JP2014203690A - 被覆層を有する電極及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】容量維持率に優れた電極の製造方法を提供する。【解決手段】金属集電体の表面の一部に活物質層を直接配置する第1工程と、有機溶媒とM1H2PO4(M1はH、Li、Na、K、NH4から選択される。)を含む混合液を準備する第2工程と、前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を前記混合液に浸漬する第3工程と、を含む電極の製造方法。【選択図】 なし
Description
本発明は被覆層を有する電極及びその製造方法に関する。
二次電池を用いた製品は増加の一途を辿っており、一般に、携帯電話やノート型パソコンなどの携帯機器には二次電池が必須のものとして認識されている。二次電池のうちリチウムイオン二次電池は小型で大容量であるため汎用されている。リチウムイオン二次電池は、必須の構成要素として正極及び負極という対の電極を備える。各電極は活物質層及び該活物質層が表面に配置された集電体を有する。
近年、より優れた二次電池を提供する目的で、二次電池の構成要素に対する研究が盛んに行われている。その一つとして、集電体の表面をリン含有層で被覆する技術が知られている。特許文献1及び2には、集電体と活物質層の間にリン含有層を介在させた電極が開示され、当該電極を用いた二次電池の容量維持率が優れていることが開示されている。
しかしながら、従来の集電体と活物質層の間にリン含有層を介在させる技術では、集電体と活物質層との間を流れる電流はリン含有層を通過せざるを得ない。そうすると、電流に対しリン含有層が抵抗となる虞がある。特許文献2に記載の技術は、特許文献1のリン含有層の抵抗を低減するために為されたものであるが、依然として、集電体と活物質層の間にリン含有層を介在させているため、抜本的な改善方法とまでは言えなかった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、集電体と活物質層の間のリン含有層による抵抗がより低減され、且つ容量維持率に優れる電極の製造方法及び該製造方法にて製造された電極を提供することを目的とする。
本発明者は試行錯誤を重ねながら電極について鋭意検討を行った。そして、本発明者は思いがけず、集電体と活物質層の間にリン含有層を介在させるのではなく、集電体と活物質層の間以外の箇所にリン含有層を形成させる電極を想起した。そして、予め活物質層が配置された金属集電体をリン含有液に浸漬することでリン含有被覆層が形成された電極を得ることができること、しかも、該電極を用いた二次電池は容量維持率が優れていることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の電極の製造方法は、金属集電体の表面の一部に活物質層を直接配置する第1工程と、有機溶媒とM1H2PO4(M1はH、Li、Na、K、NH4から選択される。)とを含む混合液を準備する第2工程と、前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を前記混合液に浸漬する第3工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の電極は上記製造方法で製造されたものである。詳細には、本発明の電極は、金属集電体と、前記金属集電体の表面の一部に直接配置された活物質層と、前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を被覆しリンを含む被覆層と、を有することを特徴とする。
本発明の電極においては、集電体と活物質層の間にリン含有層を介在させていないので、従来技術で問題視されていた集電体と活物質層の間のリン含有層に由来する抵抗が存在しない。
本発明の電極の製造方法においては、金属集電体の表面に活物質層を直接配置するので、従来技術で問題視されていた集電体と活物質層の間のリン含有層に由来する抵抗が存在しない。本発明の電極の製造方法にて製造された電極は、優れた容量維持率を示す。
以下に、本発明を実施するための形態を説明する。なお、特に断らない限り、本明細書に記載された数値範囲「a〜b」は、下限aおよび上限bをその範囲に含む。そして、これらの上限値および下限値、ならびに実施例中に列記した数値も含めてそれらを任意に組み合わせることで数値範囲を構成し得る。さらに数値範囲内から任意に選択した数値を上限、下限の数値とすることができる。
本発明の電極の製造方法は、金属集電体の表面の一部に活物質層を直接配置する第1工程と、有機溶媒とM1H2PO4(M1はH、Li、Na、K、NH4から選択される。)とを含む混合液を準備する第2工程と、前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を前記混合液に浸漬する第3工程と、を含むことを特徴とする。
また、本発明の電極は上記製造方法で製造されたものであり、金属集電体と、前記金属集電体の表面の一部に直接配置された活物質層と、前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を被覆しリンを含む被覆層と、を有することを特徴とする。
以下、本発明の電極の製造方法及び本発明の電極を説明する。
本発明の電極の用途に関し、本発明の電極は、活物質層及び金属集電体を有する電極を用いる電池であれば電池の種類について制限されずに用いることができる。本発明の電極は、一次電池に用いても良いし、二次電池に用いても良い。本発明の電極は充放電を繰り返した後の容量維持率に優れることから二次電池用とするのが好ましく、リチウム二次電池用とするのが特に好ましい。また、本発明の電極は、正極であっても良いし、負極であっても良い。
第1工程は、金属集電体の表面の一部に活物質層を直接配置する工程である。
金属集電体は、電池の放電又は充電の間、電極に電流を流し続けるための化学的に不活性な電子高伝導体をいう。金属集電体としては、銀、銅、金、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、コバルト、亜鉛、ニッケル、鉄、白金、錫、インジウム、チタン、ルテニウム、タンタル、クロム、モリブデンから選ばれる少なくとも一種、並びにステンレス鋼などの金属材料を挙げることができる。特に、電気伝導性、加工性、価格の面から、アルミニウムが好ましい。金属集電体は箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。そのため、金属集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス箔などの金属箔を好適に用いることができる。金属集電体が箔、シート、フィルム形態の場合は、その厚みが10μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
活物質層は活物質を含む層である。
活物質は、例えば、リチウム二次電池であれば、リチウムイオンを吸蔵及び放出し得る物質である。正極で用いられる活物質を正極活物質といい、負極で用いられる活物質を負極活物質という。
正極活物質としては、公知のものを用いれば良く、LiaNibCocMndDeOf(0.2≦a≦1、b+c+d+e=1、0≦e<1、DはLi、Fe、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)、Li2MnO2、Li2MnO3、LiFePO4、Li2FeSO4などのリチウム含有金属酸化物を挙げることができる。また、正極活物質として、LiMPO4、LiMVO4又はLi2MSiO4(式中のMはCo、Ni、Mn、Feのうちの少なくとも一種から選択される)で表されるポリアニオン系化合物を挙げることができる。
負極活物質としては、リチウムを吸蔵及び放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物、あるいは高分子材料を例示することができる。炭素系材料としては、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類を例示できる。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。リチウムと合金化可能な元素としては、具体的にNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが例示でき、特に、SiまたはSnが好ましい。リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物としては、具体的にZnLiAl、AlSb、SiB4、SiB6、Mg2Si、Mg2Sn、Ni2Si、TiSi2、MoSi2、 CoSi2、NiSi2、CaSi2、CrSi2、Cu5Si、FeSi2、MnSi2、NbSi2、TaSi2、VSi2、WSi2、ZnSi2、SiC、Si3N4、Si2N2O、SiOv(0<v≦2)、SnOw(0<w≦2)、SnSiO3、LiSiO あるいはLiSnOを例示でき、特に、SiOx(0.5≦x≦1.5)が好ましい。また、リチウムと合金化反応可能な元素を有する元素化合物として、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金等)を例示できる。高分子材料としては、具体的にポリアセチレン、ポリピロールを例示できる。
活物質層は必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む。
結着剤は活物質を金属集電体の表面に繋ぎ止める役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アルコキシシリル基含有樹脂などの公知のものを用いることができる。これらの結着剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。結着剤の使用量については特に制限はないが、活物質100質量部に対して結着剤1〜50質量部の範囲が好ましい。結着剤が少なすぎると電極の成形性が低下し、また、結着剤が多すぎると電極のエネルギー密度が低くなるためである。
導電助剤は導電性を高めるために添加される。導電助剤としては、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(登録商標)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber)が例示される。これらの導電助剤を単独または二種以上組み合わせて活物質層に添加することができる。導電助剤の使用量については特に制限はないが、例えば、活物質100質量部に対して導電助剤1〜30質量部とすることができる。
金属集電体の表面に活物質層を直接配置するには、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いて、金属集電体の表面に活物質を直接塗布すればよい。具体的には、活物質、並びに必要に応じて結着剤及び/又は導電助剤を含む活物質層形成用組成物を調製し、この組成物に適当な溶媒を加えてペースト状の液とする。あらかじめ結着剤を溶媒に溶解させた溶液又は分散させた懸濁液を用いても良い。上記溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、メタノール、エタノール、メチルイソブチルケトン、水を例示できる。上記ペースト状の液を金属集電体の表面に塗布後、乾燥する。乾燥は、常圧条件で行っても良いし、真空乾燥機を用いた減圧条件下で行っても良い。乾燥温度は適宜設定すればよく、上記溶媒の沸点以上の温度が好ましい。乾燥時間は塗布量及び乾燥温度に応じ適宜設定すればよい。電極密度を高めるべく、第1工程後に圧縮工程を加えても良い。
第2工程は、有機溶媒とM1H2PO4(M1はH、Li、Na、K、NH4から選択される。)を含む混合液を準備する工程である。
有機溶媒は、M1H2PO4(M1はH、Li、Na、K、NH4から選択される。)を溶解又は分散させるためのものである。有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、THF、クロロホルム、ジクロロメタンを挙げることができる。
混合液は水を含んでいても良い。水を含む混合液において、水に対する有機溶媒の体積比(v/v)は、1〜1000の範囲が好ましく、5〜500の範囲がより好ましく、10〜300の範囲がさらに好ましい。
例えば、電極がリチウムイオン二次電池に使用される場合には、M1H2PO4(M1はH、Li、Na、K、NH4から選択される。)は、M1がH又はLiのものが好ましい。この理由は次のとおりである。例えば、M1がNaのNaH2PO4を用いて電極を製造すると、Naが電極中に残存する可能性がある。この電極をリチウムイオン二次電池に使用すると、電極中に残存するNaに因り、リチウムイオンの移動及び活物質への吸脱着が妨げられるおそれが生じる。
混合液中のM1H2PO4(M1はH、Li、Na、K、NH4から選択される。)の濃度は、0.01〜5mol/Lの範囲が好ましく、0.1〜4mol/Lの範囲がさらに好ましく、0.25〜2mol/Lの範囲がより好ましく、0.5〜1mol/Lの範囲が特に好ましい。後述の第3工程における金属集電体とM1H2PO4との接触機会(反応機会)について考慮すると、M1H2PO4は混合液に溶解している状態が好ましい。この場合の混合液は水及び水と混和する有機溶媒で構成されるのが良い。
第3工程は、金属集電体の表面のうち少なくとも活物質層が配置されていない表面の一部を混合液に浸漬する工程である。第3工程で、活物質層が配置されていない金属集電体の表面が混合液に浸漬されると、該表面は、リンを含む被覆層で被覆される。ここで、例えば、金属集電体としてアルミニウムを用い、M1H2PO4としてリン酸(H3PO4)を用いた場合、被覆層はAlPO4、Al2(HPO4)3、Al(H2PO4)3などのリン酸アルミニウム塩を含むと考えるのが合理的である。そうすると、第3工程で活物質層が配置されていない金属集電体の表面が混合液に浸漬された結果、該表面は金属集電体を構成する金属元素を含むリン酸塩からなる被覆層で被覆されると表現することもできる。同様に、本発明の電極を、金属集電体と、前記金属集電体の表面の一部に直接配置された活物質層と、前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を被覆し、前記金属集電体を構成する金属元素を含むリン酸塩からなる被覆層とを有する電極と表現することもできる。
第3工程を行う際の温度及び時間には特に制限は無く、適宜設定すればよい。また、第3工程は撹拌条件下で行われても良い。
第3工程の後に、電極を有機溶媒で洗浄する洗浄工程、及び/又は、電極を乾燥させる溶媒乾燥工程を加えても良い。
洗浄工程は、被覆層を構成せず単に電極に付着しているM1H2PO4及び水を、電極から除去するための工程である。洗浄工程で用いる有機溶媒は上記第2工程で挙げたものを用いれば良い。第2及び第3工程で水を含む混合液を用いた場合には、水と混和する有機溶媒を用いるのが好ましい。洗浄工程は複数回繰り返して行っても良い。
溶媒乾燥工程は電極から有機溶媒及び水を除去する工程である。溶媒乾燥工程は、常圧で行っても良いし、真空乾燥機を用いた減圧条件下で行っても良い。乾燥温度は適宜設定すればよく、有機溶媒及び水の沸点以上の温度が好ましい。乾燥時間は条件に応じ適宜設定すればよい。
本発明の電極は上記製造方法で製造されたものであり、金属集電体と、前記金属集電体の表面の一部に直接配置された活物質層と、前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を被覆しリンを含む被覆層と、を有することを特徴とする。また、本発明の電極は、金属集電体と、前記金属集電体の表面の一部に直接配置された活物質層と、前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を被覆し、前記金属集電体を構成する金属元素を含むリン酸塩からなる被覆層と、を有することを特徴とすると表現することもできる。上述したように、本発明の電極は、リチウムイオン二次電池などの二次電池用電極とすることができる。なお、二次電池には、本発明の電極を正極又は負極の少なくとも一方に用いれば良い。もちろん、本発明の電極をリチウムイオン二次電池の正極及び負極に用いても良い。
リチウムイオン二次電池は正極及び負極の他に電解液及びセパレータを具備する。
電解液は溶媒と該溶媒に溶解された電解質とを含む液である。
電解液に用いられる溶媒としては、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類等を挙げることができる。環状エステル類としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンを例示できる。鎖状エステル類としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、メチルエチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステルを例示できる。エーテル類としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、1,2−ジブトキシエタンを例示できる。電解液の溶媒として、上述のものを複数併用してもよい。特に、エチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジメチルカーボネートの3種を併用するのが好ましい。
電解質としては、LiClO4、LiAsF6、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2等のリチウム塩を挙げることができる。電解液中の電解質の濃度は、0.5〜1.7mol/Lの範囲が好ましい。
セパレータは、正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、例えばポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン若しくはポリエチレンなどの合成樹脂を1種又は複数用いた多孔質膜、またはセラミックス製の多孔質膜が例示できる。
リチウムイオン二次電池の製造方法の概略を示す。まず、正極及び負極の間にセパレータを挟装させて電極体とする。次に、正極の集電体および負極の集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リードでそれぞれ接続する。そして、電極体に電解液を加えてリチウムイオン二次電池とする。ここで、本発明の電極は金属集電体の表面に被覆層を有するので、金属集電体と電解液が直接接することを抑制できる。そうすると、二次電池の稼働時(充放電時)に、金属集電体と電解液が反応すること及び劣化することを抑制することができる。
リチウムイオン二次電池の形状は特に限定されるものでなく、円筒型、積層型、コイン型、ラミネート型等、種々の形状を採用することができる。
本発明の電極を用いたリチウムイオン二次電池は、金属集電体の表面に被覆層を有するので劣化しにくく、好適な容量維持率を示す。その結果として、本発明の電極を用いたリチウムイオン二次電池は、高電位駆動条件下でも良好な容量維持率を示すことができる。そのため、本発明の電極を用いたリチウムイオン二次電池は、大きな充放電容量を維持できるものであり、かつ優れたサイクル性能を有するものである。ここで、高電位駆動条件とは、リチウム金属に対するリチウムイオンの作動電位が4.3V以上、さらには4.5V〜5.5Vのことをいう。本発明の電極を用いたリチウムイオン二次電池は、正極の充電電位をリチウム基準で4.3V以上、さらには4.5V〜5.5Vとすることができる。なお、一般的なリチウムイオン二次電池の駆動条件においては、リチウム金属に対するリチウムイオンの作動電位は4.3V未満である。
本発明の電極を用いたリチウムイオン二次電池は、車両に搭載してもよい。車両は、その動力源の全部あるいは一部にリチウムイオン二次電池による電気エネルギーを使用している車両であればよく、たとえば、電気車両、ハイブリッド車両を例示できる。車両にリチウムイオン二次電池を搭載する場合には、リチウムイオン二次電池を複数直列に接続して組電池とするとよい。リチウムイオン二次電池は、車両以外にも、パーソナルコンピュータ、携帯通信機器など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などに用いることができる。
以上、本発明の電極の製造方法、及び該製造方法にて製造された電極の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本発明の電極を以下のとおり製造した。
本発明の電極を以下のとおり製造した。
第1工程
活物質であるLiNi5/10Co2/10Mn3/10O2で表わされるリチウム複合金属酸化物94質量部、導電助剤であるアセチレンブラック3質量部、および結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを作製した。金属集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することでN−メチル−2−ピロリドンを揮発により除去し、その結果、表面に活物質層を直接配置したアルミニウム箔を得た。
活物質であるLiNi5/10Co2/10Mn3/10O2で表わされるリチウム複合金属酸化物94質量部、導電助剤であるアセチレンブラック3質量部、および結着剤であるポリフッ化ビニリデン3質量部を混合した。この混合物を適量のN−メチル−2−ピロリドンに分散させて、スラリーを作製した。金属集電体として厚み20μmのアルミニウム箔を準備した。このアルミニウム箔の表面に、ドクターブレードを用いて上記スラリーが膜状になるように塗布した。スラリーが塗布されたアルミニウム箔を80℃で20分間乾燥することでN−メチル−2−ピロリドンを揮発により除去し、その結果、表面に活物質層を直接配置したアルミニウム箔を得た。
第2工程
リン酸(85%:JIS K9005特級)とエタノール(95)(JIS K8102 特級)を混合し、リン酸濃度が0.50mol/Lのリン酸エタノール混合液を準備した。
リン酸(85%:JIS K9005特級)とエタノール(95)(JIS K8102 特級)を混合し、リン酸濃度が0.50mol/Lのリン酸エタノール混合液を準備した。
第3工程
第1工程で得た表面に活物質層を直接配置したアルミニウム箔を、第2工程で準備した混合液に、25℃で15分間浸漬した。
第1工程で得た表面に活物質層を直接配置したアルミニウム箔を、第2工程で準備した混合液に、25℃で15分間浸漬した。
浸漬されたアルミニウム箔を混合液から取り出し、エタノール(95)(JIS K8102 特級)中で2度、洗浄した。洗浄後のアルミニウム箔を、120℃、12時間、真空乾燥機にて減圧乾燥し、本発明の正極を得た。この正極の金属集電体の表面をX線光電子分光装置で分析したところ、リンの存在が確認できた。
本発明の電極(正極)を用いたリチウムイオン二次電池を以下のように作成した。
負極活物質である人造黒鉛82質量部、導電助剤であるアセチレンブラック8質量部、並びに結着剤であるスチレンブタジエンゴム5質量部及びカルボキシメチルセルロース5質量部を混合した。この混合物を適量のイオン交換水に分散させて、スラリーを作製した。負極用集電体として厚み20μmの銅箔を準備した。この銅箔の表面に、ドクターブレードを用いて、上記スラリーを膜状に塗布した。スラリーが塗布された銅箔を乾燥して水を除去し、その後、銅箔をプレスし、接合物を得た。得られた接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱乾燥して、負極とした。
上記の正極および負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を製作した。詳しくは、正極および負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層構造の樹脂膜からなる矩形状シート(27×32mm、厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液としては、エチレンカーボネート30容量部、メチルエチルカーボネート30容量部及びジメチルカーボネート40容量部を混合した溶媒にLiPF6を1mol/Lとなるよう溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群および電解液が密閉されたラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極および負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。
(実施例2)
リン酸エタノール混合液のリン酸濃度を0.125mol/Lとした以外は、実施例1と同様の方法で、本発明の正極及びリチウムイオン二次電池を得た。
リン酸エタノール混合液のリン酸濃度を0.125mol/Lとした以外は、実施例1と同様の方法で、本発明の正極及びリチウムイオン二次電池を得た。
(実施例3)
リン酸エタノール混合液のリン酸濃度を1.0mol/Lとした以外は、実施例1と同様の方法で、本発明の正極及びリチウムイオン二次電池を得た。
リン酸エタノール混合液のリン酸濃度を1.0mol/Lとした以外は、実施例1と同様の方法で、本発明の正極及びリチウムイオン二次電池を得た。
(比較例1)
実施例1の第1工程で得られた、表面に活物質層を直接配置したアルミニウム箔を正極とした。この正極を用いて実施例1と同様の方法でリチウムイオン二次電池を得た。
実施例1の第1工程で得られた、表面に活物質層を直接配置したアルミニウム箔を正極とした。この正極を用いて実施例1と同様の方法でリチウムイオン二次電池を得た。
<二次電池の評価>
<保存後の容量維持率>
実施例1〜3、比較例1のラミネート型リチウムイオン二次電池の初期容量を測定した。測定する電池に対し、25℃、1.0Cレート、電圧4.5VまでCC充電(定電流充電)し、そして、0.33Cレートで2.5VまでCCCV放電(定電流定電圧放電)を行ったときの放電容量を測定し、これを初期容量とした。
<保存後の容量維持率>
実施例1〜3、比較例1のラミネート型リチウムイオン二次電池の初期容量を測定した。測定する電池に対し、25℃、1.0Cレート、電圧4.5VまでCC充電(定電流充電)し、そして、0.33Cレートで2.5VまでCCCV放電(定電流定電圧放電)を行ったときの放電容量を測定し、これを初期容量とした。
電圧4.32Vで充電した電池を温度60℃の恒温槽に12日間保存した。保存後の電池の放電容量を初期容量の測定と同様の方法で測定して、容量維持率を算出した。
容量維持率(%)は以下の式で求めた。
容量維持率(%)=保存後の放電容量/初期容量×100
結果を表1及び表2に示す。なお、表1と表2を分けたのは、両者のロット及び評価日時が異なるためである。
容量維持率(%)=保存後の放電容量/初期容量×100
結果を表1及び表2に示す。なお、表1と表2を分けたのは、両者のロット及び評価日時が異なるためである。
本発明の正極を用いたリチウムイオン二次電池は、いずれも好適な容量維持率を示した。
<保存後の抵抗値>
電池のACインピーダンス抵抗測定を行い、100mHzにおけるインピーダンスを初期抵抗値として測定した。電圧4.32Vで充電した電池を温度60℃の恒温槽に12日間保存した。保存後の電池のACインピーダンス抵抗測定を行い、100mHzにおける保存後の抵抗値を測定した。そして、抵抗増加率(%)を以下の式で求めた。結果を表3に示す。
抵抗増加率(%)=保存後の抵抗値/初期抵抗値×100
電池のACインピーダンス抵抗測定を行い、100mHzにおけるインピーダンスを初期抵抗値として測定した。電圧4.32Vで充電した電池を温度60℃の恒温槽に12日間保存した。保存後の電池のACインピーダンス抵抗測定を行い、100mHzにおける保存後の抵抗値を測定した。そして、抵抗増加率(%)を以下の式で求めた。結果を表3に示す。
抵抗増加率(%)=保存後の抵抗値/初期抵抗値×100
本発明の正極を用いたリチウムイオン二次電池は、いずれも保存後の抵抗増加率を抑制することができた。
<容量維持率測定後の負極の分析>
上記表1の結果が得られた電池を解体し、各電池の負極活物質層に付着したアルミニウムの含有率を、ICP−OESにて測定した。結果を表4に示す。表4のAl量(質量%)とは、負極から集電体を除いた負極活物質層の質量に対するAlの質量%を意味する。
上記表1の結果が得られた電池を解体し、各電池の負極活物質層に付着したアルミニウムの含有率を、ICP−OESにて測定した。結果を表4に示す。表4のAl量(質量%)とは、負極から集電体を除いた負極活物質層の質量に対するAlの質量%を意味する。
負極にAlが付着したのは、正極の金属集電体のAlが電解液などと接触した結果、Alが電解液中に溶出したためである。本発明の電極においては、正極の金属集電体のAlがリンを含む被覆層で被覆されているため、Alの溶出を抑えることができた。実施例1と実施例2の結果から、混合液中のリン酸濃度が高いほど、好適な被覆層を形成できるといえる。
Claims (7)
- 金属集電体の表面の一部に活物質層を直接配置する第1工程と、
有機溶媒とM1H2PO4(M1はH、Li、Na、K、NH4から選択される。)とを含む混合液を準備する第2工程と、
前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を前記混合液に浸漬する第3工程と、
を含むことを特徴とする電極の製造方法。 - 前記有機溶媒がアルコール類から選択される請求項1に記載の電極の製造方法。
- 前記混合液における前記M1H2PO4の濃度が0.1〜4mol/Lである請求項1又は2に記載の電極の製造方法。
- 前記金属集電体がアルミニウムを含む請求項1〜3のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 前記M1がHである請求項1〜4のいずれかに記載の電極の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の電極の製造方法で製造されたことを特徴とする電極。
- 金属集電体と、
前記金属集電体の表面の一部に直接配置された活物質層と、
前記金属集電体の表面のうち少なくとも前記活物質層が配置されていない表面の一部を被覆しリンを含む被覆層と、
を有することを特徴とする電極。
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---|---|---|---|---|
JPH1167191A (ja) * | 1997-08-08 | 1999-03-09 | Japan Storage Battery Co Ltd | 非水電解質電池用電極の製造法及び非水電解質電池の製造法 |
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JP2009043515A (ja) * | 2007-08-08 | 2009-02-26 | Hitachi Maxell Ltd | 電池用電極、その製造方法および前記電池用電極を有する電池 |
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-
2013
- 2013-04-05 JP JP2013079409A patent/JP2014203690A/ja active Pending
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