JP2014192208A - フレキシブル配線基板及びその実装構造 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 本発明に係るフレキシブル配線基板は、可撓性を有するフィルム基板に、ナノメタルとカーボンナノチューブとの複合材からなる配線が設けられているフレキシブル配線基板である。前記ナノメタルがAgナノメタルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブ(MWCNT)からなる配線を備えるフレキシブル配線基板は、正孔をキャリアとする素子の搭載用として好適に用いることができる。
【選択図】 図13
Description
本発明者は、基材の表面に導体パターンを形成する方法として、ナノメタルインクとナノカーボン分散液を用いて転写する方法により、カーボンナノチューブとナノメタルとの複合材からなる導体パターンを形成する方法を提案した(特許文献1)。Cu、Ag等の導体材料とカーボンナノチューブとを複合化した配線を形成する方法としてはめっき法によりめっき金属とカーボンナノチューブとを複合化する方法(特許文献2)、カーボンナノチューブを含む導電性ペーストを使用するもの(特許文献3)等がある。
また、フレキシブル配線基板は薄く形成できることが特徴であるが、そのためにはフィルム基板とともに配線の厚さを薄くしなければならない。しかしながら、配線の厚さを薄くすると、抵抗が大きくなり、耐電流密度が低くなって発熱や断線の原因となるという問題がある。
また、有機系材料を用いるタッチパネルなどの操作用には、透明電極が不可欠であるが、透明電極用として多用されている酸化物は曲げによって割れやすいという問題がある。
前記配線が、ナノメタルとしてAgナノメタルを使用し、カーボンナノチューブとして多層カーボンナノチューブ(MWCNT)を使用した複合材からなるものは、配線の可撓性、耐電流特性等の優れた特性を備える点で好適である。また、コスト面からもMWCNTはSWCNT(単層カーボンナノチューブ)やDWCNT(二層カーボンナノチューブ)の100分の1程度で済み、かつ直径が100nm未満の細いMWCNTであれば上述の柔軟性を満足し、耐電流特性においても優れている。
前記ナノメタルがAgナノメタルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であることにより、素子との接続電極における正孔障壁を低くすることができ、正孔をキャリアとする半導体を含む素子を搭載することにより、低電圧動作を可能とし、エネルギー損失を抑えることが可能となる。
本発明に係るフレキシブル配線基板は、ナノメタルとカーボンナノチューブとの複合材によって配線が形成されている。図1は、このナノメタルとカーボンナノチューブとを複合化した配線(複合配線)を備えるフレキシブル配線基板の製造方法を示す。本実施形態の製造方法は、配線パターンにしたがって表面を凹凸面としたスタンパを使用し、転写法により配線を形成する。
図1(d)は、フィルム基板16にカーボンナノチューブ分散液13とナノメタルインク14とを転写した後、ナノメタルインクを焼成する処理(150〜230℃加熱)を行い、フィルム基板16の表面にカーボンナノチューブとナノメタルとが複合化された配線17を形成した状態を示す。カーボンナノチューブ分散液13とナノメタルインク14とを転写した後、熱処理を施すことによって、分散剤や溶媒が散失して配線17は、カーボンナノチューブとナノメタル(Agナノメタル)との複合材から構成されるものとなり、フィルム基板16上に所定のパターンに配線17が形成されたフレキシブル配線基板18が得られる。
上記実施形態において説明したフレキシブル配線基板18は、可撓性を有するフィルム基板16上にナノメタルとカーボンナノチューブとの複合材からなる配線17を形成したものである。上記実施形態では、ナノメタルインクとしてAgナノメタルインクを使用したが、Ag以外のCu、Au等のナノメタルを用いたナノメタルインクを使用することもできる。
また、上記実施形態では、転写法を利用してナノメタルとカーボンナノチューブとの複合材からなる配線を形成したが、フィルム基板上に配線を形成する方法は転写法に限るものではなく、スクリーン印刷法やインクジェット法、めっき法等を利用することもできる。
上記実施形態では、カーボンナノチューブ分散液を供給する操作を1回としているが、カーボンナノチューブ分散液を供給する操作を複数回繰り返すことによって、スタンパに供給するカーボンナノチューブの量を増やすことができ、このような方法を利用することによって配線中のカーボンナノチューブの量比をかなりの精度で制御することも可能である。フレキシブル配線基板の特定の電気的特性あるいは機械的特性が、配線中におけるカーボンナノチューブの量比に依存するような場合には、カーボンナノチューブの量比を精度よく制御できることは有用である。
上記実施形態と同様の方法により、カーボンナノチューブとAgナノメタルの複合材からなる導体パターンを備えるフレキシブル基板ついて折り曲げ試験を行った。試験に使用したフィルム基板はポリイミドフィルム(大きさ25×40mm、厚さ0.038mm)である。導体パターンは基板フィルムの長手方向に平行に線幅0.5mm、パターン間隔1mm、厚さ300〜600nmで10本設けた。
なお、比較例として、実施例と同一のフィルム基板を使用し、Agナノメタルのみを用いて導体パターンを形成したフレキシブル基板を作製して折り曲げ試験を行った。
折り曲げ試験は図2に示すように、半径3mmの固定円柱体と、半径3mmの回転円柱体とでフレキシブル配線基板を挟圧し、回転円柱体を一方向と他方向に交互に回転方向を反転させながら湾曲させる操作を繰り返し行って、フィルム基板に形成した導体パターンの抵抗がどのように変化するかを測定したものである。
一方、Agナノメタルとカーボンナノチューブとの複合材からなる導体パターンを形成したフレキシブル配線基板(実施例)については、10万回の折り曲げ試験後も、導体パターンの断線がほとんど発生せず、折り曲げ試験により抵抗値が増加した場合も、高々2.5倍程度であった。
図4(a)は、直径5mmの棒にフレキシブル配線基板をしっかり巻きつけるようにして折り曲げた状態、図4(b)は、厚さ1mmの板のエッジを用いてフレキシブル配線基板を折り曲げた状態、図4(c)はプラスチック板で押さえつけるようにして完全に折り曲げた状態を示す。使用したサンプルは、厚さ0.125mmのポリイミドフィルムに、幅0.5mm、厚さ約0.3μmのAgナノメタルとカーボンナノチューブの複合配線を形成したもの(実施例)と、Agナノメタルからなる配線を形成したもの(比較例)である。
表1に図4(a)、(b)、(c)の折り曲げ操作を行ったときの抵抗値の測定結果を示す。
Agナノメタルとカーボンナノチューブ(MWCNT)との複合配線を形成したフレキシブル配線基板のサンプル(実施例)と、Agナノメタルのみからなる配線を形成したサンプル(比較例)について耐電流特性を調べた。使用したサンプルは、厚さ0.125mmのポリイミドフィルムと厚さ0.125mmのPEN(ポリエチレンナフタレート)フィルムからなるフィルム基板に前述した方法によって配線を形成したものである。配線幅0.5mm、配線の厚さ0.3〜0.6μmである。
図6は、ポリイミドフィルム上に配線を形成したサンプル、図7はPENフィルム上に配線を形成したサンプルについての耐電流特性の測定結果を示す。
これらの測定結果は、Agナノメタルのみからなる配線を形成したものは、抵抗値のばらつきが大きいのに対して、AgナノメタルとMWCNTとの複合配線を形成したものは、ばらつきが小さく、抵抗値が低い数値にまとまっていることを示す。
また、複合配線を形成したものは、Agナノメタルのみからなるものと比較して耐電流密度が高い値を示している。これは、カーボンナノチューブの優れた耐電流特性を反映していると考えられる。したがって、複合配線からなるものは、配線パターンの厚さを薄くしても配線不良が発生しにくくなる。
図6、7に示すように、ポリイミドフィルム上に配線を形成したものの方がPENフィルム上に配線を形成したものと比較して耐電流密度が高くなっている。これは、ポリイミドフィルム(耐熱温度〜300℃)の方がPENフィルム(耐熱温度150〜180℃)よりも耐熱温度が高いためと考えられる。図9のPENフィルムを用いたものでは、フィルムが溶けたことによって断線が生じたことを示している。
フレキシブル配線基板には半導体素子、センサ素子といった種々の電子部品を搭載することができる。これらの電子部品はフレキシブル配線基板に形成されている配線と電気的に接続して実装されるのであるが、有機薄膜トランジスタや有機太陽電池、有機EL素子といった素子は電流を注入したり取り出したりして動作するから、これらの素子を搭載する場合は、電極界面における接触抵抗を下げることによって動作電圧を下げることができ、エネルギー損失を低減することができる。
以下では、Agナノメタルとカーボンナノチューブからなる複合配線を接続電極とする有機薄膜トランジスタを作製する方法について説明する。
次に、ガラス基板40の表面にPDMS(ポリジメチルシロキサン)膜41を被着形成したスタンパを用いてフィルム基板16上にゲート絶縁層30を形成する。PDMS膜41はゲート絶縁層30を形成する部位が凸部となるようにパターン形成したもので、このスタンパの表面にゲート絶縁層30となるPMMA(ポリメチルメタクリレート)をクロロホルムに溶かした溶液をスピンコートし、次いで、フィルム基板16のゲート20に位置合わせしてスタンパをフィルム基板16に押接し、フィルム基板16にPMMAを転写することによりゲート絶縁層30を形成する(図10(b))。
まず、ゲート絶縁層30の上にソース・ドレイン電極22a、22bを形成する。ソース・ドレイン電極は、ソース・ドレイン電極に対応する部位が凸部となるように凹凸形成したPDMS膜43をガラス基板42上に形成したスタンパを使用し、カーボンナノチューブ分散液とAgナノメタルインクをゲート絶縁層30の上に転写することによって形成する(図11(a))。転写操作後、熱キュア処理を施すことにより、ソース・ドレイン電極22a、22bはカーボンナノチューブとAgナノメタルとの複合材からなる電極となる。
カーボンナノチューブ分散液とAgナノメタルインクを供給してソース・ドレイン電極22a、22bを形成する工程は、図1に示した、フィルム基板16上に配線17を形成する工程と全く同一である。したがって、ソース・ドレイン電極22a、22bを形成する工程で、フィルム基板16上に配線17を形成することが可能である。
図11(b)は、抜き版によりスタンパのPDMS膜45上にP3HT膜50を所定パターンに残した状態を示す。抜き版はガラス基板46上にシリコーンのモールド47によりスタンパ上に残すP3HT膜に対応する部位を凹部としたものである。スタンパを抜き版に押接することにより、スタンパ側にパターニングされたP3HT膜50を残る。
図12(a)は、ガラス基板46上にシリコーンのモールド47を形成した抜き版を使用して、ガラス基板44とPDMS膜45とからなるスタンパに半導体層となるP3HT膜50をパターニングして残した状態である。このスタンパを用いて、フィルム基板16上に形成したゲート絶縁層30上にP3HT膜50を転写する(図12(b))。
なお、半導体層として用いるP3HTは酸素の影響を受けやすいから、P3HT層を形成したりP3HT層を転写する操作は窒素雰囲気下で行う。
上述した方法により作製した有機薄膜トランジスタについて電気的特性を測定した。測定では、ソース・ドレイン電極をAgナノメタルのみ、MWCNT(多層カーボンナノチューブ)のみとした有機薄膜トランジスタを比較例として作製してこれらについても測定を行った。比較例の有機薄膜トランジスタも配線(電極)の構成材料が異なるのみで、製法は上述した方法と同様である。
表2に移動度、電気抵抗等について測定した結果を示す。表2中のS−D電極(ソース・ドレイン電極)の欄は電極の構成材料を示す。Agは、Agナノメタルのみからなるもの、Ag/MWCNTは、Agナノメタルと多層カーボンナノチューブからなるもの、MWCNTは多層カーボンナノチューブのみからなるものである。絶縁層のPIはゲート絶縁層としてポリイミドを使用したものである。
図13に示すように、MWCNTの仕事関数がAgの仕事関数よりも高いことから、正孔が電極と素子との間で移動する際の障壁の高さは、AgとMWCNTの複合材からなる電極では、MWCNTを介して正孔が移動することから、Ag単独の場合と比較して低くなると考えることができる。この値は同じ装置を用いてAuの蒸着膜について計測したAuの仕事関数4.75〜4.8eVよりも高く、Auのように高価な材料を使わなくても、より安価なAgとMWCNTの複合電極により代替可能であることも意味する。
11 ガラス基板
12 PDMS膜
13 カーボンナノチューブ分散液
14 ナノメタルインク
16 フィルム基板
17 配線
18 フレキシブル配線基板
20 ゲート
22a、22b ソース・ドレイン電極
30 ゲート絶縁層
40、42、44、46 ガラス基板
41、45 PDMS膜
50 P3HT膜膜
Claims (6)
- 可撓性を有するフィルム基板に、ナノメタルとカーボンナノチューブとの複合材からなる配線が設けられていることを特徴とするフレキシブル配線基板。
- 前記ナノメタルがAgナノメタルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル配線基板。
- 前記配線が、配線パターンにしたがって表面に凹凸形状が形成されたスタンパを用いる転写法により形成されたものであり、前記スタンパにカーボンナノチューブ分散液を供給し、さらにスタンパにナノメタルインクを供給した後、カーボンナノチューブを含浸するナノメタルインクを前記フィルム基板に転写して形成されたものであることを特徴とする請求項1または2記載のフレキシブル配線基板。
- 配線に電気的に接続して素子が搭載されたフレキシブル配線基板の実装構造であって、
前記素子が正孔をキャリアとする素子であり、
前記配線が、ナノメタルとカーボンナノチューブとの複合材からなることを特徴とするフレキシブル配線基板の実装構造。 - 前記ナノメタルがAgナノメタルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブ(MWCNT)であることを特徴とする請求項4記載のフレキシブル配線基板の実装構造。
- 前記配線が、配線パターンにしたがって表面に凹凸形状が形成されたスタンパを用いる転写法により形成されたものであり、前記スタンパにカーボンナノチューブ分散液を供給し、さらにスタンパにナノメタルインクを供給した後、カーボンナノチューブを含浸するナノメタルインクを前記フィルム基板に転写して形成されたものであることを特徴とする請求項4または5記載のフレキシブル配線基板の実装構造。
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