しかし、上記従来のガスコンロによると、コンロバーナ上から離した調理容器を再びコンロバーナ上に戻したとき、コンロバーナの火力が最小から大火力に自動的に変更されて調理容器の底部周辺から炎の溢れが生じる場合があり、使用者に対して驚きや戸惑いを感じさせてしまうおそれがある。
そこで、本発明は、コンロバーナの火力が自動的に増加しても、使用者が驚きや戸惑いを感じる事態を可及的に軽減させ、使用者にとって快適に使用することができるガスコンロを提供することを目的とする。
かかる目的を達成するために、本発明は、コンロバーナと、該コンロバーナ上部の所定位置に所在する調理容器を検知する調理容器検知手段と、前記コンロバーナへの燃料ガスの供給流量を変更して該コンロバーナの火力を所定範囲内で変更する流量変更弁と、前記コンロバーナの目標火力レベルを設定する火力レベル設定手段と、前記コンロバーナの動作中に、前記調理容器検知手段により調理容器が検知されている調理容器検知状態から、前記調理容器検知手段により調理容器が検知されていない調理容器非検知状態に切り換わったときは、前記流量変更弁により、前記コンロバーナの火力を前記所定範囲の下限付近に設定された最小火力レベルに向けて減少させ、調理容器非検知状態から調理容器検知状態に切り換わったときには、前記流量変更弁により、前記コンロバーナの火力を前記目標火力レベルに向けて増加させる火力制御手段とを備えたガスコンロにおいて、前記火力制御手段は、前記コンロバーナの点火時に、前記流量変更弁により、前記コンロバーナの火力を前記所定範囲の中央付近に設定された点火火力レベルに調節し、調理容器非検知状態から調理容器検知状態に切り換わったとき、前記目標火力レベルが前記点火火力レベルより大きい場合は、前記目標火力レベルを該点火火力レベルに変更して、前記流量変更弁により前記コンロバーナの火力を増加させることを特徴とする。
この種のガスコンロにおいては、一般に、コンロバーナの点火時に際し、急激に大きな炎が形成されて調理容器の底部周辺からの炎溢れが生じないように燃料ガスの供給量が抑えられる一方、着火不良等の点火失敗を防止するために十分な量の燃料ガスが供給される。そして、このときの最適な火力レベルは、前記流量変更弁により、前記コンロバーナの火力を前記所定範囲の中央付近に設定することにより得ることができる。これに関し、本発明者は、点火の際に用いられている火力レベルである点火火力レベルに着目し、前記調理容器非検知状態から前記調理容器検知状態に切り換わったときの火力制御にも点火火力レベルを採用することで、制御の煩雑化を防止しながら、調理容器の底部周辺からの炎溢れが抑制できることを知見した。
よって、本発明による前記火力制御手段は、前記調理容器非検知状態から前記調理容器検知状態に切り換わったとき、前記目標火力レベルが前記点火火力レベルより大きい場合に、前記火力レベルを前記点火火力レベルに制限する。こうすることにより、前記調理容器非検知状態から前記調理容器検知状態への切り換わりに際して火力が増加しても、点火時と同様に、調理容器の底部周辺からの炎溢れ等に伴う使用者の驚きや戸惑いを軽減させることができ、使用者に対して快適な使用感を提供することができる。
なお、前記調理容器非検知状態から前記調理容器検知状態に切り換わったとき、前記目標火力レベルが前記点火火力レベルより小さい場合には、調理容器の底部周辺から炎漏れが生じるおそれが極めて少ないため、前記目標火力レベルを該点火火力レベルに変更せずに前記流量変更弁により前記コンロバーナの火力を増加させればよい。
また、前記火力制御手段は、前記調理容器非検知状態から前記調理容器検知状態に切り換わり、前記目標火力レベルが前記点火火力レベルより大きいことにより前記目標火力レベルを該点火火力レベルに変更したとき、所定時間経過した後に、前記目標火力レベルを前記点火火力レベルに変更する前の火力レベルに戻して、前記流量変更弁により前記コンロバーナの火力を増加させることを特徴とする。
前記目標火力レベルが前記点火火力レベルより大きい場合、目標火力レベルは使用者によって設定された火力レベルであるため、前記調理容器非検知状態から前記調理容器検知状態に切り換わった後に、目標火力レベルより小さい点火火力レベルによる燃焼が続くと、使用者が違和感を感じるおそれがある。
一方、前記調理容器非検知状態から前記調理容器検知状態に切り換わった直後は、使用者が調理容器から未だ手を放していない状態であることが考えられる。
そこで、本発明は、前記調理容器非検知状態から前記調理容器検知状態に切り換わったとき、コンロバーナの火力を一旦点火火力レベルとし、更に所定時間経過した後に(即ち所定の待ち時間を介して)、点火火力レベルに変更する前の(火力レベル設定手段により設定された)目標火力レベルとなるまで増加させる。
このときの待ち時間は、使用者が調理容器をコンロバーナ上に戻して調理容器から完全に手を放すまでの時間(例えば数秒〜数十秒)に設定することができる。これにより、点火火力レベルに変更する前の目標火力レベルによる火力に増加したときに調理容器の底部周辺から炎溢れが生じたとしても、使用者が調理容器から手を離した後であるため、使用者に熱さ等の不快感を与えるおそれがない。
更に、前記火力制御手段からの指示により所定の報知を行う報知手段を備え、前記火力制御手段は、前記目標火力レベルを前記点火火力レベルに変更する前の火力レベルに戻して前記流量変更弁により前記コンロバーナの火力を増加させるときにのみ、前記コンロバーナの火力を増加させる旨の報知を前記報知手段に指示することが好ましい。
これによれば、使用者に対して火力が大きく増加することを事前に認識させることができ、調理容器の底部周辺から炎溢れが生じたときの驚きや戸惑いを極めて有効に軽減することができる。
また、前記コンロバーナの火力を増加させる旨の報知は、点火火力レベルを超えた火力に増加させるときのみ行われるので、火力の増加によって使用者が驚きや戸惑いを感じるおそれがある場合に限られる。従って、不要な報知を廃することができ、報知による煩わしさや不快感を軽減することができると共に、報知手段を駆動させるためのエネルギ消費も抑えることができる。
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態のガスコンロ1は、コンロバーナ2と、コンロバーナ2に燃料ガスを供給するガス供給管3と、ガス供給管3に設けられた元電磁弁4及び流量変更弁5と、コンロバーナ2に点火するための点火電極6と、コンロバーナ2の着火を検出する熱電対7とを備えている。
コンロバーナ2の外周には五徳8が設けられており、五徳8に調理物を収容した鍋9(調理容器)を載置することにより、鍋9がコンロバーナ2の上部位置で加熱される。
コンロバーナ2の中心部には、五徳8に載置された鍋9の底部(鍋底下面)に接触して鍋底の温度を検知する鍋底温度センサ10が設けられている。鍋底温度センサ10は、昇降自在に支持されており、図2(a)に示すように、五徳8上に鍋9が載置されていない鍋無し状態では五徳8よりも高い位置に突出し、図2(b)に示すように、五徳8上に鍋9が載置された鍋有り状態になると、鍋9の荷重を受けて押し下げられるように構成されている。
また、鍋底温度センサ10には、五徳8に載置されてコンロバーナ2の上方に位置する鍋9を検知するための鍋検知センサ11(調理容器検知手段)が組み付けられている。
鍋検知センサ11は、図2(a)及び図2(b)に示すように、鍋底温度センサ10と一体的に昇降移動するカムブロック11aと、カムブロック11aの昇降移動に伴ってオン・オフされるマイクロスイッチ11bとで構成される。図2(b)に示すように、五徳8上に鍋9が置かれて鍋底温度センサ10が押し下げられると、カムブロック11aが下降し、マイクロスイッチ11bがオン信号を出力する。また、図2(a)に示すように、五徳8上から鍋が外されて鍋底温度センサ10が上昇位置になると、カムブロック11aが上昇し、マイクロスイッチ11bがオフ信号を出力する。このときの、鍋検知センサ11のマイクロスイッチ11bによるオン・オフ信号によって、コンロバーナ2の上部位置における鍋9の有無が検知される。
また、図1に示すように、ガスコンロ1は、マイクロコンピュータ等により構成された電子ユニットであるコントローラ12を備えている。コントローラ12には、操作摘み13の操作に応じた操作信号や、鍋検知センサ11の検出信号が入力される。操作摘み13は、ガスコンロ1の図示しない筐体の前面パネル等に組み付けられている。操作摘み13は、コンロバーナ2の点火・消火の際に使用者による押圧操作が行われ、コンロバーナ2の火力レベル(後述する)を設定する際に使用者による回転操作が行われる。従って、操作摘み13は、本発明における火力レベル設定手段に相当する機能を有している。
コントローラ12からは制御信号が出力され、この制御信号により、元電磁弁4、流量変更弁5、及び点火電極6の作動が制御される。なお、流量変更弁5は電動弁であり、ステッピングモータ14により駆動される図示しない弁体によりガス供給管3の開度を変更する。
コントローラ12は、鍋検知センサ11による鍋9の検知の有無に応じて、コンロバーナ2の火力を増減する処理を行う火力制御機能部15(火力制御手段)と、各種のデータを記憶するメモリ16と、タイマ17とを備えている。更に、コントローラ12は、スピーカ18が接続された報知制御機能部19を備えている。報知制御機能部19は、スピーカ18を駆動して音声とブザー音とを選択的に出力する。なお、スピーカ18及び報知制御機能部19は本発明における報知手段に相当する。
以下、図3に示すフローチャートに沿って、火力制御機能部15の処理を説明する。なお、火力制御機能部15は、ステッピングモータ14を介して流量変更弁5の開度を変更することにより、コンロバーナ2の火力をレベル「1」(最小)からレベル「9」(最大)までの9段階で切換える。
図3に示すように、火力制御機能部15の処理において、ガスコンロ1の使用者が操作摘み13を点火操作(押し操作)すると、STEP1で点火操作ありと判断し、STEP2に進む。STEP2では、元電磁弁4を開弁すると共に流量変更弁5を火力レベル「5」に対応した開度位置とし、コンロバーナ2の点火処理を行う。点火処理は、点火電極6に火花放電を生じさせることによって行う。
STEP2における火力レベル「5」は、点火火力レベルとしてメモリ16に予め記憶されているものであり、流量変更弁5による火力変更範囲の中央付近の火力(中火)に相当する。
点火火力レベルは、コンロバーナ2による加熱時に鍋9の底部周辺から炎漏れのない火力であって、且つ、着火不良による点火失敗が生じない燃料ガスの供給量が確保できる火力に設定される。点火火力レベルを決定するにあたっては、コンロバーナ2の能力に応じて基準とする鍋径が複数存在するが、例えば、14cm径の鍋を基準としたときの点火火力レベルは1400〜1600kcal/h程度となる。この火力は、本実施形態においては火力レベル「5」に相当し、この火力レベル「5」であれば、通常使用でのコンロバーナ2による加熱時に、鍋9の底部周辺からの炎漏れを防止することができる火力である。
次いで、STEP3に進むと、鍋検知センサ11からの検出信号により、鍋9の有無、即ち鍋9が検知された状態(鍋検知状態)にあるか、鍋9が検知されない状態(鍋非検知状態)にあるかを判断する。なお、本実施形態における鍋検知状態及び鍋非検知状態は本発明における調理容器検知状態及び調理容器非検知状態に相当するものである。
そして、鍋検知状態にあるときはSTEP4に進み、使用者によって操作摘み13による消火操作(押し操作)が行われていなければ、STEP5に進む。なお、STEP4で消火操作ありと判断された場合には元電磁弁4を閉弁させてコンロバーナ2を消火させる。
STEP5に進むと、操作摘み13により火力レベルの設定が行われたか否かが判断され、火力レベルの設定が行われない場合は、火力レベル「5」を維持してSTEP3に戻る。STEP5で火力レベルの設定が行われた場合にはSTEP6に進み、設定された火力レベルを目標火力レベルとし、このときの目標火力レベルに応じた開度位置まで流量変更弁5を作動させる。更に、STEP7に進み、このときの目標火力レベルをメモリ16に記憶してSTEP3に戻る。
コンロバーナ2の燃焼中(調理中)に、STEP3において鍋検知状態が維持されれば、STEP4で消火操作が確認されるまでSTEP3〜STEP7のループが実行される。
一方、STEP3で鍋非検知状態と判断された場合、即ち、五徳8から鍋9が取り除かれた場合には、STEP8へ進んで、流量変更弁5を火力レベル「1」に対応した開度位置に変更する。なお、このとき、流量変更弁5を火力レベル「2」の開度位置で一旦(例えば数秒)停止させ、その後火力レベル「1」に対応した開度に絞ることで、不用意な消火が防止できて好ましい。
その後、STEP9で、鍋検知状態と判断されるまで、即ち、五徳8に鍋9が載置されるまで、流量変更弁5は火力レベル「1」に対応した開度位置に維持される。これにより、コンロバーナ2は最小火力となって燃料ガスの無駄な消費が低減される。
その後、STEP9において鍋検知状態と判断されるとSTEP10に進み、目標火力レベルが点火火力レベル(火力レベル「5」)より大きいか否かが判断される。そして、STEP10において目標火力レベルが点火火力レベル(火力レベル「5」)より大きいと判断されたとき、STEP11に進んで、流量変更弁5を点火火力レベル(火力レベル「5」)に対応した開度位置に変更する。これにより、コンロバーナ2は火力レベル「1」に対応した最小火力から火力レベル「5」に対応した中火力に増加する。点火火力レベルとして設定されている火力レベル「5」は、上述した通り、鍋9の底部周辺からの炎漏れを防止することができる火力である。これにより、コンロバーナ2の火力が自動的に増加しても、鍋9の底部周辺からの炎漏れによる使用者の驚きや戸惑い感を抑制することができる。
次いで、STEP12〜STEP14でタイマ17による所定時間(5秒程度)の計時を行う。続いて、STEP15に進み、火力制御機能部15は報知制御機能部19を作動させて、火力が増加する旨の報知を行う。この時の報知は音声案内、或いは、ブザー音による。
そして、STEP16で流量変更弁5を点火火力レベル(火力レベル「5」)に対応した開度位置から点火火力レベルに変更する前の目標火力レベルに対応した開度位置に変更し、STEP3に戻る。STEP16の処理により、コンロバーナ2は点火火力レベルである火力レベル「5」に対応した中火力から、点火火力レベルに変更する前の目標火力レベルに対応した火力に増加する。
このように、コンロバーナ2の火力が比較的大きくなり、鍋9の底部周辺から炎漏れが生じたとしても、既にSTEP15により火力が増加する旨の報知を行ったことにより、使用者は火力が増加することを事前に認識しており、驚きや戸惑いが軽減される。
また、STEP15における火力が増加する旨の報知は、火力レベル「5」に対応した中火力から、目標火力レベルに対応した火力に増加するときにのみ行われる。このため、例えば、コンロバーナ2が火力レベル「1」に対応した最小火力から火力レベル「5」に対応した中火力に増加したときのように、鍋9の底部周辺からの炎漏れが生じるおそれのない場合の報知を廃することができる。従って、不要な報知による煩わしさや不快感を軽減することができると共に、スピーカ18を駆動させるためのエネルギ消費も抑えることができる。
更に、STEP16でコンロバーナ2が目標火力レベルに対応した火力に増加するに先立って、STEP12〜STEP14による計時処理を介在させたことにより、例えば、使用者が五徳8に鍋9を置き、鍋9から完全に手を離すまでの猶予時間を使用者に与えることができる。これにより、コンロバーナ2が目標火力レベルに対応する火力に増加したときに鍋9の底部周辺から炎溢れが生じたとしても、使用者が鍋9から手を離した後であるため、使用者に熱さ等の不快感を与えるおそれがない。
STEP10において、目標火力レベルが点火火力レベル(火力レベル「5」)より大きいと判断されなかった場合には、STEP16に進む。この場合、STEP16においては、流量変更弁5を目標火力レベルに対応した開度位置に変更するが、このときの目標火力レベルは点火火力レベル(火力レベル「5」)よりも小さいため、鍋9の底部周辺から炎漏れが生じるおそれはない。
以上のように、本実施形態によれば、コンロバーナ2の火力が自動的に増加しても、使用者が驚きや戸惑いを感じる事態を可及的に軽減させることができ、使用者は、ガスコンロ1による調理を快適に行うことができる。