JP2014156555A - ナノ粒子の製造方法 - Google Patents

ナノ粒子の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2014156555A
JP2014156555A JP2013028491A JP2013028491A JP2014156555A JP 2014156555 A JP2014156555 A JP 2014156555A JP 2013028491 A JP2013028491 A JP 2013028491A JP 2013028491 A JP2013028491 A JP 2013028491A JP 2014156555 A JP2014156555 A JP 2014156555A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
polymer solution
aqueous liquid
polymer
block
nanoparticle
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013028491A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6036377B2 (ja
Inventor
Takashi Kawabe
隆志 川辺
Hidekazu Koseki
英一 小関
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Shimadzu Corp
Original Assignee
Shimadzu Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Shimadzu Corp filed Critical Shimadzu Corp
Priority to JP2013028491A priority Critical patent/JP6036377B2/ja
Publication of JP2014156555A publication Critical patent/JP2014156555A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6036377B2 publication Critical patent/JP6036377B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Medicinal Preparation (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Processes Of Treating Macromolecular Substances (AREA)
  • Physical Or Chemical Processes And Apparatus (AREA)
  • Polyamides (AREA)
  • Other Resins Obtained By Reactions Not Involving Carbon-To-Carbon Unsaturated Bonds (AREA)

Abstract

【課題】均一粒径を有する両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子の製造方法を提供する。
【解決手段】親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーから構成されるナノ粒子の製造方法であって、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーを有機溶媒中に含む溶液をポリマー溶液供給流路に導入してポリマー溶液の層流を形成すると共に、水系液を少なくとも2つの水系液供給流路に導入して少なくとも2つの水系液の層流を形成し、前記ポリマー溶液の層流が、前記少なくとも2つの水系液の層流に挟まれるように合流させて両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を形成する、ナノ粒子の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、超分子化学、医工薬学連携領域、及びナノメディシンの分野に属する。本発明は、両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子の製造方法に関し、より詳しくは、ポリマー溶液と水系液との新規な合流構造を用いた両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子の製造方法に関する。特に、本発明は、生体適合性に優れる両親媒性ブロックポリマーからなる均一粒径を有するナノ粒子の連続的製造に適している。また、本発明は、前記ナノ粒子の連続的製造に用いることのできるマイクロフローセルにも関する。
腫瘍やその他の疾病を診断するために、分子イメージング技術が開発されている。分子イメージング技術としては、ポジトロン断層法PET(Positron Emission Tomography)、単一光子放射断層法SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)、磁気共鳴画像診断法MRI(Magnetic Resonance Imaging)、及び蛍光イメージングなどが挙げられる。これらの各診断に適する、高い感度すなわち病変部位への高い集積選択性を有し、低侵襲性を有するプローブが求められている。
また、治療の方に目を向けると、早期治療後、及び外科的治療や放射線治療後の転移予防のためのがん治療においては、抗がん剤を用いた化学療法が行われる。抗がん剤は、正常組織へも大きな影響を与え副作用が問題となる。副作用の軽減のために種々の薬剤搬送システム(DDS)が研究開発されている。この一つとして、がんの初期増殖時に顕著に見られる新生血管の特徴(EPR効果:Enhanced Permeability and Retention Effect)を利用したナノ粒子をキャリアーとしたDDS抗がん剤の開発が注目され、種々のナノ粒子が検討されている。EPR効果とは、血中に投与された粒径数十nm〜数百nm(例えば20〜200nm程度)のナノ粒子が、透過性が異常に亢進した毛細血管系より漏出し、増殖の速い腫瘍組織の間質腔に、リンパ管が未発達なことも手伝って蓄積する現象である。
特開平11−335267号公報、特開2003−26812号公報、及び特開2001−226294号公報には、水難溶性薬物を含有する高分子ミセルの製造方法が開示されている。特開2001−226294号公報によれば、水難溶性薬物と、親水性セグメント及び疎水性セグメントを含んでなるブロック共重合体とを水非混和性有機溶媒で溶解して有機溶液を調製し、得られた有機溶液を水性媒体と混合して水中油(O/W)型エマルションを形成し、得られたエマルションから該有機溶媒を蒸発除去することによって該薬物が封入されたポリマーミセル溶液を形成し、そして必要により、得られたポリマーミセル溶液を超音波処理及び限外濾過処理して、水難溶性薬物が封入されたポリマーミセルを製造する方法が開示されている。しかしながら、同号公報によれば、透析処理により有機溶媒を除去し、その後、超音波処理を行うことにより粒子を微細化しており(いわゆるトップダウン方式)、工程が複雑である。また、超音波処理による粒子の微細化を行うと、精密な粒子サイズの制御は困難である。さらに、超音波処理により一旦作製された粒子が破壊され、粒子の内包薬物が漏洩する恐れがあるため、薬物内包量の制御も困難である。
特開2012−213747号公報には、直径が50〜300μmの微小流路を有する流路部材と、粒子を分散又は溶解させた原料液を加圧して前記流路部材に圧送する加圧部と、前記流路部材を通過した原料液を導入して乾燥させる真空乾燥室とを備えた微粒子製造装置が開示されている。同号公報に開示の微粒子製造装置は、すでに形成されている粒子を圧送して微細化するものである(いわゆるトップダウン方式)。
特開2005−246227号公報には、超音波や圧力で破壊できる含気泡型のロイコ色素内包マイクロカプセルの製造方法が開示されている。製造されるマイクロカプセルの粒径はマイクロメーターサイズと大きいものである(例えば、実施形態1において4μm[0021]、実施形態3において6μm[0033])。ホモジナイザーを使用して、大きな粒径のものをマイクロメーターサイズに微細化する(いわゆるトップダウン方式)であるため、マイクロカプセル中のロイコ色素の内包量制御は困難である。
特開2009−256324号公報には、生理活性物質を含む揮発性有機酸水溶液または生理活性物質の揮発性有機酸溶液を、生分解性高分子を含む揮発性有機溶媒と混合してエマルジョンを作製する工程、及び得られたエマルジョンを負電荷を有するポリマーの水溶液と混合する工程を含む、生理活性物質含有微粒子の製造方法が開示されている。微粒子の粒子径に関する記載はない。
特開2012−170861号公報には、少なくとも2つの入口I1〜In(n≧2)と、少なくとも1つの出口Oと、前記入口I1〜Inにそれぞれ接続される入口流路C1〜Cnと、前記入口流路C1〜Cnが同時に又は段階的に合流することによって形成され、出口Oに接続される流路部分Jと、を有する流路構造Xに対して、前記入口I1からハイドロゲルの原料となるゾル溶液Zを、前記入口I2からゲル化剤溶液Gをそれぞれ連続的に導入し、前記流路部分Jにおいてゾル溶液Zを少なくとも部分的にゲル化させたファイバーを形成し、さらに、流路Xの内部あるいは外部において、ゾル溶液Zを少なくとも部分的にゲル化させたファイバーを液滴内に閉じ込めることによってファイバーを切断することで、非球形ハイドロゲル粒子を作製する、非球形ハイドロゲル粒子の合成方法が開示されている。同号公報によれば、ゾル溶液Zをゲル化剤溶液Gと共に連続的に導入し、前記合流後の流路部分Jにおいてゾル溶液Zをゲル化させたファイバーを形成する。ゲル化により形成されたファイバーを液滴内に閉じ込めることによってファイバーを切断し、非球形ハイドロゲル粒子を作製する。同号公報には、両親媒性ブロックポリマーの開示はなく、また、作製されるハイドロゲル粒子は、その直径が数μm〜数cm程度([0021])と非常に大きいものである。
薬剤搬送システム(DDS)に用いられるナノ粒子としては、例えば、特開2008−24816号公報(米国特許出願公開US2008/0019908)には、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーであって、前記親水性ブロックは、サルコシン単位を10個以上有する親水性ポリペプチド鎖であり、前記疎水性ブロックは、アミノ酸単位及びヒドロキシル酸単位からなる群から選ばれる単位を必須構成単位として含み、且つ前記必須構成単位を5個以上有する疎水性分子鎖である両親媒性ブロックポリマーが開示され、前記両親媒性ブロックポリマーからなる粒径10〜500nmの分子集合体が開示されている。
国際公開WO2009/148121号公報及びバイオマテリアルズ(Biomaterials)、2009年、第30巻、p.5156−5160には、疎水性ブロックがポリ乳酸鎖、親水性ブロックがポリサルコシン鎖である直鎖型の両親媒性ブロックポリマーが、水溶液中において自己組織化し、粒径が30nm以上の高分子ミセル(ラクトソーム)を形成することが開示されている。ラクトソームは、高い血中滞留性を有するほか、それまでに既に開発されていた高分子ミセルと比べて肝臓への集積量が著しく減少することが分かっている。このラクトソームは、血中に滞留している粒子径が数十〜数百nmのナノ粒子が癌疾に溜まりやすいという性質(EPR効果)を利用することによって、癌疾部位を標的とした分子イメージング又は薬剤搬送用のナノキャリアとして適用可能である。
国際公開WO2012/176885公報には、サルコシンを含む分岐した親水性ブロックと、ポリ乳酸を有する疎水性ブロックとを有する分岐型の両親媒性ブロックポリマーが、水溶液中において自己組織化し、粒径が10〜50nmの高分子ミセル(ラクトソーム)を形成することが開示されている。
特開平11−335267号公報 特開2003−26812号公報 特開2001−226294号公報 特開2012−213747号公報 特開2005−246227号公報 特開2009−256324号公報 特開2012−170861号公報 特開2008−24816号公報 米国特許出願公開US2008/0019908 WO2009/148121号公報 WO2012/176885公報
バイオマテリアルズ(Biomaterials)、2009年、第30巻、p.5156−5160
上記のWO2009/148121号公報、及びWO2012/176885公報において、両親媒性ブロックポリマーからフィルム法によりナノ粒子が作製されている。フィルム法は、次の工程を含む。すなわち、容器(例えばガラス容器)中に、両親媒性ブロックポリマーを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程、前記溶液から前記有機溶媒を除去し、前記容器の内壁に両親媒性ブロックポリマーを含むフィルムを得る工程、及び、前記容器中に水又は水溶液を加え、超音波処理を行い、前記フィルム状物質を粒子状の分子集合体に変換して分子集合体の分散液を得る工程を含む。さらに、フィルム法は、前記の分子集合体の分散液を凍結乾燥処理に供する工程を含んでも良い。フィルム法は、回分式であり、生産性の観点から好ましくはないし、バッチ間の粒径の制御には不向きである。
また、上記のWO2009/148121号公報、及びWO2012/176885公報には、実際に行ったことは開示されていないが、インジェクション法によってナノ粒子を作製することも開示されている(WO2009/148121号公報の[0145]、WO2012/176885公報の[0088])。インジェクション法は、以下の工程を含む。すなわち、容器(例えば試験管など)中に、両親媒性ブロックポリマーを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程、前記の溶液を水又は水溶液に分散させる工程、及び、有機溶媒を除去する工程が行われる。さらに、インジェクション法では、有機溶媒を除去する工程の前に、適宜精製処理工程を行ってもよい。開示されたインジェクション法は、回分式であり、生産性の観点から好ましくはないし、バッチ間の粒径の制御には不向きである。
また、一方で、所望のEPR効果を得るためには、例えば20〜200nm程度の範囲の均一粒径を有するナノ粒子の作製が望まれる。
本発明の目的は、均一粒径を有する両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマー溶液の層流と、少なくとも2つの水系液の層流とを形成し、前記ポリマー溶液の層流が、前記少なくとも2つの水系液の層流に挟まれるように合流させることによって、20〜200nm程度の範囲の均一粒径を有する両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を連続的に形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以下の発明を含む。
(1) 親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーから構成されるナノ粒子の製造方法であって、
親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーを有機溶媒中に含む溶液をポリマー溶液供給流路に導入してポリマー溶液の層流を形成すると共に、
水系液を少なくとも2つの水系液供給流路に導入して少なくとも2つの水系液の層流を形成し、
前記ポリマー溶液の層流が、前記少なくとも2つの水系液の層流に挟まれるように合流させて両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を形成する、ナノ粒子の製造方法。
(2) ポリマー溶液入口と、
前記ポリマー溶液入口に接続した前記ポリマー溶液供給流路と、
少なくとも2つの水系液入口と、
前記水系液入口にそれぞれ接続した前記少なくとも2つの水系液供給流路と、
前記ポリマー溶液供給流路と前記少なくとも2つの水系液供給流路とが合流する合流部と、
前記合流部の下流側に位置するナノ粒子形成流路と、
前記ナノ粒子形成流路の下流端のナノ粒子含有液出口と、
を有し、
前記合流部は、前記少なくとも2つの水系液供給流路が前記ポリマー溶液供給流路を挟むように配置されて形成されているマイクロフローセルを用いて、
前記両親媒性ブロックポリマー含有溶液を前記ポリマー溶液入口から導入し、前記ポリマー溶液供給流路を介して前記ポリマー溶液の層流を前記合流部に供給すると共に、
水系液を前記少なくとも2つの水系液入口から導入し、前記少なくとも2つの水系液供給流路を介して前記少なくとも2つの水系液の層流を前記合流部に供給し、
前記合流部から前記ナノ粒子形成流路の下流側に向かって前記ポリマー溶液の層流と前記水系液の層流とを互いに接触させながら、両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を形成し、
前記ナノ粒子含有液出口から前記形成されたナノ粒子を含有する液を得る、請求項1に記載のナノ粒子の製造方法。
(3) 前記マイクロフローセルは、
基板と、
前記基板上に配置され、前記ポリマー溶液供給流路、前記少なくとも2つの水系液供給流路、前記合流部、及び前記ナノ粒子形成流路が形成された樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルム上に配置され、前記ポリマー溶液供給流路の上流端に対応する位置に前記ポリマー溶液入口が形成され、前記少なくとも2つの水系液供給流路のそれぞれの上流端に対応する位置に少なくとも2つの水系液入口が形成され、前記ナノ粒子形成流路の下流端に対応する位置に前記ナノ粒子含有液出口が形成されたカバーシートと、
を有し、
前記基板と前記樹脂フィルムと、及び前記樹脂フィルムと前記カバーシートとは、液密状態に接合されている、上記(2)に記載のナノ粒子の製造方法。
(4) 前記マイクロフローセルの前記合流部は、前記ポリマー溶液供給流路の下流端において、上流から下流に向かう前記ポリマー溶液の流れ方向に対して左右両側から前記水系液の層流が前記ポリマー溶液の層流を挟むように、前記ポリマー溶液供給流路に対して前記2つの水系液供給流路が配置されて形成されている、上記(2)又は(3)に記載のナノ粒子の製造方法。
(5) 前記両親媒性ブロックポリマーは、アルキレンオキシド単位及び/又はサルコシン単位を有する親水性ブロックと、ヒドロキシ酸単位を有する疎水性ブロックとを有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
(6) 前記両親媒性ブロックポリマーは、サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
(7) 前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位の合計は2〜300個である、上記(6)に記載のナノ粒子の製造方法。
(8) 前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位は5〜400個である、上記(6)又は(7)に記載のナノ粒子の製造方法。
(9) 形成されるナノ粒子の粒子径が10〜200nmである、上記(1)〜(8)のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
(10) 形成されるナノ粒子の粒度分布は単峰性を示す、上記(1)〜(9)のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
(11) 前記ポリマー溶液中に薬剤及び/又は標識剤を含有させて、薬剤及び/又は標識剤を含有するナノ粒子を得る、上記(1)〜(10)のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
(12) 前記水系液中に、薬剤及び/又は標識剤を含有させて、薬剤及び/又は標識剤を含有するナノ粒子を得る、上記(1)〜(11)のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
(13) 親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーから構成されるナノ粒子を製造するためのマイクロフローセルであって、
少なくとも1つのポリマー溶液入口と、
前記ポリマー溶液入口に接続した少なくとも1つのポリマー溶液供給流路と、
少なくとも2つの水系液入口と、
前記水系液入口にそれぞれ接続した少なくとも2つの水系液供給流路と、
前記ポリマー溶液供給流路と前記少なくとも2つの水系液供給流路とが合流する合流部と、
前記合流部の下流側に位置するナノ粒子形成流路と、
前記ナノ粒子形成流路の下流端のナノ粒子含有液出口と、
を有し、
前記合流部は、前記少なくとも2つの水系液供給流路が前記ポリマー溶液供給流路を挟むように配置されて形成されているマイクロフローセル。
・ 前記マイクロフローセルは、
基板と、
前記基板上に配置され、前記ポリマー溶液供給流路、前記少なくとも2つの水系液供給流路、前記合流部、及び前記ナノ粒子形成流路が形成された樹脂フィルムと、
前記樹脂フィルム上に配置され、前記ポリマー溶液供給流路の上流端に対応する位置に前記ポリマー溶液入口が形成され、前記少なくとも2つの水系液供給流路のそれぞれの上流端に対応する位置に少なくとも2つの水系液入口が形成され、前記ナノ粒子形成流路の下流端に対応する位置に前記ナノ粒子含有液出口が形成されたカバーシートと、
を有し、
前記基板と前記樹脂フィルムと、及び前記樹脂フィルムと前記カバーシートとは、液密状態に接合されている、上記のナノ粒子の製造用マイクロフローセル。
・ 前記マイクロフローセルの前記合流部は、前記ポリマー溶液供給流路の下流端において、上流から下流に向かう前記ポリマー溶液の流れ方向に対して左右両側から前記水系液の流れが前記ポリマー溶液の流れを挟むように、前記ポリマー溶液供給流路に対して前記2つの水系液供給流路が配置されて形成されている、上記のナノ粒子の製造用マイクロフローセル。
・ 親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーから構成されるナノ粒子の粒径制御方法であって、
親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーを有機溶媒中に含む溶液をポリマー溶液供給流路に導入してポリマー溶液の層流を形成すると共に、
水系液を少なくとも2つの水系液供給流路に導入して少なくとも2つの水系液の層流を形成し、
前記ポリマー溶液の層流が、前記少なくとも2つの水系液の層流に挟まれるように合流させて均一粒径を有する両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を形成する、ナノ粒子の粒径制御方法。
本発明において、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマー溶液の層流と、少なくとも2つの水系液の層流とを形成し、前記ポリマー溶液の層流が、前記少なくとも2つの水系液の層流に挟まれるように合流させることによって、両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を形成する。
合流部(すなわち、ポリマー溶液供給流路の下流端)において、上流から下流に向かう前記ポリマー溶液の流れ方向に対して、例えば左右両側から、前記水系液の層流が前記ポリマー溶液の層流を挟む。そうすると、前記合流部からナノ粒子形成流路(前記ナノ粒子形成流路の上流部)にかけて、前記ポリマー溶液の層流は流路の中央部を流れ且つ前記水系液の層流は流路の周部分(流路内壁に接する部分)を流れる。前記ポリマー溶液の層流の流速は流路の中央部を流れることによって早くなり、それを取り囲む前記水系液の層流との液−液界面の面積が増加する。両親媒性ブロックポリマーの自己組織化は、主に前記液−液界面で起こると考えられる。前記合流部における液−液界面の面積増加、及び前記ポリマー溶液層流の流速増加によって、両親媒性ブロックポリマーの自己組織化が促進され、20〜200nm程度の範囲の均一粒径を有する(すなわち、粒度分布が単峰性を示す)ナノ粒子が形成される。
本発明において製造される両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子は、20〜200nm程度の範囲の均一粒径を有するので、所望のEPR効果が得られる。そのため、前記ナノ粒子に標識剤を含有させると、分子イメージングシステムにおける有用な分子プローブとなる。さらに、前記ナノ粒子に薬剤を含有させると、薬剤搬送システム(DDS)における有用なキャリアーとなる。
さらに、本発明によると、両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を連続的に製造することができる。連続的製造は、生産効率に優れ、且つバッチ間の粒径のばらつきもなく、安定的に均一粒径のナノ粒子を与える。
さらに、本発明によると、両親媒性ブロックポリマー溶液の層流及び水系液の層流の流速を変化させて、ナノ粒子の粒子径を制御できる。
図1は、本発明におけるポリマー溶液の層流と水系液の層流との合流を模式的に表す平面図である。 図2は、ナノ粒子の製造装置の例を示す概略構成図である。 図3は、マイクロフローセルの詳細を示す図である。 図4(a),(b),(c)は、実施例1におけるDLS測定結果を示すグラフであり、図4(d)は用いたマイクロフローセルの流路の概略を示す図である。 図5(a),(b),(c)は、比較例1におけるDLS測定結果を示すグラフであり、図5(d)は用いたマイクロフローセルの流路の概略を示す図である。 図6は、比較例におけるポリマー溶液の層流と水系液の層流との合流を模式的に表す平面図である。 図7(a),(b),(c)は、実施例2におけるDLS測定結果を示すグラフであり、図7(d)は用いたマイクロフローセルの流路の概略を示す図である。 図8(a),(b),(c)は、比較例2におけるDLS測定結果を示すグラフであり、図8(d)は用いたマイクロフローセルの流路の概略を示す図である。 図9は、本発明に合致する図1に示した流路の合流構造についてのシミュレーションに関して、図9(a)は、図1に示したものと基本的に同じ図であり、図9(b)は、シミュレーション結果を表すグラフである。 図10は、本発明に合致しない図6に示したY字型の流路の合流構造についてのシミュレーションに関して、図10(a)は、図6に示したものと基本的に同じ図であり、図10(b)は、シミュレーション結果を表すグラフである。
[1.両親媒性ブロックポリマー]
本発明において、両親媒性ブロックポリマーは、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有し、水系液(水又は水溶液)との接触により自己組織化してナノ粒子を形成し得るものであれば、特に限定されることなく用いることができる。ナノ粒子とは、サイズがナノオーダーの粒子であり、ミセル、ベシクル等の分子集合体が含まれる。
例えば、アルキレンオキシド単位及び/又はサルコシン単位を有する親水性ブロックと、ヒドロキシ酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーを用いることができる。アルキレンオキシド単位としては、エチレンオキシド単位、プロピレンオキシド単位等が挙げられる。エチレンオキシド単位の場合、親水性ブロックは、PEG鎖を含むものとなる。ヒドロキシ酸単位としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸等が挙げられる。
以下に、両親媒性ブロックポリマーの例として、サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーについて説明する。両親媒性ブロックポリマーは、直鎖型又は分岐型のいずれであってもよい。親水性ブロックと疎水性ブロックとは、リンカー部を介して結合している。
[1−1.親水性ブロック]
本発明において、両親媒性ブロックポリマーの親水性ブロックが有する「親水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、親水性ブロックの全体が、後述の疎水性ブロックとしてのポリ乳酸鎖に対して相対的に親水性が強い性質をいう。或いは、親水性ブロックが疎水性ブロックとコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性をいう。さらに或いは、両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、特に粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性をいう。
本発明において、両親媒性ブロックポリマーは、親水性ブロックにおいて直鎖構造を有していてもよいし、分岐した構造を有していてもよい。分岐構造の場合には、親水性ブロックの分岐それぞれにサルコシンが含まれる。
親水性ブロックにおいて、構成単位の種類及び比率は、ブロック全体が上述したような親水性となるように、当業者によって適宜決定されるものである。例えば、前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位の合計は2〜300個である。具体的には、直鎖型の場合、サルコシン単位の合計は、例えば、10〜300、20〜200、又は20〜100程度でありうる。構成単位数が上記範囲を超えると、分子集合体を形成した場合に、形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。上記範囲を下回ると、両親媒性ブロックポリマーとしての体をなさないか、又は、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
分岐型の場合、分岐全てに含まれるサルコシン単位の合計は、例えば、2〜200、2〜100、又は2〜10個でありうる。あるいは、複数の親水性ブロック全てに含まれるサルコシン単位の合計は、例えば、30〜200、又は50〜100個でありうる。1つの分岐当たりのサルコシン単位数の平均は、例えば、1〜60、1〜30、1〜10、又は1〜6でありうる。すなわち、親水性ブロックそれぞれは、サルコシン又はポリサルコシン鎖を含んで構成されることができる。構成単位数が上記範囲を超えると、分子集合体を形成した場合に、形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。上記範囲を下回ると、両親媒性ブロックポリマーとしての体をなさないか、又は、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
分岐型の場合、親水性ブロックにおける分岐は2以上であればよいが、分子集合体を形成する際に粒子形状のミセルを効率的に得る観点から、好ましくは3以上である。親水性ブロックにおける分岐の数の上限は特に限定されるものではないが、例えば27である。特に、本発明においては、親水性ブロックの分岐の数が3であることが好ましい。分岐構造は、当業者が適宜設計できる。
サルコシン(すなわちN−メチルグリシン)は水溶性が高く、また、サルコシンのポリマーはN置換アミドを有することから通常のアミド基に比べてシス−トランス異性化が可能であり、さらに、Cα炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有するものである。このような構造を構成ブロックとして用いることは、当該ブロックに高い親水性の基本特性、又は、高い親水性と高い柔軟性とを併せ持つ基本特性が備わる点で非常に有用である。
さらに、親水性ブロックは、末端(すなわちリンカー部と反対側の末端)に親水性基(例えば水酸基に代表される)を有していることが好ましい。
なお、ポリサルコシン鎖においては、全てのサルコシン単位が連続していてもよいし、非連続であってもかまわないが、当該ポリペプチド鎖全体として上述の基本特性を損なわないように分子設計されたものであることが好ましい。
[1−2.疎水性ブロック]
本発明において、疎水性ブロックが有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、疎水性ブロックが、上記の親水性ブロックの全体に対して相対的に疎水性が強い領域であり、当該親水性ブロックとコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。或いは、当該両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。
1本の両親媒性ブロックポリマー中に存在する疎水性ブロックは分岐していなくともよいし、分岐していてもよい。しかしながら、疎水性ブロックは分岐していない方が、疎水性コア部に対して、親水性分岐型シェル部の稠密度が増すので、より小さい粒径の安定したコア/シェル型分子集合体を形成し易いと考えられる。
本発明において、疎水性ブロックは、ポリ乳酸鎖(PLA)を含むものである。疎水性ブロックにおいて構成単位の種類及び比率は、ブロック全体が上述したような疎水性となるように、当業者によって適宜決定されるものである。例えば、前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位は5〜400個である。具体的には、例えば疎水性ブロックが分岐していない場合、乳酸単位の数は、例えば5〜100、15〜60個、又は25〜45個でありうる。疎水性ブロックが分岐している場合は、分岐全てに含まれる乳酸単位の数の合計が、例えば10〜400、好ましくは20〜200個でありうる。この場合、1つの分岐当たりの乳酸単位数の平均は、例えば、5〜100、好ましくは10〜100個である。
構成単位数が上記範囲を上回ると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が上記範囲を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
疎水性ブロックが分岐する場合、分岐の数は特に限定されないが、分子集合体を形成する際に粒子形状のミセルを効率的に得る観点から、例えば、親水性ブロックにおける分岐数以下とすることができる。
ポリ乳酸は、以下の基本特性を有する。
ポリ乳酸は、優れた生体適合性及び安定性を有するものである。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、生体、特に人体への応用性という点で非常に有用である。
また、ポリ乳酸は、優れた生分解性を有することから代謝が早く、生体内においてがん組織以外への組織への集積性が低い。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、がん組織への特異的な集積性という点で非常に有用である。
そして、ポリ乳酸は、低沸点溶媒への溶解性に優れるものであることから、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から分子集合体を得る際に、有害な高沸点溶媒の使用を回避することが可能である。このため、このような分子集合体は、生体への安全性という点で非常に有用である。
なお、疎水性ブロックを構成するポリ乳酸鎖(PLA)においては、全ての乳酸単位が連続していてもよいし、非連続であってもかまわないが、疎水性ブロック全体として上述の基本特性を損なわないように分子設計されたものであることが好ましい。
疎水性ブロックを構成するポリ乳酸鎖(PLA)は、L−乳酸単位から構成されているポリL−乳酸鎖(PLLA)か、又は、D−乳酸単位から構成されているポリD−乳酸鎖(PDLA)のいずれであってもよい。また、L−乳酸単位とD−乳酸単位との両者から構成されていてもよい。この場合において、L−乳酸単位とD−乳酸単位とは、交互配列、ブロック配列、又はランダム配列のいずれであってもよい。
[1−3.サルコシン単位数の乳酸単位数に対する比]
両親媒性ブロックポリマーにおいて、サルコシン単位数(すなわち、親水性ブロックに含まれるサルコシン単位の数、又は、親水性ブロックが分岐している場合には分岐全てに含まれるサルコシン単位の数の合計)をNとし、ポリ乳酸単位数(すなわち、疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数、又は、疎水性ブロックが分岐している場合には分岐全てに含まれる乳酸単位数の合計)をNとすると、それらの比N/Nは、例えば0.05〜5又は0.05〜4でありうる。さらに好ましくは、N/Nは、0.05以上1.8未満、例えば0.05以上1.7以下、0.05以上1.67以下、0.1以上1.7以下、又は0.1以上1.67以下であってよい。
[1−4.ポリマー構造]
親水性ブロックと疎水性ブロックとを連結するリンカー部位の構造は、化学的に許容可能な構造であれば特に限定されるものではない。当業者が適宜分子設計できる。
分岐構造の場合、例えば、親水性ブロック側の分枝の数が2である場合は、ポリ乳酸鎖を含む分子鎖のリンカー部位にある1つのN原子から、ポリサルコシン鎖を含む2本の分子鎖が分岐しうる。言い換えれば、ポリ乳酸鎖に直接的又は間接的に結合しているN原子が、直接的又は間接的に2本のポリサルコシン鎖に結合していることができる。
また例えば、親水性ブロック側の分枝の数が3である場合は、ポリ乳酸鎖を含む分子鎖のリンカー部位にある1つのC原子から、ポリサルコシン鎖を含む3本の分子鎖が分岐しうる。言い換えれば、ポリ乳酸鎖に直接的又は間接的に結合しているC原子が、直接的又は間接的に3本のポリサルコシン鎖に結合していることができる。リンカー部位にある1つのP原子やSi原子から分岐している場合や、両親媒性ブロックポリマー分子全体が四級アンモニウム分子を形成している場合も同様である。
親水性ブロック側の分枝の数が3を超える場合は、分枝がさらなる分岐構造を有するように分子設計されることができる。
疎水性ブロック側も分岐している場合についても、上記と同様の観点で分子設計されることができる。
下記式(I)に、親水性ブロック側の分岐の数が3、疎水性ブロック側の分岐なしである場合の分岐型両親媒性ブロックポリマーの好ましい構造を示す。
式(I)中、n1、n2及びn3は、それらの合計が3〜200となる数、mは5〜100の数を表し、Rは、水素原子又は有機基を表す。有機基の炭素数は、1〜20でありうる。具体的には、アルキル基やアルキルカルボニル基などが挙げられる。
下記式(II)に、親水性ブロック側の分岐の数が3、疎水性ブロック側の分岐が2である場合の分岐型両親媒性ブロックポリマーの好ましい構造を示す。
式(II)中、n1、n2及びn3、並びにRは、式(I)における場合と同じである。m1及びm2は、それらの合計が10〜400となる数を表す。
[1−5.両親媒性ブロックポリマーの合成法]
直鎖型両親媒性ブロックポリマーの合成は、当業者が適宜行うことができる。例えば、疎水性ブロック部(ポリ乳酸部)の合成を行うと共に、ポリ乳酸鎖の一端に、親水性ブロック部(ポリサルコシン部)を連結するリンカーとなり得る官能基(例えば、アミノ基)を導入する。次に、このアミノ基にポリサルコシンを導入するとよい。
分岐型両親媒性ブロックポリマーの合成においては、疎水性ブロック部(ポリ乳酸部)の合成、親水性ブロック部(サルコシン部又はポリサルコシン部)の合成、及びそれらブロックを連結するリンカー部の合成がなされる。
例えば、サルコシン又はポリサルコシン鎖とポリ乳酸鎖とを連結させるリンカー試薬を合成し、それを開始剤として、サルコシン部位の付加又はポリサルコシン部位の重合反応による伸長及びポリ乳酸部位の重合反応により伸長させることによって、分岐型両親媒性ブロックポリマーを合成することができる。
また例えば、サルコシンをリンカー試薬に付加させた後に、又は、ポリサルコシン鎖を親水性ブロックとして予め重合反応により調製し、リンカー試薬に付加させた後に、ポリ乳酸鎖を伸長させることによって、分岐型両親媒性ブロックポリマーを合成することができる。
さらに例えば、ポリサルコシン又はポリサルコシン鎖及びポリ乳酸鎖の両方をそれぞれ親水性ブロック及び疎水性ブロックとして予め用意しておき、別途合成されたリンカー試薬を用いてそれらブロックを連結させることによって、分岐型両親媒性ブロックポリマーを合成することができる。
リンカー試薬の構造は、乳酸モノマー(乳酸やラクチド)又はポリ乳酸鎖と結合可能な官能基(例えば、水酸基、アミノ基等)を1個又は所望の疎水性ブロック側分岐数に相当する数だけ有し、且つ、サルコシンモノマー(例えばサルコシンやN−カルボキシサルコシン無水物)又はポリサルコシンと結合可能な官能基(例えばアミノ基)を所望の親水性ブロック側分岐数に相当する数だけ有することができる。この場合、リンカー試薬において、サルコシンモノマー又はポリサルコシンと結合可能な官能基のそれぞれが可能な限り同様の反応性を有するように、当業者によって適宜分子設計がなされる。
乳酸モノマー又はポリ乳酸鎖と結合可能な官能基と、サルコシンモノマー又はポリサルコシンと結合可能な官能基とは、それぞれ保護基によって保護されうる。この場合、それぞれの保護基としては、必要に応じて選択的に脱離させることが可能なものが当業者によって適宜選択される。例えば、親水性ブロック側分岐数が3である分岐型両親媒性ブロックポリマーを合成する場合のリンカー試薬は、例えばトリスヒドロキシメチルアミノメタン(Tris)構造を元に調製することができる。
さらに、疎水性ブロック側を分岐させる場合は、例えば上記のトリスヒドロキシメチルアミノメタン構造にさらに分岐点を増やした構造を元に調製することができる。さらに分岐点を増やした構造は、トリスヒドロキシメチルアミノメタンに、ポリ乳酸鎖と結合可能な官能基として例えばアミノ基を側鎖に有するアミノ酸(具体例として、リジン及びオルニチンが挙げられる)の、すべてのアミノ基が保護されているアミノ酸誘導体を付加し、その後脱保護することによって得ることができる。脱保護してフリーになったアミノ基に対して、さらに同様のアミノ酸誘導体を付加することによって、分岐点を増やしていくことができる。
ポリサルコシン鎖及びポリ乳酸鎖の合成方法は、リンカー試薬における官能基に応じて当業者が適宜決定することができるものであり、公知のペプチド合成法及びポリエステル合成法から選択されてよい。
ペプチド合成は、例えば、リンカー試薬におけるアミノ基などの塩基性基を開始剤として、N−カルボキシサルコシン無水物(サルコシンNCA)を開環重合することなどによって行うことが好ましい。
ポリエステル合成は、例えば、リンカー試薬におけるアミノ基などの塩基性基を開始剤として、ラクチドを開環重合することなどによって行うことが好ましい。
なお、分岐数が上記具体例と異なる分岐型両親媒性ブロックポリマーを合成する場合は、有機化学的観点から当業者が種々の変更を適宜加えることによって調製することができる。
ポリサルコシン鎖及びポリ乳酸鎖の鎖長の調整は、重合反応における開始剤とモノマーとの仕込み比を調整することによって行うことができる。また、鎖長は、例えば 1HNMRによって確認することができる。
[2.分子集合体]
本発明において、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーの凝集により、或いは自己集合的な配向により、サイズがナノオーダーであるミセル、多重ミセル、ベシクル等の分子集合体(ナノ粒子)が形成される。
以下に、両親媒性ブロックポリマーの例として、サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーを用いた場合について説明する。
本発明において、分子集合体(ラクトソーム)は、上記の直鎖型又は分岐型両親媒性ポリマーの凝集により、或いは自己集合的な配向により成り立つ構造体である。本発明は、内側(コア部)が疎水性ブロック、外側(シェル部)が親水性ブロックとなるように構成されたミセル形状の分子集合体であることが実用性の観点から好ましい。本発明の分子集合体は、適切な金属イオンを含有することによって、分子イメージングにおけるプローブとして、あるいは薬剤搬送システムにおける製剤として有用な構造体となる。
分岐型両親媒性ブロックポリマーは、分岐鎖としての複数のポリサルコシン鎖の存在により、直鎖型両親媒性ブロックポリマーに比べて親水性部位の分子断面積が大きくなる。このため、分岐型両親媒性ブロックポリマーから形成された分子集合体は、粒子としての安定性に優れている。さらにこの粒子は大きな曲率を備えることができる。このことから、分岐型ブロックポリマーからなる分子集合体は、粒子の小型化が可能になるという基本的特徴を有する。
また、分岐型両親媒性ブロックポリマーから構成される分子集合体は、分岐鎖としての複数のポリサルコシン鎖の存在により、直鎖型のラクトソームに比べて表面における親水性基の密度が高く、疎水性部位の露出が少ないという基本的特徴を有する。
[3.分子集合体の作製]
親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーから構成される分子集合体(ナノ粒子)の製造について図面を参照して説明する。
本発明においては、親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーを有機溶媒中に含む溶液をポリマー溶液供給流路に導入してポリマー溶液の層流を形成すると共に、水系液を少なくとも2つの水系液供給流路に導入して少なくとも2つの水系液の層流を形成し、前記ポリマー溶液の層流が、前記少なくとも2つの水系液の層流に挟まれるように合流させて両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を形成する。
両親媒性ブロックポリマーを溶解させるための有機溶媒としては、例えばトリフルオロエタノール、エタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが用いられる。また、水系液は水又は水溶液を意味している。蒸留水、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが用いられる。
図1は、本発明におけるポリマー溶液の層流と水系液の層流との合流を模式的に表す平面図である。図1において、合流部Jは、ポリマー溶液供給流路Cpの下流端において、上流から下流に向かうポリマー溶液の流れ方向に対して左右両側から水系液の層流Fw1,Fw2が前記ポリマー溶液の層流Fpを挟むように、前記ポリマー溶液供給流路Cpに対して2つの水系液供給流路Cw1,Cw2が配置されて形成されている。このような流路の合流構造とすることによって、前記水系液の層流(流れ)Fw1,Fw2が前記ポリマー溶液の層流(流れ)Fpを挟む。そうすると、前記合流部Jから下流側のナノ粒子形成流路Cnにかけて、前記ポリマー溶液の層流Fpは流路の中央部を主として流れ、且つ前記水系液の層流Fw1,Fw2は流路の周部分(流路内壁に接する部分)を主として流れる。前記ポリマー溶液の層流Fpの流速は流路の中央部を流れることによって速くなり、それを取り囲む前記水系液の層流Fw1,Fw2との液−液界面の面積が増加する。両親媒性ブロックポリマーの自己組織化は、主に前記液−液界面で起こると考えられる。前記合流部における液−液界面の面積増加、及び前記ポリマー溶液層流の流速増加によって、両親媒性ブロックポリマーの自己組織化が促進され、20〜200nm程度の範囲の均一粒径を有する(すなわち、粒度分布が単峰性を示す)ナノ粒子が形成される。
図2は、ナノ粒子の製造装置の例を示す概略構成図である。図2において、ナノ粒子の製造装置は、上述の流路合流構造を有するマイクロフローセル1を具備しており、マイクロフローセル1にポリマー溶液を供給する手段、マイクロフローセル1に水系液を供給する手段、マイクロフローセル1からナノ粒子含有液を回収する手段を有している。
マイクロフローセル1は、図1に示した流路の合流構造を有していればよく、その構造は特に限定されるものではない。図2において例示されたマイクロフローセル1は、
ポリマー溶液入口Ipと、
前記ポリマー溶液入口Ipに接続したポリマー溶液供給流路Cpと、
少なくとも2つの水系液入口Iw1,Iw2と、
前記水系液入口Iw1,Iw2にそれぞれ接続した少なくとも2つの水系液供給流路Cw1,Cw2と、
前記ポリマー溶液供給流路Cpと前記少なくとも2つの水系液供給流路Cw1,Cw2とが合流する合流部Jと、
前記合流部Jの下流側に位置するナノ粒子形成流路Cnと、
前記ナノ粒子形成流路Cnの下流端のナノ粒子含有液出口Onと、
を有し、
前記合流部Jは、前記少なくとも2つの水系液供給流路Cw1,Cw2が前記ポリマー溶液供給流路Cpを挟むように配置されて形成されているものである。
前記ポリマー溶液供給手段は、ポリマー溶液タンク11と、シリンジポンプ13を備え且つ前記タンク11から管路12で接続された三方弁14と、三方弁14から伸びて前記マイクロフローセル1のポリマー溶液入口Ipに接続されている管路15とを有している。
前記水系液供給手段は、水系液タンク21と、シリンジポンプ23を備え且つ前記タンク21から管路22で接続された三方弁24と、三方弁24から伸びた管路25と、前記管路25から2つに分岐して伸びて前記マイクロフローセル1の水系液入口Iw1,Iw2にそれぞれ接続されている管路26,27とを有している。
前記ナノ粒子含有液の回収手段は、前記マイクロフローセル1のナノ粒子含有液出口Onから伸びた管路30と、前記管路30と接続されたナノ粒子含有液回収タンク31とを有している。
図3は、マイクロフローセルの詳細を示す図である。
前記マイクロフローセル1は、上記の要素を具備しているものであればよく、特に限定されることはない。より具体的には、図3を参照して、前記マイクロフローセル1は、
基板101と、
前記基板101上に配置され、前記ポリマー溶液供給流路Cp、前記少なくとも2つの水系液供給流路Cw1,Cw2、前記合流部J、及び前記ナノ粒子形成流路Cnが形成された樹脂フィルム102と、
前記樹脂フィルム102上に配置され、前記ポリマー溶液供給流路Cpの上流端に対応する位置に前記ポリマー溶液入口Ipが形成され、前記少なくとも2つの水系液供給流路Cw1,Cw2のそれぞれの上流端に対応する位置に少なくとも2つの水系液入口Iw1,Iw2が形成され、前記ナノ粒子形成流路Cnの下流端に対応する位置に前記ナノ粒子含有液出口Onが形成されたカバーシート103と、
を有し、
前記基板101と前記樹脂フィルム102と、及び前記樹脂フィルム102と前記カバーシート103とは、液密状態に接合されているものである。
すなわち、前記マイクロフローセル1の前記合流部Jは、前記ポリマー溶液供給流路Cpの下流端において、上流から下流に向かうポリマー溶液の流れ方向に対して左右両側から水系液の層流(流れ)が前記ポリマー溶液の層流(流れ)を挟むように、前記ポリマー溶液供給流路Cpに対して前記2つの水系液供給流路Cw1,Cw2が配置されて形成されている。
上記基板101、樹脂フィルム102、及びカバーシート103は、樹脂材料から形成することができる。樹脂材料としては、例えば、シクロオレフィンをモノマーとして合成される環状ポリオレフィン(COP)が透明性を有し、熱圧着性に優れる観点から好ましい。上記それぞれの厚みについては、特に限定されないが、基板101は1mm〜3mm程度、例えば2mm程度、樹脂フィルム102は50μm〜200μm程度、例えば100μm程度、及びカバーシート103は200μm〜1mm程度、例えば500μm程度の厚みとするとよい。環状ポリオレフィン(COP)は、非極性材料であるので、紫外線照射や、プラズマ処理等の表面改質を適宜行ってから、それぞれを熱圧着して、基板101と樹脂フィルム102と、及び樹脂フィルム102とカバーシート103とを液密状態に接合するとよい。熱圧着とは、これら複数の部材を融点未満の温度で加圧密着させて、塑性変形を起こさせることにより接合する方法である。熱圧着の処理条件もによるが、樹脂フィルム102の厚みに応じて、各流路の高さが得られる。
前記ポリマー溶液タンク11中の前記両親媒性ブロックポリマー含有溶液を、シリンジポンプ13及び三方弁14で流量を調整しながら、前記マイクロフローセル1のポリマー溶液入口Ipに導入し、前記ポリマー溶液供給流路Cpを介して前記ポリマー溶液の層流Fpを前記合流部Jに供給すると共に、前記水系液タンク21中の前記水系液を、シリンジポンプ23及び三方弁24で流量を調整しながら、前記マイクロフローセル1の水系液入口Iw1,Iw2に導入し、前記2つの水系液供給流路Cw1,Cw2を介して前記2つの水系液の層流Fw1,Fw2を前記合流部Jに供給する。前記ポリマー溶液の層流(流れ)Fpが、前記2つの水系液の層流(流れ)Fw1,Fw2に挟まれるように合流させられる。図1において説明したように、前記合流部Jから下流側のナノ粒子形成流路Cnにかけて、前記ポリマー溶液の層流Fpは流路の中央部を主として流れ、且つ前記水系液の層流Fw1,Fw2は流路の周部分(流路内壁に接する部分)を主として流れる。前記ポリマー溶液の層流Fpの流速は流路の中央部を流れることによって速くなり、それを取り囲む前記水系液の層流Fw1,Fw2との液−液界面の面積が増加する。前記合流部における液−液界面の面積増加、及び前記ポリマー溶液層流の流速増加によって、両親媒性ブロックポリマーの自己組織化が促進され、20〜200nm程度の範囲の均一粒径を有する(すなわち、粒度分布が単峰性を示す)ナノ粒子が形成される。ナノ粒子含有液出口Onから出てくるナノ粒子含有液を回収タンク31にて回収する。
回収されたナノ粒子含有液について適宜、後処理を行うとよい。後処理工程としては、有機溶媒を除去する工程が行われる。さらに、有機溶媒を除去する工程の前に、適宜精製処理工程を行ってもよい。精製処理としては、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、フィルタリング、超遠心などの処理を行うことができる。このようにして、ナノ粒子の溶液ないしは分散液を得ることができる。
得られたナノ粒子の溶液ないしは分散液を凍結乾燥処理しても良い。凍結乾燥処理の方法としては公知の方法を特に限定されることなく用いることができる。たとえば、上記のようにして得られたナノ粒子の溶液ないしは分散液を液体窒素などによって凍結させ、減圧下で昇華させることによって行うことができる。これにより、分子集合体の凍結乾燥処理物が得られる。すなわち、分子集合体を凍結乾燥処理物として保存することが可能になる。必要に応じ、この凍結乾燥物に水又は水溶液を加えて、分子集合体の分散液を得ることによって、分子集合体を使用に供することができる。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
[4.分子集合体の粒子径]
本発明で製造される分子集合体(ナノ粒子)の粒子径は、例えば10〜200nmである。ここで「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒径、すなわち中心粒径をいう。本発明の分子集合体の大きさを測定するための方法は特に限定されるものではなく、当業者によって適宜選択されるものである。例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)又は原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope;AFM)による観察法や、動的光散乱(Dynamic Light Scattering;DLS)法などが挙げられる。DLS法においては、溶液中でブラウン運動している粒子の移動拡散係数を測定する。本明細書の実施例においては、動的光散乱法を用いている。
ナノ粒子の粒子径は、前記ポリマー溶液の導入流量、及び前記水系液の導入流量を変化させ、前記合流部Jにおける前記ポリマー溶液の層流Fpの流速、及びそれを取り囲む前記水系液の層流Fw1,Fw2の流速を変化させ、液−液界面の面積を変化させることによって、制御することができる。前記ポリマー溶液及び前記水系液の合計の導入流量を増加させることによって、より小さい粒子径のナノ粒子、単峰性の粒度分布を示すナノ粒子を得ることができる。
例えば、実施例で示されるように、サルコシン単位からなる親水性ブロックと乳酸単位からなる疎水性ブロックとを有する直鎖型両親媒性ブロックポリマーからなるラクトソームの場合には、前記合流部J下流側のナノ粒子形成流路Cnにおける前記ポリマー溶液及び前記水系液の合計の流量を1000μL/minから3000μL/minへと増加させると、得られるナノ粒子の粒子径は115nmから43nmへと小さくなり、また、粒度分布の単峰性が高くなる。このようにして、得られるナノ粒子の粒子径を制御することができる。
また、両親媒性ブロックポリマーにおける親水性ブロックが分岐構造であれば、それらから構成される粒子の粒子径は直鎖型のものに比べて小さくなる。例えば、ラクトソームの場合には、直鎖型ポリマーからなる粒子の粒子径は35〜200nm程度をとり得るのに対して、分岐型ポリマーからなる粒子の粒子径は10〜30nm程度をとり得る。直鎖型ポリマーと分岐型ポリマーとを併用して、その比率を変化させることによって、さらに粒子径を制御できる。粒子径が小さい(例えば50nm以下)ものほど、生体内に投与した場合にEPR効果が得られやすい。
[5.薬剤搬送システム・分子イメージング]
本発明において、ナノ粒子を作製するに際して、前記ポリマー溶液中に薬剤及び/又は標識剤を含有させて、薬剤及び/又は標識剤を含有するナノ粒子を得ることができる。この場合、薬剤及び/又は標識剤は、有機溶剤に対して溶解性を有するものである。また、ナノ粒子を作製するに際して、前記水系液中に、薬剤及び/又は標識剤を含有させて、薬剤及び/又は標識剤を含有するナノ粒子を得ることができる。この場合、薬剤及び/又は標識剤は、水に対して溶解性を有するものである。薬剤及び/又は標識剤については、当業者が、目的に応じて適宜選択するとよい。
[5−1.分子集合体の投与対象]
本発明において、薬剤搬送システム及び分子イメージングは、上記の分子集合体を生体内に投与することを含む。分子集合体を投与される生体としては特に限定されないが、ヒト又は非ヒト動物でありうる。非ヒト動物としては特に限定されないが、ヒト以外の哺乳類、より具体的には、霊長類、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
本発明の方法において用いられる分子集合体は、血管病変部位(例えば、悪性腫瘍部位、炎症部位、動脈硬化部位、血管新生部位など)への特異的集積性に優れたものである。本発明分子集合体は、EPR (enhanced permeability and retention) 効果によりこれらの部位の組織へ集積するため、その集積性は血管病変部位の組織の種類によらない。本発明の蛍光プローブの投与ターゲットとしてはがんであることが好ましい。投与ターゲットとなりうるがんは多岐に亘る。例えば、肝臓がん、すい臓がん、肺がん、子宮頸がん、乳がん、大腸がんなどが挙げられる。
[5−2.投与]
生体内への投与の方法としては特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。従って、投与の方法としては、全身投与及び局所投与とを問わない。すなわち、分子プローブの投与は、注射(針有型、針無型)、内服、外用のいずれの方法によっても行うことができる。
[5−3.分子集合体の検出]
本発明において、分子イメージングにおいては、投与された分子集合体に由来するシグナルを検出する工程を含む。投与された分子集合体を検出することによって、体外から投与ターゲットの様子(特にがんなどの組織の位置・大きさ)を観測することができる。検出方法としては、投与された分子集合体を可視化させることができるあらゆる手段を用いることができる。検出手段としては、分子集合体が有する標識剤の種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。
投与から検出開始までの時間は、当業者が適宜決定することができる。例えば、投与後1〜24時間とすることができる。腫瘍部及び腫瘍部以外へのラクトソーム集積量や集積量の時間変化を検出手段により調べる。
なお、分子集合体の検出は、正確性の観点から、生体の一方向からではなく、複数の方向からの測定によって行うことが好ましい。具体的には、少なくとも3方向、より好ましくは少なくとも5方向からの測定を行うと良い。5方向からの測定を行う場合は、例えば、左右両腹側から、左右両体側から、及び背中側からの測定を行うことができる。
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
[直鎖型両親媒性ブロックポリマー(PLLA39-PSar74)]
実施例において、サルコシン単位74個からなる親水性ブロックとL−乳酸単位39個からなる疎水性ブロックとを有する直鎖型両親媒性ブロックポリマー(PLLA39-PSar74)を用いた。ポリマーの合成は、WO2009/148121号公報、WO2012/176885公報に記載の方法を参照して、サルコシン−NCA(Sar-NCA)とアミノ化ポリL−乳酸(a-PLLA)とから、グリコール酸、O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)を用いて行った。
[実施例1]
図1〜3に示した装置を用いて、直鎖型両親媒性ブロックポリマー(PLLA39-PSar74)から次のようにしてナノ粒子を作製した。
水21としては、Milli−Qを使用した。ポリマー溶液11としては、両親媒性ブロックポリマー(PLLA39-PSar74)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に8mg/mLの濃度で溶解させ、オイルバスにより60℃で30min撹拌し、室温まで降温したものを使用した。
図示の装置において、送液にはシリンジポンプ14,24(Hamilton PSD/3)を用い、各テフロン(登録商標)チューブ12,15,22,25,26,27を介して治具に固定したマイクロフローセル1へポリマー溶液11及び水系液21の2液を導入した。治具にはヒーターと熱電対が設置されており、マイクロフローセル1を加熱することが可能となっている。シリンジポンプ14,24はコントローラを介してパソコンに接続されており、流量設定はパソコンで行った。はじめに合流部Jより下流の流路Cn内を水で満たしてからポリマー溶液を送液し、初流500μLを廃棄した後、サンプリングを開始した。なお、シリンジの容量は2.5mLであり、水をすべて流し終えた時点で送液を停止した。得られたサンプルの粒子径及び粒子径分布をDLS(Malvern Zetasizer Nano S)により測定した。
ポリマー溶液に対する水の流量比FRR(Flow Rate Ratio)は、
ポリマー溶液の流量をQp、
水の流量をQwとして、
FRR=Qw/Qp
で表される。実施例において、FRR=9とした。ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpである。また、各水系液供給流路Cw1,Cw2への水の流量が等しくなるように、管路25から二又コネクタを介して各管路26,27に水を分配した。
実施例1で用いたマイクロフローセルの流路幅:700μm、流路長:611mm、流路容積:29μL、合流部Jより下流のナノ粒子形成流路Cnにおけるターン数は14であった。マイクロフローセル1の流路温度を25℃とした。なお、マイクロフローセル1は、図3を参照して、基板101、樹脂フィルム102、及びカバーシート103は、いずれも環状ポリオレフィン樹脂(Zeonor 1600R、ガラス転移温度Tg:161℃、日本ゼオン株式会社製)からなり、基板101厚みは2mm、樹脂フィルム102厚みは100μm、及びカバーシート103厚みは500μmであった。
(a)まず、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが1000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、2つの水系液供給流路Cw1,Cw2に、ポリマー溶液及び水を導入した。ナノ粒子形成流路Cnの下流端からナノ粒子含有液を回収31した。回収されたナノ粒子含有液をMilli−Qを用いて2倍に希釈した。この希釈液を200nm [PALL Acrodisc (登録商標) 25mm Syringe Filter w/0.2μm Supor (登録商標) Membrane]のフィルターに通し、フィルター処理された液について、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図4(a)に示す。横軸は、粒子径(Particle Diameter)[nm]であり、縦軸は、強度(Intensity)[%]である。メインピークは115nmに観察され、副ピークが37nmに観察された。粒度分布の多分散度を表すPdI値は0.19であった。
(b)次に、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが2000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、2つの水系液供給流路Cw1,Cw2に、ポリマー溶液及び水を導入した以外は、上記(a)と同様の操作を行い、DLS(Malvern Instruments Ltd, Zetasizer Nano S)測定を行った。
DLS測定結果を図4(b)に示す。メインピークは47nmに観察され、明らかに単峰性を示した。PdI値は0.13であった。
(c)次に、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが3000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、2つの水系液供給流路Cw1,Cw2に、ポリマー溶液及び水を導入した以外は、上記(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図4(c)に示す。メインピークは43nmに観察され、明らかに単峰性を示した。PdI値は0.14であった。
このように、液の総流量Qtを増加させることによって、ナノ粒子の微細化、単峰性が達成された。
[比較例1]
図1〜3に示した装置のマイクロフローセル1に変えて、流路の合流構造がY字構造となっているマイクロフローセルを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。マイクロフローセルの概略流路構造を図5(d)に示す。また、図6に、ポリマー溶液の層流と水系液の層流との合流を模式的に表す平面図を示す。
図5(d)及び6において、合流部Jにおいて、ポリマー溶液供給流路Cpと1つの水系液供給流路Cwとが合流し、前記合流部Jから下流側のナノ粒子形成流路CnとでY字を形成するようになされている。すなわち、合流部Jは、上流から下流に向かうポリマー溶液の流れ方向に対して左側のみから水系液の層流Fwが前記ポリマー溶液の層流Fpをナノ粒子形成流路Cnの内壁面側に押しやるように、前記ポリマー溶液供給流路Cpに対して1つの水系液供給流路Cwが配置されて形成されている。このような流路の合流構造では、前記ポリマー溶液の層流(流れ)Fpは、流路の中央部を流れることができず、流路の内壁に接する部分を主として流れる。そのため、前記ポリマー溶液の層流Fpの流速は速くはならず、前記水系液の層流Fwとの液−液界面の面積は増加しない。従って、このような合流構造では、両親媒性ブロックポリマーの自己組織化は促進されず、また、粒子の単峰性にも劣る。
比較例1で用いたマイクロフローセルの流路幅:700μm、流路長:611mm、流路容積:28μL、合流部Jより下流のナノ粒子形成流路Cnにおけるターン数は14であった。マイクロフローセルの流路温度を25℃とした。
(a)まず、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが1000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、水系液供給流路Cwに、ポリマー溶液及び水を導入したこと以外は、実施例1(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図5(a)に示す。メインピークは98nmに観察され、それよりも小さいピークも観察された。PdI値は0.16であった。
(b)次に、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが2000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、水系液供給流路Cwに、ポリマー溶液及び水を導入した以外は、上記(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図5(b)に示す。メインピークは85nmに観察され、それよりも小さいピークも観察された。PdI値は0.17であった。
(c)次に、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが3000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、水系液供給流路Cwに、ポリマー溶液及び水を導入した以外は、上記(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図5(c)に示す。メインピークは82nmに観察され、それよりも小さいピークも観察された。PdI値は0.18であった。
このように、液の総流量Qtを増加させても、ナノ粒子の微細化はほとんど起こらなかった。また、液の総流量Qtを増加させると、PdI値がやや大きくなり、多分散度が高くなった。
[実施例2]
図1〜3に示した装置のマイクロフローセル1に変えて、流路の合流構造は同じであるが、ナノ粒子形成流路Cnのターン数が2倍とされたマイクロフローセルを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。マイクロフローセルの概略流路構造を図6(d)に示す。
実施例2で用いたマイクロフローセルの流路幅:700μm、流路長:612mm、流路容積:29μL、合流部Jより下流のナノ粒子形成流路Cnにおけるターン数は28であった。マイクロフローセルの流路温度を25℃とした。
(a)まず、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが1000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、2つの水系液供給流路Cw1,Cw2に、ポリマー溶液及び水を導入した。実施例1(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図7(a)に示す。メインピークは124nmに観察され、それよりも小さいピーク30nmも観察された。PdI値は0.15であった。
(b)次に、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが2000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、2つの水系液供給流路Cw1,Cw2に、ポリマー溶液及び水を導入した以外は、上記(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図7(b)に示す。メインピークは46nmに観察され、明らかに単峰性を示した。PdI値は0.13であった。
(c)次に、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが3000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、2つの水系液供給流路Cw1,Cw2に、ポリマー溶液及び水を導入した以外は、上記(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図7(c)に示す。メインピークは43nmに観察され、明らかに単峰性を示した。PdI値は0.14であった。
このように、液の総流量Qtを増加させることによって、ナノ粒子の微細化、単峰性が達成された。また、実施例1との比較から、流路の合流構造が、ナノ粒子の微細化、単峰性に重要な要因であることが確認できた。合流した後のナノ粒子形成流路Cnのターン数はそれほど重要な要因ではなかった。
[比較例2]
図1〜3に示した装置のマイクロフローセル1に変えて、比較例1と同じように流路の合流構造がY字構造となっており、ナノ粒子形成流路Cnのターン数が2倍とされたマイクロフローセルを用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行った。マイクロフローセルの概略流路構造を図8(d)に示す。
比較例2で用いたマイクロフローセルの流路幅:700μm、流路長:612mm、流路容積:28μL、合流部より下流のナノ粒子形成流路Cnにおけるターン数は28であった。マイクロフローセルの流路温度を25℃とした。
(a)まず、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが1000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、水系液供給流路Cwに、ポリマー溶液及び水を導入したこと以外は、実施例1(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図8(a)に示す。メインピークは120nmに観察され、それよりも小さいピーク40nmも観察された。PdI値は0.18であった。
(b)次に、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが2000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、水系液供給流路Cwに、ポリマー溶液及び水を導入した以外は、上記(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図8(b)に示す。メインピークは81nmに観察され、それよりも小さい領域にショルダーも観察された。PdI値は0.16であった。
(c)次に、FRR=9の条件にて、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qt=Qw+Qpが3000μL/minとなるように、ポリマー溶液供給流路Cp、水系液供給流路Cwに、ポリマー溶液及び水を導入した以外は、上記(a)と同様の操作を行い、DLS測定を行った。
DLS測定結果を図8(c)に示す。メインピークは71nmに観察された。PdI値は0.15であった。
このように、液の総流量Qtを増加させても、実施例2と比べると、ナノ粒子の微細化は小さいものであった。
[シミュレーションによる流路内の流動についての検討]
[本発明に合致する流路の合流構造]
以上のように、本発明に合致する流路の合流構造を有する場合には、液の総流量Qtを増加させることによって、ナノ粒子の微細化、単峰性が達成されたことを例証した。この結果について、シミュレーション手法によって検討を加えた。シミュレーションには、COMSOL Multiphysics 4.2aを用いて、2Dシミュレーションを行った。各種パラメータは、COMSOL Multiphysics 4.2aに従って入力した。ポリマー溶液の濃度は8mg/mLとして、FRR=Qw/Qp=9とした。
本発明に合致する図1に示した流路の合流構造についてのシミュレーションを図9に示す。図9(a)は、図1に示したものと基本的に同じである。合流部Jからすぐ下流側のナノ粒子形成流路Cnの矢印Aで示した辺りの管路Cnの内径幅方向の位置に対する、ポリマー溶液の層流Fp、及び水系液の層流Fw1,Fw2の流速についてのシミュレーションを行った。図9(b)は、シミュレーション結果を表すグラフであり、横軸は、管路Cnの内径幅方向の矢印A側から見た内径幅方向位置[Channel Width,Wc(μm)]を表し、縦軸は、幅方向位置における層流(流れ)の速度[Flow Rate, Vt(m/sec)]を表す。
図9(b)から、流路の中央部を流れるポリマー溶液の層流Fpと水系液の層流Fw1,Fw2との界面(Interface)におけるポリマー溶液の層流Fpの流速は、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qtを1000μL/minから2000μL/min、3000μL/minと増大させるに従って、約0.4から約0.85、約1.4と大きくなった。すなわち、このシミュレーション結果は、前記ポリマー溶液の層流Fpの流速は流路Cnの中央部を流れることによって速くなり、それを取り囲む前記水系液の層流Fw1,Fw2との液−液界面の面積が増加することを示している。前記合流部における液−液界面の面積増加、及び前記ポリマー溶液層流の流速増加によって、両親媒性ブロックポリマーの自己組織化が促進され、均一粒径を有する(すなわち、粒度分布が単峰性を示す)ナノ粒子が形成され得ることがシミュレーション結果によっても裏付けられた。このシミュレーション結果は、実施例1、2の結果と符合している。
[本発明に合致しないY字型の流路の合流構造]
本発明に合致しない図6に示したY字型の流路の合流構造についてのシミュレーションを図10に示す。図10(a)は、図6に示したものと基本的に同じである。合流部Jからすぐ下流側のナノ粒子形成流路Cnの矢印Bで示した辺りの管路Cnの内径幅方向の位置に対する、ポリマー溶液の層流Fp、及び水系液の層流Fwの流速についてのシミュレーションを行った。図10(b)は、シミュレーション結果を表すグラフであり、横軸は、管路Cnの内径幅方向の矢印B側から見た内径幅方向位置[Channel Width,Wc(μm)]を表し、縦軸は、幅方向位置における層流(流れ)の速度[Flow Rate, Vt(m/sec)]を表す。
図10(b)から、ナノ粒子形成流路Cnの内壁面側を流れるポリマー溶液の層流Fpと水系液の層流Fwとの界面(Interface)におけるポリマー溶液の層流Fpの流速は、ポリマー溶液と水の流量を合わせた液の総流量Qtを1000μL/minから2000μL/min、3000μL/minと増大させても、約0.2から約0.4、約0.6にしか大きくならなかった。すなわち、このシミュレーション結果は、前記ポリマー溶液の層流Fpの流速は流路Cnの内壁面側を流れるために、流路Cnの中央部を流れる場合と比べると少ししか速くならず、前記ポリマー溶液の層流Fpと前記水系液の層流Fwとの液−液界面の面積は増加しないことを示している。従って、このような合流構造では、両親媒性ブロックポリマーの自己組織化は促進されず、また、粒子の単峰性にも劣ることがシミュレーション結果によっても裏付けられた。このシミュレーション結果は、比較例1、2の結果と符合している。
J:合流部
Cp:ポリマー溶液供給流路
Cw1,Cw2:水系液供給流路
Cn:ナノ粒子形成流路
Fw1,Fw2:水系液の層流
Fp:ポリマー溶液の層流

Claims (13)

  1. 親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーから構成されるナノ粒子の製造方法であって、
    親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーを有機溶媒中に含む溶液をポリマー溶液供給流路に導入してポリマー溶液の層流を形成すると共に、
    水系液を少なくとも2つの水系液供給流路に導入して少なくとも2つの水系液の層流を形成し、
    前記ポリマー溶液の層流が、前記少なくとも2つの水系液の層流に挟まれるように合流させて両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を形成する、ナノ粒子の製造方法。
  2. ポリマー溶液入口と、
    前記ポリマー溶液入口に接続した前記ポリマー溶液供給流路と、
    少なくとも2つの水系液入口と、
    前記水系液入口にそれぞれ接続した前記少なくとも2つの水系液供給流路と、
    前記ポリマー溶液供給流路と前記少なくとも2つの水系液供給流路とが合流する合流部と、
    前記合流部の下流側に位置するナノ粒子形成流路と、
    前記ナノ粒子形成流路の下流端のナノ粒子含有液出口と、
    を有し、
    前記合流部は、前記少なくとも2つの水系液供給流路が前記ポリマー溶液供給流路を挟むように配置されて形成されているマイクロフローセルを用いて、
    前記両親媒性ブロックポリマー含有溶液を前記ポリマー溶液入口から導入し、前記ポリマー溶液供給流路を介して前記ポリマー溶液の層流を前記合流部に供給すると共に、
    水系液を前記少なくとも2つの水系液入口から導入し、前記少なくとも2つの水系液供給流路を介して前記少なくとも2つの水系液の層流を前記合流部に供給し、
    前記合流部から前記ナノ粒子形成流路の下流側に向かって前記ポリマー溶液の層流と前記水系液の層流とを互いに接触させながら、両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子を形成し、
    前記ナノ粒子含有液出口から前記形成されたナノ粒子を含有する液を得る、請求項1に記載のナノ粒子の製造方法。
  3. 前記マイクロフローセルは、
    基板と、
    前記基板上に配置され、前記ポリマー溶液供給流路、前記少なくとも2つの水系液供給流路、前記合流部、及び前記ナノ粒子形成流路が形成された樹脂フィルムと、
    前記樹脂フィルム上に配置され、前記ポリマー溶液供給流路の上流端に対応する位置に前記ポリマー溶液入口が形成され、前記少なくとも2つの水系液供給流路のそれぞれの上流端に対応する位置に少なくとも2つの水系液入口が形成され、前記ナノ粒子形成流路の下流端に対応する位置に前記ナノ粒子含有液出口が形成されたカバーシートと、
    を有し、
    前記基板と前記樹脂フィルムと、及び前記樹脂フィルムと前記カバーシートとは、液密状態に接合されている、請求項2に記載のナノ粒子の製造方法。
  4. 前記マイクロフローセルの前記合流部は、前記ポリマー溶液供給流路の下流端において、上流から下流に向かう前記ポリマー溶液の流れ方向に対して左右両側から前記水系液の層流が前記ポリマー溶液の層流を挟むように、前記ポリマー溶液供給流路に対して前記2つの水系液供給流路が配置されて形成されている、請求項2又は3に記載のナノ粒子の製造方法。
  5. 前記両親媒性ブロックポリマーは、アルキレンオキシド単位及び/又はサルコシン単位を有する親水性ブロックと、ヒドロキシ酸単位を有する疎水性ブロックとを有する、請求項1〜4のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
  6. 前記両親媒性ブロックポリマーは、サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する、請求項1〜5のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
  7. 前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位の合計は2〜300個である、請求項6に記載のナノ粒子の製造方法。
  8. 前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位は5〜400個である、請求項6又は7に記載のナノ粒子の製造方法。
  9. 形成されるナノ粒子の粒子径が10〜200nmである、請求項1〜8のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
  10. 形成されるナノ粒子の粒度分布は単峰性を示す、請求項1〜9のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
  11. 前記ポリマー溶液中に薬剤及び/又は標識剤を含有させて、薬剤及び/又は標識剤を含有するナノ粒子を得る、請求項1〜10のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
  12. 前記水系液中に、薬剤及び/又は標識剤を含有させて、薬剤及び/又は標識剤を含有するナノ粒子を得る、請求項1〜11のいずれかに記載のナノ粒子の製造方法。
  13. 親水性ブロックと疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーから構成されるナノ粒子を製造するためのマイクロフローセルであって、
    少なくとも1つのポリマー溶液入口と、
    前記ポリマー溶液入口に接続した少なくとも1つのポリマー溶液供給流路と、
    少なくとも2つの水系液入口と、
    前記水系液入口にそれぞれ接続した少なくとも2つの水系液供給流路と、
    前記ポリマー溶液供給流路と前記少なくとも2つの水系液供給流路とが合流する合流部と、
    前記合流部の下流側に位置するナノ粒子形成流路と、
    前記ナノ粒子形成流路の下流端のナノ粒子含有液出口と、
    を有し、
    前記合流部は、前記少なくとも2つの水系液供給流路が前記ポリマー溶液供給流路を挟むように配置されて形成されているマイクロフローセル。
JP2013028491A 2013-02-17 2013-02-17 ナノ粒子の製造方法 Expired - Fee Related JP6036377B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013028491A JP6036377B2 (ja) 2013-02-17 2013-02-17 ナノ粒子の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013028491A JP6036377B2 (ja) 2013-02-17 2013-02-17 ナノ粒子の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2014156555A true JP2014156555A (ja) 2014-08-28
JP6036377B2 JP6036377B2 (ja) 2016-11-30

Family

ID=51577637

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013028491A Expired - Fee Related JP6036377B2 (ja) 2013-02-17 2013-02-17 ナノ粒子の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6036377B2 (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015151952A1 (ja) * 2014-03-31 2015-10-08 株式会社 島津製作所 ナノ粒子の製造方法
JP2016069555A (ja) * 2014-09-30 2016-05-09 大阪ガスケミカル株式会社 樹脂粒子の分散液及び分散性樹脂粒子並びにそれらの製造方法
WO2016125272A1 (ja) * 2015-02-04 2016-08-11 株式会社島津製作所 分子集合体の製造方法および分子集合体製造装置
WO2018142633A1 (ja) * 2017-02-01 2018-08-09 株式会社島津製作所 細胞培養用ゲル組成物およびその製造方法、細胞培養方法ならびに細胞培養用基板

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008024816A (ja) * 2006-07-20 2008-02-07 Shimadzu Corp 新規な両親媒性物質、それを用いた薬剤搬送システム及び分子イメージングシステム
JP2008239902A (ja) * 2007-03-28 2008-10-09 Fujifilm Corp ポリマー微粒子及びその製造方法
WO2009148121A1 (ja) * 2008-06-05 2009-12-10 株式会社 島津製作所 新規な分子集合体、それを用いた分子イメージング用分子プローブ及び薬剤搬送システム用分子プローブ、並びに分子イメージングシステム及び薬剤搬送システム
WO2012176885A1 (ja) * 2011-06-23 2012-12-27 株式会社 島津製作所 分岐型両親媒性ブロックポリマー、それを用いた分子集合体及び薬剤搬送システム

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008024816A (ja) * 2006-07-20 2008-02-07 Shimadzu Corp 新規な両親媒性物質、それを用いた薬剤搬送システム及び分子イメージングシステム
JP2008239902A (ja) * 2007-03-28 2008-10-09 Fujifilm Corp ポリマー微粒子及びその製造方法
WO2009148121A1 (ja) * 2008-06-05 2009-12-10 株式会社 島津製作所 新規な分子集合体、それを用いた分子イメージング用分子プローブ及び薬剤搬送システム用分子プローブ、並びに分子イメージングシステム及び薬剤搬送システム
WO2012176885A1 (ja) * 2011-06-23 2012-12-27 株式会社 島津製作所 分岐型両親媒性ブロックポリマー、それを用いた分子集合体及び薬剤搬送システム

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2015151952A1 (ja) * 2014-03-31 2015-10-08 株式会社 島津製作所 ナノ粒子の製造方法
JPWO2015151952A1 (ja) * 2014-03-31 2017-04-13 株式会社島津製作所 ナノ粒子の製造方法
JP2016069555A (ja) * 2014-09-30 2016-05-09 大阪ガスケミカル株式会社 樹脂粒子の分散液及び分散性樹脂粒子並びにそれらの製造方法
WO2016125272A1 (ja) * 2015-02-04 2016-08-11 株式会社島津製作所 分子集合体の製造方法および分子集合体製造装置
JPWO2016125272A1 (ja) * 2015-02-04 2017-10-05 株式会社島津製作所 分子集合体の製造方法および分子集合体製造装置
WO2018142633A1 (ja) * 2017-02-01 2018-08-09 株式会社島津製作所 細胞培養用ゲル組成物およびその製造方法、細胞培養方法ならびに細胞培養用基板
CN110234753A (zh) * 2017-02-01 2019-09-13 株式会社岛津制作所 细胞培养用凝胶组合物及其制造方法、细胞培养方法以及细胞培养用基板
JPWO2018142633A1 (ja) * 2017-02-01 2019-11-07 株式会社島津製作所 細胞培養用ゲル組成物およびその製造方法、細胞培養方法ならびに細胞培養用基板

Also Published As

Publication number Publication date
JP6036377B2 (ja) 2016-11-30

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Mazayen et al. Pharmaceutical nanotechnology: from the bench to the market
Chamundeeswari et al. Nanocarriers for drug delivery applications
Hou et al. Biodegradable cyclomatrix polyphosphazene nanoparticles: a novel pH-responsive drug self-framed delivery system
Yang et al. An implantable active-targeting micelle-in-nanofiber device for efficient and safe cancer therapy
Zhang et al. Advanced materials and processing for drug delivery: the past and the future
Asadian-Birjand et al. Functional nanogels for biomedical applications
Zhang et al. Self-assembled lipid− polymer hybrid nanoparticles: a robust drug delivery platform
US8609115B2 (en) High shear application in drug delivery
Liao et al. Recent advances in formation, properties, and applications of polymersomes
JP6292294B2 (ja) ナノ粒子の製造方法
JP2008024816A (ja) 新規な両親媒性物質、それを用いた薬剤搬送システム及び分子イメージングシステム
Sun et al. Effect of hydrophobicity of core on the anticancer efficiency of micelles as drug delivery carriers
Makino et al. Size Control of Core–Shell-Type Polymeric Micelle with a Nanometer Precision
JP6036377B2 (ja) ナノ粒子の製造方法
Pathak Recent developments in nanoparticulate drug delivery systems
Jang et al. Carbon dioxide-generating PLG nanoparticles for controlled anti-cancer drug delivery
Yusoff et al. Superparamagnetic nanoparticles for drug delivery
Harwansh et al. Bioinspired polymeric-based core-shell smart nano-systems
Lan et al. Multifunctional nanocarriers for targeted drug delivery and diagnostic applications of lymph nodes metastasis: a review of recent trends and future perspectives
Wenqi et al. Nanotechnology-enabled therapies improve blood-brain barrier challenges in brain tumor
Mahapatra et al. Tiny technology proves big: a challenge at engineering, medicine and pharmaceutical sciences interface
Sun et al. Pharmaceutical nanotechnology
Naik Nano based drug delivery
Sirisha A review on delivery of anti-cancer drugs by smart nanocarriers: Data obtained from past one decade
Kasar et al. Nanoplex: a review of nanotechnology approach for solubility and dissolution rate enhancement

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20150730

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160511

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20160524

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20161004

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20161017

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6036377

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees