マグネシウム合金は軽量で寸法安定性に優れ比強度が高く、鋳造性、振動吸収性、電磁波シールド性、リサイクル性に優れた特性を有している。そのため各種産業において、マグネシウム合金適用が拡大しており、自動車や携帯用電子機器、情報処理機器、航空宇宙機器など、軽量化や省エネルギが図られている機器の材料として注目されている。しかしながら、マグネシウム合金は耐食性に劣り、異種金属腐食を生ずるため、化成処理やアノード処理で防食して使用することが多いが、金属光沢を有する外観や耐磨耗性付与といった理由から、マグネシウム合金表面へのメッキニーズは極めて高い。しかし、メッキ膜とマグネシウム合金との密着性が低いことや皮膜のピンホール欠陥に起因するマグネシウム素地の腐食といった問題からマグネシウム合金へのメッキは実用化が遅れている。
マグネシウムは、化学的に活性な性質であるため酸性からアルカリ性領域において腐食溶解し、強アルカリ性領域でのみ不動態となり安定である。
マグネシウムは耐食性や機械的性質の向上を目的に合金化が行われており、展伸用合金ではAZ系(Mg-AL-Zn)、ZK系(MG-Zn-Zr)などがある。鋳造用合金ではAM系(Mg-AL)、AZ系(Mg-AL-Zn)、ZK系(Mg-Zn-Zr)、EZ系(Mg-RE-Zn)など様々な合金が開発されている。代表的な展伸用合金としてはアルミニウム3%、亜鉛1%を含有するAZ31があげられる。代表的な鋳造用合金としてはアルミニウム9%、亜鉛1%を含有するAZ91があげられる。鋳造用合金であるAZ91は機械的性質と鋳造性のバランスのとれた合金であるが、展伸用合金とは異なり合金成分は均一に分布しているのではなく溶解、鋳湯、冷却、固化の過程で種々の金属層に分離する。そのため、合金表面の各層間では電位が異なり局部電池が形成され、腐食環境中では局部腐食が起こる。従って、耐食性を高める表面処理は不可欠であるが現在工業的に実用化されている表面処理の大部分は化成処理(塗装)である。
マグネシウム合金の表面処理は一般に化成処理、溶射、メッキがある。化成処理は、現在もっとも普及しているマグネシウム合金の表面処理技術である。化成処理は、6価クロム、新規の3価クロム系化成処理、ノンクロム系化成処理技術があるが、メッキに比べて低価格でありしかも環境にやさしいノンクロムのものが主流になり始めている。新規の3価クロム系化成処理は、処理液の基本構成を3価クロム、アンモニウムイオン、リン酸とし、PHコントロールにより反応速度を制御しつつ、マグネシウム合金上へ安定皮膜を形成する方法である。化成処理後塗装する方法もある。溶射は、材料表面に比較的安価に厚膜を形成できる表面技術であり、主として鉄鋼表面への耐食性、耐磨耗性の付与に利用されている。マグネシウム合金では高い耐磨耗性を要求される分野においてはより高い耐磨耗性を有する皮膜の形成が求められていくものと考えられるが、溶射は表面から基材への貫通気孔が存在することから、封孔を実施しない溶射皮膜においては、基材との異種金属接触による腐食の促進効果により耐食性はむしろ低下し、皮膜の剥離が生じる問題がある。メッキ処理は、マグネシウム合金は活性な金属であるため、電気メッキ浴中でマグネシウム合金自身が腐食するとともに、メッキ処理中に発生する水素を吸蔵するため膨れや剥がれなどが生じ、水溶液での直接電気メッキは略不可能である。このため、電気メッキ前に亜鉛置換を行うメッキ前処理方法が開発されているが、実際には十分な亜鉛膜を形成することは容易ではない。そのようなことから、マグネシウム合金上への安定した高耐食金属皮膜技術は開発されておらず需要開拓のネックとなっている。
マグネシウムは化学的に極めて活性な金属であるため、化学薬品との反応を制御するのが難しい。マグネシウム合金の表面にメッキを行う際、密着性を阻害するMgOやMg(OH)2が形成されるからである。従って、湿式プロセスで皮膜形成する場合、良好な密着力を得るためには工程の組み方が重要となる。露出面は外気に晒されるため十分な耐食性を有していることが必要とされる。特に注意を要するのは、皮膜のピンホールに起因する腐食である。鋳造マグネシウム合金は他の鋳造金属に比べて非常に欠陥が多い。そして、その欠陥はメッキ皮膜のピンホールの原因となってしまう。メッキ皮膜自体の耐食性が良好であっても、皮膜にピンホールがあればその部分からマグネシウム素地が浸食されてしまう。従って、メッキ皮膜は欠陥の全く存在しない完ぺきな皮膜でなければならない。
マグネシウム合金のメッキには代表的な例が2種類ある。一つはDOWプロセスと呼ばれるメッキ法で、亜鉛置換メッキの後、銅メッキを厚付けする方法である。DOWプロセスは、溶剤脱脂(トリクロロエチレン)→陰極電解脱脂(陰極電解脱脂剤)→クロム酸エッチング(無水クロム酸、硝酸第二鉄、フッ化カリウム)→酸活性(リン酸、酸性フッ化アンモニウム)→亜鉛置換(硫酸亜鉛、ピロリン酸ナトリウム、フッ化リチウム、炭酸ナトリウム)→シアン化銅ストライクメッキ(シアン化銅ストライト浴)→電気メッキの工程を取っている。ダウプロセスは、米国試験材料協会(ASTM)に規格化されているものの、十分な密着性及び耐食性が得られないこと、有害なクロム、シアンを使用する必要があることから工業的にはあまり普及していないのが実情である。もう一つは直接あるいは亜鉛置換メッキの後、無電解メッキニッケルメッキをする方法である。どちらの方法でもメッキ前にマグネシウム合金をエッチングするために用いる溶液は6価クロム酸系である。6価クロム酸はマグネシウム合金を激しくエッチングせず、かつ塗膜密着性及び皮膜修復性をもっているために塗装下地としても広く使用されている。
マグネシウム合金のメッキは一般的にダウプロセスを基本として、脱脂→水洗→エッチング→水洗→活性化→水洗→中和→亜鉛置換→水洗→酸活性→水洗→銅ストライクメッキ(青化銅ストライクメッキ)→水洗→目的とするメッキの様な工程を経ている。即ち、マグネシウム合金の研磨、脱脂を行い、酸浸漬、アルカリ浸漬後、濃度の低い亜鉛の錯イオン溶液に浸漬して表面に亜鉛を化学置換させ、ここにシアン化銅浴を用いて銅メッキを施すものである。銅メッキのままでは変色したり、機械的強度が弱かったりするため、通常ここにさらにニッケルをメッキする。シアンは毒物であるので、シアン化銅浴を用いることは作業面や廃液の処理などに問題があるが、シアン浴以外の銅メッキでは密着性が悪く、シアン浴を用いずに密着したメッキのできる方法の開発が望まれている。また、エッチング液や活性化液や亜鉛置換液などはいずれも水溶液であり、イオン化傾向の大きなマグネシウムやマグネシウム合金は酸化されやすいことから水溶液を用いることは問題があった。しかしながら、有機化合物であるアルコールやアセトンなどの溶媒にマグネシウム合金の前処理に有効な種々の原子を一度に溶解する技術はなかったためやむなく水溶液を使用しているのが現状であった。
以下にマグネシウム合金メッキ工程を簡単に説明する。(1)予備脱脂工程において、マグネシウム合金表面の油を有機溶剤で除去する。マグネシウムダイキャスト品は切削や研磨される際に、急激な酸化による発火を防止するため油脂を使用する。又、成形加工後の酸化を防止するため油脂が塗布されている。この油脂を完全に除去する必要がある。(2)乾燥工程において、予備脱脂工程の油脂や水分を完全に蒸発させ乾燥させる。(3)本脱脂工程において、表面の油や汚れや付着物をアルカリ液で除去する。マグネシウム合金は、高アルカリ水溶液には耐食性があるがアンモニウム塩やアミン塩を含むアルカリ水溶液には溶解するので、使用するアルカリ水溶液を適宜選択して適正なアルカリ水溶液を選択する必要がある。(4)エッチング工程において、マグネシウム合金表層や粒界に介在する偏析、強固な酸化被膜、腐食生成物、表面研磨剤、サンドブラスト材、ホーニング液の含浸、バフ研磨粒子の食い込み、鋳型表面の離型剤の付着などを化学的に溶解して除去する。一時的に均一な活性表層が得られると同時にマグネシウム合金の化学研磨が可能である。エッチング効果が悪いと偏析物や腐食生成物が残るため腐食部分が変色する。エッチング不良部は完全な金属置換ができないため良好なメッキができない。又、密着不良としてここからメッキが剥離する問題が生じる。しかし、灰色を帯びてくるような過剰なエッチングになるとメッキ外観不良の原因となる。(5)活性化工程において、エッチング工程で形成された酸化膜を活性化液にて除去する。エッチング処理にて欠陥部の除去されたマグネシウム合金の表層には強固な酸化膜が存在しているためこのままでは良好な金属置換皮膜を得ることができないためである。活性化液は非金属酸化物で次第に汚染されるので、比重の差を利用して非金属酸化物を沈殿させて除去する。(6)中和工程において、活性化工程で形成された薄いマグネシウム化合物の皮膜を除去し、薄い酸化膜を形成させる。この酸化被膜が金属置換液に浸漬されたとき、溶解した皮膜物質がイオン化電位の差にて脱落し新たに亜鉛や錫やニッケルや銀などの金属イオンが析出してくる。(7)金属置換工程において、マグネシウム合金を金属置換液に浸漬すると、電位差によりアルカリ金属などと金属間の電位差のため無電解置換により瞬間的に金属イオンが付着し、マグネシウム合金の酸化被膜が溶解しながら金属イオンと置換する。マグネシウム合金はアルミニウムと同様に非常にメッキが難しい金属なので、健全なる表面処理が不可欠である。(8)ストライクメッキ工程において、マグネシウム合金に置換した金属を溶解させずメッキするためにシアン浴中で青化銅ストライクメッキする。ストライクメッキができれば、最終目的のメッキは通常のメッキ条件で行えるので容易である。(9)水洗工程において、完全にシアン浴を洗浄しマグネシウム合金の腐食を止める。(10)乾燥工程において、乾燥炉にて強制乾燥し、その後自然乾燥させて水洗後の水分を完全に乾燥させる。(11)塗装工程において、封孔処理を兼用してエポキシ系塗料などでポーラス部を埋める。ポーラス部に入り込んでいる水分を完全除去するため減圧室にて除去後塗装するのがよい。
特開平2−254179号広報「マグネシウム合金へのメッキ成膜方法」において、マグネシウム合金に半田付け性、電気伝導性、耐食性を付与するためのメッキ皮膜形成方法において、マグネシウム合金に亜鉛置換膜を施し電気分解による銅メッキ膜を形成した後無電解による銅メッキ膜を形成した後無電解銅メッキ皮膜を形成し、次に、上記無電解銅メッキ皮膜上に防錆バリアーとして無電解によるニッケル膜を形成した後無電解の金メッキ皮膜を形成し、さらに上記無電解金メッキ皮膜上に導電性を付与するための無電解による銅メッキ膜を形成し、しかる後に半田付け性、導電性、耐食性のための電気分解による所要の金メッキ膜を形成する方法が示されている。この方法は8工程を経てようやく所要のメッキ皮膜が得られており、工程数の増加による品質の不安定化、コストの高騰を招き、さらに、亜鉛、銅、ニッケル、金等、重金属を含んだ廃水の環境汚染などを考慮すると実用的な方法ではない。
特開昭61−67770号広報「マグネシウム及びマグネシウム合金のメッキ法」において、めっき前処理として表面脱脂、化学エッチング、フッ化物処理、アルカリ中和の4工程をおこなう方法が示されている。前処理工程の増加は、めっき皮膜とマグネシウム合金の密着性を損なう生成物の発生を招き品質が不安定になるとともに処理コストの増加につながる。また、塩水噴霧試験で
150時間以上耐えるためには、最初に下地メッキとしてpH10でのアルカリ側の無電解ニッケルめっきをおこない、つぎに、酸性の無電解ニッケルめっきを施す必要があり、さらなる品質の不安定化、コストの高騰の原因となる。
特開2007−138257号公報「マグネシウム合金合金材の製造方法、マグネシウム合金材、これを用いて製造された筐体」によると、マグネシウム合金に、Mg酸化膜エッチング、無電解Niメッキ及び無電解Alメッキを施す方法が提案されている。Mg酸化膜のエッチングは、一次及び二次エッチングにより行いその後パラジウム活性化液による活性化処理が行われる。無電解Alメッキは、ジメチルスルホンを溶媒とし、無水塩化アルミニウムを溶質として電解液を用いる。この方法で使用するパラジウム活性液は貴金属を含有しているために高価である。さらに商品名で表記されている活性化剤は成分が不明である。
特開2000−160347号広報「マグネシウム合金への無電解メッキ方法」によると、脱脂後従来のダウ法や坂田法のような化学ケミカル処理を用いるのではなく、パラジウム触媒(例えば、pH5のアミン系パラジウム)にてパラジウム置換により下地処理する方法が示されている。パラジウム塩として塩化パラジウム(PdCL2)、硫酸パラジウム(PdSO4)、硝酸パラジウム(PdNO3)、臭化パラジウム(PdBr2)の内少なくとも一つとしているが、アミン系パラジウムと正確に記載しているにもかかわらずパラジウム塩でもよいとしている。例えば、アミン系は、CH3・NH3(メチルアミン)+PdCL2や(CH3)2NH(ジメチルアミン)+PdCL2と示すべきである。又、CH3・NH3+PdCL2→CH3NH2HCL(ジメチル塩酸塩)+Pdである。メチルアミン塩酸塩は活性剤とエッチングの兼用をするとしているが明記されていない。
特開2006−161155号広報「マグネシウム合金の高耐食被膜形成方法」において、非水溶液としてテトラヒドロフロン(C4H8O)、ジメチルスルホン、ジエチルエーテル(C2H5OC2H2)、トルエン(CH3C6H5)などが電解メッキ液として使用されている。メッキ前処理溶液として非水が使用されているわけではない。電解メッキ液の例として、ジメチルスルホンを溶媒として、無水塩化アルミニウムを溶質としたものを用い、そのモル比はジメチルスルホン5:塩化アルミニウム1とし、5
0 ℃ 及び8 0 ℃ で2 時間ずつ加熱した後に1 1 0 ℃ まで昇温することによりめっき液を作成している。このメッキ液の作成方法は液体フラックスの生成方法とまったく異なるものである。又、例えば、液体フラックスで使用しているメタノール(CH3OH)と比較すると5〜15倍程度コスト高となる。
特開2003−73843号広報「マグネシウム合金素材の無電解液ニッケルメッキ方法」において、脱脂及びエッチングはダウ法や坂田法のような化学ケミカルでありその後電解メッキした後、ベーキング(ベーキング温度不明)によりHv600の硬度としている。ベーキング温度を指定硬度から推定すると450±30℃程度に見積もられる。この温度ではマグネシウム合金は軟化してしまう。このような温度領域での硬度アップはかえって危険であり採用しがたい方法である。
特開2006−2239号広報「マグネシウム合金のメッキ皮膜形成方法」において、アンモニア系又はアミン系で脱脂兼用陽極処理して、電解エッチングの2段階エッチングする方法が示されている。溶液が非水でないため陽極処理に対する酸化膜がMgOかMgOHかでメッキ条件が変わることから電解エッチング溶液を無電解Ni−Pメッキ溶液としていが、液の疲労が早くコスト高となる。脱脂兼エッチングにフッ化物や塩化物を使用せずアルカリ金属塩やリン酸塩でpH7〜12のエッチング液としている。メッキ液もpH10〜11のアルカリ液である。脱脂兼エッチング液はpH8であるが、むしろフッ化物を入れて生成した方が簡単である。短時間処理1〜2minであればフッ化物の方が効率よくエッチングできる。又、エッチングやメッキ時間が明確でないため再現性に乏しい。アルカリでもマグネシウム合金の溶解速度は速いことから、むしろ酸(pH1〜6)を使えば短時間で変色(灰色ないしは黒っぽくなる)のないエッチングやメッキは可能である。
特開2006−233245号広報「マグネシウム合金又はマグネシウム合金からなる製品及びその製造方法」において、アルカリ溶液(アンモニア+リン酸)の従来技術に対して金属イオンとしてマンガンや銅を新たに加えた溶液である。リン酸マンガン8水和物(Mn3(PO4)2・8H2O)、リン酸カルシウム(Ca3PO4)として取り入れているが化成処理としての浸漬時間が明示されていない。リン酸を添加しているので3min以上浸漬すると溶解する恐れがある。又、アルカリ溶液中でどのように亜鉛置換するか明示されていない。
特開2009−249701号広報「マグネシウム合金部材及び高耐食皮膜形成方法」において、マグネシウム合金から形成した導電性化成処理皮膜上に亜鉛メッキ皮膜を施し、さらに、アルミニウムメッキ皮膜を形成し、さらにその上に酸化被膜を形成したマグネシウム合金が示されている。導電性化成皮膜は亜鉛メッキの下地として重要であるがクラックが入りやすい欠点があった。良好な亜鉛メッキやアルミニウムメッキ皮膜を形成しても導電性化成皮膜が付着力、耐久性に乏しく信頼性のある耐食皮膜を形成できなかった。
特開2012−57225号広報「メッキ前処理法」において、アルミニウム合金製品の表面に亜鉛下地皮膜を形成するメッキ前処理方法において、アルミニウム合金製品の表面に亜鉛置換処理液に浸漬して粗い亜鉛皮膜を形成し、この粗い亜鉛皮膜が形成されたアルミニウム合金製品を陽極として電解を行い、Al−O−Zn被膜を形成するメッキ前処理方法が示されている。この方法において、前処理液は水溶液を用いているために液中酸素による酸化膜が形成され亜鉛皮膜の付着力が小さい問題があった。
非特許文献01「非水溶液による電気メッキ」や非特許文献02「電気アルミニウムメッキ膜の物性評価」には、非水溶媒やイオン液体で電気メッキする方法が示されているが、前処理を非水溶媒で実施する例はなかった。
第1の解決手段は、特許請求項1に示すように、マグネシウム合金にメッキする方法において、前記マグネシウム合金を液体フラックスに浸漬した後、無電解メッキもしくは電気メッキすることを特徴とするマグネシウム合金のメッキ方法である。
本発明の対象とするマグネシウム合金素材は、展伸用合金ではAZ系(Mg-AL-Zn)ZK系(MG-Zn-Zr)などに適用できる。鋳造用合金ではAM系(Mg-AL)、AZ系(Mg-AL-Zn)、ZK系(Mg-Zn-Zr)、EZ系(Mg-RE-Zn)などに適用できる。代表的な展伸用合金としてはアルミニウム3%、亜鉛1%を含有するAZ31や代表的な鋳造用合金としてはアルミニウム9%、亜鉛1%を含有するAZ91に適用できる。
液体フラックスは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Se、Zn、Ni、Cu、Cr、Sn、Pd、Bi、W、Mo、Nb、Mnの原子の中から少なくとも2種類以上の原子からなる電解質を有機化合物からなる溶媒と混合し、30〜90万ガウスの磁場をかけた容器中で25アンペアの電流を流しながら溶解し、生成したものである。
例えば、特開2009−090368号広報「ガス切断用気化フラックス」における、「ロウ付けなどに使用するフラックスを適宜混合して前処理した混合フラックスを、アルコールやアセトンの溶媒に8〜25wt%混合して、超臨界装置内において温度300〜400℃、圧力34.3〜44.1MPaで溶解し液体フラックスを製造する方法を応用できる。特開2009−297782号広報「液体フラックスの製造方法及びその装置」おいて、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Zn、Seなどの原子の内、少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンなどの溶媒中で磁場をかけるとともに、該溶媒を攪拌しながら溶解して液体フラックスを製造する方法を応用できる。特開2010−100441号広報「液体フラックスの製造方法と製造装置及び液体フラックス」において、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Znの原子の内、少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールなどの溶媒を入れた容器中で、磁場をかけるとともに該溶媒を回転しながら溶解する液体フラックスの製造方法において、溶媒中に電極を挿入し電圧を付加するとともにパルス電圧を付加して液体フラックスを製造する方法を応用できる。特開2011−088180号広報「溶接用フラックスと溶接法」において、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Zn、Seなどの原子の内少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンの溶媒に溶解して液体フラックスを製造する方法を応用できる。特開2011−098367号広報「溶接肉盛り用フラックスと溶接肉盛り法」において、アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、B、C、N、O、Si、P、S、Cl、Zn、Seの原子の内少なくとも2種類以上の原子が結合してできている電解質をアルコールやアセトンの溶媒に溶解して液体フラックスを製造する方法を応用できる。特願2010−165565号広報「液体フラックス」において、カリウム(K)、ホウ素(B)、ナトリウム(Na)、カルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、窒素(N)のいずれかを含むフッ化物の中から1種もしくは2種以上の前記フッ化物を選択し、フッ素(F)含有量が30〜70wt%となるように調合した調合フッ化物をアルコールもしくはアセトンの溶媒に溶解して液体フラックスを製造する方法を応用できる。
液体フラックスの有機化合物からなる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2,3−プロパントリオール(グリセリン)、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、イソプロパノール、1−ドデカノール、エーテル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ホルムアルデイド、アセトアルデイド、アンモニア、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロホルム、クロルベンゼン、ニトロメタン、ニトロベンゼン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、アセトニトリル、ギ酸、酢酸、トリフルオル酢酸、ピロピオン酸、アクリル酸、メタクリル酸、パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シュウ酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、リンゴ酸などが使用できる。これらの有機化合物からなる液体を単体もしくは複数組み合わせて液体フラックスの溶媒として使用する。
液体フラックスの溶媒の特徴は水を添加しないことである。アルコール類などは不可避な水分を2〜3%含有しているがメッキ浴全体からすると微量でありメッキの品質には無害である。水分の含有を許容できないメッキにおいては、溶媒からあらかじめ蒸留や浸透法により水分を除去することができる。
液体フラックスに溶解する電解質は原子単体で混合するのではなく、複数の原子の化合物(電解質)を溶媒に溶解して生成する。例えば、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンは、フッ化物、塩化物、臭化物などの化合物として溶媒に溶解している。例えば、液体フラックスにフッ素を溶解する場合は、フッ化物を有機化合物であるアルコールやアセトンの溶媒に溶解して生成できる。フッ化物は例えば、フッ化カリウム(KF)、フッ化ナトリウム(NaF)、三フッ化ホウ素(BF3)、四フッ化珪素(SiF4)、酸性フッ化ナトリウム(NaHF2)、ホウフッ化カリウム(KBF4)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)、ホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)、テトラフルオロホウ酸(HBF4)、ケイフッ化カリウム(K2SiF6)、フッ化アルミナトリウム(液晶石、Na3ALF6)、酸性フッ化カリウム(HBF4)、フッ化アルミカリウム(カリ永晶石、K3ALF6)、ヘキサフルオロケイ酸(H2SiF6)、ケイフッ化ナトリウム(NaHF6)、ケイフッ化ナトリウム(NaHF6)などがある。
塩化物(クロライド)、臭化物(ブロマイド)、酸化物(オキサイド)、無機類、有機酸類、アミン・アミド類、有機ハロゲン類などの電解質も使用できる。塩化物としては塩化水素酸(HCl)、塩化カリウム(KCl)、塩化亜鉛(ZnCl)、塩化アンモニウム(NH4Cl)などがある。臭化物としては臭化水素酸(HBr)、臭化カリウム(KBr)、ヨウ化物としてはヨウ化アンモニウム(NH4I)などがある。
液体フラックスにB(ホウ素)を含有させる場合は、ホウ化物を溶媒に溶解する。ホウ化物はホウ素とそれより電気陰性度が小さい元素との間の電解質(化合物)の総称である。例えば、ホウ酸(H3BO3)、ホウ砂(Na2B4O7、酸化ホウ素(B2OB)、ホウ酸カリウム(K2B4O7)、ホウ酸トリメチル((CH3O)3B)、ホウフッ化水素酸(HBF4)、ホウフッ化アンモニウム(NH4BF4)、ホウフッ化リチウム(LiBF4)、ホウフッ化ナトリウム(NaBF4)などがある。
液体フラックス中に含有するリン化合物は、例えば、リン酸(H3PO3)やトリメチルホスフェート(P(OCH3)3)などを有機化合物であるアルコールやアセトンの溶媒に溶解して生成することができる。
亜鉛のような金属を液体フラックスに溶解する場合は、例えば、亜鉛化合物として、塩化亜鉛(ZnCL2)、塩素酸亜鉛、過酸化亜鉛、酸化亜鉛、ホウフッ化亜鉛(Zn(BF4)2)、ジエチル亜鉛、ジメチル亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、硫酸亜鉛、リン酸亜鉛、臭化亜鉛、硝酸亜鉛、テトラヒドロキソ亜鉛酸ナトリウム、フッ化亜鉛、モリブデン酸亜鉛などがある。
マグネシウム合金表面は自然酸化による酸化膜が生成するためマグネシウム合金のメッキは困難であった。従来のメッキはマグネシウム合金に関わらず、大部分が水溶液によるエッチングや皮膜形成などの前処理後、水溶液による無電解メッキや電気メッキであった。この方法では、水の電気分解のため水素と酸素が発生し液中酸化となり、MgOやMgOHとなる反応が優先するため置換メッキが完了したものでない限りメッキは不可能であった。MgOやMgOHなどの酸化膜を瞬間に除去するためには、単純に強酸中で処理すればよいが、酸化膜を除去した瞬間に置換メッキすることは不可能であった。このためアルカリ浴を用いた多種多様な前処理工程を経てメッキ前皮膜を形成していた。
マグネシウム合金やアルミニウムの電析電位は水素発生の電位より卑であることから、従来のように水溶液を用いた前処理を踏襲する限り信頼性の高いメッキを具現化することは困難である。マグネシウム合金のメッキ前処理で非水液が採用されなかった理由は、(1)非水液の中に複数の電解質を自在に最大濃度40wt%程度まで溶解する技術がなかったこと、(2)有機化合物からなる溶媒を使用するため、通電時の火花着火による火災の恐れがあるためであった。従来の非水液は、火災対策として、トルエン(CH3C6H5)+フッ化ナトリウム(NaF)+トリエチルアルミニウム((C2H5)AL)などのイオン液を最大15v%程度にて発火しにくい溶液として使用していた。あるいは、ジメチルスルホン(CH3SO2CH3)と塩化アルミニウム(ALCL3)を10:3の割合で混合し、反応熱にて溶解した溶液にアンモニウム塩(CH3)NH4CLを添加して最大25%の濃度とするイオン液で使用していた。これらの液は極めて高価であり実用性を欠いていた。又、これらの液にマグネシウム合金メッキの前処理に必要な原子を自在に溶解させる技術はなく、前処理本来の脱脂、エッチング、金属置換メッキなどの機能を果たすことができなかった。
本発明で使用する液体フラックスは、例えば、有機化合物であるメタノール(CH3OH)を溶媒として無機化合物(電解質)を、最大40wt%を混合し、30〜90万ガウスの高磁界をかけ、25アンペアの電流を通電しながら撹拌して生成する。本発明によるマグネシウム合金メッキにおいては、脱脂、中和、エッチング、金属置換メッキまでの全ての前処理工程を液体フラックス中で処理する。溶媒としてアルコールやアセトンなどの引火性の高い溶液を使用するが、前処理工程においては全く通電の必要がなく、静電気防止に注意することで火花による発火・火災の問題はない。
マグネシウム合金のメッキは一般的にダウプロセスを基本として、脱脂→水洗→エッチング→水洗→活性化→水洗→中和→亜鉛置換→水洗→酸活性→水洗→銅ストライクメッキ(青化銅ストライクメッキ)→水洗に示されるような工程を経ている。液体フラックスは、(1)水を一切使用しない、(2)あらゆる原子を溶解できる、(3)pHを自由に調整できる特性を有している。そのため、ダウプロセスのすべてを液体フラックスで処理することが可能であり、しかも品質の良い優れた処理が可能であり、さらにこの工程を短縮することができる。
液体フラックスによる脱脂、エッチング、金属置換メッキ処理は、従来の陽極処理のように厚い膜が形成されないため、簡単に酸化膜を除去すると同時に金属置換メッキが可能となった。この交換をするのが強制的に発生する超微細なる水素の泡であり通電の必要なく確実にストライクメッキと同等な金属置換メッキを可能とした。そのため、介在物の存在も発生もない安定した状態で金属置換メッキ(ストライクメッキ)が可能となりメッキの膨れ防止効果も顕著である。
従来の電気ストライクメッキの場合は、マグネシウムのイオン化傾向が大きいためマグネシウムの溶出とニッケルの析出が同時に進行するため、又、水溶液の電気分解による水素と酸素のため発生する酸素は強力なOHとなるため陽極処理に近い反応となる。そのため、電気メッキニッケル層にピンホールができやすいことが最大の欠点であった。即ち、電気メッキでマグネシウムやマグネシウム合金に強力なメッキ層が作れないことがマグネシウム合金の工業利用拡大を阻害していた。本発明では、液体フラックスを使用することにより、マグネシウム合金の非水無電解金属置換メッキが可能となった。従来の電気ストライクメッキに代わるものであり、無電解ストライクメッキを具現化した。
前処理液体フラックスは、脱脂用としてpH8の弱アルカリ液体フラックス、中和用のpH7の中性液体フラックス、エッチング用のpH5の弱酸液体フラックス、ストライクメッキ(金属置換メッキ)用のpH5の弱酸液体フラックスを使用するのがよい。液体フラックス中でもストライクメッキと同時に陽極酸化は確実に発生しているが、Li、K、Na、Caなどがこれら酸化エッチング後すぐ入れ替わるため無酸化に近い状態でストライクメッキが可能である。
本発明による液体フラックス方式を用いたマグネシウム合金への耐食性メッキは密着性に優れている。無電解ストライクメッキ処理後は、無電解Ni−Pメッキ後、350℃で1〜2時間保持することで硬化膜Hv400±30膜も作ることが可能である。又、無電解ストライクメッキ表面にあらゆる金属メッキが可能となった。
メッキを施工するマグネシウム合金素材はその履歴より様々な汚れが付着している。例えば、プレス工程のバリ、鋳造時の離型剤、研磨剤付着、置換金属、電解溶液、無機酸や有機酸付着、酸化被膜などを100%除去しないとメッキ後、膨れは直後よりも数日経過して発生する場合が多いため強アルカリや強酸エッチングは危険である。液体フラックスはpH5〜8であり、マグネシウム合金の表面を極力平滑に保持することを考えた処理法である。
マグネシウム合金素材上の付着物を除去できたとしても、ピンホールなどの電解質溶液が閉じ込められるとメッキ後に後日酸化物生成となり盛り上がって膨れが発生する。特にマグネシウム鋳造合金に多く発生する。メッキ溶液に超音波を与えるか被通電体に振動を与えるかしてピンホール中に水素が入らないようにする必要がある。液体フラックスストライク置換液はpH5と弱酸でありかつ無電解で多量の水素を発生する主成分にて成り立っているため水素の対流にて表面張力除去するためこの泡が界面活性剤の役割も果たしている。そのため、通電無しでエッチング、ストライクメッキ(金属置換メッキ)を1〜2minの短時間ですべて完了する。脱脂:1min→中和:1min→エッチング:1〜2min→ストライクメッキ:1〜2min→シアン浴電気メッキ:10minの工程となる。略14〜16分で短時間に処理できる工程である。
第2の解決手段は特許請求項2に示すように、前記マグネシウム合金にメッキする方法において、前記マグネシウム合金を脱脂用の液体フラックスに浸漬して脱脂し、次いで、中和用の液体フラックスに浸漬して中和し、次いで、エッチング用の液体フラックスに浸漬してエッチングし、次いで、金属置換メッキ用の液体フラックスに浸漬して金属置換メッキした後、無電解メッキもしくは電気メッキするマグネシウム合金のメッキ方法である。
従来のメッキ液は通電媒体となる液に水溶液を用いている。マグネシウムやマグネシウム合金はメッキ中の水分と反応して極めて容易に酸化膜を形成する。酸化膜を除去しない限りメッキは不可能である。そのため、脱脂→中和→エッチング→金属置換メッキまでの全工程を液体フラックスによる非水液処理とする。液体フラックスは、メタノールなどの有機化合物の溶媒中に各種無機化合物を最大40wt%溶解させた液体フラックスを非水メッキ液として使用する。本発明による前処理工程は、脱脂(1〜2min)→中和(1min)→エッチング(1〜2min)→金属置換メッキ(ストライクメッキ)となり、従来のダウ法と比較すると工程が大幅に簡略化でき、処理時間も短時間の前処理が可能となった。次工程の電気メッキはダウ法ではストライクメッキとなっているが、本発明の前処理でストライクメッキは完了しているので通常の電気メッキが可能である。
脱脂用液体フラックスの生成法の一例について説明する。脱脂用液体フラックスは3つのステップを経て生成する。第1ステップでは3つのグループの液体フラックスを生成する。まず、メタノール(CH3OH):300cc、酸性フッ化カリウム(KHF)15g、4フッ化カリウム:15gを混合して、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら溶解し、1グループの液体フラックスを生成する。次に、グリセリン(C3H8O2):100cc、ホウ酸(H3BO3):20g、メタノール(CH3OH):200ccを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら溶解し、2グループの液体フラックスを生成する。次に、2水素リン酸カリウム:(KH2PO4):30g、メタノール(CH3OH):100cc、ジメチルアミン塩酸塩((C3H5)NH・HCL):100gを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら溶解し、3つのグループの液体フラックスを生成する。次に、1グループ、2グループ、3グループの液体フラックスを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら撹拌し700ccの第1ステップの液体フラックスを生成する。第1ステップの液体フラックスのpHは5である。第2ステップでは、3つのグループの液体フラックスを生成する。まず、メタノール(CH3OH):300cc、フッ化カリウム(KF):20g、酸性フッ化カリウム(KHF2):20gを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら溶解し、1グループの液体フラックスを生成する。次に、グリセリン(C3H8O2):100cc、ホウ酸(H3BO3):40g、アセトン(C3H6O):50ccを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら溶解し、2グループの液体フラックスを生成する。次に、エチレングリコール(C2H6O2):50cc、ホウ砂(Na2B4O7・10H2O):10g、ホウフッ化カリウム(K2B4F4):10g、メタノール(CH3OH):100ccを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら溶解し、3グループの液体フラックスを生成する。次に、1グループ、2グループ、3グループの液体フラックスを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら撹拌し700ccの第2ステップの液体フラックスを生成する。第2ステップの液体フラックスのpHは9である。第3ステップで、第1ステップの液体フラックスを400ccと第2ステップの液体フラックス200ccを混合することにより第3ステップの液体フラックスを生成する。第3ステップの液体フラックスが脱脂専用の液体フラックスである。脱脂用液体フラックスのpHは8である。マグネシウム合金を脱脂用液体フラックスに約1min浸漬するだけで十分な脱脂が可能である。
上記脱脂用液体フラックスの成分原子及びその含有割合は、K:15〜20wt%、Na:0.4〜1.6wt%、B:3〜9wt%、P:1〜5wt%、N:2〜7wt%、C:10〜15wt%、H:2〜8wt%、O:18〜30wt%、F:8〜20wt%、CL:12〜20wt%である。約30wt%の濃度でメタノール(CH3OH)に溶解している。pH8である。これは一例であり、脱脂用液体フラックスはマグネシウム合金の状態よって作り分けることが可能である。
中和用液体フラックスの生成法の一例について説明する。中和用液体フラックスは2つのステップを経て生成する。第1ステップでは2つのグループの液体フラックスを生成する。まず、グリセリン(C3H8O2):100cc、ホウ酸(H3BO3):50g、アセトン(C3H6O):50cc、メタノール(CH3OH):150ccを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら撹拌し1グループの液体フラックスを生成する。1グループの液体フラックスのpHは4である。次に、エチレングリコール(C2H6O2):200cc、ホウ砂(Na2B4O7・10H2O):160g、メタノール(CH3OH):300ccを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら撹拌し2グループの液体フラックスを生成する。2グループの液体フラックスのpHは10である。次に、第2ステップでは、1グループ、2グループの液体フラックスを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら撹拌し800ccの中和用液体フラックスを生成する。中和用液体フラックスのpHは7である。
上記中和用液体フラックスの成分原子及びその含有割合は、Na:10〜20wt%、B:10〜20wt%、H:1〜6wt%、O:50〜80wt%である。約30濃度で、メタノール(CH3OH):60v%(体積%)、グリセリン(C3H8O2):10v%、アセトン(C3H6O):10v%、エチレングリコール(C2H6O2):20v%を混合した溶媒に溶解している。pH7である。これは一例であり、中和用液体フラックスはマグネシウム合金の状態よって作り分けることが可能である。
エッチング用液体フラックスの生成法の一例について説明する。エッチング用液体フラックスは1つのステップで生成する。メタノール(CH3OH):550cc、臭化リチウム(LiBr・H2O):20g、リン酸リチウム(Li3PO4):10g、臭化亜鉛(ZnBr):10g、ホウ砂(Na2B4O7・10H2O):20g、リン酸アンモニウム(NH4PH2O):10g、フッ化水素アンモニウム(NH4FHF):10g、五臭化リン(PBr5):10g、尿素(NH2CONH2):20g、リン酸(H3PO3):50cc(85wt%)、リン酸(H3PO3):100cc(70wt%)を混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら撹拌し700ccのエッチング用液体フラックスを生成する。エッチング用液体フラックスのpHは5である。
上記エッチング用液体フラックスの成分原子及びその含有割合は、Na:0.5〜2wt%、B:2〜6wt%、P:5〜11wt%、N:3〜9wt%、C:6〜18wt%、H:5〜15wt%、O:20〜40wt%、F:2〜10wt%、Br:10〜30wt%、Zn:1〜3wt%、Li:0.5〜2wt%である。約20〜40wt%の濃度でメタノール(CH3OH)に溶解している。pH4〜6である。これは一例であり、エッチング用液体フラックスはマグネシウム合金の状態よって作り分けることが可能である。エッチング用原子としては、Br+F=12〜40wt%である。金属核付着用原子としては、Li+P+B+Na+Zn=9〜25wt%である。
上記金属置換メッキ用液体フラックスの生成法の一例について説明する。金属置換メッキ用液体フラックスは1つのステップで生成する。グリセリン(C3H8O2):100cc、臭化リチウム(LiBr・H2O):30g、リン酸(H3PO3):20g、リン酸エチル(P(OCH3)3):100cc、メタノール(CH3OH):200cc、硝酸ニッケル6水和物(Ni(NO3)2・6H2O):10g、塩化ニッケル6水和物(NiCL2・6H2O):30g、メタノール(CH3OH):100cc、臭化リン(PBr):10g、脱脂用液体フラックスの第1ステップの液体フラックス:100cc、脱脂用液体フラックスの第2ステップの液体フラックス:100ccを混合し、90万ガウスの磁界をかけた容器中で最大25アンペアの電流を流しながら撹拌し700ccの金属置換メッキ用液体フラックスを生成する。金属置換メッキ用液体フラックスのpHは5である。金属置換メッキ用液体フラックスの特徴は、(1)硝酸塩1に対して塩酸塩3の割合とすることで王水に近い反応をさせており、溶解しにくいリチウム(Li)を完全に溶解させている、(2)水素10wt%を含有する成分となっているため、無電解でありながらマグネシウム合金を浸漬した瞬間に電位差にて多量の水素の微細なる泡が発生することである。
上記金属置換メッキ用液体フラックスの成分原子及びその含有割合は、Na:1.5〜3wt%、B:3〜5wt%、P:5〜8wt%、N:0.1〜0.7wt%、C:1〜4wt%、H:10〜20wt%、O:20〜40wt%、F:1〜3wt%、Br:6〜20wt%、Zn:1〜5wt%、Li:3〜8wt%、CL:2〜6wt%、Ni:5〜15である。約20〜40wt%の濃度でメタノール(CH3OH)に溶解している。pH4〜6である。これは一例であり金属置換メッキ用液体フラックスはマグネシウム合金の状態よって作り分けることが可能である。エッチング用原子としては、Br+CL=8〜26wt%である。金属核付着用原子としては、Li+P+B+Na+Ni=17.5〜39wt%である。金属核付着用原子としては、Li+P+B+Na+Ni=22.4wt%である。この溶液の最大の特徴は超微細な水素が原子として10wt%以上入ることで連続して泡状に水素が発生することで被メッキ物に強制対流を作り出すことでイオン化傾向の小さい金属を還元してメッキとなる原子を析出させることを金属置換と表現している。イオン化傾向は、Li→K→Ca→Na→AL→Zn→Fe→Ni→Hg→Pb→Cu→Sn→Ag→Pt→Auである。マグネシウム合金に、Zn、Ni、Cu、Sn、Ag、Auをメッキするためには電位差が非常に大きい亜鉛や錫をメッキしようとすれば、Li、K、Ca、Naの反応帯電位の発生原子を使うことである。非水メッキ浴として高濃度でこれらを含有する無機化合物を従来の技術では溶解することができなかったためである。
図1はAZ91エッチング後のSEM分析値である。Mg原子の値が最大であるが、AL、Zn、Ca、K、C、Oが観察される。AL、Zn、CaはAZ91の含有成分であり当然ながら検出される。K、は液体フラックスの成分であり、脱脂段階からマグネシウム合金の表面に張り付いて酸化から保護していることがわかる。図2は金属置換メッキ後のSEM分析値である。置換メッキ後はMgの原子量は変化していないが、P、CL、Ni原子が新たに付着している。Niは金属置換メッキするために添加している原子であるが顕著にマグネシウム合金の表面にメッキされている。リンはマグネシウム合金の表面を保護する役割をするが、エッチングに寄与しているものの有害なCLが残留している。F、Brの痕跡は全く見られない。FやBrは気泡中の水素と反応しHFやHBrの形で浴中に溶け出していることがわかる。図3は電気銅メッキ後のSEM分析値である。Cu原子が顕著に分析される。Cu以外ではC、Oがみられるのみである。金属置換メッキ段階で残留していたCL原子は全く見られない。金属置換メッキ終了後、マグネシウム合金を乾燥させることにより水分とともに蒸発していることがわかる。FやBrはエッチングの段階で消失しているので全く問題ない。Mg原子が全く見られないことからピンホールのない優れたメッキを実現できた。このメッキに粘着テープを張り引き剥がしたところメッキは全く剥離しなかった。
第3の解決手段は特許請求項3に示すように、前記液体フラックスは、ハロゲン化合物と複数の金属化合物を、有機化合物からなる溶媒と混合し、磁界をかけて電流を流しながら溶解したものであるマグネシウム合金のメッキ方法である。
マグネシウム合金は酸化されやすいので、エッチングして酸化膜を除去してもすぐに新しい酸化膜が生じる。そのため、エッチング直後にエッチング地肌を保護することが必要である。ダウ法などでは、脱脂→水洗→エッチング→水洗→活性化→水洗→中和→亜鉛置換→水洗→酸活性→水洗→銅ストライクメッキの様な工程が一般的であり、エッチング後水洗して次工程に移行する。しかしながら、次工程に移行するときにはすでに酸化膜が形成されており、この後いかなる活性化処理して、亜鉛置換しても付着力の大きな置換メッキすることは不可能であった。
本発明では、エッチング用液体フラックスはエッチングを主体にしているがエッチングと同時に軽度の金属置換メッキができるように成分系を構成している。金属置換メッキ用液体フラックスは軽度のエッチングと同時に金属置換メッキができるように成分系を構成している。従来のマグネシウム合金のメッキではエッチング工程と金属置換メッキ工程が完全に分離されていたので、エッチングしてもその効果を十分に発揮できなかったのである。マグネシウム合金をエッチングした後洗浄して金属置換メッキしていたので、金属置換メッキする時はすでに酸化膜が形成されていた。酸化膜の上に金属置換メッキを無理やりしていたがために付着力の大きなメッキができなかったのである。本発明では、エッチング工程でエッチングしながら軽度の金属置換メッキを実施してエッチング後の地肌を保護するものである。又、金属置換メッキ工程では逆に軽度のエッチングをしながら金属置換メッキするのである。このように、エッチング地肌を金属置換メッキで保護し、その後、本格的な金属置換メッキを行うようにすることにより付着力の大きな金属置換メッキが可能となった。
エッチング用液体フラックスの成分原子及びその含有割合は、Na:0.5〜2.0wt%、B:2.0〜6.0wt%、P:5.0〜11.0wt%、N:3.0〜9.0wt%、C:6.0〜18.0wt%、H:5.0〜15.0wt%、O:20.0〜40.0wt%、F:2.0〜10.0wt%、Br:10.0〜30.0wt%、Zn:1.0〜3.0wt%、Li:0.5〜2.0wt%である。約20〜40wt%の濃度でメタノール(CH3OH)に溶解している。pH4〜6である。含有成分の種類や含有量はあくまでも一例であり、エッチング用液体フラックスはマグネシウム合金の状態よって作り分けることが可能である。エッチング用原子としては、Br+F=12〜40wt%である。金属核付着用原子としては、Li+P+B+Na+Zn=9〜25wt%である。
BrやFでエッチングすると同時にエッチング地肌を保護するために金属核付着用原子Li、P、B、Na、Znを溶解している。P、B、Naはエッチングと同時にエッチング地肌に付着して地肌を保護する。PやBやNaに補助されて金属原子のLiやZnが置換メッキされて地肌に張り付いて地肌を酸化から保護する。エッチング工程ではエッチングが主な目的であるが、エッチングされた地肌はすぐに酸化されるのでエッチングと同時に保護する必要がある。従来のマグネシウム合金のメッキではエッチング後洗浄や乾燥工程を経ているためその段階で再酸化されていた。
金属置換メッキ用液体フラックスの成分原子及びその含有割合は、Na:1.5〜3.0wt%、B:3.0〜5.0wt%、P:5.0〜8.0wt%、N:0.1〜0.7wt%、C:1.0〜4.0wt%、H:10.0〜20.0wt%、O:20.0〜40.0wt%、F:1.0〜3.0wt%、Br:6.0〜20.0wt%、Zn:1.0〜5.0wt%、Li:3.0〜8.0wt%、CL:2.0〜6.0wt%、Ni:5.0〜15.0である。約20〜40wt%の濃度でメタノール(CH3OH)に溶解している。pH4〜6である。含有成分の種類や含有量はあくまでも一例であり、エッチング用液体フラックスはマグネシウム合金の状態よって作り分けることが可能である。エッチング用原子としては、Br+CL=8〜26wt%である。金属核付着用原子としては、Li+P+B+Na+Ni=17.5〜39wt%である。
前工程のエッチング工程でマグネシウム合金はエッチングされ金属皮膜が形成されているが完全に被覆されているわけではなくピンホールや被覆斑が生じている。特にピンホールは金属置換メッキの障害となるので再度エッチングして地肌を出す必要がある。又、金属置換メッキの上にも前工程の残液成分が汚染物として存在している。これをBrやCLできれいに除去すると同時に、R、B、Naで地肌や金属皮膜を保護し、さらにLiNiで金属置換メッキを行う。液体フラックスは強磁場の中で電流を流しながら各種の原子を同時に溶解できることから、エッチングや金属置換メッキのような全く異なる化学反応を同時に発生させることが可能である。
第4の解決手段は特許請求項4に示すように、請求項1から請求項3のいずれかに記載の液体フラックスは、複数のハロゲン化合物と複数の金属化合物を、有機化合物からなる溶媒と混合し、磁界をかけて電流を流しながら溶解したものである液体フラックスである。
液体フラックスの製造方法や成分は公知であるが、メッキ用の液体フラックスとして、ハロゲンを含有する化合物と金属置換メッキするための金属を含有する金属化合物を混合して、有機溶媒に溶解することを特定している。マグネシウム合金の前処理では、エッチングと金属置換メッキを同時に行わせることが必須であり、ハロゲンと金属原子の組み合わせが必須の条件となる。P、B、Naなどはマグネシウム合金の地肌を保護するとともに金属原子をマグネシウム合金に付着させるための触媒としての作用をする。しかしながら、触媒成分はP、B、Na以外にも多数あり自由な選択が可能である。
ハロゲン化合物には、PBr5、KBF4、KF、KHF2、NH4I、NaSiF6、ALCL2・6H2Oなどがある。金属化合物には、LiBrH2O、Li3PO4、Ni(NO3)2・6H2O、NiCL2・6H2O、ZnBr、CuCL2・2H2O、Cu(NO3)・3H2O、Cu(BF4)2などがある。又、補助(触媒)原子を含む化合物には、P(OCH3)3、H3PO4、Na2B4O7・10H2O、H3BO3、KH2PO4などがある。化合物にはハロゲンや金属原子を同時に含有する物があるので、組み合わせを工夫して種類を削減することができる。K、Si、Nなどの原子も補助原子として有効である。液体フラックスは、これらの化合物を適宜組み合わせて有機化合物からなる溶媒と混合し、30〜90万ガウスの磁界をかけて、25A程度の電流を流しながら撹拌し溶解して生成する。
第5の解決手段は特許請求項5に示すように、請求項1から請求項3記載のいずれかのマグネシウム合金のメッキ方法により、炭素鋼もしくはステンレスもしくはアルミニウムもしくはチタンのいずれかの金属材料にメッキする金属材料のメッキ方法である。
Mgのイオン化傾向は、アルミニウム、鉄、チタン、ニッケルなどの金属よりも大きいのでメッキが極めて困難であった。本発明の液体フラックスを前処理の使用することにより、マグネシウムよりもイオン化傾向の小さな金属にメッキするのは容易である。又、液体フラックスは水を一切使用しない液体なので、メッキ浴中において金属酸化が起きにくくなっているのでさらにメッキは容易である。