〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプ1を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。その他の照明装置として、例えば、サーチライト、プロジェクター、家庭用照明器具を挙げることができる。
ヘッドランプ1は、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
(ヘッドランプ1の構成)
図1は、ヘッドランプ1の構成を示す断面図である。同図に示すように、ヘッドランプ1は、半導体レーザアレイ(励起光源)2、非球面レンズ4、光ファイバー(導光部)5、フェルール6、発光部7、反射鏡8、透明板9、ハウジング10、エクステンション11およびレンズ(透明部材)12を備えている。半導体レーザアレイ2、光ファイバー5、フェルール6および発光部7によって発光装置の基本構造が形成されている。
半導体レーザアレイ2は、励起光を出射する励起光源として機能し、複数の半導体レーザ3を基板上に備えるものである。半導体レーザ3のそれぞれからレーザ光が発振される。なお、励起光源として複数の半導体レーザ3を用いる必要は必ずしもなく、半導体レーザ3を1つのみ用いてもよい。しかし、高出力のレーザ光を得るためには、複数の半導体レーザ3を用いることが好ましい。
半導体レーザ3は、1チップに1つの発光点を有するものであり、例えば、405nm(青紫色)のレーザ光を発振し、出力1.0W、動作電圧5V、電流0.6Aのものであり、直径5.6mmのパッケージに封入されているものである。半導体レーザ3が発振するレーザ光は、405nmに限定されず、400nm以上420nm以下の波長範囲にピーク波長を有するレーザ光であればよい。
非球面レンズ4は、半導体レーザ3から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ4として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ4の形状および材質は特に限定されない。
光ファイバー5は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を発光部7へと導く導光部材であり、複数の光ファイバーの束である。この光ファイバー5は、上記レーザ光を受け取る複数の入射端部5bと、入射端部5bから入射したレーザ光を出射する複数の出射端部5aとを有している。複数の出射端部5aは、発光部7のレーザ光照射面(受光面)7a(図2参照)における互いに異なる領域に対してレーザ光を出射する。換言すれば、複数の出射端部5aは、発光部7の互いに異なる部分に対してレーザ光を出射する。出射端部5aは、レーザ光照射面7aに接触していてもよいし、僅かに間隔を置いて配置されてもよい。
光ファイバー5は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。例えば、光ファイバー5は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー5の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー5の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
なお、導光部材として光ファイバー以外の部材、または光ファイバーと他の部材とを組み合わせたものを用いてもよい。この導光部材は、半導体レーザ3が発振したレーザ光を受け取る少なくとも1つの入射端部と当該入射端部から入射したレーザ光を出射する複数の出射端部とを有するものであればよい。例えば、少なくとも1つの入射端部を有する入射部、および複数の出射端部を有する出射部を光ファイバーとは別の部材として形成し、これら入射部および出射部を光ファイバーの両端部に接続してもよい。
図2は、出射端部5aと発光部7との位置関係を示す図である。同図に示すように、フェルール6は、光ファイバー5の複数の出射端部5aを発光部7のレーザ光照射面7aに対して所定のパターンで保持する。このフェルール6は、出射端部5aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部5aを挟み込むものでもよい。フェルール6の材質は、特に限定されず、例えば合成樹脂である。なお、図2では、便宜上、出射端部5aを3つ示しているが、出射端部5aの数は3つに限定されない。
発光部7は、出射端部5aから出射されたレーザ光を受けて発光するものであり、レーザ光を受けて発光する蛍光体を含んでいる。具体的には、発光部7は、蛍光体保持物質としてのシリコーン樹脂の内部に蛍光体が分散されているものである。シリコーン樹脂と蛍光体との割合は、10:1程度である。また、発光部7は、蛍光体を押し固めたものであってもよい。蛍光体保持物質は、シリコーン樹脂に限定されず、無機ガラスまたは有機無機ハイブリッドガラスであってもよい。
上記蛍光体は、酸窒化物系のものであり、青色、緑色および赤色の蛍光体がシリコーン樹脂に分散されている。半導体レーザ3は、405nm(青紫色)のレーザ光を発振するため、発光部7に当該レーザ光が照射されると白色光が発生する。それゆえ、発光部7は、波長変換材料であるといえる。
なお、半導体レーザ3は、450nm(青色)のレーザ光(または、440nm以上490nm以下の波長範囲にピーク波長を有する、いわゆる「青色」近傍のレーザ光)を発振するものでもよく、この場合には、上記蛍光体は、黄色の蛍光体、または緑色の蛍光体と赤色の蛍光体との混合物である。黄色の蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。緑色の蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。赤色の蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体である。
上記蛍光体は、サイアロン蛍光体と通称されるものが好ましい。サイアロンとは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。サイアロン蛍光体は、窒化ケイ素(Si3N4)にアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。
蛍光体の別の好適な例としては、III−V族化合物半導体のナノメータサイズの粒子を用いた半導体ナノ粒子蛍光体を用いることもできる。同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径を変更させることにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができることが半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つである。(例えばInPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する。ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した。)
また、この蛍光体は半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、上記半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。発光寿命が短いため、励起光の吸収と蛍光の発光とを素早く繰り返すことができる。その結果、強い励起光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱が低減される。よって、光変換部材が熱により劣化(変色や変形)するのをより抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、発光装置の寿命が短くなるのをより抑制することができる。
発光部7の形状および大きさは、例えば、3mm×1mm×1mmの直方体である。この場合、半導体レーザ3からのレーザ光を受けるレーザ光照射面7aの面積は、3mm2である。日本国内で法的に規定されている車両用ヘッドランプの配光パターン(配光分布)は、鉛直方向に狭く、水平方向に広いため、発光部7の形状を、水平方向に対して横長(断面略長方形形状)にすることにより、上記配光パターンを実現しやすくなる。発光部7は、直方体でなくてもよく、レーザ光照射面7aが楕円である筒状であってもよい。また、レーザ光照射面7aは、平面である必要は必ずしもなく、曲面であってもよい。ただし、レーザ光の反射を制御するためには、レーザ光照射面7aは、レーザ光の光軸に対して垂直な平面であることが好ましい。
また、発光部7は、図1に示すように、透明板9の内側(出射端部5aが位置する側)の面において、出射端部5aと対向する位置に固定されている。発光部7の位置の固定方法は、この方法に限定されず、反射鏡8から延出する棒状または筒状の高熱伝導部材によって発光部7の位置を固定してもよい。なお、反射鏡(光投射部材)8およびレンズ(光投射部材)12の光学的焦点位置に発光部7を配置すれば、発光部7から出射される光をより効率よく外部に投射することができる。
反射鏡8は、発光部7が出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡8は、発光部7からの光を反射することにより、ヘッドランプ1の前方へ進む光線束を形成する。
本実施の形態では、反射鏡8は樹脂材料で形成されている。反射鏡8を樹脂材料で形成することが可能な理由は次のとおりである。つまり、半導体レーザ3が出射するレーザ光の波長域は可視光域であり、レーザ光を受けて発光部7が発光する光の波長域は可視光域から近赤外域であるため、反射鏡8が反射する光も可視光から近赤外域となる。従って、反射鏡8が反射する光には、被照射物の温度を上昇させる波長域である遠赤外線(熱線)、あるいは、樹脂を退色・変質させる波長域である紫外線は含まれない。そのような理由から、反射鏡8を樹脂材料で形成することができる。なお、後述のレンズ12も、同様の理由により樹脂材料で形成可能である。
このように、反射鏡8を形成する樹脂材料は、高温や紫外線に対する耐性を高くする必要がないため、種々のタイプの樹脂材料を使用することができる。従って、反射鏡8として使用される樹脂材料は、熱可塑性樹脂であっても、あるいは熱硬化性樹脂であってもよく、また透光性を有していなくてもよい。
ここで、熱可塑性樹脂は、耐熱性の違いにより、汎用樹脂、汎用エンジニアリング樹脂、及びスーパーエンジニアリング樹脂に大別される。汎用樹脂は、熱変形温度100℃未満、引っ張り強さ500kgf/cm2未満、耐衝撃5kgf.cm/cm未満という特性を有する。汎用エンジニアリング樹脂は、熱変形温度100℃以上、引っ張り強さ500kgf/cm2以上、耐衝撃5kgf.cm/cm以上という特性を有する。スーパーエンジニアリング樹脂は、汎用エンジニアリング樹脂よりさらに高い熱変形温度150℃以上にも長期間使用できるという特性を有する。
ヘッドランプ1では、耐熱性を考慮する必要がないため、反射鏡8を形成する樹脂材料は、汎用樹脂、汎用エンジニアリング樹脂、あるいはスーパーエンジニアリング樹脂の何れであってもよい。なかでも、汎用樹脂は、樹脂価格が比較的安く加工もしやいため、四大汎用樹脂と呼ばれるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)などは特に好適に採用できる。
一方、熱硬化性樹脂は、線状の3次元構造の高分子であり、加熱すると軟化し、化学反応により固化する性質を持つ。そして、一度加熱して固化した熱硬化性樹脂は、再度加熱しても溶解することがない。熱硬化性樹脂の例として、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、ポリウレタン(PU)、シリコーン樹脂などが挙げられる。
なお、用途に応じて、反射鏡8の樹脂材料を選択することが好ましい。例えば、ヘッドランプ1が車載用ヘッドライトとして使用される場合、エンジンルーム内の温度上昇を考慮して樹脂材料を選択する必要がある。
また、反射鏡8の光反射面にはアルミ蒸着等による鏡面加工が施されており、発光部7が発した光がレンズ12に向かって反射する。例えば、反射鏡8をABS樹脂で射出成形し、光の反射面にアルミメッキを蒸着する例が挙げられる。
続いて、半導体レーザ3と反射鏡8について説明する。図1に示すように、本実施の形態では、ヘッドランプ1を作動させた時に最も発熱する部分である半導体レーザ3は、反射鏡8から離間して載置されている。つまり、図示のように、半導体レーザ3は、反射鏡8とレンズ12とで囲まれた空間(反射空間)の外部に設けられており、半導体レーザ3で発生した熱が反射鏡8に及ぶことがないよう、互いの位置関係が調整されている。これは、半導体レーザ3が発射したレーザ光を発光部7へと導く光ファイバー5を適宜設計することで、つまり、導光部の長さ等を適宜調節することで、半導体レーザ3を反射鏡8から離間した位置(つまり、冷却しやすい位置)に設置することが可能となる。このようにして、半導体レーザ3から発生した熱が樹脂製の反射鏡8に及ばない位置に、半導体レーザ3と反射鏡8との位置関係を適宜調節することができる。
透明板9は、反射鏡8の開口部を覆う透明な樹脂板であり、発光部7を保持している。この透明板9を、半導体レーザ3からのレーザ光を遮断するとともに、発光部7においてレーザ光を変換することにより生成された白色光(インコヒーレントな光)を透過する材質で形成することが好ましい。発光部7によってコヒーレントなレーザ光は、そのほとんどがインコヒーレントな白色光に変換される。しかし、何らかの原因でレーザ光の一部が変換されない場合も考えられる。このような場合でも、透明板9によってレーザ光を遮断することにより、レーザ光が外部に漏れることを防止できる。なお、このような効果を期待せず、かつ透明板9以外の部材によって発光部7を保持する場合には、透明板9を省略することが可能である。
ハウジング10は、ヘッドランプ1の本体を形成しており、反射鏡8等を収納している。光ファイバー5は、このハウジング10を貫いており、半導体レーザアレイ2は、ハウジング10の外部に設置される。半導体レーザアレイ2は、レーザ光の発振時に発熱するが、ハウジング10の外部に設置することにより半導体レーザアレイ2を効率良く冷却することが可能となる。また、半導体レーザ3は、故障する可能性があるため、交換しやすい位置に設置することが好ましい。これらの点を考慮しなければ、半導体レーザアレイ2をハウジング10の内部に収納してもよい。
エクステンション11は、反射鏡8の前方の側部に設けられており、ヘッドランプ1の内部構造を隠して見栄えを良くするとともに、反射鏡8と車体との一体感を高めている。このエクステンション11も反射鏡8と同様に金属薄膜がその表面に形成された樹脂材料で形成してもよい。
レンズ12は、ハウジング10の開口部に設けられており、ヘッドランプ1を密封している。発光部7において発生し、反射鏡8によって反射された光は、レンズ12を通ってヘッドランプ1の前方へ出射される。
レンズ12は、反射鏡8と同様に樹脂材料で形成され、かつ、透光性を有する樹脂材料、つまり非結晶樹脂によって形成されている。非結晶樹脂とは、分子主鎖に無秩序に側鎖が付いているものや、枝分かれや架橋があり、無定形状態にある高分子樹脂のことを言う。 無定形状態には硬いガラス状態と柔らかいゴム状態などがあり、通常透明性に優れた特性を有するものが多い。
非結晶樹脂の例として、熱可塑性樹脂では、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、塩化ビニル(PVC)などが挙げられる。特に、アクリル樹脂(メタクリル樹脂PMMAのこと)、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂(硬度の高いレジンタイプ)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、有機無機ハイブリッドガラスなどを好適に用いることができる。
図3は、発光部7の位置決め方法の変更例を示す断面図である。同図に示すように、反射鏡8の中心部を貫いて延びる高熱伝導部材からなる筒状部15の先端に発光部7を固定してもよい。この場合には、筒状部15の内部に光ファイバー5の出射端部5aを通すことができるが、必ずしもそのようにする必要はない。例えば、筒状部15は、図3に記載された方向と垂直に、つまり、図面に対して垂直な方向に配設され、光ファイバー5が反射鏡8の中心部を貫くように設けられてもよい。
なお、筒状部15は、熱伝導率の高い材料で形成されることが好ましい。これにより、筒状部15の一部が反射空間(反射鏡8とレンズ12とで囲まれた空間)の外部に突出していれば、発光部7で発生する熱が効率的に反射空間の外部に放熱される。高熱伝導部材を形成する材料としては、図7に示される熱伝導率の高い材料、例えば、ジルコニア、酸化チタン、Ag、Cu、AlN(窒化アルミ)、Al等が挙げられる。また、図7に記載されていない材料であってもよく、例えばグラファイトなども高熱伝導部材を形成する材料として好適に採用することができる。
(出射端部5aの配置様式)
図4(a)および(b)は、光ファイバー5の複数の出射端部5aを、発光部7のレーザ光照射面7aに対して配置するパターンの一例を示す図である。同図では、出射端部5aがレーザ光照射面7aに接触している(または対向している)位置を円で示している。同図(a)に示すように、発光部7のレーザ光照射面7aは、長軸を有しており、複数の出射端部5aの少なくとも一部は、上記長軸に沿って配列させてもよい。具体的には、出射端部5aを5本ずつ2段に密に配置してもよい。この構成により、水平方向に長い発光部7を効率良く励起することができる。
また、同図(b)に示すように、レーザ光照射面7aの中央部のみ出射端部5aを3段に配置してもよい。すなわち、発光部7のレーザ光照射面7aに対して配置された複数の出射端部5aの密度は、レーザ光照射面7aにおいて偏っている。この構成により、発光部7の中央部(出射端部5aの密度が高い部分)が他の部分よりも強く光るため、ヘッドランプ1によって照射される領域の中央部の照度を高めることができる。
また、発光部7のレーザ光照射面7aの全面に対して複数の出射端部5aがマトリクス状に配置されてもよい。この構成によれば、発光部7を効率良く、ムラなく励起することができる。
(レーザ光照射領域の位置関係)
1つの出射端部5aから出射されたレーザ光が、発光部7のレーザ光照射面7aに照射された領域をレーザ光照射領域と称する。光ファイバー5は、複数の出射端部5aを有しているため、レーザ光照射領域も複数形成される。図5(a)は光ファイバー5の出射端部5aから出射されるレーザ光の光強度分布を示す図であり、図5(b)は、複数のレーザ光照射領域の位置関係を示す図である。図5(a)では、光ファイバー5を構成する光ファイバー51の出射端部5aから出射されるレーザ光の光強度分布を曲線21で示し、光ファイバー52の出射端部5aから出射されるレーザ光の光強度分布を曲線22で示している。図5(a)のグラフの横軸は光ファイバー5の位置を示し、縦軸は、レーザ光照射面7aに照射されたレーザ光の光強度を示している。
図5(a)に示すように、1つの出射端部5aから出射されたレーザ光は、所定の角度で広がりつつレーザ光照射面7aに到達する。そのため、光ファイバー51・52の出射端部5aが、レーザ光照射面7aに対して平行な平面において並んで配置されていたとしても、図5(b)に示すように、これら出射端部5aからのレーザ光によって形成されるレーザ光照射領域23・24が、互いに重なることがある。
このような場合でも、出射端部5aから出射されるレーザ光の光強度分布における最も光強度が大きいところ(図5(a)に示す中心軸21a・22aの近傍)が、発光部7のレーザ光照射面7aの互いに異なる部分に対して出射されれば、レーザ光照射面7aに対してレーザ光を2次元平面的に分散して照射することができる。
すなわち、複数の出射端部5aのうちの1つから出射されたレーザ光が発光部7に照射されることによって形成される投影像において最も光強度が大きい部分である最大光強度部分(レーザ光照射領域の中央部分)の位置が、他の出射端部5aに由来する投影像の最大光強度部分の位置と異なっていればよい。それゆえ、レーザ光照射領域を互いに完全に分離する必要は必ずしもない。
(半導体レーザ3の構造)
次に半導体レーザ3の基本構造について説明する。図6(a)は、半導体レーザ3の回路図であり、図6(b)は、半導体レーザ3の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ3は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
基板18は、半導体基板であり、一般的には、化合半導体であるGaAsやGaNが用いられているが、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2およびCeO2等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれの半導体で構成されていてもよい。特に基板18は、窒化物半導体が好ましい。
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
また、活性層111の材料としては、アンドープのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよい。
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
なお、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、ある程度増幅されると、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115のうちのどちらか一方(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極17及びカソード電極19に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
(発光部7の発光原理)
次に、半導体レーザ3から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
まず、半導体レーザ3から発振されたレーザ光が発光部7に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
上述の半導体レーザ3を10個設け、各半導体レーザ3から405nmのレーザ光を受けた場合、発光部7から1500ルーメンの光束が放射される。この場合の輝度は80カンデラ/mm2である。
(反射鏡等が樹脂製であることによる効果)
従来の照明装置では、ランプから照射される紫外線、及びランプが発生する熱が樹脂の変形・変性を誘発することから、照明装置の構成部材である反射鏡、レンズには金属材料が使用されていた。そのため、照明装置の高重量化・高価格化が進み、そのことが装置の利用性を低下させる要因となっていた。
その問題を考慮して、本願発明者らは、ヘッドランプ1の光源として励起光源(半導体レーザ3)を使用すること、及び、反射鏡8およびレンズ12に樹脂材料を使用することを見出した。半導体レーザ3が出射するレーザ光の波長域が可視光域であり、レーザ光を受けて発光部7が発光する光の波長域は可視光域から近赤外域であるため、反射鏡8が反射する光、及びレンズ12を透過する光の波長域も可視光から近赤外域となる。従って、被照射物の温度を上昇させる波長域である遠赤外線(熱線)、あるいは、樹脂を退色・変質させる波長域である紫外線を含まれない光が、反射鏡8で反射され、かつレンズ12を透過することになる。従って、反射鏡8およびレンズ12を樹脂材料で形成したとしても、時間の経過に伴う樹脂材料の成分劣化等の問題を確実に回避することができる。
そして、樹脂材料を使用することで、次のようなメリットを享受することができる。つまり、樹脂材料を使用することにより、樹脂材料の軽量・安価という特徴をそのままヘッドランプ1の軽量化・低価格化につなげることができる。加えて、樹脂材料の特性である加工性の高さを活かして、ヘッドランプ1のデザイン性を高めることができる。そのような数々の利点が相俟って、ユーザにとってヘッドランプ1の利用性を高めることができる。
さらに、ヘッドランプ1では、半導体レーザ3は、反射鏡8とレンズ12とで囲まれた反射空間の外部に設けられている。これにより、次のような効果を奏することができる。
具体的には、反射鏡8とレンズ12とで囲まれた反射空間の外部に半導体レーザ3を設けることにより、反射空間の内部に半導体レーザ3を設ける場合と比べて、反射空間に求められる容積を小さくすることができる。つまり、半導体レーザ3を反射空間の外部に設けることにより、反射鏡8及びレンズ12の小型化が進み、それに伴い、反射鏡8及びレンズ12のさらなる軽量化を達成できる。その結果、ヘッドランプ1の小型化・軽量化をさらに実現することができる。加えて、樹脂材料の使用量が減るため、ヘッドランプ1のさらなる低価格化というメリットをも享受できる。
なお、半導体レーザ3から発生する熱が樹脂製の反射鏡8に及ぼす影響を懸念する声もある。これについては、半導体レーザ3が発射したレーザ光を発光部7へと導く光ファイバー5を適宜設計することで、つまり、動光部の長さ等を適宜調節することで、半導体レーザ3を反射鏡8から離間した位置(つまり、冷却しやすい位置)に設置すればよい。これにより、半導体レーザ3から発生した熱が樹脂製の反射鏡8に影響を及ぼす事態を回避することができる。また、光ファイバー5の長さ等を適宜調節可能にしておけば、半導体レーザ3を交換しやすい位置に設置することもできるため、ヘッドランプ1の設計自由度をさらに高めることができる。
また、ヘッドランプ1には次のような効果が認められる。具体的には、ヘッドランプ1では、高熱伝導部材からなる筒状部15の先端に発光部7を固定することができる。これにより、発光部7で発生する熱を筒状部15を介して反射空間の外部に効率的に放熱することができ、自らが発生する熱により発光部7が不具合を起こすといった問題を未然に防止しうる。
さらに、反射鏡8、及びレンズ12の材料として樹脂材料を使用できるため、射出成形により反射鏡8、及びレンズ12を成形することができる。従って、微細に形成された金型を利用することができるため、より小型化・軽量化されたヘッドランプ1を実現することが可能となる。
なお、ヘッドランプ1を好適に車両用ヘッドライトに適用することもできる。車両用のヘッドライトは、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準、及び、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準等を満足する必要がある。この点、ヘッドランプ1は、半導体レーザ3が高輝度・高光束を特徴とするものであり、また、上述したように、ヘッドランプ1は、利用性に優れ、小型かつ軽量化を実現しているため、特に車両用ヘッドライトに好適に適用することができる。そして、要求される配光特性に合わせて、単純曲面ではないレンズ12を適宜製造することも可能である。
さらに、次のような理由により、ヘッドランプ1を好適に車両用ヘッドライトに適用することもできる。具体的には、ヘッドランプ1は、利用性に優れ、かつ小型化・軽量化を実現している。従って、ヘッドランプ1を車両用ヘッドライトに適用した場合、その利用性の高さ、及び小型化されているがゆえに、車両の設計自由度を大幅に高めることができる。しかも、樹脂材料を使って軽量化も実現しているため、車両の燃費も改善される。このようなヘッドランプ1は、昨今の環境意識の高まりを背景として、より好適に車両用ヘッドライトに適用することができる。
(半導体レーザ3を使用することの効果)
従来、照明装置の光源として、LED、ハロゲンランプ、HIDランプ(高輝度放電灯)などが使用されている。
しかしながら、これらの光源には種々の課題や問題点が指摘されている。例えば、現状のLED、あるいはハロゲンランプは、1灯あたりの輝度・光束が小さく、自動車用ヘッドライトなど用途によっては複数灯を必要とする。従って、そのような場合には、照明装置に使用される集光レンズの面積、あるいは光源の取り付け領域を大きくする必要が生じるなど、照明装置が必然的に大型化する。また、HIDランプは、60〜80cd/cm2と高い輝度を発揮するものの、発光のためにはガラス管と2本の放電用電極が必須であり、照明装置の小型化には不向きである。しかも、HIDランプは、光学系と組み合わせた時に輝度の高さを発揮する構成とすることが困難であるという問題がある。具体的には、発光点の近くまで2本の電極が延びてきており、また、雰囲気ガスを封じ込めるためにガラス管が必要なため、光学系(反射鏡、レンズ)と組み合わせた際に影となる部分ができてしまい、HIDランプの特徴である高輝度を十分に活かすことができないという問題がある。
この点、半導体レーザ(LD)と蛍光体とを組み合わせた高輝度光源を照明装置に使用することにより、上記各問題点を有効に解決しうる。すなわち、LDと蛍光体とを組み合わせることで、(a)LDゆえに、超小型でありながら高輝度・高光束を実現でき、(b)LDの発光方法ゆえに、無駄なく励起光を発光部7に照射することができ、(c)高輝度ゆえにヘッドランプの光学系面積を小さくすることができ、それにより照明装置の小型化を実現することもでき、(d)発光部7が、半導体レーザ3によって出射された励起光をコヒーレントからインコヒーレントな光に変換することで、人の目に優しい(アイセーフな)照明装置を実現することができる。
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図8〜図12に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
ここでは、本発明の照明装置の一例としてのレーザダウンライト200について説明する。レーザダウンライト200は、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置であり、半導体レーザ3から出射したレーザ光を発光部7に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
なお、レーザダウンライト200と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、上記照明装置の設置場所は特に限定されない。
図8は、発光ユニット210および従来のLEDダウンライト300の外観を示す概略図である。図9は、レーザダウンライト200が設置された天井の断面図である。図10は、レーザダウンライト200の断面図である。図8〜図10に示すように、レーザダウンライト200は、天板400に埋設され、照明光を出射する発光ユニット210と、光ファイバー5を介して発光ユニット210へレーザ光を供給するLD光源ユニット220とを含んでいる。LD光源ユニット220は、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(例えば、家屋の側壁)に設置されている。このようにLD光源ユニット220の位置を自由に決定できるのは、LD光源ユニット220と発光ユニット210とが光ファイバー5によって接続されているからである。この光ファイバー5は、天板400と断熱材401との間の隙間に配置されている。
(発光ユニット210の構成)
発光ユニット210は、図10に示すように、筐体211、光ファイバー5、発光部7および透光板213を備えている。
筐体211には、凹部212が形成されており、この凹部212の底面に発光部7が配置されている。凹部212の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部212は反射鏡として機能する。
また、筐体211には、光ファイバー5を通すための通路214が形成されており、この通路214を通って光ファイバー5が発光部7まで延びている。光ファイバー5の出射端部5aと発光部7との位置関係は上述したものと同様である。
透光板213は、凹部212の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板213は、透明板9と同様の機能を有するものであり、発光部7の蛍光は、透光板213を透して照明光として出射される。透光板213は、筐体211に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
図8では、発光ユニット210は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット210の形状(より厳密には、筐体211の形状)は特に限定されない。
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、発光部7の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
(LD光源ユニット220の構成)
LD光源ユニット220は、半導体レーザ3、非球面レンズ4および光ファイバー5を備えている。
光ファイバー5の一方の端部である入射端部5bは、LD光源ユニット220に接続されており、半導体レーザ3から発振されたレーザ光は、非球面レンズ4を介して光ファイバー5の入射端部5bに入射される。
図10に示すLD光源ユニット220の内部には、半導体レーザ3および非球面レンズ4が一対のみ示されているが、発光ユニット210が複数存在する場合には、発光ユニット210からそれぞれ延びる光ファイバー5の束を1つのLD光源ユニット220に導いてもよい。この場合、1つのLD光源ユニット220に複数の半導体レーザ3と非球面レンズ4との対(または、複数の半導体レーザ3と1つのロッド状レンズ32との対)が収納されることになり、LD光源ユニット220は集中電源ボックスとして機能する。
(レーザダウンライト200の設置方法の変更例)
図11は、レーザダウンライト200の設置方法の変更例を示す断面図である。同図に示すように、レーザダウンライト200の設置方法の変形例として、天板400には光ファイバー5を通す小さな穴402だけを開け、薄型・軽量の特長を活かしてレーザダウンライト本体(発光ユニット210)を天板400に貼り付けるということもできる。この場合、レーザダウンライト200の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。
(レーザダウンライト200と従来のLEDダウンライト300との比較)
従来のLEDダウンライト300は、図8に示すように、複数の透光板301を備えており、各透光板301からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト300において発光点は複数存在している。LEDダウンライト300において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
これに対して、レーザダウンライト200は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、発光部7の蛍光体を高演色蛍光体(例えば、数種類の酸窒化物蛍光体の組み合わせ)にすることにより、照明光の演色性を高めることができる。
図12は、LEDダウンライト300が設置された天井の断面図である。同図に示すように、LEDダウンライト300では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体302が天板400に埋設されている。筐体302は比較的大きなものであり、筐体302が配置されている部分の断熱材401には、筐体302の形状に沿った凹部が形成される。筐体302から電源ライン303が延びており、この電源ライン303はコンセント(不図示)につながっている。
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板400と断熱材401との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト300を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
また、LEDダウンライト300では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
また、筐体302は比較的大きなものであるため、天板400と断熱材401との間の隙間にLEDダウンライト300を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
これに対して、レーザダウンライト200では、発光ユニット210には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
また、発光ユニット210ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト200を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト200を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
なお、レーザダウンライト200の変形例として、図13に示すように天井には光ファイバーを通す小さな穴だけを開け、薄型・軽量の特長を活かしてレーザダウンライト本体は天井に貼り付けるということもできる。この場合、設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。
また、レーザダウンライト200は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット210を天板400の表面に設置することができ、LEDダウンライト300よりも設置に係る制約を小さくすることができるとともに工事費用を大幅に削減できる。
図13は、レーザダウンライト200およびLEDダウンライト300のスペックを比較するための図である。同図に示すように、レーザダウンライト200は、その一例では、LEDダウンライト300に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
また、LD光源ユニット220をユーザの手が容易に届く所に設置できるため、半導体レーザ3が故障した場合でも、手軽に半導体レーザ3を交換できる。また、複数の発光ユニット210から延びる光ファイバー5を1つのLD光源ユニット220に導くことにより、複数の半導体レーザ3を一括管理できる。そのため、複数の半導体レーザ3を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
なお、LEDダウンライト300において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lmの光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト200で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト300の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト200では、LEDダウンライト300と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
以上のように、レーザダウンライト200は、レーザ光を出射する半導体レーザ2を少なくとも1つ備える光源ユニット220と、発光部7および反射鏡としての凹部212を備える少なくとも1つの発光ユニット210と、発光ユニット210のそれぞれへ上記レーザ光を導く光ファイバー5とを含んでいる。
光ファイバー5の複数の出射端部5bは、発光ユニット210が備える1つの発光部7に対して複数配置されており、複数配置された出射端部5bから出射されるレーザ光がそれぞれ有する光強度分布における最も光強度の大きい部分が、配置の対象となる発光部7の互いに異なる部分に対して照射される。
それゆえ、レーザダウンライト200において、レーザ光が発光部7の一箇所に集中的に照射されることによって発光部7が著しく劣化する可能性を低減できる。その結果、長寿命のレーザダウンライト200を実現できる。
(その他の効果)
光ファイバー5は、可撓性を有しているため、出射端部5aのレーザ光照射面7aに対する配置を容易に変えることができる。それゆえ、レーザ光照射面7aの形状に沿って出射端部5aを配置することができ、レーザ光をレーザ光照射面7aの全面にわたってマイルドに照射することができる。
また、発光部7のレーザ光照射面7aに対する複数の出射端部5aの配置様式を設定することにより、発光部7からの光によって照らされる領域の照度を、当該領域内において変化させることができる。
(本発明の別の表現)
なお、本発明は、以下のように表現してもよい。
本発明に係る発光装置(高輝度光源)は、高出力の発振が可能な半導体レーザからなる励起光源と、前記励起光源からの励起光により発光する発光部を有している。
さらに、本発明に係る発光装置は、励起光源としては、半導体レーザだけでなく、高出力発光ダイオードでもよい。
さらに、本発明に係る発光装置は、一つの励起光源に対して一つのレーザ光出射端を持つような半導体レーザだけでなく、一つの励起光源に対して複数のレーザ光出射端を持つ半導体レーザであってもよい。
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
例えば、励起光源として高出力のLEDを用いてもよい。この場合には、450nmの波長の光(青色)を出射するLEDと、黄色の蛍光体、または緑色および赤色の蛍光体とを組み合わせることにより白色光を出射する発光装置を実現できる。また、将来的に高輝度・高光束のLEDが開発された場合には、当然に本発明に係る照明装置に好適に適用することもできる。
また、励起光源として、半導体レーザ以外の固体レーザ、例えば高出力の発振が可能な発光ダイオードを用いてもよい。ただし、半導体レーザを用いる方が、励起光源を小型化できるため好ましい。
(本発明の別の表現)
本発明の一態様は、以下のようにも表現できる。
すなわち、本発明の一態様に係る照明装置は、上記の課題を解決するために、励起光を出射する励起光源と、上記励起光源が出射した励起光を受け取る入射端部と当該入射端部から入射した励起光を出射する出射端部とを有する導光部と、上記出射端部から出射された励起光を受けて、可視光線から近赤外線の波長域における光を発する発光部と、を備えた発光装置と、上記発光部が出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する樹脂製の反射鏡と、上記光線束の進む方向に形成された開口部を覆う部材であって、上記光線束が透過する樹脂製の透明部材と、を備え、上記励起光源は、上記反射鏡と上記透明部材とで囲まれた反射空間の外部に設けられる。
上記の構成によれば、励起光源が出射した励起光は、導光部の入射端部に入り、導光部の出射端部から出射される。この励起光が発光部に照射されると当該発光部が発光する。そして、発光部が出射した光は反射鏡によって反射され、反射鏡が反射した光線束は、透明部材を透過する。
ここで、発光部が発光する光の波長域は可視光線から近赤外線の波長域であるため、反射鏡が反射する光、及び透明部材を透過する光の波長域も可視光から近赤外域となる。従って、被照射物の温度を上昇させる波長域である遠赤外線(熱線)、あるいは、樹脂を退色・変質させる波長域である紫外線を含まれない光が、反射鏡で反射され、かつ透明部材を透過することになる。従って、反射鏡および透明部材を樹脂材料で形成したとしても、時間の経過に伴う樹脂材料の成分劣化等の問題を確実に回避することができる。
そして、樹脂材料を使用することで、次のようなメリットを享受することができる。つまり、樹脂材料を使用することにより、樹脂材料の軽量・安価という特徴をそのまま照明装置の軽量化・低価格化につなげることができる。加えて、樹脂材料の特性である加工性の高さを活かして、照明装置のデザイン性を高めることができる。そのような数々の利点が相俟って、ユーザにとって照明装置の利用性を高めることができる。
さらに、本発明の一態様に係る照明装置では、励起光源は、反射鏡と透明部材とで囲まれた反射空間の外部に設けられている。これにより、次のような効果が得られる。
具体的には、反射鏡と透明部材とで囲まれた反射空間の外部に励起光源を設けることにより、反射空間の内部に励起光源を設ける場合と比べて、反射空間に必要な容積を小さくすることができる。つまり、励起光源を反射空間の外部に設けることにより、反射鏡及び透明部材の小型化が進み、それに伴い、反射鏡及び透明部材のさらなる軽量化を達成できる。その結果、照明装置の小型化・軽量化をさらに実現することができる。加えて、樹脂材料の使用量が減るため、照明装置のさらなる低価格化というメリットをも享受できる。
なお、励起光源から発生する熱が樹脂製の反射鏡に及ぼす影響を懸念する声もある。これについては、励起光源が発射した励起光を発光部へと導く導光部を適宜設計することで、つまり、導光部の長さ等を適宜調節することで、励起光源を反射鏡から離間した位置(つまり、冷却しやすい位置)に設置すればよい。これにより、励起光源から発生した熱が樹脂製の反射鏡に影響を及ぼすことを回避することができる。また、導光部の長さ等を適宜調節可能にしておけば、励起光源を交換しやすい位置に設置することもできるため、照明装置の設計自由度をさらに高めることができる。
このようにして、利用性に優れ、小型化・軽量化を実現した照明装置をユーザに提供することができる。
また、上記発光部は、上記反射空間の内部において、熱伝導率の高い高熱伝導部材によって保持されており、上記高熱伝導部材の一部は、上記反射空間の外部に突出していることが好ましい。
上記構成を備えることにより、発光部で発生する熱は、高熱伝導部材を介して反射空間の外部に効率的に放熱される。それゆえ、発光部から発生した熱が反射空間内に蓄積し、発光部に不具合が生じるといった問題を未然に防止することができる。
また、上記反射鏡は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポチスチレン、アクリルニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂から選択される少なくとも1つの樹脂により形成され、上記透明部材は、ポリスチレン、アクリルニトリル/スチレン、アクリルニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、有機無機ハイブリッドガラスから選択される少なくとも1つの樹脂により形成されることが好ましい。
上述したように、反射鏡を形成する樹脂材料は、高温や紫外線に対する耐性を高くする必要がない。従って、反射鏡を形成する樹脂材料として、汎用樹脂、汎用エンジニアリング樹脂、スーパーエンジニアリング樹脂の何れでも採用しうる。なかでも、汎用樹脂は樹脂価格が比較的安く加工もしやすいため、四大汎用樹脂と呼ばれるポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)は好適に採用することができる。
また、透明部材の材料としては、透光性を有する樹脂材料、つまり非結晶樹脂によって形成されるため、ポリスチレン、アクリルニトリル/スチレン、アクリルニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、有機無機ハイブリッドガラスなどを好適に採用することができる。
また、上記何れかの照明装置を車両用ヘッドライトに適用することもできる。
上述したように、本発明の一態様照明装置は、利用性に優れ、かつ小型化・軽量化を実現している。従って、本発明の一態様に係る照明装置を車両用ヘッドライトに適用した場合、その利用性の高さ、及び小型化されているがゆえに、車両の設計自由度を大幅に高めることができる。しかも、樹脂材料を使って軽量化も実現しているため、車両の燃費も改善される。このような照明装置は、昨今の環境意識の高まりを背景として、より好適に車両用ヘッドライトに適用することができる。
本発明の一態様に係る照明装置は、以上のように、励起光を出射する励起光源と、上記励起光源が出射した励起光を受け取る入射端部と当該入射端部から入射した励起光を出射する出射端部とを有する導光部と、上記出射端部から出射された励起光を受けて、可視光線から近赤外線の波長域における光を発する発光部と、を備えた発光装置と、上記発光部が出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成する樹脂製の反射鏡と、上記光線束の進む方向に形成された開口部を覆う部材であって、上記光線束が透過する樹脂製の透明部材と、を備え、上記励起光源は、上記反射鏡と上記透明部材とで囲まれた反射空間の外部に設けられる構成である。
それゆえ、利用性に優れ、小型化・軽量化を実現した照明装置をユーザに提供することができる。