JP2014126629A - 光学素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】可視光領域において回折効率を高く保ったまま、回折効率の波長依存性を十分に低減する。
【解決手段】本発明による光学素子は、入射光束に位相差を発現させる位相差層を備え、位相差層は、相対的に低屈折率高分散な材料である第1の材料と、相対的に高屈折率低分散な材料である第2の材料とを用いて形成されており、第1の材料は、原料に、波長300nm以下の領域に吸収帯を有する物質と、波長800〜2500nmの領域に吸収帯または反射帯を有する物質とを少なくとも含み、位相差層の厚みにおいて、d線の内部透過率が80%以上であるとともに、d線の内部透過率に対し、波長300nmの内部透過率が50%以下、かつ波長1500nmの内部透過率が50%以下であり、アッベ数の値が5〜35の範囲内であることを特徴とする。
【選択図】図8

Description

本発明は、屈折率の異なる2つの材料を用いて形成される位相差層により生じる入射光束の位相差を利用して、入射光束に対して何らかの光学的作用を付与する光学素子に関する。
入射光束の位相差を利用して入射光束に対して光学的作用を付与する光学素子の例として、例えば、入射光束の位相差を利用して入射光束の少なくとも一部を回折させることにより入射光束に対して集光、発散、偏向等の光学的作用を与える回折光学素子がある。このような回折光学素子は、位相型の回折格子として作用する凹凸構造を備えている。この場合、回折格子として作用する凹凸構造が形成されている層が位相差層に相当する。
一眼レフカメラやコンパクトデジタルカメラ、携帯用のカメラといったデジタルカメラの光学系には、凹レンズや凸レンズといった光の屈折作用を用いた屈折レンズが多く用いられてきたが、このような撮像光学系において、屈折レンズの色収差による画質の劣化は、従来より大きな問題であった。
屈折レンズの色収差を補正するために、蛍石や異常分散材料等をレンズ材料に用いた色収差補正用レンズを光学系に組み込む等の対策がとられていたが、補正効果が十分でなかったり、光学系が大きくなったり、またコスト的に非常に高いものになるなど、実用化には未だ多くの課題を残していた。
近年では、回折レンズと呼ばれる、レンズ作用を有するように構成した回折光学素子を撮像光学系に組み込むことで、色収差の問題を解決しようという試みが数多くなされている。回折レンズは、光の回折現象を利用して光の集光や発散等を行うレンズであり、屈折レンズにはない特徴を有することで知られている。
例えば、回折レンズと屈折レンズとでは、入射光の波長変化に対する焦点距離の変化が異なる。具体的には、屈折レンズはアッベ数が正の値であるのに対して、回折レンズのアッベ数に相当する量は負の値である。このような回折レンズの光学特性を利用し、屈折レンズ光学系の一部に回折レンズを組み合わせることで、光学系の色収差の問題が解決できるとされている。
ところが、回折光学素子を用いれば、効果的に色収差を補正でき、また光学系を小さくできるが、光学系にフレアが生じて画質が劣化するという新たな問題が生じていた。フレアの原因の一つに、回折光学素子に回折効率が低い波長帯が存在することが挙げられる。すなわち、回折効率に波長依存性があるために、回折効率が高くない波長の光が入射すると目的の次数以外の光が発生し、それらが散乱光となってフレアを発生させていた。
特許文献1には、回折格子を形成する2種の材料の屈折率と分散の組み合わせによって、可視光領域における回折効率の波長依存性を低減させる例が示されている。
また、特許文献2には、回折格子の材料に、無機微粒子と樹脂材料とによるコンポジット材料を用いることにより、回折効率の波長依存性を低減させる例が示されている。
特開平10−268116号公報 特開2008−203821号公報
回折効率の波長依存性を低減するためには、回折格子の材料を高屈折率低分散材料と低屈折率高分散材料の組み合わせとし、使用する波長帯域に含まれる任意の波長λに対して、|n(λ)−n(λ)|・d/λの値を実質的に等しくすればよい。ここで、n(λ)は回折格子の一方の材料の波長λにおける屈折率を表し、n(λ)は回折格子の他方の材料の波長λにおける屈折率を表している。また、dは、回折格子の厚さを表している。
しかし、可視光領域(例えば、波長430nm〜650nm)の全域において99%以上の回折効率を確保しようとすると、高い異常分散特性を示す光学材料が必要となるが、そのような高い異常分散性を示す光学材料は、特殊な材料であるために高価であったり、またその材料を用いて回折構造を作成するのが非常に困難であったり、材料の耐久性、温度等の環境変動に対する光学特性の変化に対する耐性等が不十分であるなど、実用化に耐えうるものではなかった。
なお、特許文献1に記載されている光学材料は、材料の選択肢が非常に狭いだけでなく、緑の波長領域の回折効率が青の波長領域の回折効率に対して低くなっており、回折効率の波長依存性の低減効果が十分でない。このため、解像度の劣化を引き起こす可能性がある。
一方、特許文献2には、光学材料に透明導電体微粒子を用いることで、可視光領域において99%以上の回折効率が得られる旨が記載されている。しかし、透明導電体微粒子を用いた場合、その透明導電体微粒子が光を吸収することによって着色が見られたり、また可視光領域中に透過率が低くなる領域が発生するなどの問題があるが、特許文献2にはそのような透明導電体微粒子を用いた場合の問題について何ら開示されていない。
例えば、可視光領域中に透過率が低くなる領域があると、遮光の影響により光が散って回折効率が劣化することがわかっている。特に、高い異常分散性を持たせるために透明導電体微粒子を多く含ませる低屈折率高分散材料側においてそのような透過率の低下が生じる可能性が高い。しかし、特許文献2には、低屈折率高分散材料の例については、光学素子として十分な透過率を有していたとの記載だけで具体的な数値は示されていない。
なお、領域内における局所的な透過率の低下を防ぐために、透明導電体微粒子の含有量を減らすことも考えられる。しかし、透明導電体微粒子の含有量を減らせば、それに応じて材料の異常分散特性も低下するために、格子の高さを大きくしなければならず、回折格子を作成したときに領域全体で透過率が大きく低下してしまうという別の問題が生じる可能性がある。なお、組み合わせる材料との間で透過率を合わせれば、透過率差による回折効率の劣化は防げるが、光学系によっては着色や透過率の低下は無視できない問題である。
このように、回折格子の材料として見た場合、材料の異常分散性と透過率とは密接に関係しており、波長による透過率の変化や格子を作成した際の透過率を考慮せずに、異常分散特性と屈折率にだけ着目して材料の選定を行っても、回折効率の劣化や素子厚の増加、透過率の低下、色味の発生などを招くおそれがあり、十分でない。
本発明は、可視光領域において回折効率が高いまま、回折効率の波長依存性を十分に低減できる光学素子の提供を目的とする。また、本発明は、素子厚の増加や透過率の低下、色味の発生、温度変動耐性の劣化、作成難度の向上を抑えた上で、可視光領域において回折効率が高いまま、回折効率の波長依存性を十分に低減できる光学素子の提供を目的とする。
本発明による光学素子は、屈折率の異なる2つの材料を用いて形成される位相差層により生じる入射光束の位相差を利用して、入射光束に対して光学的作用を付与する光学素子であって、入射光束に位相差を発現させる位相差層を備え、位相差層は、相対的に低屈折率高分散な材料である第1の材料と、相対的に高屈折率低分散な材料である第2の材料とを用いて形成されており、第1の材料は、原料に、波長300nm以下の領域に吸収帯を有する物質と、波長800〜2500nmの領域に吸収帯または反射帯を有する物質とを少なくとも含み、位相差層の厚みにおいて、d線の内部透過率が80%以上であるとともに、d線の内部透過率に対し、波長300nmの内部透過率が50%以下、かつ波長1500nmの内部透過率が50%以下であり、アッベ数の値が5〜35の範囲内であることを特徴とする。
また、本発明の光学素子は、第1の材料の透過率をT1、第2の材料の透過率をT2とした場合に、少なくとも波長450nm〜600nmの範囲においてT1/T2>0.8を満たすものであってもよい。
また、第1の材料は、位相差層の厚みをd、当該材料の吸収係数をαとした場合に、α×d>−0.0223を満たすものであってもよい。
また、第1の材料は、位相差層の厚みにおいて、波長450nm〜600nmにおける最も高い透過率をTMAX、最も低い透過率をTMINとするとき、TMIN/TMAX>0.8を満たすものであってもよい。
また、第1の材料は、ドーパントが添加された透明導電体微粒子を利用したコンポジット材料であってもよい。
また、第2の材料は、マトリクスに樹脂材料を用い、ドーパントの量が1〜30mol%である透明導電体微粒子を利用したコンポジット材料であってもよい。
また、第2の材料は、材料系が異なるまたは同一材料系でドーパントの量が異なる2以上の透明導電体微粒子を利用したコンポジット材料であってもよい。
また、透明導電体微粒子は、GZO、ITO、ATO、PTO、AZOのいずれかを含んでいてもよい。
また、位相差層は、位相段差であってもよい。
また、位相差層は、回折格子であってもよい。
本発明によれば、可視光領域において回折効率が高いまま、その回折効率の波長依存性を十分に低減できる光学素子を提供できる。また、本発明によれば、素子厚の増加や透過率の低下、色味の発生、温度変動耐性の劣化、作成難度の向上を抑えた上で、可視光領域において回折効率が高いまま、回折効率の波長依存性を十分に低減できる光学素子を提供できる。
位相差層の例を示す説明図である。 位相差層の他の例を示す説明図である。 一般的な低屈折率高分散材料の波長分散特性の一例と本発明の光学素子の位相差層に用いる低屈折率高分散材料の波長分散特性の一例とを比較して示す説明図である。 吸収帯が屈折率に与える影響を模式的に示す説明図である。 低屈折率高分散材料のα×dが回折効率に与える影響を示すグラフである。 低屈折率高分散材料の透過率と高屈折率低分散材料の透過率の比であるT1/T2が回折効率に与える影響を示すグラフである。 実際に得た光学材料が示す光学特性を示す説明図である。 図7に示した例1〜8の透過率比率のスペクトルデータを示すグラフである。 図7に示した例1〜8の格子厚みでの透過率データを示すグラフである。 例9の透過率比率のスペクトルデータを示すグラフである。 例9の格子厚みでの透過率データを示すグラフである。 本発明の光学素子の例を示す構成図である。 回折レンズとして機能する回折光学素子10に形成される回折格子100の一例を模式的に示す模式上面図である。 回折光学素子10の他の例を示す構成図である。 回折光学素子10の他の例を示す構成図である。 回折光学素子を用いた色収差の補正原理を説明する説明図である。 回折光学素子を用いた色収差の補正原理を説明する説明図である。 第1の実施例の回折光学素子10の回折効率を示すグラフである。 第1の実施例の回折光学素子10の回折格子部分の透過率データを示すグ 第2の実施例の回折光学素子10の回折効率を示すグラフである。 第2の実施例の回折光学素子10の回折格子部分の透過率データを示すグラフである。
まず、本発明の概要および発明原理について説明する。図1は、位相差層の例を示す説明図である。本発明において、「位相差層」とは位相差を発現させるよう構成された層をいう。図1には、屈折率の異なる光学材料により形成される光学材料層1と光学材料層2の境界面に高さdの段差(位相段差)3が設けられることによって、位相差層を形成している例が示されている。なお、図1には、位相段差によって区切られる2つの領域間で生じる光路差も模式的に示されている。図1に示すように、屈折率の異なる光学材料層の境界面に高さdの段差が設けられることによって、段差を挟む領域間で光の進行方向における2つの光学材料層の高さが異なるように構成されている場合、その段差を挟む領域に入射する光線間には光路差が生じる。このような波面の光路差が光の位相差となって表れる。なお、図1に示す例では、実際に位相差を生じさせている位相段差3が形成されている部分が「位相差層」である。
また、図2は、位相差層の他の例を示す説明図である。図2には、位相差層として回折格子100を備えた光学素子10の例が示されている。なお、図2(a)には、透明基板11上に、屈折率の異なる光学材料により形成される光学材料層12と光学材料層13とによって構成される断面が矩形波状の回折格子100が形成されている回折光学素子10が示されている。また、図2(b)には、透明基板11上に、屈折率の異なる光学材料により形成される光学材料層12と光学材料層13とによって構成される断面が鋸歯状の回折格子100が形成されている回折光学素子10が示されている。位相型の回折格子は、格子の1周期分(図中のP参照)で入射光に位相差を与えることで、光を回折させる。なお、図2に示す例では、回折格子100が形成されている部分が「位相差層」である。
回折格子の回折効率の波長依存性を小さくするためには、既に説明したように、相対的に高屈折率低分散な材料と、相対的に低屈折率高分散な材料とを組み合わせて位相差層を形成すればよい。また、高分散材料の異常分散が強ければ強いほど、位相差層の厚さを小さく保ったまま、より効果的に回折効率の波長依存性を低減できる。以下では、相対的に高屈折率低分散な材料を単に「高屈折率低分散材料」といい、相対的に高屈折率低分散な材料を単に「低屈折率高分散材料」という。
図3は、一般に低屈折率高分散材料と呼ばれる光学材料の波長分散特性の一例と本発明の光学素子の位相差層に用いる低屈折率高分散材料の波長分散特性の一例とを比較して示す説明図である。なお、図3において、実線で示す材料1’が本発明の光学素子が位相差層に用いる低屈折率高分散材料の例であり、一点鎖線で示す材料1が一般に低屈折率高分散材料と呼ばれる光学材料の例である。また、二点鎖線で示す材料2は一般的に高屈折率低分散材料と呼ばれる光学材料の例である。なお、図3では、材料1を、特に材料1’との間でg線とC線が同じ屈折率になるような光学材料の例として示している。
図3に示すように、屈折率nは波長λによって変化する性質すなわち波長分散特性をもっている。また、光学材料によって波長分散特性は異なるため、単純に、低屈折率高分散材料と高屈折率低分散材料とを組み合わせただけでは、可視光領域においてΔnに対する波長の割合は一定にならない。
本発明の発明者は、光学材料として、原料に、紫外領域(具体的には、波長300nm以下の領域)に吸収帯を有する物質と、赤外領域(具体的には、波長800〜2500nmの領域)に吸収帯または反射帯を有する物質を含むものを用い、それら吸収帯または反射帯を有する物質の量や濃度、種類、組み合わせを調整すると、可視光領域における異常分散を制御できることを見いだした。また、そのような調整をしていく中で、透過率の分布すなわち波長依存性と得られる異常分散性とが密接な関係にあることを発見した。すなわち、光学材料の透過率の分布を制御することで、異常分散性を制御できることを見いだした。
目標とする異常分散性は、図3に材料1’として示したような、可視光領域における屈折率の波長分散特性が、より直線的な変化をするものである。すなわち、短波長側に向かって湾曲したカーブを描きながら上がっていくものではなく、より直線的に上がっていくものがよい。これは、波長450nm付近と波長600〜650nmの屈折率差はそのままに、波長500〜550nmでの屈折率差が小さくなるように低屈折率材料の異常分散性を制御すればよい。このような異常分散性を示す低屈折率材料が得られれば、一般的な高屈折率低分散材料と組み合わせた場合であっても、可視光領域全域に渡ってΔnに対する波長の割合をより一定に近づけられる。
例えば、2層積層型の光学回折素子の回折効率は、回折格子に用いる2つの材料の屈折率の差Δnと、回折格子の高さdを掛けたものに、入射する光の波長λを割ったものが整数となる条件、すなわちΔnd/λ=m(mは0以外の整数)となる条件が最も高い状態となる。可視光領域全域にわたって高い回折効率を得るためには、それらの領域内においてΔnd/λが略m(例えば、m±0.1以内)であると好ましい。そこで、より直線的な異常分散性を示す低屈折率材料が得られれば、波長が長くなるのに対してΔnを大きくできるので、両材料の波長に対する屈折率の変化を打ち消しあって可視光領域全域にわたってΔnd/λをm付近にできる。すると、Δnd/λの波長依存性が十分に低減されて、可視光領域全域にわたって高い回折効率が得られる。
また、位相段差により生じる波面の光路差は、位相段差を構成する2つの光学層の実効的な屈折率nの差(Δn)と段差の高さの積に等しい。したがって、上記条件を満たせば、位相段差により発生する入射光束の位相差の波長依存性も低減できる。
なお、mの値は、±1であると回折格子の高さを下げられ、製造が容易になり、かつ入射角度依存性が小さくなりやすいため好ましく、良好な特性を得られやすい。しかし、mの値が±1以外の場合においても、回折格子を集光レンズもしくは発散レンズとして機能させ、光学系のレンズ枚数の削減や光学系の全長を小さくする場合において、m≒±1の場合に対し、フレアの発生の状況が変わるため、光学系によってはより最適な状況が得られる場合がある。したがって、最もよいmの値を選択でき好ましい。なお、|m|が大きくなりすぎると格子高さが大きくなりすぎるため、作成が困難なことや、フレアが発生しやすいため、|m|≦5であるとよい。
以下、具体的な調整方法について説明する。本発明の発明者は、透過率の分布の変化と異常分散性の変化との関係の調査を進めるうちに、紫外領域に吸収のピークをもたせ、かつ赤外領域に反射または吸収のピークをもたせると、上述したような、より直線的な波長分散曲線を描く強い異常分散性が得られることを見いだした。
例えば、低屈折率高分散材料の一つに、樹脂材料と透明導電体微粒子とによるコンポジット材料が挙げられるが、このコンポジット材料が強い異常分散性を示すのは、透明導電体微粒子の多くが紫外領域だけでなく赤外領域にも吸収ピークを持っているからである。なお、樹脂材料とのコンポジット材料とするのは、透明導電体微粒子が総じて高い屈折率を持っているからである。すなわち、屈折率が相対的に低い樹脂材料をマトリクスに用いることで低屈折率化を図っている。
透明導電体微粒子の多くが紫外領域だけでなく赤外領域にも吸収ピークを持つのは、スズ(Sn)やガリウム(Ga)、リン(P)、アンチモン(Sb)といった不純物がドーパントとして添加されている透明半導体を材料としているためである。すなわち、透明半導体の多くは、母体材料に紫外領域に吸収帯を有する物質が用いられていることに加えて、ドーパントを添加することで赤外領域にも吸収帯を有するようになるためである。ドーパントを添加する理由は、電気物性的には半導体に導電性を付与するためであるが、光学物性的には、異常分散を強くする効果と吸収を大きくする効果がある。
そのため、ドーパントの量が増えると、同材料系で同様の作成手法にて微粒子を作成した場合と比べて、異常分散性が強くなる一方、吸収や着色も強くなっていき、それを用いた光学材料の光学特性において透過率の劣化を引き起こしたり、またそれにより回折効率が劣化するといった悪影響が発生する。
そこで、本発明では、透明導電体微粒子に添加されるドーパントの量やマトリクスに混ぜ込む透明導電体微粒子の濃度、種類、組み合わせ等を調整する際の指標として、得られる光学材料の光学特性に以下の条件を与えることで、このような悪影響の発生を防ぎつつ、回折効率の波長依存性を十分低減できる光学材料を得られるようにする。
ここで、導電性微粒子のドーパントの量やマトリクスに混ぜ込む導電性微粒子の濃度、種類、組み合わせを調整することは、紫外領域の吸収帯および赤外領域の吸収帯または反射帯のピーク波長やその強度を調整することを意味する。したがって、そのような調整が可能な原料を用いた光学材料であればよく、導電性微粒子を用いたコンポジット材料に限らない。すなわち、原料に、紫外領域に吸収帯を有する物質(以下、紫外吸収物質という。)と、赤外領域に吸収帯または反射帯を有する物質(以下、赤外吸収物質という。)とを用いた光学材料であれば、以下の条件を満たすように調整することで、同様の効果が得られるものと考えられる。
以下、本発明の位相差層に用いる光学材料、特に高分散側の光学材料である低屈折率高分散材料の光学特性の条件について説明する。まず、低屈折率高分散材料は、位相差層の厚みにおける透過率に関して、以下に示す条件を満たすものとする。第1に、d線の内部透過率が80%以上であること。第2に、d線の内部透過率に対し、波長300nmの内部透過率が50%以下であり、かつ波長1500nmの内部透過率が50%以下であること。ここで、内部透過率とは、界面による反射等を含まない、素材自体の透過率である。なお、上記第1の条件に関して、波長450nm〜660nmの波長帯域における内部透過率が80%以上であるとより好ましい。また、上記第2の条件に関して、透過率のピークが400nm〜700nmであるとより好ましい。以下、透過率の分布に関する上記条件を、条件(A)という。
条件(A)では、紫外光と赤外光に吸収があることを主な条件としているが、それにより屈折率の波長による変化が通常分散(例えば、紫外光にのみ吸収がある光学材料の平均的な分散特性)に比べてより直線的になる理由は以下のように考えられる。
図4は、吸収帯が屈折率に与える影響を模式的に示す説明図である。なお、図4(a)は、近赤外領域(例えば、波長800nm〜2500nm)に吸収がない通常材料の可視光領域および赤外領域における一般的な屈折率および透過率の例を模式的に示す説明図である。また、図4(b)は、図4(a)に示した材料にさらに吸収をもたせた場合の屈折率および透過率の変化の例を模式的に示す説明図である。
図4(a)に示すように、近赤外領域に吸収がない場合、透過率は高い値で一定に保たれており、従って透明性を有するが、屈折率は湾曲したカーブを描きながら下がる変化となっている。なお、この屈折率の変化は、波長が長くなると変化は小さくなるような変化である。
一方、図4(b)に示すように、近赤外領域に吸収がある場合、透過率はその吸収がある領域すなわち吸収帯で急激に低下する。また、屈折率は吸収帯付近で急激に変化する(図中のAおよびBで囲った範囲を参照。)。吸収帯付近で異常分散が生じることは一般に知られているが、具体的に屈折率がどのように変化するかを調べてみると、次のような傾向が見られた。すなわち、屈折率は、吸収帯のより短波長側では吸収帯に近づくほど急激に低下し、吸収帯ではその急激に低下した屈折率が直線的に増加し、そして吸収帯のより長波長側では吸収帯で急激に増加した影響により該吸収帯に近い領域で急激な低下がみられるがその後は吸収帯から遠ざかるほど緩やかに低下する。ここで、吸収帯付近よりも少し離れた領域(特に、より短波長側)の変化を見てみると、吸収帯付近の急激な変化に引っ張られるように吸収帯がない場合と比べて屈折率の変化が大きくなっている(図中のCで囲った範囲を参照。)。このように、吸収帯があると、屈折率の波長分散特性としては、吸収帯に近づくにつれて変化が大きくなる作用を受ける。なお、変化の度合いは吸収が大きいほど大きい。
図4(c)は、紫外領域と赤外領域に吸収帯がある場合の屈折率の波長による変化の例を模式的に示す説明図である。図4(c)に示すように、紫外領域と赤外領域とに吸収帯があると、それぞれの吸収帯からの影響を受けて、紫外領域の吸収帯付近では屈折率の変化が大きくなり、そこから離れるにつれて屈折率の変化は小さくなるが、そこからまた赤外領域の吸収帯に近づくにつれて屈折率の変化が大きくなる作用を受ける。このような作用を受けるために、紫外領域と赤外領域の間にある可視光領域では、より直線に近い屈折率の変化が得られる。なお、図4(c)では、比較のためにさらに図3に示した材料1の例も合わせて示している。
なお、このような異常分散特性は吸収帯に限らず、同様な透過率低下をもたらす反射帯によっても生じる。反射帯近傍には異常分散と類似した形の位相の変調が生じ、その光の位相の変調が屈折率の異常分散として表れるからである。
赤外領域(特に、1000nm〜2000nm)に吸収または反射のピークがあると、赤外領域付近の屈折率分散における異常分散性が強くなり、その影響により、600nm以降のΔnd/λの波長依存性の改善の効果が高くなる。また、600nmよりも短波長側に対しても、赤外近くの波長域に与える影響よりは小さいものの無視できない影響を与える。なお、吸収、反射が大きいほど与える影響は大きい。このような影響およびその度合いを精査した結果、条件(A)に示した光学特性を有する低屈折率高分散材料であれば、可視光領域において十分な透過率を示しつつ、可視光領域における屈折率分散が波長依存性を低減する傾向、具体的にはより直線的な変化を示す傾向を得られる。屈折率分散が直線的であればあるほど高い異常分散性を有していると言える。なお、高い異常分散性を有しているすなわち高分散材料であることの条件として、アッベ数が5〜35の範囲内であることを条件(A)の第3の条件としてもよい。
また、材料の吸収が大きいと遮光の影響により回折効率が劣化するので、そのような劣化を抑制するために、低屈折率高分散材料は、さらに以下に示す条件を満たすことが好ましい。すなわち、位相差層の厚みをd、当該材料の吸収係数をαとすると、波長450nm〜600nmでα×d>−0.225を満たす。なお、波長430nm〜660nmでα×d>−0.16を満たすとより好ましい。また、波長400〜700nmでα×d>−0.10を満たすとさらに好ましい。以下、このような厚みと吸収係数によって示される上記条件を、条件(B)という。
以下、波長範囲に関して、上記で示した波長450nm〜600nmを第1の波長範囲という。また、波長430nm〜660nmを第2の波長範囲という。また、波長400〜700nmを第3の波長範囲という。なお、第1の波長範囲は、実用上十分な範囲としての波長範囲である。また、第2の波長範囲は、より好ましい範囲としての波長範囲である。また、第3の波長範囲は、さらに好ましい範囲としての波長範囲である。
図5は、低屈折率高分散材料のα×dが回折効率に与える影響を示すグラフである。なお、図5では、組み合わせる高屈折率低分散材料に吸収が無い場合の低屈折率高分散材料のα×dが回折効率に与える影響を示している。ここで、回折格子は、Δnd/λ=1となるように屈折率が調整されたブレーズ型回折格子であり、回折格子のピッチが波長に対して十分に大きいものを想定している。また、回折効率の劣化量とは、回折格子から透過される光の合計を100%とした際に、所望の次数の回折光以外の光として出射された光の合計である。図5のグラフより、α×dが小さくなると、回折効率が劣化していくことがわかる。また、回折効率劣化量を0.1%以下としたい場合には、α×d>−0.0225を満たせばよいことがわかる。また、回折効率劣化量を0.05%以下としたい場合には、α×d>−0.016を満たせばよいことがわかる。また、回折効率劣化量を0.025%以下としたい場合には、α×d>−0.10を満たせばよいことがわかる。
なお、条件(B)は、次に示す条件に置き換えてもよい。すなわち、位相差層における低屈折率高分散材料の透過率をT1とし、組み合わせる高屈折率低分散材料の透過率をT2とすると、第1の波長範囲でT1/T2≧0.8を満たす。なお、第2の波長範囲でT1/T2≧0.9を満たすとより好ましい。また、第3の波長範囲でT1/T2≧0.95を満たすとさらに好ましい。以下、このような組み合わせる材料間における透過率の比によって示される条件を、条件(C)という。
図6は、T1/T2が回折効率に与える影響を示すグラフである。なお、図6のグラフは、組み合わせる高屈折率低分散材料に吸収が無い場合のT1/T2が回折効率に与える影響を示している。回折格子や回折効率の劣化量に関しては図5の場合と同様である。図6のグラフより、T1/T2が小さくなると、回折効率が劣化していくことがわかる。また、回折効率劣化量を0.1%以下としたい場合には、T1/T2≧0.8を満たせばよいことがわかる。また、回折効率劣化量を0.05%以下としたい場合には、T1/T2≧0.85を満たせばよいことがわかる。また、回折効率劣化量を0.025%以下としたい場合には、T1/T2≧0.9を満たせばよいことがわかる。なお、条件(C)においてT2=100%としたときの低屈折率高分散材料の透過率の許容値を厚みと吸収係数で規定したものが、条件(B)である。
条件(B)では、光学素子において透過率はなるべく高い方がよいため、組み合わせる材料を可視光領域において実質的に吸収がない、すなわちT2=100%として低屈折率高分散材料の条件を示しているが、T2は100%でなくてもよい。その場合は、条件(C)を基準にして組み合わせる2つの材料の透過率の差を小さくすれば、遮光の影響による位相差層の光学的効率の劣化を抑制できる。
このようにして高い異常分散性を有する材料を得ることで、位相差層に用いた場合に、可視光領域において回折効率が高いまま、回折効率の波長依存性を十分に低減できる。したがって、可視光領域全域にわたって高い回折効率を示す光学素子が得られる。なお、本発明において高い回折効率といった場合には、第1の波長範囲で99.0%以上をいう。なお、99.5%以上であればより好ましく、99.8%であればさらに好ましい。さらに、第2の波長範囲で99.0%以上であれば好ましく、99.5%以上であればより好ましく、99.8%であればさらに好ましい。さらに、第3の波長範囲で99.0%以上であれば好ましく、99.5%以上であればより好ましく、99.8%であればさらに好ましい。可視光領域全域で高い回折効率が得られれば、所望の次数以外の回折によるコントラストの低下や解像度の低下を十分に抑制できる。
なお、高い回折効率が得られても、各材料において透過率の波長依存性があると色味が発生し、光学素子として好ましくない場合がある。そこで、低屈折率高分散材料は、さらに位相差層の厚みにおける透過率に関して次に示す条件を満たすことが好ましい。すなわち、当該材料の対象とする波長範囲における最も高い透過率をTMAX、最も低い透過率をTMINとするとき、第1の波長範囲でTMIN/TMAX>0.8を満たすことが好ましい。なお、好ましくは、第2の波長範囲でTMIN/TMAX>0.85を満たすとよい。さらに好ましくは、第3の波長範囲でTMIN/TMAX>0.9を満たすとよい。以下、このような色味に関する条件を、条件(D)という。
次に、具体的な調整方法について説明する。調整方法は、例えば、紫外領域の吸収帯のピーク波長の位置や強度および赤外領域の吸収帯または反射帯のピーク波長の位置や強度の変位を見ながら、紫外吸収物質および赤外吸収物質の量や、それらを含む微粒子であればマトリクス材料に混ぜ込む微粒子の濃度、種類、組み合わせ等の調整である。
例えば、光学材料または光学材料に利用される微粒子には、可視光領域において高い透明性を示しつつ、紫外吸収性を持つすなわち紫外領域に吸収帯を有するものがある。そのような光学材料または微粒子に、赤外吸収物質をドーパントとして混ぜ込むまたは添加することにより、紫外領域と赤外領域に吸収のピークを持たせられる。その場合、ドーパントの量を増やすことで、赤外領域の吸収波長を短波長側に近づけられ、その結果、異常分散性を上昇できる。ただし、赤外吸収物質の量を増やしすぎると吸収が大きくなっていき、透明性を損なったり、着色する原因となる。そこで、上述の条件(少なくとも条件(A))を指標にして、ドーパントの量を調整していくことが好ましい。なお、導電体微粒子の場合、ドーパントの量は、1〜30mol%であるとよく、好ましくは1〜15mol%以内であるとよい。なお、ドーパントの量の調整だけでは上記の条件を満たせない場合には、ドーパントの種類、微粒子の種類、またはマトリクス材料に混ぜ込む微粒子の濃度等を調整すればよい。
光学材料の例としては、フツリン酸塩系ガラスにCuOを添加した光学ガラス、Cuや鉄系の錯体を含んだガラスや樹脂、タングステンブロンズ型の微粒子を利用したコンポジット材料、透明導電体微粒子を利用したコンポジット材料、赤外線吸収色素を含んだ樹脂材料等が挙げられる。
また、原料とする紫外吸収物質および赤外吸収物質は1種類に限らない。例えば、複数種類の微粒子を利用してもよい。その場合、微粒子の種類や組み合わせも含めて調整すればよい。複数種類の物質または微粒子を利用すれば、後述する薄膜等、別途手段を用いなくても低屈折率高分散材料単体で色味を低減でき、好ましい。例えば、微粒子の色味は、微粒子の種類を変えたり、ドーパントの量を制御することで制御可能である。ドーパントの量の制御としては、ドーパント量がゼロまたは少ないと透明または黄色を帯びていることが多く、そこからドーパント量を増すと緑、さらに増すと青と変化していく傾向が多く見られるため、こういった微粒子の色味を基にドーパントの量の調節を行ってもよい。
ドーパントの量と色味の変化の関係は、より具体的には以下の通りである。ドーパントの添加量を増加していくとバースタイン・モスシフトが大きくなっていき、ベースとなる透明半導体のバンドギャップを起因とする青紫・紫外領域の吸収波長が短波長側へシフトする。そのため、ドーパントの添加量を増加していくと青色の吸収は減少していく。また、ドーパントの添加量を増加していくと、キャリアの吸収に起因する赤外の吸収ピークが増大、吸収ピークの波長が短波長側へシフトしていく。吸収ピークの端部が可視光の赤色領域にも掛かってくると、赤色の吸収が他の波長に対して大きくなる。また、添加量をさらに増やすと緑色領域、青色領域と吸収の影響が及ぶ領域は短波長化していく。これらが同時に進行するが、透明半導体とドーパントの種類またその組み合わせによってどちらの現象がより顕著に見えるかは異なる。ただし、透明導電体の材料の多くは、元々青色領域の吸収がかなり小さいものを用いているため、微粒子の色味としては青緑から青へと変化することが多い。
また、原料に用いる物質によっては光学材料の屈折率が相対的に高くなってしまうことが考えられるため、そのような場合には屈折率が相対的に低い樹脂材料等をマトリクスに用いてコンポジット化してもよい。また、微粒子を利用する場合には、樹脂材料をマトリクスに用いることで、回折格子を作成する際に、インプリント、成型といったプロセスを利用でき、安価に正確な回折格子形状を得られる。
また、用いる微粒子の表面に、シランカップリング処理を施してもよい。その場合は、カップリングをするシランの種類により、分散性、耐湿性、温度特性、可視光の吸収の低減、吸収波長の調整、屈折率分散、HAZEの低減といった光学特性のいずれかまたはこのような光学特性の2以上を向上させられる。
微粒子表面とマトリクスの極性は近いほど、コンポジット化した際に微粒子が凝集する可能性が小さくなるため、極性を近くに調整するのが好ましい。この場合の表面は、微粒子の表面、もしくは、微粒子にシラン等でカップリング処理をなされている場合は、それらを含めて表面と考えればよい。また、マトリクスの極性の調整方法としては、マトリクスの極性を水酸基、エーテル、エステル等の量により、調整する方法が挙げられる。
なお、透明導電体微粒子を用いる場合、GZO(Gallium-doped Zinc Oxide)、AZO(Aluminum-doped Zinc Oxide)、ITO(Indium Tin Oxide)、ATO(Antimony-doped Tin Oxide)、PTO(Phosphorus-doped Tin Oxide)、TNO(Titanium Niobium Oxide)、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)、ITZO(Indium Tin Zinc Oxide)は、安定であり、耐環境性等に優れているため、信頼性の高い光学素子を作成できる。
図7は、実際に上述した指標を基にして得た光学材料が示す光学特性を示す説明図である。なお、例1〜6が、少なくとも上記条件(A)を満たすよう調整された低屈折率高分散材料の例であり、例7,8はその比較例であって上記条件(A)を満たさない例である。
なお、図7には、各例について、用いた微粒子の種類と、当該材料を用いて作製される回折格子の最低回折効率と、格子高さと、該格子高さにおける当該材料の平均透過率と、最低透過率と、最大透過率と最低透過率との差と、d線の屈折率と、アッベ数とが示されている。なお、図7において、波長依存性を有する項目については、いずれも波長450nm〜600nmの波長領域での値が示されている。また、回折格子は以下のように構成されている。すなわち、高屈折率高分散材料に脂環系アクリル材料とジルコニアの微粒子のコンポジット材料を用い、回折効率のピーク値を430nmと600nmが最大となるように設計している。
図7に示すように、例1〜6はいずれもアッベ数が35以下というように高い異常分散性を示しているだけでなく、当該材料を用いて作成される回折格子が波長450nm〜600nmにおいて99%以上の回折効率を示し、かつそのような回折格子を作成したときの同波長範囲における透過率が80%以上を示している。
図8は、図7に示した各例のd線の透過率を1としたときの透過率比率のスペクトルデータを示すグラフである。また、図9は、図7に示した各例の回折格子としての透過率データを示すグラフである。すなわち、図9は、図7に示した各例について回折格子高さと同じ膜厚にしたときの透過率データを示すグラフである。図8および図9に示すように、例1〜6は、少なくとも波長450nm〜600nmにおいて99%以上の回折効率を確保できるよう回折格子を作成した場合であっても、波長450nm〜800nmにおいて透過率が80%以上となっていることがわかる。
なお、例1,2,3は、典型的な透明導電体微粒子を用いた例である。具体的には、例1はGZOを微粒子濃度が55質量%となるように用いた例であり、例2はITOを微粒子濃度が55質量%となるように用いた例であり、例3はATOを微粒子濃度が27質量%となるように用いた例である。GZOにはガリウムが添加されているために、紫外領域だけでなく赤外領域にも吸収性を示す。また、ITOにはスズが添加されているために、紫外領域だけでなく赤外領域にも吸収性を示す。また、ATOにはアンチモンが添加されているために、紫外領域だけでなく赤外領域にも吸収性を示す。
また、例7,8は、例3に示した透明導電体微粒子よりも、透明導電体微粒子におけるドーパントのドープ量を減らして透過率の低下波長を、例3に比べてより長波長側へ移動させた例である。なお、ドープ量の関係は、例3>例7>例8である。例7,8は、同じ膜厚であれば透過率自体は例3と比べてそれほど変わらない。しかし、赤外領域の吸収波長がより長波長側へ移動したことによって屈折率の分散が下がったために、格子の高さを大きくしなければならず、それにより回折格子としての透過率が大きく低下する結果となっている。
また、例4,5,6は、例7の材料と例1〜3のいずれかの材料とを混合して、最低透過率を80%に調整した例である。
図7〜図9より、低屈折率高分散材料の位相差層の厚みにおいて波長1500nmの透過率が50%以下であれば、波長450nm〜600nmにおいて、最低透過率が80%以上、かつ回折効率が99%以上を確保できる可能性が高いといえる。
また、透明導電体材料の透過率のピーク波長が400nm〜700nmの範囲内にあると、可視光領域全域において透過率の高い材料となるため、これを指標に加えてもよい。
また、例9は、例1のGZOと例3のATOを混合して、透過率の分布等を改善した例である。図10は、例9の透過率比率のスペクトルデータを示すグラフである。また、図11は、例9の透過率データを示すグラフである。なお、図11には、例9を膜厚9.3μmとしたときの透過率データが示されている。
図10,図11に示すように、500nmよりも短波長側に透過率のピークを持つ上述の例3の光学材料に用いた透明導電体微粒子であるATOと、500nmよりも長波長側に透過率のピークを持つ上記の例1の光学材料に用いた透明導電体微粒子であるGZOとを混合すると、これらを単体で用いたときと比べて、透過率分布がより平坦化された光学材料が得られる。このように、透過率分布の異なる透明導電体微粒子を混合することにより、透過率分布の平坦化を行うことも可能である。なお、混合する材料は、ATOやGZOといった材料に限定されるものではなく、上記の条件を満たす透過率分布を持つようにドーパントの量や種類を調整された微粒子材料を適宜組み合わせればよい。例えば、ATOの代わりにITOや他の微粒子を用いてもよいし、同一材料系でドーパント量の異なるものを混合してもよいし、また3つ以上の微粒子を混合してもよい。
なお、上記の各例では、高屈折率低分散材料を特定の材料とした上で、低屈折率高分散材料の透過率と屈折率の分布を調整した例を示したが、透過率は膜厚によって変わるため、位相差層を形成するもう一方の材料すなわち高屈折率低分散材料の透過率を低屈折率高分散材料の透過率と近づけることで、条件(C)を満たすようにしてもよい。そのような方法によっても、材料間の透過率差によって発生する回折等の迷光の発生を抑制でき、さらに回折効率を高められる。透過率の差は、可視光領域の任意の波長における差の最大値が20%以内で有れば実用上十分であるが、10%以内であるとよく、5%以内であるとさらに好ましい。
また、条件(D)に関して、低屈折率高分散材料単体では条件(D)を満たせなくても、光学素子の表面、内面に薄膜を作成したり、光学系のいずれかの光路中に透過率の波長依存性を低減させるための薄膜を設けるなどして、素子全体または光学系全体での透過率が条件(D)を満たすようにしてもよい。
例えば、低屈折率高分散材料の透過率が、他の波長領域に比べて青波長領域で高い場合は、光学系に含まれるレンズ等の硝材に、青波長領域の透過率が他の波長領域よりも低い硝材を利用して、透過率の波長依存性の低減を図ってもよい。また、例えば、低屈折率高分散材料が、青波長領域の光の透過率が緑や赤波長領域に対して低い場合は、赤外線カットフィルターのような赤領域の光の透過率が下がる硝材を光学系に用いて、透過率の波長依存性の低減を図ってもよい。また、例えば、低屈折率高分散材料の緑領域の光の透過率が他の波長領域に比べて高い場合は、上記2つの硝材を光学系に利用して、透過率の波長依存性の低減を図ってもよい。
また、逆に、光学系の透過率の波長依存性を本回折格子の吸収によって低減させるようにしてもよい。
また、位相差層を形成した後に透過率を測定する場合には、d線の透過率に対し、波長1500nmの透過率が78%以下であればよい。
また、作成の都合上、低屈折率高分散材料が、基板と位相差層を形成する領域との間に位相差層を形成しない領域として、ある一定の厚みを持って形成される場合がある。特に、インプリント等によって形状を形成する際には、位相差層を形成しない領域をある一定の厚みをもたせて形成すると作成が容易になってよい。ただし、低屈折率高分散材料を用いて当該領域すなわち位相差層を形成しない領域を形成したことによる透過率の減少量を50%以下に抑える必要性を考慮すると、位相差層を形成しない低屈折率高分散材料の厚みは位相差層の3倍以下とするのが好ましい。なお、透過率の観点からは、位相差層を形成しない低屈折率高分散材料の厚みは薄い方がよい。ただし、低屈折率高分散材料がインプリント後に反応させて硬化させる場合においては、位相差層の1割以上の厚みがあると硬化時の形状劣化を抑制でき、好ましい。また、この場合にも、上述した位相差層形成後に測定する透過率の条件が当てはまる。
また、位相差層を形成しない低屈折率高分散材料の厚みを低減させることは、光学系の透過率向上に効果があるが、低屈折率高分散材料の回折格子形状を良好な形状にて安定的に維持させるためには、ある程度の厚みが必要である。ただし、この厚みは、樹脂の硬化時の収縮量や基材、インプリントをする際に用いる型との濡れ性、インプリント時の圧力により変化する。
樹脂の硬化時の収縮量を小さくすると、位相差層を形成しない低屈折率高分散材料の厚みを低減でき、好ましい。これに関し、透明導電体微粒子や赤外吸収粒子、錯体等の濃度を上げてマトリクスの濃度を下げることにより重合収縮量を小さくし、それにより樹脂の硬化時の収縮量を下げてもよい。ただし、赤外吸収材料の濃度には、安定して混ぜ込める限界値が存在し、濃度を高くし過ぎるとHAZEが急激に大きくなる。このため、より樹脂マトリクスに分散させやすく、屈折率が樹脂マトリクスに近いような微粒子、例えばSiOのような微粒子を添加し、重合収縮量を小さくしてもよい。この時の微粒子の濃度は、無機微粒子表面に化学的に結合しているアルキル基やシラン等の有機基を含めて微粒子と考えた場合、10体積%以上であればよく、15体積%以上であればなおよく、30体積%以上であればさらによい。また、低屈折率高分散材料に多官能系の材料やデンドリマー、多官能のチオール等を添加して重合収縮量を小さくしてもよい。また、マトリクスにエポキシ系のモノマーのような、重合収縮量が小さくなる開環重合するものを用いてもよい。
また、位相差層を形成しない低屈折率高分散材料の厚みを低減させるためには、基材や型に対する低屈折率高分散材料の濡れ性は、高い方がよい。
また、低屈折率高分散材料と高屈折率低分散材料の間に、空隙等が発生すると反射によって透過率が劣化するため、好ましくない。そのため、低屈折率高分散材料と高屈折率低分散材料がともに樹脂材料を利用するものであれば、低屈折率高分散材料と高屈折率低分散材料の樹脂材料の20重量%以上が同一、もしくは、溶解パラメーターが±1以内の材料となるものを利用すると、両材料層間の密着性を向上でき、剥離等を抑制できるため好ましい。また、低屈折率高分散材料と高屈折率低分散材料の温度変動も近い値にできるため、回折効率が温度によって劣化するのを抑制しやすくなる効果もある。
また、低屈折率高分散材料のマトリクスに重合基が2つ以上ある材料を加えると、材料層の割れ等を抑制できるため好ましい。加える量としては、マトリクス重量の5重量%で有ればよい。なお、これは高屈折率低分散材料にも適用できる。
実施形態1.
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図12は、本発明の光学素子の例を示す構成図である。図12では、本発明の光学素子の例として、回折光学素子10を示している。なお、図12(a)は、回折光学素子10の断面を模式的に示す模式断面図であり、図12(b)は、回折光学素子10の分解断面図である。図12に示す回折光学素子10は、透明基板11上に、屈折率の異なる光学材料により形成される光学材料層12と光学材料層13とによって構成される回折格子100が形成されている。より具体的には、透明基板11上に、屈折率の異なる光学材料により形成される光学材料層12と光学材料層13とが積層されており、その光学材料層12の図面における上側すなわち光学材料層13がある側の界面の少なくとも一部領域と、光学材料層13の図面における下側すなわち光学材料層12がある側の界面の少なくとも一部領域とには、組み合わされて1つの回折格子として作用する凹凸構造121,131が形成されており、そのような構成を有することによって、透明基板11上には異なる2つの材料によって構成される回折格子100が形成されている。
光学材料層12を、例えば、インプリント法等によって所望の凹凸構造121を有するように形成してもよい。また、光学材料層13は、光学材料層12を形成した後でその凹凸構造121の凹部を埋めるように、モノマー材料を充填し、硬化させたり、熱可塑樹脂を充填し、成型する等により形成して、接合積層してもよい。その際、光学材料層12に対し、プラズマ処理を実施したり、シラン等を用いたカップリング処理を実施したりして、光学材料層12と光学材料層13の密着性を向上させると好ましい。なお、透明基板11と光学材料層12とを同じ材料としてもよい。すなわち、透明基板11の表面を加工して基板上に直接、凹凸構造121を形成して、透明基板11が光学材料層12を兼用することも可能である。加工する手段としては、透明基板11がガラスであれば、ガラスモールド法、切削、ドライエッチング法等があり、透明基板11が樹脂であれば、射出成型等によって加工する。
また、透明基板11の対向側に、さらに1つの透明基板を有していてもよい。すなわち、2枚の透明基板の間に光学材料層12,13が挟持された構成であってもよい。
回折格子100を構成する凹凸構造121,131は、例えば断面形状が鋸歯状の凹凸が周期的に並んだ構造であってもよい。また、素子面全体においては、いずれか一方の凹凸構造がフレネルレンズを模した形状、例えば鋸歯状の断面形状を有する輪帯が光軸に対して回転対称な同心円状に配置された構造であってもよい。そのような回折格子を備えることで、入射光束に対してレンズ作用を付与できる。なお、そのような回折格子を備えた回折光学素子は、回折レンズと呼ばれる場合がある。図13は、回折レンズとして機能する回折光学素子10に形成される回折格子100の一例を模式的に示す模式上面図である。なお、格子ピッチや格子高さは、回折光学素子10に持たせたい機能および用いる材料に応じて、適宜選択可能である。
回折格子100を構成する2つの材料、すなわち光学材料層12,13の材料は、高屈折率低分散材料と、低屈折率高分散材料の組み合わせとする。なお、回折格子100に用いる材料については、上述したとおりである。すなわち位相差層に用いる材料として示した各種条件を基に選定または調整すればよい。なお、高屈折率低分散材料と低屈折率高分散材料のいずれを、どちらの光学材料層に用いるかは任意である。すなわち、高屈折率低分散材料を光学材料層12の材料に用い、低屈折率高分散材料を光学材料層13の材料に用いてもよいし、高屈折率低分散材料を光学材料層13の材料に用い、低屈折率高分散材料を光学材料層12の材料に用いてもよい。
なお、回折格子の具体的な形状は特に限定されない。図14および図15は、回折光学素子10の他の例を示す構成図である。例えば、図14に示すように、単レンズ形状の透明基板11上に回折格子100を形成して、素子全体で正のパワーを有するハイブリッドレンズとして機能するよう構成されたものであってもよい。なお、図14では凸レンズ形状の透明基板11上に回折格子100を形成する例を示しているが、凹レンズ形状の透明基板11上に回折格子100を形成して、素子全体で負のパワーを有するハイブリッドレンズとして機能するよう構成してもよい。
また、例えば、図15に示すように、2つの透明基板11、14の間に回折格子100が形成される構成であってもよい。
なお、光学素子を撮像光学系に組み込む場合には、入射角度依存性による回折効率の変化が問題とならないよう、回折格子100のアスペクト比を小さくするのが好ましい。そのために、回折格子100の格子の高さが20μm以下であると好ましく、15μm以下であるとさらに好ましい。
また、回折光学素子は、2層積層型の光学回折素子に限らず、例えば、光学材料層を3層以上を積層して2以上の回折格子を備える構成であってもよい。
また、本発明の光学素子は、回折光学素子に限定されない。すなわち、少なくとも屈折率の異なる2つの材料を用いて形成される位相差層を備えた光学素子であって、位相差層により発生する入射光束の位相差の波長依存性を問題とする光学素子であれば、上述した条件を満たすよう選定または調整された低屈折率高分散材料と高屈折率低分散材料とを用いて位相差層を形成することにより、同様の効果を得られる。なお、この場合、回折格子の回折効率の波長依存性は、位相差層によって付与される光の位相差の波長依存性と言い換えられ、また、回折格子の回折効率の高/低は、位相差層の所望の位相差を有する光の出射効率の高/低と言い換えられる。
実施形態2.
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明による回折光学素子は撮像光学系に組み込まれている。図16および図17は、回折光学素子を用いた色収差の補正原理を説明する説明図である。
図16(a)に示す屈折レンズ90のように、通常の屈折系凸レンズでは、屈折率の波長依存性によって色収差が発生する。すなわち、集光位置が波長によって異なり、青、緑、赤の波長の順で結像する。それに対して、図16(b)に示す回折光学素子10を、回折方向が正のパワーを有するように構成すれば、赤、緑、青の波長の順で結像できる。すると、図17に示すように、図16(a)に示す屈折系光学レンズ90と、図16(b)に示す回折光学素子10とを組み合わせて撮像光学系1000を構成することによって、互いの色収差をうち消せる。
組み合わせるレンズ系の屈折方向が正のパワーを有する場合には、色収差は、焦点距離が短い順に、青<緑<赤となりやすい。それに対して色消し効果を発現させるためには、回折方向が正のパワーを有する回折光学素子を組み合わせればよい。すなわち、回折光学素子の回折方向が正のパワーとなる場合には、焦点位置は、赤<緑<青となるため、色収差が効率よく補正できる。
逆に、組み合わせるレンズ系の屈折方向が負のパワーを有する場合には、回折方向も負のパワーを有する回折光学素子を組み合わせれば色収差が効率よく補正できる。なお、本発明による撮像光学系においては、屈折系のレンズの色収差が、回折光学素子が有する色収差と逆傾向に一致するように設計されているものとする。例えば、通常の屈折系光学レンズの場合、結像位置は波長に対して不等分であるが、回折光学素子では等分となる。したがって、屈折系光学レンズで発生する色収差を、波長に対して逆傾向ではあるが等分となるように設計すればよい。なお、色収差の補正量は格子ピッチで調整可能である。
また、撮像光学系は、複数のレンズを備えていてもよい。また、CCDやCMOSのような撮像素子を備えていてもよい。それら撮像光学系が備えるレンズ系によって発生する色収差が、最終的に回折格子と組み合わされたときにお互いに打ち消しあうように設計されていればよい。
なお、光学系に組み込む回折光学素子10は、図12に示すような平板の回折光学素子10に限られない。例えば、図14や図15に示した回折光学素子10を光学系に組み込むことも可能である。この場合、回折光学素子10を、既存の光学系が有するレンズの中に回折構造を入れたハイブリッドレンズとしてもよい。そのような回折光学素子10は、当該回折光学素子10が備える透明基板11や14を、既存の光学系が有するレンズのいずれかとして機能する形状に加工することで得られる。
レンズの中や表面に回折格子を形成する場合、レンズのパワーと回折格子のパワーの符号を同一の符号にし、回折格子のピッチを調整することにより、異常分散材料のレンズに類似した特性を与えることも可能である。この場合、高価な異常分散材料のレンズを回折レンズに置き換えられるので、同様の光学系を安価に構成できる。また、従来設計と同様のコンセプトの光学系を利用でき、回折素子を利用したレンズ系の設計を容易にできる。
また、回折光学素子10を組み込む先の撮像光学系としては、例えば、コンパクトデジタルカメラ、携帯電話やスマートフォン用等の小型カメラ、監視カメラ、内視鏡、イメージセンサ等の光学系であってもよい。また、回折光学素子10に限らず本発明が適用された光学素子は、撮像光学系だけでなく、可視光の複数波長またはある波長帯域をもった光を利用する光学系において利用可能であり、例えば、プロジェクター等の投影光学系にも利用可能である。
実施例1.
以下、具体的な数値等を用いて第1の実施形態の光学素子の例を示す。第1の実施例では、光学素子は、図15に示したようなレンズとして機能する2つの透明基板11,14の間に回折格子100が形成されている回折光学素子10である。
まず、回折格子100の材料を作成する。まず、低屈折率高分散材料の原料として、透明導電体微粒子GZOの有機溶媒の分散ゾルを用意する。そして、用意した分散ゾルと2−エチル2−アダマンチルアクリレートと2−アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンを1:1の重量比にて混合したアクリル酸モノマーとを混合し、有機溶媒を揮発させることで、微粒子重量55質量%のコンポジットモノマーAを得る。このコンポジットモノマーAは、硬化した際のd線の透過率が1.592、アッベ数が23.4、部分分散Pfgの標準線からの差が−0.067である。
一方、高屈折率低分散材料の原料として、ZrO微粒子の有機溶媒の分散ゾルを用意する。そして、用意した分散ゾルと2−エチル2−アダマンチルアクリレートとを混合し、有機溶媒を揮発させることで、微粒子重量52質量%のコンポジットモノマーBを得る。このコンポジットモノマーBは、硬化した際のd線の透過率が1.641、アッベ数が43.9、部分分散Pfgの標準線からの差が−0.028である。
次に、基板11,14を作成する。本例では、ガラス基板をガラスモールド法により所望の形状(本例では、単レンズ形状)に加工して、レンズ11を得る。また、同様の方法により、レンズ14を得る。レンズ11と14の形状は、張り合わせ部分のギャップがレンズのどの領域でも50μmを維持するように、曲率、非球面係数が調整されている。なお、レンズの有効径は10mmである。
次に、回折格子を形成する。本例では、レンズ11の表面にインプリント法を用いて、コンポジットモノマーAをフレネルレンズ形状にして積層させて光学材料層12を形成する。形成される光学材料層12は、具体的には、表面形状が焦点距離700mmのレンズの位相を与えるフレネルレンズ形状であり、断面形状がブレーズ状の凹凸構造である。なお、凸部の高さすなわち回折格子100となる部分の高さは、11.9μmである。また、凸部を形成しない低屈折率高分散材料の厚みは、6.0μmである。なお、凸部の高さの方向は、光線が入射する方向と同一になるように調整されている。
次いで、コンボジットモノマーBを、光学材料層12が形成されたレンズ11とレンズ14との間に充填し、レンズ11とレンズ14との間が50μmとなるように調整した状態で硬化することで、光学材料層13を形成する。このようにして、レンズ11,14の間に光学材料層12と13とによって構成される回折格子100が形成された回折光学素子10を得る。得られた回折光学素子10は、光学材料層12と光学材料層13とが剥離なく密着された状態である。
図18は、得られた回折光学素子10の回折効率を示すグラフである。図18のグラフより、波長450nm〜600nmにおいて、非常に高い回折効率を示すことがわかる。具体的には、99.3%以上の回折効率を得られることがわかる。また、図19は、本例の回折光学素子10の回折格子部分の透過率データを示すグラフである。図19のグラフより、実用的に十分な透過率であることがわかる。具体的には、波長450nm〜600nmにおいて85%以上の透過率を得られることがわかる。
実施例2.
また、以下に回折格子の材料セットの他の好適例を示す。回折格子100の材料である低屈折率高分散材料の原料として、透明導電体微粒子ITOの有機溶媒の分散ゾルと2−エチル2−アダマンチルアクリレートと2−アクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトンを1:1の重量比にて混合したアクリル酸モノマーとを混合し、第1の実施例と同様の方法にて、微粒子重量55質量%のコンポジットモノマーAを得る。このコンポジットモノマーAは、硬化した際のd線の透過率が1.578、アッベ数が18.6、部分分散Pfgの標準線からの差が−0.156である。また、一方、高屈折率低分散材料として、第1の実施例と同様の手法で、微粒子重量55質量%のコンポジットモノマーBを得る。このコンポジットモノマーBは、硬化した際のd線の透過率が1.643、アッベ数が43.8、部分分散Pfgの標準線からの差が−0.029である。
そして、第1の実施例と同様の手法にて回折格子100が形成された回折光学素子10を得る。回折格子100となる部分の高さは、9.0μmである。また、凸部を形成しない低屈折率高分散材料の厚みは、4.5μmである。また、本例においても、得られた回折光学素子10は、光学材料層12と光学材料層13とが剥離なく密着された状態である。
図20は、得られた回折光学素子10の回折効率を示すグラフである。図20のグラフより、波長450nm〜600nmにおいて、非常に高い回折効率を示すことがわかる。具体的には、99.9%以上の回折効率を得られることがわかる。また、図21は、本例の回折光学素子10の回折格子部分の透過率データを示すグラフである。図21のグラフより、実用的に十分な透過率であることがわかる。具体的には、波長450nm〜600nmにおいて90%以上の透過率を得られることがわかる。
本発明は、あらゆる光学系に適用可能であるが、特に、カメラ、携帯電話、スマートフォン、内視鏡、イメージセンサ等に組み込まれる撮像光学系において、フレアの低減を行う用途に好適である。
1、2 光学材料層
3 位相差層(位相段差)
10 光学素子、回折光学素子
11、14 透明基板
12、13 光学材料層
100 位相差層(回折格子)
121、131 凹凸構造
1000 撮像光学系

Claims (10)

  1. 屈折率の異なる2つの材料を用いて形成される位相差層により生じる入射光束の位相差を利用して、入射光束に対して光学的作用を付与する光学素子であって、
    入射光束に位相差を発現させる位相差層を備え、
    前記位相差層は、相対的に低屈折率高分散な材料である第1の材料と、相対的に高屈折率低分散な材料である第2の材料とを用いて形成されており、
    前記第1の材料は、原料に、波長300nm以下の領域に吸収帯を有する物質と、波長800〜2500nmの領域に吸収帯または反射帯を有する物質とを少なくとも含み、前記位相差層の厚みにおいて、d線の内部透過率が80%以上であるとともに、前記d線の内部透過率に対し、波長300nmの内部透過率が50%以下、かつ波長1500nmの内部透過率が50%以下であり、アッベ数の値が5〜35の範囲内である
    ことを特徴とする光学素子。
  2. 前記位相差層の厚みにおける、前記第1の材料の透過率をT1、前記第2の材料の透過率をT2とした場合に、少なくとも波長450nm〜600nmの範囲においてT1/T2>0.8を満たす
    請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記第1の材料は、前記位相差層の厚みをd、当該材料の吸収係数をαとした場合に、α×d>−0.0223を満たす
    請求項1または請求項2に記載の光学素子。
  4. 前記第1の材料は、前記位相差層の厚みにおいて、波長450nm〜600nmにおける最も高い透過率をTMAX、最も低い透過率をTMINとするとき、TMIN/TMAX>0.8を満たす
    請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
  5. 前記第2の材料は、ドーパントが添加された透明導電体微粒子を利用したコンポジット材料である
    請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
  6. 前記第1の材料は、マトリクスに樹脂材料を用い、ドーパントの量が1〜30mol%である透明導電体微粒子を利用したコンポジット材料である
    請求項5に記載の光学素子。
  7. 前記第1の材料は、材料系が異なるまたは同一材料系でドーパントの量が異なる2以上の透明導電体微粒子を利用したコンポジット材料である
    請求項5または請求項6に記載の光学素子。
  8. 前記透明導電体微粒子は、GZO、ITO、ATO、PTO、AZOのいずれかを含む
    請求項5から請求項7のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
  9. 前記位相差層は、位相段差である
    請求項1から請求項8のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
  10. 前記位相差層は、回折格子である
    請求項1から請求項9のうちのいずれか1項に記載の光学素子。
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