JP2014186945A - リチウムイオン二次電池用正極とその製造方法及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

リチウムイオン二次電池用正極とその製造方法及びリチウムイオン二次電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高温高電圧駆動に耐え得るリチウムイオン二次電池用の正極を提供する。
【解決手段】正極活物質粒子の少なくとも一部表面がポリマーコート層によって被覆されており、該ポリマーコート層にアミノ基とリン酸基を含む。ポリマーコート層はリン酸系ポリマーを含むため、サイクル試験時の容量低下を抑制できる。
【選択図】図なし

Description

本発明は、リチウムイオン二次電池に用いられる正極とその製造方法、及びその正極を用いたリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池は、充放電容量が高く、高出力化が可能な二次電池である。現在、主として携帯電子機器用の電源として用いられており、更に、今後普及が予想される電気自動車用の電源として期待されている。リチウムイオン二次電池は、リチウム(Li)を挿入・脱離することができる活物質を正極及び負極にそれぞれ有し、両極間に設けられた電解液内をリチウムイオンが移動することによって動作する。正極の活物質としては主にリチウムコバルト複合酸化物等のリチウム含有金属複合酸化物が用いられ、負極の活物質としては多層構造を有する炭素材料が主に用いられている。
しかしながら、現状のリチウムイオン二次電池の容量は満足なものとはいえず、更なる高容量化が求められている。これを達成するためのアプローチとして、正極電位の高電圧化が検討されているものの、高電圧、特に高温高電圧での駆動時に、繰り返し充放電後の電池特性が極端に悪化するという大きな問題があった。この原因として、充電時に正極近傍で電解液、電解質の酸化分解が生じるためと考えられている。
すなわち、正極近傍における電解質の酸化分解によってリチウムイオンが消費されることで、容量が低下し、また電解液の分解物が電極表面やセパレータの空隙に堆積し、リチウムイオン伝導に対する抵抗体となるために出力が低下すると考えられている。したがって、このような問題を解決するには、電解液、電解質の分解を抑制することが必要である。
そこで特開平11-097027号公報、特表2007-510267号公報などには、正極表面にイオン伝導性高分子などからなる被覆層を形成した非水電解質二次電池が提案されている。被覆層を形成することによって、正極活物質の溶出、分解などの劣化を抑制できるとされている。
ところがこれらの公報には、4.3V以上の高電圧で充電した場合の評価が記載されておらず、そのような高電圧駆動に耐え得るのか不明であった。また被覆層の厚さも実質的にμmオーダーであり、リチウムイオンの伝導を大きく妨げるものである。
特開平11-097027号公報 特表2007-510267号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高電圧駆動に耐え得るリチウムイオン二次電池用の正極を提供することを解決すべき課題とする。
上記課題を解決する本発明のリチウムイオン二次電池用正極の特徴は、正極活物質粒子の少なくとも一部表面がポリマーコート層によって被覆されており、ポリマーコート層にアミノ基とリン酸基を含むことにある。
そして本発明のリチウムイオン二次電池用正極の製造方法の特徴は、LixNiaCobMncO2、LixCobMncO2、LixNiaMncO2、LixNiaCobO2及びLi2MnO3(但し0.5≦x≦1.5、0.1≦a<1、0.1≦b<1、0.1≦c<1)から選ばれるLi化合物又は固溶体を含む正極活物質粒子と結着剤を含むスラリーを集電体表面に塗布し乾燥して正極活物質層を形成する工程と、
中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーが溶媒に溶解したカチオン性ポリマー溶液を正極活物質層に塗布し乾燥してカチオン性ポリマーコート層を形成し、次いで中性条件でのゼータ電位が負であり側鎖にリン酸基をもつリン酸系ポリマーが溶媒に溶解したリン酸系ポリマー溶液を塗布し乾燥してリン酸系ポリマーコート層を形成することにある。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、正極活物質粒子の少なくとも一部表面にポリマーコート層を形成している。このポリマーコート層は正極活物質粒子を被覆するため、高電圧駆動時に正極活物質粒子と電解液との直接接触を抑制でき、電解液および電解塩の分解を抑制することができる。
そしてポリマーコート層は、アミノ基とリン酸基を含んでいる。正極のポリマーコート層アミノ基とリン酸基を含んでいると、サイクル試験時のリチウムイオン二次電池の容量低下を抑制する効果が大きい。またポリマーコート層の厚さがnmオーダーであるために、リチウムイオン伝導性の抵抗とならない。したがって高電圧駆動によっても電解液の分解を抑制することができ、高容量であるとともに繰り返し充放電後も高い電池特性を維持できるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
また本発明の製造方法では、中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーが溶媒に溶解したカチオン性ポリマー溶液を正極活物質層に塗布し乾燥してカチオン性ポリマーコート層を形成し、次いで中性条件でのゼータ電位が負であり側鎖にリン酸基をもつリン酸系ポリマーが溶媒に溶解したリン酸系ポリマー溶液を塗布し乾燥してリン酸系ポリマーコート層を形成している。本発明に係る正極活物質粒子のゼータ電位は負であるので、正極活物質粒子とカチオン性ポリマーコート層とはクーロン力によって強固に接合される。またリン酸系ポリマーのゼータ電位は負であるので、カチオン性ポリマーコート層とリン酸系ポリマーコート層ともクーロン力によって強固に接合される。したがってカチオン性ポリマーコート層とリン酸系ポリマーコート層を共に薄膜に形成することができ、ポリマーコート層の総厚をnmオーダーとすることができるので、薄くかつ均一なポリマーコート層を形成することができる。
さらにディッピング法を用いてポリマーコート層を形成できるので、ロールトゥロールプロセスが可能となり生産性が向上する。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と集電体に結着された正極活物質層とを含む。集電体としては、リチウムイオン二次電池用正極などに一般に用いられるものを使用すれば良い。例えば、アルミニウム箔、アルミニウムメッシュ、パンチングアルミニウムシート、アルミニウムエキスパンドシート、ステンレススチール箔、ステンレススチールメッシュ、パンチングステンレススチールシート、ステンレススチールエキスパンドシート、発泡ニッケル、ニッケル不織布、銅箔、銅メッシュ、パンチング銅シート、銅エキスパンドシート、チタン箔、チタンメッシュ、カーボン不織布、カーボン織布等が例示される。
集電体がアルミニウムを含む場合には、集電体の表面に導電体よりなる導電層を形成し、その導電層の表面に正極活物質層を形成することが望ましい。このようにすることで、リチウムイオン二次電池のサイクル特性がさらに向上する。これは電解液中への溶出が抑制されるためである。導電体としては、グラファイト、ハードカーボン、アセチレンブラック、ファーネスブラックなどのカーボン、ITO(Indium-Tin-Oxide)、酸化錫(SnO2)などが例示される。これらの導電体から、PVD法あるいはCVD法などによって導電層を形成することができる。
導電層の厚さは特に制限されないが、5nm以上とするのが好ましい。これより薄くなると、サイクル特性向上の効果の発現が困難となる。
正極活物質層は、正極活物質からなる正極活物質粒子と、正極活物質粒子どうしを結着するとともに正極活物質粒子と集電体とを結着する結着部と、正極活物質粒子の少なくとも一部表面を被覆するポリマーコート層とを含む。
正極活物質は、金属リチウム、LiCoO2、Li2MnO3、硫黄などを用いることもできるが、LixNiaCobMncO2、LixCobMncO2、LixNiaMncO2、LixNiaCobO2及びLi2MnO3(但し0.5≦x≦1.5、0.1≦a<1、0.1≦b<1、0.1≦c<1)から選ばれるLi化合物又は固溶体を含むことが好ましい。これらのうち一種であってもよいし、複数種が混合されていてもよい。複数種の場合には、固溶体を形成していてもよい。また、Ni、Co及びMnをすべて含む三元系の正極活物質の場合、a+b+c≦1であるのが望ましい。中でもLixNiaCobMncO2が特に好ましい。これらのLi化合物又は固溶体の一部表面は改質されていてもよく、また一部表面を無機物が被覆していてもよい。この場合、改質された表面や被覆した無機物を含めて、正極活物質粒子として称する。
また、これらの正極活物質はその結晶構造中に異種元素がドープされていてもよい。ドープされる元素と量は限定されないが、元素としてはMg、Zn、Ti、V、Al、Cr、Zr、Sn、Ge、B、As及びSiが好ましく、その量は0.01〜5%が好ましい。
結着部はバインダーが乾燥することで形成された部位であり、正極活物質粒子どうしを、或いは正極活物質粒子と集電体とを結着している。ポリマーコート層はこの結着部の少なくとも一部にも形成されていることが望ましい。このようにすることで結着部が保護されて結着強度がより高まるため、高温高電圧という厳しいサイクル試験後にも正極活物質層のクラックや剥離を防止することができる。
正極活物質層には一般に導電助剤が含まれているが、ポリマーコート層は導電助剤の少なくとも一部にも形成されていることが望ましい。このようにすることで、高電位となった導電助剤から電解液を保護することができる。
ポリマーコート層は、アミノ基とリン酸基を含む。アミノ基とリン酸基は同じポリマー中に含まれていてもよいが、アミノ基をもつポリマーとリン酸基をもつポリマーの複数種のポリマーを含むことが好ましい。アミノ基をもつアミノ系ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアニリン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリドなどが例示される。またリン酸基をもつリン酸系ポリマーは、例えば化1式に示す一般式で表されるものを用いることができる。
Figure 2014186945
化1式において、R1,R2,R4は任意の官能基であり、好ましくはH,CH3,COOH,OHのいずれかである。R3は少なくともリン酸基を含み、リン酸基以外にアルキル基、アリール基、グリコール基などを含んでもよい。
リン酸系ポリマーは、数平均分子量が100〜2,000,000の範囲のものが好ましく、1,000〜500,000の範囲であることが更に好ましい。分子量がこの範囲より小さいと密着性が低下する恐れがあり、分子量がこの範囲より大きくなると成膜にムラが生じる場合がある。
ポリマーコート層中におけるアミノ系ポリマーとリン酸系ポリマーとの比率は、重量比でアミノ系ポリマー/リン酸系ポリマーが1/1000〜1000/1の範囲が好ましく、1/100〜100/1の範囲がさらに好ましい。リン酸系ポリマーの比率がこの範囲から外れると効果の発現が困難となる場合がある。
アミノ系ポリマーとリン酸系ポリマーとの混合物からポリマーコート層を形成することもできるが、クーロン力による正極活物質との接合が弱くなるという不具合がある。そこで、先ずカチオン性であるアミノ系ポリマーを負のゼータ電位を有する正極活物質上に静電相互作用により成膜し、次いでアニオン性であるリン酸系ポリマーからリン酸系ポリマーコート層を形成することが望ましい。この場合も、アミノ系ポリマーコート層とリン酸系ポリマーコート層の比率は、重量比で上記した範囲とするのが好ましい。
ポリマーコート層は、さらにアルカリ金属、アルカリ土類金属及び希土類元素から選ばれる少なくとも一種の選択金属を含むことが望ましい。アルカリ金属としてはLiが特に望ましく、アルカリ土類金属としてはMgが特に望ましく、希土類元素としてはLaが特に望ましい。ポリマーコート層における選択金属の含有量は、0.1〜90質量%の範囲が好ましく、1〜50質量%の範囲が特に望ましい。選択金属の含有量が0.1質量%未満では含有させたことによる効果が発現せず、90質量%を超えると均一なポリマーコート層の形成が困難となる場合がある。
選択金属を含むポリマーコート層を形成するには、CVD法、PVD法などを用いることも可能であるが、コストの面から好ましいとはいえず、選択金属を含ませるのも容易でない。そこで、アミノ系ポリマー又はリン酸系ポリマーと選択金属の化合物とが溶媒に溶解した混合溶液を正極活物質層に塗布し乾燥してポリマーコート層を形成するのが好ましい。選択金属の化合物としては、溶媒に溶解するものであれば特に制限されず、硝酸塩、酢酸塩などを用いることができる。
ポリマー溶液の溶媒としては、アミノ系ポリマー又はリン酸系ポリマーと、必要に応じて選択金属の化合物とを溶解できる有機溶剤又は水を用いることができる。有機溶剤には特に制限はなく、複数の溶剤の混合物でも構わない。例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、DMF、N-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンとエステル系溶媒(酢酸エチル、酢酸n-ブチル、ブチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテート等)あるいはグライム系溶媒(ジグライム、トリグライム、テトラグライム等)の混合溶媒などを用いることができる。ポリマーコート層から容易に除去できる沸点が低いものが望ましい。
ポリマー溶液の塗布にあたっては、スプレー、ローラー、刷毛などで塗布してもよいが、正極活物質の表面を均一に塗布するにはディッピング法にて塗布する事が望ましい。ディッピング法にて塗布すれば、正極活物質粒子どうしの間隙にポリマー溶液が含浸されるので、正極活物質粒子のほぼ表面全体にポリマーコート層を形成することができる。したがって、正極活物質と電解液との直接接触を確実に防止することができる。
ディッピング法で塗布する方法として二つの方法がある。先ず、少なくとも正極活物質とバインダーとを含むスラリーを集電体に結着させて正極を形成し、その正極をポリマー溶液に浸漬し、引き上げて乾燥させる。必要であればこれを繰り返して、所定の厚さのポリマーコート層を形成する。
もう一つの方法として、正極活物質の粉末を先ずポリマー溶液に混合し、それをフリーズドライ法などによって乾燥させる。必要であればこれを繰り返して、所定の厚さのポリマーコート層を形成する。その後、ポリマーコート層が形成された正極活物質を用いて正極を形成する。
ポリマーコート層の厚さは、0.1nm〜100nmの範囲であることが好ましく、0.1nm〜10nmの範囲であることがさらに好ましく0.1nm〜5nmの範囲であることが特に望ましい。ポリマーコート層の厚さが薄すぎると、正極活物質が電解液と直接接触する場合がある。またポリマーコート層の厚さがμmオーダー以上となると、二次電池とした場合に抵抗が大きくなってイオン伝導性が低下する。このように薄いポリマーコート層を形成するには、上記したディッピング溶液(ポリマー溶液)中のポリマーの濃度を低くしておくことで、薄くかつ均一なポリマーコート層を形成することができる。
ポリマーコート層は、正極活物質粒子の少なくとも一部表面を被覆すればよいが、電解液との直接接触を防ぐためには、正極活物質粒子のほぼ全面を被覆することが好ましい。
ポリマー溶液中のポリマーの濃度は、0.001質量%以上かつ2.0質量%未満とすることが好ましく、0.1質量%〜0.5質量%の範囲が望ましい。濃度が低すぎると正極活物質との接触確率が低くコートに長時間要するようになり、濃度が高すぎると正極上での電気化学反応を阻害する場合がある。
ポリマーコート層の内部に、カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物をさらに含むことも好ましい。カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物をさらに含むとは、カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物を内包することを指す。このようなリチウム化合物をさらに含むことで耐電圧性がさらに向上し、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が向上する。ここで酸化反応電位とは酸化反応が始まる電位、すなわち分解開始電圧を意味する。このような酸化反応電位はリチウムイオン二次電池に用いられる電解液の有機溶媒の種類によって異なる値を有し、本発明では、電解液の有機溶媒としてカーボネート系溶媒を用いて酸化反応電位を測定した時に表われる値を意味する。
カーボネート系電解液より高い酸化反応電位をもつリチウム化合物としては、リチウムビス(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド(LiBETI)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)、LiBF4、LiCF3SO3などが例示される。ポリマーコート層におけるリチウム化合物の含有量は、10〜80質量%の範囲が好ましく、40〜60質量%の範囲が特に望ましい。リチウム化合物の含有量が10質量%未満では含有させたことによる効果が発現せず、80質量%を超えるとリチウム化合物を内包させるコート層の形成が困難となる場合がある。
ポリマーコート層に上記リチウム化合物を含ませるには、例えば上記リチウム化合物が溶媒に溶解した溶液にポリマーコート層が形成された電極を浸漬し、引き上げて乾燥することで容易に行うことができる。
なお本発明にいうゼータ電位は、顕微鏡電気泳動法、回転回折格子法、レーザー・ドップラー電気泳動法、超音波振動電位(UVP)法、動電音響(ESA)法にて測定されるものである。特に好ましくはレーザー・ドップラー電気泳動法によって測定されたものである。(具体的な測定条件を以下に説明するが、この限りではない。先ず、DMF、アセトン、水を溶媒とし、固形分濃度0.1wt%の溶液(懸濁液)を調製した。測定は温度25℃で3回の測定を行い、その平均値を算出して求めた。またpHについては中性条件とした。)
ポリマーコート層中のポリマーが架橋されていることも好ましい。ポリマーが架橋されることによって、高密度のポリマーコート層を形成することができる。架橋剤としては特に限定されず、エポキシ、イソシアネート、アクリレート、メタクリレートなどの架橋剤が例示される。
こうして形成されたポリマーコート層は正極活物質との接合強度が高いため、高電圧駆動時に正極活物質と電解液との直接接触を抑制することができる。またポリマーコート層の総厚がnmオーダーであれば、リチウムイオン電導性の抵抗となることも抑制できる。したがって高電圧駆動によっても電解液の分解を抑制することができ、高容量であるとともに繰り返し充放電後も高い電池特性を維持できるリチウムイオン二次電池を提供することができる。
正極活物質層に含まれる結着部を構成するバインダーとしては、ポリフッ化ビニリデン(PolyVinylidene DiFluoride:PVdF)、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタクリル樹脂(PMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、変性ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が例示される。正極用バインダーとしての特性を損なわない範囲で、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリブロックイソシアナート、ポリオキサゾリン、ポリカルボジイミド等の硬化剤、エチレングリコール、グリセリン、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルオリゴマー、フタル酸エステル、ダイマー酸変性物、ポリブタジエン系化合物等の各種添加剤を単独で又は二種以上組み合わせて配合してもよい。
ポリマーコート層を構成するアミノ系ポリマーは、結着部に対する被覆性が良好であるものが望ましい。したがってバインダーには負のゼータ電位をもつものを用いることが好ましい。例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)のゼータ電位は負であるので、カチオン性であるアミノ系ポリマーの被覆性が向上する。
またバインダーとアミノ系ポリマーとの電位差は大きいほど好ましい。したがってバインダーにポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いた場合には、アミノ系ポリマーにポリエチレンイミン(PEI)を用いて、ゼータ電位が+20mV以上となるように溶媒を選ぶことが好ましい。
また正極活物質層には、導電助剤を含むことも好ましい。導電助剤は、電極の導電性を高めるために添加される。導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、気相法炭素繊維(Vapor Grown Carbon Fiber:VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて添加することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、活物質100質量部に対して、2〜100質量部程度とすることができる。導電助剤の量が2質量部未満では効率のよい導電パスを形成できず、100質量部を超えると電極の成形性が悪化するとともにエネルギー密度が低くなる。
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極を備えている。負極及び電解液は、公知のものを用いることができる。負極は、集電体と、集電体に結着された負極活物質層とからなる。負極活物質層は、負極活物質とバインダーとを少なくとも含み、導電助剤を含んでもよい。負極活物質としては、グラファイト、ハードカーボン、ケイ素、炭素繊維、スズ(Sn)、酸化ケイ素など公知のものを用いることができる。またSiOx(0.3≦x≦1.6)で表されるケイ素酸化物を用いることもできる。このケイ素酸化物粉末の各粒子は、不均化反応によって微細なSiと、Siを覆うSiO2とに分解したSiOxからなる。xが下限値未満であると、Si比率が高くなるため充放電時の体積変化が大きくなりすぎてサイクル特性が低下する。またxが上限値を超えると、Si比率が低下してエネルギー密度が低下するようになる。0.5≦x≦1.5の範囲が好ましく、0.7≦x≦1.2の範囲がさらに望ましい。
一般に、酸素を断った状態であれば800℃以上で、ほぼすべてのSiOが不均化して二相に分離すると言われている。具体的には、非結晶性のSiO粉末を含む原料酸化ケイ素粉末に対して、真空中または不活性ガス中などの不活性雰囲気中で800〜1200℃、1〜5時間の熱処理を行うことで、非結晶性のSiO2相および結晶性のSi相の二相を含むケイ素酸化物粉末が得られる。
またケイ素酸化物として、SiOxに対し炭素材料を1〜50質量%で複合化したものを用いることもできる。炭素材料を複合化することで、サイクル特性が向上する。炭素材料の複合量が1質量%未満では導電性向上の効果が得られず、50質量%を超えるとSiOxの割合が相対的に減少して負極容量が低下してしまう。炭素材料の複合量は、SiOxに対して5〜30質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲がさらに望ましい。SiOxに対して炭素材料を複合化するには、CVD法などを利用することができる。
ケイ素酸化物粉末は平均粒径が1μm〜10μmの範囲にあることが望ましい。平均粒径が10μmより大きいと非水系二次電池の充放電特性が低下し、平均粒径が1μmより小さいと凝集して粗大な粒子となるため同様に非水系二次電池の充放電特性が低下する場合がある。
負極における集電体、バインダー及び導電助剤は、正極活物質層で用いられるものと同様のものを用いることができる。
上記した正極及び負極を用いる本発明のリチウムイオン二次電池は、特に限定されない公知の電解液、セパレータを用いることができる。電解液は、有機溶媒に電解質であるリチウム金属塩を溶解させたものである。電解液は、特に限定されない。有機溶媒として、非プロトン性有機溶媒、たとえばプロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等から選ばれる一種以上を用いることができる。また、溶解させる電解質としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiI、LiClO4、LiCF3SO3等の有機溶媒に可溶なリチウム金属塩を用いることができる。
例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの有機溶媒にLiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3等のリチウム金属塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。中でもLiBF4を用いることが望ましい。ポリマーコート層をもつ正極を用いるとともにLiBF4を電解液中に含むことで、電解質が分解しにくくなる効果が相乗的に得られるため、高電圧駆動における繰り返し充放電後もさらに高い電池特性を維持することができる。
セパレータは、正極と負極とを分離し電解液を保持するものであり、ポリエチレン、ポリプロピレン等の薄い微多孔膜を用いることができる。また、これらの微多孔膜は無機物を主とする耐熱層が設けられていてもよく、用いられる無機物としては酸化アルミニウムや酸化チタンが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は、形状に特に限定はなく、円筒型、積層型、コイン型等、種々の形状を採用することができる。いずれの形状を採る場合であっても、正極および負極にセパレータを挟装させて電極体とし、正極集電体および負極集電体から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を、集電用リード等を用いて接続した後、この電極体を電解液とともに電池ケースに密閉して電池となる。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態を更に詳しく説明する。
<正極の作製>
正極活物質としてのLiNi0.5Co0.2Mn0.3O2が94質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)が3質量部と、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)が3質量部と、を含む混合スラリーをアルミニウム箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、乾燥させて約40μmの厚さの正極活物質層を形成した。
エタノールにポリエチレンイミン(PEI)(分子量1,800)を濃度1質量%となるように溶解させて、アミノ系ポリマー溶液を調製した。このアミノ系ポリマー溶液に上記正極を25℃で10分間浸漬後にエタノールで洗浄して、アミノ系ポリマーコート層をもつ正極を得た。
続いて化2式に示される数平均分子量が5,000のリン酸系ポリマーを、エタノールに濃度0.01質量%となるように溶解したリン酸系ポリマー溶液を調製した。そしてアミノ系ポリマーコート層をもつ正極を、このリン酸系ポリマー溶液に25℃で10分間浸漬後、エタノールで洗浄してリン酸系ポリマーコート層を形成した。
Figure 2014186945
その後、120℃で12時間真空乾燥してポリマーコート層をもつ正極を得た。
透過型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製「H9000NAR」)を用い、加速電圧200kV、倍率205万倍にて測定したところ、正極活物質粒子を覆う厚さ約0.8nmのポリマーコート層が観察された。なお前述の粒径2nm±0.3nmは溶媒で膨潤した高分子の粒径であり、約0.8nmのコート層は乾燥後の厚さである。
<負極の作製>
先ずSiO粉末(シグマ・アルドリッチ・ジャパン社製、平均粒径5μm)を900℃で2時間熱処理し、平均粒径5μmのSiOx粉末を調製した。この熱処理によって、SiとOとの比が概ね1:1の均質な固体の一酸化ケイ素SiOであれば、固体の内部反応によりSi相とSiO2相の二相に分離する。分離して得られるSi相は非常に微細である。
このSiOx粉末32質量部と、天然黒鉛50質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)8質量部と、結着剤としてのポリアミドイミド10質量部を混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ18μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に約15μmの厚さで負極活物質層をもつ負極を作製した。
<リチウムイオン二次電池の作製>
非水電解液には、フルオロエチレンカーボネート(FEC)とエチレンカーボネート(EC)とメチルエチルカーボネート(MEC)とジメチルカーボネート(DMC)を4:26:30:40(体積%)で混合した有機溶媒に、LiPF6を1モルとLiPF2(C2O4)2を0.01モルの濃度で溶解したものを用いた。
そして上記の正極および負極の間に、セパレータとして厚さ20μmの微孔性ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン積層フィルムを挟装して電極体とした。この電極体をポリプロピレン製ラミネートフィルムで包み込み、周囲を熱融着させてフィルム外装電池を作製した。最後の一辺を熱融着封止する前に上記の非水電解液を注入し、電極体に含浸させて、本実施例のリチウムイオン二次電池を作製した。
リン酸系ポリマーをエタノールに濃度0.05質量%となるように溶解したリン酸系ポリマー溶液を用いてリン酸系ポリマーコート層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーコート層をもつ正極を形成し、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
リン酸系ポリマーをエタノールに濃度0.2質量%となるように溶解したリン酸系ポリマー溶液を用いてリン酸系ポリマーコート層を形成したこと以外は実施例1と同様にして正極を形成し、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
エタノールに硝酸ランタンを2.5mmol/Lとなるように溶解させ、さらにポリエチレンイミン(PEI)を濃度1質量%となるように溶解させたアミノ系ポリマー溶液を用いて、ランタン(La)を含むアミノ系ポリマーコート層を形成した。そしてリン酸系ポリマーをエタノールに濃度0.2質量%となるように溶解したリン酸系ポリマー溶液を用いてリン酸系ポリマーコート層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーコート層をもつ正極を形成し、実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
なお上記アミノ系ポリマー溶液を調製する際に、先ずエタノールに硝酸ランタンを溶解させ、次いでポリエチレンイミン(PEI)を溶解したところ、溶液が一瞬白濁した後に透明となった。この混合溶液を粒度分布測定器(「NANO PARTIVLE ANALYZER SZ-100」、HORIBA社製)を用いて分析したところ、2nm±0.3nmの極めて狭い範囲に粒径をもつ微粒子が存在することがわかった。この微粒子は、ランタンイオンがポリエチレンイミンに配位することで形成されたものと推察される。
[比較例1]
ポリマーコート層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様の正極を用い、他は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
[比較例2]
実施例1と同様にしてアミノ系ポリマーコート層を形成した後、リン酸系ポリマーに代えて数平均分子量が25,000のポリアクリル酸を用いてポリアクリル酸コート層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーコート層をもつ正極を作製し、この正極を用いたこと以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
[比較例3]
実施例4と同様にしてランタン(La)を含むアミノ系ポリマーコート層を形成した後、比較例2と同様にポリアクリル酸コート層を形成したこと以外は実施例1と同様にしてポリマーコート層をもつ正極を作製し、この正極を用いたこと以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
<試験例1>
実施例1〜4、比較例1〜3のリチウムイオン二次電池を用い、それぞれ温度60℃、1CのCCCV充電の条件下において4.32Vまで充電し、10分間休止した後、1CのCC放電で3.26Vにて放電し、10分間休止するサイクルを200サイクル繰り返すサイクル試験を行った。
サイクル試験前後の電池について、それぞれ温度25℃、1CのCCCV充電の条件下において4.5Vまで充電し、10分間休止した後、0.33CのCC放電で2.5Vにて放電し、10分間休止したときの負荷特性をそれぞれ測定した。
100サイクル目及び200サイクル目における容量維持率をそれぞれ測定し、結果を表1に示す。容量維持率は、Nサイクル目の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((Nサイクル目の放電容量)/(初回の放電容量)×100)で求められる値である。
また初回、100サイクル目及び200サイクル目において、25℃におけるSOC20%放電抵抗をそれぞれ測定した。SOC20%放電抵抗は、SOC20%に充電した後、3Cで10秒間放電させ、以下の計算式によって10秒抵抗をそれぞれ求め、抵抗上昇率を算出した。結果を表1に示す。
10秒抵抗=10秒間での電圧降下量/3Cの電流値
抵抗上昇率は、Nサイクル目の10秒抵抗から初回の10秒抵抗を差し引いた値を初回の10秒抵抗で除した値の百分率((Nサイクル目の放電抵抗−初回の10秒抵抗)/(初回の10秒抵抗)×100)で求められる値である。
Figure 2014186945
実施例1に係るリチウムイオン二次電池は、比較例1,2に係るリチウムイオン二次電池に比べて、サイクル試験後の容量維持率が高く、抵抗増加率もきわめて低い。すなわち実施例1に係るリチウムイオン二次電池は、高電圧駆動という過酷な試験においても優れたサイクル特性を示す。これは、ポリアクリル酸に代えてリン酸系ポリマーを用いたことによる効果である。
また実施例1〜3の比較から、リン酸系ポリマーコート層の膜厚が厚くなるほど容量維持率が高くなるものの、抵抗増加率も高くなる傾向が認められる。
さらに実施例3,4及び比較例2,3の比較から、アミノ系ポリマーコート層にランタン(La)を添加することで容量維持率が高くなり、かつ抵抗増加率が低下することが明らかであり、サイクル特性の向上にはランタンの添加がきわめて有効であることがわかる。そして実施例4に係るリチウムイオン二次電池は、200サイクル後においても抵抗増加率がきわめて低く、サイクル特性にきわめて優れていることが明らかである。
<試験例2>
実施例1〜4、比較例1〜3のリチウムイオン二次電池について、温度25℃において1CのCCCV2.5h(CCCV込み)の条件下において電池電圧4.32Vまで充電し、60℃の炉内にて6日間及び12日間保持した。
6日間保存後及び12日間保存後の電池について、容量維持率をそれぞれ測定し、結果を表2に示す。容量維持率は、N日間保存後の放電容量を初回の放電容量で除した値の百分率((N日間保存後の放電容量)/(初回の放電容量)×100)で求められる値である。
また保存前の電池と6日間保存後及び12日間保存後の電池について、25℃におけるSOC20%放電抵抗をそれぞれ測定した。SOC20%放電抵抗は、SOC20%に充電した後、3Cで10秒間放電させ、以下の計算式によって10秒抵抗をそれぞれ求め、抵抗増加率を算出した。結果を表2に示す。
10秒抵抗=10秒間での電圧降下量/3Cの電流値
抵抗増加率は、N日間保存後の10秒抵抗から初回の10秒抵抗を差し引いた値を初回の10秒抵抗で除した値の百分率((N日間保存後の放電抵抗−初回の10秒抵抗)/(初回の10秒抵抗)×100)で求められる値である。
Figure 2014186945
実施例1に係るリチウムイオン二次電池は、比較例1,2に係るリチウムイオン二次電池に比べて、保存試験後の容量維持率が高く、抵抗増加率もきわめて低い。すなわち実施例1に係るリチウムイオン二次電池は、高温高電圧駆動においても保存特性に優れている。これは、ポリアクリル酸に代えてリン酸系ポリマーを用いたことによる効果である。
また実施例1〜3の比較から、リン酸系ポリマーコート層の膜厚は容量維持率にはほとんど影響がないが、抵抗増加率は実施例2に係るリチウムイオン二次電池が特に低い値を示し、リン酸系ポリマーコート層の膜厚には最適範囲が存在することが示唆される。
さらに比較例2,3においては、アミノ系ポリマーコート層にランタン(La)を添加することで容量維持率が高くなり、かつ抵抗増加率が低下している。しかし実施例3,4の比較から、リン酸系ポリマーコート層にランタン(La)を添加しても、容量維持率及び抵抗増加率への影響はほとんど認められない。
グラファイト97質量部と、導電助剤としてのアセチレンブラック(AB)粉末1質量部と、スチレンブタジエンゴム(SBR)とカルボキシメチルセルロース(CMC)の混合物(質量比1:1)よりなるバインダ2質量部を混合し、スラリーを調製した。このスラリーを、厚さ18μmの電解銅箔(集電体)の表面にドクターブレードを用いて塗布し、銅箔上に約15μmの厚さで負極活物質層を形成して負極前駆体を得た。
この負極前駆体を用い、実施例3と同様にしてポリマーコート層を形成して負極を形成し、この負極を用いたこと以外は実施例1と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
[比較例4]
実施例1と同様にしてアミノ系ポリマーコート層を形成した後、リン酸系ポリマーをコートしなかったこと以外は実施例1と同様にして正極を作製した。この正極を用いたこと以外は実施例5と同様にしてリチウムイオン二次電池を作製した。
<試験例3>
実施例5と比較例4のリチウムイオン二次電池について、温度25℃において0.33CのCCCV2.5h(CCCV込み)の条件下において電池電圧4.5Vまで充電し、60℃の炉内にて6日間及び12日間保持した。
6日間保存後及び12日間保存後の電池について、容量維持率をそれぞれ測定し、結果を表3に示す。
Figure 2014186945
表3より、グラファイトを活物質とした負極の場合においても、リン酸系ポリマーをコートすることによって容量維持率が向上していることが明らかである。
なお、上記試験後の各負極をEDS分析し、結果を表3に併せて示す。実施例5と比較例4とで単位面積当たりのフッ素濃度に差異が認められ、フッ素濃度は実施例5の方が低かった。すなわち正極にリン酸系ポリマーをコートしたことで、負極上におけるフッ素系堆積物の生成が抑制され、容量維持率が向上したと考えられる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用、パソコン、携帯通信機器、家電製品、オフィス機器、産業機器などに利用されるリチウムイオン二次電池用正極として有用であり、そのリチウムイオン二次電池は特に、大容量、大出力が必要な電気自動車やハイブリッド自動車のモータ駆動用に最適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 正極活物質粒子の少なくとも一部表面がポリマーコート層によって被覆されており、該ポリマーコート層にアミノ基とリン酸基を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
  2. 前記ポリマーコート層はアミノ基をもつアミノ系ポリマーと、リン酸基を側鎖にもつリン酸系ポリマーの複合体である請求項1記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  3. 前記活物質粒子は、LixNiaCobMncO2、LixCobMncO2、LixNiaMncO2、LixNiaCobO2及びLi2MnO3(但し0.5≦x≦1.5、0.1≦a<1、0.1≦b<1、0.1≦c<1)から選ばれるLi化合物又は固溶体を含む請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  4. 前記ポリマーコート層の厚さは10nm以下である請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  5. 前記正極活物質粒子はLixNiaCobMncO2である請求項1〜4のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  6. 前記アミノ基をもつアミノ系ポリマーはポリエチレンイミンである請求項1〜5のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池用正極の製造方法であって、LixNiaCobMncO2、LixCobMncO2、LixNiaMncO2、LixNiaCobO2及びLi2MnO3(但し0.5≦x≦1.5、0.1≦a<1、0.1≦b<1、0.1≦c<1)から選ばれるLi化合物又は固溶体を含む正極活物質粒子と結着剤を含むスラリーを集電体表面に塗布し乾燥して正極活物質層を形成する工程と、
    中性条件でのゼータ電位が正のカチオン性ポリマーが溶媒に溶解したカチオン性ポリマー溶液を該正極活物質層に塗布し乾燥してカチオン性ポリマーコート層を形成し、次いで中性条件でのゼータ電位が負であり側鎖にリン酸基をもつリン酸系ポリマーが溶媒に溶解したリン酸系ポリマー溶液を塗布し乾燥してリン酸系ポリマーコート層を形成することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極の製造方法。
  8. 前記カチオン性ポリマー溶液を塗布する工程はディッピング法にて行う請求項7に記載の二次電池用正極の製造方法。
  9. 前記リン酸系ポリマー溶液を塗布する工程はディッピング法にて行う請求項7又は請求項8に記載の二次電池用正極の製造方法。
  10. 請求項1〜6のいずれかに記載の前記リチウムイオン二次電池用正極を含むことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
  11. 充電時の電池電圧が4.3V以上である請求項10に記載のリチウムイオン二次電池。
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