるものではないが、疾患、障害もしくは副作用の治癒、予防もしくは改善、または疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらすいずれの量も意味する。この用語はまた、その範囲内に、通常の生理学的機能を増強するために有効な量、ならびに患者において第2の医薬剤の治療効果を増強するまたは補助する生理学的機能を引き起こすために有効な量も含む。
本明細書に示される「アミノ酸」残基は総て、天然のL型である。標準的なポリペプチド命名法に合わせて、アミノ酸残基の省略形は下表に示される通りである。
アミノ酸残基配列は総て、本明細書では、左から右の方向が従来のアミノ末端からカルボキシ末端への方向となるように式で表されることに留意されたい。
別の実施態様では、ポリペプチドは、抗原結合ポリペプチドである。一つの実施態様では、抗原結合ポリペプチドは、可溶性受容体、抗体、抗体フラグメント、免疫グロブリン単一可変ドメイン、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、閉構造多重特異性抗体、ジスルフィド結合scFv、またはダイアボディーからなる群から選択される。
本明細書において用語「抗原結合ポリペプチド」とは、抗体、抗体フラグメントおよび抗原に結合可能なその他のタンパク質構築物を意味する。
用語Fv、Fc、Fd、Fab、またはF(ab)2は、それらの標準的な意味で使用される(例えば、Harlow et al., Antibodies A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)参照)。
「キメラ抗体」とは、アクセプター抗体に由来する軽鎖および重鎖定常領域と会合した、ドナー抗体に由来する天然可変領域(軽鎖および重鎖)を含む、遺伝子操作抗体の一種を意味する。
「ヒト化抗体」とは、非ヒトドナー免疫グロブリンに由来するそのCDRを有し、その分子の残りの免疫グロブリン由来部分が1つ(または複数)のヒト免疫グロブリンに由来する、遺伝子操作抗体の一種を意味する。さらに、結合親和性を保存するためにフレームワーク支持残基を変更してもよい(例えば、Queen et al., Proc. Natl. Acad Sci USA, 86:10029-10032 (1989), Hodgson et al., Bio/Technology, 9:421 (1991)参照)。好適なヒトアクセプター抗体は、従来のデータベース、例えば、KABAT.RTM.データベース、Los Alamosデータベース、およびSwiss Proteinデータベースから、ドナー抗体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列との相同性により選択されるものであり得る。ドナー抗体のフレームワーク領域との相同性(アミノ酸に基づく)により特徴付けられるヒト抗体は、ドナーCDRの挿入のための重鎖定常領域および/または重鎖可変フレームワーク領域を提供するのに好適であり得る。軽鎖定常領域または可変フレームワーク領域を供与することができる好適なアクセプター抗体も同様にして選択することができる。アクセプター抗体重鎖および軽鎖は同じアクセプター抗体に由来する必要はないことに留意されたい。従来技術は、このようなヒト化抗体を生産するいくつかの方法を記載している(例えば、EP−A−0239400およびEP−A−054951参照)。
用語「ドナー抗体」とは、その可変領域、CDR、またはそれらの他の機能的断片もしくは類似体のアミノ酸配列を第1の免疫グロブリン相手に与え、それにより、変更された免疫グロブリンコード領域を提供し、その結果、抗原特異性を有する変更された抗体が発現され、ドナー抗体に特徴的な活性を中和する抗体(モノクローナル、および/または組換え)に関する。
用語「アクセプター抗体」とは、その重鎖および/もしくは軽鎖フレームワーク領域ならびに/またはその重鎖および/もしくは軽鎖定常領域をコードするアミノ酸配列の総て(または任意の一部、ただし、いくつかの実施態様では総て)を第1の免疫グロブリン相手に与える、ドナー抗体とは異種の抗体(モノクローナルおよび/または組換え)を意味する。特定の実施態様では、ヒト抗体は、アクセプター抗体である。
「CDR」は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される。例えば、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 4th Ed., U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)参照。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。従って、本明細書において「CDR」とは、3つ総ての重鎖CDR、または3つ総ての軽鎖CDR(または適当であれば総ての重鎖CDRと総ての軽鎖CDRの両方)を意味する。抗体の構造およびタンパク質折り畳みは、他の残基も抗原結合領域の考えられる部分であることを意味し、そうであることは当業者により理解されるであろう。例えば、Chothia et al., (1989) Conformations of immunoglobulin hypervariable regions; Nature 342, p 877-883参照。
本明細書において用語「ドメイン」とは、タンパク質の残部に依存しない三次構造を有する、折り畳まれたタンパク質構造を意味する。一般に、ドメインはタンパク質の別個の機能的特性を担い、多くの場合、タンパク質および/またはドメインの残りの部分の機能欠失を伴わずに付加、除去または他のタンパク質に導入することができる。「抗体単一可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含んでなる、折り畳まれたポリペプチドドメインを意味する。従って、それは、例えば1以上のループが抗体可変ドメインに特徴的ではない配列で置換された、完全抗体可変ドメインおよび改変可変ドメイン、または末端切断されたか、もしくはN末端もしくはC末端伸長を含んでなる抗体可変ドメイン、ならびに全長ドメインの結合活性と特異性を少なくとも保持する可変ドメインの折り畳まれた断片を含む。
「免疫グロブリン単一可変ドメイン」という句は、異なるV領域またはドメインに依存せずに抗原またはエピトープに特異的に結合する抗体可変ドメイン(VH、VHH、VL)を意味する。免疫グロブリン単一可変ドメインは、他の異なる可変領域または可変ドメインとともに、前記他の領域またはドメインが単一免疫グロブリン可変ドメインによる抗原結合に必要とされない(すなわち、この免疫グロブリン単一可変ドメインは、付加的可変ドメインに依存せずに抗原と結合する)形式(例えば、ホモまたはヘテロマルチマー)で存在することができる。「ドメイン抗体」または「dAb」は、この用語が本明細書で用いる場合、抗原に結合し得る「免疫グロブリン単一可変ドメイン」と同じである。免疫グロブリン単一可変ドメインはヒト抗体可変ドメインであり得るが、齧歯類(例えば、WO00/29004に開示される通り)、テンジクザメおよびラクダ科動物VHH dAb(ナノボディー)などの他種に由来する単一抗体可変ドメインも含む。ラクダ科動物VHHは、天然に軽鎖を欠く重鎖抗体を産生する、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダ、およびグアナコを含む種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。このようなVHHドメインは、当技術分野で利用可能な標準的技術に従ってヒト化してもよく、このようなドメインもやはり本発明に従う「ドメイン抗体」であると考えられる。本明細書においてVHは、ラクダ科動物VHHドメインを含む。NARVは、テンジクザメを含む軟骨性魚類において同定されているもう1つのタイプの免疫グロブリン単一可変ドメインである。これらのドメインは新規な抗原受容体可変領域(一般にV(NAR)またはNARVと略される)としても知られる。さらに詳しくは、Mol. Immunol. 44, 656-665 (2006)およびUS20050043519Aを参照。
用語「エピトープ結合ドメイン」とは、異なるV領域またはドメインに依存せずに抗原またはエピトープと特異的に結合するドメインを意味し、これはドメイン抗体(dAb)、例えば、ヒト、ラクダ科動物またはサメ免疫グロブリン単一可変ドメインであり得る。
本明細書において、用語「抗原結合部位」とは、抗原と特異的に結合し得るタンパク質上の部位を意味し、これは単一ドメイン、例えば、エピトープ結合ドメインであってもよく、またはそれは、標準的抗体に見られるような対合したVH/VLドメインであってもよい。本発明のいくつかの態様では、一本鎖Fv(ScFv)ドメインが抗原結合部位を提供し得る。
用語「mAbdAb」および「dAbmAb」とは、本発明の抗原結合タンパク質を表して本明細書で用いられる。これらの2つの用語は互換的に使用することができ、本明細書において同じ意味を有するものとする。
一つの実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物に1種類のアミノ酸または複数のアミノ酸添加することを含んでなり、アミノ酸を含むの処方物粘度は、同じアミノ酸を含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。特定の実施態様では、アミノ酸は、直鎖アミノ酸である。他の実施態様では、アミノ酸は、環状部分を含んでなる。一つの実施態様では、アミノ酸は、トリプトファン、グリシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、セリン、イソロイシン、ロイシン、トレオニン、バリン、プロリン、リシン、ヒスチジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システインである。
一つの実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にグリシンおよび/またはアルギニンを約1.0%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、グリシンおよび/またはアルギニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、グリシンおよび/またはアルギニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にメチオニンを約0.04%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、メチオニンを含む処方物の粘度は、メチオニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、メチオニンを含む処方物の粘度は、メチオニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、メチオニンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にフェニルアラニンを約0.8%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は、フェニルアラニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は、フェニルアラニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減じられる。一つの実施態様では、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は約20cP未満または約15cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にトリプトファンを約0.2%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、トリプトファンを含む処方物の粘度は、トリプトファンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、トリプトファンを含む処方物の粘度は、トリプトファンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減じられる。一つの実施態様では、トリプトファンを含む処方物の粘度は、約20cP未満または約15cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、(a)酢酸塩を含んでなる処方物を準備すること;および(b)前記処方物にプロリンを約4.0%w/vの濃度となるように添加することを含んでなり、プロリンを含む処方物の粘度は、プロリンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、プロリンを含む処方物の粘度は、プロリンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、プロリンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
別の実施態様では、本方法は、タンパク質処方物の安定性を測定することをさらに含んでなる。
別の実施態様では、本処方物は、付加的賦形剤をさらに含んでなる。「賦形剤」としては、限定されるものではないが、安定剤、例えば、ヒト血清アルブミン(hsa)、ウシ血清アルブミン(bsa)、α−カゼイン、グロブリン、α−ラクトアルブミン、LDH、リゾチーム、ミオグロビン、オボアルブミン、RNアーゼA;緩衝剤、例えば、クエン酸、HEPES、ヒスチジン、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム(KH2PO4)、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム(NAH2PO4)、Tris塩基、およびTris−HCl;アミノ酸/代謝産物、例えば、グリシン、アラニン(α−アラニン、β−アラニン)、アルギニン、ベタイン、ロイシン、リシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、ヒスチジン、プロリン、4−ヒドロキシプロリン、サルコシン、γ−アミノ酪酸(GABA)、オピン類(アラノピン、オクトピン、ストロンビン)、およびトリメチルアミンN−オキシド(TMAO);界面活性剤、例えば、ポリソルベート20および80、ならびにポロキサマー407;脂質分子、例えば、ホスファチジルコリン、エタノールアミン、およびアセチルトリプトファネート(acethyltryptophanate);ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、およびポリビニルピロリドン(PVP)10、24、40;低分子量賦形剤、例えば、アラビノース、セロビオース、エチレングリコール、フルクトース、フコース、ガラクトース、グリセリン/グリセロール、グルコース、イノシトール、ラクトース、マンニトール、マルトース、マルトトリオース、マンノース、メリビオース、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、オクツロース、プロピレングリコール、ラフィノース、リボース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、キシリトール、およびキシロース;ならびに高分子量賦形剤、例えば、セルロース、β−シクロデキストリン、デキストラン(10kd)、デキストラン(40kd)、デキストラン(70kd)、フィコール、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、ヒドロキシエチルデンプン、マルトデキストリン、メトセル、peg(6kd)、ポリデキストロース、ポリビニルピロリドン(PVP)k15(10kd)、PVP(40kd)、PVP k30(40kd)、PVP k90(1000kd)、セファデックスG 200、およびデンプン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸、システインHCl、チオグリセロール、チオグリコール酸、チオソルビトール、およびグルタチオン;還元剤、例えば、システインHCl、ジチオトレオトール(dithiothreotol)、およびその他のチオールまたはチオフェン;キレート剤、例えば、EDTA、EGTA、グルタミン酸、およびアスパラギン酸;無機塩/金属、例えば、Ca2+、Ni2+、Mg2+、Mn2+、Na2SO4、(NH4)2SO4、Na2HPO4/NaH2PO4、K2HPO4/KH2PO4、MgSO4、およびNaF;有機塩、例えば、酢酸Na、Naポリエチレン、カプリル酸Na(オクタノン酸Na)、プロピリオン酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、およびクエン酸塩;有機溶媒、例えば、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(dmso)、およびエタノールが挙げられる。
一つの実施態様では、本処方物は、スクロースをさらに含んでなる。一つの実施態様では、前記処方物は、スクロースを約150〜約300mMの濃度で含んでなる。一つの実施態様では、本処方物は、スクロースを約200〜約250mMの濃度で含んでなる。一つの実施態様では、本処方物は、スクロースを約234mMの濃度で含んでなる。
一つの実施態様では、本処方物は、pH約4.5〜約7.5となるように処方される。一つの実施態様では、本処方物はpH約5.5となるように処方される。一つの実施態様では、本処方物は、約25mM〜約75mMの酢酸塩を含んでなる。一つの実施態様では、本処方物は約55mMの酢酸塩を含んでなる。
別の実施態様では、本処方物は、ポリソルベート−80をさらに含んでなる。別の実施態様では、本処方物は、ポリソルベート−80をさらに含んでなる。一つの実施態様では、本処方物を0.05%w/vまでの濃度でさらに含んでなる。
別の実施態様では、前記治療タンパク質は、抗原結合ポリペプチドである。一つの実施態様では、抗原結合ポリペプチドは抗体である。一つの実施態様では、抗原結合ポリペプチドは、免疫グロブリン単一可変ドメインである。一つの実施態様では、抗原結合ポリペプチドは、インターロイキン5(IL5)と結合する。一つの実施態様では、抗原結合ポリペプチドは、抗IL5抗体である。一つの実施態様では、抗IL5抗体は、配列番号1を含んでなる重鎖と配列番号2を含んでなる軽鎖とを含んでなる。一つの実施態様では、抗原結合ポリペプチドはELRと結合する。一つの実施態様では、抗原結合ポリペプチドは抗ELR抗体である。一つの実施態様では、抗ELR抗体は、配列番号3を含んでなる重鎖と配列番号4を含んでなる軽鎖とを含んでなる。
別の実施態様では、前記治療タンパク質は、少なくとも約150mg/ml、少なくとも約175mg/ml、少なくとも約200mg/ml、少なくとも約225mg/ml、少なくとも約250mg/ml、少なくとも約275mg/ml、または少なくとも約300mg/mlの濃度で存在する。別の実施態様では、前記治療タンパク質は、少なくとも約150mg/ml〜約300mg/mlの濃度で存在する。一つの実施態様では、前記治療タンパク質は、約200mg/mlの濃度で存在する。
一つの実施態様では、本処方物は、凍結乾燥または噴霧乾燥され、その後、粘度が測定される前に再構成される。特定の実施態様では、粘度が低減された前記処方物は、凍結乾燥または噴霧乾燥され、その後、分散剤で再構成される。一つの実施態様では、分散剤は無菌水または「注射水」(WFI)である。液体ポリペプチドは、等張性生理食塩水またはその他の賦形剤でさらに希釈して、投与前に望ましい濃度とすることができる。一つの実施態様では、本処方物は、再構成処方物である。別の実施態様では、本処方物は、液体医薬処方物である。
粘度を低減させる(減じる)ために使用する薬剤は、処方プロセスのいずれかの段階で添加することができる。例えば、酢酸塩、治療タンパク質、または任意の賦形剤の前、後、またはそれらと同時などである。
本発明の処方物は、全身投与を含め、任意の好適な投与経路で投与することができる。全身投与としては、経口投与、非経口投与、経皮投与、直腸投与、および吸入による投与が含まれる。非経口投与とは、腸内、経皮、または吸入以外の投与経路を意味し、一般に、注射または注入による。非経口投与としては、静脈内、筋肉内、および皮下注射または注入が含まれる。吸入とは、口腔を介するものであれ鼻道を介するものであれ、患者の肺への投与を意味する。
本発明はまた、本発明の方法のいずれかにより製造される安定な処方物に関する。
一つの実施態様では、本処方物は、酢酸塩、治療タンパク質、および1種類のアミノ酸または複数のアミノ酸を含んでなり、アミノ酸を含む処方物の粘度は、同じアミノ酸を含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。特定の実施態様では、アミノ酸は、直鎖アミノ酸である。他の実施態様では、アミノ酸は、環状部分を含んでなる。一つの実施態様では、アミノ酸は、トリプトファン、グリシン、フェニルアラニン、メチオニン、アラニン、セリン、イソロイシン、ロイシン、トレオニン、バリン、プロリン、リシン、ヒスチジン、グルタミン、グルタミン酸、アルギニン、アスパラギン酸、アスパラギン、システインである。
一つの実施態様では、本処方物は、酢酸塩、治療タンパク質、およびグリシンおよび/またはアルギニンを含んでなる。一つの実施態様では、グリシンおよび/またはアルギニンの濃度は約1.0%w/vであり、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、グリシンおよび/またはアルギニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、グリシンおよび/またはアルギニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、グリシンおよび/またはアルギニンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
一つの実施態様では、本処方物は、酢酸塩、治療タンパク質、およびメチオニンを含んでなる。一つの実施態様では、メチオニンの濃度は約0.04%w/vであり、メチオニンを含む処方物の粘度は、メチオニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、メチオニンを含む処方物の粘度は、メチオニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、メチオニンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
一つの実施態様では、本処方物は、酢酸塩、治療タンパク質、およびフェニルアラニンを含んでなる。一つの実施態様では、フェニルアラニンの濃度は約0.6%w/v〜約1.0%w/vであり、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は、フェニルアラニンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、フェニルアラニンの濃度は約0.8%w/vである。一つの実施態様では、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は、フェニルアラニンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減じられる。一つの実施態様では、フェニルアラニンを含む処方物の粘度は、約20cP未満または約15cP未満である。
一つの実施態様では、本処方物は、酢酸塩、治療タンパク質、およびトリプトファンを含んでなる。一つの実施態様では、トリプトファンの濃度は約0.1%w/v〜約0.3%w/vであり、トリプトファンを含む処方物の粘度は、トリプトファンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、トリプトファンの濃度は約0.2%w/vである。一つの実施態様では、トリプトファンを含む処方物の粘度は、トリプトファンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、または少なくとも約50%減じられる。一つの実施態様では、トリプトファンを含む処方物の粘度は、約20cP未満または約15cP未満である。
一つの実施態様では、本処方物は、酢酸塩、治療タンパク質、およびプロリンを含んでなる。一つの実施態様では、プロリンの濃度は約4.0%w/vであり、プロリンを含む処方物の粘度は、プロリンを含まない同じ処方物の粘度に比べて減じられる。一つの実施態様では、プロリンを含む処方物の粘度は、プロリンの不在下での処方物の粘度に比べて少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、または少なくとも約30%減じられる。一つの実施態様では、プロリンを含む処方物の粘度は、約25cP未満または約20cP未満である。
一つの実施態様では、本処方物は、スクロースをさらに含んでなる。一つの実施態様では、本処方物は、スクロースを約150〜約300mMの濃度で含んでなる。一つの実施態様では、本処方物は、スクロースを約200〜約250mMの濃度で含んでなる。一つの実施態様では、本処方物は、スクロースを約234mMの濃度で含んでなる。
一つの実施態様では、本処方物は、pH約4.5〜約7.5となるように処方される。一つの実施態様では、本処方物はpH約5.5となるように処方される。一つの実施態様では、本処方物は、約25mM〜約75mMの酢酸塩を含んでなる。一つの実施態様では、本処方物は約55mMの酢酸塩を含んでなる。
別の実施態様では、本処方物は、ポリソルベート−80をさらに含んでなる。別の実施態様では、本処方物は、ポリソルベート−80をさらに含んでなる。一つの実施態様では、本処方物は、ポリソルベート−80を0.05%w/vの濃度でさらに含んでなる。
本発明はまた、本発明の処方物を含有する容器を含んでなる製品に関する。一つの実施態様では、前記製品は、前記処方物の投与に関する説明書をさらに含んでなる。
グリシン、チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン、およびプロリンは、Sigma−Aldricから入手した。アルギニンはMP−Biomedicalsから入手し、メチオニンはJT Bakerから入手した。これらのアミノ酸は総て実験室級のものであった。抗IL5 mAb原液(220mg/mL)は所内作製し、酢酸バッファー(pH5.5)中234mMのスクロースで調製した。
下記の通り、粘度測定のために、抗IL5 mAb溶液の濃度を200mg/mLに調節した。グリシン、アルギニン、メチオニンおよびチロシンの場合、保存溶液は酢酸バッファーで調製し(表2)、各バッファーに220mg/mLの抗IL5 mAb原液を添加した(表3)。
トリプトファンおよびフェニルアラニンの場合、表3の目標アミノ酸濃度に達するように、これらのアミノ酸を抗IL5 mAb溶液に直接溶かした。これらの濃度は、それらの水溶解度が低いために原液を作製することによっては達成することができなかった。
サンプル希釈の後、それらのサンプルの粘度を25℃にてBrookfield LVDVUUltra III C/Pレオメーターで測定した。使用したスピンドルはCP−40であり、各測定に500μLのサンプルを用いた。得られた粘度値から平均粘度値を算出したが、これらはトルク%が高まっても変化しなかった。