JP2014114497A - スパッタ装置 - Google Patents

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応樹 武井
Kyuzo Nakamura
久三 中村
Tatsunori Isobe
辰徳 磯部
Tomiyuki Yukawa
富之 湯川
Junya Kiyota
淳也 清田
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Abstract

【課題】異常放電を抑えることができるスパッタ装置を提供する。
【解決手段】ターゲット31と、反応ガス供給部25と、ターゲット電源33と、反応ガス供給部25とターゲット電源33との駆動を制御して酸化アルミニウム膜を形成する制御装置とを備える。ターゲット31に印加される電圧の範囲には、ターゲット31が酸化モードでスパッタされる酸化モード区間と、ターゲット31が遷移モードでスパッタされる遷移モード区間とが含まれる。制御装置は、酸化アルミニウム膜の形成を開始するときに、ターゲット31に印加される電圧を酸化モード区間に含まれる電圧とし、酸化アルミニウム膜が形成される途中から酸化アルミニウム膜の形成を終了するまで、ターゲット31に印加される電圧を遷移モード区間に含まれる電圧とし、反応ガス供給部25が供給する酸素ガスの流量を変更させることによって電圧を変える。
【選択図】図1

Description

本開示の技術は、大型基板に薄膜を形成するスパッタ装置に関する。
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイは、表示素子や、表示素子を駆動する薄膜トランジスタを備える。表示素子及び薄膜トランジスタは、絶縁物で構成された絶縁層や屈折層を備え、各層の形成材料には、例えば、シリコン酸化物やアルミニウム酸化物等の金属酸化物が用いられている。これら金属酸化物によって構成される薄膜の形成方法の1つとして反応性スパッタ法が用いられている。
反応性スパッタ法の様式には、スパッタ装置に供給される酸素ガスの流量の範囲が相互に異なる金属モード、遷移モード、及び、酸化物モードが存在する(例えば特許文献1)。このうち遷移モード及び酸化物モードでの反応性スパッタでは、金属酸化膜が成膜対象に形成される一方、金属モードでの反応性スパッタでは、金属膜が形成される。
特開2008−164660号公報
金属酸化膜を形成する反応性スパッタの様式として、まず、酸素ガスが添加されない金属モードが開始され、その後に、酸化モードよりも少ない流量で酸素ガスが添加されることにより、酸化モードよりも成膜速度の高い遷移モードが進められる。そして、スパッタ装置にて金属酸化膜の形成が繰り返される場合には、金属モードでのスパッタと、遷移モードでの反応性スパッタとが交互に繰り返される。結果として、スパッタ装置内の一部には、金属膜と金属酸化物膜とが交互に堆積する。
この際に、金属酸化膜を挟む金属膜の各々には、スパッタ装置内に生成されたプラズマによって相互に異なる電圧が印加される、例えば、一方の金属膜は接地され、他方の金属膜には負電圧が印加される。それゆえに、金属酸化膜を挟む金属膜の間に、金属酸化膜の絶縁耐圧を超える電圧が印加されると、金属膜の間での異常放電によって金属酸化膜が破壊され、金属酸化膜の一部が、パーティクルとしてスパッタ装置内に散乱してしまう。
本開示の技術は、異常放電を抑えることができるスパッタ装置を提供することを目的とする。
本開示の技術におけるスパッタ装置の一態様は、金属を含むターゲットと、前記ターゲットの周りに酸素ガスを供給するガス供給部と、前記ターゲットに電力を供給して前記ターゲットをスパッタさせる電源と、前記ガス供給部と前記電源との駆動を制御して金属酸化膜を形成する制御部とを備える。そして、前記ターゲットに印加される電圧の範囲には、前記ターゲットが酸化モードでスパッタされる酸化モード区間と、前記ターゲットが遷移モードでスパッタされる遷移モード区間とが含まれる。前記制御部は、前記金属酸化膜の形成を開始するときに、前記ターゲットに印加される電圧を前記酸化モード区間に含まれる電圧とし、前記金属酸化膜が形成される途中から前記金属酸化膜の形成を終了するまで、前記ターゲットに印加される電圧を前記遷移モード区間に含まれる電圧とし、前記ガス供給部が供給する前記酸素ガスの流量を変更させることによって前記電圧を変える。
本開示の技術におけるスパッタ装置の一態様によれば、制御部は、金属酸化膜の形成が開始されるときには、反応性スパッタの様式を酸化モードに設定し、金属酸化膜が形成される途中で、反応性スパッタの様式を遷移モードに変更する。そのため、スパッタ装置内に配設された各種部材や、スパッタ装置の内壁には、絶縁物である金属酸化物が付着する。それゆえに、スパッタ装置にて金属酸化膜の形成が繰り返し行われても、スパッタ装置の内部には、金属酸化物のみが堆積する。結果として、スパッタ装置での異常放電を抑えることができる。
本開示の技術におけるスパッタ装置の他の態様は、前記制御部が、前記金属酸化膜の形成を開始するときの前記酸素ガスの流量である初期流量を設定する初期流量設定部を備える。そして、前記電圧が前記酸化モード区間であるときの前記酸素ガスの流量の下限値は、前記電圧が前記遷移モード区間から前記酸化モード区間へ変わるときと、前記電圧が前記酸化モード区間から前記遷移モード区間へ変わるときとで相互に異なる。前記初期流量の下限値は、前記電圧が前記遷移モード区間から前記酸化モード区間へ変わるときの前記酸素ガスの流量の下限値よりも大きい。
一般に、反応性スパッタの様式が、金属モードから酸化モードに変更される場合と、酸化モードから金属モードに変更される場合とでは、酸化モードにおける酸素ガスの下限値が相互に異なる。そして、金属モードから酸化モードに変更される場合には、酸化モードから金属モードに変更される場合に比べて、酸素ガスの下限値が大きい。
本開示の技術におけるスパッタ装置の他の態様によれば、酸素ガスの初期流量の下限値が、金属モードから酸化モードに変わるときの下限値に設定される。そのため、初期流量の下限値が、酸化モードから金属モードに変わるときの下限値に設定される構成と比べて、酸化アルミニウム膜の形成が開始されるときの反応性スパッタの様式が、より確実に酸化モードに設定される。
本開示の技術におけるスパッタ装置の他の態様は、前記制御部が、前記ターゲットに印加されている電圧を検出値として取得する検出値取得部と、前記ターゲットに印加される電圧の目標値を設定する目標値設定部と、前記酸素ガスの設定流量を算出する流量算出部と、を更に備える。そして、前記目標値設定部は、前記遷移モード区間に含まれる電圧を前記目標値とし、前記流量算出部は、前記検出値と前記目標値との偏差を小さくする前記酸素ガスの流量を前記設定流量として算出する。
本開示の技術におけるスパッタ装置の他の態様によれば、酸素ガスの流量が、遷移モード区間に含まれる目標値と、ターゲットに印加されている実際の電圧とを用いて算出される。これにより、酸素ガスの流量には、ターゲットに印加されている実際の電圧が反映されるため、酸素ガスの流量が時間の経過とともに変更されるのみの構成と比べて、ターゲットに印加される電圧が、遷移モード区間により含まれやすくなる。
本開示の技術におけるスパッタ装置の他の態様は、前記制御部が、前記電源が供給する前記電力の設定値を前記酸化モード区間と前記遷移モード区間とにおいて一定値とする。
ターゲットに供給される電力が相互に異なる場合には、酸素ガスの流量が同じであっても、ターゲットに印加される電圧が相互に異なる。それゆえに、ターゲットに印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わる際に、ターゲットに供給される電力も変わるときには、酸素ガスの流量の設定に際し、ターゲットに印加されている電圧と、ターゲットに供給されている電力との双方が加味される必要がある。
この点で、本開示の技術におけるスパッタ装置の他の態様によれば、ターゲットに印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わるときに、ターゲットに供給される電力は変わらない。それゆえに、ターゲットに供給される電力が変わる構成と比べて、酸素ガスの流量の変更による電圧の変更が容易になる。
本開示の技術におけるスパッタ装置の他の態様は、前記ガス供給部が、前記ターゲットの周りに更にアルゴンガスを供給し、前記制御部は、前記アルゴンガスの流量の設定値を前記酸化モード区間と前記遷移モード区間とにおいて一定値とする。
ターゲットの周りでアルゴンガスの流量が相互に異なる場合には、酸素ガスの流量が同じであっても、ターゲットに印加される電圧が相互に異なる。それゆえに、ターゲットに印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わる際に、アルゴンガスの流量も変わるときには、酸素ガスの流量の設定に際し、ターゲットに印加されている電圧と、アルゴンガスの流量との双方が加味される必要がある。
この点で、本開示の技術におけるスパッタ装置の他の態様によれば、ターゲットに印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わるときに、アルゴンガスの流量は変わらない。それゆえに、アルゴンガスの流量が変わる構成と比べて、酸素ガスの流量の変更による電圧の変更が容易になる。
本開示の一実施形態におけるスパッタ装置の一部を平面視にて示す概略構成図であってスパッタ装置に収められる基板とともに示す図である。 スパッタ装置の電気的構成を示すブロック図である。 酸素ガスの流量とターゲットに印加される電圧Vmfとの関係を示すグラフである。 反応ガス供給部から供給される酸素ガスの流量の制御に関わる電気的構成を示すブロック図である。 実施例及び比較例におけるターゲットに印加される電圧Vmfの推移を示すグラフである。 実施例及び比較例におけるターゲットに印加される電圧Vmfと成膜速度との関係を示すグラフである。 実施例及び比較例におけるターゲットに印加される電圧Vmfと屈折率との関係を示すグラフである。
図1から図6を参照してスパッタ装置の一実施形態の構成を説明する。以下では、スパッタ装置の全体構成、スパッタ装置の電気的構成の順に説明する。
[スパッタ装置の全体構成]
図1を参照してスパッタ装置の全体構成を説明する。
図1に示されるように、スパッタ装置10は、搬出入室11とスパッタ室12とを備え、搬出入室11とスパッタ室12との間には、これら処理室の間を連通、あるいは、遮断するゲートバルブ13が取り付けられている。スパッタ装置10の底壁には、処理対象である基板SをトレイTとともに搬送する成膜レーン14と回収レーン15とが設置され、成膜レーン14及び回収レーン15は、搬出入室11とスパッタ室12とが連結される方向である連結方向に沿って延びる。基板Sは、例えば、紙面の手前に向かって延びる矩形板状をなすガラス基板であり、基板Sの幅は、例えば、紙面の上下方向に沿って2200mmであり、紙面の手前側に向かって2500mmである。
搬出入室11は、成膜前の基板Sをスパッタ装置10の外部から搬入し、スパッタ室12から搬入された成膜後の基板Sをスパッタ装置10の外部に搬出する。
スパッタ室12は箱状をなす真空槽21を備え、真空槽21内には2つのターゲット装置22が搭載されている。また、真空槽21には、真空槽21内を所定の圧力に減圧する排気部23、真空槽21内にスパッタガスであるアルゴンガスを供給するスパッタガス供給部24、及び、真空槽21内に反応ガスである酸素ガスを供給する反応ガス供給部25が接続されている。スパッタガス供給部24は、真空槽21内に供給するアルゴンガスの流量を制御するマスフローコントローラーであり、アルゴンガスが溜められたボンベに接続されている。反応ガス供給部25は、真空槽21内に供給する酸素ガスの流量を制御するマスフローコントローラーであり、酸素ガスが溜められたボンベに接続されている。
真空槽21内には、矩形枠状をなすチムニー26が固定され、チムニー26は、位置が固定された基板Sの表面をターゲット装置22に対して露出させ、且つ、基板Sが嵌め込まれたトレイTの表面を覆う。チムニー26は、ターゲット装置22から放出されたスパッタ粒子がトレイTに付着することを抑え、また、スパッタ粒子が放出される方向を基板Sの表面に向ける、すなわち、スパッタ粒子が放出される方向に指向性を与える。加えて、チムニー26は、ターゲット装置22に電力が供給されるときに、アノードとして機能する。
各ターゲット装置22は、基板Sと向かい合うターゲット31と、ターゲット31における基板Sと向かい合わない面に取り付けられたバッキングプレート32とを備えている。ターゲット31の主成分には、例えば、アルミニウムが用いられる。なお、ターゲット31の主成分は、ターゲット31の形成材料における95質量%を占め、好ましくは99質量%以上を占めている。2つのバッキングプレート32には、共通する1つのターゲット電源33が接続されている。ターゲット電源33は、各ターゲット31にバッキングプレート32を通して一定の交流電力を供給する。各バッキングプレート32に対してターゲット31とは反対側には、ターゲット31の表面に磁場を形成する磁気回路34が搭載されている。
成膜レーン14は、例えば、連結方向に沿って延びるレールと、レールに所定の間隔を空けて配置された複数のローラーと、各ローラーを自転させるモーターとを備えている。成膜レーン14は、一方向に向けて各ローラーを回転させることにより、基板Sを搬出入室11からスパッタ室12に向けて搬送する。また、成膜レーン14は、基板Sに酸化アルミニウム膜が形成されるときに、スパッタ室12内にて基板Sの位置を固定する。
回収レーン15は、例えば、成膜レーン14と同等の構成であり、基板Sをスパッタ室12から搬出入室11に向けて搬送する。なお、成膜レーン14と回収レーン15との間には、成膜レーン14上の基板Sを回収レーン15上に移動させるレーン変更部が搭載されている。また、スパッタ装置10では、成膜レーン14を搬送されている基板Sだけに限らず、回収レーン15を搬送されている基板Sに酸化アルミニウム膜が形成されてもよい。この場合には、回収レーン15は、基板Sに酸化アルミニウム膜が形成されるときに、スパッタ室12内にて基板Sの位置を固定する。
[スパッタ装置の電気的構成]
図2から図4を参照してスパッタ装置10の電気的構成を説明する。なお、以下では、スパッタ装置10の電気的構成のうち、スパッタ室12の駆動の制御に関する構成についてのみ説明する。また、以下では、スパッタ装置10の電気的構成の概略を説明し、次いで、同電気的構成のうち、反応ガス供給部25が供給する酸素ガスの流量の制御に関わる構成について詳しく説明する。
図2に示されるように、スパッタ装置10は、スパッタ装置10の駆動を制御する制御部としての制御装置40が備えている。制御装置40には、排気部23、スパッタガス供給部24、反応ガス供給部25、及び、ターゲット電源33が接続されている。
制御装置40は、排気部23の駆動を開始させるための駆動開始信号、及び、排気部23の駆動を停止させるための駆動停止信号を排気部駆動回路23Dに出力する。排気部駆動回路23Dは、制御装置40からの制御信号に応じて排気部23を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号を排気部23に出力する。
制御装置40は、スパッタガス供給部24からのスパッタガスの供給を開始させるための供給開始信号、及び、スパッタガス供給部24からのスパッタガスの供給を停止させるための供給停止信号をスパッタガス供給部駆動回路24Dに出力する。スパッタガス供給部駆動回路24Dは、制御装置40からの制御信号に応じてスパッタガス供給部24を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号をスパッタガス供給部24に出力する。
制御装置40は、反応ガス供給部25からの反応ガスの供給を開始させるための供給開始信号、及び、反応ガス供給部25からの反応ガスの供給を停止させるための供給停止信号をガス供給部駆動回路25Dに出力する。ガス供給部駆動回路25Dは、制御装置40からの制御信号に応じて反応ガス供給部25を駆動するための駆動信号を生成し、生成された駆動信号を反応ガス供給部25に出力する。
制御装置40は、ターゲット電源33からの電力の供給を開始させるための供給開始信号、及び、ターゲット電源33からの電力の供給を停止させるための供給停止信号をターゲット電源33に出力する。ターゲット電源33は、制御装置40からの制御信号に応じて電力の供給及び停止を行う。
[反応性スパッタの様式]
図3を参照して、反応ガスの流量に応じて変わる反応性スパッタの様式を説明する。
図3に示されるように、酸化アルミニウム膜が反応性スパッタによって形成される場合には、真空槽21内に供給される酸素ガスの流量によって、反応性スパッタの様式が、金属モード、遷移モード、及び、酸化モードのいずれかに設定される。これにより、ターゲットに印加される電圧、例えば実効値Vmfには、電圧が高い方から順に、金属モード区間、遷移モード区間、及び、酸化モード区間が設定される。このうち、金属モード区間及び酸化モード区間では、酸素ガスの流量における変化量に対する電圧の変化量が、遷移モード区間での酸素ガスの流量における変化量に対する電圧の変化量よりも小さく、各区間では、電圧が略一定に保たれる。
反応性スパッタの様式は、酸化モードから遷移モードを経て金属モードに変更されることも、金属モードから遷移モードを経て酸化モードに変更されることも可能である。
図3にて白抜きの菱形で示されるように、金属モードから酸化モードに変更される場合には、真空槽21内に供給される酸素ガスの流量が、例えば0sccmとされることによって、反応性スパッタの様式が金属モードに設定される。そして、酸素ガスの流量が次第に大きくされても、酸素ガスの流量が例えば47sccm未満の範囲では、反応性スパッタの様式が金属モードに保たれる。一方、酸素ガスの流量が47sccm以上にされると、酸素ガスのターゲット電圧が急激に変わる遷移モードを経て、反応性スパッタの様式が酸化モードに変更される。
図3にて黒塗りの四角で示されるように、酸化モードから金属モードに変更される場合には、酸素ガスの流量が上述の47sccmよりも十分に大きい流量である例えば160sccmとされることによって、反応性スパッタの様式が酸化モードに設定される。そして、酸素ガスの流量が次第に小さくされても、酸素ガスの流量が17sccmよりも大きい範囲では、反応性スパッタの様式が酸化モードに保たれる。一方、酸素ガスの流量が17sccm以下にされると、反応性スパッタの様式が、遷移モードを経て酸化モードに変更される。
なお、図3に示される酸素ガスの流量とターゲットに印加される電圧Vmfとの関係が測定されたときには、酸化アルミニウム膜の形成が、以下の条件で行われている。
・電力量 6kW
・アルゴンガス流量 160sccm
・真空槽内の圧力 0.4Pa
このように、反応性スパッタによる酸化アルミニウム膜の形成時には、真空槽21内に供給される酸素ガスの流量を変更することによって、反応性スパッタの様式を変更することが可能である。
また、反応性スパッタの様式が変更されるときに、ターゲット31に供給される電力が変わらない。ここで、ターゲット31に供給される電力が相互に異なる場合には、酸素ガスの流量が同じであっても、ターゲット31に供給される電圧が相互に異なる。それゆえに、ターゲット31に印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わる際に、ターゲットに供給される電力も変わるときには、酸素ガスの流量の設定に際し、ターゲットに印加されている電圧と、ターゲットに供給されている電力との双方が加味される必要がある。
上述のように、ターゲット31に印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わるときに、ターゲット31に供給される電力は変わらない構成によれば、ターゲット31に供給される電力が変わる構成と比べて、酸素ガスの流量の変更による電圧の変更が容易になる。
加えて、反応性スパッタの様式が変更されるときに、ターゲット31の周りに供給されるアルゴンガスの流量が変わらない。ここで、ターゲット31の周りでアルゴンガスの流量が相互に異なる場合には、酸素ガスの流量が同じであっても、ターゲット31に印加される電圧が相互に異なる。それゆえに、ターゲット31に印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わる際に、アルゴンガスの流量も変わるときには、酸素ガスの流量の設定に際し、ターゲット31に印加されている電圧と、アルゴンガスの流量との双方が加味される必要がある。
上述のように、ターゲット31に印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わるときに、アルゴンガスの流量は変わらない構成によれば、アルゴンガスの流量が変わる構成と比べて、酸素ガスの流量の変更による電圧の変更が容易になる。
また、各様式では、真空槽21内に存在する酸素の量が異なるため、各様式での反応性スパッタによって形成された酸化アルミニウム膜では、酸化アルミニウム膜中に含まれる酸素の量が互いに異なる。3つの様式のうち、金属モードで形成された酸化アルミニウム膜には、酸素がほとんど含まれないため、金属モードでの反応性スパッタによれば、導電性の膜、すなわちアルミニウム膜が形成される。これに対し、遷移モードあるいは酸化モードで形成された酸化アルミニウム膜には、絶縁性を発現するだけの酸素が含まれる。また、遷移モードでの反応性スパッタ時に比べて、酸化モードでの反応性スパッタ時には、ターゲット31の表面がより酸化され、且つ、アルミニウムのスパッタ率に比べて、酸化アルミニウムのスパッタ率は小さい。これにより、酸化モードにおける酸化アルミニウム膜の成膜速度に比べて、遷移モードにおける酸化アルミニウム膜の成膜速度が高い。
そのため、上記チムニー26等、真空槽21内の部材に絶縁物のみを堆積させる上では、酸化モードにて酸化アルミニウム膜の形成を開始することが好ましく、酸化アルミニウム膜の形成時間を短くする上では、遷移モードにて酸化アルミニウム膜の形成を行うことが好ましい。
また、上述のように、金属モードと酸化モードとの間で反応性スパッタの様式が変更される場合には、金属モードから酸化モードに変更されるか、あるいは、酸化モードから金属モードに変更されるかによって、これらモードが切り替わるときの酸素ガスの流量が異なる。しかも、金属モードから酸化モードに変更される場合に酸化モードとなる酸素ガスの流量が、酸化モードから金属モードに変更される場合に酸化モードとなる酸素ガスの流量よりも大きい。
そのため、反応性スパッタが開始されるときに反応性スパッタの様式が酸化モードに設定されるためには、開始時における酸素ガス流量である初期流量は、以下の範囲に設定されることが好ましい。すなわち、遷移モードから酸化モードに変更された直後の酸素ガス流量が初期流量の下限値として設定されることが好ましい。上述した例では、酸素ガス流量が、47sccmよりも大きく設定されることが好ましい。なお、反応性スパッタの様式が酸化モードに設定されるうえでは、例えば、酸化モードから遷移モードに変更される直前の酸素ガスの流量が初期流量の下限値として設定されてもよい。上述した例では、酸素ガス流量が、17sccmよりも大きく設定されてもよい。ただし、こうした酸素ガス流量によって酸化モードが設定される前提としては、ターゲット31などの状態が酸化モードで処理された状態を維持している必要がある。この点で、上述したように、遷移モードから酸化モードに変更された直後の酸素ガス流量が初期流量の下限値として設定される構成であれば、ターゲット31などの状態にかかわらず、開始時の反応性スパッタの様式は酸化モードに設定される。
[酸素ガスの流量の制御に関わる電気的構成]
図4を参照して、上述した電気的構成のうち、反応ガス供給部25から供給される酸素ガスの流量の制御に関わる電気的構成についてより詳しく説明する。なお、制御装置40は、真空槽21内に供給される酸素ガスの流量をPID制御によって制御することで、ターゲット31に印加される電圧Vmfを目標値に収束させる。
図4に示されるように、制御装置40は、検出値取得部41、目標値設定部42、ゲイン設定部43、偏差記憶部44、初期流量設定部45、及び、算出部46を備え、算出部46は、偏差算出部46Aと反応ガス流量算出部46Bとを備えている。
検出値取得部41には、ターゲット電源33が接続され、検出値取得部41は、ターゲット電源33にて検出される実際の電圧Vmfを検出値として所定の周期で取得する。
目標値設定部42は、反応性スパッタを遷移モードで行うための電圧、すなわち、上述の遷移モード区間に含まれる電圧値を目標値として設定する。図3に示されるように、酸化モードから金属モードに向けて反応性スパッタの様式が変更される場合であれば、遷移モード区間には、例えば、360V以上680V以下の範囲が含まれる。そのため、目標値には、360V以上680V以下のいずれかの電圧値が設定されればよく、ターゲットに印加される電圧がより確実に遷移モード区間に含まれるためには、遷移モード区間における中央値近傍の値、例えば500Vが目標値に設定されることが好ましい。
ゲイン設定部43は、PID制御における比例制御に用いられる比例ゲインKP、積分制御に用いられる積分ゲインKI、及び、微分制御に用いられる微分ゲインKDを設定する。比例ゲインKP、積分ゲインKI、及び、微分ゲインKDの各々は、予め算出された1つの定数である。なお、比例ゲインKP、積分ゲインKI、及び、微分ゲインKDの各々は、目標値と検出値との偏差eごとに予め複数設定され、PID制御の制御周期ごとにゲイン設定部43によって複数の定数から1つが選ばれてもよい。
偏差記憶部44は、偏差算出部46Aによって算出された目標値と検出値との偏差eをPID制御の制御周期ごとに記憶している。
初期流量設定部45は、反応性スパッタを酸化モードで開始するための酸素ガスの流量を初期流量として設定する。上述のように、初期流量には、反応性スパッタの様式が酸化モードから金属モードに変更される場合に酸化モードとなる酸素ガスの流量、例えば、47sccmよりも大きい流量が設定される。
算出部46の備える偏差算出部46Aは、検出値取得部41にて取得された検出値と、目標値設定部42で設定された目標値とを用いて、検出値と目標値との偏差eを算出する。
反応ガス流量算出部46Bは、ゲイン設定部43で設定された各ゲインKP,KI,KD、前回のPID制御の制御周期で算出された偏差en−1、及び、今回のPID制御の制御周期で算出された偏差eを用いて以下の値を算出する。
すなわち、反応ガス流量算出部46Bは、比例ゲインKPと今回の偏差eとを用いてP値を算出する。また、反応ガス流量算出部46Bは、積分ゲインKI、及び、例えば、前回の偏差en−1と今回の偏差eとから算出した偏差の積分値を用いてI値を算出する。また、反応ガス流量算出部46Bは、微分ゲインKD、及び、例えば、前回の偏差en−1と今回の偏差eとから算出した偏差の微分値を用いてD値を算出する。そして、反応ガス流量算出部46Bは、次回の偏差en+1が小さくなるように算出されたP値、I値、D値をフィードバック制御値として取り扱う。次いで、反応ガス流量算出部46Bは、これらのフィードバック制御値と初期流量設定部45にて設定された初期流量を用いて今回供給される酸素ガスの流量を制御値として算出し、制御値として算出された流量に応じた流量信号をガス供給部駆動回路25Dに出力する。
なお、反応ガス流量算出部46Bは、反応性スパッタの開始時、すなわち、酸素ガスの供給が開始されてから、ターゲット31への電力の供給が開始されるまでの間は、初期流量に応じた流量信号を出力する。また、流量信号は、上述した供給開始信号がガス供給部駆動回路25Dに出力されてから、供給停止信号がガス供給部駆動回路25Dに出力されるまで、所定の間隔、すなわち、PID制御の制御周期ごとにガス供給部駆動回路25Dに出力される。
酸化アルミニウム膜が形成されるときには、まず、制御装置40が排気部23に対する駆動開始信号を出力し、排気部23が真空槽21内を排気する。そして、成膜前の基板Sが搬出入室11から搬入された後、制御装置40が、スパッタガス供給部24に対する供給開始信号、反応ガス供給部25に対する供給開始信号を出力する。これにより、スパッタガス供給部24が真空槽21内へのアルゴンガスの供給を開始し、反応ガス供給部25が真空槽21内への酸素ガスの供給を開始する。その後、制御装置40が、ターゲット電源33に対する供給開始信号を出力し、ターゲット電源33がバッキングプレート32への交流電力の供給を開始する。
これにより、真空槽21内には、アルゴンガス及び酸素ガスからプラズマが生成され、プラズマ中の正イオンがターゲット31に衝突することによって弾き出されたスパッタ粒子が基板Sの表面に堆積する。スパッタ粒子は、真空槽21内を飛行する間にプラズマ中の酸素と反応するため、基板Sには、酸素とアルミニウムとを含む粒子が堆積する。また、ターゲット31の表面も少なからず酸化されるため、ターゲット31から放出されたスパッタ粒子も酸素とアルミニウムとを含む場合もある。結果として、基板Sの表面には、酸化アルミニウム膜が形成される。
なお、反応ガス供給部25に対する供給開始信号が出力されてから、ターゲット電源33に対する供給開始信号が出力されるまでの間は、反応ガス流量算出部46Bは、初期流量設定部45によって設定される初期流量に応じた流量信号を出力する。その後、検出値取得部41にて取得された検出値と、目標値設定部42にて設定された目標値とを用い、偏差算出部46Aは今回の偏差eを算出する。そして、反応ガス流量算出部46Bが、ゲイン設定部43にて設定された各ゲインKP,KI,KD、今回の偏差e、偏差記憶部44に記憶された前回の偏差en−1、及び、初期流量設定部45にて設定された初期流量を用いて、反応ガス供給部25に対する流量信号を生成して出力する。
これにより、酸化アルミニウム膜の形成が開始されるときには、反応性スパッタの様式が酸化モードに設定され、酸化アルミニウム膜の形成の途中で、反応性スパッタの様式が遷移モードに変更される。そのため、真空槽21内に設置されたチムニー26等の部材や、真空槽21の内壁には、絶縁物である酸化アルミニウムが付着する。それゆえに、スパッタ室12にて酸化アルミニウム膜の形成が繰り返し行われても、真空槽21内には、酸化アルミニウムのみが堆積し、導電物であるアルミニウム膜と酸化アルミニウム膜とが交互に堆積する場合と比べて、異常放電を抑えることができる。
また、酸素ガスの流量は、遷移モード区間に含まれる目標値と、ターゲット31に印加されている検出値とを用いたPID制御によって算出される。そのため、例えば、反応性スパッタの開始から所定の時間が経過したときに酸素ガスの流量を変更する構成と比べて、酸素ガスの流量には、ターゲット31に印加されている検出値が反映される。それゆえに、ターゲット31に印加される電圧が、遷移モード区間により含まれやすくなる。
[実施例]
図5から図7を参照して実施例を説明する。なお、以下では、実施例におけるターゲットに印加される電圧の推移、酸化アルミニウム膜の成膜速度、及び、酸化アルミニウム膜の屈折率の順に説明する。
上述のスパッタ装置を用いて、以下の条件にて酸化アルミニウム膜を形成し、ターゲットに印加される電圧Vmfを測定した。図5には、電圧Vmfの測定結果が、実施例の波形W1として示されている。
・ターゲット アルミニウムターゲット
・電力量 6kW
・アルゴンガス流量 160sccm
・酸素ガス初期流量 80sccm
・真空槽内の圧力 0.4Pa
・目標値 500V
・比例ゲイン 固定値
・積分ゲイン 固定値
・微粉ゲイン 固定値
上述の条件から酸素ガスの初期流量のみを以下のように変更した条件にて酸化アルミニウム膜を形成し、ターゲットに印加される電圧Vmfを測定した。図5には、電圧Vmfの測定結果が、比較例の波形W2として示されている。
・酸素ガス初期流量 0sccm
図5に示されるように、実施例では、酸化アルミニウム膜の形成が開始されたときの電圧Vmfがおよそ320Vであり、酸化アルミニウム膜の形成の開始から12秒が経過するまでは、ターゲットに印加される電圧Vmfが時間の経過とともに上昇することが認められた。そして、ターゲットに印加される電圧Vmfが530Vまで上昇すると、目標値である500Vに向けて電圧が下降し、酸化アルミニウム膜の形成が開始されてから20秒が経過したところで、ターゲットに印加される電圧が500Vになることが認められた。
つまり、図3及び図5に示される結果から、実施例によれば、酸化アルミニウム膜の形成が開始されるときには、反応性スパッタの様式が酸化モードに設定されることが認められた。そして、酸素ガスの流量が制御されることによってターゲットに印加される電圧Vmfが目標値に収束することにより、酸化アルミニウム膜の形成の途中で、反応性スパッタの様式が、酸化モードから遷移モードに変更されることが認められた。
同じく図5に示されるように、比較例では、酸化アルミニウム膜の形成が開始された時の電圧Vmfがおよそ700Vであり、酸化アルミニウム膜の形成の開始から12秒が経過するまでは、ターゲットに印加される電圧Vmfが、一旦上昇した後、時間の経過とともに下降することが認められた。そして、ターゲットに印加される電圧Vmfが450Vまで下降すると、目標値である500Vに向けて電圧が上昇し、酸化アルミニウム膜の形成が開始されてから30秒が経過したところで、ターゲットに印加される電圧が500Vになることが認められた。
つまり、図3及び図5に示される結果から、比較例によれば、酸化アルミニウム膜の形成が開始されるときには、反応性スパッタの様式が金属モードに設定されることが認められた。そして、酸素ガスの流量が制御されることによって、ターゲットに印加される電圧Vmfが目標値に収束し、酸化アルミニウム膜の形成の途中で、反応性スパッタの様式が、金属モードから酸化モードに変更されることが認められた。なお、初期流量は、80sccmに限らず、反応性スパッタの様式が酸化モードから金属モードに向けて変えられる場合に、酸化モードから金属モードに変わるときの酸素ガスの流量よりも大きい流量であれば、電圧Vmfが波形W1と同等の状態で推移することも認められている。
また、実施例によれば、酸化アルミニウム膜の形成を複数回繰り返した場合であっても、比較例による酸化アルミニウム膜の形成が繰り返し行われる場合と比べて、真空槽内での異常放電が抑えられることが認められた。これは、酸化アルミニウム膜を形成するときの反応性スパッタの様式が、酸化モードと遷移モードとに設定されることで、チムニー等の部材や、真空槽の内壁には、絶縁物である酸化アルミニウム膜のみが形成されるためである。
[成膜速度と屈折率]
実施例と比較例との各々において、目標値を変更し、ターゲットに印加される電圧Vmfが各目標値に収束したときの成膜速度を測定した。
図6に示されるように、実施例の成膜速度と比較例の成膜速度とは同等であることが認められた。すなわち、酸化アルミニウム膜の形成が酸化モードから開始される場合であっても、酸化アルミニウム膜の形成が金属モードから開始される場合と同等の成膜速度が得られることが認められた。
実施例と比較例との各々において、目標値を変更し、各目標値での反応性スパッタにより形成された酸化アルミニウム膜の屈折率を測定した。
図7に示されるように、実施例の屈折率と比較例の屈折率とは同等であることが認められた。すなわち、酸化アルミニウム膜の形成が酸化モードから開始される場合であっても、酸化アルミニウム膜の形成が金属モードから開始される場合と同等の屈折率が得られることが認められた。
このように、酸化アルミニウム膜の形成時に反応性スパッタの様式が酸化モードに設定される場合であっても、金属モードに設定される場合と同等の状態で、同等の特性を有する酸化アルミニウム膜を形成することが可能である。
以上説明したように、スパッタ装置の一実施形態によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)酸化アルミニウム膜の形成が開始されるときには、反応性スパッタの様式が酸化モードに設定され、酸化アルミニウム膜の形成の途中で、反応性スパッタの様式が遷移モードに変更される。そのため、真空槽21内に設置されたチムニー26等の部材や、真空槽21の内壁には、絶縁物である酸化アルミニウムが付着する。それゆえに、スパッタ室12にて酸化アルミニウム膜の形成が繰り返し行われても、真空槽21内には、酸化アルミニウムのみが堆積する。結果として、真空槽21内での異常放電を抑えることができる。
(2)酸素ガスの初期流量が、酸化モードから金属モードに変更されるときにターゲットの電圧が酸化モード区間に含まれる電圧値となる流量に設定される。そのため、初期流量が、金属モードから酸化モードに変更されるときにターゲット電圧が酸化モード区間に含まれる電圧値となる酸素ガスの流量である構成と比べて、酸化アルミニウム膜の形成が開始されるときの反応性スパッタの様式が、より確実に酸化モードに設定される。
(3)酸素ガスの流量が、遷移モード区間に含まれる目標値と、ターゲット31に印加されている実際の電圧とを用いたPID制御によって算出される。そのため、酸素ガスの流量には、ターゲット31に印加されている実際の電圧が反映される。それゆえに、ターゲット31に印加される電圧が、遷移モード区間により含まれやすくなる。
(4)ターゲット31に印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わるときに、ターゲット31に供給される電力は変わらない。それゆえに、ターゲット31に供給される電力が変わる構成と比べて、酸素ガスの流量の変更による電圧の変更が容易になる。
(5)ターゲット31に印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わるときに、アルゴンガスの流量は変わらない。それゆえに、アルゴンガスの流量が変わる構成と比べて、酸素ガスの流量の変更による電圧の変更が容易になる。
なお、上記各実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・スパッタガスには、アルゴンガス以外の希ガスであるヘリウムガス、ネオンガス、クリプトンガス、及び、キセノンガスのいずれかが用いられてもよい。
・基板Sはガラス基板に限らず、例えば、樹脂製のフィルムであってもよい。この場合、スパッタ装置10には、成膜レーン14と回収レーン15とに代えて、フィルムの搬送を行うフィルム搬送部が備えられていればよい。
・基板Sに対する酸化アルミニウム膜の形成は、成膜レーン14若しくは回収レーン15の途中で位置の固定された基板Sに行われなくともよい。つまり、成膜レーン14若しくは回収レーン15を搬送されることによって、真空槽21内での位置が変更されている基板Sに対して酸化アルミニウム膜が形成されてもよい。
・反応ガス流量算出部46BでのP値、I値、及び、D値の算出方法は、上述した方法に限らず、適宜変更可能である。要は、目標値と検出値との偏差を小さくするように算出方法が設定されればよい。
・酸素ガスの流量は、ターゲット31に印加される電圧Vmfの目標値と、検出値とを用いたPID制御によって算出されなくともよい。例えば、酸素ガスの流量は、予め作成されたレシピ等に基づく固定値であってもよい。この場合には、酸素ガスの流量は、初期流量が最も大きい流量に設定され、所定の時間が経過することにともなって、次第に小さい流量に設定される構成が好ましい。
・ターゲット31の主成分は、アルミニウム以外の金属、例えば、シリコン、ニオブ、チタン、及び、ジルコニウムのいずれかでもよい。これら金属のターゲットを用いた場合であっても、反応性スパッタの様式には、金属モード、遷移モード、及び、酸化モードが存在する。そのため、酸化アルミニウム膜の形成時と同様に、これら金属の酸化物膜を形成すればよい。
・ターゲット31の主成分は、アルミニウムや上述の他の金属等に限らず、これら金属の酸化物であってもよい。金属酸化物のターゲットを用いた場合であっても、反応性スパッタの様式には、金属モード、遷移モード、及び、酸化モードが存在する。そのため、金属のターゲットを用いた場合と同様に、金属酸化物膜が形成されればよい。
・スパッタガスであるアルゴンガスの流量は、酸化モードと遷移モードとで同一でなくともよく、酸化モードでの流量と遷移モードでの流量とが相互に異なる構成でもよい。ただし、酸化モードと遷移モードとでアルゴンガスの流量が相互に異なる場合には、アルゴンガスの流量の変更に関わる制御に、アルゴンガスの流量の変更によって遷移モードを超えて金属モードに移行しないだけの精度が要求される。この点で、上記実施形態では、アルゴンガスの流量の変更を伴わない分、こうした要求に応えることが可能である。
・ターゲット31に供給される電力は、酸化モードと遷移モードとで同一でなくともよく、酸化モードでターゲット31に供給される電力と遷移モードでターゲット31に供給される電力とが相互に異なる構成でもよい。ただし、酸化モードと遷移モードとでターゲット31に供給される電力とが相互に異なる場合には、電力の変更に関わる制御に、電力の変更によって遷移モードを超えて金属モードに移行しないだけの精度が要求される。この点で、上記実施形態では、電力の変更を伴わない分、こうした要求に応えることが可能である。
・初期流量の下限値は、ターゲット31に印加される電圧が遷移モード区間から酸化モード区間へ変わるときの下限値よりも大きい流量に設定されなくともよい。例えば、上述のように、初期流量の下限値には、電圧が遷移モード区間から酸化モード区間へ変わるときであって、酸化モードから遷移モードに変更される直前の酸素ガスの流量が初期流量の下限値として設定されてもよい。あるいは、初期流量の下限値が、ターゲット31に印加される電圧が酸化モード区間から遷移モード区間へ変わるときの下限値よりも大きい流量に設定されなくともよい。要は、初期流量は、ターゲット31等の状態が酸化モードで処理された状態となる流量に設定されればよい。
・ターゲット31に印加される電圧Vmfのうち、金属モード区間、遷移モード区間、及び、酸化モード区間の各々に含まれる電圧Vmfの区間は、図3に示される区間に限らない。各モード区間に含まれる電圧Vmfは、ターゲット31の主成分、ターゲット31に供給される電力量、及び、ターゲット31の大きさ等が変わることに伴って異なる電圧Vmfになる。また、ターゲット31に印加される電圧Vmfを各区間に含まれる電圧値とする酸素ガスの流量も、図3に示される流量に限らない。ターゲット31に印加される電圧Vmfを各モード区間に含まれる電圧値とする酸素ガスの流量も、ターゲット31の主成分、ターゲット31に供給される電力量、及び、ターゲット31の大きさ等が変わることに伴って異なる流量になる。要するに、金属モード区間及び酸化モード区間は、酸素ガスの流量における変化量に対する電圧の変化量が、遷移モード区間での酸素ガスの流量における変化量に対する電圧の変化量よりも小さい区間であって、且つ、電圧が略一定に保たれる区間であればよい。
10…スパッタ装置、11…搬出入室、12…スパッタ室、13…ゲートバルブ、14…成膜レーン、15…回収レーン、21…真空槽、22…ターゲット装置、23…排気部、23D…排気部駆動回路、24…スパッタガス供給部、24D…スパッタガス供給部駆動回路、25…反応ガス供給部、25D…ガス供給部駆動回路、31…ターゲット、32…バッキングプレート、33…ターゲット電源、40…制御装置、41…検出値取得部、42…目標値設定部、43…ゲイン設定部、44…偏差記憶部、45…初期流量設定部、46…算出部、46A…偏差算出部、46B…反応ガス流量算出部、34…磁気回路、S…基板、T…トレイ。

Claims (5)

  1. 金属を含むターゲットと、
    前記ターゲットの周りに酸素ガスを供給するガス供給部と、
    前記ターゲットに電力を供給して前記ターゲットをスパッタさせる電源と、
    前記ガス供給部と前記電源との駆動を制御して金属酸化膜を形成する制御部とを備え、
    前記ターゲットに印加される電圧の範囲には、
    前記ターゲットが酸化モードでスパッタされる酸化モード区間と、
    前記ターゲットが遷移モードでスパッタされる遷移モード区間とが含まれ、
    前記制御部は、
    前記金属酸化膜の形成を開始するときに、前記ターゲットに印加される電圧を前記酸化モード区間に含まれる電圧とし、
    前記金属酸化膜が形成される途中から前記金属酸化膜の形成を終了するまで、前記ターゲットに印加される電圧を前記遷移モード区間に含まれる電圧とし、
    前記ガス供給部が供給する前記酸素ガスの流量を変更させることによって前記電圧を変える、
    スパッタ装置。
  2. 前記制御部は、
    前記金属酸化膜の形成を開始するときの前記酸素ガスの流量である初期流量を設定する初期流量設定部を備え、
    前記電圧が前記酸化モード区間であるときの前記酸素ガスの流量の下限値は、
    前記電圧が前記遷移モード区間から前記酸化モード区間へ変わるときと、
    前記電圧が前記酸化モード区間から前記遷移モード区間へ変わるときとで相互に異なり、
    前記初期流量の下限値は、
    前記電圧が前記遷移モード区間から前記酸化モード区間へ変わるときの前記酸素ガスの流量の下限値よりも大きい
    請求項1に記載のスパッタ装置。
  3. 前記制御部は、
    前記ターゲットに印加されている電圧を検出値として取得する検出値取得部と、
    前記ターゲットに印加される電圧の目標値を設定する目標値設定部と、
    前記酸素ガスの設定流量を算出する流量算出部と、を更に備え、
    前記目標値設定部は、
    前記遷移モード区間に含まれる電圧を前記目標値とし、
    前記流量算出部は、
    前記検出値と前記目標値との偏差を小さくする前記酸素ガスの流量を前記設定流量として算出する、
    請求項1または2に記載のスパッタ装置。
  4. 前記制御部は、
    前記電源が供給する前記電力の設定値を前記酸化モード区間と前記遷移モード区間とにおいて一定値とする
    請求項1から3のいずれか1つに記載のスパッタ装置。
  5. 前記ガス供給部は、
    前記ターゲットの周りに更にアルゴンガスを供給し、
    前記制御部は、
    前記アルゴンガスの流量の設定値を前記酸化モード区間と前記遷移モード区間とにおいて一定値とする
    請求項1から4のいずれか1つに記載のスパッタ装置。
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