JP2014226812A - ポリエステルフィルム - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、特許文献1、2のようにポリエステルフィルムに所定の層を積層することを必須とした積層フィルムではなく、回収を考慮してポリエステル樹脂のみから形成されていたり、製造工程の煩雑さや安定性を考慮して単層で形成されていたとしても、剥離安定性や寸法安定性を具備しうる新たな転写用または剥離用のポリエステルフィルムが求められている。
(i)全反射赤外吸収法(ATR−IR法)により求めた結晶化度が1.25以上であること
(ii)全反射赤外吸収法(ATR−IR法)により求めた面配向係数が0.2〜0.25であること
(iii)表面自由エネルギーにおける極性力成分が10〜16mJ/m2であること
本発明のポリエステルフィルムは、厚みが3〜50μmである。厚みがこの範囲であれば、転写用の工程紙や離型紙等の用途に好適に使用できる。フィルム厚みの下限は好ましくは5μmであり、より好ましくは10μmである。一方、フィルム厚みの上限は好ましくは45μmであり、より好ましくは40μmである。フィルム厚みが薄すぎたり、逆に厚すぎたりすると、例えば上記用途において作業性が低下することがある。
(i)全反射赤外吸収法(ATR−IR法)により求めた結晶化度が1.25以上であること
(ii)全反射赤外吸収法(ATR−IR法)により求めた面配向係数が0.2〜0.25であること
(iii)表面自由エネルギーにおける極性力成分が10〜16mJ/m2であること
本発明のポリエステルフィルムの原料とするポリエステル樹脂としては、特に制限はなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのテレフタル酸を原料とするポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレンナフタレート(PPN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)などのナフタレンジカルボン酸を原料とするポリエステル樹脂、およびこれらに他の成分(例えば、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の多価カルボン酸類;ジエチレングリコール、プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ダイマージオール、水添ダイマージオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の多価アルコール類;等)を共重合させた各種ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、PET、PBT、PEN、およびこれらに他の成分を共重合させたポリエステル樹脂が好ましく、PET、PBTがより好ましく、PETがさらに好ましい。
滑剤としては、特に制限はなく、従来公知の無機系滑剤または有機系滑剤等を用いることができるが、中でも、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナなどの無機系滑剤が好ましく、シリカ、炭酸カルシウムがより好ましく、シリカがさらに好ましい。滑剤の粒子径の下限は、好ましくは0.1μm、より好ましくは0.5μmであり、上限は好ましくは20μm、より好ましくは15μm、さらに好ましくは10μmである。滑剤の粒子径が小さすぎると、滑り性の付与効果が得られにくくなることがあり、一方、大きすぎると、滑り性が向上する半面、フィルムの透明性が低下する傾向がある。なお滑剤は、不定形であってもよいし、球状、楕円球状、金平糖状、薄板状、針状等の任意の形状であってもよい。
以下、本発明の延伸ポリエステルフィルムの好ましい製造方法について説明するが、それらは一例であり、本発明の延伸ポリエステルフィルムは以下の製造方法で得られたものに限定される訳ではない。
原料組成物を溶融させる際の樹脂溶融温度は、樹脂融点等に応じて適宜設定すればよいが、下限は好ましくは220℃、より好ましくは230℃、さらに好ましくは240℃であり、上限は好ましくは320℃、より好ましくは315℃、さらに好ましくは310℃、特に好ましくは300℃である。樹脂溶融温度が低すぎると、溶融粘度が高くなり、吐出(押出し)が困難になることがあり、一方、高すぎると、ポリエステル樹脂が熱分解を起こし分子量低下などを生じることがある。
本発明のポリエステルフィルムは、好ましくは二軸延伸フィルムである。よって、未延伸フィルムの延伸は、通常、二軸延伸で行われる。延伸方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよい。逐次二軸延伸の場合は、フィルムの長手方向(MD方向)に延伸した後に幅方向(TD方向)に延伸してもよいし、幅方向(TD方向)に延伸後に長手方向(MD方向)に延伸してもよい。本発明においては、逐次二軸延伸で最初に行う延伸を「一軸目延伸」、引き続いて行う一軸目と垂直方向の延伸を「二軸目延伸」と称することがある。
本発明では、同時または逐次二軸延伸の後、長手方向や幅方向(逐次延伸の場合、好ましくは二軸目延伸の方向と垂直な方向)に更に延伸を施してもよい。逐次二軸延伸や、同時または逐次二軸延伸の後に更に延伸を施す場合のように多段で延伸を行うと、例えば一軸目の延伸の方向において一軸配向が均一となり、当該一軸目の延伸の方向の品位が向上するので、剥離性が一層高まるとともに、その高温時の変化をより抑制し易くなる。
一軸目延伸の予熱温度の下限は好ましくは30℃、より好ましくは40℃であり、上限は好ましくは200℃、より好ましくは150℃である。一軸目延伸の予熱温度が低すぎると、予熱が不十分となり、延伸が困難となる虞があり、一方、高すぎると、結晶化してしまい、延伸が困難となる虞がある。
二軸目延伸の予熱温度の下限は好ましくは30℃、より好ましくは40℃、さらに好ましくは50℃であり、上限は好ましくは150℃、より好ましくは145℃、さらに好ましくは140℃である。二軸目延伸の予熱温度が低すぎると、温度上昇が不十分で、延伸が困難となる虞があり、一方、高すぎると、結晶化してしまい、延伸が困難となる虞がある。
延伸されたフィルムには、通常、熱固定処理が施される。
熱固定処理の際の温度(熱固定温度)の下限は好ましくは130℃、より好ましくは140℃、さらに好ましくは150℃であり、上限は好ましくは230℃、より好ましくは220℃、さらに好ましくは200℃である。熱固定温度が低すぎると、熱収縮率が大きくなる傾向となるため前記範囲に制御し難くなり、その結果、各種加工工程での寸法安定性不良を招く虞がある。一方、熱固定温度が高すぎると、フィルム表面の結晶が熱により溶融・崩壊して、フィルム表面の結晶化度および面配向係数が小さくなる傾向となるため前記範囲に制御し難くなり、その結果、乾燥やエージング条件変更時に剥離性変化が大きくなる虞がある。
基材となる単層ポリエステルフィルムに表層となるポリエステル膜(例えば上記機能性膜など)を積層して、積層フィルムとする場合、例えば所定の目的に応じた塗工液を、延伸完了後の延伸ポリエステルフィルムまたは延伸完了前の未延伸ポリエステルフィルムに塗工すればよい。製造工程の簡略化の面では未延伸フィルムに塗工しておくのが有利である。塗工方法としては、例えば、バーコート、ロールコート、スプレーコートなどの各種方法を採用できる。塗工時の厚み(塗工厚み)は、最終的な厚み(二軸延伸後の厚み)が、好ましくは1nm以上100nm以下、より好ましくは2nm以上80nm以下となるようにすればよい。各種膜の最終的な厚みが薄すぎると、膜を設ける目的が達成され難くなり、一方、厚すぎると、形成した膜が削れ易くなるなどの問題が発生することがある。
なお、下記実施例、比較例における各種物性の測定および得られたフィルムの評価は以下の測定で行った。
ポリエステル0.1gをフェノール/テトラクロロエタン(容積比:3/2)の混合溶媒25mL中に溶解させ、30℃でオストワルド粘度計を用いて測定した。
JIS−Z−1702準拠の方法で測定した。
試験温度を150℃、加熱時間を10分間としたこと以外は、JIS−C−2318記載の昇温時寸法安定性試験法に従い、フィルムの長手方向(MD方向)および幅方向(TD)における熱収縮率を測定した。
延伸フィルムの一方の面(フィルムのいずれか一方の面がコロナ処理をされている場合には、非コロナ処理面)について、下記条件で全反射赤外吸収測定(FT−IR ATR測定)を行った。
vFT−IR装置:Bio Rad DIGILAB社製「FTS−60A/896」
1回反射ATRアタッチメント:SPECAC社製「golden gate MKII」
内部反射エレメント:ダイヤモンド
入射角:45°
分解能:4cm-1
積算回数:128回
延伸フィルムの一方の面(フィルムのいずれか一方の面がコロナ処理をされている場合には、非コロナ処理面)について、接触角計(協和界面科学社製「表面エナジー解析装置 CA−X」)を用いて、20℃、65%RHの条件下で、測定面に接する水の接触角θwと、測定面に接する2ヨウ化メチレンの接触角θyとを測定し、得られた測定値からWuの式に基づき、表面自由エネルギーの極性力成分(mJ/m2)を算出した。なお、算出(解析)には、前記表面エナジー解析装置の解析ソフト中のWuの方法を用いた。
得られた延伸フィルムの異なる箇所3ヶ所について、JIS−K−7105に準じた方法で、ヘイズメーター(日本電色社製「NDH2000」)を用いてヘイズ(%)を測定し、それらの平均値を延伸フィルムのヘイズ値とした。
初期剥離率については得られた延伸フィルムを、加熱後剥離率については120℃で1時間加熱した後の延伸フィルムをそれぞれ試験サンプルとし、各試験サンプルの上に、共重合ポリエステル樹脂(東洋紡株式会社製「バイロン(登録商標)樹脂200SS」)を乾燥後の厚みが5μmとなるように塗布し、100℃のオーブン中で5分乾燥した。その後、共重合ポリエステル樹脂塗布面に切り込みを入れて、1mm×1mmの碁盤目を100個作製し、この碁盤目部分にセロハン製粘着テープ(ニチバン社製「セロテープ(登録商標)」)を強く圧着させて、テープの端を90°の角度で一気に引き剥がす碁盤目剥離試験を実施し、剥離した割合(100個の碁盤目のうち剥離した碁盤目の数)を剥離率(%)とした。
剥離性変化率は、初期剥離率および加熱後剥離率から下記式に基づき算出した。
剥離性変化率(%)=[(初期剥離率−加熱後剥離率)/初期剥離率]×100
ポリエチレンテレフタレート(極限粘度:0.63dl/g、滑材としてシリカ(富士シリシア化学社製「サイリシア」;グレード:310P、形状:不定形、平均粒径:2.7μm)を600ppm含有)を、120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)した後、単軸押出機を用いて樹脂温度285℃で溶融させ、これをダイ温度285℃で38cm幅のTダイより25℃の冷却ロール(周速50m/分)上へ8m/分の速度でキャストし、冷却ロール周面に対向するように設置した直径30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加して0.2mAの電流を流すことにより冷却ロールに静電密着させて、厚み(中央部)が200μmの未延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。
延伸後の熱固定処理の温度(熱固定温度)を表1に記載のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。
ポリエチレンテレフタレート(極限粘度:0.63dl/g、滑材としてシリカ(富士シリシア化学社製「サイリシア」;グレード:310P、形状:不定形、平均粒径:2.7μm)を1000ppm含有)を、120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)した後、単軸押出機を用いて樹脂温度280℃で溶融させ、これをダイ温度280℃で38cm幅のTダイより25℃の冷却ロール(周速50m/分)上へ5.5m/分の速度でキャストし、冷却ロール周面に対向するように設置した直径30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加して0.2mAの電流を流すことにより冷却ロールに静電密着させて、厚み(中央部)が200μmの未延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。
未延伸フィルムの作製条件、延伸条件および熱固定処理条件を、表1に記載のように変更したこと以外、実施例4と同様にして、延伸ポリエステルフィルムを得た。なお、炭酸カルシウム(滑材)としては、平均粒径0.88μmの合成炭酸カルシウム(白石カルシウム社製「ブリリアント(登録商標)1500」)を用いた。
得られたフィルムの特性を表1に示す。
ポリエチレンテレフタレート(極限粘度:0.63dl/g、滑材としてシリカ(富士シリシア化学社製「サイリシア」;グレード:310P、形状:不定形、平均粒径:2.7μm)を700ppm含有)を、120℃で24時間減圧乾燥(1.3hPa)した後、単軸押出機を用いて樹脂温度280℃で溶融させ、これをダイ温度285℃で38cm幅のTダイより20℃の冷却ロール(周速50m/分)上へ10m/分の速度でキャストし、冷却ロール周面に対向するように設置した直径30μmのタングステンワイヤー電極から7.2kVの電圧を印加して0.2mAの電流を流すことにより冷却ロールに静電密着させて、厚み(中央部)が220μmの未延伸フィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表1に示す。
未延伸フィルムの作製条件、延伸条件および熱固定処理条件を、表2に記載のように変更したこと以外、実施例1と同様にして、延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表2に示す。
未延伸フィルムの作製条件、延伸条件および熱固定処理条件を、表3に記載のように変更したこと以外、実施例4と同様にして、延伸ポリエステルフィルムを得た。
得られたフィルムの特性を表3に示す。
Claims (2)
- 厚み3〜50μmの延伸ポリエステルフィルムであって、
フィルムの長手方向の熱収縮率が1〜8%であり、
フィルムの少なくとも一方の面が下記(i)〜(iii)の条件を満足することを特徴とするポリエステルフィルム。
(i)全反射赤外吸収法(ATR−IR法)により求めた結晶化度が1.25以上であること
(ii)全反射赤外吸収法(ATR−IR法)により求めた面配向係数が0.2〜0.25であること
(iii)表面自由エネルギーにおける極性力成分が10〜16mJ/m2であること - 二軸延伸フィルムである請求項1に記載のポリエステルフィルム。
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